<実施形態1>
図1から図11を参照して実施形態1を説明する。本実施形態では、加工対象とされる銅管(金属管の一例)P1を曲げ加工するための加工装置1に用いられる固定治具10を例示する(図1参照)。この固定治具10は、加工装置1を用いて銅管P1の一部を曲げ加工する際、銅管P1の一部を加工装置1に対して固定するための治具である。
先に加工装置1の構成について説明する。以下では、図1の上側を加工装置1の上方とし、図1の右下側を加工装置1の右方とし、図1の左下側を加工装置の前方として説明する。加工装置1は、図1に示すように、三脚20によって支持される本体部22と、曲げ型30と、クランプ40と、クランプ固定台42と、クランプ台44と、ハンドル50とを備えている。
本体部22は、略箱型とされ、その下側から三脚20が伸びる構成とされている。このため加工装置1は、容易に設置可能となっている。また、本体部22には、図1に示すように、当該本体部22の上面のうち左側に偏った部位から上方に伸びる回転軸部24と、当該本体部22の右側側面から軸状にわずかに突出する曲げ型用シャフト26が設けられている。回転軸部24と曲げ型用シャフト26はいずれもその軸周りに回転可能とされ、本体部22内に設けられた図示しない回転機構によって、曲げ型用シャフト26を回転させることで回転軸部24が回転するようになっている。
曲げ型30は、所定の厚みを有する半円形の円板状とされ、その直径部分の中央部が本体部22から伸びる回転軸部24に支持されている。従って、曲げ型用シャフト26を介して回転軸部24が回転することで、曲げ型30が回転軸部24の軸周りに回転するようになっている。また、曲げ型30における円弧状部分の周面には、図1に示すように、当該周面に沿って溝状に伸びる第1溝状部30Aが設けられている。この第1溝状部30Aは、加工対象とされる銅管P1の外周面に沿って円弧状に窪んだ形で設けられている。
さらに、曲げ型30のうち、その直径部分の回転軸部24に支持される部位から円弧状部分側に偏った部位には、図1に示すように、曲げ型30の側方に向かって円柱状にわずかに突出する突出部30Bが設けられている。なお、回転軸部24の軸周りに回転可能とされる曲げ型30は、加工対象とされる銅管P1を曲げ加工する前の状態(初期状態)では、図1に示すように、上記突出部30Bが当該銅管P1の管軸方向に沿って前方に伸びるような姿勢とされている。
クランプ40は、図1に示すように、平面視矩形のブロック状とされ、その両側面に溝状に伸びる第2溝状部40Aがそれぞれ設けられている。この第2溝状部40Aは、加工対象とされる銅管P1の外周面に沿って円弧状に窪んだ形で設けられている。なおクランプ40は、各第2溝状部40Aの伸びる方向が、加工対象とされる銅管P1の管軸方向と一致するような姿勢とされている。
クランプ台44は、図1に示すように、本体部22の上面において左右方向に延在する形で設けられ、その内部に左右方向に伸びるボールねじ44Aが配されている。ハンドル50は、本体部22の右側方に配されており、クランプ用シャフト27(図12参照)を介してボールねじ44Aに接続されている。そしてこのハンドル50を回転させることで、ボールねじ44Aを回転できるようになっている。なおハンドル50は、クランプ用シャフトから取り外し可能とされるとともに、曲げ型用シャフト26に対して取り付け可能とされている。
クランプ固定部42は、図1に示すように、クランプ台44上に配され、クランプ40を上下方向から挟み込む形で当該クランプ40を支持している。またクランプ固定部42の底面には、ボールねじ44Aに螺合された図示しないボールナットが固定されている。そして、ボールねじ44Aが回転されることで、クランプ固定部42をクランプ台44の延在方向(左右方向)に沿って移動できるようになっている。このため、加工装置1では、ハンドル50を回転させることで、クランプ固定部42を介してクランプ40を左右方向に移動させることができる。
以上のような構成とされた加工装置1では、銅管P1の外周面の一部を曲げ型30の第1溝状部30Aに当接させた状態でクランプ40を移動させ、銅管P1の外周面の他の一部をクランプ40の第2溝状部40Aに当接させることで、銅管P1の外周面を曲げ型30とクランプ40との間に挟持できるようになっている。銅管P1の外周面がこのように挟持された状態では、曲げ型30に設けられた突出部30Bの中心軸と銅管P1の管軸とが加工装置1の左右方向において並ぶようになっている。
