本発明は、水上に設置可能にするフロート型太陽電池アセンブリ及びこれを連結したフロート型太陽電池アレイに関し、詳しくは、設置が容易なフロート型太陽電池アセンブリ及びフロート型太陽電池アレイに関する。
太陽電池は、p型とn型半導体を接合したpn接合型ダイオードや、I−III−VI族のカルコパイライト系化合物等の化合物や、二酸化チタンに吸着された色素等の物質が、これらに存在する電子が光エネルギーを直接吸収して電力として取り出せる光起電力効果を有することを利用した発電機であり、安全でクレーンなエネルギーとして有力視されている。太陽電池の実用化に当たり、これらの物質を備えた太陽電池素子を複数平面状に並列して接続して太陽電池モジュール(太陽電池パネル)とし、更に、必要な電力が得られるように太陽電池パネルを複数枚を平面状に並列して接続して、太陽電池アレイとして、地上や、建物の屋根や側壁、水上等に設置している。地上に設置するには大規模な用地を確保する必要があり、また、建物に設置する場合にも費用が嵩むことから、設置場所としてダム湖等の貯水池の水上は有利である。
水上に設置する場合、水による劣化や相互の衝突による損傷から保護するため、太陽電池モジュールを保護枠や被覆材等の保護部材で保護して設置に適した形態とした太陽電池アセンブリとし、フロート(浮揚物)に固定して、その複数を一体とした太陽電池アレイとして、水位の変動に対応するため、余長を持たせて岸壁等に固定しているが、以下のような問題点がある。
第1の問題点は、ほとんどが、高重量のガラスパネルの太陽電池モジュールを採用し、また軽量なフレキシブル太陽電池モジュールをせっかく採用していても裏面にアルミ板やステンレス盤等の金属板を貼り付けしたり、固定するフレーム等に金属を採用していて、重量が下がらないため、フロートを含めた材料コストや運搬コストや設置コストがかかる問題点があった。この問題が発生する原因は、従来の太陽電池モジュールは屋根や壁のような強固な面に建築物と一体として設置することを前提にして設計されていたことに起因する。
第2の問題点は、その設置方法において、連結手段としてワイヤ、ロープ、チェーン、二重カン等で連結しているケースが多く、これらは、遊びの自由度が大きいため、風波での大きな揺れを生じて、フロート一体型太陽電池アセンブリの破壊が起こる可能性が高まっていた。この問題が発生する原因は、高重量のリジッドなガラスパネルの太陽電池モジュールを採用していることにより、逆に連結もリジッドに固定してしまうと、連結部に集中して機械的負荷がかかり破壊されてしまう可能性が高かったため、ある程度の遊びの余裕をつけるためにワイヤで連結していたが、遊びが逆に大きな揺れを生じさせてフロート一体型太陽電池アセンブリのぶつかりを生じさせてしまっていたからである。
第3の問題点は、その設置方法において、連結箇所が4箇所を超える実施例も見られ、設置工数や材料コストも増える問題点があった。この問題が発生する原因は、高重量のリジッドなガラスパネルの太陽電池モジュールを採用していることにより、慣性力が高く、4点の連結だけでは、連結部の機械的強度が不足していたことに起因する。
第4の問題点は、フロート一体型太陽電池アセンブリのフロートの面積が太陽電池モジュールの面積より大きくなってしまい、発電面積効率が悪化する問題点があった。この問題が発生する原因は、高重量のリジッドなガラスパネルの太陽電池モジュールを採用していることにより、できるだけ連結する隣同士のリジッドな太陽電池モジュールが直接ぶつかって破壊しないようにフロートのぶつかりで衝撃を緩衝させることを考慮していることに起因する。
第5の問題点は、ほとんどの実施例が太陽電池モジュール本体が水上に設置されて、水で直接冷却されず、さらにフロートとして発泡性樹脂を使用して、著しく熱伝導率を妨げており、熱がこもり放熱効果を著しく下げているという欠点が共通している。この問題が発生する原因は、まず、太陽電池モジュール本体の水による劣化をさせたくないという考慮があることとさらに太陽電池モジュールの表面に水が多く付着すると、水の膜や水が蒸発した跡のイオンデポジットで日射効率が落ちて、水冷による発電量の上昇が打ち消されてしまうことに起因する。
第6の問題点は、フロートと太陽電池モジュールを接着することで、接着の剥がれも問題になる実施例が一部見られることである。この問題が発生する原因は、発電部の温度が異常に高くなることにより熱膨張率の違うもの同士で接着が剥がれることに起因する。
第7の問題点は、アルミのような熱伝導率の極めて高い材質を一部使用する例が見られるが、表面処理や挟みこみにより熱伝導率の高い材質を導入しても総合的に熱伝導率は実際には思うように上昇しないという欠点がある。この問題が発生する原因は、所詮熱伝導率の低い樹脂層がクリティカルパスとなってしまうため、結果的にその熱伝導率で制限されてしまうからである。
第8の問題点は、半数以上が太陽電池モジュールが平らに設置されており、雨水等で、発電効率が下がる欠点もあった。この問題が発生する原因は、波の揺れで静止状態よりも水が落ちやすいという設計上の妥協があったからであるが、実際は水が往復するだけであまり落ちなかったことに起因する。
第9の問題点は、第8の問題点の改善策として、ガラスパネルの太陽電池モジュールを屋根型の傾斜のある鋼板に取付けたり、フレキシブル太陽電池を使用してアーチ状の鋼板に取付けたりする実施例があるが、発電部が二方向以上に傾くことで日射効率が下がり年間発電量が下がる欠点があった。この問題が発生する原因は、太陽電池モジュール設置面積効率と年間発電量の効率を両立させる場合、発電部を平らに設置した方が最善になり、二方向以上の傾斜は日射効率を下げて非効率になるからである。また、傾斜が緩やかで水が付着しやすく中途半端な対策でもあった。
以下に、太陽電池モジュールの水上設置での問題点を個別に具体的に詳細に述べる。
特開昭57−62572は、ダムの貯水池等でいかだやポンツーン等に架台を立ててその上に太陽電池モジュールを設置する単純な構造で詳細な構造が不明な例であるが、直接水に接しないため、水冷効果が得られない。また、太陽光モジュール表面が水平であるため、雨水が溜まりやすく発電量の低下が起こる。また、実施例では一般的な高重量のガラスパネル型の太陽電池モジュールを湖面全体の長方形のいかだまたはフロートで高くフレームを介して支える分、強度上から太陽電池モジュールをはめ込む金属性のフレームで対応することになり、いかだまたはフロートの重量がさらに増えて、構造も複雑になり、材料費と設置コスト、運搬コストの増大が欠点となる。なお、大面積で対応する場合は、いかだまたはフロートの面積は、限定されて連結が必要になるが、連結に関する提案はここでは示されていない。なお、平らな太陽光モジュールの上に雨水がたまりやすい欠点もある。
