本発明に係るカメラ用羽根駆動装置の実施例を、図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明に係るカメラ用羽根駆動装置は、シャッタ機構であり、絞り機構とユニット化されていてデジタルカメラにも銀塩フィルムカメラにも採用することができるように構成したものであるが、以下の実施例1〜3においてはデジタルカメラに採用したものとして説明する。
以下に、図1〜図3を用いて、実施例1に係るカメラ用羽根駆動装置を適用したシャッタ機構と絞り機構とからなるユニットについて詳細に説明する。
なお、図1は、本実施例に係るカメラ用羽根駆動装置をシャッタ機構としたユニットの、二枚のシャッタ羽根が露光用の開口部から退避させられた状態を示す平面図である。図2は、本実施例に係るカメラ用羽根駆動装置をシャッタ機構としたユニットの、二枚のシャッタ羽根が露光用の開口部に進入させられた状態を示す平面図である。図3は、本実施例に係るカメラ用羽根駆動装置をシャッタ機構としたユニットの、図2のA−A線に沿った断面図である。
まず、このユニットの構成を説明する。
このユニットは、シャッタ地板1,中間板2,補助地板3に取り付けられている。そして、シャッタ地板1,中間板2,補助地板3は、所定の間隔を空けて一体的に取り付けられており、シャッタ地板1と中間板2との間をシャッタ羽根の羽根室とし、中間板2と補助地板3との間を絞り羽根の羽根室としている。また、シャッタ地板1,中間板2,補助地板3の略中央部には円形をした被写体光進入用の開口部1a,2a,3a(以下、総称して「露光開口」という。)がそれぞれ形成されている。これらの開口部は、図1においては、開口部1aは実線で示されていて、開口部2a,3aは破線で示されている。後に示す図4,7においても同様に、開口部2a,3aは破線で示されている。なお、このユニットでは、開口部1aの直径が開口部2a,3aの直径より小さく形成されており、開口部1aが露光開口を規制するようになっている。しかし、開口部2a又は開口部3aが露光開口を規制するようにしてもよい。そして、この露光開口が、被写体光の光路を規制する最大径の開口部となる。なお、シャッタ地板1,中間板2,補助地板3は類似の外形形状をしているが、図1においては、中間板2,補助地板3はその一部のみ示されていて、図2においては、中間板2,補助地板3は図示を省略されている。後に示す図4,図5,図7,図8においても同様である。また、それらのシャッタ地板1,中間板2,補助地板3の相互の取付構成やカメラへの取付構成は、図示を省略してある。
シャッタ地板1は、合成樹脂製であって、図1において開口部1aの左側及び右下側に円弧状をした二つの長孔1b,1cが形成されている。また、シャッタ地板1のシャッタ羽根の羽根室側の面には、三つの軸1d,1e,1hと、四つのストッパ軸1f,1g,1i,1jが形成されている。これらの三つの軸のうち、軸1hは、円柱状に形成されている。軸1d,1eは、円柱形軸部1d−1,1e−1と、円柱の一部を地板と平行な方向に窪ませたような形状をしている当接部1d−2,1e−2とを有する形状に形成されている。なお、図1,図2においては、この当接部1d−2,1e−2を形成するために窪ませた部分を斜線によるハッチングで示してある。
また、シャッタ地板1のシャッタ羽根の羽根室側の面には、上記の軸1dの周りの一部を囲むようにして肉厚部1kが、上記の軸1eの周りを囲むようにして肉厚部1mが、それぞれ形成されている。そして、図3に示されているように、肉厚部1kは、肉厚部1mよりも中間板2側に突出するように形成されている。なお、この肉厚部1k,1mは、図1においては図示を省略していて、図2において点によるハッチングで示してある。
中間板2は、合成樹脂製であって、明示されていないが、シャッタ地板1の長孔1b,1cと対応する位置に、それらと同じ形状の長孔が形成されていて、また、シャッタ地板1の三つの軸1d,1e,1h及び四つのストッパ軸1f,1g,1i,1jと対応する位置に、それらを貫通させるための孔が形成されている。さらに、中間板2のシャッタ羽根の羽根室側の面には、上記のシャッタ地板1の肉厚部1k,1mと略対向するようにして、上記の軸1dの周りを囲むようにして肉厚部2bが、上記の軸1eの周りの一部を囲むようにして肉厚部2cが、それぞれ形成されている。そして、図3に示されているように、この肉厚部2cは、肉厚部2bよりもシャッタ地板1側に突出するように、すなわち、肉厚部1k,1mとは逆になるように形成されている。なお、この肉厚部2b,2cは、図2においては図示を省略していて、図1において点によるハッチングで示してある。
