以下、視力評価装置等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
(実施の形態)
図1は、本実施の形態における視力評価装置1のブロック図である。
視力評価装置1は、検査結果情報格納部10、検査結果取得部11、係数取得部12、モデル関数格納部13、評価値取得部14、出力部15を備える。
検査結果情報格納部10には、複数の検査結果情報が格納される。一の検査結果情報は、一の視力の評価値と対応付けられた複数の視標について行われた、一の被検者の視力の検査結果を示す情報である。検査結果情報格納部10には、少なくとも、一の被検者についての、異なる複数の視力の評価値と対応付けられた複数の検査結果情報が格納されている。検査結果情報は、視力の評価値と、この視力の評価値と対応付けられた複数の視標に対する被検者の正答率とを有する情報である。なお、ここでの一の被検者の視力の検査結果とは、一の被検者の一の眼についての視力の検査結果と考えても良い。かかることは以下においても同様である。視標とは、視力の評価に用いられる文字や記号等である。例えば、ランドルト環等が一般的に知られている。視力の評価値とは、視力の評価結果を示す値である。視力の評価値は、例えば、小数視力や、logMAR等である。logMARは、最小分離角(MAR)の常用対数である。最小分離角は、最小視角とも呼ばれる。最小分離角は、被検者がかろうじて判別できる二点のなす最小の角(視角)である。なお、例えば、上記以外の評価値を用いても良い。本実施の形態においては、例えば、検査結果情報格納部10に格納される視力の評価値として、logMARを用いる場合を例に挙げて説明する。視標について行われた視力の検査とは、例えば、2以上(好ましくは3以上)の視力の評価値のそれぞれについて、対応する複数の視標を用意し、視力の評価値にそれぞれ対応する複数の視標を被検者に順次読ませて、被検者の読み取った各視標が、実際の視標と一致するか否かを判断する検査である。被検者の正答率とは、一の視力の評価値について被検者が読み取った視標のうちの答えが正しかった比率であり、具体的には、読み取った視標に対する実際の視標と一致していた比率である。ただし、正答率は、実質的に答えが正しかった比率を示すことが可能な情報であればよく、例えば、不正答率を正答率として扱うようにしても良い。また、被検者に読み取らせる視票数が一定である場合等には正答数を正答率として扱うようにしても良い。
検査結果情報格納部10に格納される複数の検査結果情報は、好ましくは、異なる視力の評価値と対応付けられた2以上の正答率であって、正答率に関する閾値をまたぐ2つの正答率を含む検査結果情報である。正答率に関する閾値とは、被検者が一の視力の評価値に対応する視標を、正確に読み取ることができたか否かを判断するために用いられる正答率の閾値である。通常は、一の視力の評価値に対応する複数の視標を、被検者が読み取った場合において、正答率が閾値以上であれば、その一の視力の評価値以上の視力を被検者が有していると判断される。例えば、小数視力についての視力検査における閾値としては、通常は50%が用いられる。検査結果情報格納部10に格納される複数の検査結果情報は、より好ましくは、閾値をまたぐ正答率を含む検査結果情報であって、閾値に最も近い二つの正答率を含む2つの検査結果情報を少なくとも含んでいることが好ましい。
また、検査結果情報格納部10には、異なる視力の評価値をそれぞれ有する3以上の検査結果情報が格納されることが好ましい。また、この3以上の検査結果情報は、連続している3段以上の視力の評価値とそれぞれ対応付けられた視標について行われた視力の検査結果に対応する検査結果情報であることが好ましい。より好ましくは、正答率が閾値(例えば、50%)を超えた最初の検査結果情報を中心とした3点であることが好ましい。
なお、検査結果情報格納部10には、異なる被検者の検査結果情報が、被検者の識別情報と対応付けて格納されていても良い。
ここでの格納とは、一時記憶も含む概念である。検査結果情報格納部10に検査結果情報が記憶される過程は問わない。ここでは、一例として、後述する検査結果取得部11が取得した検査結果情報が、検査結果情報格納部10に蓄積される場合を例に挙げて説明する。検査結果情報格納部10は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
検査結果取得部11は、複数の検査結果情報を取得する。そして、取得した検査結果情報を、検査結果情報格納部10に蓄積する。ここでの取得は、例えば、検査結果情報の受け付けも含む概念である。例えば、検査結果取得部11は、図示しない入力手段等を介してユーザから入力された検査結果情報を取得する。また、検査結果取得部11は、図示しない入力手段等を介して受け付けた、検査に用いられた一の視力の評価値に対応する視標数と、被検者の正答数との組を用いて、一の視力の評価値について正答率を算出し、この正答率と一の視力の評価値とを有する検査結果情報を取得しても良い。また、検査結果取得部11は、図示しない入力手段等を介して、検査に用いられた一の視力の評価値に対応する複数の視標のそれぞれについての、被検者が正答したか否かを示す情報を受け付け、この情報を集計することで、一の視力の評価値について正答率を算出し、この正答率と一の視力の評価値とを有する複数の検査結果情報を取得しても良い。上記の正答率は、例えば、正答数を検査に用いられた視標数で除算することで算出できる。また、異なる視力の評価値についてそれぞれ検査結果情報を取得するためには、上記の処理を異なる視力の評価値ごとに行うようにすればよい。また、検査結果取得部11は、入力手段等を介して受け付けた検査結果情報が有する視力の評価値を異なる種類の評価値に変換しても良い。例えば、入力手段等を介して受け付けた検査結果情報が有する視力の評価値が、最小分離角の常用対数で表された値であるlogMARでない場合(例えば、小数視力等である場合)において、この視力の評価値をlogMARに変換してもよい。logMARは、最小分離角の常用対数で視力の評価を示した値であり、小数視力は、最小分離角の逆数の関数で視力の評価を示した値であることから、演算や変換テーブル等を用いることで、相互に変換が可能である。ここでの受付とは、例えば、入力手段からの受付や、他の機器等から送信される入力信号の受信や、記録媒体等からの情報の読み出し等である。入力手段は、テンキーやキーボードやマウスやメニュー画面によるもの等、何でも良い。
