(実施例1)
本発明の実施例1を具体的に説明する前に、基礎となった知見を説明する。本発明の実施例1は、車両に搭載された端末装置間において車車間通信を実行するとともに、交差点等に設置された基地局装置から端末装置へ路車間通信も実行する通信システムに関する。このような通信システムは、ITS(Intelligent Transport Systems)とも呼ばれる。ITSは、例えば、700MHz帯高度道路交通システムの標準規格(一般社団法人電波産業会)に規定されている。通信システムは、IEEE802.11等の規格に準拠した無線LAN(Local Area Network)と同様に、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)と呼ばれるアクセス制御機能を使用する。そのため、複数の端末装置によって同一の無線チャネルが共有される。一方、ITSでは、不特定多数の端末装置へ情報を送信する必要がある。そのような送信を効率的に実行するために、本通信システムは、パケット信号をブロードキャスト送信する。
つまり、車車間通信として、端末装置は、車両の速度あるいは位置等の情報を格納したパケット信号をブロードキャスト送信する。また、他の端末装置は、パケット信号を受信するとともに、前述の情報をもとに車両の接近等を認識する。ここで、路車間通信と車車間通信との干渉を低減するために、基地局装置は、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し規定する。基地局装置は、路車間通信のために、複数のサブフレームのいずれかを選択し、選択したサブフレームの先頭部分の期間において、制御情報等が格納されたパケット信号をブロードキャスト送信する。
制御情報には、当該基地局装置がパケット信号をブロードキャスト送信するための期間(以下、「路車送信期間」という)に関する情報が含まれている。端末装置は、制御情報をもとに路車送信期間を特定し、路車送信期間以外の期間(以下、「車車送信期間」という)においてCSMA方式にてパケット信号をブロードキャスト送信する。その結果、路車間通信と車車間通信とが時分割多重される。なお、基地局装置からの制御情報を受信できない端末装置、つまり基地局装置によって形成されたエリアの外に存在する端末装置は、フレームの構成に関係なくCSMA方式にてパケット信号を送信する。
次に、本実施例の概略を説明する。端末装置には、複数種類のアプリケーションを効率的に処理することが望まれる。これに対応するために、通信システムでは、各アプリケーションに対する送信の優先度が予め定められる。端末装置は、入力したデータを優先度ごとに蓄積し、優先度の高いアプリケーションのデータを優先的に抽出しながら、パケット信号を生成する。その結果、複数種類のアプリケーションのデータがパケット信号に格納される。さらに、緊急時には、緊急データを送信する必要があるので、緊急時でない場合よりも、緊急時である場合において、緊急データを優先的にパケット信号に格納する。このような処理によって、複数種類のアプリケーションのデータがパケット信号に格納される場合であっても、緊急データも格納される。
図1は、本発明の実施例1に係る通信システム100の構成を示す。これは、ひとつの交差点を上方から見た場合に相当する。通信システム100は、基地局装置10、車両12と総称される第1車両12a、第2車両12b、第3車両12c、第4車両12d、第5車両12e、第6車両12f、第7車両12g、第8車両12h、ネットワーク202を含む。ここでは、第1車両12aのみに示しているが、各車両12には、端末装置14が搭載されている。また、エリア212が、基地局装置10の周囲に形成され、エリア外214が、エリア212の外側に形成されている。
図示のごとく、図面の水平方向、つまり左右の方向に向かう道路と、図面の垂直方向、つまり上下の方向に向かう道路とが中心部分で交差している。ここで、図面の上側が方角の「北」に相当し、左側が方角の「西」に相当し、下側が方角の「南」に相当し、右側が方角の「東」に相当する。また、ふたつの道路の交差部分が「交差点」である。第1車両12a、第2車両12bが、左から右へ向かって進んでおり、第3車両12c、第4車両12dが、右から左へ向かって進んでいる。また、第5車両12e、第6車両12fが、上から下へ向かって進んでおり、第7車両12g、第8車両12hが、下から上へ向かって進んでいる。
通信システム100において、基地局装置10は、交差点に固定して設置される。基地局装置10は、端末装置間の通信を制御する。基地局装置10は、図示しないGPS(Global Positioning System)衛星から受信した信号、あるいは図示しない他の基地局装置10にて形成されたフレームをもとに、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し生成する。ここで、各サブフレームの先頭部分に路車送信期間が設定可能であるような規定がなされている。
基地局装置10は、フレーム中の複数のサブフレームのうち、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレームを選択する。基地局装置10は、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。基地局装置10は、設定した路車送信期間においてパケット信号を報知する。路車送信期間において、複数のパケット信号が報知されることもある。また、パケット信号には、例えば、事故情報、渋滞情報、信号情報等が含まれる。なお、パケット信号には、路車送信期間が設定されたタイミングに関する情報およびフレームに関する制御情報も含まれる。
端末装置14は、前述のごとく、車両12に搭載され移動可能である。端末装置14は、基地局装置10からのパケット信号を受信すると、エリア212に存在すると推定する。端末装置14は、エリア212に存在する場合、パケット信号に含まれた制御情報、特に路車送信期間が設定されたタイミングに関する情報およびフレームに関する情報をもとに、フレームを生成する。その結果、複数の端末装置14のそれぞれにおいて生成されるフレームは、基地局装置10において生成されるフレームに同期する。端末装置14は、路車送信期間とは異なった期間である車車送信期間においてパケット信号を報知する。ここで、車車送信期間においてCSMA/CAが実行される。一方、端末装置14は、エリア外214に存在していると推定した場合、フレームの構成に関係なく、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号を報知する。
図2は、基地局装置10の構成を示す。基地局装置10は、アンテナ20、RF部22、変復調部24、処理部26、制御部28、ネットワーク通信部30を含む。また、処理部26は、フレーム規定部32、選択部34、生成部36を含む。