特開平08−314809は、太陽電池モジュールを金属板上に貼付けて上面のガラスとシリコーン樹脂で密閉したものをポリエチレン発泡体に接着し、ナイロン製の帯で連結した実施例であるが、金属板とポリエチレン発泡体が熱により接着が剥がれやすいこともあり、また、ナイロン製の帯もポリエチレン発泡体に接着することで接着が剥がれやすいこともある。また、金属板が使用されているが、ポリエチレン発泡体で熱がこもりやすく放熱の点で問題がある。また、裸のポリエチレン発泡体は、吸水により長期耐久性に問題があった。また、ガラスや金属板による重量増で、フロートの材料増によるコスト増が欠点となる。モジュールが小型で連結も8箇所で、大面積で、連結をするのに多くの接着を必要とし、設置工事のコスト増になる。また、フロート間が間隔が開き設置面積効率が低下する。なお、平らな太陽光モジュールの上に雨水がたまりやすい欠点もある。
特開平08−167729は、船底型の防水皮膜で防護したフロートの上にガラスパネルの太陽電池モジュールを接着した実施例であるが、熱膨張率の違いにより、フロートと太陽電池がはがれやすい。また、熱伝導率の低いフロートに接着されることで、熱がこもりやすく放熱性で問題がある。それを改善するために他の実施例としてフロートの底のみに金属性の伝熱板を埋めこんでいるが、熱伝導性の低い発泡性樹脂を間に介しているため、放熱効果は得られない。金属性の伝熱板の重量増でフロートが大型になり、材料費の増につながっている。また、モジュール間の連結部は、4隅に2つずつ存在し、設置作業は困難となる。連結に遊びのある係留紐の手段を使用しているため、風波で、ばらばらにフロートが大きく揺れてフロートの剥がれを促進することがある。また、連結部の出っ張りの分と係留紐の遊びで設置面積効率が低下する。また、太陽光モジュール表面が水平であるため、雨水が溜まりやすく発電量の低下が起こる。
特開平10−173212は、軽量なフレキシブル太陽電池モジュールを使用した実施例であるが、この実施例では、全体のサイズが5m×3mで太陽電池モジュール約20kg、金属性の天板が120kg、金属製のフレームが80kgと220kgもの総重量になっていて、フロートが大型化し、材料費だけでなく搬送コストや現地での設置コストも要する。全体のフレームの4隅に集中してフロートを厚く設置しているが、フレームを厚くしないと特に長辺が長いため長辺での強度が不足して、4隅だけ浮いて長辺の中央部のフレームが高重量で変形して沈み、不安定になることもある。連結用のフックの連結方法が不明確であるが、一般的なワイヤで接続すると、フロートが4隅にあるため、風波で揺れやすく、中面積のフレームの強度アップのためにさらなる材料費の増加となる。また、表面に細かい凹凸のあるフレキシブル太陽電池モジュールと天板との固定に単純にボルト固定やかしめ止めをするようになっているが、ミクロ的に見ると熱伝導率の極めて低い空気の層が入り、金属との総合的な熱伝導率は高まらないため、結果的に放熱はしにくい構造となっている。金属製のものは、熱伝導率が高いので、放熱性がいいと思いがちであるが、重量を重くすると、却って放熱効果が低下する。また、雨水のはけをよくするために太陽電池モジュールがアーチ状になることで、日射効率が悪く、発電効率が落ちてしまう。
特開平10−135502は、特開平10−173212のフレキシブル太陽電池モジュール12枚をフロートで浮かした220kgのユニットフレームの実施例を15個使用して金属性の中空のガイドフレームで220kgの周囲をさらに囲んで、220kgのユニットフレームとガイドフレームとを連結フック同士をチェーンで接続してアジャスタの弾性体でさらに保護し固定した実施例である。このガイドフレームを付加した目的は、風波の影響を大幅に抑制するためである。しかしながら、フレキシブル太陽電池モジュールを使用したのに220kgというユニットフレームの重量と材料費を要し、さらにガイドフレームの材料費がかかる。これを改善するために第3、第4の実施例では、天板が四フッ化エチレンでコートしたポリエチレン布のシートにしているが、それでも120〜130kgのユニットフレームとなり重量は重いと言わざるを得ない。さらにガイドフレームが金属製であるため、総重量はさらに重くなる。また、ガイドフレーム分の設置面積効率が低下し、アルミの代替としたシートの放熱性が悪いため熱がこもって発電量が低下してしまう。
特開2001−189486は、縦横の金属製のフレームの下に6個のドラム管のような円筒形のフロートを取付けてその上に8枚のガラスパネルの太陽電池モジュールを取付けたいかだ設置のような実施例であるが、中央の列だけ、採光用の面があり、設置面積効率が大幅に下がる場合がある。むしろ、ダム等では水質汚濁防止のために覆蓋パネルで湖面を覆いたいほどであるため、太陽電池モジュールでできるだけ覆うことが必要となる。また、太陽光モジュールは、熱伝導率の低いフロートや空気で遮られるため、せっかくの水冷効果を活用できないこともある。ステンレス製や鉄製からなるフレームも重量増の要因となり、フロートを含めた材料費や設置コストがかかってしまう。これだけの重量物を運搬し水上に設置するためにクレーン等が必要となる。連結は、係留用ワイヤで連結するため、遊びが多く、風波で大きく揺れてフレーム同士がぶつかってガラスパネルの太陽電池モジュールが破壊しやすいということもある。太陽電池モジュールとの水平変位自在の遊びをもって固定されていることがむしろ、がたつきを生じて、ガラスパネルの太陽電池モジュールの破壊を招く。
特開2002−173083は、ガラスパネルの太陽電池モジュールを凹凸表面構造の樹脂製の天板に載せてL字型の突起で挟んで固定し、フロートと天板をスチールバンドで全体を圧着して挟む構造の実施例であるが、空気の熱伝導率は、フロートと同様に低いため、空気の層だけでは放熱効果がほとんど得られず、樹脂自体も一般の樹脂で熱伝導率は低いため、フロートと天板と太陽電池モジュール間に結果的に熱がこもってしまう。フロート間の連結も詳細は示されていないが、スチールバンド同士をワイヤや帯で結ぶ手法で、連結部の破壊を防止するようにしているが、現地での設置工事で、スチールバンド3本を締める作業と周りの6箇所を連結する作業は、作業点数が多く、まだ、材料費低減と設置工事を簡略化できる余地を残している。また、スチールバンド部分や抜き止め突起等の無駄な面積を消費しており、設置面積効率のよいものではない。また、太陽電池モジュールが平らなので、雨水や汚れがたまって、発電効率が落ちてしまう。
特開2002−118275は、実施例として6枚の金属性フロートを並べた上部にガラスパネルの太陽電池モジュールを設置した例であるが、金属製フロートの熱伝導により確かに放熱はよくなる効果はあるが、金属を使用することで重量が増し、巨大化してフロート全体のコストが増してしまう。また、水中に潜って作業することを考慮しているのか不明であるが、連結部位が下向きにL字に折れ曲がっており、下側でかつ辺の途中にあるため、連結の取付け取外しの作業性が悪いという欠点がある。また、太陽電池モジュールが平らなので、雨水や汚れがたまって、発電効率が落ちてしまう。
