JP6058428B2 - 金型取り付け部材の強化方法 - Google Patents
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上記特許文献1においては、上記ラムは、その底部に凹凸構造を備えて、この凹凸構造に上記鍛造可動金型が着脱可能に係合されて取り付けられる。これにより、上記ラムに対して鍛造可動金型を適宜取り替えることが可能となる。
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものである。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、鍛造ハンマーにおいて凹凸構造を備えた金型取り付け部材において鍛造加工の衝撃負荷による破損を抑制して、金型取り付け部材の耐久性の向上を実現させることである。
まず、第1の発明は、鍛造ハンマーにおいて鍛造の衝撃力を被鍛造物に与えるための鍛造金型が着脱可能に取り付けられる金型取り付け部材の強化方法である。この金型取り付け部材の強化方法は、マルテンサイト変態を生じさせることができ、かつ、1回以上の焼き戻しを含む熱処理によって所定の機械的性質を有するように調質された合金工具鋼によって、側方に向かって開放される縁部分を有する凹凸構造を備えた形状に形成され、かつ、この凹凸構造に鍛造金型が着脱可能に係合されて取り付けられる金型取り付け部材の本体部材と、上記合金工具鋼よりもマルテンサイト変態が生じにくい性質あるいはマルテンサイト変態が生じない性質を有し、かつ、上記合金工具鋼と比べてよりじん性が大きくかつより溶接性がよい低炭素な合金鋼によって形成されて、上記本体部材の上記側方側の表面上に上記凹凸構造にあわせて接合される補強板とをそれぞれ用意する用意ステップと、この用意ステップによって用意された本体部材および補強板の両方を、上記合金工具鋼におけるマルテンサイト変態開始温度よりも高く、かつ、上記焼き戻しにおいて1つ以上設定される焼き戻し加熱温度のうちで最も低い温度である第1の温度以下の温度とする予熱ステップと、この予熱ステップを経た補強板を、上記予熱ステップを経た本体部材の側方側の表面上に上記凹凸構造にあわせて配置して、配置された補強板を、高張力鋼用の溶接材料を用いたすみ肉溶接によって本体部材に一体に接合させることで、上記補強板によって上記本体部材が補強された金型取り付け部材を形成する溶接ステップと、この溶接ステップによって形成された金型取り付け部材を、この金型取り付け部材から残留応力を除去することができる温度である第2の温度に所定の時間維持することで、金型取り付け部材の本体部材および補強板における残留応力の一部あるいは全部を除去する応力除去ステップとを有している。上記溶接ステップにおいては、上記予熱ステップを経た本体部材および補強板を、上記合金工具鋼におけるマルテンサイト変態開始温度よりも高い温度とし、かつ上記本体部材のうち上記すみ肉溶接の熱影響部を除く部分を、上記第1の温度以下の温度とするように温度調整を行う。上記応力除去ステップにおいて、上記第2の温度は、上記合金工具鋼におけるマルテンサイト変態開始温度よりも高く、上記第1の温度以下で、かつ、上記本体部材の熱影響部を、この熱影響部において熱影響を受けた金属の機械的性質を上記溶接ステップの前に上記合金工具鋼が有していた機械的性質に近づけるように焼き戻すことができる温度に設定されている。
固体にかかる衝撃負荷によってこの固体に発生する破損は、まず、上記固体において応力が集中する部分に検出が難しい小さなスケール(例えば[μm]のスケール)の亀裂(以下においては「微小亀裂」)とも称する。)として発生して、この微小亀裂が開口および進展ならびに伝播をすることで、より大きなスケールの破損となることが知られている。