RF部22は、受信処理として、図示しない端末装置14あるいは他の基地局装置10からのパケット信号をアンテナ20にて受信する。RF部22は、受信した無線周波数のパケット信号に対して周波数変換を実行し、ベースバンドのパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、ベースバンドのパケット信号を変復調部24に出力する。一般的に、ベースバンドのパケット信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線が示されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。RF部22には、LNA(Low Noise Amplifier)、ミキサ、AGC、A/D変換部も含まれる。
RF部22は、送信処理として、変復調部24から入力したベースバンドのパケット信号に対して周波数変換を実行し、無線周波数のパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、路車送信期間において、無線周波数のパケット信号をアンテナ20から送信する。また、RF部22には、PA(Power Amplifier)、ミキサ、D/A変換部も含まれる。例えば、無線周波数として、700MHz帯が使用される。
変復調部24は、受信処理として、RF部22からのベースバンドのパケット信号に対して、復調を実行する。さらに、変復調部24は、復調した結果を処理部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、処理部26からのデータに対して、変調を実行する。さらに、変復調部24は、変調した結果をベースバンドのパケット信号としてRF部22に出力する。ここで、通信システム100は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式に対応するので、変復調部24は、受信処理としてFFT(Fast Fourier Transform)も実行し、送信処理としてIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)も実行する。
フレーム規定部32は、図示しないGPS衛星からの信号を受信し、受信した信号をもとに時刻の情報を取得する。なお、時刻の情報の取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。フレーム規定部32は、時刻の情報をもとに、複数のフレームを生成する。例えば、フレーム規定部32は、時刻の情報にて示されたタイミングを基準にして、「1sec」の期間を10分割することによって、「100msec」のフレームを10個生成する。このような処理を繰り返すことによって、フレームが繰り返されるように規定される。なお、フレーム規定部32は、復調結果から制御情報を検出し、検出した制御情報をもとにフレームを生成してもよい。このような処理は、他の基地局装置10によって形成されたフレームのタイミングに同期したフレームを生成することに相当する。
図3(a)−(d)は、通信システム100において規定されるフレームのフォーマットを示す。図3(a)は、フレームの構成を示す。フレームは、第1サブフレームから第Nサブフレームと示されるN個のサブフレームによって形成されている。これは、端末装置14が報知に使用可能なサブフレームを複数時間多重することによってフレームが形成されているといえる。例えば、フレームの長さが100msecであり、Nが8である場合、12.5msecの長さのサブフレームが規定される。Nは、8以外であってもよい。図3(b)−(d)の説明は、後述し、図2に戻る。
選択部34は、フレームに含まれた複数のサブフレームのうち、路車送信期間を設定すべきサブフレームを選択する。具体的に説明すると、選択部34は、フレーム規定部32にて規定されたフレームを受けつける。また、選択部34は、図示しないインターフェイスを介して、選択したサブフレームに関する指示を受けつける。選択部34は、指示に対応したサブフレームを選択する。これとは別に、選択部34は、自動的にサブフレームを選択してもよい。その際、選択部34は、RF部22、変復調部24を介して、図示しない他の基地局装置10あるいは端末装置14からの復調結果を入力する。選択部34は、入力した復調結果のうち、他の基地局装置10からの復調結果を抽出する。選択部34は、復調結果を受けつけたサブフレームを特定することによって、復調結果を受けつけていないサブフレームを特定する。
これは、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレーム、つまり未使用のサブフレームを特定することに相当する。未使用のサブフレームが複数存在する場合、選択部34は、ランダムにひとつのサブフレームを選択する。未使用のサブフレームが存在しない場合、つまり複数のサブフレームのそれぞれが使用されている場合に、選択部34は、復調結果に対応した受信電力を取得し、受信電力の小さいサブフレームを優先的に選択する。
図3(b)は、第1基地局装置10aによって生成されるフレームの構成を示す。第1基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第1基地局装置10aは、第1サブフレームにおいて路車送信期間につづいて車車送信期間を設定する。車車送信期間とは、端末装置14がパケット信号を報知可能な期間である。つまり、第1基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭期間である路車送信期間においてパケット信号を報知可能であり、かつフレームのうち、路車送信期間以外の車車送信期間において端末装置14がパケット信号を報知可能であるような規定がなされる。さらに、第1基地局装置10aは、第2サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間のみを設定する。
図3(c)は、第2基地局装置10bによって生成されるフレームの構成を示す。第2基地局装置10bは、第2サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第2基地局装置10bは、第2サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第3サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。図3(d)は、第3基地局装置10cによって生成されるフレームの構成を示す。第3基地局装置10cは、第3サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第3基地局装置10cは、第3サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第2サブフレーム、第4サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。このように、複数の基地局装置10は、互いに異なったサブフレームを選択し、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。図2に戻る。選択部34は、選択したサブフレームの番号を生成部36へ出力する。
