以下、添付の図面を参照しながら、実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
<配線モジュールの製造装置>
まず、図1,2を参照しつつ、実施形態に係る端子挿入装置100の全体構成について説明する。端子挿入装置100は、端子付電線9の端部の端子92をコネクタ8のキャビティ81に挿入して、少なくとも1つの端子付電線9と少なくとも1つのコネクタ8とを備える配線モジュール200(図15参照)を製造する装置である。特に、本実施形態における端子挿入装置100は、複数の端子付電線9と複数のコネクタ8とを備える配線モジュール200を製造する装置である。なお、上記配線モジュール200は、それ単独で、車両等における配線経路に沿った形態で束ねられ、車両における電気配線用のワイヤハーネスとして構成される。或は、上記配線モジュール200が他の配線モジュール及び電線のうちの少なくとも1以上と組合わされて、車両等における配線経路に沿った形態で束ねられ、車両における電気配線用のワイヤハーネスとして構成される。
なお、便宜上、図1及び図2の相互間において、各構成要素の表示は、形状及び大きさなどの詳細については必ずしも整合していない。また、図2において、図1に示される一部の機構の表示が省略されている。
端子挿入装置100は、電線配列部材移送機構1、端子挿入機構2〜5、コネクタ配列部材移送機構6、光センサ7及び制御部10を備えている。また、端子挿入機構2〜5は、第一挟持部関連機構2、第二挟持部関連機構3、第三挟持部4及び第四挟持部関連機構5を含む。
以下では、端子挿入装置100の全体構成について説明してから、端子92をコネクタ8のキャビティ81に挿入する構成に着目して説明する。
<端子付電線>
端子付電線9各々は、電線91及び電線91の端部に接続された端子92を有する。電線91は、線状の導体及びその導体の周囲を覆う絶縁被覆を有する絶縁電線である。端子92は、金属などの導電性の部材である。本実施形態における端子92は、圧着端子であり、電線91の導体に圧着された導体圧着部と、電線91の絶縁被覆の部分に圧着された被覆圧着部とを有する。
<コネクタ>
コネクタ8各々は、端子付電線9各々の端子92を収容する複数のキャビティ81が形成された部材である。コネクタ8の外形をなす本体は非導電性の部材であり、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、又はポリアミド(PA)などの合成樹脂の部材である。また、コネクタ8が、キャビティ81に挿入された端子付電線9の端子92と接触する不図示のバスバーを本体内に内包している場合もある。
コネクタ8には、所定の配列形態で、端子92を挿入可能なキャビティ81が形成される。キャビティ81内には、端子92を抜止め係止可能な係止構造としてランス等が設けられており、端子92がキャビティ81内に挿入されると、ランス等が端子92に抜止め係止することで、当該端子92がキャビティ81内に保持される。
<電線配列部材移送機構>
電線配列部材移送機構1は、電線配列部材90を取り外し可能に保持しつつ移動させる機構である。電線配列部材90は、長尺な基部901と、基部901から起立して形成された複数の電線留め部902とを有している。電線留め部902各々は、端子付電線9の電線91における端子92寄りの部分を弾性力によって挟んで留める一対の部材を含む。
複数の電線留め部902は、基部901において一列に並んで形成されている。また、電線配列部材90において、電線留め部902各々は、端子付電線9各々の端子92の先端が同じ方向を向く状態で、端子付電線9各々の電線91を挟んで留めている。電線留め部902の配列方向は、端子付電線9各々の端子92の先端が向く方向に直交する方向である。
例えば、電線留め部902の一対の部材は、それら自体が弾性変形可能な部材であり、弾性変形により生じる弾性力によって電線91を挟んで留める。或いは、電線留め部902の一対の部材は、不図示のバネなどの弾性体によって相互に近接する方向への弾性力が加えられていてもよい。
通常、電線配列部材90に留められた端子付電線9各々は、その両端部各々に端子92が接続されている。そして、電線配列部材90は、複数の端子付電線9の両端部各々における電線91の部分を電線留め部902で支持している。従って、電線配列部材90は、端子付電線9の本数の2倍の箇所において、電線留め部902によって電線91を挟んでいる。
電線配列部材移送機構1は、固定座11とリニアアクチュエータ12とを備えている。固定座11は、電線配列部材90を取り外し可能に保持する部分である。固定座11には、電線配列部材90を保持するとともに、その保持を解除可能な構造を有する電線配列部材ロック機構111が設けられている。電線配列部材ロック機構111としては、例えば係り合い構造によって相手部材を保持すること、及びその保持を解除することが可能な周知のロック機構が採用され得る。
なお、図2においては、電線配列部材ロック機構111の表示は省略されている。
以下の説明において、電線配列部材90が固定座11に保持された状態において電線配列部材90に支持された端子付電線9各々の端子92の先端が向く方向を第一方向と称する。本実施形態では、第一方向は水平方向である。
また、電線配列部材90が固定座11に保持された状況下において電線留め部902の配列方向に沿う一の方向のことを第二方向と称する。第二方向は第一方向に直交する。本実施形態では、第二方向も水平方向である。各図に示される座標軸において、X軸正方向が第一方向であり、Y軸正方向が第二方向である。
従って、固定座11は、電線配列部材90に支持された端子付電線9各々の端子92の先端が第一方向を向くとともに電線留め部902の配列方向が第一方向に直交する第二方向に沿う状態で保持する。
リニアアクチュエータ12は、固定座11を第二方向に沿って、即ち、Y軸方向に沿って移動させる。リニアアクチュエータ12は、固定座11を第二方向に沿って移動させることにより、電線配列部材90の電線留め部902各々を選択的に予め定められた起点位置P0に位置決めする。リニアアクチュエータ12は、例えば、周知のボールネジ式の電動アクチュエータなどである。
電線配列部材90が固定座11に保持された状態において、電線留め部902各々の位置、即ち、電線留め部902に留められた電線91各々の位置は既知である。例えば、複数の電線留め部902が固定座11の基準位置から等間隔で一列に並んでいることが考えられる。この場合、目的の電線留め部902が端から何番目であるかを示す番号が指定されれば、目的の電線留め部902及びそれに留められている電線91を起点位置P0へ移動させるためのリニアアクチュエータ12の動作量(固定座11の移送方向及び移送距離)が定まる。
図2が示すように、電線配列部材移送機構1は、電線配列部材90全体が起点位置P0から外れる第一待避位置A1と電線配列部材90の一部が起点位置P0に位置する第一作動位置A2とに亘る範囲で、電線配列部材90を第一方向に沿って移動させることができる。
複数の端子付電線9の端部を支持する電線配列部材90、即ち、電線配列部材90のモジュールは、例えば、1組の配線モジュール200毎に用意される。
端子挿入装置100が実行する工程よりも前の工程において、端子付電線9各々の端部が、手作業により、又は他の装置によって電線配列部材90の電線留め部902各々に留められる。そして、電線配列部材90のモジュールは、他の工程の場所から端子挿入装置100の場所まで搬送され、電線配列部材移送機構1に装着される。
図14は、電線配列部材90に留められた端子付電線9の端部の平面図である。図14が示すように、電線配列部材90のモジュールにおいて、電線留め部902各々が端子付電線9の電線91を挟む位置のばらつきが生じ得る。図14におけるΔx1及びΔx2は、端子付電線9の端部における電線留め部902から張り出した部分の長さのばらつきを表す。
電線留め部902各々が端子付電線9の電線91を挟む位置のばらつきの原因は、例えば、端子付電線9の端部を電線留め部902に留める工程のばらつき、或いは電線配列部材90の搬送中に端子付電線9に加わる外力による位置ずれなどである。
