以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本発明の実施形態であるシャワー装置について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るシャワー装置F1を示す図であって、図1(A)は平面図を示し、図1(B)は側面図を示し、図1(C)は下面図を示している。図1(A)に示されるように、シャワー装置F1は主に略円盤状を成す本体4によって構成されている。シャワー装置F1(本体4)の上面4aには、その中央部において円筒形状の突出部410が形成されており、突出部410の上面側に給水口41dが形成されている。また、突出部410の側面には空気導入配管480が接続されている。
図1(B)に示されるように、シャワー装置F1の本体4は、上側のキャビティ4Aと、下側のシャワープレート4Bとによってその外形が構成されている。図1(C)に示されるように、本体4の下面4bには複数の散水孔443が形成されていると共に、封止コマ4Eが配置されている。本実施形態の場合、散水孔443は封止コマ4Eを中心とした放射状に配置されている。
続いて、図1(A)のA−A断面図である図2を参照しながら、シャワー装置F1について説明を加える。図2に示されるように、シャワー装置F1は、キャビティ4Aと、シャワープレート4Bと、導入コマ4Dと、封止コマ4Eとによって構成されている。
キャビティ4Aは、シャワープレート4Bと共に本体4の外形を形成する部材であって、本体4の上面4aとは反対側の当接面4Aaから上面4aに向けて、円形の凹部4Abが形成されている。凹部4Abの底面(上面4aと平行な面)は、空気混入部43及び吐水部44の天壁44bとなるように構成されている。
シャワープレート4Bは、キャビティ4Aと共に本体4の外形を形成する部材であって、散水孔443が放射状に複数個形成されている。この散水孔443が形成されている領域の下面4bとは反対側の当接面4Baは、空気混入部43及び吐水部44の底壁44cとなるように構成されている。
シャワープレート4Bの当接面4Baとキャビティ4Aの当接面4Aaとを当接させると、キャビティ4Aの凹部4Abと当接面4Baとによって空隙が形成され、この空隙が空気混入部43及び吐水部44となるように構成されている。凹部4Abの側面(上面4aに対し垂直な面)は、吐水部44の側壁44aとなるように構成されている。
シャワー装置F1の給水部41、絞り部42、及び空気混入部43について、給水部41、絞り部42、及び空気混入部43の近傍を拡大した図3を参照しながら説明を加える。図3に示されるように、給水部41、絞り部42、及び空気混入部43は、キャビティ4Aと、シャワープレート4Bと、導入コマ4Dと、封止コマ4Eとによって構成されている。
導入コマ4Dは、大径部4Daと、小径部4Dbとを有する。大径部4Daの、小径部4Dbとは反対側の端部(上端部)には、給水口41dが形成されている。大径部4Daの内部は、給水口41dに繋がるように筒状の空洞が形成されており、給水部41となっている。大径部4Daの、給水口41dが形成されている端部には、鍔部4Daaが形成されている。
小径部4Dbの、大径部4Daとは反対側の端部(下端部)には、絞り口42dが形成されている。小径部4Dbの内部は、絞り口42dと給水部41とを繋ぐように空洞が形成されており、絞り部42となっている。
導入コマ4Dは、キャビティ4Aに形成された凹部4Ac及び貫通孔4Adに納められている。凹部4Acは、キャビティ4Aの突出部410に形成されている。凹部4Acの底部中央には、貫通孔4Adが形成されている。導入コマ4Dの小径部4Dbは、貫通孔4Adの内部に収められ、貫通孔4Adから突出して封止コマ4Eに対向するように配置されている。導入コマ4Dの大径部4Daは、凹部4Acの内部に収められている。鍔部4Daaは、凹部4Acの外側端において、突出部410を上方から覆うように当接している。
大径部4Daと凹部4Acとの間、小径部4Dbと貫通孔4Adとの間は、それぞれ空隙が形成され空気流路431aとなっている。空気流路431aのうち空気混入部43側の端部(下端部)は、空気導入口431bとして開口している。
突出部410には貫通孔411が形成されており、貫通孔411の一端が突出部410の側面に開口している。また、貫通孔411の他端は、キャビティ4Aの内部において空気流路431aと連通するように開口している。