ここで、検査結果情報取得部11の一例について説明する。なお、ここでの処理は、一の被検者についての検査結果として得られた情報を用いた処理を一例として説明する。
なお、ここでは、予め、図示しない解答情報格納部に、視力の評価値と、当該視力の評価値に対応する視標の識別情報である視標識別情報と、当該視標に対する被検者の解答とを有する解答情報が複数格納されるものとする。解答情報は、視標が示すものとして被検者が解答した内容を示す情報である。例えば、視標がランドルト環である場合、解答情報は、ランドルト環の切れ目の向きを示す値(例えば、上下左右等)である。視標識別情報は、検査に用いられた視標を識別可能な情報であればよく、例えば、一の視力の評価値に対応付けられている視標を識別可能な情報であればよい。例えば、視標識別情報は、視標毎に個別に割り当てられた識別可能なコード等であっても良いし、視標の右(あるいは左)から数えた順番等の値であっても良い。また、視標識別情報は、視標が対応付けられている視力の評価値との組合せにより、視標を識別可能な情報であっても良い。なお、解答情報格納部に格納されている複数の解答情報は、異なる視力の評価値を含む複数の解答情報で構成されていることが好ましい。また、解答情報格納部には、各視力の評価値を含む解答情報が複数格納されていることが好ましい。更には、解答情報格納部に格納されている各視力の評価値を含む複数の解答情報は、異なる視標識別情報を有するものであることが好ましい。
また、図示しない正答管理情報格納部には、視標識別情報と、当該視標識別情報が示す視標についての正しい答えを示す情報である正答情報とを有する正答管理情報が複数格納されるものとする。なお、解答情報格納部および正答管理情報格納部は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。また、ここでの格納は一時記憶であっても良い。ここでの視標識別情報は、検査に用いられた視標を識別可能な情報であり、通常は、解答情報に含まれる視標識別情報と同じものが用いられる。但し、解答情報に含まれる視標識別情報と視力の評価値との組合せを、正答情報の視標識別情報としても良い。なお、正答情報が、さらに、視力の評価を有するようにしても良い。正答情報とは、視標が示すものの正しい答えを示す情報である。例えば、視標がランドルト環である場合、正答情報は、ランドルト環の切れ目の向きを示す値(例えば、上下左右等)である。ただし、正答情報は、視標が示すものの正しい答えを結果的に示すことが可能な情報であればよく、不正解のものを示す情報であっても良い。
なお、解答情報格納部および正答管理情報格納部は、不揮発性の記憶媒体または揮発性の記憶媒体で実現されうる。また、ここでの格納は一時記憶も含む概念である。
検査結果取得部11は、図示しない正答管理情報格納部に格納されている正答管理情報から、図示しない解答情報格納部に格納されている各解答情報に含まれる視標識別情報にそれぞれ対応する正答情報を取得する。図示しない解答情報格納部に格納されている各解答情報とは、ここでは、一の被検者と対応付けられた各解答情報である。
検査結果取得部11は、上記で各解答情報について取得した正答情報と、各解答情報に含まれる解答とを比較して、前記各解答情報が示す解答が正答であるか否かの判断結果を解答情報毎に取得する。例えば、正答情報が、正しい答えを示す情報である場合、解答がこの値と一致するか否かを判断し、一致する場合、正答であることを示す判断結果を取得する。また、一致しない場合、正答でないことを示す判断結果を取得する。なお、判断結果は、結果的に、正答数を取得することが可能な情報であればよい。検査結果取得部11は、正答である場合の判断結果、または正答でない場合の判断結果の一方のみを取得するようにしても良い。
検査結果取得部11は、同一の視力の評価値と対応付けられて解答情報格納部に格納されている複数の解答情報の数を、視力の評価値毎に算出する。例えば、視力の評価値が同一である解答情報を検索し、検出数をカウントする。
検査結果取得部11は、上記で算出した同一の視力の評価値と対応付けられて解答情報格納部に格納されている解答情報の数と、この複数の解答情報のそれぞれについて取得された判断結果とを用いて、視力の評価値毎の正答率を算出する。例えば、検査結果取得部11は、同一の視力の評価値と対応付けられて解答情報格納部に格納されている解答情報の数と、この複数の解答情報のそれぞれについて取得された判断結果のうちの、正答であることを示す判断結果の数とを用いて、視力の評価値毎の正答率を算出する。具体的には、正答であることを示す判断結果の数を、解答情報の数で除算することで、正答率を算出する。これが、例えば、一の視力の評価値についての正答率であり、同様の正答率を、解答情報が有している他の視力の評価値についても行う。正答率は、割合で示されても良いし、百分率で示されても良い。これにより、解答情報に格納されている視力の評価値毎に、視力の評価値と正答率の組とを取得することができる。
そして、検査結果取得部11は、このようにして取得した視力の評価値と正答率とを有する複数の検査結果情報を、検査結果情報格納部10に蓄積する。なお、検査結果取得部11が検査結果情報を蓄積する際に、視力の評価値を変換するようにしても良い。例えば、解答情報に格納されている視力の評価値が小数視力で表された視力の評価値である場合、検査結果取得部11は、上記で取得した小数視力で表された視力の評価値を、演算や変換テーブル等を用いてlogMARに変換し、変換したlogMARと正答率とを有する検査結果情報を、検査結果情報格納部10に蓄積するようにしてもよい。
