JP6045094B2 - 自溶合金皮膜の形成方法 - Google Patents
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Description
また、溶射皮膜の形成工程(形成途中)において、ある程度の膜厚に成長した溶射皮膜に応力が発生して、当該溶射皮膜が基材表面から剥離するという問題もある。
更に、厚膜の溶射皮膜を形成する場合には、溶射材料である自溶合金粉末のロスも多大なものとなる。
また、自溶合金の粉末が、その溶融温度よりも数百度低い温度に到達したか否かを判断することはきわめて困難である。
本発明の目的は、3mm以上の膜厚を有し、金属基材に対して高い接合力で接合された自溶合金の溶融皮膜を、当該金属基材の外周面に効率的に形成することができる自溶合金皮膜の形成方法を提供することにある。
前記金属基材の外周面に厚さ50〜200μmの自溶合金の溶射皮膜を形成し、この溶射皮膜にフラックスを塗布する第1工程と、
前記金属基材の外周面に形成された溶射皮膜に対して、その内周面を離間させた状態で、非磁性材料からなる筒状外枠体を前記金属基材の周りに装着し、前記金属基材の外周面に形成された溶射皮膜と、前記筒状外枠体の内周面とで囲まれる空間に自溶合金の粉末を充填し、前記筒状外枠体の外側に配置した誘導加熱手段によって前記金属基材を加熱し、当該金属基材からの伝熱によって前記自溶合金の粉末を加熱して溶融させることにより、当該自溶合金の溶融皮膜を形成する第2工程とを含むことを特徴とする。
本発明の形成方法は、3mm以上の膜厚を有する自溶合金皮膜(自溶合金の溶融皮膜)を金属基材の外周面に形成する方法である。
本発明の方法により形成される溶融皮膜の膜厚としては、3mm以上とされ、好ましくは3〜5mmとされる。このような厚膜の溶融皮膜を形成する際に、本発明の形成方法は好適である。
金属基材として使用する中空ロールの外径としては、通常100〜500mmとされ、好ましくは100〜300mmとされる。
また、当該鋼材の長さとしては通常300〜2500mmとされ、好ましくは300〜1500mmとされる。
本発明の形成方法の第1工程は、金属基材の外周面に厚さ50〜200μmの自溶合金の溶射皮膜を形成し、形成された溶射皮膜にフラックスを塗布する工程である。
これにより、金属基材の外周面が溶射皮膜により保護されて、大気(酸素)と接触することが回避され、金属基材の外周面に酸化皮膜が形成されることを有効に防止することができる。
自溶合金の融点としては1030〜1080℃であることが好ましく、更に好ましくは1040〜1070℃とされる。
溶射皮膜の厚さが50μm未満であると、金属基材の外周面の酸化(酸化皮膜の形成)を十分に防止することができない。一方、200μmを超えて溶射皮膜を形成しても、膜厚の増加に見合う酸化防止効果を発揮することができない。
図1に示すように、本発明の形成方法の第2工程は、金属基材1の外周面の周りに筒状外枠体2を装着し、金属基材1の外周面に形成された溶射皮膜(図示省略)と、筒状外枠体2の内周面とで囲まれる空間に自溶合金の粉末3を充填し、筒状外枠体2の外側に配置した高周波誘導加熱コイル4(誘導加熱手段)によって金属基材1を加熱し、この金属基材1からの伝熱によってこの粉末3を加熱して溶融させることにより、当該自溶合金の溶融皮膜5を形成する工程である。
なお、図1において、6は下受治具、7は、金属基材1の位置合わせ用凸部である。
筒状外枠体は、1200〜1300℃程度の耐熱温度を有することが好ましい。好適な筒状外枠体としては、セラミックを主原料とするスリーブを挙げることができる。
セラミックを主原料とするスリーブとしては、セラミックファイバーに、無機バインダおよび微量の有機バインダを加え、円筒状に成形、乾燥させて得られるものを挙げることができ、そのようなスリーブは、日本サーマルセラミック(株)より「SCスリーブ」の商品名で販売されている。
金属基材1の外径(D1 )は、例えば50〜500mmとされ、好ましくは50〜300mmとされる。
金属基材1の長さとしては、例えば300〜2500mmとされ、好ましくは300〜1500mmとされる。