特開2003−209274は、単純に密閉空間またはフロートの上部にガラスパネルの太陽電池モジュールを敷設して全体を金属フレームで囲い、4隅に張り出した連結用金具がついた構成の水上設置の太陽電池モジュールである。太陽電池モジュールの直下に熱伝導率の低い空気やフロートを介しているため、熱がこもり、発電量が下がってしまう。また、金属フレームにより、さらに重量が重く、フロートを含む材料費がかかる。また、窪んだところに平らな太陽電池モジュールを設置しているため、雨水や汚れがたまって、発電効率が落ちてしまう。
特開2003−229593は、過酷な波のある水上設置の場合のフロート型太陽電池アセンブリ同士の連結構造に特徴のある公知例である。金属枠に太陽電池モジュールをはめて、直下にフロートを実装したものであって、重量が重く、材料コストを要する。また、太陽電池モジュールの直下に熱伝導率の低いフロートがあるため、熱がこもりやすく発電量が低減する。一方、特徴のある連結の基本構造は、フロートの4隅に外方に張り出すか下方に張り出した連結金具の穴にキーホルダー等に使用されている安価な二重カンで連結するものである。なお、基本的には、金属製を好適としたリングであるため、フロート間は、一定間隔以上の間隔が空き、連結部以外のフロートの両者がぶつかることもなくなり、高波がきても追従した揺れで収まると説明されているが、リング状の可動範囲の遊びが大きく、高波で太陽電池モジュールがばらばらに上下に揺れ、太陽電池モジュールに無理な衝撃が付加されやすい。リングの数については、最低限4隅の結合を1つのリングで結合できるため、リング材料の節約ができる。また、他の実施例として、コストが上昇するが、自在継手による連結も提案されているが、同様の揺れによる問題点がある。また、遊びが多くなれば、設置面積効率が落ちることもある。なお、安価な二重カンを使用するのは、コスト的には優れているが水上設置を考慮するとリングに回して通して取付け取り外しは煩雑である。特に最も経済性の高い4隅の結合を1つのリングで結合する場合、連結金具の穴は、4つもあると形状的にリングに通しにくくなる。また、窪んだところに平らな太陽電池モジュールを設置しているため、雨水や汚れがたまって、発電効率が落ちてしまう。
特開2004−063497は、フロートとガラスパネルの太陽電池モジュールとの結合をプッシュリベットやねじ等で簡単に着脱を可能とした水上用太陽電池モジュールである。フロートが巨大化しているため、着脱することが必要となり、フロートが充分小さければ一体化していた方が望ましい。人が乗っても沈まないことや非常に重量のある蓄電池をフロート内に実装できる構造も有しているが、フロート全体の巨型化により、全体のコストが大きくなってしまう。フロート間の連結もフロート同士がぶつからないように横に飛び出した連結孔でひもやロープやチェーン等で連結するようになっているが、紐状の連結では強度不足であり、フロート同士がぶつかって破損する場合もある。破損を免れるためには、連結箇所を増加させる必要があり、設置作業が煩雑になってしまう。フロートが巨大化して、浮力もかなり大きいため、水面から太陽電池モジュールが大きく上に浮上し、熱伝導率の低いフロートにより、熱がこもり、発電劣化が生じてしまう。平らな太陽電池モジュールを設置しているため、雨水や汚れがたまって、発電効率が落ちてしまう。
特開2004−071965及び特開2004−063497は、湖等に船底型のフロート上に太陽電池を設置する似た実施例であるが、蓄電池を積んでもベニヤを置いて人が乗っても沈まないくらいの浮力を得るために大型のフロートを使用しており、材料費がかかる。また、フロート保護樹脂にAAS樹脂、AES樹脂または変性PPO樹脂を使用しており、比較的高価であるが、紫外線による耐候性は得られるものの、長期設置では劣化を生じる。フロート自体の熱伝導率が低く樹脂も伝導率も低いので、放熱性は低くなる。連結部もロープ状のものを使用し設置効率が低下し、連結部のロープで遊びの自由度も多く、揺れが大きくなってしまう。平らな太陽電池モジュールを設置しているため、雨水や汚れがたまって、発電効率が落ちてしまう。
一方、ダム湖等に設置する用途ではなく、浄水場の水処理施設のろ過地上部やろ過地に隣接する配水地上部に異物混入防止や藻の発生防止としてふたをする覆蓋パネルの上に太陽電池モジュールを設置する用途もある。太陽電池モジュールをダム湖等に設置する用途と浄水場に設置する用途の決定的違いは、後者はあくまで水処理施設の覆蓋パネルとしての蓋の用途が強く、浄水槽に溜まっている水の増減により覆蓋パネルが上下せず、水に接触せずに浮遊しない点で全く異なる。また、完全に遮光のために固定密閉しているため、水処理施設の槽内の点検時に覆蓋パネルをスライドさせて、開口できるようにする点が異なる。何段階の上下の層で、窓のようにスライドさせて開口できるものもある。地上固定手段以外にもフロートを付加したものも存在するが、取り外しやすく、コンパクトに収納しやすい構造であることが要求される。太陽電池モジュールが設置される部分は雨水が溜まらないように通常はアーチ状になっており、その他の残りの部分はフラットパネルで蓋をする形が一般的である。しかしながら、アーチ状の太陽電池モジュールは、太陽光の入射角のロスが多く発電効率が落ちるのでこの点では問題となっている。さらに問題なのは、浄水槽に水が存在するにも拘らず、太陽電池モジュール自体を冷却できないため、発電量が落ちてしまうことである。覆蓋パネルの材質は、軽量でありながら耐水性、耐候性、耐薬品性、強度が高く安価なので、FRPが一般的に使用されている。FRPの熱伝導率は、通常の比較的安価なGFRPの場合0.25W/mK前後で低く、熱がこもりやすい欠点がある。約10倍高価なCFRPになると0.45W/mK程度となる。
浄水場等の覆蓋パネル上にとりつける太陽電池モジュールの発明として、特開2004−228262は、太陽電池モジュールを搭載した2枚の覆蓋パネルをヒンジを介して折り畳める実施例である。前後の太陽電池モジュールの存在しない面積が大きく、設置面積効率に劣る欠点がある。熱伝導率の低いフロートに直接太陽電池モジュールを載せており、熱がこもりやすく接着も剥がれやすい。
特開2004−228263は、外周部を枠のフロートで支持し、フロートの内側の穴に太陽電池モジュールから空間を介して薄膜状の遮水部材を配設し防水構造とし、太陽電池モジュール部分を微妙に傾斜をつけて雨水の水がたまらないようにしているが、雨水の排水は十分ではない。いずれにしてもフロートを使用したもので、浄水場等の覆蓋パネル以外にダム湖等に設置する用途も考慮しているが、フロートや薄膜状の遮水部材が、熱伝導を低下させて水による冷却効果が損なわれている。太陽電池モジュールとの接着も十分でない。
特許4421240は、1つのアーチ状の覆蓋パネルに3個以上の矩形の穴を開けて、FRP基盤に3個以上のFRP筐体のフレキシブル太陽電池モジュールを添着した太陽電池アセンブリを嵌め込めるようになっている覆蓋パネルで太陽電池モジュールを一体化設置する典型的な実施例である。地上の水槽枠に固定されるアーチ状の蓋に太陽電池モジュールが設置され、水槽に溜まった水と太陽電池モジュールが接していないため、完全に水冷効果は得られない欠点がある。よって、フロートも存在せず、水面に浮かべられない。