ここで、上記第1の発明によれば、金型取り付け部材の本体部材は、この本体部材において鍛造金型が着脱可能に係合される凹凸構造にあわせて補強板が一体に接合されることで補強される。このため、上記金型取り付け部材において、補強板は、本体部材において応力集中が発生する凹凸構造の近傍を拘束して、この部分に発生する微小亀裂の開口を押さえこんで閉じる拘束部材として機能する。これにより、上記微小亀裂がより大きなスケールの破損になることを抑え、鍛造加工の衝撃負荷による金型取り付け部材の破損を抑制して、この金型取り付け部材の耐久性の向上を実現させることができる。また、補強板のじん性を本体部材のじん性よりも大きくすることで、補強板を上記拘束部材とするために必要な強度を保ちながら小型化することが可能となる。また、マルテンサイト変態を生じさせにくいあるいは生じさせない低炭素な合金鋼により補強板を形成し、この補強板および本体部材を、この本体部材にマルテンサイト変態を生じさせる温度よりも高い温度に保ちながら溶接および応力除去処理を実行することで、上記溶接にともなう温度変化によるマルテンサイト変態のために補強板および本体部材が変形することを抑えることができる。これにより、補強板を本体部材の表面上に溶接によって一体に接合させて金型取り付け部材を補強することが可能となる。また、補強板を、本体部材を形成する合金工具鋼よりも溶接性がよい低炭素な合金鋼によって形成して、引張強さの値および破断伸びの値がともに大きい高張力鋼用の溶接材料を用いて本体部材にすみ肉溶接で溶接することにより、この溶接による本体部材と補強板との接合強度を、鍛造加工において金型取り付け部材にかかる衝撃負荷に耐えられる強度とすることが可能となる。なお、前もって焼き戻しおよび調質がなされた合金工具鋼により形成された部材に対して溶接を行う場合、上記部材には、溶接の熱源または溶融された金属による局所的な過熱のために、局所的に金属の機械的性質が変化された熱影響部が生じる。ここで、上記第1の発明によれば、溶接ステップにおいて本体部材に生じた熱影響部を、応力除去ステップにおいて溶接ステップの前の状態に近づけるように焼き戻すことができる。また、上記本体部材における上記熱影響部以外の部分は、その温度が上記焼き戻しにおける最低の焼き戻し加熱温度を上回らないように推移されることで、本体部材を形成する合金工具鋼が調質されたときの機械的性質を保つ。これにより、補強板の溶接により補強された金型取り付け部材において、その本体部材に生じる機械的性質の変化を抑えることができる。
亀裂などの損傷または欠陥を有する物体において、上記損傷または欠陥がより大きなスケールに拡大されることを押さえこむために必要な力の大きさは、上記損傷または欠陥のスケールが大きいほど大きくなる。また、上記物体の耐久性は、上記損傷または欠陥のうちで最大のスケールの損傷または欠陥に依存し、この損傷または欠陥のスケールが大きいほど、上記物体の耐久性は低下される。
ここで、上記第2の発明によれば、金型取り付け部材の本体部材において、微小亀裂よりもスケールが大きく非破壊検査ステップによって検出が可能な損傷または欠陥は、全て補修された状態となる。これにより、本体部材内から補強板によっては押さえこむことが難しい大きなスケールの損傷を減らすとともに、本体部材そのものの耐久性を向上させて、金型取り付け部材の耐久性をさらに向上させることが可能となる。
この第3の発明によれば、金型取り付け部材において本体部材と補強板とがすみ肉溶接によって溶接される補強板の周縁部を、この周縁部のカーブ形状によってより長くすることができる。これにより、上記すみ肉溶接における溶接の有効長さをより長くして、上記金型取り付け部材における本体部材と補強板との接合強度をより大きくすることができる。
鍛造ハンマー1は、図1に示すように、圧縮空気によって駆動されるピストン14により被鍛造物90の鍛造加工を行うエアースタンプハンマーである。すなわち、鍛造ハンマー1は、ラム10およびこのラム10に取り付けられた鍛造可動金型13に、ピストン14により持ち上げられて落下される上下動の繰り返しを実現させる。この上下動の繰り返しのエネルギーは、ソーブロック20に取り付けられた鍛造固定金型23上の被鍛造物90に衝撃力として与えられて、その一部が被鍛造物90の鍛造加工に消費される。ここで、鍛造可動金型13および鍛造固定金型23は、それぞれ本発明における「鍛造金型」に相当する。また、ラム10およびソーブロック20は、それぞれ本発明における「金型取り付け部材」に相当する。
