JP5999822B2 - 混合物、変性物の製造方法 - Google Patents

混合物、変性物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、銅を用いた変性物およびそれを用いた触媒に関する。さらに本発明は、該触媒を用いた電池に関する。
金属を担持させた炭素材料は、不均一触媒として工業的に、酸素添加反応、酸化カップリング反応、脱水素反応、水素添加反応、酸化物分解反応等の電子移動を伴うレドックス反応における触媒(レドックス触媒)として作用し、様々な化合物の製造に使用されている。さらに、添加剤、改質剤、電池、センサーの材料、吸着剤、消臭剤、フィラー、種々の用途にも使用されている。
特に、燃料電池用電極触媒においては通常白金の微粒子を導電性カーボンに担持させたものを利用している。しかし白金は、コストが高い、埋蔵量が限られているため将来的に資源が枯渇する可能性がある、という課題が指摘されている。そのため、近年では、白金に代替可能な物性を有し、かつ比較的安価で資源量が多い金属を用いた燃料電池用電極触媒が検討されている。
例えば、鉄塩や銅塩を、炭水化物や糖のようなカーボンの原料となる材料とともに熱処理することで、燃料電池用電極触媒を作製できることが報告されている(特許文献1、非特許文献1)。
特開2008−21638号公報
Chemical communications, 2007, 2879.
しかしながら、上記触媒では、触媒活性が未だ不十分であり、さらなる触媒活性が望まれていた。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、高い触媒活性を発現する変性物を提供することを目的とする。また、該変性物を電極触媒として用いた燃料電池を提供することをあわせて目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の変性物は、以下の(1)〜(4)を含む混合物を、加熱処理、放射線照射処理又は放電処理の何れかの変性処理を行うことにより得られることを特徴とする。
(1)バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、およびニッケルからなる群から選ばれる1つ以上の金属を含む、分子量が300以上の金属錯体
(2)イミダゾール骨格を含む分子量800以下の複素環式化合物
(3)分子量300未満の銅化合物
(4)カーボン
本発明においては、前記変性処理は、前記混合物が600℃〜1500℃に熱せられる処理条件で行われることが望ましい。
本発明においては、前記複素環式化合物が、分子構造内にイミダゾール骨格を2〜4つ有する化合物であることが望ましい。
本発明においては、前記金属錯体が、三座以上の配位結合が可能な配位子と、該配位子が配位結合する金属原子とを有することが望ましい。
本発明においては、前記金属錯体がピロール骨格若しくはピリジン骨格、又はこれらの両方を含むことが望ましい。
また、本発明の燃料電池用触媒組成物は、上述の変性物を含むことを特徴とする。
また、本発明の燃料電池用触媒組成物は上述の変性物と、カーボンおよび高分子のいずれか一方または両方を含むことを特徴とする。
また、本発明の燃料電池用電極触媒は、上述の燃料電池用触媒組成物からなることを特徴とする。
また、本発明の膜電極接合体は、上述の燃料電池用電極触媒を有する触媒層と、前記触媒層が一面側に形成された電極と、前記触媒層に接して積層された電解質膜と、を有することを特徴とする。
また、本発明の燃料電池は、上述の膜電極接合体を有することを特徴とする。
本発明の変性物によれば、従来と比較して高い触媒活性を有する触媒を提供することができる。
本発明の好適な一実施態様の燃料電池のセルについての縦断面図である。
[変性物]
以下、本発明の変性物について説明する。
本発明の第一の実施形態である変性物は、以下の(1)〜(4)を含む原料を、加熱処理、放射線照射処理又は放電処理の何れかの変性処理を行うことにより得られる。
(1)バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、およびニッケルからなる群から選ばれる1つ以上の金属を含む、分子量が300以上の金属錯体
(2)イミダゾール骨格を含む分子量800以下の複素環式化合物
(3)分子量300未満の銅化合物
(4)カーボン
(金属錯体)
まず、金属錯体について説明する。金属錯体は、金属原子(以下、金属イオンの状態を含む)と有機配位子とを有し、有機配位子を結合する原子の一部と金属原子との間に配位結合を持つ化学種である。金属種は、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、およびニッケルからなる群から少なくとも1つ選ばれる。
金属錯体の分子量は300以上であるが、400以上が好ましく、500以上がさらに好ましい。また、金属錯体の分子量の上限は2000が好ましく、1700がさらに好ましく、1500が特に好ましい。
金属錯体を構成する有機配位子は、金属との相互作用を強めるため、三座以上の配位結合が可能な配位子が好ましい。そのような配位子としては、ターピリジン、シッフ塩基、ポルフィリン、フタロシアニン、コロール、アザクラウンエーテル、クラウンエーテル、ポルフィリノイド、クリプタンド、スフェランドおよびそれらの誘導体が好ましい。その中でも、具体例として以下の構造式(a)〜(u)で表される化合物が好ましい。
