以下、本発明の詳細を説明する。
本発明に係る導電材料は、不飽和二重結合を有する硬化性化合物と、エポキシ基を有する硬化性化合物と、熱カチオン硬化開始剤と、熱アニオン硬化剤と、上記熱カチオン硬化開始剤から発生したカチオンを捕捉可能な化合物と、導電性粒子とを含む。
本発明に係る導電材料における上述した構成の採用により、本発明に係る導電材料を用いて電極間を電気的に接続して接続構造体を得た場合に、得られた接続構造体におけるボイドの発生を抑制することができる。
本発明では、導電材料を2段階で硬化させてもよい。導電材料を2段階で硬化させる場合に、1)1段階目の予備硬化を進行させるための加熱を行いかつ該加熱を中断した後に、2段階目の本硬化を進行させるための加熱を行ってもよく、2)1段階目の予備硬化を進行させるための加熱と2段階目の本硬化を進行させるための加熱とを、連続して行ってもよく、3)所定の温度に1回加熱することで、非加熱部材の温度を上昇させて、1段階目の予備硬化と2段階目の本硬化とを進行させてもよい。
本発明に係る導電材料は、加熱により硬化を進行させた後に、加熱により本硬化させるために用いられる導電材料であることが好ましい。本発明に係る導電材料は、上記不飽和二重結合を有する化合物と上記熱カチオン硬化開始剤とに由来して加熱により硬化を進行させた後に、上記エポキシ基を有する化合物と上記熱アニオン硬化剤とに由来して加熱により本硬化させるために用いられる導電材料であることが好ましい。本発明に係る導電材料は、硬化を進行させるために光の照射を行わない導電材料であることが好ましい。本発明に係る導電材料では、上記不飽和二重結合を有する化合物と上記熱カチオン硬化開始剤とに由来して、熱カチオン硬化開始剤の分解時に発生するラジカルで不飽和二重結合が反応することで、加熱により硬化を進行させることが好ましい。
本発明に係る導電材料は、不飽和二重結合を有する化合物と熱カチオン硬化開始剤とを含む。上記熱カチオン硬化開始剤のカチオンが開裂する際には、カチオン以外にラジカルも発生する。発生したラジカルは、不飽和二重結合を有する化合物を硬化させる。一方で、本発明に係る導電材料はエポキシ基を有する硬化性化合物と熱アニオン硬化剤とをさらに含むが、熱アニオン硬化剤による硬化が、上記カチオンにより阻害されることがある。本発明に係る導電材料は、上記熱カチオン硬化開始剤から発生したカチオンを捕捉可能な化合物を含むので、カチオンが発生したとしても、カチオンが効率的に捕捉されるために、カチオンによる熱アニオン硬化剤による硬化が阻害されにくくなる。
以下、先ず、本発明に係る導電材料に含まれている各成分、及び含まれることが好ましい各成分を詳細に説明する。
(硬化性化合物)
上記導電材料は、硬化性化合物として、不飽和二重結合を有する硬化性化合物と、エポキシ基を有する硬化性化合物とを含む。上記不飽和二重結合を有する硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記エポキシ基を有する硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記不飽和二重結合を有する硬化性化合物としては、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物等が挙げられる。上記導電材料の硬化を容易に制御したり、接続構造体における導通信頼性をさらに一層高めたりする観点からは、上記不飽和二重結合を有する硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物であることが好ましい。上記(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物の使用により、Bステージ化した導電材料全体で硬化率を好適な範囲に制御することが容易になり、得られる接続構造体における導通信頼性がより一層高くなる。
Bステージ化した導電材料層の硬化率を容易に制御し、更に得られる接続構造体の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を1個又は2個有することが好ましい。
上記(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物として、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。上記「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルとを示す。上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも使用可能である。
また、上記不飽和二重結合を有する硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記エポキシ基を有する硬化性化合物は、芳香族環を有することが好ましい。上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。なかでも、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環であることがより好ましい。また、ナフタレン環は、平面構造を有するためにより一層速やかに硬化させることができるので好ましい。
上記エポキシ基を有する硬化性化合物としては、レゾルシノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、芳香族骨格を有する多塩基酸化合物とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエステル型エポキシ化合物、芳香族骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ−(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、1,2:8,9−ジエポキシリモネン、ε−カプロラクトン修飾テトラ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ブタンテトラカルボキシレート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物等が挙げられる。
