以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置を示す概略斜視図である。
図1に示すように、本実施形態では、液体であるインクが貯留された液体貯留手段1からのインクは、キャリッジ2に搭載された液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド3に供給管4を介して供給される。
このようなインクジェット式記録ヘッド3が搭載されたキャリッジ2は、装置本体7に取り付けられたキャリッジ軸2aの軸方向に移動可能に設けられている。
そして駆動モーター8の駆動力が図示しない複数の歯車及びタイミングベルト8aを介してキャリッジ2に伝達されることで、インクジェット式記録ヘッド3を搭載したキャリッジ2はキャリッジ軸2aに沿って移動される。一方、装置本体7にはキャリッジ軸2aに沿ってプラテン9が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン9に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
このようなインクジェット式記録装置Iでは、キャリッジ2がキャリッジ軸2aに沿って移動されると共にインクジェット式記録ヘッド3からインク滴が吐出されて記録シートSに印刷される。
また、インクジェット式記録装置Iには、キャリッジ2の移動方向の端部であるプラテン9の側方の非印字領域に、インクジェット式記録ヘッド3のノズル開口からインクを吸引して吸引動作を行う吸引手段10が設けられている。
吸引手段10は、ゴム等で形成されたキャップ部材11の吸引口の縁部をインクジェット式記録ヘッド3のインク滴が吐出される液体噴射面に当接し、吸引ポンプ等の吸引装置12に吸引動作を行わせることで、キャップ部材11の内部を負圧として、ノズル開口からインクジェット式記録ヘッド3の液体流路内のインクを気泡と共に吸引して吸引動作を行う。また、キャップ部材11は、吸引動作以外のタイミング、例えば、電源遮断時、待機時、または定期的なタイミング等でノズルを覆い、ノズル近傍のインクの乾燥による増粘を防止する役割も有する。
また、インクジェット式記録装置Iには、キャリッジ2の移動方向の端部であるプラテン9の側方の非印字領域に押圧手段50が設けられている。
本実施形態では、押圧手段50は、吸引手段10が設けられたのと同じ非印字領域に設けられている。なお、押圧手段50は、吸引手段10でインクジェット式記録ヘッド3内のインクを吸引しながら、インクジェット式記録ヘッド3の特定の場所を押圧するものである。このため、本実施形態では、押圧手段50は、吸引手段10が設けられ非印字領域と同じ側の非印字領域に設けられており、インクジェット式記録ヘッド3が非印字領域に移動した際に、インクジェット式記録ヘッド3を挟んで吸引手段10とは反対側に配置されている。
このようなインクジェット式記録装置Iでは、インクが貯留されたインクタンク等の液体貯留手段1が、装置本体7に固定され、液体貯留手段1とインクジェット式記録ヘッド3とは、フレキシブルチューブ等の供給管4を介して接続される。
ここで、上述のようなインクジェット式記録装置Iに搭載されるインクジェット式記録ヘッド3について説明する。図2は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの斜視図であり、図3は、インクジェット式記録ヘッドの上面図及び底面図であり、図4は、図3(a)のA−A′線断面図であり、図5は、図3のB−B′線断面図及びC−C′線断面図である。
図示するように、インクジェット式記録ヘッド3は、液体貯留手段1に供給管4を介して接続されて(図1参照)、液体貯留手段1からのインクが供給される流路部材20と、流路部材20に固定されて流路部材20からのインクが供給されると共にインクがインク滴として吐出されるヘッド本体40と、を具備する。
