JP6002106B2 - 炭化ケイ素光導波路素子 - Google Patents

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Description

本発明は、炭化ケイ素(SiC)を基材とする光導波路に関する。
炭化ケイ素(SiC)は、ダイヤモンド、炭化ホウ素に続く地球上で3番目に硬さである高硬度と、圧縮による変形を受けにくいという高強度の性質を有しており、機械的強度の優れた材料である。炭化ケイ素の熱特性としては耐熱性に優れ、熱分解温度は2,545℃であり、空気中でも1,600℃付近まで安定している。また、炭化ケイ素(SiC)は、熱伝導率が金属類に匹敵するほど高く(炭化ケイ素焼結体の熱伝導率:270W/mK)、かつ、線熱膨張率が、4.5×10-6(1/℃)と金属に比べ低くいため、熱伝導性と相まって熱衝撃に極めて高い耐性を有している。
炭化ケイ素は半導体であり、電気抵抗が発熱体として使用できる抵抗領域から絶縁体に近い領域まで10桁以上変化することが知られている(非特許文献1)。また、バンドギャップ幅が広い(Siに比べ2〜3倍)とともに、飽和速度(cm/sec)が高く、シリコン(Si)の10倍以上の高周波動作が可能である。
炭化ケイ素は絶縁破壊電界が高いため、SiよりON抵抗を下げても耐圧を維持でき、熱伝導度が大きいことも相俟って、半導体接合部分のジャンクション温度が250℃に達していても動作が可能である。このことから、500℃付近まで使用できる高温半導体などパワーデバイス用材料として利用されている。
純粋な炭化ケイ素は無色透明であり、可視光から光通信に利用される赤外光領域に至る幅広い波長帯において材料特有の光吸収特性を有していない。しかしながら、工業製品としての炭化ケイ素は、実際には、窒素、アルミニウムなどIII族、V族元素の原子が結晶格子に入り込んで作る不純物準位により、緑ないし黒の着色を有していることが多い。半導体材料として用いられる基板は、n型ドープ6H-SiCは青緑色(エメラルドグリーン)、n型ドープ4H-SiCは緑色、3C-SiCは黄色の着色を有している。このため、材料としては、理想的な状態では非常に幅広い光波長帯域での光素子の可能性を有しているが、実用化されていない現状にある。
加えて、炭化ケイ素は、良質なグラフェンを作製する基材としても利用できることが知られている。炭化ケイ素を1000℃以上の高温で熱処理することにより、炭化ケイ素表面が熱分解を起こし、炭化ケイ素中のシリコン(Si)が低酸素下で、SiOとして脱離する事により、炭化ケイ素表面に単層〜数原子層のグラフェンが形成されることが知られている。
一方、グラフェンは、炭素原子とそのsp2結合からできた蜂の巣のような平面六角形格子構造を有する2次元炭素原子のシート状物質であり、厚さ単原子〜数原子の原子層構造を有する(非特許文献2)。グラフェンは、厚さが約0.3nmの非常に薄い状態でも安定な物質であることから、単位面積当たりの質量が0.77mg/m2と非常に軽量なシート状材料としての特徴を有している。
グラフェンの弾性限界は、約20%である。また、破壊強度が130GPa以上であるため、非常に強靭な物質であり、ヤング率が鉄の約5倍の約1.1TPaであり、非常に機械的強度に優れた材料でもある。さらに、グラフェン面内方向に、約2300 W/mKのダイヤモンドを超える約5,000W/mKの熱伝導度を有し、欠陥が無ければ高圧のHe気体も遮蔽可能であるガスバリアー性をも有している。
グラフェンの電子的性質として、一般的な既存の3次元的材料とは異なり、半金属、あるいはバンドギャップがゼロの半導体としての性質を有している。グラフェンの2次元的な六角形のブリュアンゾーンにおける6個の頂点付近で、低エネルギーでのエネルギーの分散関係(E-k)が直線的となり、ディラックコーンと呼ばれる線形分散の特異なバンド構造となる。このため、スピン1/2の粒子に関するディラック方程式で記述される相対論的粒子のように振舞うことに起因して、キャリア電子の有効質量がゼロとなり、室温下で約200,000(cm2/Vs)以上の非常に高いキャリア移動度を有する。グラフェンのキャリア移動度は、GaAs の約30倍(GaAs:8500(cm2/Vs)、またはSiの100倍以上である。
