JP6017524B2 - 皮膚角層を用いた敏感肌の検査方法 - Google Patents

皮膚角層を用いた敏感肌の検査方法 Download PDF

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Description

本発明は、ヒト皮膚のストレス蓄積量の測定方法に関する。
ヒトの皮膚は常に外界と接触しており、さまざまな刺激を受けている。その刺激の代表的なものは紫外線である。紫外線は、外見上は大きな変化を肌に与えていない場合であっても、皮膚細胞のDNAの切断やコラーゲンの変性などを誘発し、皮膚老化の原因となっている。紫外線は常に肌にストレスを与え続けている。また女性にとっては、洗顔や化粧といった日常的な行為も皮膚に刺激を与えており、これらの刺激が肌には潜在的なストレスとして蓄積される。そしてこれらの刺激(ストレス)に対する抵抗性がなんらかの原因で減少すると敏感肌として認識されることとなる。このような皮膚の外的刺激の蓄積量を本発明では皮膚のストレス蓄積量という。一方敏感肌とは、明らかな皮膚病変はないが不利、有害な反応が起こりやすい肌として捉えられている。そしてこのような敏感肌の原因としてストレスの蓄積が一定レベルに到達すると、肌の感受性が高まるとも言われている。また敏感肌は、健常肌より外的刺激に対する抵抗性が低く、容易に皮膚トラブルを生ずる肌とも言える。近年、敏感肌を意識する女性が増加する傾向にあり、化粧品等についてもより刺激の少ないものが要望されるようになってきている。
化粧品の販売現場では美容専門家による問診を行い、肌ストレスの蓄積状況や敏感肌か否かを評価して肌に与えるストレス(刺激)の少ない化粧品を推薦してきた。しかし近年通信販売など、化粧品専門家を介在させない販売方法が普及し、このため、肌のストレス状態を見極め、また敏感肌のレベルを専門家でなくとも簡便に評価することが望まれてきた。これが可能となれば、専門家の問診によらずとも、ユーザーの肌のストレス状態や敏感肌であるかどうかを評価して、適切な化粧品を自ら選択することが可能となる。またユーザーの肌により適した化粧品やケミカルピーリング剤を簡単に選択することができ、それによって、皮膚の炎症等の肌トラブルや副作用を回避し、化粧品によるスキンケアやケミカルピーリングの施術等の有益性をより高めることができる。このため、問診によらずとも、皮膚の外的刺激曝露履歴(肌ストレスの蓄積量)を評価し、さらに敏感肌であるかどうかを客観的に判別する方法が求められている。
特許文献1には、皮膚に化粧料を塗布して、その後剥離してくる皮膚角層を回収して観察し、皮膚の敏感性を評価する方法が開示されている。しかしこの方法は、化粧品ごとにすべて検査しなければならず、またユーザーの肌ストレスの蓄積量は評価できない。
特許文献2には、カプサイシンのような刺激性物質を皮膚に塗布して、敏感肌であるかどうかを評価するための方法が開示されている。しかしカプシノイドのような刺激性の強いものを用いる試験方法は、被験者にとっても好ましいものではない。
特許文献3には、顔の角層のカルプロテクチン存在量を測定して、敏感肌か否か評価する方法が開示されている。
マクロファージ遊走阻止因子(以下、MIFと記載する)は、炎症・免疫のメディエーターの1つであり、マクロファージの遊走を制御し、炎症部位にマクロファージを集め、貪食能を高める液性因子である。MIFは慢性関節リウマチ、腎炎(非特許文献1:Expert Opin Ther Targets, 7, 2, 153-164, 2003)、アトピー性皮膚炎(非特許文献2:Biochem Biophys Res Commun, 240, 11, 173-8, 1997)、乾癬(非特許文献3:B J Dermatol, 141, 1061-66, 1999)、潰瘍性大腸炎、敗血症、接触性皮膚炎(非特許文献4:Eur J Immunol, 33, 1478-87, 2003)、紫外線による炎症(非特許文献5:J Invest Dermatol, 112, 2, 210-15, 1999)、遅延性アレルギー(非特許文献6:Pro Natl Acad Sci USA, 93, 7849-54, 1996)、急性・慢性炎症疾患(非特許文献7:J End, 179, 15-23, 2003)、関節炎、移植片拒絶反応、腫瘍成長、血管新生、貧血、脳脊髄炎等の炎症性疾患の病理過程に関与して増加することが知られている。