また、ソーブロック20は、図1に示すように、その下側(図示下側)に蟻桟からなる係合部20Aを備えている。そして、ソーブロック20は、その係合部20Aをアンヴィル24の上部に形成された蟻溝からなる被係合部24Aに係合させることで、アンヴィル24に着脱可能に取り付けられるようになっている。このアンヴィル24は、建造物などの基礎24Bに埋め込まれるように設置されて、鍛造固定金型23およびソーブロック20を介して受ける上記鍛造加工の衝撃力を受け止めるように構成されている。
補強板22は、ソーブロック本体21に対して、このソーブロック本体21の側方側の表面を覆うように凹凸構造21Aにあわせて配置された状態で、補強板22の周縁部を溶接部22Aとするすみ肉溶接によって一体に溶接されて接合されている。このため、ソーブロック20において、補強板22は、ソーブロック本体21において応力集中が発生する凹凸構造21Aの近傍を拘束して、この部分に上記応力集中によって発生する微小亀裂の開口を押さえこんで閉じる拘束部材として機能する。これにより、ソーブロック本体21における凹凸構造21Aの近傍において上記微小亀裂がより大きなスケールの破損になることを抑え、鍛造加工の衝撃負荷によるソーブロック20の破損を抑制して、このソーブロック20の耐久性の向上を実現させることができる。また、補強板22のじん性をソーブロック本体21のじん性よりも大きくすることで、補強板22を上記拘束部材とするために必要な強度を保ちながら小型化することが可能となる。
なお、上記微小亀裂の変形様式は、例えばソーブロック本体21と同じ形状のソーブロックを用いた実験またはシミュレーションなど、公知の手段により前もって予測することができるものである。
また、ラム10には、図1ないし図3に示すように、ラムブッシュ(図示省略)を介してピストン14から下側に延びるピストンロッド14Aが差し込まれた状態に取り付けられている。ここで、ピストン14は、アンヴィル24(図1参照)の上にソーブロック20を挟むように載置された1対のフレーム1Aに一体に組み付けられている。この1対のフレーム1Aは、ラム10を側方から挟みこむことで、このラム10およびラム10に取り付けられた鍛造可動金型13の上下動(図1参照)をレール状のガイド部分1B(図3参照)によってガイドするように構成されている。
また、ラム本体11は、その底部に側方(図3で見て上下方向)に向かって開放される縁部分11Bを有する凹凸構造11A(例えば蟻溝)を備えて、この凹凸構造11Aに鍛造可動金型13の被取り付け部13A(例えば蟻桟)が着脱可能に係合されて取り付けられるようになっている。これにより、ラム10に対して鍛造可動金型13を適宜取り替えることが可能となる。一方で、凹凸構造11Aは、上述した鍛造加工の際に、ラム本体11における凹凸構造11Aの近傍に応力集中を発生させる。
補強板12は、少なくともその一部分が、ラム本体11において発生および進展が予測される微小亀裂の変形様式(開口型のモードI、面内せん断型のモードII、面外せん断型のモードIIIのいずれか、またはこれらの組み合わせ)の変形方向に沿うように配置されていることが望ましい。このように補強板12を配置することで、この補強板12による拘束の方向を上記微小亀裂の開口の方向に一致させて、補強板12の上記拘束部材としての性能を向上させることができる。なお、上記微小亀裂の変形様式は、例えばラム本体11と同じ形状のラムを用いた実験またはシミュレーションなど、公知の手段により前もって予測することができるものである。
また、以下においては、すみ肉溶接の溶接箇所を溶接直後に適宜加熱して溶着金属に入り込んでいる拡散性水素を逃がす溶接直後熱ステップなどの、本発明において付随的なステップについては、その詳細な説明を省略する。
