JP5990256B2 - 粒子分離の方法および装置 - Google Patents

粒子分離の方法および装置 Download PDF

Info

Publication number
JP5990256B2
JP5990256B2 JP2014504129A JP2014504129A JP5990256B2 JP 5990256 B2 JP5990256 B2 JP 5990256B2 JP 2014504129 A JP2014504129 A JP 2014504129A JP 2014504129 A JP2014504129 A JP 2014504129A JP 5990256 B2 JP5990256 B2 JP 5990256B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cells
array
particles
microstructure
separation chamber
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2014504129A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014510539A (ja
Inventor
マ ホンシェン
マ ホンシェン
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
University of British Columbia
Original Assignee
University of British Columbia
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by University of British Columbia filed Critical University of British Columbia
Publication of JP2014510539A publication Critical patent/JP2014510539A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5990256B2 publication Critical patent/JP5990256B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N15/00Investigating characteristics of particles; Investigating permeability, pore-volume or surface-area of porous materials
    • G01N15/10Investigating individual particles
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N1/00Sampling; Preparing specimens for investigation
    • G01N1/28Preparing specimens for investigation including physical details of (bio-)chemical methods covered elsewhere, e.g. G01N33/50, C12Q
    • G01N1/40Concentrating samples
    • G01N1/4077Concentrating samples by other techniques involving separation of suspended solids
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12MAPPARATUS FOR ENZYMOLOGY OR MICROBIOLOGY; APPARATUS FOR CULTURING MICROORGANISMS FOR PRODUCING BIOMASS, FOR GROWING CELLS OR FOR OBTAINING FERMENTATION OR METABOLIC PRODUCTS, i.e. BIOREACTORS OR FERMENTERS
    • C12M47/00Means for after-treatment of the produced biomass or of the fermentation or metabolic products, e.g. storage of biomass
    • C12M47/04Cell isolation or sorting
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N15/00Investigating characteristics of particles; Investigating permeability, pore-volume or surface-area of porous materials
    • G01N15/01Investigating characteristics of particles; Investigating permeability, pore-volume or surface-area of porous materials specially adapted for biological cells, e.g. blood cells
    • G01N2015/012Red blood cells
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N15/00Investigating characteristics of particles; Investigating permeability, pore-volume or surface-area of porous materials
    • G01N15/01Investigating characteristics of particles; Investigating permeability, pore-volume or surface-area of porous materials specially adapted for biological cells, e.g. blood cells
    • G01N2015/016White blood cells
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N15/00Investigating characteristics of particles; Investigating permeability, pore-volume or surface-area of porous materials
    • G01N15/10Investigating individual particles
    • G01N2015/1022Measurement of deformation of individual particles by non-optical means

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Dispersion Chemistry (AREA)
  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