検査結果取得部11は、例えば、テンキーやキーボード等の入力手段のデバイスドライバーや、メニュー画面の制御ソフトウェア等で実現され得る。また、検査結果取得部11は、正答率等を算出するための手段として、MPUやメモリ等やハードウェア(専用回路)を有していても良い。
係数取得部12は、知覚確率曲線の係数を取得する。係数を取得するということは、係数の値を取得することと考えて良い。知覚確率曲線とは、検査結果情報格納部10に格納されている複数の検査結果情報に含まれる視力の評価値と正答率との関係を示す曲線である。知覚確率曲線は、具体的には、複数の検査結果情報に含まれる視力の評価値と、各視力の評価値と対応付けられた視標に対する一の被検者の正答率との関係を示す曲線である。
係数取得部12は、例えば、検査結果情報格納部10に格納されている複数の検査結果情報に含まれる評価値と正答率とに適合する知覚確率曲線の係数を取得する。例えば、係数取得部12は、一の被検者(あるいは一の被検者の一の眼)に対して行われた視力の検査結果を示す、異なる視力の評価値とそれぞれ対応付けられた複数の検査結果情報に含まれる評価値と正答率とに適合する知覚確率曲線の係数を取得する。複数の検査結果情報に適合する知覚確率曲線とは、例えば、複数の検査結果情報にそれぞれ含まれる視力の評価値と正答率とを近似する曲線や、複数の検査結果情報にそれぞれ含まれる視力の評価値と正答率とについて得られる回帰曲線と考えても良い。複数の検査結果情報に適合する知覚確率曲線の係数を取得するということは、例えば、複数の検査結果情報を近似する曲線や複数の検査結果情報についての回帰曲線を示す曲線関数の係数を取得することと考えても良い。ここでの知覚確率曲線の係数とは、知覚確率曲線の曲線関数の係数を意味すると考えても良い。知覚確率曲線の係数を取得するということは、知覚確率曲線の曲線関数を特定することとなることから、結果的には知覚確率曲線を取得することと考えても良い。
ここで、通常、視力検査における正答率と視力の評価値との変化は、S字状の知覚確率曲線を描くことから、一の被検者の一の眼についての複数の検査結果情報に適合させた(フィットさせた)S字曲線の曲線関数は、例えば、一の被検者の一の眼の知覚確率曲線を表すと考えられる。このため、係数取得部12は、例えば、予め用意されている曲線関数を取得し、この曲線関数を複数の検査結果情報に適合させるための係数を算出するようにしてもよい。これにより適合された曲線関数が、知覚確率曲線であり、算出された係数が、知覚確率曲線の係数である。この予め用意されている曲線関数は、S字曲線の曲線関数であることが好ましい。ただし、予め指定された曲線は、S字曲線以外の曲線を描く曲線関数であっても良い。ここでは、この予め用意されている曲線関数をモデル関数と呼ぶ。モデル関数は、知覚確率曲線を取得するためのモデルとなる曲線関数と考えてもよい。例えば、係数取得部12は、一のモデル関数と複数の検査結果情報に含まれる視力の評価値と正答率との複数の組とを用いて、この一のモデル関数を複数の検査結果情報に含まれる視力の評価値と正答率とに適合させるための、当該モデル関数の係数を算出する。この算出した係数を上記の一のモデル関数に代入したものが、例えば、複数の検査結果情報に適合した知覚確率曲線であり、この算出した係数が、複数の検査結果情報に適合した知覚確率曲線の係数である。モデル関数は、例えば、1以上の値が未決定である係数を有する曲線関数である。なお、モデル関数を表す式は、例えば、知覚確率曲線を示す回帰式と考えても良い。また、複数の検査結果情報に適合させた知覚確率曲線の係数は、知覚確率曲線を示す回帰式の係数と考えても良い。知覚確率曲線は、通常、各被検者の各眼毎に取得される。
なお、係数取得部12が、複数の検査結果情報に適合する知覚確率曲線の係数を取得するということは、予め指定された曲線関数(モデル関数)が、前記複数の検査結果情報に含まれる視力の評価値と正答率との関係を示す曲線となるように、当該曲線関数の係数を決定し、当該決定した係数を前記知覚確率曲線の係数として取得することと考えても良い。
係数取得部12は、具体的には、最小二乗法(least squares method)を用いて、モデル関数を複数の検査結果情報に含まれる視力の評価値と正答率とに適合させるための、このモデル関数の係数を取得する。このようにして取得されたモデル関数の係数が、複数の検査結果情報に適合する知覚確率曲線の係数となる。例えば、係数取得部12は、視力の評価値と、視力の評価値に対応する視標についての正答率とをそれぞれ示す座標で構成される直交座標系において、複数の検査結果情報が有する視力の評価値と正答率との組により表される複数の座標のそれぞれからの距離の二乗の合計が最小となるような曲線関数(好ましくはS字の曲線関数)の係数を、モデル関数を用いて取得する。具体的には、係数取得部12は、一のモデル関数と、複数の検査結果情報がそれぞれ示す複数の座標との距離の二乗の合計が最小となるように、上記の一のモデル関数の係数を決定(具体的には算出)する。このようにして決定された係数をモデル関数に代入したものが、複数の検査結果情報に適合した知覚確率曲線となる。なお、最小二乗法により、複数の座標に適合するよう、一のモデル関数の係数を決定する処理は、公知の技術であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
なお、複数の座標に適合するよう、一のモデル関数の係数を決定する処理は、最小二乗法以外の、回帰分析等に用いられる方法を用いた処理であってもよい。また、一のモデル関数は、予め指定されているモデル関数であっても良いし、ユーザにより指定されたモデル関数であっても良い。なお、モデル関数が、検査結果情報に含まれる視力の評価値と正答率等の測定により得られた値に適合するよう、このモデル関数の係数を算出する処理については、回帰分析等の処理においては公知の技術であるので、ここでは詳細の説明については省略する。
