JP6041826B2 - プロトン伝導性材料、固体電解質膜、及びプロトン伝導性材料の製造方法 - Google Patents

プロトン伝導性材料、固体電解質膜、及びプロトン伝導性材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、プロトン伝導性材料、固体電解質膜、及びプロトン伝導性材料の製造方法に関する。
CO2削減は、地球規模の緊急課題とされている。この問題を解決するために最も有効な再生可能エネルギー源は、セルロース系バイオマス由来のメタノールである。また、原理的に高いエネルギー効率を有する発電装置である燃料電池において、メタノールは、水蒸気改質器を通さずに燃料電池燃料室に直接供給することができる利点を有する。これは、DMFCと呼ばれている発電技術である。
DMFCは、発電効率が低いという大きな欠点をかかえている。その第一の原因は、メタノールクロスオーバーと呼ばれる現象である。DMFCが低発電効率であることの第二の原因は、白金系触媒がCO吸着により被毒し、その結果大きな過電圧が生じることである。この問題を解決するために、触媒の種類、量、担持法に関する研究が活発に行われているが、未だ有効な技術は開発されていない(非特許文献1)。
DMFCにおけるメタノールクロスオーバーは、プロトン伝導材料を固体化することによって防止することができる。またCO吸着は、低くとも150 ℃、望ましくは300 ℃以上の温度で運転することにより抑制できると考えられている。従って、DMFC型燃料電池の発電効率の向上には、中温域で有意なプロトン伝導性を有する固体電解質の開発が鍵を握っている。
上で述べたように、現在、中温域で有意なプロトン伝導性を示す固体電解質の開発が精力的に展開されているが、酸化物ガラスの中で最も高いプロトン伝導機能をもつリン酸塩ガラスが注目されている。
有意なプロトン伝導性を実現するためには、高い水素濃度をもつことが必要条件である。そこで特許文献1では、高濃度(50 〜 80 モル%)のP2O5を含むCa、Sr、Ba、Zn、Al
、Si、Pb、Mg、又はBのリン酸塩ガラスを選び、これを900 ℃以下の温度で短時間溶解し
、原料や雰囲気由来の水分をガラス中に高濃度で残留させる技術が開示されている。しかしながらこの方法では、融液状態で進行するガラス形成反応を平衡に至る途中段階で強制終了させるものであるため一定の品質の製品を得ることが困難であり、また高プロトン伝導率を実現するための必須条件である高プロトン濃度を実現することができない。
また、特許文献2では、高濃度のP2O5を含むBa、Ca、Al、又はZnのリン酸塩ガラスを、250 ℃〜400 ℃未満の温度で水蒸気を含む雰囲気下で結晶化する技術が開示されている。本材料のプロトン伝導性は、熱処理によって結晶が析出する際、結晶及びガラスマトリックスの双方が雰囲気中の水分により加水分解され、その結果取り込まれたOH基によるとされている。本技術によって作製された材料の伝導率は300 ℃で6×10-2 S/cmと示されている。
さらに非特許文献2及び特許文献3には、Snなどの4A属元素の10 %程度をInなどの3A属元素で置換したSnP2O7ピロリン酸塩結晶のプロトン伝導率の温度依存性、及びこれを用いて試作した燃料電池の出力密度特性が示されている。伝導率に関しては、250 ℃で最も高い値2×10-2 S/cmを示しそれ以上の温度では低下することが示されている。また厚さ0.35 mmの固体電解質を用いて作製した燃料電池の出力密度は、250 ℃において260 mW/cm2に達することが報告されている。
また特許文献4では、アルカリ及びW、Fe、及びGeなどを必須成分とするリン酸塩ガラスを作製し、ついで、このガラス中のアルカリを水素含有雰囲気下、中温領域の温度下、且つ直流電界下でプロトンによって置換し、もってプロトン伝導性ガラス材料を作製する技術が開示されている。この技術によれば、中温域の温度下で、0.01Scm-1以上のプロトン伝導度をもつバルクガラスが作製される。
特開2003−192380 特開2007−265803 特開2008−53224 特開2013−201115
特許庁 平成18年度 特許出願技術動向調査報告書 燃料電池(要約版) Electrochem, Solid State Lett. 9 A105-A109 (2006) 第47回セラミックス基礎科学討論会 予稿集、「リン酸過剰ウルトラリン酸塩の中温プロトン伝導性と熱安定性」、金子拓郎、藤津悟、川副博司 2009年1月8日、大阪 J. Mater. Sci. Lett. 9 244-245(1990)
発明者らは段落0007、0008で述べた先行技術に着目し、リン酸塩系ガラスについて研究を行ったところ、これらの先行技術は、結晶粒界に非晶質ポリリン酸を析出させる事により高い伝導性を実現している事が明らかになった(非特許文献3)。非晶質ポリリン酸は不安定な物質であるので、特許文献2及び特許文献3が開示する技術は長期安定性に欠けるため実用には供し得ない。更に、これらの技術はプロトン伝導性を実現する領域が結晶粒界に局在するため伝導性の向上に限界があると思われる。