これらの中でも、金属原子を内包することが可能な環状化合物であることがより好ましい。環状化合物を配位子として用いると、錯形成した後に金属原子が配位子から遊離しにくく、金属錯体を高分子やカーボンと混合して混合物としたときや、変性処理のときにも金属錯体の構造を維持しやすいためである。
Figure 0005999822
前記金属錯体において、フェノール骨格が存在する場合、該フェノール骨格中のヒドロキシ基がプロトンを放出してフェノラート骨格となり、金属原子と配位していてもよく、ピロール骨格が存在する場合、該ピロール骨格中のプロトンを放出して、金属原子と配位していてもよい。
上記記載の構造式(a)〜(u)は置換基を有していてもよい。置換基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲノ基;ヒドロキシ基;カルボキシル基;メルカプト基;スルホン酸基;ニトロ基;ホスホン酸基;炭素数1〜4のアルキル基を有するシリル基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロへキシル基、ノルボニル基、n−ノニル基、シクロノニル基、n−デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、アダマンチル基、n−ドデシル基、シクロドデシル基、n−ペンタデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコシル基等の直鎖、分岐又は環状であり、炭素数1〜50の1価の飽和炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピオキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、ノルボニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基等の直鎖、分岐又は環状であり、炭素数1〜50のアルコキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基等の炭素数6〜60のアリール基等が挙げられ、好ましくは、ハロゲノ基、メルカプト基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、炭素数1〜20の1価の飽和炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリール基であり、より好ましくは、クロロ基、ブロモ基、カルボキシル基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、シクロへキシル基、ノルボニル基、アダマンチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基である。なお、本明細書において、「置換基」という場合には同様である。
三座以上の有機配位子の中でもピロール若しくはピリジン骨格、またはこれら両方を含む配位子が化学的安定性の点から好ましい。具体的な構造式を挙げると、上記構造式(a)〜(n)で表される化合物が好ましい。この中でも、4座で配位しうるものが、金属との相互作用をより強めるため、さらに好ましく、具体的に上記構造式(a)〜(m)で表される。
上述の有機配位子は、分子構造に含まれるヘテロ原子が金属原子と配位結合することにより、金属錯体を形成する。また、金属錯体中に2個以上の金属原子が存在する場合には、該金属原子同士がヘテロ原子を介して架橋配位していてもよい。
前記金属錯体中の金属種は、レドックス活性が高くなるので、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケルがより好ましく、鉄、コバルトが特に好ましい。また、金属錯体が複数の金属を有する場合、金属の種類は同一でも異なっていてもよい。
また金属錯体は、中性分子、金属錯体を電気的に中性にする対イオンを有していてもよい。
中性分子としては、溶媒和して溶媒和塩を形成する分子等が挙げられ、好ましくは、水、メタノール、エタノール、n−プロパノ−ル、イソプロピルアルコール、2−メトキシエタノール、1,1−ジメチルエタノール、エチレングリコール、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、クロロホルム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリエチルアミン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、メチルエチルエーテル、1,4−ジオキサンであり、より好ましくは、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、クロロホルム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリエチルアミン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサンである。