特開平10−295648号公報 特開2004−067681号公報 特許第4469762号公報
Expert Opin Ther Targets, 7, 2, 153-164, 2003 Biochem Biophys Res Commun, 240, 11, 173-8, 1997 B J Dermatol, 141, 1061-66, 1999 Eur J Immunol, 33, 1478-87, 2003 J Invest Dermatol, 112, 2, 210-15, 1999 Pro Natl Acad Sci USA, 93, 7849-54, 1996 J End, 179, 15-23, 2003
上述したように、肌のストレスの蓄積量を評価し、敏感肌であるかどうかを客観的に評価する方法が望まれている。その検査方法は、外科的に皮膚を摘出する、皮膚に刺激を与える等のユーザーに負担をかける方法ではないことが望ましい。本発明は、ユーザーに負担をかけることなく、肌のストレスの蓄積量を評価し、標本集団中のストレス蓄積量の相対位置を明確にすることが望まれている。
本発明は、皮膚のストレスの蓄積量を測定する方法を提供することを課題とする。
本発明は以下の構成である。
(1)皮膚角層のマクロファージ遊走阻止因子(MIF)の発現量の多寡を指標とする日焼けに伴う皮膚の発赤、又は洗浄による刺激発生を評価するための検査方法。
(2)マクロファージ遊走阻止因子(MIF)の発現量の測定がウエスタンブロットによるものである(1)に記載の方法。
本発明の検査方法によれば、肌ストレスの蓄積量を角層におけるMIFの発現量を測定することで知ることができる。またこのMIF発現量を指標として、簡便に肌が敏感肌であるかどうかを検査することができる。さらに、本発明の検査方法は、テープストリッピング法など簡便な操作方法で評価試料を採取するため、被験者の負担が少なく、だれでも簡単に評価することが可能となる。また生化学的な試験方法であり、誰が測定しても同一の結果が得られるため、従来のような専門家の面談方式によるカウンセリングが必要なくなる。
日光曝露によるストレス負荷の蓄積が角層に残存することを示した図である。 日焼け(ストレス)の程度によってMIFの発現量が増加し、肌に蓄積されていることを示した図である。 日焼けによる発赤とMIF蓄積が関係性を有していることを示した図である。 健常肌をSDS洗浄によりストレスを与えたとき、MIFが角層に蓄積されることを確認した図である。 健常肌をアセトン/エーテルで洗浄したときの皮膚水分蒸散量(TEWL)の経時変化を測定したグラフである。 健常肌をアセトン/エーテルで洗浄したときのMIF蓄積量の経時変化を測定したグラフである。 頬、前腕部、臀部の皮膚角層MIF蓄積量を示す図である。 標本集団のMIF発現量のヒストグラムである 自己申告による肌の敏感性と頬角層MIF蓄積量が関係性を有していることを示した図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明でいう皮膚のストレス蓄積量とは、ヒト皮膚に対する外因性・内因性の刺激による障害の蓄積量のことをいう。例えば、ヒト皮膚の外因性の刺激による皮膚障害としては、紫外線照射による皮膚障害、界面活性剤による皮膚障害、乾燥による皮膚障害、物理的な刺激(叩く、押す、引っ掻く、ひっぱる等)による皮膚障害、アレルギー性を有する物質(花粉、化学物質等)による炎症、外来の(病原性)微生物の毒素や構成成分などによる炎症が挙げられる。ヒト皮膚の内因性の刺激による皮膚障害としては、全身的な異常(栄養失調、脱水症状、発熱、ホルモン分泌異常など)による内因性酸化ストレスによる皮膚障害が挙げられる。ヒト皮膚のストレス蓄積量とは、これらの一つあるいは複合された皮膚障害の蓄積量をいう。
