JP6034019B2 - 保護膜形成層付ダイシングシートおよびチップの製造方法 - Google Patents

保護膜形成層付ダイシングシートおよびチップの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、チップ裏面に保護膜を形成でき、かつチップの製造効率の向上が可能な保護膜形成層付ダイシングシートに関する。また、本発明は、保護膜形成層付ダイシングシートを用いたチップの製造方法に関する。
近年、いわゆるフェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式においては、回路面上にバンプなどの電極を有する半導体チップ(以下、単に「チップ」ともいう。)が用いられ、該電極が基板と接合される。このため、チップの回路面とは反対側の面(チップ裏面)は剥き出しとなることがある。
この剥き出しとなったチップ裏面は、有機膜により保護されることがある。従来、この有機膜からなる保護膜を有するチップは、液状の樹脂をスピンコート法によりウエハ裏面に塗布し、乾燥し、硬化してウエハとともに保護膜を切断して得られる。しかしながら、このようにして形成される保護膜の厚み精度は充分でないため、製品の歩留まりが低下することがあった。
上記問題を解決するため、剥離シートと、該剥離シート上に形成された、エネルギー線硬化性成分とバインダーポリマー成分とからなる保護膜形成層を有するチップ保護用フィルムが開示されている(特許文献1)。
さらに、半導体チップが薄型化・高密度化しつつある現在においては、厳しい温度条件下に曝された場合であっても、保護膜付チップを実装した半導体装置には、さらに高い信頼性を有することが要求されている。
特開2009−138026号公報
本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載のチップ用保護フィルムは、保護膜付チップを製造する際に、ダイシングシートに保護膜付ウエハを貼付する必要があり、製造工程が複雑であった。また、保護膜形成層を硬化する際に収縮し、半導体ウエハが反るという問題が発生するおそれがあった。特に、極薄の半導体ウエハでは上記問題が顕著である。半導体ウエハが反ると、ウエハが破損したり、保護膜へのマーキング(印字)精度が低下するおそれがある。また、ダイシングにより半導体ウエハをチップに分割した後、ダイシングシートの粘着力を低下させ、チップのピックアップを容易にするため、該ダイシングシートの粘着剤層にエネルギー線を照射することがある。エネルギー線照射工程により、保護膜用フィルムと粘着剤層とが同時に硬化し密着することがあるため、チップのピックアップが困難になるおそれがあった。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、厚みの均一性が高く、印字精度に優れる保護膜を有する半導体チップを簡便に製造可能であり、かつ保護膜形成層の硬化をエネルギー線照射工程により、及びチップのピックアップの容易化を加熱工程により行うことで、保護膜を有する半導体チップのピックアップが容易で、半導体チップの製造工程の簡便な保護膜付ダイシングシートを提供することを目的とする。
本発明は、以下の要旨を含む。
〔1〕基材フィルムと粘着剤層とからなる粘着シートの粘着剤層上に、エネルギー線硬化性化合物を含有する保護膜形成層を有し、
保護膜形成層は、エネルギー線照射により保護膜となり、
粘着シートと保護膜の間の粘着力が加熱により低下し、または粘着剤層と保護膜の接触面積が加熱により減少する保護膜形成層付ダイシングシート。
〔2〕上記〔1〕に記載の保護膜形成層付ダイシングシートの保護膜形成層を、ワークに貼付し、以下の工程(1)〜(3)を[(1)、(2)、(3)]または[(2)、(1)、(3)]の順で行うチップの製造方法;
工程(1):保護膜形成層をエネルギー線照射により硬化し保護膜を得る、
工程(2):ワークと、保護膜形成層または保護膜とをダイシング、
工程(3):保護膜と粘着シートとを剥離。
〔3〕前記工程(1)の後のいずれかの工程において、下記工程(4)を行う〔2〕に記載のチップの製造方法;
工程(4):保護膜にレーザー印字。
半導体チップ裏面に保護膜を形成する際に、本発明に係る保護膜形成層付ダイシングシートを用いることで、半導体チップ裏面に厚みの均一性が高く、印字精度に優れる保護膜を簡便に形成することができる。また、粘着シートと保護膜の間の剥離を容易にする操作を加熱により行うため、保護膜形成層に半導体ウエハまたは半導体チップを貼付したまま保護膜形成層の硬化工程を行うことができ、エネルギー線照射による硬化工程を経た後も、粘着剤層と保護膜が密着することを防止することができる。このため、該硬化工程およびその前または後に行われるダイシング工程の際に粘着シートに該ウエハまたはチップを良好に保持でき、かつ、該硬化工程およびダイシング工程の後に加熱工程を行うことで、粘着シートと保護膜の粘着力を低下せしめ、または粘着剤層と保護膜の接触面積を減少させ、保護膜付半導体チップのピックアップを容易に行うことができる。その結果、保護膜付半導体チップの製造工程を簡略化できる。
本発明に係る保護膜形成層付ダイシングシートの断面図を示す。
以下、本発明について、その最良の形態も含めてさらに具体的に説明する。図1に示すように、本発明に係る保護膜形成層付ダイシングシート10は、基材フィルム1と粘着剤層2とからなる粘着シート3の粘着剤層2上に、エネルギー線硬化性化合物を含有する保護膜形成層4(以下において、単に「保護膜形成層」と記載することがある。)を有する。また、図1に示すように、保護膜形成層4は粘着シート3の内周部に形成され、粘着シート3の外周部に粘着剤層2が露出することが好ましい。そして、粘着シート3の外周部において、粘着剤層2によりリングフレーム5に貼付される。
(基材フィルム)
基材フィルムのMD方向(フィルムを長尺で製膜した場合の、フィルムを搬送する方向と並行する方向)、およびCD方向(フィルムの同一面上においてMD方向と直交する方向)のいずれにおいても、引っ張り測定での破断伸度が70%以上であるフィルムを用いてもよい。これにより、基材フィルムのエキスパンドが可能となる。引っ張り測定での破断伸度は、好ましくは100%以上、より好ましくは120%以上である。また、基材フィルムの25%応力が、好ましくは150MPa以下、より好ましくは120MPa以下、さらに好ましくは100MPa以下であることにより、粘着シートはより良好なエキスパンド性を示す。
基材フィルムとしては、保護膜付半導体チップ(以下において、単に「チップ」と記載することがある。)の剥離を容易にするために加熱を行うため、耐熱性を有するものが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリメチルペンテンなどのポリオレフィンフィルム、アクリル樹脂フィルム、耐熱ポリウレタンフィルム等が挙げられる。また、これらの架橋フィルムや放射線・放電等による改質フィルムも用いることができる。基材フィルムは、上記フィルムの積層体であってもよい。
基材フィルムの厚さは特に限定されず、好ましくは30〜300μm、より好ましくは50〜200μmである。基材フィルムの厚みを上記範囲とすることで、ダイシングによる切り込みが行われても基材フィルムの断裂が起こりにくい。また、保護膜形成層付ダイシングシートが十分な可とう性を有するため、ワーク(例えば半導体ウエハ等)に対して良好な貼付性を示す。
(粘着剤層)