また段落0009で述べた技術についても研究を行ったところ、この技術において必須とされているW、Fe、あるいはGe成分は雰囲気水素との間で酸化還元反応をおこし、材料に電子伝導性を与えてしまう場合があることが明らかになった。また、プロトンによるアルカリの置換の際、結晶化による破砕あるいは大きな変形が生じる場合もある。従って、工業規模での生産技術において、要求仕様を満足させるプロセスの開発に多くの困難が予想される。
本発明は、安定的に中温域で高いプロトン伝導性を有するプロトン伝導性材料、固体電解質膜、及びプロトン伝導性材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の特徴とするところは、アルカリの酸化物と、多価陽性元素の酸化物と、リン酸化物と、を含むガラス材料において、前記アルカリの酸化物由来のアルカリイオンの少なくとも一部をプロトンに置換して得られるプロトン伝導性材料であって、前記多価陽性元素はアルミニウム酸化物(AlO 3/2 )、ガリウム酸化物(GaO 3/2 )、スカンジウム酸化物(ScO 3/2 )、イットリウム酸化物(YO 3/2 )、ランタン酸化物(LaO 3/2 )、ランタニド酸化物(LnO 3/2 )、及びタンタル酸化物(TaO 5/2 )よりなる群から選ばれる少なくとも一種である、プロトン伝導性材料(但し、分散したリン酸塩系結晶、又は、前記ガラス材料中において複数の酸化状態をとる多価陽性元素の酸化物のいずれかを含むものを除く)にある。
好ましくは、250 ℃以上500 ℃以下の温度のうち少なくとも一部の範囲で、プロトン伝導率が0.005 S/cm以上である。また、好ましくは、250 ℃以上450 ℃以下の温度のうち少なくとも一部の範囲で、プロトン伝導率が0.005 S/cm以上である。
好ましくは、250 ℃以上500 ℃以下の温度のうち少なくとも一部の範囲で、プロトン伝導率が0.01 S/cm以上である。また、好ましくは、250 ℃以上450 ℃以下の温度のうち少なくとも一部の範囲で、プロトン伝導率が0.01 S/cm以上である。
好ましくは、前記ガラス材料は、前記アルカリの酸化物をカチオンモル百分率で10 %以上40 %以下含む。
好ましくは、前記ガラス材料は、前記多価陽性元素の酸化物をカチオンモル百分率で5%以上50 %以下含む。また、好ましくは、前記ガラス材料は、前記多価陽性元素の酸化物
をカチオンモル百分率で10 %以上45 %以下含む。
好ましくは、プロトンの濃度がOH換算で5×1020個 / cm3以上2×1022個/cm3以下である。
好ましくは、前記アルカリの酸化物は、リチウム酸化物(LiO1/2)、ナトリウム酸化物(NaO1/2)、及びカリウム酸化物(KO1/2)よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
好ましくは、前記ガラス材料は、2価金属の酸化物(RO)、ケイ素酸化物(SiO2)、テルル酸化物(TeO2)、及びジルコニウム酸化物(ZrO2)のいずれかから選ばれる少なくとも一種をさらに含む。
本発明の第2の特徴とするところは、アルカリの酸化物と、多価陽性元素の酸化物と、リン酸化物と、を含むガラス材料において、前記アルカリの酸化物由来のアルカリイオンの少なくとも一部をプロトンに置換して得られるプロトン伝導性材料を含む固体電解質膜であって、前記多価陽性元素はアルミニウム酸化物(AlO 3/2 )、ガリウム酸化物(GaO 3/2 )、スカンジウム酸化物(ScO 3/2 )、イットリウム酸化物(YO 3/2 )、ランタン酸化物(LaO 3/2 )、ランタニド酸化物(LnO 3/2 )、及びタンタル酸化物(TaO 5/2 )よりなる群から選ばれる少なくとも一種である、固体電解質膜(但し、前記ガラス材料中において複数の酸化状態をとる多価陽性元素の酸化物を含むものを除く)。
本発明の第3の特徴とするところは、アルカリの酸化物と、多価陽性元素の酸化物と、リン酸化物と、を含むガラス材料であって、前記多価陽性元素がアルミニウム酸化物(AlO 3/2 )、ガリウム酸化物(GaO 3/2 )、スカンジウム酸化物(ScO 3/2 )、イットリウム酸化物(YO 3/2 )、ランタン酸化物(LaO 3/2 )、ランタニド酸化物(LnO 3/2 )、及びタンタル酸化物(TaO 5/2 )よりなる群から選ばれる少なくとも一種であるガラス材料(但し、前記ガラス材料中において複数の酸化状態をとる多価陽性元素の酸化物を含むものを除く)に、電界の印加下、含水素雰囲気下、及び250 ℃以上の温度下において前記アルカリの酸化物由来のアルカリイオンの少なくとも一部をプロトンに置換することを特徴とするプロトン伝導性材料の製造方法にある。
好ましくは、電界が5 V / cm以上であり電圧が3 V以上である直流電位差を与えて、前
記アルカリ酸化物由来のアルカリイオンの少なくとも一部をプロトンに置換する。
好ましくは、前記ガラス材料に電界を印加する一対の電極うち、正極は、水素を溶解する金属材料であり、負極は、前記アルカリの原子を溶解する金属材料、炭素材料、及び遷移金属酸化物材料よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