また、ストレスが蓄積された肌は敏感肌の性質を強く示し、外界刺激に対する抵抗性が顕著に低く、容易に皮膚トラブルを生ずる可能性が高い。敏感肌の症状として、化粧品を使って赤みやかゆみを感じたり、清涼感の高い化粧品が肌に合わなかったり、エタノールが入った化粧品が肌に合わなかったり、香水や香料が入った化粧品が肌に合わなかったり、マッサージなど物理的な刺激によって肌の状態が悪くなったり、普段の生活でも紫外線を浴びたりすると肌が赤くなり、ヒリヒリしやすかったり、汗をかいた後にかゆみがでたり、化粧品や洗剤が合わず赤みやかゆみがでたりすることがある。これらの皮膚トラブルを繰り返し発症することにより、皮膚の老化現象(シワ、シミ、弾力性の低下など)を生じる可能性が高まる。
本発明の検査方法は、皮膚角層におけるMIFの発現量の多寡を指標とすることを特徴としている。
MIFとは上述したとおり免疫メディエーターの一種であり、アトピー性皮膚炎や、紫外線による日焼けによる刺激で、表皮細胞増殖を促進させるシグナルとして作用している。本発明は、このシグナルが角層に蓄積され、皮膚のストレス蓄積の指標となりうることを見出した。
本発明における敏感肌とは、明らかな皮膚病変はないが不利、有害な反応が起こりやすい肌をいう。また、健常肌より外界刺激に対する抵抗性が低く、容易に皮膚トラブルを生ずる肌とも言える。一方、健常肌とは、上記のような敏感肌の性質を示さない健康で正常な肌である。敏感肌においては、経皮水分蒸散量(TEWL)が高くなる、高周波伝導度(角層水分量)が低くなる等の傾向があることが知られている。また、敏感肌では、かぶれや肌荒れが起こる場合がある。
角層は、皮膚の一番上にある組織であり、体の外からの異物や刺激から皮膚を守る働きを有している。
本発明における評価対象部位は、角層が入手できる部分であれば、いかなる部位をも包含しうるが、主な部位としては顔面、頚部、上腕部を挙げることができる。従来の方法に従い、これらの部位の皮膚由来の角層を得ることができる。しかし、前述のように、外科的に皮膚を摘出する等の方法は、ユーザーに負担をかけるため、テープストリッピング、擦過等の簡便に角層を得られる方法が好ましい。
こうして用意した各試料におけるMIFの発現量は、従来から知られている方法で測定することができる。例えば、MIFに対する抗体との反応に基づくエンザイムイムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、ウエスタンブロッティング等の方法を用いることができる。
各試料からMIFをそれ自体既知の生化学的方法、たとえば凍結融解法、超音波破砕法、ホモジュネート法等を介して可溶性画分を調製する。抽出後、速やかに測定する。
ストレスが蓄積された肌や敏感肌は、健常肌に比べて角層におけるMIFの発現量が有意に高いため、角層におけるMIFの発現量の多寡を指標として、簡便にストレスの蓄積量又は肌が敏感肌であるかどうかを評価できる。本発明に用いる角層は、テープストリッピングといった角層の表層部分のみを角質テープで採取する簡単な方法で採取することができる。また、本発明は、皮膚に紫外線や化学物質等の刺激を与えることなくMIFの発現量を測定できる。このため、ユーザーに負担をかけることなく、ユーザーの肌が敏感肌であるかどうかを評価することができる。特に、ユーザーの肌により適した化粧品やケミカルピーリング剤を簡単に選択することができ、それによって、皮膚の炎症等の肌トラブルや副作用を回避し、化粧品によるスキンケアや有益性をより発揮させることができる。