特開2005−285969は、発泡性樹脂のフロートの代替として、気体を充填したチューブをガラスパネルの太陽電池モジュールの外側に張り出したモジュール枠体に内在した水上設置実施例である。自転車のチューブのように高気圧の気体を入れたチューブを使用することで、浮力をあげてフロートの小型化を図り、モジュールのある中央部を空かせて水冷効果を増強しているが、チューブと枠体の二重に材料費がかかる問題点がある。特に枠体にアルミやポリプロピレン等の材質を好適例としているが、汎用プラスチックよりも高価になる。重量のあるガラスパネルを使用しているため、小型化をしたと言っても辺に集中しているため、大きな枠体を使用し、チューブ部分が横に張り出しており、設置面積効率の点で問題がある。また、リジッドな重量のあるガラスパネルを使用しているため、波の揺れで、重量の慣性で振動が増幅されやすい。また、チューブは、自転車のチューブと同等の手段で空気入れを使用して高圧の空気を空気穴から注入するため、経年変化により気体が漏れるのは避けられず定期的な空気注入というメンテナンスが必要である。メンテナンスは、陸上に上げ枠体を外す作業をしなければならない。また、この実施例では直接モジュール裏面が水で冷却されるため、放熱効果が高くなるが、その反面、水平な太陽電池モジュールの表面にも水滴や汚れ等がついて、発電効率が落ちてしまう。裏面シートはアルミ箔を挟持したフッ素系樹脂シートやアルミナまたはシリカを蒸着したポリエチレンテレフタレ−ト(PET)シートなどが用いられ、フッ素樹脂やPETの熱伝導率で熱遮断されるため、熱伝導フィラーを樹脂全体に均一に分散化させないと大きな効果が得られず、コスト的に不利になる。
特開2007−123380は、太陽電池モジュールを透明樹脂接着層に埋没させて封止し直下にアルミ製の基板を敷いてさらにその下に発泡樹脂性のフロートを一体成型して、金属製の枠体で周りを保護する手法をとっている。発泡樹脂性のフロートは、ほぼ空気と同じ熱伝導率で0.03W/mK程度と熱伝導率が低く、フロート表面に熱がこもりやすく、実際的な放熱に問題があった。これは、水との接触面積がフロートで遮断されて放熱効果が抑制されるからである。アルミのような熱伝導率の高い金属を用いると、熱伝導率が低い接着層が障害となり、アルミ製の基盤への熱伝導が阻害される。さらにアルミ製の基盤と発泡樹脂性のフロートでの桁違いの熱伝導性の低い物質との大面積での接触で熱がこもることで、放熱性が低下してしまう。また、ガラスパネルで重量がある上にアルミ製の基板や金属製の枠体の重量がかかり、フロートの容積も大きくなり、余分な金属やフロートの材料費がかさむ欠点があった。たとえ放熱性がよくても水の熱伝導率が0.6W/mKであるため、水面が温水化して効果的な水冷ができない問題点がある。アルミのような熱伝導率の高い金属を用いるとコストや重量の点で不利となる。また、太陽電池モジュールが平らなので、雨水や汚れがたまって、発電効率が落ちてしまう。
特開2007−173710は、中面積で経済的に設置できる水上設置用太陽光発電装置の連結体に関する発明である。モジュール間の連結の現地での溶着、接着、縫合等は設置工事の複雑化につながり、現地陸地に大面積の作業場がない場合、水上で作業することになる。これを仮に工場で溶着、接着、縫合すると円周上に丸めたとしても大面積の連結されたモジュールとフロートを搬送するのにクレーンや巨大トラックが必要となり、簡単な設置とは言えない。また、巻回することにより太陽電池モジュール間の間隔が開いてしまい、設置面積効率が落ちる欠点があった。事前に工場で、溶着、接着、縫合してしまう場合、ある程度のモジュール間の連結間隔がないと巻くことが不可能になる。特に管状体構造で、120m2単位同士を交互に1つおきに完全防水加工の中空密閉のパイプを介在して連結する構造になっているが、太陽電池モジュール以外の設置面積が増加し設置面積効率が下がり、遊びが多いため、揺れで隣同士のモジュールが接触して破損されるおそれもある。また、太陽電池モジュールが平らなので、雨水や汚れがたまって、発電効率が落ちる欠点がある。
覆蓋パネル用途で特開2007−150219は、同様に凸状または凹上のFRPの覆蓋パネルにフレキシブル太陽電池モジュールを取付け、さらに辺の外側にフロートを付与した実施例であるが、FRPの覆蓋パネルの外側に張り出したフロート分の設置面積が必要となる。また、熱伝導率が低いFRPの覆蓋パネルで水冷効果が低くなる。なお、アーチ状のフレキシブル太陽電池モジュールは、日射効率が低下し、覆蓋パネルの発明であるため、水上に設置するとなると、フロートがさらに必要となる。
特許4622976の第3の実施例では、水上設置用として、フレキシブル太陽電池モジュールより一回り大きいサイズのステンレス盤とフロートをネジ止めで固定する実施例であるが、軽量のフレキシブルモジュールを使用してもステンレス盤の使用により高重量、コストの上昇となってしまう。フレキシブル太陽電池モジュールは、ブチルゴムを使用してモジュールロール加圧でステンレス板に接着する手段をとっているが、ブチルゴムは熱伝導率が0.13W/mKと低めなので、熱伝導率が多少低下する。一方、裏面の樹脂もアルミ箔を表面にラミネートした樹脂を採用して熱伝導率の上昇を図っているが、樹脂により熱伝導率が阻害されてしまう。屋根型の山形の形状で太陽光モジュールを直接設置するのは、日射効率が悪くなる欠点がある。
特開2011−066200は、いかだ状のフロートの上に天板とフレームを設置して太陽電池モジュールを設置した簡便な構造を有するものである。フロートを複数の横にした円柱状にしているが、太陽電池をできるだけ浮上させる目的である。この公知例では熱伝導率の高い材質で放熱することはしていないので、水上に完全に浮上した太陽光モジュールは直接水で冷やされることはなく熱がこもりやすいという欠点がある。ガラスパネルの太陽光モジュールを平らに設置した例では、雨水が溜まりやすいので、発電効率が落ちるとともに重量増によるフロートの材料費が増加する。さらにフレキシブル太陽電池モジュールを用いて、フロートの凹凸に沿って設置する案も提案されているが、凹状の部分に水が滞留し、日射効率も低下する。また、複数の円柱形連結では、接着の接触面積が低いため、長期的な耐久性で問題がある。
以上の公知例の問題点をまとめると、高重量のガラスパネルの太陽光モジュールを採用し、また軽量なフレキシブル太陽電池モジュールを採用していても裏面にアルミ板等の金属板を貼り付けたり、固定するフレーム等に金属を採用することから、重量の低下を図ることが難しく、フロートを含めた材料コストや運搬コストや設置コストがかかる問題があった。
また、その設置方法において、連結手段としてワイヤ等で連結しているケースが多く、ワイヤは遊びの自由度が大きいため、風波での大きな揺れを生じて、フロートやフレームや太陽電池モジュールの破損が起こる可能性が高まっていた。この問題が発生する原因は、高重量のリジッドなガラスパネルの太陽電池モジュールを採用していることにより、連結もリジッドに固定すると、連結部に集中して機械的負荷がかかり破損のおそれが高かったからである。
