以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、第1の発明による濾過装置の実施形態を示す図である。この濾過装置は、各種装置の冷却水又はプロセス液等の産業一般に用いられる液体の濾過、潤滑油又はディーゼル燃料油等の油の濾過、化学工場等で使用される各種原料の気体等の濾過、或いは船舶のバラスト水の濾過に適用されるもので、それらに含まれる微粒子や塵埃等を捕捉除去する一方、フィルターエレメントの内周面に付着した捕捉物をはく離する逆洗可能とされ、図1に示すように、ケーシング1と、フィルターエレメント2と、逆洗用摺動部材3と、逆洗用パイプ4と、作動シリンダー5と、流体流通手段6とを備えて成る。
前記ケーシング1は、濾過装置の外殻をなすもので、一端部及び他端部が閉塞された筒状(例えば円筒形状)、直方体形状などに形成され、内部に密閉された空間を有している。このケーシング1の内部は、その長手方向の中間二箇所に配置された第1の隔壁板7a及び第2の隔壁板7bで三つの室に仕切られている。第1の隔壁板7aと第2の隔壁板7bとの間に対象流体が外部から流入する流体流入室8を有し、第2の隔壁板7bと一端部の端板9との間に前記流体流入室8から流入した対象流体を濾過して外部へ流出させる濾過室10を有し、第1の隔壁板7aと他端部の端板11との間に前記濾過室10の濾過による捕捉物を外部へ排出させるドレン室12を有している。ケーシング1の材質は、金属又は合成樹脂などであり、その形状・大きさは、濾過装置の使用目的、通過させる液体、気体等の種類、量、設置場所などに応じて適宜決めればよい。
前記流体流入室8の一部には、流体入口13が設けられている。この流体入口13は外方に突出したパイプ状とされ、その先端がフランジ状とされて、ここに図示省略の流体供給管が接続される。また、前記濾過室10の一部には、流体出口14が設けられている。この流体出口14は外方に突出したパイプ状とされ、その先端がフランジ状とされて、ここに図示省略の濾過流体排出管が接続される。さらに、前記ドレン室12の一部には、ドレン口15が設けられている。このドレン口15は外方に突出したパイプ状とされ、その先端がフランジ状とされて、ここに図示省略の捕捉物排出管が接続される。そして、前記第2の隔壁板7bの中心部には、例えば円形の貫通孔16が形成されている。
前記濾過室10の内部には、フィルターエレメント2が設けられている。このフィルターエレメント2は、対象となる流体を通過させて流体中に含まれる固形分やゲル状の塵埃等を捕捉して濾過するもので、全体が円筒状に形成され、その一端部が閉塞されると共に前記流体流入室8側に位置する他端部が開口され、内側から外側に向けて流体が通過して濾過するようになっている。すなわち、このフィルターエレメント2は、図1において左側に位置する一端部が封止部材17に保持されて閉塞され、右側に位置して開口する他端部が第2の隔壁板7bの貫通孔16に結合されている。
前記フィルターエレメント2の封止部材17は、フィルターエレメント2の一端部を閉塞すると共に、該フィルターエレメント2の形状を維持する機能をも果たす。そして、前記封止部材17の中心部にて左側に突出する支持軸18が、ケーシング1の一端部の端板9の近くに設けられた振れ止め板19に支持されている。これにより、フィルターエレメント2の一端部が、濾過室10の内部にて振れ止め板19の緩衝作用を利用して支持される。なお、図1において、符号38はケーシング1の一端部外周に設けられたリング状のフランジを示し、符号39は前記端板9とフランジ38との間に介在されたリング状のパッキンを示している。また、前記フィルターエレメント2の封止の仕方は一例であり、第2の隔壁板7bの貫通孔16に結合されたフィルターエレメント2の他端部側を外せるようにしてもよい。このフィルターエレメント2は、濾過が出来ることと、後述の逆洗用摺動部材3がその内部で動作できればよい。