以上が加工装置1の構成であり、続いてこの加工装置1に用いられる固定治具10について説明する。固定治具10は、図2から図4に示すように、装置側係止部12と、管側係止部14とを備えている。固定治具10は、これらの装置側係止部12と管側係止部14とが所定の厚みで一体成形された金属製(好ましくは炭素鋼製)の部材とされる。
装置側係止部12は、図2及び図3に示すように、固定治具10の厚み方向に貫通する挿通孔12Aを有している。この挿通孔12Aの開口径は加工装置1の曲げ型30に設けられた突出部30Bの径とほぼ同径とされている。固定治具10の装置側係止部12は、この挿通孔12Aに突出部30Bが挿通されることで、加工装置1と係止されるようになっている。なお、図3に示す点A1は、挿通孔12Aに突出部30Bが挿通された際に、突出部30Bの中心軸と一致する点である。
管側係止部14は、装置側係止部12から鉤爪状に伸びており、鉤爪状に湾曲する部位の内面に、銅管P1を曲げ加工する際に加工装置1上に配される銅管P1の外周面に当接する当接面14Aを有している。管側係止部14は、この当接面14Aに銅管P1の外周面が当接されることで、銅管P1と係止されるようになっている。なお、図3に示す点A2は、当接面14Aに銅管P1の外周面が当接された際に、銅管P1の管軸と一致する点である。
管側係止部14の当接面14Aは、詳しくは、管側係止部14の内面のうち、図3の符号14A1で示す部位から符号14A2で示す部位に至る範囲の面である。そして、この符号14A1で示す部位と符号14A2で示す部位との間の距離D1は、加工装置1上に配される銅管P1の管径と一致するものとされる。また、符号14A1で示す部位から符号14A2で示す部位に至るまでの管側係止部14の内面に沿った長さ寸法は、銅管P1の管軸周りの半周の長さ寸法と一致するものとされる。従って、当接面14Aは、銅管P1の管軸周りの半周の長さの外周面に当接するようになっている。
また、管側係止部14は、図3に示すように、その先端部14Bと装置側係止部12との間の隙間の距離D2が加工装置1上に配される銅管P1の管径D1以上の寸法とされている。このため、銅管P1の外周面側から管側係止部14の先端部14Bと装置側係止部12との間の隙間に銅管P1を通すことができるようになっている。なお、管側係止部14は、図3に示すように、その先端部14Bに、当接面14Aに当接された状態の銅管P1の接線方向(図3の左右方向)に沿って当接面14Aから延伸する延伸面14Cを有している。
ここで、本実施形態の固定治具10は、図3に示すように、平面視において、点A1と点A2とを結ぶ線分L1と、符号14A1で示す部位から符号14A2で示す部位とを結ぶ線分L2とが直交するような形状とされている。固定治具10がこのような形状とされることで、突出部30Bと銅管P1とが加工装置1の左右方向に並んだ状態において、装置側係止部12と加工装置1の突出部30Bとが係止されるとともに管側係止部14と銅管P1とが係止されると、銅管P1の外周面のうち右側半分の外周面が管側係止部14の当接面14Aに当接するようになっている。
以上が本実施形態に係る固定治具10の構成であり、続いてこの固定治具10を用いて上述した加工装置1で銅管P1を曲げ加工する際の加工手順について説明する。ここでは、加工対象とされる銅管P1の延伸方向の寸法を約4mとし、銅管P1の延伸方向における真ん中の部位(両管端から約2m離れた部位)を曲げ加工する際の加工手順について説明する。以下では、図6、図8、図10、図11、図13の上側を、加工装置1及び銅管P1の上方とし、図5、図7、図9、図10、図12、図13の右側、及び図6、図8、図11の右下側を、加工装置1及び銅管P1の右方とし、図5、図7、図9、図12の下側、及び図6、図8、図12の左下側を、加工装置1及び銅管P1の前方として説明する。
まず、予め銅管P1の後方側の端部を図示しない固定部材によって固定しておく。次に、加工対象とされる銅管P1について、その延伸方向(管軸方向)を前後方向に沿わせた姿勢で、曲げ型30の円弧上部位の一端部30C(図5及び図6参照)において第1溝状部に銅管P1の外周面を当接させる。このとき、銅管P1の外周面のうち曲げ加工される部位の一端部とされる部位の外周面を第1溝状部30Aに当接させる。従って、本実施形態では、銅管P1の両管端から約2m離れた部位における銅管P1の外周面を第1溝状部30Aに当接させる。