連結箇所も、設置工数や材料コストも増える問題点があった。この問題が発生する原因は、高重量のリジッドなガラスパネルの太陽電池モジュールを採用していることにより、慣性力が高く、4点の連結だけでは、連結部の機械的強度が不足していたことに起因する。 また、フロート一体型太陽電池アセンブリのフロートの面積が太陽電池モジュールの面積より大きくなってしまい、発電面積効率が悪化する問題点があった。この問題が発生する原因は、高重量のリジッドなガラスパネルの太陽電池モジュールを採用していることにより、リジッドな太陽電池モジュール同士の接触を避け、フロートの接触で衝撃を緩衝させることを考慮していることに起因する。
また、太陽電池モジュール自体が水上に設置されているのに拘らず、水で直接冷却されず、さらにフロートとして発泡性樹脂を使用して熱伝導率を妨げており、熱がこもり放熱効果を低下させている。この問題が発生する原因は、太陽電池モジュール自体の水による劣化を抑制することに起因し、さらに太陽電池モジュールの表面に水が多く付着すると、水の膜で日射効率が落ちて、水冷による発電量の上昇が打ち消されてしまうことに起因する。 また、フロートと太陽電池モジュールを接着することで、接着の剥がれも問題になる。この問題が発生する原因は、発電部が高温になることにより空気膨張で接着が剥がれることに起因する。 また、アルミのような熱伝導率の極めて高い材質を一部使用する例がみられるが、表面処理や挟み込みにより熱伝導率の高い材質を導入しても総合的に熱伝導率は実際には思うように上昇しないという欠点がある。この問題が発生する原因は、熱伝導率の低い樹脂層がクリティカルパスとなってしまうため、結果的にその熱伝導率で制限されてしまうからである。また、太陽電池モジュールが平らに設置されている場合、雨水等のたまりで、発電効率が下がる欠点もあった。この問題が発生する原因は、波の揺れで静止状態よりも水が落ちやすいという設計上の妥協があったからであるが、実際は水が往復するだけであまり落ちなかったことに起因する。 その改善策として、ガラスパネルの太陽電池モジュールを屋根型の傾斜のある鋼板に取付けたり、フレキシブル太陽電池モジュールを使用してアーチ状の鋼板に取付けることも行われているが、日射効率が下がり発電量が下がる欠点があった。この問題が発生する原因は、太陽電池モジュール設置面積効率と年間発電量の効率を両立させる場合、水冷効果最大の平らに設置した方が最善になり、二方向以上の傾斜は日射効率を下げて非効率になるからである。
フロート型太陽電池アセンブリとして、設置面積の削減を図り、発電効率が高く、風波による損傷を低減し、水冷効果が高く、長寿命であり、水痕等による太陽光の受光量の減少を抑制し、設置、搬送が容易で効率のよい作業を可能とするフロート型太陽電池アセンブリやフロート型太陽電池アレイが要請されている。
特開昭57−62572
特開平08−314809
特開平08−167729
特開平10−173212
特開平10−135502
特開2001−189486
特開2002−173083
特開2002−118275
特開2003−209274
特開2003−229593
特開2004−063497
特開2004−071965
特開2004−228262
特開2004−228263
特許4421240
特開2005−285969
特開2007−123380
特開2007−173710
特開2007−150219
特許4622976
特開2011−066200
本発明の課題は、設置面積の削減を図り、発電効率が高く、風波による損傷を低減し、水冷効果が高く、長寿命であり、水痕等による太陽光の受光量の減少を抑制し、設置、搬送が容易で効率のよい作業を可能とするフロート型太陽電池アセンブリやフロート型太陽電池アレイを提供することにある。
本発明者は、水面と太陽電池モジュール間に介在するフロートが熱伝導率を著しく妨げていることから、フロートを透明にして太陽電池モジュール上に配置することにより、太陽電池素子を水面近くに配置することができ、太陽電池素子を効率よく冷却することができることの知見を得た。更に、水面に占める設置面積を太陽電池モジュールの面積に近似させて最小限とし、フロート部をアセンブリの浮力が得られる容積を有し、且つ、太陽電池モジュールの受光面の端部を除く、受光面より狭い範囲に設けることにより、発電効率を上昇させることができる知見を得、かかる知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、太陽電池モジュールと、該太陽電池モジュールを密閉封入する樹脂製のフロート部とを有し、
該フロート部は、底部に太陽電池モジュールを支持する非受光面保護部と、該非受光面保護部に支持された太陽電池モジュールの受光面の端部を除く受光面上に、フロート機能を有する中空且つ透明の受光面保護部とを有し、前記フロート部の前記非受光面保護部の底面に、補助フロート部を有することを特徴とするフロート型太陽電池アセンブリに関する。
また、本発明は、上記フロート型太陽電池アセンブリを複数有する太陽電池アレイであって、フロート型太陽電池アセンブリのフロート部の非受光面保護部の端部に設けたハトメと、プッシュリベット、プッシュマウントタイ、又はケーブルタイ用プッシュマウント及びケーブルタイを用いて、フロート型太陽電池アセンブリを連結したことを特徴とするフロート型太陽電池アレイに関する。
本発明のフロート型太陽電池アセンブリは、設置面積の削減を図り、発電効率が高く、風波による損傷を低減し、水冷効果が高く、長寿命であり、水痕等による太陽光の受光量の減少を抑制し、設置、搬送が容易で効率のよい作業を可能とする。また、本発明のフロート型太陽電池アレイは、フロート型太陽電池アセンブリを効率よく設置することができ、設置後に、風波による太陽電池モジュール同士の衝撃を回避することができ、長寿命である。
本発明のフロート型太陽電池アセンブリの一例を示す平面図である。
本発明のフロート型太陽電池アセンブリの一例を示す側面図である。
本発明のフロート型太陽電池アセンブリの一例を示す側面図である。
本発明のフロート型太陽電池アセンブリの一例を示す部分側面図である。
本発明のフロート型太陽電池アセンブリの一例の製造工程を示す図である。
本発明のフロート型太陽電池アセンブリの一例を示す部分側面図である。
本発明のフロート型太陽電池アセンブリの一例の製造工程を示す図である。
本発明のフロート型太陽電池アセンブリの一例を示す部分側面図である。
本発明のフロート型太陽電池アセンブリの一例を示す部分平面図である。
本発明のフロート型太陽電池アセンブリの一例を示す部分平面図である。
本発明のフロート型太陽電池アレイの一例を示す部分平面図である。
本発明のフロート型太陽電池アレイの一例の製造工程を示す図である。