空気導入配管480の一端である端部481は、突出部410の側面に開口した貫通孔411に対して接続されている。空気導入配管480の他端である端部482は、開度調整機構500を介して外気に開放されている。その結果、空気混入部43は、空気流路431a、貫通孔431、空気導入配管480、及び開度調整機構500を介して外気と連通している。
開度調整機構500は、空気混入部43に流入する空気(外気)の量を調整するための流量調整バルブである。シャワー装置F1の使用者が開度調整機構500の操作部510(図1乃至3では不図示)を操作することによって、空気導入配管480の端部における開口面積(開度)を変更し、これにより空気混入部43に流入する空気の量を調整することが可能となっている。換言すれば、空気導入口431bに通じる空気流路の入口部における流路断面積を変更し、これにより空気混入部43に流入する空気の量を調整することが可能となっている。開度調整機構500の具体的な構成については後に説明する。
封止コマ4Eは、シャワープレート4Bの中央に形成されている貫通孔4Bbに嵌め込まれている。封止コマ4Eのうち導入コマ4D側(上方側)の面には、中央に水誘導凹部42eが形成されている。水誘導凹部42eの周囲には、渦室470が形成されている。水誘導凹部42e及び渦室470は、それぞれ、封止コマ4Eのうち上面4a側の面の一部を下面4b側に後退させることによって形成された凹状の空間である。
渦室470は、外側面471、天面472、及び内側面473によって区画されている。外側面471は、凹状の空間である渦室470の外周側を区画する面であって、図3に示したように下面4b及び底壁44cに対して傾斜した面となっている。天面472は、凹状の空間である渦室470の底部(下端側の部分)を区画する面であって、図3に示したように下面4b及び底壁44cに対して平行な面となっている。内側面473は、凹状の空間である渦室470の内周側を区画する面であって、図3に示したように下面4b及び底壁44cに対して垂直な面となっている。
水誘導凹部42eの渦室470側端部には、傾斜面421cが形成されている。傾斜面421cは、水誘導凹部42eの底面から徐々に上昇する傾斜面として形成されている。傾斜面421cは、導入コマ4Dの小径部4Dbの端面421bと対向するように配置されている。端面421bは、水誘導凹部42eの底面と平行に配置されている。傾斜面421cと端面421bとによって、絞り流路421が形成されている。絞り流路421は、絞り部42のうち最も下流側の流路となっている。
給水口41dからシャワー装置F1の内部に水が導入されると、当該水は給水部41及び絞り部42を通り、絞り流路421から空気混入部43に向けて噴射される。また、開度調整機構500から導入された空気は、空気導入配管480及び空気流路431aを通り、空気導入口431bから空気混入部43に導入される。絞り流路421から空気混入部43に向けて水が噴射されると、絞り流路421よりも下流側(外周側)に気液界面が形成され、その気液界面に噴射された水が突入し空気を巻き込むことで気泡混入水が形成される。
上述したように、キャビティ4Aと、シャワープレート4Bと、導入コマ4Dと、封止コマ4Eとを組み上げることで、シャワー装置F1は、給水部41と、絞り部42と、空気混入部43と、吐水部44とを備えるように構成される。
給水部41は、水を供給するための部分であって、給水口41dから導入した水を絞り部42へと供給する部分である。給水口41dには図示しない給水手段(給水ホース等)が接続可能であって、その給水手段から供給される水が給水部41から絞り部42へと供給される。
絞り部42は、給水部41の下流側に設けられており、給水部41よりも流路断面積を減少させ、通過する水の流速を高めて下流側に噴射するための部分である。絞り部42には、上述のように絞り流路421が形成されている。
空気混入部43は、絞り部42の下流側に設けられており、絞り部42を通って噴射される水に空気を混入させて気泡混入水と成すための開口(空気導入口431b)が形成されている部分である。
吐水部44は、空気混入部43の下流側に設けられており、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔443が形成されている部分である。
シャワー装置F1では、空気混入部43において絞り流路421から噴射される水の進行方向を周期的に変動させることで、気泡混入水の空気混入率を周期的に変動させている。この空気混入率の周期的な変動によって、吐水が脈動状態となり、使用者は刺激感を得ることができる。
