添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態では、一例として、コンピュータ(PC:パーソナルコンピュータ)に接続可能なデジタルカメラ(撮像装置)に本発明を適用する場合について説明する。
図1は、コンピュータに接続されるデジタルカメラを示すブロック図である。本例のデジタルカメラ10においては、撮像素子26が搭載されるカメラ本体(撮像本体)14にレンズユニット(光学系)12が交換可能に装着され、カメラ本体14に画像処理装置が設けられている。
即ち、デジタルカメラ10は、交換レンズであるレンズユニット12と、撮像素子26を具備するカメラ本体14とを備え、レンズユニット12と撮像素子26とによりデジタルカメラ10の撮像部が構成され、レンズユニット12のレンズユニット入出力部22とカメラ本体14のカメラ本体入出力部30とを介し、レンズユニット12とカメラ本体14とが電気的に接続される。
レンズユニット12は、レンズ16及び絞り17(光学系)と、この光学系を制御する光学系操作部18とを具備する。光学系操作部18は、レンズユニット入出力部22に接続されるレンズユニットコントローラ20と、各種の情報(光学系情報等)を記憶するレンズユニット記憶部21と、光学系を操作するアクチュエータ(図示省略)とを含む。レンズユニットコントローラ20は、カメラ本体14からレンズユニット入出力部22を介して送られてくる制御信号に基づき、アクチュエータを介して光学系を制御し、例えば、レンズ移動によるフォーカス制御やズーム制御、絞り17の絞り量制御、等を行う。またレンズユニットコントローラ20は、カメラ本体14からレンズユニット入出力部22を介して送られてくる制御信号に基づき、レンズユニット記憶部21に記憶される各種情報を読み出してカメラ本体14(本体コントローラ28)に送信する。
カメラ本体14の撮像素子26は、集光用マイクロレンズ、R(赤)G(緑)B(青)等のカラーフィルタと、イメージセンサ(フォトダイオード;CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CCD(Charge Coupled Device)等)とを有する。この撮像素子26は、レンズユニット12の光学系(レンズ16、絞り17等)を介して照射される被写体像の光を電気信号に変換し、画像信号(原画像データ)を本体コントローラ28に送る。
本体コントローラ28は、詳細については後述するが(図2参照)、デジタルカメラ10の各部を統括的に制御するデバイス制御部としての機能と、撮像素子26から送られてくる画像データの画像処理を行う画像処理部としての機能とを有する。
デジタルカメラ10は、更に撮影等に必要なその他の機器類(シャッター等)を具備し、それらの機器類の一部はユーザによって確認及び操作可能なユーザインターフェース29を構成する。ユーザインターフェース29は、レンズユニット12及び/又はカメラ本体14に配置可能であり、図1に示す例ではカメラ本体14にユーザインターフェース29が設けられている。ユーザは、ユーザインターフェース29を介し、撮影等のための各種設定(EV値(Exposure Value)等)の決定及び変更、撮影指示、ライブビュー画像及び撮影画像の確認等を行うことができる。ユーザインターフェース29は、本体コントローラ28に接続され、ユーザによって決定及び変更された各種設定及び各種指示が本体コントローラ28における各種処理(デバイス制御処理、や画像処理等)に反映される。
本体コントローラ28において、画像処理された画像データは、カメラ本体14に設けられる本体記憶部31に記憶され、必要に応じて入出力インターフェース32を介してコンピュータ92等に送られる。本体記憶部31は任意のメモリ体によって構成され、メモリカード等の交換可能メモリが好適に用いられる。本体コントローラ28から出力される画像データのフォーマットは特に限定されず、RAW、JPEG(Joint Photographic Experts Group)、TIFF(Tagged Image File Format)等の任意のフォーマットとしうる。また本体コントローラ28は、いわゆるExif(Exchangeable Image File Format)のように、ヘッダ情報(撮影情報(撮影日時、機種、画素数、絞り値等)等)、主画像データ及びサムネイル画像データ等の複数の関連データを相互に対応づけて1つの画像ファイルとして構成し、その画像ファイルを出力してもよい。
コンピュータ92は、カメラ本体14の入出力インターフェース32及びコンピュータ入出力部93を介してデジタルカメラ10に接続され、カメラ本体14から送られてくる画像データ等のデータ類を受信する。コンピュータコントローラ94は、コンピュータ92を統括的に制御し、デジタルカメラ10からの画像データを画像処理し、インターネット96等のネットワーク回線を介してコンピュータ入出力部93に接続されるサーバ97等との通信を制御する。コンピュータ92はディスプレイ95を有し、コンピュータコントローラ94における処理内容等が必要に応じてディスプレイ95に表示される。ユーザは、ディスプレイ95の表示を確認しながらキーボード等の入力手段(図示省略)を操作することで、コンピュータコントローラ94にデータやコマンドを入力可能である。これによりユーザは、コンピュータ92や、コンピュータ92に接続される機器類(デジタルカメラ10、サーバ97)を制御可能である。
サーバ97は、サーバ入出力部98及びサーバコントローラ99を有する。サーバ入出力部98は、コンピュータ92等の外部機器類との送受信接続部を構成し、インターネット96等のネットワーク回線を介してコンピュータ92のコンピュータ入出力部93に接続される。サーバコントローラ99は、コンピュータ92からの制御指示信号に応じ、コンピュータコントローラ94と協働し、コンピュータコントローラ94との間で必要に応じてデータ類の送受信を行い、データ類をコンピュータ92にダウンロードし、演算処理を行ってその演算結果をコンピュータ92に送信する。
各コントローラ(レンズユニットコントローラ20、本体コントローラ28、コンピュータコントローラ94、サーバコントローラ99)は、制御処理に必要な回路類を有し、例えば、中央処理装置(CPU(Central Processing Unit)等)やメモリ等を具備する。また、デジタルカメラ10、コンピュータ92及びサーバ97間の通信は、有線であってもよいし無線であってもよい。また、コンピュータ92及びサーバ97を一体的に構成してもよく、またコンピュータ92及び/又はサーバ97が省略されてもよい。また、デジタルカメラ10にサーバ97との通信機能を持たせ、デジタルカメラ10とサーバ97との間で直接的にデータ類の送受信が行われるようにしてもよい。
図2は、本体コントローラ28の構成例を示すブロック図である。本体コントローラ28は、デバイス制御部34と画像処理部35とを有し、カメラ本体14を統括的に制御する。
デバイス制御部34は、例えば、撮像素子26からの画像信号(画像データ)の出力を制御し、レンズユニット12を制御するための制御信号を生成してカメラ本体入出力部30を介してレンズユニット12(レンズユニットコントローラ20)に送信し、画像処理前後の画像データ(RAWデータ、JPEGデータ等)を本体記憶部31に記憶し、入出力インターフェース32を介して接続される外部機器類(コンピュータ92等)に画像処理前後の画像データ(RAWデータ、JPEGデータ等)を送信する。また、デバイス制御部34は、表示部(EVF:Electronic View Finder、背面液晶表示部:ユーザインターフェース29)等、デジタルカメラ10が具備する各種デバイス類を適宜制御する。
一方、画像処理部35は、撮像素子26からの画像信号に対し、必要に応じた任意の画像処理を行う。例えば、センサ補正処理、デモザイク(同時化)処理、画素補間処理、色補正処理(オフセット補正処理、ホワイトバランス処理、カラーマトリック処理、ガンマ変換処理等)、RGB画像処理(シャープネス処理、トーン補正処理、露出補正処理、輪郭補正処理等)、RGB/YCrCb変換処理及び画像圧縮処理等の各種の画像処理が、画像処理部35において適宜行われる。特に本例の画像処理部35は、画像信号(画像データ)に対して、光学系の点拡がり関数に基づく復元処理(点像復元処理)と、点拡がり関数には基づかない鮮鋭化処理(輪郭強調処理)とを行う。
図3は、画像処理部35の構成例を示すブロック図であり、とりわけ点像復元処理に係る構成を示す。
本例の画像処理部35は、鮮鋭回復制御部37、及び復元処理部38を有する。
復元処理部38は、光学系(レンズ16等)を用いた被写体の撮影により撮像素子26から取得される画像データに対し、点拡がり関数に基づく復元フィルタを用いた復元処理を行う。復元フィルタは、PSF劣化を回復するためのフィルタであり、例えばウィナーフィルタを復元フィルタとして好適に使用できる。尚、復元フィルタに関し、画像全体において単一のフィルタが用意されていてもよいし、画像内の位置毎(像高毎)に異なるフィルタが用意されていてもよい。
鮮鋭回復制御部37は、復元処理部38を制御し、復元処理による画像データの復元率による画像データの鮮鋭化率を調整する。この復元率の調整に関して、本例の鮮鋭回復制御部37は、原画像データに対応する原画像内の合焦領域、準合焦領域、及び非合焦領域に応じて復元率を調整する。
ここで、原画像内の合焦領域とは、合焦制御された主要被写体等が存在する領域であり、物体面上の点を撮影したときに像面上の点として許容しうる範囲(許容錯乱円)として結像する領域をいい、ピントが合っているとみなされる領域をいう。デジタルカメラの場合、一般に撮像素子の1画素のサイズが、許容錯乱円の大きさとして用いられる。
準合焦領域とは、上記合焦領域と非合焦領域との中間の領域をいい、復元処理を行うと、解像度が向上するが、合焦領域と同様の復元処理を行うと、過補正により画質が劣化するおそれがある領域である。尚、準合焦領域の詳細については後述する。
非合焦領域は、復元処理を行っても解像度が向上せず、過補正による画質劣化も少ない領域であり、復元処理の効果が得られない領域である。
また、点像復元処理は、撮影シーン(被写体)次第では誤補正によってアーティファクト(リンギング等)などを招くことがある。更に、撮影条件に応じて異なる復元フィルタを使用する場合、点像復元処理後の画像の復元率にばらつきが生じることがある。
以下の実施形態は、点像復元処理時に上述の過補正や誤補正を効果的に防ぎ、光学系の点拡がり現象によって損なわれた画質を回復して鮮明な画像を得る技術に関する。
<第1実施形態>
本実施形態に係る鮮鋭回復制御部37は、点像復元処理における復元率を調整する。
図4は、第1実施形態に係る点像復元処理を行う処理ブロックの構成を示す図である。
復元処理部38は、点像復元フィルタ処理部42、復元乗算器43及び復元加算器44を含む。点像復元フィルタ処理部42は、光学系(レンズ16等)の点拡がり関数に対応する復元フィルタを入力画像データに適用する。
復元乗算器43は、点像復元フィルタ処理部42において得られた画像データに対して復元強度倍率Uの乗算を行いゲインコントロールを行う。復元加算器44は、入力画像データに対して倍率(1−U)を乗算し、復元強度倍率Uが乗算された画像データと加算する。点像復元処理は、これらの点像復元フィルタ処理部42、復元乗算器43及び復元加算器44における一連の処理によって構成される。
尚、復元処理部38は、任意の手法により復元強度倍率Uを画像データに反映することができ、本実施形態及び他の実施形態において、上記手法の代わりに上記手法と等価な他の手法を採用してもよい。例えば、点像復元フィルタ処理部42において光学系の点拡がり関数に対応する復元フィルタを入力画像データに適用した後、画像の増減分データを算出し、復元乗算器43において増減分データのゲインコントロールを行い、増減分データ及び復元強度倍率Uの乗算を行う。その後、復元加算器44にて、点像復元フィルタ処理部42に入力される前の画像データ(入力画像)と、復元強度倍率Uが乗算された増減分データとの加算を行うようにしてもよい。
また、復元処理部38は、後述する鮮鋭回復制御部37から復元フィルタ及び復元強度倍率Uを入力する代わりに、復元率に対応する復元フィルタ(復元強度が異なる複数の復元フィルタから適宜選択した復元フィルタ)を入力し、これにより復元率の調整を可能にしたものを含む。
鮮鋭回復制御部37は、強度自動調整部52、及び復元フィルタ選択部53を含む。復元フィルタ選択部53は、画像データの撮影に用いられた光学系(レンズ16等)の点拡がり関数に基づく復元フィルタXを、撮影設定条件S(ズーム段、F値、被写体距離等)に基づいて復元フィルタ記憶部58から選択する。そして、復元フィルタ選択部53は、選択した復元フィルタXを、強度自動調整部52と復元処理部38の点像復元フィルタ処理部42とに送信する。点像復元フィルタ処理部42は、復元フィルタ選択部53から送られてくる復元フィルタXを入力画像に適用する。
復元フィルタ記憶部58は、複数の光学系(レンズ16等)の点拡がり関数に基づく複数の復元フィルタを撮影設定条件毎に記憶する。尚、復元フィルタ記憶部58は、カメラ本体14に設けられてもよいし、レンズユニット12に設けられてもよい。
強度自動調整部52は、後述する準合焦領域検出部50からの原画像内の準合焦領域を示す情報に基づいて、点像復元回復率(復元率)Gに応じた復元強度倍率Uを決定する(ただし、「復元強度倍率U≧0」)。そして、強度自動調整部52は、決定した復元強度倍率Uを復元乗算器43に送信する。復元強度倍率Uは、復元処理部38における強度調整パラメータであり、復元乗算器43は、強度自動調整部52から送られてくる復元強度倍率Uを使用して乗算処理を行う。
尚、強度自動調整部52は、点像復元フィルタ処理部42により使用されるフィルタの周波数特性を取得する。例えば、点像復元フィルタ処理部42により使用される復元フィルタXは、復元フィルタ選択部53から強度自動調整部52に送られる。
鮮鋭回復制御部37による復元フィルタX、及び復元強度倍率Uの決定は、例えば以下のフローに従って行うことができる。
まず、撮影設定条件Sが本体コントローラ28によって取得され、その撮影設定条件Sに対応する復元フィルタXが復元フィルタ選択部53によって選択される。復元フィルタXは、撮影設定条件Sに対応する光学系(レンズ16等)のPSFに基づく画像劣化の程度を最小二乗基準によって最小化するように設計され、復元フィルタXの理想的な周波数特性は、ウィナーフィルタ特性によって設計可能である。本例では、復元フィルタXの理想的な周波数特性が決定された後、その周波数特性を反映したFIRフィルタが復元フィルタXとして決定される。尚、復元フィルタXは実空間フィルタ及び周波数空間フィルタのいずれであってもよく、複数タップによって構成される実空間フィルタによって復元フィルタXを構成する場合、理想的な周波数特性を所望タップ数により実現可能な範囲により最良に近似したFIRフィルタを復元フィルタXとすることが好ましい。また、一般にPSFの形状は像高によって異なるため、復元フィルタXは画像内の像高に応じて異なる周波数特性を持つことが望ましい。従って、画像内位置に応じて定められる複数の復元フィルタによって構成されるセットを広義には「復元フィルタX」と呼称し、画像内の座標(i,j)の位置(画素)に適用される復元フィルタを「Xi,j」と表記する。
上述のように復元フィルタXは、画像データの撮影における撮影設定条件Sに基づいて決定されるが、この撮影設定条件Sは「点拡がり関数に影響する設定条件」及び「点拡がり関数に影響を及ぼさない撮影条件」を含みうる。「設定条件」は、例えば絞り情報、ズーム情報、被写体距離情報、及び光学系が有するレンズ種類情報のうち少なくともいずれか1つを含みうる。また「撮影条件」は、撮影感度情報及び撮影モード情報のうち少なくともいずれか1つを含みうる。
尚、撮影設定条件Sは任意の方式により復元フィルタ選択部53に入力可能であり、本体コントローラ28のデバイス制御部34及び画像処理部35のうち撮影設定条件Sを管理する制御処理部(図示せず)から復元フィルタ選択部53に撮影設定条件Sが適宜送信される。
一方、点像復元回復率Gは、復元処理部38における画像処理の前に、予めユーザによって指定される。ユーザによる点像復元回復率Gの指定方法は特に限定されず、例えば点像復元回復率Gを指定するためのスライダ等の調整手段をユーザインターフェース29(背面表示部等)に表示し、ユーザがその調整手段を介した操作を行うことにより点像復元回復率Gを簡易に定めることも可能である。点像復元回復率Gが0(ゼロ)の場合は、点像復元処理がオフにされていることに相当する。この点像復元処理における復元強度倍率Uは、連続的な値をとるように変化してもよいし、離散的な値をとるように変化してもよいし、オン/オフ(所定倍率か「0(ゼロ)」か)により変化してもよく、復元強度倍率Uを任意の方式により変更可能な処理回路等を実装することが可能である。
