JP5990308B1 - 人工合成疑似e3を有効成分とする、疾患診断を補助する方法および装置、それを用いた疾患診断キットおよびそれを用いた抗癌剤選択支援方法 - Google Patents

人工合成疑似e3を有効成分とする、疾患診断を補助する方法および装置、それを用いた疾患診断キットおよびそれを用いた抗癌剤選択支援方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 人工合成したE3を有効成分とする、抗癌剤選択支援剤、癌診断薬、および天然E3と拮抗する阻害剤を提供する。【解決手段】ユビキチン−プロテアソームシステムにおいて特定の疾患に関連する生体内のE3のヘリックス領域を含むアミノ酸配列の配列データを用意し、その配列を全く別のタンパク質の一部として導入したものを分子設計して人工合成することにより、特定の疾患に関連付けた人工合成疑似E3を作製する。E2との結合において生体内のE3と競合するようにし、生体内の天然E3に対するE3拮抗剤となる阻害剤とする。また、E2との結合の多寡によりE2の活性を評価し、特定の疾患の罹患の有無およびその箇所を推測する疾患診断薬とする。また、ユビキチン−プロテアソームシステムの関与の割合の大きさを判定し、投与に適した抗癌剤の選択を支援する抗癌剤選択支援剤とする。【選択図】 図3

Description

本発明は、癌診断、癌治療、抗癌剤の選択支援に資する薬剤に関するものである。特に、ユビキチン依存的タンパク質分解システムであるユビキチン−プロテアソームシステムにおける天然E3の機能の一部を持つ人工的に合成した人工合成疑似E3を有効成分として用いたものに関する。
悪性腫瘍に対する治療法として、外科手術、抗癌剤による化学療法、放射線療法、造血幹細胞移植方法などがある。治療計画を立てる際、抗癌剤による化学療法は有力な選択肢として検討され、特に白血病などでは抗癌剤による化学療法しか選択肢がない状況である。また、上記の方法を組み合わせたりすることもある。
抗癌剤は多種多用なものが開発されており、癌の種類、患者の体の状態など様々なファクターにより抗癌剤の効き目が変わり、患者の癌にはどの抗癌剤が適しているのか、試行錯誤的に検査している状態と言える。
ほとんどの抗癌剤について副作用が存在することが報告されている。抗癌剤は正常な細胞に対してもダメージを与える可能性があり、選択を間違えると癌細胞の増殖の抑制効果はあまり得られずに病状の悪化が進む一方、かえって副作用による患者へのダメージの方が大きい場合もあり得る。抗癌剤の試行を行うたびに患者の負担が増えて行く。そのため抗癌剤の選択は重要と言える。そこで、患者の症状ごとに、どの抗癌剤の効果が大きくどの抗癌剤の効果が小さいのかを事前にスクリーニングすることは患者の負担を低減するという意味においても重要である。
このように、抗癌剤の効果を投与前に事前にその適否をある程度スクリーニングすることができればメリットが大きい。
抗癌剤のスクリーニングには多様な観点や選択基準があるが、発明者宮本和英は、癌患者の癌細胞に対する治療のアプローチとして、癌に関与するタンパク質を標的タンパク質とするユビキチン−プロテアソームシステムが有効に稼働するタイプの癌腫瘍であるか否かを事前に判断するにより、抗癌剤をスクリーニングすることができないかという着想のもと、研究を進めてきた。
プロテアソームシステムは学術的に解明が進んでいる。
プロテアソーム (proteasome) は細胞内で生成された不要タンパク質の分解を行う巨大な酵素複合体であり、細胞質および核内に広く分布している。ユビキチンにより標識されたタンパク質をプロテアソームで分解する系がユビキチン−プロテアソームシステムと呼ばれている。
ユビキチンは76個のアミノ酸残基からなるタンパク質である。このユビキチンは他のタンパク質に結合して修飾(標識を付与)することができる。タンパク質のユビキチン化は不要タンパク質の標識反応であることが知られている。
図1は、ユビキチン化の流れを簡単に示した図である。ユビキチン化の過程は、ユビキチン活性化酵素(E1と略記される)、ユビキチン結合酵素(E2と略記される)、及び、ユビキチンリガーゼ(E3と略記される)の3種類の酵素が関与している。E1は数種存在し、E2は100種以上存在することが知られている。E3は複数のタンパク質の複合体であり多様である。E3はその中にE2と結合するRINGフィンガーとよばれる部分を有しており、また、標的タンパク質に対する特異的結合部位も有しており、それにより当該標的タンパク質と結合し、その状態でユビキチンをE2から当該標的タンパク質のリジン残基のε−アミノ酸に結合させることにより移す。
細胞内においてタンパク質を分解除去するユビキチン−プロテアソームシステムは以下の流れで行われる。
(1)ユビキチンとE1の結合
まず、ユビキチンはATPの加水分解を伴ってE1によって活性化され、ユビキチンがE1の活性部位であるシステイン残基にチオエステル結合する。
(2)ユビキチンのE1からE2への転移
E1と結合したユビキチン(E1−Ub)がE2の活性部位であるシステイン残基に転移されてE2と結合したユビキチン(E2−Ub)が生成される。
(3)E3を介した標的タンパク質でのポリユビキチン化反応
次に、E2と結合したユビキチン(E2−Ub)はE3のRINGフィンガー部分を介して複合体を形成する。また、E3にはF−box等のタンパク質のアダプター機能を有する部分があり、当該アダプター機能の標的となる基質タンパク質と特異的に結合して複合体を形成する。この複合体において、ユビキチンをE2から標的タンパク質のリジン残基のε−アミノ酸に結合させることにより受け渡しが行われてイソペプチド結合する。
E3は、標的タンパク質に結合したユビキチンのリジン残基のε−アミノ基に対して追加のユビキチンを結合させることができ、こうして複数のユビキチンが直鎖状にタンパク質に結合し(ポリユビキチン化)、ユビキチン鎖により標的タンパク質が修飾される。
(4)プロテアソームにおける標的タンパク質の分解処理
標的タンパク質に結合したポリユビキチン鎖は、プロテアソーム内の特定の受容体により特異的に認識され、当該標的タンパク質のみがプロテアソーム系により分解される。なお、結合していたユビキチンはユビキチン修飾系において再利用される。
このように、細胞内におけるタンパク質は、それぞれ特異的に結合するE2およびE3の存在によってそれぞれ認識された上でポリユビキチン化され、プロテアソームにより分解されてゆく。
標的タンパク質のポリユビキチン化は、フォールディングが正常になされなかったタンパク質(ミスフォールドタンパク質)や不要になったタンパク質を細胞から除去する為に重要な役割であり、このユビキチン−プロテアソームシステムにより細胞内のタンパク質の品質管理が行われている。
このユビキチン−プロテアソームシステムによるタンパク質のポリユビキチン化とタンパク質の分解処理は、細胞内において、代謝、タンパク質合成、癌腫瘍の形成等、細胞活動の場で広範な現象に関与している。
