JP6004499B2 - クロマチン構造を制御する組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、クロマチン構造を制御するための組成物及び、当該組成物を用いたクロマチン構造の制御方法に関する。
エピジェネティクス
細胞の働きを調節するタンパク質の発現には、遺伝子の転写・翻訳が関わっており(ジェネティクス)、遺伝子の転写・翻訳の調節にはエピジェネティクスが寄与している。さらにエピジェネティクスは、タンパク質により制御されていることから、生命機能に関わるジェネティクス−エピジェネティクス−タンパク質の統合的調節機構は、生命現象の中心的役割を担っていると考えられる。
ひとつの受精卵が増殖分化することで、組織・器官そしてひとつの個体を形成する過程が発生であり、その後、個体は成長し、時間経過とともに老化し、時には癌や生活習慣病などの病気を患うこともある。しかし、細胞や組織の異常が起こっても、自然治癒又は医療を受けることで再生されることがある。また、個体は生殖細胞を通して次の世代にゲノムを伝える遺伝現象がある。これらは、基本的に、同じゲノムをもつ細胞が性質の異なる細胞に変化するというエピジェネティックな生命現象であると理解することができる。
多種多様の細胞の個性はその細胞の遺伝子発現のパターンで決められると考えられている。ゲノム上の総遺伝子数を3万個とすると、ひとつの分化細胞では、約1万個の遺伝子が発現し、残りの遺伝子は不活性化されている。つまり、ゲノム上の遺伝子を選択的に活用することによって、細胞個性がエピジェネティックに確立・維持・消去されることを意味している。
エピジェネティクスの制御システムには、DNAのメチル化、クロマチン、タンパク質の修飾・脱修飾、転写調節因子が遺伝子制御に重要な役割を果たしている。現在までに、DNAメチル化酵素、メチル化DNA結合タンパク質、ヒストン修飾酵素、クロマチン構造因子、クロマチンリモデリング因子、クロマチンインスレーター(クロマチンの境界)等の新しい分子群や機能的な複合体が相次いで発見されている。これらのエピジェネティクス機構によって、遺伝子制御とクロマチン構造の形成がなされるのである。さらに、ゲノム上の個々の遺伝子は、組織特異的に、分化特異的に、状況特異的に発現していることは、遺伝子が独立して制御される仕組みがあることを示している。
クロマチン構造
真核生物の染色体DNAはクロマチンとよばれる高次構造をとっている。クロマチンは、ヌクレオソームの繰り返し構造がらせん状につながったものである。ヌクレオソーム同士はヒストンに巻きついていないリンカーDNAを介してつながっており、さらにパックされた30nmクロマチンファイバーとなる。ヌクレオソームは、H2A、H2B、H3、H4ヒストンタンパク質が2分子からなるヒストンオクタマーに146塩基対のDNAが約2回巻きついた構造をとっている。例えば、ヒトの1個の細胞にあるDNAを引き伸ばすと、約1.8mにもなり、このDNAはヒストンタンパク質に巻き付いてクロマチン構造をつくっている。クロマチンが凝縮して、細胞の核の中に収納されている。高度に凝縮したクロマチンは、ヘテロクロマチンと呼ばれている。
遺伝子が活性化される、即ちオンになるには、このような凝縮したクロマチン構造が緩み、ヒストンが外れたり位置がずれたりしてDNAの二重らせんがほどかれる必要がある。ほどかれることにより、遺伝子の塩基配列が転写されて、RNAとして読み取られる状態になる。
ヒストンタンパク質に、アセチル基やメチル基などさまざまな化学物質が付く修飾が行われていることが知られているが、その役割は分からず、あまり注目されていなかった。近年、ヒストンの特定の場所にアセチル基が付くと、クロマチン構造が緩み、遺伝子がオンになり得る状態になることが示された。ヒストンのメチル化と、メチル基を認識してヘテロクロマチンが形成される過程については、その過程で複雑な仕組みが働いていることが発見されている。分裂酵母のHP1タンパク質には、少しだけ形が異なった2種類のものが知られている。一方はヘテロクロマチン化を促進させ、もう一方は逆にヘテロクロマチン化を抑制する機能を有する。機能が正反対の2種類のHP1が、ある一定のバランスで集まらないと、ヘテロクロマチンが形成・維持されないことが見出されている。なぜこのような複雑な仕組みが必要なのか、明らかにされていない。
ヒトのような高等生物では、ヒストンではなくDNAを直接メチル化することで遺伝子を強く抑え込む仕組みも存在する。このDNAメチル化もヒストン修飾と密接に関連していることが分かってきた。
ヒストン修飾
ヒストンはリジンやアルギニンなどの塩基性アミノ酸を多数持つタンパク質で、アニオン性であるDNAと堅く結合している。ヒストンのN末端はヒストンテールとよばれ、ヌクレオソームコアから少し離れて存在している。ヒストンは主にこのN末端の部分で様々な修飾を受ける。
近年、転写誘導の際に、ヒストン修飾によるクロマチン構造変化が重要な働きをすることが知られてきている。まず、DNA結合性転写活性化因子が、標的遺伝子に結合すると、PCAFやCBP/p300などの転写コアクチベーターがリクルートされる。転写コアクチベーターはヒストンアセチル化酵素(Histone Acetyl Transferase: HAT)活性をもっており、周辺のヒストンをアセチル化する。これが引き金となり、クロマチンリモデリング因子がリクルートされ、クロマチンのリモデリングが誘導され、基本転写因子とRNAポリメラーゼによる転写が開始する。特に、転写誘導とよく相関するアセチル化として、ヒストンH3K9とK14のアセチル化が知られている。ヒストンのリジン残基のアミノ基がアセチル化されると、アミノ基の正電荷が中和され、ヌクレオソーム間の相互作用が緩むと考えられている。さらに、ヒストンはアセチル化以外にもメチル化やリン酸化などの修飾を受け、転写の制御・サイレンシング・クロマチン凝縮などを引き起こすことが知られている。
ヒストンを修飾する酵素としては、上述したHAT以外に脱アセチル化を触媒とするヒストン脱アセチル化酵素(HistoneDeAcetylase:HDAC)がある。細胞内ではHDACの活性が優位であり、クロマチンは通常脱アセチル化状態に保たれており、転写因子の働きで必要な時だけアセチル化され、開くと考えられる。
ヒストンのメチル化は、ヒストンメチル化酵素(HistoneMethylTransferase: HMT)によって誘導される。現在、よく解析されているのはヒストンH3K9のメチル化である。メチル化されたK9をHP1(Heterochromatin Protein 1)が認識して結合する。HP1はDNAメチル化酵素やHDACをリクルートし、また、HP1同士が集合化することにより、周辺クロマチン領域を閉じた状態に変換する。このような機構により、遺伝子座のサイレンシングが起こることが知られている。一方、ヒストンH3K4のメチル化は、反対に、転写の活性化と相関することが知られている。
一般に、メチル化反応とは逆の脱メチル化反応は非常に起こりにくいと考えられていたが、近年ヒストンの脱メチル化酵素も報告された。
DNAメチル化
真核生物ゲノムDNAのメチル化修飾は遺伝情報の発現を制御する機構として進化を遂げてきた。ゲノムDNAのメチル化はエピジェネティックな要因の一つであるが、その状態は塩基配列を新たにメチル化して模様を描く、細胞が増殖する過程で維持する、必要に応じて消去するという過程の総和として決定される。特にDNAのメチル化修飾に関わるDNAメチルトランスフェラーゼとその相同分子としてこれまで5つの遺伝子が報告されている(Dnmt1、Dnmt2、Dnmt3a、Dnmt3b、Dnmt3L)。しかし、ゲノムのどの領域がどのように認識されてメチル化されるのかについては、これからの解決されるべき問題が多く残されている。
DNAのメチル化修飾は、遺伝子の実体である塩基配列を変えることなく、すなわち、遺伝子のコードするアミノ酸配列情報を変えることなくその発現を制御する。また、いったん付けられたゲノム上のメチル化模様は安定に次世代の細胞に受け継がれる。一方でメチル化修飾は必要に応じてはずされる可逆性ももっている。遺伝情報の発現制御機構を理解するうえで、ゲノムDNAのメチル化がどのように調節されているのかを理解することは重要である。
真核生物では一部の生物の例外を除いてゲノムDNAのシトシン塩基(C)の5位がメチル化修飾をうける。動物では脊椎動物に進化を遂げたときゲノムの塩基量が増加したのと時を同じくしてゲノム中のシトシンメチル化修飾の程度が増えた。脊椎動物のゲノムDNAのメチル化はシトシン塩基の次にグアニン塩基が続くCpG配列中のシトシン塩基に付加される。マウスのゲノムDNAではCpG配列の約80%がメチル化修飾を受けている。このメチル基はS−アデノシル−L−メチオニンからDNAメチルトランスフェラーゼの働きで転移される。
マウスのゲノムを俯瞰してみると、G+C含量が相対的に高い領域が島状に散在しこれをCpGアイランドと呼ぶが、多くの場合、ハウスキーピング遺伝子のプロモーターとなっていて低メチル化状態にある。一般に、転写されている遺伝子のプロモーター領域は低メチル化状態にあり、不活性な遺伝子は高度にメチル化されている。プロモーター領域に存在する転写因子の結合モチーフがメチル化されると、Sp1など一部の転写因子を除いてほとんどの転写因子はDNAに結合できなくなる。また、メチル化されたDNAを特異的に認識して結合するタンパク質が存在し、このメチル化DNA結合タンパク質とヒストン修飾を介して転写が阻害される。DNAメチル化は長期的に遺伝子をサイレンシングするための一種の記憶として機能している。
メチル化されたDNAを特異的に認識して結合するタンパク質の多くはヒストン脱アセチル化酵素を含む転写抑制複合体の一員か、あるいはこれら複合体と結合して、最終的にはヒストンを脱アセチル化、メチル化することにより転写を抑制する。DNAメチル化とヒストン修飾には密接な関係が存在することは確かであるが、お互いの間の相互作用に関わる分子機構についてはわからないことがまだまだ多く、解決されるべき重要課題である。
以上、クロマチン構造変化の制御はヒストン又はDNAの修飾が関与していると考えられているが詳細は明らかではない。クロマチン構造を人為的に制御するための手段も確立していない。
The International Journal of Biochemistry & Cell Biology 41(2009)199−213 Journal of Controlled Release 97(2004)345−356