また、筒状外枠体2の外径(D2 )は、例えば(d2 +20mm)〜(d2 +40mm)とされ、好ましくは(d2 +20mm)〜(d2 +30mm)とされる。
筒状外枠体2の長さは、金属基材1の長さに応じて適宜調整される。
なお、この空間に充填される粉末3として、溶射工程に使用された後、金属基材に付着されずに回収された粉末を使用(再利用)することも可能である。
粉末3の加熱温度としては、粉末3を構成する自溶合金の融点以上とされ、好ましくは融点以上(融点+50℃)以下とされる。
なお、自溶合金の融点を大幅に超えた温度で加熱した場合には、形成される溶融皮膜の硬度が低下して十分な耐摩耗性を有するものとならなくなる場合がある。
また、粉末3の加熱温度は、例えば、金属基材1の内周面の温度から推測することが可能である。
なお、金属基材1の外周面に対して溶融皮膜5が強固に接合していること、筒状外枠体2が、粉末3との反応性を有しない非磁性材料から構成されることから、筒状外枠体2は容易に取り外すことができる。
本発明の形成方法により自溶合金皮膜が形成されてなる金属製品は、搬送ロール、ワークロール、ガイドロールなどの各種ロール材、耐食性伝熱管などとして好適に使用することができる。
外径(D1 )=63.5mm、肉厚=7.5mm、長さ=700mmのボイラ・熱交換器用炭素鋼鋼管の外周面に、自溶合金(JIS H 8260,コード番号2.14,溶射ガス温度=3000℃)を溶射(1パス)して、厚さ80μmの溶射皮膜を形成した。
次いで、この溶射皮膜に、ホウ砂をメタノールに分散させて調製したフラックスを塗布して乾燥した。
図1に示したような装置を使用して第2工程を実施した。
金属基材1の外周面の周りに、外径(D2 )=102mm、内径(d2 )=74mm、長さ=500mmの筒状外枠体2(SCスリーブ)を装着し、金属基材1の外周面に形成された溶射皮膜と、筒状外枠体2の内周面とで囲まれる空間に自溶合金(JIS H 8260,コード番号2.14)の粉末3を充填し、筒状外枠体2の外側に配置した高周波誘導加熱コイル4(誘導加熱手段)によって金属基材1を加熱し、この金属基材1からの伝熱によってこの粉末3を加熱して溶融させることにより、金属基材1の外周面(両端から30mmの範囲を除く)に、当該自溶合金による厚さ5.25mmの溶融皮膜5を形成した。
ここに、加熱条件としては、出力=60〜65W、誘導加熱コイル4の移動速度=1mm/秒とした。また、金属基材1の内周面で測定した温度から推測される加熱温度は1050〜1080℃である。
金属基材1および形成された溶融皮膜5を冷却後、筒状外枠体2を取り外し、金属基材1の外周面に形成されている溶融皮膜5を観察したところ、内部に気孔の少ない緻密な皮膜であった。また、この溶融皮膜5は、拡散接合層を介して、金属基材1の外周面に対して強固に接合されていた。
2 筒状外枠体
3 自溶合金の粉末
4 高周波誘導加熱コイル
5 溶融皮膜(自溶合金皮膜)
6 下受治具
7 位置合わせ用凸部
Claims (3)
- 3mm以上の膜厚を有する自溶合金の溶融皮膜を金属基材の外周面に形成する方法であって、
前記金属基材の外周面に厚さ50〜200μmの自溶合金の溶射皮膜を形成し、この溶射皮膜にフラックスを塗布する第1工程と、
前記金属基材の外周面に形成された溶射皮膜に対して、その内周面を離間させた状態で、非磁性材料からなる筒状外枠体を前記金属基材の周りに装着し、前記金属基材の外周面に形成された溶射皮膜と、前記筒状外枠体の内周面とで囲まれる空間に自溶合金の粉末を充填し、前記筒状外枠体の外側に配置した誘導加熱手段によって前記金属基材を加熱し、当該金属基材からの伝熱によって前記自溶合金の粉末を加熱して溶融させることにより、当該自溶合金の溶融皮膜を形成する第2工程とを含むことを特徴とする自溶合金皮膜の形成方法。 - 前記金属基材が、鋼鉄製の中空または中実の円柱状物であることを特徴とする請求項1に記載の自溶合金皮膜の形成方法。
- 前記フラックスがホウ砂を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自溶合金皮膜の形成方法。
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