金属錯体が錯イオンである場合、該金属錯体と錯塩を形成する対イオンは、該金属錯体を電気的に中性にする陰イオンが選ばれる。例えば、錯イオンが正に帯電している場合、対イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫化物イオン、酸化物イオン、水酸化物イオン、水素化物イオン、亜硫酸イオン、リン酸イオン、シアン化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸水素イオン、トリフルオロ酢酸イオン、チオシアン化物イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、アセチルアセトナート、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン等が挙げられ、好ましくは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、酸化物イオン、水酸化物イオン、水素化物イオン、リン酸イオン、シアン化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、アセチルアセトナート、テトラフェニルホウ酸イオンである。
また、錯イオンが負に帯電している場合、対イオンとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、4級アンモニウムイオンが挙げられる。
なお、対イオンが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。また、中性分子とイオンとが共存していてもよい。
以上の金属錯体は、混合物を調製する際に、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
(イミダゾール骨格を含む複素環式化合物)
次に、イミダゾール骨格を含む複素環式化合物(以下、複素環式化合物と略することがある)について説明する。変性物の原料である複素環式化合物は、2〜4つのイミダゾール骨格を分子内に有するものが好ましく、具体的には以下の構造式で表される化合物が例示できる。
Figure 0005999822
(式中、Rは水素原子または、一価の炭化水素基を表す。)
上記式に記載のRの一価の炭化水素基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロへキシル基、ノルボニル基、n−ノニル基、シクロノニル基、n−デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、アダマンチル基、n−ドデシル基、シクロドデシル基、n−ペンタデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコシル基等の直鎖、分岐又は環状であり、炭素数1〜50の1価の飽和炭化水素基を表す。
は好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロへキシル基、ノルボニル基、n−ノニル基、シクロノニル基、n−デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、アダマンチル基、n−ドデシル基、シクロドデシル基、n−ペンタデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコシル基であり、さらに好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基であり、特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−ブチル基である。
変性物の原料である複素環式化合物としては、上記複素環式化合物の中でも、一つの金属に対してより多くの配位ができ得る化合物が好ましく、(A)〜(G)が好ましい。その中でも、(A)〜(D)および(F)がさらに好ましく、(A)〜(D)が特に好ましく、(A)がとりわけ好ましい。
なお、上記複素環式化合物は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
(銅化合物)
次に、銅化合物について説明する。変性物の原料である銅化合物は、分子量が300未満である。ここで、「銅化合物」には、銅塩および銅錯体が含まれているものとする。具体的には、フッ化銅(I)、フッ化銅(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(I)、ヨウ化銅(II)、酢酸銅(II)、水酸化銅(II)が挙げられる。中でも、塩化銅(II)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(II)、酢酸銅(II)、水酸化銅(II)が好ましく、塩化銅(II) 、ヨウ化銅(II)、酢酸銅(II)がさらに好ましく、塩化銅(II) 、酢酸銅(II)が特に好ましい。
前記銅化合物は、中性分子が溶媒和して、溶媒和塩を形成した状態で用いてもよい。中性分子の具体的な例としては、上記記載の中性分子が挙げられる。
(カーボン)
次に、カーボンについて説明する。カーボンとは、炭素材料全般を意味するが、導電性を持ったカーボン(以下、導電性カーボンと称することがある)が触媒用途として好ましい。