本願発明は、クロマチン構造を人為的に制御する方法及び当該方法に使用するための組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記問題解決のため鋭意研究に努めた結果、特定の高分子、あるいは、ヒストンのアセチル化若しくはメチル化を制御する2種類以上の物質を含む担体の投与により、クロマチン構造が制御されることを見出し、本願発明を想到した。
本発明は、好ましい態様として以下の態様を含む。
[態様1] 以下の
1)両性高分子、アニオン性高分子、及び非イオン性高分子からなる群から選択される、高分子であって、以下のいずれかの主鎖骨格を有する高分子;
あるいは、
2)
i)ヒストンアセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
ii)ヒストンメチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
iii)ヒストン脱アセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
iv)ヒストン脱メチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
v)ヒストンアセチル化阻害剤;
vi)ヒストン脱アセチル化阻害剤;
vii)ヒストンメチル化阻害剤;及び
viii)ヒストン脱メチル化阻害剤
からなるグループから選択される、2種類またはそれ以上の物質を包摂する担体を含む、クロマチン構造を制御するための組成物。
[態様2]
クロマチン構造を弛緩するための、態様1に記載の組成物。
[態様3]
高分子が、
a)カルボキシメチル化ポリビニルイミダゾール、
b)ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリグルタミン酸、カルボキシルメチル化ポリヒスチジン、若しくはポリアスパラギン酸、又は
c)PEG又は糖鎖
あるいは、これらのブロック共重合体、グラフト共重合体、又はデンドリマー体、から選択される、態様1又は2に記載の高分子。
[態様4]
高分子の分子量が、10,000−2,000,000である、態様1−3のいずれか1項に記載の組成物。
[態様5]
担体が、ポリエステル、リン酸カルシウム、又はポリアミノ酸を含む、態様1−4のいずれか1項に記載の組成物。
[態様6]
担体が、さらに、DNA脱メチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター、DNAメチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター、あるいは、DNAメチル化酵素阻害剤、を含む、態様1−5のいずれか1項に記載の組成物。
[態様7]
態様1−6のいずれか1項に記載の組成物をin vitro、ex vivo又はin vivoで投与することにより、クロマチン構造を制御する方法。
本発明により、クロマチン構造を人為的に制御することが可能になった。これにより、遺伝子の塩基配列を操作することなく、より容易にその発現の制御が可能となる。
[図1] 図1は、人工クロマチンモデル(DNA/コアヒストン複合体)の形成をアガロース電気泳動で調べた結果を示す。
[図2] 図2は、高分子によるクロマチン構造の弛緩効果を、アガロース電気泳動後の蛍光強度で調べた結果を示す。
[図3] 図3は、高分子PAAによるクロマチン構造の弛緩効果について、翻訳活性を調べた結果を示す。
[図4] 図4は、高分子CM−PVIm及びPMAAによるクロマチン構造の弛緩効果について、翻訳活性を調べた結果を示す。
[図5] 図5は、本発明のリン酸カルシウム複合体中のコエンザイムA(CoA)の含有量を示す。
[図6] 図6は、本発明のリン酸カルシウム複合体を用いた場合の、各ヒストンにおけるアセチルリジン量の変化をウエスタンブロットで調べた結果を示す。
CaP:カルシウムリン酸複合体;
CoA:コエンザイムA
SIRT2:SIRT2遺伝子を含むプラスミドDNA
DNA:プラスミドDNA
AA:アナカルジン酸
[図7A] 図7は、実施例12の共焦点顕微鏡観察の結果を。図7A−Dは各々、(A)細胞核を染色したDAPIによる蛍光像、(B)FITCラベル化PLD−EDA−β−CDによる蛍光像、(C)微分干渉像、そして、(D)A−Cの画像を結合させたものである。
[図7B] 図7は、実施例12の共焦点顕微鏡観察の結果を。図7A−Dは各々、(A)細胞核を染色したDAPIによる蛍光像、(B)FITCラベル化PLD−EDA−β−CDによる蛍光像、(C)微分干渉像、そして、(D)A−Cの画像を結合させたものである。
[図7C] 図7は、実施例12の共焦点顕微鏡観察の結果を。図7A−Dは各々、(A)細胞核を染色したDAPIによる蛍光像、(B)FITCラベル化PLD−EDA−β−CDによる蛍光像、(C)微分干渉像、そして、(D)A−Cの画像を結合させたものである。
[図7D] 図7は、実施例12の共焦点顕微鏡観察の結果を。図7A−Dは各々、(A)細胞核を染色したDAPIによる蛍光像、(B)FITCラベル化PLD−EDA−β−CDによる蛍光像、(C)微分干渉像、そして、(D)A−Cの画像を結合させたものである。
本発明は、クロマチン構造を制御するための組成物、及び当該組成物を用いたクロマチンを制御する方法に関する。
本願発明の組成物は、
1)両性高分子、アニオン性高分子、及び非イオン性高分子からなる群から選択される、高分子であって、以下のいずれかの主鎖骨格を有する高分子;
あるいは、
2)
i)ヒストンアセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
ii)ヒストンメチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
iii)ヒストン脱アセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
iv)ヒストン脱メチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
v)ヒストンアセチル化阻害剤;
vi)ヒストン脱アセチル化阻害剤;
vii)ヒストンメチル化阻害剤;及び
viii)ヒストン脱メチル化阻害剤
からなるグループから選択される、2種類またはそれ以上の物質を包摂する担体を含む。
1.両性高分子、アニオン性高分子、及び非イオン性高分子からなる群から選択される、高分子
本願発明の高分子は、両性高分子、アニオン性高分子、及び非イオン性高分子からなる群から選択される。
本発明の高分子は、以下のいずれかの主鎖骨格の繰り返し構造を有する。
特に好ましい骨格構造は、−(CH−CH)−である。生体への適用性から、以下の骨格構造
も有用である。
主鎖骨格の繰り返し数は特に限定されない。骨格構造、側鎖構造等に応じて適宜決定される。
「両性高分子」とは、側鎖にアニオン性基とカチオン性基の双方の置換基を有し、全体では中性である高分子、あるいは、側鎖にアニオン性部分とカチオン性部分の双方を有する置換基を有し、全体では中性である高分子である。両性高分子は、一分子内にアニオン性部分とカチオン性部分の双方を有するため、双方の特徴を有する。また、アニオンとカチオンの電荷のバランスがとれることにより、非イオン性(生体適合性の付与)の特徴も有しうる。両性高分子に含まれるアニオン性部分とカチオン性部分の種類は各々1種類ずつであっても、複数種類含んでもよい。
両性高分子中の側鎖としての「アニオン性基」は、例えば、以下のような構造を有しうる。
Aは、アニオン性部分と主鎖部分を結合するリンカー部分である。リンカー部分は、枝分かれしていてもよい、炭素数1−10、好ましくは炭素数1−5、より好ましくは炭素数1のアルキル基;炭素環、好ましくは炭素数5−7の炭素環、より好ましくは6員環;あるいは、窒素、酸素若しくは硫黄を含む複素環、好ましくは5−7員の複素環、より好ましくは5員の複素環である。アルキル基、炭素環又は複素環は、所望により1ないし複数のアルキル基、アリール基、ハロゲン基、各種アニオン性基等により置換されていてもよい。例えば、炭素環、複素環等の環が、−COOH等のアニオン性基で置換された態様も含む。
一態様として、リンカーはエチル基、イミダゾリル基、あるいは、その他の4級窒素を有する官能基から選択される。
両性高分子中の側鎖としての「カチオン性基」には、以下のような態様が含まれる。
[上記式中、Aは、アニオン性基で定義した通りのリンカーであり;
、R及びRは、枝分かれしていてもよい、炭素数1−10、好ましくは炭素数1−5のアルキル基である]
「側鎖のアニオン性部分とカチオン性部分の双方を有する置換基」は、例えば、以下のような態様が含まれる。
一例として、窒素を含む複素環、例えば、イミダゾ−ル基の1つの窒素原子が主鎖結合し、もう一方の窒素原子がアニオン性基で置換されている態様を含む。アニオン性基は、上述したものから適宜選択しうる。両性高分子中の、窒素原子のアニオン性置換基の一態様は、カルボキシメチル基である。
両性高分子は、一態様として、カルボキシメチル化ポリビニルイミダゾールを含む。
「アニオン性高分子」は、側鎖にアニオン性基を有する高分子である。アニオン性高分子中の「アニオン性基」は、両性高分子に関して上述したアニオン性基から適宜選択しうる。
アニオン性基は一態様として、カルボキシル基、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基、硝酸基、ボロン酸基を含む。
アニオン性高分子は一態様として、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリグルタミン酸、カルボキシルメチル化ポリヒスチジン、又はポリアスパラギン酸を含む。
なお、アニオン性高分子を用いる場合、アニオン性高分子中の主鎖骨格と側鎖の置換基の反発を防ぐためにスペーサーを含んでもよい。スペーサーとしては、アニオン性基を持たない、若しくは大きな疎水基を持たない、という性質を有するものであれば特に限定されない、例えば、ポリエチレンジアミン、ポリエチレングリコール(PEG)などが使用されうる。
「非イオン性高分子」は、アニオン性部分、カチオン性部分のいずれも有しない高分子である。非イオン性高分子も、水素結合性、あるいは疎水結合性を有する、という条件を満たすものであれば、クロマチンに作用し、クロマチンの構造を制御しうる。非イオン性高分子は、ポリエチレングリコール(PEG)、糖鎖など水素結合性を有する高分子等が含まれる。