本開示は、一般に粒子の分離および測定のための装置および方法に関する。より詳細には、本開示は、粒子の1または複数の物理的特性を用いて、不均質な粒子混合物を分離する装置および方法、そして粒子の物理的特性を測定するための装置および方法に関する。
本出願は、2011年4月15日出願の米国特許仮出願第61/476,151号の利益を主張し、該米国特許仮出願を本願と一体をなすものとして引用する。
多くの利用分野において、例えば母体血からの胎児細胞の単離、血液細胞の分画や、癌患者の末梢血からの循環する腫瘍細胞の分離のように、不均質な試料から個別の細胞集団を分離することが求められている。
細胞の表面分子のアフィニティーキャプチャーに基づく化学的分離方法は、公知の化学的マーカーを用いた細胞の単離において非常に有効であるが、細胞の特性を改変してしまうことがある。試料の構成成分をその原初の状態で保存する必要がある場合、一般に化学的方法は望ましいものではない。アフィニティーキャプチャー方法は、一般に、一意的バイオマーカーが全く公知でない場合には不可能である。
物理的差異に基づく細胞の分離は、多くの医学的研究および臨床的実務の分野において重要である。物理的分離用の先行技術としては、誘電泳動(DEP)、大きさのみに基づいて細胞を分離する流体力学的クロマトグラフィ、そして大きさと剛性に基づいて細胞を分離する濾過がある。異なる細胞タイプを区別するためには大きさだけでは不充分であることが多いため、一般に大きさと剛性に基づく分離がより有用であるとみなされている。これらの物理的選別方法は、伝導度、大きさ、変形性またはそれらの組合せなどの物理的特性に基づいて細胞集団を選別する。細胞の濾過において繰り返し発生する制約は、フィルター微小構造内部の粒子の詰まりまたは集積である。詰まりは、フィルターの流体力学的抵抗を改変し、特定性、収量および処理量が低下する。更に、細胞膜がフィルター壁に恒常的に接触すると、フィルター壁に吸着される細胞が増えて、分離に際して細胞の回収が阻害されることがある。
標的細胞が非常に低い濃度で存在する利用分野では、フィルターの詰まりや、細胞が過度の圧力に曝されることを回避しながら、非常に高い効率および純度で細胞の優れた分離と回収を可能にする細胞選別方法が特に望ましい。
従前のミクロスケールのラチェット機構では、粒子のキャリア流体の粘性抗力に対する個々の粒子の運動を修正するために、局所的非対称性および局所的励起を有する周期的な構造が利用されている(Astumian, R.D.「Thermodynamics and kinetics of a Brownian motor」, Science, 1997.276(5314): p.917-922;Julicher, F., A.AjdariおよびJ. Prost「Modeling molecular motors」, Reviews of Modern Physics, 1997.69(4): p.1269-1281)。典型的には、ミクロスケールのラチェット機構は、電位(Bader, J. S.等「DNA transport by a micromachined Brownian ratchet device」, PNAS, 1999.96(23): p.13165-13169), 誘電泳動(Gorre-Talini, L., J. P. SpatzおよびP. Silberzan「Dielectrophoretic ratchets」, Chaos, 1998.8(3): p.650-656;Rousselet, J.等「Directional Motion of Brownian Particles Induced by a Periodic Asymmetric Potential」, Nature, 1994.370(6489): p.446-448)、光学トラップ(Faucheux, L. P.等「Optical Thermal Ratchet」, Physical Review Letters, 1995.74(9): p.1504-1507)、障害部が課す幾何学的制約(Loutherback, K.等「Deterministic Microfluidic Ratchet」, Physical Review Letters, 2009.102(4): p.045301;Matthias, S.およびF.Muller「Asymmetric pores in a silicon membrane acting as massively parallel brownian ratchets」, Nature, 2003.424(6944): p.53-57)ならびに細菌および細胞の運動性(Galajda, P.等「Funnel ratchets in biology at low Reynolds number: choanotaxis」, Journal of Modern Optics, 2008.55(19-20): p.3413-3422;Hulme, S.E.等「Using ratchets and sorters to fractionate motile cells of Escherichia coli by length」, Lab on a Chip, 2008.8(11): p.1888-1895;Mahmud, G.等「Directing cell motions on micropatterned ratchets」, Nature Physics, 2009.5(8): p.606-612)に基づいて、流れの非対称性を活用する。流れの中の非対称性は、粒子の大きさと相関関係を有し、そのため大きさに基づく分離のために有用である(Davis, J.A.等「Deterministic hydrodynamics:Taking blood apart」, Proc.Natl.Acad. Sci.U. S.A., 2006.103(40): p.14779-14784)。
従って、粒子を分離するための装置および方法を改良することが望ましい。
先行技術の少なくとも1つのデメリットを除去または軽減することが、本開示の目的である。
1つの特徴において、本開示は、第1の端部および第2の端部を有する流路と、第1の端部から第2の端部までの順方向への流動と第2の端部から第1の端部までの逆方向への流動との間で流路内のキャリア流体を交番させるための流体流れ制御装置と、流路内の微小構造を含む装置を提供する。微小構造は、流路内のキャリア流体中の粒子が微小構造中を通過するにつれて粒子を変形させる寸法にて形成され、かつ微小構造中を逆方向に通過する粒子を変形させるのに必要とされる力よりも微小構造中を順方向に通過する粒子を変形させるのに必要とされる力の方が小さくなるように構成された1または複数の通路を含む。
他の特徴では、本開示は、流路の第1の端部により近い第1の側と流路の第2の端部により近い第2の側とを有し、流路内キャリア流体中の粒子が微小構造を通過するにつれて粒子を変形させる寸法にて形成され、微小構造の第2の側から微小構造の第1の側へと通過する粒子を変形させるのに必要とされる力よりも微小構造の第1の側から微小構造の第2の側へと通過する粒子を変形させるのに必要とされる力の方が小さくなるように構成された1または複数の通路を内部に含む微小構造を流路内に提供するステップと、第1の端部から第2の端部までの順方向への流動と、第2の端部から第1の端部までの逆方向への流動との間で交番するようにキャリア流体を強制するステップとを具備する方法を提供する。
他の特徴では、本開示は、粒子変形性を測定するための装置において、既定のサイズ範囲内の大きさを有する被験粒子を収容するための封入型流路と、封入型流路内部の微細化された狭窄部であって、既定のサイズ範囲内の粒子が、狭窄部を通過中に変形する寸法にて形成されている狭窄部と、狭窄部を横断して制御可能な圧力を選択的に提供するため、封入型流路に連通する制御可能な圧力源とを具備する装置を提供する。
他の特徴では、本開示は、粒子の変形性を測定するための装置において、第1の端部と第2の端部を有し、第1の大きさの粒子の実質的にスムーズな通過を可能にするように構成された、キャリア流体が充填された流路と、第1の端部と第2の端部の間の流路内の狭窄部であって、第1の大きさの粒子がその中を通過することによって変形させられるように構成されている狭窄部と、流路の第1の端部に第1の大きさの被験粒子を導入するための試料入口と、第1の端部から第2の端部に向かって流路内のキャリア流体に対し圧力勾配を選択的に適用するための圧力源と、被験粒子が狭窄部内に強制的に通されるまで圧力勾配を増大させ、粒子を狭窄部内に強制的に通すのに必要とされる圧力を出力するように構成された制御装置とを具備する装置を提供する。
本開示の他の態様および特徴は、添付図面に関連して説明する以下の具体的実施形態から当業者には明らかとなろう。
本開示の実施形態についてここで、添付の図面を参照しながら単なる一例として説明する。
本発明の一実施形態に係る粒子分離用装置である。 別の実施形態に係る粒子分離用装置のテーパー状に形成された微小構造通路を示す。 別の実施形態に係る粒子分離用装置のテーパー状に形成された微小構造通路を示す。 別の実施形態に係る粒子分離用装置のテーパー状に形成された微小構造通路を示す。 本発明の別の実施形態に係る粒子分離用装置である。 本発明の別の実施形態に係る粒子分離用装置である。 それぞれ順方向および逆方向へのミクロスケールの漏斗狭窄部を通した単一細胞の概略的変形を示す。微小構造のパラメータとしては、漏斗の細孔サイズ(W0)および漏斗テーパの半角(θ)が含まれる。 それぞれ順方向および逆方向へのミクロスケールの漏斗狭窄部を通した単一細胞の概略的変形を示す。微小構造のパラメータとしては、漏斗の細孔サイズ(W0)および漏斗テーパの半角(θ)が含まれる。 一実施形態に係るミクロスケールの漏斗狭窄部を通して単一細胞を変形させるのに必要とされる圧力を測定するための2層マイクロ流体素子の設計を示す。 別の実施形態に係るミクロスケールの漏斗狭窄部を通して単一細胞を変形させるのに必要とされる圧力を測定するためのマイクロ流体素子の一例を示す。 別の実施形態に係る単一のミクロスケールの漏斗狭窄部を通して単一細胞を変形させるのに必要とされる圧力を測定するためのマイクロ流体素子の一例を示す。 10°の漏斗狭窄部を通して単一のMLC(細胞直径(ψcell)=15.6μm)を変形させるために必要とされる順方向および逆方向の閾値圧力を示す。モデル曲線は、750pN/μmの表層張力を用いて適合されたものである。 ψcell/W0の一関数として、10°、5°および0°の漏斗狭窄部についての圧力非対称性を示す。示されているデータ点は、同一細胞上での3〜4回の測定に由来する平均圧力であり、一方エラーバーは測定結果の範囲を示している。 様々な圧力振幅における0.5Hzの振動での漏斗鎖(funnelchain)(W0=6μm)内の単一MLC(ψcell=10.5μm)の変位を示す。これらの曲線の初期位置にはオフセットが加えられ、それらが同じ点において開始するようになっている。「漏斗無し」曲線は、漏斗鎖内に入る前の狭窄部されていないマイクロ流路内の細胞の運動を追跡する対照実験である。 150Paの振動圧力振幅でのラチェット運動の周波数依存性を示す。 本発明の別の実施形態に係る装置を示す。 図7Aの装置の分離チャンバ内の閉塞アレイを示す。 図7B内の囲みCによって表わされた部域の拡大図である。 PBMC(末梢血単核球)が6μmの漏斗サイズで分布ピークを示し、MLC(マウスリンパ腫細胞)が約9μmで分布ピークを示す、混合試料の分布を示す。 PBMCには赤色で丸がついている、混合分布の明視野顕微鏡写真である。 混合分布の蛍光顕微鏡写真である。 分離効率を示す棒グラフであり、順方向に1秒間、逆方向に3秒間、6.9kPaの圧力を印加して1分間振動させて細胞を分離した。 5回の別個の試験にわたるマウスリンパ腫細胞の分布を示す図であり、順方向に1秒間、逆方向に3秒間、14kPaの圧力を印加して1分間振動させた。 漏斗サイズに対する微小粒子およびMLCの直径の分布形状を示す図であり、順方向に1秒間、逆方向に3秒間、6.9kPaの圧力を印加して1分間振動させた。 図11A〜図11Eは、振動無し(図11A)、2回の振動後(図11B)、4回の振動後(図11C)、6回の振動後(図11D)および定常状態(更なる細胞遊走無し、図11E)の試料中の細胞分布の一連のグラフを示しており、順方向に1秒間、逆方向に3秒間、6.9kPaの圧力を印加して。 7kPa、14kPa、28kPa、41kPa、および55kPaについて、フローチャンバに適用された圧力に応じた細胞の分布を示す。振動時間は、順方向に1秒、逆方向に3秒であった。 10.3kPaの印加圧力についての、振動サイクルの長さに応じた細胞の分布を示す。1分間の振動について、順方向への振動時間は1秒であり、逆方向への時間は図中に記されている通りであった。 順方向へ1秒、逆方向へ3秒時間の1分間の振動について、印加圧力に対するラチェッティングを示す細胞の割合を示す図である。 様々な濃度のPMS(フュナジンメトサルフェート)で処理された赤血球の表層張力を比較するヒストグラムを示す図である。
本開示は、粒子の物理的特性に基づく粒子の分離のための方法、装置およびシステム、および、粒子の物理的特性を測定するための方法、装置およびシステムを提供する。
本発明の特定の特徴によれば、粒子分離のための方法および装置が提供される。より詳細には、大きさ、剛性、または、大きさと剛性などの物理的特性に基づく粒子を分離するための方法および装置が提供される。
以下の記述において、多くの用語が広範囲に使用されており、本発明の様々な態様を容易に理解できるようにするために本明細書中で定義が提供されている。用語の例を含めた明細書中における実施例の使用は、単に例示を目的としたものであって、本明細書中の本発明の実施形態の範囲および意味を限定するように意図されていない。
粒子とは、ミクロスケールのシステムを流通可能な任意の離散的材料とすることができる。粒子の例としては、ビーズや細胞などがある。
粒子の不均質混合物流れは、少なくとも2つ以上のタイプの粒子または粒子種または粒子集団を含むことができる。粒子のタイプ、種または集団は、大きさ、剛性、または、大きさと剛性の双方において異なる場合がある。更に、粒子のうち1または複数の粒子は、選択可能なマーカーまたは識別可能なマーカーを含むことができる。
粒子は、キャリア流体、緩衝液、生理食塩水、水、培地、血液、血漿、血清、細胞または組織抽出物、尿など、或いはそれらの組合せを含めた任意の好適な流体中に懸濁することができる。この技術分野では、このような分離を容易にするために様々な技術が試みられ、その各々に欠点が示されてきた。
マイクロフルイディクスおよび多層ソフトリソグラフィの開発によって、マイクロメーターのスケールの弁やポンプとして機能する様々な微小構造および素子を作り上げることが可能になった。微小構造とは、1または複数の寸法が約1mm未満である特徴を含む構造であるものと理解されよう。マイクロ流体素子は、ナノリットルまたはピコリットル規模の液体体積を取り扱うミクロスケールの素子を意味する。
例えば、基板上に設けられたポリマー層に形成された微小構造によって、チップ等の上にマイクロ流体素子を形成した実施形態もあろう。例えば、以下に記述する通り、流れ層および制御層を有するマイクロ流体素子を含む実施形態もあろう。更に、ある実施形態では、流れ層は実質的に一定の高さを有し、この高さは、問題の粒子の大きさに基づいて選択することができる。
「層流」の条件下では、流体は、乱れ無く流路内を流れる。層流または非乱流挙動の定量化は、典型的にはレイノルズ数の計算、Re=pvD/I(式中、pは流体密度、Iは流体粘度、vは流体速度そしてDは一部の特徴的流路寸法(典型的には流路幅)である)を通して行なわれる。典型的流路幾何形状についてレイノルズ数が小さい(<1)場合には、流れは層流、可逆流かつ非乱流である。この理由から、意図された流体特性および流体速度に対応するように流路の寸法(例えば横断面積)を設計することができ、或いは同様に、流体特性および流路直径によって流体速度を決定することができる。
本明細書中に記載されているのは、局所的非対称性が微細規模の狭窄部を通した個別の細胞の変形性に結合されるミクロスケールのラチェット機構の例示的実施形態である。ある実施形態では、狭窄部は「テーパー状」または「漏斗状」に形成されている。例えば、ある実施形態では、漏斗狭窄部は、一対の三角形の障害部により形成することができる(例えば、図3A、3Bを参照のこと)。テーパーの方向で(「順方向」、F)この狭窄部の中に細胞を圧縮するには、テーパーに対抗する場合(「逆方向」、R)に比べて必要とされる印加圧力が小さい。従って、順方向への必要とされる閾値圧力よりも大きな振幅をもつ偏りのない圧力振動を適用することで、テーパーの方向に沿った輸送を修正可能となる。
ラチェットとは、一方向へのみ泳動するつまり正味の移動を可能にし、第2の方向つまり反対方向への移動を妨げる装置または装置を意味する。マイクロ流体ラチェットは、一方の方向(順方向)への正味粒子泳動を可能にする一方で、第2の方向(逆方向)への正味粒子泳動を妨げるように構成された装置である。指向性移動は、粒子の単方向性または正味単方向性移動、第1の方向へのより長い時間、より大きい速度および/または圧力での振動流れ、或いはそれらの組合せを可能にするように構成された1または複数の障害部によって容易になるかもしれない。
ミクロスケール漏斗狭窄部を通して単一細胞を変形させるために必要とされる閾値圧力は、細胞を恒常な表層張力を伴う液体の満たされた袋とみなすことによってモデリング可能である(Hochmuth, R.M., 「Micropipette aspiration of living cells」, Journal of Biomechanics, 2000.33(1): p.15-22)。狭窄部内で前縁および後縁表面をほぼ静的に形成するために必要とされる終端間圧力は、ヤング−ラプラスの法則を応用して決定され、以下の等式(1)が得られる。
Figure 0005990256
[式中、ΔPは狭窄部を横断する圧力差であり、TCは(等方性で恒常であるものと仮定された)膜の表層張力であり、RaとRbはそれぞれ前縁表面および後縁表面の半径である]。細胞の前縁が狭窄部内に引き込まれるにつれて、ΔPは最終的に最大値に達し、次に更なる変形の時点で減少する。この現象は、細胞全体を微小構造内に急速に引き込むハインズジャンプとして公知の不安定性をひき起こす(Haines, W.B., 「Studies in the physical properties of soil V The hysteresis effect in capillary properties, and the modes of moisture distribution associated therewith」, Journal of Agricultural Science, 1930.20: p.97-116)。Rb≫Raであることから、ハインズジャンプ不安定性は、Ra=W0/2の近傍で起こり(図3Aと3B参照)、一方、対応するRb値は体積保存から決定できる。順方向および逆方向への細胞の変形間の所要圧力の非対称性は、微小構造により課せられる幾何学的拘束から生じるものである。具体的には、細胞が順方向に変形される場合、漏斗の側壁の存在がRbの値を低減させ、従って、細胞が逆方向に変形される場合に比べてハインズジャンプの条件に到達するのにより小さなΔP値しか求められない。
この力の非対称性は、制御された振動流れを可能にし、狭窄部を通した、そして以下で記述する通りアレイを通した粒子の単方向性(正味単方向性)輸送を可能にする。
分離素子例
図1は、一実施形態に係る装置100の一例を概略的に示している。装置100は、流体流れ制御装置104に連通する流路102を含む。流体流れ制御装置は、流路102の第1の端部106から流路102の第2の端部108までの順方向の流動と、流路の第2の端部108から第1の端部106までの逆方向Rの流動との間で、流路102内のキャリア流体を選択的に交番させるように動作可能である。流体流れ制御装置104は、例えば、流路102内の何れかの方向にキャリア流体が流れるように促すため、1または複数の制御可能な圧力源を含むことができる。1または複数の圧力制御構造および流路102への流体の流れに影響を及ぼすための他の要素、例えば圧力減衰器、延長された微小流体流路、バルブ、流体マルチプレクサ、灌流チャンバなども具備することができる。
流路102内において第1と第2の端部106、108の間に、微小構造110が配置されている。微小構造110は、粒子が通路111内を通過するにつれてキャリア流体中の粒子を変形させる寸法にて形成され、通路111を通って逆方向Rよりも順方向Fに粒子を強制するのに必要な圧力の方が低くなるようにテーパーが付いた通路111を含んでいる。ある実施形態では、通路111は、粒子の断面積対通路の断面積の比が約2.2〜約4.5となるように形成される。本明細書で通路、細孔、漏斗などに関連して使用されている「テーパー」(およびその派生型)という用語は、本体の一方の側でより大きく、本体の他方の側でより小さいものである本体を通る開口部を意味する。同様に「順方向にテーパー」という表現は、順方向に開口部を通過するにつれその大きさが小さくなる開口部を意味する。