導電性カーボンは一般的に、炭化水素ガス、石油、原油、ピッチ等を原料に用いて1250℃以上の高温下で燃焼させることにより合成されている。より高温で燃焼させた方が、カーボンのグラファイト化が進むことから、燃焼の温度は1300℃以上が好ましく、1400℃以上がより好ましく、1500℃以上が特に好ましい。導電性カーボンは具体的に、黒鉛、無定形炭素、カーボンブラックが例示される。この中でも、担体として用いる場合にはカーボンブラックが好ましい。さらに、カーボンブラックとしては、ノーリット(登録商標)、ケッチェンブラック(登録商標)、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、アセチレンブラック(登録商標)等の導電性カーボン粒子がより好ましい。特に好ましくは、ケッチェンブラック、バルカン、ブラックパール、アセチレンブラックであり、とりわけ好ましくは、ケッチェンブラック、バルカンである。なお、これらのカーボンに窒素を化学修飾した窒素修飾導電性カーボンを用いていてもよい。
導電性カーボンとしては、1×10−2S/cm以上の導電率を示す導電性カーボンが好ましく、1×10−1S/cm以上の導電率を示す導電性カーボンがより好ましく、1S/cm以上の導電率を示す導電性カーボンが特に好ましく、10S/cm以上の導電率を示す導電性カーボンがとりわけ好ましい。
(混合物の調製方法)
金属錯体、イミダゾール骨格を含む複素環式化合物、銅化合物およびカーボンを含む混合物を調製する方法としては、混合物を構成する成分を分散媒に分散させた状態で混合し、その後に分散媒を留去する湿式法、分散媒を用いずに各成分を混合して機械的な混合処理を行う乾式法が例示できるが、より均質な混合物が得られることから、湿式法が好ましい。
湿式法としては、混合物を構成する成分をそれぞれ適切な分散媒に分散させてから混合して混合物を調製してもよく、共通する分散媒に各成分を逐次加えながら混合して混合物を調製してもよい。また、金属錯体、複素環式化合物、銅化合物およびカーボンは、別個に分散媒に分散させてから混合してもよいし、2種類をあらかじめ分散媒に分散させたのち、残りの1種類を分散媒に分散させて混合してもよいし、すべてを同時に分散媒に分散させて混合してもよい。
湿式法で混合する場合に用いる分散媒としては、具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコ−ル、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−メトキシエタノール、1,1−ジメチルエタノール、エチレングリコール、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、クロロホルム、ジクロロベンゼン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリエチルアミン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、メチルエチルエーテル、1,4−ジオキサンが例示できる。中でも好ましくは、水、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコ−ル、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−メトキシエタノール、1,1−ジメチルエタノール、アセトン、クロロホルム、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、メチルエチルエーテル、1,4−ジオキサンであり、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコ−ル、イソプロピルアルコール、クロロホルム、ジメトキシエタン、メチルエチルエーテル、1,4−ジオキサンであり、特に好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、クロロホルム、ジメトキシエタンである。
混合時の温度は、冷却、加熱、室温条件のいずれでもよいが、温度として0℃〜250℃が好ましく、より好ましくは、10℃〜200℃であり、特に好ましくは20℃〜180℃である。用いる分散媒として、混合時の温度よりも沸点が高いものを選択することが好ましい。
前記混合物を調製する際、金属錯体、複素環式化合物、銅化合物およびカーボンの量は、混合物中の固形分を100質量部としたとき、金属錯体の量は、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることが特に好ましい。金属錯体の量の上限は、60質量部であることが好ましく、50質量部であることがより好ましく、40質量部であることが特に好ましい。
また、複素環式化合物の量は、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることが特に好ましい。複素環式化合物の量の上限は、60質量部であることが好ましく、50質量部であることがより好ましく、40質量部であることが特に好ましい。