本発明における粘着剤層は、従来より公知の種々の粘着剤を用いることができる。粘着剤層は、後述するチップを製造する際に、その外周部においてリングフレームに貼付され、その内周部において後述する保護膜形成層が積層されることが好ましい。粘着剤層は、エネルギー線硬化性成分を実質的に含有しないことが好ましい。エネルギー線硬化性成分を実質的に含有する場合、保護膜形成層付ダイシングシートにエネルギー線を照射しない場合であっても、保護膜形成層と粘着剤層が接触した後、環境中の光線や酸素によりラジカルが発生し、経時的に保護膜形成層と粘着剤層が密着するおそれがある。なお、実質的に含有しないとは、全く含有しないか、または粘着剤層の全重量中、0重量%超5重量%以下の程度に含有することをいう。エネルギー線硬化性成分としては、後述する保護膜形成層の含有するエネルギー線硬化性化合物(A)と同種のものが挙げられる。粘着剤層上に保護膜形成層が形成される前にエネルギー線照射が行われ、保護膜形成層付ダイシングシートを製造した際にエネルギー線重合性基が消失しているものはここでいうエネルギー線硬化性成分に該当しない。
粘着剤層の厚さは特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは2〜80μm、特に好ましくは3〜50μmである。
(粘着シート)
本発明における粘着シートは、上記の基材フィルム表面に粘着剤層を設けることで形成される。基材フィルム表面に粘着剤層を設ける方法は、剥離シート上に所定の膜厚になるように塗布し形成した粘着剤層を基材フィルム表面に転写しても構わないし、基材フィルム表面に粘着剤層を構成する粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成しても構わない。剥離シートとしては、後述する保護膜形成層上に設けるものと同じものを用いることができる。
波長365nmにおける粘着シートの全光線透過率は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。波長365nmにおける粘着シートの全光線透過率を上記範囲とすることで、保護膜形成層が紫外線硬化性である場合に、保護膜形成層の硬化のための紫外線照射を粘着シート(基材フィルム及び粘着剤層)越しに行うことが可能になる。
波長532nmおよび波長1064nmにおける粘着シートの全光線透過率は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。波長532nmおよび波長1064nmにおける粘着シートの全光線透過率を上記範囲とすることで、半導体ウエハに保護膜形成層付ダイシングシートを貼付した後に、レーザーマーキングを粘着シート越しに行うことが可能になる。
粘着シートには保護膜形成層が設けられる領域に、複数の微細な貫通孔が設けられていてもよい。貫通孔を設けることで、保護膜形成層へのレーザーマーキングを行った際に発生するガスにより生じる異物の発生を抑制できる。
また、本発明における粘着シートとして、従来より公知の種々の粘着シートを用いることもできる。このような粘着シートとしては、特開2004−277749号公報等に記載の加熱剥離型粘着シートや、特開平10−233373号公報や特開2004−119992号公報等に記載の加熱により粘着剤層と被着体の接触面積が減少する粘着シートが挙げられる。
加熱剥離型粘着シートは、基材(本発明における基材フィルム)と熱膨張性粘着層とからなり、熱膨張性粘着層は粘着性を付与するための粘着剤及び熱膨張性を付与するための熱膨張性微小球(マイクロカプセル)を含んでいる。前記粘着剤としては、加熱時に熱膨張性微小球の発泡及び/又は膨張を可及的に拘束しないようなものが好ましい。該粘着剤として、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤、これらの粘着剤に融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂を配合したクリープ特性改良型粘着剤などの公知の粘着剤を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。熱膨張性微小球としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどの加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球であればよい。
加熱により粘着剤層と被着体の接触面積が減少する粘着シートは、非収縮性支持フィルム(本発明における基材フィルム)と、収縮性フィルムと、粘着剤層とがこの順に積層された粘着シートであり、非収縮性支持フィルムと収縮性フィルムとの間に接着剤層を設けてもよい。上記構成の粘着シートは、ダイシング工程によりワーク(例えば保護膜付半導体ウエハ)と共に収縮性フィルムが完全に切断され、加熱により収縮性フィルムが収縮する。その結果、収縮性フィルム上の粘着剤層も収縮性フィルムの収縮に同伴して変形し、個片化されたワーク(例えば保護膜付半導体チップ)と粘着剤層との接触面積が減少する。そのため、個片化されたワークのピックアップが容易となる。収縮性フィルムとしては、特に熱収縮性のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムを用いることができる。また、粘着剤層は、従来より公知の種々の感圧性粘着剤により形成され、このような粘着剤としては、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル等の粘着剤が用いられる。
(保護膜形成層)
本発明における保護膜形成層は、エネルギー線硬化性化合物(A)を含有し、その他に連鎖移動剤(B)及びバインダーポリマー成分(C)を含有することが好ましい。保護膜形成層はエネルギー線硬化性化合物(A)を含有するため、エネルギー線照射により硬化し保護膜となる。
(A)エネルギー線硬化性化合物
エネルギー線硬化性化合物(A)は、エネルギー線重合性基を含み、エネルギー線の照射を受けると重合硬化する。このようなエネルギー線硬化性化合物(A)は、エネルギー線重合性低分子化合物(A−1)と、後述するエネルギー線硬化型重合体(A−2)に大別される。なお、エネルギー線としては、紫外線(UV)または電子線(EB)等が挙げられ、好ましくは紫外線が用いられる。
(A−1)エネルギー線重合性低分子化合物
エネルギー線重合性低分子化合物(A−1)としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジぺンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシ変性アクリレート、ポリエーテルアクリレートおよびイタコン酸オリゴマーなどのアクリレート系化合物が挙げられる。このような化合物は、分子内に少なくとも1つの重合性二重結合を有し、通常は、重量平均分子量が100〜30000、好ましくは300〜10000程度である。エネルギー線重合性低分子化合物(A−1)の配合量は、特に限定はされないが、保護膜形成層を構成する全固形分100質量部に対して、1〜50質量部程度の割合で用いることが好ましく、5〜30質量部程度の割合で用いることがより好ましい。
(A−2)エネルギー線硬化型重合体
エネルギー線硬化性化合物(A)として、バインダーポリマーの主鎖または側鎖に、エネルギー線重合性基が結合されてなるエネルギー線硬化型重合体(A−2)を用いてもよい。このようなエネルギー線硬化型重合体(A−2)は、後述するバインダーポリマー成分としての機能と、エネルギー線硬化性化合物としての機能を兼ね備える。つまり、エネルギー線硬化型重合体(A−2)を用いる場合は、本発明に用いる保護膜形成層は、バインダーポリマー成分(C)を含有していなくてもよい。