電線留め部902各々が電線91を挟む位置のばらつきは、電線配列部材移送機構1によって起点位置P0に配置された端子付電線9の端部の位置のばらつきとなる。また、電線留め部902の深さ方向における電線91の位置のばらつきも考えられる。さらに、電線91の端部に対する端子92の接続精度のばらつきにより、端子92が電線91の長手方向に対してわずかに傾斜している場合がある。その傾斜のばらつきも、端子92の位置のばらつきとなり得る。
後述するように、端子挿入装置100は、そのような端子付電線9の端部の位置のばらつきを、端子付電線9の端子92がコネクタ8のキャビティ81に到達する前に修正する機能を備えている。
以下の説明において、端子付電線9における端子92から電線91の端子92寄りの部分に亘る領域のことを端部領域900と称する。
<コネクタ配列部材移送機構>
コネクタ配列部材移送機構6は、コネクタ配列部材80を取り外し可能に保持しつつ移動させる機構である。コネクタ配列部材80は、複数のコネクタ8各々を取り外し可能な状態で保持する不図示の保持機構を有している。
コネクタ配列部材80は、複数のコネクタ8を少なくとも一列に並ぶ状態で支持する。図1,2が示す例では、コネクタ配列部材80は、複数のコネクタ8を一列に並ぶ状態で支持している。しかしながら、コネクタ配列部材80が、2段以上に積み重なり各段ごとに一列に並んだ複数のコネクタ8を支持していることも考えられる。
コネクタ配列部材80は、複数のコネクタ8をそれらのキャビティ81の入口が同じ方向を向く状態で支持する。より具体的には、コネクタ配列部材80は、複数のコネクタ8各々のキャビティ81の入口が同じ方向を向くとともに、コネクタ8の配列方向がキャビティ81各々の入口が向く方向に対して直交する状態で、複数のコネクタ8を支持している。
コネクタ配列部材移送機構6は、固定座61とリニアアクチュエータ62とを備えている。固定座61は、コネクタ配列部材80を取り外し可能に保持する部分である。固定座61には、コネクタ配列部材80を保持するとともに、その保持を解除可能な構造を有するコネクタ配列部材ロック機構611が設けられている。コネクタ配列部材ロック機構611は、例えば、電線配列部材ロック機構111と同様のロック機構が採用される。
固定座61は、コネクタ配列部材80に支持された複数のコネクタ8が電線留め部902の配列方向に平行に並ぶ状態で、コネクタ配列部材80を取り外し可能に保持する。この場合、固定座61は、複数のコネクタ8が第二方向に沿って並び、かつ、複数のコネクタ8のキャビティ81各々の入口が第一方向の反対方向(X軸負方向)に向く状態でコネクタ配列部材80を保持する。
この固定座61は、端子92をコネクタ8のキャビティ81内に挿入する際に、コネクタ8を保持するコネクタ支持部である。
なお、図2が示す例では、コネクタ配列部材80の固定座61は、コネクタ8が嵌め入れられた構造を有しているが、図2においてはその構造の表示は省略されている。さらに、図2においては、コネクタ配列部材ロック機構611の表示も省略されている。
リニアアクチュエータ62は、固定座61を第二方向に沿って、即ち、Y軸方向に沿って移動させる。リニアアクチュエータ62は、固定座61を第二方向に沿って移動させることにより、コネクタ配列部材80が支持するコネクタ8各々のキャビティ81各々を選択的に予め定められた終点位置P4に位置決めする。リニアアクチュエータ62は、例えば、周知のボールネジ式の電動アクチュエータなどである。
終点位置P4は、第二方向における位置である。終点位置P4は、第二方向において後述する第三中継位置P3に揃う位置である。即ち、終点位置P4を表す第二方向における座標P4yは、第三中継位置P3の第二方向における座標と一致する。
コネクタ配列部材80が固定座61に保持された状態において、コネクタ8各々のキャビティ81各々の位置は既知である。コネクタ配列部材80上におけるキャビティ81各々の位置は、固定座61におけるコネクタ8各々が保持された位置と、コネクタ8各々の形状の仕様とによって定まる。
例えば、制御部10において、コネクタ8各々におけるキャビティ81各々の識別コードと識別コード各々に対応した固定座61上の位置データとが予め設定されている。この場合、目的のキャビティ81の識別コードが指定されれば、識別コードに対応するキャビティ81の第二方向における位置データを参照することにより、目的のキャビティ81を終点位置P4へ移動させるためのリニアアクチュエータ62の動作量(固定座61の移送方向及び移送距離)が定まる。
なお、目的のキャビティ81は、端子92の挿入先であり、コネクタ配列部材80に支持された複数のコネクタ8各々の複数のキャビティ81から順次選択される。終点位置P4において、複数のキャビティ81が第三方向に沿って並んで形成されている場合、目的のキャビティ81は第三方向に沿って並ぶ複数のキャビティ81のうちの1つである。
図2が示すように、コネクタ配列部材移送機構6は、コネクタ配列部材80全体が終点位置P4から外れる第二待避位置A3とコネクタ配列部材80の一部が終点位置P4に位置する第二作動位置A4とに亘る範囲で、コネクタ配列部材80を第一方向に沿って移動させることができる。
図2が示すように、第一作動位置A2から見た第一待避位置A1の方向は、第二作動位置A4から見た第二待避位置A3の方向と同じである。本実施形態では、第二待避位置A3は、第一待避位置A1から見て第一方向(X軸正方向)に位置している。
複数のコネクタ8を支持するコネクタ配列部材80、即ち、コネクタ配列部材80のモジュールは、例えば、1組の配線モジュール200ごとに用意される。
端子挿入装置100が実行する工程よりも前の工程において、複数のコネクタ8が、コネクタ8各々の形状の仕様に応じて予め作製されたコネクタ配列部材80に取り付けられる。そして、コネクタ配列部材80のモジュールは、他の工程の場所から端子挿入装置100の場所まで搬送され、コネクタ配列部材移送機構6に装着される。
<光センサ>
光センサ7は、透過型の光学センサであり、発光部71及び受光部72を有している。発光部71は、第一方向及び第二方向に直交する第三方向から見て起点位置P0を通る直線経路R0に直交する平面に沿って検出光73を出力する。検出光73は、平面に沿うシート光である。
なお、各図に示される座標軸において、Z軸正方向が第三方向である。本実施形態では、第三方向は鉛直上方向である。
光センサ7の受光部72は、検出光73を受光する。光センサ7は、受光部72の受光レベルが予め設定されたレベルを下回るか否かを検知することにより、検出光73を遮る物体を検知するセンサである。端子挿入装置100において、光センサ7は、検出光73を遮る端子付電線9の端子92の先端部分を検知する。
<端子挿入機構>
端子挿入機構2〜5は、端子付電線9の端子92を終点位置P4に位置する目的のキャビティ81に挿入する機構である。端子挿入機構2〜5は、端子付電線9の端部領域900の一部を挟み持って移動させることにより、起点位置P0の電線留め部902から端子付電線9の端部領域900を取り外すとともに、取り外した端子付電線9の端部領域900の端子92を、終点位置P4に位置する目的のキャビティ81に挿入する。
なお、図2においては、便宜上、端子挿入機構2〜5に関し、端子付電線9の端部領域900の一部を挟み持つ部分のみが模式的に表示され、その他の機構の表示は省略されている。
<第一挟持部関連機構>
端子挿入機構2〜5の第一挟持部関連機構2は、端子付電線9における端部領域900の一部を挟み持って移動させることにより、端部領域900を起点位置P0から予め定められた第一中継位置P1へ移動させる機構である。
第一挟持部関連機構2は、第一挟持部21、第三方向移送機構22及び第一方向移送機構23を含む。
第一挟持部21は、起点位置P0において、端子92の先端が第一方向を向く状態の端子付電線9における端部領域900の一部を、第二方向に沿って両側から挟み持つ機構である。
第一挟持部21は、一対の第一対向部材211と、一対の第一対向部材211を第二方向(Y軸方向)に沿って相互に近接及び離隔させる第一離接アクチュエータ212とを有している。
一対の第一対向部材211各々は、根元部から2分岐した分岐部を有している。そして、一対の第一対向部材211の分岐部が、端子付電線9の電線91における電線留め部902が挟む部分の両側の2箇所を挟んで支持する。