ここで、上記で用いられるモデル関数の好ましい例について説明する。生理学や医学の分野においては、以下に示すような、酸素の解離曲線を示すHillの式と呼ばれる式が従来知られていた。
なお、P
50、nは係数である。
上記の酸素の解離曲線の式の詳細については、以下の非特許文献3を参考にされたい。「非特許文献3:Takahashi et al. 著「Theoretical analysis of oxygen consumption by vascular walls exposed to hemodynamic stress in the human retinal microvascular network.」 Trans Jpn Soc Med Biol Eng 48: 482-493, 2010.」。
本願発明者は、鋭意研究を行った結果、視力の評価値と正答率との対応関係を示すモデル関数として、上記の式(1)を利用した以下に示すようなモデル関数を用いることが最適であるという知見を得た。
なお、x
50およびnは係数である。
x50は、具体的には変曲点である。変曲点とは、例えば、正答率が50%となる視力の評価値である。ここでの予め指定された値は、被検者の正確な視力の評価値に対応する正答率の値と考えてもよい。また、nは、上記のモデル関数の傾きを示す値(言い換えれば、変化の度合いを示す値)と考えても良い。
ここで、さらに、本願発明者は、鋭意研究を行った結果、上記の式(2)における変化の度合の程度を評価できる値であるn値が、視機能の評価値として利用できるというこれまでにない新たな知見を得た。例えば、黄斑変性など網膜機能に障害のある患者や疾病を持つ患者においては、治療によっても得られる視力に限界がある場合がある。そのため視力検査においては、障害や疾病を持つ患者においては、正答率の変化が正常人と異なる可能性がある。したがって、上記の式(2)の傾きを示す値であるn値の値により、被検者の視機能を判断することが可能となる。
係数取得部12は、例えば、上記の式(2)で表される曲線関数を、複数の検査結果情報に適合させるためのこの式(2)の曲線関数の係数を、知覚確率曲線の係数として取得する。係数取得部12は、例えば、検査結果情報格納部10に格納されている複数の検査結果情報を用いて最小二乗法を行うことにより、上記の式(2)が示すモデル関数を、複数の検査結果情報に適合させた場合の、モデル関数の係数であるx50およびnの値を取得する。
なお、係数取得部12は、モデル関数が複数の係数を有する場合、全ての係数の値を取得しても良いし、複数の係数のうちの1部のみの値を取得しても良い。例えば、式(2)に示すモデル関数を用いる場合には、係数x50だけを取得するようにしても良い。後述するように、この係数x50を用いることで、被検者の視力の評価値を取得することが可能であるからである。
なお、係数取得部12は、上記以外の生理学および医学に関する知覚確率曲線を示すモデル関数を用いるようにしても良い。
また、上記以外の生理学に関するS字曲線関数である知覚確率曲線をモデル関数として用いてもよい。
また、上記の式(2)等を部分的に変更した式をモデル関数として用いるようにしても良い。
また、モデル関数として用いる曲線の関数として、複数の関数を組み合わせた(複合した)関数である複合関数を用いるようにしても良い。そして、このような複合関数を用いて、知覚確率曲線を取得するようにしても良い。例えば、複合関数は、正答率の値の範囲毎に、異なる複数の関数を組み合わせた関数である。一例を挙げると、複合関数は、正答率が、0%以上20%未満の範囲と、20%以上80%未満の範囲と、80%以上100%以下の範囲とで、それぞれ異なる関数を組み合わせた関数である。
なお、モデル関数は、例えば、後述するモデル関数格納部13に予め格納しておくようにして、係数取得部12は、モデル関数格納部13から適宜モデル関数を読み出して、このモデル関数を用いて検査結果情報に適合させた知覚確率曲線の係数を取得するようにしてもよい。
係数取得部12は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。係数取得部12の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
モデル関数格納部13には、モデル関数が格納される。ここでの格納は,一時記憶も含む概念である。モデル関数格納部13は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
評価値取得部14は、係数取得部12が取得した知覚確率曲線の係数を用いて、被検者の視力の評価値を取得する。ここで取得する視力の評価値は、被検者の最終的な視力の評価値と考えても良い。例えば、評価値取得部14は、係数取得部12が、一のモデル関数について取得した、知覚確率曲線の係数を、一のモデル関数に代入して知覚確率曲線の式を取得し、この知覚確率曲線の式に、予め指定された正答率の値を入力した場合の、視力の評価値を算出する。予め指定された正答率の値とは、例えば、被検者の正確な視力の評価値を判断する際に用いられる正答率である。例えば、通常の視力の検査においては、一の視力の評価値と対応付けられた複数の視標に対する、被検者の正答率が50%となった場合に、この視力の評価値が、被検者の正確な視力の評価値であると判断することから、ここでの予め指定された正答率としては50%を用いることが好ましい。ただし、臨床的には、視標に対する被検者の正答率が50%以外の値、例えば、60%となった場合に、この視力の評価値を被検者の正確な視力の評価値であると判断することもあるため、ここでの予め指定された正答率として、50%以外の値、例えば、60%や、50%の前後の値等を設定するようにしても良い。なお、ここで取得する視力の評価値は、被検者の最終的な視力の評価値と考えても良い。