点像復元回復率Gの決め方は、ユーザによる指定に限定されず、任意の情報に基づいて点像復元回復率Gが算出決定されてもよい。即ち、鮮鋭回復制御部37(強度自動調整部52)は、ユーザが指定する指定回復率に基づいて点像復元回復率(復元率)Gを定めてもよいし、光学系の特性を表す光学特性情報に基づいて定められる点像復元回復率Gを用いてもよい。ここでいう「光学特性情報」は、光学系が有するレンズ16の種類情報、光学系の個体差情報、その他の撮影設定条件等を含みうる。また、光学系の光学特性が反映された点像復元回復率G自体が「光学特性情報」に含まれていてもよい。この光学特性情報は任意の記憶部に記憶され、例えばレンズユニット12の記憶部(光学系記憶部)に光学特性情報が記憶されてもよいし、カメラ本体14の記憶部(本体記憶部)に光学特性情報が記憶されてもよい。従って、鮮鋭回復制御部37(本体コントローラ28)等において、点像復元回復率Gは、記憶部(光学系記憶部、本体記憶部)に記憶される光学特性情報に基づいて定められてもよい。
また、点像復元回復率Gの値は撮影設定条件Sに依存してもよく、撮影設定条件Sに応じて異なる値の点像復元回復率Gが鮮鋭回復制御部37(本体コントローラ28)等によって選択されてもよい。この場合、例えば絞り値に依存して発生の程度が変化するアーティファクトを抑えるために、意図的に、特定の絞り値(撮影設定条件S)においては点像復元回復率Gを相対的に低く設定してもよい。
復元フィルタXi,j(点像復元処理における復元成分を抽出するためのフィルタ)の周波数特性を「xi,j(ωx,ωy)」とする。この場合、復元処理部38の周波数特性は、以下の式1によって表される。
「F(ωx,ωy|U,xi,j)」は、復元強度倍率U,周波数特性xi,jをパラメータとした、(ωx,ωy)(x方向及びy方向に関する周波数)についての関数を示し、この関数は画像処理システムの構成に依存して決定される。
一方、点像復元処理の強度調整(復元乗算器43において用いられる復元強度倍率Uの決定)は、準合焦領域検出部50からの原画像内の準合焦領域を示す情報に基づいて、準合焦領域の原画像データに対する復元率が、合焦領域の原画像データに対する復元率よりも小さくなるように調整される。具体的には、合焦領域の原画像データに対する復元強度倍率Uを1.0とすると、準合焦領域の原画像データに対する復元強度倍率Uを、0<U<1.0にする。
これにより、準合焦領域の原画像データに対する復元強度を、合焦領域の原画像データに対する復元強度よりも弱くし、準合焦領域の原画像データの解像度の向上を図りつつ、過補正にならないようにすることでき、良好な回復画像データを得ることができる。
<準合焦領域>
次に、合焦領域、準合焦領域、及び非合焦領域について説明する。
図5は、被写体距離が連続して変化している被写体を撮影した画像の一例を示している。
図5において、枠F1、F2、及びF3により囲まれた領域は、それぞれ合焦領域、準合焦領域、及び非合焦領域を示している。枠F2により囲まれた準合焦領域は、合焦領域の被写体距離と非合焦領域の被写体距離との中間の被写体距離を有する領域である。尚、図5上においては、枠を大きく描画したため、枠F1と枠F2との一部が重複しているが、本例では、合焦領域と準合焦領域とが重複することはない。また、枠F1によって示した合焦領域よりも、図5上において手前側にも準合焦領域は存在する。
図6(a)、図(b)及び図(c)は、それぞれ図5に示した合焦領域、準合焦領域、及び非合焦領域の画像の拡大図である。
図6(a)に示す合焦領域の原画像データに対して、前述したように撮影設定条件等により選択した復元フィルタXを使用し、復元強度倍率Uを1.0とすると、光学系12の点拡がり関数に対応して劣化した画像を、良好に回復させることができ、合焦領域の画像をより鮮明にすることができる。
一方、図6(b)に示す準合焦領域の原画像データに対して、合焦領域の原画像データと同様の復元処理を行うと、画像にノイズが表れ、却って画質が劣化する(過補正になる)。従って、準合焦領域の原画像データに対しては、復元処理をオフにし、過補正を防止することも考えられるが、準合焦領域の原画像データにも画像のエッジ部が存在するため、そのエッジ部を回復させる復元処理を行うことが望ましい。
そこで、本発明は、準合焦領域の原画像データに対する復元率を調整することにより、合焦領域の原画像データに対する復元率よりも小さくし、準合焦領域の原画像データに対する復元処理が過補正にならないようにし、かつ復元処理により準合焦領域の原画像データの画質の向上を図るようにしている。
図6(c)に示す非合焦領域の原画像データは、エッジ部が存在しないため、復元処理による画質の向上を図ることができないが、復元処理を行っても準合焦領域の画像データのような画質の劣化は目立たない。
<準合焦の定義1>
ISO解像度チャート(16Mデータ)をマニュアルフォーカスによって合焦位置から順次ピントをずらし(デフォーカス量をゼロから順次大きくし)、レスポンス(SFR:Spatial Frequency Response)の特徴と、点像復元処理により発生する「ボソボソ」とした感じのノイズが気になる箇所から、「準合焦」を定義した。
図7に示すグラフは、横軸がサンプリング周波数[fs]、縦軸がレスポンス[SFR]を示している。尚、グラフの横軸のサンプリング周波数[fs]に代えて、テレビジョン画面の水平表示解像度(TV本)によって表してもよく、この場合、fsに6528を掛けることにより、TV本に換算することができる。
また、図7に示すグラフaは、ジャストピントの画像の特徴を示し、グラフbは、ジャストピントから僅かにピントがずれているが、被写界深度内の画像の特徴を示し、グラフcは、「準合焦」の画像の特徴(点像復元処理時に「ボソボソ」が気になる)を示し、グラフdは、非合焦の画像の特徴を示している。
ここで、ナイキスト周波数fn(0.5fs:3264TV本)〜0.25fs(1632TV本)の周波数帯域、及び0.05fs(326TV本)未満の周波数帯域においては、レスポンスが低くても、エッジ部において「ボソボソ」とした感じのノイズが表れなかった。
そこで、0.05fs(326TV本)から0.25fs(1632TV本)の範囲内の周波数を、「準合焦」を判定するために抽出すべき周波数と定義し、その周波数のレスポンスが、0.2〜0.7(即ち、図7の斜線によって示した範囲)に入る画像を、「準合焦」の画像と定義する。尚、「準合焦」を判定するために抽出すべき周波数は、0.1fs〜0.2fsがより好ましく、そのとき「準合焦」と判定するレスポンスの範囲は、0.25〜0.55がより好ましく、0.3〜0.45が更に好ましい。
[準合焦領域検出部の第1実施形態]
次に、図4に示した準合焦領域検出部50の第1実施形態について説明する。
図8は、上記準合焦の定義1に対応して準合焦領域を検出する準合焦領域検出部50の第1実施形態を示すブロック図である。第1実施形態の準合焦領域検出部50は、帯域通過フィルタ(BPF1)50aと、積算部50bと、判定部50cとから構成されている。
周波数成分抽出部の一形態である帯域通過フィルタ50aは、原画像データ(入力画像)の周波数成分のうち、特定の周波数を含む近傍の周波数成分(具体的には、0.05fs(326TV本)から0.25fs(1632TV本)の周波数成分)を通過させる。積算部50bは、帯域通過フィルタ50aから入力する周波数成分の絶対値を、原画像を8×8、あるいは16×16に画面分割した分割領域毎に積算し、積算した積算値Dを判定部50cに出力する。
判定部50cは、分割領域毎に入力する積算値Dの大きさに基づいて、各分割領域が準合焦領域か否かを判定する。
いま、図9に示すようにレスポンスが1.0、0.7及び0.2にそれぞれ対応する合焦状態のISO解像度チャートを撮像したときの、準合焦領域検出部50の積算部50bから出力される積算値Dが、それぞれ値A、B、Cになる場合、0.2と0.7のレスポンスにそれぞれ対応する上記値B、Cを、準合焦領域か否かを判定するための上限値B、下限値Cとして取得しておく。
判定部50cは、原画像の分割領域毎に入力する積算値Dが、図10に示すように上限値Bと下限値Cの範囲に入るか否かに応じて、その分割領域が準合焦領域か否かを判定する。原画像のBPF1の出力の積算値Dが図中に示されている。
また、判定部50cは、原画像の分割領域毎に入力する積算値Dが、上限値Bを越えている場合には、その分割領域は合焦領域と判定することができ、下限値Cを下回っている場合には、その分割領域は非合焦領域と判定することができる。
尚、準合焦領域検出部50は、帯域通過フィルタ50aの代わりに、特定の周波数(例えば、中心周波数が約1/8fs)を通過させる狭帯域通過フィルタ(BPF2)を、周波数成分抽出部として使用してもよい。この狭帯域通過フィルタ(BPF2)を使用する場合、図9に示すように、準合焦領域か否かを判定するための上限値b、下限値cを取得しておく必要がある。即ち、ISO解像度チャートを撮像したときの、準合焦領域検出部50の積算部50bから出力される積算値Dが、それぞれ値a、b、cの場合、0.2と0.7のレスポンスにそれぞれ対応する値b、cを、準合焦領域か否かを判定するための上限値b、下限値cとして取得する。
また、帯域通過フィルタ50a等の周波数成分抽出部は、原画像内の分割領域毎に、分割領域内のエッジ部を検出するエッジ部検出部を備え、エッジ部が検出された分割領域の原画像データから所望の周波数成分を抽出することが好ましい。エッジ部が存在しない分割領域の画像データからは、準合焦領域等の判別ができないからである。
なお、上述した分割領域の設定は一例でありこれに限られない。分割領域ごとに周波数成分が抽出できればどのように設定してもよい。
図11は、本発明に係る点像復元処理と他の方式の点像復元処理との比較例を示す図である。
本発明は、前述したように準合焦領域の原画像データに対して、復元処理をオンにするが、復元率を合焦領域の原画像データよりも低くし(復元強度を弱くし)、これにより準合焦領域の原画像データを回復させつつ、過補正にならないようにしている。
一方、合焦領域の原画像データと同様に準合焦領域の原画像データを復元処理するA方式の場合、準合焦領域の画像データが過補正になり、画質が劣化する。また、合焦領域の原画像データのみを復元処理するB方式の場合、準合焦領域の原画像データが回復されず、解像度が不足する。
図12は、強度自動調整部52による準合焦領域の原画像データに対する復元率(復元強度倍率U)の調整のバリエーションを示す図である。
強度自動調整部52は、図12の実線aに示すように、準合焦領域の原画像データに対する復元強度倍率Uを、合焦領域の原画像データに対する復元強度倍率Uよりも低い一定値(例えば、合焦領域の原画像データに対する復元強度倍率Uの約2分の1)に調整することができる。
この場合、非合焦領域と準合焦領域との境界、及び準合焦領域と合焦領域との境界の復元率(復元強度倍率U)が段階的に大きく変化し、これらの境界の原画像データに復元強度の段差が生じる。そこで、強度自動調整部52は、図12の一点鎖線bによって示すように、これらの境界の復元強度倍率Uを連続的に変化させ、境界の原画像データに復元強度の段差が生じないようにすることが好ましい。尚、非合焦領域と準合焦領域との境界の復元強度の段差は、目立たないため、準合焦領域と合焦領域との境界の復元強度倍率Uのみを連続的に変化させるようにしてもよい。
また、強度自動調整部52は、図12の破線cに示すように、準合焦領域の原画像データに対する復元強度倍率Uを、準合焦領域のレスポンスの大きさに応じて、非合焦領域から合焦領域まで連続的に変化させることができる。尚、準合焦領域のレスポンスの大きさは、準合焦領域検出部50の積算部50b(図8)により積算した積算値Dの大きさにより求めることができる。
これによれば、非合焦から合焦までの範囲にわたってレスポンスが変化する準合焦領域の原画像データに対して、連続的に復元強度を変化させることができる。尚、準合焦領域のレスポンスの大きさは、デフォーカス量(ピントずれ量)に相当するため、準合焦領域検出部50の積算部50bは、デフォーカス量検出部(第1のデフォーカス量検出部)として機能し得る。
また、準合焦領域内のデフォーカス量は、後述する位相差画素の出力信号の位相差に基づいて算出することができる。
また、強度自動調整部52は、非合焦領域の原画像データに対しては、復元強度倍率Uをゼロ(点像復元処理をオフ)にすることができるが、図12の二点鎖線dに示すように非合焦の度合いが大きくなるにしたがって、復元強度倍率Uを大きくしてもよい。非合焦の度合いが大きくなるにしたがって、復元処理による原画像データに対する画質の劣化の影響が低下するからである。
<準合焦の定義2>
原画像データの撮像時の撮影条件(絞り値、焦点距離、撮影距離)と、原画像データに対応する原画像内の分割領域毎の被写体距離とを取得し、取得した撮影条件により決定される被写界深度(合焦範囲)を越える一定範囲を準合焦と定義し、この範囲内の被写体距離を有する分割領域を準合焦領域とする。
次に、原画像内の分割領域毎の被写体距離を取得する方法の一例について説明する。
図13は、原画像を8×8の64個の領域(分割領域A11〜A88)に分割した原画像を示している。まず、分割領域A11〜A88に対応する原画像データから、コントラストAF(オートフォーカス)において使用されるAF評価値を、分割領域A11〜A88毎に算出する。即ち、レンズ16を至近から無限遠に対応するレンズ移動範囲にわたって移動(AFサーチ)させ、所定のレンズ位置毎に原画像データを取得する。そして、取得した原画像データの高周波成分をハイパスフィルタにより抽出し、抽出した高周波成分の絶対値の積算値を、AF評価値として取得する。
図14は、分割領域A11〜A88毎に取得されるAF評価値の一例を示す図である。
各分割領域A11〜A88から取得されるAF評価値の、それぞれのピーク値が得られるときのレンズ位置は、各分割領域A11〜A88の被写体距離に対応するため、AF評価値がピーク値となるレンズ位置から分割領域A11〜A88の被写体距離を求めることができる。
尚、分割領域A44がAF領域として設定されている場合、分割領域A44から取得されるAF評価値がピーク値となるレンズ位置(合焦位置)にレンズ16を移動させることにより、コントラストAFを行うことができ、また、合焦位置のレンズ位置から撮影距離を求めることができる。
図15は、AF領域である分割領域A44を含む縦方向の8個の分割領域A14〜A84内の被写体の被写体距離を示す図である。
図15において、領域A,Cは準合焦領域であり、領域Bは合焦領域である。尚、準合焦領域Aよりも遠側の領域、及び準合焦領域Cよりも近側の領域は、非合焦領域である。
分割領域A44がAF領域であるため、分割領域A44は、合焦位置の被写体距離に対応しており、合焦領域Bに入っている。
ここで、合焦領域Bは、原画像の撮影時の撮影条件により決定される被写界深度に対応する。具体的には、焦点距離fが23mm、絞り値FがF5.6、合焦位置の被写体距離(撮影距離)Lが100cmとなる撮影条件の場合、許容錯乱円の直径δを0.015mmにおいて計算すると、被写界深度(=前方被写界深度+後方被写界深度)は、以下のようになる。
前方被写界深度=(δ×F×L2)/(f2+δ×F×L)≒13[cm]
後方被写界深度=(δ×F×L2)/(f2−δ×F×L)≒18[cm]
そして、合焦領域Bよりも遠側の準合焦領域Aは、後方被写界深度を越える一定範囲(例えば、焦後方被写界深度の2倍の範囲)とし、同様に合焦領域Bよりも近側の準合焦領域Cは、前方被写界深度を越える一定範囲(例えば、前方被写界深度の2倍の範囲)として定義することができる。
上記の準合焦領域A、C、及び合焦領域Bと、これらに対応する被写体距離とをまとめると、図16に示すようになる。
[準合焦領域検出部の第2実施形態]
次に、図4に示した準合焦領域検出部50に代わる第2実施形態の準合焦領域検出部50−2について説明する。
図17は、上記準合焦の定義2に対応して準合焦領域を検出する準合焦領域検出部50−2のブロック図である。第2実施形態の準合焦領域検出部50−2は、原画像データに対応する原画像内の分割領域毎の被写体距離と、原画像データの撮像時の撮影条件とを取得する取得部の一形態に相当する被写体距離取得部50−2a及び被写界深度算出部50−2bと、判定部50−2cとから構成されている。