本発明のフロート型太陽電池アセンブリは、太陽電池モジュールと、該太陽電池モジュールを密閉封入する樹脂製のフロート部とを有し、該フロート部は、底部に太陽電池モジュールを支持する非受光面保護部と、該非受光面保護部に支持された太陽電池モジュールの受光面の端部を除く受光面上に、フロート機能を有する中空且つ透明の受光面保護部とを有し、前記フロート部の前記非受光面保護部の底面に、補助フロート部を有することを特徴とする。
本発明のフロート型太陽電池アセンブリに用いる太陽電池モジュールは、光起電力効果を有する物質を基板間に設けた太陽電池素子を有するものである。光起電力効果を有する物質としては、pn接合型ダイオード、I−III−VI族のカルコパイライト系化合物等の化合物、二酸化チタンに吸着された色素等いずれであってもよい。具体的には、樹脂製の基板や、フレキシブルな薄いガラス製の基板を用いたものが、軽量であって好ましい。太陽電池モジュールとしては、例えば、上市されているものとして、FWAVE(商品名:富士電機システムズ社製)シリーズ、Uni-Solar(商品名:ユナイテドソーラー社製)シリーズ等を挙げることができる。
太陽電池モジュールの形状は、特に問わないが、矩形形状であることが、後述するフロート部に封入するのに容易であり、また、フロート部を排水効率のよい形状に形成し、且つ、効率のよい収納、搬送作業が容易であることから、矩形形状が好ましい。
このような太陽電池モジュールを密閉封入するフロート部は、底部に太陽電池モジュールを支持する非受光面保護部と、該非受光面保護部に支持された太陽電池モジュールの受光面の端部を除く受光面上に、フロート機能を有する中空且つ透明の受光面保護部とを有する。フロート部の底部に設けられる非受光面保護部は、太陽電池アセンブリが水面に設置されたとき、水面上及び水面下に配置され、非受光面保護部内に支持する太陽電池モジュールの水冷効果を著しく高くすることができ、夏季における高温による太陽電池モジュールの発電効率の低下を抑制し、長寿命とすることができる。
非受光面保護部は、太陽電池モジュールをその受光面を上にして平面状に載置できるように、太陽電池モジュールの外形形状と略同じ外形を有する底面と、底面上に載置される太陽電池モジュールの受光面の周囲の太陽電池素子が形成されない端部を、覆うように形成される外周部とを有することが好ましい。底面と外周部とで形成される溝に太陽電池モジュールの端部を挿入して、太陽電池モジュールを支持することができる。外周部と太陽電池モジュール間の隙間は狭い程、非受光面保護部を小さく形成でき、非受光面保護部の質量を軽減できるため、好ましい。外周部は、後述するように、太陽電池アセンブリを連結する際に、隣接する太陽電池アセンブリの外周部と重ねて設置することができる。
また、非受光面保護部の底面には、後述する中空構造を有する受光面保護部のフロート機能を補助する補助フロート部を設けることが好ましい。補助フロート部は、非受光面保護部が水面下に沈むと、受光面保護部上に水が付着する傾向が高くなることから、太陽電池モジュールの受光面が水面上になるように浮力を付加できるものが好ましい。補助フロート部は、例えば、太陽電池モジュールが矩形であれば、矩形状を有する非受光面保護部の底面の長辺方向と同方向に、相対する1対として設けることが好ましい。補助フロート部は長辺方向と同方向に、太陽電池モジュールが形成されていない端部に設けることが好ましく、非受光面保護部の外周部の上に接続線が配置され荷重が負荷されることから、外周部の下方近傍に設けることが好ましい。
補助フロート部の形状は、例えば、円筒状、半円筒状、角柱状等を挙げることができる。補助フロート部は、閉鎖空間として、フロート部の非受光面保護部と一体成体することもできるが、開口を有する柱状の胴体と開口を封止する蓋とを有するものであってもよい。
更に、太陽電池モジュールの受光面上に設けられる受光面保護部は、装置全体の質量に対し浮力が得られるような容積を有するフロート機能を有するものであればよく、太陽電池モジュールの端部を除く受光面上に設けられる。太陽電池モジュールの受光面より狭い範囲に設けることにより、太陽電池アセンブリが水面に配置される面積を最小限にすることができ、単位面積当たりの発電量の上昇を図ることができる。受光面保護部は非受光面保護部の外周部に接続して設けることができる。
受光面保護部の形状はいずれであってもよいが、水平面を有さない傾斜面を有する形状を有することが好ましく、具体的には、切妻形状等を挙げることができる。受光面保護部の形状が、水平面を有さない傾斜面を有する形状であれば、受光面保護部上に水分を滞留させず、短時間で排水し、また、水痕(付着した水の蒸発後の、カルシウム等の含有物の残留物であるイオンデポジット)が形成されるのを抑制することができ、太陽電池モジュールの受光面に入射する太陽光の減少を抑制することができ、好ましい。受光面保護部の形状としては、矩形の非受光面保護部に対し、相対する短辺の中心を結ぶ線を稜線とし、この稜線に対して、対称の1組の傾斜面を有する切妻形状を挙げることができる。相対する短辺の中心を結ぶ線を稜線とすることにより、切妻形状の高さ(太陽電池モジュールの受光面から稜線までの高さ)に対し、傾斜面の勾配を急にすることができ、受光面保護部上からの排水効果を高くすることができる。また、受光面保護部が、対称の傾斜面を有する形状を有することにより、フロート部を対向させて積層することにより、複数の太陽電池アセンブリをコンパクトに積層することができ、収納、搬送作業の効率を向上させることができる。
このような切妻形状において、非受光面保護部との接続部分に、傾斜面の勾配より更に急勾配の、垂直面を有することが、更に、排水効果を高くすることができることから、好ましい。
上記受光面保護部の材質として、樹脂であればいずれであってもよいが、耐水性に優れ、軽量で、強度の高いことが、衝突による損傷を抑制でき、浮力を得て、受光面保護部上に水分が付着するのを抑制できることから、好ましく、太陽光の透過率が高く、紫外線による劣化を受けにくいものが好ましい。
受光面保護部の材質としては、例えば、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・三フッ化塩化エチレン共重合体(ECTFE)、ポリアリレート(PAR)、メタロセンポリエチレン(メタロセンPE)、環状オレフィンコポリマー(COC)、硬質ポリ塩化ビニル(硬質PVC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、透明アクリル酸ニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(透明ABS)、アクリル酸ニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS)、メタクリル酸メチル・アクリルゴム・スチレン共重合体(MAS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリカーボネート(PC)から選ばれる1種又は2種以上を含むものであることが好ましい。