前記フィルターエレメント2は、複数の金網を焼結して保形性を高め円筒状に成形したものや、金属繊維製あるいは樹脂製不織布及び/又は金網あるいは樹脂製メッシュによって構成される。さらには、円筒状のノッチワイヤーフィルターエレメント、ウェッジワイヤーフィルターエレメント、板部材に細孔をあけたもの等がある。前記金属繊維製不織布は、金属繊維を積層して焼結して調製したものであり、濾過したい流体に含まれる塵埃等を付着させて清浄流体とするという機能を果たす。また、金網は、濾過機能を果たす場合もあれば、前記金属繊維製不織布の保形支持材や表面保護材としての機能を果たすこともある。なお、フィルターエレメント2の形状、大きさ、数などは、濾過装置の使用目的、濾過性能、ケーシング1の大きさ、対象の流体の種類などに応じて適宜決めればよい。
前記フィルターエレメント2の内部には、逆洗用摺動部材3がフィルターエレメント2の軸方向に往復移動可能に設けられている。この逆洗用摺動部材3は、外周部がフィルターエレメント2の内周面に摺接すると共に該フィルターエレメント2で、逆洗時の内外の圧力差で生じる内向きの流れにより、前記フィルターエレメント2の内周面に付着した捕捉物をはく離するものである。そして、前記逆洗用摺動部材3は、金属等で円盤状部材に形成され、その厚み内で外周部から中心部に向かってフィルターエレメント2の内外の圧力差で流体が内向きに流れる隙間を有し、この隙間が後述の逆洗用パイプ4の流体流通孔に連通している。なお、前記円盤状部材の外径は、前記円筒状のフィルターエレメント2の内周に嵌まってその内周面に摺接し得る大きさとされている。
前記逆洗用摺動部材3の一側面には、逆洗用パイプ4が接続されている。この逆洗用パイプ4は、逆洗用摺動部材3で生じる内向きの流れをドレン室12に向けて流出可能とするもので、全体が直線状に形成され、その基端が逆洗用摺動部材3の一側面に接続されると共に、他端にはピストン部材20が設けられ、且つ軸方向に形成された流体流通孔21の長手方向の何れか1箇所、例えば出口側にオリフィス28が設けられている。このオリフィス28は、流体流通孔21内をドレン室12側に流れる逆洗流量を制限すると共に、それによりドレン室12以降の配管による圧力損失を制限するものである。
前記逆洗用摺動部材3及び逆洗用パイプ4の具体的な形状、構造は、図2及び図3に示すように構成されている。図2は、逆洗用摺動部材3及び逆洗用パイプ4を一部断面して示す拡大断面図である。また、図3は、逆洗用摺動部材3を構成する二つの円盤状部材を示す側面図である。
図2において、逆洗用摺動部材3は、所定の厚みの第1の円盤状部材3aと、同じく所定の厚みの第2の円盤状部材3bとを組み合わせて構成される。第1の円盤状部材3aは、図3(a)に示すように、外周部に近い所にて円周方向の例えば2等分〜4等分の位置にボルトを通すボルト孔22を有している。第2の円盤状部材3bは、図3(b)に示すように、第1の円盤状部材3aのボルト孔22に対応する位置に同じくボルトを通すボルト孔23を有すると共に、中心部には前記逆洗用パイプ4を嵌合し得る内径の結合孔24が穿設されている。
上記2枚の円盤状部材3a,3bは、図2に示すように、スペーサ25を間に介在させて、ボルト26を前記ボルト孔22,23に挿入し、ボルト26の他端部にナット27を螺合して組み合わされている。したがって、逆洗用摺動部材3は、2枚の円盤状部材3a,3bの間にスペーサ25の長さ分の間隔をあけて平行に組み付けられ、この間隔が円盤状部材(3a,3b)の厚み内で外周部から中心部に向かって内向きの流れを生じる隙間25gとなる。
図2において、逆洗用パイプ4は、その基端が逆洗用摺動部材3の第2の円盤状部材3bに穿設された結合孔24に溶接等で接続されており、その軸方向に流体流通孔21が形成されている。また、他端には、ピストン部材20が溶接等で取り付けられている。このピストン部材20は、後述の作動シリンダー5内に嵌合されて前記逆洗用摺動部材3をフィルターエレメント2の内部で往復移動させるもので、その外径は、作動シリンダー5の内周に嵌まってその内周面に摺接し得る大きさとされている。そして、ピストン部材20の中心部には、流体流通孔21と同一軸線上のオリフィス28が穿孔されている。したがって、この逆洗用パイプ4により、ピストン部材20で逆洗用摺動部材3をフィルターエレメント2の内部で往復移動させると共に、前記逆洗用摺動部材3の隙間25gで内向きの流れを生じた流体を前記ドレン室12に向けて流出可能とすることができる。