本発明によれば、安定的に中温域で高いプロトン伝導性を有するプロトン伝導性材料、固体電解質膜、及びプロトン伝導性材料の製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態にかかるプロトン伝導性材料を製造するフローチャートである。 実施例1(その1)にかかるプロトン伝導性材料の組成、及びその評価結果を示す図である。 実施例1(その2)にかかるプロトン伝導性材料の組成、及びその評価結果を示す図である。 実施例1(その3)にかかるプロトン伝導性材料の組成、及びその評価結果を示す図である。 実施例1(その4)にかかるプロトン伝導性材料の組成、及びその評価結果を示す図である。 実施例1(その5)にかかるプロトン伝導性材料の組成、及びその評価結果を示す図である。 実施例1(その6)及び比較例にかかるプロトン伝導性材料の組成、及びその評価結果を示す図である。 試料A35-2NについてのEPMA測定結果を示す図である。 試料A35-1からA30-7の伝導率測定結果をグラフ化した図である。 試料A30-8からA30-12の伝導率測定結果をグラフ化した図である。 試料A25-1からA25-8の伝導率測定結果をグラフ化した図である。 試料A25-9からA25-13の伝導率測定結果をグラフ化した図である。 試料A25-14からA25-17の伝導率測定結果をグラフ化した図である。 試料A20-1からA20-8及び比較例材料の伝導率測定結果をグラフ化した図 である。 輸率を測定するために用いた水素濃淡電池の概略図である。 試料A30-10Nの濃淡電池起電力の測定結果を示す図である。 試料A25-14Lの濃淡電池起電力の測定結果を示す図である。 試料A20-4の濃淡電池起電力の測定結果を示す図である。
まず、本発明の概要について説明する。
燃料電池関連技術において「中温」に関する厳密な定義はないが、本明細書において「中温」とは、便宜的に約250 ℃ 〜 500 ℃の温度の意味で用いる。
中温で高いプロトン伝導性を有する固体電解質材料を用いた燃料電池では、燃料改質装置の不要化(動作温度及び燃料種に依存)や電池部材に金属材料が使用可能なことなどによりシステムが単純化され、低コスト化及び高信頼性化が実現される。また中温定常動作化により発電効率の向上と高温排熱の有効利用が可能となり、全エネルギー効率の向上が達成される。
中温域で熱化学的に且つ機械的に安定なリン酸塩ガラス材料は、当業者には周知の溶融法によって作製される。しかしながらこの作製法では、一般に中温域より高温を要する溶融過程で脱水反応が進行するため、高プロトン濃度を有するガラス材料を作製することは不可能である。
本発明者らは、安定的に中温域で高いプロトン伝導性を有する固体電解質材料を作製するために独自の技術を考案した。これは、溶融法によって作製されたガラス材料中のアルカリイオンをプロトンによって置換する方法である。
以下に、本発明にかかる置換法の原理を説明する。
まず中温動作燃料電池の運転温度、雰囲気条件に注目する。固体電解質の燃料極側表面は、燃料の種類によらず数パーセントから数十パーセントオーダーの分圧の水素を含む雰囲気に暴露され、他方、酸化剤側表面は、酸素、水蒸気、場合により窒素を含む雰囲気に暴露される。また発電時は、電解質層内では燃料極から酸化剤極へ向かってプロトンの定常流が発生している。即ち、新規電解質材料の開発にあたっては、このような条件下で高濃度のプロトンを安定に保持できる材料を創製することが必要条件となる。
本方法の工程を説明する。先ず、10パーセントから数十パーセントの範囲内の濃度のアルカリの酸化物(以下、「AO1/2」と略記する場合がある)、及び単一の酸化数状態で存在する多価陽性元素の酸化物(以下、「MOp/2」と略記する場合がある。Mは多価陽性元素を、Pはその酸化数をそれぞれ表す)を含むリン酸塩ガラス前駆体を作製し、これを例えば板状に加工する。目的とする材料特性に応じて、アルミニウム酸化物(AlO3/2)、ガリウム酸化物(GaO3/2)、スカンジウム酸化物(ScO3/2)、イットリウム酸化物(YO3/2)、ランタン酸化物(LaO3/2)、ランタニド酸化物(LnO3/2)及びタンタル酸化物(TaO5/2)よりなる群から選ばれる少なくとも一種を加え、またケイ素酸化物(SiO2)、テルル酸化物(TeO2)、ジルコニウム酸化物(ZrO2)(以下、これら四価酸化物を「XO2」と略記する場合がある)及び2価金属の酸化物(RO)のいずれかから選ばれる少なくとも一種をさらに加えてもよい。
ついで、この材料の対向する2面に電極を付与する。正極材料には、気相中の水素を分
解し溶解する金属材料(水素溶解透過性金属材料)であれば如何なるものでもよいが、例えばPd薄膜を用いることができる。負極材料には、アルカリ原子を溶解する材料であれば如何なるものでもよいが、例えば溶融Sn金属や板状のカーボン材料等を用いることができる。
ついで前記材料中のアルカリイオンをプロトンで置換する工程に進む。この工程は上述した燃料電池の想定運転温度、即ち中温域の温度下及び低圧の水素を含む雰囲気下において、且つ、2電極間に適当な直流電圧を印加しつつ行われる。例えば、印加電圧は3 V以上であり、電界強度は5 V/cm以上であることが適当であるが、放電が生じない範囲であればより高電界であっても良い。
前記工程においては、以下の式(1)〜(3)で表される酸化還元反応が進行する。
(正極) H2 → 2H → 2H+ + 2e- (1)
即ち気相中の水素分子の分解及び生成した水素原子の酸化反応である。ここで生じたプロトン及び電子は電極材料中に溶解する。電子は正極から外部回路に供給され負極に輸送される。プロトンは、以下の反応によってガラス中に溶解する。
