JP6006847B1 - 骨再生材調製用組成物および骨再生材調製用キット - Google Patents

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Abstract

【課題】リン酸カルシウムセメントの複雑な形状の骨欠損などにも隙間なく充填することが可能である特徴を消失させることなく、強度も維持しつつ、細孔内へ細胞や血管の侵入を早期に可能にすることができる、骨再生材調製用組成物を提供する。【解決手段】水硬性リン酸カルシウムセメント、硬化液および架橋型ゼラチン粒状物を含有する骨再生材調製用組成物。架橋型ゼラチン粒状物に含まれる架橋型ゼラチン粒子は、多孔性であり、架橋剤由来成分は含まない架橋型ゼラチンの粒子であって、架橋型ゼラチンは、37℃の純水に対する24時間の溶出度が3〜80%の範囲である。水硬性リン酸カルシウムセメント、硬化液および架橋型ゼラチン粒状物を含み、少なくとも水硬性リン酸カルシウムセメントおよび架橋型ゼラチン粒状物と、硬化液とは、独立の梱包状態である、骨再生材調製用キット。【選択図】なし

Description

本発明は、骨再生材調製用組成物および骨再生材調製用キットに関する。より詳細には、本発明は、複雑な形状の骨欠損などにも隙間なく充填することが可能であり、所望の強度を有し、且つ骨再生を促進させることが可能な骨補填剤として有用な骨再生材調製用組成物、およびこの組成物の調製用のキットに関する。さらに本発明は、架橋型ゼラチン粒状物を含有する骨再生材調製用材料にも関する。
近年、疾患や事故による骨折や骨欠損の修復にはHap(水酸アパタイト:Ca10(PO4)6(OH)2)やβ-TCP(リン酸三カルシウム:Ca3(PO42)などの焼結型骨補填剤を使用することが一般的である。このうち、β-TCPは生体内で徐々に吸収され、その後には本来の骨組織が再生することから、最近ではその使用量が増えている。また、吸収が滞りなく進行するように、β-TCPは多孔質の顆粒や多孔質のブロック体の形状に作製されている。しかし、複雑形状の骨欠損部位や骨折部位への充填には、予めCT写真などを用いた設計操作や、手術中のトリミング等の操作が必要となる。このようなケースにも柔軟に対応できるようにすることは、医師達からの要望であった。
一方、リン酸カルシウムセメントは、粘土状あるいはペースト状であるため、上記の要望に対応可能と思われた。リン酸カルシウムセメントは、リン酸カルシウム系の粉末と水系の硬化液を混錬することで作製される。この粉液比の調整により粘土状やペースト状にすることができ、複雑な形状の骨欠損などにも隙間なく充填することが可能であることが最大の特徴である。粘土状では手指にて所望の形状に成形でき、ペースト状では、シリンジに充填し、適切な注射針により患部奥まで充填することも可能である(特許文献1)。
特開平03−128061号公報 特開2010−46249号公報 特開2014−124416号公報
特許文献1に記載のリン酸カルシウムセメントのタイプは、使い勝手が良いものの、β-TCPと比較して吸収が遅く、完全には本来の骨組織に置換されない。加えて、長期間のうちに機械強度が低下して、体内で破壊を起こすという問題もあった。
従来、骨細胞との親和性を高めるために、焼結型骨補填剤では、多孔体に加工したリン酸カルシウム焼結体が用いられている。多孔体にする理由は、細孔内へ細胞や血管の侵入を早期に可能にすることによって、材料自身の吸収と骨再生を促すためである。したがって、多孔質の骨補填材の気孔率はできるだけ高いことが望ましいが、気孔率を高くすると多孔質骨補填材の機械的強度も低下してしまう。しかも、機械強度が過度に低い場合は、手術時の手指による取り扱いによっても崩壊してしまうため、強度を必要とする際には注意が必要である。
現在市販されている多孔質の骨補填材は、おおむね圧縮強度が1 MPa以上になるようにする必要があることから、気孔率は75%程度以下にとどまっている。例えば、市販品であるオスフェリン(オリンパステルモバイオマテリアル社製)は、強度が0.9 MPa、気孔率が75 %である。
