JP6007881B2 - 引張最大強度780MPa以上を有する衝突特性に優れた高強度鋼板、高強度溶融亜鉛めっき鋼板及び高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents
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Description
このように耐食性、高強度並びに延性を同時に具備することは、極めて難しい。
C:0.05〜0.40%、
Si:0.01〜3.0%、
Mn:1.5〜3.5%未満、
P:0.04%以下、
S:0.01%以下、
Al:2.0%以下、
N:0.01%以下、
O:0.006%以下、
を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、
ミクロ組織が、フェライトと、マルテンサイト及びベイナイトの1種又は2種と、残留オーステナイト(含有しない場合を含む)からなり、その割合が、体積分率でフェライトを20%以上含有し、マルテンサイト及びベイナイトの1種又は2種を合計で5〜80%以下含有し、残留オーステナイト体積率を10%未満に制限する鋼板であって、三次元組織観察により測定された、一個以上の貫通フェライトを持つマルテンサイト粒、あるいは、ベイナイト粒の割合が、全マルテンサイト粒及びベイナイト粒の20%以上であることを特徴とする引張最大強度780MPa以上を有する衝突特性に優れた高強度鋼板。
Cr:0.05〜1.0%、
Mo:0.01〜1.0%、
Ni:0.05〜1.0%、
Cu:0.05〜1.0%、
Nb:0.005〜0.3%、
Ti:0.005〜0.3%、
V:0.005〜0.5%、
B:0.0001〜0.01%、
Ca:0.0005〜0.04%、
Mg:0.0005〜0.04%、
REM:0.0005〜0.04%、
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の引張最大強度780MPa以上を有する衝突特性に優れた高強度鋼板。
初めに、衝突性能と機械特性の関係について説明する。本発明者等は、自動車の衝撃吸収部材であるフロントサイドメンバーやリアサイドメンバーの高強度化と薄肉化のために必要な材料特性を見積もるため、各種強度と材料特性を有する鋼板を用いて、角R5で60mm×60mmの断面を有する長さ300mmの角筒試験体をアーク溶接により作成し、軸圧潰部材とし、軸圧潰試験を実施した。この結果、軸圧潰時の吸収エネルギーは、鋼板の塑性変形により確保されるとともに、280〜590MPa級の鋼板であれば、高強度化は吸収エネルギーの増加をもたらすことを明らかにした。しかしながら、780MPa以上の鋼板を衝撃吸収部材に適用した場合、軸圧潰時に鋼板が延性破壊するとともに、発生した延性亀裂が原因で角筒が蛇腹状の変形をすることなく、折れる場合があることを見出した。この結果、鋼板強度を上昇させたとしても、吸収エネルギーが増加しない場合がある。
本発明者らは、鋼板のミクロ組織に含まれる一個以上の貫通フェライトを持つマルテンサイト粒および/又はベイナイト粒の割合が、全体の20%以上となることで、優れた曲げ性を確保できることを明らかにした。
フェライト体積率を20%以上とするのは、良好な伸びを確保するためである。フェライト体積率が20%未満では、加工硬化が低くなりすぎてしまい、曲げ成形時にネッキングが生じることから、割れを生じる懸念がある。一方、フェライト体積率が95%超となると、780MPa以上の強度確保が難しい。このことから、フェライト体積率は、20〜95%とする必要がある。
鋼板にめっき層を有すことで耐食性が高まるため、めっきをしても良い。
スポット溶接性や塗装性が望まれる場合には、合金化処理によってこれらの特性を高めることができる。具体的には、Znめっき浴に浸漬した後、合金化処理を施すことで、めっき層中にFeが取り込まれ、塗装性やスポット溶接性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。合金化処理後のFe量が7質量%未満ではスポット溶接性が不十分となる。一方、Fe量が15質量%を超えるとめっき層自体の密着性を損ない、加工の際、めっき層が破壊・脱落し金型に付着することで、成形時の疵の原因となる。したがって、合金化処理を行う場合のめっき層中のFe量の範囲は7〜15質量%とする。
C:Cは、鋼板の強度を上昇できる元素である。しかしながら、0.05%未満であると780MPa以上の引張強度と加工性を両立することが難しくなる。一方、0.40%超となるとスポット溶接性の確保が困難となる。このため、その範囲を0.05〜0.40%以下に限定した。
ただし、金属LaやCeを添加したとしても本発明の効果は発揮される。