上記不飽和二重結合を有する硬化性化合物と上記エポキシ基を有する硬化性化合物との配合比は、硬化性化合物との種類に応じて適宜調整される。上記導電材料は、上記不飽和二重結合を有する硬化性化合物と上記エポキシ基を有する硬化性化合物とを重量比(上記不飽和二重結合を有する硬化性化合物の含有量:上記エポキシ基を有する硬化性化合物の含有量)で、1:99〜90:10で含むことが好ましく、5:95〜60:40で含むことがより好ましく、10:90〜40:60で含むことが更に好ましい。
(熱硬化剤)
上記導電材料は、熱硬化剤を含む。上記導電材料は、該熱硬化剤として、熱カチオン硬化開始剤(熱カチオン発生剤)と、熱アニオン硬化剤とを含む。上記熱カチオン硬化開始剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記熱アニオン硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記熱カチオン硬化開始剤として従来公知の熱カチオン硬化開始剤が使用可能である。また、本発明では、上記熱カチオン硬化開始剤は、導電材料を光硬化させるための光カチオン硬化開始剤として用いるのではなく、導電材料を熱硬化させるための熱カチオン硬化開始剤として用いることが好ましい。
上記熱カチオン硬化開始剤として、ヨードニウム塩やスルフォニウム塩が好適に用いられる。例えば、上記熱カチオン発生剤の市販品としては、三新化学社製のサンエイドSI−45L、SI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−150Lや、ADEKA社製のアデカオプトマーSP−150、SP−170等が挙げられる。
好ましい熱カチオン発生剤のアニオン部分としては、PF6、BF4、及びB(C6F5)4が挙げられる。
また、上記熱カチオン硬化開始剤の他の具体例としては、2−ブテニルジメチルスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、2−ブテニルジメチルスルフォニウムテトラフルオロボレート、2−ブテニルジメチルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、2−ブテニルテトラメチレンスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、2−ブテニルテトラメチレンスルフォニウムテトラフルオロボレート、2−ブテニルテトラメチレンスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、3−メチル−2−ブテニルジメチルスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、3−メチル−2−ブテニルジメチルスルフォニウムテトラフルオロボレート、3−メチル−2−ブテニルジメチルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルフォニウムテトラフルオロボレート、3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、4−ヒドロキシフェニルシンナミルメチルスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−ヒドロキシフェニルシンナミルメチルスルフォニウムテトラフルオロボレート、4−ヒドロキシフェニルシンナミルメチルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、α−ナフチルメチルテトラメチレンスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、α−ナフチルメチルテトラメチレンスルフォニウムテトラフルオロボレート、α−ナフチルメチルテトラメチレンスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、シンナミルジメチルスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、シンナミルジメチルスルフォニウムテトラフルオロボレート、シンナミルジメチルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、シンナミルテトラメチレンフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、シンナミルテトラメチレンフォニウムテトラフルオロボレート、シンナミルテトラメチレンフォニウムヘキサフルオロホスフェート、ビフェニルメチルジメチルスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビフェニルメチルジメチルスルフォニウムテトラフルオロボレート、ビフェニルメチルジメチルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、ビフェニルメチルテトラメチレンスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビフェニルメチルテトラメチレンスルフォニウムテトラフルオロボレート、ビフェニルメチルテトラメチレンスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルメチルジメチルスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェニルメチルジメチルスルフォニウムテトラフルオロボレート、フェニルメチルジメチルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルメチルテトラメチレンスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェニルメチルテトラメチレンスルフォニウムテトラフルオロボレート、フェニルメチルテトラメチレンスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、フルオレニルメチルジメチルスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フルオレニルメチルジメチルスルフォニウムテトラフルオロボレート、フルオレニルメチルジメチルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、フルオレニルメチルテトラメチレンスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フルオレニルメチルテトラメチレンスルフォニウムテトラフルオロボレート、及びフルオレニルメチルテトラメチレンスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