上記のうち、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・三フッ化塩化エチレン共重合体(ECTFE)のフッ素樹脂は、高価であるが、耐候性、耐熱性、耐薬品性の物性安定性に極めて優れ、好ましい。また、ポリアリレート(PAR)は上記フッ素樹脂と同様に高価であるが、フッ素樹脂にはない低クリープ性、寸法特性を有し、弾力がありながら、表面硬度も高く、機械的な付加に対し、変形が生じても元の形状に復元する回復曲げ弾性が高いため、例えば、雹が降ってその衝撃により変形が生じても元の形状を復元することから好ましい。また、耐紫外線性、耐候性があり、耐衝撃性、耐摩耗性、耐熱性、難燃性、耐薬品性、透明性、低吸水性も高いため、フッ素樹脂に準じて使用することができる。ポリアリレートは、PC、PET、フッ素樹脂等と混合して使用してもよい。
また、メタロセンポリエチレン(メタロセンPE)、環状オレフィンコポリマー(COC)、硬質ポリ塩化ビニル(硬質PVC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、透明アクリル酸ニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(透明ABS)、アクリル酸ニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS)、メタクリル酸メチル・アクリルゴム・スチレン共重合体(MAS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)は、安価であり、上記の樹脂には及ばないが、耐紫外線性、耐候性を有することから、好ましい。また、メタロセンポリエチレン(メタロセンPE)、環状オレフィンコポリマー(COC)は、後述する非受光面保護部の材質としても好適であり、非受光面保護部と同じ材質を選択することにより、これらを接続する際、融点や熱膨張率が同じであり、容易に接続することができ、また、太陽電池アセンブリにおいて、空冷による放熱効果が高くなり、好ましい。
受光面保護部には、紫外線吸収材(UVA)、光安定材(HALS)、及び光触媒から選ばれる1種又は2種以上の添加剤を含むことが好ましい。光触媒は、イオンデポジットの他、鳥糞、藻、葉等の有機物を分解するセルフクリーニング効果を有することから、清掃作業を不要とすることもできる。光触媒としては、酸化チタン等を用いることができる。
これらの紫外線吸収材、光安定材、光触媒等は、上記樹脂に添加してしてもよいが、これらの物質を用いて成形した受光面保護部の表面に、塗布等により設けてもよく、また、表面を保護するハードコート層を設ける場合、これに含有させることもできる。塗布により設ける場合、塗料の主材としては、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂を用いることができる。シリコン系樹脂を主材とすることにより、フロート部に耐紫外線性や、耐候性に加え、耐傷性や耐汚染性を付与し、フロート部が長期的に光透過率を維持し、その清掃作業を削減することができる。フッ素系樹脂としては、四フッ化エチレン等のポリフッ化エチレンを挙げることができ、耐久性の高い塗布膜を形成することができる。シリコン系樹脂にフッ素系樹脂を添加した主材を用い、耐紫外線性、耐候性、耐傷性、耐汚染性に加え、耐久性を向上させることもできる。これらの具体例として、タフロンネオ(登録商標、出光興産社製)、パンライト(登録商標、帝人化成社製)等を挙げることができる。
非受光面保護部の材質としては、ガラス繊維含有ポリエチレンテレフタレート、メタロセンポリエチレン(メタロセンPE)、環状オレフィンコポリマー(COC)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、メソゲン基含有液晶性エポキシ樹脂、及びシリコン樹脂から選ばれる1種又は2種以上を含むものが好ましい。ガラス繊維含有ポリエチレンテレフタレートとしては、ユニレート(登録商標、ユニチカ社製)等を挙げることができる。
これらの樹脂には、適宜、紫外線吸収材、光安定材、酸化チタン粒子等の添加剤を含有させることもでき、熱伝導性を向上させるために、導電性フィラーを添加することもできる。また、上記受光面保護部と同様に、これらの添加剤を含有する塗料を、非受光面保護部の上に塗布することもまた、表面を保護するハードコート層を設ける場合、これに含有させることもできる。
また、非受光面保護部の底面に設ける補助フロート部の材質は、高強度のものが好ましく、具体的には、上記非受光面保護部において挙げたものと同じものを例示することができる。また、非受光面保護部と同じ材質であることが、これらを同時に成形することもでき、また、別途成形し、溶着等により接続する場合も、容易に接続することができる。
[製造方法]
上記太陽電池アセンブリの製造方法としては、上記樹脂で非受光面保護部と、受光面保護部フロート部とを形成する。これらの形成は、射出成形等、成形型を用いて成形することが好ましい。非受光面保護部の底面には、必要に応じて、補助フロート部を形成することができる。補助フロート部は非受光面保護部と一体成形して設けても、別途成形して溶着してもよい。
一方、太陽電池モジュールの四隅から略正方形を切り取る。この略正方形の1辺は、受光面保護部が設けられる受光面の中央部を除く端部の幅であって、太陽電池素子が設けられていない部分の幅に相当することが好ましい。具体的には、数センチメートルを挙げることができる。
その後、太陽電池モジュールを非受光面保護部に設置する。太陽電池モジュールの裏面、即ち、非受光面に、適宜、接着剤を塗布し、非受光面保護部の底面と太陽電池モジュール間に、熱伝導を阻害する空気を混入しないように接着する。接着剤としては、酸化アルミニウム等の熱伝導率の高いフィラーを含むオイルコンパウンドや、常温加硫シリコーンゴム(RTVシリコーンゴム)等を用いることができる。RTVシリコーンゴムは、弾性を有し、接着後、太陽電池モジュールが引っ張られても接着が解離に至ることを抑制でき、好ましい。太陽電池モジュールの端部は、非受光面保護部の底面とその周囲に設けられる外周部とで形成される溝に挿入する。
その後、太陽電池モジュールの端子を受光面保護部に設けられる端子取出口から外へ引き出し、非受光面保護部の外周部に受光面保護部を固定する。固定方法としては、接着、溶着等の方法を挙げることができる。溶着方法としては、超音波、熱圧着、振動、レーザー等による溶着を挙げることができる。受光面保護部、非受光面保護部、及び端子の被覆材が、融点や熱膨張率が近似している場合は、全体を金型に導入し熱圧着することができる。接着方法としては、接着剤として、RTVシリコーンゴム等の弾性接着剤を用いることが、熱膨張が異なる樹脂の成形体を固着するのに、ひび割れ、剥離、反り等が生じるのを抑制できることから、好ましい。外装体内に太陽電池モジュールを封入した太陽電池アセンブリを得る。