(ガラス中) 2H+ + 2 ( A+ / O-PO- / Mp+ )→
2 ( H+ / O-PO- / Mp+ ) + 2A+ (2)
ここで、( A+ / O-PO- / Mp+ )は、ガラス中に溶解しているアルカリイオンの溶解状態を模式的に表わしている。即ち、負に荷電したリン酸骨格をMp+イオンとアルカリイオンが電荷補償しながら溶解していることを示す部分構造である。式(2)は、ガラス中に溶解していたアルカリイオンが気相から導入されたプロトンによって置換され、遊離されたことを示している。遊離アルカリイオンはガラス中を電界によって加速され負極近傍に輸送される。
(負極) 2 A+ + 2e- + Cn → CnA2 (3)
負極では、式(3)に示すように、アルカリイオンの還元反応が進行しその中性原子(A)が生成する。ここでCnは負極材料として使われた黒鉛系電極を表わしている。このとき負極材料としてアルカリを溶解し且つ金属的伝導性を有する材料を用いれば、アルカリ原子はガラスから負極材料中に抽出除去されるに至る。負極材料には、これらの機能をもつものであればいかなるものでも用いられるが、例えば、SnやPb、Ag等の金属材料、及びリチウムイオン電池の正極材料として用いられるカーボンや遷移金属酸化物等を使用することができる。アルカリイオンをプロトンへより多く置換する観点から、負極材料は、ガラス材料から排出されるアルカリイオンの全量を溶解し得る容量を持つことが好ましい。
ガラス中のアルカリイオンがプロトンによって置換される結果、一般にはガラス材料には歪みが生じるが、この工程は前記材料のガラス転移点あるいはそれより僅かに低い温度で行われているため、置換終了後直ちに必要な除歪工程、例えばアニーリングを付加することによって、必要な機械的強度を持つモノリシックな材料を得ることができる。
上述したように、中温条件下で高濃度に水素酸化物を含有し得るガラス材料は、少なくとも目標とする水素酸化物の濃度以上の濃度のアルカリの酸化物及び単一の酸化数状態をとる多価陽性元素の酸化物とを含有するリン酸塩ガラス材料を前工程において作製し、次いで、直流電界下、水素含有雰囲気下で熱処理することによりアルカリイオンをプロトンで置換することを後工程とする方法によって有意に製造される。
本置換技術においては、アルカリ酸化物成分としてはLiO1/2、NaO1/2、及びKO1/2、これらのうちいずれか又はこれらの任意割合の混合物を用いることが好ましい。AO1/2成分の濃度としては、カチオンモル百分率で10 %以上40 %以下が好ましい。AO1/2成分の濃度が10%未満では、伝導率が10-4オーダーにとどまり目標値に達せず、必要レベルの伝導率が得られない。またアルカリイオンの移動が不十分であり効果的にプロトンで置換することができない。一方、40 %を超えると材料の機械的特性、化学的特性及び熱的特性が不十分で実用に供せる材料が得られない。
また、酸化物ガラス中において電界下で可動イオンとして働くことが知られているAgO1/2、CuO1/2、TlO1/2等を用いるようにしてもよい。
またガラス材料の構成成分である多価陽性元素のイオンMp+としては、気相中の水素との間で酸化・還元反応を起こし、その結果電子伝導性を付与してプロトン輸率を低下させることのないものであれば如何なるものでもよいが、高濃度の水素酸化物とリン酸化物成分を含むガラスの化学的、熱的、機械的安定性を高めるためAl3+、Ga3+、Sc3+、Y3+、La3+、Ln3+、及びTa5+のいずれかあるいはこれらの混合物が好ましい。
これらのイオンの濃度は、ガラス形成を損なわない限りにおいて高いことが望ましい。従って、カチオンモル百分率で5 %以上50 %以下が好ましく、10 %以上45 %以下がより好ましい。
また目的とするプロトン伝導性を実現するには、安定なリン酸塩ガラスが形成できる必要である。このため、PO5/2成分の濃度は、カチオンモル百分率で30 %から70 %である
ことが好ましい。
プロトン伝導性材料は、燃料電池など種々の電気化学装置を構成する素材として用いられる場合がある。従って、プロトン伝導性以外に用途に応じた機械的特性や化学的安定性、熱的特性などの物性に関する要求を満たすことが好ましい。これらの特性を改善、向上するために二価元素の酸化物RO成分や四価元素の酸化物XO2の含有は有効である。プロトン伝導性の低下を考慮すると、これらの総含量はカチオンモル百分率で30 %以下とすることが好ましい。
また、アルカリイオンのプロトンによる置換工程において、ガラス成型体に付与する電極として正極については水素溶解透過性金属材料が用いられる。具体的には、Ti、Cr、Co、Ni、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Nb、Ta、W、Ir、Os、Pt、Au、Pb及びBiのいずれか、あるいはこれらの混合系から選ばれた材料が好ましい。
また負極についてはアルカリの原子を溶解する金属材料、炭素材料、及び遷移金属酸化物材料のいずれか、あるいはこれらの混合系から選ばれた材料が好ましい。負極材料としては、電子伝導性に優れるものがより好ましい。ガラス成型体中に含まれていたアルカリイオンの全量を溶解できる容量を有することがより好ましい。