エネルギー線硬化型重合体(A−2)の主骨格は特に限定はされず、バインダーポリマー成分として汎用されているアクリル系重合体であってもよく、またビニルエーテル系重合体やポリエステル系重合体であっても良いが、側鎖へのエネルギー線重合性基の導入が容易であることから、アクリル系重合体を主骨格とすることが特に好ましい。
エネルギー線硬化型重合体(A−2)の主鎖または側鎖に結合するエネルギー線重合性基は、たとえばエネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合を含む基であり、具体的には(メタ)アクリロイル基等を例示することができる。エネルギー線重合性基は、アルキレン基、アルキレンオキシ基、ポリアルキレンオキシ基を介してエネルギー線硬化型重合体(A−2)に結合していてもよい。
エネルギー線重合性基が結合されたエネルギー線硬化型重合体(A−2)の重量平均分子量(Mw)は、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることがより好ましい。また、エネルギー線硬化型重合体(A−2)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−60〜50℃、さらに好ましくは−50〜40℃、特に好ましくは−40〜30℃の範囲にある。
エネルギー線硬化型重合体(A−2)は、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を含有するアクリル系重合体と、該官能基と反応する置換基とエネルギー線重合性炭素−炭素二重結合を1分子毎に1〜5個を有する重合性基含有化合物とを反応させて得られる。なお、この場合には、エネルギー線硬化型重合体(A−2)のガラス転移温度(Tg)は重合性基含有化合物を反応させる前の重合体のTgを指す。
重合性基含有化合物としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
アクリル系重合体は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリルモノマーまたはその誘導体と、これと共重合可能な他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とからなる共重合体であることが好ましい。
ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリルモノマーまたはその誘導体としては、たとえば、ヒドロキシル基を有する2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;カルボキシル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸;エポキシ基を有するグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどが挙げられる。
上記モノマーと共重合可能な他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体としては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ;環状骨格を有する(メタ)アクリレート、具体的にはシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、上記アクリル系重合体には、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンなどが共重合されていてもよい。
エネルギー線硬化型重合体(A−2)を使用する場合であっても、前記したエネルギー線重合性低分子化合物(A−1)を併用してもよく、また後述するバインダーポリマー成分(C)を併用してもよい。
エネルギー線硬化型重合体(A−2)は、バインダーポリマー成分(C)との合計量が、保護膜形成層を構成する固形分の合計100質量部に対して、通常3〜95質量部であり、5〜90質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜70質量部の割合である。このような範囲が好ましい理由は、後記するバインダーポリマー成分(C)の項で述べる。
保護膜形成層にエネルギー線硬化性を付与することで、保護膜形成層を簡便かつ短時間で硬化でき、保護膜付チップの生産効率が向上する。
(B)連鎖移動剤
保護膜形成層に連鎖移動剤(B)を含有させることで、エネルギー線硬化性化合物(A)における活性末端の寿命を延ばすことができるため、保護膜形成層が十分な硬化性を得ることができる。
このような連鎖移動剤(B)として具体的には、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸、N−(2−メルカプトプロピオニル)グリシン、2−メルカプトニコチン酸、3−[N−(2−メルカプトエチル)カルバモイル]プロピオン酸、3−[N−(2メルカプトエチル)アミノ]プロピオン酸、N−(3−メルカプトプロピオニル)アラニン、2−メルカプトエタンスルホン酸、3−メルカプトプロパンスルホン酸、4−メルカプトブランスルホン酸、ドデシル(4−メチルチオ)フェニルエーテル、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−2−ブタノール、メルカプトフェノール、2−メルカプトエチルアミン、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプト−3−ピリジノール、2−メルカプトベンゾチアゾール、メルカプト酢酸、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)などのメルカプト化合物、またメルカプト化合物を酸化して得られるジスルフィド化合物、ヨード酢酸、ヨードプロピオン酸、2−ヨードエタノール、2−ヨードエタンスルホン酸、3−ヨードプロパンスルホン酸などのヨード化アルキル化合物が挙げられる。これらのなかでも、下記一般式(I)で表される1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、または下記一般式(II)で表されるペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)が好ましい。
Figure 0006034019
Figure 0006034019
連鎖移動剤(B)の配合量は、保護膜形成層を構成するエネルギー線硬化性化合物(A)100質量部あたり、好ましくは1〜15質量部、より好ましくは3〜10質量部である。連鎖移動剤(B)の配合量が1質量部より少ない場合は、保護膜形成層の硬化が不十分になることがある。また、連鎖移動剤(B)の配合量が15質量部を超えると、高温条件下において連鎖移動剤が揮発し、アウトガスが発生することに起因して、保護膜形成層がチップから剥離することがある。
(C)バインダーポリマー成分
本発明に用いる保護膜形成層は、十分な接着性および造膜性(シート加工性)を付与するためにバインダーポリマー成分(C)を含有することが好ましい。ただし、エネルギー線硬化性化合物(A)として、エネルギー線硬化型重合体(A−2)を用いる場合には、バインダーポリマー成分(C)をも兼ねるので、別途バインダーポリマー(C)を配合しなくてもよい。バインダーポリマー成分(C)としては、従来公知のアクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ウレタンポリマー、アクリルウレタンポリマー、シリコーンポリマー、ゴム系ポリマー等を用いることができる。
