以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。
図1および図2は本発明の実施の形態に係る重量測定装置を示す。重量測定装置1は、人間の重量を測定する体重計であり、かつ人間の体脂肪率といった体組成を測定する体組成計である。重量測定装置1は筐体11を備え、筐体11はプラットフォーム12と、プラットフォーム12に固定されるベース15を備える。図1に示すように、プラットフォーム12は、重量測定時に水平に広がるように向けられる略平坦な上面を有する。プラットフォーム12の上面には、人間が直立する。つまりプラットフォーム12には、物体が置かれてその物体の荷重が与えられる。
図2に示すように、ベース15はほぼ矩形であり、例えばステンレス鋼または樹脂のような剛的な材料から形成される。ベース15の底面の四隅には脚16が配置されている。重量測定時には、これらの脚16が床に接触させられる。脚16と床の間に別な部品が介在してもよい。脚16は、重量測定装置1を支持する支持部材であるとともに、後述するロードセルの脚でもある。重量測定時には、床に支持された脚16に対して、プラットフォーム12とベース15を備える筐体11全体が、プラットフォーム12上の重量に応じて変位する。
筐体11には、重量測定装置1を起動する電源スイッチ17が取り付けられており、電源スイッチ17はプラットフォーム12の側面から突出している。重量測定装置1は、体組成計として使用されるため、図1に示すように、プラットフォーム12の上面には、複数の電極板18が設けられる。これらの電極板18は被験者の生体電気インピーダンス測定に使用される。プラットフォーム12に乗った被験者の両足でこれらの電極板18は踏まれる。
図3は重量測定装置1の平面図であり、図3では電極板18の描写は省略されている。図3に示すように、プラットフォーム12は、例えば鋼のような剛的な金属材料で形成された箱状の内側カバー13と、内側カバー13の外側に配置された樹脂で形成された外側カバー14とを備える。外側カバー14は、プラットフォーム12の外装であるともに、金属で形成された内側カバー13と電極板18とを絶縁する。
重量測定装置1はハンドルユニット19を備える。ハンドルユニット19は図示しないケーブルを介して筐体11に連結されている。ハンドルユニット19は、中央の操作ボックス20と、操作ボックス20の両側に延びるグリップ21,22を備える。操作ボックス20には、被験者の重量および体組成を表示するディスプレイ23と、操作ボタン24,25が設けられている。グリップ21,22の各々には、被験者の生体電気インピーダンス測定に使用される電極が配置されている。プラットフォーム12に乗った被験者の両手でこれらの電極は握られる。実施の形態に係る重量測定装置1は体組成計としても使用されるが、本発明は重量測定に関するので、電極板18およびハンドルユニット19は必ずしも必要ではない。
図3に示すように、プラットフォーム12の内側カバー13は、プラットフォーム12に連結されたベース15とともに収容空間27を画定する。この収容空間27の内部には、重量を測定するための4つのロードセルアセンブリ30が配置されている。但し、ロードセルアセンブリ30の脚16は、図2に示すように、ベース15から下方に突出している。
また、収容空間27の内部には、ロードセルアセンブリ30の歪みゲージから供給される信号を処理する処理回路が実装された基板28が配置されている。基板28と歪みゲージはケーブル29で接続されている。基板28上の処理回路は、ロードセルアセンブリ30の歪みゲージから供給される信号に基づいて、被験者の重量を計算する。また、基板28上の処理回路は、プラットフォーム12の電極板18およびハンドルユニット19の電極と電気的に接続され、被験者の重量および各種の箇所の生体電気インピーダンスの変化に基づいて、被験者の体組成を計算する。計算された重量および体組成は、ディスプレイ23に表示される。
図4および図5に示すように、各ロードセルアセンブリ30は、荷重伝達部材(ロードセルホルダー)32およびロードセル34を備える。荷重伝達部材32は、例えば樹脂のような硬質な材料から形成されている。荷重伝達部材32は、ロードセル34を覆って、ロードセル34に着脱自在に取り付けられる。また、荷重伝達部材32は、プラットフォーム12の内側カバー13に着脱自在に取り付けられる。荷重伝達部材32は、プラットフォーム12から伝達される荷重をロードセル34の起歪体36に伝達する。
図5に示すように、ロードセル34は、プラットフォーム12から荷重が伝達されて変形する起歪体36と、起歪体36に貼付された複数の歪みゲージ38と、起歪体36を支持するブリッジ40と、ブリッジ40を支持する脚16とを備える。より正確には、ブリッジ40は、弾性支持部材42(図14および図15)に支持され、弾性支持部材42は脚16に支持されるが、図5には弾性支持部材42は現れていない。歪みゲージ38のケーブル29は起歪体36にテープ50で接着されている。