本発明の検査方法は、角層を採取する採取工程と、前記採取工程で採取された角層におけるMIFの発現量を測定する測定工程と、前記測定工程で測定されたMIFの発現量を健常肌の角層におけるMIFの発現量と比較する比較工程から構成される。または、本発明の検査方法は、角層を採取する採取工程と、前記採取工程で採取された角層におけるMIFの発現量を測定する測定工程と、前記測定工程で測定されたMIFの発現量を標本集団の角層におけるMIFの発現量の分布と比較する比較工程から構成される。以下にこの検査方法について説明する。
まず、上記のようにして測定されたMIFの発現量を健常肌の角層におけるMIFの発現量と比較する。また、被験者のある評価対象部位の角層におけるMIFの発現量を測定し、測定されたMIFの発現量を、健常肌を有する人の同一評価対象部位の角層におけるMIFの発現量と比較してもよい。健常肌を有する人の角層のMIFの発現量は、複数人の健常肌を有する人からのデータの平均値を使用することによって、より客観的な評価ができる。
または、被験者のある評価対象部位の角層におけるMIFの発現量を測定し、測定されたMIFの発現量を、標本集団の同一評価対象部位の角層におけるMIFの発現量の分布と比較してもよい。標本集団のMIFの発現量の分布を使用することによって、より客観的な評価ができる。
このように比較した結果、測定されたMIFの発現量が、健常肌のMIFの発現量より有意に大きい場合、または、標本集団のMIFの発現量分布と比較して、MIFの発現量が大きいと判断される場合には、ストレスの蓄積が大きいと評価し、さらに敏感肌である可能性が高いと評価することができる。この健常肌の試料は、MIFを測定する者から採取してもよく、MIFを測定する者と異なる者から採取してもよい。また、この標本集団は、統計的に有効な規模で、無作為に抽出することが好ましいが、目的に応じて、例えば、性別、年齢別に標本集団を抽出することも好ましい。
また、被験者のある評価対象部位の角層におけるMIFの発現量が、健常肌を有する人の同一評価対象部位の角層におけるMIFの発現量より有意に大きい場合、または、標本集団の同一評価対象部位の角層におけるMIFの発現量分布と比較して、MIFの発現量が大きいと判断される場合にも、ストレスの蓄積が大きいと評価する。またこの数値が顕著に高い場合に敏感肌を有すると評価する。
すなわちストレス蓄積が高いと評価する場合、測定されるMIFの発現量の程度により、ストレスの蓄積量の程度を評価できる。測定されるMIFの発現量が健常肌のそれ、または、標本集団の発現量分布と比較して著しく多いと判断される場合は、その肌は、敏感肌の性質を強く示し、健常肌または、標本集団の平均より外界刺激に対する抵抗性が顕著に低く、きわめて容易に皮膚トラブルを生ずる可能性が高い。また、測定されるMIFの発現量が健常肌のそれと比較して少量だけ増加している場合、または、測定されるMIFの発現量が標本集団のその発現量分布と比較して、平均値より少し大きいと判断される場合は、その肌は、ストレスの蓄積量が標本集団の平均値より多いが、外界刺激に対する抵抗性が低く皮膚トラブルを生ずるという敏感肌のレベルには達していないと評価できる。
以下、具体的な実施例について説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実験1)紫外線照射による皮膚ストレス蓄積量の試験
(1)日光曝露(紫外線)によるストレス負荷
健康な男女12名を被験者として試験を実施した。
日光曝露前の頬部の皮膚から角層をテープストリッピング(角層テープ:アサヒテクノラボ製)で剥離採取した。採取後、被験者は非連続的に1〜5日間、スポーツ観戦や海などで日常より強い日光を浴びた(日焼けする程度であるが、日光の照射強度や時間は非コントロール)。日光曝露後1〜2日目、3〜4日目、7〜8日目に、同様にして、頬部皮膚から角層をテープストリッピングで剥離採取した。また日光曝露後1〜2日目の日焼けの程度を、皮膚色測定装置 CM-508D(MINOLTA社)を用いて測定した。