また、本技術にかかる置換工程では、固体状態での電気分解、電界酸化還元現象を用いることで効果的に置換を実現することができる。例えば、正極―負極間に3 V以上の電圧且つ5 V/cm以上の電界をもつ直流電圧を印加しつつ、水素を含む雰囲気下且つ250 ℃以上の温度条件下で熱処理することが好ましい。材料の利用環境及び安定性の観点から250 ℃以上とすることが好ましい。具体的には、燃料電池電解質として利用する場合、その条件は250 ℃以上、望ましくは300 ℃以上が想定されるため、これに対応し得る範囲が好ましい。
中温域におけるプロトン伝導性の観点から、プロトン伝導性材料においては、導入されたHO1/2の濃度が2.5 %以上40 %以下であることが好ましい。プロトンをOH換算で5×1020個 / cm3以上2×1022個/cm3の濃度で含むことが好ましい。
次に、プロトン伝導性材料を製造する工程について説明する。
なお、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。
プロトン伝導性材料は、それぞれ十パーセントオーダーの濃度をもつAO1/2及びMOp/2を(目標組成によっては、さらにRO、及びXO2を)含むリン酸塩ガラス成型体を作製する工程と、得られたリン酸塩ガラス成型体中のA+イオンの少なくとも一部(例えば半量以上)をプロトンで置換する工程とを含む方法によって作製される。
図1は、本実施形態にかかるプロトン伝導性材料を製造するフローチャート(S10)を示す。
ステップ102(S102)において、リン酸塩ガラス成型体を作製する。
リン酸塩ガラス成型体を作製する工程は、周知の方法による。即ちAO1/2成分については主として炭酸塩を、MOp/2成分については酸化物を、RO成分にいては炭酸塩あるいは酸化物を、SiO2、TeO2、及びZrO2成分については酸化物を、PO5/2成分については正リン酸を原料に用いてバッチを構成し、これを高アルミナ質ルツボあるいは白金ルツボに移して電気炉内で溶融する。溶融雰囲気は大気でよい。均質な融液をカーボンモールドに移しアニーリングを施し除歪する。得られたバルクガラス材料を切断、研磨し、所望の形状に成型する。
ステップ104(S104)において、板状に成型されたリン酸塩ガラスに電極を付与する。
板状に成型されたリン酸塩ガラスの対向する2面に電極を付与する。正極材料には、水
素分子を分解し溶解し得る金属材料、例えばPd等が用いられる。Pd薄膜を例えばスパッタリング法により堆積させる。膜厚は、例えば100 nm以下とする。
負極材料には、アルカリの原子に対する溶媒機能を持つ材料を用いる。置換工程は、例えば水素を5 %程度含むフォーミングガス雰囲気下で行うため、耐酸化性は不要である。例えば、Li電池の電極材料として用いられるグラファイト系炭素材料を塗布して用いることができる。また、鉛やスズなどの高密度液体金属を用いることもできる。負極材料の容量は、ガラス成型体から排出されるアルカリの全量を溶解できる大きさをもつものとする。両電極からはリード線を引き出す。
ステップ106(S106)において、A+イオンのプロトン置換を行う。
電極を付与された板状ガラス材料は、雰囲気制御電気炉にセットされる。炉内には、例えば5 %H2−95 %N2のフォーミングガスを流通させる。加熱温度は対象ガラス材料の転移
点から「転移点−250 ℃」の範囲の温度とする。本実施形態においては、概ね250 ℃から550 ℃の間となる。炉温が目標温度に制御された後、直流電源を用いて正極−負極間に電
圧を印加する。電圧は3 V以上、電界は5 V/cm以上が好ましく10 V/cm 〜 100 V/cmとすることがより好ましい。置換されたA+イオンの量を半定量的に評価するために、ガラス材料と直列に電流計を接続しこの出力をモニターしておく。
このように、ガラス材料に、電界の印加下において前記アルカリの酸化物由来のアルカリイオンの少なくとも一部をプロトンに置換することで、プロトン伝導性材料が作製される。
作製されたプロトン伝導性材料については、その特性を評価するために、プロトン導入量、プロトン伝導の伝導率とその温度依存性、及び輸率を測定する。
[プロトン導入量(OH濃度COH評価)]
導入されたプロトンはOHの形で存在するため、OH量を評価する。OHの濃度については赤外吸収の測定により評価し、また、OH及びアルカリ成分の材料の厚み方向に沿った濃度プロファイルはそれぞれ顕微赤外吸収、及びEPMA強度(アルカリがNa及びKの場合)の測定により評価する。
[プロトン伝導の伝導率とその温度依存性(伝導率評価)]
この評価は、交流インピーダンス法によって行うことができる。A+イオンのプロトン置換に用いたPd薄膜電極は、そのまま伝導率測定用電極として利用することができる。負極に用いたカーボン系電極はこれを機械的に除去した後、Pd薄膜を堆積する。Pdは、水素を含む雰囲気下では非ブロッキング性電極としても働くので、直流を用いた評価も可能である。この材料を雰囲気調整電気炉中にセットする。測定雰囲気は5 %H2−95 %N2のフォーミングガスとする。測定温度は約100℃から550 ℃の範囲である。
[輸率(輸率評価)]
プロトン伝導性材料を、これを含む固体電解質として電気化学装置を構成する際、プロトンの輸率も伝導率と並んで重要な特性である。輸率は、プロトン伝導性材料を用いて水素濃淡電池を構成し、その起電力から求めることができる。