図8の斜め上方から見た斜視図および図9の下面図に示すように、起歪体36は、線対称な形状と一様な厚さを有する単一の部材である。起歪体36は、例えば炭素工具鋼のような高い剛性を有する材料の板材から形成されている。起歪体36は、中央に配置された歪み領域361、2つの第1の腕部362、2つの第2の腕部364、歪み領域361と第1の腕部362とを連結する第1の連結部363、および歪み領域361と第2の腕部364とを連結する第2の連結部365とを備える。
歪み領域361は、起歪体36の対称軸と同方向に延び一端361aと他端361bを有する矩形の部分である。歪み領域361は、プラットフォーム12から荷重伝達部材32を介して伝達される荷重によって、最も変形する領域である。歪み領域361には歪みゲージ38が取り付けられる(図5参照)。歪み領域361の上面には、歪みゲージ38を貼付するためのガイドとなる目印368が設けられている。
2つの第1の腕部362は、起歪体36の対称軸と平行に延びている。第1の連結部363は、起歪体361の対称軸を垂直に横切る方向に延びて歪み領域361の一端361aと両方の第1の腕部362に連結されている。
2つの第2の腕部364は、第1の腕部362よりも歪み領域361に近く配置され、起歪体361の対称軸と平行に延びている。第2の連結部365は、起歪体361の対称軸を垂直に横切る方向に延びて、歪み領域361の他端361bと第2の腕部364に連結されている。
第1の腕部362の各々の一端部は半円形に形成されており、この端部には円形の第1の貫通孔366が形成されている。第2の腕部364の各々の一端部も半円形に形成されており、この端部には円形の第2の貫通孔367が形成されている。これらの第1の貫通孔366および第2の貫通孔367の中心軸線は、起歪体36の対称軸を垂直に横切る一直線の上に配置されている。起歪体36は、歪み領域361の両側にほぼJ字形の溝369およびほぼJ字形の対称形の溝369を有し、各溝369は歪み領域361、第1の腕部362、第1の連結部363、第2の腕部364および第2の連結部365で囲まれている。
第2の腕部364が起歪体36の下方に配置された支持体(後述するブリッジ40)に支持された状態で、荷重伝達部材32によって上方から集中的に鉛直方向の下向きの荷重が第1の腕部362に与えられることによって、歪み領域361が変形する(横、すなわち図9の紙面に平行な方向から見てS字形に湾曲する)。歪みゲージ38は、起歪体36の歪み領域361の変形に応じた信号を生成する。
この実施の形態では、第1の腕部362には、荷重伝達部材32によって上方から集中的に鉛直方向の下向きの荷重が与えられる。第2の腕部364は、起歪体36の下方に配置された支持体(後述するブリッジ40)に固定される。但し、起歪体36自体はこのような用途だけに限定されるのではなく、第2の腕部364に鉛直方向の荷重が与えられ、第1の腕部362が支持体に固定されるように起歪体36が利用されてもよい。すなわち、第1の腕部362の対と第2の腕部364の対の一方は、起歪体36に対する垂直方向の荷重を受け、第1の腕部362の対と第2の腕部364の対の他方は、支持体に固定されるように構成されている。いずれにせよ、歪み領域361が大きくS字形に湾曲するような方式で、起歪体36は使用される。
図4から図6に示すように、荷重伝達部材32は八角形の上壁321を備える。上壁321は、プラットフォーム12の内側カバー13(図3)に接触する。上壁321の上面には、複数の突起322,323,324,325が形成されている。これらの突起322,323,324,325は、内側カバー13に形成された図示しない孔に掛け止めされる。このようにして、荷重伝達部材32は、プラットフォーム12の内側カバー13に着脱自在に取り付けられる。上壁321はプラットフォーム12の上面に平行に配置される。上壁321は起歪体36全体に覆い被さる。
図5、図7および図10に示すように、荷重伝達部材32は、上壁321から下方に延びる2つの側壁326を備える。図10の下面図に示すように、側壁326の各々は、起歪体36の第1の腕部362に対面する下方領域327を備える。下方領域327の各々は、起歪体36の第1の腕部362の一部に面接触する平坦な下方接触面327aと、起歪体36の第1の腕部362に接触せずに対面する平坦な下方非接触面327bとを有する。下方接触面327aおよび下方非接触面327bは、起歪体36の対称軸と平行に延びている。また、下方接触面327aおよび下方非接触面327bは、上壁321ひいてはプラットフォーム12の上面に平行に配置され、このため、重量測定時に水平に広がるように向けられる。下方接触面327aおよび下方非接触面327bの間には段差が設けられている。