本願発明の組成物に含まれる高分子は、上記特定した両性高分子、アニオン性高分子、又は非イオン性高分子の、ブロック共重合体、グラフト共重合体、又はデンドリマー体であってもよい。「ブロック共重合体」は、2種類以上の高分子が共有結合でつながり長い連鎖になった分子構造の共重合体を意味する。「グラフト共重合体」は、ある高分子に、別種の高分子が枝状に結合した分子構造の共重合体を意味する。「デンドリマー体」は、中心から規則的に分岐した構造を有する樹状の高分子を意味する。デンドリマー体は、コアと呼ばれる中心分子とデンドロンと呼ばれる側鎖部分から構成される。
本発明の高分子量は、特に限定されないが、好ましくは10,000−2,000,000、より好ましくは、25,000−1,000,000である。
限定されるわけではないが、本発明で利用する高分子にシクロデキストリン、Meβシクロデキストリン等のシクロデキストリン誘導体などを結合させるとさらに好ましい。
なお、追加成分として、カチオン性高分子を、両性高分子、アニオン性高分子、又は非イオン性高分子、あるいは、担体とともに用いてもよい。「カチオン性高分子」は、側鎖にカチオン性基を有する高分子である。カチオン性高分子中の「カチオン性基」は、両性高分子に関して上述したカチオン性基から適宜選択しうる。カチオン性高分子は一態様として、1本鎖であるステアリルアミン、二本鎖のカチオン性脂質であるN−[1−(2,3−ジオレイオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチル アンモニウム メチル硫酸(DOTAP)を含む。
2.担体
本発明の組成物は、
i)ヒストンアセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
ii)ヒストンメチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
iii)ヒストン脱アセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
iv)ヒストン脱メチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
v)ヒストンアセチル化阻害剤;
vi)ヒストン脱アセチル化阻害剤;
vii)ヒストンメチル化阻害剤;及び
viii)ヒストン脱メチル化阻害剤
からなるグループから選択される、2種類またはそれ以上の物質を包摂する担体を含むものでもよい。
本発明の組成物は、上記高分子及び担体の双方を含む態様も含まれる。
i)−viii)の物質はいずれもクロマチンのヒストンのアセチル化、脱アセチル化、メチル化、あるいは脱メチル化に関与する物質である。ヒストンはリジン残基のアミノ基がアセチル化されるとアミノ基の正電荷が中和され、ヌクレオソーム間の相互作用が緩むと考えられている。よって、ヒストンのアセチル化によりクロマチン構造が弛緩し、転写が活性化される。脱アセチル化により反対にクロマチン構造は凝縮する。i)及びvi)はクロマチン構造を弛緩する作用を有する。一方、iii)及びv)は、クロマチン構造を凝縮させる構造を有する。一方ヒストンのメチル化は、H3K9がメチル化されるとクロマチンを凝縮させ、ヘテロクロマチンを形成することが知られており、位置に依存すると考えられる。一方、ヒストンH3K4がメチル化されると転写が活性化する。
本発明では、担体を用いて上記物質の2種類またはそれ以上を投与することを特徴とする。「2種類またはそれ以上の物質を包摂する担体」とは、1つの担体に2種類またはそれ以上の物質を含み態様も、2種以上の担体に2種類またはそれ以上の物質を含み態様も含む。クロマチンを制御する物質を2種類以上投与することにより、より強力な又は複雑な制御が可能となる。例えば、組成物には2種類以上の遺伝子を含ませてもよいし、遺伝子と化合物(阻害剤)の組み合わせでもよい。
本発明の担体は、無毒若しくは低毒で生体への適用が可能である、発現ベクター及び/又は阻害剤を配合しうる、i)−viii)の物質を細胞の核まで運搬できる、という条件を満たすものであれば任意の公知の担体を使用可能である。態様において、担体は、ポリエステル、リン酸カルシウム、又はポリアミノ酸を含む。
「ポリエステル」は、多価カルボン酸とポリアルコールとの重縮合体であり、一般に、ポリアルコールと多価カルボン酸を反応(脱水縮合)させて作る。ポリエステルは一態様において、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体等生分解性高分子を含む。
「リン酸カルシウム」は、低毒性でかつ生分解性である。特に遺伝子を含む発現ベクターを担体に含ませるのに好ましい。同様の機能を有するものとして、リン酸ナトリウム等も本発明に使用しうる。
「ポリアミノ酸」は、複数のアミノ酸がアミド結合した高分子で、ポリペプチドともいう。アミノ酸は生体のタンパク質の構成成分であり、ポリアミノ酸は無毒又は低毒である。本明細書の実施例で記載したようなアセチル化ポリリジン(AcPLL)、ハイパーブランチポリリジン(高度に枝分かれしたポリリジン)、デンドリティックポリリジン(DPK)も、本発明の担体として使用しうる。さらに、ポリリジンは細胞の核においてポリリジンにヒストンアセチル化酵素が作用することにより、ヒストンアセチル化阻害剤としても作用しうる。また、アセチル化ポリリジンは逆に、ヒストン脱アセチル化阻害剤として作用しうる。
「ヒストンアセチル化酵素」(HAT)は、ヒストンのリジン側鎖のアセチル化を促進する酵素である。HATは公知であり、例えば、ヒト等においてタンパク質のアミノ酸配列、並びに当該タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列が知られている。例えば、ヒトヒストンアセチル化酵素(KAT2B)遺伝子の塩基配列は、NCBIデータバンクのアクセッション番号NM_003884に開示されている。KAT2Bは、別名「CAF」と呼称されることもある。
「ヒストンメチル化酵素」(HMT)は、ヒストンにメチル基を促進する酵素である。ヒストンメチル化酵素は公知であり、例えば、ヒト等においてタンパク質のアミノ酸配列、並びに当該タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列が知られている。例えば、ヒトヒストンメチル化酵素(EHMT2)の変異体(G9a)遺伝子の塩基配列は、NCBIデータバンクのアクセッション番号NM_006709に開示されている。
「ヒストン脱アセチル化酵素」(HDAC)は、ヒストンのリシン側鎖のアセチル基を加水分解し、リシンに変換する酵素である。HDACは公知であり、例えば、ヒト等においてタンパク質のアミノ酸配列、並びに当該タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列が知られている。例えば、ヒトヒストン脱アセチル化酵素(HDAC3)遺伝子の塩基配列は、NCBIデータバンクのアクセッション番号NM_029678に開示されている。ヒトヒストン脱アセチル化酵素(SIRT2)遺伝子の塩基配列は、NCBIデータバンクのアクセッション番号NM_034146に開示されている。
「ヒストン脱メチル化酵素」は、ヒストンに結合したメチル基を加水分解する酵素である。
各遺伝子によってコードされる酵素のアミノ酸配列は、好ましくは天然のタンパク質の配列である。あるいは、各酵素の機能が維持される範囲内であれば、その変異体も本発明に使用しうる。具体的には天然のアミノ酸配列又は当該アミノ酸をコードする塩基配列に対して、好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%の配列相同性を有する。
2つの配列の同一性%は、視覚的検査および数学的計算によって決定してもよい。あるいは、2つのタンパク質配列の同一性パーセントは、Needleman,S.B.及びWunsch,C.D.(J.Mol.Biol.,48:443−453,1970)のアルゴリズムに基づき、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラムを用い配列情報を比較することにより、決定してもよい。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)Henikoff,S.及びHenikoff,J.G.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:10915−10919,1992)に記載されるような、スコアリング・マトリックス、blosum62;(2)12のギャップ加重;(3)4のギャップ長加重;及び(4)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。
あるいは、天然のアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸残基が欠失、付加、または置換されているアミノ酸配列を有するものであってもよい。このような天然のタンパク質と相同なアミノ酸配列を有し、天然の酵素と同一の機能を有するタンパク質をコードする遺伝子も本発明において使用可能である。限定されるわけではないが、変更可能なアミノ酸数は、1ないし100アミノ酸残基、1ないし80アミノ酸残基、1ないし50アミノ酸残基、1ないし30アミノ酸残基、1ないし20アミノ酸残基、1ないし15アミノ酸残基、1ないし10アミノ酸残基、1ないし5アミノ酸残基である。公知の部位特異的突然変異法で修飾可能な数のアミノ酸残基、例えば、1ないし10アミノ酸残基、1ないし8、1ないし5、1ないし3アミノ酸残基がより好ましい。
「発現ベクター」は、遺伝子を発現するための、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター等、公知のベクターを使用しうる。生体に投与することを目的とするため、生体に対し無毒若しくは低毒性のベクターが好ましい。本発明の組成物により2種類以上の遺伝子を発現させることを目的とする場合、各遺伝子を含む2種類以上の発現ベクターを用いてもよく、あるいは、1つの発現ベクターに2種類以上の遺伝子を含ませたものを用いてもよい。
「ヒストンアセチル化阻害剤」は、公知のものを使用しうる。例えば、コエンザイムA(CoA)、アナカルジン酸(AA)、クルクミン、MB−3を含む。
「ヒストン脱アセチル化阻害剤」は、公知のものを使用しうる。例えば、バルプロ酸(VPA)、トリコスタチンA(TSA)、ボリノスタット、MS−275を含む。ヒストン脱アセチル化阻害剤は、癌細胞に対して、細胞周期の停止、分化誘導、アポトーシスなどの活性を示し、癌細胞の増殖に影響を与えることが知られている。
「ヒストンメチル化阻害剤」は、公知のものを使用しうる。例えば、ケトシン、BIX−01294、DZNep、AMI−1を含む。