図1において、前記逆洗用パイプ4のピストン部材20は、作動シリンダー5の内部に往復移動可能に嵌合されている。この作動シリンダー5は、前記逆洗用摺動部材3をフィルターエレメント2の内部で往復移動させると共に、逆洗用パイプ4からの流体をドレン室12に向けて流すもので、一端部が前記流体流入室8内に位置しており、前記逆洗用パイプ4に設けられたピストン部材20を前記一端部から往復移動可能に嵌合し、他端部が前記ドレン室12内まで直線状に伸びている。
前記作動シリンダー5の具体的な形状、構造は、図4に示すように構成されている。図4は、逆洗用パイプ4及び作動シリンダー5を示す拡大断面図である。この作動シリンダー5は、図4に示す左側の一端部に閉塞部材29が取り付けられて、この一端部側での流体の漏れ止めがされている。この閉塞部材29の中心部には、前記逆洗用パイプ4を嵌合する孔があけられており、その逆洗用パイプ4を往復移動可能に嵌合している。なお、逆洗用パイプ4を嵌合する孔の内周には、シール材が介装されている。また、前記逆洗用パイプ4に取り付けられたピストン部材20が、作動シリンダー5の他端部側に嵌合されている。したがって、作動シリンダー5の内部にて閉塞部材29とピストン部材20との間には、空間30が形成されている。なお、作動シリンダー5の図4に示す右側の他端部は、図1に示すようにドレン室12内まで伸びて開放されている。これにより、図1に示す逆洗用摺動部材3の隙間25gで内向きの流れを生じた流体は、逆洗用パイプ4の流体流通孔21及びピストン部材20のオリフィス28並びに作動シリンダー5を通ってドレン室12に向けて流れることになる。
前記作動シリンダー5の閉塞部材29には、図1に示すように、流体流通手段6が接続されている。この流体流通手段6は、作動シリンダー5内に嵌合された逆洗用パイプ4のピストン部材20を該作動シリンダー5内で往復移動可能とするもので、作動シリンダー5内に流体を自由流通させるパイプやチューブ等から成り、先端の口金31が前記閉塞部材29の一箇所に接続されている。前記流体流通手段6は、常圧(例えば大気圧)に解放された口金とされている。なお、前記流体流通手段6は、大気解放に限られず、常圧の水、油等の液体を流通させる配管に接続されていてもよい。
前記流体流通手段6の口金31が接続される閉塞部材29の構造について、図4を参照して説明する。図4において、前記閉塞部材29の中心部にあけられた孔は、作動シリンダー5内の空間30に臨む右半部が逆洗用パイプ4の外径よりも大きい内径とされ、前記逆洗用パイプ4の外周面との間にギャップ32が形成されている。このギャップ32は、作動シリンダー5内の空間30に連通している。そして、前記閉塞部材29の一箇所には、その厚み内に流通孔33が形成され、該流通孔33の内周面には雌ネジが切られている。この状態で、流通孔33に、図1に示すように、流体流通手段6の口金31の雄ネジを螺合して、前記閉塞部材29の一箇所に流体流通手段6が接続されている。したがって、この流体流通手段6により、作動シリンダー5の一端部に設けられた閉塞部材29と該作動シリンダー5内に嵌合された逆洗用パイプ4のピストン部材20との間の空間30に流体を自由流通させることができる。すなわち、前記空間30の流体は出し入れ自由となる。
以上のような濾過装置の構成において、前記濾過室10からの流体出口14の圧力(すなわち、フィルターエレメント2の出口側圧力)を常圧(例えば大気圧)よりも高くすると共に、前記流体流入室8への流体入口13の圧力(すなわち、フィルターエレメント2の入口側圧力)を流体出口14の圧力よりも高くなるようにしてある。流体出口14の圧力を常圧よりも高くするには、流体出口14の下流側の配管抵抗を高めればよい。例えば、出口弁を絞る、背圧弁を設ける、配管を立ち上げてヘッド(水頭)を大きくするなどである。また、流体入口13の圧力を流体出口14の圧力よりも高くするには、流体がフィルターエレメント2の内側から外側に向けて通過する時に発生する圧力差(差圧)を出口圧に加えてやればよい。すなわち、入口圧=出口圧+フィルター差圧となるようにして対象流体を供給すればよい。この状態で、前記ドレン室12のドレン口15を流体出口14の圧力より低い圧力側に開閉することで濾過を行い、及びフィルターエレメント2の逆洗を行うようになっている。
