様々な実施形態が、図面を参照して詳細に説明され、いくつかの図を通して、類似の参照符号が、類似の部分および組立体を表す。様々な実施形態への言及は、本明細書に添付される特許請求の範囲を限定しない。さらに、本明細書に記載される何れの例も、限定的であることは意図されておらず、添付の特許請求の範囲の多くの可能な実施形態のうちの一部を記載しているに過ぎない。
1.定義
本明細書において使用される際、「シクロデキストリン」または「シクロデキストリン化合物」という用語は、α(1−4)結合によって結合される少なくとも5つのグルコピラノース単位を有するシクロマルト−オリゴ糖を意味する。有用なシクロデキストリンの例としては、α−、β−、またはγ−シクロデキストリンが挙げられ、ここで、α−シクロデキストリンは、6つのグルコース残基を有し;β−シクロデキストリンは、7つのグルコース残基を有し、γ−シクロデキストリンは、8つのグルコース残基を有する。シクロデキストリン分子は、特定の容積の中空内部、または細孔を有する剛性の円錐台状分子構造によって特徴付けられる。「シクロデキストリン」は、以下に定義されるシクロデキストリン誘導体、または1つまたは複数のシクロデキストリン化合物のブレンドも含み得る。以下の表は、α−、β−、およびγ−シクロデキストリンの特性を列挙する。
本明細書において使用される際、「シクロデキストリン誘導体」または「官能化シクロデキストリン」という用語は、シクロデキストリングルコース部分のヒドロキシル基の1つに結合された官能基を有するシクロデキストリンを意味する。シクロデキストリン誘導体の非限定的な例が、米国特許第6,709,746号明細書に記載されている。
本明細書において使用される際、「シクロデキストリン包接錯体」という用語は、錯体化化学化合物、または「錯体化化合物」と、シクロデキストリンとの組合せを意味し、ここで、錯体化化合物は、シクロデキストリン環の細孔内に配置される。錯体化化合物は、包接錯体を形成するために、シクロデキストリンの内部空洞または細孔に少なくとも部分的に適合するサイズ基準を満たさなければならない。シクロデキストリン包接錯体は、包接錯体の形成および存在に特有の、ある程度の量の「非錯体化」シクロデキストリンを含み;これは、(1)実施形態において、包接錯体の合成が、包接錯体の100%の形成を生じず;(2)実施形態において、包接錯体が、対応する非錯体化シクロデキストリン/非錯体化化合物と平衡状態にあるためである。各シクロデキストリン/化合物の組合せは、温度、圧力、および湿度条件を含む所与の組の条件下で、その包接錯体に関連する特徴的な平衡を有する。ある実施形態において、錯体化化合物はオレフィン阻害剤化合物である。
本明細書において使用される際、「オレフィン阻害剤」、「オレフィン阻害剤化合物」または「エチレン生成のオレフィン阻害剤」という用語は、少なくとも1つのオレフィン二重結合を含有し、約3〜約20個の炭素原子を有し、少なくとも最小限のエチレン拮抗活性または阻害活性を有する脂肪族または環状であり得るオレフィン化合物を意味することが意図される。
本明細書において使用される際、「シクロデキストリン組成物」という用語は、シクロデキストリン包接錯体および疎水性担体を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる組成物を意味する。
本明細書において使用される際、「疎水性担体」または「担体」という用語は、以下の基準を満たす化合物または化合物の混和性ブレンドを意味する:
1.約23℃〜40℃の溶融転移開始;および
2.以下のうちの少なくとも1つ:
a.ASTM D7334−08(ASTM International,W.Conshohocken,PA)に準拠して測定される、90°以上の、担体表面に対する水接触角;または
b.25℃で1重量%未満の水への溶解度。
「溶融転移開始」は、溶融の開始に対応する熱容量の変化、Tmを意味し、その完了は、ピーク熱容量によって示される材料の完全な溶融に対応する。このピークの積分値から、溶融エンタルピーが求められ得;開始から溶融温度が求められる。温度に応じた熱容量の全ての測定は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される。本明細書において使用される際、「溶融物転移開始」は、10℃/分で加熱する、−20℃〜150℃の範囲にわたってDSCによって測定される溶融物転移開始を意味する。ある実施形態において、担体は、100℃の温度で30mm2/秒未満の動粘度を有する。ある実施形態において、担体は、少なくとも50モル%の炭化水素またはジメチルシロキサンである化学構造を有する少なくとも1つの化合物または複数の化合物のブレンドを含む。「炭化水素」は、炭素および水素からなることを意味する。「ジメチルシロキサン」は、−Si(CH3)2−O−からなる繰返し単位を意味する。実施形態において、担体は、親水性化合物の実質的な非存在によって特徴付けられ、ここで、「実質的な」は、この文脈において、親水性化合物の存在が、水接触角を90°未満に低下させるほど十分でないことを意味する。
本明細書において使用される際、「基板」という用語は、シクロデキストリン組成物を受け入れることが可能な少なくとも1つの表面を有する固体物品を意味する。基板は、構成、形状、またはサイズもしくは厚さなどの関連パラメータに関して特に限定されない。実施形態において、基板は、シクロデキストリン組成物を上にコーティングまたは印刷するのに好適な少なくとも1つの表面を含む。基板の代表例としては、農産物、熱可塑性もしくは熱硬化性ウェブ、シート、およびフィルム;金属物品、シートまたは箔;ガラス物品、シート、またはプレート;被覆もしくは非被覆紙または厚紙物品、ウェブまたはシート;2つ以上の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紙、厚紙、ガラス、または金属の組合せから形成される複合または多層ウェブ、シート、またはフィルム構造;包装材料、袋、箱、カートン(carton)、盛りかご(punnet)、または他の物品;ウェブ、シート、フィルム、ガラス、金属、金属箔、またはそれらの組合せから形成される物品;ろうまたはフィルムコーティング;紙または熱可塑性ラベル、包装を閉じるかもしくは封止し、またはラベルをそれらに接着するなどに使用される接着剤;有孔フィルム、多孔質フィルム、または透過性フィルム;連続気泡発泡体または独立気泡発泡体;セルロース系または熱可塑性材料から形成されるネットまたはメッシュ;セルロース系および合成繊維材料、短繊維、マイクロファイバー、およびナノ繊維を含む繊維、ならびにこれらの繊維から形成される織布、フェルト生地、または不織布などが挙げられる。
本明細書において使用される際、「容器」という用語は、農産物を入れる自立型(self−contained)ユニット、またはこのような自立型ユニットの構成要素を意味する。ある実施形態において、容器も、上に配置されたシクロデキストリン組成物を受け入れるのに用いられる場合、基板である。様々な実施形態において、容器は、可撓性、半剛性、もしくは剛性材料、またはそれらの組合せから形成される。容器は、それらを構成する材料の含量に関して、または全体サイズ、ユニットの壁または底の厚さなどのパラメータによって特に限定されない。容器の非限定的な例としては、盛りかご、皿、カップ、蓋、カバー、包装フィルム、充填発泡体、シールテープ、ラベル、紐、クロージャ(closure)、キャップ、袋、箱、パウチ、封筒(envelope)、カートン、ネット袋、冷蔵トラック、輸送コンテナ、倉庫または貯蔵室、建造物またはその一部などが挙げられる。様々な実施形態において、容器は、密閉された袋または独立気泡発泡体などの封入された空間;盛りかご、連続気泡発泡体、または透過性もしくは有孔の袋などの部分的に封入された空間;あるいは開放されたカートンまたはネット袋などの封入されない空間を画定する。
本明細書において使用される際、「処理基板」という用語は、その表面の少なくとも一部に配置されたシクロデキストリン組成物を有する基板を意味する。
本明細書において使用される際、「処理積層体」という用語は、その表面の少なくとも一部に配置されたシクロデキストリン組成物を有する第1の基板と、シクロデキストリン組成物上に配置された第2の基板とを含む物品を意味し、ここで、第1および第2の基板は、同じかまたは異なる。ある実施形態において、第2の基板は、シクロデキストリン組成物に接触した直後は固体でないが、シクロデキストリン組成物に接触した後、冷却または化学反応などによって固化される。一般に、および以下に文脈によって決定されるように、処理基板の説明は、処理積層体を含む。ある実施形態において、第1または第2の基板のうちの一方は取外し可能であり;あるこのような実施形態において、取外し可能な基板は、「ライナー」と呼ばれる。
本明細書において使用される際、「処理容器」という用語は、シクロデキストリン組成物を含む容器を意味する。実施形態において、処理容器は、処理基板または処理積層体を含む。ある実施形態において、処理容器は、処理基板または処理積層体から形成される。ある実施形態において、処理容器は、容器の一体部分として処理基板を含む。ある実施形態において、容器は基板であり、シクロデキストリン組成物が、その上に配置されて、処理容器が形成される。ある実施形態において、処理基板または処理積層体が、容器に加えられて、処理容器が形成される。
本明細書において使用される際、「物品」という用語は、基板、容器、処理基板、処理容器、処理積層体、またはそれらの2つ以上の組合せを意味する。
「農産物」または「農産物材料」という用語は、任意の植物全体、植物の一部(果実、花、切り花、種子、鱗茎、挿し木、根、葉、花、または活発に呼吸している他の材料など)を含み、その成熟の一環として、成熟ホルモンとしてエチレンを生成するか(クリマクテリック型)またはエチレンおよび呼吸のバーストがなくても熟成する(非クリマクテリック型)。
本明細書において使用される際、シクロデキストリン組成物または物品に適用される「透過性」という用語は、組成物または物品が、標準温度および圧力(STP)および0%の相対湿度で0.01(cm3・mm/m2・24時間・バール)以上の、錯体化化合物に対する透過性;またはASTM D96に準拠して測定される際、38℃および90%の相対湿度で0.1(g・mm/m2・24時間)以上の、水蒸気に対する透過性;またはASTM D3985に準拠して測定される際、23℃および0%の相対湿度で0.1(cm3・mm/m2・24時間・バール)以上のO2に対する透過性;またはASTM D1434に準拠して測定される際、23℃および0%の相対湿度で0.1(cm3・mm/m2・24時間・バール)以上の、CO2に対する透過性;またはそれらの2つ以上の組合せを有することを意味する。
本明細書において使用される際、シクロデキストリン組成物または物品に適用される「不透過性」という用語は、シクロデキストリン組成物または物品が、STPおよび0%の相対湿度で0.01(cm3・mm/m2・24時間・バール)未満の、錯体化化合物に対する透過性;またはASTM D96に準拠して測定される際、38℃および90%の相対湿度で0.1(g・mm/m2・24時間)未満の、水蒸気に対する透過性;またはASTM D3985に準拠して測定される際、23℃および0%の相対湿度で0.1(cm3・mm/m2・24時間・バール)未満の、O2に対する透過性;またはASTM D1434に準拠して測定される際、23℃および0%の相対湿度で0.1(cm3・mm/m2・24時間・バール)未満の、CO2に対する透過性;またはそれらの2つ以上の組合せを有することを意味する。
本明細書において使用される際、「非連続」という用語は、間隔または間隙を有することを意味する。印刷作業に適用される際、非連続は、シクロデキストリン組成物または印刷可能媒体組成物によって印刷されない間隔または間隙を有する規則的または不規則な印刷パターンを意味する。ある実施形態において、他の材料(他の印刷材料を含む)が、例えば、このような間隔または間隙中に存在するが;他の材料は、シクロデキストリン組成物または印刷可能媒体組成物を含まない。
本明細書において使用される際、「任意選択的な」または「任意選択的に」という用語は、その後に記載される事象または状況が起こることがあるが起こる必要はなく、その記載が、その事象または状況が起こった場合およびそれが起こらなかった場合を含むことを意味する。
本明細書において使用される際、本開示の実施形態を説明する際に用いられる、例えば、組成物中の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流量、圧力、および同様の値、ならびにそれらの範囲を修飾する「約」という用語は、例えば、化合物、組成物、濃縮物または使用配合物(use formulation)を作製するのに使用される典型的な測定および処理手順によって;これらの手順における不注意による誤差によって;方法を実施するのに使用される出発材料または成分の製造、供給源、または純度の相違によって、および同様の近似の検討事項(proximate consideration)によって生じ得る数量の変動を指す。「約」という用語は、特定の初期濃度を有する配合物または混合物の経年劣化によって異なる量、および特定の初期濃度を有する配合物または混合物を混合または処理することによって異なる量も包含する。「約」という用語によって修飾される場合、本明細書に添付される特許請求の範囲は、これらの量の同等量を含む。
本明細書において使用される際、「実質的に」という用語は、「から本質的になる」を意味し、一般におよび特に規定されない限り、「からなる」を含むが、これは、それらの用語が、本出願の出願日現在の米国において特許請求の範囲の文言の範囲内で解釈されるためである。例えば、特定の化合物または材料「を実質的に含まない」溶液は、その化合物または材料を含まないことがあり、または経年劣化、意図されていない汚染、または不完全な精製などによって、微量のその化合物または材料が存在し得る。成分の提供されたリスト「のみを実質的に」有する組成物は、それらの成分のみからなることがあり、または微量の1つまたは複数のさらなる成分が存在するか、または組成物の特性に実質的に影響を与えない1つまたは複数のさらなる成分が存在し得る。さらに、「実質的に平面」である表面は、微細な欠陥、またはフィルムの全体的な平面性に実質的に影響を与えない凸状の特徴(embossed feature)を有し得る。
2.シクロデキストリン組成物および処理基板
本発明者らは、1つまたは複数のシクロデキストリン包接錯体が、穏やかな条件を用いてシクロデキストリン組成物を形成するのに有用であることを見出した。実施形態において、シクロデキストリン組成物は、基板の表面の少なくとも一部に配置されて、処理基板が形成される。他の実施形態において、シクロデキストリン組成物は、第1の基板の表面の少なくとも一部に配置され、第2の基板が、シクロデキストリン組成物上に配置されて、処理積層体が形成される。実施形態において、処理基板または処理積層体は、処理容器に含まれるか、または処理容器を形成するのに使用される。
本発明のシクロデキストリン組成物は、少なくともシクロデキストリン包接錯体および担体を含む。シクロデキストリン包接錯体を形成するのに用いられるシクロデキストリンは、特定の容積のシクロデキストリン細孔のために選択される。すなわち、シクロデキストリン細孔径は、シクロデキストリンとともに錯体化するのに使用される化合物の分子サイズに適合するように選択される。実施形態において、錯体化化合物はオレフィン阻害剤である。オレフィン阻害剤は、3〜約20個の炭素原子を有し、少なくとも1つのオレフィン結合および環状、オレフィンまたはジアゾ−ジエン構造を含む化合物である。ある実施形態において、オレフィン阻害剤は、以下の構造を有する:
式中、R
1、R
2のそれぞれが、独立して、水素またはC
1〜16ヒドロカルビル基であり、R
3およびR
4が、独立して、水素またはC
1〜16ヒドロカルビル基であり、ただし、R
1またはR
2のうちの少なくとも一方がメチルである。
エチレン生成のオレフィン阻害剤として有用な化合物の代表例としては、1−メチルシクロプロペン、1−ブテン、2−ブテン、およびイソブチレンが挙げられる。これらのうち、1−メチルシクロプロペン、または「1−MCP」が、特に有用であることが分かった。1−MCPが、α−シクロデキストリン、またはα−CDと組み合わされるとき、包接錯体の形成に適した分子サイズを有することが分かった。
実施形態において、1−MCPとのα−CDの包接錯体、または「1−MCP/c/α−CD」は、シクロデキストリンのモル当たり約0.10〜0.99モルのオレフィン阻害剤、またはシクロデキストリンのモル当たり約0.20〜0.95モルのオレフィン阻害剤、またはシクロデキストリンのモル当たり約0.30〜0.90モルのオレフィン阻害剤、またはシクロデキストリンのモル当たり約0.50〜0.90モルのオレフィン阻害剤、またはシクロデキストリンのモル当たり約0.50〜0.80モルのオレフィン阻害剤、またはシクロデキストリンのモル当たり約0.30〜0.70モルのオレフィン阻害剤、または上に列挙した値の範囲の任意の組合せ、例えば、シクロデキストリンのモル当たり約0.70〜0.80モルのオレフィン阻害剤、シクロデキストリンのモル当たり0.90〜0.95モルのオレフィン阻害剤、シクロデキストリンのモル当たり0.10〜0.20モルのオレフィン阻害剤などを含有する。