被写体距離取得部50−2aは、原画像の分割領域毎の被写体距離を取得する。分割領域毎の被写体距離は、前述したようにコントラストAF時に取得される分割領域毎のAF評価値のピーク値に対応するレンズ位置に基づいて求めることができる。尚、原画像の分割領域毎の被写体距離の取得方法は、この実施形態に限定されない。
被写界深度算出部50−2bは、原画像の撮影時の撮影条件を取得し、取得した撮影条件に基づいて被写界深度を算出する。
判定部50−2cは、被写体距離取得部50−2aから入力する分割領域毎の被写体距離を示す情報と、被写界深度算出部50−2cから入力する原画像の被写界深度を示す情報とに基づいて、図15に示した準合焦領域A,Cに対応する被写体距離を有する分割領域を抽出し、抽出した分割領域を準合焦領域として判定する。
尚、判定部50−2cは、図15に示した合焦領域Bに対応する被写体距離を有する分割領域を抽出し、抽出した分割領域を合焦領域として判定し、合焦領域B,準合焦領域A,C以外の領域を、非合焦領域として判定することができる。また、準合焦領域検出部50−2は、原画像の撮影時に取得される情報に限らず、撮影された原画像データが格納されている画像ファイルの付属情報に、原画像の分割領域毎の被写体距離及び撮影条件が含まれている場合には、その付属情報から被写体距離及び撮影条件を取得してもよい。
<準合焦の定義3>
撮像範囲内の全領域のデフォーカス量を検出し、検出したデフォーカス量が合焦範囲を越え、かつ非合焦と見なせるデフォーカス量以内の場合、そのデフォーカス量を有する原画の領域を、準合焦の領域として定義することができる。
撮像範囲内の全領域のデフォーカス量は、例えば、位相差画素を有する撮像素子の位相差画素の出力信号に基づいて検出することができる。尚、撮像素子は、全画素が位相差画素により構成されたものでもよいし、撮像範囲内の全領域に離散的に位相差画素が配置されたものでもよい。
図18(a)及び(b)はそれぞれ位相差画素(第1の位相差画素p1及び第2の位相差画素p2)の構成例を示す図である。
図18(a)に示すように第1の位相差画素p1のフォトダイオードPDの前面側(マイクロレンズL側)には、遮光部材27Aが配設され、一方、図18(b)に示すように第2の位相差画素p2のフォトダイオードPDの前面側には、遮光部材27Bが配設される。マイクロレンズL及び遮光部材27A、27Bは瞳分割手段としての機能を有し、図18(a)に示すように遮光部材27Aは、フォトダイオードPDの受光面の左半分を遮光する。そのため、第1の位相差画素p1には、レンズ16の射出瞳を通過する光束のうちの光軸の左側を通過する光束のみが受光される。
また、図18(b)に示すように遮光部材27Bは、第2の位相差画素p2のフォトダイオードPDの受光面の右半分を遮光する。そのため、第2の位相差画素p2には、レンズ16の射出瞳を通過する光束のうちの光軸の右側を通過する光束のみが受光される。このように、瞳分割手段であるマイクロレンズL及び遮光部材27A、27Bにより、射出瞳を通過する光束が左右に分割され、それぞれ第1の位相差画素p1及び第2の位相差画素p2に入射する。
そして、第1の位相差画素p1に対応する出力信号と、第2の位相差画素p2に対応する出力信号との位相差を検出することにより、撮像範囲内の全領域における、デフォーカス量(ピントずれ量)を検出することができる。尚、デフォーカス量は、位相差からデフォーカス量に変換する係数を、位相差に乗算することにより検出することができる。
検出されたデフォーカス量が焦点深度を越え、非合焦と判別できる一定のデフォーカス量未満に入る領域は、準合焦領域と定義することができる。
なお、撮像素子における位相差画素の構成については図18(a),及び(b)の構成例に限られず、位相差を検出できる構成であればよい。一例として、図18(a),及び(b)における遮光部材27A,及び27Bを設ける代わりに、フォトダイオードPDを分割し、分割したフォトダイオードPDごとに信号出力が可能なように撮像素子を構成してもよい。この場合、分割したフォトダイオードPDをそれぞれ第1の位相差画素p1、第2の位相差画素p2とし、各出力信号の位相差を検出することによってデフォーカス量(ピントずれ量)を検出することができる。
[準合焦領域検出部の第3実施形態]
次に、図4に示した準合焦領域検出部50に代わる第3実施形態の準合焦領域検出部50−3について説明する。
図19は、上記準合焦の定義3に対応して準合焦領域を検出する準合焦領域検出部50−3のブロック図である。第3実施形態の準合焦領域検出部50−3は、デフォーカス量検出部(第2のデフォーカス量検出部)50−3aと、判定部50−3bとから構成されている。
デフォーカス量検出部50−3aは、入力する原画像データ内の一対の位相差画素の出力データに基づいて、撮像範囲内の全領域(分割領域毎)の位相差を検出し、検出した位相差から分割領域毎のデフォーカス量を検出する。判定部50−3bは、デフォーカス量検出部50−3aから入力する分割領域毎のデフォーカス量の大きさに基づいて、準合焦領域を判定する。
尚、判定部50−3bは、入力する分割領域毎のデフォーカス量の大きさに基づいて、合焦領域及び非合焦領域の判定も可能である。
[第2実施形態]
図20は、図3に示した画像処理部35に代わる第2実施形態の画像処理部35−2の構成例を示すブロック図である。
この画像処理部35−2は、鮮鋭回復制御部37−2、復元処理部38、及び点拡がり関数には基づかない鮮鋭化処理部として機能する輪郭強調処理部39を備えている。尚、復元処理部38は、図3に示した画像処理部35の復元処理部38と共通するため、その詳細な説明は省略する。
輪郭強調処理部39は、画像データに対し、点拡がり関数に基づかない鮮鋭化フィルタを用いた鮮鋭化処理を行う。鮮鋭化フィルタは、点拡がり関数を直接的に反映するフィルタでなければ特に限定されず、公知の輪郭強調フィルタを鮮鋭化フィルタとして使用可能である。尚、鮮鋭化フィルタは、画像全体において単一のフィルタが用意されていてもよいし、画像内の位置毎(像高毎)に異なるフィルタが用意されていてもよい。
鮮鋭回復制御部37−2は、復元処理部38及び輪郭強調処理部39を制御し、復元処理による画像データの復元率及び鮮鋭化処理による画像データの鮮鋭化率を調整する。この復元率及び鮮鋭化率の調整に関して本例の鮮鋭回復制御部37−2は、復元率及び鮮鋭化率に基づくトータル鮮鋭復元率を取得し、復元率及び鮮鋭化率のうちの一方を取得し、復元率及び鮮鋭化率のうちの他方をトータル鮮鋭復元率に基づいて算出する。
鮮鋭化処理に加えて点像復元処理を行う場合、従来の手法では鮮鋭復元強度が強くなり過ぎて画像の過補正等を招き、画質を損なうことがある。従って、鮮鋭化処理及び点像復元処理の両者を行う場合は、鮮鋭化処理のみ或いは点像復元処理のみを行う場合に比べ、鮮鋭化処理における鮮鋭化強度や点像復元処理における復元強度を弱めることが好ましい。
また、点像復元処理は、撮影シーンや被写体次第では誤補正によってアーティファクト(リンギング等)などを招くことがあり、また、撮影条件に応じて異なる復元フィルタを使用する場合、点像復元処理後の画像の復元率や解像感(鮮鋭度)にばらつきが生じることがある。これらの誤補正や画像の鮮鋭度のばらつきは、鮮鋭化処理が行われるとより一層際立つ。
以下の第2実施形態は、点像復元処理及び鮮鋭化処理を組み合わせた場合であっても上述の過補正や誤補正を効果的に防ぎ、光学系の点拡がり現象によって損なわれた画質を回復して鮮明な画像を得る技術に関する。
図21は、点像復元強度及び鮮鋭化強度の調整を説明するための概念図である。図21の「トータル鮮鋭復元強度(トータル鮮鋭復元率)」は、所望の画質から決まる最終鮮鋭度目標強度値であり、画像処理全体に対する入力と出力との大きさの比率を直接的又は間接的に示す。本例の「トータル鮮鋭復元強度(トータル鮮鋭復元率)」は、撮影設定条件(光学特性情報)に応じて変動しうるが、撮影設定条件が決まれば一定の値となる。ここでいう撮影設定条件には、例えばレンズ、絞り、ズーム、被写体距離、感度、撮影モード等の各種の撮影条件及び設定条件が含まれうる。また「点像復元強度」は、点像復元処理による復元強度であって、撮影設定条件(光学特性情報)に応じて定められる。また「鮮鋭化強度」は、鮮鋭化処理による鮮鋭化の強度である。
これらのトータル鮮鋭復元強度、点像復元強度及び鮮鋭化強度は、それぞれの画像処理の前後における画像変化の程度を表す指標であり、画像の変化の程度を適切に表すことが可能な任意の基準に則って定められる。従って、点像復元処理及び鮮鋭化処理の各々がフィルタ適用処理及びゲインコントロール処理を含む場合には、「フィルタ適用処理及びゲインコントロール処理」の前後の変化が点像復元強度及び鮮鋭化強度によって表される。
例えば、点像復元処理と鮮鋭化処理とが並列的に行われ、「点像復元処理による画像復元の程度(点像復元強度)」と「鮮鋭化処理による画像鮮鋭化の程度(鮮鋭化強度)」とが「トータル鮮鋭復元強度」によって定められる場合を想定する。この場合には「点像復元強度+鮮鋭化強度=トータル鮮鋭復元強度」の関係が成立し、点像復元強度の増減分だけ鮮鋭化強度が増減し、図4に示される点像復元強度と鮮鋭化強度との境界位置(B)が変動しうる。従って、例えばトータル鮮鋭復元強度及び点像復元強度が定まれば、両者から最適な鮮鋭化強度を算出することが可能である。同様に、トータル鮮鋭復元強度及び鮮鋭化強度が定まれば、両者から最適な点像復元強度を算出することが可能である。
尚、図21は理解を容易にするために直感的な概念図を示すに過ぎず、点像復元処理と鮮鋭化処理とが行われる処理系において「点像復元強度+鮮鋭化強度=トータル鮮鋭復元強度」の関係が常に成立することを示すものではない。例えば、点像復元処理と鮮鋭化処理とが直列的に行われた場合、点像復元強度と鮮鋭化強度との積に基づいてトータル鮮鋭復元強度が定められる。従って、以下の実施形態では、「点像復元強度及び鮮鋭化強度の両者による周波数増幅率」が、「トータル鮮鋭復元強度による周波数増幅率」と一致するように、点像復元強度及び鮮鋭化強度が決められる。
例えば、点像復元強度を優先的に設定し、その設定された点像復元強度に応じて鮮鋭化強度を調整することが可能である。この場合、光学系(レンズ16等)のPSFに応じた点像復元処理を高精度に行うことができる。また、点像復元処理は繊細な処理であり基礎パラメータが正確でないと過補正等の弊害を招き易いが、点像復元強度を優先的に決めることで、過補正等の弊害を効果的に防げる。
一方、鮮鋭化強度を優先的に設定し、その設定された鮮鋭化強度に応じて点像復元強度を調整することも可能である。この場合、弊害の少ない安定した処理である鮮鋭化処理が優先的に行われる。この鮮鋭化処理を優先的に行うケースは、光学特性に優れた精度を持つ光学系(レンズ16等)を用いて撮影を行う場合、撮影シーンが夜景やポートレートの場合、アートフィルタ処理が行われる場合、点像復元処理による効果が得難い場合、点像復元処理による弊害が出やすい場合等に好適である。
点像復元強度及び鮮鋭化強度の調整は様々な基準によって行うことができ、例えば特定の周波数や特定の画像位置(像高位置)における周波数増幅率が同じになるように、トータル鮮鋭復元強度を定められる。
このようにトータル鮮鋭復元強度を設定して点像復元強度及び鮮鋭化強度を調整することにより、点像復元処理及び鮮鋭化処理を受けた画像の鮮鋭度(復元率及び解像感)のばらつきを抑え、出力画像の総合的な画質を向上できる。
点像復元強度及び鮮鋭化強度の調整に関する具体的な実施形態について、以下に説明する。
第2実施形態の鮮鋭回復制御部37−2は、点像復元処理における復元率を取得し、トータル鮮鋭復元率及び復元率に基づいて鮮鋭化処理における「鮮鋭化率」を算出する。
図22は、第2実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理を行う処理ブロックの構成を示す図である。尚、図4に示した第1実施形態と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第2実施形態の画像処理システムモデルでは、「点像復元処理のための信号処理ブロック」と「任意のシャープネス強調処理のための信号処理ブロック」とが直列に接続(カスケード結合)され、両信号処理ブロックにおいて連続的な信号強度調整が可能となっている。即ち、復元処理部38及び輪郭強調処理部39は直列に設けられ、画像データは点像復元処理及び鮮鋭化処理のうちの一方の処理(図22に示す例では「点像復元処理」)を受けた後に他方の処理(図22に示す例では「鮮鋭化処理」)を受ける。
輪郭強調処理部39は、輪郭強調フィルタ処理部46、鮮鋭化乗算器47及び鮮鋭化加算器48を含む。本例では点像復元処理後の画像データが、入力画像データとして輪郭強調フィルタ処理部46に入力される。輪郭強調フィルタ処理部46は、鮮鋭化フィルタ(輪郭強調フィルタ)を入力画像データに適用する。鮮鋭化フィルタは任意の手法によって決められ、輪郭強調フィルタ処理部46は、単一の鮮鋭化フィルタを用いてもよいし、複数のフィルタの中から適宜選択されるフィルタを鮮鋭化フィルタとして用いてもよい。鮮鋭化乗算器47は、輪郭強調フィルタ処理部46において得られた画像データに対して鮮鋭化強度倍率Vの乗算を行いゲインコントロールを行う。鮮鋭化加算器48は、入力画像データに対して倍率(1−V)を乗算し、鮮鋭化強度倍率Vが乗算された画像データと加算する。鮮鋭化処理は、これらの輪郭強調フィルタ処理部46、鮮鋭化乗算器47及び鮮鋭化加算器48における一連の処理によって構成される。
尚、復元強度倍率Uの反映手法と同様に、輪郭強調処理部39は、任意の手法によって鮮鋭化強度倍率Vを画像データに反映することができ、本実施形態及び他の実施形態において、上記手法の代わりに上記手法と等価な他の手法を採用してもよい。例えば、輪郭強調フィルタ処理部46において鮮鋭化フィルタ(輪郭強調フィルタ)を入力画像データに適用した後、画像の増減分データを算出し、鮮鋭化乗算器47において増減分データのゲインコントロールを行い、増減分データ及び鮮鋭化強度倍率Vの乗算を行う。その後、鮮鋭化加算器48にて、輪郭強調フィルタ処理部46に入力される前の画像データ(入力画像)と、鮮鋭化強度倍率Vが乗算された増減分データとの加算を行うようにしてもよい。
鮮鋭回復制御部37−2は、強度自動調整部52−2、復元フィルタ選択部53及び輪郭強調強度選択部54を含む。復元フィルタ選択部53は、撮影設定条件Sに基づいて復元フィルタ記憶部58から復元フィルタXを選択し、選択した復元フィルタXを、強度自動調整部52と復元処理部38の点像復元フィルタ処理部42とに送信する。
輪郭強調強度選択部54は、撮影設定条件Sに対応する鮮鋭化強度倍率(輪郭強調強度)V0を輪郭強調強度リスト記憶部60から選択し、その選択した鮮鋭化強度倍率V0を強度自動調整部52−2に送信する。本例において輪郭強調強度選択部54により選択される鮮鋭化強度倍率V0は、復元処理部38(点像復元フィルタ処理部42)において点像復元処理が実質的に行われない場合の鮮鋭化強度倍率である。
この「点像復元処理が実質的に行われない場合の鮮鋭化強度倍率」は、トータル鮮鋭復元率(トータル鮮鋭復元強度)に相当する。即ち、本例では点像復元強度と鮮鋭化強度とがトータル鮮鋭復元強度によって定められ(図21参照)、点像復元処理が行われない場合のトータル鮮鋭復元強度は鮮鋭化強度のみによって定まる。従って、点像復元処理が行われない場合の鮮鋭化強度倍率を、鮮鋭化強度倍率V0として取得して強度自動調整部52−2に供給する本例の輪郭強調強度選択部54は、実質的には、トータル鮮鋭復元率(トータル鮮鋭復元強度)を強度自動調整部52−2に供給する。
強度自動調整部52−2は、復元フィルタ選択部53からの復元フィルタX及び輪郭強調強度選択部54からの鮮鋭化強度倍率V0に基づいて、点像復元回復率(復元率)Gに応じた復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを決定する(ただし、「復元強度倍率U≧0」及び「鮮鋭化強度倍率V≧0」を満たす)。
また、点像復元処理の強度調整(復元乗算器43によって用いられる復元強度倍率Uの決定)は、図4に示した第1実施形態と同様に、準合焦領域検出部50からの原画像内の準合焦領域を示す情報に基づいて、準合焦領域の原画像データに対する復元率が、合焦領域の原画像データに対する復元率よりも小さくなるように調整される。
そして、強度自動調整部52−2は、決定した復元強度倍率Uを復元乗算器43に送信し、鮮鋭化強度倍率Vを鮮鋭化乗算器47に送信する。復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vは、それぞれ復元処理部38及び輪郭強調処理部39における強度調整パラメータであり、復元乗算器43及び鮮鋭化乗算器47は、強度自動調整部52から送られてくる復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを使用して乗算処理を行う。