補助地板3は、合成樹脂製であって、明示されていないが、シャッタ地板1の長孔1b,1cと対応する位置に、それらと同じ形状の長孔が形成されており、また、シャッタ地板1の三つの軸1d,1e,1h及び四つのストッパ軸1f,1g,1i,1jと対応する位置に凹部が形成されている。
シャッタ地板1の表面側、すなわち、シャッタ羽根の羽根室側の面とは反対側の面には、回転子を所定の角度範囲においてだけ往復回転させるようにした第1電磁アクチュエータ及び第2電磁アクチュエータが取り付けられている。これらの電磁アクチュエータの構成は周知である(例えば、特開2000−66267号公報に記載されているものや、特開2007−174795号公報に記載されているものなど、種々の構成が知られている)ため、固定子の図示を省略し、第1電磁アクチュエータの回転子4及び第2電磁アクチュエータの回転子5のみを図示している。この回転子4,5は、永久磁石製であって、円筒形をした本体部と、径方向へ張り出した腕部と、その先端に設けられた駆動ピン4a,5aとからなっていて、シャッタ地板1に立設された図示されていない回転子取付軸にそれぞれ回転可能に取り付けられている。そして、この本体部は径方向へ二極に着磁されている。また、駆動ピン4aはシャッタ地板1の長孔1bを貫通して羽根室内に挿入されていて、駆動ピン5aはシャッタ地板1の長孔1cを貫通して羽根室内に挿入されている。なお、この回転子4は、図3においては図示を省略されている。後に示す図6,図9においても同様に、回転子4は図示を省略されている。
シャッタ地板1と中間板2との間に構成されたシャッタ羽根の羽根室には、二枚のシャッタ羽根6,7が配置されていて、シャッタ地板1の軸1d,1eに回転可能に取り付けられている。これらのうち、中間板2の側に配置されているシャッタ羽根6は、長孔6aと張出部6b,6cとが形成されていて、上記の軸1dの円柱形軸部1d−1に回転可能に取り付けられている。また、シャッタ地板1の側に配置されているシャッタ羽根7は、長孔7aと張出部7b,7cとが形成されていて、上記の軸1eの円柱形軸部1e−1に回転可能に取り付けられている。また、該長孔6a,7aの両方に対して回転子4の駆動ピン4aが挿入されていて、二枚のシャッタ羽根6,7は、回転子4の回転に伴って露光開口に進退させられる。そして、図3から分かるように、シャッタ羽根6は、シャッタ地板1の肉厚部1kと中間板2の肉厚部2bとの間で作動し、シャッタ羽根7は、シャッタ地板1の肉厚部1mと中間板2の肉厚部2cとの間で作動する。そのため、シャッタ羽根6は、軸1dの高さ方向への移動を規制され、円柱形軸部1d−1から当接部1d−2の方へ外れないようにされていて、シャッタ羽根7は、軸1eの高さ方向への移動を規制され、円柱形軸部1e−1から当接部1e−2の方へ外れないようにされている。
中間板2と補助地板3との間に構成された絞り羽根の羽根室には、一枚の絞り羽根8が配置されていて、シャッタ地板1の軸1hに回転可能に取り付けられている。この絞り羽根8は、長孔8aと、露光開口よりも直径の小さな開口部8bとが形成されている。そして、長孔8aには回転子5の駆動ピン5aが挿入されているため、絞り羽根8は、回転子5の回転に伴って露光開口に進退させられる。
次に、このユニットの作動を説明する。
既に説明したように、このユニットは、デジタルカメラに用いられるように構成されたものである。図1はその初期状態を示している。すなわち、このユニットの用いられるデジタルカメラは、ノーマリオープンタイプであり、電源がオンのときには、シャッタ羽根6は、その張出部6bをストッパ軸1fに当接させて露光開口から退避させられていて、シャッタ羽根7は、その張出部7bをストッパ軸1gに当接させて露光開口から退避させられている。そして、絞り羽根8は、ストッパ軸1iに当接させて露光開口から退避させられている。そのため、電源がオンのときには、露光開口をシャッタ羽根6、7が覆っていないので、図示していない固体撮像素子は被写体光に晒されていて、被写体像をモニターで観察可能な状態になっており、絞り羽根8も露光開口を覆っていないため、被写体像をモニターで観察し易いようになっている。また、このときには第1電磁アクチュエータ及び第2電磁アクチュエータは通電されていないが、周知の固定子構成によって、回転子4には反時計方向へ回転する力が、回転子5には時計方向へ回転する力がそれぞれ付与されている。
