JP6551825B2 - クロマチン構造制御剤 - Google Patents

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Description

本発明はクロマチン構造を弛緩させてDNAやヒストンの修飾・保護を容易にするクロマチン構造制御剤に関する。
我々の遺伝情報を担うゲノムDNAは、ヒストンと呼ばれる塩基性タンパク質に巻き付いたクロマチンと呼ばれる構造を取ることにより、10μmの1つの細胞核内に2mものDNAが収納されている。遺伝子発現制御において重要な役割を果たしているクロマチンの高次構造は、ヒストンやDNA修飾により制御されており、ユークロマチンとして知られている凝縮度の低い転写許容領域と、ヘテロクロマチンとして知られている凝縮度の高い転写抑制領域に分別される(図1参照)。
難治性疾患の場合、クロマチン構造の凝縮が観察されるケースが多く、クロマチン構造の弛緩技術を開発することができれば難治性疾患の新たな治療法の提案に繋がる。また、クロマチン構造が弛緩することによりDNAへのアクセシビリティが向上するため、効率的な遺伝子治療や抗がん治療への応用も期待できる。
このような観点から本発明者らは、特許文献1及び非特許文献1において、クロマチン構造を制御し得る高分子化合物について提案してきた。
国際公開第2013/162054号
Polymer Preprints, Japan, 2011, Vol.60, No.2, p.4781-4782
しかしながら、上述の提案における高分子化合物では未だクロマチン構造の制御が十分ではなく、よりクロマチンの制御能力の高い物質の開発が要望されているのが現状である。
したがって、本発明の目的は、クロマチン構造の制御能に優れたクロマチン構造制御剤を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、特定の両性高分子、特定のポリアニオン高分子、および特定の構造を有する複合体キャリアが上記目的を達成し得ることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、一態様において、本発明は以下の各発明を提供するものであってもよい。
(1)側鎖にカルボキシル基を有するアニオン性高分子における該カルボキシル基末端の一部にカチオン基を導入してなる両性高分子、またはポリアニオン高分子を含む、クロマチン構造制御剤。
(2)上記両性高分子が、次式:
[式中、nは、10≦n≦90であり;mは、10≦m≦90である]
で示されるエチレンジアミン修飾ポリアクリル酸、または、次式:
[式中、nは、0≦n≦90;mは、0≦m≦90;lは、0≦l≦90である]
で示されるマルトテトラオース修飾ポリアクリル酸、を含むことを特徴とする(1)記載のクロマチン構造制御剤。
(3)上記ポリアニオン高分子が、次式:
[式中、nは、20≦n≦70;mは、20≦m≦70;lは、2≦l≦60である]
で示されるシクロデキストリン(CD)修飾系ポリアスパラギン酸長鎖ポリエチレングリコール(PEG)修飾体(PLD−PEG−CD);
次式:
[式中、nは、0<n≦50;mは、50≦m≦90である]
で示されるシクロデキストリン(CD)修飾系ポリアスパラギン酸エチレンジアミン(EDA)修飾体(PLD−EDA−CD);または
次式:
[式中、xは、0<x<10;yは、0<y≦30;zは、0<z≦90である]
で示されるシクロデキストリン(CD)部分修飾系ポリアスパラギン酸エチレンジアミン(EDA)修飾体(PLD−CD);
を含むことを特徴とする、(1)記載のクロマチン構造制御剤。
(4)クロマチン構造制御剤であって、以下のi)からviii):
i)ヒストンアセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
ii)ヒストンメチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
iii)ヒストン脱アセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
iv)ヒストン脱メチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
v)ヒストンアセチル化阻害剤;
vi)ヒストン脱アセチル化阻害剤;
vii)ヒストンメチル化阻害剤;および
viii)ヒストン脱メチル化阻害剤;
からなる群より選択されるベクター又は阻害剤、生分解性高分子粒子、カチオン性脂質またはカチオン性高分子、およびDNA、を含む複合体キャリアを含み、
ここで当該複合体キャリアは、当該ベクター又は阻害剤が当該生分解性高分子粒子内に封入されてなり、該生分解性高分子粒子表面がカチオン性脂質またはカチオン性高分子で被覆され、そして該表面に存在するカチオンによりDNAと複合化される構造を有する、前記クロマチン構造制御剤。
本発明のクロマチン構造制御剤は、クロマチン構造の制御能に優れたものである。本発明のクロマチン構造制御剤は、難治性疾患の治療や効率的な遺伝子治療等への実現に繋がるものであると考えられる。
図1は、クロマチン構造と転写活性との関連性を摸式的に示す概要図である。 図2は、両性高分子又はポリアニオン高分子を含むクロマチン構造制御剤のクロマチン構造制御のメカニズムを摸式的に示す概要図である。 図3は、ポリエチレンイミンを加えた複合体キャリアの例を摸式的に示す概要図である。 図4は、ポリ乳酸−ポリグリコール酸(PLGA)を用いた複合体キャリアの例を摸式的に示す概要図である。 図5は、カチオン性脂質を用いた複合体キャリアの例を模式的に示す概略図である。 図6は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)をポリ乳酸(PLA)粒子に包埋させ、この粒子表面を1,2−ジミリストイルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(DMRIE):コレステロールを1:1としたカチオン性リポソームで覆い、そこに静電相互作用によりプラスミドDNA(pDNA)を相互作用させた複合体キャリアを摸式的に示す概要図である。 図7は、エチレンジアミン修飾ポリアクリル酸(PAA−EDA)のH−NMRスペクトル解析結果を示すチャートである。 図8は、リアルタイムPCRによるクロマチン構造解析の結果を示すチャートである。 図9は、共焦点レーザー顕微鏡による核局在性評価を示す写真である。 図10は、メチル化ポリ(1−ビニルイミダゾール)(PVIm−Me)のNMRチャートである。 図11は、リアルタイムPCRデータ解析の結果を示すチャートである。 図12は、共焦点レーザー顕微鏡による核局在性評価の結果を示す写真である。 図13は、PLD−PEG−CDのH−NMRスペクトルを示すチャートである。 図14は、PLD−PEG−CDの共焦点顕微鏡画像を示す写真である。 図15は、PLD−EDA−CD(完全ポリアニオン)のH−NMRスペクトルを示すチャートである。 図16は、ラベル化したPLD−EDA−CD(完全ポリアニオン)共焦点顕微鏡画像を示す写真である。 図17は、PLA/PEI複合体の様々な電荷比における粒径及びゼータ電位を示すチャートである。 図18は、PLGAキャリアを添加した細胞のアセチル化ヒストン量の実験結果を示す写真及びチャートである。 図19は、PLGAキャリアを添加した細胞のヒストントリメチル化量の実験結果を示す写真及びチャートである。 図20は、PLGAキャリアを添加した細胞の顆粒球への分化率を示すチャートである。 図21は、ポリ乳酸粒子をコアに有するカチオン性脂質キャリアを添加した細胞のアセチル化ヒストン量の実験結果を示す写真及びチャートである。 図22は、ポリ乳酸粒子をコアに有するカチオン性脂質キャリアを添加したHL60細胞の顆粒球への分化率を示すチャートである。 図23は、キャリア/プラスミドDNA複合体を用いた遺伝子発現評価を示すチャートである。 図24は、ラベル化したPLD−CD共焦点顕微鏡画像を示す写真である。(A)細胞核を染色したDAPIによる蛍光像;(B)FITC−PLD−CDによる蛍光像;(C)微分干渉像;(D)(A)−(C)の画像をMergeしたもの。
以下、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本明細書で特段に定義されない限り、本発明に関連して用いられる科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。
クロマチン構造制御剤
本発明のクロマチン構造制御剤は、両性高分子、ポリアニオン高分子、もしくは複合体キャリア、又はそれらの組み合わせ、のいずれかを含む。
本発明のクロマチン構造制御剤に含まれる両性高分子、ポリアニオン高分子、および複合体キャリア、について以下に詳述する。
両性高分子
本発明のクロマチン構造制御剤は、側鎖にカルボキシル基を有するアニオン性高分子における該カルボキシル基末端の一部にカチオン基を導入してなる両性高分子からなることを特徴とする。
このような両性高分子としては、以下に説明する高分子などが挙げられる。
エチレンジアミン修飾ポリアクリル酸(PAA−EDA)(下記化学式参照)
式中、nは、10≦n≦90であり;
mは、10≦m≦90、より好ましくは50≦m≦90、50≦m≦70である。
平均分子量は1,000から100,000程度であり、より好ましくは2,000から70,000程度、3,000から50,000程度である。
マルトテトラオース修飾ポリアクリル酸(PAA−Mal)(下記化学式参照)