図10の下面図に示すように、起歪体36の第1の腕部362の各々は、重量測定時に鉛直方向に軸線が延びるように向けられる第1の貫通孔366を有しており、荷重伝達部材32の側壁326の下方領域327の各々には第1の貫通孔366に挿入される突起328が設けられている。下方接触面327aは突起328の周囲にも広がっている。荷重伝達部材32は、2つの側壁326の外側に配置されて2つの側壁326と平行に延びる2つの外側側壁329をさらに有し、外側側壁329には、起歪体36の第1の腕部362が掛けられるフック330が形成されている。
図7に示すように、荷重伝達部材32は、2つの側壁326を連結する端壁331をさらに有する。端壁331には切欠き332が形成されており、切欠き332には歪みゲージ38のケーブル29が通過させられる(図5)。
図11および図13に示すように、起歪体36は、ブリッジ40に固定されて支持されている。ブリッジ40は、例えば鋼のような剛的な材料から形成された単一の部材である。図12および図13に示すように、ブリッジ40は、おおむね八角形の輪郭を有するほぼ一様な厚さの板であって、略平坦な上面401と略平坦な下面402とを有する。上面401と下面402は、重量測定時に水平に広がるように向けられる。
ブリッジ40には2箇所に、輪郭が円形のボス403が形成されている。ボス403は、例えばプレス加工で形成することができる。2つのボス403の表面は略平坦であり、起歪体36の下面(歪みゲージ38が貼付されていない面)に接触している。ボス403の各々の中央には、貫通孔404が形成されている。
ブリッジ40の2つの貫通孔404は、起歪体36の2つの第2の貫通孔367にそれぞれ重ねられており、貫通孔404と第2の貫通孔367をリベット410が通っている。2つのリベット410によって、起歪体36とブリッジ40は固定されている。図13に示すように、本実施の形態では、リベット410の一方の端部は起歪体36の上面から突出させ、リベット410の他方の頭部はブリッジ40のボス403の裏側の空間にあり、ブリッジ40の下面402からは突出させないようにした。リベット410の突出量が十分に小さければ、後述する弾性支持部材42は、リベット410で破壊または変形されることなく、ブリッジ40の下面402に密着する。
ブリッジ40のボス403は、起歪体36とブリッジ40の上面401の間の間隔を確保するスペーサの役割を果たす。つまり、起歪体36が変形しても、起歪体36の第1の連結部363などがブリッジ40の上面401に当たることが防止されている。
また、ブリッジ40には、長円状の貫通孔406,407が形成されている。貫通孔406,407は、後述する脚16への取り付けに使用される。
ブリッジ40は、図14および図15に示す弾性支持部材42に支持され、弾性支持部材42は脚16に支持されている。弾性支持部材42はゴムにより形成されている単一の部材である。図14から図16に示すように、弾性支持部材42は、ほぼ直方体状で長手方向の両端部が円弧状である上部421と、ほぼ直方体状で長手方向の両端部が円弧状である下部422とを備える。上部421の長手方向の長さは下部422のそれよりも大きく、上部421の幅は下部422のそれよりも小さい。
この実施の形態では、弾性支持部材42の上面は略平坦である。但し、弾性支持部材42の上面は円弧状であってもよいし、上面に凹凸があってもよい。弾性支持部材42の上面に、ブリッジ40の下面402が密着する。2つのリベット410が弾性支持部材42の長手方向に並ぶように、ブリッジ40は弾性支持部材42に対して配置される。弾性支持部材42の下部422は脚16に嵌め込まれ、弾性支持部材42は脚16により支持されている。
図14、図15、図17〜図20に示すように、脚16は、円柱状の脚本体161と、脚本体161の周囲に配置されるリング状の縁辺部164とを有する。脚本体161にはブリッジ40が載せられる。脚本体161の上面には、凹部162が形成されており、凹部162には、弾性支持部材42の下部422が嵌め込まれている部分が形成されている。図17に示すように、凹部162の下面には、複数のほぼ矩形の長穴163が形成されており、これらの長穴163のため凹部162の下面には格子状の模様が現れている。また、脚本体161は、その下面が床に直接接触するように、置かれて床に支持される。但し、脚本体161と床の間に別な部品(例えば後述する絨毯脚)が介在してもよい。脚16は、例えば樹脂により形成された単一の部材である。