撮影に際してレリーズボタンを押すと、まず、被写体光の測定結果に基づいて、被写体光の光量を減じて撮影するか、減じないで撮影するかが決定される。そして、被写体光の光量を減じて撮影する場合には、第2電磁アクチュエータの固定子コイルに正方向の電流が供給される。それによって、回転子5は反時計方向へ回転させられ、その回転子5に設けられた駆動ピン5aを介して、絞り羽根8を反時計方向へ回転させる。そして、絞り羽根8は露光開口に進入させられ、開口部8bを露光開口に臨ませ、ストッパ軸1jに当接することによって停止させられる。
その後、露光制御回路からの信号によって固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出されると、撮影のための露光が開始され固体撮像素子に新たに電荷が蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光制御回路からの信号によって、第1電磁アクチュエータの固定子コイルに正方向の電流が供給される。それによって、回転子4は時計方向へ回転させられ、その回転子4に設けられた駆動ピン4aを介してシャッタ羽根6,7を相反する方向へ回転させる。そして、シャッタ羽根6,7は露光開口を閉じてゆき、露光開口を完全に閉鎖した直後に、シャッタ羽根6はその張出部6cが軸1eの当接部1e−2に当接することによって停止させられ、シャッタ羽根7はその張出部7cが軸1dの当接部1d−2に当接することによって停止させられる。図2は、そのようにして、シャッタ羽根6,7の作動が停止した状態を示したものである。
このようにして、露光開口が閉鎖され、シャッタ羽根6,7の閉じ作動が停止すると、その状態において撮像情報が記憶装置に転送される。そして、その転送が終了すると、第1電磁アクチュエータの固定子コイルに対して、上記の場合とは逆方向への通電が行なわれる。それによって、回転子4は、図2において反時計方向へ回転させられ、駆動ピン4aによってシャッタ羽根6,7に開き作動を行わせる。そして、露光開口を全開にした直後に、シャッタ羽根6は、その張出部6bがストッパ軸1fに当接することによって停止させられ、シャッタ羽根7は、その張出部7bがストッパ軸1gに当接することによって停止させられる。他方、第2電磁アクチュエータの固定子コイルにも、上記の場合とは逆方向の通電が行われるため、回転子5は、駆動ピン5aを介して絞り羽根8を時計方向へ回転させる。そして、絞り羽根8は、露光開口から完全に退いた後、ストッパ軸1iに当接することによって停止させられる。その後、二つの電磁アクチュエータの固定子コイルに対する通電を断つと、図1の初期状態になる。
なお、上記の作動説明は、被写体光の光量を減じて撮影を行う場合であったが、被写体光の光量を減じないで撮影を行う場合は、第2電磁アクチュエータの固定子コイルには最初から通電されず、第1電磁アクチュエータによってシャッタ羽根6,7が回動させられるだけである。
このように構成された本発明に係るカメラ用羽根駆動装置を適用したシャッタ装置として用いたユニットによれば、一方のシャッタ羽根を取り付けている軸を、他方のシャッタ羽根の閉じストッパとしているため、従来は専用の軸として設けていた閉じストッパが不要になる。そのため、特許文献1の図2等に記載の従来のシャッタ装置と比べて、羽根部材の形状及び/又は作動の自由度を大きくすることが可能になり、設計を容易にすることが可能になっていると共に、装置の小型化が可能になる。また、使用する材料も少なくなり、低コスト化も可能になる。