また、特に、知覚確率曲線の係数を得るためのモデル関数として、上記で示した式(2)を用いる場合、また、評価値取得部14は、係数取得部12が取得した知覚確率曲線の係数の一つである係数x50を用いて、視力の評価値を取得してもよい。この係数x50は、上述したように、式(2)が示すモデル関数を用いて取得された知覚確率曲線における正答率が50%となる視力の評価値である。このため、この係数x50の値が、被検者の正確な視力の評価値となる。本実施の形態の具体例においては、この係数x50を用いて、視力の評価値を取得する場合について説明する。
なお、評価値取得部14は、上記で取得した視力の評価値を、異なる種類の視力の評価値に変換するようにしても良い。例えば、知覚確率曲線の係数に利用される視力の評価値として、上述したようなlogMARを用いる場合、評価値取得部14は、このlogMARの値を小数視力等の値に変換した値を、視力の評価値として取得するようにしてもよい。上述したように、logMARと、最小分離角等の他の視力の評価値は、演算等により相互に変換可能である。
評価値取得部14は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。評価値取得部14の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
出力部15は、評価値取得部14が取得した被検者の視力の評価値を出力する。ここで出力する視力の評価値は、小数視力であっても、logMARであっても良く、評価値の種類等は問わない。また、出力部15は、評価値取得部14が上記の式(2)で示したモデル関数を用いて取得した係数nの値を、更に出力するようにしても良い。例えば、このnの値は、上述したように、被検者の視機能の状態を示す値として利用できると考えられることから、このnの値を出力することで、被検者の視機能の異常の有無の診断等を行うことも可能となる。
なお、出力部15は、係数取得部12が取得した係数を、モデル関数に代入して得られる知覚確率曲線のグラフ等を更に出力するようにしても良い。
ここで述べる出力とは、ディスプレイへの表示、プロジェクターを用いた投影、プリンタへの印字、外部の装置への送信、記録媒体への蓄積、他の処理装置や他のプログラムなどへの処理結果の引渡しなどを含む概念である。
出力部15は、ディスプレイやプリンタ等の出力デバイスを含むと考えても含まないと考えても良い。出力部15は、出力デバイスのドライバーソフトまたは、出力デバイスのドライバーソフトと出力デバイス等で実現され得る。
次に、視力評価装置1の動作の一例について図2のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)検査結果情報取得部11は、複数の視力の評価値と対応付けられた複数の検査結果情報を受け付けたか否かを判断する。受け付けた場合、ステップS102に進み、受け付けていない場合、ステップS101に戻る。
(ステップS102)検査結果情報取得部11は、ステップS101で受け付けた検査結果情報を、検査結果情報格納部10に蓄積する。ここでの蓄積は一時記憶であっても良い。
(ステップS103)係数取得部12は、モデル関数格納部13に格納されているモデル関数を読み出す。例えば、式(2)で示されたモデル関数を読み出す。
(ステップS104)係数取得部12は、ステップS102で蓄積された複数の検査結果情報を用いて、これらの検査結果情報に適合した、ステップS103で読み出したモデル関数の係数を取得する。例えば、係数取得部12は、最小二乗法を用いることで係数を取得する。この係数が被検者の知覚確率曲線の係数である。
(ステップS105)評価値取得部14は、係数取得部12がステップS104で取得した係数を用いて、被検者の視力の評価値を取得する。例えば、モデル関数として式(2)を用いた場合、係数取得部12が取得した係数x50の値をそのまま、あるいはこの係数x50の値を異なる評価値に変換した評価値を、被検者の視力の評価値として取得する。
(ステップS106)出力部15は、ステップS105で取得した視力の評価値等を出力する。出力部15は、例えば、視力の評価値に加えて、ステップS104で取得されるn値を出力しても良いし、ステップS104で取得した係数を、式(2)で示したモデル関数に代入して得られた知覚確率曲線のグラフを作成して出力しても良い。このグラフにおいては、検査結果情報格納部10に格納されている複数の検査結果情報がそれぞれ示す座標をプロットするようにしても良い。そして、処理を終了する。
以下、本実施の形態における視力評価装置1の具体的な動作について、一例を挙げて説明する。なお、この具体例においては、知覚確率曲線の係数を用いて、視標に対する被検者の正答率が50%となる視力の評価値を取得する場合を例に挙げて説明する。ただし、この正答率は50%以外の値に設定しても良い。
まず、ユーザが視力評価装置1のメニュー画面を操作すると、視力評価装置1の出力部15が有するモニタ150に、視力結果情報の入力インターフェース画面が表示される。ここでのユーザとは、例えば、医師や、看護士等の医療従事者等であるとする。
図3は、視力評価装置1が表示する視力結果情報の入力インターフェース画面の一例を示す図である。入力インターフェース画面は、被検者の識別情報である「被検者ID」の入力欄と、視力の評価値である小数視力を入力する「小数視力」という入力欄と、その小数視力に対する被検者の正答率(%)を入力する「正答率」という入力欄とを有している。「小数視力」欄と、「正答率」欄との組は、予め複数(好ましくは3以上)用意されているものとする。なお、視力評価装置1は、どのような形態の装置であってもよく、例えば、図14に示すようないわゆるタブレット型端末1aやいわゆるスマートフォン等のような携帯型の情報端末であっても良いし、図12に示すようなデスクトップ型の端末等であっても良い。
ユーザが、図3に示す入力インターフェース画面に対して、キーボード等を操作して、一の被検者の「被検者ID」である「00021」と、この一の被検者についての視力検査の検査結果である「小数視力」と、「正答率」との複数の組、即ち、複数の検査結果情報を入力したとする。