また、グラフェンは、電流密度の許容量も大きく、銅(106A/cm2)の電流密度の1000倍以上高い108 A/cm2以上の耐電流密度を有しているため、高速電子デバイスへの応用やパワーデバイスへの応用も期待されている。
グラフェンの光学的性質として、厚さ1原子層での垂直光透過率が約2.3%という非常に高い光吸収特性を有する。ディラックコーンと呼ばれる線形分散を有するバンド構造を有するため、光吸収帯域は非常に広帯域となることが知られている。従って、可視光〜ミリ波といった様々な波長域で光相互作用を示すため、これまであまり有効な光デバイスが得られなかった光波長帯域における光デバイス応用が期待されている。
また、グラフェンは、高強度の光入射によってカー効果などの光非線形性を示すため、より高強度のレーザー照射を行ったグラフェンでは、通常の可飽和吸収に加えて、非線形光学的カー効果による非線形的な位相シフトが生じることが知られている。
以上のようにグラフェンは、様々な特異な性質を有し、光・電子デバイスをはじめ、様々なデバイス応用が期待されている。
「SiCパワーデバイス技術」(2009年3月25日「グリーンIT」が切り拓く未来社会創造シンポジウム ) 「グラフェンの高速トランジスタ応用への注目と課題」(科学技術動向 2010 年5 月号29-42 ページ)
グラフェンを炭化ケイ素表面で作製すると、良質でドメインサイズが比較的大きく、優れた電子特性を有するグラフェン膜が得られることが知られている。そのためグラフェン膜の電子デバイスのみならず光デバイス応用への期待も高まっている。
しかしながら、炭化ケイ素表面で形成されたグラフェン膜を、別の基板上に転写して加工するために、炭化ケイ素表面から剥離・転写する場合、グラフェン自体に破損等ダメージを与えずに炭化ケイ素基板をエッチング等で除去することが非常に困難であり、炭化ケイ素から作製されたドメインサイズの大きなグラフェンを別の基板や素子表面に実装することは困難であった。
そこで、グラフェンを製膜した炭化ケイ素基板自体を光デバイス基板として利用することが考えられるが、炭化ケイ素の高硬度のため、高精度な微細加工か困難であるとともに、高速イオンやプラズマなどをグラフェン膜上から行うと、グラフェン膜自体が破壊されるため、光デバイスに求められる0.1ミクロンオーダーの高精度加工が困難であった。
また、単に炭化ケイ素表面に光導波路を作製しようとする場合、光硬化性樹脂などを用いて、炭化ケイ素基板表面に埋め込み光導波路を作製する方法、または別に作製した光導波路を表面に張り付けることによって実現可能である。しかし、それでは炭化ケイ素上で作製したデバイスとの光結合等が取り難く、位置合わせなどのために、結局、炭化ケイ素基板の微細な形状加工が必要となってしまう。
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、これまであまり利用されていなかった炭化ケイ素自体を光デバイス用部材として応用出来る方法を見出し、本発明を完成するに至った。
より具体的には、本発明は、耐久性の高い炭化ケイ素の表面に、簡便な方法によって光導波路を形成することにより、炭化ケイ素の光導波路素子としての機能を実現するものである。本発明の方法を用いれば、炭化ケイ素基板は、表面の平坦性のみを有すれば良く、表面のグラフェン膜を積層したまま、表面のグラフェン膜への任意の光回路の作製が実現可能となる。また、本発明の方法であれば、任意に、炭化ケイ素やその表面に作製されたグラフェンへも光結合を取ることが容易となる。