さらに、銅化合物の量は、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることが好ましい。銅化合物の量の上限は、60質量部であることが好ましく、50質量部であることがより好ましく、40質量部であることが特に好ましい。
そして、カーボンの量は、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることが特に好ましい。カーボンの量の上限は、90質量部であることが好ましく、80質量部であることがより好ましく、70質量部であることが特に好ましい。
なお、混合物には、金属錯体、複素環式化合物、銅化合物、カーボン以外の成分を含んでいてもよい。
(変性処理方法)
次に変性処理の方法について説明する。
本実施形態の変性物は、上述の混合物を、加熱処理、放射線照射処理又は放電処理のいずれかの方法により変性処理することで得られる。変性処理は、上述の混合物(通常、固形分からなる。)が、600℃〜1500℃に熱せられる条件で行う。
変性処理時の加熱温度の下限としては、700℃が好ましく、800℃がさらに好ましい。また、この加熱温度の上限は、1200℃が好ましく、1100℃がさらに好ましい。
なお、上述の混合物は、そのまま変性処理してもよいが、変性処理に先だって予め15℃〜200℃、1333Pa以下の減圧下で、6時間以上、真空乾燥機等により乾燥させた後に変性処理することが好ましい。このような事前乾燥を行うことで、混合を湿式法で行った場合に用いる分散媒のような低分子量物質を除去する。事前乾燥時の圧力条件は、除去対象とする化合物の性質に応じて適宜選択することができる。
変性処理は、処理前後の質量減少率(即ち、処理前の混合物の質量に対する、処理後に得られる変性金属錯体の質量の減少率)が、好ましくは1%以上、より好ましくは2%、特に好ましくは5%以上となるまで行えばよい。また、質量減少率の上限は、好ましくは80%、より好ましくは70%、特に好ましくは60%である。
また、処理後の変性物は炭素含有率が高いと、得られる変性物を電極触媒として用いた場合、該電極触媒の安定性が良好である。そのため、炭素含有率が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上、とりわけ好ましくは40質量%以上となるように前記変性処理を行うことがよい。
変性処理のなかでも、加熱処理が好ましく、加熱処理では、加熱時間を、変性処理を行う雰囲気や加熱温度によって調整すればよく、変性処理を行う雰囲気とするためのガスを密閉又は通気させた状態において、室温から徐々に温度を上昇させ目的とする温度に到達後、すぐに冷却してもよいが、目的とする温度に到達後、温度を維持することで、徐々に混合物を加熱することが、耐久性をより向上させることができるため好ましい。ここで、目的とする温度に到達後の保持時間は、好ましくは1時間〜100時間であり、より好ましくは1時間〜40時間であり、さらに好ましくは2時間〜10時間であり、特に好ましくは2時間〜3時間である。
変性処理が加熱処理である場合、加熱処理を行う装置には、オーブン、ファーネス、IHホットプレート等の装置を用いることができる。また加熱処理は、水素ガス、ヘリウムガス、窒素ガス、アンモニアガス、酸素ガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガス、アセトニトリルガスの雰囲気下、又はこれらのうちの二種以上の混合ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。さらに、水素ガス、ヘリウムガス、窒素ガス、アンモニアガス、酸素ガス、ネオンガス、アルゴンガス、又はこれらのうちの二種以上の混合ガスの雰囲気下で行うことがより好ましく、水素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、アルゴンガス、又はこれらのうちの二種以上の混合ガスの雰囲気下で行うことが特に好ましい。
変性処理が放射線照射処理である場合には、混合物にα線、β線、中性子線、電子線、γ線、X線、電波、レーザー等の電磁波、粒子線等の放射線、好ましくは、X線、電子線、レーザー、より好ましくは、マイクロ波、レーザーを照射すればよい。
変性処理が放電処理である場合には、混合物にコロナ放電、グロー放電、プラズマ処理(低温プラズマを含む)を行うが、中でも低温プラズマ処理を行うことが好ましい。
なお、放射線照射処理、放電処理は、通常、高分子フィルムの表面改質処理に用いられる機器、処理方法に準じて行うことが可能であり、例えば、文献(日本接着学会編、「表面解析・改質の化学」、日刊工業新聞社、2003年12月19日発行)等に記載された方法を用いることができる。
放射線照射処理、放電処理は、通常、10時間以内、好ましくは3時間以内、より好ましくは1時間以内、特に好ましくは30分以内で行えばよい。
以上のようにして、本実施形態の変性物を製造することができる。このようにして得られる本実施形態の変性物は、高い触媒活性を発現する。
本実施形態の変性物の用途としては、燃料電池用の電極触媒や膜劣化防止剤(例えば、固体高分子電解質型燃料電池用や水電気分解用のイオン伝導膜の劣化防止剤)、過酸化水素等の過酸化物の分解触媒、芳香族化合物の酸化カップリング触媒、排ガス・排水浄化用触媒(例えば、脱硫・脱硝触媒)、色素増感太陽電池の酸化還元触媒層、二酸化炭素還元触媒、改質水素製造用触媒、酸素センサー、医農薬や食品の抗酸化剤等が挙げられる。