(2)皮膚角層中タンパク質抽出方法
各角層テープ1枚につき500μlのT-PER Tissue Protein Extraction Reagent (Thermo Scientific製)を入れ、約0.8gのガラスビーズを加えて25分間ボルテックスし、角層を破砕し、角層からタンパク質を抽出した。
(3)皮膚角層タンパク質の定量
回収したタンパク質溶解液のタンパク質量をPierce BCA Protein Assay Kit (Thermo Scientific製)を用いて定量した。
(4)MIFの定量
上記の破砕液から、MIF量をhuman MIF Duo set(R&D systems)を用いて常法に従い測定した。
(5)結果
ア.日光による日焼けと角層中MIF量の変動
角層中の、日光曝露後の単位角層タンパク質あたりのMIF量(以下、MIF量という)の変動を図1に示す。日光曝露の影響は7〜8日後も角層に残存することが確認された。
イ.日焼けの程度と角層中MIF量の関係
皮膚色測定の結果から、日焼けの程度を次の2群に分けて、MIF量との関係を確認した。
日焼け強群(皮膚が黒くなった):ΔL*(試験後−試験前)<−1
日焼け弱群(皮膚に変化なし) :ΔL*(試験後−試験前)≧−1

角層中の、日光曝露後のMIF量の変動を図2に示す。図2からL*値が低下した(皮膚が黒くなった)日焼け強群は、日焼け弱群と比較してMIFの発現量が高いことが確認された。またMIFの発現量は、日光曝露7日目においても顕著に高かった。
ウ.日焼けによる発赤の程度と角層中MIF量の関係
被験者を、日光曝露後に炎症を呈した(発赤した)者と発赤しなかった者の2群に分けたときの、角層中のMIF量の変動を図3に示す。MIF量は日光曝露後7日目まで高値を示しており、日光曝露による影響は7日目まで残っていることがわかった。
また発赤はMIF値を上昇させた。
以上の結果から日光曝露の影響は7〜8日経過後も皮膚に残存しストレスとして蓄積していることが確認できた。
(実験2)界面活性剤での洗浄による皮膚ストレス蓄積量の試験
(1)硫酸ドデシルナトリウムによる過酷洗浄試験
健常な肌を有する男性9名の皮膚を10%硫酸ドデシルナトリウム(SDS)水溶液(コントロール:精製水により洗浄)で洗浄し、皮膚にストレスを与えた。
前腕内側部に10%SDS水溶液0.2gを塗布し、指で100往復させた後、37℃の精製水500mlで洗い流した。この操作を5回/日×2日間実施した。
(2)サンプル採取方法
実験1と同様に角層テープ(アサヒテクノラボ製)により前腕内側部の皮膚から角層を採取した。苛酷洗浄試験終了後4日目に被験者1人あたり、角層テープ30枚を用いて同一洗浄箇所の角層採取を行い、角層の深部試料を採取した。
(3)皮膚角層中タンパク質抽出方法
実験1と同様に、各角層テープ1枚につき500μlのT-PER Tissue Protein Extraction Reagent (Thermo Scientific製)を入れ、約0.8 gのガラスビーズを加えて25分間ボルテックスし、角層を破砕し、角層からタンパク質を抽出した。
(4)皮膚角層タンパク質の定量
タンパク質溶解液のタンパク質量をPierce BCA Protein Assay Kit (Thermo Scientific製)を用いて定量した。
(5)MIFの定量
上記の破砕液から、MIF量をhuman MIF Duo set(R&D systems)を用いて定法に従い測定した。
(6)結果
MIF量分析結果を図4に示す。
SDSのような界面活性剤が皮膚に浸透すると刺激として認識され、角層にMIFが蓄積されることがわかった。従って角層のMIF量を測定することで、皮膚深部のストレス履歴を測定することができることが確認できた。