第一離接アクチュエータ212は、一対の第一対向部材211を第二方向に沿って相互に近接又は離隔させる。これにより、第一離接アクチュエータ212は、一対の第一対向部材211の状態を、電線91を挟み持つ状態と電線91の挟持を解除する状態とのいずれかに切り替える。第一離接アクチュエータ212は、例えばソレノイドアクチュエータ又はボールネジ式の電動アクチュエータなどである。
第一挟持部関連機構2の第三方向移送機構22は、第一挟持部21を第三方向に沿って移動させる機構である。また、第一挟持部関連機構2の第一方向移送機構23は、第一挟持部21を第一方向に沿って移動させる機構である。
第三方向移送機構22及び第一方向移送機構23は、起点位置P0を通り、かつ、第一方向及び第三方向に沿う平面に沿って第一挟持部21を移動させる。従って、第一中継位置P1は、起点位置P0を通り、かつ、第一方向及び第三方向に沿う平面内に存在する。
本実施形態においては、第三方向移送機構22が第一挟持部21を直接支持しつつ第三方向に沿って移動させ、第一方向移送機構23が第三方向移送機構22を支持しつつ第一方向に沿って移動させる。
例えば、第一方向移送機構23は、第三方向移送機構22を第一方向に沿って移動可能に支持するスライド支持部231と、第三方向移送機構22を第三方向に沿って移動させるリニアアクチュエータ232とを備えている。第三方向移送機構22及びリニアアクチュエータ232は、例えば、周知のボールネジ式の電動アクチュエータなどである。
第三方向移送機構22及び第一方向移送機構23が端子付電線9の端部領域900を起点位置P0から第一中継位置P1まで移動させる途中で、第一方向移送機構23は、直線経路R0に沿って端子付電線9の端部領域900を移動させる。第三方向移送機構22及び第一方向移送機構23のより具体的な動作については後述する。
なお、第一挟持部関連機構2の第三方向移送機構22及び第一方向移送機構23は、第一挟持部21を移動させることによって端子付電線9の端部領域900を第一中継位置P1へ移動させる第一挟持部移送機構の一例である。
<第二挟持部関連機構>
端子挿入機構2〜5の第二挟持部関連機構3は、第一中継位置P1において端子付電線9の端部領域900の支持を第一挟持部21から受け継ぐ機構である。さらに、第二挟持部関連機構3は、第三挟持部4との間で一時的に端子付電線9の端子92の支持の受け渡しを行った後に、第四挟持部関連機構5へ端子付電線9を引き渡す。
第二挟持部関連機構3は、第二挟持部31、第一方向移送機構32及び第二方向移送機構33を含む。
第二挟持部31は、第一中継位置P1において第一挟持部21が挟み持つ端子付電線9の端部領域900における端子92の一部及び電線91の一部の各々を第二方向(Y軸方向)に沿って両側から挟み持つ。そして、第二挟持部31は、第一中継位置P1において第一挟持部21から端子付電線9の端部領域900の支持を受け継ぐ。
第二挟持部31は、前第二挟持部31aと後第二挟持部31bとを含む。前第二挟持部31a及び後第二挟持部31bの各々は、一対の第二対向部材311と、一対の第二対向部材311を第二方向(Y軸方向)に沿って相互に近接及び離隔させる第二離接アクチュエータ312とを有している。
前第二挟持部31aの一対の第二対向部材311は、端子付電線9の端部領域900における端子92の一部を挟んで支持する。一方、後第二挟持部31bの一対の第二対向部材311は、端子付電線9の端部領域900における電線91の一部を挟んで支持する。
第二挟持部31は、前第二挟持部31a及び後第二挟持部31bを有しているため、端子付電線9の端子92を挟み持つ動作及びその挟持を解除する動作と、端子付電線9の電線91を挟み持つ動作及びその挟持を解除する動作とを個別に行うことができる。
第二離接アクチュエータ312は、一対の第二対向部材311を第二方向に沿って相互に近接又は離隔させる。これにより、第二離接アクチュエータ312は、一対の第二対向部材311の状態を、端子付電線9の端部領域900を挟み持つ状態と端部領域900の挟持を解除する状態とのいずれかに切り替える。第二離接アクチュエータ312は、例えばソレノイドアクチュエータ又はボールネジ式の電動アクチュエータなどである。
第二挟持部関連機構3の第一方向移送機構32は、第二挟持部31を第一方向に沿って移動させる機構である。また、第二挟持部関連機構3の第二方向移送機構33は、第二挟持部31を第二方向に沿って移動させる機構である。
第一方向移送機構32は、第二挟持部31を第一中継位置P1から予め定められた第二中継位置P2へ移動させる。また、第二方向移送機構33は、第二挟持部31を第二中継位置P2から予め定められた第三中継位置P3へ移動させる。さらに、第一方向移送機構32及び第二方向移送機構33は、第二挟持部31を第三中継位置P3から第一中継位置P1へ移動させる。
本実施形態においては、第一方向移送機構32は、第二挟持部31を第一方向に沿って移動可能に支持するスライド支持部321と、スライド支持部321を第一方向に沿って移動させるリニアアクチュエータ322とを備えている。
さらに、本実施形態において、第二方向移送機構33は、第二挟持部31及び第一方向移送機構32を第二方向に沿って移動可能に支持するスライド支持部331と、スライド支持部331を第二方向に沿って移動させるリニアアクチュエータ332とを備えている。
<第三挟持部>
端子挿入機構2〜5の第三挟持部4は、予め定められた第二中継位置P2において、第二挟持部31が挟み持つ端子付電線9の端部領域900における端子92の一部を第三方向に沿って両側から挟み持つ。この第三挟持部4は、端子付電線9の端子92の支持を、第二挟持部31から一時的に受け継いだ後に第二挟持部31へ引き渡す。
第三挟持部4は、一対の第三対向部材41と、一対の第三対向部材41を第三方向(Z軸方向)に沿って相互に近接及び離隔させる第三離接アクチュエータ42とを有している。本実施形態においては、第三挟持部4は固定されている。
一対の第三対向部材41は、端子付電線9の端部領域900における端子92の一部を挟んで支持する。
第三離接アクチュエータ42は、一対の第三対向部材41を第三方向に沿って相互に近接又は離隔させる。これにより、第三離接アクチュエータ42は、一対の第三対向部材41の状態を、端子付電線9の端子92を挟み持つ状態と端子92の挟持を解除する状態とのいずれかに切り替える。第三離接アクチュエータ42は、例えばソレノイドアクチュエータ又はボールネジ式の電動アクチュエータなどである。
なお、第二挟持部関連機構3の第一方向移送機構32は、第二挟持部31及び第三挟持部4の少なくとも一方を第一方向に沿って移動させる第二第三挟持部位置関係変更機構の一例である。
即ち、第一方向移送機構32は、第二挟持部31が挟み持つ端子付電線9の端子92と第三挟持部4との位置関係を、第一位置関係と第二位置関係との間で変化させる。第一位置関係は、第三挟持部4が第一方向において端子92から離れている位置関係である。第二位置関係は、端子92が第三挟持部4の挟み位置に位置する位置関係である。
本実施形態においては、端子付電線9の端部領域900が第一中継位置P1に位置するときに、端子92と第三挟持部4との位置関係が第一位置関係となる。また、端子付電線9の端部領域900が第二中継位置P2に位置するときに、端子92と第三挟持部4との位置関係が第二位置関係となる。
<第四挟持部関連機構>
端子挿入機構2〜5の第四挟持部関連機構5は、予め定められた第三中継位置P3において端子付電線9の端部領域900の支持を第二挟持部31から受け継ぐ機構である。さらに、第四挟持部関連機構5は、端子付電線9の端部領域900を挟み持って移動させることにより、端子付電線9の端子92を終点位置P4に位置するコネクタ8のキャビティ81に挿入する。
第四挟持部関連機構5は、第四挟持部51、第三方向移送機構52及び第一方向移送機構53を含む。
第四挟持部51は、第三中継位置P3において、第二挟持部31が第三挟持部4から受け継いで挟み持つ端子付電線9の端部領域900における端子92の一部及び電線91の一部の各々を挟み持つ。そして、第四挟持部51は、第三中継位置P3において第二挟持部31から端子付電線9の端部領域900の支持を受け継ぐ。