上記用意ステップによって用意されるラム本体11は、鍛造可動金型13の被取り付け部13Aを着脱可能に係合させることができるように、凹凸構造11Aを備えてこの凹凸構造11Aの縁部分11Bが側方に向かって開放された形状(図2参照)に成形されている。また、上記用意ステップによって用意される補強板12は、すみ肉溶接によってラム本体11の表面を覆った状態に接合することができるように、この表面に対して上記すみ肉溶接の溶接部12A(図2参照)の分だけ小さい板形状に成形されている。
また、上記用意ステップによって用意される補強板12の板厚は、この補強板12によって強化されるラム10の大きさおよびこのラム10が受けることになる衝撃負荷の大きさによって適宜変更されるものである。例えば、ラム10が2[t]クラスのエアースタンプハンマーに使用されるラムである場合は、補強板12は板厚50[mm]のものが用意される。一方、ラム10がより大型の鍛造ハンマーに使用される場合は、補強板12はより厚い(例えば板厚80[mm]の)ものが用意され、ラム10がより小型の鍛造ハンマーに使用される場合は、補強板12はより薄い(例えば板厚30[mm]の)ものが用意される。
上記非破壊検査ステップおよび上記補修ステップによれば、ラム10のラム本体11において、微小亀裂よりもスケールが大きく上記非破壊検査ステップによって検出が可能な損傷または欠陥は、全て補修された状態となる。これにより、ラム本体11内から補強板12によっては押さえこむことが難しい大きなスケールの損傷を減らすとともに、ラム本体11そのものの耐久性を向上させて、ラム10の耐久性をさらに向上させることが可能となる。
なお、上述した用意ステップにおいて用意したラム本体11が、以前に鍛造ハンマーで鍛造加工に使用されていた中古品であり、かつ、上述した非破壊検査ステップにおいて損傷が見つかった場合には、この損傷を調べることで、ラム本体11において上記鍛造加工による微小亀裂が発生しやすい位置および発生した微小亀裂の進展の変形様式を予測することができる。
上記各操作によれば、ラム10の補強板12において、微小亀裂よりもスケールが大きく検出が可能な損傷または欠陥をなくすことができる。これにより、補強板12の耐久性を向上させて、ラム10の耐久性をさらに向上させることが可能となる。
なお、上記予熱ステップにおいて、上記予熱温度は、ラム本体11を形成する合金工具鋼におけるマルテンサイト変態開始温度よりも高く、かつ、上述した第1の温度以下となる温度に設定されている。このため、上記予熱ステップにおいて、ラム本体11は、上記合金工具鋼においてマルテンサイトの生成または分解をともなう相変化、および、この相変化にともなう変形を起こすことがない。
ここで、上記溶接ステップの上記すみ肉溶接の溶接方法としては、溶接材料として引張強さの値および破断伸びの値がともに大きい高張力鋼用の溶接材料を用いたアーク溶接が採用される。ラム本体11を形成する合金工具鋼よりも溶接性がよい低炭素な合金鋼によって補強板12を形成して、この補強板12を高張力鋼用の溶接材料を用いてラム本体11にすみ肉溶接で溶接することにより、この溶接によるラム本体11と補強板12との接合強度を、鍛造ハンマー1(図1参照)による鍛造加工においてラム10にかかる衝撃負荷に耐えられるだけの強度とすることが可能となる。また、アーク溶接は、高張力鋼用の溶接材料を用いた溶接に適した溶接方法である。なお、本明細書において、「引張強さ」および「破断伸び」は、それぞれJIS Z 3211:2008または2012年12月の時点においてJIS Z 3211:2008によって引用される各規格に記載された「引張強さ」および「伸び」に相当する物性である。
なお、上記アーク放電および上記溶融金属は、補強板12において溶接部12Aに隣接する部分の低炭素な合金鋼も局所的に過熱するが、この過熱による低炭素な合金鋼への熱影響は上記熱影響部11Cにおける合金工具鋼への熱影響と比べて無視できるほど小さい。このため、図3および図4においては、補強板12において過熱された部分を熱影響部として別に図示することをしていない。