式中、nは、0≦n≦90;mは、0≦m≦90;lは、0≦l≦90が好ましい。但し、n、m及びlが同時に0であることはない。より好ましくは、クロマチン構造を弛緩する場合には50≦lであり、クロマチン構造を凝縮させる場合には50≦mである。さらに好ましくはn:m:lは1:0.005〜0.1:0.1〜2である。
平均分子量は1,000から100,000程度、好ましくは2,000から70,000程度、3,000から50,000程度である。
このような両性高分子によるクロマチン構造の制御は図2に示すようにアニオン性の電荷をもったポリマーがDNAとヒストンとの静電結合を弱まることにより生じるものと推測される。
ポリアニオン高分子
本発明のクロマチン構造制御剤は、一態様においてポリアニオン高分子からなることを特徴とする。
上記ポリアニオン高分子としてはβ−CD修飾ポリアニオン高分子、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、PEG修飾ポリアニオン、糖鎖修飾ポリアニオンなどが挙げられる。一例として、シクロデキストリン(CD)修飾系ポリアスパラギン酸長鎖ポリエチレングリコール(PEG)修飾体(PLD−PEG−CD)、CD修飾系ポリアスパラギン酸エチレンジアミン(EDA)修飾体(PLD−EDA−CD(完全ポリアニオン))、CD部分修飾系ポリアスパラギン酸EDA修飾体を以下に示す。
PLD−PEG−CD
式中、nは、20≦n≦70;mは、20≦m≦70;lは、2≦l≦60であることが望ましい。
シクロデキストリン(CD)導入率に関わらず、m<nであることが望ましい。PLD−PEG−CDのCD導入率(%)は、次式:l÷(l+m)×100で計算される。より好ましくは、CD導入率は0<(CD導入率)≦80%であり、m<nである。さらに好ましくは、CD導入率は0<(CD導入率)≦60%であり、m<nである。
平均分子量は、1,000から100,000程度であり、より好ましくは、1,500から70,000程度、2,000から30,000程度である。
また、PEGの重合度(x)は、20≦x≦120が好ましい。
PLD−EDA−CD
式中、nは、0<n≦50;mは、50≦m≦90が好ましい。
PLD−EDA−CDのCD導入率(%)は、次式:n÷(n+m)×100で計算される。好ましくは、CD導入率は0<(CD導入率)≦80%、さらに好ましくは0<(CD導入率)≦60%、0<(CD導入率)≦50%、である。
平均分子量は、2,000から100,000程度が好ましい。より好ましくは平均分子量は、2,500から70,000程度、3,000から50,000程度である。
PLD−CD
式中、xは、0<x<10;yは、0<y≦30;zは、0<z≦90である。
シクロデキストリン(CD)導入率に関わらず、y<zであることが望ましい。PLD−CDのCD導入率(%)は、次式:x÷(x+y)×100で計算される。より好ましくは、CD導入率は0<(CD導入率)≦50%であり、y<zである。さらに好ましくは、CD導入率は0<(CD導入率)≦35%であり、y<zである。
平均分子量は、1,000から100,000程度が望ましい。さらに好ましくは平均分子量は、2,000から70,000程度、3,000から30,000程度である。
このようなポリアニオン高分子によるクロマチン構造の制御は図2に示すようにアニオン性の電荷をもったポリマーがDNAとヒストンとの静電結合を弱まることにより生じるものと推測される。
複合体キャリア
本発明はまた、クロマチン構造を制御可能なベクターおよび/または阻害剤、生分解性高分子粒子、カチオン性脂質またはカチオン性高分子、ならびにDNA、を含む複合体キャリアを提供する。本発明はまた、当該複合体キャリアを含むクロマチン構造制御剤を提供する。複合体キャリアは、無毒若しくは低毒で成体への適用が可能であり、クロマチン構造を制御可能なベクターおよび/または阻害剤を細胞の核まで運搬することができる。
以下、本発明の複合体キャリアを構成する各成分および複合体キャリアの構造について詳細に説明する。
ベクター/阻害剤
本発明の複合体キャリアを構成するベクターおよび/または阻害剤として、以下のi)からviii):
i)ヒストンアセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
ii)ヒストンメチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
iii)ヒストン脱アセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
iv)ヒストン脱メチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
v)ヒストンアセチル化阻害剤;
vi)ヒストン脱アセチル化阻害剤;
vii)ヒストンメチル化阻害剤;および
viii)ヒストン脱メチル化阻害剤;
からなる群より選択される1種類以上の物質が含まれる。好ましい態様において、複合体キャリアを構成するベクター及び/または阻害剤には、上記の群より選択される2種類またはそれ以上の物質が含まれる。
i)−viii)の物質はいずれもクロマチンのヒストンのアセチル化、脱アセチル化、メチル化、あるいは脱メチル化に関与する物質である。ヒストンはリジン残基のアミノ基がアセチル化されるとアミノ基の正電荷が中和され、ヌクレオソーム間の相互作用が緩むと考えられている。よって、ヒストンのアセチル化によりクロマチン構造が弛緩し、転写が活性化される。脱アセチル化により反対にクロマチン構造は凝縮する。i)及びvi)はクロマチン構造を弛緩する作用を有する。一方、iii)及びv)は、クロマチン構造を凝縮させる構造を有する。一方ヒストンのメチル化は、H3K9がメチル化されるとクロマチンを凝縮させ、ヘテロクロマチンを形成することが知られており、位置に依存すると考えられる。一方、ヒストンH3K4がメチル化されると転写が活性化する。
「ヒストンアセチル化酵素」(HAT)は、ヒストンのリジン側鎖のアセチル化を促進する酵素である。HATは公知であり、例えば、ヒト等においてタンパク質のアミノ酸配列、並びに当該タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列が知られている。例えば、ヒトヒストンアセチル化酵素(KAT2B)遺伝子の塩基配列は、NCBIデータバンクのアクセッション番号NM 003884に開示されている。
「ヒストンメチル化酵素」(HMT)は、ヒストンにメチル基を促進する酵素である。ヒストンメチル化酵素は公知であり、例えば、ヒト等においてタンパク質のアミノ酸配列、並びに当該タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列が知られている。例えば、ヒトヒストンメチル化酵素(EHMT2)の変異体(G9a)遺伝子の塩基配列は、NCBIデータバンクのアクセッション番号NM 006709に開示されている。
「ヒストン脱アセチル化酵素」(HDAC)は、ヒストンのリシン側鎖のアセチル基を加水分解し、リシンに変換する酵素である。HDACは公知であり、例えば、ヒト等においてタンパク質のアミノ酸配列、並びに当該タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列が知られている。例えば、ヒトヒストン脱アセチル化酵素(HDAC3)遺伝子の塩基配列は、NCBIデータバンクのアクセッション番号NM 029678に開示されている。ヒトヒストン脱アセチル化酵素(SIRT2)遺伝子の塩基配列は、NCBIデータバンクのアクセッション番号NM 034146に開示されている。
「ヒストン脱メチル化酵素」は、ヒストンに結合したメチル基を加水分解する酵素である。
各遺伝子によってコードされる酵素のアミノ酸配列は、好ましくは天然のタンパク質の配列である。あるいは、各酵素の機能が維持される範囲内であれば、その変異体も本発明に使用しうる。具体的には天然のアミノ酸配列又は当該アミノ酸をコードする塩基配列に対して、好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%の配列相同性を有する。
2つの配列の同一性%は、視覚的検査および数学的計算によって決定してもよい。あるいは、2つのタンパク質配列の同一性パーセントは、Needleman,S.B.及びWunsch,C.D.(J. Mol. Biol., 48:443-453, 1970)のアルゴリズムに基づき、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラムを用い配列情報を比較することにより、決定してもよい。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)Henikoff,S.及びHenikoff,J.G.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:10915-10919, 1992)に記載されるような、スコアリング・マトリックス、blosum62;(2)12のギャップ加重;(3)4のギャップ長加重;及び(4)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。