第四挟持部51は、前第四挟持部51aと後第四挟持部51bとを含む。前第四挟持部51a及び後第四挟持部51bの各々は、一対の第四対向部材511と、一対の第四対向部材511を第二方向(Y軸方向)に沿って相互に近接及び離隔させる第四離接アクチュエータ512とを有している。
前第四挟持部51aの一対の第四対向部材511は、端子付電線9の端部領域900における端子92の一部を挟んで支持する。一方、後第四挟持部51bの一対の第四対向部材511は、端子付電線9の端部領域900における電線91の一部を挟んで支持する。
第四挟持部51は、前第四挟持部51a及び後第四挟持部51bを有しているため、端子付電線9の端子92を挟み持つ動作及びその挟持を解除する動作と、端子付電線9の電線91を挟み持つ動作及びその挟持を解除する動作とを個別に行うことができる。
第四離接アクチュエータ512は、一対の第四対向部材511を第二方向に沿って相互に近接又は離隔させる。これにより、第四離接アクチュエータ512は、一対の第四対向部材511の状態を、端子付電線9の端部領域900を挟み持つ状態と端部領域900の挟持を解除する状態とのいずれかに切り替える。第四離接アクチュエータ512は、例えばソレノイドアクチュエータ又はボールネジ式の電動アクチュエータなどである。
これらの前第四挟持部51a及び後第四挟持部51bは、端子92をコネクタ8のキャビティ81に挿入する際に、端子付端子付電線9の端部を保持可能な挿入用電線端部保持部である。
第四挟持部関連機構5の第三方向移送機構52は、第四挟持部51を第三方向に沿って移動させる機構である。第三方向移送機構52は、前第四挟持部51aを第三方向に沿って移動させる前第三方向移送機構52aと、後第四挟持部51bを第三方向に沿って移動させる後第三方向移送機構52bとを含む。
第四挟持部関連機構5の第三方向移送機構52は、前第三方向移送機構52a及び後第三方向移送機構52bを有しているため、前第四挟持部51aを第三方向に沿って移動させる動作と、後第四挟持部51bを第三方向に沿って移動させる動作とを個別に行うことができる。
第四挟持部関連機構5において、第三方向移送機構52は、それぞれ既知の第三中継位置P3と終点位置P4に存在する目的のキャビティ81の位置との間の第三方向における距離差の分だけ第四挟持部51を第三方向(Z軸正方向)へ移動させる。もちろん、距離差がゼロの場合、第三方向移送機構52は第四挟持部51を移動させない。
この第3方向移送機構52は、コネクタ支持部である固定座61と挿入用電線端部保持部である前第四挟持部51a及び後第四挟持部51bとの相対的位置関係を、キャビティ81の軸(X軸方向)に対して直交する方向に変動させる相対位置変更機構としても用いられる。特に、ここでは、相対位置変更機構としての第3方向移送機構52は、前第四挟持部51a及び後第四挟持部51bとをZ方向に沿って移動させることにより、固定座61と前第四挟持部51a及び後第四挟持部51bとの相対的位置関係を、Z方向に沿って変動させる。ここで、上記前第四挟持部51a及び後第四挟持部51bは、Y方向において端子付電線9の端部を挟み持つ。このため、Z方向は、キャビティ81の軸方向(X方向)に対して直交し、かつ、前第四挟持部51a及び後第四挟持部51bが端子付電線9の端部を挟込む方向(Y方向)と直交する方向でもある。
なお、上記相対位置変更機構としては、コネクタ8を支持する部材を、端子付電線9の端部を保持する部材に対して移動させる構成であってもよい。
さらに、第四挟持部関連機構5において、第一方向移送機構53は、それぞれ既知の第三中継位置P3及び終点位置P4に存在する目的のキャビティ81の入口の位置との間の第一方向における距離差と、目的のキャビティ81の奥行き寸法との和に応じた距離だけ第四挟持部51を第一方向(X軸正方向)へ移動させる。
この第1方向移送機構53は、挿入用電線端部保持部である前第四挟持部51a及び後第四挟持部51bを、キャビティ81に向けて進退移動させる挿入用進退駆動部である。
以上に示された第三方向移送機構52及び第一方向移送機構53の動作により、端子付電線9の端子92は、第三中継位置P3から移動して終点位置P4に存在する目的のキャビティ81に挿入される。
本実施形態においては、第三方向移送機構52は、第二挟持部31を第一方向に沿って移動可能に支持するスライド支持部321と、スライド支持部321を第一方向に沿って移動させるリニアアクチュエータ322とを備えている。
本実施形態においては、第三方向移送機構52が第四挟持部51を直接支持しつつ第三方向に沿って移動させ、第一方向移送機構53が第三方向移送機構52を支持しつつ第一方向に沿って移動させる。
例えば、第一方向移送機構53は、第三方向移送機構52を第一方向に沿って移動可能に支持するスライド支持部531と、第三方向移送機構52を第三方向に沿って移動させるリニアアクチュエータ532とを備えている。第三方向移送機構52及びリニアアクチュエータ532は、例えば、周知のボールネジ式の電動アクチュエータなどである。
なお、第四挟持部関連機構5の第三方向移送機構52及び第一方向移送機構53は、第四挟持部51を移動させることによって端子付電線9の端子92をコネクタ8各々のキャビティ81に挿入する第四挟持部移送機構の一例である。
また、第二挟持部関連機構3の第二方向移送機構33は、第二挟持部31を第二方向に沿って移動させる第二挟持部移送機構の一例である。第二方向移送機構33は、第二挟持部31を、第三挟持部4から端子92の支持を受け継ぐ第二中継位置P2と、第四挟持部51へ端子付電線9の支持を引き渡す第三中継位置P3との間で移動させる。
なお、図1が示すように、端子挿入装置100は、電線引っ掛け部70も備えている。電線引っ掛け部70は、不図示の駆動機構により駆動されて終点位置P4と第三中継位置P3との間において変位し、既に端子92がキャビティ81に挿入されている端子付電線9の電線91を引っ掛けて終点位置P4から遠ざける。これにより、コネクタ8から延び出た電線91が、新たな端子付電線9の端子92の挿入の邪魔になることが防がれる。
<制御部>
制御部10は、光センサ7の検出信号を参照しつつ、電線配列部材移送機構1、端子挿入機構2〜5及びコネクタ配列部材移送機構6における各アクチュエータを制御する装置である。なお、図2においては、制御部10の表示は省略されている。
制御部10は、演算部101と記憶部102と信号インターフェース103とを備えている。演算部101と記憶部102及び信号インターフェース103の各々とは電気的に接続されている。
演算部101は、予め記憶部102に記録された制御プログラムに従って、各アクチュエータに対する制御指令を導出する処理を実行するCPU(Central Processing Unit)を含む素子又は回路である。
記憶部102は、演算部101が参照する制御プログラム及びその他のデータを記憶する不揮発性メモリである。例えば、記憶部102は、制御プログラムに加え、既定経路移送データ、端子−キャビティ対応データ、電線位置データ及びキャビティ位置データなどのデータを記憶している。
既定経路移送データは、端子付電線9の端部領域900を既定の経路に沿って起点位置P0から直線経路R0まで移動させるための第一挟持部関連機構2のアクチュエータの作動手順を表すデータを含む。さらに、既定経路移送データは、端部領域900を光センサ7で端子92が検出されたときの位置から第一中継位置P1及び第二中継位置P2を経て第三中継位置P3まで既定の経路に沿って移動させるための第二挟持部関連機構3のアクチュエータの作動手順を表すデータも含む。
端子−キャビティ対応データは、電線配列部材90における電線91を挟む電線留め部902各々の識別コードと端子92の挿入先を表すキャビティ81各々の識別コードとの対応関係を表すデータである。さらに、端子−キャビティ対応データは、起点位置P0への位置決めの対象となる電線留め部902の順番も表す。
電線位置データは、電線配列部材90における電線留め部902各々の位置を特定するために必要なデータを含む。即ち、電線位置データは、電線留め部902各々を起点位置P0に移動させるときに電線配列部材移送機構1のリニアアクチュエータ12の動作量を特定するために必要なデータを含む。