記課題を解決するための本発明の光導波路素子の作製方法は、炭化ケイ素基板上に、光導波路パターンの窓を開けたリフトオフ用のフォトレジスト層を形成する工程と、前記フォトレジスト層が形成された前記炭化ケイ素基板上に、使用する光波長帯において炭化ケイ素よりも高い屈折率を有する高屈折材料を堆積する工程と、前記高屈折率材料が堆積された前記フォトレジストを除去する工程とを備え、前記フォトレジスト層を形成する工程の前に、前記炭化ケイ素基板を酸素濃度1%未満の環境で1000℃以上に加熱し、前記炭化ケイ素基板の表面に単層もしくは10原子層以下のグラフェン層を作製する工程をさらに備えたことを特徴とする。
また、高屈折率材料を堆積する工程において、高屈折率材料を使用する光波長の1/2以下の厚さになるまで堆積させることを特徴とする。
以上説明したように、本発明によって、炭化ケイ素基板の表面に光導波路素子が簡便な手段によって実現され、炭化ケイ素の優れた材料特性や、パワートランジスタ等の高強度デバイス、またはグラフェンとの集積化が可能となる。光通信をはじめとする光素子への応用が期待でき、また、炭化ケイ素を用いた電子デバイス分野で用いられる種々の光・電子集積デバイスへの応用が期待でき、その産業上の利用価値は極めて大である。
本発明の第1および第2の実施形態にかかる光導波路構造の断面模式図である。 図1の光導波路構造の高屈折率材料のA−A’断面における膜厚方向の屈折率分布と膜厚方向の0次モードの光電界強度分布を示す模式図である。 本発明の第1および第2の実施形態にかかる光導波路構造の作製工程を示す図である。 本発明の第3および第4の実施形態にかかる光導波路構造の断面模式図である。 図3の光導波路構造の高屈折率材料のB−B’断面における膜厚方向の屈折率分布と膜厚方向の0次モードの光電界強度分布を示す模式図である。 本発明の第3および第4の実施形態にかかる光導波路構造の作製工程を示す図である。 本発明の実施例1にかかる光導波路解析モデルを示す図である。 本発明の実施例1にかかる光導波路モードの解析結果を示す図である。 本発明の実施例2にかかる光導波路解析モデルを示す図である。 本発明の実施例2にかかる光導波路モードの解析結果を示す図である。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態は、光導波路構造を実現するために、使用する光波長帯において炭化ケイ素よりも高い屈折率を有する高屈折率材料からなる薄膜を、炭化ケイ素表面に形成することを特徴としている。
図1に、第1および第2の実施形態の光導波路構造の断面を示す。第1の実施形態の光導波路構造は、炭化ケイ素1と、高屈折率材料からなる薄膜2とから構成される。炭化ケイ素1、および高屈折率材料からなる薄膜2の上に破線で示される楕円3は、光閉じ込めモードを示している。
図2に、図1のA−A’断面における膜厚方向の屈折率分布と膜厚方向の0次モードの光電界強度分布を示す。図2において、実線は屈折率分布を示し、破線は伝搬光の0次モードの光電界強度分布を示している。図2に示すように、炭化ケイ素基板の表面に垂直な方向では、高屈折率部分は、高屈折率部分より低屈折の空気と炭化ケイ素基板とに挟まれたサンドイッチ構造となるため、光の閉じ込め構造が実現し、光導波路のコアとなる。一方、炭化ケイ素基板の表面に平行な方向では、高屈折率部分の両端の外側が空気となるため、光の閉じ込め構造が実現できる。
高屈折率部分の材料としては、使用光波長域において出来るだけ透明である方が望ましく、金属、半導体、または、これらの酸化物などを用いることができる。特に光通信などに利用されている近赤外域の光を用いる場合には、高屈折率材料として光透過性が高いアモルファスシリコン、ポリシリコン、InPなどが適用可能である。
高屈折率材料部分の形状としては、光閉じ込め構造が得られれば良いのであるが、実際には剥離が懸念されるため、膜厚は、20μm以下が望ましい。炭化ケイ素基板の表面は、光伝搬を乱さない程度に平坦であればよく、炭化ケイ素基板の表面に平行な方向に任意の回路パターンが形成可能である。