あるいは、天然のアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸残基が欠失、付加、または置換されているアミノ酸配列を有するものであってもよい。このような天然のタンパク質と相同なアミノ酸配列を有し、天然の酵素と同一の機能を有するタンパク質をコードする遺伝子も本発明において使用可能である。限定されるわけではないが、変更可能なアミノ酸数は、1ないし100アミノ酸残基、1ないし80アミノ酸残基、1ないし50アミノ酸残基、1ないし30アミノ酸残基、1ないし20アミノ酸残基、1ないし15アミノ酸残基、1ないし10アミノ酸残基、1ないし5アミノ酸残基である。公知の部位特異的突然変異法で修飾可能な数のアミノ酸残基、例えば、1ないし10アミノ酸残基、1ないし8、1ないし5、1ないし3アミノ酸残基がより好ましい。
「発現ベクター」は、複合体キャリアを作用させる細胞、組織または個体において、上述の遺伝子を発現可能なベクターであれば、特に限定されない。例えば、発現ベクターとして、遺伝子を発現するための、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター等、公知のベクターを使用しうる。生体に投与することを目的とするため、生体に対し無毒若しくは低毒性のベクターが好ましい。本発明の組成物により2種類以上の遺伝子を発現させることを目的とする場合、各遺伝子を含む2種類以上の発現ベクターを用いてもよく、あるいは、1つの発現ベクターに2種類以上の遺伝子を含ませてものを用いてもよい。
「ヒストンアセチル化阻害剤」は、公知のものを使用しうる。例えば、コエンザイムA(CoA)、アナカルジン酸(AA)、クルクミン、MB−3を含む。
「ヒストン脱アセチル化阻害剤」は、公知のものを使用しうる。例えば、バルプロ酸(VPA)、トリコスタチンA(TSA)、ボリノスタット、MS−275を含む。ヒストン脱アセチル化阻害剤は、癌細胞に対して、細胞周期の停止、分化誘導、アポトーシスなどの活性を示し、癌細胞の増殖に影響を与えることが知られている。
「ヒストンメチル化阻害剤」は、公知のものを使用しうる。例えば、ケトシン、BIX−01294、DZNep、AMI−1を含む。
「ヒストン脱メチル化阻害剤」は、公知のものを使用しうる。例えば、トラニルシプロミン、を含む。
生分解性高分子
本発明の複合体キャリアを構成する生分解性高分子は、特に限定されないが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)共重合体、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、およびキトサン、からなる群より選択される生分解性ポリマーである。
カチオン性脂質
本発明の複合体キャリアを構成するカチオン性脂質は、カチオン性リポソームを構成することができる脂質である。カチオン性脂質を含むカチオン性リポソームは、遺伝子送達に有用であり得る。カチオン性リポソームを構成できることができるカチオン性脂質は、特に限定されないが、以下:
ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);
N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウム(DOTMA);
1,2−ジオレオイルオキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);
1,2−ジステアロイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DSTAP);
ジオレオイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP);
ジオクタデシル−ジメチル−アンモニウムクロリド(DODAC);
1,2−ジミリストイルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(DMRIE);
2,3−ジオレイルオキシ−N−[2−(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパナミウム トリフルオロアセテート(DOSPA);
3β−N−(N’,N’−ジメチル−アミノエタン−カルバモイル−コレステロール)(DC−Chol);および
O,O’−ジテトラデカノイル−N−(α−トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノールアミン クロリド;
からなる群より選択されるものであってもよい。好ましいカチオン性脂質としては、1,2−ジオレオイルオキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、1,2−ジミリストイルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(DMRIE)が挙げられる。
本発明の複合体キャリアを構成するカチオン性脂質は、カチオン性リポソームを形成していてもよい。カチオン性脂質がカチオン性リポソームを構成する場合、当該カチオン性リポソームは、少なくとも1つのカチオン性脂質に加えて少なくとも1つの非カチオン性脂質を含んでいてもよい。カチオン性リポソームを構成する非カチオン性脂質は、特に限定されないが、以下:
ジアシルホスファチジルコリン;
リゾホスファチジルコリン;
ジアシルホスファチジルグリセロール;
ジアシルホスファチジン酸;
ジアシルホスファチジルセリン;
ジアシルホスファチジルエタノールアミン;
スフィンゴミエリン;
セラミド;
ジアシルグリセロール;および
コレステロール;
からなる群より選択されるものであってもよく、ここで上記非カチオン性脂質に含まれるアシル基は、炭素数が12〜20の飽和または不飽和アシル基である。例えば、上記非カチオン性脂質に含まれるアシル基は、ドデカノイル基(ラウロイル基)、テトラデカノイル基(ミリストイル基)、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基(パルミトイル基)、9−ヘキサデセノイル基(パルミトレノイル基)、ヘプタデカノイル基(マルガロイル基)、オクタデカノイル基(ステアロイル基)、9−オクタデセノイル基(オレオイル基)、11−オクタデセノイル基(バクセノイル基)、9,12−オクタデカジエノイル基(リノレオイル基)、9,12,15−オクタデカントリエノイル基(9,12,15−リノレノイル基)、6,9,12−オクタデカトリエノイル基(6,9,12−リノレノイル基)、エイコサノイル基(アラキジノイル基)、8,11−エイコサジエノイル基、5,8,11−エイコサトリエノイル基、5,8,11−エイコサテトラエノイル基(アラキドノイル基)、などが挙げられる。
カチオン性高分子
本発明の複合体キャリアを構成するカチオン性高分子は、遺伝子送達に有用なカチオン性高分子であれば、特に限定されない。例えば、カチオン性高分子には、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリアリルアミンが含まれる。
DNA
本発明の複合体キャリアを構成するDNAは、複合体キャリアを作用させる細胞、組織または個体において、外来的に発現させる遺伝子を含むDNAである。好ましくは当該DNAはプラスミドベクターの形態であってもよい。
当該DNAは、ヒストンアセチル化酵素をコードする遺伝子、ヒストンメチル化酵素をコードする遺伝子、ヒストン脱アセチル化酵素をコードする遺伝子、およびヒストン脱メチル化酵素をコードする遺伝子からなる群より選択される遺伝子を含む発現ベクターであることもまた可能である。これらの発現ベクターについては上記「ベクター/阻害剤」の項目において説明したとおりである。
複合体キャリアの構造
本発明の複合体キャリアは、ベクター又は阻害剤、生分解性高分子粒子、カチオン性脂質またはカチオン性高分子、およびDNA、を含む限り、その構造に特に限定はない。
例えば、本発明の複合体キャリアは、ベクター又は阻害剤が当該生分解性高分子粒子内に封入されてなり、該生分解性高分子粒子表面がカチオン性脂質またはカチオン性高分子で被覆され、そして該表面に存在するカチオンによりDNAと複合化される構造を有していてもよい。このような構造の例は、図3、図5及び図6において示される。
別の態様において、本発明の複合体キャリアは、DNAとカチオン性脂質を先に複合化し、得られたDNAとカチオン性脂質の複合体と、阻害剤及び生分解性高分子をさらに複合化させることにより得られる構造を有していてもよい。このような構造の例は図4において示される。

本発明のクロマチン構造制御剤は、その有効成分として、上述の両性高分子、ポリアニオン高分子、または複合体キャリアをそれぞれ単独で含んでいてもよく、あるいはこれらの組み合わせ含んでいてもよい。また、本発明のクロマチン構造制御剤は、上述の両性高分子、ポリアニオン高分子、複合体キャリア、又はそれらの組み合わせ、の他に本発明の所望の効果を損なわない範囲で種々添加剤を添加することができる。
また、上記の両性高分子(特にPAA−EDA)並びにポリアニオン高分子は、より細胞内への取込みを効率的に行わせるために、他のキャリア(例えばPVIm−Me等のpH応答性キャリア)との複合体とし、この複合体をクロマチン構造制御剤として用いることが好ましい。合成高分子(PAA−EDA)によるクロマチン構造の弛緩については本発明によって初めて成功した。EDA導入率が高いPAA−EDA/PVIm−Me二元複合体により、PAA−EDAの効率的な核移行が起こり、クロマチン構造を弛緩できることを明らかにした。
クロマチンの構造制御
本発明は、上述した本発明のクロマチン構造制御剤をin vitro、ex vivo又はin vivoで投与することにより、クロマチン構造を制御する方法を含む。
上述の両性高分子、ポリアニオン高分子、または複合体キャリアをそれぞれ単独で含む組成物を投与してもよく、あるいは、両性高分子、ポリアニオン高分子、および複合体キャリアから成る群より選択される2種以上の成分の組み合わせを含む組成物を投与する態様も含む。