また、キャビティ位置データは、コネクタ配列部材80に支持されたコネクタ8各々のキャビティ81各々の第二方向(Y軸方向)及び第三方向(Z軸方向)の各々における位置及び奥行き寸法を特定するために必要なデータを含む。この場合、キャビティ81各々の入口の第一方向(X軸方向)における位置は全て同じ既知の位置である。
即ち、キャビティ位置データにおけるキャビティ81各々の第二方向の位置のデータは、コネクタ配列部材80に支持されたコネクタ8各々のキャビティ81各々を終点位置P4に移動させるときにコネクタ配列部材移送機構6のリニアアクチュエータ62の動作量を特定するために必要なデータである。
また、キャビティ位置データにおけるキャビティ81各々の第三方向の位置及び奥行き寸法のデータは、端子付電線9の端子92を第三中継位置P3から目的のキャビティ81内へ移動させるときに第四挟持部関連機構5の第三方向移送機構52及び第一方向移送機構53の動作量を特定するために必要なデータである。
信号インターフェース103は、光センサ7の受光部72から検出信号を入力し、その検出信号を演算部101へ伝送する。さらに、信号インターフェース103は、演算部101が導出した各アクチュエータに対する制御指令を入力し、その制御指令を各アクチュエータの駆動信号へ変換して出力する。
<配線モジュールの製造工程>
次に、図3〜12を参照しつつ、端子挿入装置100が実行する処理の一例について説明する。端子挿入装置100は、複数の端子付電線9とそれらの端部に接続された複数のコネクタ8とを含む配線モジュール200の製造工程のうち、端子付電線9各々の端子92をコネクタ8各々のキャビティ81各々に挿入する端子挿入工程を実行する。
なお、便宜上、図3〜12において、端子挿入機構2〜5に関し、端子付電線9の端部領域900の一部を挟み持つ部分のみが模式的に表示され、その他の機構の表示は省略されている。さらに、図4〜12において、電線配列部材移送機構1及びコネクタ配列部材移送機構6の表示は省略されている。
また、便宜上、図4〜12は、第一挟持部21、第二挟持部31、第三挟持部4及び第四挟持部51に関し、端子付電線9の端部領域900を挟み持っている状態を黒塗りで示し、端子付電線9の端部領域900の挟持を解除している状態を白抜きで示している。
端子挿入工程は、起点・終点位置決め工程、挟持開始工程、第一移送一次工程、第一移送二次工程、第一受け渡し工程、第二移送工程、第二受け渡し工程、第三移送工程、第三受け渡し工程、第四移送一次工程及び第四移送二次工程を含む。
なお、各工程において動作する機構は、制御部10において記憶部102に記憶された制御プログラムを実行する演算部101の制御指令に従って動作する。その際、制御部10の演算部101は、記憶部102に記憶された各種データ及び光センサ7の検出結果を参照しつつ信号インターフェース103を通じて各機構に制御信号を出力することにより、各機構に上記の各工程を実行させる。
また、上記の各工程が実行される前に、電線配列部材移送機構1が固定座11を第一待避位置A1に配置させた状態で、電線配列部材90のモジュールが固定座11に固定される。さらに、コネクタ配列部材移送機構6が固定座61を第二待避位置A3に配置させた状態で、コネクタ配列部材80のモジュールが固定座61に固定される。
<起点・終点位置決め工程>
起点・終点位置決め工程は、起点位置決め工程と終点位置決め工程とを含む。
図3が示すように、起点位置決め工程は、電線配列部材移送機構1が、電線配列部材90の電線留め部902各々を選択的に起点位置P0に位置決めする工程である。本工程において、制御部10は、記憶部102の端子−キャビティ対応データに基づいて、起点位置P0に移動させるべき目的の電線留め部902を順次特定する。
そして、電線配列部材移送機構1が、電線配列部材90を第二方向に沿って移動させることにより、制御部10が特定した目的の電線留め部902を起点位置P0に位置させる。
一方、終点位置決め工程は、コネクタ配列部材移送機構6が、コネクタ配列部材80を第二方向に沿って移動させることにより、コネクタ8各々のキャビティ81各々を選択的に第二方向の終点位置P4に位置決めする工程である。本工程において、制御部10は、記憶部102の端子−キャビティ対応データに基づいて、終点位置P4に移動させるべき目的のキャビティ81を順次特定する。
そして、コネクタ配列部材移送機構6が、コネクタ配列部材80を第二方向に沿って移動させることにより、制御部10が特定した目的のキャビティ81を終点位置P4に位置させる。なお、前回の目的のキャビティ81と今回の目的のキャビティ81とが第三方向に沿って並んでいる場合、コネクタ配列部材移送機構6は、本工程においてコネクタ配列部材80を移動させない。
例えば、起点位置決め工程及び終点位置決め工程は並行して行われる。また、それらの工程が順次行われてもよい。
制御部10が目的の電線留め部902を順次特定するごとに、起点・終点位置決め工程が実行される。そして、起点・終点位置決め工程が実行されるごとに、後述する挟持開始工程、第一移送一次工程、第一移送二次工程、第一受け渡し工程、第二移送工程、第二受け渡し工程、第三移送工程、第三受け渡し工程、第四移送一次工程及び第四移送二次工程が行われる。
図3が示す工程は、1回目の起点・終点位置決め工程であり、この工程は、作動位置移行工程でもある。
図3が示すように、作動位置移行工程は、電線配列部材移送機構1が複数の端子付電線9の端部領域900を支持する電線配列部材90を第一待避位置A1から第一作動位置A2へ移動させる第一作動位置移行工程を含む。
さらに、作動位置移行工程は、コネクタ配列部材移送機構6が複数のコネクタ8を支持するコネクタ配列部材80を第二待避位置A3から第二作動位置A4へ移動させる第二作動位置移行工程も含む。
例えば、第一作動位置移動工程及び第二作動位置移動工程は並行して行われる。また、それらの工程が順次行われてもよい。
<挟持開始工程>
図4が示すように、挟持開始工程は、第一挟持部21が、予め定められた起点位置P0において、端子92の先端が第一方向を向く状態の端子付電線9における端部領域900の一部を挟み持つ工程である。本実施形態においては、第一挟持部21は、端子付電線9の端部領域900における電線91の2箇所を、第二方向に沿って両側から挟み持つ。
第一挟持部21が挟み持つ電線91の2箇所は、電線留め部902が挟む部分の両側の2箇所である。これにより、電線91を挟み持つ第一挟持部21が第三方向へ移動した際に、電線91は、曲がることなく電線留め部902から円滑に外れやすい。
<第一移送一次工程>
図5が示すように、第一移送一次工程は、第一挟持部関連機構2の第三方向移送機構22が、第一挟持部21を第三方向へ予め定められた距離だけ移動させた後に、第一挟持部関連機構2の第一方向移送機構23が直線経路R0に沿って第一方向へ移動させる工程である。
本工程において、第一方向移送機構23が第一挟持部21を既定の直線経路R0に沿って第一方向へ移動させ、その移動の途中で光センサ7が端子92の先端部を検知すると、第一方向移送機構23及び第三方向移送機構22が実行する工程は、次の第一移送二次工程へ移行する。
例えば、本工程において、第一挟持部関連機構2の第一方向移送機構23は、第一挟持部21を既定の直線経路R0に沿って予め定められた第一距離だけ第一速度で移動させる。ここで第一距離は、端子付電線9の初期位置のばらつきに関わらず、端子92が検出光73に到達しない範囲で設定される。続いて、第一方向移送機構23は、光センサ7が端子92の先端部を検出するまで第一挟持部21を既定の直線経路R0に沿って第一速度よりも遅い第二速度で移動させる。
上記の動作は、光センサ7の検出結果に応じて第一方向移送機構23を制御するフィードバック制御の遅れに起因して、端子92の位置決め誤差が無視できないほど大きくなることを防ぐ。さらに、上記の動作は、端子92の位置決め誤差を抑制しつつ、端子付電線9の移送速度を速め、工程の実行時間を短縮する。
なお、少なくとも第一移送一次工程が実行されているときに、光センサ7が検出光73を遮る物体(端子92の先端部)を検知する工程が実行されている。
<第一移送二次工程>
図6が示すように、第一移送二次工程は、第一挟持部関連機構2の第一方向移送機構23が、光センサ7が端子92を検出した時点から第一挟持部21を直線経路R0に沿って第一方向へ予め定められた距離だけ移動させた後に、第一挟持部関連機構2の第三方向移送機構22が予め定められた距離だけ第三方向の反対方向(Z軸負方向)へ移動させる工程である。本工程により、端子付電線9の端部領域900が第一中継位置P1へ移動する。