他の実施形態において、錯体化化合物は、抗菌性化合物である。シクロデキストリン(最も一般的にはβ−シクロデキストリンであるがこれに限定されない)とともに有用に錯体化される抗菌性化合物の例としては、二酸化塩素、エタノール、トリクロサン(5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)フェノール)、アミルフェノール、フェニルフェノール、カテキン、p−クレゾール、ハイドロキノン、ベンジル−4−クロロフェノール、短鎖アルキルパラベン、p−ヒドロキシ安息香酸の短鎖アルキルエステル、3,4,4’−トリクロロカルバニリド、安息香酸無水物、ソルビン酸無水物、オクタナール、ノナール、シス−2−ヘキセナールおよびトランス−2−ヘキセナール、2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジル、酢酸、プロパン酸、安息香酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、プロピオン酸、ソルビン酸、コハク酸、および酒石酸などの有機酸ならびにそれらの塩(ソルビン酸カルシウム、ソルビン酸カリウム、および安息香酸ナトリウムなど);ヘキサメチレンテトラミン、ケイ素第四級アンモニウム塩、リン酸、キトサンおよびキトオリゴ糖、コンニャクグルコマンナン、ナタマイシン、リューテリン(Reuterin)、アタシン、セクロピン、デフェンシン、およびマガイニンなどのペプチド;ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、フェノールブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、およびt−ブチルヒドロキノン(TBHQ)などの酸化防止剤;ババリシン(Bavaricin)、ブレビシン、カルノシン、イマザリル、ラクチシン、メセンテロシン(Mesenterocin)、ナイシン、ペジオシン、プロポリス、サカシン(Sakacin)、およびスブチリンなどのバクテリオシン;シトレート、コンアルブミン、EDTA、ラクトフェリン、およびポリホスフェートなどのキレート化剤;桂皮油、シトロン油、コリアンダー油、ユーカリ油、ラベンダー油、レモングラス油、ペパーミント油、エゴマ油、ローズマリー油、茶油(tea oil)、アジョワン油(Ajwain oil)、バジル油、キャラウェイ油、シトロネラ油、コリアンダー油、丁子油、フェヌグリーク油(Fenugreek oil)、ジンジャー油、からし油、オレガノ(オレガヌム)油、パプリカ油、およびタイム油などの精油;脂肪酸およびそのエステル(ここで、脂肪酸としては、ラウリン酸、パルミトレイン酸、およびモノラウリンが挙げられ、脂肪酸モノエステルとしては、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノカプレート、プロピレングリコールモノラウレート、およびプロピレングリコールモノカプレートが挙げられる);ベノミル、イマザリル、および二酸化硫黄などの殺真菌剤;メチル−(グルコカッパリン)、エチル−(グルコレピジイン)、プロピル−(グルコプトランジビン)、n−ブチル−(グルココクレアリン)、アリル−(シニグリン)、銅および銀などの金属;アリルイソチオシアネート(AIT)、ショウノウ、カルバクロール、シネオール、桂皮アルデヒド、シトラール、p−シメン、エストラゴール(メチルカビコール)、オイゲノール、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ヒノキチオール(β−ツヤプリシン)、リモネン、リナロール、p−メントン、メントール、ネラール、ペリルアルデヒド、α−ピネン、γ−テルピネン、テルピネオール、チモール、それらの2つ以上の混合物などが挙げられる。
他の実施形態において、錯体化化合物は、香料化合物である。有用に錯体化された香料化合物としては、アミルシアナミド、サリチル酸ベンジル、アミル桂皮アルデヒド、シトラール、ベンゾフェノン、セドロール、酢酸セドリル、ジヒドロイソジャスモネート(dihydroisojasmonate)、酸化ジフェニル、パチョリアルコール、ムスクケトンなどの化合物が挙げられるが、特定の低沸点精油および低級エステルなどの低沸点化合物も、実施形態に有用である。
さらに他の実施形態において、本発明の組成物は、1つまたは複数の香料化合物および1つまたは複数の抗菌性化合物を含む錯体化化合物の混合物を含む。さらに他の実施形態において、本発明の組成物は、オレフィン阻害剤および抗菌性化合物を含む錯体化化合物の混合物を含む。シクロデキストリン錯体の形成しやすさ、組成物の形成しやすさ、および1つまたは複数の基板上に組成物を配置することによる組成物の使用しやすさにより、このような混合された複数用途の組成物が、容易に想定され、目的とする用途に適した任意の比率で、当業者によって用いられる。
シクロデキストリン包接錯体を形成するのに用いられる方法が、公知であり、文献において見出される。典型的な方法は、包接錯体を形成するのに十分な期間にわたって、錯体化されるシクロデキストリンおよび化合物を水溶液中で混合するステップを含む。しかしながら、錯体化化合物としての1−MCPまたは他の低沸点オレフィン阻害剤の使用は、通常の周囲温度でガス(1−MCPは、12℃の沸点を有する)とともにシクロデキストリンを錯体化する必要性を考慮するために方法の調整を含む。本明細書において「1−MCP/c/α−CD」とも呼ばれるα−シクロデキストリンと1−MCPとの包接錯体が公知であり、それを形成する方法が、例えば、米国特許第6,017,849号明細書および同第6,548,448号明細書ならびにNeoh,et al.,J.Agric.Food Chem.2007,55,11020−11026に記載されている。一方法において、α−シクロデキストリンが、水に溶解され、1−MCPが、室温で所定の期間にわたって溶液中にバブリングされる。包接錯体は、それが形成されるにつれて溶液から沈殿するため、単純ろ過、続いて真空乾燥によって容易に単離される。その際、乾燥されたシクロデキストリン包接錯体は、使用可能な状態である。最小のヘッドスペースを有する乾燥容器中の貯蔵で十分である。
ある実施形態において、シクロデキストリン包接錯体が、シクロデキストリン誘導体とともに形成される。シクロデキストリン誘導体は、ある実施形態において、シクロデキストリン組成物への混和性を向上させるために、包接錯体を形成するのに用いられる。シクロデキストリン組成物の混和性を向上させるのに用いられるシクロデキストリン誘導体としては、米国特許第6,709,746号明細書またはCroft,A.P.and Bartsch,R.A.,Tetrahedron Vol.39,No.9,pp.1417−1474(1983)に記載されるシクロデキストリン誘導体の何れかが挙げられる。シクロデキストリン誘導体が、シクロデキストリン包接錯体を形成するのに用いられるある実施形態において、オレフィン阻害剤は、非水溶媒、例えば、1〜10個の炭素を有する炭化水素、1〜10個の炭素を有するアルコール、4〜10個の炭素を有する複素環式または芳香族溶媒中に導入される。あるこのような実施形態において、1つまたは複数の溶媒のブレンドが用いられる。他の実施形態において、包接錯体は、シクロデキストリン誘導体の官能化の前に形成される。このような実施形態において、技術を用い、例えば、官能化に用いられる化合物の1つの優先的な包接によって、包接錯体からのオレフィン阻害剤の移動を回避する官能基の化学作用を選択するように、官能化の間、注意しなければならない。
シクロデキストリン組成物は、シクロデキストリン包接錯体と疎水性担体との混合物である。担体は、低融点および高疎水性によって定義される。担体は、以下の基準を満たす化合物または化合物の混和性ブレンドである:
1.−20℃〜150℃で、10℃/分で、DSCによって測定される際、約23℃〜40℃の溶融転移開始;および
2.以下のうちの1つまたは複数:
a.ASTM D7334−08(ASTM International,W.Conshohocken,PA)に準拠して測定される、90°以上の、担体表面に対する水接触角;
b.25℃で1重量%未満の水への溶解度。
担体の溶融転移開始は、担体を、−20℃〜150℃の温度範囲に曝し、10℃/分で加熱することによって、DSCによって測定される際、約23℃〜40℃であり;ある実施形態において、溶融転移開始は、約23℃〜38℃、または約23℃〜36℃、または約23℃〜34℃、または約25℃〜38℃、または約25℃〜36℃、または約25℃〜35℃である。ある実施形態において、担体表面の水接触角は、約80°〜160°、または約90°〜120°である。担体は、25℃で1重量%未満、例えば、25℃で約0.0001重量%〜0.99重量%、または25℃で約0.001重量%〜0.90重量%、または25℃で約0.01重量%〜0.75重量%、または25℃で約0.01重量%〜0.50重量%、または25℃で約0.01重量%〜0.10重量%、または25℃で約0.0001重量%〜0.10重量%の水への溶解度を有する。
ある実施形態において、担体は、100℃の温度で30mm2/秒未満の動粘度、例えば、100℃で1cP〜30cP、または90℃で1cP〜30cPの動的粘度を有する。
ある実施形態において、担体は、少なくとも50モル%の炭化水素またはジメチルシロキサンである化学構造を有する少なくとも1つの化合物または化合物のブレンドを含む。ある実施形態において、担体は、少なくとも50モル%の炭化水素またはジメチルシロキサンである化学構造を有する化合物または化合物のブレンドから本質的になる。様々な実施形態において、炭化水素化合物としては、アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル部分、またはそれらの混合物;直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状部分、またはそれらの混合物;脂肪族、もしくは芳香族部分、またはそれらの混合物が挙げられ;実施形態において、炭化水素化合物は、2つ以上のこのような炭化水素化合物のブレンドである。「ジメチルシロキサン」は、
からなる繰返し単位を意味する。
様々な実施形態において、ジメチルシロキサンは、直鎖状もしくは環状化合物またはそれらのブレンドであり、上に示される構造中のnが、少なくとも3である。ジメチルシロキサンが直鎖状である場合、鎖末端は、水素、ヒドロキシル、アルキル、アリール、またはアルカリールである。実施形態において、化学構造は、約50モル%〜100モル%の炭化水素またはジメチルシロキサン、または約60モル%〜99モル%の炭化水素またはジメチルシロキサン、または約70モル%〜98モル%の炭化水素またはジメチルシロキサン、または約80モル%〜95モル%の炭化水素またはジメチルシロキサン、または約90モル%〜99モル%の炭化水素またはジメチルシロキサンである。ある実施形態において、担体は、少なくとも50モル%の炭化水素である化学構造を有する少なくとも1つの化合物または化合物のブレンドを含む。ある実施形態において、担体は、50モル%〜100モル%の炭化水素、または約60モル%〜99モル%の炭化水素、または約70モル%〜98モル%の炭化水素、または約80モル%〜95モル%の炭化水素、または約90モル%〜99モル%の炭化水素、または約95モル%〜99モル%の炭化水素、または約98モル%〜100モル%の炭化水素である化学構造を有する化合物または化合物のブレンドから本質的になる。
ある実施形態において、好適な担体は、ペトロラタムを含むか、またはペトロラタムから本質的になる。ペトロラタム(Merkur;ミネラルゼリー;石油ゼリー;CAS No.[8009−03−8];EINECS No.232−373−2)は、一般式CnH2n+2で表される半固体飽和炭化水素の精製された混合物であり、石油源から得られる。炭化水素は、分枝鎖および非分枝鎖から主になるが、アルキル側鎖とともにいくつかの環状アルカンおよび芳香族分子も存在してもよい。ペトロラタムは、石油の蒸気蒸留または真空蒸留の後に残る半固体残留物から製造される。この残留物は、脱ろうされ、および/または軽質留分とともに、他の源からの原料と混合されて、所望の稠度を有する生成物が得られる。最終的な精製は、通常、高圧の水素化または硫酸処理、続いて、吸着剤によるろ過の組合せによって行われる。好適な酸化防止剤が、場合によっては加えられる。
ペトロラタムのレオロジー特性は、混合物の分枝鎖および環状成分に対する非分枝鎖の比率によって決定される。ペトロラタムは、パラフィンと対照的に比較的多い量の分枝鎖状および環状炭化水素を含み、これは、そのより柔らかい性質を説明する。レオロジー法および分光光度法の両方によって、ペトロラタムが、混合物中の化合物の特定のブレンドに応じて、23℃〜40℃で溶融相転移開始を起こすことが示された。ペトロラタムは混合物であるため、相転移は、広い範囲にわたって、多くの場合、約25℃〜65℃、または約30℃〜60℃、または約35℃〜60℃で起こる。実施形態において、ペトロラタムは、100dmm超かつ275dmm未満の円錐貫入を有する(ASTM D937)。
動物試験により、ペトロラタムは、皮下および経口投与の両方で非毒性および非発がん性であることが示された。ペトロラタムは、GRAS材料であり、米国食品医薬品局の非活性成分ガイド(the U.S.FDA Inactive Ingredients Guide)に含まれ、世界中の多くの国で食品用途への使用が承認されている。
ある実施形態において、好適な担体は、植物性物質に由来するペトロラタムのような材料を含むかまたはそれから本質的になる。このような材料は、例えば、米国特許第7,842,746号明細書に記載されている。植物由来のペトロラタムのような材料は、水素化された吸込油または水素化された共重合油などの水素化された重合植物油から作製される。ペトロラタムのような材料は、目的とする範囲の特性を有するように配合され、したがって、単独でまたは1つまたは複数のさらなる成分とのブレンドで、約23℃〜40℃の溶融転移開始、ならびにASTM D7334−08に準拠して測定される際、90°以上の表面に対する水接触角、および/または25℃で1重量%未満の水への溶解度を有するように好適に配合される。
ある実施形態において、担体は、親水性化合物の実質的な非存在によって特徴付けられ、ここで、「実質的な」は、この文脈において、任意の親水性化合物の存在が、担体の水接触角を90°未満に低下させるほど十分でないこと、または任意の親水性化合物の存在が、25℃で1重量%超に担体の水溶性を増加させるほど十分でないことを意味する。他の実施形態において、担体は、親水性化合物の実質的な非存在によって特徴付けられる。「親水性化合物」の性質および化学構造は、特に限定されないが、担体に加えられると、担体の水接触角を減少させるか、または担体の水溶性を高めるか、またはその両方である任意の化合物を含む。界面活性剤、保湿剤、超吸収剤などが、ある実施形態において、例えば、基板との適合性を高めるため、処理中に担体から水を捕捉するため、またはある他の目的のために、担体に加えられる親水性化合物の例である。
実施形態において、担体に含まれる成分は、ろう、ポリマー、核形成剤、油、溶媒、水捕捉剤、乾燥剤、接着促進剤、防汚剤、熱安定剤もしくは酸化安定剤、着色剤、補助剤、可塑剤、架橋剤、またはそれらの2つ以上である。成分の性質は、一般に限定されず、シクロデキストリン組成物および処理基板の特定の最終用途によって、さらには、上述される担体特性の限度の範囲内で、決定される。
ある実施形態において、ろうが、担体に用いられる。ろうは、40℃超、例えば、約40℃〜200℃、または約50℃〜170℃、または約60℃〜150℃、または約70℃〜120℃の融点、または溶融転移開始を有する疎水性化合物である。疎水性は、25℃で1重量%未満の水への溶解度を有することを意味する。好適なろうとしては、パラフィンろう、動物ろう、植物ろう、鉱ろう、合成ろう、ヤマモモろう、蜜ろう、微結晶ろう、ステアリルジメチコン、ステアリルトリメチコン、エチレン−α−オレフィンコポリマー、C18〜C45オレフィン、およびエチレンまたはプロピレンオリゴマーおよび短鎖ホモポリマーならびにそれらのコポリマーが挙げられる。ある実施形態において、ろうは、シクロデキストリン組成物が、例えば混合のためまたはそれを基板上にコーティングするために加熱される場合、冷却した際に担体の固化「硬化時間」を改善する核形成剤である。核形成剤は、固体ろう中の高い密度(0.95g/cm3超)および高い結晶含量を誘発するために、フィッシャー・トロプシュ触媒または他の特殊な触媒を用いて重合される、エチレン、プロピレン、またはその両方の短鎖ポリオレフィンろうを含む。
ある実施形態において、油が、担体に含まれる。油は、25℃で液体である疎水性化合物である。疎水性は、25℃で1重量%未満の水への溶解度を有することを意味する。ある実施形態において、油は、炭化水素またはシリコーン油であり;他の実施形態において、油は、ピーナッツ油、くるみ油、キャノーラ油、アマニ油などの植物油である。ある実施形態において、油は、「乾性油」であり、すなわち、油は、雰囲気中で酸素と反応して、架橋を形成する。実施形態において、1つまたは複数の油が、担体の重量の約0.1重量%〜50重量%、または担体の重量の約0.5重量%〜25重量%、または担体の重量の約1重量%〜10重量%で、担体に加えられる。
ある実施形態において、ポリマー、ろう、ペトロラタム、および油のうちの1つまたは複数の組合せが、1つまたは複数のさらなる成分とともに、上述される溶融転移開始および疎水性の基準を満たす担体を形成するのに用いられる。ある実施形態において、ろうと油、ペトロラタムとろう、ペトロラタムと油、またはろうとペトロラタムと油との組合せが、上述される溶融転移開始および疎水性の基準を満たす担体を形成するのに有利に用いられる。他の実施形態において、ろうまたはペトロラタムが、単独で、上述される溶融転移開始および疎水性の基準を満たす。
ある実施形態において、水捕捉剤が、担体に含まれる。水捕捉剤は、担体に溶解可能または分散可能である化合物であり、それが、基板への組成物の混合および適用を含む標準的な処理条件中に空気中の湿気から周囲水分を捕捉するように有効に働くように水分子と優先的に反応するように利用可能である。加えられる水捕捉剤の量は、処理中に周囲水分と反応する最小量であるべきである。これは、シクロデキストリン組成物のある意図される使用の際、環境中への錯体化化合物の放出を促進するのに水が必要とされるためである。したがって、かなりの量の水蒸気または液体水と接触すると短時間でなくなる水捕捉剤の量がシクロデキストリン組成物中に提供されるべきである。本発明のシクロデキストリン組成物に好適に用いられる水捕捉剤の例としては、様々なオルトエステルおよびヘキサメチルジシラザンが挙げられる。実施形態において、シクロデキストリン組成物の総重量を基準にして約1重量%以下、例えば、担体の約0.01重量%〜1重量%または担体の約0.05重量%〜0.5重量%の水捕捉剤が、担体に加えられる。
ある実施形態において、乾燥剤が、担体に用いられる。他の実施形態において、乾燥剤は、処理基板とともに他の箇所に用いられる。例えば、シクロデキストリン包接錯体が1−MCP/c/α−CDである、ある実施形態において、乾燥剤は、呼吸している農産物材料が、1−MCPの放出に必要とされる所望の量を超える水を生成することが予測される封入された容積の内部から水を捕捉するのに有用である。ある実施形態において、「過剰な水」は、100%の相対湿度を超え、液体水が封入された容積内で凝結されるほど十分な水蒸気を意味する。過剰な水の影響が、以下により詳細に記載される。乾燥剤も、ある実施形態において、処理容器の内部に直接、またはシクロデキストリン組成物自体と別個に処理積層体に加えられるが;ある実施形態において、乾燥剤は、便宜上および/または効率のために、担体に直接加えられる。好適に用いられる乾燥剤の例としては、シリカゲル、活性炭、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、モンモリロナイト粘土、および分子篩が挙げられる。担体内に組み込まれる乾燥剤の量は特に限定されず、特定の最終用途、すなわち、最終用途において予測される周囲の湿気または液体水の量、用途が、封入された容積、部分的に封入された容積、または封入されない容積の何れを必要とするかなどに基づいて選択される。一般に、乾燥剤の量は、シクロデキストリン組成物の総重量を基準にして約0.001重量%〜99重量%、またはシクロデキストリン組成物の総重量を基準にして約0.1重量%〜50重量%、またはシクロデキストリン組成物の総重量を基準にして約1重量%〜10重量%であるように選択される。