図14、図15、図17および図18に示すように、脚本体161と縁辺部164は、湾曲した4つの弾性連結部165,166,167,168で連結されている。弾性連結部165,166,167,168は、約90度の角間隔をおいて配置されており、弾性連結部165,166,167,168の各々は、縁辺部164の内周に連結された縦長S字形の外側部と、脚本体161の上端外周に連結された円弧板上の内側部とを有する。弾性連結部165,166,167,168は、薄くかつ細く形成されている。特に、弾性連結部165,166,167,168のうち、縁辺部164に近い縦長S字形の外側部165a,166a,167a,168aは、脚本体161に近い円弧板上の内側部165b,166b,167b,168bよりも薄くかつより細く形成されている。したがって、弾性連結部165,166,167,168、特に外側部165a,166a,167a,168aは可撓性が極めて高い。なお、本実施の形態では、弾性連結部165,166,167,168が湾曲形状を有しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、直線形状であってもよい。
脚16は、縁辺部164から内側に向けて突出する2つの第1の突起170,171を有する。また、脚16は、弾性連結部165の内側部165bに一体に連結され弾性連結部165から脚本体161の軸線を中心とする周方向に突出する第2の突起172と、弾性連結部166の内側部166bに一体に連結され弾性連結部166から脚本体161の軸線を中心とする周方向に突出する第2の突起173と、弾性連結部167の内側部167bに一体に連結され弾性連結部167から脚本体161の軸線を中心とする周方向に突出する第2の突起174と、弾性連結部168の内側部168bに一体に連結され弾性連結部168から脚本体161の軸線を中心とする周方向に突出する第2の突起175とを有する。第1の突起170は第2の突起172,173の間にあり、第2の突起172,173は第1の突起170と脚本体161の軸線を中心とする周方向において隣り合う。第1の突起171は第2の突起174,175の間にあり、第2の突起174,175は第1の突起171と脚本体161の軸線を中心とする周方向において隣り合う。第1の突起170,171および第2の突起172,173,174,175は、縁辺部164に対する脚本体161の相対回転を規制する回り止めの役割を果たす。
脚16の縁辺部164には、ブリッジ40が取り付けられる。縁辺部164に形成された第1の突起170,171には、円柱状で上方に突出する凸部180,181がそれぞれ設けられている。図5に示すように、凸部180,181は、ブリッジ40の貫通孔406,407に挿入される。また、脚16の縁辺部164にはフック182,183が形成されており、フック182,183はブリッジ40が上方に移動することを規制する。したがって、脚16の縁辺部164に対するブリッジ40の相対的な鉛直方向の移動および水平方向の移動(直線移動および回転移動)は制限されている。換言すれば、ブリッジ40に対する縁辺部164の相対的な鉛直方向の移動および水平方向の移動(直線移動および回転移動)は制限されている。
図22は、重量測定装置1の1つのロードセルアセンブリ30の周辺の断面図である。図22において、矢印は荷重を示す。プラットフォーム12の外側カバー14に与えられた荷重は、内側カバー13、荷重伝達部材32を経て、起歪体36に伝達される。そして、起歪体36からブリッジ40を経て、弾性支持部材42に伝達され、さらに脚16の脚本体161に伝達されて、床に受け止められる。
この実施の形態においては、弾性支持部材42がブリッジ40を支持する。ブリッジ40は、重量測定時に水平に広がるように向けられる略平坦な下面を有する。重量測定時において、弾性支持部材42の上面は、ブリッジ40の略平坦な下面と接触させられて密着する。したがって、重量測定装置1に過大な荷重が与えられたり、繰り返し荷重が与えられたりしても、荷重が局部的に集中して、一部の部品が破壊されるおそれが低減され、長期間にわたって測定の精度を維持することができる。また、荷重が局部的に集中する突起および突起が接触する部品がないため、そのような部品のために高価な材料を使用したり硬度を増すための熱処理を行ったりする必要がないため重量測定装置1の製造コストを低減することができる。
また、弾性支持部材42の弾性変形により、起歪体36の姿勢が適正に維持される。例えば、起歪体36の2つの第1の腕部362の高さが違ったり、2つの第2の腕部364の高さが違ったりすると、重量測定の精度が低下する。しかし、弾性支持部材42の弾性変形により、このような事態が低減または防止される。さらに、弾性支持部材42には衝撃緩和性能があるため、重量測定装置1に衝撃が与えられても、重量測定装置1の部品のガタの発生が低減または防止され、重量測定装置1の長い寿命が確保される。
脚16において、荷重が集中する脚本体161と、ブリッジ40などの移動を規制する縁辺部164は、可撓性が高い弾性連結部165,166,167,168で連結されている。可撓性が高い弾性連結部165,166,167,168のために、縁辺部164から脚本体161に余計な力が与えられることが防止されている。