<第一受け渡し工程>
図7が示すように、第一受け渡し工程は、第二挟持部31が、第一中継位置P1において、第一挟持部21が挟み持つ端子付電線9の端部領域900における端子92の一部及び電線91の一部の各々を、第二方向に沿って両側から挟み持つ工程である。
さらに、本工程において、第一挟持部21は、電線91の挟持を解除する。これにより、第二挟持部31は、第一挟持部21から端子付電線9の支持を受け継ぐ。
図8が示すように、第二移送工程は、第二挟持部関連機構3の第一方向移送機構32が、予め定められた距離だけ第二挟持部31を第一方向へ移動させる工程である。本工程において、第一方向移送機構32は、端子付電線9の端部領域900を、第三挟持部4から離れている第一中継位置P1から第三挟持部4の挟み位置である第二中継位置P2へ移動させる。
<第二受け渡し工程>
図9が示すように、第二受け渡し工程は、第二中継位置P2において、第三挟持部4が、第二挟持部31が挟み持つ端子付電線9の端部領域900における端子92の一部を、第三方向に沿って両側から一時的に挟み持つ工程である。
さらに、本工程において、前第二挟持部31aは、第三挟持部4が端子92を挟み持ったときに一時的に端子92の挟持を解除し、再び端子92を挟み持つ。即ち、第三挟持部4は、端子付電線9の端子92の支持を第二挟持部31から一時的に受け継いだ後に第二挟持部31へ引き渡す。
なお、本工程において、後第二挟持部31bが、前第二挟持部31aと同様に、第三挟持部4が端子92を挟み持ったときに一時的に電線91の挟持を解除し、再び電線91を挟み持つことも考えられる。
<第三移送工程>
図10が示すように、第三移送工程は、第二挟持部関連機構3の第二方向移送機構33が、第二挟持部31を第二方向へ予め定められた距離だけ移動させる工程である。これにより、第二方向移送機構33は、第二挟持部31を既定の第二中継位置P2から既定の第三中継位置P3へ移動させる。前述したように、第二中継位置P2は、第二挟持部31が第三挟持部4から端子92の支持を受け継ぐ位置であり、第三中継位置P3は、第二挟持部31が第四挟持部51へ端子付電線9の支持を引き渡す位置である。
<第三受け渡し工程>
図11が示すように、第三受け渡し工程は、第三中継位置P3において、第四挟持部51が、第二挟持部31が第三挟持部4から受け継いで挟み持つ端子付電線9の端部領域900における端子92の一部及び電線91の一部の各々を挟み持つ工程である。
さらに、本工程において、第二挟持部31は、第四挟持部51が端子付電線9の端部領域900を挟み持ったときに端部領域900の挟持を解除する。これにより、第四挟持部51は、第二挟持部31から端子付電線9の支持を受け継ぐ。
<第四移送一次工程>
図12が示すように、第四移送一次工程は、第四挟持部関連機構5の第三方向移送機構52及び第一方向移送機構53が、第四挟持部51を移動させることによって端子付電線9の端子92の先端部を第三中継位置P3から終点位置P4のキャビティ81内へ移動させる工程である。
本工程において、第三方向移送機構52は、それぞれ既知の第三中継位置P3と目的のキャビティ81の位置との間の第三方向における距離差の分だけ第四挟持部51を第三方向(Z軸正方向)へ移動させる。もちろん、距離差がゼロの場合、第三方向移送機構52は第四挟持部51を移動させない。
さらに、本工程において、第四挟持部関連機構5の第一方向移送機構53は、それぞれ既知の第三中継位置P3及び終点位置P4に存在する目的のキャビティ81の入口の位置との間の第一方向における距離差に応じた距離だけ第四挟持部51を第一方向(X軸正方向)へ移動させる。これにより、端子92の先端部が目的のキャビティ81内に挿入される。
以上に示したように、第四移送一次工程において、第四挟持部関連機構5の第三方向移送機構52及び第一方向移送機構53は、第四挟持部51が第二挟持部31から端子付電線9の支持を受け継いだ第三中継位置P3と予め設定されたコネクタ8各々のキャビティ81の位置との比較により定まる移動手順に従って第四挟持部51を移動させる。
<第四移送二次工程>
図13が示すように、第四移送二次工程は、後第四挟持部51bが端部領域900の電線91を挟み持つ状態で、第四挟持部関連機構5の第一方向移送機構53が、後第四挟持部51bを目的のキャビティ81の奥行き寸法に応じた距離だけさらに第一方向へ移動させる工程である。
本工程において、前第四挟持部51aは端子92の挟持を解除し、第四挟持部関連機構5の前第三方向移送機構52aは、前第四挟持部51aをコネクタ8と干渉しない位置まで第三方向へ移動させる。
端子挿入装置100が、以上に示された各工程を実行することにより、端子付電線9の1つの端子92がコネクタ8のキャビティ81に挿入される。そして、端子挿入装置100は、コネクタ配列部材80に支持された複数のコネクタ8各々のキャビティ81に対する端子92の挿入が完了するまで、以上に示された各工程の実行を繰り返す。
コネクタ配列部材80に支持された複数のコネクタ8各々のキャビティ81に対する端子92の挿入が完了すると、コネクタ配列部材移送機構6は、コネクタ配列部材80を第二作動位置A4から第二待避位置A3へ移動させる。さらに、電線配列部材移送機構1が、電線配列部材90を第一作動位置A2から第一待避位置A1へ移動させる。
そして、第一待避位置A1及び第二待避位置A3において、電線配列部材90及びコネクタ配列部材80の取り替えが行われる。第二待避位置A3においてコネクタ配列部材移送機構6から取り外されたコネクタ配列部材80は、1組のワイヤハーネス又は1組のサブワイヤハーネスを構成する複数のコネクタ8を、端子付電線9の端子92が挿入された状態で一括して支持している。
第二待避位置A3において取り外されたコネクタ配列部材80は、それぞれ端子付電線9の端子92が挿入された複数のコネクタ8を支持した状態のまま、次の工程の場所へ搬送される。
上記を繰返すことで、図15に示すように、複数の端子付電線9と複数のコネクタ8とを備え、複数の端子付電線9の端子92がコネクタ8のキャビティ81に挿入された状態で一体化された配線モジュール200が製造される。
<挿入動作に関する詳細について>
本端子挿入装置100では、光センサ7が、既定の直線経路R0に沿って第一方向へ移動する端子付電線9の端子92の先端部が検出光73の位置に到達したことを検知する。そして、端子付電線9の端部領域900は、光センサ7が端子92を検知した位置から予め定められた距離分だけさらに第一方向へ移動して第一中継位置P1に到達する。これにより、起点位置P0における端子の位置のばらつきの第一方向の成分は、第一中継位置P1に到達した時点において解消されている。
さらに、端子付電線9の支持を受け継ぐ第二挟持部31が、端子付電線9の端部領域900における端子92の一部及び電線91の一部を第二方向に沿って両側から挟み持つ。これにより、起点位置P0における端子92の位置のばらつきの第二方向の成分は、第二挟持部31が端子付電線9の支持を受け継いだ時点において解消される。
さらに、端子付電線9の端子92の支持を一時的に受け継ぐ第三挟持部4が、端子付電線9の端子92の一部を第三方向に沿って両側から挟み持つ。これにより、起点位置P0における端子92の位置のばらつきの第三方向の成分は、第三挟持部が端子の支持を受け継いだ時点において解消される。
以上のようにして端子92の位置のばらつきが解消された後、第四挟持部51は、第二挟持部31から端子付電線9の端部領域900の支持を受け継ぎ、受け継いだ第三中継位置P3と予め設定されたコネクタ8各々のキャビティ81の位置との比較により定まる移動手順に従って移動する。
もっとも、上記のようにしても、第四挟持部51に対して端子92が本来の位置とはずれた状態で支持されることを完全に解消することは難しい。このため、例えば、第四挟持部51に対して端子92が本来の位置より上方又は下方にずれた位置で支持される場合が考えられる。また、端子92がX軸に対して傾いた状態で第四挟持部51によって支持され、これにより、端子92の先端部が本来の位置より上方又は下方にずれた位置で支持される場合が考えられる。