次に、このように構成された濾過装置の動作について、図1、図5及び図6を参照して説明する。図1は、濾過時におけるケーシング1内のフィルターエレメント2、逆洗用摺動部材3、逆洗用パイプ4及び作動シリンダー5の状態を示す説明図である。この状態では、逆洗用摺動部材3はフィルターエレメント2内で最も左側に寄った一端部に位置しており、逆洗用パイプ4のピストン部材20は作動シリンダー5内で最も左側に寄った一端部に位置しており、ドレン口15は弁(図示省略)等により閉じられている。これが初期状態となる。
濾過時には、図1において、外部の対象流体をケーシング1の流体入口13から矢印Aのように流入させると共に、流体出口14から矢印Bのように外部へ流出させる。このとき、対象流体は、流体入口13から流体流入室8に流入し、該流体流入室8内を図1において左側に流れて、第2の隔壁板7bに形成された貫通孔16を通ってフィルターエレメント2内に流入し、その内側から外側に向けて流体が通過しながら濾過される。濾過された流体は、フィルターエレメント2の外側の濾過室10へ流れ出て、該濾過室10から濾過済み流体として流体出口14を介して外部へ流出する。
このようにして濾過を続けると、対象流体中に含まれていた固形分やゲル状の塵埃等がフィルターエレメント2に捕捉され、該フィルターエレメント2に蓄積して目詰まりを起こすことがある。目詰まりが生じてきたならば、フィルターエレメント2の濾過性能を回復させるために、該フィルターエレメント2に付着した捕捉物をはく離させる逆洗を行う。
図5は、逆洗時におけるケーシング1内のフィルターエレメント2、逆洗用摺動部材3、逆洗用パイプ4、作動シリンダー5及び流体流通手段6の状態を示す説明図である。逆洗時には、流体入口13から流体を流入させると共に、流体出口14から流体を流出させながら、常圧(例えば大気圧)に開放されたドレン口15を開けてドレン室12内の流体を矢印Cのように外部へ流出させる。このとき、ドレン室12内の流体が外部へ流出することにより、作動シリンダー5の内側、ピストン部材20のオリフィス28、逆洗用パイプ4の流体流通孔21及び逆洗用摺動部材3の隙間25gの連通により、逆洗用摺動部材3の隙間25gの圧力がフィルターエレメント2の外側の圧力よりも低くなる。この内外の圧力差により、前記隙間25gでフィルターエレメント2の外側から内側に向けて矢印Dのように内向きの流れを生じ、該フィルターエレメント2の内周面に付着した捕捉物をはく離する逆洗が開始され、前記オリフィス28から逆洗流体が噴出する。
前記はく離された捕捉物は、逆洗用摺動部材3の隙間25gから逆洗用パイプ4の流体流通孔21、ピストン部材20のオリフィス28を通って矢印Eのように噴き出し、作動シリンダー5を介してドレン室12内へ入り、該ドレン室12から矢印Cのように外部へ排出される。なお、前記逆洗が開始される時の流体入口13と流体出口14との圧力差は、例えば10〜100kPa位である。しかし、この範囲に限定されるものではなく、濾過される対象流体に応じて、適宜変更して設計される。
図5に示す逆洗時において、逆洗用摺動部材3をフィルターエレメント2内で右側に移動させるのは、前記逆洗用摺動部材3における第1の円盤状部材3aの封止部材17側の圧力とドレン室12の圧力との差である。そして、その圧力差はできるだけ大きい方がよい。そのため、流体出口14の圧力を常圧よりも高くすればよい。例えば、出口弁を絞る、背圧弁を設ける、配管を立ち上げてヘッド(水頭)を大きくするなどである。ここで、流体流通手段6により、矢印F,Gのように作動シリンダー5内に流体を自由流通させるようにしているので、図4に示すように、作動シリンダー5内に嵌合された逆洗用パイプ4のピストン部材20は該作動シリンダー5内で自由に往復移動可能とされている。これにより、前記圧力差により、逆洗用摺動部材3の全体がフィルターエレメント2内を右側に移動する。
このとき、前記逆洗用摺動部材3の外周部がフィルターエレメント2の内周面に摺接すると共に該フィルターエレメント2の外側から内側に向けて内向きの流れを生じ、そのフィルターエレメント2の内周面に付着した捕捉物をはく離しながら逆洗する。このようにして、前記逆洗用摺動部材3がフィルターエレメント2の右側の他端部に至るまで逆洗して行く。なお、この逆洗時においても、フィルターエレメント2の濾過は、逆洗用摺動部材3の左側では効率良く行われなくなるが、後述の図9に示す構造とすることにより、図1に示すと同様に継続実行することができる。