生成部36は、選択部34から、サブフレームの番号を受けつける。生成部36は、受けつけたサブフレーム番号のサブフレームに路車送信期間を設定し、路車送信期間において報知すべきパケット信号を生成する。ひとつの路車送信期間において複数のパケット信号が送信される場合、生成部36は、それらを生成する。パケット信号は、制御情報、ペイロードによって構成されている。制御情報には、路車送信期間を設定したサブフレーム番号等が含まれる。また、ペイロードには、例えば、事故情報、渋滞情報、信号情報等が含まれる。これらのデータは、ネットワーク通信部30によって、図示しないネットワーク202から取得される。処理部26は、変復調部24、RF部22に対して、路車送信期間においてパケット信号をブロードキャスト送信させる。制御部28は、基地局装置10全体の処理を制御する。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ハードウエアとソフトウエアの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図4は、車両12に搭載された端末装置14の構成を示す。端末装置14は、アンテナ50、RF部52、変復調部54、処理部56、制御部58を含む。処理部56は、タイミング特定部60、転送決定部62、取得部64、生成部66、ユーザIF部68、通知部70、アプリケーション処理部76、アプリケーション管理部78を含む。また、タイミング特定部60は、抽出部72、キャリアセンス部74を含む。アンテナ50、RF部52、変復調部54は、図2のアンテナ20、RF部22、変復調部24と同様の処理を実行する。ここでは差異を中心に説明する。
変復調部54、処理部56は、受信処理において、図示しない他の端末装置14あるいは基地局装置10からのパケット信号を受信する。なお、前述のごとく、変復調部54、処理部56は、路車送信期間において、基地局装置10からのパケット信号を受信し、車車送信期間において、他の端末装置14からのパケット信号を受信する。
抽出部72は、変復調部54からの復調結果が、図示しない基地局装置10からのパケット信号である場合に、路車送信期間が配置されたサブフレームのタイミングを特定する。その際、抽出部72は、図1のエリア212内に存在すると推定する。抽出部72は、サブフレームのタイミングと、パケット信号のメッセージヘッダの内容をもとに、フレームを生成する。その結果、抽出部72は、基地局装置10において形成されたフレームに同期したフレームを生成する。パケット信号の報知元が、他の端末装置14である場合、抽出部72は、同期したフレームの生成処理を省略する。抽出部72は、エリア212内に存在する場合、使用されている路車送信期間を特定した後、残りの車車送信期間を特定する。抽出部72は、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報をキャリアセンス部74へ出力する。
一方、抽出部72は、基地局装置10からのパケット信号を受けつけていない場合、つまり基地局装置10に同期したフレームを生成していない場合、図1のエリア外214に存在すると推定する。抽出部72は、エリア外214に存在する場合、フレームの構成と無関係のタイミングを選択し、フレームの構成に関係のないキャリアセンスの実行をキャリアセンス部74に指示する。
キャリアセンス部74は、抽出部72から、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報を受けつける。キャリアセンス部74は、車車送信期間内でCSMA/CAを開始することによって送信タイミングを決定する。これは、路車送信期間に対してNAV(Network Allocation Vector)を設定し、NAVを設定した期間以外でキャリアセンスを実行することに相当する。一方、キャリアセンス部74は、抽出部72から、フレームの構成に関係のないキャリアセンスの実行を指示された場合、フレームの構成を考慮せずに、CSMA/CAを実行することによって、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部74は、決定した送信タイミングを変復調部54、RF部52へ通知し、パケット信号をブロードキャスト送信させる。
転送決定部62は、制御情報の転送を制御する。転送決定部62は、制御情報のうち、転送対象となる情報を抽出する。転送決定部62は、抽出した情報をもとに、転送すべき情報を生成する。ここでは、この処理の説明を省略する。転送決定部62は、転送すべき情報、つまり制御情報のうちの一部を生成部66に出力する。生成部66は、アプリケーション管理部78からデータを受けつけ、転送決定部62から制御情報の一部を受けつける。アプリケーション管理部78から受けつけるデータについては後述する。生成部66は、受けつけた制御情報の一部を制御情報に格納し、データをペイロードに格納することによって、パケット信号を生成する。処理部56、変復調部54、RF部52は、生成部66において生成した複数のパケット信号を順次報知する。制御部58は、端末装置14の動作を制御する。
取得部64は、図示しないGPS受信機、ジャイロスコープ、車速センサ等を含んでおり、それらから供給されるデータによって、図示しない車両12、つまり端末装置14が搭載された車両12の存在位置、進行方向、移動速度等(以下、「位置情報」と総称する)を取得する。なお、存在位置は、緯度・経度によって示される。これらの取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。また、GPS受信機、ジャイロスコープ、車速センサ等は、端末装置14の外部にあってもよい。取得部64は、位置情報をアプリケーション処理部76へ出力する。