一方、リン酸カルシウムセメントは複雑な形状の骨欠損などにも隙間なく充填することが可能である特徴を有するが、その作製方法により多孔質骨補填剤のような多孔状にすることが困難であり、仮に多孔状を有したとしても、その硬化体の機械的強度は極端に低下してしまうと推察できる。
そこで、本発明は、リン酸カルシウムセメントの複雑な形状の骨欠損などにも隙間なく充填することが可能である特徴を消失させることなく、強度も維持しつつ、細孔内へ細胞や血管の侵入を早期に可能にすることができる、骨再生材調製用組成物を提供することを目的とする。
そこで、本発明者らは、リン酸カルシウムセメントの複雑な形状の骨欠損などにも隙間なく充填することが可能である特徴を消失させることなく、体内への吸収が滞りなく進行するように、硬化後に自発的に多孔質化させることで骨再生を促進させる新しいタイプの骨補填剤を創出しようと試みた。
本発明者らは、細胞の足場として従来から利用されているゼラチンを粒子状とし、かつ適切なタイミングで細孔内へ細胞や血管の侵入を可能とするように、ゼラチン粒子が消失し得るように、分子量を調製した架橋型ゼラチン粒状物を、リン酸カルシウムセメントに分散状態で共存させた。このようにして得られた組成物が、上記課題を解決し得るものであることを見出して、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の通りである。
[1]
水硬性リン酸カルシウムセメント、硬化液および架橋型ゼラチン粒状物を含有する骨再生材調製用組成物。
[2]
架橋型ゼラチン粒状物に含まれる架橋型ゼラチン粒子は、多孔性であり、架橋剤由来成分は含まない架橋型ゼラチンの粒子であって、架橋型ゼラチンは、37℃の純水に対する24時間の溶出度が3〜80%の範囲である、[1]に記載の組成物。
[3]
架橋型ゼラチン粒状物に含まれる架橋型ゼラチン粒子は、嵩密度が0.05〜0.5 g/cm3の範囲である[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]
架橋型ゼラチン粒子は、平均粒子径が100μm〜5mmの範囲である[1]〜[3]のいずれか1項に記載の組成物。
[5]
水硬性リン酸カルシウムセメント80〜95質量%に対して、硬化液20〜40質量部%および架橋型ゼラチン粒状物5〜20質量%を含有する(但し、硬化液を除く固形分全量を100質量%とする)[1]〜[4]のいずれか1項に記載の組成物。
[6]
水硬性リン酸カルシウムセメントが、第3リン酸カルシウムおよび第2リン酸カルシウム2水和物を主成分とする混合物である[1]〜[5]のいずれか1項に記載の組成物。
[7]
硬化液が、水溶性多糖類を含有する水溶液である[1]〜[6]のいずれか1項に記載の組成物。
[8]
骨再生材調製用キットであって、
水硬性リン酸カルシウムセメント、硬化液および架橋型ゼラチン粒状物を含み、
少なくとも水硬性リン酸カルシウムセメントおよび架橋型ゼラチン粒状物と、硬化液とは、独立の梱包状態である、前記キット。
[9]
水硬性リン酸カルシウムセメントおよび架橋型ゼラチン粒状物は、それぞれ独立の梱包状態である、[8]に記載のキット。
[10]
架橋型ゼラチン粒状物を含有する骨再生材調製用材料であって、
架橋型ゼラチン粒状物に含まれる架橋型ゼラチン粒子は、多孔性であり、架橋剤由来成分は含まない架橋型ゼラチンの粒子であって、架橋型ゼラチンは、37℃の純水に対する24時間の溶出度が3〜80%の範囲である、前記材料。
[11]
架橋型ゼラチン粒子は、嵩密度が0.05〜0.2 g/cm3の範囲である[10]に記載の材料。
[12]
架橋型ゼラチン粒子は、平均粒子径が100μm〜5mmの範囲である[10]又は[11]に記載の材料。
[13]
骨再生材は、架橋型ゼラチン粒状物と水硬性リン酸カルシウムセメント及び硬化液から調製されるものである[10]〜[12]のいずれか1項に記載の材料。
尚、熱架橋型ゼラチンを骨再生材調製用組成物に用いた例が、特許文献2および3に記載されている。