図6は、逆洗用摺動部材3を初期状態に戻すときの状態を示す説明図である。この状態では、逆洗用摺動部材3はフィルターエレメント2内で最も右側に寄った他端部に位置しており、逆洗用パイプ4のピストン部材20は作動シリンダー5内で最も右側に寄った他端部に位置している。このような状態になると、前記逆洗用摺動部材3が第2の隔壁板7bの貫通孔16を塞ぐような状態になり、図1及び図5に示すように対象流体が貫通孔16を通ってフィルターエレメント2内に流入するのが困難となり、該フィルターエレメント2による濾過ができなくなる。そこで、逆洗用摺動部材3を図1に示す初期状態に戻す必要がある。
この場合、流体入口13から流体を流入させると共に、流体出口14から流体を流出させた状態で、ドレン口15を閉じる。したがって、ドレン室12からの流体の排出は停止する。つまり、ドレン口15につながる弁を止めることにより、連通になっている濾過室10とドレン室12の圧力が同じになり、ピストン部材20のオリフィス28を通る流れが止まる。すると、ピストン部材20は、ドレン室12の圧力を受ける。ここで、流体流通手段6は例えば大気に解放されているので、作動シリンダー5内の空間30の中の流体は、ドレン室12の圧力によって矢印Gのように外へ排出される。また、流体入口13から流体が流入することにより、第2の隔壁板7bに形成された貫通孔16からフィルターエレメント2の内側に流れ込もうとする流体の圧力差も加わる。その結果、逆洗用摺動部材3の全体がフィルターエレメント2内を矢印Hのように左側に移動する。このようにして、前記逆洗用摺動部材3がフィルターエレメント2の左側の一端部に至るまで移動する。これにより、逆洗用摺動部材3が図1に示す初期状態に戻る。その後は、図1に示すように対象流体の濾過を行い、図5に示すようにフィルターエレメント2の逆洗を行う。
なお、図6の場合において、ドレン口15をわずかに開いた状態とし、図5に示すフィルターエレメント2の逆洗を行いながら、逆洗用摺動部材3を戻すようにしてもよい。この場合は、濾過室10、流体流入室8の圧力、ドレン室12の圧力又は流体流通手段6から流入する流体の速度をコントロールすることによって、前記逆洗用摺動部材3の移動や逆洗の状態を制御することができる。
図7は、逆洗用摺動部材3の第2の実施形態を示す要部拡大断面図である。この実施形態は、前記円盤状部材(3a,3b)の一側面又は両側面の外周部に沿って、その全周にわたって前記フィルターエレメント2の内周面に摺接するブラシ34を備えたものである。このブラシ34は、前記逆洗用摺動部材3がフィルターエレメント2の内部でその軸方向に往復移動する際に一緒に移動して該フィルターエレメント2の内周面に付着した捕捉物を掻き落すもので、図7に示すように、チャンネルリング34aの外周部にブラシ毛34bを植え付けて成り、リングブラシと呼ばれるものである。チャンネルリング34aは、例えば金属等で出来た断面コ字状のチャンネル材を、フィルターエレメント2の内径よりも小さい外径を有するリング状に巻いたものである。このチャンネルリング34aの外周のコ字状凹部には、毛先が前記フィルターエレメント2の内周面に摺接できるブラシ毛34bがリング状に植え付けられている。ブラシ毛34bの毛足の長さは、少なくともフィルターエレメント2の内周面に該ブラシ毛34bの先端がある程度の圧力をもって接触する程度にすることが必要である。また、ブラシ毛34bの材質は、例えば天然若しくは合成の繊維、又は鋼、銅、真鍮などの金属線等の一般にブラシの毛として使用されているものならば何でもよい。そして、チャンネルリング34aを第2の円盤状部材3bの右側面に溶接等で接続することにより、ブラシ34を取り付けている。
なお、前記ブラシ34の替わりに、外周部の部材が上記フィルターエレメント2の内周面に摺接して捕捉物を除去することができるならば、例えば、刃状又はヘラ状に形成された金属製、樹脂製あるいはゴム製のスクレーパ等を用いてもよい。