アプリケーション処理部76は、複数種類のアプリケーションを実行可能である。各アプリケーションは、複数の端末装置14間において実行される。つまり、送信側の端末装置14はデータを生成して、当該データが格納されたパケット信号を報知し、受信側の端末装置14はパケット信号を受信して、パケット信号に含まれたデータをもとに所定の処理を実行する。そのため、ひとつのアプリケーションは、送信側の処理(以下、「送信側アプリケーション」という)と、受信側の処理(以下、「受信側アプリケーション」という)に分けられる。ここで、ひとつの端末装置14において実行される送信側アプリケーションと受信側アプリケーションとは、一致しなくてもよい。以下では、送信側アプリケーションと受信側アプリケーションとは、アプリケーションと総称されることもある。
複数種類のアプリケーションは、次のように分類される。ひとつ目は、共通アプリケーションである。共通アプリケーションとは、他の車両12の接近を運転者に警告するためのアプリケーションであり、すべての端末装置14において実行される。アプリケーション処理部76は、共通アプリケーションにおける送信側アプリケーションを実行する際、取得部64からの位置情報を入力する。また、アプリケーション処理部76は、位置情報を周期的にアプリケーション管理部78に出力する。
一方、アプリケーション処理部76は、共通アプリケーションにおける受信側アプリケーションとして、他の端末装置14からのパケット信号に含まれた位置情報をアプリケーション管理部78から取得する。アプリケーション処理部76は、アプリケーション管理部78から取得した他の端末装置14の位置情報と、取得部64から入力した位置情報とをもとに、他の車両12の接近を検出する。アプリケーション処理部76は、他の車両12の接近を通知部70に通知させる。通知部70は、モニタあるいはスピーカを介して運転者への通知を実行する。ふたつ目は、自由アプリケーションである。自由アプリケーションは、すべての端末装置14ではなく、任意の端末装置14においてのみ実行される。複数の自由アプリケーションが同時に実行されてもよい。
以上のような規定がなされている状況下において、アプリケーション処理部76は、登録が許可された自由アプリケーションにおける送信側アプリケーションを実行する際、生成したデータをアプリケーション管理部78に出力する。一方、アプリケーション処理部76は、受信側アプリケーションを実行する際、アプリケーション管理部78から受けつけたデータに対して、当該自由アプリケーションに応じた処理を実行する。
アプリケーション処理部76は、これらのアプリケーションの他に、緊急データに対する処理も実行する。緊急データとは、災害のときに通知すべき情報である。災害には、自然災害および人的災害が含まれる。通知すべき情報は、災害の発生場所、災害の規模、避難場所、避難経路に相当する。緊急データは、基地局装置10からのパケット信号に含まれていたり、他の端末装置14からのパケット信号に含まれていたりする。アプリケーション処理部76は、受信側アプリケーションに対する処理として、パケット信号に含まれた緊急データを取得する。また、アプリケーション処理部76は、送信側アプリケーションに対する処理として、緊急データを転送させるために、これをアプリケーション管理部78に出力する。
アプリケーション管理部78は、送信側アプリケーションに対する処理として、ユーザIF部68から予めアプリケーション登録要求を受けつける。次に、アプリケーション管理部78は、アプリケーション処理部76からの複数のデータを入力し、複数のデータをもとにパケット信号を生成させるために、パケット信号生成の対象となる複数のデータを生成部66に出力する。アプリケーション管理部78によるデータの出力処理についての具体例は後述する。
一方、アプリケーション管理部78は、受信側アプリケーションに対する処理として、抽出部72において受信したパケット信号に格納されたデータを受けつける。アプリケーション管理部78は、受けつけたデータのうち、アプリケーション処理部76において実行されている受信側アプリケーションに対応したデータをアプリケーション処理部76に出力する。また、アプリケーション管理部78は、他のデータを破棄する。
以上をまとめると、通信システム100において、基地局装置10と端末装置14は、いずれも約100ms周期で通信を実行する。また、路車間通信と車車間通信との干渉を低減するために、路車間通信と車車間通信とが時分割多重される。基地局装置10は、路車送信期間を確保するために、送信時刻および路車間通信期間情報をパケット信号に含めて、周囲の端末装置に通知する。エリア212内の端末装置14は、基地局装置10から受信した送信時刻に基づいて時刻同期し、路車間通信期間情報に基づき送信を停止することによって、路車送信期間以外のタイミングでCSMA/CAにてパケット信号を送信する。車車間通信のペイロードは共通アプリケーションのデータと自由アプリケーションのデータによって構成される。
以下では、アプリケーション処理部76とアプリケーション管理部78での処理を具体的に説明する。まず、複数のアプリケーションに対する処理の全体像を説明するために、アプリケーション処理部76とアプリケーション管理部78とが関係するプロトコルスタックを使用する。図5は、端末装置14でのプロトコルスタックを示す。上から2段のアプリケーション処理部76とアプリケーション管理部78は、送信側の端末装置14に含まれているので、送信側アプリケーションに対する処理を実行している。下から2段のアプリケーション管理部78とアプリケーション処理部76は、受信側の端末装置14に含まれるので、受信側アプリケーションに対する処理を実行している。送信側のアプリケーション処理部76は、複数種類のアプリケーションを実行する。ここでは、共通アプリケーション、第1自由アプリケーション、第2自由アプリケーション、第3自由アプリケーションであるとする。アプリケーション処理部76は、各アプリケーションに対応したデータをアプリケーション管理部78に出力する。
アプリケーション管理部78は、アプリケーション処理部76において起動されているアプリケーションを管理する。また、送信側のアプリケーション管理部78は、アプリケーション処理部76から複数のデータを受けつけ、ひとつのパケット信号に格納するために、複数のデータを集約する。複数のデータを集約したパケット信号は、アプリケーション管理部78から出力される。
受信側のアプリケーション管理部78は、複数のデータを集約したパケット信号を入力する。アプリケーション管理部78は、パケット信号に含まれた共通アプリケーション用のデータを抽出して、データをアプリケーション処理部76に出力する。また、アプリケーション管理部78は、後段のアプリケーション処理部76において起動されている自由アプリケーションを管理し、起動されている自由アプリケーションに対応したデータを抽出する。その際、データの抽出は、自由アプリケーション用ヘッダに含まれたアプリケーションIDをもとになされる。アプリケーション管理部78は、抽出したデータをアプリケーション処理部76に出力する。一方、アプリケーション管理部78は、残ったデータを破棄する。例えば、後段のアプリケーション処理部76では、第3自由アプリケーションは実行されていないので、アプリケーション管理部78は、第3自由アプリケーションのデータを破棄する。アプリケーション処理部76は、アプリケーション管理部78からのデータを受けつけ、データに対応したアプリケーションを実行する。ここでは、共通アプリケーション、第1自由アプリケーション、第2自由アプリケーション、第4自由アプリケーションであるとする。なお、図5では、緊急データに関する処理が省略されている。