特許文献2には、セラミックス顆粒と、架橋された酸性又は塩基性ゼラチンハイドロゲルからなる複合体を含む硬組織補填材が記載さている。前記複合体は、セラミックス顆粒と酸性又は塩基性ゼラチンハイドロゲルを混合し、凍結乾燥した後、熱架橋反応により複合体を形成させてなるものである。この硬組織補填材は、セラミックス顆粒と、架橋された酸性又は塩基性ゼラチンハイドロゲルからなる複合体を含むものである。ゼラチンは架橋されているが、水を含むものであり、ゼラチンのハイドロゲルである。さらに、架橋されたゼラチンハイドロゲルは、硬組織補填材の連続相を構成する。その結果、架橋された酸性又は塩基性ゼラチンハイドロゲルの分解性は、架橋度により3日〜4カ月で制御される(段落0033)が、ゼラチンハイドロゲルの分解により補填材の形状の維持は困難になり、強度も維持できない。
特許文献3は、本発明と同様にリン酸カルシウム系の混合物とゼラチン粒子に水系溶媒を混合して得られるものである。しかしながら、力学的強度の向上が目的であり、使用したゼラチン粒子は、放射線処理されたものであった。使用された放射線滅菌ゼラチン粒子は、その膨潤率が硬化体の強度を向上させた要因であると記載されていた。しかも、本件のように、硬化体に存在するゼラチン粒子の溶解性を確認してはおらず、さらに、in vivoにおける評価を実施していないため、作製された硬化体の骨再生促進効果は推測である。尚、本発明者らの検討結果では、ゼラチンにγ線15kGyを照射すると、明らかな低分子化とゼリー強度の低下を引き起こし、その原因は、100kDaの成分が分解されていることであると推測された。文献3のように放射線照射によりゼラチンが架橋され、徐放性を付与できるという結果は得られなかった。
本発明によれば、架橋型ゼラチン粒状物を用いることで、リン酸カルシウムセメントが本来有する複雑な形状の骨欠損などにも隙間なく充填することが可能である特徴を損なうことなく、その機械強度を急激に低下させることがない骨再生材調製用組成物を提供できる。本発明の骨再生材調製用組成物では、組成によっては、リン酸カルシウムセメントとほぼ同等の強度の維持が可能であり、従来では適用が困難であった骨欠損部位へも対応させることができる可能性がある。
本発明の骨再生材の概念図。 実施例3に示す、本発明の骨再生材からのゼラチン溶出挙動(質量減少率変化)。 実施例3に示す、本発明の骨再生材からのゼラチン溶出挙動(気孔率変化)。 実施例4に示す、ウサギ大腿骨における骨再生促進試験結果。 実施例4に示す、ウサギ大腿骨における骨再生促進試験結果(架橋型ゼラチン粒子の大きさ(直径200-500μmと直径500-1000μm)依存性。 実施例5に示す、本発明の骨再生材における自家骨への置換試験結果(4週間経過後)。 実施例5に示す、本発明の骨再生材における自家骨への置換試験結果(12週間経過後)。
<骨再生材調製用組成物>
本発明の骨再生材調製用組成物は、水硬性リン酸カルシウムセメント、硬化液および架橋型ゼラチン粒状物を含有する。
上記架橋型ゼラチン粒状物に含まれる架橋型ゼラチン粒子は、多孔性であり、架橋剤由来成分は含まない架橋型ゼラチンの粒子であって、架橋型ゼラチンは、37℃の純水に対する24時間の溶出度が3〜80%の範囲であることが適当である。
本発明は、架橋型ゼラチン粒状物を含有する骨再生材調製用材料を包含し、この材料における架橋型ゼラチン粒子は、多孔性であり、架橋剤由来成分は含まない架橋型ゼラチンの粒子であって、架橋型ゼラチンは、37℃の純水に対する24時間の溶出度が3〜80%の範囲である。
架橋型ゼラチン粒子は、多孔性であり、架橋剤由来成分は含まない架橋型ゼラチンの粒子であって、架橋型ゼラチンの前記溶出度が3〜80%の範囲であることで、水硬性リン酸カルシウムセメント及び硬化液の混合系に架橋型ゼラチン粒子を配合して調製した骨再生材は、生体内に埋入し、硬化した後、徐々にゼラチン粒子が溶出する。その結果、骨再生材の硬化物はゼラチン粒子の溶出に伴って多孔化する。架橋型ゼラチン粒子の質量平均分子量が上記範囲でるために、多孔化は徐々に進行する。そのため、骨再生材硬化物の強度が急激に劣化することはない。また、多孔化により形成された連通孔により血管新生が促進される。その結果、リン酸カルシウムセメントの生体骨への移行が比較的早く進行し、より迅速な骨再生を可能とする。