図4は、ユーザが入力した「被検者ID」が「00021」である被検者について入力した検査結果情報の一例を示す図である。ここでの検査結果情報数は、3以上であることが、検査結果情報に精度良く適合した知覚確率曲線の係数を取得するうえで好ましい。なお、「正答率」としては、ここでは一例として、被検者に対して、視力表の各小数視力毎に用意された5つの異なる視標について検査を行った場合の、正答率を用いている。例えば、一の小数視力の5つの視標について検査を行った場合の、正解数が「1」である場合は、正答率20%、正解数が「3」である場合は、正答率が60%となる。
図4に示した検査結果情報を検査結果取得部11が受け付けた状態で、ユーザが、図3に示した入力インターフェース画面の「OK」ボタン34を、マウス等を操作してクリックすると、検査結果取得部11は、入力された「被検者ID」と検査結果情報とを、検査結果情報格納部10に蓄積する。このとき、検査結果取得部11は、「小数視力」の値を、全てlogMARに変換した検査結果情報を取得して、検査結果情報格納部10に蓄積する。この変換は、例えば、「小数視力」の値から、最小分離角を算出し、これの常用対数を算出することで行うようにしても良いし、予め用意された小数視力と、logMARとの対応関係を示すテーブル等を用いて変換を行っても良い。
図5は、検査結果取得部11により検査結果情報格納部10に蓄積された検査結果情報を管理する検査結果情報管理表を示す図である。検査結果情報管理表は、「被検者ID」と「検査結果情報」という項目を有している。「検査結果情報」は、更に、「logMAR」と、「正答率」という項目を有している。
次に、係数取得部12は、モデル関数格納部13に格納されている、上述した式(2)で示したモデル関数を読み出す。そして、このモデル関数と、上記で示した検査結果情報管理表に格納されている検査結果情報のうちの、図3に示した入力インターフェース画面に入力された「被検者ID」の値である「00021」に対応する検査結果情報のレコード(行)を図5に示した検査結果情報管理表から読み出し、読み出したモデル関数と、読み出した複数の検査結果情報とを用いて、最小二乗法により、読み出したモデル関数を、読み出した複数の検査結果情報に適合させた場合の知覚確率曲線を示す曲線関数の係数を算出する。このことは、読み出した複数の検査結果情報を式(2)に示した回帰式に回帰させた場合の係数を最小二乗法により算出することと考えても良い。ここでは、なお、最小二乗法により、複数の検査結果情報を用いて回帰式の係数を算出する処理は公知の技術であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
ここでは、係数を算出する処理の結果、係数取得部12が、係数x50の値として「0.26」、係数nの値として「15.5」を算出したとする。
評価値取得部14は、係数取得部12が取得した係数x50の値「0.26」を用いて、被検者の視力の評価値を取得する。具体的には、係数x50は、正答率が50%となる場合のlogMARであることから、評価値取得部14は、被検者の視力の評価値であるlogMARとして、係数x50の値である「0.26」を取得する。評価値取得部14は、このlogMARの値を取得した時点で、視力の評価値の取得処理を終了しても良いが、ここでは更に、評価値取得部14は、このlogMARを用いて、小数視力を算出する。具体的には、logMARの値「0.26」から最小分離角を算出し、この最小分離角を用いて、小数視力である「0.55」を算出する。
出力部15は、評価値取得部14が取得した小数視力「0.55」を、モニタ150に表示する。また、ここでは、上記で算出した係数x50及び係数nの値を式(2)に代入して得られた知覚確率曲線を示す曲線関数のグラフもモニタ150に表示する。また、このグラフにおいて、出力部15は、図5に示した検査結果情報管理表に格納されている各検査結果情報が示す座標がプロットを行う。また、出力部15は、上記で取得した係数nの値であるn値「15.5」も出力する。
図6は、出力部15が出力する小数視力の値と、検査結果情報に適合した知覚確率曲線のグラフと、n値の値とを示す図である。グラフにおいて、横軸(x軸)は、logMARを示し、縦軸(y軸)は、正答率を示す。この出力により、ユーザが「被検者ID」が「00021」である被検者の正確な視力の評価値を得ることができる。ここでの正確な視力の評価値は、正答率が50%になると考えられる視力の評価値と考えても良い。また、出力部15がn値を出力するため、このn値から、被検者が正常な視機能を有しているか等を判断することができる。
ここで、視力評価装置1を用いて異なる被検者の視力の検査結果について、上記と同様の処理を行ったとする。具体的には、「被検者ID」が「00022」である被検者についての、検査結果情報を視力評価装置1の図3と同様の入力インターフェース画面に入力したとする。
図7は、ユーザが視力評価装置1に入力した、「被検者ID」が「00022」である被検者の検査結果情報の一例を示す図である。図において、図4と同一の項目は、同一または相当する項目を示している。
図7のような検査結果情報を入力して、「OK」ボタン34を押すと、係数取得部12は、上記と同様に、知覚確率曲線の係数を取得する。ここでは、係数x50の値として、係数nの値として「8.4」を算出したとする。
次に、評価値取得部14は、係数取得部12が算出した知覚確率曲線の係数x50「0.29」を取得して、上記と同様に小数視力の値である「0.51」を算出する。そして、出力部15は、図6と同様のグラフを表示する。
図8は、出力部15が出力する小数視力の値と、検査結果情報に適合した知覚確率曲線のグラフと、n値の値とを示す図である。