「ヒストン脱メチル化阻害剤」は、公知のものを使用しうる。例えば、トラニルシプロミン、を含む。
阻害剤は、発現ベクターとともに担体中に含ませて組成物を構成してもよく、あるいは、担体とは別に、(例えば培地中に、あるいは生体に)直接投与してもよい。
3.クロマチン構造を制御する方法
本発明は、上述した本発明の組成物をin vitro、ex vivo又はin vivoで投与することにより、クロマチン構造を制御する方法を含む。
上記高分子と担体の双方を含む組成物を投与してもよく、あるいは、上記高分子を含む組成物と担体を含む組成物の2種類の組成物を投与する態様も含む。
クロマチン構造の制御とは、クロマチン構造を弛緩、あるいは逆に凝縮することを指す。クロマチン構造が「弛緩する」とは、クロマチンが凝縮した状態の高次構造が緩み、遺伝子の転写が進みやすくなる、即ち、転写が活性化しオンの状態になることを意味する。クロマチン構造が「凝縮する」とは、弛緩とは逆に、クロマチンが凝縮した高次構造をとり、転写が生じにくいオフの状態になることを意味する。
クロマチンの「弛緩」及び「凝縮」は、例えば、遺伝子の転写及び/又は翻訳活性を測定することにより、調べることが可能である。遺伝子の転写及び/又は翻訳活性は、公知の方法を用いて確認することが可能である。例えば、蛍光タンパク質の発現により蛍光測定することができる。あるいは、より直接的にクロマチン構造を観察することにより確認してもよい。
本願発明の高分子及び担体の投与量は特に限定されない。当業者は、高分子、担体、担体に含まれる物質等の種類、投与対象の状態等に応じて適宜量を決定することが可能である。本発明の両性高分子及びアニオン性高分子を用いる場合、アニオン数とクロマチン構造中のDNAの割合は、クロマチン構造の弛緩作用の効果の大きさに影響を与える可能性がある。限定されるわけではないが、インビトロの無細胞系において、本発明の両性高分子及びアニオン性高分子を用いる場合、クロマチン構造中のDNAと比較して高分子のアニオン数が2倍の場合にクロマチン構造が最も弛緩することが観察された。
4.DNAメチル化の制御
クロマチン構造のヒストンの修飾とは別に、DNAのメチル修飾も遺伝子情報の発現の制御に関与していることが知られている。具体的には、クロマチン構造のメチル化により転写が不活性化し、脱メチル化により転写が活性化する。よって、ヒストン修飾に加えて、DNAのメチル修飾の制御によりさらに遺伝子発現についてより強力、複雑又は柔軟な制御が可能である。
本発明において、担体が、さらに、DNA脱メチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター、DNAメチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター、あるいは、DNAメチル化酵素阻害剤、を含ませてもよい。
DNAのメチル化修飾に関し、DNAメチルトランスフェラーゼとその相同分子としてこれまで5つの遺伝子が報告されている(Dnmt1、Dnmt2、Dnmt3a、Dnmt3b、Dnmt3L)。これらの遺伝子の塩基配列及びコードされるアミノ酸配列は公知であり、各々、NCBIデータバンクのアクセッション番号NM_001130823、NM_176085、NM_022552、NM_001207055、NM_013369として、開示されている。
発現ベクターは、ヒストンアセチル化酵素をコードする遺伝子等に関して上述した公知の発現ベクターを用いることができる。
「DNAメチル化酵素阻害剤」は公知のものを使用しうる。例えば、5−アザシチジン、5−アザデオキシシチジン、ゼブラリン、ヒドララジン、を含む。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1 人工クロマチンの作成
本実施例ではクロマチン構造を模倣した人工クロマチンモデルを作製した。
人工クロマチンはDNAの代替としてpGL3と呼ばれるプラスミドDNAを使用し、購入したヒストンはHeLa細胞のCore Histoneを使用した。プラスミドDNAは、環状であること、分子量が小さい点で染色体のDNAと相違する。しかしながら、取り扱いが容易であり発現する遺伝子が任意に組み込めることから、遺伝子発現の評価が容易である等の利点があるため、本実施例において利用した。
また、in vitro のクロマチン形成反応におけるDNA とコアヒストンの比が重要であり、一般に新しいDNA とヒストンを調製するごとにtitration する必要がある。本実施例において、アガロースゲル電気泳動を用いてフリーなDNAが見られず、複合体のバンドのみが確認できるヒストン/DNA重量比を最適な重量比として決定した。
実施例3以降において、本実施例において作製した人工クロマチンを用いた。その際には、アガロースゲル電気泳動により高分子のクロマチン構造を弛緩する最適な濃度を決定した。その後、その最適濃度による翻訳活性評価をすることでそれぞれの高分子のクロマチン構造の弛緩能を間接的に評価した。
1−1)プラスミドDNAの精製
pGL3プラスミドDNAを大腸菌を用いて大量培養した。プラスミドDNA複製キット(Qiagen社)を用いて、精製し、得られたプラスミド量を吸光度から算出した。吸光度は、UV/Vis 分光光度計(日本分光社製)を用いて測定した。UV/Vis 分光光度計は分子の電子エネルギー遷移を起こす紫外から可視部(200nm〜780nm)の波長の光を用いて分光吸光を行う装置である。
得られたプラスミドDNA濃度は、3つのサンプルを測ったところ、以下のようになった。実施例3以降の翻訳系を用いた実験系では、濃度が高い方(0.6mg/mL)、アガロースゲル電気泳動による実験系では、濃度が低い方(0.24mg/mL)を用いて実験を行った。
1−2)人工クロマチンの作製
1−1)で精製したプラスミドDNA(T7 Luciferase control DNA(0.6mg/mL))を用いた。人工クロマチンはそれぞれの重量比(ヒストン/DNA=0.213,0.43,0.85,1.7,2,4)になるように調整し、1時間インキュベートすることで作製した。最適な重量比はアガロースゲル電気泳動により決定した。結果を図1に示す。
DNA/ヒストンが複合体を形成していると、電荷が中和され、あまり流れずに注入部位付近にバンドが見られると考えて実験を行った。図1に示すように、重量比が1.7、2において複合体のバンドが見られたが、フリーなDNAのバンドも観察されてしまった。一方で、重量比が4において複合体のバンドのみが観察された。
これらの3つのサンプルを用い、in vitro翻訳系により転写・翻訳を試みた。DNA/ヒストンがきちんと生体内のクロマチンのように形成している場合、裸のDNAよりも発現量が低下すると考えたが、DNA/ヒストン重量比が1.7、2においてはポジティブコントロールであるDNAのみのサンプルと同等の発現量が得られた。しかし、重量比が4の場合、発現量が1/10倍となったので、このサンプルが本研究の弛緩実験に用いる転写不活性型のクロマチン構造として最適であるとして、この系を用い、実施例3以降の実験を行った。
実施例2 高分子の合成
本実施例では、クロマチン制御に用いるための高分子を合成した。プロトンスポンジ効果と細胞膜融合活性により効率的なエンドソーム脱出が可能なカルボキシル基を有する点を考慮し、本実施例では以下の5つのアニオン性および両性高分子を選択した。
2−1)カルボキシメチル化ポリビニルイミダゾール(CM−PVIm)の合成
ポリビニルイミダゾール(PVIm)の合成
ラジカル重合開始剤としてV−65(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))を用いたラジカル重合によりポリビニルイミダゾール(PVIm)をラジカル重合する。V65は45℃で温度応答的に不対電子を持つので、C=C結合を有する1−ビニルイミダゾールを添加することでラジカル重合を行った。
1−ビニルイミダゾール300mg(3.19mmol、密度1.04g/mL、288.5μL)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)2400μLに溶解させた。V65 15.8mg(0.064mmol)をDMF300μLに溶解させた。二種の溶液を混合させた後、ラジカル反応中におけるラジカルの消失を防ぐために溶液中の酸素を除去する必要があるため、窒素によるバブリングを40min行った。ラジカル発生温度である45℃に予め設定したウォーターバスで24h撹拌せずにインキュベートした。アセトン80mL中に滴下することで再沈殿を行った。2600rpmで5min遠心分離し、上澄みのアセトンを除去した。少量のDMFに溶解させた後、再度アセトン80mLによる再沈殿、遠心分離、上澄みの除去を行った。ドラフト内で24時間静置することでアセトンを揮発させた。得られた生成物をHO(20mL)に溶解させた後、MWCO:1000の透析膜を用いて2日間の透析を行った。凍結乾燥を施して得られた物質を回収した。収量57.97mg、収率19.32%であった。
カルボキシメチル化ポリビニルイミダゾール(CM−PVIm)の合成
上記の通り合成したポリビニルイミダゾール(PVIm)(30mg)をHO(8mL)に溶解させた。ヨード酢酸40mgをHO(2mL)に溶解させた。トリエチルアミン(TEA,44μL,0.32mmol)をPVIm水溶液に添加した後、ヨード酢酸水溶液を加え、40℃において24時間撹拌した(Fig.2−2)。MWCO:1000を用いた透析を2日間行った後に凍結乾燥により得られた物質を回収した。
PVImおよびCM−PVImは各々H−NMRによる構造確認を行った。具体的には、PVIm 3mgを重水700μLに溶解させ測定した。
CM−PVImは、以下のように測定した。CM−PVIm 3mgを重DMSOに添加、水素結合を解消するためにトリフルオロ酢酸を数滴添加した。さらにカウンターイオンを交換するためヘキサフルオロリン酸アンモニウム(NHPF)を添加し測定した。いずれも、目的とする化合物の合成が確認できた。
2−2)ポリメタクリル酸(PMAA)の合成
減圧蒸留したメタクリル酸(関東化学株式会社)16.73mLをジメチルホルムアミド(DMF)133.7mLに混合した。混合物にDMF17mLに溶解したラジカル重合開始剤であるV−65 881.6mgを加え、攪拌しながら一晩、窒素バブリングを行った。その後、窒素雰囲気下で50℃、24時間反応させた。