重量測定装置1においては、ベース15がプラットフォーム12に連結され、プラットフォーム12とともに収容空間27を画定する。収容空間27は、ロードセルアセンブリ30の大部分(脚16の上部、荷重伝達部材32、起歪体36、歪みゲージ38、ブリッジ40および弾性支持部材42を含む)を収容する。しかし、図22に示すように、ベース15は、ベース貫通孔15aを有しており、脚16の下部は、ベース貫通孔15aを通じて、収容空間27からベース15の下方に突き出しており、脚16はベース15には固定されず、脚16に対してベース15はプラットフォーム12とともに鉛直方向に変位する。
脚がベースまたはプラットフォームに固定される構造(この実施の形態とは別の構造)においては、脚とプラットフォームの間に介在する起歪体は、プラットフォームから起歪体に与えられる荷重とベースから起歪体に与えられる力に応じて変形することになる。プラットフォームに荷重が与えられると、ベースがわずかながら変形するために、ベースから起歪体に与えられる力はベースの姿勢に応じて変動しうる。また、荷重によって起歪体が変形して、ベースと脚が引っ張り合うために、起歪体に与えられる荷重が変わる。更に、この実施の形態のように弾性支持部材を設けると、弾性支持部材の弾性圧縮変形により、ベースと脚の引っ張り合う力がさらに大きい。これらは、重量測定装置で測定される重量の測定精度を低下させる。
これに対して、この実施の形態では、脚16がベース15およびプラットフォーム12に固定されず、ベース15およびプラットフォーム12から独立し、脚16に対してベース15とプラットフォーム12がともに変位することにより、脚16とプラットフォーム12の間に介在する起歪体36は、プラットフォーム12から起歪体36に与えられる荷重と、脚16が載せられる床から起歪体36に与えられる力に応じて変形することになる。ただし、本実施の形態は、脚16がベース15およびプラットフォーム12から独立するものに限られない。脚16がベース15もしくはプラットフォーム12等に固定されている場合であっても、適用することができる。
弾性支持部材42はゴムで形成されているが、他の弾性体、例えばバネによって弾性支持部材を形成してもよい。この実施の形態でゴム製の弾性支持部材42を使用する理由は、一般にゴムは、繰り返し荷重に対する耐久性が高く、また仮に脚16ひいてはブリッジ40が重量測定時に水平面に対して傾いても、測定誤差が小さいからである。これにより、床が多少傾いていても、あるいは、重量測定装置が床に対して多少傾いていても、重量測定装置1で測定される重量の測定精度が十分に確保される。
図23は、異なるゴムで形成された弾性支持部材42を使用したロードセルアセンブリ30の耐久性実験の結果を示す表である。実験においては、単一のロードセルアセンブリ30に50kgfの荷重を20,000回繰り返し与えた。
ショア硬度A90およびA80のゴムで形成された弾性支持部材42を使用したロードセルアセンブリ30では、問題はなかった。ショア硬度A70のゴムで形成された弾性支持部材42を使用したロードセルアセンブリ30では、樹脂で形成された脚16の内部に亀裂が発生したが、一般的な体重計が使用される回数を考慮すると、重量測定装置1として使用するのに許容可能である。ショア硬度A60のゴムで形成された弾性支持部材42を使用したロードセルアセンブリ30では、樹脂で形成された脚16の亀裂が外から見えるほど発生した。したがって、ショア硬度A60の弾性支持部材は劣悪であると判断された。これは、軟らかすぎるゴムで形成された弾性支持部材42では、弾性支持部材42の鉛直方向の圧縮が大きすぎ、弾性支持部材42が過剰に水平方向に広がって、弾性支持部材42が嵌め込まれている脚16(図15参照)を押し広げる力を大きく与えるためである。
図24は、弾性支持部材42の硬度と重量測定誤差の関係を調べた実験結果を示すグラフである。実験においては、重量測定装置1の筐体11に歪みが加わるように荷重を与え、重量測定値を調べた。重量測定装置1の筐体11に歪みが加わる方式とは、軟らかいゴムを貼付した平坦な木の板をプラットフォーム12に載せて、その木の板の上に分銅を載せる方式であり、人間がプラットフォーム12に載る状態に近似した方式である。図24に示すように、筐体11に歪みが加わることで、荷重に対する誤差が発生する。ゴムが硬いほど、誤差は大きくなる傾向がある。また、経験則より、床の傾きにより、脚16ひいては重量測定装置1が傾いた場合も同様の結果になると考えられる。しかし、図24に示す実験結果によれば、ショア硬度A70からA90のゴムに関する重量測定誤差は、150kgfの荷重のときでもさほど大きくなく実用上問題はないと判断される。ショア硬度A90のゴムに関して、150kgfの荷重のとき誤差は約80gf、125kgfの荷重のとき誤差は約60gfである。ショア硬度A90より硬いゴムでは、測定精度がより低くなることが考えられる。