実施形態において、シクロデキストリン組成物は、担体をシクロデキストリン包接錯体と混合することによって形成される。あるこのような実施形態において、混合は、高温で行われ、この文脈において、高温は、20℃を超える温度を意味する。あるこのような実施形態において、混合は、乾燥条件下で行われる。この文脈において、「乾燥」は、担体、ならびにシクロデキストリン組成物の処理および形成中に担体を取り囲む任意の気体環境が、250ppm未満の水、例えば、約0.01ppm〜250ppmの水、または約0.1ppm〜200ppmの水、または約1〜100ppmの水を有することを意味する。ある実施形態において、気体環境は、当業者によって理解されるように、乾燥気体環境の提供しやすさにより、担体より少ない水を有する。ある実施形態において、高温および乾燥条件の両方が用いられる。混合に用いられる高温は、包接錯体が1−MCP/c/α−CDである場合、90℃未満であるが、これは、90℃が、包接錯体からの1−MCPの損失を引き起こす開始温度であるためである。1−MCPが錯体化化合物でないある実施形態において、すなわち、錯体化化合物が、香料または抗菌性化合物または一連の化合物である場合、90℃を超える温度が用いられる。高温は、担体のより低い粘度により、混合しやすさを提供するのに用いられる。1−MCP/c/α−CDの場合、混合は、20℃〜90℃、または約30℃〜80℃、または約40℃〜75℃、または約60℃〜75℃で行われる。
実施形態において、乾燥条件が、担体およびシクロデキストリン組成物の混合中の周囲環境の両方に関連して用いられる。周囲環境は、様々な実施形態において、空気、窒素、アルゴン、CO2、または選択される任意の他のガスを含み、吸着された水が、例えば、容器表面に存在したままである限り、部分的真空を含む。ある実施形態において、20℃で担体中に存在する水の量は、約10〜50ppmの自由水(捕捉剤または乾燥剤によって取り込まれない水)、または30℃で約10ppm〜80ppmの自由水、または50℃で約10ppm〜200ppmの自由水である。ある実施形態において、周囲の気体環境は、20℃で約4ppm〜17ppmの水、または30℃で約7ppm〜30ppmの水、または40℃で約10ppm〜45ppmの水、または50℃で約15ppm〜70ppmの水を含む。
実施形態において、シクロデキストリン組成物に用いられるシクロデキストリン包接錯体の量は、組成物の約0.001重量%〜25重量%、または組成物の約0.01重量%〜10重量%、または組成物の約0.05重量%〜5重量%である。特定の配合物に含まれるシクロデキストリン包接錯体の量は、担体の、水に対する透過性、担体の、錯体化化合物に対する透過性、および処理基板が処理積層体である場合、第2の基板の存在とともに、周囲環境の体積およびその環境において望ましい錯体化化合物の濃度に基づいて選択される。この選択に情報を与える基準が、以下により詳細に記載される。
処理基板が処理積層体である、ある実施形態において、第1または第2の基板の一方または両方は、1つまたは複数の乾燥剤を含む。あるこのような実施形態において、乾燥剤は、1つまたは複数の基板に埋め込まれるか、または1つまたは複数の基板に接着される。あるこのような実施形態において、第1または第2の基板の一方が、ライナー、すなわち、取外し可能な(removal)基板であり;あるこのような実施形態において、乾燥剤は、貯蔵および/または輸送の際に水を排除するために、ライナーとともに用いられる。ライナーは、処理基板がその使用の目的地に到着した際に取り外され、その際、大気中水分が、シクロデキストリン錯体中に存在する錯体化化合物の放出を引き起こすように利用可能である。乾燥剤は、ライナーが処理基板から取り外されるとき、それが実質的にライナーに取り付けられたままであるように、ライナーに取り付けられる。
本発明の処理基板を形成するのに有用に用いられる基板は、その表面の少なくとも一部にシクロデキストリン組成物を配置するのに適した任意の基板を含む。ある実施形態において、基板表面は、プレート、フィルム、またはシートの表面であり、したがって、実質的に平面であり、連続的な工業的コーティング作業によく適している。他の実施形態において、シクロデキストリン組成物は、非平面基板表面または不規則な基板表面上に配置されて、処理基板が形成される。ある実施形態において、基板は容器である。好適な基板としては、セルロースならびに他の天然および合成バイオマス由来の基板、ならびに合成の石油系熱可塑性ポリマーフィルム、シート、繊維、あるいは織布、フェルト生地、または不織布、ならびにそれらの1つまたは複数を含む複合材料が挙げられる。処理容器および処理積層体を含む処理基板を形成するのに有用に用いられる基板のいくつかの例としては、紙、板紙、厚紙、段ボール紙などのカートン用板紙、押出された被覆紙または厚紙などの被覆紙または厚紙、チップボード、不織布、フェルト生地、または織布、木材、ネット、木材/熱可塑性複合材、ガラス、金属、ポリ(塩化ビニル)(可塑化および非可塑化)などのポリビニルハロゲン化物およびそのコポリマー;ポリ塩化ビニリデンなどのポリビニリデンハロゲン化物およびそのコポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、そのコポリマー、およびLLDPE、LDPE、HDPE、UHMWPE、メタロセン重合されたポリプロピレンなどを含むそれらの形態学的変化形;ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリ乳酸(PLA)などのポリエステルおよびそれらの可塑化された形態;ポリスチレンおよびHIPSを含むそのコポリマー;ポリビニルアルコールおよびそのコポリマー;エチレンと酢酸ビニルとのコポリマーなどが挙げられる。ブレンド、合金、複合体、それらの架橋された形態、およびそれの再利用された形態も、様々な実施形態に有用である。このような基板の2つ以上の層が、ある実施形態において、多層フィルムまたはカートン構造として存在する。ある実施形態において、基板は、実質的に連続している。ある実施形態において、基板は、透過性、多孔質、微孔質、有孔、メッシュ、発泡(連続気泡または独立気泡)不織布であるか、またはネットである。
基板は、ある実施形態において、1つまたは複数の充填剤、安定剤、着色剤などを含有する。ある実施形態において、基板は、上に1つまたは複数の表面コーティングを有する。ある実施形態において、基板は、シクロデキストリン組成物をコーティングする前に、上に表面コーティングを有する。表面コーティングとしては、ろう、アクリルポリマー、酢酸ビニル/エチレンコポリマーおよびエチレン/塩化ビニルコポリマーコーティングなどの保護コーティング;表面を印刷可能にするコーティング;本来は透過性の基板を不透過性にするコーティング;接着剤コーティング;プライマー;タイ層(tie layer)コーティング;金属化または反射コーティングなどが挙げられる。表面コーティングのタイプおよび機能は、本開示の範囲内で特に限定されず;同様に、表面コーティングが適用される方法は、特に限定されない。表面コーティングが農産物パッケージ内の封入されたまたは部分的に封入された容積に曝される様々な実施形態において、その後、表面コーティングは、シクロデキストリン組成物で被覆される。
ある実施形態において、基板は、農産物の輸送用の、ポリエチレンが押出しコーティングされた再利用可能な板紙、段ボール紙、またはカートン用板紙包装である。印刷される板紙または段ボール紙包装は、バルクビン(bulk bin)から特殊なディスプレイカートンに及ぶ。押出しコーティングされた表面により、上にシクロデキストリン組成物を配置する場が与えられる。
ある実施形態において、基板は、シクロデキストリン組成物を上に配置する前にプラズマ処理またはコロナ処理を用いて前処理される。このような表面処理は、当業界で周知であり、当業界において、基板の表面エネルギーを調節するのに、例えば、基板の表面へのコーティングまたは印刷される材料の湿潤または接着性を向上させるのに用いられることが多い。このような表面処理は、ある実施形態において、基板へのシクロデキストリン組成物の湿潤または接着性を向上させるのに、同様に有用である。
ある実施形態において、基板は、シクロデキストリン組成物を上に配置する前に、プライマーで処理される。あるこのような実施形態において、基板として使用される熱可塑性樹脂のフィルムおよびシートが、プライマーが既に予めコーティングされた状態で入手または購入され;様々なこのようなフィルムおよびシートが、当業界において入手可能であり、それに対する様々なタイプのコーティングの接着性を向上させることを目的としている。ある実施形態において、そのままのフィルムまたはシートに、プライマーが「インラインで(in line)」コーティングされる。多くのこのようなコーティングおよび技術が利用可能であり、当業者は、プライマーコーティングが、各用途に合わせておよびその上に配置される組成物に合わせて最適化されることを理解するであろう。基板表面とシクロデキストリン組成物との間に好適に配置されるプライマー組成物のいくつかの例としては、ポリエチレンイミンポリマー、例えば、ポリエチレンイミン、アルキルが1〜12個の炭素原子を有するアルキル変性ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン尿素)、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、およびポリアミンポリアミドのエピクロロヒドリン付加物、アクリル酸エステルポリマー、例えば、アクリルアミド/アクリル酸エステルコポリマー、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸エステルコポリマー、ポリアクリルアミド誘導体、オキサゾリン基を含有するアクリル酸エステルポリマー、およびポリ(アクリル酸エステル)が挙げられる。実施形態において、プライマー組成物は、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、またはそれらの混合物である。
材料を処理するまたは「下塗りする」ための代替的な方法は、コロナまたは大気圧プラズマの何れかを用いたグロー放電によるものである。両方の方法は、通常、空気雰囲気中で使用されるが、他のガスまたはガス混合物も使用可能であり、以下に限定はされないが、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、アンモニア、水蒸気などを含み得る。グロー放電処理は、汚染物質の除去により材料表面を「清浄化」し、表面に極性部分を形成する能力を有する。ある実施形態において、このような処理は、表面に配置された材料の接着性、配置されたコーティングの均一性、またはその両方を促進する。コロナおよびプラズマ系の例は、Enercon Industries(www.enerconind.com)、Vetaphone(www.vetaphone.com)、およびPlasmatreat(www.plasmatreat.com)から入手可能なものである。コロナおよびプラズマ処理の利点は、a)基板に別の化学薬品を加える必要がないこと、b)基板の乾燥または後硬化の必要がないこと、c)グロー放電が、ガス利用効率により非常に効率的なプロセスであること、およびd)このようなプロセスが、製品、労働および環境上の安全性に関する持続可能性のガイドラインに十分に整合していることを含む。
シクロデキストリン組成物がオレフィン阻害剤を含むある実施形態において、基板は、農産物を、封入された空間、部分的に封入された空間、または封入されない空間内に保持するのに適した容器へと形成されるシートまたはフィルムである。他の実施形態において、基板は、それ以外は未処理の容器中に挿入するために、クーポン、ストリップ、タブなどに変形されるシートまたはフィルムである。さらに他の実施形態において、基板は処理積層体である。ある実施形態において、処理積層体は、その第1の側でオレフィン阻害剤に対して透過性であり、その第2の側でオレフィン阻害剤に対して不透過性である。ある実施形態において、基板は、その少なくとも第1の側で水に対して透過性である処理積層体である。ある実施形態において、クーポン、ストリップ、タブなどは、農産物または容器に接着により適用されるラベルである。あるこのような実施形態において、クーポン、ストリップ、タブなどは、1つまたは複数の印がさらに印刷されたラベルである。シクロデキストリン組成物は、様々な実施形態において、農産物に直接または間接的に曝される任意の表面上に存在し;暴露は、封入された空間、部分的に封入された空間、または封入されない環境内で行われる。当業者は、シクロデキストリン組成物中のシクロデキストリン包接錯体の量、担体の組成、および農産物の近傍に配置されるシクロデキストリン組成物の量が、用いられる基板、農産物の種類、農産物を取り囲む環境の、封入されるか封入されない性質、ならびに予測される温度および使用中に接触される水蒸気の量に応じて変化されることを理解するであろう。
シクロデキストリン組成物がオレフィン阻害剤を含むある実施形態において、シクロデキストリン組成物は、例えば、連続もしくは非連続コーティングとして、または接着剤の一部としてまたは印刷もしくは反転印刷された農産物ラベルにおける印刷文字において、農産物に直接配置される。このような実施形態において、コーティングまたはラベルの全てまたは一部が、シクロデキストリン組成物を含有する。
ある実施形態において、処理基板は、パーソナルケア製品内に組み込まれる。例えば、香料化合物または抗菌性化合物のシクロデキストリン包接錯体を有するシクロデキストリン組成物を用いて、処理繊維を形成する。処理繊維は、不織シート中に組み込まれ、次に、これが、雑巾(wipe)、おむつ、生理用品などへと形成される。別の例において、香料化合物のシクロデキストリン包接錯体を有するシクロデキストリン組成物を用いて、処理積層体を形成する。処理積層体は、テープ物品中に組み込まれる。このようなテープ物品は、例えば、個人用衛生用品に有用である。ある実施形態において、積層体を形成するのに用いられる基板の1つは、取外し可能なライナーである。ライナーを取り外すと、香料がゆっくりと放出される。このような取外し可能なライナーテープ物品は、例えば、壁、または猫のトイレ、またはおむつバケツの近くに取り付けるための家庭用香料の放出に有用である。ある実施形態において、ライナーは、取外しを順次行うことができるように区分されており、または最終消費者の好みに応じて、2つ以上の部分が一度に取り外される。
最終消費者が、シクロデキストリン組成物からの選択された錯体化化合物の放出の開始を引き起こすとき、低温のため、物品を形成するのに用いられる乾燥条件、抗菌性または香料特性の高収率が、処理基板において保持される。同様に、1−MCPまたは別のオレフィン阻害剤の場合、オレフィン阻害剤の高収率が、処理の後、処理基板において保持される。
実施形態において、処理基板上のシクロデキストリン錯体の収率は、担体に加えられるシクロデキストリン錯体の重量の少なくとも95重量%、例えば、担体に加えられるシクロデキストリン錯体の約95重量%〜100%、または約96重量%〜99.99重量%、または約97重量%〜99.9重量%、または約98重量%〜99重量%、または約98重量%〜100%、または約98重量%〜99.99重量%、または約99重量%〜99.9重量%、または約99重量%〜99.99重量%である。正確な収率パーセントは、錯体化化合物の揮発性、および担体中および周囲環境中の両方において、処理中に存在する水の量を含む、シクロデキストリン包接錯体の固有の平衡に対する処理の温度に左右される。
処理積層体は、第1の基板の第1の主面と第2の基板の第2の主面との間に配置されたシクロデキストリン組成物を有する構造を含む。第2の基板は、第1の基板と同じかまたは異なる。あるこのような実施形態において、第1または第2の基板は、容器を形成する基板である。このような実施形態において、シクロデキストリン組成物は、一般に、例えば、処理容器の内部、または農産物、または他の物品と直接接触せず;すなわち、シクロデキストリン組成物は、実質的に第1の基板と第2の基板との間に配置される。シクロデキストリン組成物がオレフィン阻害剤を含むある実施形態において、第1および第2の基板のうちの少なくとも一方が、水に対して透過性であり、第1および第2の基板のうちの少なくとも一方が、オレフィン阻害剤に対して透過性である。あるこのような実施形態において、第1の基板は、オレフィン阻害剤に対して透過性であり、第2の基板は、オレフィン阻害剤に対して不透過性である。あるこのような実施形態において、第1の基板は、水蒸気に対して透過性であり、第2の基板は、水蒸気に対して不透過性である。あるこのような実施形態において、第2の基板は、水蒸気に対して透過性であり、第1の基板は、水蒸気に対して不透過性である。
3.処理基板を作製する方法
ある実施形態において、シクロデキストリン組成物は、コーティング技術によって基板の表面上に配置される。コーティングは、当業界において利用可能ないくつかの公知のコーティング技術を用いて行われる。ある実施形態において、コーティングは、高温を用いずに、すなわち、処理施設の周囲温度を用いて行われる。他の実施形態において、配置中の温度は、約20℃〜90℃、または約40℃〜80℃である。ある実施形態において、コーティングは、乾燥条件下で、上記の乾燥条件と同じかまたはほぼ同様の条件を用いて行われる。
シクロデキストリン組成物をコーティングするのに用いられる有用なコーティング技術としては、例えば、ダイコーティング、スロットコーティング、カーテンコーティング、フラッドコーティング、ギャップコーティング、ノッチバーコーティング、ラップド・ワイヤ・バー・ドローダウン(wrapped wire bar drawdown)コーティング、浸漬コーティング、ブラシコーティング、スプレーコーティング、輪転グラビアコーティングなどのパターンコーティング、ならびにフレキソ印刷、インクジェット印刷、リソグラフィー印刷技術、レターセット印刷、およびスクリーン印刷などの印刷技術を用いる印刷コーティングが挙げられる。シクロデキストリン組成物の粘度、基板または農産物の形状および組成、ならびに表面の全体をコーティングするか一部をコーティングするかの要望によって、公知のコーティング技術のうちのどれが、シクロデキストリン組成物をコーティングするのに有用であるかが決定される。例えば、ダイコーティング、スロットコーティング、ノッチバーコーティングなどが、基板の実質的に平面のウェブの全体をコーティングするのに有用に用いられる一方、表面の一部のみがコーティングされるか、または形成される容器または農産物へのコーティングが望ましい実施形態において、1つまたは複数のスプレー、浸漬、または印刷コーティング技術が用いられるのが望ましい。基板の特定の部分がコーティングされるか、またはパターニングされたコーティングが望ましいある実施形態において、印刷コーティングまたは輪転グラビアコーティングが使用されるのが望ましい。