なお、このユニットにおいては、露光開口から退避させられたときに、シャッタ羽根6はその張出部6bをストッパ軸1fに当接させ、シャッタ羽根7はその張出部7bをストッパ軸1gに当接させ、露光開口に進入させられたときに、シャッタ羽根6はその張出部6cを軸1eの当接部1e−2に当接させ、シャッタ羽根7はその張出部7cを軸1dの当接部1d−2に当接させる構成となっている。しかし、例えば、特開2003−177447号公報に記載されているように、一つの駆動ピンで作動させられる複数枚のシャッタ羽根を相反する方向へ回転させて露光開口を閉鎖するようにしたシャッタ装置においては、シャッタ羽根を露光開口に進退させる場合に、そのうちの一枚だけをストッパに当接させるようにした構成も従来知られている。したがって、このユニットにおいても、露光開口に進入させられたときに、シャッタ羽根6,7のいずれか一方のみを軸1e,1dのうちの対応する方の軸の当接部に当接させるように構成しても構わないし、露光開口から退避させられたときに、シャッタ羽根6,7のいずれか一方のみをストッパ軸1f,1gのうちの対応する方のストッパ軸に当接させるように構成しても構わない。このように構成する場合には、ストッパ軸1f,1gの両方を設ける必要はないので、どちらか片方だけを設けるようにしても構わない。
また、このユニットにおいては、軸1d,1eは、円柱形軸部1d−1,1e−1と、当接部1d−2,1e−2とからなっているが、これはシャッタ羽根の作動を円滑にするためであり、円柱形軸部1d−1,1e−1を設けずに当接部1d−2,1e−2のみで軸1d,1eを形成するようにしても構わない。そして、そのようにした場合には、肉厚部1k,1m,2b,2cは不要になることは言うまでも無い。
以下に、図4〜図6を用いて、実施例2に係るカメラ用羽根駆動装置を適用したシャッタ機構と絞り機構とからなるユニットについて詳細に説明する。
なお、図4は、本実施例に係るカメラ用羽根駆動装置をシャッタ機構としたユニットの、四枚のシャッタ羽根が露光用の開口部から退避させられた状態を示す平面図である。図5は、本実施例に係るカメラ用羽根駆動装置をシャッタ機構としたユニットの、四枚のシャッタ羽根が露光用の開口部に進入させられた状態を示す平面図である。図6は、本実施例に係るカメラ用羽根駆動装置をシャッタ機構としたユニットの、図5のB−B線に沿った断面図である。
まず、このユニットの構成を説明する。なお、このユニットは、実施例1のユニットにおけるシャッタ地板1の軸1d,1e及びストッパ軸1f,1gの代わりに四つの軸1n,1o,1p,1qを設け、実施例1のユニットにおけるシャッタ地板1の肉厚部1k,1m及び中間板2の肉厚部2b,2cを設けないようにし、実施例1のユニットにおけるシャッタ羽根6,7の代わりにシャッタ羽根9,10,11,12を取り付けたものであり、その他の構成は実施例1のユニットと全く同じであるため、実施例1のユニットと同じ部材、同じ部位には同じ符号を付け、それらについての説明は省略する。
シャッタ地板1のシャッタ羽根の羽根室側の面には、実施例1のユニットにおけるシャッタ地板1の軸1d,1e及びストッパ軸1f,1gの代わりに、四つの軸1n,1o,1p,1qが形成されている。そして、これらの四つの軸1n,1o,1p,1qは、当接部1n−1,1o−1,1p−1,1q−1からなっていて、実施例1のユニットにおけるシャッタ地板1の軸1d,1eが円柱形軸部1d−1,1e−1を設けずに当接部1d−2,1e−2のみで形成されているような形状をしている。これらの四つの軸1n,1o,1p,1qのうち軸1o,1pの断面形状を図6に示す。なお、図6においては、当接部1o−1,1p−1を形成するために円柱から切除した部分を二点鎖線で示してある。
シャッタ地板1と中間板2との間に構成されたシャッタ羽根の羽根室には、四枚のシャッタ羽根9,10,11,12が配置されていて、それらの四枚のシャッタ羽根9,10,11,12は、それぞれ、シャッタ地板1の軸1n,1o,1p,1qに回転可能に取り付けられている。これらのうち、最も中間板2の側に配置されているシャッタ羽根9は、長孔9aと張出部9bとが形成されていて、上記の軸1nに回転可能に取り付けられている。また、シャッタ羽根9よりもシャッタ地板1の側に配置されているシャッタ羽根10は、長孔10aと張出部10b,10cとが形成されていて、上記の軸1oに回転可能に取り付けられている。また、シャッタ羽根10よりもシャッタ地板1の側に配置されているシャッタ羽根11は、長孔11aと張出部11b,11cとが形成されていて、上記の軸1pに回転可能に取り付けられている。また、最もシャッタ地板1の側に配置されているシャッタ羽根12は、長孔12aと張出部12bとが形成されていて、上記の軸1qに回転可能に取り付けられている。そして、該長孔9a,10a,11a,12aの全てに対して回転子4の駆動ピン4aが挿入されており、四枚のシャッタ羽根9,10,11,12は回転子4の回転に伴って露光開口に進退させられる。