ヘッド本体40は、流路部材20に固定される面とは反対側に、液体であるインクをインク滴として吐出するノズル開口41が開口する液体噴射面42を具備する。また、ヘッド本体40の図示しない内部にはノズル開口41に連通すると共に流路部材20の流路に連通する液体流路と、液体流路内のインクに圧力変化を生じさせる圧力発生手段等が設けられている。かかる圧力発生手段としては、例えば、電気機械変換機能を呈する圧電材料を有する圧電アクチュエーターの変形によって液体流路の容積を変化させて液体流路内のインクに圧力変化を生じさてノズル開口41からインク滴を吐出させるものや、液体流路内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口41からインク滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気力を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口41からインク滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
本実施形態では、ヘッド本体40にノズル開口41が第2の方向Yに並設されたノズル列を第2の方向Yに直交する第1の方向Xに4つ並設し、各ノズル列から異なるインクを吐出させるようにした。
このようなヘッド本体40にインクを供給する流路部材20は、ヘッド本体40が固定される流路部材本体21と、流路部材本体21のヘッド本体40とは反対面側に固定された弾性部材22と、を具備する。
流路部材本体21は、弾性部材22に比べて高硬度な材料、例えば、金属や樹脂などで形成されている。本実施形態では、例えば、樹脂材料を成形することで流路部材本体21を安価に形成することができる。
また、弾性部材22は、弾性変形可能な材料、例えば、ゴムやエラストマーなどからなる。ここで、弾性変形可能な材料とは、詳しくは後述するフィルター室を画成する第2壁部がフィルター側に近接・離反するように弾性変形が可能な材料を言う。
このような流路部材本体21と弾性部材22とで構成された流路部材20には、液体流路100が設けられている。本実施形態では、ヘッド本体40に異なるインクを吐出するノズル列が4列設けられているため、流路部材20には、異なるインクを供給する独立した4個の液体流路100が設けられている。
この液体流路100は、一端がヘッド本体40の固定された面とは反対面の弾性部材22に開口し、液体貯留手段1に接続された供給管4が接続される。また、液体流路100の他端は、ヘッド本体40側に開口し、ヘッド本体40の内部の図示しない液体流路に連通する。
ここで、液体流路100は、供給管4が接続される接続口101と、接続口101に連通する第1流路102と、第1流路102に連通するフィルター室103と、フィルター室103に連通すると共にヘッド本体40の内部の図示しない液体流路に連通する第2流路104と、を具備する。
接続口101は、弾性部材22を厚さ方向(弾性部材22と流路部材本体21との積層方向である方向Z)に貫通して設けられている。
第1流路102とフィルター室103とは、図5(a)及び図5(b)に示すように、流路部材本体21と弾性部材22との境界に設けられている。具体的には、第1流路102は、弾性部材22の流路部材本体21に固定された面側に凹形状に設けられた溝と、この溝を封止する流路部材本体21の平面(弾性部材22が固定される面)とによって画成されている。すなわち、第1流路102は、弾性部材22によってその3つの面が画成され、流路部材本体21によって1つの面が画成された断面が矩形状を有する。なお、ここで言う第1流路の断面とは、インクの流れる方向に直交する方向の断面のことである。もちろん、第1流路102の形状は、矩形状の断面を有するものに限定されず、円形状、楕円形状、多角形状等の断面を有するものであってもよい。
また、本実施形態では、第1流路102の流路部材本体21によって画成された隔壁に相対向する隔壁を第1壁部24と称する。また、流路部材本体21の弾性部材22が固定された面内において、第1流路102を流れるインクの流方向(以下、単に第1の方向Xとも称する)に直交する方向(以下、単に第2の方向Yとも称する)の第1壁部24の幅を第1の幅W1と称する。すなわち、第1壁部24の第2の方向Yにおける第1の幅W1は、第1流路102の第2の方向Yにおける幅のことである。
フィルター室103は、弾性部材22の流路部材本体21側に形成された凹部と、流路部材本体21の弾性部材22側の面とによって画成されている。このフィルター室103は、第1流路102よりも第2の方向Yにおいて幅広となるように形成されている。