バインダーポリマー成分(C)の重量平均分子量(Mw)は、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることがより好ましい。バインダーポリマー成分(C)の重量平均分子量が低過ぎると保護膜形成層と粘着シートとの剥離力が高くなり、保護膜形成層の転写不良が起こることがあり、高過ぎると保護膜形成層の接着性が低下し、ウエハ、チップ等に転写できなくなったり、あるいは転写後にチップ等から保護膜が剥離したりすることがある。
バインダーポリマー成分(C)として、アクリルポリマーが好ましく用いられる。アクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−60〜50℃、さらに好ましくは−50〜40℃、特に好ましくは−40〜30℃の範囲にある。アクリルポリマーのガラス転移温度が低過ぎると保護膜形成層と粘着シートとの剥離力が大きくなって保護膜形成層の転写不良が起こることがあり、高過ぎると保護膜形成層の接着性が低下し、ウエハ、チップ等に転写できなくなったり、あるいは転写後にチップ等から保護膜が剥離することがある。
上記アクリルポリマーを構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体が挙げられる。例えば、アルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ;環状骨格を有する(メタ)アクリレート、具体的にはシクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートなどが挙げられ;水酸基を有するヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられ;その他、エポキシ基を有するグリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中では、水酸基を有しているモノマーを重合して得られるアクリルポリマーが、他の成分との相溶性が良いため好ましい。また、上記アクリルポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンなどが共重合されていてもよい。
バインダーポリマー成分(C)は、エネルギー線硬化型重合体(A−2)との合計量で、保護膜形成層を構成する固形分の合計100質量部に対して、好ましくは3〜95質量部、より好ましくは5〜90質量部、特に好ましくは10〜70質量部の割合で含まれる。エネルギー線硬化型重合体(A−2)とバインダーポリマー成分(C)の含有量の合計が3質量部未満だと上記の効果が得られない可能性がある。バインダーポリマー成分(C)とエネルギー線硬化型重合体(A−2)の合計量が多くても、化学的作用に起因する問題は特にないが、95質量部を超えると他の成分を添加する余地が狭まり、設計の自由度が制限されることがある。
さらに、バインダーポリマー成分(C)として、硬化後の保護膜の可とう性を保持するための熱可塑性樹脂を配合してもよい。そのような熱可塑性樹脂としては、重量平均分子量が1000〜10万のものが好ましく、3000〜1万のものがさらに好ましい。熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは−30〜150℃、さらに好ましくは−20〜120℃のものが好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレンなどの1種類単独、または2種以上の混合物が挙げられる。また、これらの樹脂の単量体成分の2種以上が共重合されたものを用いてもよい。上記範囲の熱可塑性樹脂を含有することにより、保護膜形成層の転写面に保護膜形成層が追従しボイドなどの発生を抑えることができる。
(その他の成分)
保護膜形成層は、上記エネルギー線硬化性化合物(A)や、好ましく添加される連鎖移動剤(B)及びバインダーポリマー成分(C)に加えて下記成分を含むことができる。
(D)着色剤
保護膜形成層は、着色剤(D)を含有することが好ましい。保護膜形成層に着色剤を配合することで、半導体装置を機器に組み込んだ際に、周囲の装置から発生する赤外線等を遮蔽し、それらによる半導体装置の誤作動を防止することができ、また保護膜形成層を硬化して得た保護膜に、製品番号等を印字した際の文字の視認性が向上する。すなわち、保護膜を形成された半導体装置や半導体チップでは、保護膜の表面に品番等が通常レーザーマーキング法(レーザー光により保護膜表面を削り取り印字を行う方法)により印字されるが、保護膜が着色剤(D)を含有することで、保護膜のレーザー光により削り取られた部分とそうでない部分のコントラスト差が充分に得られ、視認性が向上する。着色剤(D)としては、有機または無機の顔料および染料が用いられる。これらの中でも電磁波や赤外線遮蔽性の点から黒色顔料が好ましい。黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等が用いられるが、これらに限定されることはない。半導体装置の信頼性を高める観点からは、カーボンブラックが特に好ましい。着色剤(D)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。保護膜形成層が連鎖移動剤(B)を含有する場合、その硬化性向上の効果は、可視光および/または赤外線と、エネルギー線との両方の透過性を低下させる着色剤を用い、エネルギー線の透過性が低下した場合に、特に好ましく発揮される。可視光および/または赤外線と、エネルギー線との両方の透過性を低下させる着色剤としては、上記の黒色顔料のほか、可視光および/または赤外線と、エネルギー線との両方の波長領域で吸収性または反射性を有するものであれば特に限定されない。
着色剤(D)の配合量は、保護膜形成層を構成する全固形分100質量部に対して、好ましくは0.1〜35質量部、さらに好ましくは0.5〜25質量部、特に好ましくは1〜15質量部である。
(E)光重合開始剤
保護膜形成層は、前述したエネルギー線硬化性化合物(A)を含有する。保護膜形成層の使用に際して、エネルギー線を照射して、エネルギー線硬化性化合物を重合し、保護膜形成層を硬化させる。この際、保護膜形成層中に光重合開始剤(E)を含有させることで、重合硬化時間ならびに光線照射量を少なくすることができる。
このような光重合開始剤(E)として具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、1,2−ジフェニルメタン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドおよびβ−クロールアンスラキノンなどが挙げられる。光重合開始剤(E)は1種類単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤(E)の配合割合は、エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して0.1〜10質量部含まれることが好ましく、1〜5質量部含まれることがより好ましい。0.1質量部未満であると光重合の不足で十分な硬度の保護膜が得られないことがあり、10質量部を超えると光重合に寄与しない残留物が生成し、保護膜形成層の硬化性が不十分となることがある。
(F)カップリング剤