本実施形態の変性物を芳香族化合物の酸化カップリング触媒として用いる場合、ポリフェニレンエーテルやポリカーボネート等のポリマー製造に関わる触媒として使用することができる。使用形態としては、変性物を反応溶液に直接添加する方法や、ゼオライトやシリカ等に担持させる方法が挙げられる。
本実施形態の変性物を脱硫・脱硝触媒としても用いる場合、使用形態としては、工場からの排ガスが通気する塔に充填する方法や、自動車のマフラーに充填する方法が挙げられる。
さらに、本実施形態の変性物は、改質水素中のCOを変成させる触媒として使用することもできる。改質水素中にはCOなどが含まれており、改質水素を燃料電池として使用する場合、燃料極がCOの被毒を受けることが問題であり、COの濃度を極力低減することが望まれる。具体的な使用形態については、例えば、Chemical Communication,3385(2005)に記載の方法等が挙げられる。
これらの用途に用いる場合、変性物は加工して形状を変えてもよい。
[組成物]
また、本実施形態の変性物は、そのまま単独で用いてもよいが、その他の成分と併用して燃料電池用触媒組成物(以下、単に「組成物」という。)として用いてもよい。ここで、変性物と併用するその他の成分としては、カーボン、または高分子が挙げられる。なお、本実施形態の組成物において、各成分は、それぞれ一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。カーボンとしては前記記載のカーボンと同様の具体例を挙げることができる。
含まれる高分子としては、ナフィオン(登録商標)、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(アリーレン・エーテル)、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルキノキサレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリベンズイミダゾール、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリピリジン及びその単独重合体にスルホン酸基が導入されたものがよく、より好ましくは、スルホン酸基が導入された上記高分子である。
本実施形態の組成物において、その他の成分の合計含有量は、本実施形態の変性物100質量部に対して、10質量部〜300質量部が好ましく、30質量部〜200質量部がより好ましい。
本実施形態の組成物において、高分子の含有量は、本実施形態の変性物100質量部に対して、10質量部〜300質量部が好ましく、30質量部〜200質量部がより好ましい。
その他、本実施形態の組成物は、上述の変性物の用途と同様の用途に用いることができる。その際、組成物は加工して形状を変えてもよい。また、本実施形態の組成物は、燃料電池用電極触媒として用いることができる。
[膜電極接合体]
次に、本発明の膜電極接合体について説明する。
本発明の膜電極接合体は、上述の組成物からなる燃料電池用電極触媒を含む触媒層と、前記触媒層が一面側に形成された電極と、前記触媒層に接して積層された電解質膜とを有する。その製造には、上述の組成物を、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールまたは、それらの混合液に分散させたのち、ナフィオン(商称登録)等の電解質膜に、ダイコーターやスプレーを用いて塗布する。また、組成物を適当な大きさに成型したのち、前述の電解質膜に熱転写することにより、圧着させる。該方法により、膜電極接合体を作製することができる。
膜電極接合体は、セパレータ、ガスケット、集電板を組み合わせて、エンドプレート等で固定し、燃料電池セルとして用いるなど、燃料電池に用いることができる。
[燃料電池]
次に、本発明の変性物を用いた燃料電池の好ましい一実施態様について、添付の図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の好適な一実施態様の燃料電池のセルについての縦断面図である。図1では、燃料電池10は、電解質膜12(プロトン伝導膜)と、これを挟む一対の触媒層14a,14bとから構成された膜電極接合体20を備えている。燃料電池10は、膜電極接合体20の両側に、これを挟むようにガス拡散層16a,16b及びセパレータ18a,18b(セパレータ18a,18bは、触媒層14a,14b側に、燃料ガス等の流路となる溝(図示せず)が形成されていると好ましい)を順に備えている。なお、電解質膜12、触媒層14a,14b及びガス拡散層16a,16bとからなる構造体は、一般的に、膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)と呼ばれることがある。
触媒層14a、14bは、燃料電池における電極層として機能する層であり、これらの一方がアノード電極層となり、他方がカソード電極層となる。かかる触媒層14a、14bには、電極触媒(即ち、本発明の変性物である)とナフィオン(登録商標)に代表されるプロトン伝導性を有する電解質とを含む。