次に、このユニットの作動を説明する。なお、実施例1のユニットの作動と重複する点については説明を省略し、異なる点のみを説明する。
図4は初期状態を示したものであり、シャッタ羽根9とシャッタ羽根10は、重なり合った状態で、露光開口の側方に退避させられており、シャッタ羽根11とシャッタ羽根12も、重なり合った状態で、露光開口の側方であってシャッタ羽根9,10とは露光開口を挟んで略反対側となる位置に退避させられている。なお、この状態において、シャッタ羽根10は、その張出部10bを軸1nの当接部1n−1に当接させていて、シャッタ羽根11は、その張出部11bを軸1qの当接部1q−1に当接させている。
撮影に際してレリーズボタンを押すと、被写体光の測定が行われ、被写体光の光量を減じて撮影するか、減じないで撮影するかが決定される。そして、被写体光の光量を減じて撮影する場合には、第2電磁アクチュエータの固定子コイルに正方向の電流が供給され絞り羽根8が露光開口に進入させられてから、シャッタ羽根9,10,11,12が作動させられる。
露光制御回路からの信号によって、図示していない固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出されると、撮影のための露光が開始され、固体撮像素子に新たに電荷が蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光制御回路からの信号によって、第1電磁アクチュエータの固定子コイルに正方向の電流が供給される。それによって、回転子4は時計方向へ回転させられ、その回転子4に設けられた駆動ピン4aを介して、シャッタ羽根9,10,11,12を回転させる。このとき、シャッタ羽根9とシャッタ羽根10は、反時計方向に回転させられ、シャッタ羽根11とシャッタ羽根12は、時計方向に回転させられる。しかし、シャッタ羽根9とシャッタ羽根10とは、支点と作用点との位置関係が異なるため、シャッタ羽根10の方がシャッタ羽根9よりも速く回転させられる。そのため、この作動において、シャッタ羽根9とシャッタ羽根10とは、その重なり量を変えながら露光開口を覆っていく。また、シャッタ羽根11とシャッタ羽根12も同様にその重なり量を変えながら露光開口を覆っていく。そして、四枚のシャッタ羽根9,10,11,12が露光開口を完全に閉鎖した直後に、シャッタ羽根9,10はその張出部9b,10cが軸1pの当接部1p−1に当接することによって停止させられ、シャッタ羽根11,12はその張出部11c,12bが軸1oの当接部1o−1に当接することによって停止させられる。図5は、そのようにして、四枚のシャッタ羽根9,10,11,12の作動が停止した状態を示したものである。
図5の状態において撮像情報が記憶装置に転送されると、第1電磁アクチュエータの固定子コイルに対して、上記の場合とは逆方向への通電が行なわれる。それによって、回転子4は、図5において反時計方向へ回転させられ、駆動ピン4aによって四枚のシャッタ羽根9,10,11,12に開き作動を行わせる。そして、シャッタ羽根9,10及びシャッタ羽根11,12は、その重なり量を変えながら露光開口から退避させられていき、四枚のシャッタ羽根9,10,11,12が露光開口を全開にすると、その直後に、シャッタ羽根10の張出部10bが軸1nの当接部1n−1に当接することによって、シャッタ羽根9とシャッタ羽根10が停止させられ、シャッタ羽根11の張出部11bが軸1qの当接部1q−1に当接することによって、シャッタ羽根11とシャッタ羽根12が停止させられる。そして、第2電磁アクチュエータの固定子コイルに対して上記の場合とは逆方向の電流が供給され、絞り羽根8が露光開口から退避させられ、図4の初期状態になる。
なお、上記の作動説明は、被写体光の光量を減じて撮影を行う場合であったが、被写体光の光量を減じないで撮影を行う場合は、第2電磁アクチュエータの固定子コイルには最初から通電されず、第1電磁アクチュエータによってシャッタ羽根9,10,11,12が回動させられるだけである。