この実施形態では、濾過を行いたい対象流体中に粘着性の高いゴミや、繊維状のゴミが多い場合に、フィルターエレメント2の内周面に付着した捕捉物をブラシ34で掻き落しながら逆洗用摺動部材3の隙間25gにて内外の圧力差で生じる内向きの流れで逆洗することができる。なお、図7においては、ブラシ34を逆洗用摺動部材3の第2の円盤状部材3bの右側面に設けたものとしたが、第1の円盤状部材3aの左側面に設けてもよいし、逆洗用摺動部材3の両側面に設けてもよい。いずれの場合においても、フィルターエレメント2の捕捉物を、ブラシ34で掻き落しながら逆洗用摺動部材3の隙間25gで流体が内向きに流れるという位置関係になるのが望ましい。また、ブラシ34を逆洗用摺動部材3の両側面に設けた場合は、ブラシ34を隙間25gのシール構造として機能させてもよい。
図8は、逆洗用摺動部材3の第3の実施形態を示す要部拡大説明図である。この実施形態は、前記円盤状部材(3a,3b)の盤面内にて一側面から他側面に貫通する一又は複数個の流体通過穴(35,36)を形成したものである。すなわち、第1の円盤状部材3aと第2の円盤状部材3bとの間に隙間25gを形成した状態で、第1の円盤状部材3aから第2の円盤状部材3bに連通する流体通過穴35,36を形成している。
図9は、第3の実施形態の逆洗用摺動部材3における第1及び第2の円盤状部材3a,3bの形状、構造を示す説明図である。図9(a)は、第1の円盤状部材3aの左側面図である。この第1の円盤状部材3aは、図3(a)に示すと同様に、外周部に近い所にて円周方向の例えば2等分〜4等分の位置にボルトを通すボルト孔22を有している。そのボルト孔22の内側にて、円周方向の例えば2等分〜8等分の位置に複数個の流体通過穴35が形成されている。そして、図9(b)に示すように、前記流体通過穴35の第2の円盤状部材3bに面する側面には、それぞれの流体通過穴35の外周を縁取る縁部材37が突出している。この縁部材37の高さは、図2に示すスペーサ25の長さと同一とされている。
図9(c)は、第2の円盤状部材3bの右側面図である。この第2の円盤状部材3bは、図9(a)に示す第1の円盤状部材3aのボルト孔22に対応する位置に同じくボルトを通すボルト孔23を有すると共に、中心部には前記逆洗用パイプ4を嵌合し得る内径の結合孔24が穿設されている。そして、前記ボルト孔23の内側にて結合孔24の外側には、図9(a)に示す第1の円盤状部材3aの各流体通過穴35に対応する位置に同じく流体通過穴36が形成されている。
このような状態で、図8に示すように、第1の円盤状部材3aと第2の円盤状部材3bとを合わせ、図2に示すと同様に、両者間に縁部材37を位置させて、ボルト26を前記ボルト孔22,23に挿入し、ボルト26の他端部にナット27を螺合して組み合わされている。したがって、逆洗用摺動部材3は、2枚の円盤状部材3a,3bの間に縁部材37の高さ分の間隔をあけて平行に組み付けられ、この間隔が円盤状部材(3a,3b)の厚み内で外周部から中心部に向かって内外の圧力差で流体が内向きに流れる隙間25gとなる。
この実施形態では、図5に示す逆洗時において、フィルターエレメント2の右側に位置して開口する他端部から流体が流れ込むのを、その流れに反対する方向に移動する逆洗用摺動部材3が遮るようになるので、その流体の流れを前記各流体通過穴35,36で通すことができる。これにより、逆洗時においても濾過を継続することができる。また、流体通過穴35,36の存在により、逆洗用摺動部材3に流体入口13と流体出口14間の差圧が掛かりにくいようにすることができる。
図10は、第1の発明による濾過装置の他の実施形態を示す図である。この実施形態は、図8及び図9に示す第3の実施形態の逆洗用摺動部材3を用いた図1に示す濾過装置において、逆洗用パイプ4の一端に前記逆洗用摺動部材(31)を1個設けると共に、該逆洗用パイプ4の軸方向の中間部にて流体流通孔21に前記フィルターエレメント2の内外の圧力差で生じる内向きの流れを導入可能に構成された他の逆洗用摺動部材(32)を1個又は複数個設けたものである。