以上の図23および図24に関連する実験結果から、弾性支持部材42の硬度はショア硬度A70からA90であると好ましい。ゴムで形成された弾性支持部材42の硬度が、ショア硬度A70からA90であれば、繰り返し荷重に対する耐久性が高く、また仮に脚16ひいてはブリッジ40が重量測定時に水平面に対して傾いても、測定誤差が小さい。
弾性支持部材42の硬度はショア硬度A75からA85であるとさらに好ましい。図23に関連する実験では、ショア硬度A70のゴムで形成された弾性支持部材42を使用したロードセルアセンブリ30では、樹脂で形成された脚16の内部に亀裂が発生したが、ショア硬度A80のゴムで形成された弾性支持部材42を使用したロードセルアセンブリ30では、問題はなかったので、ショア硬度A75以上の高い硬度を有するゴムは、耐久性の面でより良好であると考えられる。図24に関連する実験では、ショア硬度A90のゴムに関して、125kgfの荷重のとき誤差は約60gfであり、ショア硬度A80のゴムに関して、125kgfの荷重のとき誤差は約30gfである。125kgfの荷重のとき許容できる誤差が50gfであると仮定すると、ショア硬度A85以下の硬度を有するゴムが好ましいと考えられる。
図10を参照して上記したように、側壁326の下方領域327の各々は、起歪体36の第1の腕部362の一部に面接触する平坦な下方接触面327aと、起歪体36の第1の腕部362に接触せずに対面する平坦な下方非接触面327bとを有する。下方接触面327aおよび下方非接触面327bの間には段差が設けられている。下方接触面327aは、起歪体36の第1の腕部362の一部に面接触するとともに、重量測定時に水平に広がるように向けられる。この下方接触面327aは、第1の腕部362の延びる方向である、起歪体36の対称軸と平行な方向に延びている。したがって、プラットフォーム12に荷重が与えられる時、起歪体36のうちプラットフォーム12からの荷重を受ける2つの第1の腕部362の姿勢の変化が小さい。しかも、2つの側壁326の下方領域327には、下方接触面327aだけでなく、下方非接触面327bが設けられる。つまり、下方領域327のうち一部(下方接触面327a)だけが、起歪体36の第1の腕部362の一部に面接触し、他の一部(下方非接触面327b)は第1の腕部362に接触せずに対面する。このように荷重伝達部材32の2つの側壁326のうち、第1の腕部362に接触する下方接触面327aが限定されるので、起歪体36の第1の腕部362と下方接触面327aは、線接触に近い形式で、非常に狭い幅を持つ面で接触する。起歪体36の第1の腕部362と下方接触面327aが非常に広い幅を持つ面で接触する場合には、起歪体36の第1の腕部362のうち荷重が集中する部分が荷重の大きさによって変動する。しかし、この実施の形態においては、起歪体36の第1の腕部362と下方接触面327aは、線接触に近い形式で、非常に狭い幅を持つ面で接触するので、起歪体36の第1の腕部362のうち荷重が集中する部分が荷重の大きさによってほとんど変動しない。また、2つの側壁326のうち、第1の腕部362に接触しない下方非接触面327bに相当する部分は、側壁326の厚さを大きく確保し、荷重伝達部材32の変形を抑制することに貢献する。したがって、この実施の形態では、プラットフォーム12に荷重が与えられる時、その荷重の大きさにかかわらず、起歪体36のうち少なくともプラットフォーム12からの荷重を受ける2つの腕部の姿勢の変化が極めて小さく、重量測定装置1の測定精度が確保される。
第1の腕部362の各々は重量測定時に鉛直方向に延びるように向けられる第1の貫通孔366を有しており、荷重伝達部材32の側壁326の下方領域327の各々には第1の貫通孔366に挿入される突起328が設けられており、下方接触面327aは突起328の周囲に広がっている。重量測定時に鉛直方向に延びるように向けられるこれらの第1の貫通孔366に突起328が嵌め入れられることにより、起歪体36と荷重伝達部材32の水平方向の相対的な移動が防止される。また、第1の貫通孔366に嵌め入れられる突起328の周囲に下方接触面327aが広がっていることにより、荷重伝達部材32の突起328から偏った位置に荷重が与えられても、起歪体36の第1の腕部362と下方接触面327aは、水平な面上で接触し、重量測定装置1の測定精度が確保される。
図25は、重量測定時に起歪体36に発生する応力分布を示す図である。応力分布はコンピュータシミュレーションによって得られた。領域A1は最低応力の領域であり、領域A5は最高応力の領域である。領域Aに付けられた数字が小さい程、発生する応力は小さい。図10と図25の比較から明らかなように、荷重伝達部材32の側壁326の下方領域327の下方接触面327aは、起歪体36のうち低い応力の領域A1,A2に相当する部分(歪みが小さい部分)に接触する。したがって、起歪体36の領域A1,A2は、安定した姿勢で荷重伝達部材32の側壁326の下方領域327の下方接触面327aから荷重を受け、重量測定装置1の測定精度が確保される。