このように構成された本発明に係るカメラ用羽根駆動装置を適用したシャッタ装置として用いたユニットによれば、シャッタ羽根9を取り付けている軸をシャッタ羽根10の開きストッパとし、シャッタ羽根10を取り付けている軸をシャッタ羽根11,12の閉じストッパとし、シャッタ羽根11を取り付けている軸をシャッタ羽根9,10の閉じストッパとし、シャッタ羽根12を取り付けている軸をシャッタ羽根11の開きストッパとしているため、実施例1のユニットと同様に、従来は専用の軸として設けていたストッパ軸が不要になる。そのため、従来のシャッタ装置と比べて、羽根部材の形状及び/又は作動の自由度を大きくすることが可能になり、設計を容易にすることが可能になる。さらに、露光開口を閉鎖するシャッタ羽根のうち、同じ方向へ回転させられる羽根同士を、露光開口の全開時に重ね合わせて収容するようにしているので、実施例1のユニットと比較して、収容スペースを小さくすることができ、省スペース化を図ることが可能になると共に、装置の小型化が可能になる。また、使用する材料も少なくなり、低コスト化も可能になる。
なお、このユニットにおいては、露光開口から退避させられたときに、シャッタ羽根10はその張出部10bを軸1nの当接部1n−1に当接させ、シャッタ羽根11はその張出部11bを軸1qの当接部1q−1に当接させる構成となっているが、このうちのいずれか一方のシャッタ羽根のみを各軸の当接部に当接させるようにしても構わない。
また、このユニットにおいては、露光開口に進入させられたときに、シャッタ羽根9,10はその張出部9b,10cを軸1pの当接部1p−1に当接させ、シャッタ羽根11,12はその張出部11c,12bを軸1oの当接部1o−1に当接させる構成となっている。しかし、このうちの少なくとも一枚のシャッタ羽根を各軸の当接部に当接させるようにしても構わない。
また、本実施例においては、四つの軸1n,1o,1p,1qは、当接部1n−1,1o−1,1p−1,1q−1のみからなっているが、実施例1のユニットのように、円柱形軸部と当接部とからなるように形成し、各シャッタ羽根が円柱形軸部に取り付けられ回動されるようにしても構わない。そして、そのようにした場合には、シャッタ羽根が円柱形軸部から当接部の方へ外れないようにするために、シャッタ地板1及び中間板2の各軸の近傍部位置に肉厚部を設けて、各シャッタ羽根が軸の高さ方向への移動を規制されているようにすることが好ましい。
以下に、図7〜図9を用いて、実施例3に係るカメラ用羽根駆動装置を適用したシャッタ機構と絞り機構とからなるユニットについて詳細に説明する。
なお、図7は、本実施例に係るカメラ用羽根駆動装置をシャッタ機構としたユニットの、二枚のシャッタ羽根が露光用の開口部から退避させられた状態を示す平面図である。図8は、本実施例に係るカメラ用羽根駆動装置をシャッタ機構としたユニットの、二枚のシャッタ羽根が露光用の開口部に進入させられた状態を示す平面図である。図9は、本実施例に係るカメラ用羽根駆動装置をシャッタ機構としたユニットの、図8のC−C線に沿った断面図である。
まず、このユニットの構成を説明する。なお、このユニットは、実施例1のユニットにおけるシャッタ地板1の軸1d,1e及びストッパ軸1f,1gの代わりに軸1r,1sを設け、実施例1のユニットにおけるシャッタ地板1の肉厚部1k,1mの代わりに肉厚部1t,1uを設けると共に中間板2の肉厚部2b,2cの代わりに肉厚部2d,2eを設け、実施例1のユニットにおけるシャッタ羽根6,7の代わりにシャッタ羽根13,14を取り付けるようにしたものであり、その他の構成は実施例1のユニットと全く同じであるため、実施例1のユニットと同じ部材、同じ部位には同じ符号を付け、それらについての説明は省略する。
シャッタ地板1のシャッタ羽根の羽根室側の面には、実施例1のユニットにおけるシャッタ地板1の軸1d,1e及びストッパ軸1f,1gの代わりに、二つの軸1r,1sが形成されている。そして、これらの軸1r,1sは、円柱形軸部1r−1,1s−1と、円柱の一部を地板と平行な方向に窪ませたような形状をしている当接部1r−2,1r−3,1s−2,1s−3とを有する形状に形成されている。なお、図7,図8においては、この当接部1r−2,1r−3,1s−2,1s−3を形成するために窪ませた部分を斜線によるハッチングで示してある。
また、シャッタ地板1のシャッタ羽根の羽根室側の面には、上記の軸1rの周りの一部を囲むようにして肉厚部1tが、上記の軸1sの周りを囲むようにして肉厚部1uが、それぞれ形成されている。そして、肉厚部1tは、肉厚部1uよりも中間板2側に突出するように形成されている。なお、この肉厚部1t,1uは、図7においては図示を省略していて、図8において点によるハッチングで示してある。また、図9においては肉厚部1uだけが示されている。