続いて、図4及び図5を参照しながら、空気混入率を周期的に変動させる原理について説明する。図4及び図5は、絞り流路421近傍の拡大図であり、空気混入率が変動する様子を時系列的に示す図である。図4は、絞り流路421から水を噴射し始めた初期段階であって、空気混入率が最も低下した状態を示す図である。図5は、図4に示した状態から空気混入率が変化して最も高まった状態を示す図である。尚、図4及び図5に示した状態においては、操作部510の操作により、空気導入配管480の端部における開口面積が最大となっている。すなわち、空気導入口431bに通じる空気流路の入口部における流路断面積が最大となっており、空気混入部43に流入し得る空気の量が最大となっている。
図4に示すように、絞り流路421から空気混入部43に向けて噴射された水は、傾斜面421cに沿って図中上方側、すなわち、天壁44b側に向かって進行し、主水流MFを形成する。このとき、空気混入部43における主水流MFの進行方向は、絞り流路421の内部を流れる水の進行方向(点線LNに沿った方向)と一致している。すなわち、傾斜面421cに沿った方向と一致している。
絞り流路421から噴射される主水流MFによって、空気混入部43は、空気導入口431b近傍の部分を除く殆どの部分が満水状態となる。空気混入部43においては、空気導入口431b近傍の空気で満たされた部分と、それよりも下流側であって水で満たされた部分との間に、図示しない気液境界面が形成される。
絞り流路421から噴射される主水流MFと底壁44c付近の水流との間には速度差があり、主水流MFと渦室470とは比較的離れているので、絞り流路421から噴射された水の一部が底壁44cに沿って戻り、渦室470へと導かれる。渦室470に導かれた水は、渦室470を区画する壁面(外側面471、天面472、内側面473)に沿って流れて、渦状の副水流(以下、「渦水流VF」と称する)を発生する。
絞り流路421から水を噴射し始めた初期段階である図4の状態においては、主水流MFの進行方向は天壁44b側に向かう方向となっており、主水流MFと渦室470とは比較的離れている。このため、図4に示したように、渦水流VFは比較的大きく形成される。
渦水流VFが比較的大きく形成されると、渦水流VFの内部に存在する水には外側に向かう力(遠心力)が強く働く。その結果、図4の状態においては、渦水流VFの内部には比較的大きな負圧が生じている(大気圧に比べて低い圧力となっている)。
一方、主水流MFと空気導入口431bとの間の部分においても、空気が主水流MFに引き込まれることによって負圧が生じている。しかし、図4においては、空気混入部43に流入し得る空気の量が最大となるように操作部510が操作されているため、主水流MFと空気導入口431bとの間の部分に生じた負圧を補うように十分な量の空気が空気混入部43に導入される。その結果、主水流MFと空気導入口431bとの間の部分に生じる負圧は小さくなっている(大気圧に近い圧力となっている)。
主水流MFの上下においてそれぞれ以上のような負圧が生じる結果、主水流MFは、渦水流VFの内部に生じた負圧の影響によりその進行方向を変化させる。一方、主水流MFと空気導入口431bとの間の部分に生じた負圧は、その大きさが小さいために、主水流MFの進行方向に対して殆ど影響を与えない。
絞り流路421から噴射された主水流MFは、渦水流VFの内部に生じる大きな負圧に引き寄せられて、空気導入口431bから遠ざかるようにその進行方向を変化させる。主水流MFの進行方向が空気導入口431bから遠ざかるように(渦室470側に近づくように)変化するに従って、渦水流VFは次第に小さくなる。このとき、渦水流VFの最外周における水流の速度は変化せず、主水流MFの流速と略同一である。しかし、渦水流VFが小さくなるに従って、渦水流VFの内部に存在する水に働く力(遠心力)が次第に小さくなり、渦水流VFの内部に生じた負圧も次第に小さくなる(圧力が上昇して大気圧に近づく)。
その変化の途中においては、主水流MFの進行方向を点線LNに沿った方向(絞り流路421の内部を流れる水の進行方向)に戻そうとする上向きの力の大きさと、渦水流VFの内部に生じた負圧が主水流MFを引き寄せようとする下向きの力の大きさとが、同一の状態となる。しかし、当該状態においても主水流MFの進行方向の変化は停止せず、慣性によって空気導入口431bから更に遠ざかるように変化し続ける。図5は、主水流MFの進行方向が変化して、空気導入口431bから最も遠ざかった状態を示している。