図10を参照して上記したように、荷重伝達部材32は、2つの側壁326の外側に配置されて2つの側壁326と平行に延びる2つの外側側壁329をさらに有し、外側側壁329には、起歪体36の第1の腕部362が掛けられるフック330が形成されている。荷重伝達部材32のフック330に起歪体36が引っ掛けられることにより、起歪体36と荷重伝達部材32は一体としてプラットフォーム12に取り付け、取り外すことができる。したがって、これらの部品の取り扱いが容易である。
図14、図15、図17および図18を参照して上記したように、脚16は、縁辺部164から内側に向けて突出する2つの第1の突起170,171と、弾性連結部165,166,167,168に一体に連結された第2の突起172,173,174,175とを備える。第1の突起170は第2の突起172,173の間にあり、第2の突起172,173は第1の突起170と脚本体161の軸線を中心とする周方向において隣り合う。第1の突起171は第2の突起174,175の間にあり、第2の突起174,175は第1の突起171と脚本体161の軸線を中心とする周方向において隣り合う。このため、縁辺部164の軸線周りの回転が拘束された状態で、脚本体161に大きなトルクが与えられても、第1の突起170が第2の突起172または173に接触し、第1の突起171が第2の突起174または175に接触し、脚本体161の回転ひいては弾性連結部165,166,167,168の変形を制限し、脚本体161の周囲に配置された弾性連結部165,166,167,168の破壊が防止される。
図5を参照して上記したように、脚16の縁辺部164の凸部180,181はブリッジ40の貫通孔406,407に挿入され、ブリッジ40に対する縁辺部164の相対的な水平方向の移動(直線移動および回転移動)は制限されている。上記のように、起歪体36はリベット410によってブリッジ40に固定されている(図11、図22参照)。また、起歪体36は、起歪体36の2つの第1の貫通孔366に荷重伝達部材32の2つの突起328が嵌め込まれることにより、荷重伝達部材32に対する水平方向の相対移動が制限されるように、荷重伝達部材32に取り付けられている(図10、図22参照)。荷重伝達部材32は、突起322,323,324,325(図4から図6参照)がプラットフォーム12の内側カバー13に掛け止めされることにより、プラットフォーム12に対して相対移動が防止されている。したがって、脚16の縁辺部164は、プラットフォーム12に対して相対的に回転しないように規制されている。つまり、この重量測定装置1の構成では、縁辺部164の軸線周りの回転が、ブリッジ40、起歪体36、荷重伝達部材32およびプラットフォーム12によって拘束されている。したがって、脚16に、第1の突起170,171と第2の突起172,173,174,175がない場合には、脚本体161に大きなトルクが与えられると、弾性連結部165,166,167,168が破壊されるおそれがある。しかし、第1の突起170,171と第2の突起172,173,174,175の働きによって、脚本体161に大きなトルクが与えられても、脚本体161の回転ひいては弾性連結部165,166,167,168の変形が制限され、脚本体161の周囲に配置された弾性連結部165,166,167,168の破壊が防止される。
第1の突起170,171および第2の突起172,173,174,175の効果は、特に、脚16に絨毯脚が取り付けられる場合に有用である。図26は絨毯脚60を示す斜視図である。絨毯脚60は、例えば樹脂で形成されたほぼ円板状の部品であり、平坦な下面61を有する。絨毯脚60の上部の中央には、複数の突起62が上方に向けて突出している。これらの突起62は、脚16の脚本体161の下面に形成された複数の穴185にそれぞれ挿入される。このようにして、絨毯脚60は脚本体161に着脱自在に取り付けられる。絨毯脚60の直径は、脚本体161の直径よりも非常に大きい。したがって、脚本体161に絨毯脚60が取り付けられると、絨毯脚60から脚本体161に大きなトルクが与えられやすい。第1の突起170,171および第2の突起172,173,174,175は、縁辺部164に対する脚本体161の相対回転を規制する回り止めの役割を果たすため、脚本体161に大きなトルクが与えられても弾性連結部165,166,167,168の破壊が防止される。