これらの場合、第四挟持部51をコネクタ8のキャビティ81に向けて移動させると(矢符Q2、Q3参照)、端子92の先端部がコネクタ8のうちキャビティ81の開口周縁部に当ってしまい、当該端子92の先端部をキャビティ81内に進入させることができなくなることが考えられる。
以下では、本端子挿入装置100について、端子92をキャビティ81に挿入する動作、特に、端子92の先端部がコネクタ8のうちキャビティ81の開口周縁部に当った場合の動作に着目した説明を行う。
<ブロック図>
図17は、本端子挿入装置100のうち端子92をキャビティ81に挿入する動作に関連する部分の機能ブロック図である。
この端子挿入装置100では、制御部10に対して、前第三方向移送機構52a、前第四挟持部51a、後第三方向移送機構52b、後第四挟持部51bがそれらを制御可能に接続されている。
また、第一方向移送機構53は、リニアアクチュエータ532を備えると共に、当該リニアアクチュエータ532に含まれるモータMを駆動制御するモータコントローラ532Mを備えている。上記モータMの回転運動は、ボールねじ構造等によって前第四挟持部51a及び後第四挟持部51bをキャビティ81に向けて直線的に進退移動させる力に変換される。すなわち、モータMは、前第四挟持部51a及び後第四挟持部51bをキャビティ81に向けて進退移動させる推力を発生させる。
制御部10は、モータコントローラ532Mを介してモータMを制御可能に接続されている。上記モータMは、ステッピングモータ等によって構成されており、モータコントローラ532Mによる制御下、制御される。すなわち、上記制御部10が、モータコントローラ532Mに第一方向移送機構53による進退方向、進退移動位置等を指令すると、モータコントローラ532Mは、当該指令に基づいて駆動回路を通じてモータMの回転方向(つまり、進退方向)、回転量(つまり、前第四挟持部51a及び後第四挟持部51bの進退移動位置)等を駆動制御する構成とされている。
また、上記モータコントローラ532Mは、モータMに組込まれたエンコーダ等を通じてモータMの回転量(つまり、前第四挟持部51a及び後第四挟持部51bの進退移動位置)を検出すると共に、モータMの駆動電流等に基づいて該モータMのトルクを検出可能に構成されている。モータコントローラ532Mによって検出されたモータMの回転量(つまり、進退移動位置)を示す信号及びモータMのトルクを示す信号は、制御部10に入力される。
また、制御部10は、挿入動作制御部10aとしての機能と、判定部10bとしての機能を備えている。判定部10bは、モータコントローラ532Mより与えられる前第四挟持部51a及び後第四挟持部51bの進退移動位置及びトルクに基づいて端子92の先端部がコネクタ8のキャビティ81に入り込んだか否かを判定する。挿入動作制御部10aは、当該判定結果等に基づいて、端子92をキャビティ81内に挿入するように、前第三方向移送機構52a、前第四挟持部51a、後第三方向移送機構52b、後第四挟持部51b、第一方向移送機構53の動作制御を行う。これらの処理については、フローチャートに基づいてより詳細に説明する。
<フローチャート>
図18は、本端子挿入装置100のうち端子92をキャビティ81に挿入する動作に関連する処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS1において、上記したように、起点・終点位置決め工程、挟持開始工程、第一移送一次工程、第一移送二次工程、第二受け渡し工程、第三移送工程、第三受け渡し工程が実施される。ステップS1終了後には、第四挟持部51が端子付電線9の端部を挟み持った状態となる。
この後、ステップS2において、制御部10の挿入動作制御部10aは、第四挟持部51により保持された端子付電線9の端子92の先端部をキャビティ81に挿入するように、第一方向移送機構53により第四挟持部51をキャビティ81に向けて進出移動させるように、第一方向移送機構53に対して第1前進指令を与える。この際の移動距離は、第三中継位置P3及び終点位置P4に存在する目的のキャビティ81の入口の位置との間の第一方向における距離差に応じた距離である。
次ステップS3において、判定部10bは、モータコントローラ532からのトルク検出信号に基づいて、端子92の先端部がキャビティ81内に入り込んだか否かを判定する。ここで、検出されるモータMのトルクは、第一方向移送機構53が第四挟持部51を進出移動させる際に必要となる物理量の1つである。
この際、端子92の先端部がコネクタ8のうちキャビティ81の開口周縁部に当接せず、スムーズにキャビティ81内に挿入されると、トルクはそれ程上昇しない。一方、端子92の先端部がコネクタ8のうちキャビティ81の開口周縁部に当接すると、その抗力によってモータMのトルクが上昇する。そこで、当該トルクに基づいて、例えば、トルクを所定の閾値と比較することによって、端子92の先端部がキャビティ81内に入り込んだか否かを判定することができる。具体的には、トルクが所定の閾値未満である状態が続く場合に端子92の先端部がキャビティ81内に入り込んだと判定し、トルクが所定の閾値を超える場合に、端子92の先端部がキャビティ81内に入り込んでいないと判定することができる。トルクが所定の閾値と同じである場合には、いずれに判定してもよい。
判定部10bにおける判定結果は、挿入動作制御部10aに与えられ、端子92の先端部がキャビティ81に入り込んだと判定されると、ステップS4に進み、端子92の先端部がキャビティ81に入り込んでいないと判定されると、ステップS7に進む。
ステップS4では、挿入動作制御部10aは、前第四挟持部51aの第四離接アクチュエータ512及び前第三方向移送機構52aに、第四挟持部上昇指令を与える。これにより、前第四挟持部51aは端子92の挟持を解除し、前第三方向移送機構52aは、前第四挟持部51aをコネクタ8と干渉しない位置まで第三方向へ上昇移動させる。
続いて、ステップS5において、挿入動作制御部10aは、第四挟持部51bにより保持された端子付電線9の端子92をキャビティ81の奥に挿入するように、第一方向移送機構53により第四挟持部51bをキャビティ81に向けて進出移動させるように、第一方向移送機構53に対して第2前進指令を与える。この際の移動距離は、端子92の先端部がキャビティ81の開口に入り込んだ位置からキャビティ81の奥に達するまでの距離である。これにより、端子92がキャビティ81内に奥まで挿入される。
この後、ステップS6において、挿入動作制御部10aにより各部に復帰移動指令が与えられ、前第三方向移送機構52a、前第四挟持部51a、後第三方向移送機構52b、後第四挟持部51b、第一方向移送機構53が、次の端子付電線9の処理に適した元の位置に復帰移動する。
ステップS3において、端子92の先端部がキャビティ81に入り込んでいないと判定された場合、ステップS7に進む。ステップS7では、挿入動作制御部10aは、第一方向移送機構53により第四挟持部51をキャビティ81から離れる方向に後退移動させるように、第一方向移送機構53に対して後退指令を与える。この際の後退移動量は、第四挟持部51により保持された端子付電線9の端子92の先端部を、キャビティ81の開口から後方に離れた位置に配設することが可能な距離である。後退後の位置は、例えば、上記第三中継位置P3位置とするとよい。
続くステップS9において、挿入動作制御部10aは、第四挟持部51を△H1上昇移動させるように、第三方向移送機構52に移動指令を与える。これにより、第四挟持部51によって保持された端子付電線9の端子92の先端部は、△H1上昇し、コネクタ8のうちキャビティ81の位置と第四挟持部51との相対的な位置関係が、キャビティ81の軸に対して直交する方向(ここでは、Z軸正方向)に変動する。
次ステップS9及びS10は、上記ステップS2及びS3と同様の処理である。これにより、再度、第四挟持部51がキャビティ81に向けて進出移動する。そして、ステップS10において、再度、端子92の先端部がキャビティ81に入り込んだか否かが判定される。ステップS10において、端子92の先端部がキャビティ81に入り込んだと判定されると、ステップS4以降の上記処理を実行し、端子92の先端部がキャビティ81内に入り込んでいないと判定されると、ステップS11に進む。