クロマチン構造の制御とは、クロマチン構造を弛緩、あるいは逆に凝縮することを指す。クロマチン構造が「弛緩する」とは、クロマチンが凝縮した状態の高次構造が緩み、遺伝子の転写が進みやすくなる、即ち、転写が活性化しオンの状態になることを意味する。クロマチン構造が「凝縮する」とは、弛緩とは逆に、クロマチンが凝縮した高次構造をとり、転写が生じにくいオフの状態になることを意味する。
クロマチンの「弛緩」及び「凝縮」は、クロマチン構造制御剤等の物質を作用させた細胞において、クロマチンを消化してゲノムDNAを抽出した後、特定の解析領域の遺伝子をリアルタイムPCRで増幅し、その増幅の挙動から判別することができる。すなわち、解析領域の遺伝子の増幅の挙動が、一般的に細胞では発現していない遺伝子の増幅の挙動に近ければ、クロマチンは「凝縮」していると判断する。解析領域の遺伝子の増幅の挙動が細胞において構成的に発現している遺伝子の増幅の挙動に近ければ、クロマチンは「弛緩」していると判断する。また、クロマチンの「弛緩」及び「凝縮」は、例えば、遺伝子の転写及び/又は翻訳活性を測定することにより、調べることが可能である。遺伝子の転写及び/又は翻訳活性は、公知の方法を用いて確認することが可能である。例えば、蛍光タンパク質の発現により蛍光測定することができる。あるいは、クロマチンの「弛緩」及び「凝縮」は、より直接的にクロマチン構造を観察することにより確認してもよい。
本願発明のクロマチン構造制御剤の投与量は特に限定されない。当業者は、クロマチン構造制御剤に含まれる物質等の種類、投与対象の状態等に応じて適宜量を決定することが可能である。本発明の両性高分子及びアニオン性高分子を用いる場合、アニオン数とクロマチン構造中のDNAの割合は、クロマチン構造の弛緩作用の効果の大きさに影響を与える可能性がある。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(合成例1)エチレンジアミン修飾ポリアクリル酸(PAA−EDA)の合成
ポリアクリル酸(PAA)(729mg、COOH10.0mmol)をDMSO 8mLに溶解させた。HOBt 4.16g(8mmol)、PyBOP 1.55gをDMSO 15mLに溶解し、溶解させたポリアクリル酸溶液を加えた。その混合溶液にN−Boc−エチレンジアミン 3mL(20mmol)を加え、40℃、5日間ウォーターバス内で攪拌した。撹拌後、得られた水溶液をMWCO=1,000の透析膜で、5日間透析後、凍結乾燥によって白色粉末を回収した(収量549mg)。得られた粉末にトリフルオロ酢酸を添加し、室温で1時間撹拌することで、脱保護を行った。脱保護を行った後、エチレンジアミンにより再沈殿を行い、透析により精製、凍結乾燥後、目的物であるPAA−EDAの白色粉末を得た。H NMRは、白色粉末3mgにDO(700μL)で溶解し、測定を行った。NMRの測定結果を図7に示す。エチレンジアミン導入率は67%であった。
同様の合成実験により、エチレンジアミン導入率が50%のPAA−EDAも得た。
エチレンジアミン修飾ポリアクリル酸(PAA−EDA)の合成スキームを以下に示す。
(合成例2)マルトテトラオース修飾ポリアクリル酸(PAA−Mal)の合成
エチレンジアミン修飾ポリアクリル酸(PAA−EDA)(30.8mg、COOH 0.2mmol)、マルトテトラオース264.3mg(0.4mmol)をホウ酸バッファー(pH8.5)2mLに溶解させ、40℃、5日間撹拌した。その後、シアン化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)194.6mgをホウ酸バッファー(pH8.5)2.5mLに溶解させ、40℃、5日間撹拌した。撹拌後、得られた水溶液をMWCO=1,000の透析膜で、5日間透析し、凍結乾燥によって目的物であるPAA−Malの白色粉末を得た。反応式を以下に示す。
また、アミノ基定量によりマルトテトラオースの修飾率を算出した。ブランクの平均発光強度は9.873、反応前の平均発光強度は238.63、反応後の平均発光強度は12.83であった。
(合成例3)メチル化ポリビニルイミダゾール(PVIm−Me)の合成
pH応答性キャリアとして当研究室で開発したメチル化ポリビニルイミダゾールを用いた。
(1)ポリビニルイミダゾール(PVIm)の合成
ラジカル重合開始剤としてV−65(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))を用いたラジカル重合によりポリビニルイミダゾール(PVIm)をラジカル重合する。V−65は45℃で温度応答的に不対電子を持つので、C=C結合を有する1−ビニルイミダゾールに添加することでラジカル重合を行った。
1−ビニルイミダゾール300mg(3.19mmol、密度1.04g/mL、288.5μL)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)2,400μLに溶解させた。V65 15.8mg(0.064mmol)をDMF300μLに溶解させた。二種の溶液を混合させた後、ラジカル反応中におけるラジカルの消失を防ぐために溶液中の酸素を除去する必要があるため、窒素によるバブリングを40分間行った。ラジカル発生温度である45℃に予め設定したウォーターバスで24時間撹拌せずにインキュベートした。アセトン 80mL中に滴下することで再沈殿を行った。2,600rpmで5分間遠心分離し、上澄みのアセトンを除去した。少量のDMFに溶解させた後、再度アセトン 80mLによる再沈殿、遠心分離、上澄みの除去を行った。ドラフト内で24時間静置することでアセトンを揮発させた。得られた生成物をHO(20mL)に溶解させた後、MWCO:1,000の透析膜を用いて2日間の透析を行った。凍結乾燥を施して得られた物質を回収した。収量57.97mg、収率19.32%であった。
(2)メチル化ポリビニルイミダゾール(PVIm−Me)の合成
PVIm(30mg)をDMF(2.4mL)に溶解させ、ヨードメタン7.2mgを加え、24時間、40℃で撹拌した。反応後は、ジエチルエーテルで再沈殿を行い、上澄みを捨て、ドラフト内で残存したジエチルエーテルを飛ばした。残った溶液を純粋に溶解し、MWCO:1,000の透析膜を用いて水で透析後、凍結乾燥により目的生成物である白色粉末(収量28.7mg)を得た。H NMRの結果より、メチル化導入率が23.3%のPVIm−Meの合成を確認した(図10)。
(合成例4)PLD−PEGおよびPLD−PEG−CDの合成
(1)PLD−PEGの合成
ポリ−(α,β)−DL−アスパラギン酸(PLD)ナトリウム塩 20mg(0.2mmol/COOH)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt) 27.7mg(0.2mmol)、PyBOP((ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)105.1mg(0.2mmol)に脱水DMF10mL中に溶解し、超音波を照射しながら10分間インキュベートした後に、2mLの脱水DMF中に溶解したN−Boc−PEG(BO−020−EA) 200mg(0.1mmol)を加え、60℃オイルバス中で72時間撹拌した。反応液は室温まで放冷した後に蒸留水中で分画分子量3,500の再生セルロース膜を用いて5日間透析を行なった。その後5日間凍結乾燥を行い、得られた粉末に2mLのTFA(トリフルオロ酢酸)を加えて2時間撹拌し、反応液は40mLのジエチルエーテル中に沈殿した。上澄みは4割以上を捨てた後に再び40mLになるまでジエチルエーテルを加え、この操作を5回繰り返した。室温で一晩ジエチルエーテルを乾燥させた後、7.7mgのPLD−PEGを得た。
(2)PLD−PEG−CDの合成
(1)で得られたPLD−PEG 7.7mg(0.004mmol/PEG)と6−O−Ts−β−シクロデキストリン(CD) 235mg(0.18mmol)を脱水DMSO 10mLに溶解し、80℃オイルバス中で72時間撹拌し、反応液を室温まで放冷した後、水中で分画分子量3,500の再生セルロース膜を用いて8日間透析を行った。その後、凍結乾燥を48時間行い、9.0mgのPLD−PEG−CDを得た。
PLD−PEG−CDはゲル濾過クロマトグラフィー(GFC)によってフリーなCDの除去と分子量損失がないことを確認した。また、重水中でH−NMR測定し、δ5.1ppm(シクロデキストリンC1プロトン)、δ2.5−3.0ppm(PLDβH2)、δ3.5−3.9ppm(エチレングリコール)のピークからPLD−PEG−CDの合成を確認し、それぞれのピーク強度比からCOOH:NH:CD=59.4:36.6:4.0の修飾率を算出した(図13)。
(3)PLD−PEG−CDのFITCラベル化
(2)で合成したPLD−PEG−CD 2.5mg(3μmol/NH)は1.17mg(3μmol)のFITC(フルオレセインイソチオシアネート)とともに10mM KCO中で遮光しながら室温で2時間撹拌し、FITCラベル化を行った。その後分画分子量3,500の膜を用いて水中で遮光しながら6日間透析し、残った不溶性の物質を3,000rpmで10分間遠心分離することで取り除き、上清を2日間凍結乾燥することでFITCラベル化PLD−PEG−CDを得た。
(合成例5)PLD−EDA−CDの合成
(1)CD−EDA−Bocの合成