合成したポリマーは、アセトンに滴下することで再沈精製を行った。その後、50℃で12時間真空乾燥を行った。しかし、ポリマーは、非常にゲル化しやすく、再沈溶媒であるアセトンを内包してしまう。そのため、乾燥したポリマーを脱イオン水に溶解させ、分画分子量(MWCO)が1,000の膜を用いて、2日間水中で透析を行い、凍結乾燥により回収した。
2−3)カルボキシメチル化ポリヒスチジン(CM−PLH)の合成
ポリ−L−ヒスチジン(PLH)(50mg)とヨード酢酸(I−CHCOOH)(PLH×0.8倍量:40mg)をそれぞれHO 8mL、2mLに溶解させ、1N NaOHで水溶液をpH4.5〜5に調整し室温で24時間攪拌した。その後、さらにHO(0.2mL)に溶解させたヨード酢酸(40mg)を添加し、水溶液をpH4.5〜5に保ち、再び24時間、室温で攪拌した。その後、同様の操作を行い、合計3日間反応を行った。得られた水溶液をMWCO:1000の透析膜で、3日間透析(1LのHO中に5mL PBS(−)(×20)を添加)後、サンプルを回収する前にHOのみで2時間透析を行った。その後、凍結乾燥によって白色粉末を回収した。
GFCは、キャリア:0.5M CHCOOH,0.3M NaSO,流速:1.0mL/分,カラム: Shodex OHpak SB−804 HQで測定を行った。H NMRは、塩酸(5μL)を添加したDO(700μL)で測定を行った。
GFCにより数平均分子量:約6000、H NMRによりカルボキシメチル基修飾率:約50mol%と見積もった。
実施例3 高分子による人工クロマチン弛緩実験
本実施例では、高分子による人工クロマチン弛緩実験を行った。
3−1)材料
高分子は、カルボキシメチル化ポリビニルイミダゾール(CM−PVIm)、ポリメタクリル酸(PMMA)及びカルボキシメチル化ポリヒスチジン(CM−PLH)は実施例2で合成したものを使用した。ポリグルタミン酸(PLE)はSigma Aldrichより購入した。ポリアクリル酸(PAA:分子量MW=25,000又は1,000,000)は和光純薬工業株式会社より購入した。
3−2)アガロースゲル電気泳動による評価
実施例1で作製した人工クロマチン2.2μLに、各高分子をそれぞれDNAのアニオン数と比較してアニオン数が、2,4,8倍となるように添加し、15分間インキュベートした。反応物を、1% アガロースゲル, pH7.4(溶媒 50mMリン酸バッファー(PB))を用いて、Mupid(登録商標)−2xにより電圧50V条件下で、20分間電気泳動を施した。その後、Quantity Oneにより各高分子が弛緩するのに最適な濃度を決定した。各高分子は、DNAと比較してアニオン数が2,4,8倍となるように添加した。
結果を、図2に示す。図2に示した通り、アニオン性高分子(PAA、PMAA、CM−PLH及びPLE)を添加した場合、未添加の場合よりも複合体のバンドの蛍光強度のほうが強いことが分かった。この事実から、すべてのアニオン性高分子により人工クロマチンが弛緩されていることが示唆された。
両性高分子であるCM−PVImにおいてはアニオン性高分子とは異なった傾向が見られた。CM−PVImを添加した人工クロマチンは未添加のものと比べ蛍光強度が低かった。両性高分子はアニオン性高分子と異なるメカニズムで弛緩されていることが考えられる。アニオン性高分子はヒストンのみに相互作用し、DNA−ヒストン間の相互作用を弱めるのに対し、両性高分子はアニオン部位はヒストンと、カチオン部位はDNAと相互作用することによりDNA−ヒストン間の相互作用を緩める。そのため、両性高分子はエチジウムブロマイドがインターカレートしにくく、蛍光強度が低くなってしまったのではないかということと推測される。
なお、すべての高分子においてDNAと比較してアニオン数が2倍量添加した時に、蛍光強度が最大となり最も弛緩されていることが示唆された。
3−3)翻訳活性評価
翻訳活性評価は、TNT(登録商標)Quick Coupled Transcription/Translation Systemを用いて下記のように弛緩能評価を行った。
反応コンポーネント(翻訳システム)
TNT(登録商標)Quick Master Mix40μL,メチオニン
1mM 1μL,人工クロマチン2.2μL,
各高分子(CMPVIm(1mg/mL),PAA(0.1mg/mL),PMAA(0.15mg/mL)),
ヌクレアーゼを含まない水を加えて、総量で50μL
投入した各高分子および、Nuclease−free−waterの投入量
エッペンドルフチューブに反応コンポーネントを入れ、すべてのコンポーネントをピペッティングした。その後、30℃で90分間インキュベートし、ルミノメーターにより発光強度を測定することで弛緩能評価を行った。
アガロースゲル電気泳動により最も弛緩されていると示唆された濃度において翻訳活性評価を行った。まず、ポジティブコントロールである裸のDNAと比べて人工クロマチンにおける翻訳活性が下がっていることが確認でき、転写不活性型の人工クロマチンの作製に成功したことがわかった。転写不活性型、つまり凝集状態のヘテロクロマチンを弛緩させることが出来れば、露出するDNAの領域が増加し、結果的に転写および翻訳が促進すると考え、本実験系により弛緩能評価を行った。結果を、図3及び図4に示す。
図3は、分子量MW25,000及び1,000,000の2種類の分子量のPAAの結果である。両者とも高い翻訳活性を示したが、MW1,000,000の方が若干高かった。図4は、CM−PVIm及びPMAAの翻訳活性を示す。いずれも翻訳活性が示されたが、特にCM−PVImで有意に高い効果が確認された。これらのアニオン性高分子についてはアニオン性電荷密度が高いほど効率的に弛緩するのではないかということが考えられる。
一方、電荷密度が低いCM−PVImにおいて翻訳活性の向上が見られたのは、興味深い結果であり、この高分子が両性高分子であることから、アニオン性高分子とは異なるメカニズムでより効率的に弛緩していることが考えられる。
以上、ヒストンを用いた人工クロマチンモデルの構築に成功し、高分子の弛緩評価において有用な系を確立した。確立した系において実験したすべての高分子(PLE,CM−PLH,PAA,PMAA,CM−PVIm)がクロマチン構造を弛緩させることが明らかとなった。クロマチン弛緩させた高分子のなかで、特にPAA及びCM−PVImが無細胞系翻訳系における翻訳効率を向上させることが明らかとなった。
実施例4 リン酸カルシウム複合体
本実施例は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)をコードする遺伝子を含むプラスミド、ヒストンアセチル化酵素阻害剤であるコエンザイムAを含む、リン酸カルシウム複合体の調製について記載する。
1mM Tris−HCl、0.1mM EDTAをミリポアに溶解する事によりTE溶液(pH7.6)を調製した。TE溶液中に0.1mg/mlの濃度でプラスミドを含むプラスミド溶液を調製した。プラスミドは、pCMV−SPORT6ベクターにヒストン脱アセチル化酵素HDAC3をコードした遺伝子が挿入されているプラスミドと、pCMV−SPORT6ベクターにDNAメチル化酵素(DNMT3a)をコードした遺伝子が挿入されているプラスミドを用いた。pCMV−SPORT6ベクターの塩基配列を配列番号2に示す。
次いで、2.5M CaCl溶液と0.1mg/ml プラスミド溶液を1:9の割合で混合した(溶液A)。ポリグルタミン酸とコエンザイムAを、溶液A100μlに10μgと0、1、2、5、10μgとなるようにそれぞれ添加した(溶液B)。
140mM NaCl、50mM HEPES、6mM NaHPOをミリポアに溶解し、Hepes/phosphate溶液(pH7.1)を調製した。次いで、溶液Bに等量のHepes/phosphate溶液を添加し、数分間撹拌した後、37℃で24時間静置ことにより、リン酸カルシウム複合体を頂戴した。調製した複合体は、遠心分離(10000rpm、15分間)により回収した。
遠心分離により回収した全てのリン酸カルシウム複合体を過剰のPBSに懸濁し、ELSZ−2(大塚電子)を用いて粒径及びゼータ電位を測定した。結果を以下の表に示す。
さらに、リン酸カルシウム複合体中のコエンザイムA含有量を評価した。具体的には、先ず、調製した全ての複合体を滅菌PBSに懸濁し、遠心分離(10000rpm、15分間)することにより粒子表面を洗浄した。次いで、洗浄した全ての複合体を希塩酸(pH=3)中に分散し、十分にピペッティングして複合体を破壊した。溶液中へCPM(7−ジエチルアミノ−3−(4’−マレイミジルフェニル)−4−メチルクマリン)を添加しDTX 800(BECKMAN COULTER)により蛍光(E=360、E=469)を測定することにより、粒子内に含まれているコエンザイムAを定量した。結果を、図5に示す。
実施例5 リン酸カルシウム複合体を用いた遺伝子発現評価
本実施例では、実施例4で作成したリン酸カルシウム複合体を用いた場合の、遺伝子発現評価を調べた。
遺伝子発現評価のために、リン酸カルシウム複合体に、プラスミド種としてルシフェラーゼ遺伝子をコードしたpGL3を含ませた。まず、96wellプレートへHepG2細胞を1×10Cells播種し、24時間培養した。培地交換後、プラスミド量が約200ng/wellになるように、調製した複合体を培地に添加し24時間培養した。コントロールとして市販の遺伝子導入キャリアであるリポフェクチンを用いた。培地交換後、さらに48時間培養した。
培地を除去し、滅菌PBSで3回洗浄後、全てのwellへセルライシス100μlを添加しピペッティングすることにより、細胞ライセートを得た。ライセートへルシフェラーゼ基質100μlを添加し、AccuFLEX Lumi400(ALOKA)を用いて、発光強度を測定した。
実施例6 HepG2細胞へのウエスタンブロット測定
本実施例では、本発明のリン酸カルシウム複合体とヒストン脱アセチル化阻害剤を細胞に投与した場合の、ヒストンのアセチル化をウエスタンブロットで測定した。今回使用した複合体は、「実施例4 リン酸カルシウム複合体」でのヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)をコードする遺伝子を含むプラスミドの代わりに、ヒストン脱アセチル化酵素(SIRT2)をコードした遺伝子を含むプラスミドを使用したものである。
先ず、96WellプレートへHepG2細胞を5×10Cells播種し、24時間培養後、ヒストン脱アセチル化阻害剤であるバルプロ酸(VPA)を3μM含む培地に変更し、さらに24時間培養した。次に、調製した複合体をWellに添加し、24時間培養した。コントロールにはアナカルジン酸(AA)を用いた。
