JP6017235B2 - ナノ粒子含有膜の形成方法およびナノ粒子含有膜 - Google Patents
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上記のセラミックスナノ粒子を実際に利用するためには、セラミックスナノ粒子を用いた製品の耐久性やセラミックスナノ粒子の安定性の観点から、基板に固定することが必須である。
例えば、特許文献1に、上記の方法を用いたセラミックス焼結体の製造方法が開示されている。
また、セラミックスナノ粒子同士の凝集や物質移動による粒子成長が起こり、セラミックスナノ粒子の機能が低下してしまうという問題がある。
本実施形態に係るナノ粒子含有膜の形成方法は、液相酸化接合(LPO:Liquid Phase Oxidation)によりナノ粒子を基板表面に形成する方法である。
まず、図1(a)に示すように、例えば、合金からなる基板10を用いる。合金基板としては、例えば、ニッケル合金を用いることができ、特に、Niが72重量%以上、Crが16重量%、Feが8重量%のものを用いることができる。あるいは、ステンレス合金またはチタン合金などのニッケル合金以外の合金基板を用いることもできる。
基板10の大きさ(径)及び厚みは特に制限はなく、ナノ粒子含有膜を形成しようとする対象に応じて適宜選択できる。
例えば、上記の基板10の表面は、後述のアルミニウムなどからなる第1層の膜厚以下の表面粗さを有する平坦な面を得るために適宜研磨処理を施しておく。例えば、9μm及び3μmの径のダイヤモンド砥粒で研磨し、さらに1μmの径のアルミナ砥粒で鏡面研磨する。
例えば、基板10として上記のニッケル合金基板を用いる場合には、第1層11としてアルミニウムを用いることができる。アルミニウムからなる第1層を形成するには、例えば真空蒸着法により約1μmの膜厚で形成する。
上記のように第1層を形成した後、第1層の剥離防止のため、例えば500℃で1時間のアニール処理を施す。
第1層11としては、アルミニウムの他、インジウム、スズ、鉛などの低融点金属を用いることもできる。
第2層12は、例えば、第1層11を形成する材料の融点より低く、かつナノ粒子の融点より低い温度で焼成されて、酸化ジルコニウムなどのセラミックスナノ粒子となる層である。
酸化ジルコニウムなどのセラミックスナノ粒子を形成する場合、第2層12として、例えば、2−メトキシエタノール、Zr n−ブトキシドのブタノール溶液、及びポリ酢酸ビニルの混合溶液からなる酸化ジルコニウムの前駆体溶液をディップコート、スピンコートあるいは他の塗布方法により塗布して、前駆体溶液層を形成する。
前駆体溶液としては、例えば、2−メトキシエタノールを6mlに対してZr n−ブトキシドのブタノール溶液(ZrO2として28.8質量%含有)を0.59g、ポリ酢酸ビニルを1.2g含有することが好ましい。
これは、第2層12を構成する前駆体溶液中において酸化ジルコニウムなどのセラミックスからなるナノ粒子を形成することでゲル化するものであり、例えば空気中において常温で経時させることにより行うことができる。
例えば、ナノ粒子12bとして酸化ジルコニウムを形成する場合、第1熱処理は500〜800℃で1時間程度行う。このようにして得られる酸化ジルコニウムナノ粒子の平均粒径は例えば20nmであり、粒径分布は例えば±10nmである。
上記のナノ粒子ゲル化工程及び第1熱処理の処理温度及び時間を変化させることにより、得られるナノ粒子の平均粒径及び粒径分布を調整することができ、例えば800℃1時間の熱処理では平均粒径が30nmとなる。
後述の第1層11を溶融する工程において、溶融された第1層11a中にナノ粒子12bが完全に取り込まれた状態となるように、アルミニウムからなる第1層11の膜厚より小さいことが好ましい。
例えば、ナノ粒子12bとして酸化ジルコニウムを用い、第1層11としてアルミニウムを用いた場合には、第2熱処理は700〜1000℃で1時間程度行う。
上記の構成において、酸化物からなる第1層11bを構成する材料中にナノ粒子12bが固定された膜とする。
上記の「均一に」とは、第1層中のナノ粒子分布に大きな偏りがないことを意味し、上記において、ナノ粒子をゲル化し、焼成することで、溶融された第1層中にナノ粒子が均一に分散して取り込まれた層とすることができる。
上記の第2熱処理の溶融過程で基板とナノ粒子の間に液相が生成し、基板とナノ粒子の間を埋めこむ。この時、液相(溶融された第1層)の一部が基板中に固溶し、これを「均質化」と称する。
上記の場合、第1層11を形成する材料の酸化物からなる第1層11bと、溶融された第1層11aが基板中に固溶した固溶体の部分の間に、溶融した第1層11aが酸化も固溶もせずそのまま第1層11と同じ組成で固化した領域が形成されてもよい。
従って、本実施形態のナノ粒子含有膜の形成方法によれば、従来方法と比べてナノ粒子が基板から容易に剥離するのを抑制することができる。
本実施形態により、耐剥離性に優れる機能性セラミックスナノ粒子の合金基板への固定が可能となり、合金の耐摩耗性、耐酸化性が向上する。
また、特許文献5の方法では、セラミックス粒子の合金基板への固定はできないが、本実施形態によれば、耐剥離性に優れる機能性セラミックスナノ粒子の合金基板への固定が可能となる。
直径10mmのニッケル合金棒を厚さ1mmに切断し、表面に研磨処理、さらに鏡面研磨仕上げ処理を施した。形成された研磨面上に、真空蒸着により1μmの厚さでアルミニウムを堆積し、第1層を形成した。
一方、Zr n−ブトキシドのブタノール溶液、2−メトキシエタノール及びポリ酢酸ビニルを混合させて第2層を構成する前駆体溶液を調製した。