尚、強度自動調整部52−2は、点像復元フィルタ処理部42及び輪郭強調フィルタ処理部46の各々において使用されるフィルタの周波数特性を取得する。例えば、点像復元フィルタ処理部42によって使用される復元フィルタXは復元フィルタ選択部53から強度自動調整部52−2に送られる。また、輪郭強調フィルタ処理部46によって使用される鮮鋭化フィルタも強度自動調整部52−2は任意の手法によって取得する。例えば、輪郭強調フィルタ処理部46によって使用される鮮鋭化フィルタが固定されている場合、強度自動調整部52−2はその鮮鋭化フィルタの周波数特性を予め記憶しておくことにより取得してもよい。また、使用される鮮鋭化フィルタを輪郭強調フィルタ処理部46から強度自動調整部52−2に送信し、強度自動調整部52−2は、受信した鮮鋭化フィルタを解析することにより鮮鋭化フィルタの周波数特性を取得してもよい。
強度自動調整部52−2は、後述のトータル鮮鋭度評価値に基づいて復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを決定する際に、点像復元フィルタ処理部42及び輪郭強調フィルタ処理部46で使用するフィルタの周波数特性を考慮する。具体的には、強度自動調整部52−2は、トータル鮮鋭度評価値に各フィルタの周波数特性を反映させ、フィルタの周波数特性を反映したトータル鮮鋭度評価値に基づいて、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを決定する。また、強度自動調整部52−2は、準合焦領域検出部50から入力する原画像内の準合焦領域を示す情報を、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを決定する際に考慮する。
強度自動調整部52−2における復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vの決定は、例えば以下のフローに従って行うことができる。
まず、撮影設定条件Sが本体コントローラ28によって取得され、その撮影設定条件Sに対応する復元フィルタXが復元フィルタ選択部53によって選択される。また、点像復元処理がオフの場合の鮮鋭化強度倍率V0が、輪郭強調強度選択部54により撮影設定条件Sに応じて選択される。
復元フィルタXは、画像データの撮影における撮影設定条件Sに基づいて決定されるが、この撮影設定条件Sは「点拡がり関数に影響する設定条件」及び「点拡がり関数に影響を及ぼさない撮影条件」を含みうる。「設定条件」は、例えば絞り情報、ズーム情報、被写体距離情報、及び光学系が有するレンズ種類情報のうち少なくともいずれか1つを含みうる。また「撮影条件」は、撮影感度情報及び撮影モード情報のうち少なくともいずれか1つを含みうる。
尚、撮影設定条件Sは任意の方式により復元フィルタ選択部53及び輪郭強調強度選択部54に入力可能であり、本体コントローラ28のデバイス制御部34及び画像処理部35のうち撮影設定条件Sを管理する制御処理部(図示せず)から復元フィルタ選択部53及び輪郭強調強度選択部54に撮影設定条件Sが適宜送信される。
一方、点像復元回復率Gは、復元処理部38及び輪郭強調処理部39における画像処理の前に、予めユーザによって指定される。ユーザによる点像復元回復率Gの指定方法は特に限定されず、例えば点像復元回復率Gを指定するためのスライダ等の調整手段をユーザインターフェース29(背面表示部等)に表示し、ユーザがその調整手段を介した操作を行うことにより点像復元回復率Gを簡易に定めることも可能である。この点像復元回復率Gは復元乗算器43による点像復元処理の復元強度倍率Uをコントロールするための基礎データである。後述するように、例えば点像復元回復率Gの値が所定の閾値よりも大きい場合を除き、復元強度倍率Uと点像復元回復率Gとは等しい(復元強度倍率U=点像復元回復率G)。
輪郭強調フィルタ処理部46によって使用されるフィルタ(鮮鋭化処理における輪郭強調成分を抽出するためのフィルタ)の周波数特性を「φ(ωx,ωy)」として、復元フィルタXi,j(点像復元処理における復元成分を抽出するためのフィルタ)の周波数特性を「xi,j(ωx,ωy)」とする。この場合、復元処理部38及び輪郭強調処理部39(点像復元処理及び鮮鋭化処理)を組み合わせた、図22に示す画像処理システム全体の周波数特性は、以下の式2によって表される。
「F(ωx,ωy|U,V,xi,j)」は、復元強度倍率U,鮮鋭化強度倍率V,周波数特性xi,jをパラメータとした、(ωx,ωy)(x方向及びy方向に関する周波数)についての関数を示し、この関数は画像処理システムの構成に依存して決定される。
一方、点像復元処理の強度調整(復元乗算器43において用いられる復元強度倍率Uの決定)は、以下の式3によって定義されるトータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭復元率)C(U,V,xi,j)を一定の値に保つように実施される。
ここで「wi,j(ωx,ωy)」は、画像内位置(画素位置)(i,j)毎に定義される任意の重み関数であり、トータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭度評価関数)C(U,V,xi,j)は、システム全体の周波数特性の重み付き演算によって定義される。重み関数wi,j(ωx,ωy)は、視覚的に有意な周波数成分及び/又は画像内位置において大きな値となるように設計されることが好ましい。上記の式3により定義されるトータル鮮鋭度評価値C(U,V,xi,j)を用いることによって、点像復元処理の強度を変化させても、注目している周波数帯域及び/又は画像内位置においては周波数強調の程度が変化せず鮮鋭度の大きな乖離は発生しない。一方、重み関数wi,j(ωx,ωy)が比較的小さい周波数帯域及び/又は画像内位置では、点像復元処理による画質の差が目立ち易くなる。
上述を踏まえ、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vの値は次のように決定できる。即ち、強度自動調整部52に入力される点像復元回復率Gに基づいて、単調増加関数により復元強度倍率Uの値が決定され、その後、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,xi,j)が一定の値に保たれるように鮮鋭化強度倍率Vの値が決定される。従って、復元強度倍率Uの値が大きくなると鮮鋭化強度倍率Vの値が小さくなり、復元強度倍率Uの値が小さくなると鮮鋭化強度倍率Vの値が大きくなるように、強度自動調整部52−2は調整を実施する。ただし、復元強度倍率Uの値が大き過ぎると、鮮鋭化強度倍率Vの値をゼロ「0」にしてもトータル鮮鋭度評価値C(U,V,xi,j)を一定に保てない場合が発生しうる。即ち、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,xi,j)を一定に保つことが可能な復元強度倍率Uの範囲には制限が存在しうる。
復元強度倍率Uの上限値を「UMAX」と表記すると、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,xi,j)は「C(UMAX,0,xi,j)=C(0,V0,xi,j)」の関係を満たすため、復元強度倍率Uの最大値は以下の式4に示すように制限される。
上記の式4は、点像復元回復率Gが復元強度倍率Uの上限値UMAX以下の場合には点像復元回復率Gを復元強度倍率Uに設定し(U=G)、点像復元回復率Gが復元強度倍率Uの上限値UMAXを超える場合には復元強度倍率Uの上限値UMAXを復元強度倍率Uに設定する(U=UMAX)ことを示す。
鮮鋭化強度倍率Vの値は、図22の画像処理システムでは、トータル鮮鋭度評価値が「C(U,V,xi,j)=C(0,V0,xi,j)」の関係を満たす鮮鋭化強度倍率Vを探すことで算出される。これは1次方程式の解を求めることに等しく、強度自動調整部52は、鮮鋭化強度倍率Vを容易に求められる。鮮鋭化強度倍率Vの算出の難易度は、システム全体の周波数特性F(ωx,ωy|U,V,xi,j)の定義に依存する。この周波数特性F(ωx,ωy|U,V,xi,j)が非線形関数となって上記の等式を厳密に成立させる鮮鋭化強度倍率Vを探すのが難しい場合、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,xi,j)をトータル鮮鋭度評価値C(0,V0,xi,j)に最も近づける鮮鋭化強度倍率Vを採用するという定式化が行われてもよい。
上述の一連の処理によって、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,xi,j)を一定に保つ復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを算出することができる。
以上説明したように本実施形態によれば、トータル復元鮮鋭度(トータル鮮鋭度評価値)に基づいて復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vが定められるため、点像復元処理及び鮮鋭化処理を経た画像(出力画像)の鮮鋭度のばらつきが抑えられ、出力画像における総合的な解像度や画質を安定化できる。
特に、視覚上主要な周波数帯域及び/又は画像内位置における重み付けが大きくなるようにトータル鮮鋭度評価値を定めることにより、視覚上主要な周波数帯域及び/又は画像内位置における復元強度及び鮮鋭化強度が一定化され、鮮鋭度の乖離が過大になることを防げる。
また、点像復元処理は、光学系のPSFに応じた高精度な画像回復処理を実現可能だが、撮影シーンや撮影条件によってアーティファクトを発生させ易く、画質への影響度が高い。従って、本実施形態のように点像復元処理の復元強度倍率U(復元率)を優先的に設定することにより、総合的な解像度や画質を効果的に向上できる。例えば復元率(点像復元回復率G、及び復元強度倍率U)を低く設定することにより、撮影シーン等に応じて生じうるアーティファクトやリンギングを目立たせないようにでき、その一方で、鮮鋭化処理によって鮮鋭度を向上させることも可能である。
また、2つの画像処理(点像復元処理及び鮮鋭化処理)の強度調整パラメータの制御は、一般に「2変数(復元強度、鮮鋭化強度)」の制御が必要となり、制御の自由度は「2」となる。しかしながら本実施形態に係る強度調整処理によれば、必要とされる制御の自由度は「1」となり、点像復元回復率Gを決めるだけで、適切な復元強度及び鮮鋭化強度(復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率V)を定めることが可能である。
更に、準合焦領域の原画像データに対する復元強度倍率Uは、合焦領域の原画像データに対する復元強度倍率Uよりも小さくなるように調整され、その結果、準合焦領域の原画像データに対する鮮鋭化強度倍率Vは、合焦領域の原画像データに対する鮮鋭化強度倍率Vよりも大きくなるように調整される。この場合、準合焦領域の原画像データに対する鮮鋭化強度倍率Vが大きくなる(鮮鋭化強度が強くなる)が、輪郭強調処理部39により輪郭強調を重視している周波数帯域が強調されても過補正にはならず、画質が劣化することがない。
<第3実施形態>
図23は、第3実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理を行う処理ブロックの構成を示す図である。尚、図22に示す第2実施形態と同様の構成に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
第3実施形態に係る鮮鋭回復制御部37−3は、鮮鋭化処理における鮮鋭化率を取得し、トータル鮮鋭復元率及び鮮鋭化率に基づいて点像復元処理における「復元率」を算出する。
鮮鋭回復制御部37−3(強度自動調整部52−3)には、鮮鋭化率(鮮鋭化強度倍率V)が入力される。この強度自動調整部52−3に入力される鮮鋭化強度倍率Vは、復元処理部38及び輪郭強調処理部39における画像処理の前に、予めユーザによって指定される。ユーザによる鮮鋭化強度倍率Vの指定方法は特に限定されず、例えば鮮鋭化強度倍率Vを指定するためのスライダ等の調整手段をユーザインターフェース29(背面表示部等)に表示し、ユーザがその調整手段を介した操作を行うことにより鮮鋭化強度倍率Vを簡易に定めることも可能である。この強度自動調整部52−3に入力される鮮鋭化強度倍率Vは、鮮鋭化乗算器47による鮮鋭化処理の鮮鋭化強度倍率Vをコントロールするための基礎データである。強度自動調整部52−3に入力される鮮鋭化強度倍率Vの値が所定の閾値よりも大きい場合を除き、強度自動調整部52−3に入力される鮮鋭化強度倍率Vと鮮鋭化乗算器47において用いられる鮮鋭化強度倍率Vとは等しい。鮮鋭化強度倍率Vが0(ゼロ)の場合は、鮮鋭化処理がオフにされていることに相当する。この鮮鋭化処理における鮮鋭化強度倍率Vは、連続的な値をとるように変化してもよいし、離散的な値をとるように変化してもよいし、オン/オフ(所定倍率か「0(ゼロ)」か)により変化してもよく、鮮鋭化強度倍率Vを任意の方式により変更可能な処理回路等を実装することが可能である。
上述の第2実施形態では「点像復元処理ブロックの復元強度倍率Uを先に決定してから、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,xi,j)を一致させるように、鮮鋭化処理ブロックの鮮鋭化強度倍率Vを求める」処理が行われる。一方、本実施形態では「鮮鋭化処理ブロックの鮮鋭化強度倍率Vを先に決定してから、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,xi,j)を一致させるように、点像復元処理ブロックの復元強度倍率Uを決定する」処理が行われる。
点像復元処理がオフの場合の鮮鋭化強度倍率V0は、輪郭強調強度リスト記憶部60に記憶されている鮮鋭化強度倍率V0の中から選択され、輪郭強調強度選択部54から強度自動調整部52に送られる。
強度自動調整部52−3は、点像復元処理がオフの場合の鮮鋭化強度倍率V0に基づくトータル鮮鋭度評価値C(0,V0,xi,j)と、鮮鋭化乗算器47において用いられる鮮鋭化強度倍率Vに基づくトータル鮮鋭度評価値C(U,V,xi,j)とを一致させる復元強度倍率Uを求める。この復元強度倍率Uは、トータル鮮鋭度評価値が「C(U,V,xi,j)=C(0,V0,xi,j)」の関係を満たす復元強度倍率Uを探すことにより算出され、これは1次方程式の解を求めることに等しい。上記の等式を成立させる復元強度倍率Uを探すのが難しい場合には、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,xi,j)をトータル鮮鋭度評価値C(0,V0,xi,j)に最も近づける復元強度倍率Uを採用するという定式化が行われてもよい。
上述の一連の処理によって、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,xi,j)を一定に保つ復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを算出することができる。
また、強度自動調整部52−3は、準合焦領域検出部50からの原画像内の準合焦領域を示す情報に基づいて、準合焦領域の原画像データに対する鮮鋭化強度倍率Vが、合焦領域の原画像データに対する鮮鋭化強度倍率Vよりも大きくなるように調整する。これにより、準合焦領域の原画像データに対する復元強度倍率Uは、合焦領域の原画像データに対する復元強度倍率Uよりも小さくなるように調整されることになる。
他の構成は、図22に示す第2実施形態と同様である。
以上説明したように本実施形態においても、トータル復元鮮鋭度(トータル鮮鋭度評価値)に基づいて復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vが求められ、点像復元処理及び鮮鋭化処理後の出力画像における鮮鋭度のばらつきを抑え、総合的な解像度や画質を安定化できる。
特に鮮鋭化処理(輪郭強調処理)は、点像復元処理に比べ、弊害が非常に少ない安定した画像処理である。そのため、例えばユーザがアーティファクト等の弊害の少ない画像を希望する場合、点像復元処理の効果が目立ち難い場合、点像復元処理の弊害が目立ち易い場合等では、本実施形態のように鮮鋭化強度倍率Vを優先的に設定することが好ましい。また、撮影に用いるレンズ16の光学性能が良好であり光学系の点拡がり現象の影響が非常に小さい場合、撮影モード(撮影シーン)が夜景モード、ポートレートモード、アートフィルタモードの場合、等のように、点像復元処理の効果が本来的に実感され難いケースでは、本実施形態のように鮮鋭化強度倍率Vを優先的に設定することが好ましい。