モノ−6−O−Ts−β−CD 500mg(0.4mmol)に脱水DMSO 10mLを加えて撹拌し、完全に溶解させた。モノ−6−O−Ts−β−CDのDMSO溶液にN−Boc−エチレンジアミン(N−Boc−EDA)100μL(0.63mmol)を加え、80℃のオイルバス中で72時間撹拌した。この反応液を室温で放冷し、蒸留水を加えて溶液を薄めた。この時発熱するのでもう一度室温で放置し、その後分画分子量100〜500の透析膜で3日間透析した。透析終了後、凍結乾燥を行い、薄茶色の個体であるCD−EDA−Boc 0.1479gを得た。
(2)CD−EDA−BocのBoc脱保護
CD−EDA−Boc 54mg(0.042mmol)にトリフルオロ酢酸(TFA)2mLを加え、1時間室温で撹拌した。この反応液に40mLのジエチルエーテルを加え、上澄みをピペットで取り除いた。この操作を5回繰り返した後、上澄みを出来る限り取り除き、完全にジエチルエーテルを揮発させた。その後、残った個体を蒸留水に溶解させ、凍結乾燥をして薄茶色の個体であるCD−EDA 0.0431gを得た。
(3)PLD−EDA−CDの合成
ポリ−(α,β)−DL−アスパラギン酸 15mg(0.15mmol/COOH)、CD−EDA 0.0355g(0.03mmol)、HOBt 0.0420g(0.3mmol)、PyBOP 0.4796g(0.9mmol)を脱水DMSO 5mLに溶解し、60℃のオイルバスで48時間撹拌した。反応液を室温で放置し、蒸留水を加えて溶液を薄めた。この時発熱するのでもう一度室温になるまで放置し、その後分画分子量3,500の透析膜で3日間透析した。このとき生じた不溶成分を遠心分離機(3,500rpm、30分間)によって遠心分離を行い、得られた上澄みのみを凍結乾燥し、茶色の個体であるPLD−EDA−CD 3.6mgを得た。
重水中において測定したH−NMRスペクトルより、PLDとCDのピークをそれぞれδ2.7−3.0ppm及び3.0−3.4ppm(PLD βH2)、δ3.6−4.1ppm(シクロデキストリンC2−6)に確認し、目的とするPLD−EDA−CDの合成を確認した(図15)。
(合成例6)PLD−CDの合成
6−O−Ts−β−CDの合成(Org. Biomol. Chem., 2011, 9, 7799)
β−シクロデキストリン(CD) 5g(12.3mmol)を41mLの水に添加し、0.6g(41mmol)の水酸化ナトリウムを溶解させた水酸化ナトリウム水溶液1.7mLを15分間かけて添加した。その後反応液を氷中に移し、2.5mLのアセトニトリルに溶解した1.02g(14.8mmol)のTsCl(p−トルエンスルホニルクロリド)を25分かけて添加した。その後氷中で4時間撹拌し、桐山ろ紙(No.5)によって沈殿をろ過し、ろ液を4℃で一晩静置した。生じた結晶を桐山ろ紙(No.4)で回収し、水とエタノールによって洗浄した。エタノールをデシケーター内で乾燥させ、1.05gの6−O−Ts−β−CDを得た。
PLD−EDAの合成
PLA−EDAの合成の一例を以下に示す。
PLD(ポリアスパラギン酸) 20mg(0.2mmol/COOH)、HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール) 27.7mg(0.2mmol)、PyBOP((ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)105.1mg(0.2mmol)を脱水DMF10mL中に溶解し、超音波を照射しながら10分間インキュベートした後に、2mLの脱水DMF中に溶解したN−Boc−EDA(N−ブトキシカルボニルエチレンジアミン) 465μL(3.0mmol)を加え、窒素パージし60℃オイルバス中で48時間撹拌した。反応液は室温まで放冷した後に20倍量のエタノール中に沈殿させ、30分間3,500rpmで遠心した。上澄みを捨て、新たにエタノールを40mL加えて30分間3,500rpmで遠心し、この操作を2回繰り返した。残った沈殿はエタノールを用いてバイアル瓶へ流し込み、70℃常圧で一晩エタノールを乾燥させた。生成した粉末に1mLのTFA(トリフルオロ酢酸)を加えて1時間室温で撹拌し、反応液は20mLのジエチルエーテル中に沈殿した。上澄みは4割以上を捨てた後に再び20mLになるまでジエチルエーテルを加え、この操作を5回繰り返した。室温で一晩ジエチルエーテルを乾燥させた後、残った固体を20mLの超純水に溶解し、5日間凍結乾燥し、3.9mgのPLD−EDAを得た。
PLD−EDAはまた、以下の手法によっても合成することができる。
PLD(ポリアスパラギン酸) 10mg(0.1mmol/COOH)とEDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)17.6μL(0.1mmol)を50mM炭酸水素ナトリウム水溶液中に溶解し、氷冷しながら1時間撹拌した後に、N−Boc−EDA(N−ブトキシカルボニルエチレンジアミン) 15.81μL(0.1mmol)を加え、室温で24時間撹拌した。反応液は分画分子量1,000の膜で純水に対して透析を行い、5日間凍結乾燥を行うことで11.3mgの白色の粉末を得た。生成した粉末に1mLのTFA(トリフルオロ酢酸)を加えて室温で1時間撹拌し、反応液は20mLのジエチルエーテル中に沈殿した。上澄みは4割以上を捨てた後に再び20mLになるまでジエチルエーテルを加え、この操作を5回繰り返した。室温で一晩ジエチルエーテルを乾燥させた後、残った固体を20mLの超純水に溶解し、5日間凍結乾燥し、8.3mgのPLD−EDAを得た。
PLD−CDの合成
以上の方法で合成したPLD−EDA 20mg(16.8μmol/EDA)と6−O−Ts−β−CD 110mg(0.88mmol)を脱水DMSO 10mLに溶解し、70℃オイルバス中で72時間撹拌した。反応液を室温まで放冷した後、水中で分画分子量3,500の再生セルロース膜を用いて透析を行った。その後、凍結乾燥を72時間行い、13.1mgのPLD−CDを得た。
PLD−CDの同定
PLD−CDはGFCによってフリーなCDの除去と分子量損失がないことを確認し、H−NMRよりCD由来のピークおよびPLD由来のピークを確認した。
PLD−CDのFITCラベル化
先の項で合成したPLD−CD 6.0mg(7.54μmol/NH)は2.9mg(7.45μmol)のFITC(フルオレセインイソチオシアネート)とともに10mM KCO中で遮光しながら室温で2時間撹拌し、FITCラベル化を行った。その後分画分子量3,500の膜を用いて水中で遮光しながら6日間透析し、残った不溶性の物質を3,000rpmで10分間遠心分離することで取り除き、上清を2日間凍結乾燥することでFITCラベル化PLD−CD(FITC−PLD−CD)を得た。
(合成例7)ポリ乳酸/ポリエチレンイミン(PLA/PEI)複合体の調製
平均分子量10,000のポリ乳酸(PLA)100mgを10mLのジメチルスルホキシドに溶解したものをMWCO:1,000の再生セルロース膜を用いて、透析を4日間行った。その溶液を凍結乾燥させ、PLA粒子を回収した。回収したPLA粒子10mgを50mLのPBSに分散させ、PLA粒子 0.2mg/mLの溶液を調製した。分岐ポリエチレンイミン(PEI) 0.1mg/mLの溶液を調製し、2つの溶液を様々な電荷比で混合し、室温で1時間静置した。1時間後、動的光散乱法(DLS)により粒径及びゼータ電位を測定した。
ポリエチレンイミンの構造を次式に示す:
図17は様々な電荷比におけるPLA/PEI複合体の粒径及びゼータ電位である。電荷比の上昇に伴いゼータ電位も上昇しているが、粒径の増大は確認されなかった。
この結果より、PBS中にPLA粒子が分散した状態のまま、粒子表面にPEIが静電相互作用したことが示唆される。
(合成例8)ポリ乳酸−ポリグリコール酸(PLGA)キャリアの調製
乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)は、乳酸とグリコール酸の組成比が1:1、平均分子量が10,000のものを使用した。まず、ヒストンH3K4トリメチル化酵素(MLL5)をコードしたプラスミドDNA 1.5mgとカチオン性脂質であるN−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチル硫酸(DOTAP) 3.5mgを複合化した。PLGA 100mgとヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるトリコスタチンA(TSA) 50nM、プラスミドDNA/DOTAP複合体は、アセトン:メタノール=2:1の混合溶媒に溶解した。この混合溶媒は、1%w/v ポリビニルアルコール溶媒に滴下し、400rpmで5分間攪拌した。得られた懸濁液は、10,000rpmで20分間遠心分離を行い、上清を除去し、蒸留水で洗浄した。上述の操作を2回行い、凍結乾燥した後、PLGAナノ粒子を回収した。得られたナノ粒子は、DLSにより粒径とゼータ電位を測定した。
PLGA、TSAおよびDOTAPの構造式を下記に示す。
1)乳酸−グリコール酸共重合体 (組成比1:1、分子量10,000)
2)トリコスタチンA(ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤)
3)N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチル硫酸(DOTAP)(カチオン性脂質)
結果:PLGAキャリアの粒径及びゼータ電位
得られたPLGAキャリアの粒径は、295±24nmであった。ゼータ電位は−36mVであった。ゼータ電位がマイナスであることは、PLGAに存在するカルボキシ末端が最表面に存在することを示唆している。
合成例9:ポリ乳酸粒子をコアに有するカチオン性脂質キャリアの調製