(実験3)有機溶媒による皮脂の除去と皮膚ストレス蓄積量の試験
(1)アセトン/ジエチルエーテル溶液による皮脂の溶出とストレス蓄積試験
健常な肌を有する女性3名の皮膚をアセトン/ジエチルエーテル等量混合液で洗浄し、皮脂を除去し皮膚にストレスを与えた。
前腕内側に上下があいたガラス製ロート(径3cm)をゴムバンドで固定し、アセトン(WAKO
特級)/ジエチルエーテル(WAKO特級)等量混合液をロート内にピペットマンで2ml注入し、シェーカーの上に両腕を置いて20分間処置した。次いで、ロート内のアセトン/ジエチルエーテル等量混合液をスポイトで除いた後、水道水を注入し、シェーカーの上に両腕を置き5分間処置した(脱脂処置)。翌日、同一部分に再度脱脂処置を行い、乾燥皮膚を作成した。また、対照として同様の処理を水道水で操作した。脱脂処理によって皮膚の保湿性が低下し、皮膚は皮脂が回復するまで外気により継続的なストレスに晒されることとなる。
(2)持続的なストレスの存在の確認
経表皮水分蒸散量(TEWL)を、上記処理の前日、1、5、8、12、16日に測定し、皮膚におけるストレスの状態を確認した。TEWLはキーストン社のDelfinを用いて2回ずつ測定した平均値を解析に用いた。対照との比較でTEWLが高い場合ストレスが蓄積しているものと評価した。
(3)MIF測定サンプル採取方法
実験1と同様に角層テープ(アサヒテクノラボ製)により前腕内側部の皮膚から角層を採取した。洗浄試験終了後4日目に被験者1人あたり、角層テープ深さ方向に4枚を用いて同一洗浄箇所の角層採取を行い、角層の深部試料を採取した。
(4)皮膚角層中タンパク質抽出方法
実験1と同様に、各角層テープ1枚につき500μlのT-PER Tissue Protein Extraction Reagent (Thermo Scientific製)を入れ、約0.8 gのガラスビーズを加えて25分間ボルテックスし、角層を破砕し、角層からタンパク質を抽出した。
(5)皮膚角層タンパク質の定量
タンパク質溶解液のタンパク質量をPierce BCA Protein Assay Kit (Thermo Scientific製)を用いて定量した。
(6)MIFの定量
上記の破砕液から、MIF量をhuman MIF Duo set(R&D systems)を用いて定法に従い測定した。
(7)結果
ア.ストレスの持続状態
TEWLの経時変化を図4に示す。TEWL値は、アセトン/ジエチルエーテル洗浄後急激に上昇し16日経過後も対照と比して高い値を示した。これは、皮膚の皮脂が除去された影響が16日間ストレスとして残存していることを意味している。
イ.MIF量の分析結果
MIF量分析結果を図5に示す。
皮脂の除去操作直後のMIF値は、対照と大きな差はなかったが、5日目から上昇し、16日経過後も高い値を示した。これは皮脂の除去により外界刺激がより強く認識され、角層にMIFが蓄積されることがわかった。従って角層のMIF量を測定することで、皮膚深部のストレス履歴を測定することができることが確認できた。
(実験4)外界のストレスを常に受けている顔面と比較的ストレスを受けていない前腕部や臀部皮膚のMIFを測定し、皮膚に蓄積されているストレスの程度を評価した。
試験方法
(1)試料の採取
健常な肌を有する男女30名より、頬、前腕、臀部よりテープストリッピング法によって角層サンプルを採取した。
(2)MIFの測定
実験1と同様に、処理し、タンパク質を抽出し、タンパク質量とMIF量を測定し、単位タンパク質量当たりのMIF量として図7に示した。なお表記は平均値±S.E.で示した。
図7の結果から明らかなように、MIFの測定結果は日常的なストレスの高い顔面(頬)で特に高く、露出の少ない臀部では顕著に低かった。以上の結果からMIFは皮膚の日常的なストレスを評価する指標とすることができることが明らかとなった。