また、後述の非線形処理(クリップ処理、リミッタ処理等)が鮮鋭化処理ブロックに含まれており、鮮鋭化強度をあるレベル以上には強くできない場合のように「鮮鋭化強度には制限があるが、点像復元強度には制限がないケース」がある。このケースでは、本実施形態のように鮮鋭化強度倍率Vを優先的に決定した方が、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,xi,j)を一定にする制御が簡単になることがある。
<第4実施形態>
図24は、第4実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理を行う処理ブロックの構成を示す図である。尚、図22に示す第2実施形態と同様の構成に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
第4実施形態に係る鮮鋭回復制御部37−4は、特定の周波数(第1の周波数)においてトータル鮮鋭復元率を目標鮮鋭復元率に調整することにより、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを求める。
図25は、画像処理の周波数特性を例示する図であり、(a)は点像復元処理(点像復元フィルタ処理部42)における「周波数−ゲイン」関係例を示し、(b)は鮮鋭化処理(輪郭強調フィルタ処理部46)における「周波数−ゲイン」関係例を示し、(c)は鮮鋭化処理及び点像復元処理全体における「周波数−ゲイン」関係例を示す。
本実施形態の画像処理は、上述の第2実施形態に係る画像処理の一部が簡易化され、ある特定の周波数及び/又は画像内のある特定の位置(画面内座標)に注目し、その注目周波数及び/又は注目位置(注目座標)に関して「復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率V」をピンポイント調整する。
ここでいう注目周波数及び注目位置は特に限定されず、例えば視覚特性上有意な周波数及び画面内座標を注目周波数及び注目位置に設定することができ、例えば画像の中央位置に注目するように設定してもよい。また注目周波数及び注目位置の範囲も限定されず、単数であってもよいし、複数であってもよい。
この画像処理は、具体的には、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,xi,j)の式(上記「式3」参照)の重み関数wi,j(ωx,ωy)を次のように定義することにより実現可能である。
上記式において「δ(x)」はクロネッカーのデルタ関数を示し、画像の注目位置の座標(像高)を「i=i0,j=j0」とする。例えば画像の注目位置を画像の中央位置とすると、上記式4の重み関数wi,j(ωx,ωy)は、画像中心において特定の周波数f0における特定のゲインg0(トータル鮮鋭度評価値C(U,V,xi,j))が得られるように定義されている。また上記式5は、周波数に関し、x方向の周波数のみを参照する。これは、画像中心においてはPSFの形状が等方的であるため、その等法的なPSFに基づく復元フィルタの周波数特性も等方的になり、特定の方向(上記式4では「x方向」)について参照すれば十分だからである。
上記式5により表される重み関数を用いることによって、図25に示す通り、点像復元回復率Gがいかなる値であったとしても、画像処理システム全体の周波数特性に関して、常に、特定の周波数f0においてゲインg0が一定になる。
点像復元処理全体(復元処理部38)の周波数特性は、点像復元フィルタ処理部42によるフィルタ処理と復元乗算器43によるゲインコントロール処理によって決定され、点像復元フィルタ処理部42の周波数特性(図25(a)参照)の倍率が復元強度倍率Uによって調整されることにより定まる。同様に、鮮鋭化処理全体(輪郭強調処理部39)の周波数特性は、輪郭強調フィルタ処理部46によるフィルタ処理と鮮鋭化乗算器47によるゲインコントロール処理によって決定され、輪郭強調フィルタ処理部46の周波数特性(図25(b)参照)の倍率が鮮鋭化強度倍率Vによって調整されることにより定まる。従って、画像処理システム全体の周波数特性(図7(c)参照)は、点像復元フィルタ処理部42及び輪郭強調フィルタ処理部46の周波数特性(図7(a)及び(b)参照)に適用される復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vをコントロールすることにより調整可能である。
強度自動調整部52−4における復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vの調整は、特定の周波数f0において特定のゲインg0を実現するという制限はあるが、具体的な調整例は1つには定まらない。例えば、画像の高周波成分を強調したい場合には、図25(c)の「調整例1」に示すように、その高周波成分を強調するゲインが達成されるように復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vが決定される。一方、画像の高周波成分は強調せずに、低周波〜中周波の成分を強調したい場合には、図25(c)の「調整例2」に示すように、その低周波〜中周波の成分にのみゲインが適用される復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vが決定される。
尚、強度自動調整部52−4は、点像復元フィルタ処理部42において使用する復元フィルタXが復元フィルタ選択部53から入力され、その復元フィルタXの周波数特性を求める。また、強度自動調整部52は、輪郭強調フィルタ処理部46において使用する鮮鋭化フィルタの周波数特性も把握する。例えば、輪郭強調フィルタ処理部46において単一の鮮鋭化フィルタが用いられる場合には、その鮮鋭化フィルタの周波数特性を復元フィルタ選択部53が予め記憶しておいてもよい。また、輪郭強調フィルタ処理部46において使用する鮮鋭化フィルタが複数のフィルタの中から選択される場合には、選択された鮮鋭化フィルタが強度自動調整部52に入力されて強度自動調整部52がその鮮鋭化フィルタの周波数特性を求めてもよいし、選択された鮮鋭化フィルタの周波数特性が強度自動調整部52に入力されてもよい。
以上説明したように本実施形態によれば、点像復元処理及び鮮鋭化処理後の出力画像における鮮鋭度のばらつきを抑え、画質を安定化できる。特に特定の周波数f0におけるゲインg0が固定されるので、例えば「ベースとなる低周波の鮮鋭度を一定に保ちつつ高周波の鮮鋭度を調整する」などの手法をとることができ、画像処理全体の周波数特性を柔軟にコントロールすることが可能である。
また、画像内のある特定の位置(例えば中央部位置)において一定のトータル鮮鋭度評価値C(U,V,xi,j)が達成されるように、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを定めることもできる。中央部位置を「特定の位置」とした場合、ユーザが認識し易い画像中央部における鮮鋭度に大きな乖離が生じることを防ぎつつ、画像周辺のボケ画像に対して鮮鋭度を大きく向上させる点像復元処理及び鮮鋭化処理を行うことも可能である。尚、ここでいう「特定の位置」の数は特に限定されず、画像全体を構成する画素数の数%〜数十%に相当する数を「特定の位置」の数に設定することもできる。
<第5実施形態>
図26は、第5実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理を行う処理ブロックの構成を示す図である。尚、図22に示す第2実施形態と同様の構成に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
第5実施形態に係る復元処理部38及び輪郭強調処理部39は並列に設けられ、画像データ(入力画像)は復元処理部38及び輪郭強調処理部39の各々に入力され、点像復元処理による画像データの増減分データと鮮鋭化処理による画像データの増減分データとが加算されて出力画像が生成される点で、復元処理部38と輪郭強調処理部39とが直列に接続されている第2実施形態と相違する。
本実施形態の画像処理部35は鮮鋭復元調整部63を有する。鮮鋭復元調整部63は、復元処理部38からの画像データの増減分データと輪郭強調処理部39からの画像データの増減分データとを加算する第1加算器61と、第1加算器61から出力される加算後増減分データと入力画像データとを加算する第2加算器62とを含む。
即ち、本例では、画像データに対する「点像復元フィルタ処理部42及び復元乗算器43による点像復元処理」と「輪郭強調フィルタ処理部46及び鮮鋭化乗算器47による鮮鋭化処理」とが並列的に行われ、各処理では画像データ(入力画像)との差分値に相当する増減分データが算出される。点像復元処理による画像データの増減分データと鮮鋭化処理による画像データの増減分データとは第1加算器61によって加算され、点像復元処理及び鮮鋭化処理の全体による画像データの増減分データが算出される。この「処理全体による画像データの増減分データ」と画像データ(入力画像)とが第2加算器62によって加算され、点像復元処理及び鮮鋭化処理が施された画像データ(出力画像)が生成される。
他の構成は、図22に示す第2実施形態と同様である。例えば、復元フィルタ選択部53(図22参照)によって選択される復元フィルタは点像復元フィルタ処理部42及び強度自動調整部52に供給され、輪郭強調強度選択部54によって選択される鮮鋭化強度倍率V0が強度自動調整部52に供給される。また、復元乗算器43及び鮮鋭化乗算器47において使用される復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vは強度自動調整部52−によって適宜定められる。
本例の画像処理システム全体の周波数特性は、以下の式6によって表される。
上記式6において、復元処理部38の周波数特性が「U×xi,j(ωx,ωy)」によって表され、輪郭強調処理部39の周波数特性が「V×φ(ωx,ωy)」によって表される。従って、第1加算器61による加算処理は「U×xi,j(ωx,ωy)+V×φ(ωx,ωy)」の周波数特性に基づき、第2加算器62による加算処理は「1+U×xi,j(ωx,ωy)+V×φ(ωx,ωy)」の周波数特性に基づく。
以上説明したように本実施形態においても、復元処理部38及び輪郭強調処理部39が直列的に配置される場合(上述の第1実施形態(図5)参照)と同様に、点像復元処理及び鮮鋭化処理後の出力画像における鮮鋭度のばらつきが抑えられ、画質を安定化できる。
<第6実施形態>
図27は、第6実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理を行う処理ブロックの要部構成を示す図である。尚、図22に示す第2実施形態と同様の構成に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態に係る画像処理部35は、画像データの非線形処理を行う非線形処理部65を更に備え、2段フィルタ処理システム(復元処理部38及び輪郭強調処理部39)において非線形処理が導入されている。この非線形処理部65は、復元処理部38及び輪郭強調処理部39のうち少なくともいずれか一方に含まれるが、下記では復元処理部38に非線形処理部が設けられる例について説明する。
非線形な処理は、一般に加減乗除の演算処理のみからは構成されず、例えばLUT(ルックアップテーブル)の参照や条件分岐を伴う処理が含まれうる。非線形処理は、アーティファクトやノイズの抑制を目的として行われることが多く、例えば「画像信号のうちクリップ閾値を超える画素値をクリップ閾値に調整するクリップ処理」を非線形処理として行ってもよい。
本例の点像復元処理(復元処理部38)は、復元フィルタによって抽出された点像復元強調成分に対する強調倍率の適用、その強調倍率適用後の点像復元強調成分に対する非線形処理の適用、及び非線形処理後の点像復元強調成分と元画像との合成、という一連の処理を含む。
即ち、本実施形態では、画像データ(入力画像)は、点像復元フィルタ処理部42に入力されて復元フィルタによるフィルタリング処理が行われ、点像復元処理による画像データの増減分データが算出される。その増減分データは復元乗算器43に入力されて復元強度倍率Uに基づくゲインコントロールが行われ、増減分データ及び復元強度倍率Uの乗算が行われ、乗算後の増減分データが非線形処理部65に入力される。
非線形処理部65においては、入力された増減分データに対するクリップ処理(非線形処理)が行われ、増減分データ(画像データ)のうち所定のクリップ閾値を超える画素値がクリップ閾値に調整される。尚、クリップ閾値は予め定められて非線形処理部65が記憶していてもよいし、ユーザがユーザインターフェース29を介してクリップ閾値を直接的又は間接的に指定してもよい。クリップ処理後の画像データの増減分データは復元加算器44において点像復元フィルタ処理部42に入力される前の画像データ(入力画像)に加算され、点像復元処理後の画像データが算出される。
非線形処理部65において行われるクリップ処理は、以下の式7により示すように、画像データ(ゲイン調整された増減分データ)xが、クリップ閾値θ(≧0)以上の値をとらないように制限する処理である。
上記式7により表されるクリップ処理関数CLIP(x)によれば、増減分データxの絶対値がクリップ閾値θよりも小さい場合(|x|<θ)、その増減分データxクリップ処理によって調整されずに保持され、非線形処理部65から「x」が出力される。一方、増減分データxの絶対値がクリップ閾値θ以上の場合(|x|≧θ)、その信号成分はクリップ処理によって符号関数(signum function)によって調整され、非線形処理部65から「sign(x)×θ」が出力される。
また、非線形処理部65は、強度自動調整部52からクリップ閾値θが与えられるが、強度自動調整部52は、準合焦領域検出部50からの原画像内の準合焦領域を示す情報に基づいて、準合焦領域の原画像データに対するリップ閾値θを、合焦領域の原画像データに対するクリップ閾値θよりも低く調整することが好ましい。これによれば、準合焦領域の原画像データに対する復元率が抑制される。
他の構成は、図22に示す第2実施形態と同様である。例えば、輪郭強調処理部39における輪郭強調フィルタ処理部46によるフィルタリング処理、鮮鋭化乗算器47による乗算処理及び鮮鋭化加算器48による加算処理は、上述の第2実施形態と同様に行われる。
本例では、システム全体における周波数特性F(ωx,ωy|U,V,xi,j)として、特定の入力波形をシステム(画像処理部35)に入力した場合の出力に基づいて近似的に得られる周波数特性を用いることができる。即ち、非線形処理を行う画像処理部が信号処理系に存在する場合、その信号処理系の周波数特性を正確に求めることは原理的に不可能であり、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vの強度自動算出処理が適用できない場合がある。従って、非線形処理が行われる場合、周波数成分が予め把握されている特定の入力波形(入力画像データ)に対する出力波形(出力画像データ)から、内部の周波数特性を近似的に評価し、その近似的な評価によって得られる周波数特性を利用することにより、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vの自動算出処理を行ってもよい。この場合、システム全体の周波数特性F(ωx,ωy|U,V,xi,j)を求める必要があり、特定の入力波形に対するシステムの周波数レスポンス近似式を数式によって表現することが求められる。具体的な近似評価手法は任意であり、このシステムの周波数レスポンス近似式の精度は、非線形処理の具体的な内容に依存する。
システムの周波数レスポンス近似式の例としては、図9に示すクリップ処理を含む画像処理システムにおいて、予め特性を把握している入力波形(画像信号)を使用し、入力波形がハイコントラストなステップ関数であると仮定し、上述の実施形態のように特定の周波数f0において特定の値(トータル鮮鋭度評価値)を持つようにwi,j(ωx,ωy)を定義する場合(上記の「式5」参照)、画像処理システム全体の周波数特性を以下の式8によって近似的に表すことができることを本件発明者は経験的に知得した。