全てのWellから培地を除去し、滅菌PBSで3回洗浄した後、NP40バッファーを全てのWellへ100μ添加しピペッティングを行った。次いで、不溶性物質を除去するため遠心分離(15000rpm、5分間)にかけ、上澄みを回収する事により細胞ライセートを得た。回収した上澄み溶液へ2×SBバッファーを1:1の割合で混合し、95℃で5分間煮沸し、ウエスタンブロッティング用サンプルを作製した。
ミニプロティアンTetraセル(Bio−Rad)、ミニトランスブロットセル(Bio−Rad)、各種アセチル化ヒストン抗体(H3−K9,−K18,−K27,H4−K5,−K8,−K12:CST)を用いてウエスタンブロット測定を行った。
ウエスタンブロット測定の結果を図6に示す。一番左のレーンはリン酸カルシウム(CaP)、コエンザイムA(CoA)、SIRT2をコードする遺伝子を含むプラスミドDNA、今回の実験には全く影響を与えないプラスミドDNA、及びアナカルジン酸を添加していないサンプルである。左から2番目のレーンはCaPを用いてプラスミドDNAを添加したサンプルである。何も添加していないサンプルと比較して、差は見られないためCaPがヒストンアセチル化には影響を与えていないことが確認された。真ん中のレーンはコントロールとしてAAのみを添加したサンプルである。左の2サンプルと比較してアセチル化ヒストンH3及びH4のバンドが薄くなっていることから、本実験におけるアセチル化量の評価が成立していることが確認された。右から2番目のサンプルはCaPを用いてSIRT2をコードする遺伝子を含むプラスミドDNAを導入したサンプルである。SIRT2が発現することにより、アセチル化ヒストンの量が減少していることが確認された。最後に一番右のレーンはCaPを用いてCoAとSIRT2をコードする遺伝子を含むプラスミドを導入したサンプルである。全てのサンプルと比較して最もバンドが薄くなっており、CoAとSIRT2が作用することで強力に脱アセチル化されていることが確認された。今回の実験ではアセチル化ヒストン抗体としてH3−K9,−K18,−K27,H4−K5,−K8,−K12を用いたため、これらのアセチル化量が減少したと考えられる。
実施例7 アセチル化ポリリジン(AcPLL)の合成
本実施例では、アセチル化ポリリジン(AcPLL)の合成について記載する。
7−1)AcPLL(5%狙い)の合成
PLL9.58mgをDMSO0.95mLに溶解した。この溶液にTEA20μLを入れ、反応前のアミノ基定量用のサンプルを50μL採取した(溶液(1))。無水酢酸4.5μLをDMSO1.0mLに溶かし、その溶液から50μL採取し上記溶液(1)に加えた。この溶液をウォーターバス(40℃)中で2時間反応させた。反応後、アミノ基定量用のサンプルを50μL採取した。
蛍光分光光度計を用いて、アミノ基定量を行い反応が進んでいることを確認した。H NMRを測定し、アセチル化率を算出した結果、8.5%であった。即ち、反応進行率はほぼ100%であることが示唆された。
7−2)AcPLL(75%狙い)+マルトース(25%狙い)の合成
PLL11.2mgをDMSO1mLに溶解した。この溶液にTEA10μLを入れ、反応前のアミノ基定量用のサンプルを50μL採取した(溶液(1))。無水酢酸4μLを上記溶液(1)に加えた。この溶液をウォーターバス(40℃)中で2時間反応させた。反応後、アミノ基定量用のサンプルを50μL採取した(溶液(2))。上記溶液(2)にマルトース6.28mgを加え、ウォーターバス(40℃)中で24時間反応させた。反応後の溶液をアミノ基定量用に50μL採取した。
蛍光分光光度計を用いて、アミノ基定量を行い反応が進んでいることを確認した。
7−3)AcPLL(30%狙い)+マルトース(70%狙い)の合成
PLL10mgをDMSO0.99mLに溶解した。この溶液にTEA10μLを入れた。(溶液(1))。無水酢酸150μLをDMSO1.0mLに溶かし、その溶液から10μL採取し、上記溶液(1)に加えた。この溶液をウォーターバス(40℃)中で2時間反応させた(溶液(2))。上記溶液(2)にマルトース226mgを加え、ウォーターバス(40℃)中で2日間反応させた。
H NMRでアセチル化率及びマルトースの結合率を算出した。その結果、アセチル化率が29.3%、アミノ基とマルトースの結合率が39%と算出された。
実施例8 ハイパーブランチポリリジンの合成
本実施例は、ハイパーブランチポリリジンの合成(DMF溶媒)を記載する。
L−リジン(208mg,1mmol)、TEA(154μL,1.1mmol)、DMF15mL混合溶液中にHBTU(379mg,1.0mmol)とHOBt・HO(153mg,1.0mmol)を加え、15時間ウォーターバス40℃条件下で攪拌した。その後、室温で14日攪拌した。
反応前溶液も白く白濁していたが、ウォーターバスを用いて15時間攪拌しても、反応混合溶液は白く懸濁していた。15時間攪拌して得られた反応混合溶液にDMF,DMSOを加え、溶けるかどうかを確認した。DMFで溶液を希釈しても溶解性は変わらなかった。一方で、DMSOを加え希釈すると、反応後溶液を4倍希釈したところで溶かすことに成功した。
DMF溶媒について、透析して凍結乾燥をしてなにか出来ているかを確認したところ白い粉末が得られた。ハイパーブランチPLLは水溶性なので水に不溶性の不純物を取り除くために、得られた白い粉末を水に溶かし再度凍結乾燥して生成物を回収した。水系GFCで合成生成物の分子量を測定したところ、少量だが、がハイパーブランチPLLが合成出来ていることが示唆された。また、H NMR解析をしたところ、L−Lysineとは異なったピークが見られた。
実施例9 デンドリティックポリリジン(DPK)の合成
本実施例では、デンドリテッィクポリリジン(DPK)の合成例を記載する。
FAB−MSの測定値と文献値を比較することにより合成が出来ているかを確認したところ、KG2の合成に成功していることが示された。
実施例10ヒストンアセチル化酵素DNA、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、ポリ乳酸、及びカチオン性脂質の4要素を含む担体を用いた遺伝子導入
本実施例では、ヒストンアセチル化酵素DNA、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、ポリ乳酸、及びカチオン性脂質の4要素を含む担体を用いて遺伝子導入を行い、担体の機能評価、ヒストンアセチル化量評価及び細胞分化率評価を行った。
10−1 ポリ乳酸キャリアの調製
ヒストンアセチル化酵素DNA/ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤/ポリ乳酸複合体/カチオン性脂質は以下の手順で調製した。
まず、カチオン性脂質は、様々なアルキル鎖の鎖長を持つ化合物があるが、本研究では、細胞毒性が低く、細胞内導入効率の優れた、アルキル鎖長が16−18である一本鎖もしくは2本鎖のカチオン性脂質を選択した。本実施例では、1本鎖であるステアリルアミンもしくは二本鎖のカチオン性脂質であるN−[1−(2,3−ジオレイオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチル アンモニウム メチル硫酸(DOTAP)を使用した例を示す。ヒストンアセチル化酵素(CAF)をコードしたDNAとカチオン性脂質を、電荷比が1:1となるようにエタノールに溶解し、37℃で1hインキュベートした。
次に、DNA/カチオン性脂質複合体に50nMのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(トリコスタンチンA(TSA))を加え、さらにポリ乳酸(PLA)をDNA/カチオン性脂質に対して5倍量加え、37℃で1hインキュベートした。インキュベート終了後、サンプルはMWCO1000の透析膜を用いて透析を4日間行なった。最後に、透析を行なったサンプルは凍結乾燥を3日間行い、白色粉末を得た。キャリア中のDNAは、ルシフェラーゼアッセイによる遺伝子発現評価により存在確認を行なった。
ルシフェラーゼアッセイは、以下の手順で行なった。HepG2細胞は、96ウェルプレートに1×10c細胞/mlで播種し、37℃で24時間インキュベートした。ルシフェラーゼをコードしたプラスミドDNAを含むキャリアを、HepG2細胞に添加し、37℃で48時間インキュベートした。インキュベート終了後、HepG2細胞は回収し、細胞溶解用液(プロメガ社製、ルシフェラーゼアッセイシステム付属、「Cell Culture lysis reagent」)により溶解した。遺伝子発現量は、溶解液に基質を加え、ルミノメータにより測定した。キャリア中の阻害剤は、HDAC活性分析キットを用いて活性評価を行なった。
10−2 細胞系
(1)キャリア導入
ヒト骨髄性白血病細胞(HL60)を、細胞濃度1×10細胞/mlで12ウェルプレートに播種し、37℃で24時間インキュベートした。調製したキャリアを、HL60細胞に添加し、37℃で48、96、192時間インキュベートした。インキュベート終了後の細胞は、一方は、顆粒球を特異的に染色する手法であるNBT染色により細胞分化率評価を行なった。他方では、細胞を細胞溶解用液により溶解し、タンパク質溶液を得た。
(2)ヒストンアセチル化量評価(ウエスタンブロット解析)
ヒストンアセチル化量の変化を、上記得られたタンパク質溶液を用いて、ウエスタンブロット法により評価した。回収したタンパク質溶液は、タンパク質のジスルフィド結合を切断するために、還元剤を用いて95℃で5分間インキュベートした。調製したサンプルを15%ポリアクリルアミドゲルを用いて、SDS−PAGEを行なった。次に、メタノールにより親水化処理を行なったPVDF膜と泳動したゲルとを重ね合わせ、ゲルからPVDG膜へタンパク質を転写した。転写したPVDF膜を、5%スキムミルクに浸けて、一時間放置した。その後、PVDF膜を洗浄液を用いて洗浄した。洗浄したPVDF膜は、一次抗体反応を行なった。一次抗体は、Ac−H3K9,K18,K27(Cell Signaling technology Japan社製)およびコントロールであるβ−アクチンを用いた。一次抗体は、洗浄液で1000倍に希釈して使用した。希釈した抗体溶液にPVDF膜を浸し、6時間放置した。その後、PVDF膜を洗浄液を用いて洗浄した。次に、二次抗体反応を行なった。二次抗体は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)を用いた。HRP抗体は、洗浄液で5000倍に希釈して使用した。希釈した抗体溶液にPVDF膜を浸し、6時間放置した。その後、PVDF膜を洗浄液を用いて洗浄した。最後に、検出試薬としてECL Prime Western Blotting Detection System(GEヘルスケアジャパン社製)を使用し、発光検出を行なった。検出試薬をPVDF膜に滴下し、5分間静置した。その後、PVDF膜は、ATTO製の撮影装置 AE−9300 Ez−Capture MGを用いて化学発光検出を行なった。