図6は、アプリケーション処理部76とアプリケーション管理部78の構成を示す。アプリケーション管理部78は、入力部110、分類部112、共通アプリケーション用データ蓄積部114、自由アプリケーション用データ蓄積部116、緊急データ蓄積部118、抽出部122、分析部124を含む。アプリケーション処理部76は、緊急データ処理部126を含む。
分析部124は、抽出部72からのデータであって、かつ受信したパケット信号において含まれたデータを受けつける。分析部124は、データに付加されたアプリケーションIDをもとに、データを分類する。ここで、アプリケーションIDとは、アプリケーションを特定するための識別情報である。具体的に説明すると、分析部124は、アプリケーション処理部76において実行されているアプリケーションに対応したアプリケーションIDを選択し、選択したアプリケーションIDが付加されたデータをアプリケーション処理部76に出力する。特に、アプリケーションIDが緊急データに相当する場合、分析部124は、緊急データを緊急データ処理部126に出力する。さらに、アプリケーション処理部76において実行されているアプリケーションに対応したアプリケーションIDでない場合、分析部124は、当該データを破棄する。
緊急データ処理部126は、分析部124からの緊急データを受けつける。前述のごとく、緊急データとは、基地局装置10あるいは他の端末装置14から送信されており、本端末装置14が発信源になっていない。緊急データ処理部126は、共通アプリケーションのデータおよび自由アプリケーションのデータと同様に、緊急データを入力部110へ出力する。ここで、緊急データに対応したアプリケーションIDが緊急データに付加されることによって、緊急時であることが示されている。なお、アプリケーション処理部76から出力される共通アプリケーションのデータと自由アプリケーションのデータは、本端末装置14が発信源であるといえる。
入力部110は、アプリケーション処理部76からのデータを順次入力する。入力されるデータは、アプリケーション処理部76において動作している複数のアプリケーションのそれぞれから出力されている。ここで、複数のアプリケーションには、共通アプリケーションと自由アプリケーションが含まれる。
共通アプリケーションは、車両12等の衝突事故防止を目的としているので、そのデータには周期的な出力が要求される。そのため、入力部110には、共通アプリケーションのデータが周期的に入力される。一方、複数の自由アプリケーションのデータは、バースト的に発生するものとする。なお、自由アプリケーションのデータが周期的に発生してもよい。さらに、入力部110は、緊急データ処理部126からの緊急データも入力する。入力部110は、順次入力したデータを分類部112に出力する。
分類部112は、入力部110からのデータを入力する前に、ユーザIF部68を介してアプリケーション登録要求を受けつける。アプリケーション登録要求は、本端末装置14から送信すべきデータに対応したアプリケーションを登録するための要求である。なお、共通アプリケーションは、必須のアプリケーションであるので、アプリケーション登録要求がなされなくても登録されている。そのため、ここでのアプリケーション登録要求は、自由アプリケーションに対する要求であるとする。アプリケーション登録要求の際に、複数規定された送信の優先度のうちのいずれかが登録される。送信の優先度が高くなると、データが送信されやすくなり、送信の優先度が低くなると、データが送信されにくくなる。一例として、送信の優先度として、「高」、「中」、「低」が規定されている。
図7(a)−(b)は、分類部112において記憶されるテーブルのデータ構造を示す。図7(a)は、第1のケースに相当し、第7(b)は、第2のケースに相当する。分類部112には、第1のケースのテーブルあるいは第2のケースのテーブルが記憶される。第1のケースでは、図7(a)のごとく、優先度「高」として共通アプリケーション、優先度「中」として緊急データ、優先度「低」として自由アプリケーションが登録されている。第2のケースでは、図7(b)のごとく、優先度「高」として緊急データ、優先度「中」として共通アプリケーション、優先度「低」として自由アプリケーションが登録されている。図6に戻る。
データを周期的に出力するような自由アプリケーションの種類は多くないといえるので、多くの自由アプリケーションは、一般的に、バースト的にデータを出力すると考えられる。そのため、アプリケーション管理部78は、データサイズによりアプリケーションを受け入れるかどうかのネゴシエーションを行わず、予め運用者等により割り当てられた送信の優先度とともに自由アプリケーションが登録される。なお、アプリケーション登録要求に対する応答として、分類部112は、最大のデータ通信速度を返してもよい。
このような登録がなされた後、分類部112は、入力部110からのデータを入力する。このようなデータは、複数規定された送信の優先度のうちのいずれかに対応したデータである。分類部112は、入力したデータを分類する。具体的に説明すると、分類部112は、共通アプリケーションのデータを共通アプリケーション用データ蓄積部114に出力する。分類部112は、自由アプリケーションのデータを自由アプリケーション用データ蓄積部116に出力する。分類部112は、緊急データを緊急データ蓄積部118に出力する
共通アプリケーション用データ蓄積部114は、データを入力し、抽出部122から抽出されるまで、当該データを記憶する。つまり、共通アプリケーション用データ蓄積部114は、FIFO(First−In First−Out)型のメモリである。自由アプリケーション用データ蓄積部116、緊急データ蓄積部118も、共通アプリケーション用データ蓄積部114と同様に動作する。なお、共通アプリケーション用データ蓄積部114、自由アプリケーション用データ蓄積部116、緊急データ蓄積部118のそれぞれにおける記憶量が異なっていてもよい。
抽出部122は、共通アプリケーション用データ蓄積部114、自由アプリケーション用データ蓄積部116、緊急データ蓄積部118のそれぞれからデータを抽出し、抽出したデータを生成部66に出力する。生成部66は、車車送信期間において送信すべきパケット信号にデータを格納する。そのため、パケット信号には、共通アプリケーションのデータ、自由アプリケーションのデータ、緊急データを格納可能である。抽出部122は、図7(a)−(b)に示された優先度に応じて、共通アプリケーション用データ蓄積部114、自由アプリケーション用データ蓄積部116、緊急データ蓄積部118のそれぞれからデータを抽出する。