引き続き、500〜250℃間にて10〜1000秒間で保持することで、マルテンサイトの特性向上を行うための焼き戻しを行う。本熱処理により、マルテンサイトの焼き戻しによる穴広げ性、曲げ性の向上や耐遅れ破壊特性の更なる向上が図られることから実施する必要がある。保持温度の上限を500℃とするのは、この温度以上での焼き戻しは、マルテンサイトの強度低下が顕著になり、780MPa以上の強度が確保し難いためである。一方、250℃未満の温度での保持は、マルテンサイトの特性改善に長時間を要することから、設備が過大となり、生産性に劣る。このことから、保持温度は、500〜250℃とする必要がある。下限を10秒としたのは、10秒未満の保持では、焼き戻しによるマルテンサイトの特性改善が十分でなく、優れた成形性を得ることが出来ない。一方、1000秒を超える保持は、生産性が低下することから好ましくない。なお、保持とは、等温保持のみを指すのではなく、この温度域での徐冷や加熱も含む。
また、焼き戻し後に、めっき浴への浸漬やめっきの合金化処理を行う場合、これらの処理をマルテンサイトの焼き戻しやベイナイト変態の促進に活用できる。めっき浴浸漬板温度は、溶融亜鉛めっき浴温度より40℃低い温度から溶融亜鉛めっき浴温度より50℃高い温度までの温度範囲とすることが望ましい。
上記熱処理が可能であれば、熱処理はどのような熱処理であっても構わない。例えば、一旦巻き取ったコイルを箱型炉に入れることでの熱処理、インラインでの加熱炉やインダクションヒーターを用いた熱処理を行っても良い。
次に、本発明を実施例により詳細に説明する。
表1に示す成分を有するスラブを、1240℃に加熱し、表2に記載の熱延条件にて熱間圧延を行い、水冷帯にて水冷の後、表2に示す温度で巻き取り処理を行った。熱延板の厚みは、2.5〜3.0mmの範囲とした。熱延板を酸洗した後、冷間圧延後の板厚が1.2mmとなるように、所定の冷延率で冷延を行い、冷延板とした。
Rc:180°U曲げの限界曲げ半径
t:板厚
まず、30mm×40mmに切断した亜鉛めっき鋼板について、インヒビタを添加した5%HCL水溶液で、鋼板母材の溶出を抑制しながらめっき層のみを溶解し、溶解液をICP発光分析することでめっき層中のFe%を評価した。各試料間の測定ばらつきを考慮して、同じ亜鉛めっき鋼板から、3つの試料を切出し、その測定値を平均したものをFe%とした。
測定した引張特性及びめっき層中のFe%を表2に示す。本発明の鋼板はいずれも衝突特性、めっき性に優れていることがわかる。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.05〜0.40%、
Si:0.01〜3.0%、
Mn:1.5〜3.5%未満、
P:0.04%以下、
S:0.01%以下、
Al:2.0%以下、
N:0.01%以下、
O:0.006%以下、
を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、
ミクロ組織が、フェライトと、マルテンサイト及びベイナイトの1種又は2種と、残留オーステナイト(含有しない場合を含む)からなり、その割合が、体積分率でフェライトを20%以上含有し、マルテンサイト及びベイナイトの1種又は2種を合計で5〜80%以下含有し、残留オーステナイト体積率を10%未満に制限する鋼板であって、三次元組織観察により測定された、一個以上の貫通フェライトを持つマルテンサイト粒、あるいは、ベイナイト粒の割合が、全マルテンサイト粒及びベイナイト粒の20%以上であることを特徴とする引張最大強度780MPa以上を有する衝突特性に優れた高強度鋼板。 - さらに、鋼中に質量%で
Cr:0.05〜1.0%、
Mo:0.01〜1.0%、
Ni:0.05〜1.0%、
Cu:0.05〜1.0%、
Nb:0.005〜0.3%、
Ti:0.005〜0.3%、
V:0.005〜0.5%、
B:0.0001〜0.01%、
Ca:0.0005〜0.04%、
Mg:0.0005〜0.04%、
REM:0.0005〜0.04%、
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の引張最大強度780MPa以上を有する衝突特性に優れた高強度鋼板。 - 請求項1又は2のいずれかに記載の高強度鋼板の表面に、Fe7質量%未満を含有し、残部がZn,Alおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき層を有する引張最大強度780MPa以上を有する衝突特性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 請求項1又は2のいずれかに記載の高強度鋼板の表面に、Fe7質量%以上15質量%以下を含有し、残部がZn,Alおよび不可避的不純物からなる合金化溶融亜鉛めっき層を有する引張最大強度780MPa以上を有する衝突特性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
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