上記の式8において、「A」はクリップ閾値θと入力画像信号の鮮鋭度(ボケ度)に依存する定数である。また「min(U×ψ(ωx,ωy),A)」は「U×ψ(ωx,ωy)」及び「A」のうち小さい方を示す関数である。
尚、本例では復元処理部38に非線形処理部65が設けられるが、非線形処理部は、輪郭強調処理部39にのみ設けられてもよいし、復元処理部38及び輪郭強調処理部39の双方に設けられてもよい。ただし、復元処理部38及び輪郭強調処理部39の双方において非線形処理が行われると、画像処理システム全体の周波数レスポンス近似式が複雑になり、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,xi,j)を一定の値に保ちながら復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを決定する制御が難しくなってしまう可能性がある。
点像復元処理(点像復元フィルタ処理部42)において用いられる復元フィルタは、想定される周波数特性(ボケ特性)を入力画像が持つことを前提に設計される。しかしながら、点像復元処理及び鮮鋭化処理よりも前段に配置される撮像系や画像処理系における非線形な現象及び信号処理によって、想定とは異なる周波数特性(不正な周波数特性)を画像データ(入力画像)が持ち、出力画像にアーティファクトが生じることがある。このようなアーティファクトを抑制するため、復元フィルタによるフィルタリング処理(点像復元フィルタ処理部42)よりも後段に非線形処理部65を設けることが好ましい。
以上説明したように本実施形態によれば、復元処理部38及び/又は輪郭強調処理部39において非線形処理が行われる場合であっても、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを的確に求めることができる。特に、非線形処理を行うことにより、アーティファクトを効果的に抑制することができる。
<第7実施形態>
従来の動画撮影モードでは動画撮影中に撮影設定条件は経時的に変化し、変動する撮影設定条件に対応する復元フィルタを逐次選択して点像復元処理を行うと、動画フレーム間において復元率や画像鮮鋭度のばらつきが目立つ虞がある。
本実施形態では、準合焦領域における原画像データの解像度を維持しながら過補正になるのを抑制しつつ、動画フレーム間における復元率や鮮鋭度のばらつきを防ぐため、動画記録中は、トータル鮮鋭度評価値を予め決められた値に保ちつつ、点像復元処理強度及び鮮鋭化処理強度の制御が行われる。即ち、実施形態では、トータル鮮鋭度評価値が撮影設定条件毎には切り替えられない。
図28は、第7実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理を行う処理ブロックの構成を示す図である。尚、図22に示す第2実施形態と同様の構成に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
第7実施形態に係る鮮鋭回復制御部37−7(強度自動調整部52−7)は、画像データ(入力画像)を取得した際の撮影モード情報Mを取得し、撮影モード情報Mが動画記録モードを示す場合には、トータル鮮鋭復元率を一定に保つ。尚、ここでいう「トータル鮮鋭復元率を一定に保つ」とは、トータル鮮鋭復元率を所定値に保つ場合に限定されるものではなく、トータル鮮鋭復元率が画質に影響の無い範囲内に保たれる場合も含みうる。トータル鮮鋭復元率が画質に影響の無い範囲内に保たれる場合、トータル鮮鋭復元率の変動の程度は10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
撮影モード情報Mは任意の方式により強度自動調整部52−7に入力される。例えば、デジタルカメラ10(レンズユニット12、及びカメラ本体14により構成される)に「動画記録モード及び静止画記録モードを切り替え可能なモード切替部(ユーザインターフェース29)」が設けられる場合には、そのモード切替部から本体コントローラ28(強度自動調整部52−7)にユーザが選択した撮影モード情報Mが送られてもよい。撮影モード情報Mは、処理対象の画像が動画か静止画かを直接的又は間接的に示す情報であればよく、処理対象の画像に付随する「動画/静止画」を示す情報を撮影モード情報Mとしてもよい。
強度自動調整部52−7は、入力される撮影モード情報Mが動画記録モードを示す場合には、動画を構成する複数の画像データ(動画データ)のフレーム間において共通のトータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭復元率)を用いて、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを決定する。即ち、動画記録モードにより撮影された動画(フレーム)に対する復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを決定する場合、フレーム間により撮影設定条件が変わっても、トータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭復元率)は撮影設定条件毎には切り替えられず固定される。この動画像に対して固定的に使用されるトータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭復元率)は、任意の手法により決定可能であり、例えば動画を構成する特定のフレーム(例えば最初のフレーム)の撮影設定条件に対応するトータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭復元率)が用いられてもよい。
尚、強度自動調整部52−7(鮮鋭回復制御部37−7)は、撮影モード情報Mが動画記録モードを示す場合には、撮影モード情報Mが静止画記録モードを示す場合よりも、点像復元処理の復元強度倍率U(復元率)を小さくしてもよい。復元処理部38による点像復元処理はPSFに基づく画像回復処理であり、PSFが正確に把握可能な場合には画質を効果的に改善可能な優れた画質改善処理だが、PSFが正確に把握されない場合には過補正等によって画質劣化を引き起こしうる処理である。PSFを忠実に反映する復元フィルタを用いる点像復元処理には相応の時間が必要になるが、動画記録モードでは、動画を構成する複数のフレーム画像を限られた時間により処理することも求められる。また、動画においてはフレーム間の連続性を保持することも求められ、連続フレーム間において画質が大幅に変化することは、必ずしも好ましくない。従って、動画記録モードでは復元強度倍率U(復元率)を比較的小さくすることにより、過補正等による画質劣化やフレーム間の変化を小さくし、総合的に良質な動画を生成することができる。また、鮮鋭化強度倍率Vによって復元強度倍率Uの減少が補われ、点像復元処理による復元度が比較的小さくても、鮮鋭化処理によって鮮明な動画を得ることができる。
以上説明したように本実施形態によれば、動画撮影中に撮影設定条件が変化し、撮影設定条件に応じた点像復元処理の復元率が変動しても、トータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭復元率)が一定であるため、復元動画の鮮鋭度のばらつきを抑えることができる。
<第7実施形態の変形例>
第7実施形態の変形例では、動画撮影中の撮影条件の変化に対し、動画フレーム間における復元率や鮮鋭度が大きく変化しないように抑制している。
図29は、時系列の動画フレーム中の「処理対象フレーム」及び「参照フレーム」に関して説明する図である。
動画の撮像時には、光学系12及び撮像素子26を介して所定のフレームレートによって被写体が連続して撮像され、時系列に連続する複数のフレームからなる動画の画像データが取得される。ここで、フレームレートとは、単位時間あたりのフレーム数(画像数、コマ数)であり、一般的には1秒間に生成されるフレーム数(単位:fps(frame per second))によって表される。例えば、本態様のデジタルカメラ10は、フレームレートが30fpsの場合、1秒間に30枚の画像の生成を行い、フレームレートが60fpsの場合、1秒間に60枚の画像の生成を行う。
また、動画は、時系列に連続する複数のフレームから構成され、例えば、記録動画、ライブビュー画像を含む意味である。
図29は、時間tに撮像されたフレーム(t)に対して復元処理を行う場合を示す。この場合、フレーム(t)は、処理対象フレームとなる。そして、時間t−1に撮像されたフレーム(t−1)、時間t−2に撮像されたフレーム(t−2)、及び時間t−3に撮像されたフレーム(t−3)は、処理対象フレームよりも時系列で前のフレーム(前フレーム)である。また、時間t+1に撮像されたフレーム(t+1)、時間t+2に撮像されたフレーム(t+2)、及び時間t+3に撮像されたフレーム(t+3)は、処理対象フレームよりも時系列において後のフレーム(後フレーム)である。尚、図29では説明の都合上、処理対象フレームに対して前フレームを3フレーム及び後フレームを3フレームのみ記載しているが、実際は撮影時間に応じて多数のフレームが存在している。
参照フレームは、少なくとも前フレーム又は後フレームの1フレーム含まれればよい。また、参照フレームは、単数であってもよいし、複数であってもよい。例えば、参照フレームが単数の場合は、処理対象フレーム(フレーム(t))の後フレームであるフレーム(t+1)が参照フレームとして選択されることが好ましい。また、例えば、参照フレームが複数の場合は、処理対象フレーム(フレーム(t))の後フレーム(t+1)及び前フレーム(t−1)が選択されることが好ましい。
図29において、前フレーム(t−1)は処理対象フレームの時系列において直前のフレームであり、後フレーム(t+1)は処理対象フレームの時系列において直後のフレームである。このような直前のフレーム(フレーム(t−1))や直後のフレーム(フレーム(t+1))を参照フレームとして選択してもよい。
時系列において連続する複数のフレームの中から参照フレームを選択する方法は様々な手法が用いられる。例えば、参照フレームを選択する方法として、予めユーザが参照フレームの選択する方法をユーザインターフェース29により指定する手法が考えられる。また例えば、参照フレームを選択する方法は、予め決定されていてもよい。
鮮鋭回復制御部37(図4等)は、参照フレームの撮像情報に基づいて、処理対象フレームの復元処理の内容に関して調整を行う。鮮鋭回復制御部37は、フレーム間において連続性のある復元処理を実現すべく、様々な手法により、参照フレームの撮像情報に基づいて復元処理の内容を調整する。
更に、鮮鋭回復制御部37は、参照フレームの撮像情報及び処理対象フレームの撮像情報に基づいて、処理対象フレームの復元処理の内容に関して調整を行うことができる。処理対象フレームの撮像情報及び参照フレームの撮像情報に応じて処理対象フレームの復元処理を行うことにより、処理対象フレームと参照フレーム間において連続性のある復元処理を行うことができ、且つ処理対象フレームに適した復元処理を行うこともできる。
次に、鮮鋭回復制御部37が行う復元処理の内容に関する調整の方法を具体例により説明する。
鮮鋭回復制御部37は、参照フレームの撮影条件情報を含む撮像情報に関して最頻値に基づいて、復元処理の内容を調整することができる。
図30は、図29において説明を行ったフレーム(t−3)からフレーム(t+3)の各々において、撮影条件情報(撮像情報)として絞り値(F値)が与えられている場合を示している。具体的に図30に示す場合には、フレーム(t−3)は絞り値F2により撮像され、フレーム(t−2)は絞り値F2により撮像され、フレーム(t−1)は絞り値F2により撮像され、フレーム(t)は絞り値F2.8により撮像され、フレーム(t+1)は絞り値F2により撮像され、フレーム(t+2)は絞り値F2により撮像され、及びフレーム(t+3)は絞り値F2により撮像されている。
処理対象フレームをフレーム(t−1)とし、参照フレームをフレーム(t−3)、フレーム(t−2)、フレーム(t)、及びフレーム(t+1)とする場合について説明する。この場合、フレーム(t−3)、フレーム(t−2)、フレーム(t−1)、及びフレーム(t+1)は絞り値がF2により撮像され、フレーム(t)は絞り値がF2.8により撮像されている。このため、処理対象フレーム及び参照フレームにおいて、撮影条件情報としての絞り値の最頻値はF2となる。そうすると、処理対象フレーム(フレーム(t−1))に対して復元処理を行う場合には、絞り値がF2により撮像されたフレーム用の復元フィルタが使用される。
同様に、処理対象フレームをフレーム(t)、フレーム(t+1)とした場合も処理対象フレームを含む前後5フレームの絞り値の最頻値はF2となり、いずれの処理対象フレームも、絞り値がF2により撮像されたフレーム用の復元フィルタが使用される。
また、図31は別の参照フレームを選択する例を示す。フレーム(t−3)は絞り値F2により撮像され、フレーム(t−2)は絞り値F2により撮像され、フレーム(t−1)は絞り値F2により撮像され、フレーム(t)は絞り値F2.8により撮像され、フレーム(t+1)は絞り値F1.4により撮像され、フレーム(t+2)は絞り値F1.4により撮像され、及びフレーム(t+3)は絞り値F1.4により撮像されている。
フレーム(t−2)、フレーム(t−1)、フレーム(t+1)、及びフレーム(t+2)を参照フレームとし、フレーム(t)を処理対象フレームとした場合には、フレーム(t−2)及びフレーム(t−1)は絞り値がF2により撮像されており、フレーム(t+1)及びフレーム(t−2)は絞り値がF1.4により撮像されているため、撮影条件情報の最頻値は絞り値F2と絞り値F1.4の2つとなる。この場合は、処理対象フレームの撮影条件情報は絞り値F2.8であるため処理対象フレームの撮影条件情報は最頻値に該当しないので、時系列で処理対象フレームの後の参照フレームが有する撮影条件情報の最頻値(この場合は絞り値F1.4)が採用される。
また、フレーム(t−1)及びフレーム(t+3)を参照フレームとした場合には、撮影条件情報の最頻値はF2とF1.4との二つであるが、フレーム(t−1)の方がフレーム(t+3)よりも処理対象フレームに時系列において近いことから、フレーム(t−1)の撮影条件情報である絞り値F2が最頻値として採用される。
図32は、鮮鋭回復制御部37が参照フレームの撮影条件情報(撮像情報)の最頻値を決定する動作フローを示した図である。
まず、鮮鋭回復制御部37は、処理対象フレームの撮影条件情報を取得する(ステップS10)。その後、鮮鋭回復制御部37(復元フィルタ選択部53)は、参照フレームの撮影条件情報を取得する(ステップS12)。尚、復元フィルタ選択部53は、様々な方法により処理対象フレームの撮影条件情報を取得することができ、例えば、復元フィルタ選択部53はデバイス制御部34(図2)から処理対象フレームの撮影条件情報を取得することができる。そして、鮮鋭回復制御部37は、参照フレームの撮影条件情報のうち最頻値を抽出する(ステップS14)。そして、鮮鋭回復制御部37は、最頻値が単数である又は複数であるかを判断し、最頻値が一つの場合(ステップS16のNoの場合)には、最頻値の撮影条件が採用されて(ステップS18)、復元処理の内容の調整を行う。
一方、最頻値が複数の場合(ステップS16のYesの場合)には、複数ある最頻値の一つが処理対象フレームの撮影条件情報であるか否かを判断する。そして、複数ある最頻値の一つが処理対象フレームの撮影条件情報でない場合(ステップS20のNoの場合)には、鮮鋭回復制御部37は、複数ある最頻値のうち、処理対象フレームと時系列において近いフレームの最頻値を選択する(ステップS22)。また、鮮鋭回復制御部37は、複数ある最頻値のうちいずれの最頻値も処理対象フレームと時系列において同じ間隔である場合には、処理対象フレームより時系列において前のフレームを含む最頻値を選択する(ステップS22)。このように、処理対象フレームより時系列において前のフレームを含む最頻値を選択することにより、時系列上での連続性が良好となる。
一方、複数ある最頻値の一つが処理対象フレームの撮影条件情報である場合(ステップS20のYesの場合)には、鮮鋭回復制御部37は、処理対象フレームの撮影条件情報を最頻値として採用する(ステップS24)。その後、次の処理対象フレームに関して処理が行われる。
次に、鮮鋭回復制御部37が行う復元処理の内容に関する調整の他の方法を具体例により説明する。