架橋型ゼラチン粒子の前記溶出度は、骨再生材の硬化物の強度及びその後の溶出性能を考慮すると、より好ましくは20〜70%の範囲であり、さらに好ましくは30〜60の範囲であり、一層好ましくは30〜50%の範囲である。
架橋型ゼラチン粒子の溶出度は、架橋前のゼラチンの質量平均分子量にはほとんど依存せず、主に架橋条件(主に加熱温度と時間)を制御することで適宜調整できる。
架橋型ゼラチン粒子は、架橋剤由来成分は含まない架橋型ゼラチンの粒子であることが、生体に対する安全性を考慮すると適当である。架橋剤由来成分は含まない架橋型ゼラチンの粒子は、ゼラチンを加熱することで調製することができる。
架橋型ゼラチン粒子の原料となるゼラチンは、例えば、ウシ、ブタまたは魚類由来のI型、II型またはIII型のコラーゲンを変性させて得られるものであることができる。さらに、架橋型ゼラチン粒子は、生体骨に埋入することを前提とするので、無菌且つ発熱性物質であるエンドトキシンの含有量を低く抑えたゼラチンであることが特に好ましい。エンドトキシンの含有量を低く抑えたゼラチンは、例えば、日本特許第4404866号公報に記載のもの、市販品としては、日本薬局方「精製ゼラチン」(RM−Gelatin(アールエムゼラチン))(ゼライス(株)製)を挙げることができる。
架橋前のゼラチンの質量平均分子量は、例えば、1,000〜300,000の範囲であり、架橋後の溶解度を考慮すると、例えば、30,000〜200,000の範囲であることができる。架橋条件(主に加熱温度と時間)は、加熱温度は、例えば、100〜170℃の範囲、加熱時間は加熱温度に応じて、加熱前のゼラチンの質量平均分子量を考慮して、適宜決定することできる。例えば、質量平均分子量100,000のゼラチンを用いて、140℃で加熱した場合は、その溶出度は20%未満になる。その加熱時間は、5〜48時間で選定することが可能である。質量平均分子量100,000のゼラチンを用いる 場合、溶解度20%未満の架橋ゼラチンを作成する加熱条件は、140℃以上、5〜48時間、溶解度40%程度の架橋ゼラチンでは110〜120℃、12〜48時間、溶解度80%程度の架橋ゼラチンでは100〜110℃、24〜48時間の加熱で、それぞれ調製できる。
架橋型ゼラチン粒子の原料であるゼラチンは、前述のようにコラーゲンを変性させて得られるものであり、細胞に対する適合性が高いという性質をもつと同時に、100℃から170℃の温度で加熱することによって分子間の脱水縮合(熱架橋)が進行して強固な固化体となる。また一旦熱架橋したものも、生体内に埋入すると再び加水分解し、アミノ酸もしくはオリゴペプチドとなって生体に吸収される性質を有する。
さらに、架橋型ゼラチン粒状物を構成する各粒子は、多孔性であることが、ゼラチン粒子の溶出を容易にするという観点から適当である。架橋型ゼラチン粒子は、例えば、嵩密度が0.05〜0.5g/cm3の範囲であることができる。
多孔性の架橋型ゼラチン粒状物は、初期の強度を維持しつつ、細孔内へ細胞や血管の侵入を早期に可能にすることができるという観点からは、嵩密度は好ましくは0.1〜0.5g/cm3の範囲、0.2〜0.4g/cm3の範囲であることが適当である。
架橋型ゼラチン粒状物は、平均粒子径が例えば、100μm〜5mmの範囲であることができる。この範囲の平均粒子径を有する架橋型ゼラチン粒状物を用いることで、ゼラチン粒状物を配合しても、リン酸カルシウムセメントが本来有する複雑な形状の骨欠損などにも隙間なく充填することができる。架橋型ゼラチン粒状物は、平均粒子径は、好ましくは、200μm〜2mmの範囲である。
本発明では、架橋型ゼラチン粒状物を用いることにより、粒子自身の溶出時間を変化させることが出来る。この溶出時間の変化は、生体骨に埋包されたリン酸カルシウムセメントが多孔質化する時間に直接影響する。