(3)細胞分化率評価(NBT染色)
ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)溶液は、0.2% NBT、20% FBSとなるように調製した。インキュベート終了後のHL60細胞を、1×10細胞/mlとなるようにRPMI培地に懸濁した。次にRPMI培地と等量のNBT溶液を加え、さらにホルボールミリスチルアセテート(PMA)を2×10−6Mとなるように添加し、37℃で30分インキュベートした。インキュベート終了後、1200rpmで5分遠心分離し、上清を除去した。最後に、PBSに再懸濁させ、血球計数盤を用いて細胞のカウントを行なった。分化率(%)は、100×染色された細胞数/全細胞数として求めた。
10−3 結果
(1)カチオン性脂質としてDOTAPを用いたポリ乳酸キャリアの機能評価
ルシフェラーゼアッセイによる遺伝子発現評価では、ポリ乳酸キャリアを導入した細胞で遺伝子発現が確認された。HDAC活性分析キットを用いて活性評価を行なったところ、薬剤を添加していないコントロールに対して、65%の阻害活性を示した。以上の結果から、DNAおよび阻害剤がキャリア内に封入されていることが確認された。
(2)ヒストンアセチル化量評価
2日後における細胞のヒストンアセチル化量は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤のみを添加した場合は、何も添加していない場合と比較して1.4倍、ヒストンアセチル化酵素DNAのみを添加した場合は1.25倍上昇していた。一方、カチオン性脂質としてDOTAPを用いたキャリアを導入した場合は、1.65倍上昇した。4,8日後においても同様の傾向がみられ、カチオン性脂質としてDOTAPを用いたキャリアを添加した細胞は8日後において、コントロールに対してアセチル化量が2倍上昇していた。
(3)細胞分化率評価
2,4,8日後における顆粒球への分化率は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤のみを添加した場合、それぞれ29,33,35%であった。一方でカチオン性脂質としてDOTAPを用いたキャリアを導入した細胞の分化率は、それぞれ45,51,59%であった。
小括
本実施例では、遺伝子導入によるエピジェネティクス修飾の促進および阻害剤による逆反応の抑制を同時に行なうことでエピジェネティクス修飾制御を行なった。エピジェネティクス修飾のうちヒストンアセチル化を促進することで、抗がん治療が可能であることが見いだされた。
実施例11 ヒストンアセチル化酵素DNA、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、リン酸カルシウム、及びポリグルタミン酸の4要素を含む担体を用いた遺伝子導入
本実施例では、ヒストンアセチル化酵素DNA、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、ポリ乳酸、及びカチオン性脂質の4要素を含む担体を用いて遺伝子導入を行い、担体の機能評価、ヒストンアセチル化量評価及び細胞分化率評価を行った。
11−1 HepG2細胞系
CAFプラスミドとTSAの導入実験
(1)複合体の調製
2.5M CaCl溶液、10mg/ml ポリグルタミン酸(PLE)溶液をヒストンアセチル化酵素であるCAFをコードしたプラスミドDNA溶液と混合した。Ca2+の最終濃度は250mM、PLEの最終量は5μgとなるように調製した。次に前述の混合溶液と等量のHepes/Phosphate溶液を混合し、数分間撹拌した後、37℃で24時間インキュベートした。インキュベート終了後、10000rpmで5分間遠心分離し、複合体を回収した。
(2)複合体導入
HepG2細胞は1×10細胞/mlで96ウェルプレートに播種し、37℃で24時間インキュベートした。調製した複合体とヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるTSA(最終量が1μgとなるように)をHepG2細胞に添加し、37℃で24時間インキュベートした。インキュベート終了後、細胞に取り込まれなかった複合体を除くために培地交換を行なった。その後24時間毎に培地交換を2回行った。インキュベート終了後の細胞を細胞溶解用液により細胞溶解し、タンパク質溶液を得た。
(3)ヒストンアセチル化量評価(ウエスタンブロット解析)
ヒストンアセチル化量の変化を、ウエスタンブロット法により評価した。アセチル化ヒストンの評価は、Ac−H3K9,K18,K27の抗体(Cell Signaling technology Japan社製)を用いて行なった。
具体的には、回収したタンパク質溶液を、タンパク質のジスルフィド結合を切断するために、還元剤を用いて95℃で5分間インキュベートした。調製したサンプルを15% ポリアクリルアミドゲルを用いて、SDS−PAGEを行なった。次に、メタノールにより親水化処理を行なったPVDF膜と泳動したゲルとを重ね合わせ、ゲルからPVDG膜へタンパク質を転写した。転写したPVDF膜を、5% スキムミルクに浸けて、一時間放置した。その後、PVDF膜を、洗浄液を用いて洗浄した。洗浄したPVDF膜は、一次抗体反応を行なった。一次抗体は、Ac−H3K9,K18,K27の抗体(Cell Signaling technology Japan社製)およびコントロールである抗β−アクチン抗体を用いた。
一次抗体は、洗浄液で1000倍に希釈して使用した。希釈した抗体溶液にPVDF膜を浸し、6時間放置した。その後、PVDF膜を洗浄液を用いて洗浄した。次に、二次抗体反応を行なった。二次抗体は、抗ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)抗体を用いた。HRP抗体は洗浄液で5000倍に希釈して使用した。希釈した抗体溶液にPVDF膜を浸し、6時間放置した。その後、PVDF膜を洗浄液を用いて洗浄した。最後に、検出試薬としてECL Prime Western Blotting Detection System(GEヘルスケアジャパン社製)を使用し、発光検出を行なった。検出試薬をPVDF膜に滴下し、5分間静置した。その後、PVDF膜は、ATTO製の撮影装置 AE−9300 Ez−Capture MGを用いて化学発光検出を行なった。
11−2 HL60細胞系
(1)キャリア導入
ヒト骨髄性白血病細胞(HL60)は、細胞濃度1×10細胞/mlで12ウェルプレートに播種し、37℃で24時間インキュベートした。CaP/CAFプラスミドDNA/TSA/PLE複合体は、HL60細胞に添加し、37℃で48時間インキュベートした。インキュベート終了後の細胞は、一方は、顆粒球を特異的に染色する手法であるNBT染色により細胞分化率評価を行なった。他方では、細胞を細胞溶解用液により細胞溶解し、タンパク質溶液を得た。ヒストンアセチル化量の変化は、このタンパク質溶液を用いて、ウエスタンブロット法により評価した。
(2)ヒストンアセチル化量評価
ヒストンアセチル化量の変化は、ウエスタンブロット法により評価した。アセチル化ヒストンの評価は、Ac−H3K9、Ac−H3K18、Ac−H4K12の抗体(Cell Signaling technology Japan社製)を用いて行なった。
(3)細胞分化率評価(NBT染色)
ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)溶液は、0.2% NBT、20% FBSとなるように調製した。インキュベート終了後のHL60細胞を、1×10細胞/mlとなるようにRPMI培地に懸濁した。次にRPMI培地と等量のNBT溶液を加え、さらにホルボールミリスチルアセテート(PMA)を2×10−6Mとなるように添加し、37℃で30分インキュベートした。インキュベート終了後、1200rpmで5分遠心分離し、上清を除去した。最後に、PBSに再懸濁させ、血球計数盤を用いて細胞のカウントを行なった。分化率(%)は、100×染色された細胞数/全細胞数として求めた。
11−3 結果
(1)HepG2細胞系−CAFプラスミドDNAとトリコスタチンAを用いた実験
何も添加していない細胞と比較して、CAFプラスミドDNAのみを添加した細胞は、ヒストンアセチル化量が1.10倍であり、トリコスタチンAのみを添加した細胞では1.21倍上昇していた。さらに、リン酸カルシウムキャリアを導入した細胞では、2.51倍アセチル化量が上昇していた。
(2)HL60細胞系
(a)ヒストンアセチル化量評価
何も添加していない細胞と比較して、CAFプラスミドDNAのみを添加した細胞は、ヒストンアセチル化量が1.74倍であり、トリコスタチンAのみを添加した細胞では1.75倍であった。さらに、リン酸カルシウムキャリアを導入した細胞では、1.89倍アセチル化量が変化していた。
(b)細胞分化率評価
トリコスタチンAのみを添加した細胞では、27%の細胞が顆粒球へ分化していた。一方で、リン酸カルシウムキャリアを添加した細胞は、36%が顆粒球へ分化していた。
小括
本実施例では、遺伝子導入によるエピジェネティクス修飾の促進および阻害剤による逆反応の抑制を同時に行なうことでエピジェネティクス修飾制御を行なった。エピジェネティクス修飾のうちヒストンアセチル化を促進することで、抗がん治療が可能であることが見いだされた。
実施例12 アニオン性高分子を用いたクロマチン構造の制御
本実施例では、細胞内における、アニオン性高分子によりクロマチン構造を工学的に制御について記載する。アニオン性高分子であるポリアスパラギン酸−エチレンジアミン−β−シクロデキストリン(PLD−EDA−β−CD)を核内導入し、クロマチン構造の弛緩およびクロマチン構造の弛緩に伴うヒストンアセチル化量の上昇が見出された。
12−1
(1)6−O−Ts−β−CDの合成(Org. Biomol. Chem., 2011, 9, 7799)
β−シクロデキストリン(CD) 5g(12.3mmol)を41mLの水に添加し、0.6g(41mmol)の水酸化ナトリウムを溶解させた水酸化ナトリウム水溶液1.7mLを15分間かけて添加した。その後反応液を氷中に移し、2.5mLのアセトニトリルに溶解した1.02g(14.8mmol)のTsCl(p−トルエンスルホニルクロリド)を25分かけて添加した。その後氷中で4時間撹拌し、桐山ろ紙(No.5)によって沈殿をろ過し、ろ液を4℃で一晩静置した。生じた結晶を桐山ろ紙(No.4)で回収し、水とエタノールによって洗浄した。エタノールをデシケーター内で乾燥させ、1.05gの6−O−Ts−β−CDを得た。