図27は他の実施の形態に係る重量測定装置1の断面図であり、図22と同様に見た図である。この重量測定装置1は、荷重伝達部材32を有しておらず、プラットフォーム12から起歪体36に直接荷重が与えられるようになっている。プラットフォーム12の内側カバー13の下面にはボス13aが形成されており、ボス13aにはネジ穴が形成されている。起歪体36の第1の腕部362はボス13aに突き当てられ、第1の腕部362に形成された第1の貫通孔366を通るネジ70がボス13aのネジ穴に止められている。このようにして、起歪体36は直接内側カバー13に固定されている。
図27において、矢印は荷重を示す。プラットフォーム12の外側カバー14に与えられた荷重は、内側カバー13を経て、起歪体36に伝達される。そして、起歪体36からブリッジ40を経て、弾性支持部材42に伝達され、さらに脚16の脚本体161に伝達されて、床に受け止められる。
いずれの実施の形態においても、起歪体36は粉末冶金によって形成されるのが好ましい。粉末冶金によって形成することにより、打ち抜き加工(パンチング)に比べて、起歪体36の小型化が図れるとともに機械的強度が確保される。また起歪体36の厚さおよび巾の寸法精度が高いので、ロードセルの重量測定の精度が向上する。粉末冶金の手法としては、焼結金属粉末をプレス成型して焼結することでもよいし、金属粉末射出成型法(MIM)でもよい。
図9を参照し、起歪体36の好ましい寸法を説明する。好ましくは、第1の腕部362と第2の腕部364との間隔G1、ならびに第2の腕部364と歪み領域361との間隔G2が、起歪体36の厚さの半分以下である。これらの間隔G1,G2を小さくすることにより、起歪体36の小型化(特に図9の横方向の長さの短縮)が図れる。起歪体に適する高強度金属材料は、打ち抜き加工では、これらの間隔は、起歪体36の厚さと同程度にしかできず、それよりも細くすることができない。
好ましくは、起歪体36の対称軸に垂直な方向の第1の腕部362の各々の長さL1が、起歪体36の対称軸を横切る方向の歪み領域361の長さL2の1.3倍以上である。第1の腕部362の各々には第1の貫通孔366が形成されており、第1の貫通孔366の貫通孔を利用して他の部品(図27の実施の形態では内側カバー13)にネジ止めすることが可能である。二つの第1の腕部362の外側の側面同士の間隔L1が大きければ、ネジ70の締結時に発生する締め付けトルクに起因する第1の腕部362における残留応力を小さくすることができる。この残留応力は、ロードセルの重量測定の精度に悪影響を及ぼすので、小さいことが望ましい。起歪体36の対称軸に垂直な方向の第1の腕部362の各々の長さL1が、起歪体36の対称軸を横切る方向の歪み領域361の長さL2の1.3倍以上であれば、残留応力が低減され、ロードセルの重量測定の精度を向上させることができる。
好ましくは、起歪体36の対称軸に平行な方向の第1の連結部363の長さL3が、起歪体36の対称軸を横切る方向の歪み領域361の長さL2の1.4倍以上である。起歪体36の対称軸に平行な方向の第1の連結部363の長さL3が大きければ、ネジ70の締結時に発生する締め付けトルクに起因する第1の腕部362における残留応力を小さくすることができる。この残留応力は、ロードセルの重量測定の精度に悪影響を及ぼすので、小さいことが望ましい。起歪体36の対称軸に平行な方向の第1の連結部363の長さL3が、起歪体36の対称軸を横切る方向の歪み領域361の長さL2の1.4倍以上であれば、残留応力が低減され、ロードセルの重量測定の精度を向上させることができる。
図28から図30は、間隔L1と長さL3を変えて、重量測定誤差を調べた結果を示すグラフである。図28は、L1/L2=86%、L3/L2=86%のときのネジ70の締め付けトルクと重量測定誤差の関係を示す。図29は、L1/L2=93%、L3/L2=100%のときのネジ70の締め付けトルクと重量測定誤差の関係を示す。図30は、L1/L2=130%、L3/L2=140%のときのネジ70の締め付けトルク(1.0Nm、2.0Nm、2.5Nm)と重量測定誤差の関係を示す。これらの図から明らかなように、締め付けトルクが大きい程、測定誤差は大きい。これはネジ70の締結時に発生する締め付けトルクに起因する第1の腕部362における残留応力が測定に悪影響を与えたためである。しかし、図30に示すL1/L2=130%、L3/L2=140%のときの重量測定誤差は、図28および図29に示す他の結果に比べて顕著に小さい。したがって、L1がL2の1.3倍以上、L3がL2の1.4倍以上のとき、顕著な効果が達成されることが理解できる。
以上、体組成計としても使用されうる体重計である重量測定装置を説明したが、本発明は、重量測定に関しており、人間以外の重量を測定する重量測定装置およびそれらの部品も本発明の範囲内にある。実施の形態では、重量測定装置1に4つのロードセルアセンブリが設けられているが、重量測定装置に設けられるロードセルアセンブリの数は4には限定されない。