次に、実施例について説明する。
図2から図7は、作製したプロトン伝導性材料の組成、アルカリイオン−プロトン置換後における材料中のOH濃度COH、及び置換材料のプロトン伝導率が10-2 S/cmを超える最低温度(Tc)を示す。
(アルカリをカチオンモル%で20%以上35%以下含むリン酸塩ガラスを用いた実施例)
NaあるいはLiを含むリン酸塩ガラスを用いて作製したプロトン伝導性材料に関する実施例としては、図2における試料A35-1〜A20-8の49種が該当する。比較例としてアルカリ酸化物の濃度が5 %である試料A5-1〜A5-2を併記する。
[ガラス材料作製]
アルカリイオンのプロトンによる置換処理を施すガラス材料の作製における原料薬品として、Li2CO3、Na2CO3、H3PO4、CaCO3、La2O3、Y2O3、Al2O3、Ta2O5、TeO2、SiO2、を用いた。目的組成になるようそれぞれの原料を秤取混合後、700 ℃で1時間保持した後、組成に応じて1200 ℃〜1450 ℃の目的温度に毎分10 ℃で昇温し、到達後3時間保持した。融解には白金ルツボを用いた。雰囲気は空気とした。融液を直径20 mmの円筒形カーボン型に注入し、アニール炉に移し除歪した。
[アルカリのプロトン置換]
置換処理について説明する。試料A35-1〜試料A20-8の49種の材料、及びA5-1とA5-2の2種の比較例材料それぞれについて、アニール後のバルクガラスから薄板形状の材料を切り出し、これらの2面を研磨して厚さを1mm〜2mm程度とした。
これら板状ガラス材料の一面には、Pd薄膜をスッパッタリング法によって堆積させた(以下、「a面」と記す)。対向する他面は研磨面そのままとし、その後の加工は施していない(以下、「b面」と記す)。作製されたPd薄膜電極/ガラス積層体が水平になるように置換用ガス流通型電気炉にセットした。電気的接続を行うため、上側に配置されたa面のPd電極上にステンレスメッシュを軽く圧接させた。メッシュからはリード線が引き出されている。ガラス積層体のb面を金属スズ浴に接触させた。スズ浴からもリード線が引き出されている。
これを水素濃度5.0 %のフォーミングガス流通下、且つ直流電圧印加状態で加熱した。
加熱温度は、組成に応じて250 ℃ 〜550 ℃とした。加熱温度は、それぞれのガラス材料のガラス転移点TgからTg−200 ℃の範囲とするのが好ましい。ab両面間に対する印加電圧は、電界が40 V/cm以上となるようにした。Pd電極側のa面が正に、スズ浴電極側のb面が負になるようバイアスさせた。アルカリープロトン置換処理時に材料中を流れる総電荷をモニターできるよう電流計を直列接続した。処理時間は以下のように決定した。即ち、上述した式(1)〜(4)に示すように、ガラス材料中を流れる電流は、このガラス材料中の全アルカリイオンがプロトンによって置換されスズ電極へ排出されることによって生じる。そこで、電流によって運ばれた総電荷数とガラス材料中に含まれる全アルカリ個数が等しくなる時間を観測し、さらにその1.5倍程度の時間を処理時間とした。
加熱処理後の材料をガス流通下で徐冷した。
[OH濃度(COH)評価]
置換後のガラス材料について、全OHの濃度を評価した。
ガラス材料を置換用電気炉から大気中にとりだした際、b面上に排出されたアルカリは空気中の水蒸気及び炭酸ガスと反応し炭酸塩等となる。これを機械的に除去した。またa面上に堆積させたPd薄膜については、これをバフ研磨により除去した。電極除去後の薄板材料に関し、FT-IR装置(Shimadzu 8200PC)により4000 cm-1 〜 1500 cm-1領域の吸収スペクトルを測定した。吸光度が大きすぎる場合は、吸収スペクトルが測定できる程度に薄板化した。3200 cm-1 〜3300 cm-1なる波数域で測ったアルカリのプロトン置換前後の吸光度差Aから、材料中のOH濃度COH( 個/cm3 )を次式(4)に基づいて評価した。
COH = 2・A・NA / 1000 d ε (4)
NAはアボガドロ数、dは材料ガラス板の厚さ(cm)、εはH2Oとしてのモル吸光係数であり次式(5)により求められる(非特許文献4)。
ε = 110・L・mol-1 cm-1 (5)
図2から図7に示すように、試料A35-1〜試料A20-8の49種の材料中の水素濃度(OH濃度COH)は、アルカリのプロトン置換前のガラス材料中のアルカリの濃度にほぼ比例していることが分かる。またその絶対濃度は、試料A35にあっては、9×1021 個/cm3の以上であること、試料A30にあっては、7.3×1021個/cm3〜8.5×1021 個/cm3に分布していること、また試料A25にあっては、6.7×1021個/cm3〜7.3×1021 個/cm3系に分布していること、さらに試料A20にあっては、5.1×1021個/cm3〜5.9×1021 個/cm3系に分布していること分かる。
比較例である試料A5の水素濃度は、1020個/cm3のオーダーとなった。
[置換確認評価]
次に、Naが水素によって置換されていることを確認するために行った実験について説明する。