なお、フィルター室103は、第1の方向Xにおいても第1流路102の第2の方向Yの幅よりも幅広で設けられている。
また、4つのフィルター室103は、流路部材本体21に第2の方向Yに並設されている。ちなみに、第2の方向Yで互いに隣り合うフィルター室103は、第1の方向Xで一部が重なる位置に配置されている。
このようなフィルター室103の内部には、インク中に含まれる異物や気泡を除去するためのフィルター25が設けられている。本実施形態では、フィルター25は、流路部材本体21の第2流路104が開口する開口面、つまり、弾性部材22が固定される面に固定されている。
なお、フィルター25としては、例えば、金属や樹脂等の繊維を細かく編むことで複数の微細孔が形成されたシート状のものや、金属や樹脂等の板状部材に複数の微細孔を貫通させたものなどを用いることができる。また、フィルター25は、不織布等を用いてもよく、その材料は特に限定されるものではない。
そして、フィルター室103のフィルター25に相対向する領域には、弾性部材22によって形成された弾性変形可能な第2壁部26が設けられている。第2壁部26は、本実施形態では、フィルター25とは反対側に周囲(弾性部材の他の領域)よりもドーム状(半円形状)に突出して設けられている。ここで言うドーム状とは、周囲から徐々に中心に向かって突出量が増大している形状のことを言う。また、第2壁部26は、本実施形態では、フィルター25よりも若干大きな面積で、且つ相対向するフィルター25を完全に覆う位置に配置されている。
このようなフィルター室103を画成する第2壁部26の第2の方向Yの幅、すなわち、流路部材本体21の弾性部材22が固定された面内において、第1流路102を流れるインクの流方向(第1の方向X)に直交する方向(第2の方向Y)の幅(第2の幅W2)は、第1壁部24の第1の幅W1よりも幅広となるように設けられている。
また、フィルター室103を画成する第2壁部26の厚さ(方向Z)は、第1流路102を画成する第1壁部24の厚さよりも薄い。
このように、フィルター室103を画成する第2壁部26の幅W2を第1壁部24の幅W1よりも幅広とし、且つ第2壁部26の厚さを第1壁部24よりも薄くすることで、フィルター室103を画成する第2壁部26は、第1流路102を画成する第1壁部24よりも剛性が低くなっている。すなわち、本実施形態では、第1壁部24の第1の幅W1よりも第2壁部26の第2の幅W2を幅広に設けることで、第2壁部26が両側の壁によって支持される距離は、第1壁部24によって短くなる。このため、第2壁部26は第1壁部24に比べて剛性が低く、つまり、フィルター25側に向かって弾性変形し易くなっている。また、第2壁部26の厚さを第1壁部24よりも薄くすることで、第2壁部26は第1壁部24に比べて剛性が低く、つまり、フィルター25側に向かって弾性変形し易くなっている。なお、ここで言う剛性とは、力に対する寸法変化(変形)のし辛さの度合いのことを言い、単位変形を起こすのに必要な力(荷重/変形量)で表されるものである。特に本実施形態では、第1壁部24の略中心と第2壁部26の略中心とを比較している。
第2流路104は、流路部材本体21を厚さ方向(流路部材本体21と弾性部材22との積層方向である方向Z)に貫通して設けられており、一端が流路部材本体21の弾性部材22が固定される面に開口してフィルター室103と連通し、他端が流路部材本体21の弾性部材22が固定される面とは反対面側に開口してヘッド本体40の内部の図示しない流路と連通する。
このようなインクジェット式記録ヘッド3では、液体貯留手段1からのインクが供給管4を介して流路部材20に供給され、流路部材20の接続口101、第1流路102、フィルター室103及び第2流路104からなる液体流路100を通過して、ヘッド本体40に供給される。そして、ヘッド本体40内部の液体流路をノズル開口41に至るまでインクで満たした後、外部からの記録信号に従い、圧力発生手段が駆動することによりノズル開口41からインク滴が吐出される。
なお、このようなインクジェット式記録ヘッド3は、本実施形態では、第1の方向Xがキャリッジ2の移動方向になるようにインクジェット式記録装置Iに搭載される。