図5の状態においては、主水流MFと空気導入口431bとの距離が大きくなったことにより、空気混入部43において形成された気液境界面(不図示)の位置が、図4の状態における気液境界面の位置よりもより外周側(図5では左側)となっている。空気導入口431bから空気混入部43に導入された空気は、主水流MFによって加速されながら気液境界面に向かうが、上記のように気液境界面の位置が外周側に変化したことにより、その加速距離が大きくなっている。その結果、図5の状態においては、空気導入口431bから導入されて水に巻き込まれる空気の量(空気混入量)が最大となっている。換言すれば、散水孔443から吐出される気泡混入水の空気混入率が最も高まっている。
図5の状態においては、主水流MFの進行方向は渦室470側に最も近づいている。このため、渦室470に形成された渦水流VFの大きさは最小となっている。このため、主水流MFの進行方向を点線LNに沿った方向(絞り流路421の内部を流れる水の進行方向)に戻そうとする上向きの力の大きさの方が、渦水流VFの内部に生じた負圧が主水流MFを引き寄せようとする下向きの力の大きさよりも大きくなっている。
その結果、絞り流路421から噴射された主水流MFは、空気導入口431bに近づくようにその進行方向を変化させる。主水流MFの進行方向が空気導入口431bに近づくように変化するに従って、主水流MFが渦室470から離れて行く。その結果、渦水流VFは次第に大きくなる。
その変化の途中においては、主水流MFの進行方向を点線LNに沿った方向(絞り流路421の内部を流れる水の進行方向)に戻そうとする上向きの力の大きさと、渦水流VFの内部に生じた負圧が主水流MFを引き寄せようとする下向きの力の大きさとが、同一の状態となる。しかし、当該状態においても主水流MFの進行方向の変化は停止せず、慣性によって空気導入口431bに更に近づくように変化し続けて、再び図4に示した状態となる。図4においては、主水流MFが空気導入口431bに最も近づいた状態となっている。
図4の状態においては、主水流MFと空気導入口431bとの距離が小さくなったことにより、空気混入部43において形成された気液境界面(不図示)の位置が、図5の状態における気液境界面の位置よりもより内周側(図4では右側)となっている。空気導入口431bから空気混入部43に導入された空気は、主水流MFによって加速されながら気液境界面に向かうが、上記のように気液境界面の位置が内周側に変化したことにより、その加速距離が小さくなっている。その結果、図4の状態においては、空気導入口431bから導入されて水に巻き込まれる空気の量(空気混入量)が最少となっている。換言すれば、散水孔443から吐出される気泡混入水の空気混入率が最も低くなっている。
図4に示した状態に戻った後は、渦水流VFの内部に生じた大きな負圧によって、主水流は空気導入口431bから遠ざかるようにその進行方向を変化させる。その結果、再び図5に示した状態となる。
以上のように、本実施形態に係るシャワー装置F1においては、図4に示した状態と図5に示した状態とが交互に繰り返されることにより、散水孔443から吐出される気泡混入水の空気混入率が周期的に変化する。吐水部44から単位時間あたりに吐出される水の量は常に一定であるから、主水流MFに混入された空気の量が多い状態では、吐水部44から吐出される気泡混入水の流速は速くなる。一方、主水流MFに混入された空気の量が少ない状態では、吐水部44から吐出される気泡混入水の流速は遅くなる。このように、吐水部44からは流速の異なる気泡混入水が交互に吐出される。
その結果、早い流速の気泡混入水は、その直前に吐出された遅い流速の気泡混合水に追いついて、大きな水塊を形成する。一方、当該水塊の後方側には、水の密度が小さい部分が形成される。
このように、散水孔443から吐出される水には粗密が発生し、シャワー装置F1の使用者の肌に対して断続的に着水することとなる。これにより、シャワー装置F1の使用者は脈動的な刺激を受ける。
続いて、シャワー装置F1の使用者が受ける脈動的な刺激の周波数(以下、「脈動周波数」と称する)について説明する。このような脈動周波数は、図4に示した状態と図5に示した状態とが単位時間内に繰り返される回数ということができる。すなわち、主水流MFの進行方向が単位時間内に振動する回数ということができる。
図6は、脈動の周波数を調整する原理を説明するための図である。図6(A)は、図4に示した状態と図5に示した状態とが繰り返されることにより、主水流MFの進行方向が振動する様子を模式的に示している。図6(A)において、矢印AR1は、主水流MFが空気導入口431bに最も近づいた場合における、主水流MFの進行方向を示している。矢印AR2は、主水流MFが空気導入口431bから最も遠ざかった場合における、主水流MFの進行方向を示している。