中間板2は、シャッタ地板1の二つの軸1r,1sと対応する位置にそれらを貫通させるための孔が形成されている。さらに、中間板2のシャッタ羽根の羽根室側の面には、上記のシャッタ地板1の肉厚部1t,1uと略対向するようにして、上記の軸1rの周りを囲むようにして肉厚部2dが、上記の軸1sの周りの一部を囲むようにして肉厚部2eが、それぞれ形成されている。そして、この肉厚部2eは、肉厚部2dよりもシャッタ地板1側に突出するように、すなわち、肉厚部1t,1uとは逆になるように形成されている。なお、この肉厚部2d,2eは、図8においては図示を省略していて、図7において点によるハッチングで示してある。また、図9においては肉厚部2dだけが示されている。
シャッタ地板1と中間板2との間に構成された羽根室には、二枚のシャッタ羽根13,14が配置されていて、シャッタ地板1の軸1r,1sに回転可能に取り付けられている。そして、中間板2の側に配置されているシャッタ羽根13は、長孔13aと張出部13b,13cとが形成されていて、上記の軸1rの円柱形軸部1r−1に回転可能に取り付けられている。また、シャッタ地板1の側に配置されているシャッタ羽根14は、長孔14aと張出部14b,14cとが形成されていて、上記の軸1sの円柱形軸部1s−1に回転可能に取り付けられている。また、該長孔13a,14aの両方に対して回転子4の駆動ピン4aが挿入されており、二枚のシャッタ羽根13,14は回転子4の回転に伴って露光開口に進退させられる。そして、シャッタ羽根13は、シャッタ地板1の肉厚部1tと中間板2の肉厚部2dとの間で作動し、シャッタ羽根14は、シャッタ地板1の肉厚部1uと中間板2の肉厚部2eとの間で作動する。そのため、シャッタ羽根13は、軸1rの高さ方向への移動を規制され、円柱形軸部1r−1から当接部1r−2,1r−3の方へ外れないようにされていて、シャッタ羽根14は、軸1sの高さ方向への移動を規制され、円柱形軸部1s−1から当接部1s−2,1s−3の方へ外れないようにされている。
次に、このユニットの作動を説明する。なお、実施例1のユニットの作動と重複する点については説明を省略し、異なる点のみを説明する。
図7は初期状態を示したものであり、シャッタ羽根13は、その張出部13bを軸1sの当接部1s−2に当接させていて、シャッタ羽根14は、その張出部14bを軸1rの当接部1r−2に当接させている。
撮影に際してレリーズボタンを押すと、被写体光の測定が行われ、被写体光の光量を減じて撮影するか、減じないで撮影するかが決定される。そして、被写体光の光量を減じて撮影する場合には、第2電磁アクチュエータの固定子コイルに正方向の電流が供給され絞り羽根8が露光開口に進入させられてから、二枚のシャッタ羽根13,14が作動させられる。
露光制御回路からの信号によって、図示していない固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出されると、撮影のための露光が開始され、固体撮像素子に新たに電荷が蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光制御回路からの信号によって、第1電磁アクチュエータの固定子コイルに正方向の電流が供給される。それによって、回転子4は時計方向へ回転させられ、その回転子4に設けられた駆動ピン4aを介して、二枚のシャッタ羽根13,14を相反する方向へ回転させて閉じ作動を行わせる。そして、二枚のシャッタ羽根13,14が露光開口を完全に閉鎖した直後に、シャッタ羽根13はその張出部13cが軸1sの当接部1s−3に当接することによって停止させられ、シャッタ羽根14はその張出部14cが軸1rの当接部1r−3に当接することによって停止させられる。図8は、そのようにして、二枚のシャッタ羽根13,14の作動が停止した状態を示したものである。