具体的には、フィルターエレメント2の長さを図1の場合に比べて例えば2倍、3倍と長く形成し、逆洗用パイプ4の長さも長くしている。そして、この逆洗用パイプ4の一端部(図10において左側端部)に図8及び図9に示す逆洗用摺動部材3と全く同じ構造の第1の逆洗用摺動部材31を設け、逆洗用パイプ4の軸方向の中間部に第2の逆洗用摺動部材32を設けている。この場合、逆洗用パイプ4の軸方向の流体流通孔21は全長にわたって連続していなければならないので、第2の逆洗用摺動部材32については、図9(a),(b)に示す第1の円盤状部材3aの中心部にも逆洗用パイプ4を嵌合し得る内径の結合孔24(図9(c),(d)参照)が穿設されて、逆洗用パイプ4に溶接等で接続されている。なお、図10においては、逆洗用パイプ4の中間部に第2の逆洗用摺動部材32を1個設けたものとしたが、第2の逆洗用摺動部材32に相当するものを適宜の間隔をあけて2個又は3個以上設けて、第1の逆洗用摺動部材31を含めた全体として2段或いは3段以上の逆洗用摺動部材3を設けてもよい。
このような実施形態によれば、作動シリンダー5の長さを変更することなく、フィルターエレメント2の長さを図1の場合に比べて2倍、3倍以上と長くすることができるので、濾過の処理量を大きくする際に装置の全長をあまり長くすることなく実現できる。また、他の部品を増すことなく装置の大型化を実現できる。さらに、後述の図13に示す第2の発明による濾過装置における単位濾過ユニット40に適用することもでき、濾過の処理量を更に増大することができる。
図11は、第1の発明による濾過装置における逆洗用パイプ4の第2の実施形態を示す要部拡大断面図である。この第2の実施形態は、オリフィス28を逆洗用パイプ4の流体流通孔21の途中に設けたものである。この場合、前記流体流通孔21の長手方向の中間部に流体の流れを止める栓部材を嵌合し、この栓部材の中心部にオリフィス28を穿孔している。オリフィス28の作用は、図2に示すものと同じである。
図12は、前記濾過装置における逆洗用パイプ4の第3の実施形態を示す要部拡大断面図である。この第3の実施形態は、オリフィス28を逆洗用パイプ4の流体流通孔21の入口側に設けたものである。この場合、前記流体流通孔21の入口側に位置する第2の円盤状部材3bを閉止蓋のように形成し、この閉止蓋の中心部にオリフィス28を穿孔している。オリフィス28の作用は、図2に示すものと同じである。なお、図11又は図12に示す実施形態の逆洗用パイプ4は、図1又は図10に示す濾過装置の何れにも適用できるものである。
また、図2、図11及び図12に示したオリフィス28とは別の実施形態として、逆洗用パイプ4の流体流通孔21の長手方向の何れか1箇所にオリフィス28を設ける替わりに、逆洗用摺動部材3の第1及び第2の円盤状部材3a,3b間の隙間25gを狭くして、その隙間25gを通って逆洗用パイプ4の流体流通孔21内をドレン室12側に流れる流体の抵抗を高めてもよい。
図13は、第2の発明による濾過装置の実施形態を示す図である。この濾過装置は、対象流体が外部から流入する流体流入室8、及びこの流体流入室8から流入した対象流体を濾過して外部へ流出させる濾過室10、並びにこの濾過室10の濾過による捕捉物を外部へ排出させるドレン室12を、密閉された空間の内部に有するケーシング1の内部に、第1の発明におけるフィルターエレメント2と、逆洗用摺動部材3と、逆洗用パイプ4と、作動シリンダー5と、流体流通手段6とを一体に組み合わせた単位濾過ユニット40を複数個並列に配置したものである。
図13において、ケーシング1は、濾過装置の外殻をなすもので、有底有蓋の筒状(例えば円筒形状)、直方体形状などに形成され、内部に密閉された空間を有している。図13では、図1に示すものよりも大径で縦型の円筒形状に形成された例を示す。このケーシング1の内部は、その上下方向の中間に配置された第1の隔壁板7a、第2の隔壁板7b及び端板9で三つの室に仕切られている。第1の隔壁板7aと第2の隔壁板7bとの間に対象流体が外部から流入する流体流入室8を有し、第2の隔壁板7bと一端部の端板9との間に前記流体流入室8から流入した対象流体を濾過して外部へ流出させる濾過室10を有し、第1の隔壁板7aと他端部の端板11との間に前記濾過室10の濾過による捕捉物を外部へ排出させるドレン室12を有している。ケーシング1の材質は、金属又は合成樹脂などであり、その形状・大きさは、濾過装置の使用目的、通過させる液体、気体等の種類、量、設置場所などに応じて適宜決めればよい。なお、図13において、符号43はフィルターエレメント2を第2の隔壁板7bに取り付けるための取付金具を示している。