前記電解質膜(プロトン伝導膜)としては、例えば、Nafion NRE211、Nafion NRE212、Nafion112、Nafion1135、Nafion115、Nafion117(いずれもデュポン社製)、フレミオン(旭硝子社製)、アシプレックス(旭化成社製)(いずれも商品名、登録商標)を用いることができる。
ガス拡散層16a,16bは、触媒層14a,14bへの原料ガスの拡散を促進する機能を有する層である。このガス拡散層16a,16bは、電子伝導性を有する多孔質材料により構成されることが好ましい。前記多孔質材料としては、多孔質性のカーボン不織布、カーボンペーパーが、原料ガスを触媒層14a,14bへ効率的に輸送することができるために好ましい。
セパレータ18a,18bは、電子伝導性を有する材料で形成されている。前記電子伝導性を有する材料としては、例えば、カーボン、樹脂モールドカーボン、チタン、ステンレスが挙げられる。
次いで、燃料電池10の好適な製造方法を説明する。
まず、電解質を含む溶液と本発明の組成物とを混合してスラリーを形成させる。これを、カーボン不織布やカーボンペーパーの上にスプレーやスクリーン印刷法により塗布し、溶媒等を蒸発させることで、ガス拡散層16a,16b上に触媒層14a,14bが形成された積層体を得る。得られた一対の積層体をそれぞれの触媒層が対向するように配置するとともに、その間に電解質膜12を配置し、これらを圧着することにより、MEGAが得られる。このMEGAを、一対のセパレータ18a,18bで挟み込み、これらを接合させることで、燃料電池10が得られる。この燃料電池10は、ガスシール等で封止することもできる。
なお、ガス拡散層16a,16b上への触媒層14a,14bの形成は、例えば、ポリイミド、ポリ(テトラフルオロエチレン)等の基材の上に、前記スラリーを塗布し、乾燥させて触媒層を形成させた後、これをガス拡散層に熱プレスで転写することにより行うこともできる。
また、燃料電池10は、固体高分子型燃料電池の最小単位であるが、単一の燃料電池10(セル)の出力は限られている。そこで、必要な出力が得られるように複数の燃料電池10を直列に接続して、燃料電池スタックとして使用することが好ましい。
本発明の燃料電池は、燃料が水素である場合は固体高分子型燃料電池として、また、燃料がメタノールである場合は直接メタノール型燃料電池として動作させることができる。
本発明の燃料電池用電極触媒を用いた燃料電池は、例えば、自動車用電源、家庭用電源、携帯電話、携帯用パソコン等のモバイル機器用小型電源として有用である。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に制限されるものではない。
(実施例1)
・金属錯体(A)の合成
金属錯体(A)を以下の[化3]で示す反応式に従って合成した。
Figure 0005999822
金属錯体(A)の配位子として用いる化合物である、反応式左辺に示す化合物(X)は、Tetrahedron.,1999,55,8377に記載の方法を用いて合成した。
窒素雰囲気下において、化合物(X)1.39gと酢酸コバルト4水和物(Aldrich社製)1.245gとを含んだ2−メトキシエタノール(TCI社製)200ml溶液を500mlナスフラスコに入れ、80℃に加熱しながら2時間攪拌したところ、褐色固体が生成した。
この褐色固体を濾取し、2−メトキシエタノール20mlで洗浄した後、乾燥させることにより、金属錯体(A)を得た(収量1.532g、収率74%)。
生成物が目的とする金属錯体(A)であることは、元素分析およびESI−MS(エレクトロスプレー質量分析)測定を行うことにより確認した。
元素分析値(%):Calcd for C4950Co;C,62.56;H,5.36;N,5.96;Co, 12.53.Found:C,62.12;H,5.07;N,6.03;Co, 12.74.
ESI−MS[M―CHCOO]+:805.0
・イミダゾール骨格を含む複素環式化合物(Y)の合成
Figure 0005999822
反応式右辺のイミダゾール骨格を含む複素環式化合物(Y)をJournal of American Chemical Society, 104, 3607-3617(1982)に記載の方法に準じて合成した。
窒素雰囲気下において、エチレンジアミン四酢酸(東京化成社製)2.8gと1,2−ジアミノベンゼン(東京化成社製)4.0gとを含んだエチレングリコール(アルドリッチ社製)30ml溶液を100mlフラスコに入れ、200℃に加熱しながら22時間攪拌した。
その後、水を加え、固体を回収し、エタノールにより再結晶することにより、複素環式化合物(Y)を得た(収量3.0g、収率54%)。
生成物が目的とする複素環式化合物(Y)であることは、NMR分析を行うことにより確認した。
・変性物(E)の合成
窒素雰囲気下において、複素環式化合物(Y)0.200gを含んだN,N’−ジメチルホルムアミド(和光純薬社製)10mlを50mlナスフラスコに入れ、酢酸銅(II)(和光純薬社製)0.136gを加えて、80℃に加熱しながら5時間攪拌した。その後、析出した固体をろ過し、真空乾燥させて、酢酸銅と複素環式化合物(Y)との混合物(C)0.332gを得た。
次に、金属錯体(A)0.020gとカーボン担体(商品名:ケッチェンブラックEC600JD、ライオン製)0.080gとを混合し(質量比、カーボン担体:金属錯体(A)=4:1)、エタノール10mlで分散させた。