本発明者らは、フレキソ印刷技術が、非常に正確で再現性のある量のシクロデキストリン組成物を基板に送達するために、シクロデキストリン組成物とともに使用するのに特によく適していることを見出した。基板が、シートまたはフィルムである場合、高いコスト効率が、シクロデキストリン組成物の大規模な連続フレキソ印刷を用いて実現される。シクロデキストリン組成物に用いられる担体のレオロジープロファイルは、意外にも、この生成方法により適しており;選択される担体材料の疎水性が、錯体化化合物の早期喪失をもたらす周囲水蒸気からシクロデキストリン包接錯体を保護する。錯体化化合物が1−MCPである場合、早期喪失の防止は、大量生産に非常に重要である。これは、潜在的に、大量生産の場合のように、大量の1−MCPが放出される場合、自家重合の危険性が最大になるためである。1−MCPの自家重合は、激しい爆発反応であることが知られているため、回避されなければならない。さらに、1−MCP/c/α−CDからの1−MCPの喪失の開始温度が90℃であることが確立されている。したがって、乾燥条件下および90℃未満の温度で1−MCP/c/α−CDを含有するシクロデキストリン組成物をコーティングする(印刷する)能力は、大量生産のための安全な手段を提供する。他の錯体化化合物は、放出の特徴的な開始温度を有し、本発明のシクロデキストリン組成物の形成および印刷の両方に用いられる低温が、意図した用途に使用するための意図した基板に、無傷のシクロデキストリン包接錯体の最大収率を提供する観点から有利である。フレキソ印刷は、非常に正確で再現性のある量のシクロデキストリン組成物を基板に提供する能力も与え、制御放出についての最大効率が得られる。錯体化化合物が1−MCPである場合、これは、農産物の中および農産物の周りの1−MCPのより一貫した分配をさらに意味し、それにより、農産物の一貫した保存が得られる。1−MCPの分配の一貫性は、この手法を用いて容易に解決される、当業界において認識された課題である。最後に、本発明者らは、この手法に用いられる疎水性担体が、使用中および水蒸気もしくは液体水またはその両方の存在下における錯体化化合物の予測可能な、再現性のある、一貫した速度の放出を提供することを見出した。さらに、錯体化化合物が1−MCPである場合、一貫性は、農産物の分類の範囲内での一貫していない1−MCPの分配の公知の課題を解決するのに重要であり、先行技術の手法を用いる際、容器内のある農産物は、十分な量の1−MCPを受け入れ、したがって十分に保存されるようであり、ある農産物は、不十分な量の1−MCPを受け入れるかまたは1−MCPを全く受け入れないようである。
フレキソ印刷は、液体インクが版と呼ばれる弾性表面に適用される凸版印刷の一形態であり、版の上で、像が3Dポジ型レリーフとして表面の残りの部分の上に隆起される。フレキソ印刷は、一連のシリンダ、またはロールを用いて、インクを基板に転写するウェブに基づく連続プロセスである。典型的なフレキソ印刷プロセスにおいて、フレキソ印刷インクが、アニロックスロールと呼ばれるインク計量供給シリンダを介して、シリンダ、またはロールに取り付けられたフレキソ印刷版の隆起部分に均一な層で適用され、次に、インクは、一連のロールを介して、フレキソ印刷版から連続して移動する基板上に転写される。通常用いられるインクは、溶剤型インクなど、速乾性であるか、または放射線硬化性である。
フレキソ印刷は、連続プロセスにおいて包装フィルムまたはシートなどの基板にグラフィック画像またはラベルを適用するのに最も一般的に使用され、フィルムまたはシートの変形は、印刷の後に行われる。広範囲の基板が、フレキソ印刷において好都合におよび容易に取り扱われる。一般的に取り扱われる基板の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、およびナイロンフィルムなどの広範囲の熱可塑性フィルム、箔、被覆紙および非被覆紙、板紙、および段ボールが挙げられる。場合によっては、不織ウェブでさえ、フレキソ印刷技術を用いて印刷される。使用の容易さにより、フレキソ印刷は、多くの包装およびラベル付け用途のための理想的な印刷方法である。
フレキソ印刷の別の特徴は、この技術が、それ自体で、多層の適用に役立つことである。例えばフレキソ印刷版につき、1色のみが適用され得る一方、1回でフルカラー画像を形成するために、3つ、4つ、またはそれ以上の版印刷の組合せが、連続して、フレキソ印刷ラインに容易に組み込まれる。さらに、保護のために、UV硬化性クリアコートなどの、積層される上部フィルム層または印刷される上部層の適用が、フレキソ印刷作業内に容易に組み込まれる。フレキソ印刷プロセスに容易に組み込まれる一積層手法は、第1のフレキソ印刷される基板へのUV硬化性接着剤の適用、続いて、接着剤への透明の第2の基板の適用および第2の基板を通したUV透過によって行われる接着剤の硬化を含む。あるこのような実施形態において、接着剤の適用も、フレキソ印刷プロセスによって行われる。
さらに、フレキソ印刷版を作製するのに用いられる技術は、それ自体で、反復パターンまたは連続パターンで基板に正確な量の材料を容易に提供するのに役立つ。さらに、フレキソ印刷は、高い精度で、最高で約2000フィート/分または約600メートル/分の非常に高速で行われる。最後に、フレキソ印刷版層を除去するのにレーザー画像形成を用いたデジタルダイレクト刷版エングレービング(direct−to−plate engraving)が、刷版形成の従来のフォトポリマー画像形成方法を用いて利用できるより高い耐久性の材料の使用を可能にし、これは、刷版の寿命を大幅に延長することによって、大規模なフレキソ印刷プロセスの既に経済的に好ましいプロファイルをさらに改善する。レーザー画像形成方法は、フォトポリマー画像形成方法の、何万分の1インチ(tenths of thousandths of an inch)単位で測定される厳しい公差(tolerance)を保持し;これらの公差は、高品質の、精密なフレキソ印刷に必要である。
フレキソ印刷産業において使用される冷却ロールは、インクが基板に転写された後、ウェブの冷却を提供する。このような実施形態において、印刷の後、ウェブは、冷却ロールを通過され、冷却ロールとの接触が、印刷側と反対側の主面でなされる。ウェブの冷却は、インクのにじみを遅らせ、次に印刷される層の適切な位置合わせを確実にするために、次の印刷場所の前にウェブ温度を低下させるのに役立つ。溶媒を除去するために加えられるかまたはインクのUV硬化によって生成されるかにかかわらず、熱が、高速の連続運転中に消散する時間が不十分である操作においてこれは特に重要である。
フレキソ印刷産業は、印刷プレス幅によって区別される2つの分野、すなわち、可撓性包装、サック、プレプリント(pre−print)および使い捨て商品などの用途に対応する、幅が約470mmを超えるワイドウェブプレス;ならびにより短い作業および感圧ラベル、板紙カートン、段ボール包装、およびナローウェブ可撓性包装などのナローウェブ用途の両方に使用される、幅が470mm未満のナローウェブプレスに分けられる。
上の項に列挙される基板の何れも、フレキソ印刷作業において好適に取り扱われるが、フレキソ印刷用途において一般的かつ好都合に取り扱われる1つの分野は、可撓性包装である。可撓性包装は、10ミリメートル以下の基板から形成され、基板の形状が容易に変化される。一般的な可撓性包装基板としては、例えば、ポリオレフィンおよびポリエステルフィルムが挙げられ、ここで、印刷は、ウェブがロール源から巻き出されるにつれて、実質的に平面のウェブの一方または両方の主面において行われる。例えばコードのラベル付けを含む、可撓性包装の印刷およびラベル付けの大部分が、フレキソ印刷プロセスを用いて行われる。業界における、剛性包装から可撓性包装への移行も、新鮮な農産物、スナック食品、薬剤、外科用の製品および医療用品、ペットフード、農産物、および工業用薬品のための包装材料のフレキソ印刷およびラベル付けの使用を増加させている。
シクロデキストリン組成物は、フレキソ印刷プロセスを用いて印刷され得る任意の基板に好適に適用される。シクロデキストリン組成物に用いられる担体が、100℃で30mm2/秒未満の動粘度を有するため、フレキソ印刷は、シクロデキストリン組成物を、90℃以下、例えば、約60℃〜80℃、または約50℃〜70℃の温度に加熱することによって好適に行われる。これらの温度で、本発明者らは、シクロデキストリン組成物が、高い線速度を含む標準的なフレキソ印刷条件を用いて、きれいにかつ正確に印刷することを見出した。例えば、90℃未満の温度でシクロデキストリン組成物のフレキソ印刷を用いて達成可能な線速度は、約10メートル/分(m/分)〜600m/分である。実施形態において、最低線速度は、約30m/分、または約40m/分、または約50m/分、または約60m/分、または約75m/分、または約100m/分、または約150m/分、または約200m/分、または約250m/分、または約300m/分、または約400m/分であり、最高線速度は、任意の選択された実施形態において約600m/分である。
さらに、シクロデキストリン組成物は、生産ラインにおいてフレキソ印刷に待機しながら密閉容器中で容易に乾燥状態に保たれる。このように、ある用途において直面される長期貯蔵の問題、すなわち、シクロデキストリン組成物を乾燥状態に保つ必要性がなくなる。したがって、錯体化化合物の早期喪失が回避され、シクロデキストリン包接錯体の高収率が実現される。上述されるように、これは、全てのシクロデキストリン組成物に有利であるが、低沸点オレフィン阻害剤の場合、特に、1−MCPの場合、その自家重合する傾向のために非常に重要である。
ある実施形態において、フレキソ印刷プレスにおける印刷およびダウンウェブ(downweb)の後、冷却ロールが、基板におけるシクロデキストリン組成物の温度を低下させるのに用いられる。あるこのような実施形態において、冷却ロールは、ある温度で用いられ、冷却ロールと基板との接触時間が、シクロデキストリン組成物の温度を、担体の溶融転移開始以下に低下させるのに十分である。冷却ロールの使用は、フレキソ印刷プロセス、または別のコーティングプロセスが、基板上への配置の際にシクロデキストリン組成物の粘度を低下させるために高温を必要とする場合に有利であるが、そうでなければ、不十分な冷却が、配置と、処理基板を処理する際のその後のステップとの間に行われる。ある実施形態において、シクロデキストリン組成物の温度を、担体の溶融温度未満に低下させることにより、その後の印刷または他の処理ステップにおけるシクロデキストリン組成物の流れ(running)、移動(transferring)、またはにじみが防止される。実施形態において、冷却ロールは、約−100℃〜10℃、または約−80℃〜0℃の温度に設定される。冷却ロールの温度を低下させるのに用いられる薬剤は、当業者に公知であるが、例えば、氷、ドライアイス、およびそれらと溶媒、塩などとの組合せ;または水、アルコール、エチレングリコールまたは別のグリコールなどの液体、それらの1つまたは複数の混合物、または冷却ロールと冷却装置との間で循環される、不凍液などの、別の液体もしくは混合物を含む。
ある実施形態において、シクロデキストリン組成物が、基板上に配置されて、処理基板が形成された後、処理基板は、さらに処理されて、処理積層体が形成される。このような実施形態において、処理基板は、処理された第1の基板である。処理された第1の基板は、第2の基板でさらに積層されて、処理積層体が形成される。あるこのような実施形態において、第2の基板は、感圧接着剤で被覆された熱可塑性フィルムであり、ここで、処理積層体は、その印刷側における第1の基板を、その接着剤側における第2の基板と接触させることによって形成される。ある実施形態において、第2の基板を第1の基板によりしっかりと固着するために、例えば、処理積層体をニップロールに通すことによって、圧力が、処理積層体にさらにかけられる。このような実施形態において、第2の基板は、用いられる材料について特に限定されず、材料は、例えば、水、錯体化化合物、またはその両方に対する目標とする透過性を提供するように選択され得る。あるこのような実施形態において、第2の基板としては、例として、紙、不織物、または熱可塑性フィルムが挙げられ;ある実施形態において、熱可塑性フィルムは、多孔質、微孔質、透過性、不透過性、または有孔である。
他の実施形態において、処理積層体が、シクロデキストリン組成物をその上にフレキソ印刷した後、積層接着剤とも呼ばれるUV硬化性(重合性および/または架橋性)接着剤を、第1の基板に直接適用することによって形成され、ニップを用いて第2の基板を適用することによって、第2の基板が、非硬化接着剤に湿式積層される。次に、接着剤は、通常、ニップされる湿式積層箇所の非常に近くで、第2の基板を照射することによって硬化される。したがって、このような実施形態において、第2の基板が、硬化プロセスに用いられるUV波長範囲に少なくとも部分的に透過性である必要がある。ある実施形態において、約2μm〜15μmの積層接着剤コーティング厚さが、約100〜2000ライン/cmを用いて、フレキソ印刷によって適用される。UVランプが、ニップ箇所の近くに取り付けられ、ここで、フィルムが、分離または空洞部分が積層された基板に形成されないように積層される。当業者は、接着剤硬化条件が、十分な最適な硬化を提供するように調整され;線速度、バルブエネルギー(単位面積当たりmJ)、および接着剤層の厚さが、例えば、共通変数であることを理解するであろう。ある実施形態において、硬化性接着剤が、UV光の代わりにeビームを用いたことを除いてUV硬化プロセスと同様に電子ビーム(eビーム)によって硬化される。このような実施形態において、光開始剤を加える必要性がなくなる。
処理基板の単位面積当たり配置されるシクロデキストリン組成物の所望の量は、フレキソ印刷によるかまたは何らかの他の技術によるかにかかわらず、本組成物の範囲内で特に限定されない。シクロデキストリン組成物の単位面積当たりの所望の量は、基板上に配置される層の厚さ、および層が連続層であるかまたは非連続層であるかに応じて決まる。連続層は、ナイフコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティングなどのコーティング技術によって一般的に付着され;非連続またはパターニングされた層は、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、またはインクジェット印刷などの印刷技術によって一般的に付着される。連続または非連続コーティングの何れの厚さも1つの厚さに限定する必要はないが、現実的には、これは、経済上の理由で選択されることが最も多い。基板上に配置されるシクロデキストリン組成物の厚さは、ある実施形態において、それを配置するのに用いられる技術によって限定されるが、厚さは、シクロデキストリン組成物におけるシクロデキストリン包接錯体の量、非錯体化化合物とのシクロデキストリン包接錯体の固有の平衡比、非錯体化化合物に対する担体の透過性、処理基板が処理積層体である場合、第1および第2の基板の透過性、シクロデキストリン組成物を受け入れるように選択された表面積、および処理基板を取り囲む環境中に存在するのが望ましい非錯体化化合物の量に基づいてさらに選択される。化合物がオレフィン阻害剤である場合、処理基板を取り囲む環境中に存在するのが望ましい非錯体化化合物の量は、本明細書において「有効量」とも呼ばれ、オレフィン阻害剤暴露のために選択される農産物の種類、農産物を取り囲む、封入されるか、部分的に封入されるか、または封入されない空間の容積、および温度および湿度の予測される条件に基づく。このような量が容易に選択されることがシクロデキストリン組成物の特徴であり、放出されるオレフィン阻害剤の量は、予測可能であり、再現性があり、一貫している。
ある実施形態において、処理基板上に配置される連続または非連続シクロデキストリン組成物層の厚さは、約0.01マイクロメートル(μm)〜5ミリメートル(mm)の厚さ、または約0.1μm〜1mmの厚さ、または約0.5μm〜0.05mmの厚さであるが;上述されるように、連続または非連続シクロデキストリン組成物層の厚さは、特に限定されず、例えば、シクロデキストリン組成物を配置する選択された技術、シクロデキストリン組成物に含まれるシクロデキストリン包接錯体の量、組成物のレオロジープロファイル、配置のために選択される総表面積、およびコーティングの連続または非連続の性質を含む1つまたは複数の基準について選択される。
実施形態において、処理基板は、基板上に配置されるシクロデキストリン組成物の非連続コーティングを含み、ここで、非連続の印刷コーティングは、基板の利用可能な表面積の約0.1%〜99%、または基板の利用可能な表面積の約1%〜90%、または約2%〜80%、または約5%〜70%、または約10%〜60%、または約20%〜50%を被覆し;ある実施形態において、非連続の印刷コーティングは、表面積の0.1%の間隔を空けて任意の範囲の基板の利用可能な表面積の0.1%〜99%、例えば、55.3%〜58.9%、または40.3%〜40.4%、または0.5%〜1.0%、または0.8%〜22.7%を被覆し;基板の表面上に付着されるシクロデキストリン組成物の量が、本明細書に記載されるように様々な基板上にシクロデキストリン組成物の非連続パターンを印刷するために本発明の方法を用いることによって、このような程度に容易に制御されることが、本発明の特徴である。
ある実施形態において、シクロデキストリン錯体は、印刷可能媒体と混合されて、印刷可能媒体組成物が形成され、ここで、印刷可能媒体組成物は、フレキソ印刷を用いて印刷可能である。印刷可能媒体組成物は、シクロデキストリン錯体および印刷可能媒体を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。印刷可能媒体は、約30℃以下で固体であり、かつ100℃で30mm2/秒未満の動粘度を有する材料または材料のブレンドである。これらの要件を満たす任意の材料または材料のブレンドが、フレキソ印刷用の印刷可能媒体として好適であり、印刷可能媒体組成物に使用するのに好適である。印刷可能媒体組成物は、少なくとも印刷可能媒体および錯体化化合物とともに錯体化されるシクロデキストリンを含む。印刷可能媒体組成物に有用な錯体化化合物は、上述されるものと同じ、すなわち、オレフィン阻害剤、香料、または抗菌性分子であり;シクロデキストリン錯体のブレンドも、印刷可能媒体組成物に好適に用いられる。
錯体化化合物が1−MCPである印刷可能媒体組成物の実施形態において、印刷可能媒体が、90℃で30mm2/秒未満の動粘度を有することが必要であり、印刷可能媒体が、印刷可能媒体組成物を形成するためにシクロデキストリン錯体の添加の際、ならびにフレキソ印刷を用いた1つまたは複数の基板への印刷可能媒体組成物の印刷の際、乾燥条件で提供され、維持されるのが好ましい。
有用な印刷可能媒体の例としては、非限定的な例として、より低い分子量のポリアルキレンオキシド(その直鎖状および分枝鎖状付加物、その末端封鎖された付加物、およびポリエチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックコポリマーなどのそのコポリマー;炭化水素、フッ化炭素、またはシリコーンろう;脂肪酸およびそのエステル;塩水素化物;およびこれらのブレンド、ならびにこれらと1つまたは複数のさらなる成分とのブレンドが挙げられる。