また、本実施形態の流路部材20では、インクに混入した気泡は、フィルター25によってトラップされ、図7(a)に示すように、フィルター室103内に気泡200として溜まる。そして、フィルター25上にトラップされた気泡200が大きくなると、気泡200がフィルター25を覆い、フィルター25のインクを通過させる有効面積が減少して圧力損失が大きくなり、ヘッド本体40からのインク滴の吐出不良が発生してしまう。このため、フィルター室103内に溜まった気泡200は、所定のタイミングで外部に排出する必要がある。
本実施形態では、インクジェット式記録ヘッド3の弾性部材22によって形成された第2壁部26を押圧手段50によって押圧すると共に、吸引手段10によってノズル開口41側からインクジェット式記録ヘッド3内のインクを吸引することで、フィルター室103に溜まった気泡200をインクと共にノズル開口41から外部に排出させる。
ここで、押圧手段50について図1、図6及び図7を参照して説明する。なお、図6は、本発明の実施形態1に係る押圧手段とインクジェット式記録ヘッドと吸引手段とを示す斜視図であり、図7は、押圧手段による押圧状態を示す図3のB−B′線に相当する断面図である。
図1に示すように、押圧手段50は、インクジェット式記録装置Iの非印刷領域に、インクジェット式記録ヘッド3が非印字領域に移動した際に、インクジェット式記録ヘッド3の流路部材20に相対向する位置となるように装置本体7に固定されている。
具体的には、押圧手段50は、吸引手段10によってノズル開口41からインクジェット式記録ヘッド3の内部のインクを吸引しながら、インクジェット式記録ヘッド3の第2壁部26を押圧可能な位置に設けられている。このため、本実施形態では、押圧手段50は、吸引手段10が設けられ非印字領域と同じ側の非印字領域に設けられており、インクジェット式記録ヘッド3が非印字領域に移動した際に、インクジェット式記録ヘッド3を挟んで吸引手段10とは反対側に配置されている。
このような押圧手段50は、図6に示すように、複数の押圧ピン51と、複数の押圧ピン51の基端部側を保持する駆動手段52と、を具備する。
押圧ピン51は、流路部材20の液体流路100の数に対応して、4本設けられている。各押圧ピン51は、先端面がフィルター室103を画成する第2壁部26に相対向して設けられている。
駆動手段52は、4つの押圧ピン51を独立して軸方向(Z方向)に移動させるものである。このような駆動手段52は、例えば、駆動モーターや電磁石等を駆動力として押圧ピン51を移動させることができるものを用いることができる。
このような押圧手段50によれば、図7(a)に示すように、押圧手段50の押圧ピン51が第2壁部26を押圧していない状態から、図7(b)に示すように、押圧手段50の押圧ピン51が第2壁部26を押圧することで、第2壁部26をフィルター25側に弾性変形させる。これにより、フィルター室103に溜まっていた気泡200は、弾性変形した第2壁部26によってフィルター25に押し付けられて、フィルター25を通過して下流である第2流路104側に排出される。このとき、上述したように、吸引手段10によってノズル開口41側からインクを吸引することで、フィルター25を通過した気泡200は、ノズル開口41からインクと共に吸引手段10に吸引されて、インクジェット式記録ヘッド3の外部に排出される。
このように、押圧手段50によって気泡200を押圧して、気泡200をフィルター25の下流側に移動させて、吸引手段10によって気泡200を吸引させることで、吸引手段10の吸引圧力を低くしてもフィルター室103内に溜まった気泡200を確実に外部に排出させることができる。したがって、インクの無駄な消費を抑制することができると共に、吸引手段10の吸引装置12に比較的低い圧力で動作する安価で小型なものを用いることができる。ちなみに、押圧手段50や弾性変形可能な第2壁部26を設けていない場合には、フィルター25上でトラップされた気泡200をフィルター25を通過させて吸引するには、特に強い吸引力を有する吸引手段10が必要となり、インクの無駄な消費が増大すると共に、吸引力の強い高価で大型な吸引装置12が必要になってしまう。
なお、押圧手段50を用いずに、吸引手段10でノズル開口41側からインクを吸引するだけで、第2壁部26をフィルター25側に向かって弾性変形させることもできるが、本実施形態では、吸引手段10によってノズル開口41側からインクを吸引するだけではなく、押圧手段50で第2壁部26を押圧することで、吸引手段10のみで第2壁部26を弾性変形させるよりもさらに吸引力の低い安価で小型な吸引手段10(吸引装置12)を用いることができる。