ここで、図7(a)の場合、自由アプリケーションの優先度よりも緊急データの優先度の方が高い。また、緊急データの優先度よりも共通アプリケーションの優先度の方が高い。一方、図7(b)の場合、共通アプリケーションの優先度および自由アプリケーションの優先度よりも緊急データの優先度の方が高い。
つまり、図7(a)の場合、共通アプリケーションのデータをパケット信号を格納した後に、当該パケット信号がデータをさらに格納可能である場合、抽出部122は、緊急データ蓄積部118から緊急データを抽出する。緊急データ蓄積部118から抽出すべき緊急データがなく、かつデータをパケット信号に格納可能である場合、抽出部122は、自由アプリケーション用データ蓄積部116からデータを抽出する。一方、図7(b)の場合、緊急データをパケット信号を格納した後に、当該パケット信号がデータをさらに格納可能である場合、抽出部122は、共通アプリケーション用データ蓄積部114からデータを抽出する。共通アプリケーション用データ蓄積部114から抽出すべきデータがなく、かつデータをパケット信号に格納可能である場合、抽出部122は、自由アプリケーション用データ蓄積部116からデータを抽出する。つまり、共通アプリケーションのデータと自由アプリケーションのデータうちの少なくともひとつよりも優先的に緊急データがパケット信号に格納される。
ここで、緊急データ蓄積部118からの緊急データが存在する場合は、緊急時であることを検出した場合に相当し、緊急データ蓄積部118からの緊急データが存在しない場合は、緊急時であることを未検出である場合に相当する。その結果、抽出部122は、緊急時であることを未検出である場合よりも、緊急時であることを検出した場合において、緊急データを優先的にパケット信号に格納する。特に、図7(b)の場合において、緊急データは、緊急時であることが検出された場合に、最優先でパケット信号に格納される。一方、図7(a)の場合では、緊急時であることを検出した場合であっても、共通アプリケーションのデータはパケット信号に残される。
図8(a)−(e)は、アプリケーション管理部78によるタイミングの割当て例を示す。図8(a)は、緊急時であることを未検出である場合、つまり通常時のパケット信号に含まれたデータを示す。図示のごとく、共通アプリケーションのデータと自由アプリケーションのデータとが含まれる。図8(b)は、緊急時であることを検出した場合のパケット信号に含まれたデータを示す。図示のごとく、共通アプリケーションのデータと自由アプリケーションのデータとに加えて緊急データも含まれる。前述のごとく、緊急データの優先度は、自由アプリケーションの優先度よりも高いので、緊急データの格納が自由アプリケーションデータの格納よりも優先される。図8(c)は、図8(b)と同様に、緊急時であることを検出した場合のパケット信号に含まれたデータを示す。図示のごとく、共通アプリケーションのデータと緊急データとが含まれる。これらが格納されることによって、パケット信号内に空き容量がなくなったので、自由アプリケーションのデータはパケット信号に格納されていない。
図8(d)は、図8(b)、(c)と同様に緊急時であることを検出した場合のパケット信号に含まれたデータを示す。図8(d)では、図8(c)と比較して、共通アプリケーションのデータのサイズが小さくなるとともに、緊急データのサイズが大きくなっている。これは、図7(b)にしたがって緊急データを優先的に格納した結果、残りの領域に共通アプリケーションのデータが格納されているといえる。図8(e)は、緊急時であることを検出した場合のパケット信号に含まれたデータを示す。図示のごとく、緊急データだけが含まれる。これは、図7(b)の場合、あるいは図7(a)において共通アプリケーションのデータが存在しない場合に相当する。
図9は、端末装置14によって生成されるパケット信号のフォーマットを示す。これは、アプリケーション管理部78から出力されるパケット信号のフォーマットであり、生成部66においてペイロードに格納される。また、緊急時であることを未検出の場合に相当する。先頭から順に、アプリケーションヘッダ、共通領域、自由領域が配置される。共通領域は、共通アプリケーションのために使用される領域であり、そこには、共通アプリケーション用データが格納される。自由領域は、自由アプリケーションのために使用される領域であり、自由アプリケーション用ヘッダ、自由アプリケーション用データに分けられる。自由アプリケーション用ヘッダには、アプリケーション数に関する情報に加えて、各自由アプリケーションに対する制御情報が含まれる。自由アプリケーションに対する制御情報は、アプリケーションID、データサイズを含む。ここで、データサイズは、後述の自由アプリケーションのデータに関する。自由アプリケーション用データには、各自由アプリケーションのデータを含む。なお、自由領域に含まれる自由アプリケーションの数は2に限定されない。
図9では、第1自由アプリケーション用のヘッダ、第2自由アプリケーション用のヘッダ、第1自由アプリケーション用のデータ、第2自由アプリケーション用のデータの順に配置されている。しかしながら、第1自由アプリケーション用のヘッダ、第1自由アプリケーション用のデータ、第2自由アプリケーション用のヘッダ、第2自由アプリケーション用のデータの順に配置されてもよい。つまり、ひとつの自由アプリケーションに対するヘッダとデータとが連続して配置されてもよい。また、緊急データがパケット信号に格納される場合、共通領域に入れられてもよいし、自由領域に入れられてもよい。さらに、緊急データ用領域がパケット信号に設けられてもよい。
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。図10は、アプリケーション管理部78によるデータの格納手順を示すフローチャートである。これは、図7(a)の場合に相当する。パケット信号にデータを格納可能であり(S10のY)、共通アプリケーション用データがあれば(S12のY)、アプリケーション管理部78は、共通アプリケーション用データをパケット信号に格納させ(S14)、ステップ10に戻る。共通アプリケーション用データがなく(S12のN)、緊急データがあれば(S16のY)、アプリケーション管理部78は、緊急データをパケット信号に格納させ(S18)、ステップ10に戻る。緊急データがなく(S16のN)、自由アプリケーション用データがあれば(S20のY)、アプリケーション管理部78は、自由アプリケーション用データをパケット信号に格納させ(S22)、処理が終了される。パケット信号にデータを格納可能でない場合(S10のN)、あるいは自由アプリケーション用データがない場合(S20のN)、処理が終了される。