様々な実施形態において、印刷可能媒体に有用に含まれるさらなる成分は、疎水性担体の成分として上に開示される材料の何れかである。したがって、ペトロラタムまたはそれと同様の特性を有する材料、ポリマー、核形成剤、油、溶媒、水捕捉剤、乾燥剤、接着促進剤、防汚剤、熱安定剤もしくは酸化安定剤、着色剤、補助剤、可塑剤、架橋剤、またはそれらの2つ以上が、印刷可能媒体の様々な実施形態において含まれる。さらなる成分は、一般に、性質を限定されず、さらに上述される印刷可能媒体特性のための特性範囲内で、印刷可能媒体組成物、および印刷可能媒体組成物を1つまたは複数の基板上に印刷することによって形成される処理基板の特定の最終用途によって決まる。
ある実施形態において、ろうが、単独でまたは他の成分とのブレンド中で、印刷可能媒体として用いられる。印刷可能媒体に有用なろうは、一般に低分子量を有し、約40℃〜200℃、または約50℃〜150℃、または約50℃〜120℃、または約50℃〜100℃の融点、または溶融転移開始を有する疎水性または親水性化合物である。好適なろうとしては、ポリアルキレンオキシドろう、パラフィンろう、動物ろう、植物ろう(米国特許第7,842,746号明細書に記載されるものなどの水素化された重合油を含む)、鉱ろう、合成ろう、ヤマモモろう、蜜ろう、微結晶ろう、アルキルジメチコン、アルキルトリメチコン、低級エチレン−α−オレフィンコポリマー、C18〜C45オレフィン、およびエチレンまたはプロピレンオリゴマーおよび短鎖ホモポリマーならびにそれらのコポリマーが挙げられる。ある実施形態において、ろうは、印刷可能媒体組成物が、例えば混合のためまたはそれを基板にコーティングするために加熱される場合、冷却した際に印刷可能媒体の固化「硬化時間」を改善する核形成剤である。核形成剤は、固体ろう中の高い密度(0.95g/cm3超)および高い結晶含量を誘発するために、フィッシャー・トロプシュ触媒または他の特殊な触媒を用いて重合される、エチレン、プロピレン、またはその両方の短鎖ポリオレフィンろうを含む。
ある実施形態において、微結晶ろうが、印刷可能媒体に用いられる。実施形態において、微結晶ろうは、54℃〜約102℃の範囲の融点を有する。微結晶ろうは、3dmm超かつ100dmm未満の針貫入値(needle penetration)を有する(ASTM D1321)。粘度は、100℃で5cPより高い。ある実施形態において、微結晶ろうは、石油系である。他の実施形態において、微結晶ろうは、植物由来であり、例えば、米国特許第7,842,746号明細書に記載される植物由来のろうなどの水素化された重合油である。成分として印刷可能媒体において同様に有用である植物由来のペトロラタムのような材料も、米国特許第7,842,746号明細書に記載されている。
ある実施形態において、油が、印刷可能媒体に含まれる。油は、25℃で液体である疎水性または親水性化合物であり、ある実施形態において、可燃性であり、25℃で約5cPを超える粘度を有する。ある実施形態において、油は、合成炭化水素またはシリコーン油であり;他の実施形態において、油は、ピーナッツ油、くるみ油、キャノーラ油、アマニ油などの植物油である。ある実施形態において、油は、「乾性油」であり、すなわち、油は、雰囲気中で酸素と反応して、架橋を形成する。ある実施形態において、油は、精油である。
実施形態において、印刷可能媒体組成物が、フレキソ印刷を用いて基板上に印刷されて、印刷基板が形成される。「基板」という用語は、上に定義され;「印刷基板」は、フレキソ印刷によって上に配置された印刷可能媒体組成物を有する基板を意味する。全ての他の点において、印刷基板は、その用語が本明細書の他の箇所において使用されるように処理基板と同じであり;印刷基板は、本明細書の他の箇所に記載されるように処理基板と同じ用途および同じ方法で使用される。印刷可能媒体組成物を含有する個別の「島(island)」などの非連続パターンが、印刷可能媒体組成物のフレキソ印刷を用いて容易に形成されることが、フレキソ印刷方法の利点である。
実施形態において、印刷基板は、基板上に配置される印刷可能媒体組成物の非連続コーティングを含み、ここで、非連続の印刷コーティングは、基板の利用可能な表面積の約0.1%〜99%、または基板の利用可能な表面積の約1%〜90%、または約2%〜80%、または約5%〜70%、または約10%〜60%、または約20%〜50%を被覆し;ある実施形態において、非連続の印刷コーティングは、表面積の0.1%の間隔を空けて任意の範囲の基板の利用可能な表面積の0.1%〜99%、例えば55.3%〜58.9%、または40.3%〜40.4%、または0.5%〜1.0%、または0.8%〜22.7%を被覆し;基板の表面上に付着される印刷可能媒体組成物の量が、本明細書に記載されるように様々な基板上に印刷可能媒体組成物の非連続パターンを印刷するために本発明の方法を用いることによって、このような程度に容易に制御されることが、本発明の特徴である。
ある実施形態において、印刷基板は印刷積層体であり、印刷可能媒体組成物は、第1の基板上に印刷され、第2の基板が、印刷の後、印刷可能媒体組成物上に配置される。全ての他の点において、印刷積層体は、その用語が本明細書の他の箇所において使用されるように、処理積層体と同じであり;印刷積層体は、本明細書の他の箇所に記載されるように処理積層体と同じ用途および同じ方法で使用される。
ある実施形態において、印刷基板は印刷容器であり、ここで、「容器」という用語は、上に定義され;「印刷容器」は、フレキソ印刷によって上に配置される印刷可能媒体組成物を有する容器を意味する。実施形態において、印刷容器は、印刷基板または印刷積層体を含む。ある実施形態において、印刷容器は、印刷基板または印刷積層体から形成される。ある実施形態において、印刷容器は、容器の一体部分として印刷基板を含む。ある実施形態において、容器は、基板であり、印刷可能媒体組成物は、その上に印刷されて、印刷容器が形成される。ある実施形態において、印刷基板または印刷積層体が、容器に加えられて、印刷容器が形成される。全ての他の点において、印刷容器は、その用語が本明細書の他の箇所において使用されるのと同じであり;印刷容器は、本明細書の他の箇所に記載されるように処理容器と同じ用途および同じ方法で使用される。
4.処理基板を使用する方法
処理基板、処理積層体、および処理容器は、多くの用途で有用に用いられる。シクロデキストリン組成物が、香料を含む場合、処理基板、処理積層体、および処理容器は、家庭用芳香剤の放出、電気掃除機用の袋の消臭剤、香りを発生する雑巾、猫のトイレの消臭剤、ごみ箱の消臭剤、車用の芳香放出物品などを含む家庭用香料用途に有用に用いられる。シクロデキストリン組成物が、抗菌剤を含む場合、処理基板、処理積層体、および処理容器は、抗菌性化合物の持続放出のための、可撓性の食品包装フィルム、ラベル、使い捨ての作業面フィルム、パーソナルケア製品、可食容器、寝具、雑巾、医療用品(包帯、医療用ドレープ、および医療用衣類など)に有用に用いられる。ある実施形態において、処理基板、処理積層体、および処理容器は、持続放出および制御放出のために香料および抗菌性化合物の両方を含有するように有用に形成されるが、これは、特定の物品においてそれらの組合せが有利であるためである。
シクロデキストリン組成物がオレフィン阻害剤を含む場合、処理積層体および処理容器を含む処理基板は、農産物の成熟または熟成の阻害に有用に用いられる。ある実施形態において、処理基板は、包装される農産物の封入された容積内に有用に含まれる。実施形態において、処理基板は、シクロデキストリン組成物が、1種または複数種の農産物を取り囲む封入された容積の内部雰囲気に接触するように配置され、封入された容積は、容器によって提供される。農産物の容器のタイプおよび形態は、特に限定されず;封入された空間を画定する任意の袋、箱、盛りかご、カートン、桶、カップ、パレット、袋、輸送手段の内装(例えばトラック内装)などが、処理基板を有用に用いる。周囲の湿気、農産物の呼吸からの湿気、液体水または水蒸気の追加、またはそれらの2つ以上の組合せが、シクロデキストリン包接錯体からのオレフィン阻害剤の放出を引き起こすのに必要な水を提供する。
他の実施形態において、処理基板は、シクロデキストリン組成物が、1種または複数種の農産物の近くの部分的に封入されたまたは封入されない容積、または部分的に封入されたまたは封入されない容器内もしくはその近くを取り囲む雰囲気に接触するように配置される。あるこのような実施形態において、容器は、処理容器であるが、他の実施形態において、容器は、処理容器ではなく、処理基板は、容器の外側ではあるがそれに近接して提供される。このような実施形態において、シクロデキストリン組成物の量、雰囲気中に存在する液体水または水蒸気の量、部分的封入の程度、および農産物の種類を考慮に入れて、オレフィン阻害剤の有効濃度が、農産物を取り囲む雰囲気中に提供されるかどうかによって、近接性が単に決定される。農産物の容器のタイプおよび形態は、特に限定されず;部分的に封入された空間または封入されない空間を画定する任意の袋、箱、カートン、盛りかご、桶、カップ、パレット、袋、輸送手段の内装(例えばトラック内装)、建造物区域、門のある屋外区域などが、処理基板を有用に用いる。周囲の湿気、農産物の呼吸からの湿気、液体水または水蒸気の追加、またはそれらの2つ以上の組合せが、シクロデキストリン包接錯体からのオレフィン阻害剤の放出を引き起こすのに必要な水を提供する。
農産物の容器の内部に曝されるシクロデキストリン組成物の表面積および厚さは、農産物の有用な寿命が最適化されるように、オレフィン阻害剤の好適な雰囲気(気体)濃度を封入された空間に提供するように選択される。選択プロセスは、以下により詳細に説明される。オレフィン阻害剤の最適な雰囲気濃度の提供に影響を与える要因としては、取り扱われる農産物の種類、シクロデキストリン組成物中のシクロデキストリン包接錯体の量、処理基板上に存在するシクロデキストリン組成物の量、非錯体化オレフィン阻害剤とのシクロデキストリン包接錯体の固有の平衡比、オレフィン阻害剤に対する担体の透過性、オレフィン阻害剤に対する1つまたは複数の基板の透過性、シクロデキストリン組成物をコーティングするのに用いられる技術の粘度またはコーティング厚さ要件、取り扱われる農産物を取り囲む封入されるか、部分的に封入されるか、または封入されない空間の容積、および同じ容積内で予測される液体または気体水の量、含まれる周囲の湿気および植物材料の蒸散によって生成される水蒸気が挙げられる。
ある実施形態において、処理基板は、シクロデキストリン組成物のスロットコーティングまたはフレキソ印刷されたコーティングなどのコーティングを有する、単にシートまたはフィルムであり;他の実施形態において、処理基板は処理積層体である。あるこのような実施形態において、特定の用途に必要とされる錯体化化合物の量は、雰囲気中の錯体化化合物の所望のレベル、取り扱われる雰囲気の容積、および予測される水量の量などの変数に基づいて推定される。次に、処理基板の単位面積当たりのシクロデキストリン組成物の総コーティング体積に基づいて、基板は、(例えば、処理基板を切断することによって)適切な量のシクロデキストリン組成物を提供する選択されたサイズへと分割される。他の実施形態において、均一な部分が、予め切断され、1つ、2つ、またはそれ以上の部分が、選択された総コーティング量のシクロデキストリン組成物を提供するように選択される。
このような計算において、目的とする容積に目的とするコーティング量を送達する値が認識される。上記の特定の実施形態が、封入されるか、部分的に封入されるか、または封入されない容積に正確に測定された量のシクロデキストリン組成物を送達するだけでなく、目的とする容器への容易に変更される量のシクロデキストリン組成物の送達を可能にするのに特に有利である。例えば、フレキソ印刷が、様々な基板の容易に変化される表面積にわたって正確なおよび容易に変化される体積の材料を基板に送達することが十分に理解される。シクロデキストリン組成物を送達するのに印刷技術を使用する別の利点は、印刷が、包装材料用の生産組立ライン設備および他の工業的におよび商業的に有用な形式に容易に組み込まれるため、容器上に直接に適用されるか、またはラベル上、クロージャ上、または容器に適用される積層体内、容器に加えられる処理基板上、開放された領域に含まれる処理積層体内などに適用されるかにかかわらず、シクロデキストリン組成物からの錯体化化合物の放出のための送達手段を構築するための好都合でかつ経済的な手段を提供することである。
錯体化化合物がオレフィン阻害剤である、ある実施形態において、処理基板を作製するのに使用される基板は、さらに農産物材料の存在下で容器内に封入される水(蒸気および/または液体)の量を制御するためのさらなる手段を用いる。パッケージの封入された空間中の水の量は、本発明のシクロデキストリン組成物からのオレフィン阻害剤の放出の観点から関心事であるが、農産物材料を含むパッケージ中の非常に高いレベルの水分も、水分に弱い特定の農産物(例えば、ベリー、柑橘類、レタス、キノコ、タマネギ、およびコショウなど)に単独で有害であることが周知である。過剰な水分は、一部の収穫後の果実および野菜に様々な生理的障害を引き起こし、貯蔵寿命を短くし、品質を低下させる。特に、農産物材料表面における凝縮形態の液体水は、腐敗を促進し、貯蔵寿命をかなり短くする。ある実施形態において、内部湿度コントローラ(保湿剤および乾燥剤)が、多孔質サシェ中、本発明の基板内、あるいは処理基板とともにシクロデキストリン組成物自体の中に組み込まれる。実施形態において、湿度コントローラは、最適なパッケージ内相対湿度(例えばカットした果実および野菜については約85%〜95%)を維持するのに役立ち、農産物材料自体からの水分喪失を減少させ、および/または微生物が増殖し得るヘッドスペースおよび隙間中の過剰な水分の蓄積を防止する。包装構造内に組み込まれるオレフィン阻害剤の量は、低蒸散の収穫後生産物のより低い湿度の包装と対照的に、過剰な水を有する包装において異なるであろう。したがって、技術を操作するために、いくつかの要因(化学的および生物学的)が、様々なグループの収穫後の生産物のために最適な包装構造およびばら積み輸送コンテナを製造するために考慮される。
錯体化化合物がオレフィン阻害剤である実施形態において、処理基板は、調整雰囲気包装(MAP)、平衡調整雰囲気包装(EMAP)、または制御雰囲気包装(CAP)が用いられる実施形態において有用である。MAPの目的は、酸素および二酸化炭素に対する制御された透過性を有する密閉容器を提供することによって、農産物の周りに所望の雰囲気を提供することであり、空気貯蔵と比較した際に農産物の品質が向上される。通常、容器の透過性は、容器の外部の各ガスの温度および分圧とともに変化する。CAPの目的は、容器内の大気組成物(78%のN2、21%のO2)の一部または全てを、例えば二酸化炭素または窒素または所望の割合の2種以上のガスのブレンドで置き換えることである。いくつかの特許が、MAPおよびCAPの様々な特徴を記載している。米国特許第7,601,374号明細書は、両方の手法を記載しており、様々なMAPおよびCAP技術に対して発行された他の特許のかなりのリストにも言及している。シクロデキストリン組成物には、MAP、CAP、または両方の手法の特徴を組み合わせた技術とともにさらなる有用性があることが理解されるであろう。ある実施形態において、シクロデキストリン組成物は、直接用いられ、ここで、MAP、EMAP、またはCAP基板は、処理基板として用いられ;他の実施形態において、処理基板は、例えば挿入物として、MAP、EMAP、またはCAPパッケージに加えられる。
MAPは、真菌または他の源からの発酵代謝または臭気移動に起因する異臭の発生を最小限に抑えることによって、改善された香りの果実および野菜を維持するのに有用な手法である。MAPは、収穫後応力、腐敗および他の植物の障害に対する耐性を改善することが認識される。本発明のシクロデキストリン組成物によって送達されるオレフィン阻害剤の制御放出と統合された調整雰囲気を有する「アクティブパッケージ(active package)」は、自動販売機のためのシングルサーブのすぐに食べられる包装および容器を含め、消費者のために切り立ての果実および野菜の品質を改善するであろう。本発明の例示的実施形態において、MAPまたはCAPは、新鮮な農産物を含むカートンのパレットを包装するのに用いられる大型のポリエチレン袋のために本発明の処理基板とともに使用される。このようなパレットサイズの袋は、カートン内に支持される農産物のパレットの輸送のために広く用いられ;袋は、輸送中に農産物を調整または制御雰囲気中に封入するのに用いられる。あるこのような実施形態において、袋、板紙(例えばポリエチレン押出しコーティングされた板紙)カートン、カートンもしくは袋上のラベル、処理挿入物、またはそれらの2つ以上の組合せは、本発明の処理基板を含む。
EMAPは、パッケージ内の平衡雰囲気を最適化することによって、新鮮な農産物の貯蔵寿命を延長するのに役立つ方法である。これは、包装フィルムの透過性を調整することによって行われる。フィルムの微細穿孔は、O2およびCO2の平衡濃度を調節するための一方法である。微細穿孔フィルムは、孔あきフィルムであるか、またはそうでなければ、熱可塑性材料と微粒子充填剤との混合物から作製されたフィルムを穿刺または延伸することによって多孔質にされる。これらのフィルムは、分子ガス/蒸気の拡散による移動のみを可能にし、液体の移動を阻止する。微孔質または微細穿孔フィルムの例としては、River Ranch Technology,Inc.(Salinas,CA)から入手可能なFRESHHOLD(登録商標)フィルム;米国特許第6,296,923号明細書および同第5,832,699号明細書に記載される、Sidlaw Packaging of Bristol(Great Britain)から入手可能なP−PLUS(登録商標)フィルム;および米国特許第7,629,042号明細書および同第6,092,761号明細書に記載される、Clopay Plastic Products Co.(Mason,OH)製のフィルムが挙げられる。
さらに、錯体化化合物がオレフィン阻害剤である実施形態において、処理基板は、非穿孔および非孔質のフィルムのガス透過性が、単に、異なる厚さのフィルムを製造するかまたはセグメント化ブロックコポリマーから製造される親水性フィルムの選択性を使用し、シクロデキストリン組成物とともにこれらの材料を基板として用いることによって調整される実施形態において有用である。セグメント化ブロックコポリマーまたはマルチブロックコポリマーは、交互の可撓性の軟質セグメントおよび結晶性の剛性セグメントからなる。セグメント化ブロックコポリマーの特性は、可撓性(軟質)および剛性セグメントのブロック長さを変更することによって変化される。剛性および可撓性セグメントは、熱力学的に非混和性であるため、相分離が起こる。剛性セグメントは、結晶化し、連続した軟質相中にラメラを形成する。剛性セグメントは、エステル、ウレタンまたはアミド基を含有することができる一方、可撓性セグメントは、通常、ポリエステルまたはポリエーテル−ポリ(エチレンオキシド)(PEO)および/またはより疎水性のポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO)である。通気性フィルムにおいて、ガス蒸気が、主に軟質相を通って移送され;選択的なガス透過性は、ポリマー中の親水性基の密度、相対湿度、および温度に応じて決まる。