図3に、本発明の第1、または第2の実施形態の作製工程を示す。まず、炭化ケイ素基板1上(図3(a))に、光導波路パターンの窓を開けたリフトオフ用のフォトレジスト層4を形成する(図3(b))。その上から、電子線蒸着や、ECRスパッタなどの方法を用いて、例えばシリコンなどの高屈折材料2,5を堆積する(図3(c))。フォトレジスト4を溶解させ不要部分を除去し、光導波路素子が得られる(図3(d))。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態に加え、使用する光波長帯において炭化ケイ素表面に形成する、炭化ケイ素よりも高い屈折率を有する高屈折率材料の膜厚が、使用する光波長の1/2以下であることを特徴としている。本実施形態の光導波路構造は、第1の実施形態と同様、図1に示される。また、膜厚方向の屈折率の断面プロファイルは、第1の実施形態と同様、図2に示される。本実施形態の作製方法は、第1の実施形態と同様であり、その作製工程は図3に示される。
炭化ケイ素基板の表面に作製され、または実装された光デバイスと、光導波路とを光結合させる場合、例えば、波長1.55μm光で屈折率が約2.6の炭化ケイ素よりも高屈折率である高屈折率材料2がコアとなるので、光の閉じ込めが非常に強い。そのため、高屈折率材料部分の膜厚を、使用する光波長の1/2以下と非常に薄くすると、コアとなる高屈折率材料部分から光が浸み出す。
このとき、下部クラッドとなる炭化ケイ素の屈折率が上部クラッドとなる空気の屈折率よりも十分大きいため、炭化ケイ素基板側に光が浸み出し、炭化ケイ素表面に作製したデバイスとの光相互作用を起こしやすくなるという特徴を有している。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態は、炭化ケイ素基板の表面に単層もしくは10原子層以下のグラフェン膜を形成し、その上に、炭化ケイ素よりも使用する光波長帯において高い屈折率を有する高屈折率材料を形成することを特徴としている。
図4に、第3および第4の実施形態の光導波路構造の断面を示す。また、図5に、図4のB−B’断面における膜厚方向の屈折率分布と膜厚方向の0次モードの光電界強度分布を示す。
上述したとおり、優れた電子伝導特性や高速電子デバイスとしての機能を有するグラフェンが炭化ケイ素表面を熱分解することにより製膜されることで、炭化ケイ素上に電気配線を形成することができる。このため、炭化ケイ素上のグラフェンの表面に高屈折率材料を製膜し、光導波路を形成すれば、簡便な方法で、炭化ケイ素上のグラフェンによって形成した電気配線の表面に光導波路を形成することが可能となる。グラフェンの膜厚が単〜数原子層と非常に薄いため、光伝搬に与える影響も非常に小さい。
図6に、本発明の第3、または第4の実施形態の作製工程を示す。まず、低酸素環境中で1000℃以上に加熱することにより炭化ケイ素基板1の表面を熱分解させ、炭化ケイ素基板1の表面にグラフェン層6を作製する(図6(a))。その表面に光導波路パターンの窓を開けたリフトオフ用のフォトレジスト層を形成する(図6(b))。その上から、電子線蒸着法を用いて、例えばシリコンなどの高屈折材料2、5を堆積する(図6(c))。このとき、ECRなどのプラズマによる堆積方法を用いると、グラフェン膜中にプラズマによる欠陥が発生するため、蒸着のような方法が望ましい。その後、フォトレジストを溶解させ不要部分を除去し、光導波路素子が得られる(図6(d))。
ここで低酸素環境中とは、10Pa以下の減圧真空中、もしくは、大気圧(1atm)にてアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の不活性ガスで置換した、酸素濃度1%未満の環境を示す。
(第4の実施形態)