本発明の骨再生材調製用組成物は、水硬性リン酸カルシウムセメント80〜95質量%に対して、例えば、硬化液20〜40質量%および架橋型ゼラチン粒状5〜20質量%を含有することができる。好ましくは水硬性リン酸カルシウムセメント90質量%に対して、例えば、硬化液10〜20質量%および架橋型ゼラチン粒状物10質量%を含有することができる。尚、硬化液を除く固形分全量を100質量%とする。
水硬性リン酸カルシウムセメントは、水硬性を有するリン酸カルシウムを含有する材料であれば、特に制限はない。例えば、第3リン酸カルシウムおよび第2リン酸カルシウム2水和物を主成分とする混合物であることができる。この混合物は、特許文献1に記載されている。
水硬性リン酸カルシウムセメントのその他の例としては、例えば、水酸アパタイト、リン酸マグネシウムなどを挙げることができる。
硬化液は、水硬性リン酸カルシウムセメントが第3リン酸カルシウムおよび第2リン酸カルシウム2水和物を主成分とする混合物である場合には、水溶性多糖類を含有する水溶液であることができる。この水溶液も特許文献1に記載されている。
<骨再生材調製用キット>
本発明の骨再生材調製用キットは、水硬性リン酸カルシウムセメント、硬化液および架橋型ゼラチン粒状物を含み、少なくとも水硬性リン酸カルシウムセメントと、硬化液とは、独立の梱包状態である。
水硬性リン酸カルシウムセメント、硬化液および架橋型ゼラチン粒状物は、前記で説明した材料である。水硬性リン酸カルシウムセメントと硬化液とは、混合することで、水硬性リン酸カルシウムセメントの硬化が開始するため、独立の梱包状態とする。架橋型ゼラチン粒状物も、保存中にその形状や構造を維持するという観点からは、硬化液とは、独立の梱包状態とすることが好ましい。従って、好ましくは水硬性リン酸カルシウムセメントおよび架橋型ゼラチン粒状物は、それぞれ独立の梱包状態である。水硬性リン酸カルシウムセメント、硬化液および架橋型ゼラチン粒状物の梱包量は、前述の本発明の骨再生材調製用組成物における組成比を考慮して適宜決定することができる。
本発明の骨再生材調製用組成物は、リン酸カルシウムセメントと硬化液を、架橋型ゼラチン粒状物を混錬することで、骨再生材を調製することができる。この調製は、施術室において埋入直前に行うことができる。リン酸カルシウムセメントは、リン酸カルシウム系の粉末と水系の硬化液を混錬することで作製する。この粉液比の調整により粘土状やペースト状にすることができ、複雑な形状の骨欠損などにも隙間なく充填することが可能であることが最大の特徴である。粘土状では手指にて所望の形状に成形でき、ペースト状では、シリンジに充填し、適切な注射針により患部奥まで充填することも可能である。
本発明で得られた骨再生材は、リン酸カルシウムセメント単独では適用が困難であった過重による負担の大きい骨欠損部位へも対応であり、さらには、練りこまれた架橋型ゼラチン粒子と細胞との親和性が高く、骨再生の速度や質が改善する機能も付加できる。混錬する架橋型ゼラチン粒状物を用いる場合、その溶解性の変化により、固化した骨再生材中の架橋型ゼラチン粒子が溶出することで徐々に隙間が増え、骨再生材に多孔化を生じさせる。多孔化により血管新生を促進させ、骨再生が早まる(図1)。加えて、埋入直前の硬化体(骨補填剤)は、機械的な強度を維持しつつ、しかも、埋入後は徐々に多孔化することにより、急激な強度低下も抑えられる。
一般的にリン酸カルシウムセメントは、リン酸カルシウム系の粉末と水系の硬化液を混錬することで作製される。この粉液比の調整により粘土状やペースト状にすることができ、複雑な形状の骨欠損などにも隙間なく充填することが可能であることが最大の特徴である。架橋型ゼラチン粒状物を混錬させたリン酸カルシウムセメント材は、架橋型ゼラチン粒状物を混錬していない通常のペーストと同様に、手指にて所望の形状に成形できるだけでなく、シリンジに充填し、適切な注射針により患部奥まで充填することが可能である。
更に、本発明は、使い慣れた市販のリン酸カルシウムセメントにゼラチン粒状物を混ぜるだけなので、汎用性に長けており、煩雑な作業や特別な道具も使用しない。