既に述べたように、図4及び図5に示した状態においては、操作部510の操作により、空気導入配管480の端部における開口面積が最大となっている。すなわち、空気導入口431bに通じる空気流路の入口部における流路断面積が最大となっており、空気混入部43に流入し得る空気の量が最大となっている。
このため、主水流MFと空気導入口431bとの間の部分に生じる負圧は常に小さくなっている(大気圧に近い圧力となっている)。すなわち、主水流MFには、当該負圧による上向きの力(符号VAで示した)が常に働いているが、その大きさは非常に小さい。その結果、既に説明したように、主水流MFは当該部分に生じた負圧の影響をほとんど受けることがなく、渦水流VFの内部に生じた負圧の影響のみによってその進行方向を周期的に変化させる。当該変化の振幅AMは比較的大きく、主水流MFの進行方向の変化の周波数は比較的小さいため、シャワー装置F1の使用者が感じる刺激感は大きい。
これに対し、図6(B)には、操作部510の操作によって空気導入配管480の端部における開口面積を最小とした場合において、主水流MFの進行方向が振動する様子を模式的に示している。
このように操作部510が操作された場合には、空気導入口431bに通じる空気流路の入口部における流路断面積が最小となっており、空気混入部43に流入し得る空気の量が最少となっている。その結果、主水流MFと空気導入口431bとの間の部分に負圧が生じても、当該負圧を補うために十分な量の空気は空気混入部に導入されない。従って、図6(A)に示した場合と異なり、主水流MFと空気導入口431bとの間の部分には比較的大きな負圧が常に生じた状態となる。すなわち、主水流MFには、当該負圧による上向きの力(符号VA)が常に働いており、その大きさは図6(A)の場合に比べて大きい。
その結果、主水流MFの進行方向は、主水流MFと空気導入口431bとの間の部分に生じた負圧(以下、「上側負圧」とも称する」)と、渦水流VFの内部に生じた負圧(以下、「下側負圧」とも称する」)の両方から影響を受けて、その進行方向を変化させる。主水流MFは、上側負圧によって空気導入口431b側に引き寄せられた状態となったまま、下側負圧の影響によってその進行方向を周期的に変化させる。
上記の説明で明らかなように、主水流MFを振動させる力の源は、下側負圧による下向きの力である。ところが、図6(B)においては、上側負圧による力がこれとは反対方向(上向き)の力として主水流MFに対して働いており、下側負圧による下向きの力の一部を相殺している。換言すれば、下側負圧による下向きの力から、上側負圧による上向きの力を差し引いたものが、主水流MFを振動させる力として働いている。
その結果、図6(A)の場合と比較すると、図6(B)においては、主水流MFを振動させる力が小さくなっており、主水流MFの進行方向が周期的に変化する際の振幅AMが小さくなっている。その結果、主水流MFの進行方向の変化の周波数は大きくなっており、シャワー装置F1の使用者が感じる刺激感は図6(A)の場合よりも小さくなっている。
図7を参照しながら更に説明する。図7は、脈動の周波数を調整する原理を説明するための図であって、空気導入配管480の端部における開口面積(以下、単に「開口面積」と称する)と、主水流MFの上下に生じる負圧(上側負圧、下側負圧)との関係を示している。尚、下側負圧の大きさは時間とともに変動するが、図7には当該変動の最大値を示している。また、上側負圧も時間とともに僅かに変動するが、図7には当該変動の最大値を示している。
操作部510の操作によって開口面積が大きくなる程、空気混入部43に流入し得る空気の量が大きくなるため、これに伴って上側負圧の大きさは小さくなる。一方、下側負圧の大きさは、開口面積が変化してもほとんど変化しない。
上記のように、下側負圧による下向きの力から、上側負圧による上向きの力を差し引いたものが、主水流MFを振動させる力として働く。従って、操作部510の操作によって開口面積が大きくなり、上側負圧の大きさが小さくなる程、主水流MFを振動させる力が大きくなるということになる。主水流MFを振動させる力が大きくなると、主水流MF進行方向が周期的に変化する際の振幅AMが大きくなり、主水流MFの進行方向の変化の周波数は小さくなる。その結果、シャワー装置F1の使用者が感じる刺激感は大きくなる。
逆に、操作部510の操作によって開口面積が小さくなり、上側負圧の大きさが大きくなる程、主水流MFを振動させる力が小さくなるということになる。主水流MFを振動させる力が小さくなると、主水流MF進行方向が周期的に変化する際の振幅AMが小さくなり、主水流MFの進行方向の変化の周波数は大きくなる。その結果、シャワー装置F1の使用者が感じる刺激感は小さくなる。