(2)PLD−EDAおよびPLD−EDA−β−CDの合成
PLD(ポリアスパラギン酸)20mg(0.2mmol/COOH)、HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)27.7mg(0.2mmol)、PyBOP((ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)105.1mg(0.2mmol)に脱水DMF10mL中に溶解し、超音波を照射しながら10分間インキュベートした。次いで、2mLの脱水DMF中に溶解したN−Boc−EDA(N−ブトキシカルボニルエチレンジアミン)320mg(2.0mmol)を加え、閉鎖系で、60℃オイルバス中で48時間撹拌した。反応液を室温まで放冷した後に20倍量のエタノール中に沈殿させ、30分間3500rpmで遠心した。上澄みを捨て、新たにエタノールを40mL加えて30分間3500rpmで遠心し、この操作を2回繰り返した。
残った沈殿をエタノールを用いてバイアル瓶へ流し込み、70℃常圧で一晩エタノールを乾燥させた。生成した粉末に1mLのTFA(トリフルオロ酢酸)を加えて1時間撹拌し、反応液は20mLのジエチルエーテル中に沈殿した。上澄みは4割以上を捨てた後に再び20mLになるまでジエチルエーテルを加え、この操作を5回繰り返した。室温で一晩ジエチルエーテルを乾燥させた後、残った固体を20mLの超純水に溶解し、5日間凍結乾燥し、3.9mgのPLD−EDAを得た。
得られたPLD−EDA 3.9mg(0.04mmol/EDA)と6−O−Ts−β−CD 50mg(0.4mmol)を脱水DMSO 4mLに溶解し、70℃オイルバス中で48時間撹拌し、反応液を室温まで放冷した後、水中で分画分子量3500の再生セルロース膜を用いて透析を行った。その後、凍結乾燥を48時間行い、5.0mgのPLD−EDA−β−CDを得た。
(3)PLD−EDA−β−CDの同定
PLD−EDA−β−CDはGFCによってフリーなCDの除去と分子量損失がないことを確認し、H−NMRよりCD由来のピークおよびPLD由来のピークを確認した。
(4)PLD−EDA−β−CDのFITCラベル化
先の項で合成したPLD−EDA−β−CD 2.5mg(3μmol/NH)を1.17mg(3μmol)のFITC(フルオレセインイソチオシアネート)とともに10mM KCO中で遮光しながら室温で2時間撹拌し、FITCラベル化を行った。その後分画分子量3500の膜を用いて水中で遮光しながら6日間透析し、残った不溶性の物質を3000rpmで10分間遠心分離することで取り除き、上清を2日間凍結乾燥することでFITCラベル化PLD−EDA−β−CDを得た。
12−2 共焦点顕微鏡によるPLD−EDA−β−CDの細胞内導入の観察
スライドガラス上にHeLa細胞を3×10cells/ウェルの濃度で播種して37℃、5%CO下でインキュベートした。8時間後に培地を交換し、PLD−EDA−β−CD 30μg/ウェルを添加した。さらに16時間37℃、5%CO下でインキュベートし、培地を全て吸引した後にPBS(−)で洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定した後にDAPI溶液(1万分の1希釈)により細胞核を染色した。PBS(−)で2回洗浄した後、50%グリセロールで試料をマウントし、遮光して保管した。
共焦点顕微鏡観察はオリンパス社のFV1000−Dを用いて行った。波長それぞれFITC/DAPIに最適化された波長により励起・観察した。
12−3 遺伝子導入およびウエスタンブロット法によるクロマチン構造弛緩評価
アニオン性高分子の核内導入によってクロマチン構造が弛緩し、ヒストンが露出すると、ヒストンテイルへのヒストンアセチル化酵素(HAT)のアクセシビリティーが向上し、アセチル化ヒストン量が増加すると考えられる。従って、そのアセチルヒストン量をウエスタンブロット法により定量する。
HeLa細胞を12ウェルプレートに5×10細胞/ウェルで播種し、37℃、5%CO下でインキュベートした。8時間後に培地を交換し、PLD−EDA−β−CD 100μg/ウェルを添加した。さらに16時間同条件下でインキュベートし、培地を全て吸引した後に、ヒストンアセチル化酵素(HAT)をコードしたプラスミドDNAをリポフェクチンと電荷比(+/−)1で混合し、1時間リン酸バッファー中でインキュベートすることで調製した複合体を添加した(DNA量 1μg/ウェル)。その後、細胞を同条件下で48時間インキュベートし、培地を吸引した後PBS(−)で洗浄し、5×細胞溶解用液 75μL/ウェルを添加することで細胞溶解物を回収した。回収したライセートにPBS(−) 200μLを添加し、不溶性のタンパク質を取り除くために5000×gで10分間遠心分離を行った。上清200μLは、タンパク質のジスルフィド結合を切断するために還元剤を用いて、95℃で5分間インキュベートした。
サンプルの30μLをロードし、30mA一定の条件でSDS−PAGEを行った。30分間の泳動後、PVDF膜へのブロッティングを100V一定の条件で90分間行い、PVDF膜を1時間ブロッキングした。ブロッキング後のPVDF膜を1×TBS−Tにより5分間400rpmで震盪することによって洗浄し、この操作を3回繰り返した。その後ウサギ由来のアセチル−H3抗体、アセチル−H4抗体・β−アクチン抗体それぞれ3μLを含む3mLの1×TBS−T中で、PVDF膜を12時間4℃でインキュベートした。さらにPVDF膜を1×TBS−Tで前述の通り洗浄し、ウサギ由来のHRP結合2次抗体3μLを含む3mLの1×TBS−T中で6時間インキュベートした。1×TBS−Tで前述の洗浄を行った後、アルカリホスファターゼによる発色処理を行い、CSアナライザーによって露光時間4分でバンドを検出した。
12−4 結果
(1)共焦点顕微鏡観察の結果
共焦点顕微鏡観察の結果を図7A−図7Dに示す。図7A−Dは各々、(A)細胞核を染色したDAPIによる蛍光像、(B)FITCラベル化PLD−EDA−β−CDによる蛍光像、(C)微分干渉像、そして、(D)A−Cの画像を結合させたものである。図7より、細胞核の領域に、PLD−EDA−β−CDが局在していることが示された。なお、CD修飾を行っていないPLD−EDAは核への局在が観察されなかった。限定されるわけではないが、「EDA」部分は、アニオン性高分子(PLD)と細胞間膜の反発を防ぐためのスペーサーとして、「CD」部分は細胞膜コレステロールとの相互作用により、脂質に富む領域にポリマーが留まるために機能していると考えられる。
(2)ウエスタンブロットによるアセチルヒストン量の変化(KSB102)
HeLa細胞におけるヒストンH3およびH4のアセチル化量はアニオン性ポリマー/HAT/リポフェクチン複合体のいずれも添加していないコントロールの場合と比較して、HAT/リポフェクチンを加えたものでは3.9倍アセチル化量が増加し、アニオン性ポリマー添加後にHAT/リポフェクチンを加えたものではコントロールに対して4.7倍アセチル化量の増加を示した。
[配列表]

Claims (8)

  1. 以下の
    i)ヒストンアセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
    ii)ヒストンメチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
    iii)ヒストン脱アセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
    iv)ヒストン脱メチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
    v)ヒストンアセチル化阻害剤;
    vi)ヒストン脱アセチル化阻害剤;及び
    vii)ヒストン脱メチル化阻害剤
    からなるグループから選択される、2種類またはそれ以上の物質を包摂する担体、
    並びに、
    カルボキシメチル化ポリビニルイミダゾール
    を含む、クロマチン構造を制御するための組成物。
  2. 2種類またはそれ以上の物質が、以下の
    i)ヒストンアセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
    iii)ヒストン脱アセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
    v)ヒストンアセチル化阻害剤;及び
    vi)ヒストン脱アセチル化阻害剤;
    からなるグループから選択される、請求項に記載の組成物。
  3. 2種類またはそれ以上の物質が、以下の
    ii)ヒストンメチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
    iv)ヒストン脱メチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;及び
    vii)ヒストン脱メチル化阻害剤
    からなるグループから選択される、請求項に記載の組成物。
  4. 担体が、ポリエステル、リン酸カルシウム、又はポリアミノ酸を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 担体が、さらに、DNA脱メチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター、DNAメチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター、あるいは、DNAメチル化酵素阻害剤、を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 担体がリン酸カルシウムである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
  7. クロマチン構造を弛緩するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物をin vitro又はex vivo投与することにより、クロマチン構造を制御する方法。
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