受光面保護部に設けられる端子取出口と端子との固定は、それぞれの表面に固定を強化するプライマーを予め塗布し、溶着、或いは、シーリング接着し、端子が引っ張られても水密性が破壊されないように、端子取出口をチューブ状にして、固定距離を長くすることが好ましい。
太陽電池アセンブリのフロート部非受光面保護部の端部にハトメを形成する。ハトメはハトメ用金属管を用いて、太陽電池モジュールの四隅の太陽電池素子が設けられていない端部を切り落とした部分に設けることができる。太陽電池モジュールが切り落とされた部分にハトメを設けることにより、ハトメ加工の際に、太陽電池モジュールに変形が生じるのを抑制することができる。
[フロート型太陽電池アレイ]
本発明のフロート型太陽電池アレイは、上記フロート型太陽電池アセンブリを複数有する太陽電池アレイであって、フロート型太陽電池アセンブリのフロート部の非受光面保護部の端部に設けたハトメと、プッシュリベット、プッシュマウントタイ、又は、ケーブルタイ用プッシュマウント及びケーブルタイを用いて、フロート型太陽電池アセンブリを連結したことを特徴とする。
フロート型太陽電池アレイは、上記フロート型太陽電池アセンブリを複数有するものである。太陽電池アセンブリのフロート部の非受光面保護部の端部をハトメの位置が一致するように重層して固定することが、遊びのない状態で固定することができ、これらが相互に衝突して損傷することを回避することができ、好ましい。
フロート型太陽電池アセンブリの固定は、ハトメに、プッシュリベット、プッシュマウントタイ、又は、ケーブルタイ用プッシュマウント及びケーブルタイを用いて、隣接する太陽電池アセンブリを連結する。
プッシュリベットは、隣接するフロート型太陽電池アセンブリのハトメに挿入してこれらを接続する。プッシュマウントタイは、プッシュリベットに結束バンドが設けられたものであり、プッシュリベットにより隣接するフロート型太陽電池アセンブリのハトメに挿入してこれらを接続すると共に、フロート部の非受光面保護部の外周部に配置される電線を、外周部から逸脱しないように結束バンドで結束するようになっている。ケーブルタイ用プッシュマウントは、ケーブルタイの固定用孔を上部に有し、ケーブルタイ用プッシュマウントにより隣接するフロート型太陽電池アセンブリのハトメに挿入してこれらを接続すると共に、フロート部の非受光面保護部の外周部に配置される電線を結束したケーブルタイを、ケーブルタイ用プッシュマウントのケーブルタイの固定用孔に固定するようになっている。これらは、市販のものを用いることができ、ポリアセタールやナイロン製のものを適用することができる。ポリアセタール製のものは、耐クリープ性、耐摩擦性、耐疲労性に優れ、特に、好ましい。
このようなプッシュリベット、プッシュマウントタイ、又は、ケーブルタイ用プッシュマウント及びケーブルタイを用いてフロート型太陽電池アセンブリを連結するのは、現場で非常に簡単に行うことができ、作業性に優れ、しかも連結された隣接するフロート型太陽電池アセンブリ間では、遊び部分がなく固定されることから、隣接する太陽電池アセンブリ間に衝突による損傷が生じない。風波の影響を受けても、太陽電池アレイが水面の動きに追従して上下動するのみである。
端部にハトメを有するフロート型太陽電池アセンブリを、その端部を重層してハトメを一致させて、上記リベットで接続することにより、水面上に簡単に設置することができる。
以下に、本発明のフロート型太陽電池アセンブリを詳細に説明する。
本発明のフロート型太陽電池アセンブリEの一例を図1の平面図、図2、3の側面図に示す。図2は図1を示す紙面の前後の側面を示し、図3は図1を示す紙面の左右の側面を示す。
図1−3に示すフロート型太陽電池アセンブリは、矩形のフレキシブル太陽電池モジュール1(以下、太陽電池モジュールともいう。)と、該太陽電池モジュールを封入する樹脂製のフロート部2とを有し、該フロート部2は、底部に太陽電池モジュール1を支持する非受光面保護部22と、該非受光面保護部に支持された太陽電池モジュールの受光面の端部を除く受光面上に、フロート機能を有する透明の受光面保護部21とを有する。太陽電池モジュールの短辺長aに対する長辺長bの比b/aの値は、約5である。
非受光面保護部22は、図3中のDの部分の拡大図である図4及びその製造工程を示す図5、図2中のCの部分の拡大図である図6及びその製造工程を示す図7に示すように、太陽電池モジュールの外形形状と略同じ外形を有する底面26と、底面上に載置される太陽電池モジュールの周囲(端部)を覆うように形成される外周部27とを有し、太陽電池モジュールをその受光面Rを上にして平面状に載置し、底面と外周部とで形成される溝に太陽電池モジュールの端部Sを挿入させ、太陽電池モジュールを支持する。
非受光面保護部の底面には、非受光面保護部の底面の長辺方向と同方向に、相対する1対の補助フロート部3、3を有する。各補助フロート部は柱状体23とその蓋24で構成される。
受光面保護部21は、矩形の非受光面保護部に対し、相対する短辺の中心を結ぶ線を稜線rとし、この稜線に対して、対称の1組の傾斜面i、iを有する切妻形状を有する。更に、非受光面保護部との接続部分に、各傾斜面iの勾配より急勾配の、垂直面vを有する。受光面保護部は非受光面保護部22の外周部27に溶着により固定される。
太陽電池モジュールの端子(図示せず)は、図3中のEの部分の拡大図である図8、図1中のBの拡大図である図9に示すように、フロート部に設けられるチューブ状の端子取出口211から外へ引き出されている。
太陽電池アセンブリは、図1中のAの部分の拡大図である図10に示すように、太陽電池モジュール1の四隅の切除部分c及びフロート部の非受光面保護部22の端部を貫通するハトメ25を有する。
本発明のフロート型太陽電池アレイの一例を、図11及びその製造工程を示す図12に示す。図11、12に示すフトート型太陽電池アレイは、4つのフロート型太陽電池アセンブリ28を、フロート部の非受光面保護部の外周部27をそれぞれ重層させ、太陽電池モジュールの四隅の切除部分c及びフロート部の非受光面保護部22の端部を貫通するハトメ25を一致させ、プッシュリベット29で固定したものである。
本発明は、水面上に設置するフロート型太陽電池アセンブリならば、いずれのものにも適用することができ、設置面積の削減を図り、発電効率が高く、風波による損傷を低減し、水冷効果が高く、長寿命であり、水痕等による太陽光の受光量の減少を抑制し、設置、搬送が容易で効率のよい作業を可能とし、フロート型太陽電池アレイに好適である。
1 太陽電池モジュール
2 フロート部
3 補助フロート部
21 受光面保護部(フロート部)
22 非受光面保護部(フロート部)
23 柱状体(補助フロート部)
24 蓋(補助フロート部)
25 ハトメ
26 底面(非受光面保護部)
27 外周部(非受光面保護部)
28 フロート型太陽電池アセンブリ
29 プッシュリベット
211 端子取出口
R 受光面(太陽電池モジュール)
S 端部(太陽電池モジュール)
c 切除部分(太陽電池モジュール)
i 傾斜面(受光面保護部)
r 稜線(受光面保護部)
v 垂直面(受光面保護部)