上記熱カチオン硬化開始剤は、加熱により無機酸イオンを放出するか、又は加熱によりホウ素原子を含む有機酸イオンを放出することが好ましい。上記熱カチオン発生剤は、加熱により無機酸イオンを放出する成分であることが好ましく、加熱によりホウ素原子を含む有機酸イオンを放出する成分であることも好ましい。
加熱により無機酸イオンを放出する熱カチオン発生剤は、アニオン部分としてSbF6−又はPF6−を有する化合物であることが好ましい。上記熱カチオン発生剤は、アニオン部分としてSbF6−を有する化合物であることが好ましく、アニオン部分としてPF6−を有する化合物であることも好ましい。
上記熱カチオン硬化開始剤のアニオン部分がB(C6X5)4 −で表されることが好ましい。ホウ素原子を含む有機酸イオンを放出する熱カチオン硬化開始剤は、下記式(1)で表されるアニオン部分を有する化合物であることが好ましい。
上記式(1)中、Xはハロゲン原子を表す。上記式(1)中のXは、塩素原子、臭素原子又はフッ素原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
上記熱カチオン硬化開始剤のアニオン部分がB(C6F5)4 −で表されることが好ましい。上記ホウ素原子を含む有機酸イオンを放出する熱カチオン硬化開始剤は、下記式(1A)で表されるアニオン部分を有する化合物であることがより好ましい。
上記熱カチオン硬化開始剤の含有量は特に限定されない。上記不飽和二重結合を有する硬化性化合物40重量部に対して、上記熱カチオン硬化開始剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、更に好ましくは5重量部以上、特に好ましくは10重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下、更に好ましくは20重量部以下である。上記熱カチオン硬化開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電材料が充分に熱硬化する。
上記熱アニオン硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤、及びアミン硬化剤等が挙げられる。なかでも、導電材料を低温でより一層速やかに硬化可能であるので、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤が好ましい。また、加熱により硬化可能な硬化性化合物と上記熱硬化剤とを混合したときに保存安定性が高くなるので、潜在性の硬化剤が好ましい。潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。これらの熱硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されず、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されず、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトールヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
上記アミン硬化剤としては、特に限定されず、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
上記熱アニオン硬化剤の含有量は特に限定されない。上記エポキシ基を有する硬化性化合物100重量部に対して、上記熱アニオン硬化剤の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは7重量部以上、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下、更に好ましくは8重量部以下である。熱アニオン硬化剤の含有量が上記下限以上であると、導電材料を充分に硬化させることが容易である。熱硬化剤の含有量が上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の熱アニオン硬化剤が残存し難くなり、かつ硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
(熱カチオン硬化開始剤から発生したカチオンを捕捉可能な化合物)
上記導電材料は、熱カチオン硬化開始剤から発生したカチオンを捕捉可能な化合物を含む。上記カチオンを捕捉可能な化合物の使用により、予め架橋を適度に進行させることができる結果、接続構造体におけるボイドの発生が抑えられる。
上記熱アニオン硬化剤の表面上に、上記カチオンを捕捉可能な化合物が配置されていることが好ましい。この場合には、カチオンが補足されるため、エポキシ基が反応せずに不飽和二重結合が選択的にラジカルによって反応して、理想の接着弾性率になることなどによって、接続構造体におけるボイドがより一層発生し難くなる。
上記熱アニオン硬化剤の表面が、上記カチオンを捕捉可能な化合物により被覆されていることが好ましい。この場合には効果的にエポキシ基のアニオン重合がおこり、ボイドの発生が抑制される。
上記熱アニオン硬化剤と上記カチオンを捕捉可能な化合物とは、上記熱アニオン硬化剤をコアとし、上記カチオンを捕捉可能な化合物をシェルとするコア−シェル粒子であることが好ましい。上記熱アニオン硬化剤と上記カチオンを捕捉可能な化合物とは、一体でマイクロカプセル硬化剤であることが好ましい。
上記カチオンを捕捉可能な化合物の具体例としては、ポリウレタン、ポリアミド、及びアミノ基又はスルホン基を有する化合物等が挙げられる。上記カチオンを捕捉可能な化合物は、ポリウレタン又はポリアミドであることが好ましい。
上記カチオンを捕捉可能な化合物は、上記カチオンを捕捉可能であるように、ウレタン結合又はアミド結合を有することが好ましく、ウレタン結合を有することがより好ましい。
上記カチオンを捕捉可能な化合物の含有量は特に限定されない。上記熱カチオン硬化開始剤から発生するカチオンの量に応じて、上記カチオンを捕捉可能な化合物は適宜の含有量で用いられる。上記熱カチオン硬化開始剤100重量部に対して、上記カチオンを捕捉可能な化合物の含有量は好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、好ましくは30重量部以下、より好ましくは25重量部以下である。