図4に、第3および第4の実施形態の光導波路構造の断面を示す。また、図5に、図4のB−B’断面の、膜厚方向の屈折率分布と膜厚方向の0次モードの光電界強度分布を示す。本発明の第4の実施形態は、第3の実施形態において使用する光波長帯において、炭化ケイ素基板の表面に、炭化ケイ素よりも高い屈折率を有する高屈折率材料の膜厚が、使用する光波長の1/2以下であることを特徴としている。本実施形態の作製方法は、第3の実施形態と同様であり、その作製工程は図6に示される。
本実施形態のように高屈折率材料の膜厚が使用する光波長の1/2以下と非常に薄くすると、第2の実施形態と同様に、コアとなる高屈折率材料部分から光が浸み出す。このとき、炭化ケイ素表面側に光の閉じ込め中心がずれるため、炭化ケイ素表面に形成されているグラフェンと光が非常に効果的に相互作用を起こす。
上述したとおり、非常に強くかつ広帯域に光相互作用を有するグラフェンが炭化ケイ素表面の熱分解することにより製膜されるため、光導波路の伝搬光の浸み出し量を制御することにより、様々な光デバイスを実現することが可能となる。例えば、TE偏波の伝搬光のみを吸収させる吸収型の偏波分離素子や、光減衰器、グラフェンの非線形性を利用した可飽和吸収素子などへの適用が可能となる。
本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
第1および第2の実施形態の原理確認をするため、光閉じ込め構造の光モード解析を行った。計算解析には、LUMERICAL社の解析ソフト、MODE SOLUTIONを使用した。
図7に、計算解析に用いた解析モデルを示す。光波長(λ)は、光通信等に利用されている1550nmを用いた。PML(Perfectly Matched Layer)境界の領域中に、X―Y座標のX軸が炭化ケイ素基板の表面と一致するように炭化ケイ素基板を配置し、X―Y座標のX軸に平行に、またY座標が正の方向に、かつ、Y軸を中心とした線対称となるように、高屈折率材料を配置した。
また、高屈折率材料としては、屈折率n=3.5のアモルファスシリコン8を用い、アモルファスシリコン8の炭化ケイ素基板の表面と平行な方向の幅は光波長(λ)の2倍:2λ=3100nmとし、アモルファスシリコンの炭化ケイ素基板の表面と垂直な方向の膜厚は、光波長(λ)の1/10〜1倍の値で可変させて計算した。また、基本モードだけではなく、高次モードのモード解析も実施した。
図8に、モード計算解析により得られたTE偏波の0次モードの導波モードの電界強度分布とTM偏波の0次モードの電界強度分布を示す。その結果、TEモード偏波については、波長の2倍の幅(2λ)を有していることから、どの高屈折率材料の膜厚についても、基板面内方向に2つのモードピークを有する光伝搬モードで安定していることが明らかになった。
また、第2の実施形態にて効果を示す炭化ケイ素基板の表面への光電界の浸み出し(Y=0での光電界強度)については、高屈折率材料のアモルファスシリコンの膜厚が、薄くなるに従って炭化ケイ素基板表面での光電界強度が大きくなったことから、アモルファスシリコンの膜厚は波長の1/2(λ/2)以下の方が望ましいことがわかる。
TMモード偏波ではどの高屈折率材料の膜厚についても、高屈折率材料の膜厚が波長以下であるため、単一のモードピークでの光伝搬モードとなっている。また、第2の実施形態にて効果を示す炭化ケイ素基板表面への光電界の浸み出し(Y=0での光電界強度)については、高屈折率材料のアモルファスシリコンの膜厚が、薄くなるに従って炭化ケイ素基板表面での光電界強度が大きくなり、膜厚が波長の1/2(λ/2)以下の方が望ましいことがわかる。
以上より、どの高屈折率材料の膜厚についても、光は十分に閉じ込められ光導波路として機能していることが示され、光導波路として機能していることが分かる。
第3および第4の実施形態の原理確認をするため、光閉じ込め構造の光モード解析を行った。計算解析には、LUMERICAL社の解析ソフト、MODE SOLUTIONを使用した。