まず、平均分子量10,000であるポリ乳酸(PLA)40mgとヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)50nMをDMSOに溶解した。得られた溶液は、透析(MWCO=1,000)をしたのち凍結乾燥を行い、阻害剤を封入したPLA粒子を得た。次に、表面を被覆するカチオン脂質の調製は、以下の手順で行った。カチオン性脂質であるN−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチル硫酸(DOTAP)30mgをクロロホルム 4mLに溶解し、ロータリーエバポレータを用いて脂質薄膜を得た。得られた薄膜に対してPLA 40mgを懸濁させたPBS 5mLを添加し、1時間超音波処理を行った。その後、室温で1時間静置し、ヒストンアセチル化酵素(CAF)をコードしたプラスミドDNA 13mgと複合化することで目的のキャリアを得た。得られたキャリアの粒径・ゼータ電位はDLS測定により評価した。
ポリ乳酸(平均分子量10,000)の構成単位の構造式を以下に示す。TSAおよびDOTAPの構造式は、合成例7において示したとおりである。
結果:ポリ乳酸粒子をコアに有するカチオン性脂質キャリアの粒径・ゼータ電位
得られたキャリアの粒径は、319±174nmであった。ゼータ電位は+19mVであった。ゼータ電位がプラスであることは、PLA粒子表面にカチオン性脂質が存在していることを示唆している。
合成例10:カチオン性脂質としてDMRIE−コレステロールを使用した系
PLAコアDMRIE−コレステロールリポソームキャリアの調製
トリコスタチンA(TSA)2mgと平均分子量が10,000のポリ乳酸(PLA)10mgをジメチルスルホキシド 3mLを溶媒として混合し、1時間攪拌した。攪拌後、MWCO:1,000の再生セルロース膜を用いて4日間透析し、溶媒を蒸留水へと変換し、粒子懸濁液を得た。この溶液を凍結乾燥させ、PLA粒子を得た。次にリポソームを形成するため、クロロホルム 2mLにカチオン性脂質である1,2−ジミリスチルオキシプロピル‐3‐ジメチル‐ヒドロキシエチル・アンモニウム(DMRIE)と中性脂質であるコレステロールが等モル混合しリポソーム状になっているDMRIE−C 300μLを混合し、ロータリーエバポレータ(60℃、180rpm)で溶媒をとばし、脂質薄膜を得た。この脂質薄膜に凍結乾燥で得られたPLA粒子0.75mgをPBS 3mLに分散させたものを添加し、30分間氷水で冷やしながら超音波処理した。超音波処理後、室温にて1時間静置し、コアにTSA含有PLA粒子を含むDMRIE−コレステロールリポソームを得、コア粒子および調整後のキャリアの粒径およびゼータ電位をDLSにて測定した。
DMRIEおよびコレステロールの構造式を以下に示す。ポリ乳酸(平均分子量10,000)の構成単位の構造式は、合成例8において示したとおりである。
1)1,2−ジミリスチルオキシプロピル‐3‐ジメチル‐ヒドロキシエチル・アンモニウム(DMRIE)
2)コレステロール
結果:調製したキャリアの粒径及びゼータ電位
コアのPLA粒子の粒径は178nm、ゼータ電位は−64mVであり、調整後のキャリアの粒径は306nm、ゼータ電位は29mVであった。この結果はPLA粒子表面をカチオン性脂質のリポソームで被覆できたことを示唆している。

実施例1:リアルタイムPCRによるクロマチン弛緩率測定(PAA−EDA)
両性高分子であるPAA−EDA(合成例1)のクロマチン弛緩能評価は、EpiQ Chromatin Analysis Kit(Catalog#172- 5400,#172-5401(Bio-rad))を用いて下記のように行った(キットのプロトコル記載事項)。
ヒト肝癌由来細胞(HepG2)(2.3×10細胞/mL)を48ウェル(1プレート)に150μLずつ播種した。細胞播種24時間後、PAA−EDA(17.6μg)を細胞に添加した。サンプル添加24時間後、高分子をアスピレーターで除去後、新鮮な培地(200μL)と交換した。48時間後、クロマチン構造解析のサンプルを調製した。
クロマチン構造解析サンプル調製
[クロマチン消化]
EpiQ chromatin bufferを室温で溶解し、使用前にボルテックスした。1.5mLチューブ(未消化/Uと記す)を1サンプル分、1.5mLチューブ(消化/Dと記す)を2サンプル分用意した。上記チューブにchromatin bufferを分注した。
サンプル(処理ごとに) 2
Chromatin buffer(Dチューブにのみ添加) 240μL
Uのチューブには1サンプル分 chromatin buffer 120μLを分注した。チューブを37℃、10分インキュベートした。
Dチューブのchromatin buffer 100μLあたり2μLのEpiQ nucleaseを加えた。
サンプル(処置ごとに) 2
EpiQ nuclease(Dチューブにのみ添加) 5μL
軽く混和して、室温においた。
インキュベーターから培養細胞プレートを取り出し、培地を除去し、PBSで2回洗浄した(200μL)。未消化サンプルのウェルにUチューブから100μL添加、消化サンプルのウェルにDチューブから100μLそれぞれ添加した。バッファーが細胞を覆うようにプレートを揺らし、37℃、1時間でインキュベートした。37℃インキュベーターからプレートを取り出し、25μL EpiQ stop bufferを各ウェルに添加し、プレートを揺らし、37℃、10分間インキュベートした。37℃インキュベーターからプレートを取り出し、プレートを60度に傾けて底から細胞溶解液を溜めた。
200μLピペットを用い、各ウェルから細胞溶解液(125μL)を、印をつけたDNA lysis solutionの入った1.5mLのエッペンドルフチューブに移した。数回転倒混和し、5秒間スピンダウンした。各チューブに250μLの100%エタノールを添加した。数回転倒混和し、5秒間スピンダウンした。(このチューブで2時間保存可)
[遠心によるゲノムDNA精製]
細胞溶解液のチューブから1mLピペットを使って、準備しておいたミニカラムに液を移した。
カラムをセットしたチューブを12,000rpmで1分間遠心した。通過画分を捨て、カラムを同じ2mLのチューブに戻した。次に、DNA low-stringency wash solutionを各カラムに650μL添加し、カラムをセットしたチューブを12,000rpm,1分間で遠心した。通過画分を捨て、カラムを同じ2mLのチューブに戻した。その後、DNA high-stringency wash solutionを各カラムに650μL添加し、カラムをセットしたチューブを12,000rpm、1分間で遠心した。通過画分を捨て、DNA low-stringency wash solutionを各カラムに650μL添加した。カラムをセットしたチューブを12,000rpm、1分間で遠心した。通過画分を捨て、カラムを同じ2mLのチューブに戻した。
DNA low-stringency wash solutionを各カラムに650μL添加し、カラムをセットしたチューブを12,000rpm、1分間で遠心した。通過画分を捨て、カラムを同じ2mLのチューブに戻した。
カラムをセットしたチューブを12,000rpm、3分間で遠心して、カラムを乾燥させた。準備していた2mLキャップ付きチューブにミニカラムを移した。温めておいたDNA elution solution 52μLをカラムの中央に添加し、2分間静置後、カラムをセットしたチューブを12,000rpm、2分間で遠心した。再度、DNA elution solution 52μLをカラムの中央に添加し、2分間静置後、カラムをセットしたチューブを12,000rpm、2分間で遠心した。計104μLの溶出液を回収した。
回収した各サンプルのゲノムDNA量をUVスペクトル解析することで定量した。1ng/μLになるようにゲノムDNAをTE(Tris EDTA)バッファーで希釈した。
DNAは光路長が1cmのセルで測定した時に、260nmでの吸光度1.0が50μg/mLに相当するので、以下の式よりDNAの濃度を算出した。
DNA濃度=吸光度×50μg/mL×希釈率
またタンパク質が280nmに極大吸収を持ち、タンパク質の混入があると280nmと260nmへの吸光度の影響があることから、(260nmの吸光度)÷(280nmの吸光度)の値(レシオ)を算出することでDNAが綺麗かどうかを判断することが出来る。この場合、1.8〜2.0の間に入ると綺麗なDNAであるといえる。
[リアルタイムPCRでのサンプル解析]
解析に用いる遺伝子領域として、肝細胞マーカーであるα1−アンチトリプシン(AAT)を選択した。クロマチンが95%以上弛緩状態にあるハウスキーピング遺伝子(GAPDH)とクロマチンが高度に凝縮しているロドプシン(RHO)を、それぞれリファレンス遺伝子及びコントロール遺伝子として用いた。
以下の手順でリアルタイムPCRのためのサンプルを調製した。
・EpiQ chromatin SYBR supermixを室温で静置
・ゲノムDNAサンプルとターゲットのプライマーをトリプリケートに必要な分量を準備する。軽くボルテックスして室温に保存する。
・96ウェルプレートの3つのウェルにチューブから20μLずつ分注する。
・シーリングフィルムかキャップストリップでプレートをシールする。
・プレートを遠心する。
EpiQ chromatin analysis kitで提供しているリファレンス遺伝子とコントロール遺伝子のプライマーに適したプロトコルは以下の通りである。
100μMのFwプライマー及びRvプライマーをそれぞれ20μL測り取り、960μLのプライマーミックス(2μM)を調整した。
PCR反応溶液調整
2ウェル分:(サンプル+SYBR supermix)33μL+プライマーミックス 11μL