特開2007−282628号公報 特開2001−316290号公報(特許第3776322号) Hoeller D, Hecker CM, Dikic I. Ubiquitin and ubiquitin-like proteins in cancer pathogenesis, Nat Rev Cancer., 6, 776-88(2006). タンパク質のアミノ酸配列を検索できる代表的なデータベース:NCBI/BLAST
癌治療法の一つとして、プロテアソーム阻害剤を利用した治療法が注目されている。プロテアソーム阻害剤とは、上記従来技術で述べたユビキチン−プロテアソームシステムの流れの一部を阻害する方法である。ユビキチン−プロテアソームシステムは細胞内で不要タンパク質を分解・除去するための重要な役割を果たしているが、ユビキチン−プロテアソームシステムの流れの一部が阻害されると不要タンパク質の分解・除去が行われなくなり、細胞内に不要タンパクが増えてゆくことになる。これは細胞にとって正常な生体活動が阻害されている状態であり、その細胞は死滅することとなる。
ここで、癌細胞は患者人体内で活発に増殖しているため、細胞の代謝が大きく、頻繁にタンパク質の合成、廃棄が行われているが、癌細胞においてユビキチン−プロテアソームシステムが阻害されると癌細胞内に除去できない不要タンパクが蓄積し、癌細胞自体が死滅することとなる。プロテアソーム阻害剤を利用した癌治療法はこの癌細胞の死滅を引き起こすことで癌細胞の増殖を抑制し、癌細胞の死滅を狙ったものである。
癌細胞によっては、特定の不要タンパク質を頻繁に放出するものがあり、この場合は、当該特定の不要タンパク質を認識する特定のE2およびE3が関与するユビキチン−プロテアソームシステムの割合が大きく、比較的効率良くプロテアソーム阻害剤の薬効が得られることが期待できる。
例えば、活性中心にRINGドメインを持つタイプのE3があり、それらはRING型E3と呼ばれているが、このRING型E3は、様々な癌や、パーキンソン病など多くの重篤な疾患で特異的に多く存在するタンパク質に対応するE3として知られている。例えば、パーキンソン病に関わるRING型E3はParkinと呼ばれ、また乳癌に関わるRING型E3はBRCA1と呼ばれ、これらの疾患に特有のタンパク質に対応するE3である。このように、疾患ごとに特有のE3が存在し、それらE3は、特定の疾患に特異的なタンパク質を標的として認識し、その標的タンパク質をポリユビキチン化して除去する働きをしていると考えられている。
一方、癌細胞によっては、放出する不要タンパク質の種類の偏りが少なかったり、放出量自体が小さかったりすることがあり、この場合は、特定のE3をターゲットとするプロテアソーム阻害剤だけでは制御できるユビキチン−プロテアソームシステムの割合が小さく、プロテアソーム阻害剤の薬効は得られにくい場合もあり得る。
ここで、抗癌剤の一部は、このプロテアソーム阻害剤として機能するものがあり、また、他のプロテアソーム阻害剤と補完関係にあるものもある。そのため投与する抗癌剤の選択にあたり、患者の癌が頻繁に放出する疾患特有のタンパク質の種類を考慮することは大変有益である。
発明者宮本和英は、このユビキチン−プロテアソームシステムに注目し、癌検診の精度向上、抗癌剤投与前の抗癌剤の選択支援、癌治療ステージにおけるプロテアソーム阻害剤としての利用など、様々な発展性を着想し、鋭意研究してきた。
しかし、ここで、発明者宮本和英は解決すべき課題に気付いた。
それは、薬剤としてE3を如何に調達するかという問題である。生体内に存在する天然のE3はもともと細胞内に存在しており、薬剤として細胞外において単離することは容易ではない。つまり、薬剤として利用することが難しい。そこでE3を人工合成することが考えられる。
種々の疾患の研究により、疾患に特異的に遍在するタンパク質に対応するE3の解析が進み、その塩基配列及びアミノ酸配列が知られている。そこで、それらのデータを用いてE3を人工合成すれば良いと言える。しかし、人工合成によりE3を製造することは容易ではない。
例えば、遺伝子工学の手法により発現ベクターを構築し、それにより例えば大腸菌等のような宿主細胞を形質転換して目的のE3を発現させ、単離、精製するという方法を検討することはできる。しかしながら、一般にこの方法でタンパク質を発現させ、精製して単体で得るのは技術的に容易でない。すなわち、目的のタンパク質の取得に必要な工程が多く、また試行錯誤を要するため、高いコストを要する。また必ずしも首尾よく目的のE3を発現させられる保証はない。また、目的のタンパク質を発現させることができたとしても、宿主細胞と培地に由来する非常に多くの夾雑タンパク質から目的のE3を高純度で精製するには高度の技術と何段階にも及ぶ工程を要し、収率も低い。また、特定の疾患に関連した活性のある特定のE3が首尾よく製造できたとしてもコストの非常に高いものとなり、従って薬剤のコストも非常に高くなってしまう。
遺伝子工学の手法の代わりに、E3を化学合成できれば、これらの問題の幾つかは解消できる筈であるが、E3は分子量が大き過ぎ、現在の技術では、到底、化学合成の対象たり得ない。
このように、従来技術においては、薬剤として利用できる人工合成によるE3を得ることは難しい状況である。
しかし、発明者宮本和英は、薬剤として利用できるE3を人工合成することができれば、ユビキチン−プロテアソームシステムの中で様々な可能性が拡がることを期待し、鋭意研究を進めてきた。その中で、癌診断、抗癌剤の選択の支援、天然E3と拮抗する阻害剤などへ応用できることに気付いた。
本発明は、発明者宮本和英が人工合成したE3の研究の中で生まれたものであり、人工合成したE3を有効成分とする、癌診断薬、抗癌剤選択支援剤、および天然E3と拮抗する阻害剤を提供することを目的とする。
発明者宮本和英は、ユビキチン−プロテアソームシステムの中におけるE3やE2の制御を検討する上で、以下のことに気付いた。それは、理想的には天然E3と化学構造がまったく同じ人工合成E3を化学合成できればそれに越したことはないが、薬剤として必要な人工合成E3は、必ずしも天然E3と化学構造がまったく同じものである必要はなく、また、天然E3のすべての機能や役割を再現したものである必要もないことである。薬剤としての用を為すタンパク質を製作することができれば、部分的であれE3と等価な機能を果たすことができれば、抗癌剤の選択支援や癌診断や癌治療において様々な有益な方法が検討できる。
その着想のもと、発明者宮本和英は、ペプチド合成装置を用いて化学合成できる範囲の大きさのアミノ酸配列を利用して、天然E3の持つ諸機能のうち、E2との結合能力を持つアミノ酸配列を分子設計し、それを活性領域に持つキメラタンパク質を人工的に製作するという着想を得て鋭意研究を進めた。特に、RING型E3の活性領域であるCross-braceモチーフのヘリックス領域のアミノ酸配列に着目して研究を進めた。ペプチド合成装置で化学合成したCross-braceモチーフのヘリックス領域のアミノ酸配列を持つキメラタンパク質であれば、天然E3のすべての機能は発揮できなくとも、E2との結合能力に関しては天然E3と等価なものとなり得る。ここではこの機能に着目し、新たに製作したキメラタンパク質を“人工合成疑似E3”と呼ぶ。
この人工合成疑似E3を用いればユビキチン−プロテアソームシステムにおいて、様々な制御が可能となり、人工合成疑似E3を有効成分とする、抗癌剤選択支援剤、癌診断薬、および人工合成阻害剤への応用を着想するに至った。
E3の活性領域であるCross-braceモチーフのヘリックス領域のアミノ酸配列を含む部分は、比較的小さな分子量であるので、このCross-braceモチーフのヘリックス領域のアミノ酸配列を含む部分を、他のタンパク質のアミノ酸配列内に導入した分子を設計し、当該設計に従ってペプチド合成装置で合成することでキメラタンパク質を製作できる。このキメラタンパク質は、E2との結合能力においては天然E3と等価である。
発明者宮本和英は、キメラタンパク質の製作にあたり、他のタンパク質として、Cross-braceモチーフを有する種々のドメインに着目した。そして、それら種々のドメイン(例えば、PHDドメイン、FYVEドメイン、ZZドメイン、MYNDドメイン、Bboxドメインその他)を断片として取り出し、それらのアミノ酸配列において、2個の亜鉛に配位結合することによりCross-braceモチーフを構成している8個のアミノ酸(配位子)のうちの6番目と7番目との間にあるアミノ酸配列の全部又は大半を、RINGドメイン(又は、MizドメインやUboxドメイン)を構成するアミノ酸配列中のへリックス領域のアミノ酸配列(の全部又は大半)で置き換えた形のキメラタンパク質を作製することを着想した。これに従い、本発明者は、そのような小型のキメラタンパク質を化学合成して、その性質を調べた。その結果、キメラタンパク質は、E2との選択的結合性を維持していると同時に、E2と結合した状態で、自身のリジン残基のε−アミノ基にユビキチンを移動させることができることを見出した。本発明は、この発見に基づき、更に検討を加えて完成させたものである。
つまり、本発明の薬剤は、ユビキチン−プロテアソームシステムにおいて特定の疾患に関連する生体内のE3のヘリックス領域のアミノ酸配列を含む部分の配列データを用意し、その配列を他のタンパク質の一部に導入した形で分子設計し、当該設計に従ってペプチド合成することにより作製した人工合成疑似E3を有効成分とした薬剤である。
ここで、E3のへリックス領域のアミノ酸配列は、2個の亜鉛に配位結合するCross-braceモチーフを構成している8個のアミノ酸(配位子)のうち、第6番目のアミノ酸と第7番目のアミノ酸との間を繋ぐアミノ酸配列、または、当該アミノ酸配列の一端若しくは両端のアミノ酸各1個を除いた残り部分である。
前記へリックス領域を含むアミノ酸配列の移植先である他のタンパク質は、Cross-braceモチーフを有する1個のドメインを含むが前記E3ではないタンパク質である。人工合成疑似E3は、前記ヘリックス領域のアミノ酸配列を、他のタンパク質の一部のアミノ酸配列と置換せしめたものである。
例えば、E3が、RING型E3、Miz型E3、またはUbox型E3のいずれかとすることができる。
上記した発明内容は、当業者にとって不明確な点はなく、明確に理解され実施可能である点に触れておく。
現在、多様にある天然E3の構造や、そのうちE2との結合能力がある活性領域の構造、つまり、Cross-braceモチーフのヘリックス領域のアミノ酸配列は解明されており、Cross-braceモチーフのヘリックス領域のアミノ酸配列と言えば当業者にとって既知のものである。つまり、亜鉛結合タンパク質のCross-braceモチーフを有する各種ドメインのアミノ酸配列中において、亜鉛に対して配位子として働く8個のアミノ酸の種類がそれぞれ何であるか、そしてそれらの残基が当該アミノ酸配列中でどのような順序と間隔で並んでいるのかという配列の具体的規則は既知であり、タンパク質のアミノ酸配列について一般に公開され当業者が自由にアクセスできるデータベースも存在する。当業者であればそのようなデータベースにアクセスし、検索対象としたドメインを有するタンパク質の具体的アミノ酸配列データや、そのうち2個の亜鉛に対して配位子として働く8個のアミノ酸のそれぞれの特定も行うことができ、第6番目のアミノ酸と第7番目のアミノ酸との間を繋ぐ「ヘリックス領域のアミノ酸配列」も特定できる。
また、前記へリックス領域を含むアミノ酸配列の移植先である他のタンパク質は、Cross-braceモチーフを有する1個のドメインを含むが天然E3ではないタンパク質である。この条件を満たすドメインも、当業者であればタンパク質のアミノ酸配列を公開したデータベースにアクセスし、検索対象とした条件、つまり「Cross-braceモチーフを有する1個のドメインを含むもの」かつ「天然E3ではない」という条件を満たすドメインのタンパク質の具体的アミノ酸配列データを検索して得ることはできる。なお、天然E3ではないということは、天然E3には存在しない機能を付与することも可能であり、例えば、ユビキチンを受け取って結合するリジン残基を持たせることも可能である。ここではPHDドメインを例に挙げているが、PHDドメインには多くのリジン残基があり、ユビキチンをE2から収奪して自らのリジン残基に取り込むことができる。
上記の人工合成疑似E3の性質をまとめると以下のようになる。
(1)特異なE2に対する結合能力を有する。
人工合成疑似E3は、Cross-braceモチーフのヘリックス領域が活性領域として機能し、それが特異的にE2と結合する。
(2)ユビキチンをE2から自身へ移動させることができる。
人工合成疑似E3は、E2との選択的結合性を維持していると同時に、E2と結合した状態で、自身のリジン残基のε−アミノ基にユビキチンを移動させることができる。
(3)標的タンパク質との結合能力は有しない。
人工合成疑似E3は、天然E3のCross-braceモチーフ由来のヘリックス領域を有することで、前記天然E3由来の特異的なE2結合能を発揮しているが、他の天然E3の特徴的な部分は有していないため、標的タンパク質に対する結合能力がない。
(4)標的タンパク質に対するユビキチン修飾する能力は有しない。
人工合成疑似E3は、標的タンパク質と結合しないので、それをユビキチン修飾する能力はない。
人工合成疑似E3が持つこの(1)から(4)の性質を鑑み、発明者宮本和英は人工合成疑似E3の薬剤としての以下の活用法を見出した。
人工合成疑似E3の薬剤としての第1の活用法は、E2との結合において天然E3と競合することによるE3拮抗剤となる阻害剤としての活用である。
人工合成疑似E3の薬剤としての第2の活用法は、in vitroでのE2との結合の多寡を調べることにより、患者体内でのE2活性を評価し、当該E2との特異性を有する疾患関連タンパク質の種類から癌の有無およびその部位を推測する癌診断薬としての活用である。
人工合成疑似E3の薬剤としての第3の活用法は、in vitroでのE2との結合の多寡を調べることにより、患者体内でのE2活性を評価し、対象となる癌がユビキチン−プロテアソームシステム等のようなE2活性に関わりが大きいものか小さいものかを判定し、投与に適した抗癌剤の推定・絞り込みを行う抗癌剤選択支援剤としての活用である。
なお、E2活性は、ここでは、当該E2に対応するへリックス領域のアミノ酸配列との結合性で評価されるものである。人工合成疑似E3は、当該E2に対応するへリックス領域のアミノ酸配列を有しているので、当該E2に特異的に結合する人工合成疑似E3との結合性により評価できる。例えば、特定のE2と特異的に結合するよう分子設計された人工合成疑似E3を用いることで、当該特定のE2との結合の多寡を知ることができ、E2の活性を評価することにより、当該特定のE2に関連が深い癌の有無や部位、抗癌剤の向き不向きを判断する手がかりとするのである。
また、上記の人工合成した特定の疾患に関連付けた人工合成疑似E3を有効成分とした薬剤を試薬として用いた疾患診断方法が可能である。
本発明にかかる疾患診断方法は、前記人工合成疑似E3が、前記特定の疾患に関連するE2と結合し、前記結合後に前記E2からユビキチンを収奪する、前記ヘリックス領域のアミノ酸配列部分と、前記ヘリックス領域のアミノ酸配列以外の前記他のタンパク質部分において、前記E2から収奪した前記ユビキチンを取り込んでプロトンを発生させるリジン残基の構造を備えたものであり、検査測定装置としてプロトンの増減量を測定する装置を用い、前記薬剤を用いて前記生体の試験サンプル中の前記E2活性に応じて発生する前記プロトン量を前記検査測定装置により測定することにより前記特定の疾患に関する前記E2の活性の大きさを評価して疾患の有無のみならず疾患の状態を推定することを特徴とするものである。
また、疾患診断方法で得られたE2の活性の評価に基づいて、対象となる疾患におけるユビキチン−プロテアソームシステムの関与の割合の大きさを判定し、投与に適した抗癌剤の選択の支援を可能とした、疾患診断方法を利用した抗癌剤選択支援方法も可能である。
さらに、上記本発明にかかる疾患診断方法を行う疾患診断システムを提供することも可能である。本発明にかかる疾患診断システムは、前記薬剤を試薬として供給し、前記検査測定装置としてプロトンの増減量を測定する装置を用い、前記薬剤を用いて生体の試験サンプル中のE2活性に応じて発生する遊離プロトン量を前記検査測定装置によりカウントすることにより特定の疾患に関する前記E2の活性の大きさを評価し、疾患の有無および疾患の状態を推定する疾患診断を行うシステムである。
RING型E3の活性領域であるCross-braceモチーフのヘリックス領域を含むアミノ酸配列のデータを用意し、それを他のタンパク質に導入した形のキメラタンパク質を分子設計し、当該設計されたものをペプチド合成装置で合成し作製することで、E2との結合能力においては天然E3と等価である人工合成物を得ることができる。
当該人工合成疑似E3は、特異なE2に対する結合能力を有すること、結合したE2のユビキチンを自身へ移動させることができること、標的タンパク質との結合能力は有しないこと、標的タンパク質に対するユビキチン修飾する能力は有しないことなどの性質があり、当該性質を利用することにより、E2との結合において天然E3と競合することによるE3拮抗剤、E3阻害剤として活用でき、また、in vitroでのE2との結合の多寡を調べることにより、患者体内でのE2活性を評価し、当該E2との特異性を有する疾患関連タンパク質の種類から癌の有無およびその部位を推測する癌診断薬としての活用でき、また、対象となる癌がユビキチン−プロテアソームシステム等のような特定のE2活性に関わりが大きいものか小さいものかを判定し、投与に適した抗癌剤の推定・絞り込みを行う抗癌剤選択支援剤としての活用できる。
ユビキチン化の流れを簡単に示した図である。 人工合成疑似E3の設計例、化学合成例を示す図である。 上清サンプルと人工合成疑似E3とを混合し、E2から人工合成疑似E3へのユビキチンの転移を生じさせる様子を示す図である。 ウエスタンブロッティングの結果を示す図である。 上清サンプルと人工合成疑似E3とを混合し、E2から人工合成疑似E3へのユビキチンの転移を生じさせ、AMIS-101で検出する様子を示す図である。 腫瘍のサイズと遊離したプロトン量の棒グラフおよびそれら結果をプロットして相関関係を示す図である。
以下、本発明の人工合成疑似E3を有効成分として含有する、E3拮抗剤となるプロテアソーム阻害剤、癌診断薬、抗癌剤選択支援剤の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態、実施例は、一例に過ぎず、本発明の効果の実証を提示するものであって本特許の権利を制限するものではない。
実験は、白血病を例に実験したが、E3のヘリックス領域のアミノ酸配列を変更することで、他の癌やパーキンソン病などの疾患に対しても同様に適用し得る。疾患の一例として“癌”と記載されている部分も限定的に解釈されず、他の疾患にも可能な限り適用できる。
また、以下の例では、ユビキチンリガーゼ(E3)としてRING型のものを例に挙げているが、Miz型E3、Ubox型E3でも同様に考えることができる。また、ドメインとしてRINGドメインを具体例に説明している部分があるが、RINGドメインの代わりにMizドメイン、Uboxドメインでも同様に考えることができる。
また、以下の例では、ユビキチンリガーゼ(E3)以外のタンパク質のCross-braceモチーフを有するドメインとして、PHDドメインを具体例に説明している部分があるが、FYVEドメイン、ZZドメイン、MYNDドメイン、Bboxドメインでも同様に考えることができる。
以下、まず、人工合成疑似E3の製作方法について説明し、その次に、その人工合成疑似E3を有効成分とする癌診断薬、抗癌剤選択支援剤,E3拮抗剤となるプロテアソーム阻害剤の順に説明する。
[人工合成疑似E3の製作方法]
まず、人工合成疑似E3の製作について説明する。
本発明のキメラタンパク質は、ユビキチンリガーゼ(E3)であるRING型(又はMiz型、Ubox型)E3のRINGドメイン(又は、Mizドメイン、Uboxドメイン)のCross-braceモチーフを構成するアミノ酸(すなわち、亜鉛に配位し又は水素結合を提供するアミノ酸)のうち先頭から第6及び第7番目のアミノ酸の間を繋ぐ部分であるヘリックス領域のアミノ酸配列を、他の適宜のタンパク質のCross-braceモチーフのアミノ酸配列の所定領域(Cross-braceモチーフを構成するアミノ酸のうち先頭から第6及び第7番目のアミノ酸の間を繋いでいる領域)と置き換えることにより得られる。
異なる標的タンパク質、例えば異なる疾患関連タンパク質に対応するE3のヘリックス領域のアミノ酸配列は、相互に異なっており、このため、異なったアミノ酸配列のヘリックス領域に結合する各E2もまた、そのようなヘリックス領域がこれに選択的に結合することを通じて、ヘリックス領域の起源であるE3が対応しているのと同一の標的タンパク質に関連付けられている。
このことから、種々の疾患に関連するRING型(又はMiz型やUbox型)E3の各ドメイン中にあるヘリックス領域(多数のもののアミノ酸配列が当業者に周知である)のアミノ酸配列(その全長であっても、一端又は両端に位置する各アミノ酸を除いたものであってもよい)によって、他のタンパク質のCross-braceモチーフ例えば、Cross-braceモチーフを有する亜鉛結合タンパク質や、それらの亜鉛に配位するアミノ酸残基が水素結合を提供するアミノ酸残基に置き換わったものの、当該モチーフを有する領域のアミノ酸配列のうち、当該モチーフの構成に(配位子として又は水素結合を提供する残基として)与る8個のアミノ酸のうち先頭から第6番目のアミノ酸と第7番目のアミノ酸とを繋ぐアミノ酸配列(その全長でもよく、一端又は両端に位置する各アミノ酸を除いた部分であってもよい)を置換した形のアミノ酸配列を有するタンパク質を種々設計することができる。
従って、本発明において、ヘリックス領域のアミノ酸としては、特定の疾患に対応づけられている周知のRING型(又はMiz型やUbox型)E3の当該領域のアミノ酸配列を、それぞれ選択して用いることができる。それにより、種々の疾患に対応したキメラタンパク質を得ることができる。
本発明において使用できる、ユビキチンリガーゼ(E3)以外のタンパク質のCross-braceモチーフを有するドメインとしては、特に制限はなく、そのようなモチーフを有する適宜のタンパク質のものであってよい。本発明において、Cross-braceモチーフは、ヘリックス領域のためにキメラタンパク質全体の構造的安定性を確保できればよいからである。Cross-braceモチーフを有するドメインの例としては、PHDドメイン、FYVEドメイン、ZZドメイン、MYNDドメイン、及びBboxドメインがあげられる。これらは全て、RINGドメインと同様、2個の亜鉛と結合する配位子として機能する8個のアミノ酸を有し、それらのうち先頭から第6番目と第7番目のアミノ酸を繋ぐアミノ酸配列の全部又は大半を、RING(又はMiz、Ubox)ドメインのヘリックス領域のアミノ酸配列の全部又は大半で置換して、本発明のキメラタンパク質を作製することができる。
本発明のキメラタンパク質は、Cross-braceモチーフを構成するアミノ酸配列(配位子として機能するアミノ酸の1番目のものと8番目のもの)のそれぞれ前及び/又は後に、付加された追加のアミノ酸配列を含んでいてもよい。少ない数のアミノ酸が付加されていてもCross-braceモチーフに保持されたキメラタンパク質の全体構造には、影響を及ぼさないからである。そのような追加のアミノ酸配列は、任意のアミノ酸を任意に並べることで構成してもよく、また、当該Cross-braceモチーフが起源とした元のタンパク質において同モチーフに隣接して存在しているアミノ酸配列と同一のものとしてもよい。
追加のアミノ酸配列を任意のアミノ酸から構成する場合、追加するアミノ酸の個数に明確な上限はないが、本発明のキメラタンパク質とE2との選択的結合性に影響を与えるおそれを生じないことが好ましい。そのためには、通常、Cross-braceモチーフを構成するアミノ酸配列の前及び/又は後に付加される追加のアミノ酸配列中のアミノ酸の個数が、それぞれ10を超えないようにすればよい。従ってまた、それぞれ8を超えないように、或いはそれぞれ6を超えないように等、適宜設定してキメラタンパク質を設計することができる。
追加のアミノ酸配列として、ユビキチンリガーゼ(E3)以外のタンパク質のCross-braceモチーフが起源とした元のタンパク質において同モチーフに隣接して存在しているアミノ酸配列と同一のものを選択する場合にも、追加されるアミノ酸の個数には明確な上限はない。従って、追加のアミノ酸配列は適宜の長さまで延びていてよいが、元のタンパク質に存在する他のドメインを含む程には延びていないようにすればよい。そうすることにより、本発明のキメラタンパク質が別の新たな選択的結合性を帯びることとなる可能性を排除できるからである。必須ではないが、より簡便には、Cross-braceモチーフを構成するアミノ酸配列の前及び/又は後に含まれる追加のアミノ酸配列中のアミノ酸の個数を、それぞれ10を超えないようにすればよい。そのような個数では別のドメインが本発明のキメラタンパク質に取り込まれるおそれがないからである。勿論、追加のアミノ酸の個数につき8を超えないよう又は6を超えないように設計してもよい。
上記手法により人工合成された人工合成疑似E3は、RING型E3(又はMiz型やUbox型)それ自体のような大きなサイズのタンパク質でなく、Cross-braceモチーフを含んだ1個のドメインを有する他のタンパク質の該ドメイン部分の配列と、その一部に置き換わるRINGドメイン等のヘリックス領域の配列とからなるか、あるいはこれに限られた個数のアミノ酸からなる追加の配列が一端又は両端に付加されたキメラタンパク質であり、サイズが小さい。そのため、本発明のキメラタンパク質においては、フォールディングのミスが生じる懸念が殆どない。またそのような小さなサイズのものであることから、化学合成は、自動化されている市販のペプチド合成装置を用いて簡単に行うことができ、夾雑タンパク質を実質的に含まず、ほとんど純粋な粉体として得ることができる。また生成物は粉体として得られるため、その状態で長期保存が可能である。
更には、本発明のキメラタンパク質は、複数のドメインを含まないことから、E2への選択的結合以外に予想外の特異的な結合相手が存在して検査を妨害するといった懸念がない。つまり、特定疾患との関連づけた人工合成疑似E3として製作することができる。
[人工合成疑似E3の合成手順例]
例えば、図2(a)に示すように、特定E2との関連を持つRINGドメインの配列データを用意する。ここで、8つの二重下線を引いたものが上記で言う、2個の亜鉛に配位結合することによりCross-braceモチーフを構成している8個のアミノ酸(配位子)の第1番目のアミノ酸から第8番目のアミノ酸である。一重下線を引いたものが上記で言う、へリックス領域のアミノ酸配列であり、特定のE2との結合性を有する部分となる。
次に、他のタンパク質のCross-braceモチーフを有するドメインの配列データを用意する。例えば、図2(b)に示すPHDドメインの配列データを用意する。ここで、8つの二重下線を引いたものが上記で言う、2個の亜鉛に配位結合することによりCross-braceモチーフを構成している8個のアミノ酸(配位子)の第1番目のアミノ酸から第8番目のアミノ酸に相当する。一重下線を引いたものが置換対象となる部分である。
次に、図2(c)に示すように、上記のPHDドメインの一重下線を引いた箇所に対して、RINGドメインのへリックス領域のアミノ酸配列を移植した形のアミノ酸配列を分子設計する。この分子設計したアミノ酸配列をペプチド合成装置にて化学合成する。
こうして得た化学合成物は、PHDドメインをベースとした比較的分子量の小さなものであるが、天然E3が持つへリックス領域のアミノ酸配列と同じ活性領域を備えたものとなり、E2との結合性において等価な能力を有し、また、E2からユビキチンを自身へ収奪する能力も有するものとなる。
その一方、RINGドメインのへリックス領域のアミノ酸配列以外の部分は、PHDドメインのものに置き換わっているので、人工合成疑似E3には、RINGドメインでは存在しないリジン残基が存在するよう設計されている。ユビキチンはリジン残基と結合する性質があるため、人工合成疑似E3はE2からユビキチンを自らのリジン残基に収奪することができる。一方、天然E3のRINGドメインにはリジン残基がないため、天然E3はユビキチンと直接結合せずに自らに収奪することはなく、ユビキチンはE2から標的タンパク質に転送される。
なお、この例では、PHDドメインを用いているため、PHDドメインのリジン残基の性質からユビキチンを1つのみ結合させるモノユビキチン化機能を備えたものとなる。そのため、作製した人工合成疑似E3に対してユビキチンの結合は1:1となるように設計されている。人工合成疑似E3とユビキチンの結合が1:1であれば、投入した人工合成疑似E3からサンプル内のユビキチンの多寡が測定しやすくなり、E2の活性も判断しやすくなる。
上記例ではモノユビキチン化機能を付与した設計例であるが、本発明では、人工合成疑似E3を分子設計する際、へリックス領域のアミノ酸配列を含む部分を導入する他のタンパク質として多様なものを用いることができるので、PHDドメイン以外のものを選択することにより、他の様々な機能を付与することも設計できる。
[癌診断薬]
癌細胞によっては、特定の不要タンパク質を頻繁に放出するものがある。この場合、患者の生体内では、特定の不要タンパク質を分解除去するのに関わるユビキチン−プロテアソームシステムが活発に稼働していることが多い。E2とE3との結合の有無や強さをin vitroで調べることにより、E2とE3との結合の有無及び強さからE2の異常の有無をチェックでき、これを通じて患者が特定の疾患に罹患しているか否かを診断することが可能である。
また、逆に、患者の生体内で、疾患に特異的なタンパク質に対するユビキチン−プロテアソームシステムの障害がある場合、その特異的なタンパク質を標的とするE3やE2に何らかの障害が生じ、その結果、ユビキチン−プロテアソームシステムの低下や喪失が起こっている場合もあり得る。そこで、E2とE3との結合の有無や強さをin vitroで調べることにより、E2とE3との結合の有無及び強さからE2の異常の有無をチェックでき、これを通じて患者が特定の疾患に罹患しているか否かを診断することも可能である。
ここで、人工合成疑似E3の持つ、特異なE2との結合性を利用する。患者の組織サンプルに、特定疾患と関連づけた人工合成疑似E3を添加し、標的となるE2との結合の有無や強さを調べることにより、E2とE3との結合の有無及び強さを調べてE2の活性状態や異常の有無をチェックでき、患者が特定の疾患、例えば癌に罹患しているか否かを診断する診断薬となる。
[抗癌剤選択支援剤]
癌細胞によっては、特定の不要タンパク質を頻繁に放出するものがある。この場合は、当該特定の不要タンパク質を分解・除去するユビキチン−プロテアソームシステムが関与できる割合が大きく、比較的効率良くプロテアソーム阻害剤の薬効が得られることが期待できる。
例えば、乳癌に関わるRING型E3はBRCA1と呼ばれ、乳癌特有のタンパク質に対応するE3であるが、乳癌に特異的なタンパク質を標的として認識し、その標的タンパク質をポリユビキチン化して除去するので、乳癌に関連するユビキチン−プロテアソームシステムに対するプロテアソーム阻害剤を抗癌剤に選択すれば、抗癌剤の効きが良いことが期待できる。
一方、癌細胞によっては、放出する不要タンパク質の種類の偏りが少なかったり、放出量自体が小さかったりすることがあり、この場合は、特定のE3をターゲットとするユビキチン−プロテアソームシステムが関与できる割合が小さく、ユビキチン−プロテアソームシステムに対するプロテアソーム阻害剤を抗癌剤に選択しても、抗癌剤の効きが期待できない場合がある。
つまり、投与する抗癌剤の選択にあたり、患者の癌が頻繁に放出する特定タンパク質の種類を考慮した抗癌剤の選択は有益である。
ここで、人工合成疑似E3の持つ、特異なE2との結合性を利用する。患者の組織サンプルに、特定疾患と関連づけた人工合成疑似E3を添加し、標的となるE2との結合の有無や強さを調べることにより、癌患者生体内での癌に対するユビキチン−プロテアソームシステムが関与できる割合を評価し、ユビキチン−プロテアソームシステムに対するプロテアソーム阻害剤のようなタイプの抗癌剤を選択するか、他のタイプの抗癌剤の選択を優先するかを判断する抗癌剤選択支援剤とする。
[E3拮抗剤となるプロテアソーム阻害剤]
上記したように、癌細胞によっては、特定の不要タンパク質を頻繁に放出するものがある。この場合は、当該特定の不要タンパク質を分解・除去するユビキチン−プロテアソームシステムが関与できる割合が大きく、比較的効率良くプロテアソーム阻害剤の薬効が得られることが期待できる。
現在、市場で利用できるプロテアソーム阻害剤は、ユビキチン−プロテアソームシステムの流れの中で、E1からE2へのユビキチンの転移を阻害するものや、E3による標的タンパク質の認識を阻害するものや、プロテアソームの標的タンパク質の認識を阻害するものが中心である。
ここで、発明者宮本和英は、ユビキチン−プロテアソームシステムの流れの中において、この人工合成疑似E3の持つ性質のうち、(1)E2との結合性と、(2)ユビキチンをE2から自身へ移動させる収奪性という性質に注目すれば、in vivoにて、人工合成疑似E3は、天然E3と競合関係にあり、E3拮抗剤となる可能性を見出した。さらに、人工合成疑似E3の持つ性質のうち、(3)標的タンパク質との結合能力は有しない性質と、(4)標的タンパク質に対するユビキチン修飾する能力は有しないという性質から、人工合成疑似E3とE2が結合してしまえば、そのE2は、その後、ユビキチン−プロテアソームシステムの流れから脱落するため、プロテアソーム阻害剤となり得る。つまり、癌細胞によって頻繁に放出される特定の不要タンパク質の除去ができなくなり、癌細胞が死滅する。
このような“E3拮抗剤型のプロテアソーム阻害剤”は、現在まだ知られておらず、有望なプロテアソーム阻害剤となり得る。発明者宮本和英は、“E3拮抗剤型のプロテアソーム阻害剤”という新しいタイプのプロテアソーム阻害剤を発明するに至った。
疾患に特有の標的タンパク質に対するE2を狙って設計された人工合成疑似E3を患者の疾患箇所を中心に投与すれば、癌細胞内で天然E3に拮抗して人工合成疑似E3内にE2を抱き込んでしまい、E2をユビキチン−プロテアソームシステムの流れから脱落させて癌細胞を死滅させることが期待できる。
以下、実施例として、白血病特異的に作用する人工合成疑似E3を分子設計し合成精製して作製し、癌診断薬、抗癌剤選択支援剤、E3拮抗剤となるプロテアソーム阻害剤とした。
[人工合成疑似E3の製作]
白血病特異的に機能するような性質を持つ人工合成疑似E3を製作する。
人工合成疑似E3は、図2(c)に示した配列になるよう分子設計した。
図2(c)に示したアミノ酸配列において下線部が、白血病特異的な配列である。なお、この部分の配列を変更することで、他の疾患、例えば、乳癌に特異的なアミノ酸配列となる。
このように分子設計したアミノ酸配列をFmoc固相法で合成して人工合成ペプチドを得た。PyBOP-HOBt-NMM (1:1:1.5)を用いて、100μmolスケールで合成した。レジンは、TGS-RAM(島津製)を使用した。N末端のみビオチン化した。PyBOP(ヘキサフルオロリン酸 (ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム), HOBt(N-ヒドロキシベンゾトリアゾール)、NMM(N-メチルモルホリン)とした。
(a)タンパク質の脱保護
ペプチドの乾燥物に,クリーベイジ試薬(82.5%トリフルオロ酢酸(TFA)、5%蒸留水、5%チオアニソール、3%エチルメチルスルフィド、2.5%エタンジオール、2%チオフェノール)を1ml加えて室温下で8時間反応させてタンパク質の脱保護を行った.
(b)タンパク質の精製
脱保護をしたタンパク質をHPLCで精製する。
カラム:Shim-pack PREP-ODS 5μm, 4.6mm x 25cm(島津製)
流速:12ml/min
移動相A:0.1%TFA 水溶液
移動相B:0.1%TFA アセトニトリル
グラジエント A/B 75/25-60/40 (30min)
検出波長:220 nm
(c)透析
乾燥物を1mlの6M塩酸グアニジンに溶かし,脱気した溶液Aで室温下のもと2時間の透析を2回行う。次に、溶液Aで4℃、overnightで1回透析する。
溶液A:20mMトリス塩酸緩衝液(pH6.9)、50mM塩化ナトリウム、1mMジチオトレイトール、50μM塩化亜鉛
この透析を経て、白血病特有のタンパク質に作用する人工合成疑似E3が得られた。
[癌細胞溶液の準備]
急性前骨髄性白血病細胞株NB4を液体窒素から取り出し、PBSで洗浄後、培養液RPMI-1640(10% FBS, 1%ペニシリン/ストレプトマイシン添加)を加え、37℃のCO2インキュベーターで培養した。連日細胞数をカウントし、7日間後、1.26×106/mLの細胞を100mL得た。これを4.0×107/mLに調製し、癌細胞溶液とした。
PBS: Phosphate Buffered Saline(リン酸緩衝液)
FBS: Fetal Bovine Serum(ウシ胎児血清)
[担癌マウスの準備]
ジメチルエーテル麻酔下のマウスに対して、癌細胞溶液を投与する。
5週齢ヌードマウス(BALB/c slc-nu/nu)に、癌細胞溶液125μl(5.0×106個)を背部皮下より注射し移植を行った。マウスは10匹準備し、9匹に癌細胞溶液を投与し(No1~9)、また、1匹はPBS液のみを投与しコントロールとした。マウスの飼育は、自由給餌にて行う。
癌細胞投与後、2週、4週、8週に安楽死後、各マウスを病理解剖し、担癌状態(癌細胞の有無、その大きさ等)を観察した。

腫瘍サイズは(1/2)×(短径)2×長径を用いて算出した。また、腫瘍が目視で確認できない場合をNDと記した。
[測定サンプルの準備]
癌細胞投与後の2週、4週、8週に安楽死後、各マウスの採血を行った。
血液を3000rpmで10分間遠心分離した後、上清のみを回収した(以下、上清サンプルと呼ぶ)。
以上用意したもので下記の実験1と実験2を行った。
[実験1]
ウエスタンブロッティング検出
担癌マウスの腫瘍から特定のE2酵素が血液に漏出してきている。このE2活性を人工合成疑似E3の添加により結合させ、その活性をウエスタンブロッティングにより検出する。
図3に示すように、上清サンプルと人工合成疑似E3とを1:1で穏やかに混合し、37℃下で1時間インキュベートさせ、E2から人工合成疑似E3へのユビキチンの転移を生じさせた。
これを超純水で5倍に希釈し、その後SDS(Sodium dodecyl sulfate)サンプルバッファを同量加えて反応を終了させた。上清サンプル10個(コントロールを含む)に対して、同様の操作を行った。この反応液でSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行った.泳動緩衝液(100mLトリス、50mMトリシン、0.1%SDS)、15%のゲル濃度を使用した。
次にウエスタンブロッティングを行った。PVDF膜に1時間、150mAで転写した後、ブロッキング液(1%BSAを含むTBS−T)でブロッキングを行った。
BSA:牛血清アルブミン、TBS−T:(25mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)、0.15M塩化ナトリウム、0.1%Tween-20)
ストレプトアビジン検出系のVECTASTAIN Elite ABC Kit(VECTOR LABORATORIES社)を使用し、人工合成疑似E3のビオチンタグと反応させた。次に、ウエスタンブロッティング検出試薬のECL試薬(GEヘルスケア社)を用いて発光させて、検出装置LAS3000(FUJIFILM社)で検出を行った。
この結果を図4に示した。腫瘍のサイズが大きくなるにしたがって、血液に漏出する白血病に関与するE2酵素が増し、人工合成疑似E3に付加するユビキチン量が増大していることが分かる。
なお、作製した人工合成疑似E3は、モノユビキチン化機能を持つよう設計されているので、ウエスタンブロッティング検出結果では、E3のバンドと、E3−Ubのバンドとして検出され、サンプル内のユビキチンの多寡が測定しやすくなり、E2の活性も判断しやすくなる。
図4に示すように、例えば、No.4、No.9の上清サンプルでは、目視確認できない腫瘍であっても、人工合成疑似E3と結合しているE3−Ubのバンドが高感度検出されていることが分かる。
[実験2]
生理活性反応測定装置AMIS-101による測定
担癌マウスの腫瘍から特定のE2酵素が血液に漏出してきている。このE2活性を人工合成疑似E3の添加により結合させ、その活性をAMIS-101測定により検出する。
生理活性反応測定装置AMIS-101(バイオエックス社製)は、信号累積型高感度ISFETセンサーを用いた測定システムであり、センサー上に設置された反応セル中のプロトンの増減を定量的に高感度で検出できる装置である。
図5に示すように、上清サンプルを超純水にて5倍希釈し、測定サンプルとして準備した。このサンプル16μlをAMIS-101の反応セルに投入し、37℃でシグナル応答が安定するまで静置する。その後、4μlの人工合成疑似E3を添加し、E2から人工合成疑似E3へのユビキチンの付加を生じさせた(図5参照)。
この付加に伴う遊離プロトンの増加を、AMIS-101を利用して定量的・高感度に検出・測定した。ユビキチン化の付加は、プロトンの増加という観点から捉える事ができる。なお、作製した人工合成疑似E3は、モノユビキチン化機能を持つよう設計されているので、AMIS-101測定結果のプロトン増加量から、サンプル内のユビキチンの多寡が測定しやすくなり、E2の活性も判断しやすくなる。
この結果を図6に示した。図6(a)は、腫瘍のサイズと遊離したプロトン量の棒グラフである。図6(b)はそれら結果をプロットしたもので相関関係を示す図である。
図6(a)および(b)に示すように、腫瘍のサイズが大きくなるにしたがって、血液に漏出するE2が増し、溶液中に遊離したプロトンが増大していることが分かる。即ち、腫瘍サイズとE2活性とに相関があり、プロトンの増加量から腫瘍サイズを計測できることが分かる。検証実験では、No,3,5,6,7,8およびコントロールの6匹の担癌マウスにおいて、腫瘍サイズと血清中のE2活性の相関を検証した(図6(b))。その結果、相関係数0.97となり良好な相関を得ることができた。従って、血清中のE2活性の強度から、腫瘍サイズを理論的に簡単に算出できる。例えば、No.1の担癌マウスの血清中におけるE2活性は0.028であることがAMIS-101装置により測定できている(図6(a))。相関式(Y=0.0207x+0.0256)から当該マウスの腫瘍サイズは1.31mm3と計算できる。したがって、No.1,2,4,9のように、目視確認できない腫瘍であっても、本法によって、腫瘍サイズを高感度に計測できることが分かる。
[考察]
上記の実験1では、ウエスタンブロッティング検出を使い、人工合成疑似E3の反応性の観点から、ユビキチンが付加した人工合成疑似E3の量を検出することができる。一方、上記の実験2では、人工合成疑似E3の反応性の観点から、AMIS-101装置を活用し、遊離したプロトンの量を測定し、E2活性を捉えることができる。