錯体化化合物がオレフィン阻害剤である実施形態において、処理基板は、特殊な選択的に透過性の基板が用いられる実施形態において有用である。選択的に透過性の基板の一例は、Apio,Inc.(Guadalupe,CA)によって販売される、切り立ての農産物とともに現在使用されているBreatheWay(登録商標)包装である(www.breatheway.com;www.apioinc.comも参照)。BreatheWay(登録商標)フィルムは、調整されたO2/CO2比を提供して、貯蔵寿命を延長するために、酸素の流入および二酸化炭素の流出を制御する選択的に透過性の膜である。膜は、温度応答性でもある。このような包装が、呼吸している農産物の貯蔵寿命を延長するために改善されたO2/CO2比を提供する一方、他の点では、農産物の熟成を阻害しない。他の好適な通気性親水性フィルムの例としては、Total Petrochemicals USA,Inc.(Houston,TX)によって製造される熱可塑性ポリアミドであるPEBAX(登録商標);SympaTex Technologies GmbH(Unterfoehring,Germany)によって製造される通気性疎水性ポリエーテル−エステルブロックコポリマーであるSYMPATEX(登録商標);DuPont deNemours and Co.(Wilmington,DE)によって製造される熱可塑性ポリエステルエラストマーであるHYTREL(登録商標);およびDow Chemicals(Midland,MI)によって供給される、ELASTOLLAN(登録商標)(ELASTOGRAN(登録商標))およびPELLETHANE(登録商標)などのセグメント化ポリウレタンが挙げられる。これらのポリマーは、広い選択的ガス透過性範囲を有する。シクロデキストリン組成物は、このような透過性膜技術とともに、呼吸している農産物の貯蔵寿命の延長のための完全な解決法を表す。
上記の物品および用途が、本明細書に記載される組成物および方法によって提供される利点からいくつかの点で利益を得られることが理解されるであろう。シクロデキストリン包接錯体は、穏やかな条件を用いて容易に形成され、単離され、高収率の包接錯体形成が実現される。シクロデキストリン包接錯体は、シクロデキストリン組成物に加えられるまで容易に貯蔵される。シクロデキストリン組成物は、穏やかな条件を用いて、容易に形成され、コーティングされる。シクロデキストリン組成物は、容易に貯蔵されるか、または生産ラインにおいて形成され、使用され得る。可変のおよび正確な量のシクロデキストリン組成物が、容易にかつ再現可能に様々な基板に加えられ、積層体および容器が、容易に取り扱われる。シクロデキストリン組成物を送達する様々な容易に実施される方法が可能であり、フレキソ印刷は、可変のおよび正確な量のシクロデキストリン組成物を様々な基板に迅速にかつ経済的に送達するための特に有用な方法である。本発明の処理基板は、シクロデキストリン包接錯体内の錯体化化合物の持続放出および制御放出のための様々な用途に有用である。
5.オレフィン阻害剤としての1−メチルシクロプロペン(1−MCP)
シクロデキストリン包接錯体がオレフィン阻害剤1−MCPを含む実施形態において、処理基板上に配置されるシクロデキストリン組成物の有効量は、農産物の有用寿命、または「貯蔵寿命」が、シクロデキストリン組成物の非存在下における農産物の貯蔵寿命より延長されるように、選択された農産物を取り囲む封入されるか、部分的に封入されるか、または開放された容積に1−MCPの雰囲気(気体)濃度を提供するように選択される。農産物を取り囲む封入されるか、部分的に封入されるか、または封入されない容積内の環境中の1−MCPの有効量は、約1十億分率(ppb)〜約10百万分率(ppm)、または約5ppb〜5ppm、または約10ppb〜3ppm、または約50ppb〜2ppm、または約100ppb〜1ppm、または約25ppb〜1ppm、または約50ppb〜500ppb、または10ppb〜50ppb、100ppb〜500ppbなどの、10ppbの任意の増分での1ppb〜10ppmの任意の中間範囲であり;このような範囲が、シクロデキストリン組成物を用いて現実的にかつ正確に目標とされることが本発明の特徴である。
実施形態において、1−MCPシクロデキストリン包接錯体がα−シクロデキストリン;すなわち、1−MCP/c/α−CDとともに形成される。1−MCP/c/α−CDからの1−MCP放出に影響を与える上記の要因に加えた1つの要因は、処理基板に直接近接する領域において液体または蒸気形態で存在する水の量である。これは、処理基板も含む封入されたまたは部分的に封入されたパッケージの場合、植物の呼吸によりその量が変化するため、呼吸している農産物によって放出される水の量、およびパッケージ内に保持される水の量を考慮することを必要とする。
1−MCP/c/α−CDが、本発明のシクロデキストリン組成物および処理基板に用いられる本発明の実施形態において、処理基板は、1種または複数種の農産物に近接する封入された容積、部分的に封入された容積、または封入されない容積内の雰囲気に曝される。1−MCP/c/α−CDが、農産物の熟成または農産物の成熟を阻害するのに十分な濃度で農産物の近傍に1−MCPを放出するように、この雰囲気は、活性化量の水を含まなければならない。水源としては、周囲の湿気、農産物自体の呼吸からの水蒸気および/または液体水、またはシクロデキストリン組成物の近傍に制御された量で加えられる水蒸気もしくは液体水が挙げられる。実施形態において、シクロデキストリン組成物、1つまたは複数の基板、またはその両方は、農産物の近傍に、すなわち、農産物に近接して、1−MCPの熟成または成熟阻害量を維持するのに十分な程度に、1−MCPおよび水蒸気の両方に対して透過性である。
1−MCP/c/α−CDからの1−MCPの水で促進される放出は、Neoh,et al.,Carbohydrate Research 345(2010),2085−2089によって詳細に記載されている。Neohら研究者は、1−MCP/c/α−CDの動的な錯体解離を研究し、湿度の増加が、一般に、予測可能な方法で1−MCP錯体解離を引き起こすことを観察した。しかしながら、おそらく結晶構造の崩壊のため、解離は、80%の相対湿度で大幅に遅延され;次に、錯体解離に相当する突然の解離が、90%の相対湿度で観察された。しかしながら、本発明の発明者らが気付いたように、研究者は、100%の相対湿度でも、20%未満の錯体化1−MCPが放出されることに気付いた。実際、平均して、錯体化1−MCPの総量の5分の1未満(約17.6%)が、実験の最後に解離された一方、約83.4%の1−MCPは錯体化されたままであった。
ある実施形態において、包装された農産物の流通および貯蔵の間、貯蔵温度が約0℃〜20℃である場合、農産物の周りの封入された容積中の相対湿度は、封入されたパッケージ容積内の農産物の呼吸からの通常の水損失のため、約50%〜100%である。パッケージの封入された容積内の湿度の増加は、実施形態において、シクロデキストリン組成物を含む封入された容積内の1−MCP/c/α−CDから1−MCPの一部を放出するのに十分である。他の実施形態において、処理容器を取り囲む湿度は、容器中または容器の周りへの水の追加によって増加される。あるこのような実施形態において、包装中に水ミスト、スプレーまたは蒸気によって水分を加えることによって、包装場所または貯蔵施設内の環境の湿度を制御することによって、または農産物を取り囲む封入された容積を形成する直前に容器に水を加えることによって、湿度は、農産物の周りで増加される。
a−MCP/c/α−CDからの水および1−MCPの解離の間の関係の重要性は、以下の理由のために、技術を用いる際に最も重要である:
1)1−MCPの量が、国別の基準で果実および野菜を取り囲む雰囲気中で調節され;
2)1−MCPから得られる利益(すなわち、貯蔵寿命の延長)が、様々なタイプの農産物材料に対する暴露濃度により異なり(例えば、Blankenship,S.M.and Dole,J.M.,Postharvest Biology and Technology 28(2003),1−25を参照);さらに、過剰な1−MCP処理濃度により、一部の農産物材料への悪影響が考えられる。
国別の規制の2つの例において、米国環境保護庁(the United States’Environmental Protection Agency)(EPA)は、the Federal Food,Drug,and Cosmetic Act(FFDCA)の408項の権限により1−MCPを空気中で最大1ppmに現在制限しており;欧州委員会健康消費者保護総局(the European Commission Health and Consumer Protection Directorate)および欧州食品安全機関(the European Food Safety Authority)の加盟国は、その様々な指令下で1−MCPを同様に規制し、1−MCPレベルを、2.5ppb v/v〜1ppm v/vの範囲の量に制限している。
したがって、実施形態において、1−MCPの解離は、容器内に組み込まれる1−MCPの総量および包接錯体からの1−MCPの放出の両方を制御することによって、容器ヘッドスペース内で慎重に管理されなければならない。さらに、実施形態において、シクロデキストリン組成物によって本質的に吸着可能または吸収可能な残留水の量が、1−MCPの解離にさらに影響を与える。実施形態において、シクロデキストリン自体の親水性は、シクロデキストリン包接錯体が組み込まれるシクロデキストリン組成物と水との相溶性を増大させる。
処理基板が、シクロデキストリン包接錯体として1−MCP/c/α−CDを用いる本発明の実施形態において、特定の用途に必要とされる雰囲気中の1−MCPの量は、上述されるように、いくつかの要因に基づいて計算され;次に、コーティング厚さおよびコーティングされる面積(すなわち、総コーティング体積)が、取り扱われる環境を含む農産物の体積、取り扱われる環境の、封入されるか、部分的に封入されるか、または封入されない性質、シクロデキストリン組成物に含まれる1−MCP/c/α−CDの濃度、および目的とする雰囲気に到達するために錯体化される1−MCP/c/α−CD(非錯体化α−CDに対する)のおよその分率に基づいて変化される。このような計算において考慮されなければならない要因としては、容器、基板、またはシクロデキストリン組成物自体の中の任意の保湿剤または乾燥剤;シクロデキストリン組成物の水および1−MCP透過性/吸着性/吸収性、1つの基板(または処理積層体の場合、複数の基板)の水および1−MCP透過性/吸着性/吸収性、容器内に存在する任意の制御または調整雰囲気、および目的とする農産物材料の呼吸速度が挙げられる。
例えば、1ppmの1−MCPを含有する雰囲気が必要とされ、目的とする封入された容積が1リットルである場合、100%の1−MCPの錯体化および1g/cm3のシクロデキストリン組成物の全密度を仮定すると、合計して2cm2の領域に厚さ12.7μmでコーティングされた1.71重量%のα−シクロデキストリンを含有するシクロデキストリン組成物が、理想気体の法則(Ideal Gas Law)の換算を用いて、水蒸気の存在下で、目標とする1ppmの1−MCPを封入された容積に提供するであろう。実施形態において、1−MCP/c/α−CDの目標とする重量範囲は、封入された容積1リットル当たり25マイクログラム〜1ミリグラムである。このような計算において、目標とするコーティング量を目的とする封入された容積に送達する値が認識される。上述される特定の実施形態は、正確に測定された量の1−MCPを、選択された容積に送達するだけでなく、目的とする容器への容易に変化される量のシクロデキストリン組成物を可能にするのに特に有利である。
上述されるように、フレキソ印刷の使用は、容易に変化される容積にわたって、正確なおよび容易に変化される容積の材料を基板に送達することが十分に理解される。本発明者らは、以下の実施例において、この手法が、正確な制御された量のシクロデキストリン組成物を、目的とする基板に送達するのにうまく機能し、ひいては、水蒸気の存在下で、再現性のある低レベルの放出を提供することを実証した。
6.特定のさらなる実施形態
以下の定義が、上の項1〜5に関連して適用される。この項における定義は、この項のみに適用される。
デバイス(植物の腐敗を遅らせるための)は、文脈によって決定されるように、項1において定義される「物品」または「処理積層体」を意味する。
内部層または外部層は、項1の処理積層体の第1または第2の基板を意味する。
封入剤は、項1において定義される「担体」を意味する。
担体または錯化剤は、「シクロデキストリン」が、項1において、すなわち、活性成分を錯体化する手段として用いられる際に用いられる広義語である。
活性成分または活性物質は、項1において定義される「オレフィン阻害剤」を意味する。
貯蔵ユニットは、文脈によって決定されるように、項1において定義される「物品」または「容器」を意味する。
外部層および水蒸気透過性内部層を、外部層と内部層との間に位置決めされた封入剤とともに含む、植物の腐敗を遅らせるためのデバイスが本明細書に開示される。封入剤は、担体および担体に結合された活性成分を封入する。活性成分の目的は、例えば、果実および野菜などの植物材料の貯蔵および輸送に一般的に使用される密閉された貯蔵ユニットの内部のエチレンガスの存在に起因する植物の腐敗を遅らせることである。これらの活性物質は、貯蔵ユニットのヘッドスペース内にも存在する水蒸気により、このような貯蔵ユニットのヘッドスペース中に放出されることが意図される。水蒸気は、活性成分を、それが結合された担体から放出させ、それによって、活性成分に、貯蔵ユニットのヘッドスペース内のエチレンガスの影響を抑制させるが、これは、エチレンが、植物の熟成および腐敗の公知の促進物質であるためである。このような腐敗を防ぐのに使用されるいくつかの活性物質は、例えば、それが使用前に貯蔵される領域中の周囲空気の通常の湿度への暴露により、早期に放出され得る。封入剤は、貯蔵ユニットのヘッドスペース内で使用前にそれが接触し得る水蒸気への早期の暴露から活性成分を保護する働きをし、封入剤はさらに、植物の腐敗の遅延を促進するために、活性成分をヘッドスペース内に放出するように、活性成分および担体が、水蒸気によって接触されるようにする。水蒸気による活性物質の接触を助けるために、少なくとも内部層が水蒸気に対して透過性であるのが望ましく、したがって、内部層が、3.0g×ミル/100平方インチ×日を超える水蒸気透過率を有するのが望ましい。
用途によっては、外部層が、デバイスの内部空間への水蒸気の透過に抵抗するのが望ましいことがある。このような場合、外部層が、3.0g×ミル/100平方インチ×日未満の水蒸気透過率を有するのが望ましい。
封入剤の機能を促進するために、封入剤が非水性であるのが有利である。封入剤の他の望ましい特性は;それが約80℃未満の融点を有すること、それが室温で半固体であること、およびそれが約−200℃〜約20℃のガラス転移温度(Tg)を有することである。
好適な封入剤としては、動物ろう、植物ろう、鉱ろう、合成ろう、ヤマモモろう、蜜ろう、ステアリルジメチコン、ステアリルトリメチコン、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィンコポリマー、エチレンホモポリマー、C18〜C45オレフィンおよびポリα−オレフィンが挙げられ、エチレン−α−オレフィンコポリマー、エチレンホモポリマー、C18〜C45オレフィンおよびポリα−オレフィンが、この群の好ましいサブセットである。
ある活性成分が、その自然な状態でガスであり、不安定であることにより、担体が、活性成分とともに錯体化することが可能な錯化剤であることが望ましいことが多い。シクロデキストリンは、特にうまく機能することが分かっている1つの担体材料であり、α−シクロデキストリンは、特に、活性成分が1−メチルシクロプロペンである場合、特にうまく機能することが分かっている。
担体および活性成分とともに封入剤を含有するデバイスは、植物材料用の貯蔵デバイスの内部に使用されるように設計される。場合によっては、デバイスの外部層が、外部層を、貯蔵ユニットの内面などの別の表面に取り付けるための取り付け手段を有するのが望ましいことがある。取り付け手段を保護するために、外部層は、別の表面へのその取り付けの前に取り付け手段から取り外され得る可剥性の剥離ストリップで任意選択的に被覆され得る。内部層は、水蒸気に対して透過性である。内部層と外部層との間の内部空間内の活性成分をさらに保護するために、内部層は、剥離ライナーによって保護されてもよく、剥離ライナーは、内部層の外面の全てまたは一部を被覆し、デバイスが貯蔵ユニットのヘッドスペース内に設置されたら取り外され得る。したがって、剥離ライナーが、内部層より高い程度の水蒸気に対する抵抗性を有するのが望ましい。言い換えると、剥離ライナーは、内部層より低い水蒸気透過率を有するべきである。
封入剤、担体および活性成分をさらに保護し、封入するために、デバイスの外部層および内部層の少なくとも一部が、デバイスからの封入剤および担体の漏れを防ぐために、周囲シールによって互いに封止され得る。
デバイスが設置される貯蔵ユニットは、ヘッドスペースとも呼ばれる、内部空間を画定する密閉されたパッケージ層を含み得る。デバイスは、それがヘッドスペース内で自由に動き回るように貯蔵ユニットの内部に単に設置され得るか、または、上述されるように、デバイスは、貯蔵ユニットの全てまたは一部を形成する密閉されたパッケージ層の内面に取り付けられてもよい。
デバイスを貯蔵ユニットとさらに統合するために、一実施形態において、貯蔵ユニットは、植物材料を貯蔵するための内部空間を画定する密閉されたパッケージ層を含むことができ、デバイスは、密閉されたパッケージ層の少なくとも一部を形成することができる。
上記の貯蔵ユニット設計の何れかにおいて、ユニットが、貯蔵ユニットを開閉するための手段を有することが望ましいことがある。
この項のみに適用される定義
「フィルム」という用語は、キャストフィルムまたはインフレートフィルム押出しプロセスなどのフィルム押出しプロセスを用いて作製される熱可塑性フィルムを指す。フィルムは、単層、または多層フィルムまたは積層体であり得る。
「水蒸気透過性フィルム」という用語は、開放されたまたは内部が結合された細孔を通る水の流れを可能にする、熱可塑性ポリマー含有フィルムなどのフィルムを含む。この用語は、穿刺または孔あきによって多孔質にされたフィルム、およびポリマーを充填剤と混合し、混合物からフィルムを形成し、フィルムを通る液体通路を形成するのに十分にフィルムを延伸することによって多孔質にされたフィルムを含む。