(導電性粒子)
上記導電材料に含まれている導電性粒子は、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の導電部(導電層など)の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。導電性粒子の導電部(導電層など)の表面が、絶縁性粒子により被覆されていてもよい。これらの場合には、接続対象部材の接続時に、導電層と電極との間の絶縁層又は絶縁性粒子が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、金属を除く無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の基材粒子の表面を金属層で被覆した導電性粒子、並びに実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記基材粒子はコアシェル粒子であってもよい。上記導電層(金属層)は特に限定されない。上記導電部の材料としては、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム及び錫等が挙げられる。上記導電層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層及び錫を含有する金属層等が挙げられる。
電極と導電性粒子との接触面積を大きくし、電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面上に配置された導電層とを有することが好ましく、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有することがより好ましい。電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、少なくとも外側の表面が低融点金属である導電性粒子であることが好ましい。上記導電性粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の少なくとも外側の表面が、低融点金属層であることが更に好ましく、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の少なくとも外側の表面が、低融点金属層であることが特に好ましい。上記導電性粒子は、低融点金属により形成された低融点金属粒子(はんだ粒子など)であってもよい。上記低融点金属粒子は、中心部分及び外表面のいずれも低融点金属により形成されている。
上記低融点金属層は、低融点金属を含む層である。該低融点金属とは、融点が450℃以下の金属を示す。低融点金属の融点は好ましくは300℃以下、より好ましくは160℃以下である。また、上記低融点金属は錫を含むことが好ましい。低融点金属又は低融点金属層に含まれる金属100重量%中、錫の含有量は好ましくは30重量%以上、より好ましくは40%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記錫の含有量が上記下限以上であると、低融点金属と電極との接続信頼性がより一層高くなる。なお、上記錫の含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(堀場製作所社製「ICP−AES」)、又は蛍光X線分析装置(島津製作所社製「EDX−800HS」)等を用いて測定可能である。
導電層の外側の表面が低融点金属である場合には、低融点金属が溶融して電極に接合し、低融点金属が電極間を導通させる。例えば、低融点金属と電極とが点接触ではなく面接触しやすいため、接続抵抗が低くなる。また、少なくとも外側の表面が低融点金属である導電性粒子の使用により、低融点金属と電極との接合強度が高くなる結果、低融点金属と電極との剥離がより一層生じ難くなり、耐湿熱性がより一層高くなる。
上記低融点金属及び上記低融点金属層を構成する低融点金属は特に限定されない。該低融点金属は、錫、又は錫を含む合金であることが好ましい。該合金は、錫−銀合金、錫−銅合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−亜鉛合金、錫−インジウム合金が挙げられる。なかでも、電極に対する濡れ性に優れることから、上記低融点金属は、錫、錫−銀合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることが好ましく、錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることがより好ましい。
また、上記低融点金属は、はんだであることが好ましい。上記低融点金属層は、はんだ層であることが好ましい。該はんだを構成する材料は特に限定されないが、JIS Z3001:溶接用語に基づき、液相線が450℃以下である溶加材であることが好ましい。上記はんだの組成としては、例えば亜鉛、金、鉛、銅、錫、ビスマス、インジウムなどを含む金属組成が挙げられる。なかでも低融点で鉛フリーである錫−インジウム系(117℃共晶)、又は錫−ビスマス系(139℃共晶)が好ましい。すなわち、はんだは、鉛を含まないことが好ましく、錫とインジウムとを含むはんだ、又は錫とビスマスとを含むはんだであることが好ましい。
上記低融点金属と電極との接合強度をより一層高めるために、上記低融点金属は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、鉄、金、チタン、リン、ゲルマニウム、テルル、コバルト、ビスマス、マンガン、クロム、モリブデン、パラジウム等の金属を含んでいてもよい。低融点金属と電極との接合強度をさらに一層高める観点からは、上記低融点金属は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム又は亜鉛を含むことが好ましい。低融点金属と電極との接合強度をより一層高める観点からは、接合強度を高めるためのこれらの金属の含有量は、低融点金属又は低融点金属層に含まれる金属100重量%中、好ましくは0.0001重量%以上、好ましくは1重量%以下である。