図1の実施形態では、流路102の両側に設けられた一対の障害部の間に通路111が形成されており、該一対の障害部は、反対方向に傾斜した表面112、114を有している。表面112、114は、「漏斗」を形成するものとして言及される場合がある。表面112、114は、ある実施形態において実質的に平坦とすることができる。表面112、114は、ある実施形態では互いに0°超から約60°までの角度で配向されていてよい(例えば、漏斗は0°超から約30°までの半角を有する)。ある実施形態では、表面112、114は、互いに約2度の角度で配向される(例えば漏斗は約1°の半角を有する)。ある実施形態では、表面112、114は、互いに約10°の角度で配向されている(例えば、漏斗は約5度の半角を有する)。ある実施形態では、表面112、114は、互いに約20°の角度で配向される(例えば漏斗は約10°の半角を有する)。
図1A〜図1Cは、他の実施形態に係る微小構造110A〜110Cを示す。図1Aの微小構造110Aは、流路102の両側に設けられた一対の障害部の間に形成された通路111Aを含み、該一対の障害部は、対面する段付き表面112A、114Aを有している。図1Bの微小構造110Bは、流路102の両側に設けられた一対の障害部の間に形成された通路111Bを具備し、該一対の障害部は対面する曲面112B、114Bを有している。図1Cの微小構造110Cは、流路102のほぼ中心に配設された単一の障害部113の両側に形成された一対の通路111Cを含み、こうして、障害部113の形状によって通路111Cに望ましいテーパーが設けられる。
図2は、別の実施形態に係る装置200を示す。装置200において、流路は、第1と第2の端部206、208ならびに対向する側壁203を有する分離チャンバ202を含む。図示する例では、チャンバ202は全体的に矩形として描かれているが、これは全ての実施形態において求められることではない。流体流れ制御装置(図2には示さず)は、キャリア流体を順方向Fへの流動と逆方向Rへの流動の間で交番させるため、それぞれ1または複数のキャリア流体流路205、207を通って、キャリア流体を第1と第2の端部206、208で分離チャンバ202内に分配する。チャンバ202の両端部にフィルター障壁(図2には示さず)を具備して、チャンバ202内の粒子がキャリア流体流路205、207内に進入するのを妨げてよい。障害部212のアレイ210を含む微小構造が、分離チャンバ202内部に配置される。隣接する障害部212間に通路211が形成される。通路211の開口部の幅(つまり細孔サイズW0、図3A、3Bを参照)は、分離すべき粒子の大きさよりも小さくなるように選択され、こうして粒子は通路211内を流通するにつれて変形させられる。通路211の長さ213は、障害部212の長さによって決定される。キャリア流体中に懸濁した粒子の試料を第1の端部206とアレイ210の間でチャンバ202内に導入するように、試料入口220が配置されている。チャンバ202から分離された粒子を取出すために、アレイ210の両側に第1と第2の試料出口231、232が配置されている。入口220および出口231、232は、好適なバルブを用いて開閉するようにできる。
動作中、入口220は開放されて、チャンバ202内に粒子の試料を導き入れ、その後入口は閉鎖され、キャリア流体流路205、207から加圧されたキャリア流体を交互に供給することによってチャンバ202の内部でキャリア流体が振動させられる。印加圧力(順方向および逆方向)は、通路211を通って粒子を強制するために予想される閾値圧力に基づいて選択される。例えば、順方向圧力は、通路211の1つを通って順方向に粒子を強制するため、閾値圧力よりも大きくなるように選択することができ、逆方向圧力は、通路の1つを通って逆方向に粒子を強制するため閾値圧力よりも低くなるように選択されて、粒子が通路内を逆方向に通過するのを妨げてよい。キャリア流体の振動は、アレイ210と第2の端部208の間に変形可能な粒子を蓄積させ、一方アレイ210と第1の端部206の間にはより剛性の高い粒子が蓄積する。アレイ210を通過した変形可能な粒子は、出口232を通して取出され、アレイ210を通過しなかったより剛性の高い粒子は、出口231を通して取出される。ある実施形態では、分離後に出口231、232から粒子を流し出すため追加のキャリア流体を導入するための追加の入口(図2には図示せず、図2Aおよび図7を参照のこと)を具備してよい。
図2Aは、別の実施形態に係る装置200Aを示す。装置200Aは、図2の装置200と共通の要素を数多く有しており、これらは対応する参照番号にて指示されており、再度説明はしない。装置200Aは、6つの障害部アレイ、すなわちアレイ214、215、216、217、218、219を含む。各アレイ214〜219は同数の障害部を有するが、分離チャンバ202を通って順方向に移動するにつれて各連続アレイ内の障害部のサイズは増大し、従って、流体および粒子が順方向Fでチャンバ202を通って進むにつれて、各々の連続アレイと共に障害部間の通路のサイズは減少する。分離チャンバ202を流通する流体は障害部の周囲およびそれらの間を流れ、障害部は流路を横断して延在し、流路の上面および底面に固定されているか、またはそれらと一体を成すか、或いはそれらに当接している。装置200Aもまた分離された粒子をチャンバ202の各領域から取出すための7つの出口231、232、233、234、235、236、237と、該出口231〜237から分離済み粒子を流し出すための、(試料入口220に加えて)6つの追加の入口221、222、223、224、225、226とを含む。
装置200Aは、また、チャンバ202の第1と第2の端部206、208の各々の近傍に配設された任意のフィルター障壁240を含んでいる。障害部のアレイと相互作用する前に、流体はフィルター障壁240の周囲およびその間を流れる。各々のフィルター障壁240は、内部の1または複数のアレイに面する平坦な側を有する複数の障害部(フィルター障害部)を含む。図2Aに示す実施形態では、フィルター障害部は断面が実質的に半円形で、丸味のある側がキャリア流体流路205、207に面している。フィルター障壁240の障害部は、流路を横断して延在し、流路の上面および底面に固定されているか、それらと一体を成すか或いはそれらに当接している。図示する例では、フィルター障害部は全て同じまたは類似のサイズのものであり、隣接するフィルター障害部の間に、チャンバ202内の粒子がフィルター障壁240を通過するのを妨げるのに充分なほど小さい間隔、または間隙を有する。全ての実施形態でフィルター障壁240が必要とされるわけではないということを理解されよう。例えば、ある実施形態では、粒子は装置200Aの何れ一方の端部または両端部でキャリア流体流路205、207に流入可能としてもよく、或いは、キャリア流体流路205、207それ自体の個別の流路は、粒子の進入を防止可能な程度小さいものであってもよい。図2Aの例では、半円形のフィルター障害部が示されているが、フィルター障害部は、涙滴状、柱、コップ形構造、V字形構造、台形、漏斗状、正方形、円形、楕円形またはその他の形状を含めた任意の形状のものとすることができることは理解されよう。障害部のコーナーは「鋭い」ものであっても、丸味のあるものであってもよい、つまり障害部は、複数のコーナー形状の組合せを有していてよい。
図2Aに示す装置例200Aでは、装置200Aの端部にあるキャリア流体流路205、207は、チャンバ202に連通する複数のサブ流路242を有する分配ネットワークを各々含んでいる。理論に拘束されることは望まないが、サブ流路242は、分離チャンバ202内に進入する時に多数のサブ流路入口を通って流体を分散させることにより、単一の入口(これは、チャンバ202の長手方向軸に沿った流体速度が、チャンバの側面に沿った流体速度より実質的に高くなり、より放物線状の速度プロフィールを提供し得る)に比べて、一層均一な速度プロフィールを提供する。図2Aに示す例では、サブ流路242の数は、アレイ214〜219内の障害部間の通路の数と同一であり、これはまた、フィルター障壁240内の間隙の数とも同一である。また、図示する例では、サブ流路242、フィルター障壁240内の間隙、および、アレイ214〜219内の障害部間の通路は全て一直線上に整列している。
装置例200、200Aなどの装置は更に、当該技術分野において公知のように1または複数のポンプ、バルブ、流体および/または試料タンクを含むか、または、それらと連通し、かつそれらと協働するするようにできる。
分離チャンバ内のアレイの障害部は、任意の好適な形状または形態を有していてよく、図2に示されている三角形の障害部または図2Aに示されている丸味のある三角形および台形は、単なる例である。他の例としては、涙滴形、柱、コップ形構造、V字形構造、台形、漏斗状、正方形、円形、放物線状、半球形、楕円形またはその他の形状が含まれる。障害部のコーナーは「鋭い」ものであってよく、或いは丸味がついていてもよい。障害部は複数のコーナー形態の組合せを有していてよい。ある実施形態では、テーパー状、例えば三角形、台形または涙滴形を有する障害部が好適であるかもしれない。テーパー状の障害部の狭い端部の配向は、流路の第1の端部に向かうものであってよく、アレイ内で互いに隣接してテーパー状の障害部を位置づけすることで、漏斗形状がそれらの間に形成される。ある実施形態では、1つのアレイの内部の障害部のうち1または複数のがフローチャンバの側壁と連続しているかまたはこの側壁から形成することができる。以下で更に詳述されている図4は、各々流路の側壁と連続している2つの障害部のアレイが間に漏斗を形成している特殊な実施形態を示している。図4に示されている形態は、複数のアレイを提供しており、各アレイは、2つの障害部または1つの漏斗を含むものとして記述され得る。
1つのアレイの複数の障害部間の通路は、図3A、3B中に概略的に示されている通り、細孔サイズ(W0)(例えば通路の最も狭い点における通路の幅)および漏斗テーパーの半角(θ)により説明することができる。ある実施形態では、障害部アレイは、間に漏斗状通路のアレイを提供するようなサイズと位置を有する。細孔サイズ(W0)は、試料中の粒子の大きさの範囲および所望の分離に応じて選択することができる。漏斗状の通路は、漏斗のテーパーの半角(θ)により定義される角度で、凹状、凸状、収束的または発散的、段付きまたは直線的側面を伴い、放物線形状であっても、テーパー状とすることができる。W0は、約1〜約20μmの任意の好適な値、またはそれらの間の任意の量、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20μm、或いははその間の任意の量とすることができる。漏斗テーパーの半角θは、約1〜約30°の任意の好適な値またはそれらの間の任意の量、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30°、或いはそれらの間の任意の量とすることができる。ある実施形態では、漏斗の半角は5度である。ある実施形態では、漏斗の半角は10°である。漏斗の長さ(図2中の要素213)は、通路を形成する障害部の長さに左右され、約10〜約100μm、またはそれらの間の任意の量、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90または100μm、またはそれらの間の任意の量とすることができる。多数のアレイを伴う実施形態においては、障害部アレイは、任意の好適な距離、例えば約20〜約200μmまたはその間の任意の量、例えば約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200μmまたはそれらの間の任意の量だけ離隔されていてよい。アレイを離隔する距離は、分離すべき粒子の体積または数量に基づいて選択することができる。アレイは異なる距離を以って離間、配置したり、或いは、全て同じ距離だけ離隔されていてもよい。
分離チャンバの内部で、任意の数のアレイを用いることができ、好適な数の選択は、当業者の能力の範囲内に入り、一部には試料の体積、試料内の粒子の数量や、試料内の粒子の夫々の大きさの数または種類の数によって左右される。例えば、分離チャンバは、約1〜20、またはそれらの間の任意の量、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20のアレイを有することができる。ある実施形態では、分離チャンバからの出口の数は、アレイの数より1つ大きいものとすることができる。
ある実施形態では、1または複数のポンプまたは他の圧力源と流路の間に配設されこれらに連通する延長された微小流体流路は、流れが標準圧力源から制御されている場合に、追加の流体力学的抵抗を提供して、素子を通したより精確な流れ制御を可能にする(例えば、以下で論述する図7を参照のこと)。理論により束縛されることは望まないもの、微小流体システム内の流体流は、流量が電流と等価であり、圧力が電圧と等価であり、流体力学的抵抗が電気抵抗と等価である電気回路と類似であるとみなされよう。ある実施形態では、選択された流体力学抵抗は、5kPaという選択された圧力で、選別部域内の100μm/sの選別された流体速度に基づいて計算することができる。ある実施形態では、選択された流れおよび圧力は設計上の制約であり、必要な流体力学抵抗は以下の式を用いて求められる。
Figure 0005990256
式中、RHは流体力学抵抗、ΔPは圧力降下そしてQは体積流量である。矩形流路内の流れについては、流量を以下の式により表わすことができる。
Figure 0005990256
流路の幅はwであり、流路の高さはhであり、一方Uは流れの速度である。h>wで層流内の矩形流路については、流体力学抵抗を以下の式を用いて計算することができる。
Figure 0005990256
なお式中、Lは、流路の長さであり、水の粘度μは10-3Pa sである。選別部域の流体力学抵抗は、追加の流路長に起因する抵抗と比べて無視できるものであると仮定されており、従って、必要とされる総流路長は、必要とされる総抵抗量に基づいて計算された。
キャリア流体は、装置を構成するポリマーおよび分離または選別すべき粒子の双方と相容性のある任意の流体とすることができる。粒子が細胞である場合、キャリア流体は一般に、約3〜約10のpHまたは約3、4、5、6、7、8または9から約4、5、6、7、8、9または10まで、或いはそれらの間の任意の数値のpHを有する等張水溶液である。より詳細には、キャリア流体は、約6.5〜8.0或いはそれらの間の任意の値のpHを有していてよい。キャリア流体は、緩衝液、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ダルベッコのPBS、重炭酸緩衝液、トリス、トリシン、TAPS、HEPES、MOPS、PIPES、MES、SSC、カコジル酸塩など、または当該技術分野において公知である他の生物学的に適合した緩衝液とすることができる。このような緩衝液を調製しなければならない場合、当業者は、必要な試薬、数量、pHおよび適切な取扱いに必要な他の様相を概略的に記す標準的な参考文献を承知しているものである。ある実施形態では、キャリア流体は等張食塩水とすることができる。キャリア流体は更に、生物学的に適合する界面活性剤などの界面活性剤を含むことができる。
図7Aは、別の例示的実施形態に係る装置700を示す。装置700は、第1の端部706と第2の端部708を有する分離チャンバ702を含む。第1の端部のキャリア流体制御システム710が、チャンバ702を通って順方向Fに流れを生成するため第1の端部706にキャリア流体を提供し、第2の端部のキャリア流体制御システム720が、チャンバ702を通って逆方向Rに流れを生成するため第2の端部708に対してキャリア流体を提供する。
第1の端部のキャリア流体制御システム710は、圧力源(図示せず)に結合された順方向圧力入口流路712(これは追加の流体力学抵抗を提供するための延長された蛇行微小流体流路とすることができる)を含む。順方向圧力入口流路712は、順方向供給バルブ713を通して第1の端部の分配ネットワーク714に連通する。分配ネットワーク714は、また、振動出口バルブ715を通して振動出口716に連通する。振動出口716は、逆方向流の間にキャリア流体がチャンバ702を離れるための経路を提供し、キャリア流体を収容するためのタンクなど(図示せず)に連通するようにできる。同様にして、第2の端部のキャリア流体制御システム720は、圧力源(図示せず)に結合された逆方向圧力入口流路722(これは追加の流体力学抵抗を提供するための延長された蛇行微小流体流路とすることができる)を含む。逆方向圧力入口流路722は、逆方向供給バルブ723を通して第2の端部の分配ネットワーク724に連通する。分配ネットワーク724は、また、振動出口バルブ725を通して振動出口726に連通する。振動出口726は、順方向流の間にキャリア流体がチャンバ702を離れるための経路を提供し、キャリア流体を収容するためのタンクなど(図示せず)に連通するようにできる。第1と第2の端部の分配ネットワーク714、724は、キャリア流体をチャンバ702内に導入するためそれぞれ第1の端部のサブ流路718と第2の端部のサブ流路728に連通する(図7B参照)。
装置700は、また、チャンバ702の対向する側に入口システム730と出口システム740も含んでいる。入口システム730は、第1の端部706の近くで粒子試料をチャンバ702内に導入するための試料入口732と、分離後にチャンバ712から粒子を流し出す目的でキャリア流体を供給するために複数の追加の入口736に連通する流し出し流体供給流路734とを含む。入口バルブ738は、入口732、736とチャンバ702の間の連結を選択的に開閉するように動作可能である。出口システム740は、チャンバ702から粒子を取出すため複数の出口741〜747を含む。出口バルブ748が、出口741〜747とチャンバ702の間の連結を選択的に開閉するように動作可能である。
図7Bは、チャンバ702内部の微小構造の一例を示す。チャンバ702内の粒子がサブ流路718内に進入するのを防ぐため、チャンバ702の第1の端部706の近傍に第1のフィルター障壁が具備される。同様にして、チャンバ702内の粒子がサブ流路728内に進入するのを防ぐため、チャンバ702の第2の端部708の近傍に第2のフィルター障壁752が具備されている。フィルター障壁751と752の間でチャンバ702内に複数の障害部アレイ761〜766が具備されている。図7Cは、微小構造の様々な寸法を示しており、gはフィルター障壁751、752内の隣接するフィルター障害部間の間隙の幅を意味し、W0はアレイ761〜766の隣接する障害部間の通路の細孔サイズを意味し、sは隣接する通路の中心間の距離を意味し、Iは通路の長さ、dは連続するアレイ間の距離を意味する。アレイ761〜766の隣接する障害部間の通路は、チャンバ702を通って順方向に移動して、連続的により狭くなる(例えば、W0はアレイ761の通路について最大であり、連続する各アレイ762、763、764、765、766毎により小さいものとなる)。
ある実施形態においては、分離チャンバからの出口の数は、分離チャンバ内部の障害部のアレイ数よりも1つ大きい。図7Aおよび7Bを参照すると、入口732、736、出口741〜747は、アレイ761〜766とフィルター障壁751、752の間の対応する空間と実質的に整列することができる。詳細には、試料入口732と第1の出口741は、第1のフィルター障壁751と第1のアレイ752の間の空間と実質的に整列されている。同様にして、追加の入口736の1つは、出口742〜747の各々および、アレイ761〜766の各々を超えた空間と実質的に整列させられている。このような配置は、チャンバ702からの分離済み粒子の流し出しを容易にするかもしれない。
測定素子例
図4は、様々なサイズの漏斗狭窄部を通して双方向に単一細胞を変形させるために必要とされる圧力差を測定するための装置例400を示す。装置400は、図4の凡例に記されている通り垂直方向および水平方向の充填パターンによって示されている制御層と流れ層とを含む。装置400は一般に、細胞入口部分402と、漏斗鎖部分404と、圧力減衰器部分406とを含む。漏斗鎖部分404は、反対の極性で配置され漏斗鎖の中心に向かって細孔サイズが減少している複数の漏斗狭窄部(例えば10つの漏斗の2セット)を含む。細胞入口部分402は、バルブ427、428を通って漏斗鎖の何れかの端部に連通する第1と第2の細胞導入ゾーン418、419を含む。418で導入された後の細胞例430が示されており、これは矢印431により示されている通り漏斗内に移動する。圧力減衰器部分406は、端部411、412を伴う長いマイクロ流路408を含む。マイクロ流路408は、点418、414において分岐流路415、416に連通し、これらの分岐流路はそれ自体、バルブ425、426を通して漏斗鎖の何れかの端部に連結されている。端部411、412を横断して加えられる外部圧力が結果として、外部圧力の分圧である減衰された圧力を点413、414を横断して(従って、バルブ425、426が開放している場合漏斗鎖を横断して)及ぼし、この分圧は、点411、412の間の距離に対する点413、414の間の距離の比により決定される。示す実施形態では、圧力減衰器部分406は、漏斗鎖に対する印加外部圧力の1/100を提供するように構成されているが、ある実施形態では、外部圧力の異なる分圧を提供してよいということを理解されよう。同様にある実施形態では、圧力減衰器部分406を削除してもよい(例えば、充分に微調整可能な外部圧力源が提供される場合)。装置400の動作詳細および例示的実施形態について、以下で実施例4の表題の下で記述する。
図4Aは、別の実施形態に係る装置例400Aを示す。装置400Aは、図4の装置400と共通の要素を数多く有しており、これらは、対応する参照番号で識別されており、再度記述することはしない。装置400Aは、装置400A内の漏斗鎖部分404が、同じ極性で配置された5つの漏斗狭窄部420、421、422、423、424を含む点、そして分岐流路416内にはバルブが全く存在しない点において、装置400と異なっている。