前記流体流入室8の一部には、流体入口13が設けられており、この流体入口13には、図示省略の流体供給管が接続される。また、前記濾過室10の一部には、流体出口14が設けられており、この流体出口14には、図示省略の濾過流体排出管が接続される。さらに、前記ドレン室12の一部には、ドレン口15が設けられており、このドレン口15には、図示省略の捕捉物排出管が接続される。なお、符号19は、ケーシング1の一端部の端板9の近くに設けられた振れ止め板を示している。また、各単位濾過ユニット40の流体流通手段6には、図示省略したが、常圧(例えば大気圧)に解放されたパイプやチューブ等が接続されている。なお、前記流体流通手段6は、大気解放に限られず、常圧の水、油等の液体を流通させる配管に接続されていてもよい。
以上のような第2の発明による濾過装置の構成においても、第1の発明と同様に、前記濾過室10からの流体出口14の圧力を常圧(例えば大気圧)よりも高くすると共に、前記流体流入室8への流体入口13の圧力を流体出口14の圧力よりも高くなるようにしてある。流体出口14の圧力を常圧よりも高くするには、流体出口14側の配管抵抗を高めればよい。この状態で、前記ドレン室12のドレン口15を流体出口14の圧力より低い圧力側に開閉することでフィルターエレメント2の逆洗を行うようになっている。
このように、大径のケーシング1の内部に、単位濾過ユニット40を複数個並列に配置したことにより、濾過の処理量を増大することができる。
ここで、第2の発明においては、前記単位濾過ユニット40を1個又は複数個含む複数のグループに分け、各グループ内の単位濾過ユニット40の作動シリンダー5の他端部が位置するドレン室12を、各グループ毎に区画している。すなわち、図14に示すように、ドレン室12の中間に第1の仕切り板41aと第2の仕切り板41bとを設け、ドレン室12を第1のドレン室12a、第2のドレン室12b及び第3のドレン室12cの三つに区画している。これにより、図13及び図14の例では、全部で10個の単位濾過ユニット40を三つのグループに分けている。例えば、第1のドレン室12a内に作動シリンダー5の他端部が位置する3個の単位濾過ユニット40を含む第1のグループと、第2のドレン室12b内に作動シリンダー5の他端部が位置する4個の単位濾過ユニット40を含む第2のグループと、第3のドレン室12c内に作動シリンダー5の他端部が位置する3個の単位濾過ユニット40を含む第3のグループとに分けられている。
そして、図14に示すように、第1のドレン室12aの一部にはドレン口15aが設けられ、第2のドレン室12bの一部にはドレン口15bが設けられ、第3のドレン室12cの一部にはドレン口15cが設けられている。なお、符号42a,42b,42cは、それぞれドレン口15a,15b,15cに設けられたドレンバルブを示している。これにより、各ドレンバルブ42a,42b,42cをそれぞれ開閉制御することで、各グループに属する単位濾過ユニット40の逆洗操作をグループ毎に別々に制御することができる。
図13及び図14に示す実施形態の場合は、逆洗操作をグループ毎に3回に分けて行うことにより、逆洗量や濾過量の変動の少ない運転を行うことができる。これは、本発明の濾過装置における逆洗用の流体はもともと濾過された流体の一部であるので、逆洗を行うということは、濾過流体の一部を捨てることになる。したがって、例えば10個の単位濾過ユニット40においてそのフィルターエレメント2を同時に逆洗すると、一時的に多量の濾過流体を逆洗流体として外部に排出することになる。そこで、例えば10個の単位濾過ユニット40を複数のグループに分け、グループ毎に順序付けて逆洗操作を行えば、一時的に多量の濾過流体を逆洗流体として外部に排出することを防止できるからである。
なお、以上の説明では、逆洗用摺動部材3は、図2及び図8等に示すように、所定の厚みの第1の円盤状部材3aと、同じく所定の厚みの第2の円盤状部材3bとを組み合わせて構成したものとしたが、本発明はこれに限られず、前記第1の円盤状部材3a及び第2の円盤状部材3bを合わせた程度の厚みの一つの円盤状部材3に形成し、その厚みの幅内でフィルターエレメント2の内外の圧力差で内向きの流れが生じる放射状配置の隙間(又はスリット、孔など)を形成し、この隙間が逆洗用パイプ4の流体流通孔21に連通するように構成してもよい。