「連続気泡発泡体材料」という用語は、発泡プロセスを用いて作製される層材料を指し、発泡プロセスでは、発泡体中の気泡が、層の1つの表面から反対側の表面まで開放された細孔を形成する。この用語は、発泡体の1つの表面から発泡体の別の表面への水および/または水蒸気の透過を可能にするように孔あきまたは他の変更がなされていない限り、独立気泡発泡体材料などの、液体水の流れを実質的に阻止する発泡体を含まない。
「ポリマー」という用語は、以下に限定はされないが、ホモポリマー、例えば、ブロック、グラフト、ランダムおよび交互コポリマーなどのコポリマー、ターポリマーなど、ならびにそれらのブレンドおよび変形を含む。さらに、特に限定されない限り、「ポリマー」という用語は、材料の全ての可能な幾何学形態を含むべきである。これらの形態としては、以下に限定はされないが、アイソタクチック、シンジオタクチックおよびアタクチック対称が挙げられる。
「水蒸気透過性」という用語は、フィルム、不織布、または連続気泡発泡体などの1つまたは複数の層中に存在する材料を指し、この材料は、多孔質であり、層の細孔を通る液体または蒸気形態の水の流れにより、水透過性である。フィルムまたは発泡体中の細孔、あるいは不織ウェブ中の繊維またはフィラメント間の空間は、層を通る液体および/または蒸気水の漏れおよび流れを可能にするのに十分に大きく、十分に頻度が高い。この用語は、水または水蒸気の移動を阻止するフィルムおよび他の材料を含まない。
「シクロデキストリン化合物」という用語は、環構造を維持するシクロデキストリンの誘導体を含む、シクロデキストリン環構造を含む任意の化合物を含む。環構造は、α−シクロデキストリン化合物(6つのグルコース単位)、aβ−シクロデキストリン化合物(7つのグルコース単位)、aγ−シクロデキストリン化合物(8つのグルコース単位)の環構造、またはこれらの環構造の1つまたは複数を有する化合物を含む組合せであり得る。
製品の形態および用途
植物の腐敗を遅らせるためのデバイス10の一実施形態が、図1および1Aの図面に示される。図1を参照すると、デバイス10は、外部層12、水蒸気透過性内部層14、封入剤16、担体材料18および活性成分20を含む。以下により詳細に説明されるように、多くの実施形態において、外部層が水蒸気不透過性であるのが望ましいであろう。活性成分20は、担体材料18と結合され、この組合せが、封入剤16および封入剤16の組合せ内に封入され、それによってコーティングされ、担体材料18および活性成分20は、外部層12と内部層14との間に位置決めされ、それらによって含まれる。これらの材料(16、18および20)を含有するために、外部層12および内部層14の少なくとも一部が、周囲シール22などによって、互いに封止され得る。さらに、図2および3に示されるように、デバイスが、貯蔵ユニット30の内部などの別の表面に接着され得るように、任意選択的に、接着剤または他の結合材料の層などの取り付け手段24が、外部層12または内部層14などの、デバイス10の外面に適用され得る。
以下にさらに詳細に説明されるように、一実施形態において、封入剤16は、ポリオレフィンろう(ペトロラタムとも呼ばれる)であり、担体材料18は、シクロデキストリンであり、活性成分は、シクロデキストリンとともに錯体化された1−MCPである。
操作の際、疎水性の封入剤16が、担体18および活性物質20を取り囲み、それをコーティングし、それによって、それらを水および/または水蒸気への早期の暴露から保護する。しかしながら、デバイス10が取り扱われる際、水および/または水蒸気が、水蒸気透過性内部層14を透過して、デバイス10の内部の担体/活性物質に接触することがある。シクロデキストリンが親水性であるため、水分がその上で凝結し、毛管現象によって、水分がシクロデキストリン空洞から1−MCPを移動させる。水分との接触によるシクロデキストリンからの1−MCPの放出の機構および速度の詳細な説明は、全体が参照により本明細書に援用される、Tze Leon Neohらによる“Dissociation characteristic of the inclusion complex of cyclomaltohexaose(a−cyclodextrin)with 1−methylcyclopropane in response to stepwise rising relative humidity”と題された論文、Carbohydrate Research,345(2010),2085−2089に見られる。
植物のパッケージが取り扱われる際、パッケージの内部のデバイス10は、パッケージの内部の自身の動きによって、ならびにパッケージの内部の植物材料によるデバイス10の接触によって、ねじれて曲がることによって、より多くの封入された担体/活性物質を、パッケージの内部の水/水蒸気に曝し、したがって、より多くの活性成分20を、パッケージのヘッドスペース中に放出する。
図2および3を参照すると、貯蔵ユニットまたはパッケージ30が示され、これは、この場合、食料品店において果実および野菜などの傷みやすい農産物の個別のサイズのパッケージを貯蔵し、販売するのに一般的に使用されるようなプラスチック製の食品貯蔵袋である。貯蔵ユニット30は、内部空間34を画定し、かつ傷みやすい植物材料36を収容する密閉されたパッケージ層32を含む。植物材料36を取り囲む空隙は、当業界においてヘッドスペース(これは要素34によっても参照される)と呼ばれ、この2つの用語は、同義的に使用されることが意図される。エチレンを含む植物材料36が発するガスを含有するのはこのヘッドスペース34である。ヘッドスペース34は、酸素および二酸化炭素も含有する。
図2および3に示されるように、デバイス10は、貯蔵ユニット30のヘッドスペース34内に配置される。デバイス10は、植物材料36とともにヘッドスペース34内に単に設置されてもよく、またはデバイス10は、例えば、図1Aに示される外部層12などのデバイス10の外面に配置される、例えば、任意選択的な接着剤層24などの取り付け手段24によって、貯蔵ユニット30の内面に固着されてもよい。あるいは、取り付け手段24は、貯蔵ユニット30の内面に適用されてもよく、デバイス10の外部層12は、取り付け手段24に接着されてもよい。さらにまた、必要に応じて、デバイス10は、それを貯蔵ユニット30にヒートシールするかまたはテープで貼ることなどによる任意の他の好適な取り付け手段によって、貯蔵ユニット30に取り付けられ得る。
図4および5を参照すると、別の貯蔵ユニット40が示される。この実施形態において、密閉されたパッケージ層42の全てまたは一部が、デバイス10で形成され得る。図4および5に示されるように、貯蔵ユニット40の1つの側43が、貯蔵ユニット40の外面を形成する外部層12を備えたデバイス10で形成される。
図2〜5に示される貯蔵ユニット30および40が、最終消費者用途のための小さい個々のパッケージの形態である一方、本発明は、任意の好適な貯蔵ユニットに合わせて、大きさを拡大または縮小することができることが理解されるべきである。果実、野菜および花などの観賞植物などの植物材料は、最初の収穫の時点から最終使用者による使用サイクルの終了まで、劣化される。結果として、このような品目は、このサイクルの一環として、複数の貯蔵ユニットに入れられ、複数の貯蔵ユニットに移されることがある。したがって、本発明は、このような貯蔵ユニットの何れかで使用されることが意図される。
図6を参照すると、個々のデバイス10が、個々のデバイス10間の穿孔または他の離隔手段52を備えたロール形態50で作製されてもよく、それによって、デバイス10を、互いに隔てることができ、個々の貯蔵ユニット30(図示せず)に設置することができる。あるいは、穿孔または他の離隔手段52は、省略されてもよく、切断機構(図示せず)が、個々のデバイス10間を、周囲シール22を介して切断することによって、ロール50の個々のデバイス10を切断し、それらを隔てるのに使用されてもよい。
消費者分野において、個々の、別個のまたは折り畳まれたデバイス10のこれらのロール50またはスタックのより小さい形態が、密閉可能な蓋を備えた密閉可能なプラスチック袋およびプラスチック容器などの使い捨ておよび再利用可能な食品貯蔵カートンの両方とともに使用するために、消費者用のパッケージ中で販売され得る。このような用途において、ロール形態であるかまたは個々のスタックであるかにかかわらず、デバイス10には、外部層12の外面に配置される上記の取り付け手段24が設けられ得る。図7を参照されたい。結果として、取り付け手段24を保護するのが望ましいことがあり、取り付け手段24は、この例において、図7の断面に示されるような可剥性の剥離ストリップ25を備えた、接着剤パッチ24である。このような可剥性の剥離ストリップ25は、周知であり、紙または他の基板を一般的に用い、その少なくとも1つの側が、通常、接着剤24に接触するシリコーンの層などの剥離コーティングでコーティングされている。さらに、水蒸気透過性内部層14を保護するために、内部層14の外面はまた、使用前に内部層14の外面を剥がすことができる剥離ライナー26によって保護されてもよい。図7を参照されたい。剥離ライナー26は、通常、接着剤27の層またはそれに固着される他の好適な取り付け手段を有するであろう。
さらに他の実施形態において、個々のデバイス10は、図8の断面に示されるような個々のパウチ60、例えば、個包装の消毒剤などの多くの類似の他の製品中に包まれ、密閉され得る。その際、デバイス10は、気密状態に保たれ、使用前に水および水蒸気への早期の暴露から保護され得る。この用途において、接着剤層24などの取り付け手段が使用される場合、それは、この場合も、剥離ストリップ25(図示せず)によって保護されてもよく、またはパウチの内面が、剥離ストリップ25として働き得る。
さらに別の実施形態(図示せず)において、本発明は、海上コンテナなどの、大きい体積の植物材料が貯蔵され、輸送される非常に大きい容器に使用するために大きさが拡大され得る。このような用途において、容器の壁自体が、外部層12として働くことができ、封入剤16、担体材料18および活性成分20の組合せが、ブラシ塗布またはスプレーなどによりバルク形態で内壁に適用され、次に、内部層14で被覆されてもよく、内部層14は、接着剤でまたは他の形で取り付けられ、または外部層12として働く容器の壁に取外し可能に取り付けられ得る。あるいは、封入剤16、担体材料18および活性成分20は、発泡体材料またはスパンボンドウェブもしくは短繊維ウェブなどの繊維質の不織ウェブなどの別の基板に含浸またはコーティングされてもよく、別の基板は、次に、外部層12と内部層14との間に固定され得る。
次に、デバイス10の様々な構成要素のさらに詳細な説明が行われる。
外部層
外部層12は、担体材料18および活性成分20が配置される、外部層12と内部層14との間のデバイス10の内部への水および/または水蒸気の透過に抵抗すべきである。プラスチックフィルムおよび袋が使用される用途において、外部層12が、望ましい特性を用いるポリマーから作製されるのが望ましい。このような特性の例は、材料が可撓性であり、パッケージの内容物の状態を見るために透明であり、曇り防止性であり、印刷可能であり、密閉可能であり、耐穿刺性であり、水および水蒸気、および任意選択的に、酸素、二酸化炭素およびエチレンなどのガスの通過に対して不透過性であることを含む。
何種類かの塗膜形成ポリマーが、外部層12を形成するのに使用され得る。塗膜形成ポリマーの例としては、以下に限定はされないが、ポリオレフィン、ポリオレフィンプラストマーポリマー(POP)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、スチレン−ブタジエンコポリマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)および非常に低密度のポリエチレン(VLDPE)が挙げられる。ある用途において、外部層12が、活性物質20が早期に放出されないように、水および水蒸気/水分に対して不透過性であるのが望ましい。これは、外部層12が、プラスチック製の食品貯蔵袋または容器などの食品貯蔵ユニット30の全てまたは一部を形成する場合、特に当てはまる。しかしながら、デバイス10が貯蔵ユニット30の内部で使用される場合、水および水蒸気/水分に対して透過性の外部層12を有するのが望ましいことがある。フィルムまたは他の材料が、水蒸気透過性であるかまたは不透過性であるかの測定は、その水蒸気透過率またはWVTRを測定することによって行われる。この値は、全体が参照により本明細書に援用されるASTM試験方法F1249−06(Reapproved 2011)(38℃および100パーセントの相対湿度で)に準拠して決定され得る。この層12が水蒸気不透過性であるのが望ましい場合、層12は、3.0g×ミル/100平方インチ×日(1.18g×mm/m2×日)未満のWVTR、望ましくは、約0.5g×ミル/100平方インチ×日(0.20g×mm/m2×日)および約2.0g×ミル/100平方インチ×日(0.79g×mm/m2×日)のWVTRを有するべきである。g×ミル/100平方インチ×日の単位に、3.937008×10−1を乗算することにより、単位がg×mm/m2×日に換算されることに留意されたい。
外部層12を形成するのに使用されるフィルムは、単層フィルムであってもよく、またはフィルムは、多層フィルムまたは1つまたは複数の層の積層体であってもよい。さらに、必要に応じて、さらなる層が、繊維質の不織ウェブおよび他の材料を含むがこれらに限定されないフィルムに接着されるかまたは他の形で結合され得る。外部層12が、内部層14より透過性が低いことが望ましい場合。
いくつかの好適なポリマーが、以下に限定はされないが、Dow(登録商標)AFFINITY(商標)PF 1140G POPなどのDow(登録商標)AFFINITY(商標)ポリオレフィンプラストマーおよびDow(登録商標)ATANE(商標)ULDPEなどの超低密度ポリエチレンフィルムを含め、Dow Chemical Company(Midland,Michigan)から入手可能である。
内部層
得られる層が、水および/または水蒸気に対して透過性である限り、内部層は、様々な塗膜形成ポリマーから作製され得る。このような通気性フィルムは、当該技術分野において周知である。好適なポリマーの例としては、以下に限定はされないが、ポリオレフィン、ポリオレフィンプラストマーポリマー(POP)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、スチレン−ブタジエンコポリマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)および非常に低密度のポリエチレン(VLDPE)が挙げられる。充填剤が充填されたおよび延伸フィルムも、内部層14に好適なフィルムである。このようなフィルムは、当該技術分野において広く知られている。それらは、通常、炭酸カルシウムなどの特定の量の充填剤を、フィルムポリマー中に混合し、充填剤が充填されたポリマーをフィルムへと形成し、次に、フィルムを延伸して、それを通気性にし、水および水蒸気を通過させることができるようにすることによって作製される。さらに、孔あきフィルムも、内部層14に好適であり、このようなフィルムも、当該技術分野において広く知られている。
いくつかの好適なフィルムポリマーが、以下に限定はされないが、Dow(登録商標)AFFINITY(商標)PF 1140G POPなどのDow(登録商標)AFFINITY(商標)ポリオレフィンプラストマーおよびDow(登録商標)ATANE(商標)ULDPEなどの超低密度ポリエチレンフィルムを含め、Dow Chemical Company(Midland,Michigan)から入手可能である。
フィルムに加えて、発泡体材料(連続気泡発泡体など)も、繊維質の不織ウェブ(スパンボンドウェブ、メルトブローンウェブ、短繊維ウェブおよび上記のものの組合せなど)ならびに上記のフィルム、発泡体および繊維質の不織ウェブの何れかまたは全ての積層体として使用され得る。
内部層14を形成するのに使用されるフィルムは、上記のASTM試験F1249−06(Reapproved 2011)(38℃および100パーセントの相対湿度で)に準拠して、3.0g×ミル/100平方インチ×日(1.18g×mm/m2×日)超、望ましくは、約3.5g×ミル/100平方インチ×日(1.38g×mm/m2×日)および約6.0g×ミル/100平方インチ×日(2.36g×mm/m2×日)の水蒸気速度を有するべきである。
封入剤
封入剤16の目的は、水および/または水蒸気への早期の暴露および担体材料18とともに錯体化される活性成分20の、水および/または水蒸気による移動から、担体材料18と活性成分20との組合せを保護すること、および外部層12および内部層14を一緒に積層することである。担体18と活性物質20との最初の錯体化と、貯蔵ユニット30のヘッドスペース34内でのその組合せの実際の使用との間の時間は、かなり長くなり得る。この組合せが、十分に保護されない場合、この組合せは、環境中に存在する水分/湿気と早期に相互作用し、担体/活性物質の組合せが、それが機能することが意図される貯蔵ユニット30のヘッドスペース34中に充填されるときの前にその有効性を失い始めることがある。
貯蔵ユニット30の内部に含まれる水が、活性物質20を、貯蔵ユニット30のヘッドスペース34中に放出するように作用して、貯蔵ユニット30に含まれる植物材料36の熟成および/または腐敗を遅らせるのが望ましいが、この移動プロセスは、早期に、すなわち、傷みやすい内容物36およびデバイス10が、同じ貯蔵ユニット30のヘッドスペース34に含まれる前に起こるべきではない。
活性成分20を十分に保護するために、封入剤16が、非水性であること、低結晶性を有することおよび非晶質であることを含むがこれらの限定されないいくつかの特性を有するのが望ましい。封入剤16は、活性成分20の、水および水蒸気と反応性の性質のため、非水性でなければならない。非晶質であり、低結晶性を有することによって、封入剤16は、活性物質を水および水分から保護するのに十分に閉じているが、また、特に、デバイス10が取り扱われ、輸送されるときならびにデバイス10がヘッドスペース34内に含まれる植物材料36との接触によって操作されるとき、封入剤16の構造が活性成分への到達を可能にするのに十分に開いており、多孔質である。好適な封入剤は、望ましくは、室温で半固体であり、約80℃未満、望ましくは約50℃未満の融点を有するべきである。最も典型的に、封入剤16の融点は、約40℃〜約80℃の範囲である。
封入剤16が、約−200℃〜約20℃、より望ましくは約−30℃〜約20℃のガラス転移温度(Tg)を有するのも望ましい。