エネルギー線硬化性化合物(A)やバインダーポリマー成分(C)などが有する官能基と反応する官能基と、無機物と反応する官能基を有するカップリング剤(F)を、保護膜形成層のチップに対する接着性、密着性を向上させるために用いてもよい。また、カップリング剤(F)を使用することで、保護膜形成層を硬化して得られる保護膜の耐熱性を損なうことなく、その耐水性を向上することができる。カップリング剤(F)としては、シランカップリング剤が特に好ましい。
シランカップリング剤としてはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。これらの中でも、ビニル基または(メタ)アクリロイル基を有するカップリング剤が好ましく用いられる。ビニル基または(メタ)アクリロイル基を有するカップリング剤を用いることで、エネルギー線硬化性化合物(A)の硬化物を含む保護膜のチップに対する接着性、密着性が向上する。
カップリング剤(F)は、保護膜形成層を構成する固形分の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.2〜10質量部、特に好ましくは0.3〜5質量部の割合で含まれる。カップリング剤(F)の含有量が0.1質量部未満だと上記の効果が得られない可能性があり、20質量部を超えるとアウトガスの原因となる可能性がある。
(G)無機充填材
無機充填材(G)を保護膜形成層に配合することにより、硬化後の保護膜における熱膨張係数を調整することが可能となり、半導体チップに対して硬化後の保護膜の熱膨張係数を最適化することで半導体装置の信頼性を向上させることができる。また、硬化後の保護膜の吸湿率を低減させることも可能となる。
好ましい無機充填材としては、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維およびガラス繊維等が挙げられる。これらのなかでも、エネルギー線を吸収しにくい無機充填材が好ましく、シリカフィラーおよびアルミナフィラーが特に好ましい。上記無機充填材(G)は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。無機充填材(G)の含有量は、保護膜形成層を構成する全固形分100質量部に対して、好ましくは1〜80質量部の範囲で調整が可能である。
(H)架橋剤
架橋性官能基を有するエネルギー線硬化型重合体(A−2)および/またはバインダーポリマー成分(C)を用いた場合には、保護膜形成層の初期接着力および凝集力を調節するために、架橋剤を添加することもできる。架橋剤(H)としては有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物などが挙げられる。
上記有機多価イソシアネート化合物としては、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物およびこれらの有機多価イソシアネート化合物の三量体、ならびにこれら有機多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。
有機多価イソシアネート化合物としては、たとえば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネートおよびリジンイソシアネートが挙げられる。
上記有機多価イミン化合物としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートおよびN,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等を挙げることができる。
架橋剤(H)はバインダーポリマー成分(C)100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部の比率で用いられる。
(I)汎用添加剤
保護膜形成層には、上記の他に、必要に応じて各種添加剤が配合されてもよい。各種添加剤としては、レベリング剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、イオン捕捉剤、ゲッタリング剤などが挙げられる。
さらに、保護膜形成層には、熱硬化性を付与するために、熱硬化性成分、熱硬化剤、硬化促進剤等が配合されていてもよい。保護膜形成層が熱硬化性を有する場合には、チップを接着するためのリフロー時に保護膜形成層中の熱硬化性成分が硬化するため、保護膜の耐熱性をさらに向上することができる。なお、保護膜形成層が熱硬化性を有する場合には、後述する粘着力低下温度よりも低い温度で保護膜形成層の熱硬化を行うことが好ましい。
上記のような各成分からなる保護膜形成層は、接着性とエネルギー線硬化性とを有し、未硬化状態ではワーク(半導体ウエハやチップ等)に押圧することで容易に接着する。そしてエネルギー線硬化を経て最終的には耐衝撃性の高い保護膜を与えることができ、接着強度にも優れ、厳しい高温度高湿度条件下においても十分な保護機能を保持し得る。
保護膜形成層のエネルギー線の透過性を示す尺度である、波長365nmにおける最大透過率は0〜20%であることが好ましく、0〜15%であることがより好ましく、0%を超え、10%以下であることがさらに好ましく、0.001〜8%であることが特に好ましい。本発明に用いる保護膜形成層は、連鎖移動剤(B)を含有している場合には、実質的にエネルギー線を透過しなくても硬化される。その理由は、保護膜形成層の表層のエネルギー線硬化性化合物(A)にラジカルが発生した後、連鎖移動剤(B)が媒介してラジカルを内部に伝達していくことによる。これにより、保護膜形成層の内部に存在するエネルギー線硬化性化合物(A)も重合し、硬化が行われる。保護膜形成層の着色は、好ましくは可視光および/または赤外線と、エネルギー線との両方の透過性を低下させる着色剤を用いて行われる。この場合、波長365nmにおける最大透過率の低下と、可視光波長領域および/または赤外波長領域の透過性の低下とのいずれもが生じ、上述した着色剤による半導体装置の赤外線起因の誤作動の防止や、印字の視認性向上といった効果が得られる。波長365nmにおける透過率が高すぎると、それはすなわち可視光および/または赤外線の透過性も低下させられていないことを意味し、上述した着色剤による半導体装置の赤外線起因の誤作動の防止や、印字の視認性向上といった効果が得られないことがある。
なお、保護膜形成層は単層構造であってもよく、また上記成分を含む層を1層以上含む限りにおいて多層構造であってもよい。
保護膜形成層の厚さは特に限定されないが、好ましくは3〜300μm、さらに好ましくは5〜250μm、特に好ましくは7〜200μmである。
(剥離シート)
保護膜形成層付ダイシングシートには、使用に供するまでの間、表面の外部との接触を避けるための剥離シートを設けてもよい。剥離シートとしては、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルムなどの透明フィルムが用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。また、これらを着色したフィルム、不透明フィルムなどを用いることができる。また、剥離シートは片面が剥離処理されていてもよい。剥離処理に用いられる剥離剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤が挙げられる。
上記の剥離剤を用いて剥離シートの表面を剥離処理するためには、剥離剤をそのまま無溶剤で、または溶剤希釈やエマルション化して、グラビアコーター、メイヤーバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーターなどにより塗布して、常温もしくは加熱または電子線硬化させたり、ウェットラミネーションやドライラミネーション、熱溶融ラミネーション、溶融押出ラミネーション、共押出加工などで積層体を形成すればよい。