上記導電性粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の外側の表面が低融点金属層であり、上記樹脂粒子と上記低融点金属層(はんだ層など)との間に、上記低融点金属層とは別に第2の導電層を有することが好ましい。上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の外側の表面が低融点金属層であり、上記樹脂粒子と上記低融点金属層(はんだ層など)との間に、上記低融点金属層とは別に第2の導電層を有することが好ましい。これらの場合に、上記低融点金属層は上記導電層全体の一部であり、上記第2の導電層は上記導電層全体の一部である。
上記低融点金属層とは別の上記第2の導電層は、金属を含むことが好ましい。該第2の導電層を構成する金属は、特に限定されない。該金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム、並びにこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属として、錫ドープ酸化インジウム(ITO)を用いてもよい。上記金属は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記第2の導電層は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層であることが好ましく、ニッケル層又は金層であることがより好ましく、銅層であることが更に好ましい。導電性粒子は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層を有することが好ましく、ニッケル層又は金層を有することがより好ましく、銅層を有することが更に好ましい。これらの好ましい導電層を有する導電性粒子を電極間の接続に用いることにより、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、これらの好ましい導電層の表面には、低融点金属層をより一層容易に形成できる。なお、上記第2の導電層は、はんだ層などの低融点金属層であってもよい。導電性粒子は、複数層の低融点金属層を有していてもよい。
上記低融点金属層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。上記低融点金属層の厚みが上記下限以上であると、導電性が十分に高くなる。上記低融点金属層の厚みが上記上限以下であると、基材粒子(特に樹脂粒子)と低融点金属層との熱膨張率の差が小さくなり、低融点金属層の剥離が生じ難くなる。
導電層が低融点金属層以外の導電層である場合、又は導電層が多層構造を有する場合には、導電層の全体の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。
導電材料における導電性粒子に適した大きさであり、かつ電極間の間隔をより一層小さくすることができるので、上記導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、より一層好ましくは20μm未満、更に好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下、最も好ましくは5μm未満である。
導電性粒子の平均粒子径は、1μm以上、5μm未満であることが最も好ましい。本発明に係る導電材料の使用により、導電性粒子の平均粒子径が5μm未満であって、導電性粒子が小さくても、接続構造体の接続信頼性を十分に高めることができる。
また、上記樹脂粒子は、実装する基板の電極サイズ又はランド径によって使い分けることができる。
上下の電極間をより一層確実に接続し、かつ横方向に隣接する電極間の短絡をより一層抑制する観点からは、導電性粒子の平均粒子径Cの樹脂粒子の平均粒子径Aに対する比(C/A)は、1.0を超え、好ましくは3.0以下である。また、上記樹脂粒子と上記はんだ層との間に上記第1の導電層がある場合に、はんだ層を除く導電性粒子部分の平均粒子径Bに対する樹脂粒子の平均粒子径Aに対する比(B/A)は、1.0を超え、好ましくは2.0以下である。さらに、上記樹脂粒子と上記はんだ層との間に上記第1の導電層がある場合に、はんだ層を含む導電性粒子の平均粒子径Cのはんだ層を除く導電性粒子部分の平均粒子径Bに対する比(C/B)は、1.0を超え、好ましくは2.0以下である。上記比(B/A)が上記範囲内であったり、上記比(C/B)が上記範囲内であったりすると、上下の電極間をより一層確実に接続し、かつ横方向に隣接する電極間の短絡をより一層抑制できる。
FOB及びFOF用途向け導電材料:
上記導電材料は、フレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))との接続、又はフレキシブルプリント基板とフレキシブルプリント基板との接続(FOF(Film on Film))に好適に用いられる。
FOB及びFOF用途では、電極がある部分(ライン)と電極がない部分(スペース)との寸法であるL&Sは、一般に100〜500μmである。FOB及びFOF用途で用いる樹脂粒子の平均粒子径は10〜100μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が10μm以上であると、電極間に配置される導電材料及び接続部の厚みが十分に厚くなり、接着力がより一層高くなる。樹脂粒子の平均粒子径が100μm以下であると、隣接する電極間で短絡がより一層生じ難くなる。
フリップチップ用途向け導電材料:
上記導電材料は、フリップチップ用途に好適に用いられる。
フリップチップ用途では、一般にランド径が15〜80μmである。フリップチップ用途で用いる樹脂粒子の平均粒子径は1〜15μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が1μm以上であると、該樹脂粒子の表面上に配置されるはんだ層の厚みを十分に厚くすることができ、電極間をより一層確実に電気的に接続することができる。樹脂粒子の平均粒子径が10μm以下であると、隣接する電極間で短絡がより一層生じ難くなる。
COF向け導電材料:
上記導電材料は、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))に好適に用いられる。