図8の状態において撮像情報が記憶装置に転送されると、第1電磁アクチュエータの固定子コイルに対して、上記の場合とは逆方向への通電が行なわれる。それによって、回転子4は、図8において反時計方向へ回転させられ、その回転子4に設けられた駆動ピン4aを介して、二枚のシャッタ羽根13,14を相反する方向へ回転させて開き作動を行わせる。そして、二枚のシャッタ羽根13,14が露光開口を全開にした直後に、シャッタ羽根13はその張出部13bが軸1sの当接部1s−2に当接することによって停止させられ、シャッタ羽根14はその張出部14bが軸1rの当接部1r−2に当接することによって停止させられる。他方、第2電磁アクチュエータの固定子コイルにも、上記の場合とは逆方向の通電が行われるため、回転子5は、駆動ピン5aを介して絞り羽根8を時計方向に回転させる。そして、絞り羽根8は、露光開口から完全に退いた後、ストッパ軸1iに当接することによって停止させられる。その後、二つの電磁アクチュエータの固定子コイルに対する通電を断つと、図7の初期状態になる。
なお、上記の作動説明は、被写体光の光量を減じて撮影を行う場合であったが、被写体光の光量を減じないで撮影を行う場合は、第2電磁アクチュエータの固定子コイルには最初から通電されず、第1電磁アクチュエータによってシャッタ羽根13,14が回動させられるだけである。
このように構成された本発明に係るカメラ用羽根駆動装置を適用したシャッタ装置として用いたユニットによれば、シャッタ羽根13を取り付けている軸を、シャッタ羽根14の開きストッパ及び閉じストッパとし、シャッタ羽根14を取り付けている軸を、シャッタ羽根13の開きストッパ及び閉じストッパとしているため、実施例1,2のユニットと同様に、従来は専用の軸として設けていたストッパ軸が不要になっている。また、それに加えて、実施例1,2のユニットよりも設ける軸の数が少ないため、実施例1,2のユニットよりも更に羽根部材の形状及び/又は作動の自由度を大きくすることが可能になり、設計を容易にすることが可能になると共に、装置の小型化が可能になる。また、使用する材料も少なくなり、低コスト化も可能になる。
なお、このユニットにおいては、露光開口から退避させられるときに、シャッタ羽根13はその張出部13bを軸1sの当接部1s−2に当接させ、シャッタ羽根14はその張出部14bを軸1rの当接部1r−2に当接させ、露光開口に進入させられるときに、シャッタ羽根13はその張出部13cを軸1sの当接部1s−3に当接させ、シャッタ羽根14はその張出部14cを軸1rの当接部1r−3に当接させる構成となっている。しかし、露光開口から退避させられるときに、シャッタ羽根13,14の張出部13b,14bのいずれか一方を、対応する方の軸の当接部に当接させるように構成しても構わないし、露光開口に進入させられるときに、シャッタ羽根13,14の張出部13c,14cのいずれか一方を、対応する方の軸の当接部に当接させるように構成しても構わない。
なお、上記の各実施例においては、本発明に係るカメラ用羽根駆動機構を備えたユニットをデジタルカメラに採用した場合として説明したが、上記のように銀塩フィルムカメラに採用することも可能である。その場合には、図2,図5,図8に示したような露光開口を閉鎖した状態が初期状態となり、撮影時にはシャッタ羽根を作動させ露光開口を開くことで図1,図4,図7に示したような露光開口を開いた状態にし、所定の露光時間が経過した後にシャッタ羽根を作動させ図2,図5,図8に示したような露光開口を閉鎖した状態になるようにすればよい。
また、上記の各実施例においては、二枚又は四枚のシャッタ羽根を用いてシャッタ機構が構成されているが、三枚のシャッタ羽根を用いて構成しても構わない。その場合には、露光開口の側方に配置されるシャッタ羽根のうちの一方を、実施例1のユニットのシャッタ羽根のように形成し、他方を実施例2のシャッタ羽根のように分割羽根として形成すればよい。
また、上記の各実施例においては、本発明に係るカメラ用羽根駆動装置をシャッタ機構とし、絞り機構とユニット化した場合を説明したが、本発明はこのような実施態様に限定されるものではなく、絞り機構の代わりにNDフィルタを使用したフィルタ機構とユニット化させてもよいし、シャッタ羽根用駆動装置と絞り機構とフィルタ機構とをユニット化させてもよい。また、絞り機構を、相反する方向へ回転させられる二枚以上の絞り羽根で構成する場合には、その絞り機構に本発明に係るカメラ用羽根駆動装置を適用してもよい。その場合には、絞り機構とフィルタ機構とだけをユニット化するようにしてもよい。更に、当然のことながら、本発明に係るカメラ用羽根駆動装置を適用されたシャッタ機構及び/又は絞り機構は、ユニット化せず単独使用するようにしてもよい。