(実験5)標本集団の角層のMIF量を測定し、ヒストグラムを作成した。
試験方法
(1)試験試料の採取
無作為に選抜した女性458名を対象として、頬部よりテープストリッピング法によって角層サンプルを採取した。サンプルは1部位より1枚採取した。
(2)MIFの測定
実験1と同様に、処理し、タンパク質を抽出し、タンパク質量とMIF量を測定し、単位タンパク質量当たりのMIF量として解析した。標本集団の角層のMIF量のヒストグラムを図8に示す。
図8に示したとおり、MIFの発現量は、0.1pg/μg total proteinから2pg/μg total proteinを超える値までの広い範囲で分布している。平均値は0.46pg/μg total proteinであった。平均値0.46pg/μg total protein 以上の値をMIFの発現量が大きいと判断しても良いし、0.3pg/μg total proteinの累積度数が約50%なので、0.3pg/μg total protein を超える値を、MIFの発現量が大きいと判断しても良いと考える。いずれにしても、MIFの発現量が大きいほど、ヒト皮膚のストレス蓄積量は大きいと判断できる。
(実験6)ヒト皮膚のストレス蓄積量に関するアンケート結果と、MIF量の対比
実験5の標本集団から、無作為に195名を抽出し、ヒト皮膚のストレス蓄積量に関するアンケートを実施し、その結果とMIFの発現量を対比した。
(1)肌の敏感性のアンケート
被験者に、被験者の肌が、「非敏感」、「やや敏感」、「敏感」の3種類のうちのいずれであるか選択させた。
下記敏感性の10の要因を被験者に提示し、非敏感(敏感ではない)、やや敏感(やや敏感である)、敏感(敏感である)のいずれに該当するか被験者に自己判断させた。
1 化粧品を使って赤みやかゆみを感じることがある
2 清涼感の高い(スーッとした)化粧品が肌にあわないことがある
3 エタノールが入った化粧品が肌にあわないことがある
4 香水や香料が入った化粧品が肌に合わないことがある
5 肌が弱いので化粧品を慎重に選んでいる
6 マッサージなど物理的な刺激によって肌の状態が悪くなることがある
7 普段の生活でも紫外線を浴びたりすると肌が赤くなったり、ヒリヒリしやすい
8 汗をかいた後にかゆみがでることがある
9 化粧品や洗剤があわずに赤みやかゆみがでる
10 化粧品の肌トラブルにより通院した経験がある

「敏感」を選択する者は、ヒト皮膚のストレス蓄積量が高く、「非敏感」を選択する者はヒト皮膚のストレス蓄積量が低いと予想した。
(2)肌の敏感性のアンケート結果とMIF量の関係
上記(1)の肌の敏感性のアンケート結果(非敏感74名、やや敏感101名、敏感20名)とMIF量の関係を図9に示す。
自己の肌が非敏感であるとした回答者のMIF発現量の平均値は0.5pg/μg total protein(SD0.6、SE0.1)、やや敏感であるとした回答者のMIF発現量の平均値は0.4pg/μg total protein(SD0.4、SE0.0)であった。一方、自己の肌が敏感とした回答者のMIF発現量は、0.8pg/μg total protein(SD0.8、SE0.2)であった。肌が敏感であると自己申告した人のMIF発現量は、他と比較して突出して高い。
MIF発現量を測定することで敏感肌であるか否かを容易に検査できることが明らかとなった。

Claims (2)

  1. 皮膚角層のマクロファージ遊走阻止因子(MIF)の発現量の多寡を指標とする日焼けに伴う皮膚の発赤、又は洗浄による刺激発生を評価するための検査方法。
  2. マクロファージ遊走阻止因子(MIF)の発現量の測定がウエスタンブロットによるものである請求項1に記載の方法。
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