以上のように、本実施形態に係るシャワー装置F1では、操作部510の操作によって開口面積を変更することにより、使用者が感じる刺激感の大きさを調整することが可能となっている。
続いて、開度調整機構500の具体的な構成について、図8を参照しながら説明する。図8(A)に示したように、開度調整機構500は、円筒形状の容器550と、容器550を上方から覆うように配置された操作部510とにより構成されている。
容器550は、その上面に開口560が形成されており、開口560を介して容器550の内部空間と外部空間とが連通している。また、図8(A)においては図示しないが、容器550の下面には空気導入配管480の端部482が接続されており、容器550の内部空間と空気導入配管480の内部とが連通している。このような構成であるから、空気(外気)は開口560から容器550の内部に導入され、空気導入配管480を通じて空気導入口431bに到達し、空気混入部43に供給される。
開口560は、略長方形状に形成された第一領域561と、第一領域561から周方向に沿って延びるように形成された第二領域562とを有している。半径方向における第二領域562の幅は、第一領域561との接続部において最も広くなっており、第一領域561との接続部から周方向に遠ざかるほど狭くなっている。また、半径方向における第一領域561の幅は周方向に沿った位置によらず一様であって、第二領域562の幅のうち最も広い部分よりも更に広い。
操作部510は、円形の板である天板部511と、天板部511の外周から下方に延びる側板部512とを有している。天板部511の外径は、容器550の上面の外径よりも僅かに大きい。このため、操作部510が容器550を上方から覆うように配置されることにより、天板部511の下面が容器550の上面に対して当接している。また、側板部512は容器550の側面に対し、外側から当接している。このような構成により、操作部510は、容器550に対して回転させることが可能となっている。
操作部510の天板部511には、略長方形状に形成された開口520が形成されている。半径方向における開口520の幅は、同方向における第一領域561の幅と等しい。また、周方向における開口520の幅は、同方向における第一領域561の幅と等しい。更に、天板部511の中心から開口520までの距離と、天板部511の中心から第一領域561までの距離とは等しい。
開口560と開口520との形状及び位置関係が上記のようであるから、開口560と開口520とは上面視で少なくとも一部が重なった状態となっており、両者が重なった部分が、容器550の内部空間に外気が流入するための開口OPとなっている。すなわち、このような開口OPの面積が、空気導入配管480の端部における開口面積ということになる。
開口560と第一領域561とが上面視で完全に重なった状態を基準とし、当該状態から操作部510が時計回りに回転した角度を操作量θとすると、開口OPの面積は操作量θに応じて変化する。後に説明するように、開口OPの面積は、操作量θが0の状態において最大となり、操作量θが増加するに従って減少する。
シャワー装置F1の使用者は、操作部510を把持した状態で容器550に対して回転させ、開口OPの面積を変更することにより、空気混入部43に流入する空気の量を調整することができる。すなわち、使用者は操作部510を回転させることにより脈動周波数を変化させ、刺激感の強さを調整することができる。
図9(A)は、空気導入配管480の端部における開口面積(開口OPの面積)と、脈動周波数との関係を示す図である。図9(A)の横軸は開口OPの面積であり、縦軸は脈動周波数である。既に説明したように、開口OPの面積が大きくなる程、空気混入部43に流入し得る空気の量が多くなり、それに伴って脈動周波数は小さくなる。しかし、空気導入口431bから空気混入部43に流入し得る空気の量には上限があるため、開口OPの面積がある程度大きくなるとそれ以上増加せず、飽和してしまうこととなる。
図9(A)はこの様子を示しており、開口OPの面積が0からS1の範囲においては、開口OPの面積が大きくなる程、空気混入部43に流入し得る空気の量が多くなり、それに伴って脈動周波数は大きくなっている。一方、開口OPの面積がS1よりも大きくなると、空気混入部43に流入し得る空気の量は上限に達し、それ以上増加しなくなる。このため、脈動周波数は、開口OPの面積によらず一定(fa)となる。尚、図9(A)におけるS2は、開口OPの面積の最大値を示している。すなわち、操作量θが0の場合における開口OPの面積を示している。