図11は、アプリケーション管理部78によるデータの別の格納手順を示すフローチャートである。これは、図7(b)の場合に相当する。パケット信号にデータを格納可能であり(S30のY)、緊急データがあれば(S32のY)、アプリケーション管理部78は、緊急データをパケット信号に格納させ(S34)、ステップ30に戻る。緊急データがなく(S32のN)、共通アプリケーション用データがあれば(S36のY)、アプリケーション管理部78は、共通アプリケーション用データをパケット信号に格納させ(S38)、ステップ30に戻る。共通アプリケーション用データがなく(S36のN)、自由アプリケーション用データがあれば(S40のY)、アプリケーション管理部78は、自由アプリケーション用データをパケット信号に格納させ(S42)、処理が終了される。パケット信号にデータを格納可能でない場合(S30のN)、あるいは自由アプリケーション用データがない場合(S40のN)、処理が終了される。
本発明の実施例によれば、通常時と比較して緊急時になると、緊急データを優先的にパケット信号に格納するので、緊急時であるか否かに適するようにパケット信号の構成を変更できる。また、緊急データに対する送信の優先度よりも、共通アプリケーションに対する送信の優先度を高くするので、緊急時であったとしても、衝突事故を回避するための情報を報知できる。また、緊急時であっても、共通アプリケーションのデータを残すので、本端末装置が発信源となるデータも送信できる。また、自由アプリケーションに対する送信の優先度よりも、緊急データに対する送信の優先度を高くするので、緊急時に、緊急データに対する処理遅延を低減できる。また、共通アプリケーションに対する送信の優先度よりも、緊急データに対する送信の優先度を高くするので、緊急時に緊急データを確実に通知できる。
(実施例2)
実施例2は、実施例1と同様に、車車間通信がなされるとともに、路車間通信もなされる通信システムに関する。実施例2における端末装置は、実施例1と同様に、緊急時であることを検出すると、緊急データの優先度を高めてパケット信号に格納する。実施例2では、多くの緊急データを受信する場合を想定する。緊急データは多くの端末装置へ報知されることが望ましいが、緊急データの数が多くなりすぎてしまうと、運転者にとってはどれが特に重要な情報であるかが分かりにくくなってしまう。これに対応するために、実施例2に係る端末装置は、自らの位置情報をもとに近くの情報が含まれた緊急データを選択し、選択した緊急データを転送する。実施例2に係る通信システム100、基地局装置10、端末装置14は、図1、図2、図4と同様のタイプであり、ここでは差異を中心に説明する。
図12は、本発明の実施例2に係る緊急データ処理部126の構成を示す。緊急データ処理部126は、選択部140、データ生成部142を含む。選択部140は、分析部124からの緊急データを受けつけるとともに、取得部64からの位置情報も受けつける。選択部140は、緊急データに含まれた位置情報であって、かつ災害情報に対応した位置情報と、取得部64から受けつけた位置情報とをもとに、緊急データを選択する。具体的に説明すると、取得部64から受けつけた位置情報に近くの災害情報が含まれた緊急データが選択される。選択部140は、予め定めた一定数になるまで緊急データを選択する。また、選択部140は、予め定めた一定サイズになるまで緊急データを選択する。あるいは、選択部140は、取得部64から受けつけた位置情報から一定範囲内に含まれた緊急データを選択する。
データ生成部142は、選択部140から緊急データを受けつける。データ生成部142は、受けつけた複数の緊急データを結合したり、緊急データから不要な情報を削除したりすることによって、緊急データを編集する。データ生成部142は、編集した緊急データをアプリケーション管理部78に出力する。アプリケーション管理部78は、データ生成部142から入力した緊急データをもとに、これまでと同様の処理を実行する。その結果、抽出部122は、緊急時であることを検出した場合、緊急データが複数存在すれば、取得部64において取得した位置情報に近い情報が含まれた緊急データを優先的にパケット信号に格納する。
本発明の実施例によれば、取得した位置情報に近い情報が含まれた緊急データを選択するので、緊急データの量を低減できる。また、緊急データの量が低減されるので、緊急時であっても、緊急データの送信の優先度よりも低い優先度のデータを送信できる。そのため、伝送効率を向上できる。緊急データが必要以上に転送されないので、無駄な転送をなくし伝送効率を向上できる。
(実施例3)
実施例3も、これまでと同様に、車車間通信がなされるとともに、路車間通信もなされる通信システムに関する。これまでは、車両に搭載された端末装置において、自由アプリケーションが実行され、自由アプリケーションからのデータが当該端末装置から報知されている。実施例3では、端末装置が携帯無線装置に接続される。携帯無線装置は、自由アプリケーションを実行することによって、データを生成する。携帯無線装置は、生成したデータを端末装置に送信する。端末装置は、携帯無線装置からのデータをこれまでと同様に処理する。また、緊急データに対する処理は、これまでと同様に端末装置内においてなされ、携帯無線装置においてなされてなくてもよい。
図13は、本発明の実施例3に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100では、一例として、ひとつの端末装置14に対して、携帯無線装置150と総称される第1携帯無線装置150a、第2携帯無線装置150bが接続される。端末装置14には、アンテナ50、近距離用アンテナ130が含まれ、第1携帯無線装置150aには、第1近距離用アンテナ152aが含まれ、第2携帯無線装置150bには、第2近距離用アンテナ152bが含まれる。ここで、第1近距離用アンテナ152a、第2近距離用アンテナ152bは、近距離用アンテナ152と総称される。なお、図13では、端末装置14と携帯無線装置150との接続を明確にするために、基地局装置10、他の端末装置14を省略している。また、携帯無線装置150は2台に限定されない。