また、上記溶接ステップにおいては、上述した予熱ステップを経たラム本体11および補強板12を、合金工具鋼におけるマルテンサイト変態開始温度よりも高い温度とし、かつ、ラム本体11のうち溶接によって過熱される熱影響部11Cを除く部分の全体を、上述した第1の温度以下とするように温度調整を行う。すなわち、上記溶接ステップにおいては、互いに溶接されるラム本体11および補強板12において、現在溶接が行われている溶接部12Aから離間された部分の各温度を測定しながら溶接を行う。そして、測定されたラム本体11または補強板12の温度が合金工具鋼におけるマルテンサイト変態開始温度以下にまで低下されそうになったときには、上記予熱ステップにおいて使用した加熱装置によってラム本体11および補強板12を再加熱して、このラム本体11および補強板12の各温度が合金工具鋼におけるマルテンサイト変態開始温度以下の温度とならないようにする。また、測定されたラム本体11または補強板12の温度が上述した第1の温度よりも所定の温度(例えば20[℃]〜40[℃])だけ低い温度を超えた場合は、上述したすみ肉溶接における次のパスでラム本体11の全体の温度が上記第1の温度を超えるおそれがあると判定して、パス間の待機時間を長くすることで、ラム本体11のうち熱影響部11Cを除く部分を上記第1の温度以下に保つ。
なお、上記応力除去ステップを経たラム10は、上記溶接後熱処理装置の設定温度を徐々に下げてラム10を冷却させる徐冷ステップによって常温にまで冷却された後に、鍛造ハンマー1のピストンロッド14A(図1参照)に取り付けられる。
また、上記第2の温度は、焼き入れされた合金工具鋼を焼き戻すことができる温度である。このため、上記応力除去ステップにおいては、ラム本体11の熱影響部11Cにおいて焼き入れされた状態とされた合金工具鋼(本発明における「熱影響を受けた金属」に相当する。)は、焼き戻された状態に変化されて、その機械的性質が、上述した溶接ステップの前においてラム本体11を形成する合金工具鋼が有していた機械的性質に近づけられる。
また、上述したラム10の強化方法によれば、上述した溶接ステップにおいてラム本体11に生じた熱影響部11Cを、上述した応力除去ステップにおける第2の温度の設定により、上記溶接ステップの前の状態に近づけるように焼き戻すことができる。また、ラム本体11における熱影響部11C以外の部分は、その温度がラム本体11を形成する合金工具鋼の焼き戻しにおける最低の焼き戻し加熱温度(すなわち上述した第1の温度)を上回らないように推移されることで、上記合金工具鋼が調質されたときの機械的性質を保つ。これにより、補強板12の溶接により補強されたラム10において、そのラム本体11に生じる機械的性質の変化を抑えることができる。
(1)鍛造金型が係合される金型取り付け部材の凹凸構造は蟻溝に限定されない。すなわち、例えば金型取り付け部材の凹凸構造を蟻桟として鍛造金型に形成された蟻溝に係合させる構成を採用するなど、金型取り付け部材の凹凸構造の具体的な形状を適宜変更することができる。
(2)本発明における本体部材および補強板の具体的な素材は、上述したものに限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。例えば、補強板を形成する低炭素な合金鋼を、一般的には前もって炭素を添加する浸炭処理を行わない限りマルテンサイト変態が生じない物質であるニッケルクロムモリブデン鋼SNCM220(JIS G 4053:2008)に変更することができる。
(3)本発明により強化することができる金型取り付け部材は、圧縮空気を駆動力源として鍛造金型を持ち上げて落下させるエアースタンプハンマーに適用されるラムおよびソーブロックの組に限定されない。すなわち、本発明によれば、モーターを駆動力源としたスプリングハンマーなど、鍛造の衝撃力を被鍛造物に与える任意の鍛造ハンマーに適用される金型取り付け部材を強化することができる。また、上記鍛造ハンマーに適用される金型取り付け部材のうち、ラムまたはソーブロックのいずれか一方から補強板による本体部材の補強を省略することができる。