鮮鋭回復制御部37(復元フィルタ選択部53)は、処理対象フレームの撮影条件情報と、参照フレームの撮影条件情報とに基づいて上記のように撮影条件情報を決定し、決定した撮影条件情報により復元フィルタ記憶部58から対応する復元フィルタを取得してもよいし、処理対象フレームの撮影条件情報に対応する復元フィルタと、参照フレームの撮影条件情報に対応する復元フィルタとを復元フィルタ記憶部58から読み出し、読み出した複数の復元フィルタに基づいて、新たな復元フィルタを取得してもよい。復元フィルタ選択部53、様々な手法により、処理対象フレームの撮影条件情報に対応するフィルタと参照フレームの撮影条件情報に対応するフィルタとから、新たな復元フィルタを取得することができ、例えば、処理対象フレームの撮影条件情報に対応するフレームと参照フレームの撮影条件情報に対応するフレームとの加重平均により、新たな復元フィルタを求めることができる。
これにより、動画撮影中の撮影条件の変化に対し、処理対象フレームに適用される復元フィルタの変化を抑制し、動画フレーム間における復元率や鮮鋭度が大きく変化しないようにしている。
<第8実施形態>
図33は、第8実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理を行う処理ブロックの構成を示す図である。尚、図22に示す第2実施形態と同様の構成に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態では、レンズユニット(光学系)12が装着されると、レンズユニット12の個体差情報が反映された点像復元回復率Gが、レンズユニット12から強度自動調整部52−8に入力される。従って、強度自動調整部52−8は、光学系の個体差情報を含む光学特性情報に基づいて復元強度倍率Uを決定する。また、強度自動調整部52−8に入力される点像復元回復率Gは、準合焦領域検出部50の検出結果により調整される前の点像復元回復率Gであり、合焦領域の画像データに対応するものである。
レンズユニット12(特にレンズ16等の光学系)は製造誤差等のために光学特性に関して個体差があり、その個体差によってレンズユニット12毎にPSFが厳密には異なる。従って、レンズユニット12(光学系)の個体差を無視して点像復元処理を行うと、同一種類のレンズユニット12を用いて撮影した画像であっても復元度が異なり、復元画像におけるアーティファクトの出現態様も異なることがある。
理想的には、レンズユニット12の光学特性を忠実に反映したPSFに基づいて点像復元処理が行われ、復元画像にアーティファクトは生じない。しかしながら実際には、レンズユニット12の個体差に起因して、処理対象画像におけるPSFの影響と、点像復元処理により使用する復元フィルタの基礎を構成するPSFとがマッチングしておらず、復元画像にアーティファクトが生じることがある。個体差が原因で生じるアーティファクトを防ぐための一手法として、点像復元処理における復元強度倍率Uを小さい値に設定することにより復元度を抑える手法があるが、復元強度倍率Uを小さくすると画像が十分には復元されず所望の鮮鋭度が得られない。この鮮鋭度落ちを防ぐための一手法として、レンズユニット12の個体毎に、所望のトータル鮮鋭度を実現するための鮮鋭化強度倍率Vを逐次調整することが考えられるが、そのような逐次調整は手間がかかる作業であり、不便である。
本実施形態では、準合焦領域における原画像データの解像度を維持しながら過補正になるのを抑制しつつ、更に点像復元処理の復元強度度がレンズ(光学系)の個体毎に調整され、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vの決定が自動化される。
即ち、本実施形態では、レンズユニット記憶部21が復元フィルタ記憶部58及び輪郭強調強度リスト記憶部60を含むとともに、点像復元強度リスト記憶部67を更に含む。点像復元強度リスト記憶部67には、レンズユニット12(光学系)に特有の点像復元回復率Gを記憶し、この点像復元回復率Gはレンズユニット12の個体差情報Qが反映された値となっている。また、復元フィルタ記憶部58にはレンズユニット12(光学系)の種別に応じた復元フィルタXが記憶されている。尚、復元フィルタXは同じ種別のレンズユニット12(光学系)に対して共通に使用される。
点像復元強度リスト記憶部67に記憶される点像復元回復率Gは、レンズユニット12が交換(装着)されると、鮮鋭回復制御部37が有する回復率選択部69によって読み出されて強度自動調整部52−8に供給される。即ち、回復率選択部69は、撮影設定条件Sに対応する点像復元回復率Gを、点像復元強度リスト記憶部67から読み出して強度自動調整部52−8に供給する。強度自動調整部52−8は、上述の第2実施形態と同様に、供給される点像復元回復率Gから復元強度倍率Uを決定し、この復元強度倍率U及びトータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭復元率)に基づいて鮮鋭化強度倍率Vを決定する。
本実施形態では復元フィルタ記憶部58がレンズユニット記憶部21(レンズユニット12)に設けられるため、レンズユニット12が交換(装着)されると、復元フィルタ選択部53は新たなレンズユニット12の復元フィルタ記憶部58から復元フィルタXを読み出す。そのため、搭載されるレンズユニット12(光学系)のPSFを反映した復元フィルタXを復元フィルタ記憶部58に記憶しておくことにより、各レンズユニット12には自身のPSFを反映した復元フィルタXを記憶する復元フィルタ記憶部58が搭載される。
従って、複数種類のレンズユニット12がカメラ本体14に装着可能であっても、装着されたレンズユニット12に最適化された復元フィルタXを点像復元フィルタ処理部42に供給することができる。更に本実施形態によれば、カメラ本体14に装着されるレンズユニット12(光学系)の個体差情報Qが加味された点像復元回復率Gが強度自動調整部52に供給されるため、光学系の個体差によるPSFの不整合に起因するアーティファクトを防ぐことができる。特に本実施形態では、個体差情報Qを反映した点像復元回復率Gがレンズユニット記憶部21(レンズユニット12)に記憶されるため、カメラ本体14に装着されるレンズユニット12が交換されても、交換後のレンズユニット12の個体差情報Qに基づく点像復元回復率Gに応じて復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを決定可能である。各フィルタ処理では決定された復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vが使用されるため、準合焦領域における原画像データの解像度を維持しながら過補正になるのを抑制しつつ、更に個体差を反映した復元処理を行いつつ所望のトータル鮮鋭度を得ることができる。
尚、点像復元強度リスト記憶部67、復元フィルタ記憶部58及び輪郭強調強度リスト記憶部60は、上述の実施形態ではレンズユニット12に設けられているが、カメラ本体14に設けられていてもよい。これらの記憶部がカメラ本体14に設けられる場合、装着されたレンズユニット12に対応するデータが外部機器類(コンピュータ92、サーバ97等)から、点像復元強度リスト記憶部67、復元フィルタ記憶部58及び輪郭強調強度リスト記憶部60にダウンロードされることが好ましい。
<第9実施形態>
図34は、第9実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理を行う処理ブロックの構成を示す図である。尚、図33に示す第8実施形態と同様の構成に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図33に示す上述の第8実施形態では撮影設定条件毎に復元フィルタXが選択されて点像復元フィルタ処理部42により用いられるが、図34に示す第9実施形態では複数の撮影設定条件下(光学系種)では同一の復元フィルタXが点像復元フィルタ処理部42で用いられる。
撮影設定条件毎のPSFに対応した復元フィルタを用いる点像復元処理は処理負荷が比較的大きいが、本実施形態は、所定の許容範囲を設定しその許容範囲内の複数の撮影設定条件下においては復元フィルタXを共通化することにより点像復元処理の負荷を軽減する。ただし、撮影設定条件(光学系種)が異なればPSFも厳密には異なるため、複数の撮影設定条件下において復元フィルタXを共通化する場合、復元画像におけるアーティファクトの出現態様や画像復元率(画像回復率)は撮影設定条件に応じて変わる。
本実施形態では光学系種に応じて変動するアーティファクト等を防ぐために、カメラ本体14に取り付けられるレンズユニット12の種別に応じて、点像復元処理の点像復元回復率Gを変化させて、アーティファクトが強く出現し易いレンズユニット12においては点像復元回復率Gを比較的弱く設定する。点像復元回復率Gを比較的弱く設定することによって鮮鋭度がばらついて所望のトータル鮮鋭回復度が得られない現象を防ぐため、強度自動調整部52−9による復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vの自動調整を利用する。
即ち、本実施形態では、点像復元強度リスト記憶部67及び輪郭強調強度リスト記憶部60はレンズユニット12(レンズユニット記憶部21)に設けられるが、輪郭強調強度選択部54はカメラ本体14に設けられる。復元フィルタ選択部53は、カメラ本体14に装着されるレンズユニット12にかかわらず、撮影設定条件Sに対応する復元フィルタXを輪郭強調強度選択部54から選択し、点像復元フィルタ処理部42及び強度自動調整部52に供給する。
一方、強度自動調整部52−9に供給される点像復元回復率Gはレンズユニット12(光学系)毎に定められる。即ち、回復率選択部69は、レンズユニット記憶部21の点像復元強度リスト記憶部67から撮影設定条件Sに応じた点像復元回復率Gを読み出して強度自動調整部52−9に供給する。
点像復元強度リスト記憶部67に記憶される点像復元回復率Gのリスト及び輪郭強調強度リスト記憶部60に記憶される鮮鋭化強度倍率V0のリストは、レンズユニット12(光学系)毎に予め算出されて記憶される。
本実施形態ではレンズユニット12の種類によらずに共通の復元フィルタXが点像復元フィルタ処理部42において用いられるため、その復元フィルタXの共通化を加味した点像復元回復率G及び鮮鋭化強度倍率V0(点像復元処理がオフの場合の鮮鋭化強度倍率V0)が強度自動調整部52−9に送られる。従って、回復率選択部69は、点像復元強度リスト記憶部67から選択される点像復元回復率Gに対して「復元フィルタXの共通化」を加味した任意の調整処理を行い、その調整後の点像復元回復率Gを強度自動調整部52に供給してもよい。同様に、輪郭強調強度選択部54は、輪郭強調強度リスト記憶部60から選択される鮮鋭化強度倍率V0に対して「復元フィルタXの共通化」を加味した任意の調整処理を行い、その調整後の鮮鋭化強度倍率V0を強度自動調整部52に供給してもよい。
以上説明したように本実施形態によれば、複数の撮影設定条件(光学系種類)に関して同一の復元フィルタを使用することを考慮して点像復元回復率Gが予め定められ、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vが算出される。これにより、準合焦領域における原画像データの解像度を維持しながら過補正になるのを抑制しつつ、更に復元フィルタの共通化に起因する復元画像におけるアーティファクトを防ぎつつ、点像復元処理及び鮮鋭化処理によって画像の鮮鋭度を向上させることができる。
尚、上述の例では「複数の光学系」に対して復元フィルタが共通に用いられるが、復元フィルタの共通化の基準となる撮影設定条件は光学系の種類に限定されず、他の撮影設定条件(例えばズーム情報等)に関して復元フィルタが共通に用いられてもよい。
例えば、複数のズーム倍率(特に光学ズーム倍率及びデジタルズーム倍率のうち光学ズーム倍率)に関して同一の復元フィルタを用いる場合、撮影設定条件Sに含まれるズーム情報に基づいて復元フィルタ選択部53が適切な復元フィルタXを選択し、点像復元フィルタ処理部42及び強度自動調整部52−9に供給する。一方、回復率選択部69は、点像復元強度リスト記憶部67から撮影設定条件Sに応じた点像復元回復率Gを読み出して強度自動調整部52−9に供給する。更に、準合焦領域検出部50は、原画像内の準合焦領域を示す情報を強度自動調整部52−9に供給する。
強度自動調整部52−9は、供給される復元フィルタX、点像復元回復率G、及び準合焦領域を示す情報に基づいて復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを決定する。この場合、複数のズーム倍率に関して共通の復元フィルタを用いることを考慮した点像復元回復率Gや鮮鋭化強度倍率V0(最大輪郭強調強度)が強度自動調整部52に供給されてもよい。例えば、回復率選択部69及び輪郭強調強度選択部54が、共通復元フィルタの使用を踏まえた点像復元回復率G及び鮮鋭化強度倍率V0(最大輪郭強調強度)を読み出し又は決定してもよい。
<他の変形例>
上述の実施形態は例示に過ぎず、他の構成に対しても本発明を適用することが可能である。
鮮鋭回復制御部37(例えば図22参照)は、少なくとも「絞り値が、第1の閾値によって表される絞り度よりも絞りが開放されていることを示す場合」に、復元率及び鮮鋭化率のうちの一方を取得し、復元率及び鮮鋭化率のうちの他方をトータル鮮鋭復元率に基づいて算出することも可能である。例えば、絞り値が開放側である場合に上述の復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vの自動調整制御が行われるようにしてもよい。即ち、鮮鋭回復制御部37(例えば図22参照)は、画像データを取得した際の光学系(レンズユニット12)の絞り値(F値)を取得し、その絞り値と第1の閾値とを比較する。絞り値をF値とした場合、取得したF値が第1の閾値以下(絞り開放側)の場合のみ、鮮鋭回復制御部37は、復元率及び鮮鋭化率のうちの一方を取得し、復元率及び鮮鋭化率のうちの他方をトータル鮮鋭復元率に基づいて算出してもよい。一般に、点像復元処理による復元率及びアーティファクトの出現態様はF値に応じて変動し、特に開放側F値により撮影された画像データによりアーティファクトが目立ち易い。従って、開放側絞りにより撮影された画像データに対してのみ、上述の各実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理による画像処理を行うことにより、開放側絞り値において表れ易いアーティファクトを抑えつつ、鮮鋭化処理による画像鮮鋭度を向上させることができる。この場合、上述の各実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理による画像処理は、少なくともアーティファクトが目立ち易い開放側F値により撮影された画像データに対して適用されればよいが、その他のF値により撮影された画像データに対して適用されてもよく、開放側F値により撮影された画像データに対してのみ適用されてもよい。
尚、絞り値は「撮影設定条件」に含まれ、図34に示す構成において撮影設定条件Sが強度自動調整部52−9に供給されることによって、強度自動調整部52−9において「絞り値と第1の閾値との比較」及び「点像復元回復率G(復元率)及び鮮鋭化強度倍率V(鮮鋭化率)の決定」を行うことができる。また「第1の閾値」は任意の値(F値)に設定可能であり、ズーム等の他の撮影設定条件に応じて決められてもよく、例えばF3.5〜F6.3の範囲のF値に相当する閾値を「第1の閾値」に設定してもよい。
また、上述の実施形態では点像復元処理がオフの場合の鮮鋭化強度倍率V0(トータル鮮鋭復元率)を撮影設定条件Sに基づいて輪郭強調強度選択部54が決定する例が示されているが、ユーザインターフェース29を介したユーザの指定に基づいて鮮鋭化強度倍率V0(トータル鮮鋭復元率)が決定されてもよい。
また、上述の各実施形態ではデジタルカメラ10において復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを自動調整計算する例について説明したが、出荷前にメーカ側において予めその自動調整計算を行い、算出した復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vのパラメータ全てをデジタルカメラ10(レンズユニット記憶部21、本体記憶部31等)に記憶保持させてもよい。例えば「復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率V」と「撮影設定条件S」とを対応付けたテーブルをデジタルカメラ10は記憶保持し、強度自動調整部52はこのテーブルを参照して撮影設定条件Sから復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを求めることができる。この場合、デジタルカメラ10(画像処理部)において用いられるパラメータを生成するパラメータ生成方法は、「点像復元処理による画像データの復元率及び鮮鋭化処理による画像データの鮮鋭化率に基づくトータル鮮鋭復元率を取得するステップ」と、「復元率及び鮮鋭化率のうちの一方を取得し、復元率及び鮮鋭化率のうちの他方をトータル鮮鋭復元率に基づいて算出するステップ」と、を備える。これらのステップは、例えば上述の第2実施形態に係る強度自動調整部52−2と同様にして実行可能である。