ここで、図4および図7に示した上記の二人の被検者の検査結果を比較した場合、いずれの被検者も、視標に対する正答率が50%となる視力の評価値は、小数視力が「0.5」と「0.6」の間に存在することになるため、仮に、従来の視力検査方法を用いた場合、いずれの被検者の小数視力も、「0.5」であると判定されることとなる。しかしながら、本実施の形態によれば、各被検者の視力が、それぞれの被検者の、複数の異なる視力の評価値(ここでは、小数視力「0.4」、「0.5」、「0.6」)にそれぞれ対応する視標を用いて行われた検査における、視力の評価値毎の正答率に応じて正確に評価される。この結果、「被検者ID」が「00021」の被検者の小数視力が「0.55」と判定され、「被検者ID」が「00022」の被検者の小数視力が「0.51」と判定され、従来であれば、同じであると評価された二人の被検者の視力が、本実施の形態の視力評価装置1によれば、異なる値にそれぞれ評価されることとなる。
また、ここでは、n値を出力することにより、ユーザはこのn値の値を基に、被検者の視機能の診断や判断を行うことが可能となる。例えば、このn値の値が、どのような値であるかによって、被検者の視機能が正常であるか否かや、正常でない場合、どのような種類の異常が認められるか等を判断することが可能となる。なお、n値で視機能の診断等を行う場合には、例えば、予め、臨床試験等を行うことで、視機能の異常の有無による、n値の値の変化等のデータを収集して、n値の値で視機能の異常を判断できるような閾値等や、正常値の範囲や異常値の範囲、あるいはこれらの目安となる値等を、予め用意しておくことが好ましい。
ここで、知覚確率曲線の傾きを取得する際において用いられる検査結果情報の数について具体例を挙げて説明する。
図9は、検査結果情報の一例を示す図である。この検査結果情報は、図4に示したような検査結果情報において、視力の評価値として、小数視力に加えて、さらに小数視力に対応するlogMARを有するようにしたものである。
ここで、この検査結果情報を用いて、上記と同様に、係数取得部12が式(2)を用いて知覚確率曲線の係数を取得し、この係数を代入した知覚確率曲線のグラフを出力部15がモニタ150に出力したとする。
図10は、出力部15が出力するグラフを示す図である。ただし、ここでは、図9において、正答率が50%を超えた最初の検査結果情報とその前後2段ずつの合計5つの検査結果情報を用いて得られた知覚確率曲線のグラフと、正答率が50%を超えた最初の検査結果情報とその前後1段ずつの合計3つの検査結果情報を用いて得られた知覚確率曲線のグラフとを重ねて示している。ただし、図においては、2つのグラフはほぼ重なるものとなっている。図において、上記の5つの検査結果情報が示す座標は黒丸で示し、上記の3つの検査結果情報が示す座標は白色矩形で示している。なお、図9における正答率が50%を超えた最初の検査結果情報とは、「小数視力」が「1.0」である検査結果情報である。
図10から読み取れるように、検査結果情報の数が、3つである場合と5つである場合とでは、これらから得られる知覚確率曲線には、有意差を認めない。このことから、本実施の形態においては、例えば、最低3点の検査結果情報を用いて視覚確率曲線の係数を算出することで、十分な精度を持って視力が評価できることが確認できる。なお、この場合の3点は、正答率が50%を超えた最初の検査結果情報を中心とした3点であることが好ましく、残りの2点は、視力検査において、正答率が50%を超えた最初の検査結果情報よりも、視力の評価値が、1段前および1段後の検査結果情報であることが好ましい。
また、以下に、式(2)のnの値が知覚確率曲線に与える影響について具体例を挙げて説明する。
図11は、視力の評価値を小数視力「0.55」(logMAR「0.263」)に統一した場合にnの値が「5」である場合の知覚確率曲線のグラフと、nの値が「10」である場合の知覚確率曲線のグラフとを示す図である。なお、グラフ111は、nの値が「5」である場合のグラフを示し、グラフ112は、nの値が「10」である場合のグラフを示している。
図11から読み取れるように、nが「5」の場合に比べてnが「10」の場合のほうが、傾きが大きく、nの値によって傾きの程度が定量的に示されていることが分かる。
以上、本実施の形態によれば、複数の検査結果情報に適合する知覚確率曲線の係数を取得して、この係数を用いて視力の評価値を取得するようにしたことにより、正確な視力の評価値を容易に取得することができる。
また、本実施の形態によれば、知覚確率曲線を、生理学分野に利用されるモデル関数を用いて取得することにより、視力に適切な知覚確率曲線を取得することができ、より精度の高い視力の評価を行うことが可能となる。
また、本実施の形態によれば、特に、式(2)を用いて、n値を出力するようにしたことにより、被検者の視機能の評価を行うことが可能となる。
また、本実施の形態によれば、特に、式(2)を用いることにより、例えば、上記のような3点の検査結果情報で知覚確率曲線の係数を取得することができるため、少ない視力の検査回数でも正確な視力の評価を行うことが可能となる。
なお、本実施の形態においては、出力部15が視力の評価値を出力する場合について説明したが、視力の評価値を出力せずに、n値だけを出力するようにしても良い。この場合、評価値取得部14は省略可能である。
また、本実施の形態においては、出力部15が視力の評価値を出力する場合について説明したが、出力部15が、複数の検査結果情報に適合する知覚確率曲線のグラフだけを出力するようにしても良い。
なお、上記各実施の形態において、各処理(各機能)は、単一の装置(システム)によって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置によって分散処理されることによって実現されてもよい。
また、上記各実施の形態において、一の装置に存在する2以上の通信手段(情報送信部など)は、物理的に一の媒体で実現されても良いことは言うまでもない。