図4Bは、別の実施形態に係る装置例400Bを示す。装置400Bは、図4の装置400および図4Aの装置400Aと共通の要素を数多く有しており、これらは、対応する参照番号で識別されており、再度記述することはしない。装置400Bは、装置400B中の漏斗鎖部分404が単一の漏斗狭窄部412しか含まないという点を除いて、装置400Aと実質的に同じである。
装置例400、400Aおよび400Bなどの装置は、例えば圧力源、制御装置などの様々な追加要素に作動的に連結することができる。例えば、ある実施形態では、装置400、400Aおよび/または400Bは、粒子が装置を通過するまで狭窄部を横断して圧力を漸進的に増大させかつ粒子を強制的に狭窄部内に通すのに必要な圧力を出力するように構成された制御装置と制御可能な圧力源とに結合されていてよい。
利用分野例
粒子が細胞である場合、1または複数のタイプまたは種の細胞を、媒質、血液または他の流体中の別のものから分離することには、複数の利用分野がある。非限定的ではあるが、このような利用分野としては、白血球除去輸血、血液バンク処理、培養中の非同調細胞の分離、選択された細胞タイプ(例えば臍帯血または骨髄または脂肪組織由来の幹細胞)の富化、および希少細胞タイプ(例えば血液中の循環腫瘍細胞)の同定および/または絶対数測定が含まれる。このような循環腫瘍細胞は、癌および/または転移の発生および程度のマーカーとして診断、予後判定または臨床的に特に興味深いものである。循環腫瘍細胞(CTC)は、他の血液学的細胞との物理的な差異、すなわち大きさおよび剛性の差異を示す。これらの物理的差異は、白血球(WBC)、心臓単球、間充織幹細胞(MSC)、および多能性幹細胞などの他の細胞タイプにおいて活用可能であるかもしれない。更に、その後の分析を容易にするため、血液試料中の他の細胞から赤血球を分離することが有益であるかもしれない。例えば、分離された細胞を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術および当該技術分野において公知の他の技術によって分析することができる。RBC中のヘモグロビンはPCR反応の阻害物質であり、従ってRBCの存在は、当該技術分野において公知の通り、PCR反応において有害である。
細胞は、例えば細胞培養、環境試料、対称の体液または組織試料から得られるかまたはそれらの内部に発見される場合がある。細胞は、植物細胞を含めた真核細胞とすることができる。1または複数の特定の細胞タイプまたは細胞種の単離、富化または単離と富化のためのプロセスに、細胞培養を含み入れてもよい。組織試料は、例えば、掻爬術、剥奪、組織の剥離または綿棒採取、針吸引生検または針(コア)生検、組織の試料採取用の切開生検、または問題の組織の完全な取出しに至る可能性のある切除生検によって得ることができる。体液としては、例えば、血液、骨髄、血漿、血清、唾液、尿、精液、羊水、臍帯血、脳脊髄液などが含まれる。
細胞の変形性は、細胞質の組成および細胞骨格の構造に関係づけされ、その結果、細胞タイプおよび疾病状態に応じて数ケタ分変動し得る。細胞変形性と局所的非対称性を結合してミクロスケールラチェットを形成することによって、細胞は、それらの内部力学の差異に基づいて選択的に輸送され得、こうして、それ自体疾病状態を標示するものでありうる形態に基づいて細胞および/または粒子の不均質集団の分離および/または選別が可能になる。
細胞は、例えば細胞培養、環境試料、対称の体液または組織試料から得られるかまたはそれらの内部に発見される場合がある。細胞は、植物細胞を含めた真核細胞とすることができる。1または複数の特定の細胞タイプまたは細胞種の単離、富化または単離と富化のためのプロセスに、細胞培養を含み入れてもよい。組織試料は、例えば、掻爬術、剥奪、組織の剥離または綿棒採取、針吸引生検または針(コア)生検、組織の試料採取用の切開生検、または問題の組織の完全な取出しに至る可能性のある切除生検によって得ることができる。体液としては、例えば、血液、骨髄、血漿、血清、脂肪組織、唾液、尿、精液、羊水、臍帯血、脳脊髄液などが含まれる。
環境試料は、流体および1または複数の粒子種を含むことができる。例えば、環境試料は、1つの場所または環境を監視する際に獲得し得る淡水または塩水(例えば海水、湖水、処理施設由来の水、下水管流出物または他の水試料)を含むことができる。環境試料は、1つの場所または環境を監視している際に発見し得る土壌、植物または他の物質を含むことができる。環境試料は、真核細胞および/または原核細胞および/または無機物、微粒子などを含めた本明細書中で例示されているものなどの粒子を含み得る。
対象は動物、例えば哺乳動物、は虫類、鳥類または魚類であってよく、哺乳動物の例としては、げっ歯類、ネコ、イヌ、霊長類、羊、ウシ、ブタ、ウマまたはフェレットが含まれ、げっ歯類の例としては、マウス、ラット、モルモットまたはハムスタが含まれ、霊長類の例には、ヒト、サル、チンパンジー、アカゲザルまたはミドリザルが含まれる。
細胞の例としては、赤血球、白血球、末梢血単核細胞(PBMC)、幹細胞、腫瘍細胞、癌細胞(原発性または不死化)、動物またはヒト細胞株(原発性細胞株または不死化細胞株)などが含まれる。幹細胞の例としては、成体幹細胞、体性幹細胞、胚幹細胞、非胚幹細胞、多能性(pluripotent)幹細胞、誘導多能性幹細胞、全能幹細胞、多能性(multipotent)幹細胞、分化単能幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、間充織幹細胞、内皮幹細胞などが含まれる。癌細胞は、任意のタイプの癌または腫瘍に由来し得る。異なるタイプの癌および腫瘍の非限定的例としては、以下のものが含まれる。癌腫、例えば膠芽細胞腫、星状細胞腫、希突起膠腫、上衣腫瘍および脈絡叢の腫瘍、松果体腫瘍、神経単位細胞腫瘍、髄芽細胞腫、神経鞘腫、髄膜腫および髄膜肉腫を含めた中枢神経系の新生物、基底細胞癌腫、扁平上皮細胞癌腫、黒色腫、横紋筋肉腫および網膜芽腫を含めた眼の新生物、下垂体新生物、甲状腺新生物、副腎皮質新生物、神経内分泌系新生物、胃腸膵内分泌系新生物および生殖腺新生物を含めた内分泌腺の新生物、頭頸部癌、口腔、咽頭および喉頭の新生物、および歯原性腫瘍を含めた頭頸部の新生物、大細胞肺癌腫、小細胞肺癌腫、非小細胞肺癌腫、悪性中皮腫、胸腺腫および胸部の一次胚葉細胞腫瘍を含めた胸部の新生物、食道、胃、肝臓、胆嚢、膵外分泌腺、小腸、虫垂および腹膜の新生物、大腸および直腸の腺癌、および肛門新生物を含めた消化管の新生物;腎臓細胞癌腫、腎盂、尿管、膀胱、尿道、前立腺、陰茎、睾丸ならびに外陰部および膣の新生物、頸部新生物、子宮体部内膜腺癌、卵巣癌、婦人科系肉腫および胸部新生物を含めた女性生殖器の新生物を含めた尿生殖路の新生物、基底細胞癌腫、扁平上皮細胞癌腫、皮膚線維肉腫、メルケル細胞腫瘍および悪性黒色腫を含めた皮膚の新生物、骨原性肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、未分化神経外胚葉性腫瘍および血管肉腫を含めた骨および軟組織の新生物、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、HTLV-IおよびT−細胞白血病/リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、毛様細胞白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、および肥満細胞性細胞白血病を含めた造血系の新生物、ならびに急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、神経芽細胞腫、骨腫瘍、横紋筋肉腫、リンパ腫、腎臓腫瘍を含めた小児の新生物などが含まれる。
本発明の様々な実施形態に係る装置、このような装置を含むシステム、または本発明の様々な実施形態に係る方法は、その後の操作および/または分析を可能にする形式で細胞の下位集団を選別し捕捉する細胞取扱い能力を提供する。このようなシステムは、一集団からの単一細胞の選択、アドレス可能なチャンバーアレイ内部の任意の位置におけるこの細胞の捕捉、1または複数の反応条件の適用および各反応チャンバの画像形成を可能にするかもしれない。この機能性は、複数の単一細胞の遺伝生化学研究のための手段を提供するかもしれない。細胞に基づいた微小流体アッセイの例は、例えばPCT国際公開第98/00231号および国際公開第98/45481号に記載されている。細胞に基づいた微小流体アッセイは、細胞リガンド、例えば受容体リガンド、薬剤、補因子などの結合および/または内在化のスクリーニングに有用であり得る。
不均質性混合物からひとたび分離されたならば、細胞(単複)は、更なる分析、例えば核酸配列決定、核酸増幅、タンパク質抽出または単離、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、免疫染色、パッチクランプ法、カルシウム流出測定、全細胞電気泳動、または当該技術分野において公知の複数の細胞分析方法の何れかに付されるかもしれない。更に、微細化された素子内の1または数の単一細胞の捕捉および画像形成を用いて、様々な濃度の1または複数の化学的刺激に対する細胞応答を監視してもよい。
不均質混合物から分離された細胞から核酸を抽出し、この核酸を配列分析に付してよい。代替的には、細胞内の標的核酸を、プローブを用いて特異的に同定するか、または1または複数のプライマを用いて特異的に増幅してよい。
標的核酸は、問題の1または複数の配列を含む核酸である。試料または反応混合物中の標的核酸の存在を検出することができ、アッセイの設計に応じて、これを定量化してもよい。標的核酸は、DNA、例えばゲノムDNA、染色体外DNA、ミトコンドリアDNA、cDNAなどであり得る。標的核酸はRNA、例えばmRNA、RNAi、miRNA、hnRNAなどである。標的核酸は多形を含む場合がある。
体液中の特定の細胞タイプの検出は、対象の病理状態を決定する上で有用であり得る。例えば、腫瘍の診断を受けた患者は、自らの血液、血漿または血清を本明細書中の様々な実施形態に係る装置を通して通過させることよりこのような体液を定期的に検査することができる。その後、比較的大きいおよび/またはより剛性の高い細胞をその核酸補体、タンパク質またはポリペプチド補体について分析することができる。対象の血液または血漿またはリンパ液中の循環腫瘍細胞の検出は、転移の初期段階の標示であり得る。
動作例
本発明の例示的実施形態に係る粒子分離用に用いられる装置のそれぞれの構成要素については、図1、2、2Aおよび7を参照されたい。
順方向および逆方向の流れにおけるキャリア流体の圧力は、フローチャンバを通して一方向にまたは振動式に流体を制御可能な形で押し進めるために1または複数のポンプまたは類似の素子によって調節可能である。キャリア流体は、導管を通って入口内へ、そして分配ネットワークを通って装置の流路/分離チャンバ内に駆動される。バルブは、流れの指向性を抑制し、逆方向流由来の流体を振動出口を介してタンクまたは類似の廃棄物貯蔵庫まで確実に誘導するように動作する。こうして、分離チャンバ内への新鮮なキャリア流体の投入が可能になる。フィルター障壁によって反対の流動サイクル中に粒子が分配ネットワーク中に戻らないよう妨げることができる。粒子を含む試料が、試料入口を介して流路/分離チャンバ内の分離部域内に入れられる。追加のキャリア流体または緩衝液が、試料入口または1または複数の別個の緩衝液入口を介して所望の速度および体積で提供することができる。
試料は、キャリア流体が導入される前に分離部域内に導入することができる。或いは、試料の導入に先立って、分離チャンバをキャリア流体で洗い流してもよい。
粒子分離を実施するために、入口および出口バルブは閉鎖され、分離部域内の流体および粒子は、振動圧力流(振動流れ体流、キャリア流体の振動流れ)に付される。順方向流および逆方向流の時間的長さは同じであっても、異なるものであってもよい。順方向流は逆方向流よりも持続時間が長くてもよく、或いは逆方向流が順方向流よりも持続時間が長くてもよい。順方向および逆方向流の圧力は、非ゼロであり、同じ圧力であっても、異なるものであってもよい。順方向流の圧力は、逆方向流よりも大きくてもよいし、或いは逆方向流の圧力が順方向流よりも大きくてもよい。多数の振動サイクルを実施してよく、1サイクルは、1回の順方向流と1回の逆方向流であり、圧力も流体流も全く無い「休止」期間が、サイクルの順方向および逆方向ステップに先行するか、後続するかまたはその間に配設されていてもよい。
順方向または逆方向流の持続時間は、独立して約0.1〜約10秒または約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10秒、またはそれらの間の任意の量とすることができる。順方向または逆方向流の圧力は、独立して約1kPa〜約50kPa、またはそれらの間の任意の量、例えば1、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50kPa、またはそれらの間の任意の量とすることができる。「休止」期間がサイクル中に含まれている場合には、それは、約0.5秒〜約10秒または約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10秒の任意の持続時間またはそれらの間の任意の量の持続時間を有していてよい。振動サイクル数は、約1〜約20回、またはそれらの間の任意の量、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20回、またはそれらの間の任意の量とすることができる。
好適なサイクル数が実施されると、出口は、同時に或いは(1または複数のバルブを開くことによって)独立して開くことができる。アレイ間の対応する領域内の粒子は、分配アレイによって導入されるか、或いは、試料入口または緩衝液入口(単複)から導入される追加のキャリア流体によって流し出することができよう。このとき、試料入口を通して新しい細胞試料を導入し、プロセスを多数回反復して大量の細胞を分離するようにできる。
装置製造のための一般的考慮事項
多層ソフトリソグラフィ(MSL)は、数百乃至数千もの微視的反応チャンバ、バルブ、ポンプ、流体論理素子および他の構成要素を有するマイクロ流体素子の容易でかつ堅牢な製造を可能にする周知の製造技術である。Xia & Whitesides, 1998(Angewandte Chemie-lnternational Edition 37:551-575、参照により本明細書に援用されている)は、MSLを含めたソフトリソグラフィ用の手順、材料および技術について記載し、精査している。
簡単に言うと、多層ソフトリソグラフィ(MSL)の一般的考え方は、様々な厚みのポリマー層、例えばPDMS層を互いの上に反復的に積重ねることにある。基剤と硬化剤の化学量論比がそれぞれ10:1より小さいか大きいPDMSの薄層および厚層が、別個のウエハー上に形成される。例えば、20:1という基剤:硬化剤比を用いて、より薄い層を得、シリコンウエハー基板上にスピニングされ得る。5:1の基剤:硬化剤を用いると、より厚い層を得ることができる。ウエハー上に予め作られたフォトレジストパターンが、素子の微小流体流路を画定する。厚層は次にウエハーから剥ぎ取られ、薄いウエハーの上面に置かれる。焼成の後、各層内の余剰の構成成分は結合し、2つの流路層で構成されたPDMS「チップ」を形成する。エラストマーを用いて作業し、微小流体の利用分野でそれらを応用する方法が、当該技術分野において公知である、例えば、米国特許第6,929,030号(U. S. Pat.No.6,929,030);Scherer等、Science 2000, 290, 1536-1539;Unger等、Science 2000, 288, 113-116;McDonald等、Ace.Chem.Res.2002, 35, 491-499;Thorsen, T.等、Science 2002, 298, 580-584;Liu,J.等、Anal.Chem.2003, 75, 4718-4723;Rolland等、2004 JACS 126:2322-2323、PCT国際公開第02/43615号(WO02/43615)および同第01/01025号(WO01/01025)を参照のこと。
プラスチックおよび軟質ポリマーを含めた(ただしこれらに限定されない)様々なポリマーを、マイクロ流体素子およびシステム内で使用してよい。本発明の様々な態様に係るマイクロ流体素子の全てまたは一部分の製造において有用であり得るポリマーの例としては、エラストマーが含まれる。エラストマーは、一般に、広範囲の熱安定性、高い潤滑性、撥水性および生理学的不活性によって特徴づけされる。エラストマーの他の望ましい特徴は、利用分野に伴って変動し得る。所望の目的のために好適なエラストマーまたはエラストマーの組合せを選択することは、当業者の能力範囲内に入る。エラストマーの例としては、シリコーン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、光硬化性ペルフルオロポリエーテル類(PFPE)、フルオロシリコーン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレン、ポリウレタン、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、ビニル−シラン架橋シリコーンなどが含まれる。ポリマーは光学的に透明であってもよいし、不透明であってもよく、或いは変動する透明度を有していてもよい。本発明のある実施形態においては、生体適合性のあるエラストマーを使用することが望ましいかもしれない。PDMSは、ソフトリソグラフィの利用分野において最初に開発されより広く使用されているエラストマーの1つである。PDMSが本発明の様々な実施形態において使用されるポリマーとして記述されている場合、それは例示目的のみのためであるにすぎず、代替的ポリマーの選択は、当業者の知識の範囲内に入る。微小流体利用分野での使用に好適である様々なポリマーおよびその様々な特性および利用分野例は、米国特許第6,929,030号に記載されている。
シリコンウエハーまたは他の好適な支持体上にフォトレジストパターンを配置して、層を成形するためのモールドとする。通常、フォトレジストはポジ型かネガ型に分類さよう。ポジ型フォトレジストは、非常に細かい分解能が可能である。これらは、KOHなどのアルカリ性溶液中での溶解度が極めて高いが、この効果を遮断するため、典型的に、ジアゾナフタキノン(DQ)などの感光性溶解阻害剤が使用される。紫外線(UV)による光化学反応は、DQを破壊し、フォトレジストが現像剤溶液により溶解され得るようにする。このタイプのフォトレジストの加工の考え方は、UV光に曝露される全ての区分を除去するというものである。ポジ型フォトレジストの一例はSPR220-7(Shipley Company LLC)である。
ネガ型フォトレジストは一般に、非感光性基板、感光性架橋剤およびコーティング溶剤を含む。UV光に対する曝露の時点で、架橋剤は活性化され、硬質エポキシを形成させる。フォトレジストの残りの未曝露区分は、現像剤溶液により洗い落とされる。SU8(Micro Chem)は、双方のMSLモールド内で使用され得るネガ型フォトレジストの一例である。更に、エポキシとしてのSUBは非常に強く、後続するフォトリソグラフィプロセスに耐えることができる。特定のフォトレジストで作業するための詳細な方法および技術は、様々なメーカーから入手可能であり、本明細書で更に言及することはしない。特定のフォトレジストの例は、単なる例示を目的としているにすぎず、本発明を限定するものとみなされるべきではない。
マイクロ流体素子内には製造中に他の構成要素が組込まれてよい。流体力学抵抗(例えば、振動圧力に追加の精度および制御を提供するためのポンプと分離部域を連結する流路の蛇行延長部分)、ミクロン規模のバルブ、ポンプ、流路、流体マルチプレクサ、灌流チャンバなどをMSL中に統合させることができる。このような構成要素の製造および統合方法は、例えば米国特許第7,144,616号、同第7,113,910号、同第7,040,338号、同第6,929,030号、同第6,899,137号、同第6,408,878号、同第6,793,753号、同第6,540,895号、米国特許出願公開第2004/0224380号、同第2004/0112442号、PCT国際公開第2006/060748号に記載されている。
ひとたび製造されると、微小流体装置内部の流路、ビアまたは他の空間の1または複数の表面は、表面処理剤で処理またはコーティングすることができる。表面処理剤は、非生物付着剤とすることができる。表面処理剤の例としては、流体流を補助する(例えば流体摩擦および/または流れ抵抗を削減させる)かまたはキャリア流体または試料中の疎水性または親水性構成成分の付着を妨げるか、またはフローチャンバの表面またはその内部の要素、例えば障害部、フィルター障壁などとの粒子相互作用を削減し得る、親水性または疎水性組成物、荷電剤または免疫結合剤、ポリマー、BSAなどが含まれ得る。ポリマーの例としては、当該技術分野において利用可能であるものなどの、様々なポリマーMWのポリエチレングリコールが含まれる。例えば、流路、ビアまたは他の空間は、(例えば粒子特に細胞の非特異的付着を妨げるまたは削減するため)表面処理剤を含む流体で一時的に充填することができる。当業者であれば、処理を準備する際の素子内部の流体の流れおよび取扱いを可能にするのに好適な粘度を維持しながら、表面上に充分なポリマーまたはタンパク質を被着させるのに好適なポリマーの大きさおよび濃度を選択することができるものである。表面の処理後、流路、ビア、または他の空間は、残ったBSAまたはポリマーを全て除去するため、第2の流体(例えば緩衝液、媒質、PBSなど)で洗い流されよう。