COF用途では、電極がある部分(ライン)と電極がない部分(スペース)との寸法であるL&Sは、一般に10〜50μmである。COF用途で用いる樹脂粒子の平均粒子径は1〜10μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が1μm以上であると、該樹脂粒子の表面上に配置されるはんだ層の厚みを十分に厚くすることができ、電極間をより一層確実に電気的に接続することができる。樹脂粒子の平均粒子径が10μm以下であると、隣接する電極間で短絡がより一層生じ難くなる。
上記導電性粒子及び上記樹脂粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
導電性粒子の表面は、絶縁性粒子などの絶縁性材料、フラックス等により絶縁処理されていてもよい。絶縁性粒子などの絶縁性材料、フラックス等は、接続時の熱により軟化、流動することで接続部から排除されることが好ましい。これにより、電極間での短絡が抑えられる。
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは19重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
(フラックス)
上記導電材料はフラックスを含んでいてもよい。該フラックスの使用により、電極表面に形成された酸化膜を効果的に除去できる。この結果、接続構造体における導通信頼性がより一層高くなる。なお、上記導電材料は、フラックスを必ずしも含んでいなくてもよい。
上記フラックスは特に限定されない。該フラックスとして、はんだ接合等に一般的に用いられているフラックスを使用できる。上記フラックスとしては、例えば、塩化亜鉛、塩化亜鉛と無機ハロゲン化物との混合物、塩化亜鉛と無機酸との混合物、溶融塩、リン酸、リン酸の誘導体、有機ハロゲン化物、ヒドラジン、有機酸及び松脂等が挙げられる。上記フラックスは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記溶融塩としては、塩化アンモニウム等が挙げられる。上記有機酸としては、乳酸、クエン酸、ステアリン酸及びグルタミン酸等が挙げられる。上記松脂としては、活性化松脂及び非活性化松脂等が挙げられる。上記フラックスは、松脂であることが好ましい。松脂の使用により、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、上記フラックスは、カルボキシル基を有する有機酸であることが好ましい。カルボキシル基を有する化合物としては、アルキル鎖にカルボキシル基が結合した化合物、芳香環にカルボキシル基が結合した化合物等が挙げられる。これらのカルボキシル基を有する化合物では、アルキル鎖又は芳香環に水酸基がさらに結合していてもよい。アルキル鎖又は芳香環に結合しているカルボキシル基の数は1〜3個であることが好ましく、1又は2個であることがより好ましい。アルキル鎖にカルボキシル基が結合した化合物におけるアルキル鎖の炭素数は、好ましくは3以上、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。アルキル鎖にカルボキシル基が結合した化合物の具体例としては、ヘキサン酸(炭素数5、カルボキシル基1個)、及びグルタル酸(炭素数4、カルボキシル基2個)等が挙げられる。カルボキシル基と水酸基とを有する化合物の具体例としては、リンゴ酸及びクエン酸等が挙げられる。芳香環にカルボキシル基が結合した化合物の具体例としては、安息香酸、フタル酸、無水安息香酸及び無水フタル酸等が挙げられる。
上記松脂はアビエチン酸を主成分とするロジン類である。上記フラックスは、ロジン類であることが好ましく、アビエチン酸であることがより好ましい。この好ましいフラックスの使用により、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。
上記フラックスは、バインダー樹脂中に分散されていてもよく、上記導電性粒子の表面上に付着していてもよい。
上記導電材料100重量%中、上記フラックスの含有量は好ましくは0.5重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。上記フラックスの含有量が上記下限以上及び上限以下であると、電極表面に形成された酸化膜をより一層効果的に除去できる。また、上記フラックスの含有量が上記下限以上であると、フラックスの添加効果がより一層効果的に発現する。上記フラックスの含有量が上記上限以下であると、硬化物の吸湿性がより一層低くなり、接続構造体の信頼性がより一層高くなる。
(他の成分)
上記導電材料は、フィラーを含むことが好ましい。フィラーの使用により、導電材料の硬化物の熱線膨張率を抑制できる。上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム、アルミナ、ガラス、窒化ボロン、窒化ケイ素、シリコーン、カーボン、グラファイト、グラフェン及びタルク等が挙げられる。フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。熱伝導率が高いフィラーを用いると、本硬化時間が短くなる。
上記導電材料は、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、導電材料の粘度を容易に調整できる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
(導電材料の詳細及び用途)
本発明に係る導電材料は、ペースト状又はフィルム状の導電材料であり、ペースト状の導電材料であることが好ましい。ペースト状の導電材料は、導電ペーストである。フィルム状の導電材料は、導電フィルムである。導電材料が導電フィルムである場合、導電性粒子を含む導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されてもよい。本発明に係る導電材料は、異方性導電材料であることが好ましい。本発明に係る導電材料は、電極間の接続に用いられることが好ましい。
本発明に係る導電材料は、導電ペーストであって、ペースト状の状態で接続対象部材上に塗布される導電ペーストであることが好ましい。
上記導電ペーストの25℃での粘度は、好ましくは3Pa・s以上、より好ましくは5Pa・s以上、好ましくは500Pa・s以下、より好ましくは300Pa・s以下である。上記粘度が上記下限以上であると、導電ペースト中での導電性粒子の沈降を抑制できる。上記粘度が上記上限以下であると、導電性粒子の分散性がより一層高くなる。塗布前の上記導電ペーストの上記粘度が上記範囲内であれば、第1の接続対象部材上に導電ペーストを塗布した後に、硬化前の導電ペーストの流動をより一層抑制でき、さらにボイドがより一層生じ難くなる。なお、ペースト状には液状も含まれる。
本発明に係る導電材料は、銅電極を有する接続対象部材を接続するために用いられる導電材料であることが好ましい。導電材料を用いて、銅電極を有する接続対象部材を接続した場合には、接続構造体における銅電極に起因してマイグレーションが生じやすいという問題がある。これに対して、本発明に係る導電材料の使用により、銅電極を有する接続対象部材を接続したとしても、接続構造体におけるマイグレーションを効果的に抑制でき、絶縁信頼性を効果的に高めることができる。
本発明に係る導電材料は、様々な接続対象部材を接着するために使用できる。上記導電材料は、第1,第2の接続対象部材が電気的に接続されている接続構造体を得るために好適に用いられる。
本発明に係る接続構造体は、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、上記第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、上記接続部が、上述した導電材料(異方性導電材料など)により形成されており、上記第1の電極と上記第2の電極とが上記導電性粒子により電気的に接続されている。
本発明に係る接続構造体の製造方法は、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材上に上述した導電材料を配置する工程と、加熱により上記導電材料の硬化を進行させる工程と、硬化が進行される前又は後の上記導電材料上に第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を配置する工程と、加熱により上記導電材料を本硬化させて、上記第1,第2の接続対象部材を接続している接続部を形成し、上記第1の電極と上記第2の電極とが上記導電性粒子により電気的に接続されている接続構造体を得る工程とを備える。
図1に、本発明の一実施形態に係る導電材料を用いた接続構造体の一例を模式的に正面断面図で示す。
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を電気的に接続している接続部3とを備える。接続部3は、硬化物層であり、導電性粒子5を含む導電材料(異方性導電材料など)を硬化させることにより形成されている。
第1の接続対象部材2は上面2a(表面)に、複数の第1の電極2bを有する。第2の接続対象部材4は下面4a(表面)に、複数の第2の電極4bを有する。第1の電極2bと第2の電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材2,4が導電性粒子5により電気的に接続されている。
第1,第2の電極2b,4b間の接続は、通常、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とを導電材料を介して第1,第2の電極2b,4b同士が対向するように重ね合わせた後に、導電材料を硬化させる際に、加圧することにより行われる。加圧により、一般に導電性粒子5は圧縮される。
第1,第2の接続対象部材は、特に限定されない。第1,第2の接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。上記導電材料は、電子部品の接続に用いられる導電材料であることが好ましい。
図1に示す接続構造体1は、例えば、図2(a)〜(c)に示す状態を経て、以下のようにして得ることができる。
図2(a)に示すように、第1の電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、第1の接続対象部材2の上面2aに、複数の導電性粒子5を含む導電材料を配置し、第1の接続対象部材2の上面2aに導電材料層3Aを形成する。このとき、第1の電極2b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。
次に、導電材料層3Aを加熱することにより、導電材料層3Aの硬化を進行させる。図2(a)〜(c)では、導電材料層3Aを加熱して、導電材料層3Aの硬化を進行させて、導電材料層3AをBステージ化している。すなわち、図2(b)に示すように、第1の接続対象部材2の上面2aに、Bステージ化された導電材料層3Bを形成している。Bステージ化により、第1の接続対象部材2とBステージ化された導電材料層3Bとが仮接着される。Bステージ化された導電材料層3Bは、半硬化状態にある半硬化物である。Bステージ化された導電材料層3Bは、完全に硬化しておらず、熱硬化がさらに進行され得る。
導電材料層3Aの硬化を効果的に進行させるために、硬化を進行させるための加熱の温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。
次に、図2(c)に示すように、Bステージ化された導電材料層3Bの上面3aに、第2の接続対象部材4を積層する。第1の接続対象部材2の上面2aの第1の電極2bと、第2の接続対象部材4の下面4aの第2の電極4bとが対向するように、第2の接続対象部材4を積層する。
さらに、第2の接続対象部材4の積層の際に、Bステージ化された導電材料層3Bを加熱することにより、Bステージ化された導電材料層3Bを本硬化させ、接続部3を形成する。但し、第2の接続対象部材4の積層の前に、Bステージ化された導電材料層3Bを加熱してもよい。さらに、第2の接続対象部材4の積層の後にBステージ化された導電材料層3Bを加熱してもよい。
加熱により導電材料層3A又はBステージ化された導電材料層3Bを本硬化させる際の加熱温度は、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
Bステージ化された導電材料層3Bを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧によって第1の電極2bと第2の電極4bとで導電性粒子5を圧縮することにより、第1,第2の電極2b,4bと導電性粒子5との接触面積が大きくなる。このため、導通信頼性が高くなる。さらに、導電性粒子5を圧縮することで、第1,第2の電極2b,4b間の距離が拡がっても、この拡がりに追従するように導電性粒子5の粒子径が大きくなる。
Bステージ化された導電材料層3Bを硬化させることにより、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とが、接続部3を介して接続される。また、第1の電極2bと第2の電極4bとが、導電性粒子5を介して電気的に接続される。このようにして、導電材料を用いた図1に示す接続構造体1を得ることができる。
本発明に係る導電材料は、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、又はフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等に使用できる。なかでも、上記導電材料は、FOG用途又はCOG用途に好適であり、COG用途により好適である。本発明に係る導電材料は、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続、又は半導体チップとガラス基板との接続に用いられる導電材料であることが好ましく、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続に用いられる導電材料であることがより好ましい。
上記第1の電極又は上記第2の電極が、銅電極であることが好ましい。この場合に、上記第1の電極と上記第2の電極との双方が、銅電極であってもよい。上記第1の電極及び上記第2の電極の双方が、銅電極であることが好ましい。
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
実施例及び比較例では、以下の材料を用いた。
(不飽和二重結合を有する硬化性化合物)
熱硬化性化合物A(ダイセルサイテック社製「EBECRYL3708」)
熱硬化性化合物B(ダイセルサイテック社製「EBECRYL3603」)
(エポキシ基を有する硬化性化合物)
熱硬化性化合物1(ビスフェノールA型エポキシ化合物、三菱化学社製「YL980」)
熱硬化性化合物2(レゾルシノール型エポキシ化合物、ナガセケムテックス社製「EX−201」)
熱硬化性化合物3(エポキシ樹脂(DIC社製「EXA−4850−150」)
(熱硬化剤)
熱カチオン発生剤1(下記式(11)で表される化合物、加熱によりリン原子を含む無機酸イオンを放出する化合物)
熱カチオン発生剤2(下記式(12)で表される化合物、加熱によりアンチモン原子を含む無機酸イオンを放出する化合物)
熱カチオン発生剤3(下記式(13)で表される化合物、加熱によりホウ素原子を含む有機酸イオンを放出する化合物)
熱アニオン硬化剤1(旭化成社製「HX−3722」)
熱アニオン硬化剤2(旭化成社製「HX−3922」)
熱アニオン硬化剤とカチオンを捕捉可能な化合物とのコア−シェル粒子1(旭化成社製「HX−3722」、熱アニオン硬化剤とカチオンを捕捉可能な化合物との重量比20:1)
熱アニオン硬化剤とカチオンを捕捉可能な硬化剤とのコア−シェル粒子2(旭化成社製「HX−3922」、熱アニオン硬化剤とカチオンを捕捉可能な化合物との重量比15:1)
(カチオンを捕捉可能な化合物)
カチオンを捕捉可能な化合物1(四国化成工業社製「2MZ−A」)
(他の成分)
接着付与剤:信越化学工業社製「KBE−403」
フラックス:和光純薬工業社製「グルタル酸」
(導電性粒子)
導電性粒子A:ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子(平均粒子径15μm)
導電性粒子B:ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面上に銅層が形成されており、該銅層の表面にはんだ層が形成されている導電性粒子B
[導電性粒子Bの作製方法]
平均粒子径10μmのジビニルベンゼン樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP−210」)を無電解ニッケルめっきし、樹脂粒子の表面上に厚さ0.1μmの下地ニッケルめっき層を形成した。次いで、下地ニッケルめっき層が形成された樹脂粒子を電解銅めっきし、厚さ1μmの銅層を形成した。更に、錫及びビスマスを含有する電解めっき液を用いて、電解めっきし、厚さ1μmのはんだ層を形成した。このようにして、樹脂粒子の表面上に厚み1μmの銅層が形成されており、該銅層の表面に厚み1μmのはんだ層(錫:ビスマス=43重量%:57重量%)が形成されている導電性粒子Bを作製した。
導電性粒子C:SnBiはんだ粒子(三井金属社製「DS−10」、平均粒子径(メディアン径)12μm)
(実施例1〜11及び比較例1〜7)
下記の表1,2に示す成分を下記の表1,2に示す配合量で配合して、異方性導電ペーストを得た。
(評価)
(1)接続構造体の作製
L/Sが100μm/100μmの銅電極パターン(銅電極厚み10μm)を上面に有するガラスエポキシ基板(FR−4基板)を用意した。また、L/Sが100μm/100μmの銅電極パターン(銅電極厚み10μm)を下面に有するフレキシブルプリント基板を用意した。
上記ガラスエポキシ基板の上面に、得られた異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層の硬化を進行させるために、70℃に加熱した。次に、硬化が進行した異方性導電ペースト層の上面に上記フレキシブルプリント基板を、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、フレキシブルプリント基板の上面に加圧加熱ヘッドを載せ、2.0MPaの圧力をかけて、異方性導電ペースト層を185℃で本硬化させ、接続構造体を得た。
(2)上下の電極間の導通試験
得られた接続構造体の上下の電極間の接続抵抗をそれぞれ、4端子法により測定した。2つの接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。導通試験を下記の基準で判定した。
[導通試験の判定基準]
○○:接続抵抗の平均値が8.0Ω以下
○:接続抵抗の平均値が8.0Ωを超え、10.0Ω以下
△:接続抵抗の平均値が10.0Ωを超え、15.0Ω以下
×接続抵抗の平均値が15.0Ωを超える
(3)ボイドの有無
得られた接続構造体において、異方性導電ペースト層により形成された硬化物層にボイドが生じているか否かを、透明ガラス基板の下面側から目視により観察した。ボイドの有無を下記の基準により判定した。
[ボイドの有無の判定基準]
○○:ボイドがない
○:小さなボイドが1箇所のみにある
△:小さなボイドが2箇所以上ある
×:大きなボイドがあり使用上問題がある
結果を下記の表1,2に示す。