さらに、混合物(C)0.020gを加えて、室温で3時間攪拌し、分散液をろ過して、黒色固体を得た。得られた黒色固体を、200Paの減圧下で12時間乾燥させることにより、混合物(D)を調製した。
次いで、混合物(D)を、管状炉を用いて、窒素雰囲気下、950℃で1時間加熱することにより、変性物(E)を得た。用いた管状炉及び加熱条件を以下に示す。
得られた変性物(E)については、0.5M硫酸で、80℃、1時間洗浄した後に元素分析による分析を行った。
管状炉:プログラム制御開閉式管状炉EPKRO−14R、いすゞ製作所製
熱処理雰囲気:窒素ガスフロー(200ml/分)
昇温速度及び降温速度:200℃/時間
・測定用電極の作製
電極には、ディスク部がグラッシーカーボン(直径4.0mm)、リング部が白金(リング内径5.0mm、リング外径7.0mm)であるリングディスク電極を用いた。変性物(E)2mgを入れたサンプル瓶へ、水0.6ml、エタノール0.4ml、ナフィオン(登録商標)溶液(Aldrich製、5質量%溶液)20μlを加えた後、超音波で分散させた。得られた懸濁液4.4μlを上記電極のディスク部に滴下した後、室温にて12時間乾燥させることにより、測定用電極を得た。
・回転リングディスク電極による酸素還元能の評価
作製した測定用電極を回転させることにより、酸素還元反応の電流値の測定・評価を行った。電流値の測定は、室温において、酸素を飽和させた状態、および窒素を飽和させた状態でそれぞれ行い、酸素を飽和させた状態での測定で得られた電流値から、窒素を飽和させた状態での測定で得られた電流値を引いた値を酸素還元反応で得られる電流値とした。なお、測定装置及び測定条件は、以下の通りである。
−測定装置−
ビー・エー・エス株式会社製
RRDE−2回転リングディスク電極装置
ALSモデル701Cデュアル電気化学アナライザー
−測定条件−
セル溶液:0.05mol/L硫酸水溶液(酸素飽和)
溶液温度:25℃
参照電極:銀/塩化銀電極(飽和塩化カリウム)
カウンター電極:白金ワイヤー
掃引速度:5mV/秒
電極回転速度:600rpm
(比較例1)
窒素雰囲気下において、金属錯体(A)0.020gを含んだエタノール10ml溶液に、カーボン担体(商品名:ケッチェンブラックEC600JD、ライオン製)0.005gを混合し(質量比、カーボン担体:金属錯体(A)=1:4)、さらに複素環式化合物(Y)0.020gを加えて、室温で3時間攪拌した。その後、得られた分散液をろ過して、黒色固体を得た。得られた黒色固体を、200Paの減圧下で12時間乾燥させることにより、混合物(L)を調製した。
次いで、実施例1と同様にして、混合物(L)を、管状炉を用いて加熱し、変性物(M)を得た。得られた変性物(M)については、0.5M硫酸で、80℃、1時間洗浄した後に元素分析による分析を行った。
以上において、変性物(E)に代えて、変性物(M)を用いた以外は、同様の条件にして、測定用電極を作製し、酸素還元能の評価を行った。
表1〜3は、以上に示した実施例および比較例についてまとめたものである。表1には、実施例1および比較例1に示す混合物について、加熱(変性処理)前後の質量減少率を、加熱後の炭素含有率(元素分析値)及び窒素含有率(元素分析値)と共に示す。
表2には、変性物(E)(M)について、元素分析を行った結果を示す。なお、参考例として、金属錯体(A)のみを変性物(E)(M)と同様に変性処理を行って得られた変性物についても、0.5M硫酸で、80℃、1時間洗浄したのちに元素分析を行った。
表3には、実施例1および比較例1の燃料電池セルの電流密度について示す。触媒活性は、可逆水素電極に対して0.6Vにおける電流密度で示す。
Figure 0005999822
Figure 0005999822
Figure 0005999822
表2に示す結果より、本発明の変性物は、銅化合物を加えず処理した変性物と比べ、触媒活性に大きな影響があると考えられる金属原子(Co原子)が多く残存することが確かめられた。また、表3に示す結果より、本発明の変性物は従来の変性物に比べて高い電流密度を示す燃料電池を与えることから、酸素還元能が高いと認められ、その結果、本発明の変性物が触媒活性に優れることが確かめられた。
10…燃料電池、12…電解質膜(プロトン伝導膜)、14a,14b…触媒層、16a,16b…ガス拡散層、18a,18b…セパレータ、20…膜電極接合体

Claims (1)

  1. 以下の(1)〜(4)を含み、加熱処理、放射線照射処理又は放電処理の何れかの変性
    処理を行うことにより酸素還元能を有する変性物が得られる混合物を、加熱処理、放射線照射処理又は放電処理の何れかにより変性させる変性処理工程を有する変性物の製造方法。
    (1)バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、およびニッケルからなる群から選
    ばれる1つ以上の金属を含む、分子量が300以上の金属錯体
    (2)イミダゾール骨格を含む分子量800以下の複素環式化合物
    (3)分子量300未満の銅化合物
    (4)カーボン
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