本発明は、生体組織や細胞との親和性が高く生体内分解性に優れる医薬用のグレードを有する架橋型ゼラチン粒状物をリン酸カルシウムセメントへ配合することにより、埋入後、徐々に架橋型ゼラチン粒子が溶出し、骨補填剤が多孔化する。徐々に多孔化するために、骨補填剤の急激な強度の劣化を防ぐことが可能であるとともに、形成された連通孔により血管新生が促進するため生体骨への移行が早く、より迅速な骨再生を可能とする骨補填剤を提供することができる。また、ゼラチン粒状物を配合しても、リン酸カルシウムセメントが本来有する複雑な形状の骨欠損などにも隙間なく充填することができる性質は損なわない。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。但し、実施例は本発明の例示であって、本発明は実施例に限定される意図ではない。
試験方法
(1)溶出度
架橋型ゼラチンの37℃の純水に対する24時間の溶出度は、以下の要領測定し、算出する。
溶出試験器(理研式PJ32S型)を用いて実施した。その溶出条件は、以下の通りである。サンプル重量1g、シャフト回転数50 rpm、浴槽温度37℃、そして、溶媒はpH調整なしの純水1000mLを用いた。溶出度の算出は、以下のとおりである。非加熱品ゼラチンが全溶解した場合の吸光度(214nm)を100%とし、測定サンプルの吸光度の割合を100分率で表した。つまり、溶出度(%)=24時間後における溶媒の吸光度値/非加熱ゼラチンの全溶解吸光度値×100で求められる。
[実施例1]
架橋型ゼラチン粒状物の作製
ゼラチン(質量平均分子量3〜10万、任意の濃度2〜20%で溶解後、型に入れ、凍結乾燥を行なった。次に、ゼラチン乾燥品を粉砕機により粉砕し、自動ふるい機を用いて整粒することで、粒子径が200〜500μmの範囲および500〜1000μmの範囲の均一な2種類の粒子を得た。この粒子を任意の温度(後述する110℃、130℃又は150℃)で24時間加熱殺菌することで、架橋型ゼラチン粒状物を得た。得られた架橋型ゼラチン粒状物の溶解度は以下のとおりである。加熱温度110℃の場合の溶出度は約40%であり、加熱温度130℃の場合は約20%、加熱温度150℃の場合は3%であった。
[実施例2]
骨再生材の作製
市版品のリン酸カルシウムセメント剤を準備する。今回は、製品名:バイオペックスーR(HOYA株式会社)を利用した。実施例1でゼラチン濃度7%で調製した架橋型ゼラチン粒状物(加熱殺菌温度110℃(溶出度約40%)、130℃(溶出度約20%)又は150℃(溶出度10%未満)、加熱時間24時間)を上記セメント剤に分散してリン酸カルシウムセメントを作製した。リン酸カルシウム粉末と架橋型ゼラチン粒状物を質量比9:1で混合した。この全量を100質量%とした場合、30質量%の硬化液を加えて混練した。その後室温で60秒間以上混練し、粘性がわずかに上昇してペーストが自重で流動しなくなった時点で、患部に埋入するか、あるいは型枠に入れて成形した。
[実施例3]
溶出確認実験
架橋型ゼラチン粒状物(110℃加熱殺菌、溶出度約40%)を10wt%混合した硬化体からのゼラチン溶出の変化を、質量変化(図2A)と気孔率変化(図2B)から追跡した。気孔率の測定は、純水に浸した硬化体を経時的に取り出し、断面を切り出して、架橋型ゼラチン粒子が溶出した凹部分を赤インクで染め視覚化した。染色部分の面積/断面積全体を算出し、気孔面積率とした。48時間まで、その溶出性を追跡したが、徐々に架橋型ゼラチン粒子が溶出していることが、双方のグラフからわかる。なお、水に浸す前から、硬化体は一定の気孔率(27%程度)を有していた。
[実施例4]
ゼラチン粒状物の加熱殺菌温度と粒子径の変化における骨再生への影響