また、本明細書に記載の実施形態同士を適宜組み合わせてもよく、第2実施形態〜第9実施形態及び変形例のうち、任意の形態同士が組み合わされてもよい。例えば第3実施形態(図23参照)において輪郭強調強度選択部54は、カメラ本体14に装着されるレンズユニット12の光学特性情報を取得し、その光学特性情報(光学系が有するレンズ種類情報、光学系の個体差情報、撮影設定条件等)に基づいて鮮鋭化強度倍率Vを決定してもよい。この場合、輪郭強調強度選択部54は任意の手法により光学特性情報を取得することができ、例えば輪郭強調強度選択部54(本体コントローラ28)はレンズユニットコントローラ20と通信してレンズユニット12の光学特性情報を取得してもよい。また、図35に示す変形例のように、個体差情報Q(光学特性情報)が反映された鮮鋭化強度倍率V0、Vを輪郭強調強度リスト記憶部60に記憶しておくことにより、「光学特性情報の取得」及び「光学特性情報に基づく鮮鋭化強度倍率V0、Vの決定」を同時的に行い、輪郭強調強度選択部54から鮮鋭化強度倍率V0、Vを強度自動調整部52−10に供給してもよい。
また、本明細書に記載の実施形態が適用される撮像装置において、光学ローパスフィルタ(Optical Low Pass Filter)が無い撮像装置に対しては、本発明の効果はより多く得られる。光学ローパスフィルタが無いことにより、被写体画像の解像度が高まり合焦領域(フォーカス領域)のコントラストが高まると同時に、準合焦領域も発生しやすくなるためである。
また、上述の各機能構成は、任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは両者の組み合わせによって適宜実現可能である。例えば、上述の各装置及び処理部(本体コントローラ28、デバイス制御部34、画像処理部35における画像処理方法(画像処理手順)をコンピュータに実行させる画像処理プログラム、その画像処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一時的記録媒体)、或いはその画像処理プログラムをインストール可能なコンピュータに対しても本発明を適用することができる。
また、本発明を適用可能な態様はデジタルカメラ及びコンピュータ(サーバ)には限定されず、撮像を主たる機能とするカメラ類の他に、撮像機能に加えて撮像以外の他の機能(通話機能、通信機能、その他のコンピュータ機能)を備えるモバイル機器類に対しても本発明を適用することが可能である。本発明を適用可能な他の態様としては、例えば、カメラ機能を有する携帯電話機やスマートフォン、PDA(Personal Digital Assistants)、携帯型ゲーム機が挙げられる。以下、本発明を適用可能なスマートフォンの一例について説明する。
<スマートフォンの構成>
図36は、本発明の撮像装置の一実施形態であるスマートフォン101の外観を示す図である。図36に示すスマートフォン101は、平板状の筐体102を有し、筐体102の一方の面に表示部としての表示パネル121と、入力部としての操作パネル122とが一体となった表示入力部120を備える。また、筐体102は、スピーカ131と、マイクロホン132、操作部140と、カメラ部141とを備える。尚、筐体102の構成はこれに限定されず、例えば、表示部と入力部とが独立した構成を採用したり、折り畳み構造やスライド機構を有する構成を採用することもできる。
図37は、図36に示すスマートフォン101の構成を示すブロック図である。図37に示すように、スマートフォンの主たる構成要素として、無線通信部110と、表示入力部120と、通話部130と、操作部140と、カメラ部141と、記憶部150と、外部入出力部160と、GPS(Global Positioning System)受信部170と、モーションセンサ部180と、電源部190と、主制御部100とを備える。また、スマートフォン101の主たる機能として、基地局装置BSと移動通信網NWとを介した移動無線通信を行う無線通信機能を備える。
無線通信部110は、主制御部100の指示に従って、移動通信網NWに収容された基地局装置BSに対し無線通信を行うものである。係る無線通信を使用して、音声データ、画像データ等の各種ファイルデータ、電子メールデータなどの送受信や、Webデータやストリーミングデータなどの受信を行う。
表示入力部120は、主制御部100の制御により、画像(静止画像及び動画像)や文字情報などを表示して視覚的にユーザに情報を伝達し、表示した情報に対するユーザ操作を検出する、いわゆるタッチパネルであって、表示パネル121と、操作パネル122とを備える。
表示パネル121は、LCD(Liquid Crystal Display)、OELD(Organic Electro-Luminescence Display)などを表示デバイスとして用いたものである。操作パネル122は、表示パネル121の表示面上に表示される画像を視認可能に載置され、ユーザの指や尖筆によって操作される一又は複数の座標を検出するデバイスである。デバイスをユーザの指や尖筆によって操作すると、操作に起因して発生する検出信号を主制御部100に出力する。次いで、主制御部100は、受信した検出信号に基づいて、表示パネル121上の操作位置(座標)を検出する。
図36に示すように、本発明の撮像装置の一実施形態として例示しているスマートフォン101の表示パネル121と操作パネル122とは一体となって表示入力部120を構成しているが、操作パネル122が表示パネル121を完全に覆うような配置となっている。係る配置を採用した場合、操作パネル122は、表示パネル121外の領域についても、ユーザ操作を検出する機能を備えてもよい。換言すると、操作パネル122は、表示パネル121に重なる重畳部分についての検出領域(以下、表示領域と称する)と、それ以外の表示パネル121に重ならない外縁部分についての検出領域(以下、非表示領域と称する)とを備えていてもよい。
尚、表示領域の大きさと表示パネル121の大きさとを完全に一致させてもよいが、両者を必ずしも一致させる必要はない。また、操作パネル122が、外縁部分と、それ以外の内側部分の2つの感応領域を備えていてもよい。さらに、外縁部分の幅は、筐体102の大きさなどに応じて適宜設計されるものである。更にまた、操作パネル122において採用される位置検出方式としては、マトリクススイッチ方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式などが挙げられ、いずれの方式を採用することもできる。
通話部130は、スピーカ131やマイクロホン132を備え、マイクロホン132を通じて入力されたユーザの音声を主制御部100にて処理可能な音声データに変換して主制御部100に出力したり、無線通信部110或いは外部入出力部160により受信された音声データを復号してスピーカ131から出力するものである。また、図36に示すように、例えば、スピーカ131及びマイクロホン132を、表示入力部120が設けられた面と同じ面に搭載することができる。
操作部140は、キースイッチなどを用いたハードウェアキーであって、ユーザからの指示を受け付けるものである。例えば、図36に示すように、操作部140は、スマートフォン101の筐体102の側面に搭載され、指などにより押下されるとオンとなり、指を離すとバネなどの復元力によってオフ状態となる押しボタン式のスイッチである。
記憶部150は、主制御部100の制御プログラムや制御データ、アプリケーションソフトウェア、通信相手の名称や電話番号などを対応づけたアドレスデータ、送受信した電子メールのデータ、WebブラウジングによりダウンロードしたWebデータや、ダウンロードしたコンテンツデータを記憶し、またストリーミングデータなどを一時的に記憶するものである。また、記憶部150は、スマートフォン内蔵の内部記憶部151と着脱自在な外部メモリスロットを有する外部記憶部152により構成される。尚、記憶部150を構成するそれぞれの内部記憶部151と外部記憶部152は、フラッシュメモリタイプ(flash memory type)、ハードディスクタイプ(hard disk type)、マルチメディアカードマイクロタイプ(multimedia card micro type)、カードタイプのメモリ(例えば、MicroSD(登録商標)メモリ等)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの格納媒体を用いて実現される。
外部入出力部160は、スマートフォン101に連結される全ての外部機器とのインターフェースの役割を果たすものであり、他の外部機器に通信等(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)、IEEE1394など)又はネットワーク(例えば、インターネット、無線LAN、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))、RFID(Radio Frequency Identification)、赤外線通信(Infrared Data Association:IrDA)(登録商標)、UWB(Ultra Wideband)(登録商標)、ジグビー(ZigBee)(登録商標)など)により直接的又は間接的に接続するためのものである。
スマートフォン101に連結される外部機器としては、例えば、有/無線ヘッドセット、有/無線外部充電器、有/無線データポート、カードソケットを介して接続されるメモリカード(Memory card)やSIM(Subscriber Identity Module Card)/UIM(User Identity Module Card)カード、オーディオ・ビデオI/O(Input/Output)端子を介して接続される外部オーディオ・ビデオ機器、無線接続される外部オーディオ・ビデオ機器、有/無線接続されるスマートフォン、有/無線接続されるパーソナルコンピュータ、有/無線接続されるPDA、有/無線接続されるパーソナルコンピュータ、イヤホンなどがある。外部入出力部は、このような外部機器から伝送を受けたデータをスマートフォン101の内部の各構成要素に伝達することや、スマートフォン101の内部のデータが外部機器に伝送されるようにしてもよい。
GPS受信部170は、主制御部100の指示に従って、GPS衛星ST1〜STnから送信されるGPS信号を受信し、受信した複数のGPS信号に基づく測位演算処理を実行し、スマートフォン101の緯度、経度、高度からなる位置を検出する。GPS受信部170は、無線通信部110や外部入出力部160(例えば、無線LAN)から位置情報を取得できる場合には、その位置情報を用いて位置を検出することもできる。
モーションセンサ部180は、例えば、3軸の加速度センサなどを備え、主制御部100の指示に従って、スマートフォン101の物理的な動きを検出する。スマートフォン101の物理的な動きを検出することにより、スマートフォン101の動く方向や加速度が検出される。係る検出結果は、主制御部100に出力されるものである。
電源部190は、主制御部100の指示に従って、スマートフォン101の各部に、バッテリ(図示しない)に蓄えられる電力を供給するものである。
主制御部100は、マイクロプロセッサを備え、記憶部150が記憶する制御プログラムや制御データに従って動作し、スマートフォン101の各部を統括して制御するものである。また、主制御部100は、無線通信部110を通じて、音声通信やデータ通信を行うために、通信系の各部を制御する移動通信制御機能と、アプリケーション処理機能を備える。
アプリケーション処理機能は、記憶部150が記憶するアプリケーションソフトウェアに従って主制御部100が動作することにより実現するものである。アプリケーション処理機能としては、例えば、外部入出力部160を制御して対向機器とデータ通信を行う赤外線通信機能や、電子メールの送受信を行う電子メール機能、Webページを閲覧するWebブラウジング機能などがある。
また、主制御部100は、受信データやダウンロードしたストリーミングデータなどの画像データ(静止画像や動画像のデータ)に基づいて、映像を表示入力部120に表示する等の画像処理機能を備える。画像処理機能とは、主制御部100が、上記画像データを復号し、係る復号結果に画像処理を施して、画像を表示入力部120に表示する機能のことをいう。
さらに、主制御部100は、表示パネル121に対する表示制御と、操作部140、操作パネル122を通じたユーザ操作を検出する操作検出制御を実行する。
表示制御の実行により、主制御部100は、アプリケーションソフトウェアを起動するためのアイコンや、スクロールバーなどのソフトウェアキーを表示したり、或いは電子メールを作成するためのウィンドウを表示する。尚、スクロールバーとは、表示パネル121の表示領域に収まりきれない大きな画像などについて、画像の表示部分を移動する指示を受け付けるためのソフトウェアキーのことをいう。
また、操作検出制御の実行により、主制御部100は、操作部140を通じたユーザ操作を検出したり、操作パネル122を通じて、上記アイコンに対する操作や、上記ウィンドウの入力欄に対する文字列の入力を受け付けたり、或いは、スクロールバーを通じた表示画像のスクロール要求を受け付ける。
さらに、操作検出制御の実行により主制御部100は、操作パネル122に対する操作位置が、表示パネル121に重なる重畳部分(表示領域)か、それ以外の表示パネル121に重ならない外縁部分(非表示領域)かを判定し、操作パネル122の感応領域や、ソフトウェアキーの表示位置を制御するタッチパネル制御機能を備える。
また、主制御部100は、操作パネル122に対するジェスチャ操作を検出し、検出したジェスチャ操作に応じて、予め設定された機能を実行することもできる。ジェスチャ操作とは、従来の単純なタッチ操作ではなく、指などによって軌跡を描いたり、複数の位置を同時に指定したり、或いはこれらを組み合わせて、複数の位置から少なくとも1つについて軌跡を描く操作を意味する。
カメラ部141は、CMOSなどの撮像素子を用いて電子撮影するデジタルカメラである。また、カメラ部141は、主制御部100の制御により、撮像によって得た画像データを例えばJPEGなどの圧縮した画像データに変換し、記憶部150に記録したり、外部入出力部160や無線通信部110を通じて出力することができる。図36に示すようにスマートフォン101において、カメラ部141は表示入力部120と同じ面に搭載されているが、カメラ部141の搭載位置はこれに限らず、表示入力部120の背面に搭載されてもよいし、或いは、複数のカメラ部141が搭載されてもよい。尚、複数のカメラ部141が搭載されている場合には、撮影に供するカメラ部141を切り替えて単独にて撮影したり、或いは、複数のカメラ部141を同時に使用して撮影することもできる。
また、カメラ部141はスマートフォン101の各種機能に利用することができる。例えば、表示パネル121にカメラ部141により取得した画像を表示することや、操作パネル122の操作入力のひとつとして、カメラ部141の画像を利用することができる。また、GPS受信部170が位置を検出する際に、カメラ部141からの画像を参照して位置を検出することもできる。さらには、カメラ部141からの画像を参照して、3軸の加速度センサを用いずに、或いは、3軸の加速度センサと併用して、スマートフォン101のカメラ部141の光軸方向を判断することや、現在の使用環境を判断することもできる。勿論、カメラ部141からの画像をアプリケーションソフトウェア内において利用することもできる。
その他、静止画又は動画の画像データにGPS受信部170により取得した位置情報、マイクロホン132により取得した音声情報(主制御部等により、音声テキスト変換を行ってテキスト情報となっていてもよい)、モーションセンサ部180により取得した姿勢情報等などを付加して記憶部150に記録したり、外部入出力部160や無線通信部110を通じて出力することもできる。
上述の画像処理部35(鮮鋭回復制御部37、復元処理部38、輪郭強調処理部39:図3参照)は、例えば主制御部100によって実現可能である。