1ウェルあたり 20μLずつ添加
リアルタイムPCRプロトコルは以下の通りである。
ステップ1:96℃、5分
ステップ2:96℃、15秒
ステップ3:60−67℃、1分+プレート読み取り
ステップ4:80℃、30秒
ステップ5:ステップ2へ、39回繰り返し
ステップ6:溶解曲線、70−96℃
終了
解析に用いた遺伝子領域、リファレンス遺伝子及びコントロール遺伝子のそれぞれについて使用したFwプライマーおよびRvプライマーは以下の通りである。
AAT領域
Fw: 5’- CCTCTTGCGGCAACTCAAAGGGAGA-3’ (配列番号1)
Rv: 5’- CGACCCCCTCCTCCTTCTTGGTTCA-3’ (配列番号2)
RHO領域
Fw: 5’-AGGTCACTTTATAAGGGTCTGGGGG-3’(配列番号3)
Rv: 5’-AGTTGATGGGGAAGCCCAGCACGAT-3’ (配列番号4)
GAPDH領域
Fw: 5’-ACCTCCCATCGGGCCAATCTCAGTC-3’ (配列番号5)
Rv: 5’-GGCTGACTGTCGAACAGGAGGAGCA-3’ (配列番号6)
結果
リアルタイムPCRデータ解析を図8に示す。また、共焦点レーザー顕微鏡による核局在性評価の結果を図9に示す。
PAA−EDAを緑色の蛍光を示すFITCでラベル化し、DAPIで核を青で染色してレーザー顕微鏡で観察したところ、細胞核内にPAA−EDAが導入されていることが観察された(図9)。
細胞核内へ局在していることが確認出来たので、クロマチン弛緩効率をリアルタイムPCRで解析した。凝縮クロマチンのコントロール遺伝子として、一般的に細胞では発現していないとされているロドプシン(RHO)、弛緩クロマチンのコントロールとして、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHを用い、解析領域として肝細胞マーカーであるα1−アンチトリプシン(AAT)を用いた。リアルタイムPCRで解析したところ、α1−アンチトリプシンの遺伝子領域においてクロマチン構造が大きく弛緩(22→81%)されていることが明らかとなった。
実施例2:リアルタイムPCRによるクロマチン弛緩率測定(PVIm−Meと複合化したPAA−EDA)
(1)二元複合体の細胞核局在化およびクロマチン弛緩率
カチオン性pH応答性キャリアであるメチル化ポリビニルイミダゾール(PVIm−Me/合成例3)84μgとPAA−EDA(合成例1/エチレンジアミン導入率67%)9.0gを複合化させた二元複合体を調製した。PAA−EDAの代わりに当該二元複合体を用いた他は、実施例1と同様の実験を行うことにより、PVIm−Me複合化PAA−EDAの細胞核局在化及びクロマチン弛緩率について検討した。
結果
リアルタイムPCRデータ解析の結果を図11に、また、共焦点レーザー顕微鏡による核局在性評価の結果を図12に示す。
図11及び12に示すように、メチル化ポリビニルイミダゾール(PVIm−Me)とPAA−EDAの複合体は、共焦点レーザー顕微鏡観察から、細胞核内に局在化していることが確認され、リアルタイムPCRによるクロマチン構造解析から、クロマチン構造弛緩が誘起されていることが確認された。
(2)二元複合体とPAA−EDA単独の効果の比較、及びエチレンジアミン導入率による効果の差
両性高分子として、カルボキシル基を有するポリアクリル酸(PAA)に、エチレンジアミン修飾することでカチオン基を導入したエチレンジアミン修飾ポリアクリル酸(PAA−EDA)(エチレンジアミン導入率50、67%)を合成した(合成例1)。PAA−EDAの細胞取り込み率を向上させるため、カチオン性pH応答性キャリアであるメチル化ポリビニルイミダゾール(PVIm−Me)とPAA−EDA複合化させた二元複合体を上記(1)に記載のように調製し、実施例1と同様の実験を行った。PAA−EDAの細胞核局在化は、共焦点レーザー顕微鏡により観察した。PAA−EDAによるクロマチン構造の弛緩は、リアルタイムPCRを用いて解析した。解析に用いた遺伝子領域は、肝細胞マーカーであるα1−アンチトリプシン(AAT)を選択し、クロマチンが95%以上弛緩状態にあるハウスキーピング遺伝子(GAPDH)とクロマチンが高度に凝縮しているロドプシン(RHO)をコントロールとして用いた。
先ず、PAA−EDA単独での弛緩効果を解析した。その後、二元複合体調製時のPVIm−Meの量(MeIm/COOH比=N/C比の最適化と、エチレンジアミン導入率の違いによる弛緩効果の違いを検討した。
PAA−EDAが核内に送達されているかは、FITCで蛍光ラベル化したPAA−EDAを用い、蛍光顕微鏡で観察を行った。その結果、細胞核内でFITC由来の蛍光が観察でき、細胞核にPAA−EDAが導入できていることを確認した。また、エチレンジアミン導入率が高いほど効率的に核へ導入されることが分かった。
次に、クロマチン構造解析を、リアルタイムPCRを用いて評価した。生体内でクロマチン構造の弛緩作用がある酵素を発現するプラスミド(HAT)/PVIm−Me複合体を添加した細胞をポジティブコントロールとして用い、未処理の細胞と比較した。その結果、HAT/PVIm−Me複合体の弛緩作用は、AATの遺伝子領域においてクロマチン弛緩率が未処理細胞と比較して約2倍であった。また、PAA−EDAを単独で添加した実験では、AATの遺伝子領域において、未処理細胞よりも約2.5倍程度の弛緩効果を示し、生体内酵素よりも効率的なクロマチン構造弛緩が可能であることを初めて明らかにした(データは示さない)。
次に、PAA−EDA 核内送達を高めるため、PAA−EDA(EDA67%)/PVIm−Me二元複合体を調製した。その結果、N/C=8の条件で調製した二元複合体は、さらに高いクロマチン構造弛緩を示すことが明らかとなった。
PVIm−MeによるPAA−EDAの細胞内取り込みの促進が、クロマチンと相互作用するPAA−EDAを増やし、クロマチン構造の弛緩を誘起したと考えられる。最後に、修飾率が異なるPAA−EDAとPVIm−Meの二元複合体でHepG2細胞に対して処理した結果を示す。EDA修飾率が67%のPAA−EDAを用いた場合に、クロマチン構造の弛緩率の向上が確認でき、修飾率の低下とともにクロマチン構造の弛緩率が低下した。これは、DNAと相互作用するカチオン部位が多いほどクロマチンへの作用効果が向上し、EDA導入率が最も高いPAA−EDAにおいてクロマチン構造の弛緩が増大したと考えられる。
実施例3:共焦点顕微鏡によるPLD−PEG−CD(合成例4)の細胞内導入の観察
スライドガラス上にHeLa細胞3×10細胞/ウェルの濃度で播種して37℃、5%CO下でインキュベートした。8時間後に培地を交換し、PLD−PEG−CD 45μg/ウェルを添加した。さらに16時間37℃、5%CO下でインキュベートし、培地を全て吸引した後にPBS(−)で洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定した後にDAPI溶液(1万分の1希釈)により細胞核を染色した。PBS(−)で2回洗浄した後、50%グリセロールで試料をマウントし、遮光して保管した。
共焦点顕微鏡観察はオリンパス社のFV1000−Dを用いて行い、それぞれ波長はFITC・DAPIに最適化された波長により励起・観察した。
結果
DAPIで染色した細胞核の領域に、FITCラベル化したPLD−PEG−CDが局在していることが示された(図14)。
実施例4:共焦点顕微鏡によるPLD−EDA−CD(合成例5)の細胞内導入の観察
スライドガラス上にHeLa細胞3×10細胞/ウェルの濃度で播種して37℃、5%CO下でインキュベートした。24時間後に培地を交換し、PLD−EDA−CD 45μg/ウェルを添加した。さらに24時間37℃、5%CO下でインキュベートし、培地を全て吸引した後にPBS(−)で洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定し、1万分の1希釈したDAPI溶液により核を染色した。PBS(−)で3回洗浄した後、50%グリセロールで試料をマウントし、遮光して保管した。
結果
DAPIで染色した細胞核の領域に、FITCラベル化したPLD−EDA−CDが局在していることが示された(図16)。
実施例5:PLD−CD(合成例6)の細胞内導入の観察とクロマチン構造弛緩評価
共焦点顕微鏡によるPLD−CDの細胞内導入の観察
スライドガラス上にHeLa細胞3×10細胞/ウェルの濃度で播種して37℃、5%CO下でインキュベートした。24時間後に培地を交換し、FITC−PLD−CD 75μg/ウェルを添加した。さらに24時間37℃、5%CO下でインキュベートし、培地を全て吸引した後にPBS(−)で洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定した後にDAPI溶液(1万分の1希釈)により細胞核を染色した。PBS(−)で2回洗浄した後、50%グリセロールで試料をマウントし、遮光して保管した。
共焦点顕微鏡観察はオリンパス社のFV1000−Dを用いて行い、それぞれ波長はFITC・DAPIに最適化された波長により励起・観察した。
結果
細胞核の領域に、PLD−CDが局在していることが示された(図24)。ポリアニオン高分子であるPLDはほとんど細胞内に取り込まれなかったが、PLDにβ−CDを修飾したPLD−CDの細胞内への取り込み率はPLDと比べて約6倍に増加した。また、カベオラ経路阻害剤によりPLD−CDの細胞内への導入が抑制されたことから、PLD−CDがカベオラ経路を経由し、核内に送達された可能性が示唆された。なお、CD修飾を行っていないPLD−EDAは核への局在が観察されなかった。