ところで、操作部510を操作する使用者にとっては、操作量θを下限としたときにおいて脈動周波数が最小(刺激感が最大)となり、操作量θを上限としたときにおいて脈動周波数が最大(刺激感が最小)となるような構成であれば、違和感無く刺激感を調整することができるため、好ましい。すなわち、操作量θが変化し得る範囲の全体において刺激感が変化するような構成であることが好ましい。
しかし、本実施形態において操作量θが変化し得る範囲は、その一部において刺激感が変化せずに一定となるような範囲を含んでいる。すなわち、操作量θに伴って変化し得る開口OPの面積の範囲は、刺激感が一定となるS1からS2までの範囲を含んでいる。これは、以下のような理由による。
開口OPの面積が変化し得る範囲を0からS1とする方が、上記のように望ましい。しかし、そのような設計においては、製造誤差等によって、開口OPの面積の上限が実際にはS1よりも小さくなってしまう可能性がある。この場合、操作量θを変化させても、刺激感が最も強い状態(脈動周波数がfaの状態)を形成することができないことになる。
従って、本実施形態においては、刺激感が最も強い状態を確実に形成し得るようにするという観点から、操作量θに伴って変化し得る開口OPの面積の範囲を0からS2としている。
図9(B)は、操作量θと、空気導入配管480の端部における開口面積(開口OPの面積)との関係を示す図である。図9(B)の横軸は操作量θであり、縦軸は開口OPの面積である。ここで、開口OPの面積の変化量を、操作量θの変化量で除したものの絶対値を、「面積変化率」と定義する。すなわち、面積変化率は図9(B)に示したグラフの傾きの絶対値に相当する。
操作量θが0のときにおいては、開口560と第一領域561とが上面視で完全に重なった状態であるから、開口OPの面積は最大(S2)となっている。図8(A)に示したように、この状態から操作部510を時計回りに回転させて操作量θを増加させて行くと、開口560と第一領域561とが上面視で重なった部分の面積が小さくなって行く。すなわち、開口OPの面積が小さくなって行く。半径方向における第一領域561の幅が、同方向における開口560の幅と同一であることに起因して、このときの面積変化率は比較的大きい。
操作量θが更に増加し、開口560が第一領域561から外れた時点(開口560と第一領域561とが重なった領域の面積が0となった時点)における開口OPの面積がS1となるよう、本実施形態に係る開度調整機構500は構成されている。このときの操作量θをθ1とすると、操作量θが0からθ1まで変化する間においては、開口OPの面積が変化しても刺激感は変化しない。
操作量θがθ1の状態においては、開口560は第二領域562のみと上面視で重なっている。図8(B)に示したように、この状態から操作部510を更に時計回りに回転させて操作量θを増加させて行くと、開口560と第二領域562とが上面視で重なった部分の面積が小さくなって行く。すなわち、開口OPの面積が更に小さくなって行く。半径方向における第二領域562の幅が同方向における第一領域561の幅よりも小さく、周方向における第二領域562の幅が同方向における第一領域561の幅よりも大きいことに起因して、このときの面積変化率は比較的小さい。開口OPの面積が最小となった時点における操作量θ、すなわち、操作量θが変化し得る範囲の上限をθ2とすると、操作量θがθ1からθ2まで変化する間においては、開口OPの面積が小さくなるに伴って刺激感は大きくなる。
図9(B)を見れば明らかなように、本実施形態においては、開口OPの面積がS1よりも大きい場合における面積変化率(操作量θが0からθ1までにおけるグラフの傾きの絶対値)が、開口OPの面積がS1以下である場合における面積変化率(操作量θがθ1からθ2までにおけるグラフの傾きの絶対値)よりも大きい。すなわち、開口OPの面積が変化しても刺激感が変化しない領域においては、僅かな操作量θの変化で開口OPの面積が比較的大きく変化するように構成されている。
このため、空気混入部43に供給される空気の量が殆ど変化しないような操作量θの範囲は、操作量θが変化し得る範囲全体(0〜θ2)のうち比較的狭い範囲(0〜θ1)となる。換言すれば、操作量θが変化し得る範囲全体(0〜θ2)のうち殆どの範囲(θ1〜θ2)を、操作量θの変化に伴って刺激感が変化するような範囲としている。その結果、シャワー装置F1の使用者に対して与える違和感を低減している。