その後は、押圧手段50による第2壁部26の押圧を解除すると共に、吸引手段10によるノズル開口41からの吸引動作を終了させることで、フィルター25側に近接するように弾性変形していた第2壁部26は、通常の状態、つまり図7(a)に示すようにフィルター25から離反した状態に戻る。
なお、上述したように、本実施形態のインクジェット式記録装置Iでは、フィルター25上にトラップされた気泡200を外部に排出するために、押圧手段50によって第2壁部26を押圧させると共に、吸引手段10によってノズル開口41からインクを吸引手段10に吸引させるものであるが、例えば、液体貯留手段1を交換した際のインクの充填時や、液体流路100内にインクが充填されていない状態から液体貯留手段1のインクを液体貯留手段1からインクジェット式記録ヘッド3のノズル開口41に至るまで充填する、所謂、初期充填を行う際にも、同様に気泡200がフィルター25でトラップされる虞がある。このため、液体貯留手段1の交換時の吸引や初期充填時の吸引時にも同様に押圧手段50によって第2壁部26をフィルター25側に押圧するようにすれば、低い吸引力を有する吸引手段10(吸引装置12)で液体貯留手段1の交換時の吸引及び初期充填を行わせることができる。
なお、押圧手段50の動作及び吸引手段10の動作の制御は、例えば、キャリッジ2の主走査方向の移動位置を制御する図示しない制御回路等によって行ってもよく、また、液体貯留手段1の着脱や用紙トレーの開閉などの機械的な動作を機械的に伝達することで行うようにしても良い。
なお、本実施形態では、押圧手段50が、各フィルター室103の第2壁部26を個別に押圧することができるため、気泡200が滞留している液体流路100のみをクリーニングすることができる。したがって、クリーニングを要しない液体流路100のインクを吸引することによる無駄なインクの消費を抑制することができる。
また、本実施形態では、フィルター室103を画成する第2壁部26と、フィルター室103よりも上流の液体流路である第1流路102を画成する第1壁部24と、を弾性部材22によって形成し、第2壁部26を第1壁部24の剛性よりも低い剛性となるようにした。このため、第2壁部26のみを弾性部材22で形成し、その他の領域、例えば、第1壁部24等を弾性部材22とは異なる材料で形成する場合に比べて、単一の材料で組み立てすることなく形成することができるため、部品点数を減らして、材料及び組み立てに係る製造コストを低減することができると共に小型化を図ることができる。
また、本実施形態では、第1壁部24と第2壁部26とを弾性部材22で形成したが、押圧手段50による押圧時に、第1壁部24は流路部材本体21側に変形し難く(剛性が高く)なっている。これにより、吸引手段10の吸引動作時に吸引力の低下を抑制することができる。ちなみに、吸引手段10による吸引動作時に第1壁部24が流路部材本体21側に弾性変形してしまうと、第1流路102の流路断面が小さくなり、流路抵抗が大きくなって吸引手段10による吸引力が低下してしまう虞がある。
(実施形態2)
図8は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの上面図及び側面図であり、図9は、実施形態2に係るインクジェット式記録ヘッドの動作を示す図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図示するように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド3Aは、流路部材20と、ヘッド本体40と、押圧手段50Aと、を具備する。すなわち、上述した実施形態1では、インクジェット式記録装置Iに押圧手段50を設けるようにしたが、本実施形態では、押圧手段50Aをインクジェット式記録ヘッド3Aに設けた例である。
具体的には、流路部材20及びヘッド本体40は、上述した実施形態1と同様の構成を有する。
また、押圧手段50Aは、押圧用回転軸53と、押圧用回転軸53の一端部側に偏心状態で保持された偏心カムである押圧カム54と、押圧用回転軸53の他端部側に設けられて押圧用回転軸53を回転駆動させるモーター等の押圧用駆動手段55と、を具備する。