リアルタイムPCR法によるクロマチン構造弛緩評価
Chromatin Digest and Analysis ComponentsおよびAurum Total RNA Mini Kit(Bio Rad製)を使用して、PLD−CDのクロマチン構造弛緩をリアルタイムPCR法により評価した。
48ウェルプレート上にHeLa細胞を5×10細胞/ウェルの濃度で播種した。37℃、5%CO下で24時間インキュベートした後に培地を交換し、PLD−EDA 67μg/ウェル、PLD−CD 117μg/ウェルを消化サンプル・未消化サンプルにそれぞれ添加した。さらに24時間37℃、5%CO下でインキュベートし、培地を全て吸引した後にPBS(−)で洗浄し、消化サンプルにはEpiQ Nuclease(キットに添付)を含むChromatin Buffer(キットに添付)を100μL/ウェル、非消化サンプルにはNucleaseを含まないChromatin Buffer(キットに添付)を100μL/ウェルをそれぞれ添加し、37℃で1時間インキュベートした。その後25μL/ウェルのEpiQ STOP Buffer(キットに添付)を添加し、37℃で10分間インキュベートした。各ウェル中の細胞懸濁液は125μLを採集し、375μLのDNA Lysis Solution(キットに添付)と混合した。そこに250μLの100%エタノールを添加し、さらに混合した後、キットに含まれるカラムに全量を移し、12,000rpmで1分間の遠心操作を行った。通過液を廃棄し、Low stringency(キットに添付) 650μL/サンプルをカラムに添加して12,000rpmで1分間の遠心操作を行った。さらにカラムにHigh stringency(キットに添付)を650μL添加した後、同様に12,000rpmで1分間の遠心操作を行った。通過液を廃棄し、Low stringency(キットに添付)650μL/サンプルを添加して12,000rpmで1分間の遠心操作を行うステップを2回繰り返した。通過液を廃棄し、カラムを乾燥させるために12,000rpmで3分間の遠心操作を行った。最後に、70℃に熱したElution solution(キットに添付)を52μLずつカラムに添加し、2分間室温でインキュベートした後に12,000rpmで2分間の遠心操作を行い、DNAを溶出させた。溶出操作を2回行った後、得られたDNA溶液はQuant-iTTM PicoGreen(登録商標) dsDNA Assay Kitで濃度定量を行い、1ng/μLになるようにTEバッファーで希釈した。
リアルタイムPCRのプライマーはChromatin Digest and Analysis Components (Bio Rad) に含まれているもの(RHO・GAPDH)と、北海道システムサイエンスから購入したもの(ALB・AAT)を用いた。ALB領域の増幅のために用いたフォワード(Fw)プライマーおよびリバース(Rw)プライマーの配列は以下の通りである。
Fw: 5’-ACACTGAGAACTAAATTGCAAACACCA-3’(配列番号7)
Rv: 5’-GGACAAACGGAGGGAAATTAGCACTAA-3’(配列番号8)
また、RHO、GAPDH、およびAATの各領域の増幅のために用いたプライマーの配列は実施例1において示したとおりである。
プライマーはフォワードプライマー・リバースプライマーそれぞれ2μMずつのプライマーミックスとして用いた。リアルタイムPCR反応液は鋳型DNA溶液(1ng/μL)5μL、プライマーミックス(2μL)5μL、iTaq universal SYBR(キットに添付)10μLの計20μL/ウェルで調整した。反応プロトコルは96℃,5分→[96℃,15秒→65℃,1分→蛍光検出]×44ステップに設定し、Bio RadのCFX ConnectTM リアルタイムPCR検出システムを用いてPCR反応を行った。
リアルタイムPCRによる解析は8回行い、統計学的手法(スミルノフ・グラッブス検定)により、最大3つの値を棄却して最終的な平均クロマチン弛緩率を算出した。
結果
PLD−CDを添加することで、ALB領域のクロマチン弛緩率が4.8%から20.6%へ有意に弛緩した(p<0.05)。
実施例6:PLGAキャリア(合成例8)によるヒストンアセチル化およびヒストンメチル化制御
ヒストンH3K4トリメチル化酵素(MLL5)をコードしたプラスミドDNAとトリコスタチンAを封入したPLGAキャリアは、1×10細胞/ウェルのヒト骨髄性白血病細胞(HL60)に添加し、二日間インキュベートした。インキュベート終了後、HL60細胞はPBSで洗浄し、Cell Lysisを用いて細胞を溶解した。得られた細胞溶解液は、還元剤を添加した。得られたサンプルのヒストンアセチル化量およびヒストンH3K4トリメチル化は、ウエスタンブロット法により評価した。一次抗体は、アセチル化ヒストンH3K9,K18抗体、トリメチル化ヒストンH3K4抗体およびβ−アクチンを使用した。二次抗体はHRP標識抗体を用いた。
結果
図18にPLGAキャリアを添加した細胞におけるヒストンアセチル化量を示す。PLGAキャリアを添加した細胞は、TSAを添加した細胞と同様に、コントロールと比較してヒストンアセチル化量が1.5倍程度上昇していた。図19に、PLGAキャリアを添加した細胞におけるヒストンメチル化量を示す。PLGAキャリアを添加した細胞は、コントロールと比較してヒストンH3K4トリメチル化量が1.5倍程度上昇していた。
実施例7:PLGAキャリア(合成例8)によるHL60細胞の分化制御
ヒストンH3K4トリメチル化酵素(MLL5)をコードしたプラスミドDNAとトリコスタチンAを封入したPLGAキャリアは、1×10細胞/ウェルのヒト骨髄性白血病細胞(HL60)に添加し、二日間インキュベートした。HL60細胞の顆粒球への分化率は、NBT染色によって算出した。
結果
図20にはPLGAキャリアを添加したHL60細胞の顆粒球への分化率を示す。TSAのみを添加した細胞は35%が顆粒球へ分化していた。MLL5のみを添加した細胞では分化は確認されなかった。一方で、PLGAキャリアを添加した細胞は、45%が顆粒球へ分化していた。
実施例8:ポリ乳酸粒子をコアに有するカチオン性脂質キャリア(合成例9)によるヒストンアセチル化制御
ヒストンアセチル化酵素(CAF)をコードしたプラスミドDNAとトリコスタチンAを封入したキャリアは、1×10細胞/ウェルのヒト骨髄性白血病細胞(HL60)に添加し、二日間インキュベートした。インキュベート終了後、HL60細胞はPBSで洗浄し、Cell Lysisを用いて細胞を溶解した。得られた細胞溶解液は、還元剤を添加した。得られたサンプルのヒストンアセチル化量は、ウエスタンブロット法により評価した。一次抗体は、アセチル化ヒストンH3K9,K18抗体およびβ−アクチンを使用した。二次抗体はHRP標識抗体を用いた。
結果
図21には、ポリ乳酸粒子をコアに有するカチオン性脂質キャリアを添加した細胞のアセチル化ヒストン量を示す。キャリアを添加した細胞は、コントロールと比較してアセチル化ヒストン量が2.5倍程度上昇していた。さらに、TSAを単独で添加した場合よりも優れたアセチル化量の向上を示した。
実施例9:ポリ乳酸粒子をコアに有するカチオン性脂質キャリア(合成例9)によるHL60細胞の分化制御
ヒストンアセチル化酵素(CAF)をコードしたプラスミドDNAとトリコスタチンAを封入したキャリアは、1×10細胞/ウェルのヒト骨髄性白血病細胞(HL60)に添加し、二日間インキュベートした。HL60細胞の顆粒球への分化率は、NBT染色によって算出した。
結果
図22には、ポリ乳酸粒子をコアに有するカチオン性脂質キャリアを添加したHL60細胞の顆粒球への分化率を示す。キャリアを添加した細胞は2、4、8日後においてそれぞれ42、50、63%が顆粒球へ分化していた。各日数において、TSAを単独で添加した場合よりも優れた分化率を示した。
実施例10:PLAコアDMRIE−コレステロールリポソームキャリア(合成例10)の遺伝子発現評価
合成例10のリポソームをルシフェラーゼレポーターベクターのプラスミドDNA(pGL3)と様々な電荷比で複合化させ1時間おき、ルシフェラーゼアッセイによりこの複合体の遺伝子発現を評価した。複合体を添加する前日にHeLa細胞を1×10細胞/ウェルで播種し、次の日に培地を交換し、複合体を添加した。翌日に培地を交換し、その48時間後にcell lysisで細胞を溶解させ、ルシフェラーゼ基質を加え遺伝子発現評価を発光強度によって確かめた。
結果
図23にルシフェラーゼアッセイによる遺伝子発現評価の結果を示す。キャリアはすべての電荷比で高い遺伝子発現を示した。一方、電荷比2以上においては著しい細胞毒性が見られた(データは示さない)。

Claims (1)

  1. クロマチン構造制御剤であって、以下のi)からiv)
    i)ヒストンアセチル化阻害剤;
    ii)ヒストン脱アセチル化阻害剤;
    iii)ヒストンメチル化阻害剤;および
    iv)ヒストン脱メチル化阻害剤;
    からなる群より選択される阻害剤、生分解性高分子粒子、カチオン性脂質またはカチオン性高分子、および外来的に発現させる遺伝子を含むDNA、を含む複合体キャリアを含み、
    ここで当該複合体キャリアは、当該阻害剤が当該生分解性高分子粒子内に封入されてなり、該生分解性高分子粒子表面がカチオン性脂質またはカチオン性高分子で被覆され、そして該表面に存在するカチオンにより該DNAと複合化される構造を有する、
    前記クロマチン構造制御剤。
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