剥離シートの厚さは、通常は10〜500μm、好ましくは15〜300μm、特に好ましくは20〜250μm程度である。また、保護膜形成層付ダイシングシートの厚みは、通常は1〜500μm、好ましくは5〜300μm、特に好ましくは10〜150μm程度である。
(保護膜形成層付ダイシングシート)
本発明の保護膜形成層付ダイシングシートは、基材フィルムと粘着剤層とからなる粘着シートの粘着剤層上に保護膜形成層を有する。そして、本発明の一態様においては、粘着シートと保護膜の間の粘着力が加熱により低下する。このような性質を有することで、粘着剤がエネルギー線照射により粘着力が低下するものである場合と異なり、粘着剤層と保護膜形成層がエネルギー線照射により密着してしまうという懸念がない。
粘着シートと保護膜の間の粘着力は、保護膜形成層をエネルギー線照射により硬化した保護膜から粘着シートを180°で剥離するときの粘着力であり、JIS Z 0237:2009に準拠して測定できる。保護膜形成層が紫外線照射により硬化する場合には、その照射条件は照度230mW/cm、光量800mJ/cm程度である。粘着シートと保護膜の間の粘着力は、好ましくは0.2〜15N/25mm、より好ましくは0.5〜10N/25mmである。本発明における粘着シートと保護膜の間の粘着力は加熱により低下し、具体的には、粘着剤層を30℃以上の所定の温度に加熱すると、粘着シートと保護膜の間の粘着力が50%以下に低下する。
また、本発明においては、粘着シートと保護膜の間の粘着力が50%低下した温度を粘着力低下温度とする。粘着シートと保護膜の間の粘着力が加熱により低下する性質は、保護膜形成層付ダイシングシートが粘着力低下温度を有するか否かにより確認できる。粘着力低下温度は、好ましくは50〜250℃、より好ましくは90〜200℃である。粘着力低下温度は、次のように決定する。まず、保護膜形成層付ダイシングシートにエネルギー線を照射し、保護膜形成層を硬化した後、粘着シートと保護膜の間の粘着力(加熱オーブン投入前の粘着シートと保護膜の間の粘着力(粘着力低下前))を測定する。また、別途30〜350℃の範囲の10℃毎の温度に設定した加熱オーブンに、保護膜形成層を硬化した保護膜形成層付ダイシングシートを1分間投入し、各温度における粘着シートと保護膜の間の粘着力を測定する。なお、各温度における粘着シートと保護膜の間の粘着力は、各温度において1分間加熱後、保護膜から粘着シートを180°で剥離するときの粘着力であり、JIS Z 0237;2009に準拠して測定できる。そして、その温度以上であれば、加熱オーブン投入後の粘着シートと保護膜の間の粘着力が、加熱オーブン投入前の同粘着力の50%以下となる温度を粘着力低下温度とする。また、粘着力低下温度以上の温度における粘着シートと保護膜の間の粘着力(粘着力低下後)は、好ましくは4N/25mm以下、より好ましくは3N/25mm以下、特に好ましくは0.1〜2N/25mmである。
粘着シートと保護膜の間の粘着力を上記範囲とすることで、リングフレームへの貼付性に優れ、リングフレームへの糊残りを防止できる。また、粘着力低下後における粘着シートと保護膜の間の粘着力が上記範囲にあることにより、ピックアップを行うことが容易となる。なお、本発明の保護膜形成層付ダイシングシートは、エネルギー線照射による硬化の前にダイシングを行うプロセスにも用いることができるが、硬化前の保護膜形成層に対する粘着シートの粘着力は、硬化後の保護膜に対するそれよりも強いことが通常であるので、粘着シートと保護膜の間の粘着力が上記範囲にあれば、このようなプロセスでもダイシング時の保護膜および半導体ウエハの保持を行うことができる。
粘着力低下温度は、粘着剤層が熱膨張性粘着層であれば、通常は熱膨張性微小球の発泡及び/又は膨張が生じる温度付近の温度となる。
粘着力低下温度を上記範囲とすることで、熱硬化性保護膜形成層の加熱硬化工程やダイシング工程の際に、半導体ウエハや半導体チップを良好に保持できるとともに、粘着力低下後はピックアップが可能となる。
また、本発明の一態様においては、加熱により粘着剤層と保護膜の接触面積が減少する。このような性質を有することで、エネルギー線照射により粘着剤の粘着力を低下させる場合と異なり、粘着剤層と保護膜形成層がエネルギー線照射により密着してしまうという懸念がない。このような保護膜形成層付ダイシングシートは、たとえば粘着シートとして上述した非収縮性支持フィルムと、収縮性フィルムと、粘着剤層とがこの順に積層された粘着シートを用いることで得られる。
保護膜形成層付ダイシングシートの製造方法としては、次のような方法が挙げられる。まず、剥離シート上に保護膜形成層を形成する。保護膜形成層は、上記各成分を適宜の割合で、適当な溶媒中で混合してなる保護膜形成層用組成物を、適当な剥離シート上に塗布乾燥して得られる。また、剥離シート上に保護膜形成層用組成物を塗布、乾燥して成膜し、これを別の剥離シートと貼り合わせて、2枚の剥離シートに挟持された状態(剥離シート/保護膜形成層/剥離シート)としてもよい。
次に、保護膜形成層が2枚の剥離シートに挟持された状態の場合には一方の剥離シートを剥離する。そして、保護膜形成層を貼付するワーク(例えば半導体ウエハ等)と同じサイズもしくは一回り大きい円形に型抜きし、円形に型抜きされた保護膜形成層の周囲をカス取りする。また、2枚の剥離シートに挟持された状態の場合には、一方の剥離シートと保護膜形成層を型抜きし、保護膜形成層を剥離シートごとカス取りし、その後に型抜きされた剥離シートを剥離してもよい。次いで、円形の保護膜形成層を、別途用意した上記粘着シートの粘着剤層に貼付し、リングフレームに対する糊しろの外径に合わせて同心円状に型抜きし、型抜きされた粘着シートの周囲を除去する。最後に、保護膜形成層に貼付された剥離シートを剥離することで、本発明の保護膜形成層付ダイシングシートを得る。
図1に示すように、本発明の保護膜形成層付ダイシングシート10は、基材フィルム1と粘着剤層2とからなる粘着シート3の内周部にエネルギー線硬化性保護膜形成層4が剥離可能に積層され、粘着シート3の外周部に粘着剤層2が露出していることが好ましい。つまり、粘着シート3よりも小径のエネルギー線硬化性保護膜形成層4が、粘着シート3の粘着剤層2上に同心円状に剥離可能に積層されていることが好ましい。
上記構成の保護膜形成層付ダイシングシート10は、粘着シート3の外周部に露出した粘着剤層2において、リングフレーム5に貼付される。
また、リングフレームに対する糊しろ(粘着シートの外周部における露出した粘着剤層)上に、環状の両面テープ若しくは粘着剤層を別途設けてもよい。両面テープは粘着剤層/芯材/粘着剤層の構成を有し、両面テープにおける粘着剤層は特に限定されず、たとえばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル等の粘着剤が用いられる。また、エネルギー線硬化型や加熱発泡型、水膨潤型の粘着剤も用いることができる。エネルギー線硬化(紫外線硬化、電子線硬化)型粘着剤としては、特に紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましい。粘着剤層は、後述するチップを製造する際に、その外周部においてリングフレームに貼付される。両面テープの芯材としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルム等が好ましく用いられる。
(チップの製造方法)