本発明の特定の実施形態の更なる態様および詳細は、一部には以下の非限定的な方法および実施例によって示される。
実施例1−シリコンマスターの製造
シリコンマスターを、2段階フォトリソグラフィプロセスにおいて製造した。第1に、シリコンウエハーを、SU−8ネガ型フォトレジスト(Microchem(商標))でコーティングし、50秒間1200rpmの速度で回転させた。その後、ウエハーを95℃のホットプレート上で5分間焼成し、その後、Solidworks(商標)DWG Editorを用いて設計されAdvance Reproductions(Andover, MA)によって商用に生産された光学フォトマスクを通してUV光に曝露した。曝露後、次にウエハーを65℃、95℃そして65℃でそれぞれ1分、4分および1分間焼成した。SU−8現像剤(Microchem)中でパターン化したウエハーを現像し、イソプロパノールで洗浄した。パターン化した微小構造を硬化させるために、ウエハーを次に200℃で1時間焼成した。最終的焼成温度には、12分毎に10°の割合の緩慢な傾斜により到達した。焼成後、ウエハーをホットプレートの上面で室温まで平衡化させた。600rpmで50秒間スピンコーティングすることにより、冷却済みウエハーにSPR220−7.0フォトレジスト(Microchem)を添加した。スピニングの後、エッジビードを手作業でウエハーから除去し、次に65℃、95℃および65℃でそれぞれ1分、5分および1分間ソフトベークした。第2のフォトマスク(CAD/Art Designs)を先行するパターンセットに整列させ、その後曝露し、MF319現像剤(Microchem)中で現像した。最終的に、ウエハーを95℃のホットプレート上で5分間焼成して、SPR220−7.0フォトレジスト層がリフローし放物線の断面形状を呈するようにした。プロセス全体を通して、ミクロスケールのSU−8特徴に歪みや屈曲を起こす可能性のある熱衝撃に対するウエハーの曝露を防ぐよう充分に注意する。
上述のものと同じ手順を用いてSPR220−7.0の単一層を使用して第2のシリコンマスター上で流体制御層を製造した。
実施例2−PDMS素子の製造
例えばUngerら、2000(Science 288:113)およびStuderら、2004(Journal of Applied Physics 95:393)が記述している通り、当該技術分野において公知の標準的な多層ソフトリソグラフ技術を用いてPDMSマスターを製造した。流れ層については、RTV615シリコーン(Momentive Performance Materials)5:1の基剤対硬化剤比で、また制御層については20:1の比で、2層を形成した。層を拡散により結合させ、酸素プラズマ(Herrick Plasma)中で45秒の後にガラススライドに付着させた。0.5mmのポンチ(Technical Innovation)を用いて手作業で入口および出口を打ち抜いた。作業前にPBS中の1%のBSAの溶液を使用して素子に充填を行い、10分間インキュベートして、PDMS表面上への細胞の吸着を防いだ。
実施例3−細胞試料の調製
ブリティッシュコロンビア大学にある血液研究センター(CBR)で健常人ドナーから末梢血単核細胞(PBMC)を得た。培養からL1210マウスリンパ腫細胞(MLC)を得た。湿度100%およびCO25%で37℃に維持したインキュベータ内に保たれた10%のウシ胎仔血清と1%のペニシリン/ストレプトマイシンと共にRPMI1640 (Gibco(商標), Invitrogen(商標))を用いて、懸濁状態でMLCを培養した。実験に先立ち、細胞を遠心分離を介して濃縮し、1mlあたり1×107個の細胞という濃度で0.4%のウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の溶液中に再懸濁させた。継代培養から3〜4日後に、細胞を実験のために使用した。細胞を染色した実験においては、L3224 LIVE/DEAD生存率/細胞毒性キット(Invitrogen)をメーカーの指示に従って使用した。健常ボランティアから得た全血から、末梢血単核細胞を調製した。全血を6mlのナトリウムヘパリンの入った管内に引き込んだ。Histopaque1077(Sigma-Aldrick)をメーカーの指示事項に従って使用してPBMCを分離し、次にAIM5培地(GIBCO-Invitrogen)中に1×107個/mlの細胞濃度で再懸濁させた。
実施例4−変形性分析
単一細胞を変形させるのに必要とされる圧力差を、本明細書中に開示されたマイクロ流体素子を用いて決定した。粒度を導くのに使用した装置は、図4に示されている。装置は中央マイクロ流路を含み、ここには、マイクロ流路の遠位端部からその中心まで、W0=11、10、9、8、7、6、5、4、3.5、3μmの漏斗が直列に配置され、次にマイクロ流路の中心から反対側の遠位端部まで鏡面対称に配置されている。1つのマイクロ流路内に多くの漏斗を使用することで、同じ細胞について変動する漏斗幾何形状での実験を行なうことが可能になり、一方、マイクロ流路の中心で漏斗鎖の設計を鏡面対称にすることで、バルブ流体に対する考えられる非対称な流体力学抵抗は全て無くなる。この設計は、10°、5°および0°でテーパーが付いた漏斗について複製される。マイクロ流路の高さは、およそ16μmであり、これは我々の実験で使用される細胞の典型的な直径を上回る。
試料タンクから個別の細胞を導入し、漏斗鎖を横断して減衰された圧力を加えるために、漏斗鎖は平行なマイクロ流路ネットワークに連結されている。これら2つのネットワークを、マイクロバルブ425、426、427、428を用いて互いから隔離し、細胞の導入と圧力変形プロセスが独立して発生し得るようにする。圧力減衰は、電子回路内で使用される抵抗分割器に類似する流体回路を用いて達成される。図4に示されているように、外部源からの圧力は、場合によっては蛇行した長いマイクロ流路上の点411、412を横断して印加される。点413、414にある側方分岐は、411から412までの距離の1/100で間隔どりされ、従って印加された圧力は100分の1に減衰される。側方分岐に連結されたマイクロ流路ネットワークは、ネットワークの流体力学抵抗が413と414の間のマイクロ流路セグメントの抵抗よりも有意に大きいかぎり、413、414を横断した圧力降下に有意な影響を及ぼさない。
様々な漏斗微小構造を通して単一細胞を変形させるのに必要とされる圧力は、以下のプロセスを用いて測定した。すなわち、バルブ425、426が封止されバルブ427、428が開放した状態で、主マイクロ流路内に単一細胞を導入した。細胞がひとたび漏斗領域内に流入した時点で、4つのバルブすべての状態が反転されて、漏斗アレイは、413、414を横断して印加された減衰した圧力に曝露された。細胞が連続する狭窄部内を首尾よく通過するまで、この圧力を、5Paの増分で漸進的に上昇させた。所与の漏斗狭窄部の中を横断した後、圧力を解除し、次に約30秒かけて細胞の原初の形状を回復させてから、後続する測定を行なった。特注の装置と市販の圧力制御装置(Fluigent(商標))の組合せを用いて、素子内部のバルブおよび流れの圧力を全て制御した。CCDカメラ(Nikon DS-2MBW)が付いた倒立顕微鏡(Nikon(商標) Ti-U)上で実験データを視覚的に収集した。カメラと共に供給された画像取込ソフトウェア(Nikon NIS-Elements)を用いて、静的測定を行なった。
8〜12μmの範囲内の直径(ψcell)をもつMLCを用いて、漏斗ラチェットの性能を研究した。細孔サイズ(W0)の関数としてプロットされた10°のテーパーを付けた漏斗狭窄部を通して単一細胞をスクイーズするために必要とされる順方向および逆方向の閾値圧力は、図5(a)に示されている。ラチェッティングに必要とされる順方向および逆方向の閾値圧力の間の非対称性が明らかに観察される。測定された閾値圧力は、同じ細胞について著しく繰返し性があり、このことは、この素子をマイクロピペット吸引に類似したやり方で単一細胞の生体力学を研究するために使用できるということを示唆している(Hochmuth, R.M., 「Micropipette aspiration of living cells」, Journal of Biomechanics, 2000.33(1): p.15-22)。テーパー状のマイクロピペットと類似のアプローチ(Needham, D.およびR.M.Hochmuth, 「A Sensitive Measure of Surface Stress in the Resting Neutrophil」, Biophysical Journal, 1992.61(6): p.1664-1670)を用いて漏斗狭窄部により提供される制約について修正された等式(1)により得られる液滴モデルを、TCの値を調整することによって、実験データに適合させた。MLCの表層張力について結果として得られた値は750pN/μmであり、これは、マイクロピペットを用いた以前の研究において哺乳動物の真核細胞について得られた値に匹敵する(Tinevez, J.Y.等、「Role of cortical tension in bleb growth」, Proc.Natl.Acad. Sci.U. S.A., 2009.106(44): p.18581-18586)。MLCの変形から測定された圧力非対称性の結果は、10°、5°および0°のテーパの付いた漏斗狭窄部についての逆方向対順方向圧力比(PR/PF)と細胞直径対漏斗開口比(ψcell/W0)との関係の無次元プロットとして、図5(b)に示されている。予測通り、漏斗角度が小さくなればなるほど、テーパーがより漸進的であるために、生み出される非対称性は大きくなる。5°の漏斗および10°の漏斗についての平均的非対称性値は、それぞれおよそ1.8と、1.5である。0°の漏斗は、長さ20μmの矩形スロットの狭窄部であった。これらの制御狭窄部を通しての細胞の変形は、圧力非対称性を全く示さず(PR/PF≒1.0)、こうして測定装置における固有の非対称性の欠如が確認された。
これらの結果は、個別の粒子または細胞の剛性を測定するために装置内で漏斗狭窄部の直列アレイを使用してよいということを表わしている。剛性を測定する場合、それは絶対値でありかつ漏斗を通して細胞を押すのに必要とされる圧力から誘導されてもよいし、或いはまた定義された剛性を有する制御粒子または細胞に対する相対値であってもよい。
ミクロスケールの漏斗狭窄部中の単一細胞のラチェット輸送を研究するために、我々は、60μmのピッチで直列に配置された同一の幾何形状の37の漏斗で構成されたマイクロ流体素子の修正版を設計し製造した。漏斗微小構造の鎖は、以前の通り、圧力減衰器と細胞入口に連結された。圧力減衰器は、圧力源の圧力の極性の急速な逆転を可能にするため、流体Hブリッジとして作用する4つの追加のマイクロバルブを収納している。チップ上にこの特徴を組込むことにより、外部源を用いて圧力を反転させることに付随する遅延は無くなる。入口ネットワークを通してこの漏斗鎖の中に単一細胞を導入した。細胞がひとたび漏斗鎖に到達した時点で、不偏の振動圧力を加え、その間ビデオ分析により、漏斗狭窄部の鎖を通した個別のMLCの運動を追跡した。手で顕微鏡ステージを移動させて細胞の運動を追跡し、その間漏斗鎖の側の基準マーキングを用いて、漏斗鎖内の細胞の位置を追跡した。
方形波振動圧力の複数の異なる振幅についての漏斗鎖内の単一MLCの変位は、図6(a)に示されている。この素子内の漏斗の細孔サイズは6μmであり、一方圧力振動周波数は0.5Hzである。このグラフには、また、漏斗鎖に入る前に中央マイクロ流路の一区分内のMLCに振動圧力が印加された対照実験からの細胞変位データも含まれている。ここで示されている不偏の正弦波細胞変位から、バルク流体の不偏の振動流れ体流が確認されている。
圧力振幅が、テーパーの方向に沿って単一の漏斗狭窄部を横断してMLCを変形するために必要とされる閾値を上回った時点で、ラチェット挙動が観察された。具体的には、100Paの振幅で、細胞は閉じ込められて2つの漏斗の間の領域内で振動したが、200Pa以上では、細胞は、図6(a)に示されている通り、信頼性の高い決定的な形で、漏斗鎖内を順方向にラチェット運動し始めた。観察されたラチェッティングの閾値は、ψcell=10.5μmおよびW0=6μmについてそれぞれ165Paおよび220Paである、図5(a)で示された順方向および逆方向圧力閾値と一貫性のあるものであった。200Paより上では、細胞は、各サイクルにおいて複数の漏斗狭窄部を通して順方向および後方向の双方に流動する。非対称な閾値圧力によって、これらの細胞は後方向よりも順方向で多数の漏斗内を通過できたことから、ラチェッティング挙動はこれらのより高い振動圧力振幅において保たれた。印加圧力の増加もまた、正味細胞速度を増大させた。200Pa、250Paおよび350Paの圧力振幅についての平均流速は、それぞれ、15μm/s、30μm/sおよび60μm/sであった。
図6(a)に示されている通り、ラチェッティング挙動は振動周波数に左右されることがわかっている。1Hzの周波数および150Paの振幅で、細胞には、漏斗間の領域(約50μm)を横断すると同時に漏斗を横切って変形するのに充分な時間がない。ラチェッティング輸送は0.5Hzで可能になり、0.333Hzの正味順方向速度で進行し、これは、漏斗狭窄部を通って変形させるプロセスを完了するのに約0.5秒が必要であったことを示唆している。更に、ラチェッティングプロセスは、また、漏斗狭窄部内の細胞の場所を印加圧力間の同期化、ならびに細胞と微小構造間の表面力にも左右された。
図2、2Aおよび7を参照して上述した装置例200、200Aおよび700などの装置も同様に、粒子変形性分析のために使用することができる。例えば、ある実施形態においては、本明細書に記載の通り、細胞集団を分離チャンバに注入し変形性に応じて分離し、異なる変形性の細胞を異なる出口から取出すようにしてよい。各出口から取出された細胞の数を用いて、特徴的な変形性分布を決定し、細胞集団の形態を評価してもよい。
実施例5−粒子分離分析
12本の水平横列で分離部域の幅を横断して128つの漏斗を含む細胞分離装置を製造した。図7Cを参照すると、一部の実験で使用される装置例において、フィルタ障壁障害部間の間隙gは2μmであり、各アレイ内の通路(および障害部)の長さlは50μmであり、アレイ間の距離dは50μmであり、(第1の端部にあるフィルタ障壁750と第1のアレイ761の間の)入口流路の幅は100μmであり(こうして所与の試料濃度について1サイクルあたりより大量の粒子が選別できることになる)、離隔距離s(例えば各アレイ内の1つの通路の中心から次の通路までの水平距離)は25μmである。3〜50kPaの範囲内の圧力、順方向で0.5〜2秒の振動、1〜8秒の範囲内の逆方向振動時間で、様々な実験を実施した。全ての場合において、合計振動時間は1分であった。
繰返し性のある一貫した選別を達成するためには、フローチャンバ内および漏斗微小構造内部で粒子に印加される圧力および流量を制御する必要がある。圧力が低すぎると、漏斗を通して細胞を変形させるには不充分であり、高すぎると細胞が損傷を受ける。オンチップバルブが、細胞の注入および抽出プロセスと細胞分離プロセスとを分離する。分離チャンバ702の左右(方向性の言及は図7Aを含む図面上の例示的配向を意味する)に設置されたバルブ738、748は、分離手順から装填手順を隔離するために使用される。この配置によって、装填中の純粋に水平方向の流れと分離中の純粋に垂直方向の流れが提供される。分離チャンバの上下のバルブ713、715、723、725は、順方向と後方向の流れの間で迅速に切換えを行なうために使用される。分離部域内では、細胞骨格の再構成の結果としての詰まり、生物付着および一貫性のない選別の発生を削減するために、振動流れが使用される。
素子の動作には、充填段階と選別段階の2段階がある。充填段階中、バルブ713、715、723、725は閉じられ、細胞入口732と追加の入口736の双方に等しい圧力が加えられて、流れは選別部域を通して水平であり、細胞は第1のアレイ761と第1のフィルタ障壁751の間の空間(または「横列」)を満たすことになる。この横列がひとたび充填されると、バルブ738、748は閉鎖され、選別部域を封止する。振動段階中、一定の圧力が、順方向および逆方向の圧力入口流路712、722の双方に適用される。バルブ713、715、723、725は、流体Hブリッジとして作用し、振動持続時間と周波数の精確な制御を可能にする。本明細書に記載されている実験のためには、3秒間の順方向圧力とそれに続く1秒間の逆方向圧力が利用され、選別部域を通した細胞の順方向偏向動作を可能にする。順方向および逆方向の圧力は等しく、細胞が素子を通って順方向へ走行するにつれて、漏斗を通して細胞を穏やかに変形させる。選別部域内部の細胞分布がひとたび定常状態に達した時点で、バルブ713、715、723、725は閉じられ、一方バルブ738、748は開放される。こうして充填段階が再開し、底部横列に新しい細胞が充填される間に、先に選別された細胞は、流入するPBSによって上の別個の出口内へ右方に押される。このプロセスは、所望されるだけの細胞が選別されてしまうまで繰返される。
細胞が分配ネットワークに進入して分離部域から失なわれるのを防ぐため、フローチャンバ内部の分離部域の何れかの端部または両端部にフィルター障壁が設置される。本明細書中に記載されている実験で利用されたブロックは、半円形の断面形状を有し、そのため、分離部域の外側を通る可能性のある細胞は全て、反対の圧力が印加された時により容易にスクイーズバックされ得るようになっている。フィルターブロック間には2μmの間隔(図7C中のg)が存在し、これは、本明細書中に記載の実験において使用される細胞が進入するのを防ぐのに充分小さいものである。
素子が低いレイノズ数で層流レジーム内で動作し、矩形流路を流通するにつれて、単一入口を通る流体流入物は、ストークス流れとなり、ひとたび定常状態が達成された時点で放物線速度プロフィールを達成すると考えられる。流体が分離チャンバ内に入るサブ流路および分配ネットワークを介して分離チャンバ内で「栓流」が近似され、細孔を通過する各々の細胞は、隣接する細孔内の他の全ての細胞と同じ流量を経験する。分配ネットワークは、漏斗細孔1つあたり1本のサブ流路の割合で、多くのサブ流路間で等しく流れを分割し(図7B)、こうしてこれらのサブ流路から出る流れは、同じ規模の多くの小さい放物線流で構成されることになる。こうして、細孔が素子内のどこに位置設定されているかとは無関係に、各細孔において細胞が受ける力は等しくなる。
流路の両端部にある延長された蛇行微小流体流路(図7A)が、追加の流体力学抵抗を提供して、素子を通る流体流が標準的圧力源から制御されることを保証する。
PBMCおよびMLCは、サイズ分布が類似しているもの重複してはいないことから、素子の動作を検証するために選択された。PBMCは、0.6μmの標準偏差で7.2μmの平均直径を有するものと測定され、一方MLCの平均直径は、1.2μmの標準偏差で11.1μmであるものと測定された。これらの細胞は、循環腫瘍細胞と白血球とを分離する将来の利用分野において素子がどのようにして性能を示す可能性があるかの指標としても有用である。
PBMCとMLCを等しい濃度で含む2つの試料を組合せ、混合物を素子内に投入した場合の結果としての分布は、図8Aに示されている。これは、素子内の2つの細胞集団間の明らかな分離を示しており、MLC分布のピークは約9〜10μmの漏斗開口サイズで発生し、PBMC分布のピークは約6μmに発生している。
一般に、選別部域は充分に大きいため、単一細胞のみが各漏斗内で捕捉された状態となり、より小さい細胞はより小さい漏斗横列へと容易に通過する。双方の細胞タイプを使用する実験においては、MLCを単一細胞染色剤(Calcein AM, Invitrogen)で染色して、それらをPBMCと明確に区別した。明視野内および蛍光下の双方での分布の顕微鏡写真が、図8Bおよび8Cに示されている。蛍光下ではMLC集団のみが見え、一方明視野では双方の細胞集団が見える。各横列は本質的に別個の出口を有し得ることから、最高の分離効率を生み出すために、任意の細孔サイズで分離境界を選択することができる。この特定の例では、2つの細胞集団間の「カットオフ」として8μmの細孔サイズが使用された。図8Dは、装置を使用して達成された高い分離効率とカットオフ値を示しており、MLCの98%が8μm超の細孔サイズを有する横列内で捕捉され(「8〜14μmでトラップ」)、PBMCの97%が8μm未満の細孔サイズを有する横列内でトラップれている(「2〜7μmでトラップ」)。
細胞分離の繰返し性は、図9で示されている。各試験は、14kPaの印加振動圧力を用いて同じ素子内で実施された。培養された集団に由来する固有の細胞の大きさの変化に起因して、幾分かの小さい変動が予期される。MLCは、約8の細孔サイズをもつフローチャンバの領域内に集中していた。これらの結果は、単一集団についての一貫した繰返し性ある細胞分布を実証している。