次に、ハンドル50を手動で回転させ、クランプ40を左側に移動させることで、クランプ40の各第2溝状部40Aのうち銅管P1と対向する第2溝状部40Aを銅管P1の外周面に当接させる。そして、さらにハンドル50を回転させることで、図5及び図6に示すように、曲げ型30の第1溝状部30Aとクランプ40の第2溝状部40Aとの間に銅管P1の外周面を挟持させる。
次に、固定治具10を用意し、銅管P1のうち曲げ型30の突出部30Bよりも前方に位置する部位において、銅管P1の外周面側から固定治具10の管側係止部14の先端部14Bと装置側係止部12との間の隙間に銅管P1を通し、図7及び図8に示すように、銅管P1の管軸周りの半周の長さの外周面に管側係止部14の当接面14Aを当接させる。これにより、固定治具10の管側係止部14と銅管P1とが係止される。
次に、管側係止部14の当接面14Aを銅管P1の外周面に当接させた状態で固定治具10を回転させ、前後方向において装置側係止部12の挿通孔12Aの開口中心(図3に示す点A1)と突出部30Bの中心軸とを一致させる(図8参照)。そして、管側係止部14の当接面14Aを銅管P1の外周面に当接させた状態で固定治具10を後方に移動させ、図9から図11に示すように、装置側係止部12の挿通孔12Aに曲げ型30の突出部30Bを挿通させる。このとき、固定治具10が半円形の曲げ型30の直径部分と当接するまで挿通孔12Aに突出部30Bを挿通させる(図9及び図10参照)。
これにより、固定治具10の装置側係止部12と曲げ型30の突出部30Bとが係止され、銅管P1が固定治具10を介して加工装置1に固定される。その後、ハンドル50をクランプ用シャフト27から取り外すとともに、曲げ型用シャフト26に取り付ける。そして、ハンドル50をゆっくりと回転させ、曲げ型30を回転軸部24の軸周りの右回転方向にゆっくりと略90°回転させる。ここで、加工装置1に固定された銅管P1の部位では、銅管P1の外周面のうち右側半分の外周面が管側係止部14の当接面14Aと当接しているので、曲げ型30が右回転方向に回転することにより突出部30Bが左側に移動すると、当該部位が固定治具10と共に移動する。
そして、曲げ型30が右回転方向に回転することにより、加工装置1に固定された銅管P1の部位の移動に伴って、曲げ型30の第1溝状部30Aとクランプ40の第2溝状部40Aとの間の銅管P1の部位が半円形とされた曲げ型30の輪郭線に沿って変形し、図12及び図13に示すように、略90°曲がった状態に曲げ加工される。以上の手順により、銅管P1を曲げ加工することができる。なお、銅管P1の曲げ加工後、固定治具10を銅管P1及び突出部30Bから取り外す際は、上記と逆の手順によって取り外すことができる。
以上説明したように本実施形態の固定治具10では、管側係止部14の先端部14Bと装置側係止部12との間の隙間の距離D2が加工装置1上に配される銅管P1の管径D1以上の寸法とされているため、銅管P1の外周面側から管側係止部14の先端部14Bと装置側係止部12との間の隙間に銅管P1を通すことができ、装置側係止部12と管側係止部14とによって囲まれる空間において管側係止部14と銅管P1とを係止させることができる。このため、本実施形態のように銅管P1の管軸方向における途中の部位を曲げ加工する場合、従来の固定治具のように銅管の管端側から固定治具と当該銅管とを係止させた後に当該銅管の管軸方向に沿って上記途中の部位の近傍まで固定治具を移動させなくとも、本実施形態の固定治具10は、上記途中の部位において銅管P1の外周面側からその管側係止部14と当該銅管P1とを直接係止させることができる。このように本実施形態の固定治具10は、従来の固定治具と比べて、銅管P1の曲げ加工における作業性を向上させることができる。
また本実施形態の固定治具10では、管側係止部14の当接面14Aが、銅管P1を曲げ加工する際に加工装置1上に配される銅管P1の管軸周りの半周の長さの外周面に当接するものとされている。ここで、管側係止部14の当接面14Aが銅管P1の管軸周りの半周より小さい外周面に当接する場合、銅管P1を曲げ加工する際に銅管P1に加わる荷重に偏りが生じ、銅管P1の管側係止部14に係止される部位の断面が変形することがある。一方で、管側係止部14の当接面14Aが銅管P1の管軸周りの半周より大きな外周面に当接する場合、銅管P1が管側係止部14に係止された状態の固定治具10を銅管P1から外し難いことがある。これに対し本実施形態では、このような銅管P1に加わる荷重の偏りを防止ないし抑制しながら、固定治具10を銅管P1から外し易いものとすることができる。
また本実施形態の固定治具10では、管側係止部14が、当接面14Aに当接された状態の銅管P1の接線方向に沿って当接面14Aから延伸する延伸面14Cを有している。ここで、例えば肉厚の銅管を曲げ加工する場合、銅管を曲げ加工する際に固定治具10の管側係止部14のうち当接面14Aの両端部に局所的に過度の荷重が加わり、当接面14Aの両端部が変形することがある。これに対し本実施形態では、銅管P1を曲げ加工する際に当接面14Aの両端部に加わるこのような荷重が延伸面14C側に分散されるため、肉厚の銅管を曲げ加工する場合であっても、当接面14Aの両端部が変形することを防止ないし抑制することができる。
ところで、外周面が断熱材等で覆われた銅管を曲げ加工の加工対象とする場合、銅管の管端側から固定治具と当該銅管とを係止させる従来の固定治具では、断熱材等で覆われた銅管の外周面を固定治具に係止させることで断熱材が潰れてしまい、断熱効果を失う虞があるため、断熱材の全体を銅管から取り外す必要がある。これに対し本実施形態の固定治具10では、上述したように銅管P1の外周面側から銅管P1に係止させることができるため、外周面が断熱材等で覆われた銅管P1を加工対象とする場合であっても、固定治具10によって係止される部位及び曲げ加工される部位の断熱材のみを切断等によって取り除くことで、銅管P1の曲げ加工を行うことができる。このため、外周面が断熱材等で覆われた銅管P1を曲げ加工する場合の作業性を向上させることができる。
<実施形態2>
図14から図16を参照して実施形態2を説明する。実施形態2は固定治具110の装置側係止部112に設けられた挿通孔112Aの開口の形状が実施形態1のものと異なっている。固定治具110のその他の部位の構成、及び加工装置1の構成については実施形態1のものと同様であるため、構造、作用、及び効果の説明は省略する。なお、図14において、図3の参照符号に数字100を加えた部位は、実施形態1で説明した部位と同様である。
実施形態2に係る固定治具110は、図14に示すように、装置側係止部112に設けられた挿通孔112Aの開口の形状が、平面視において(加工装置1上に配される銅管P1の管軸方向から視て)略楕円状とされている。略楕円状とされる挿通孔112Aの開口の短軸方向における開口径は、実施形態1の固定治具10と同様に、加工装置1の突出部30Bの径とほぼ同等とされる。一方で、略楕円状とされる挿通孔112Aの開口の長軸方向における開口径は、加工装置1の突出部30Bの径よりも長くされており、詳しくは、突出部30Bの径の約3倍から約4倍の長さとされている。
次に、本実施形態の固定治具110を用いて加工装置1で銅管P1を曲げ加工する際の加工手順について説明する。この加工手順では、本実施形態の固定治具110が上記のような構成とされることで、固定治具110の銅管P1及び加工装置1の突出部30Bに対する係止態様が実施形態1のものと異なっている。なお、加工対象とされる銅管P1、及び曲げ加工される銅管P1の部位は実施形態1と同様である。
まず、実施形態1で説明した手順と同様に、銅管P1の後方側の端部を固定した後、加工対象とされる銅管P1について、曲げ型30の第1溝状部30Aとクランプ40の第2溝状部40Aとの間に銅管P1の外周面を挟持させる。次に、固定治具110を用意し、固定治具110が半円形の曲げ型30の直径部分と当接するまで装置側係止部112の挿通孔112Aに曲げ型30の突出部30Bを挿通させる。これにより、固定治具110の装置側係止部112と曲げ型30の突出部30Bとが係止される。またこのとき、図15に示すように、略楕円状とされた挿通孔112Aの開口のうち上側部分に突出部30Bが当接した状態とする。この状態では、管側係止部114の先端部114Bと装置側係止部112との間の隙間に銅管P1が位置する(図15参照)。
次に、挿通孔112Aに突出部30Bが挿通された状態で、固定治具110の装置側係止部112を挿通孔112Aの開口の長軸方向に沿って上側に移動させ(図15で示す矢印参照)、略楕円状とされた挿通孔112Aの開口のうち下側部分に突出部30Bが当接した状態とする(図16参照)。また、これに伴って、固定治具110の管側係止部114を下側に移動させる(図15で示す矢印参照)。これにより、図16に示すように、銅管P1の管軸周りの半周の長さの外周面に管側係止部114の当接面114Aが当接される。
その結果、固定治具110の管側係止部114と銅管P1とが係止され、銅管P1が固定治具110を介して加工装置1に固定される。その後、実施形態1で説明した手順と同様に、曲げ型30を回転させることで、曲げ型30の第1溝状部30Aとクランプ40の第2溝状部40Aとの間の銅管P1の部位を曲げ加工することができる。なお、銅管P1の曲げ加工後、固定治具110を銅管P1及び突出部30Bから取り外す際は、上記と逆の手順によって取り外すことができる。
ところで、上記のような装置側係止部や管側係止部を備える固定治具では、装置側係止部に設けられた挿通孔の開口の形状及び大きさによっては、管側係止部の当接面が銅管P1の管軸周りの半周の長さの外周面に当接する場合、装置側係止部の挿通孔に加工装置1の突出部30Bを挿通させた状態で、固定治具を突出部30B周りに回転させても、管側係止部が銅管P1の外周面に干渉し、管側係止部の当接面を銅管P1の管軸周りの外周面に当接させ難いことがある。
これに対し本実施形態では、上述したように、挿通孔112Aに加工装置1の突出部30Bが挿通された状態で、略楕円状とされた挿通孔112Aの開口の範囲内において固定治具110を上下方向(銅管P1の管軸方向と直交する方向)に移動させることができるので、管側係止部114の当接面114Aが銅管P1の管軸周りの半周の長さの外周面に当接する場合であっても、挿通孔112Aに突出部30Bを挿通させた状態で、管側係止部114の当接面114Aを銅管P1の管軸周りの外周面に当接させることができる。このため、固定治具110を用いて銅管P1を加工装置1に固定させる際の作業性を向上させることができる。
<実施形態2の変形例>
図17及び図18を参照して実施形態2の変形例を説明する。本変形例は、固定治具110の係止態様のみが実施形態2のものと異なっている。詳しくは、固定治具110を加工装置1の突出部30Bと銅管P1とに係止させる際の固定治具110の向きが実施形態2と異なっている。固定治具110の構成、加工装置1の構成、及び固定治具110の係止を除く銅管P1の加工手順については実施形態1のものと同様であるため、構造、作用、効果、及び手順の説明は省略する。
本変形例は、固定治具110の係止態様が実施形態2と比べて上下逆の向きとされる。即ち、固定治具110の挿通孔112Aに曲げ型30の突出部30Bを挿通させる際、図17に示すように、略楕円状とされた挿通孔112Aの開口のうち下側部分に突出部30Bが当接した状態とする。この状態では、管側係止部114の先端部114Bと装置側係止部112との間の隙間に銅管P1が位置する(図17参照)。
次に、挿通孔112Aに突出部30Bが挿通された状態で、固定治具110の装置側係止部112を挿通孔112Aの開口の長軸方向に沿って下側に移動させ(図17で示す矢印参照)、略楕円状とされた挿通孔112Aの開口のうち上側部分に突出部30Bが当接した状態とする(図18参照)。また、これに伴って、固定治具110の管側係止部114を上側に移動させる(図17で示す矢印参照)。これにより、図18に示すように、銅管P1の管軸周りの半周の長さの外周面に管側係止部114の当接面114Aが当接される。その結果、固定治具110の管側係止部114と銅管P1とが係止され、銅管P1が固定治具110を介して加工装置1に固定される。
以上のように本変形例では、銅管P1が固定治具110を介して加工装置1に固定された状態で、略楕円状とされた挿通孔112Aの開口のうち上側部分が突出部30Bと当接する。このため、銅管P1を曲げ加工する際に、略楕円状とされた挿通孔112Aの開口に沿って固定治具110の装置側係止部112が下方に位置ずれすることを防止ないし抑制することができ、固定治具110を用いて銅管P1を加工装置1に固定させる際の作業性をより向上させることができる。
<実施形態3>
図19から図21を参照して実施形態3を説明する。本実施形態は、固定治具210の構成が実施形態2のものと一部異なっている。固定治具210の他の部位の構成、及び加工装置1の構成については実施形態2のものと同様であるため、構造、作用、効果、及び手順の説明は省略する。なお、図19において、図14の参照符号に数字100を加えた部位は、実施形態1で説明した部位と同様である。
実施形態3に係る固定治具210は、図19に示すように、実施形態2の固定治具110と同様に装置側係止部212の挿通孔212Aが略楕円状とされているものの、実施形態2の固定治具110と比べて挿通孔212Aの開口の下側部分が管側係止部214側に向かってわずかに切り欠かれた構成となっている(以下、この切り欠かれた部位を「切欠部212B」と称する)。この切欠部212Bは、加工装置1の突出部30Bの外周面に沿った円弧状とされている。
また、固定治具210は、図19に示すように、実施形態2の固定治具110に比べ、管側係止部214の当接面214Aが内側に向かってわずかに窪んだ構成となっている。なお、図19における二点鎖線は、実施形態2の固定治具110における挿通孔112Aの開口の輪郭線、及び当接面114の輪郭線をそれぞれ示している。
上記のような構成とされた本実施形態の固定治具210は、この固定治具210を用いて加工装置1で銅管P1を曲げ加工する際、以下のような手順で加工装置1の突出部30Bと銅管P1とに係止される。即ち、実施形態2で説明した手順と同様に、固定治具210の挿通孔212Aに曲げ型30の突出部30Bを挿通させ、略楕円状とされた挿通孔212Aの開口のうち上側部分に突出部30Bが当接した状態とする。この状態では、管側係止部214の先端部214Bと装置側係止部212との間の隙間に銅管P1が位置する。
次に、挿通孔212Aに突出部30Bが挿通された状態で、固定治具210の装置側係止部212を挿通孔212Aの開口の長軸方向に沿って上側に移動させ、略楕円状とされた挿通孔212Aの開口のうち下側部分に突出部30Bが当接した状態とする(図20参照)。また、これに伴って、固定治具210の管側係止部214を下側に移動させる。この状態では、図20に示すように、突出部30Bと挿通孔212Aの切欠部212Bとの間、及び銅管P1と当接面214Aとの間にそれぞれ隙間が生じる。
次に、固定治具210を左側にずらし、図21に示すように、突出部30Bの外周面を挿通孔212Aの切欠部212Bに当接させるとともに、銅管P1の外周面を当接面214Aに当接させる。これにより、切欠部212Bにおいて固定治具210の装置側係止部212が突出部30Bによって支持された状態となる。このため、本実施形態の固定治具210は、加工装置1の突出部30Bと銅管P1とに係止させた後、略楕円状とされた挿通孔212Aの開口に沿ってその装置側係止部212が下方に位置ずれすることを防止ないし抑制することができる。その結果、固定治具210を用いて銅管P1を加工装置1に固定させる際の作業性をより向上させることができる。
<実施形態4>
図22から図25を参照して実施形態4を説明する。実施形態4は固定治具310の構成が実施形態1から実施形態3のものと異なっている。加工装置1の構成については実施形態1のものと同様であるため、構造、作用、及び効果の説明は省略する。実施形態4に係る固定治具310は、図22に示すように、装置側係止部316と管側係止部318とが分離された構成となっている。装置側係止部316と管側係止部318の厚みは互いに等しいものとされる。
装置側係止部316は、図22に示すように、平面視において略U字状をなしている。略U字状をなす装置側係止部316の屈曲部分は、その内面が加工装置1の突出部30Bの外周面と当接する装置側当接面316Aとされている。また、装置側係止部316の両端部はそれぞれ外側にわずかに突出する装置側突出部316Bとされている。また、装置側係止部316の両端部の間の距離D3は、加工装置1の突出部30Bの径とほぼ等しいものとされている。
管側係止部318は、図22に示すように、平面視において装置側係止部316より大きな略U字状をなしている。略U字状をなす管側係止部318の屈曲部分は、その内面が銅管P1の管軸周りの半周の長さの外周面と当接する管側当接面318Aとされている。また、管側係止部318の両端部には、その内面に凹状に窪んでなる管側凹部318Bがそれぞれ設けられている。各管側凹部318Bは、装置側係止部316の各装置側突出部316Bと嵌合可能な大きさ及び形状で設けられている。また、管側係止部318の両端部の間の距離D4は、銅管P1の管径D1とほぼ等しいものとされている。
本実施形態の固定治具310は、上記のような構成とされることで、平面視において各管側凹部318Bと各装置側突出部316Bとを重ね合わせ、厚み方向にずらすことで、装置側突出部316Bと管側凹部318Bとが嵌合され、図23に示すように、装置側係止部316と管側係止部318とを互いに接続できるようになっている。