次に本発明に係る保護膜形成層付ダイシングシートの利用方法について、該シートをチップ(例えば半導体チップ等)の製造に適用した場合を例にとって説明する。
本発明に係る保護膜形成層付ダイシングシートを用いた半導体チップの製造方法は、表面に回路が形成された半導体ウエハ(ワーク)の裏面に、上記シートの保護膜形成層を貼付し、以下の工程(1)〜(3)を、[(1)、(2)、(3)]または[(2)、(1)、(3)]の順で行い、裏面に保護膜を有する半導体チップを得ることを特徴としている。
工程(1):保護膜形成層をエネルギー線照射により硬化し保護膜を得る、
工程(2):半導体ウエハ(ワーク)と、保護膜形成層または保護膜とをダイシング、
工程(3):保護膜と粘着シートとを剥離。
また、本発明に係る半導体チップの製造方法は、上記工程(1)〜(3)の他に、下記の工程(4)をさらに含み、上記工程(1)の後のいずれかの工程において、工程(4)を行うこともできる。
工程(4):保護膜にレーザー印字。
半導体ウエハはシリコンウエハであってもよく、またガリウム・砒素などの化合物半導体ウエハであってもよい。ウエハ表面への回路の形成はエッチング法、リフトオフ法などの従来より汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。次いで、半導体ウエハの回路面の反対面(裏面)を研削する。研削法は特に限定はされず、グラインダーなどを用いた公知の手段で研削してもよい。裏面研削時には、表面の回路を保護するために回路面に、表面保護シートと呼ばれる粘着シートを貼付する。裏面研削は、ウエハの回路面側(すなわち表面保護シート側)をチャックテーブル等により固定し、回路が形成されていない裏面側をグラインダーにより研削する。ウエハの研削後の厚みは特に限定はされないが、通常は20〜500μm程度である。その後、必要に応じ、裏面研削時に生じた破砕層を除去する。破砕層の除去は、ケミカルエッチングや、プラズマエッチングなどにより行われる。
次いで、半導体ウエハの裏面に、上記保護膜形成層付ダイシングシートの保護膜形成層を貼付する。その後、工程(1)〜(3)を[(1)、(2)、(3)]または[(2)、(1)、(3)]の順で行う。一例として、工程(1)〜(3)を[(1)、(2)、(3)]の順で行う場合について説明する。
まず、表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、上記保護膜形成層付ダイシングシートの保護膜形成層を貼付する。次いで保護膜形成層を硬化し、ウエハの全面に保護膜を形成する。保護膜形成層には、エネルギー線硬化性化合物(A)が含まれているため、エネルギー線照射により保護膜形成層を硬化する。この結果、ウエハ裏面に硬化樹脂からなる保護膜が形成され、ウエハ単独の場合と比べて強度が向上するので、取扱い時の薄くなったウエハの破損を低減できる。また、保護膜形成層に連鎖移動剤(B)が含まれる場合には優れた硬化性を有する保護膜を得ることができる。また、ウエハやチップの裏面に直接保護膜用の塗布液を塗布・被膜化するコーティング法と比較して、保護膜の厚さの均一性に優れる。
また、本発明の保護膜形成層付ダイシングシートにおいて保護膜形成層が熱硬化性を有する場合には、耐熱性に優れる基材フィルムを用いることにより、熱硬化時の変形による弛みが抑制され、ダイシングやピックアップ(保護膜からの粘着シートの剥離)が容易となるという効果が好ましく発揮される。
次いで、硬化した保護膜形成層(保護膜)にレーザー印字することが好ましい。レーザー印字はレーザーマーキング法により行われ、レーザー光の照射により粘着シート越しに保護膜の表面を削り取ることで保護膜に品番等をマーキングする。本発明の保護膜形成層付ダイシングシートによれば、極薄のウエハであってもウエハの反りを抑制できるため、レーザー光の焦点が正確に定まり、精度よくマーキングを行える。
次いで、半導体ウエハと保護膜形成層付ダイシングシートとの積層体(半導体ウエハと保護膜と粘着シートとの積層体)を、ウエハ表面に形成された回路毎にダイシングし、半導体チップと保護膜形成層付ダイシングシートとの積層体を得る。ダイシングは、ウエハと保護膜をともに切断するように行われる。本発明の保護膜形成層付ダイシングシートによれば、ダイシング時において保護膜に対して粘着シートが十分な粘着力を有するため、チッピングやチップ飛びを防止することができ、ダイシング適性に優れる。ダイシングは特に限定はされず、一例として、ウエハのダイシング時には保護膜形成層付ダイシングシートの周辺部(粘着シートの外周部)をリングフレームにより固定した後、ダイシングブレードなどの回転丸刃を用いるなどの公知の手法によりウエハのチップ化を行う方法などが挙げられる。ダイシングによる粘着シートへの切り込み深さは、保護膜形成層を完全に切断していればよく、保護膜形成層との界面から0〜30μmとすることが好ましい。基材フィルムへの切り込み量を小さくすることで、ダイシングブレードの摩擦による基材フィルムの溶融や、基材フィルムにおけるバリ等の発生を抑制することができる。そして、半導体チップと保護膜形成層付ダイシングシートとの積層体を、上記の粘着力低下温度以上の温度や、収縮性フィルムの収縮温度で、15秒〜30分加熱し、粘着シートと保護膜の間の粘着力を低下させ、または粘着剤層と保護膜の接触面積を減少させる。なお、このような加熱工程は、後述するエキスパンドの後に行ってもよい。
その後、上記粘着シートをエキスパンドしてもよい。本発明における粘着シートの基材フィルムとして、伸張性に優れたものを選択した場合は、本発明の保護膜形成層付ダイシングシートは、優れたエキスパンド性を有する。ダイシングされた保護膜付半導体チップをコレット等の汎用手段によりピックアップすることで、保護膜と粘着シートとを剥離する。また、保護膜形成層と粘着シートの間に耐熱樹脂層が設けられている場合は、保護膜付半導体チップを耐熱樹脂層から剥離する。この結果、裏面に保護膜を有する半導体チップ(保護膜付半導体チップ)が得られる。このような本発明によれば、厚みの均一性の高い保護膜を、チップ裏面に簡便に形成でき、ダイシング工程やパッケージングの後のクラックが発生しにくくなる。また、本発明によれば、保護膜が形成されたウエハをダイシングテープに貼り替えてダイシングしていた従来の工程と比較して、ダイシングテープへの貼り替えを行うことなく保護膜付チップを得ることができ、製造工程の簡略化が図れる。また、研削により脆弱化したウエハを単体で扱うことがなくなるため、ウエハ破損の危険を低減する。さらに、薄型化ウエハは保護膜の硬化収縮により反りが発生することがあるが、粘着シートで保持されているため反りも抑制することができる。そして、半導体チップをフェースダウン方式で所定の基台上に実装することで半導体装置を製造することができる。また、裏面に保護膜を有する半導体チップを、ダイパッド部または別の半導体チップなどの他の部材上(チップ搭載部上)に接着することで、半導体装置を製造することもできる。
なお、工程(1)〜(3)を[(2)、(1)、(3)]の順で行った場合も、本発明の保護膜形成層付ダイシングシートを用いることで、工程(2)のダイシングを行う際においては保護膜に対して粘着シートが十分な粘着力を有し、加熱により粘着シートと保護膜の間の粘着力を低下させ、または粘着剤層と保護膜付半導体チップの接触面積を減少させることで工程(3)の剥離を容易に行うことができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、<粘着シートと保護膜の間の粘着力(粘着力低下前)>、<粘着シートと保護膜の間の粘着力(粘着力低下後)>、および<ウエハ保持性およびピックアップ性>は次のように測定・評価した。また、下記の<保護膜形成層用組成物>を用いた。