図8は、試料A35-2Nについて置換処理前後のNaの濃度を、正極側(a面)から負極側(b面)に亘ってEPMAを用いて点分析を行った結果を示す。また、試料A35-2Nについて、アルカリのプロトン置換後のOH濃度の測定結果を併せて示す。濃度の値は、水素濃度との比較が容易なように、ガラスの密度及び組成から計算した値に変換して示してある。
図8に示すように、置換前の値はガラスの厚さ方向全体に亘って大きな変動はなく、約9×1021 個/cm3である。置換後の濃度は、約1×1020 個/cm3であって、置換処理によって約2桁程度減少している。置換後の濃度プロファイルもガラス板材の厚さ方向全体に亘って平坦である。
水素の侵入溶解は拡散律速反応である。表面から深さ方向に向かっての各位置におけるOH濃度の平坦性については、短冊形の薄片を切り出し、a表面からb表面に向かって各部位におけるOH濃度のプロファイルを顕微IR測定装置を用いて評価した。置換後のOH濃度も、約9×1021 個/cm3であり、Naの減少量にほぼ対応している。
即ち、アルカリのプロトン置換法により、ガラス材料中のアルカリイオンがプロトンで均一に置換されることが確認された。
[伝導率評価]
アルカリープロトン置換処理を施したガラス板材について、交流インピーダンス法によって伝導率の測定を行った。
a面の電極には、置換処理の際に堆積したPd薄膜を除去せずそのまま用いた。b面に関しては、排出されたアルカリに由来する炭酸塩及び金属スズ等を機械的に除去した後、Pd薄膜を堆積し電極とした。Pdは水素を含む雰囲気下では非ブロッキング電極としても働くので、直流を用いた評価も可能である。Pd薄膜つきの板状材料を伝導率測定装置にセットし、AC法によって伝導率を測定した。測定にはインピーダンスアナライザー(Solartron SI 1260)を用いた。測定周波数は8 Hz 〜 10 MHzの間とした。インピーダンス測定の結果を複素平面上にプロットし、半円の低周波数側の実軸との交点を試料の抵抗値R(Ω)とした。測定は、測定可能となる最低温から500 ℃まで順次昇温させながら行った。目的温度に到達後10分間その温度に保持した後、伝導率を測定した。雰囲気は、フォーミングガス又は窒素とした。
図9から図14は、全試料の伝導率測定結果をグラフ化したものである。
試料A35-1〜試料A20-8までの49種は、すべて熱活性化型の温度依存性を示した。活性化エネルギーは、プロトン濃度が高い試料A35及びA30に於いては約0.5eVから0.8eV程度であった。試料A25及びA20にあっては、0.8eVから1eVとなっている。
燃料電池応用を念頭に置いた場合、固体電解質膜のプロトン伝導率は、10-2 S/cm以上であることが望ましい。図2から図7に示すように、アルカリのプロトン置換後の各試料のプロトン伝導率が10-2 S/cm以上となる最低温度Tcは、250 ℃から424 ℃の範囲に含まれており、この温度以上で動作させると、高く且つ持続的な発電効率が得られることを示している。このような温度依存性は、プロトン伝導性材料が高い熱安定性をもつことの証左である
比較例である試料A5-1及び-2にあっては、プロトン伝導率が10-2 S/cmに達さなかった。
[輸率評価]
次に、輸率の測定結果について説明する。
まず、輸率を測定するために用いた水素濃淡電池の構成を説明する。
図15は、輸率を測定するために用いた水素濃淡電池10の概略図である。水素濃淡電池10は、試料12を高圧室14と低圧室16との間に挟むようにして設置するように構成されている。高圧室14及び低圧室16それぞれには水素が導入され、導入される水素の圧力は高圧室14の方が低圧室16よりも高く設定される。この際、試料12としては、作製されたプロトン伝導性材料(置換後のガラス材料板)の両面にPd薄膜を堆積したものを用いる。
高圧室14は、セラミックス管20の内部に形成され、このセラミックス管20には、ガスを導入する導入管22と、ガスを排気する排気口24とが設けられている。セラミックス管20と試料12とはAgリングシール26を介して試料と接触するようになっている。Agリングシール26が加圧されることにより、高圧室14の気密性が確保される。Agリングシール26からリード線28が引き出される。
低圧室16は高圧室14と同様の構成となっている。
上述した水素濃淡電池を用いて測定された結果を用い、輸率を次式(6)によって評価した。
V = ti ( RT / 2 F ) ln ( PH2,R / PH2,M ) (6)
ここで、Vは起電力、Rは気体定数、Tは電池の温度、Fはファラデー定数、PH2,Rは高水素分圧室の水素分圧、PH2,Mは低水素分圧室の水素分圧、tiはプロトンの輸率である。式(6)から、実測された起電力Vをlog ( PH2,R / PH2,M )に対してプロットすると、その勾配からtiを評価することができる。
図16から図18に、試料A30-10N、試料A25-14L、試料A20-4を用いて水素濃淡電池を構成した際の起電力を示す。測定温度は、それぞれの試料について400 ℃から300 ℃の範囲内とした。これらプロットの勾配から、プロトン輸率は0.98 〜 0.99であることが分かる。即ち電流のキャリアは実質的にすべてがプロトンであることが確認された。このことは、前駆体ガラス中のアルカリイオンの実質的にすべてがプロトンで置換されていることの結果でもある。