開度調整機構500には、操作部510が操作され操作量θが変化した際において、操作量θが所定の大きさとなったところで使用者にクリック感を感じさせ、当該位置で停止させるような機構(不図示)を備えている。具体的には、操作量θがθa、θb、θcとなったところで、それぞれ使用者にクリック感を感じさせるような機構を備えている。θaは、開口OPの面積が最大(S2)となった状態における操作量θであって、本実施形態では0である。θcは、開口OPの面積が最小(0)よりも僅かに大きい状態における操作量θである。θbは、θaとθcとの間に設定された操作量θの値である。
上記のように、操作量θがθaとなった状態における脈動周波数は、最大値であるfaとなる。また、本実施形態では、操作量θがθbとなった状態における脈動周波数をfbとし、操作量θがθcとなった状態における脈動周波数をfcとしたときにおいて、fcとfbとの差が、fbとfaとの差と同一となるように、上記のθa、θb、及びθcの大きさが設定されている。このため、使用者がクリック感を感じた時点で操作部510の回転を停止させることにより、脈動周波数の値を一定量だけ変化させることが可能となっている。
上述したように本実施形態に係るシャワー装置F1は、空気を混入させた気泡混入水を吐出するシャワー装置であって、水を供給する給水部41と、給水部41の下流側に設けられ、通過する水の流速を高めて主水流MFとして下流側に噴射する絞り流路421と、絞り流路421の下流側に設けられ、空気を導入する空気導入口431bを有し、空気導入口431bから導入した空気を主水流MFに混入させて気泡混入水を生成する空気混入部43と、空気混入部43の下流側に設けられ、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔443が形成されている吐水部44と、を備える。
シャワー装置F1は、主水流MFの進行方向を周期的に変化させて気泡混入水に脈動を付与するための脈動付与手段として、主水流MFを挟んで空気導入口431bとは反対側に設けられ、当該位置において渦水流VFを形成する渦室470を有している。渦室470に形成される渦水流VFの大きさが変化することにより、絞り流路421から噴射される主水流MFの進行方向が周期的に変化する。
具体的には、渦水流VFが大きいときにおいては、主水流MFは渦水流VFの内部に生じた大きな負圧に引き寄せられて、空気導入口431bから遠ざかるようにその進行方向を変化させる。一方、渦水流VFが小さいときにおいては、主水流MFは空気導入口431bに近づくように(元の進行方向に戻るように)その進行方向を変化させる。このように、渦水流VFの大きさが周期的に変化すると、それに伴って主水流MFの進行方向も周期的に変化する。その結果、空気混入部43において主水流MFに混入される空気の量が周期的に変化し、気泡混入水には脈動が付与される。
本実施形態に係るシャワー装置F1は、更に、開度調整機構500を備えている。開度調整機構500は、気泡混入水に付与される脈動の周波数を調整するために、空気導入口431bから空気混入部43に導入される空気の量を変更可能とするものである。
空気混入部43のうち、空気導入口431bと主水流MFとの間の部分においては、空気が主水流MFに引き込まれることによって負圧が生じている。しかし、空気導入口431bから導入される空気の量が開度調整機構500によって多くなっている状態では、上記負圧を補うように十分な量の空気が空気混入部43に導入されるため、空気導入口431bと主水流MFとの間の部分に生じる負圧は小さくなる(大気圧に近い圧力となる)。主水流MFの進行方向は、上記負圧の影響をほとんど受けることがなく、渦水流VFの大きさのみに応じて比較的大きく変化する。その結果、主水流MFの進行方向の変化の周波数は小さくなり、シャワー装置F1の使用者が感じる刺激感は大きくなる。
一方、空気導入口431bから導入される空気の量が開度調整機構500によって少なくなっている状態では、上記負圧を補う程の空気が空気混入部43に導入されず、空気導入口431bと主水流MFとの間の部分に生じる負圧は比較的大きくなる。主水流MFは、上記負圧によって空気導入口431b側に引き寄せられた状態となったまま、渦水流VFの大きさに応じてその進行方向を比較的小さく変化させる。その結果、主水流MFの進行方向の変化の周波数は大きくなり、シャワー装置F1の使用者が感じる刺激感は小さくなる。
以上のように、本発明に係るシャワー装置では、空気導入口431bから導入される空気の量を開度調整機構500によって変更することで、主水流MFに与える脈動の周波数を変更し、使用者が感じる刺激感の大きさを調整することが可能となっている。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。