好適な封入剤としては、例えば、動物ろう、植物ろう、鉱ろうおよび合成ろうを含むろうが挙げられる。例示的なろうとしては、以下に限定はされないが、ヤマモモろうおよび蜜ろうが挙げられる。他の好適な材料としては、ペトロラタム、ステアリルジメチコン、ステアリルトリメチコン、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィンコポリマー、エチレンホモポリマー、C18〜C45オレフィンおよびポリα−オレフィンが挙げられる。市販のエチレンホモポリマーとしては、Baker Hughes Inc.(Sugar Land Texas)製のPetrolite(商標)EPコポリマーおよび同様にBaker Hughes Inc.製のVybar(商標)ポリマーなどのポリα−オレフィンが挙げられる。
担体材料
担体材料18は、疎水性および不水溶性であるべきであり、必要に応じて、活性成分とともに錯体化することができるべきである。錯体化を起こすために、担体(またはホスト)が、安定した「担体/活性物質」包接錯体(またはゲスト−ホスト複合体)を形成することによって、本来は不安定または揮発性の活性物質(またはゲスト)を安定化するのに使用される。包接錯体は、担体からの活性物質の放出を引き起こす特定の刺激が与えられるまで、活性物質を周囲条件で安定したまま保つことができる。特定の場合、活性物質が錯体から放出されるのを可能にする刺激は水蒸気である。本発明の一実施形態において、ホストはシクロデキストリンであり得、ゲストは1−MCPである。
材料が疎水性であるかどうかの1つの尺度は、少なくとも90°であるべきであるその接触角である。接触角を測定するための1つの好適な機器は、Rame−Hart Instrument Company(Mountain Lakes,New Jersey)から入手可能な、Leica APOレンズおよびSony 3CCD exwave HADカメラを備えたRame−Hartモデル番号200 Contact Angle Goniometerである。接触角は、固体上に液滴を生じさせることによって測定され得る。固/液界面および液/気界面間に形成される角度が、接触角と呼ばれる。最も一般的な測定方法は、液滴の輪郭を見て、三相線で頂点を有する固体輪郭と液体輪郭との間に形成される角度を二次元的に測定することを含む。担体が不水溶性であるのも望ましい。本発明の趣旨では、不水溶性は、20℃で水100ミリリットル当たり0.2グラム以下であるべきである。
1つの特によく適した担体材料18は、1−MCPを含む活性成分20とともに非常によく錯体化することが分かっているシクロデキストリン(本明細書において「CD」とも呼ばれる)である。好適なシクロデキストリン化合物としては、限定はされないが、α−シクロデキストリン(環中に配置される6つのグルコース単位)、β−シクロデキストリン(環中に配置される7つのグルコース単位)、およびγ−シクロデキストリン(環中に配置される8つのグルコース単位)を含む、6〜12のグルコース単位を含有するシクロデキストリンから誘導される化合物が挙げられる。しかしながら、βおよびより高級グルコース含有単位がペトロラタムを容易に受け入れ、封入剤をシクロデキストリンの内部に移動させるのを妨げるサイズ排除効果のために、αシクロデキストリンが、ペトロラタム封入剤に対して好ましい担体材料であることが分かっている。グルコース単位の結合および配置により、シクロデキストリンは、水素原子およびグリコシド架橋酸素原子によって覆われた中空内部を有する円錐形の分子構造を有する。
シクロデキストリン化合物は、活性成分20とともに錯体化し、担体材料18からの活性成分20を早期に放出させ得る水および/または水蒸気への早期の暴露を防ぐために封入剤16でコーティングされることが可能であるべきである。好適なシクロデキストリン化合物は、メタクリロイル−R−シクロデキストリン(ここで、Rが、2〜20個の炭素原子、望ましくは、4〜10個の炭素原子を有するアルキル基である);アクリロイル−R−シクロデキストリン(ここで、Rが、1〜20個の炭素原子、望ましくは、4〜10個の炭素原子を有するアルキル基である);アルケニルスクシニル化シクロデキストリン(ここで、アルケニル基が、2〜20個の炭素原子、望ましくは4〜10個の炭素原子を有する)などを含む。シクロデキストリン化合物は、約0.1〜約7の範囲の置換度を有し得る。特に好適なシクロデキストリン化合物は、重合可能な結合されたメタクリロイル部分を有するシクロデキストリン誘導体であるメタクリロイル−β−シクロデキストリンを含む。メタクリロイル−β−シクロデキストリンの重合は、ラジカル伝播機構によっておよび一般的な化学的または放射線開始技術を用いて行われ得る。1つの本発明の好ましいシクロデキストリン化合物は、2−ヒドロキシ−3−メチルアクリロイルオキシ−プロピル−βシクロデキストリンである。
活性成分
活性成分の目的は、植物の腐敗、特に、エチレンガスへの植物材料の暴露に伴う植物の腐敗を遅らせるのを助けることである。最も典型的に、植物材料の輸送および貯蔵の間、エチレンガス源は、植物材料自体である。多くの化学化合物が、植物材料腐敗の遅延に有用であることが確認されている。このような化学物質が機能するいくつかの異なる方法がある。ある化学化合物は、「エチレン阻害剤」と呼ばれるが、「エチレン捕捉剤」と呼ばれるものもある。エチレン阻害剤がどのように機能するかのより詳細な説明については、全体が参照により本明細書に援用される、Schotsmans,W.C.;Prange,R.K.;Binder,B.M..In Horticultural Reviews;Janick,J.,Ed.;John Wiley and Sons:New Jersey,2009;Vol.35,pp 263−313、および上述されるTzeらの論文を参照されたい。全体が参照により本明細書に援用される、ワシン州立大学の果樹調査研究センター(the Washing State University Tree Fruit Research and Extension Center)によって出版されたSylvia Blankenshipによる“Ethylene:The Ripening Hormone”,November 12,2012(http://postharvest.tfrec.wsu.edu/pages/PC2000F)も参照されたい。
このような阻害剤の例としては、以下に限定はされないが、二酸化炭素、チオ硫酸銀、シクロプロペン、シクロオクテン、シクロオクタジエンおよび1−メチルシクロプロペンが挙げられる。本発明の実施形態の1つにおいて、活性成分20は1−MCPである。貯蔵ユニット30のヘッドスペース34に含まれる水および/または水蒸気が、担体材料18と接触すると、水/水蒸気は、担体材料18(この場合、シクロデキストリンである)から錯体化された活性成分20(この実施形態において1−MCPである)を移動させ、1−MCPは、貯蔵ユニット30のヘッドスペース34中に放出される。1−MCPは、植物材料36に接触し、植物材料中のエチレン植物受容体と結合する。例えば、全体が参照により本明細書に援用されるToivonenらへの米国特許出願公開第2006/0154822号明細書およびTzeらによる上記の論文を参照されたい。
実験項
分析試験方法
試料を、時間ゼロ(t0)で、TEFLON(登録商標)で表面を被覆したシリコーン隔壁を備えた清浄な250mLのセラムボトル(serum bottle)に入れた。セラムボトルを、指示された試験間隔の間、室温(約20℃)に維持した。指示されたサンプリング間隔で、試料ボトルから1mLのガスを取り出すことによって、セラムボトルヘッドスペースをサンプリングした。試験フィルムを取り囲む1−ブテンヘッドスペース濃度を、1mLのガス試料のガスクロマトグラフィーを用いて定量化した。
炎イオン化検出(FID)、250μLのサンプリングループを備えた6ポート加熱サンプリング弁およびデータ収集ソフトウェア(HP ChemStation A06.03−509)を用いて操作されるガスクロマトグラフ(HP 5890、Hewlett Packard Company(Palo Alto,CA)から入手される)を用いて、1−ブテンヘッドスペース濃度を測定した。静的なヘッドスペース濃度を、250mLのボトル容積当たりの1−ブテンのμLで測定され、μL/L、または百万分率(vol/vol)として表される5点の1−ブテン検量線を用いて、試験試料において測定した。セラムボトルのサンプリングを、RTx−5 GCカラム、30m×0.25mmの内径(I.D.)、0.25フィルム(Restek,Inc.(Bellefonte,Pa.)から入手される)に直接つながる250μLのサンプリングループ境界面を備えたValco Instrumentの6ポート手動ガスサンプリング弁(Valco #DC6WE、Valco Instruments Company,Inc.(Houston,TX)から入手される)を直接介して行った。GC運転条件が、表1に示される。
1リットルの空気を含むTEDLAR(登録商標)ガスサンプリング袋中で、10mLの99.0%純粋な1−ブテンガス(Scotty Gas #BUTENEO1、Sigma Aldrich Corporation(St.Louis,MO)から入手される)を希釈することによって、1−ブテン作業標準を調製した。1−ブテン作業標準濃度は、10,226μL/L(PPM)であった。
250μLの気密シリンジ(Hamilton Gastight(登録商標)#1725)を介して、50、100、200、300および400μLの作業標準を、Teflon(登録商標)で表面を被覆したシリコーン隔壁を備えた250mLのセラムボトル中に注入することによって、校正標準を、5つの濃度レベルで調製した。ChemStationソフトウェアを用いて、線形回帰方程式を用いて1−ブテン応答係数を計算した。1−ブテン標準曲線相関係数は、0.999であった。
実施例1
1−ブテン(99.0%純粋、Scott Specialty Gases(Plumsteadville,Pa.)から入手される)を、1−MCPの代わりに飽和α−シクロデキストリン溶液に通してバブリングしたことを除いて、1−MCP/c/1−MCPを形成するために、Neoh,T.L.et al.,J.Agric.Food Chem.2007,55,11020−11026によって記載される技術を用いて、1−ブテンおよびα−シクロデキストリンの包接錯体を形成した。沈殿物が形成され、これを、10μmの装着されたフィルタに通してろ過することによって収集し、約24時間にわたって0.1mm Hgで、周囲温度で乾燥させた。沈殿物は、「1−ブテン/c/a−CD」と呼ばれた。
ボトルの壁に粉末が付着されないように注意しながら、100mgの、収集され、乾燥された沈殿物を、隔壁キャップを備えた250mLのガラスボトルに加えることによって、1−ブテン/c/a−CDを分析した。約1時間後、1mLのヘッドスペースガスを、上記のGC技術を用いたGCによってサンプリングした。測定可能な濃度の1−ブテンは検出されなかった。次に、3mLの水を、隔壁を介してボトル中に注入し、ボトルを、メカニカルシェーカーに入れ、約1時間にわたって激しく混合した。次に、250μLのヘッドスペースガスを取り出し、隔壁キャップを備えた空の250mLのボトルに加え、ボトルの内部を窒素ガスでパージした。
上記のGC方法を用いて、250μLのガスを、250mLのボトルから取り出すことによって、1−ブテンのヘッドスペース濃度を、ガスクロマトグラフィーを用いて第2のボトルにおいて定量化し、さらに、6点の1−ブテン検量線とともに、上記の1−ブテン校正標準を用いて、FID検出器を予め校正した。この方法を用いて、錯体化1−ブテン/c/a−CDの収率は、94.5%であることが分かった。
実施例2
シクロデキストリン組成物を、フレキソ印刷方法を用いて、連続的に移動する可撓性ウェブに適用した。公知の重量のペトロラタム(VASELINE(登録商標)、融点38℃〜56℃、Sigma Aldrich Corporation(St.Louis,MO)から入手される)を有する容器を、液化するまで70℃の水浴に浸漬し、低せん断混合を用いて、4重量%の1−ブテン/c/a−CDを、液化ペトロラタム中に機械的に分散させることによって、ペトロラタム組成物を形成した。混合物は、組成物1と呼ばれる。
フレキソ印刷を、ナローウェブ回転印刷プレス(Gallus Inc.(Philadelphia,PA)から入手される340mmの幅のフレキソ印刷プレス)を用いて行った。工学(engineered)フォトポリマーで作製され、かつプレートの表面積の40%を覆う隆起した非連続ダイヤモンドレリーフパターンを有する可撓性プレートを、プレートシリンダーに接着した。印刷に使用されるフィルム基板は、高バリア性フィルム(EXXON MOBIL(登録商標)BICOR(登録商標)210 ASB−X、アクリルおよびPVdCがコーティングされた配向ポリプロピレン、33cmの幅、EXXON MOBIL(登録商標)Corporation(Irving,TX)から入手される)であった。インク溜め(fountain trough)に組成物1を充填した。高温空気を、供給ロール(fountain roll)に吹き付けて、組成物1を液化状態に保った。液化組成物1を、300ライン/インチ(118ライン/cm、8.35bcm)のアニロックスロールを用いてフォトポリマープレートに適用した。印刷プレスを、100〜150フィート/分(30.5〜45.7m/分)で運転した。次に、印刷された組成物1を、ドライアイスペレットが充填された冷却ロールを用いて「硬質硬化(hard−set)」した。次に、ウェブ表面全体を、第2の基板を接着剤に結合する前に、500ライン/インチ(197ライン/cm、5.02bcm)のアニロックスロールを用いて、フレキソ印刷によってコーティングされるUV積層接着剤(RAAL00160/1060DHV UV/EB硬化性接着剤、ACTEGA WIT,Inc.(Lincolnton,NC)から入手される)で、インラインでコーティングした。第2の基板は、1ミル(25.4μm)の厚さの、低密度ポリエチレン(LDPE)ウェブ(MI=1.8g/10分、密度0.921g/ml、ビカット軟化点100℃)であり、これを、ニップで適用し、接着剤の放射線硬化を、積層されたフィルムにおける分離または空隙を防ぐために、ニップ点の直後に取り付けられたUVランプを用いて行った。300ワット/インチのランプを用いて、硬化を行った。完成した処理積層体1、ダイヤモンドパターンで印刷された組成物1を含有する処理積層体を巻き取った。
このように、組成物1を、処理積層体1の2つの基板層の間に配置し、ダイヤモンドパターンによって提供される間隙領域における基板−接着剤−基板の直接接触により、組成物1を「島」へと有効に単離した。シクロデキストリン組成物の単離された島は、巻き取り、貯蔵、および使用のしやすさを提供する。さらに、農産物も中に含まれた容器に入れる場合、組成物1は、農産物に直接接触しない。ペトロラタムは、包装された食品に接触することはなく、ペトロラタムの移動は不可能である。
実施例3
3つの10cm×30.5cmの矩形の試料を、処理積層体1から切り取った。各試料を、緩く巻き取り、上に概説される分析試験方法にしたがって試験するために別個の清浄な250mLのボトルに入れた。各ボトルに、t
0で50μLの脱イオン水を注入した。液体水がフィルムに直接接触しないように注意した。実施例1のGC技術を用いて、4つの期間:水の注入の2時間後、22時間後、44時間後、および72時間後の時点で、ボトルヘッドスペースを、1−ブテンについて分析した。3つの試料のそれぞれの1−ブテンの平均ヘッドスペース濃度および標準偏差が、表2に一覧にされている。結果は、時間の増加とともに、より多くの量の1−ブテンが、積層されたフィルム基板からヘッドスペース中に放出されたことを示す。
実施例4
1−ブテンおよびα−シクロデキストリンを合わせた重量を基準にして、1.0〜2.25重量パーセントの1−ブテンとともに、α−シクロデキストリンを錯体化した。10重量パーセントのα−シクロデキストリンと90重量パーセントのペトロラタムとの混合物を、ビーカー中で混合した。次に、ビーカーを、約30分間にわたって50℃で熱板上に設置し、ペトロラタムが溶融するまで撹拌した。透明で均一な分散体が得られた。次に、分散体を、マイヤーロッド(Meyer rod)(#20)を介して、フィルムの重量を基準にして約50重量パーセントの含浸量(add−on)になるまで、ポリエチレンフィルムに適用して、薄いコーティングを形成した。最後に、α−シクロデキストリン/1−ブテン/ペトロラタムコーティングが積層された2つのポリエチレンフィルム間に挟まれるように、第2のポリエチレンフィルムを、コーティングの上に設置した。
上記の2つの試料を調製し、次に、デバイスからの1−ブテンの放出のレベルを測定するために試験した。材料の2インチ×8インチ(5.1×20.3センチメートル)の試料を切り取り、100マイクロリットルの水でそれぞれ加湿された別個の250ミリリットル(mL)のボトルに入れ、各ボトルを、シリコーン隔壁シールで封止した。ボトルを、試験サイクル全体を通して20℃の温度に維持した。各ボトル内の環境のサンプリングを、0時間で、その後、1時間、2時間、4時間および16時間で行った。試料を、ガスクロマトグラフィーにかけて、ボトルの閉鎖された環境中に放出される1−ブテンのレベルを測定した。2つの試料(試料Aおよび試料B)について百万分率(PPM)の単位で測定された1−ブテンの量が、表3中で以下に示される。
データから分かるように、ペトロラタム中に封入されているにもかかわらず、密閉された環境内の水蒸気は、α−シクロデキストリンとともに錯体化された1−ブテンに到達することができ、果実および野菜などの植物材料を含むように密閉されたパッケージのヘッドスペースを模倣する閉鎖された環境中に1−ブテンを放出させ、それによって、貯蔵された植物材料の熟成および劣化を遅らせることができた。
この方法は、フィルム食品包装ラインにおいて容易に商業的に実施可能であり、ここで、α−シクロデキストリン/1−MCP錯体が、ペトロラタム中で配合され、一方または両方が通気性である2つのフィルム層間に挟まれながら、スロットダイを介して適用される。フィルム層は、α−シクロデキストリン/1−MCP錯体への水分の到達を可能にするために異なる厚さおよび水蒸気透過率を有することができ、このα−シクロデキストリン/1−MCP錯体は、その後、切り立ての果実および野菜を含む貯蔵ユニットのヘッドスペースにおける1−MCPの放出を引き起こすことができる。
本明細書に例示的に開示される本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素の非存在下で好適に実施され得る。本発明には、様々な変更形態および代替的形態が可能であるが、本発明の詳細が、例として示されており、詳細に記載される。しかしながら、本発明が、記載される特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。逆に、本発明は、本発明の趣旨および範囲内に含まれる変更、均等物、および代替例を包含することが意図される。様々な実施形態において、本発明は、本明細書に記載され、特許請求の範囲にしたがって権利請求される要素を好適に含み、それから本質的になり、またはそれからなる。