近未来における燃料電池の実用化の鍵は、中温域で動作するプロトン伝導性固体電解質材料開発の成否である、と云ってよい。この材料の開発における最大の課題は、高いプロトン伝導率を実現するために必須の条件である高濃度のプロトンを中温域で安定に保持し得る材料はどのような種類、形態、構造のものであり、それを如何なる方法で作製することができるか、という問題である。本発明にかかるプロトン伝導性材料とその製造方法は、この問題に初めて有意な解答を与えたものである。
本発明にかかるプロトン伝導性材料は、中温域の温度で高いプロトン伝導性を安定に示す。このプロトン伝導性材料は、その用途によって必要とされる後処理及び加工を受け、中温燃料電池を含む様々な電気化学装置の固体電解質部材として用いられる。
10 水素濃淡電池
12 試料
14 高圧室
16 低圧室
20 セラミックス管
22 導入管
24 排気口
26 リングシール

Claims (12)

  1. アルカリの酸化物と、多価陽性元素の酸化物と、リン酸化物と、を含むガラス材料において、前記アルカリの酸化物由来のアルカリイオンの少なくとも一部をプロトンに置換して得られるプロトン伝導性材料であって、前記多価陽性元素はアルミニウム酸化物(AlO3/2)、ガリウム酸化物(GaO3/2)、スカンジウム酸化物(ScO3/2)、イットリウム酸化物(YO3/2)、ランタン酸化物(LaO3/2)、ランタニド酸化物(LnO3/2)、及びタンタル酸化物(TaO5/2)よりなる群から選ばれる少なくとも一種である、プロトン伝導性材料(但し、分散したリン酸塩系結晶、又は、前記ガラス材料中において複数の酸化数状態をとる多価陽性元素の酸化物のいずれかを含むものを除く)。
  2. 250 ℃以上500 ℃以下の温度のうち少なくとも一部の範囲で、プロトン伝導率が0.005 S/cm以上である請求項1記載のプロトン伝導性材料。
  3. 250 ℃以上500 ℃以下の温度のうち少なくとも一部の範囲で、プロトン伝導率が0.01S/cm以上である請求項1又は2記載のプロトン伝導性材料。
  4. 前記ガラス材料は、前記アルカリの酸化物をカチオンモル百分率で10 %以上40 %以下含む請求項1乃至3いずれか記載のプロトン伝導性材料。
  5. 前記ガラス材料は、前記多価陽性元素の酸化物をカチオンモル百分率で5 %以上50 %以下含む請求項1乃至4いずれか記載のプロトン伝導性材料。
  6. プロトンの濃度がOH換算で5×1020個 / cm3以上2×1022個/cm3以下である請求項1乃至5いずれか記載のプロトン伝導性材料。
  7. 前記アルカリの酸化物は、リチウム酸化物(LiO1/2)、ナトリウム酸化物(NaO1/2)、及びカリウム酸化物(KO1/2)よりなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1乃
    至6いずれか記載のプロトン伝導性材料。
  8. 前記ガラス材料は、2価金属の酸化物(RO)、ケイ素酸化物(SiO2)、テルル酸化物(TeO2)、及びジルコニウム酸化物(ZrO2)のいずれかから選ばれる少なくとも一種をさらに含む請求項1乃至いずれか記載のプロトン伝導性材料。
  9. アルカリの酸化物と、多価陽性元素の酸化物と、リン酸化物と、を含むガラス材料において、前記アルカリの酸化物由来のアルカリイオンの少なくとも一部をプロトンに置換して得られるプロトン伝導性材料を含む固体電解質膜であって、
    前記多価陽性元素はアルミニウム酸化物(AlO3/2)、ガリウム酸化物(GaO3/2)、スカンジウム酸化物(ScO3/2)、イットリウム酸化物(YO3/2)、ランタン酸化物(LaO3/2)、ランタニド酸化物(LnO3/2)、及びタンタル酸化物(TaO5/2)よりなる群から選ばれる少なくとも一種である、固体電解質膜(但し、前記ガラス材料中において複数の酸化数状態をとる多価陽性元素の酸化物を含むものを除く)。
  10. アルカリの酸化物と、多価陽性元素の酸化物と、リン酸化物と、を含むガラス材料であって、前記多価陽性元素がアルミニウム酸化物(AlO3/2)、ガリウム酸化物(GaO3/2)、スカンジウム酸化物(ScO3/2)、イットリウム酸化物(YO3/2)、ランタン酸化物(LaO3/2)、ランタニド酸化物(LnO3/2)、及びタンタル酸化物(TaO5/2)よりなる群から選ばれる少なくとも一種であるガラス材料(但し、前記ガラス材料中において複数の酸化数状態をとる多価陽性元素の酸化物を含むものを除く)に、電界の印加下、含水素雰囲気下、及び250 ℃以上の温度下において前記アルカリの酸化物由来のアルカリイオンの少なくとも一部をプロトンに置換することを特徴とするプロトン伝導性材料の製造方法。
  11. 電界が5 V / cm以上であり電圧が3 V以上である直流電位差を与えて、前記アルカリの酸化物由来のアルカリイオンの少なくとも一部をプロトンに置換する請求項10記載のプロトン伝導性材料の製造方法。
  12. 前記ガラス材料に電界を印加する一対の電極のうち、正極は、水素を溶解する金属材料であり、負極は、前記アルカリの原子を溶解する金属材料、炭素材料、及び遷移金属酸化物材料よりなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項10又は11記載のプロトン伝導性材料の製造方法。
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