ゼラチン粒状物の加熱殺菌温度、粒子径の変化による骨親和性への影響を確認するために、雄のニュージーランド白色ウサギの左右大腿骨に直径4mm、深さ6mmの孔をあけて、架橋型ゼラチン粒状物(加熱殺菌温度110℃(溶出度約40%)又は130℃(溶出度約20%))を10wt%含むリン酸カルシウム(CPC)硬化体を埋植し、4週間後および8週間後に標本を取り出した。軟X線撮影および脱灰標本を作製して、ヘマトキシリン・エオジン染色を行い、被験物質の石灰化および母床骨との親和性を確認した。その結果、架橋型ゼラチン粒状物を含むCPC硬化体は、既存骨との親和性に優れ、骨の再生能を促した。加熱殺菌温度110℃(溶出度約40%)の方が130℃(溶出度約20%)より結合組織・骨髄・血管の浸潤が早いため、骨の浸潤が早かった。すでに4週後で加熱殺菌温度による差を認め、8週後に置いてもほとんど同じ傾向であった(図3)。一方で、ゼラチン粒子の大きさ(直径200-500μmと直径500-1000μm)による差は、ほとんどなかった(図4)。
[実施例5]
骨置換の比較
雄のニュージーランド白色ウサギの左右大腿骨に直径4mm、深さ6mmの孔をあけて、徐放性を有する架橋型ゼラチン粒状物(加熱殺菌温度110℃(溶出度約40%)又は150℃(溶出度10%未満))を10wt%含むCPC硬化体を埋植して、1週、4週および12週間後に標本を取り出した。試験期間中は体重測定とX線測定で観察し、摘出後は軟X線撮影をおこなった。埋入部の組織標本を作製して、ヘマトキシリン・エオジン染色およびVillanueva Goldner染色を行い、細胞の浸潤状態、被験物質の石灰化および母床骨との親和性を確認した。
その結果、架橋型ゼラチン粒状物添加群では、骨との親和性や担体内の骨形成を4週および12週で認めたが、CPC単独では、12週間経過してもほとんど担体内の骨形成は認めなかった。加熱殺菌温度による差は、110℃(溶出度約40%)群では、4週目で既に硬化体内に結合組織、血管、遊走細胞の増加を認め、石灰化が亢進していた。150℃(溶出度10%未満)群では、4週では遅延していたものの12週では110℃との差を認めなかった。非加熱群では、4週、12週の各観察項目で、110℃群と同じ傾向を示した。ただし、110℃(溶出度約40%)群では正常な骨が被験物質を取り囲んで形成されていたのに対して、非加熱群では骨への置換が悪かった(図5A及びB)。
埋植による内臓臓器の肉眼的異常、埋植部位の骨の異常は認めなかった。
本発明は、骨再生の分野に有用である。

Claims (6)

  1. 水硬性リン酸カルシウムセメント、硬化液および架橋型ゼラチン粒状物を含有する骨再生材調製用組成物であって、
    水硬性リン酸カルシウムセメント90〜95質量%に対して、架橋型ゼラチン粒状物5〜10質量%を含有し(但し、水硬性リン酸カルシウムセメント硬化液と架橋型ゼラチン粒状物の固形分全量を100質量%とする)、
    架橋型ゼラチン粒状物に含まれる架橋型ゼラチン粒子は、多孔性であり、嵩密度が0.05〜0.2 g/cm3の範囲である、前記組成物。
  2. 架橋型ゼラチン粒状物に含まれる架橋型ゼラチン粒子は、架橋剤由来成分は含まない架橋型ゼラチンの粒子であって、架橋型ゼラチンは、37℃の純水に対する24時間の溶出度が3〜80%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
  3. 架橋型ゼラチン粒子は、平均粒子径が100μm〜5mmの範囲である請求項1〜2のいずれか1項に記載の組成物。
  4. 水硬性リン酸カルシウムセメント90〜95質量%に対して、硬化液20〜40質量%および架橋型ゼラチン粒状物5〜10質量%を含有する(但し、硬化液を除く固形分全量を100質量%とする)請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 水硬性リン酸カルシウムセメントが、第3リン酸カルシウムおよび第2リン酸カルシウム2水和物を主成分とする混合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 硬化液が、水溶性多糖類を含有する水溶液である請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
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