次に、本実施形態の固定治具310を用いて加工装置1で銅管P1を曲げ加工する際の加工手順について説明する。なお、加工対象とされる銅管P1、及び曲げ加工される銅管P1の部位は実施形態1と同様である。まず、実施形態1で説明した手順と同様に、銅管P1の後方側の端部を固定した後、加工対象とされる銅管P1について、曲げ型30の第1溝状部30Aとクランプ40の第2溝状部40Aとの間に銅管P1の外周面を挟持させる。
次に、加工装置1上に配された銅管P1のうち固定治具310を係止させる部位の外周面に管側係止部318の管側当接面318Aを当接させる。管側係止部318の両端部の間の距離D4は銅管P1の管径D1とほぼ等しいので、これにより、図24に示すように、銅管P1の外周面のうち右側半分の外周面が管側当接面318Aと当接された状態となる。これにより、固定治具310の管側係止部318と銅管P1とが係止される。
次に、装置側係止部316の両端部の間に加工装置1の突出部30Bを挿通させながら、管側係止部318の前方側から、装置側係止部316の装置側突出部316Bを管側係止部318の管側凹部318Bに嵌合させる。また、これに伴い、突出部30Bの外周面に装置側係止部316の装置側当接面316Aを当接させる。装置側係止部316の両端部の間の距離D3は加工装置1の突出部30Bの径とほぼ等しいので、これにより、図25に示すように、突出部30Bの外周面のうち左側半分の外周面が装置側係止部316の装置側当接面316Aと当接された状態となる。
その結果、固定治具310の装置側係止部316と突出部30Bとが係止され、銅管P1が固定治具310を介して加工装置1に固定される。その後、実施形態1で説明した手順と同様に、曲げ型30を回転させることで、曲げ型30の第1溝状部30Aとクランプ40の第2溝状部40Aとの間の銅管P1の部位を曲げ加工することができる。
なお本実施形態では、先に固定治具310の管側係止部318と銅管P1とを係止させ、その後に固定治具310の装置側係止部316と突出部30Bとを係止させる手順について説明したが、装置側係止部316と突出部30Bとを先に係止させ、その後に装置側突出部316Bと管側凹部318Bとを嵌合させながら、管側係止部318と銅管P1とを係止させてもよい。
以上説明したように本実施形態の固定治具310は、装置側係止部316と管側係止部318とが分離された構成となっているので、銅管P1の外周面側から管側係止部318と銅管P1とを係止できるとともに、突出部30Bの外周面側から装置側係止部316と突出部30Bとを係止でき、装置側突出部316Bと管側凹部318Bとを嵌合させることができる。このため、本実施形態の固定治具310は、銅管の管端側から固定治具と当該銅管とを係止させた後に当該銅管の管軸方向に沿って上記途中の部位の近傍まで固定治具を移動させる従来の固定治具と比べて、銅管P1の曲げ加工における作業性を向上させることができる。
<他の実施形態>
本発明は上記既述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記の実施形態1から実施形態3では、固定治具の装置側係止部に挿通孔が設けられた構成を例示したが、装置側係止部の構成については限定されない。装置側係止部は、加工装置に係止される構成であればよい。
(2)上記の実施形態1から実施形態3では、固定治具の管側係止部が鉤爪状とされた構成を例示したが、管側係止部の形状については限定されない。管側係止部は、加工装置上に配される銅管に係止される形状であればよい。
(3)上記の各実施形態では、加工装置において曲げ型を手動で回転させる構成を例示したが、加工装置の構成については限定されない。加工装置において曲げ型が自動で回転される構成であってもよい。
(4)上記の各実施形態では、曲げ加工する加工対象として銅管を例示したが、加工対象とされる金属管は銅管に限定されず、加工対象が他の金属管であってもよい。
(5)上記の各実施形態において加工対象とされる銅管の径は限定されない。実施形態1及び実施形態2に係る固定治具における管側係止部の先端部と装置側係止部との間の隙間の距離、及び実施形態3に係る固定治具における管側係止部の両端部の間の距離は、加工対象とされる銅管の径に合わせて適宜に変更することができる。
以上、本発明の各実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。