1A フレーム
1B ガイド部分
10 ラム(金型取り付け部材)
10A 被ガイド溝
11 ラム本体(本体部材)
11A 凹凸構造
11B 縁部分
11C 熱影響部
12 補強板
12A 溶接部
13 鍛造可動金型(鍛造金型)
13A 被取り付け部
14 ピストン
14A ピストンロッド
20 ソーブロック(金型取り付け部材)
20A 係合部
21 ソーブロック本体(本体部材)
21A 凹凸構造
21B 縁部分
22 補強板
22A 溶接部
23 鍛造固定金型(鍛造金型)
23A 被取り付け部
24 アンヴィル
24A 被係合部
24B 基礎
90 被鍛造物
Claims (2)
- 鍛造ハンマーにおいて鍛造の衝撃力を被鍛造物に与えるための鍛造金型が着脱可能に取り付けられる金型取り付け部材の強化方法において、
マルテンサイト変態を生じさせることができ、かつ、1回以上の焼き戻しを含む熱処理によって所定の機械的性質を有するように調質された合金工具鋼によって、側方に向かって開放される縁部分を有する凹凸構造を備えた形状に形成され、かつ、当該凹凸構造に前記鍛造金型が着脱可能に係合されて取り付けられる前記金型取り付け部材の本体部材と、前記合金工具鋼よりもマルテンサイト変態が生じにくい性質あるいはマルテンサイト変態が生じない性質を有し、かつ、前記合金工具鋼と比べてよりじん性が大きくかつより溶接性がよい低炭素な合金鋼によって形成されて、前記本体部材の前記側方側の表面上に前記凹凸構造にあわせて接合される補強板とをそれぞれ用意する用意ステップと、
前記用意ステップによって用意された前記本体部材および前記補強板の両方を、前記合金工具鋼におけるマルテンサイト変態開始温度よりも高く、かつ、前記焼き戻しにおいて1つ以上設定される焼き戻し加熱温度のうちで最も低い温度である第1の温度以下の温度とする予熱ステップと、
前記予熱ステップを経た前記補強板を、前記予熱ステップを経た前記本体部材の前記側方側の前記表面上に前記凹凸構造にあわせて配置して、配置された前記補強板を、高張力鋼用の溶接材料を用いたすみ肉溶接によって前記本体部材に一体に接合させることで、前記補強板によって前記本体部材が補強された前記金型取り付け部材を形成する溶接ステップと、
前記溶接ステップによって形成された前記金型取り付け部材を、当該金型取り付け部材から残留応力を除去することができる温度である第2の温度に所定の時間維持することで、前記金型取り付け部材の前記本体部材および前記補強板における残留応力の一部あるいは全部を除去する応力除去ステップと、
を有し、
前記溶接ステップにおいては、前記予熱ステップを経た前記本体部材および前記補強板を、前記合金工具鋼におけるマルテンサイト変態開始温度よりも高い温度とし、かつ、前記本体部材のうち前記すみ肉溶接の熱影響部を除く部分を、前記第1の温度以下の温度とするように温度調整を行い、
前記応力除去ステップにおいて、前記第2の温度は、前記合金工具鋼におけるマルテンサイト変態開始温度よりも高く、前記第1の温度以下で、かつ、前記本体部材の前記熱影響部を、当該熱影響部において熱影響を受けた金属の機械的性質を前記溶接ステップの前に前記合金工具鋼が有していた機械的性質に近づけるように焼き戻すことができる温度に設定されている、
金型取り付け部材の強化方法。 - 請求項1に記載の金型取り付け部材の強化方法であって、
前記用意ステップが実行されてから前記予熱ステップが実行されるまでの間に、前記用意ステップによって用意された前記本体部材に損傷または欠陥が存在するか否かを、前記本体部材を破壊することなく検査する非破壊検査ステップと、当該非破壊検査ステップによって前記本体部材に損傷または欠陥が検出された場合に、検出された全ての損傷および欠陥に対して補修を行う補修ステップとが実行される、
金型取り付け部材の強化方法。
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