ステップS11では、上記ステップS7と同様に、挿入動作制御部10aは、第一方向移送機構53により第四挟持部51をキャビティ81から離れる方向に後退移動させるように、第一方向移送機構53に対して後退指令を与える。
続くステップS12において、挿入動作制御部10aは、第四挟持部51を△H2下降移動させるように、第三方向移送機構52に移動指令を与える。これにより、第四挟持部51によって保持された端子付電線9の端子92の先端部は、△H2下降し、コネクタ8のうちキャビティ81の位置と第四挟持部51との相対的な位置関係が、キャビティ81の軸に対して直交する方向(ここでは、Z軸負方向)に変動する。なお、△H2の絶対値は、△H1よりも大きい。好ましくは、△H2は、△H1の2倍である。これにより、第四挟持部51によって端子付電線9の端部を保持した理想的な位置を基準として、上方向及び下方向に対して同程度移動させた状態で、再挿入を試みることができる。
次ステップS13及びS14は、上記ステップS2及びS3と同様の処理である。これにより、再度、第四挟持部51がキャビティ81に向けて進出移動する。そして、ステップS14において、再度、端子92の先端部がキャビティ81に入り込んだか否かが判定される。ステップS14において、端子92の先端部がキャビティ81に入り込んだと判定されると、ステップS4以降の上記処理を実行し、端子92の先端部がキャビティ81内に入り込んでいないと判定されると、ステップS15に進む。
ステップS15では、挿入動作制御部10aは、各部に対して停止指令を与える。これにより、本端子挿入装置100の動作が停止する。この際、挿入失敗を報知する報知信号が出力されるとよい。報知部は、ブザー等、音によって報知するものであってもよいし、液晶表示部等の表示部又は発光表示部等による視覚によって報知するものであってもよい。
<挿入動作について>
上記処理に従った挿入動作について説明する。
まず、第四挟持部51によって端子付電線9の端部が所定の位置及び姿勢で保持されている場合の動作について説明する。
まず、図19に示すように、第四挟持部51が端子付電線9の端部を保持している。この状態で、第1前進処理(ステップS2参照)が実行されると、図20に示すように、端子92の先端部がキャビティ81の開口部分に挿入される。
この後、第四挟持部上昇処理(ステップS4参照)が実行されると、図21に示すように、前第四挟持部51aが上昇する。そして、第2前進処理(ステップS5参照)が実行されると、図22に示すように、端子92がキャビティ81内に奥まで挿入される。
次に、第四挟持部51によって端子付電線9の端部が所定の位置よりも下方の位置で保持されている場合の動作について説明する。なお、第四挟持部51において端子92が傾いており、その先端部が所定の位置よりも下方に位置している場合も、本動作と同様となる。
この場合、第1前進処理(ステップS2参照)が実行されると、図23に示すように、端子92の先端部がコネクタ8のうちキャビティ81の開口の下方部分に当ってしまう。そうすると、端子92の先端部がキャビティ81内に入り込んでいないと判定される(ステップS3参照)。このため、図24に示すように、後退処理(ステップS7)及び△H1上昇処理(ステップS8参照)が実行される。
この後、図25に示すように、再度、第1前進処理(ステップS9参照)が実行される。これにより、端子92の先端部がキャビティ81の開口内に入り込み、続けて、当該端子92をキャビティ81に挿入する処理を実行できることになる。
次に、第四挟持部51によって端子付電線9の端部が所定の位置よりも上方の位置で保持されている場合の動作について説明する。なお、第四挟持部51において端子92が傾いており、その先端部が所定の位置よりも上方に位置している場合も、本動作と同様となる。
この場合、第1前進処理(ステップS2参照)が実行されると、図26に示すように、端子92の先端部がコネクタ8のうちキャビティ81の開口の上方部分に当ってしまう。そうすると、端子92の先端部がキャビティ81内に入り込んでいないと判定される(ステップS3参照)。
このため、図27に示すように、後退処理(ステップS7参照)及び△H1上昇処理(ステップS8参照)が実行され、この後、再度、第1前進処理(ステップS9参照)が実行される。しかしながら、端子92は第四挟持部51に対して理想的な位置よりも上方に保持された状態のままとなるため、△H1上昇させた条件では、端子92の先端部はコネクタ8のうちキャビティ81の開口の上方部分に再度当ってしまう。そうすると、端子92の先端部がキャビティ81内に入り込んでいないと判定される(ステップS10参照)。
この後、図28に示すように、後退処理(ステップS11参照)及び△H2下降処理(ステップS12参照)が実行され、再度、第1前進処理(ステップS13参照)が実行される。これにより、端子92は1回目の挿入時よりも下降した状態でキャビティ81に向けて移動し、端子92の先端部がキャビティ81の開口内に入り込み、続けて、当該端子92をキャビティ81に挿入する処理を実行できることになる。
なお、第四挟持部51において端子付電線9の端部が上記△H1、及び、△H2から△H1減算した量よりも大きくずれている場合には、上記処理を実行しても、端子92の先端部はコネクタ8のうちキャビティ81の開口周縁部に当る状態を繰返すことになる。この場合には、本装置100の処理が停止され(ステップS15参照)、作業者等によって適宜手直し等が施される。
以上のように構成された端子挿入装置100及び配線モジュール200の製造方法によると、端子92の先端部が入り込んでいないと判定された場合、第四挟持部51をキャビティ81から後退移動させた後、再度、第四挟持部51をキャビティ81に向けて進出移動させるため、端子92の先端部をキャビティ81内により確実に入り込ませることができる。そして、端子92の先端部がキャビティ81に入り込んだ後、端子92をさらに押込むことで、当該端子92をより確実にキャビティ81に挿入することができる。このため、コネクタ8の各キャビティ81に、端子付電線9の端子92を順次挿入していく作業を効率よく行える。
また、端子付電線9の端子92の先端部がキャビティ81内に入り込んでいないと判定された場合に、第四挟持部51とキャビティ81との相対的位置関係をキャビティ81の軸に対して直交する方向に変動させた後、第四挟持部51をキャビティ81に向けて進出移動させるため、端子92の先端部をキャビティ81により確実に入り込ませることができる。
特に、第四挟持部51は、端子付電線9の端部を挟込んで保持する構成であるため、キャビティ81に対する端子92のずれは、その挟込み方向に対して直交する方向(Z軸方向)に生じ易いと考えられる。そこで、端子付電線9の端子92の先端部がキャビティ81内に入り込んでいないと判定された場合に、第四挟持部51とキャビティ81との相対的位置関係を、Z軸方向に沿って変動させた後、第四挟持部51をキャビティ81に向けて進出移動させることで、上記位置ずれが解消される可能性が高まり、端子92の先端部をキャビティ81に対してより確実に入り込ませることができる。
もっとも、端子付電線9の端子92の先端部がキャビティ81内に入り込んでいないと判定された場合に、第四挟持部51とキャビティ81との相対的位置関係をキャビティ81の軸に対して直交する方向に変動させることは必須ではない。再挿入を繰返すことによっても、端子92をキャビティ81に挿入できる可能性が高まると考えられる。また、端子付電線9の端子92の先端部がキャビティ81内に入り込んでいないと判定された場合に、第四挟持部51とキャビティ81との相対的位置関係をキャビティ81の軸に対して直交し、かつ、上記挟込み方向に沿った方向(即ち、Y軸方向)に沿って変動させてもよい。
また、端子92の先端部がキャビティ81に入り込んだか否かの判定を、第一方向移送機構53のモータMのトルク検出信号に基づいて行うため、別途、第四挟持部51に加わる力を検出するセンサ等を設けることなく、簡易な構成で、上記判定を行うことができる。もっとも、第四挟持部の支持機構に別途圧力センサを設ける等して、第四挟持部に加わる力を検出してもよい。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。