端末装置14と携帯無線装置150とは、近距離用アンテナ130、近距離用アンテナ152を介して接続される。ここで、端末装置14と携帯無線装置150との接続には、例えば、近距離無線通信システムが使用される。なお、近距離無線通信システムではなく、無線LAN(Local Area Network)であってもよく、端末装置14と携帯無線装置150とが有線にて接続されてもよい。また、携帯無線装置150は、近距離無線通信システムの他に、携帯電話システムにも対応しており、図示しない携帯電話システム用の基地局装置と通信することによって、通話、電子メール、データ通信を実行する。さらに、携帯無線装置150は、スマートホンであってもよく、その際、所定のアプリケーションプログラムを実行してもよい。ここでは、端末装置14のアプリケーション処理部76の機能が携帯無線装置150に備えられていることによって、携帯無線装置150は、自由アプリケーションを実行する。携帯無線装置150は、自由アプリケションを実行することによって生成したデータを端末装置14に出力する。
端末装置14のアプリケーション管理部78は、これまでと同様の処理を実行することによって、携帯無線装置150からのデータもパケット信号に格納して、当該パケット信号を報知する。また、端末装置14は、受信したパケット信号の中に、携帯無線装置150において実行されている自由アプリケーションのデータが含まれている場合、当該データを抽出して、携帯無線装置150に送信する。これまで、アプリケーション処理と管理とがひとつの端末装置14に含まれていたが、ここでは、それらが端末装置14と携帯無線装置150に分離されている。なお、本実施例において、端末装置14も、共通アプリケーションあるいは自由アプリケーションを実行してもよい。特に、端末装置14のアプリケーション処理部76には、緊急データ処理部126が含まれており、緊急データに関する処理は、端末装置14内においてなされている。
図14は、端末装置14の構成を示す。端末装置14は、図4と比較して、近距離通信部132、近距離用アンテナ130を含む。近距離通信部132は、前述のごとく、近距離無線通信システムあるいは無線LANに対応した通信処理を実行することによって、近距離用アンテナ130を介して携帯無線装置150と通信する。近距離通信部132は、携帯無線装置150からのデータを受信すると、データをアプリケーション管理部78に出力する。当該データは、携帯無線装置150において実行された自由アプリケーションのデータである。これらは、送信側アプリケーションに対する処理に相当する。
また、近距離通信部132は、アプリケーション管理部78からのデータを入力すると、データを携帯無線装置150へデータを送信する。当該データは、携帯無線装置150において実行されている自由アプリケーションにて処理されるデータである。これらは、受信側アプリケーションに対する処理に相当する。なお、アプリケーション処理部76では、例えば、共通アプリケーションに対する処理、緊急データに関する処理が実行されている。
図15は、携帯無線装置150の構成を示す。携帯無線装置150は、近距離通信部154、携帯無線装置内アプリケーション管理部156、携帯無線装置内アプリケーション処理部158を含む。図15では、通信システム100での処理に関連する構成を示しており、携帯電話システムでの処理および所定のアプリケーションプログラムの処理に関連する構成は省略されている。
携帯無線装置内アプリケーション処理部158は、端末装置14でのアプリケーション処理部76と同様の処理を実行する。携帯無線装置内アプリケーション管理部156は、端末装置14のアプリケーション処理部76のうちの一部の処理、特に、アプリケーション管理部78とのインターフェイスに近い部分の処理を実行する。なお、携帯無線装置内アプリケーション管理部156が省略されてもよい。その際は、携帯無線装置内アプリケーション処理部158と近距離通信部154とが接続される。近距離通信部154は、近距離通信部132に対応した処理を実行する。
本発明の実施例によれば、端末装置と携帯無線装置とに処理を分散させるので、端末装置での処理量を低減できる。また、携帯無線装置を使用するので、実行すべきアプリケションのバリエーションを拡大できる。また、ユーザによって通常使用されている携帯無線装置を通信システムに組み込むので、ユーザの利便性を向上できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本実施例において端末装置14は、車両12に搭載されている。しかしながらこれに限らず例えば、端末装置14が歩行者に携帯されてもよい。本変形例によれば、端末装置14の適用領域を拡大できる。
本発明の実施例1から3において、アプリケーションごとに優先度が規定されている。しかしながらこれに限らず例えば、自由アプリケーションに対して複数の優先度が規定されてもよい。本変形例によれば、自由アプリケーションのデータを柔軟に送信できる。
本発明の実施例1から3において、端末装置14は、緊急データを転送している。しかしながらこれに限らず例えば、端末装置14は、緊急データが発行されてから所定の時間を経過した場合、当該緊急データの転送を停止してもよい。本変形例によれば、古い緊急データが転送されることを抑制できるとともに、伝送効率を向上できる。
実施例1から3の任意の組合せも有効である。本変形例によれば、実施例1から3の任意の組合せによる効果を得ることができる。
本発明の一態様の概要は、次の通りである。本発明のある態様の無線装置は、他の無線装置からのパケット信号を受信するとともに、パケット信号を報知する通信部と、通信部において受信したパケット信号を処理するとともに、通信部から報知すべきパケット信号を生成する処理部とを備える。処理部において生成されるパケット信号には、通信部において受信したパケット信号に含まれた第1種のデータと、本無線装置が発信源となる第2種のデータとを格納可能であり、処理部は、緊急時であることを未検出である場合よりも、緊急時であることを検出した場合において、第1種のデータを優先的にパケット信号に格納する。
この態様によると、緊急時になると、転送すべきデータを優先的にパケット信号に格納するので、緊急時であるか否かに適するようにパケット信号の構成を変更できる。
第2種のデータは、少なくとも2種類のデータで構成され、処理部は、第2種のデータのうちの少なくとも1種類のデータよりも優先的に第1種のデータをパケット信号に格納してもよい。この場合、第1種のデータをパケット信号に格納しやすくできる。
処理部は、緊急時であることを検出した場合であっても、第2種のデータをパケット信号に残すことを特徴してもよい。この場合、緊急時であっても、転送すべきデータ以外のデータを残すので、本無線装置が発信源となるデータも送信できる。
本無線装置に対する位置情報を取得する取得部をさらに備えてもよい。処理部は、緊急時であることを検出した場合、通信部において受信したパケット信号に含まれた第1種のデータが複数存在すれば、取得部において取得した位置情報に近い情報が含まれた第1種のデータを優先的にパケット信号に格納してもよい。この場合、取得した位置情報に近い情報が含まれたデータを選択するので、データ量を低減できる。
通信部でのパケット信号は、700MHz帯高度道路交通システム標準規格に適合してもよい。