図9に、計算解析に用いた解析モデルを示す。光波長(λ)は、光通信等に利用されている1550nmを用いた。PML境界7の領域中に、X―Y座標のX軸が炭化ケイ素基板の表面と一致するように炭化ケイ素基板を配置し、X―Y座標のX軸に平行で、Y座標が正の方向に、かつ、Y軸を中心とした線対称となるように、グラフェンと高屈折率材料を逐次配置した。
また、炭化ケイ素基板上に膜厚5nm、解析領域幅のグラフェン(屈折率:2.4)を配置した。高屈折率材料としては、屈折率n=3.5のアモルファスシリコン8を用い、アモルファスシリコン8の炭化ケイ素基板の表面と平行な方向の幅は光波長(λ)の2倍:2λ=3100nmとし、アモルファスシリコンの炭化ケイ素基板の表面と垂直な方向の膜厚は、光波長(λ)の1/10〜1倍の値で可変させて計算した。また、基本モードだけではなく、高次モードのモード解析も実施した。
図10に、モード計算解析により得られたTE偏波の0次モードの得られた導波モードの電界強度分布と、TMモード偏波の0次モードの電界強度分布を示す。その結果、TEモード偏波については、波長の2倍の幅(2λ)を有していることから、どの高屈折率材料の膜厚についても、基板面内方向に2つのモードピークを有する光伝搬モードで安定している。
また、第4の実施形態にて効果を示すグラフェン部分への光電界の浸み出し(Y=0での光電界強度)については、TEモード偏波において高屈折率材料のアモルファスシリコンの膜厚が薄くなるに従って、グラフェン部分での光電界強度が大きくなることがわかり、膜厚が波長の1/2(λ/2)以下の方が望ましいことがわかる。
TMモード偏波では、どの高屈折率材料の膜厚についても、高屈折率材料の膜厚が波長以下であるため、単一のモードピークでの光伝搬モードとなっている。また、第4の実施形態にて効果を示す炭化ケイ素基板表面への光電界の浸み出し(Y=0での光電界強度)については、TMモード偏波においても高屈折率材料のアモルファスシリコンの膜厚が薄くなるに従って、グラフェン部分での光電界強度が大きくなることがわかり、膜厚が波長の1/2(λ/2)以下の方が望ましいことがわかる。
以上より、どの高屈折率材料の膜厚についても、光は十分に閉じ込められ光導波路として機能していることが示され、光導波路として機能していることが分かる。
1 炭化ケイ素基板
2、5 高屈折率材料薄膜
3 光閉じ込めモード
4 フォトレジスト
6 グラフェン
7 PML境界
8 アモルファスシリコン

Claims (3)

  1. 炭化ケイ素基板上に、光導波路パターンの窓を開けたリフトオフ用のフォトレジスト層を形成する工程と、
    前記フォトレジスト層が形成された前記炭化ケイ素基板上に、使用する光波長帯において炭化ケイ素よりも高い屈折率を有する高屈折率材料を堆積する工程と、
    前記高屈折率材料が堆積された前記フォトレジスト層を除去する工程と
    を備え、
    前記フォトレジスト層を形成する工程の前に、前記炭化ケイ素基板を酸素濃度1%未満の環境で1000℃以上に加熱し、前記炭化ケイ素基板の表面に単層もしくは10原子層以下のグラフェン層を作製する工程をさらに備えたことを特徴とする光導波路素子の作製方法。
  2. 前記高屈折率材料を堆積する工程において、前記高屈折率材料を使用する光波長の1/2以下の厚さになるまで堆積させることを特徴とする請求項に記載の光導波路素子の作製方法。
  3. 炭化ケイ素基板上に、光導波路パターンの窓を開けたリフトオフ用のフォトレジスト層を形成する工程と、
    前記フォトレジスト層が形成された前記炭化ケイ素基板上に、使用する光波長帯において炭化ケイ素よりも高い屈折率を有する高屈折率材料を堆積する工程と、
    前記高屈折率材料が堆積された前記フォトレジスト層を除去する工程と
    を備え、
    前記高屈折率材料を堆積する工程において、前記高屈折率材料を使用する光波長の1/2以下の厚さになるまで堆積させることを特徴とする光導波路素子の作製方法。
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