押圧カム54は、本実施形態では、流路部材20の第2壁部26に相対向する位置に、複数の第2壁部26に亘って設けられている。すなわち、押圧カム54は、本実施形態では、4つの第2壁部26を押圧可能な大きさを有する。
このような、押圧手段50Aは、図9(a)に示すように、押圧カム54が第2壁部26を押圧していない状態から、図9(b)に示すように、押圧用駆動手段55の駆動によって押圧用回転軸53を回転させることで押圧カム54を回転させて、第2壁部26を押圧することができる。このため、押圧カム54は、回転によって第2壁部26を押圧した状態と、第2壁部26の押圧を解除した状態とになる位置及び偏心量で配置されている。
また、押圧用駆動手段55は、本実施形態では、流路部材20の流路部材本体21に保持されている。もちろん、押圧用駆動手段55は、キャリッジ2等に搭載されていてもよい。
なお、本実施形態では、押圧カム54を複数(4つ)の第2壁部26に対して1つ設けるようにしたが、特にこれに限定されず、各第2壁部26毎に押圧カム54を設けるようにしてもよい。このように第2壁部26毎に押圧カム54を設ける場合には、押圧カム54を駆動する押圧用駆動手段55等も各押圧カム54毎に設ければよい。
このようなインクジェット式記録ヘッド3Aでは、上述した実施形態1と同様に、押圧手段50Aによって第2壁部26を押圧すると共に、吸引手段10によってノズル開口41からインクを気泡200と共に吸引することで、インクジェット式記録ヘッド3内のクリーニングを行うことができる。
(実施形態3)
図10は、本発明の実施形態3に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の概略斜視図であり、図11は、押圧手段の動作を示すインクジェット式記録ヘッドの側面図であり、図12は、押圧手段の動作を示すインクジェット式記録ヘッドの上面図である。なお、上述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図示するように、本実施形態のインクジェット式記録装置Iは、上述した実施形態1の図1に示すインクジェット式記録装置Iと同様にキャリッジ2が主走査方向に移動するものである。
また、インクジェット式記録装置Iには、印刷領域の外側の非印刷領域に、押圧手段50Bが設けられている。
押圧手段50Bは、装置本体7に固定された複数の固定ピン57を具備する。固定ピン57は、キャリッジ2が主走査方向に移動して、非印刷領域に到達した際に、インクジェット式記録ヘッド3の第2壁部26に先端が接触するように配置されている。これにより、インクジェット式記録ヘッド3が非印刷領域に移動するだけで、固定ピン57が第2壁部26に当接して、第2壁部26をフィルター25側に押圧することができる。
本実施形態では、4つの液体流路100に対応して、4つの固定ピン57を設けるようにした。
また、本実施形態では、上述した実施形態1と同様に、インクジェット式記録ヘッド3は、第1の方向Xがキャリッジ2の移動方向となるように、当該キャリッジ2に搭載される。そして、インクジェット式記録ヘッド3の4つのフィルター室103は、第2の方向Yに並設されているため、フィルター室103に対応して設けられた第2壁部26も同様に第2の方向Yに並設されている。したがって、4つの固定ピン57は、キャリッジ2の移動によって第2壁部26を押圧する際に、他の固定ピン57が押圧する第2壁部26を押圧することなく、それぞれが1つの第2壁部26のみを押圧することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。また、例えば、上述した各実施形態では、第2壁部26を第1壁部24よりも剛性が低くなるように、第2壁部26の第2の幅W2を第1壁部24の第1の幅W1よりも幅広としたが、第2壁部26は、第1壁部24よりも剛性が低ければ、特にこれに限定されない。例えば、第2壁部26となる領域のみに、他の領域(第1壁部24)よりも剛性の低い材料を用いるようにしてもよい。このような例を図13に示す。なお、図13は、本発明の他の実施形態に係る流路部材の要部断面図であり、図3のA−A′線断面図に相当するものである。