得られた前駆体溶液を、アルミニウム被覆ニッケル合金基板上にスピンコートし、空気中で乾燥させ、500℃で1時間の第1熱処理で焼成して、前駆体溶液の層からなる第2層から、酸化ジルコニウムからなるセラミックスナノ粒子の層を形成した。
まず、基板が空気と接触しないように真空雰囲気中においてアルミニウムの融点以上まで加熱し、溶融されたアルミニウム中に酸化ジルコニウムのセラミックスナノ粒子が取り込まれた状態とした。
さらに、アルミニウムが溶融した後に空気を導入して接触させ、800℃で1時間の熱処理を施し、空気中の酸素で溶融したアルミニウムを酸化して酸化アルミニウムとして固化した。
上記のようにして、酸化アルミニウムからなる第1層を構成する材料中に酸化ジルコニウムからなるセラミックスナノ粒子が固定された膜を形成した。
上記の実施例に対して、アルミニウムからなる第1層を形成せず、基板上に直接酸化ジルコニウムからなるセラミックスナノ粒子の層を形成した。
即ち、直径10mmのニッケル合金棒を厚さ1mmに切断し、表面に研磨処理、さらに鏡面研磨仕上げ処理を施し、Zr n−ブトキシドのブタノール溶液、2−メトキシエタノール及びポリ酢酸ビニルを混合させてなる前駆体溶液を塗布し、空気中で乾燥させ、500℃で1時間の熱処理で焼成して、酸化ジルコニウムからなるセラミックスナノ粒子の層を形成した。
図2(c)は上記の比較例に係る試料に対して上記の超音波照射を行った後の表面の電子顕微鏡写真であり、図2(d)は上記の実施例に係る試料に対して上記の超音波照射を行った後の表面の電子顕微鏡写真である。
図2(a)及び図2(b)から、比較例及び実施例の試料においてナノ粒子の層が形成されていることが確認された。
また、図2(c)から、比較例では超音波照射によりナノ粒子が基板から容易に剥離してしまう一方、図2(d)から、実施例では超音波照射によりナノ粒子が基板から容易に剥離せず、耐剥離性が向上していることが確認された。
図3は上記の比較例及び実施例に係る試料のボールオンディスクによる耐摩耗性試験の結果を示すグラフであり、縦軸は摩擦係数、横軸は摺動距離である。図3中、Aは比較例の結果であり、aは比較例のグラフにおいて摩擦係数が一定となる摺動距離を示す。また、Bは実施例の結果であり、bは実施例のグラフにおいて摩擦係数が一定となる摺動距離を示す。
アルミニウムを蒸着しないでナノ粒子を形成した比較例に対して、実施例は摩擦係数が一定となる摺動距離が大幅に長くなり、耐摩耗性が向上したことが確認された。
図4(a)及び図4(b)に示すように、比較例では耐磨耗試験後に300μm程度の幅で数μm程度の深さの溝が生じており、表面が損傷を受けている。
一方、実施例では耐磨耗試験後における表面に生じる溝は80μm程度の幅で1μm程度の深さに留まっており、耐磨耗試験で受ける試料表面の損傷が比較例より大幅に小さくなっていることが確認された。
例えば、酸化ジルコニウム以外に、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)あるいは酸化チタンなどの他のセラミックスナノ粒子を含有する膜を形成する方法にも適用できる。
また、セラミックス以外のナノ粒子を含有する膜を形成する方法にも適用できる。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
11,11a,11b…第1層
12,12a…第2層
12b…ナノ粒子
Claims (8)
- 基板に前記基板より融点が低い材料の第1層を形成する工程と、
前記第1層の上層にナノ粒子の層を形成する工程と、
前記第1層を溶融し、前記第1層を構成する材料中に前記ナノ粒子が固定された膜とする熱処理工程と
を有するナノ粒子含有膜の形成方法。 - 前記ナノ粒子の層を形成する工程が、前記第1層の上層に前記第1層を構成する材料の融点より低く、かつ前記ナノ粒子の融点より低い温度で、焼成する工程を含む
請求項1に記載のナノ粒子含有膜の形成方法。 - 前記第1層を構成する材料中に前記ナノ粒子が固定された膜とする熱処理工程において、前記基板の融点と前記ナノ粒子の融点より低く、かつ、前記第1層を構成する材料の融点、または前記基板と前記第1層を構成する材料との共融点より高い温度で熱処理を行う 請求項1または2に記載のナノ粒子含有膜の形成方法。
- 前記第1層の上層にナノ粒子の層を形成する工程において、セラミックスナノ粒子の層を形成する
請求項1〜3のいずれかに記載のナノ粒子含有膜の形成方法。 - 前記熱処理工程において、前記第1層を溶融し、溶融された前記第1層の少なくとも一部を酸化して前記第1層を構成する材料の酸化物層とする
請求項1〜4のいずれかに記載のナノ粒子含有膜の形成方法。 - 前記熱処理工程において、前記第1層を溶融し、溶融された前記第1層中に前記ナノ粒子が均一に分散して取り込まれた層とする
請求項1〜5のいずれかに記載のナノ粒子含有膜の形成方法。 - 前記熱処理工程において、前記第1層を溶融し、溶融された前記第1層の少なくとも一部を前記基板中に固溶させることによって前記第一層と前記基板との化合物を生成することなく、均質化させる
請求項1〜6のいずれかに記載のナノ粒子含有膜の形成方法。 - 基板と、
前記基板に前記基板より融点が低い材料で形成された第1層と、
前記第1層の上層に形成されたナノ粒子の第2層と、
を有し、
前記第1層は当該第1層を構成する材料中に前記ナノ粒子が固定された膜を有する、 ナノ粒子含有膜。
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