<粘着シートと保護膜の間の粘着力(粘着力低下前)>
保護膜形成層付ダイシングシートを25mmの幅に裁断して試料とし、シリコンミラーウエハに貼付した。次いで、保護膜形成層の硬化を、紫外線照射装置(リンテック社製 RAD−2000m/12)を用いて紫外線(照射条件:照度230mW/cm、光量800mJ/cm)により行った。硬化した保護膜から粘着シートをJIS Z 0237:2009に準拠して180°で剥離し、粘着力を測定した。
<粘着シートと保護膜の間の粘着力(粘着力低下後)>
粘着力低下前の測定と同様に保護膜形成層の硬化までを行った。次いで、試料の貼付されたウエハを160℃の加熱オーブンに1分間投入し、粘着力を低下させた。その後、粘着力低下前と同様に、粘着力を測定した。
<ウエハ保持性およびピックアップ性>
保護膜形成層付ダイシングシートの保護膜形成層をシリコンウエハ(直径8インチ、厚み200μm、#2000研磨)に、粘着シートの外周部における粘着剤層をリングフレームに貼付した。次いで、紫外線照射装置(リンテック社製 RAD−2000m/12)を用いて紫外線(照射条件:照度230mW/cm、光量800mJ/cm)により保護膜形成層の硬化を行い、保護膜付シリコンウエハを5mm×5mmのチップサイズにダイシングした。その後、160℃で1分間加熱し、粘着力を低下させ、ダイボンダー(キャノンマシナリー社製、Bestem−D02)により保護膜付チップをピックアップした。
ウエハ保持性は、ダイシング時にウエハ破損、チップ欠け、チップ飛びのいずれも生じない場合を「A」、ダイシング時にウエハ破損、チップ欠け、チップ飛びのいずれかが生じた場合を「B」と評価した。
また、ピックアップ性は、チップを破損することなくピックアップが可能であった場合を「A」、チップを破損もしくはピックアップが不可能であった場合を「B」と評価した。
<保護膜形成層用組成物>
保護膜形成層を構成する各成分と配合量を下記に示す(各成分/配合量)。
(A)エネルギー線硬化性化合物:多官能アクリレートオリゴマー(日本化薬社製:KAYARAD R−684)/100質量部
(B)連鎖移動剤:1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工(株)製 カレンズMT BD1、下記一般式(I))/3質量部
Figure 0006034019
(C)バインダーポリマー成分:n−ブチルアクリレート55質量部、メチルアクリレート15質量部、グリシジルメタクリレート20質量部、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部からなるアクリルポリマー(重量平均分子量:90万、ガラス転移温度:−28℃)/100質量部
(D)着色剤:黒色顔料(カーボンブラック、三菱化学社製 #MA650、平均粒径28nm)/10質量部
(E)光重合開始剤:α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名「イルガキュア184」)(重量平均分子量:204)/3質量部
(F)カップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−403)/1質量部
(G)無機充填材:シリカフィラー(熔融石英フィラー、平均粒径3μm)/300質量部
(実施例1)
保護膜形成層用組成物の上記各成分を上記配合量で配合した。また、片面にシリコーンで剥離処理を行った剥離シート(リンテック社製 SP−P502010、厚さ50μm)を用意した。
上記保護膜形成層用組成物のメチルエチルケトン溶液(固形濃度61質量%)を、上記剥離シートの剥離処理面上に乾燥後25μmの厚みになるように塗布、乾燥(乾燥条件:オーブンにて120℃、2分間)して、剥離シート上に保護膜形成層を形成した。この保護膜形成層に、他の剥離シートとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(SP−PET381031、厚さ38μm)の剥離処理面を貼り合わせた。次いで、剥離シートを残して保護膜形成層および他の剥離シートのみを切断するようにシリコンウエハと同サイズ(直径8インチ)に型抜きした後、型抜きされた形状の部分を除く部分の保護膜形成層および他の剥離シートを除去し、剥離シート上に円形に型抜きされた保護膜形成層および他の剥離シートを得た。
粘着シートとして、リバアルファ(登録商標)No.3195H(日東電工社製、粘着剤層が150℃で発泡する熱膨張性微粒子を含有。波長365nm、532nm、1064nmにおける全光線透過率が、それぞれ72%、64%、87%)を用いた。上記粘着シートの粘着剤層上に上記の剥離シート上に形成された保護膜形成層を、型抜きされた他の剥離シートを剥離除去した上で貼付し、リングフレームに対する糊しろの外径(直径260mm)に合わせて同心円状に型抜きした。その後、保護膜形成層上の剥離シートを剥離し、保護膜形成層付ダイシングシートを得た。各評価結果を表1に示す。
(比較例1)
粘着シートとして、UV硬化型のダイシングテープ(リンテック社製 Adwill D−210)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして保護膜形成層付ダイシングシートを得た。各評価結果を表1に示す。
(比較例2)
粘着シートとして、非UV硬化型のダイシングテープ(リンテック社製 Adwill H−206)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして保護膜形成層付ダイシングシートを得た。各評価結果を表1に示す。
なお、比較例1の保護膜形成層付ダイシングシートは粘着シートと保護膜が密着してしまい、粘着シートと保護膜の間の粘着力の測定を行うことができず、比較例2の保護膜形成層付ダイシングシートにおいては、ダイシング時にチップ飛びが生じるため、ピックアップ性の評価ができなかった。
Figure 0006034019
実施例1の保護膜形成層付ダイシングシートは、比較例1,2の保護膜形成層付ダイシングシートと比較して、ウエハやチップの保持性に優れ、ピックアップを良好に行うことができる。
1 … 基材フィルム
2 … 粘着剤層
3 … 粘着シート
4 … 保護膜形成層
5 … リングフレーム
10… 保護膜形成層付ダイシングシート

Claims (3)

  1. 基材フィルムと粘着剤層とからなる粘着シートの粘着剤層上に、エネルギー線硬化性化合物及び連鎖移動剤を含有する保護膜形成層を有し、
    保護膜形成層は、エネルギー線照射により保護膜となり、
    粘着シートと保護膜の間の粘着力が加熱により低下し、または粘着剤層と保護膜の接触面積が加熱により減少し、
    保護膜形成層の波長365nmにおける最大透過率が0〜20%である保護膜形成層付ダイシングシート。
  2. 請求項1に記載の保護膜形成層付ダイシングシートの保護膜形成層を、ワークに貼付し、以下の工程(1)〜(3)を[(1)、(2)、(3)]または[(2)、(1)、(3)]の順で行うチップの製造方法;
    工程(1):保護膜形成層をエネルギー線照射により硬化し保護膜を得る、
    工程(2):ワークと、保護膜形成層または保護膜とをダイシング、
    工程(3):保護膜と粘着シートとを剥離。
  3. 前記工程(1)の後のいずれかの工程において、下記工程(4)を行う請求項2に記載のチップの製造方法;
    工程(4):保護膜にレーザー印字。

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