素子内で結果として得られた細胞集団の分布は、懸濁状態の細胞の測定された大きさに対応することが発見された。MLCの試料を1分間振動させ定常状態に到達させた後、細胞を漏斗狭窄部から出るように後方向(逆方向流)に押し、その原初の形状に戻るまで弛緩するのに充分な時間を与えた。その後、光学顕微鏡を用いて個別に細胞の半径を測定した。図10は、同一条件下で選別された類似の大きさのポリスチレン微小粒子の分布とMLCの分布を比較した実験の結果を示す。MCLの大きさの範囲を模倣するため、6.37±0.48μmと10.14±1.04μmの直径を有する微小粒子(Bangs Laboratories, Fishers, IN)を混合した。ポリスチレン微小粒子は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に比べて事実上圧縮不可能であることから、これらは大きさだけに基づいて選別されるとみなすことができる。選別(振動圧力=14kPa)の後、MLCおよび微小粒子の双方の直径を、その捕捉漏斗サイズの関数として測定した(測定誤差=±0.8μm)。微小粒子の大きさは、0.93という相関係数で、捕捉漏斗サイズと強い相関関係を有し、一方MLCについての対応する特性は、0.65という相関係数を示した。相関関係の低減は、MLC集合の変形性の可変性の結果である。類似の大きさを有した細胞および粒子について、平均捕捉漏斗サイズはおよそ2μm異なっており、このことは、選別プロセス中に平均してこの量だけ細胞が圧縮されることを示唆している。これらの結果は、大きさと変形性とに基づいて細胞および粒子を選別するために我々の機序を使用する可能性を検証し、従って分離方法の現在のレパートリを拡大するものである。
本発明の装置の1つの利点は、定常状態分布に急速に到達するという点にある。分離の振動性に起因して、漏斗の込み合いまたは遮断はほとんどなく、より小さい細胞は大きい細胞により妨害されることなく素子内を容易に通過する。図11は、0回、2回、4回および6回の振動後のMLC分布の推移、および20回の振動後も変化しなかった定常状態分布を示している。システム全体は、4秒の振動周期で20秒間の振動に対応するおよそ5回の振動の後に、定常状態に達する。
この例を使用して、20秒間をかけて素子を空にし、新しい細胞バッチを運び入れ、全てのバッチ内で200つの平均細胞選別用いると、単一の素子について毎分500つの理論上の細胞処理量が得られる。高速の選別時間は、また、細胞と漏斗の間の接触量を最小限にし、こうして細胞に対する不必要な応力は妨げられ、PDMS表面に対する細胞吸着の可能性は削減される。
我々は、また、印加圧力および振動周期の変化の効果も検討した。圧力の増加は、図12に示されているように、より小さい漏斗サイズへと上方に向かうMLCの分布のわずかなシフトを結果としてもたらした。このことは、細胞に対しより大きな力が適用されるにつれて、細胞はより小さな開口または漏斗サイズを通過するためより大きく変形し得る、ということを示唆している。このようにして、印加圧力を用いて、細胞または粒子の特異的分布を、1つの範囲内に或いは選択された漏斗サイズより上または下に集中させるように「調整」することが可能になる。
移動周期は、順方向の時間を変更することによって変動させた。漏斗内で変形させられた後その原初の形状を回復するのに充分な時間をMLCに与えるため、後方向または逆方向時間を1秒にとどめ、2、3、6、8秒の順方向時間を使用した。図13は、様々な順方向時間振動についての漏斗サイズに応じた細胞の分布を示す。3秒より長い順方向時間については、MLC分布に有意な差異が全く見られなかったことがわかる。しかしながら、2秒では、細胞には漏斗の細孔を通って変形する充分な時間がなく、比較的大きい漏斗横列内に捕捉された状態にとどまっていた。
このプロセスが細胞に対して何らかの損傷を与えるか否かを調査するため、MLCの試料を簡単な生/死細胞染色剤(Invitrogen)で染色し、素子の内部で振動させて、振動プロセスがこれらの細胞に損傷を与えないことを確認した。振動媒体として追加の染色剤を含むPBSを使用し、選別後10分間細胞をインキュベートして、死滅した細胞が全て赤色染色剤を吸収できるようにした。1分間の振動時間および最高41kPaの印加圧力について、全ての場合において、99%の細胞生存率が観察された。従って、この素子の正規の動作条件は充分穏やかなものであり、細胞に対していかなる危害も及ぼさず、所望される場合には、細胞を抽出し再培養できるようにする。
この素子の中に細胞を通過させる機序は、ラチェッティング機序である。細孔は非対称な形状を有し、このため開口を通って順方向に細胞が通過するのに必要な圧力の方が後方向に向かうよりも小さくなる。このラチェッティング挙動を確認するため、順方向に3秒間、後方向に1秒間の振動周期で1分後に、MLCを含む試料を定常状態にもっていった。次に、3秒間後方向、1秒間順方向の1周期で1分で振動することにより、これを直ちに逆転させた。図14は、細胞が横断できない細孔サイズに対応する装置内の様々な段階で、その原初の位置に戻らずに捕捉された状態にとどまった細胞の百分率を示す。10.3kPaの圧力が適用された場合、50%超の細胞がラチェッティングを示し、この百分率は、41.4kPaの印加圧力で100%まで増大する。
より大きい処理量を達成するためには、高い細胞濃度が望ましいが、濃度が高すぎると、素子の詰まりおよび選別機構の汚染をもたらす結果となる。これによって同様に、細胞が互いに吸着する確率が高くなり、細胞は凝集体を形成することになり、これらの凝集体は入口流路を通した細胞の動作を防げるだけでなく、素子での細胞の正しい選別を妨げる。充分に高い振動圧力は、多くの場合、これらの凝集体を壊すことができるが、これにより選別プロセスは延長される。
実施例6−赤血球の変形性分析
微小流体細胞分離装置を用いて、赤血球の変形性を評価した。直列漏斗構成を含む装置(図4に概略的に標示)を、直列でW0=0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7μmの漏斗構成で利用した。赤血球は、移動制限の無い状態では、全体的に球形というよりもむしろトロイドまたはディスク形状を有することから、「フラット」ディスクとして(例えば横向き)または「オンエッジ」(ホイールのように実質的に直立状態)で、素子を通って進行し得る。約2〜3μm以下の高さを有する流路は、大部分の赤血球を「フラットディスク」として泳動するように限定し、一方約3〜4μmより大きい高さを有する流路は、赤血球がいずれの構成でも(つまり折重なった状態でもまたは一定の角度ででも)泳動できるようにする。従って、装置は、約3μmの流路深さを提供するように構成されており、これは、細胞が中を横断するにつれて起立したり折重なったりせずに漏斗内で平坦に移動するよう細胞を限定する。
細胞を漏斗を通って押すのに必要とされる閾値圧力は、全細胞の剛性または変形性の指標として測定される。最小印加圧力差は約0.3Paである。従って、細胞の表層張力は、ラプラスの法則から誘導された上述の等式(1)によって支配される通り、細胞の半径、漏斗の幾何形状および測定された閾値圧力の情報に基づいて測定可能である。
PMS(フェナジンメトサルフェート)は、鎌状赤血球(RBC)の内部での自動酸化プロセスと同じ要領で細胞の内部からスーパーオキシドを生成する。酸化に応答して、細胞膜は剛化する。この誘発された剛化は、高密度および/または脱水鎌状細胞のミクロレオロジー特性を刺激するために利用することができる(Hebbel、R. P.、A.LeungおよびN.Mohandas「Oxidation-Induced Changes in Microrheologic Properties of the Red-Blood-Cell Membrane」、Blood、1990.76(5): p.1015-1020、Hebbel、R. P. 「The sickle erythrocyte in double jeopardy: autoxidation and iron decompartmentalization」、Seminars in hematology、1990.27(1): p.51-69、および同書中の参考文献)。ここでは、マイクロ流体素子を用いて、未処理(対照)赤血球と比較したPMS処理済み赤血球の剛性ならびにPMSの異なる濃度に対応する剛性変化度が測定されている。
抗生物質を伴う平衡塩類溶液中に、20%のヘマトクリットでRBCを懸濁させた。その後PBC懸濁液を60分間0、10、25、50μmのPMSで改質し、続いて、装置と共に使用するためのリン酸緩衝生理食塩水を用いて200:1に希釈した。
PMSで処理したRBCおよび対照RBCを、RBCの剛性および/または変形性に対するPMSの効果を調査するために試験した。測定された閾値圧力は、変形性の変化を標示するものである。PMS処理をしたばかりの赤血球は、正常な対照RBCに比べて明らかな剛性増加を示す。図15は、赤血球の剛性に対する異なる濃度のPMSの効果を示す。1.1μmおよび1.4μmの狭窄部を通したRBCスクイージングの閾値圧力を測定した。濃度が0μM(対照)から、10μM、25μM、50μMへと増大するにつれて、値は増大する。我々は、PMS濃度が増大するにつれて赤血球膜の変形性が減少し、同様にPMS処理済み細胞が同様に、正常な健常赤血球よりも高い可塑性挙動を示すものと判定した。対照RBCおよび損傷を受けた赤血球の表層張力は等式(1)に基づいて計算され表1に示されている。
Figure 0005990256
以上の記述においては、説明を目的として、実施形態を完全に理解できるように多くの詳細が明記されている。しかしながら、当業者にとっては、これらの具体的詳細が必要とされていないことは明白である。他の場合においては、理解をあいまいにしないために、ブロック図の形で周知の電気構造および回路が示されている。例えば、本明細書中に記述された実施形態をソフトウェアルーチン、ハードウェア回路またはそれらの組合せのいずれとして実施するかについての具体的詳細は提供されていない。
本開示の実施形態は、機械読取り可能な媒体(コンピュータ読取り可能媒体、プロセッサ読取り可能媒体または内部にコンピュータ読取り可能なプログラムコードが統合されているコンピュータ使用可能な媒体とも呼ばれる)中に記憶された、コンピュータプログラム製品として表わすことができる。機械読取り可能媒体は、ディスケット、コンパクトディスク読取り専用メモリ(CD-ROM)、メモリー素子(揮発性または不揮発性)、または類似の記憶機構を含む磁気、光学または電気的記憶媒体を含めた任意の好適な有形で一時的でない媒体であり得る。機械読取り可能媒体は、実行された場合にプロセッサに本開示の一実施形態に係る方法中のステップを実施させる様々な命令セット、コードシーケンス、構成情報或いは他のデータを収納することができる。当業者であれば、記述した実装の実施に必要な他の命令およびオペレーションもまた、機械読取り可能媒体上に記憶可能であるということを認識するものである。機械読取り可能媒体上に記憶された命令は、プロセッサまたは他の好適な処理素子により実行され得、電気回路とインターフェースして記述されたタスクを実施することができる。
上述の実施形態は、単に一例であることのみを意図されている。当業者であれば、本明細書に添付されたクレームのみによって定義される範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に対し改変、修正および変化を加えることができる。
参考文献
1. Astumian、R.D.「Thermodynamics and kinetics of a Brownian motor」、Science、1997.276(5314): p.917-922.
2. Julicher、F.、A.Ajdari、およびJ. Prost「Modeling molecular motors」、Reviews of Modem Physics、1997.69(4): p.1269-1281.
3. Cranston、H.A.等「Plasmodium-Falciparum Maturation Abolishes Physiologic Red-Cell Deformability」、Science、1984.223(4634): p.400-403.
4. Cross、S.E.等「AFM-based analysis of human metastatic cancer cells」、Nanotechnology、2008.19(38).
5. Nash、G.B.等「Abnormalities in the Mechanical-Properties of Red Blood-Cells Caused by Plasmodium-Falciparum」、Blood、1989.74(2): p.855-861.
6. Suresh、S.等「Connections between single-cell biomechanics and human disease states:gastrointestinal cancer and malaria」、Acta Biomaterialia、2005.1(1): p.15-30.
7. Lam、W.A.、M.J.RosenbluthおよびD.A.Fletcher「Chemotherapy exposure increases leukemia cell stiffness」、Blood、2007.109(8): p.3505-3508.
8. Bader、J. S.等「DNA transport by a micromachined Brownian ratchet device」、PNAS、1999.96(23): p.13165-13169.
9. Gorre-Talini、L、J. P. SpatzおよびP. Silberzan「Dielectrophoretic ratchets」、Chaos、1998.8(3): p.650-656.
10. Rousselet、J.等「Directional Motion of Brownian Particles Induced by a Periodic Asymmetric Potential」、Nature、1994.370(6489): p.446-448.
11. Faucheux、L. P.等「Optical Thermal Ratchet」、Physical Review Letters、1995.74(9): p.1504-1507.
12. Loutherback、K.等「Deterministic Microfluidic Ratchet」、Physical Review Letters、2009.102(4): p.045301.
13. Matthias、S.およびF.Muller「Asymmetric pores in a silicon membrane acting as massively parallel brownian ratchets」、Nature、2003.424(6944): p.53-57.
14. Galajda、P.等「Funnel ratchets in biology at low Reynolds number:choanotaxis」、Journal of Modern Optics、2008.55(19-20): p.3413-3422.
15. Hulme、S.E.等「Using ratchets and sorters to fractionate motile cells of Escherichia coli by length」、Lab on a Chip、2008.8(11): p.1888-1895.
16. Mahmud、G.等「Directing cell motions on micropatterned ratchets」、Nature Physics、2009.5(8): p.606-612.
17. Davis、J.A.等「Deterministic hydrodynamics:Taking blood apart」、Proc.Natl.Acad. Sci.U. S.A.、2006.103(40): p.14779-14784.
18. Hochmuth、R.M.「Micropipette aspiration of living cells」、Journal of Biomechanics、2000.33(1): p.15-22.
19. Lim、C.T.、E.H.ZhouおよびS.Quek「Mechanical models for living cells-A review」、Journal of Biomechanics、2006.39(2): p.195-216.
20. Gorre、L、E.loannidisおよびP. Silberzan「Rectified motion of a mercury drop in an asymmetric structure」、Europhysics Letters、1996.33(4): p.267-272.
21. Haines、W.B.「Studies in the physical properties of soil V The hysteresis effect in capillary properties、and the modes of moisture distribution associated therewith」、Journal of Agricultural Science、1930.20: p.97-116.
22. Unger、M.A.等「Monolithic microfabricated valves and pumps by multilayer soft lithography」、Science、2000.288(5463): p.113-116.
23. Studer、V.等「Scaling properties of a low-actuation pressure microfluidic valve」、Journal of Applied Physics、2004.95(1): p.393-398.
24. Groisman、A.およびS.R.Quake「A microfluidic rectifier: Anisotropic flow resistance at low Reynolds numbers」、Physical Review Letters、2004.92(9): p.094501.
25. Needham、D.およびR.M.Hochmuth「A Sensitive Measure of Surface Stress in the Resting Neutrophil」、Biophysical Journal、1992.61(6): p.1664-1670.
26. Tinevez、J.Y.等「Role of cortical tension in bleb growth」、Proc.Natl.Acad. Sci.U. S.A.、2009.106(44): p.18581-18586.
27. Yap、B.およびR.D.Kamm「Cytoskeletal remodeling and cellular activation during deformation of neutrophils into narrow channels」、Journal of Applied Physiology、2005.99(6): p.2323-2330.
28. Kuo、J. S.等「Deformability considerations in filtration of biological cells」、Lab on a Chip、2010.10(7): p.837-842.
29. Hebbel、R. P.、A.LeungおよびN.Mohandas「Oxidation-Induced Changes in Microrheologic Properties of the Red-Blood-Cell Membrane」、Blood、1990.76(5): p.1015-1020.
30. Hebbel、R. P.「The sickle erythrocyte in double jeopardy: autoxidation and iron decompartmentalization」、Seminars in hematology、1990.27(1): p.51-69.
31. Fehm、T.等「Methods for isolating circulating epithelial cells and criteria for their classification as carcinoma cells」、Cytotherapy、2005.7(2): p.171-185.Fehm、T.等「Methods for isolating circulating epithelial cells and criteria for their classification as carcinoma cells」、Cytotherapy、2005.7(2): p.171-185.
32. Meng、S.等「Circulating tumor cells in patients with breast cancer dormancy」、Clin Cancer Res、2004.10(24): p.8152-62.
33. Guo、Q.、S.M.McFaulおよびH. S.Ma「Deterministic microfluidic ratchet based on the deformation of individual cells」、Physical Review E.83(5).
34. Guo、Q.等「Microfluidic Biomechanical Assay for Red Blood Cells Parasitized by Plasmodium falciparum」、Lab on a Chip、2012.12(6): p.1143-1150.
35.McFaul、S.M.、B.K.LinおよびH.Ma「Cell separation based on size and deformability using microfluidic funnel ratchets」、Lab on a Chip、DOI:10.1039/c2lc21045b、2012.
全ての引用は、参照により本明細書に援用されている。