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりする情報や、各構成要素が処理で用いるしきい値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していない場合であっても、図示しない記録媒体において、一時的に、あるいは長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、あるいは、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、あるいは、図示しない読み出し部が行ってもよい。
また、上記各実施の形態では、視力評価装置がスタンドアロンである場合について説明したが、視力評価装置は、スタンドアロンの装置であってもよく、サーバ・クライアントシステムにおけるサーバ装置であってもよい。後者の場合には、出力部や受付部は、通信回線を介して入力を受け付けたり、画面を出力したりすることになる。
また、上記各実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、格納部(例えば、ハードディスクやメモリ等の記録媒体)にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。
なお、上記各実施の形態における視力評価装置を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、複数の視力の評価値と対応付けられた複数の視標について行われた被検者の視力の検査結果を示す情報であって、視力の評価値と、視力の評価値と対応付けられた複数の視標に対する正答率とを有する複数の検査結果情報が格納される検査結果情報格納部にアクセス可能なコンピュータを、複数の検査結果情報に含まれる視力の評価値と正答率との関係を示す曲線である知覚確率曲線の係数を取得する係数取得部と、知覚確率曲線の係数を用いて、被検者の視力の評価値を取得する評価値取得部と、評価値取得部が取得した被検者の視力の評価値を出力する出力部として機能させるためのプログラムである。
また、このプログラムは、複数の視力の評価値と対応付けられた複数の視標について行われた被検者の視力の検査結果を示す情報であって、視力の評価値と、視力の評価値と対応付けられた複数の視標に対する正答率とを有する複数の検査結果情報が格納される検査結果情報格納部にアクセス可能なコンピュータを、
(ただし、yは正答率、xは視力の評価値、x
50およびnは係数)
で表される曲線関数を複数の検査結果情報に含まれる視力の評価値と正答率との関係を示す曲線である知覚確率曲線の曲線関数とするため曲線関数の係数nの値を取得する係数取得部と、係数nの値を出力する出力部として機能させるためのプログラムである。
なお、上記プログラムにおいて、情報を送信する送信ステップや、情報を受信する受信ステップなどでは、ハードウェアによって行われる処理、例えば、送信ステップにおけるモデムやインターフェースカードなどで行われる処理(ハードウェアでしか行われない処理)は含まれない。
なお、上記プログラムにおいて、上記プログラムが実現する機能には、ハードウェアでしか実現できない機能は含まれない。例えば、情報を取得する取得部や、情報を出力する出力部などにおけるモデムやインターフェースカードなどのハードウェアでしか実現できない機能は、上記プログラムが実現する機能には含まれない。
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
図12は、上記プログラムを実行して、上記実施の形態による視力評価装置を実現するコンピュータの外観の一例を示す模式図である。上記実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されうる。
図12において、コンピュータシステム900は、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブ905、FD(Floppy(登録商標) Disk)ドライブ906を含むコンピュータ901と、キーボード902と、マウス903と、モニタ904とを備える。
図13は、コンピュータシステム900の内部構成を示す図である。図13において、コンピュータ901は、CD−ROMドライブ905、FDドライブ906に加えて、MPU(Micro Processing Unit)911と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM912と、MPU911に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM(Random Access Memory)913と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するハードディスク914と、MPU911、ROM912等を相互に接続するバス915とを備える。なお、コンピュータ901は、LANへの接続を提供する図示しないネットワークカードを含んでいてもよい。
コンピュータシステム900に、上記実施の形態による視力評価装置等の機能を実行させるプログラムは、CD−ROM921、またはFD922に記憶されて、CD−ROMドライブ905、またはFDドライブ906に挿入され、ハードディスク914に転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ901に送信され、ハードディスク914に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM913にロードされる。なお、プログラムは、CD−ROM921やFD922、またはネットワークから直接、ロードされてもよい。
プログラムは、コンピュータ901に、上記実施の形態による視力評価装置の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能(モジュール)を呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステム900がどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。