図13に示すように、第2壁部26Aは、周囲の平坦面との境界側に一部だけ厚さが薄くなった薄肉部26aを有する。このように、一部に薄肉部26aを有する第2壁部26Aとしても、第1壁部24よりも剛性を低くすることができる。なお、図13に示す例では、上述した実施形態1と同様に、第2壁部26Aの第2の幅W2は、第1壁部24の第1の幅W1よりも幅広とし、さらに薄肉部26aを設けることで、実施形態1の第2壁部26に比べて、第2壁部26Aをさらに変形し易くすることができる。もちろん、第2壁部26Aの第2の幅W2は、第1壁部24の第1の幅W1と同じ幅としても、第2壁部26Aの厚さが薄いため、第2壁部26Aは第1壁部24よりも剛性を低くすることができる。
また、例えば、上述した各実施形態では、第2壁部26をドーム状に設けるようにしたが、その形状は特に限定されるものではない。ここで、第2壁部26の他の例を図14に示す。なお、図14は、本発明の他の実施形態に係る流路部材の要部断面図であり、図3のC−C′線断面図に相当するものである。
図14に示すように、第2壁部26Bは、周縁部側、すなわち、周囲の平坦な領域側にフィルター25から離反する方向に傾斜してフィルター25とは反対側に突出して設けられた周縁部26bと、周縁部26bの中央部側に設けられてフィルター25側にドーム状に突出して設けられた中央部26cと、を具備する。
このような第2壁部26Bでは、押圧手段50、50A、50Bが第2壁部26Bを押圧することで、図14(b)に示すように、第2壁部26Bの中央部26cがフィルター25側に移動するように弾性変形する。このとき、弾性変形した第2壁部26Bは、周縁部26bによってフィルター25とは反対側に突出する方向に付勢されるため、押圧手段50、50A、50Bによる押圧を解除した際に、図14(a)に示す状態にまで戻り易くなっている。すなわち、このような第2壁部26Bの形状とすることで、第2壁部26Bは、押圧手段50、50A、50Bによってフィルター25側に変形し易く、且つ押圧を解除することで、フィルター25とは反対側の元の状態に戻りやすくすることができる。
なお、このような第2壁部26Bであっても、図13に示すように、一部又は全てに亘って厚さを薄くすることで、弾性変形し易くすることもできる。
また、上述した各実施形態では、インクジェット式記録ヘッド3、3Aは、流路部材20とヘッド本体40とを具備し、流路部材20がベース部である流路部材本体21と弾性部材22とを具備するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、流路部材20を構成する流路部材本体21とヘッド本体40とが一体的に設けられていてもよい。すなわち、弾性部材22が一方面に固定されるベース部として、流路部材本体21とヘッド本体40とが一体的に設けられたものを用いてもよい。
また、上述した各実施形態では、弾性部材22に溝状(凹状)に第1流路102及びフィルター室103等を設けたが、特にこれに限定されず、流路部材本体21側に溝状(凹状)の第1流路102及びフィルター室103を設け、平板状の弾性部材22で流路部材本体21の溝を封止するようにしてもよい。もちろん、流路部材本体21と弾性部材22との両方に溝を設けて、両者の境界に第1流路102とフィルター室103とを設けるようにしてもよい。
また、上述した各実施形態では、流路部材20にフィルター25のみが形成されたものを例示したが、流路部材20の内部に所定の圧力で流路を開閉する弁体を設けるようにしてもよく、また、ヒーター等の加熱手段を設けるようにしてもよい。
また、上述した各実施形態では、インクジェット式記録ヘッド3がキャリッジ2に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド3、3Aが固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。また、液体貯留手段1をキャリッジ2に搭載して、液体貯留手段1がインクジェット式記録ヘッド3、3Aと共に主走査方向に移動するインクジェット式記録装置にも本発明を適用することができる。
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を具備する液体噴射装置にも用いることが可能である。