Claims (38)

  1. 第1の端部(106/206)と第2の端部(108/208)とを有する流路(102/202)と、
    前記流路内のキャリア流体を、第1の端部から第2の端部までの順方向(F)への流動と、第2の端部から第1の端部までの逆方向(R)への流動との間で交番させるための流体流れ制御装置(104)と、
    前記流路内に設けられた微小構造(110/110A/110B/110C/110D/210/212/214/215/216/217/218/219)とを具備し、
    前記微小構造は1または複数の通路(111/111A/111B/111C/111D/211)を具備しており、
    該通路は、前記流路を流通するキャリア流体中の粒子が前記微小構造中を通過する際に、該粒子を変形させる寸法にて形成され、該通路の各々は前記順方向へ先細りにテーパー状に形成され、前記微小構造中を逆方向に通過する粒子を変形させるのに必要とされる力よりも、前記微小構造中を順方向に通過する粒子を変形させるのに必要とされる力の方が小さくなるように構成された1または複数の通路を含む微小構造とを具備する装置(100、200、200A)
  2. 1または複数の通路が、漏斗状の通路を含んでいる請求項1に記載の装置。
  3. 漏斗状の通路が0°超から30°までの半角を有する請求項2に記載の装置。
  4. 漏斗状通路が、10°の半角を有する請求項3に記載の装置。
  5. 流路が、第1の端部から第2の端部まで延在する対向する側壁(203)を有する分離チャンバ(202)を含み、微小構造が分離チャンバの側壁の間に延在する複数の障害部(211)から成るアレイ(210/214/215/216/217/218/219)を含み、障害部アレイは、隣接する障害部対の間に通路を提供するように配置されており、障害部は、通路に順方向に先細りとなるテーパーを付けるような形状を有する請求項1〜4の何れか1項に記載の装置。
  6. 第1の端部とアレイとの間に設けられ分離チャンバ内に粒子を導入するための試料入口(220/221/222/223/224/225)と、
    第1の端部とアレイとの間に設けられ分離チャンバから粒子を取出すための第1の試料出口(231/232/233/234/235/236)と、
    アレイと第2の端部との間に設けられ分離チャンバから粒子を取出すための第2の試料出口(232/233/234/235/236/237)とを具備する請求項5に記載の装置。
  7. 微小構造が、分離チャンバの側壁間に延在する複数の障害部から成る複数のアレイ(214/215/216/217/218/219)を含む請求項に記載の装置。
  8. 害部アレイの各々が、隣接する障害部対間に対応する通路セットを提供するように構成されており、障害部は、通路に順方向に先細りとなるテーパーを付けるような、かつ各々の連続するアレイ内で通路のサイズが第1の端部から第2の端部に向かって減少するような形状を有する請求項7に記載の装置。
  9. 複数のアレイが、障害部間に異なる間隔を伴うアレイを含む請求項7に記載の装置。
  10. 複数のアレイの各々の中の障害部間の間隔が、第1の端部に最も近いアレイ内で最大であり、第2の端部に最も近いアレイ内で最小である請求項9に記載の装置。
  11. 流路の第1の端部に第1のフィルター障壁(240)を含む請求項1〜10の何れか1項に記載の装置。
  12. 流路の第2の端部に第2のフィルター障壁(240)を含む請求項1〜11の何れか1項に記載の装置。
  13. 第1のフィルター障壁が、間に間隙を有する複数のフィルター障害部を含む請求項11または12に記載の装置。
  14. フィルター障害部間の間隙が微小構造の通路と整列されている請求項13に記載の装置。
  15. 第1の端部でキャリア流体を導入するための第1の分配ネットワークを含み、第1の分配ネットワークが、微小構造の通路と整列した複数のサブ流路を含む請求項1〜14の何れか1項に記載の装置。
  16. 第2の端部でキャリア流体を導入するための第2の分配ネットワークを含み、第2の分配ネットワークが、微小構造の通路と整列した複数のサブ流路を含む請求項15に記載の装置。
  17. 1または複数の通路が、白血球、胚細胞、幹細胞、前躯細胞、転移細胞、癌細胞および死細胞のうちの1または複数の通過を排除するように構成されている請求項1〜16の何れかに記載の装置。
  18. 対向する第1と第2の端部を有し、第1と第2の端部の各々が分離チャンバ内部でキャリア流体を分配するための1または複数の流体流路(205/207)を有している、分離チャンバ(202)と、
    分離チャンバの側壁の間に延在し、隣り合って対をなす障害部の間に第1の間隔を提供するように配置された複数の障害部から成る第1のアレイであって、前記第1の間隔が分離チャンバの第1の端部に向かって比較的大きく、分離チャンバの第2の端部に向かって比較的小さくなるように設けられた複数の障害部(212)から成る第1のアレイ(210/214/215/216/217/218/219)と、
    第1の端部と第1のアレイの間で分離チャンバ内に粒子を導入するための試料入口(220/221/222/223/224/225)と、
    第1の端部と第1のアレイの間で分離チャンバから粒子を取出すための第1の試料出口(231/232/233/234/235/236)と、
    第1のアレイと第2の端部の間で分離チャンバから粒子を取出すための第2の試料出口(231/232/233/234/235/236)とを具備する粒子分離用装置(200、200A)
  19. 微小構造(110/110A/110B/110C/110D/210/212/214/215/216/217/218/219)を流路(111/211)内に準備するステップであって、前記微小構造は流路の第1の端部により近い第1の側と流路の第2の端部により近い第2の側とを有し、該通路の各々は前記順方向へ先細りにテーパー状に形成され、流路内キャリア流体中の粒子が微小構造を通過するにつれて粒子を変形させる寸法にて形成され、微小構造の第2の側から微小構造の第1の側へと通過する粒子を変形させるのに必要とされる力よりも微小構造の第1の側から微小構造の第2の側へと通過する粒子を変形させるのに必要とされる力の方が小さくなるように構成された1または複数の通路を内部に含む微小構造を流路内に準備するステップと、
    方向への流動と方向への流動との間で交番するようにキャリア流体を強制するステップとを具備する方法。
  20. 1または複数の通路が、漏斗状の通路を含んでいる請求項19に記載の方法。
  21. 漏斗状の通路が、1°から30°までの半角を有する請求項20に記載の方法。
  22. 漏斗状通路が、10°の半角を有する請求項21に記載の方法。
  23. 流路が、第1の端部から第2の端部まで延在する対向する側壁(203)を有する分離チャンバ(202)を含み、微小構造が分離チャンバの側壁の間に延在する複数の障害部(211)から成るアレイ(210/214/215/216/217/218/219)を含み、障害部アレイは、隣接する障害部対の間に通路を提供するように配置されており、障害部は、通路に順方向に先細りとなるような形状を有する請求項19〜22の何れか1項に記載の方法。
  24. 第1の端部と第1のアレイ間で試料入口(220/221/222/223/224/225)を通って分離チャンバ内に粒子を導入するステップと、
    第1の端部と第1のアレイ間で第1の試料出口(231/232/233/234/235/236)を通って分離チャンバから粒子を取出すステップと、
    第1のアレイと第2の端部間で第2の試料出口(232/233/234/235/236/237)を通って分離チャンバから粒子を取出すステップとを具備する請求項23に記載の方法。
  25. 微小構造が、分離チャンバの側壁間に延在する複数の障害部から成る複数のアレイ(214/215/216/217/218/219)を含む請求項19に記載の方法。
  26. 障害部アレイの各々が、隣接する障害部対間に対応する通路セットを提供するように構成されており、障害部は、通路に順方向に先細りとなるテーパーを付けるような、および各々の連続するアレイ内で通路のサイズが第1の端部から第2の端部まで減少するような形状を有する請求項25に記載の方法。
  27. 複数のアレイが、障害部間に異なる間隔を伴うアレイを含む請求項25に記載の方法。
  28. 複数のアレイの各々に設けられた障害部間の間隔が、第1の端部に最も近いアレイ内で最大であり、第2の端部に最も近いアレイ内で最小である請求項27に記載の方法。
  29. 流路の第1の端部に第1のフィルター障壁(240)を含む請求項19〜28の何れか1項に記載の方法。
  30. 流路の第2の端部に第2のフィルター障壁(240)を含む請求項19〜29の何れか1項に記載の方法。
  31. 第1のフィルター障壁が、間に間隙を有する複数のフィルター障害部を含む請求項29または30に記載の方法。
  32. フィルター障害部間の間隙が微小構造の通路と整列されている請求項31に記載の方法。
  33. 微小構造の通路と整列した複数のサブ流路(242)を含む第1の分配ネットワークを通して第1の端部でキャリア流体を導入するステップを含む請求項18〜30の何れか1項に記載の方法。
  34. 微小構造の通路と整列した複数のサブ流路(242)を含む第2の分配ネットワークを通して第2の端部でキャリア流体を導入するステップを含む請求項33に記載の方法。
  35. 1または複数の通路が、白血球、胚細胞、幹細胞、前躯細胞、転移細胞、癌細胞および死細胞のうちの1または複数の通過を排除するように構成されている請求項19〜34の何れかに記載の方法。
  36. 粒子変形性に応じてフローチャンバ内部の振動する流体流中の粒子を選別するための微小構造の使用において、微小構造が複数の障害部から成る複数のアレイを含み、障害部アレイの各々が内部に1または複数の通路を含み、該通路の各々が順方向に先細りのテーパ状に形成されており、連続する各アレイが先行アレイに比べて小さい通路を有している状態で、アレイが順番に配置されている、微小構造の使用。
  37. 粒子が細胞である請求項36に記載の使用。
  38. 細胞集団がフローチャンバ内に注入され、細胞が変形性に応じて選別され、かつ細胞がその変形性に応じて複数の異なる出口から取出され、こうして複数の出口の各々から取出された細胞の数に基づいて特徴的変形性分布が決定される請求項37に記載の使用。
JP2014504129A 2011-04-15 2012-04-13 粒子分離の方法および装置 Expired - Fee Related JP5990256B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US201161476151P 2011-04-15 2011-04-15
US61/476,151 2011-04-15
PCT/CA2012/000362 WO2012139209A1 (en) 2011-04-15 2012-04-13 Method and apparatus for separation of particles