また、遺伝子工学の一般論としては、アミノ酸配列を変えると他のアミノ酸配列との相互作用や立体構造の変化による影響が起こる場合があるが、実験1と実験2から、本発明の人工合成疑似E3においては、ヘリックス領域のアミノ酸配列は、他のアミノ酸配列との相互作用や立体構造の変化による大きな影響を受けることなく、所定の機能、つまり、E2との結合能力を喪失することなく支障なく発揮できたことが分かる。
患者の血液を採血した後、適切な遠心分離や希釈を行い、測定試料を準備し、ウエスタンブロッティング検出とAMIS-101検出を用いた検出・測定を組み合わせることで、患者の腫瘍の有無、腫瘍のサイズを定量的に捉えることができることが分かる。
PET検査やCT検査では、通常、60mm3程度の腫瘍を発見できるのが限界であるが、本法では、それを遥かに凌き、目視確認できない程に極微小な腫瘍でも検出でき、そのサイズを容易に計測することができることが分かる。
これまでの研究から、腫瘍増大に伴って、血液の遠心分離後の上清に、特有のE2酵素が漏れ出てきていることを発見できた。この疾患に特有のE2の活性と、ユビキチンが付加した人工合成疑似E3の量を検出・測定することで、腫瘍の有無や腫瘍サイズを計測できることが分かった。
以上、実験1および実験2の結果から、疾患に特有のE2の活性と、ユビキチンが付加した人工合成疑似E3の量を検出・測定できるので、人工合成疑似E3は、“疾患診断薬”として機能し得るものであることが実証された。
また、実験1、実験2で実証されたように、疾患により漏出する特有のE2に対して人工合成疑似E3が結合し、E2が保持していたユビキチンを人工合成疑似E3が受け取ったことを検証できた。これは、E2との結合において天然のE3と人工合成疑似E3が競合することを意味し、人工合成疑似E3を天然の“E3に対する拮抗剤”として成立することが実証された。また、人工合成疑似E3は特定の標的タンパク質とは結合せず、標的タンパク質をユビキチン修飾させないため、人工合成疑似E3は“プロテアソーム阻害剤”の有効成分となり得ることが実証された。
また、実験1および実験2の結果から、疾患に特有のE2の活性とユビキチンが付加した人工合成疑似E3の量を検出・測定できるので、その疾患に対して、ユビキチン−プロテアソームシステムが関与する割合の大きな抗癌剤が効果的に効くのか否かを事前に予測することができることも実証された。つまり、人工合成疑似E3は、“抗癌剤選択支援剤”として機能し得るものであることが実証された。
特定の疾患に関連する特定のタンパク質を標的タンパク質とするそれらのE3のヘリックス領域のアミノ酸配列は、別の特定のタンパク質を標的タンパク質とするE3のヘリックス領域のアミノ酸配列とは必ず相違する。従って、本発明の人工合成疑似E3は、それ自身特定の疾患に関連付けられていると言える。
なお、上記説明では、白血病を例に実験したが、E3のヘリックス領域のアミノ酸配列を変更することで、他の癌やパーキンソン病などの疾患に対しても同様に適用し得ることが理解されよう。
以上、本発明の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
本発明の疾患診断薬は、人工合成疑似E3であるキメラタンパク質を有効成分であり、癌診断やパーキンソン病診断など、疾患診断薬として広く適用することができる。疾患ごとに漏出するE2と結合能力を有する人工合成疑似E3を分子設計して合成することができ、あらゆる疾患に対して利用可能性がある。
また、本発明のE3拮抗型プロテアソーム阻害剤は、人工合成疑似E3であるキメラタンパク質を有効成分であり、ユビキチン−プロテアソームシステムにおけるE3拮抗型の阻害剤として提供できる。なお、上記したように、疾患ごとに漏出するE2との結合能力を有する人工合成疑似E3を分子設計して合成することができ、あらゆる疾患に対して利用可能性がある。
また、本発明の抗癌剤選択支援剤は、人工合成疑似E3であるキメラタンパク質を有効成分であり、E2の活性を検査することができ、事前に抗癌剤の効果を予測することができ、抗癌剤の選択支援剤として利用可能性がある。

Claims (5)

  1. ユビキチン−プロテアソームシステムにおいて特定の疾患に関連する生体内のE3のヘリックス領域のアミノ酸配列を、他のタンパク質の一部に導入したキメラタンパク質を分子設計し、人工合成した前記特定の疾患に関連付けた人工合成疑似E3を有効成分とした薬剤を試薬として用いたin vitroにおける疾患診断を補助する方法であり、
    前記人工合成疑似E3が、
    前記特定の疾患に関連するE2と結合し、前記結合後に前記E2からユビキチンを収奪する、前記ヘリックス領域のアミノ酸配列部分と、
    前記ヘリックス領域のアミノ酸配列以外の前記他のタンパク質部分において、前記E2から収奪した前記ユビキチンを取り込んでプロトンを発生させるリジン残基の構造を備えたものであり、
    前記へリックス領域のアミノ酸配列が、前記E3のうち、2個の亜鉛に配位結合するCross-braceモチーフを構成している8個のアミノ酸のうちの第6番目のアミノ酸と第7番目のアミノ酸との間を繋ぐアミノ酸配列、または、当該アミノ酸配列の一端若しくは両端のアミノ酸各1個を除いた残り部分であり、
    前記他のタンパク質が、前記Cross-braceモチーフを有する1個のドメインを含むが他の構造が異なり前記E3ではないタンパク質であり、
    前記E3の前記ヘリックス領域のアミノ酸配列を、前記他のタンパク質における2個の亜鉛に配位結合するCross-braceモチーフを構成するアミノ酸のうち先頭から第6及び第7番目のアミノ酸の間を繋いでいる領域のアミノ酸配列と置換せしめて合成したものであり、
    検査測定装置としてプロトンの増減量を測定する装置を用い、
    前記薬剤を用いて前記生体の試験サンプル中の前記E2活性に応じて発生する前記プロトン量を前記検査測定装置により測定することにより前記特定の疾患に関する前記E2の活性の大きさを評価して疾患の有無および疾患の状態を推定することを特徴とするin vitroにおける疾患診断を補助する方法。
  2. 前記E3が、RING型E3、Miz型E3、またはUbox型E3のいずれかである請求項1に記載のin vitroにおける疾患診断を補助する方法。
  3. 請求項1または2に記載のin vitroにおける疾患診断を補助する方法に用いるための疾患診断キットであって前記人工合成疑似E3を有効成分とする薬剤を含む疾患診断キット
  4. 請求項1または2に記載のin vitroにおける疾患診断を補助する方法で得られた前記E2の活性の評価に基づいて、対象となる疾患におけるユビキチン−プロテアソームシステムの関与の割合の大きさを判定し、投与に適した抗癌剤の選択の支援を可能とした、抗癌剤選択支援方法。
  5. 請求項1または2に記載のin vitroにおける疾患診断を補助する方法を行う疾患診断システムであって、前記薬剤を試薬として供給し、前記検査測定装置としてプロトンの増減量を測定する装置を用い、前記薬剤を用いて生体の試験サンプル中のE2活性に応じて発生するプロトン量を前記検査測定装置によりカウントすることにより特定の疾患に関する前記E2の活性の大きさを評価し、疾患の有無および疾患の状態を推定する疾患診断を行う疾患診断システム。
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