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014510539A JP2014510539A (ja) 2014-05-01
JP5990256B2 true JP5990256B2 (ja) 2016-09-07

Family

ID=47008741

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014504129A Expired - Fee Related JP5990256B2 (ja) 2011-04-15 2012-04-13 粒子分離の方法および装置

Country Status (6)

Country Link
US (1) US9880084B2 (ja)
EP (1) EP2697357A4 (ja)
JP (1) JP5990256B2 (ja)
AU (1) AU2012243396A1 (ja)
CA (1) CA2833026A1 (ja)
WO (1) WO2012139209A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021113807A1 (en) * 2019-12-06 2021-06-10 The University Of North Carolina Atchapel Hill Office Of Technology Commercialization Wedge chamber device for mouting samples for microscopy

Families Citing this family (31)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
NZ702392A (en) 2012-06-08 2017-03-31 Aduro Biotech Compositions and methods for cancer immunotherapy
EA201590396A1 (ru) 2012-12-13 2015-12-30 Адуро Биотек, Инк. Композиция, содержащая циклические пуриновые динуклеотиды с определенной стереохимией, и способ ее получения и применения
US20150375228A1 (en) * 2013-03-15 2015-12-31 The Regents Of The University Of California Devices for sorting cells in a sample and methods for use thereof
US9631179B2 (en) * 2013-03-15 2017-04-25 Angle North America, Inc. Methods for segregating particles using an apparatus with a size-discriminating separation element having an elongate leading edge
JP2016524593A (ja) 2013-04-29 2016-08-18 メモリアル スローン−ケタリング キャンサー センター セカンドメッセンジャーのシグナル伝達を変えるための組成物及び方法
JP2016518140A (ja) 2013-05-03 2016-06-23 ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア I型インターフェロンの環状ジヌクレオチド誘導法
MY175308A (en) 2013-05-18 2020-06-18 Aduro Biotech Inc Compositions and methods for activating "stimulator of interferon gene"-dependent signalling
US9549944B2 (en) 2013-05-18 2017-01-24 Aduro Biotech, Inc. Compositions and methods for inhibiting “stimulator of interferon gene”—dependent signalling
US9580678B2 (en) 2013-06-21 2017-02-28 The Regents Of The University Of California Microfluidic tumor tissue dissociation device
EP3027227A4 (en) 2013-07-31 2018-05-23 Memorial Sloan Kettering Cancer Center Sting crystals and modulators
US10370630B2 (en) 2014-02-10 2019-08-06 Technion Research & Development Foundation Limited Method and apparatus for cell isolation, growth, replication, manipulation, and analysis
US10376627B2 (en) 2014-03-24 2019-08-13 Fenwal, Inc. Flexible biological fluid filters
US10159778B2 (en) 2014-03-24 2018-12-25 Fenwal, Inc. Biological fluid filters having flexible walls and methods for making such filters
US9782707B2 (en) 2014-03-24 2017-10-10 Fenwal, Inc. Biological fluid filters having flexible walls and methods for making such filters
US9796166B2 (en) 2014-03-24 2017-10-24 Fenwal, Inc. Flexible biological fluid filters
US9968738B2 (en) 2014-03-24 2018-05-15 Fenwal, Inc. Biological fluid filters with molded frame and methods for making such filters
JP6209505B2 (ja) * 2014-11-21 2017-10-04 ラトックシステムエンジニアリング株式会社 ネットワークの特性算出方法、評価プログラムおよび特性算出装置
JP7370529B2 (ja) * 2015-08-31 2023-10-30 剛士 田邊 多能性幹細胞製造システム、幹細胞の誘導方法、幹細胞の浮遊培養方法、幹細胞の浮遊培養器、人工多能性幹細胞の作製方法、及び動物細胞から特定の体細胞を作製する方法
WO2017043862A1 (ko) * 2015-09-07 2017-03-16 주식회사 엘지화학 판상 물질의 박리 장치
US10722540B1 (en) 2016-02-01 2020-07-28 The Regents Of The University Of California Microfluidic device and method for shear stress-induced transformation of cells
KR102079141B1 (ko) * 2016-05-11 2020-02-19 주식회사 엘지화학 고압 균질화 장치 및 이를 이용한 그래핀의 제조방법
JP7366754B2 (ja) 2017-02-07 2023-10-23 ノデクサス インコーポレーテッド 高精度粒子選別のための電気的検出と光学的検出を組み合わせたマイクロ流体システム、およびその方法
WO2018223132A1 (en) * 2017-06-02 2018-12-06 The General Hospital Corporation Oscillatory focusing of particles in channels
US20190071627A1 (en) * 2017-08-04 2019-03-07 Ecole Polytechnique Federale De Lausanne (Epfl) Micro-Fluidic Particle Concentrator and Filtering Device
US10926257B2 (en) 2017-08-28 2021-02-23 The Regents Of The University Of California Microfluidic device for the digestion of tissues into cellular suspensions
US20210187508A1 (en) * 2017-10-16 2021-06-24 1 CellBio ,Inc. Systems and methods for particulate encapsulation in microdroplets
CN109797101B (zh) * 2017-11-17 2022-03-04 北京中源合聚生物科技有限公司 一种细胞反应器微载体细胞收获及再接种放大方法
US11524293B2 (en) 2018-01-17 2022-12-13 Sartorius Stedim North America Inc. Cell separation device, method and system
US20210008554A1 (en) * 2018-02-16 2021-01-14 Astrego Diagnostics Ab Cell capture in microfluidic devices
EP3647405A1 (en) 2018-11-02 2020-05-06 Microfluidx Cell culture device and method of using the same
WO2020256628A1 (en) * 2019-06-20 2020-12-24 Amniotics Ab An apparatus for filtering amniotic fluid

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20060051265A1 (en) 2004-09-08 2006-03-09 Health Research, Inc. Apparatus and method for sorting microstructures in a fluid medium
US20090136982A1 (en) * 2005-01-18 2009-05-28 Biocept, Inc. Cell separation using microchannel having patterned posts
US8173413B2 (en) * 2005-08-11 2012-05-08 University Of Washington Separation and concentration of biological cells and biological particles using a one-dimensional channel
US7695956B2 (en) 2006-01-12 2010-04-13 Biocept, Inc. Device for cell separation and analysis and method of using
CN102083997B (zh) 2008-04-23 2016-05-25 角度北美公司 用于分离颗粒的方法和设备

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021113807A1 (en) * 2019-12-06 2021-06-10 The University Of North Carolina Atchapel Hill Office Of Technology Commercialization Wedge chamber device for mouting samples for microscopy

Also Published As

Publication number Publication date
EP2697357A4 (en) 2015-04-22
JP2014510539A (ja) 2014-05-01
US9880084B2 (en) 2018-01-30
WO2012139209A1 (en) 2012-10-18
AU2012243396A1 (en) 2013-10-31
EP2697357A1 (en) 2014-02-19
CA2833026A1 (en) 2012-10-18
US20150300939A1 (en) 2015-10-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5990256B2 (ja) 粒子分離の方法および装置
ES2968853T3 (es) Aislamiento microfluídico de células tumorales u otras células raras a partir de sangre total u otros líquidos
US20140008210A1 (en) Methods and compositions for separating or enriching cells
US9458489B2 (en) Microfluidics sorter for cell detection and isolation
Tanaka et al. Separation of cancer cells from a red blood cell suspension using inertial force
JP5920895B2 (ja) マイクロ流体捕獲渦を使用して不均一溶液から細胞を単離する方法及びデバイス
Yin et al. Microfluidics-based approaches for separation and analysis of circulating tumor cells
JP6338766B2 (ja) 非ニュートン流体とニュートン流体の並行層流を利用したマイクロ粒子分離及び洗浄方法
Chung et al. Highly permeable silicon membranes for shear free chemotaxis and rapid cell labeling
US20140034556A1 (en) Apparatus and method for particle separation
Gao et al. Efficient separation of tumor cells from untreated whole blood using a novel multistage hydrodynamic focusing microfluidics
EP3538269A1 (en) Methods for convectively-driven intracellular delivery
US20160237397A1 (en) Methods and devices for breaking cell aggregation and separating or enriching cells
Li et al. Multiparameter cell affinity chromatography: separation and analysis in a single microfluidic channel
Qi et al. Probing single cells using flow in microfluidic devices
US9968932B2 (en) Microchannel chip for microparticle separation, microparticle separation method and system for microparticle separation using chip
Sun et al. A magnetic nanoparticle assisted microfluidic system for low abundance cell sorting with high recovery
Mohamed Use of microfluidic technology for cell separation
Tran Microfluidic studies on flow manipulation to assist metastasis research
Zhang Acoustic Isolation of Extracellular Vesicles
Feng Particle Manipulation and Separation in Inertial and Viscoelastic Flow
Esmaeilsabzali Development of a microfluidic platform for size-based enrichment and immunomagnetic isolation of circulating tumour cells
Zhao Personalized Microfluidic-Elasto-Filtration for Isolating Circulating Tumor Cells in Peripheral Blood
Kumar Inertio-and Elasto-Magnetic Fractionation of Multiple Microparticles in Newtonian and Non-Newtonian Fluid
Chen et al. Microfluidics chips for blood cell separation

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150410

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20151118

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20151215

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20160315

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160421

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160712

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160812

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5990256

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees