JP5988463B2 - Mvaによる病原体からの即時保護 - Google Patents

Mvaによる病原体からの即時保護 Download PDF

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Description

本発明は、病原体からの即時保護(immediate protection)を与えるための修飾ワクシニアウイルス・アンカラ(modiified vaccinia virus Ankara)(MVA)の使用に関する。
痘瘡の原因因子である天然痘(Variola)ウイルス(VARV)を含むポックスウイルスは、高病原性の二本鎖(ds)DNAウイルスである。痘瘡は20世紀だけで3億例を超える死亡を引き起こしたと見積られる。従来のワクチン接種プログラムによって天然病原体としてのVARVは根絶されたものの、人畜共通性ポックスウイルス感染(例えばサル痘)、偶発的放出によるVARVの再出現、またはポックスウイルスによるバイオテロ攻撃の可能性という筋書きを考えると、その感染および/または保護の機序に関する知識を強化することは、依然として不可欠であり得る。
オルトポックスウイルス(Orthopoxvirus)属には、遺伝的類似性および免疫学的交差反応性に基づいて、ヒト痘瘡の原因因子VARV、マウス痘を引き起こすエクトロメリア(Ectromelia)ウイルス(ECTV)、牛痘ウイルス(CPXV)、サル痘ウイルス(MPXV)、ラクダ痘ウイルス(CMPV)、およびワクシニアウイルス(VACV)など、いくつかの類縁ウイルスが含まれる。これらのうち、ECTV、MPXV、およびVACVは、ヒト痘瘡のモデル感染として、動物で使用される。いくつかのVACA株がマウスで使用され、誘導される免疫応答およびポックスウイルスが使用する免疫抑制機序に関する大量の証拠が、VACVを使って解明されている。しかし、VACVはマウスの天然病原体ではなく、VACVウエスタンリザーブ(Western Reserve;WR)株のようなマウス適応株が一般に使用されるにもかかわらず、マウスを致死的に感染させるには、高用量が必要である(非特許文献1)。サルにおけるMPXVには、サルの方が進化的にはるかにヒトに近いという利点がある。しかし、マウスにおけるVACVモデルの場合と同様に、サルを致死的に感染させるには、非生理学的な高いウイルス用量が必要である。したがって、どちらの動物モデルも、ヒトにおけるVARV感染症の末期をより大きく反映しているとみなされる(非特許文献2;非特許文献3)。オルトポックスウイルス感染モデルのなかで、マウスのECTV感染は際立っている。それは、その自然宿主に感染する種特異的ウイルスであり、低いウイルス用量の接種後に、死をもたらす転帰、ヒトのVARV感染でも記載された特徴を引き起こし得るからである(非特許文献2;非特許文献4)。これらの理由から、このモデルは、VARVによるヒト感染に最も近いモデルである。
病原体は、パターン認識受容体(PRR)を介して免疫系によって検出される。このパターン認識受容体にはToll様受容体(TLR)のファミリーが含まれる。TLR7ならびにTLR8および9は、それぞれ核酸RNAおよびDNAを認識する(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)。ヘルペスウイルスやアデノウイルスのような二本鎖DNA(dsDNA)ウイルスは、TLR9依存的経路によって検出され得る(非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)。しかし、今までのウイルス感染研究において、TLR9非存在下での感受性の増加が示されないか、わずかな増加しか示されなかった理由の説明におそらくなるであろう、強力な代替認識経路が存在する(非特許文献11;非特許文献10;非特許文献13;非特許文献14;非特許文献12)。
多くのTLRが細胞の外膜に配置されて、細菌細胞壁成分のような危険信号について細胞外間隙を監視しているのに対して、TLR3、7、8および9からなる一群のTLRはエンドソームに付随し、エンドソーム内腔を核酸について監視している(非特許文献15)。TLR3、7および8がRNAを認識するのに対して、TLR9はDNAを認識する(非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19)。
TLR9の発現は種内で異なる。ヒトの場合、B細胞および形質細胞様DC(pDC)はTLR9を発現させ、TLR9刺激に応答するが、通常型DC(cDC)はそうでないのに対し、マウスにおけるTLR9発現はそれほど限定されていない。B細胞およびpDCの他に、マウスcDCと、さらにはマクロファージも、TLR9を発現させ、TLR9ライゲーションに応答することが知られている(非特許文献20)。当初、TLR9の天然リガンドは細菌ゲノムDNAであると定義されたが、種特異的モチーフが隣接した非メチル化CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチド(多くの場合、ホスホロチオエートで安定化されたもの)(CpG−ODN)がTLR9の人工的リガンドとして確立された(非特許文献18;非特許文献22)。
この間、CpG含有天然および人工リガンドのリストは、化学組成が異なり、IFN−I誘導能を含む生物学的作用も著しく異なる、細菌プラスミドDNAおよび数タイプのCpG−ODNに拡大されている(非特許文献23;非特許文献24)。取込みが強化される条件下では、非CpG含有または完全メチル化DNAならびに脊椎動物DNAも、TLR9アゴニストとして作用することが示されている(非特許文献25;非特許文献26)。
ポックスウイルスは複数の免疫抑制戦略を進化させてきた。これは、ポックスウイルスゲノムが免疫抑制機能を持つ分子を数多くコードしているという事実によって立証される。これらには、可溶性サイトカインおよびケモカイン受容体、ならびに細胞内シグナリングカスケードを妨害する数多くの分子が含まれる(非特許文献27)。最近、ポックスウイルスによって発現される分子が、TLRシグナリングカスケードのメンバーをターゲットとすることが示され、ポックスウイルスに関するTLR依存的認識経路の役割が示唆された(非特許文献28)。実際、ワクシニアウイルス(VACV)の認識におけるTLR2の役割が提唱されている(非特許文献29)。
修飾ワクシニア・アンカラ(MVA)ウイルスは、ポックスウイルス科のオルトポックスウイルス属の一メンバーであるワクシニアウイルスと近縁である。MVAは、ワクシニアウイルスのアンカラ株(CVA)をニワトリ胚線維芽細胞で516代にわたって連続継代することによって作出された(概要については非特許文献30を参照されたい)。これらの長期間にわたる継代の結果として、得られたMVAウイルスではそのゲノム配列のうち約31キロ塩基が欠失しており、宿主細胞は鳥類細胞に強く制限されると記載された(非特許文献31)。得られたMVAは著しく非病原性であることが、さまざまな動物モデルで示されている(非特許文献32)。また、このMVA株は、ヒト痘瘡疾患に対する免疫を与えるためのワクチンとして、臨床試験において試験された(非特許文献33、非特許文献34)。これらの研究には高リスク患者を含めて120,000人を超える人々が関与し、これらの研究からMVAは、ワクシニアに基づくワクチンと比較して、良好な免疫原性を維持しつつ、低下したビルレンスまたは感染性を持つことが判明した。その後、数十年の間に、MVAは、それを組換え遺伝子発現用のウイルスベクターとして使用するために、そしてまた組換えワクチンとして使用するために、工学的に改変されてきた(非特許文献35)。
これに関して、MVAがヒトおよび哺乳動物では著しく弱毒化されていて非病原性であることは、Mayrらが1970年代に証明したにもかかわらず、哺乳動物細胞株およびヒト細胞株では残存複製(residual replication)が起こり得るので、これらの細胞ではMVAが完全には弱毒化されていないことを、最近報告されたいくつかの観察事実(非特許文献36;非特許文献37;特許文献1;非特許文献38)が示していることは、極めて思いがけないことである。これらの刊行物で報告された結果は、さまざまなMVA株を使って得られたものであると考えられる。使用されたウイルスは、その性質、特にさまざまな細胞株におけるそれらの成長挙動が、本質的に異なるからである。
成長挙動は、いくつかあるウイルス弱毒化指標の一つと認識されている。一般にウイルス株は、宿主細胞内での増殖的複製に関して、その能力を失うか、低下した能力しか持たない場合に、弱毒化されたとみなされる。MVAがヒト細胞および哺乳動物細胞内で完全には複製不能でないという上述の観察事実は、ヒトワクチンとしての、または組換えワクチン用ベクターとしての、MVAの絶対的安全性に疑問を投げかける。
特にワクチンならびに組換えワクチンにとって、そのワクチンベクターウイルスの効力と安全性のバランスは、極めて重要である。
特許文献2に記載されているように、安全性が強化された新規MVA株が開発されている。これらの株は、以下に挙げる有利な性質の少なくとも一つを持つことを特徴とする:(i)ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)ではインビトロで増殖的複製能を持つが、ヒト細胞株では、ヒトケラチノサイト細胞株HaCaT、ヒト胎児腎臓細胞株293、ヒト骨骨肉腫細胞株143B、およびヒト子宮頚部腺癌細胞株HeLaにおいてそうであるように、増殖的複製能を持たない;
(ii)成熟BおよびT細胞を産生する能力を持たず、したがって重度の免疫欠陥を持ち、複製ウイルスに対する感受性が高いマウスモデルにおいて、複製することができない;および
(iii)DNAプライム/ワクシニアウイルスブーストレジメンと比較して、少なくとも同じレベルの特異的免疫応答を、ワクシニアウイルスプライム/ワクシニアウイルスブーストレジメンで誘導する。
開発された株の一つが、European Collection of Animal Cell Cultures(ECACC)に受託番号V00083008として寄託されている。この株は特許文献2の明細書では一貫して「MVA−BN」と呼ばれている。
「増殖的複製能を持たない」または「複製不能」という用語は、そのウイルスが、細胞株293(ECACC番号85120602)、143B(ECACC番号91112502)、HeLa(ATCC番号CCL−2)およびHaCat(Boukampら,J.Cell Biol.106(3):761−71(1988))などのヒト細胞株において、いくつかの具体的MVA株に関して特許文献2の実施例1で概説されているような条件下で、1未満の増幅比を示すことを意味する。
特許文献2によれば、「インビボで複製することができない」とは、ヒトおよび特許文献2に記載のマウスモデルにおいて複製しないウイルスを指す。
MVAを送達ベクターとして使用するプライム/ブーストレジメンが弱い免疫応答しか誘導せず、DNAプライム/MVAブーストレジメンより劣っていることを示唆する報告は数多くなされている(非特許文献39)。これらの研究では、どの研究においても、特許文献2に従って開発されたワクシニアウイルスとは異なるMVA株が使用されている。MVAをプライム投与およびブースト投与に使用した場合に得られる弱い免疫応答の説明として、プライム投与中にMVAに対して生成された抗体が、2回目の免疫化で与えられるMVAを中和して、免疫応答の効果的なブーストを妨げるという仮説が立てられている。これに対し、DNAプライム/MVAブーストレジメンは、高アビディティ応答を生成させるのに優れていると報告されている。なぜならこのレジメンは、免疫応答を効果的にプライムするというDNAの能力をMVAの性質と組み合わせて、MVAに対する既存の免疫性の非存在下で、この応答をブーストするからである。MVAおよび/またはワクシニアに対する既存の免疫性が免疫応答のブースティングを妨げるのであれば、ワクチンまたは治療薬としてのMVAの使用が、(痘瘡に対するワクチン接種を受けたことがある個体では特に)限定された効力を持つことになるのは、明らかである。しかし、特許文献2によるワクシニアウイルス株、ならびに異種遺伝子を保因する対応組換えウイルスを使用すれば、ネイティブな動物でも、ポックスウイルスに対して既存の免疫性を持つ動物でも、まずは免疫応答を効率よくプライムし、次に免疫応答を効率よくブーストすることができる。したがって、特許文献2に記載の開発された株は、DNAプライム/ワクシニアウイルスブーストレジメンと比較して、少なくとも実質的に同じレベルの免疫性を、ワクシニアウイルスプライム/ワクシニアウイルスブーストレジメンで誘導することができる。
ワクシニアウイルスは、特許文献2に記載されている2つのアッセイの一方、または両方で測定されるCTL応答が、ワクシニアウイルスプライム/ワクシニアウイルスブーストレジメンにおいて、DNAプライム/ワクシニアウイルスブーストレジメンと比較して、少なくとも実質的に同じである場合に、DNAプライム/ワクシニアウイルスブーストレジメンと比較して、少なくとも実質的に同じレベルの免疫性をワクシニアウイルスプライム/ワクシニアウイルスブーストレジメンで誘導するとみなされる。
特許文献2に従って開発されたワクシニアウイルスの成長挙動、特にMVA−BN(登録商標)の成長挙動は、これらの株が、ヒト細胞株における弱毒化およびインビボ複製の不在に関して、今までに特徴づけられた他のどのMVA分離株よりも、はるかに優れていることを示す。したがってこれらの株は、より安全な製品、例えばワクチンまたは医薬の開発にとって、理想的な候補である。
免疫応答は、外来物質または微生物が生体に侵入した時に、免疫系によって立ち上げられる。定義上、免疫応答は特異的反応と非特異的反応に分けられるが、両者は密接にクロスリンクしている。非特異的免疫応答は、広範囲にわたる多様な外来物質および感染性因子に対する即時防御である。特異的免疫応答は、生物がある物質に初めて攻撃された場合に、誘導期の後に立ち上げられる防御である。特異的免疫応答は効率が高く、ある特定感染から回復した個体がその特定感染から保護されるという事実の原因である。したがって、同じ感染性因子または極めて類似する感染性因子による2回目の感染は、この因子に対する「既存の免疫性」が既に存在するので、はるかに軽い症状を引き起こすか、または全く症状を引き起こさない。そのような免疫性および免疫記憶は長期間持続し、場合によっては生涯持続することさえある。したがってワクチン接種によって免疫記憶の誘導が起こり得る。
「免疫系」とは、外来物質および微生物に対する生物の防御に関与する複雑な器官を意味する。免疫系は、いくつかの細胞タイプ(例えばリンパ球および白血球に由来する他の細胞など)を含む細胞部分と、小さなペプチドおよび補体因子を含む液性部分とを含む。
従来のワクチン接種戦略は、適応免疫応答(抗体、CTL)を誘導することにより、効果的で長期間持続する保護を誘導することができる。しかし実質的な保護は、数日後〜数ヶ月後に、最適にはブーストレジメンを使用して、初めて達成され得るのであって、その間、その個体は感染に対して感受性のままである。
MVAは、ヒトでは非複製ウイルスであり、さまざまな度合の免疫偏向を持つ人々(HIV、アレルギー、アトピー性皮膚炎、一定の薬物処置)に、全身適用経路でさえ投与することができる。これらの免疫偏向の例では、専門の抗ウイルス免疫細胞集団(pDC)が数的に減少しているか、その機能的性質に変化を来していて、それがウイルス感染のリスクを増加させ得る。
致命的ポックスウイルスからの保護の現状は、ワクチン接種によるものである。これらのアプローチでは、病原性ポックスウイルスへの潜在的暴露の前に、個体を、弱毒化された(病原性の低い)ポックスウイルスに暴露する。ワクチン接種は、キラーT細胞(CTL)および抗体のような適応免疫応答ならびに関連ワクチン接種ウイルスに対する記憶を誘導する。これは、病原性ウイルスに対するいくらかの反応性をもたらし、それが、反復暴露時の保護および記憶応答の迅速な復活につながる。しかし、適応免疫応答は発達するのに時間を要し、最適になるのは、ワクチン接種ウイルスの反復投与で免疫応答をブーストした後である。
最近、ワクシニアウイルス・ウエスタンリザーブ株(VV−WR)を使った暴露の数日(遅くとも2日)前に、ワクチン接種ウイルスとしてMVAを使用することにより、ある程度の保護を達成できると報告された(特許文献3、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。類似する結果が別のグループによって公表されており、そこでは、暴露後処置では動物を保護できなかったことも示された(非特許文献40)。保護レベルは、VV−WRへの暴露の2日前にワクチン接種した場合で1×LD50、VV−WRへの暴露の3日前にワクチン接種した場合で12.5×LD50だった(同文献)。
非特許文献41は、抗ウイルス処置および痘瘡ワクチン接種が致死的サル痘ウイルス感染に及ぼす効果を比較した。彼らは、現在推奨されている痘瘡ワクチン(Elstree−RIVM)の標準的ヒト用量を使って、サルを、サル痘ウイルス感染の24時間後にワクチン接種した場合に、死亡率の有意な低下は観察されなかったと報告した。
米国特許第5,185,146号 国際公開第02/42480号 国際公開第2006/089690号
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したがって当技術分野では、痘瘡などの病原体からの即時保護のための試薬および方法が求められている。
本発明は、動物において感染性因子に対する免疫応答を誘導するための方法であって、その感染性因子による感染の36時間前からその感染性因子による感染の72時間後までの間に、その動物に、ポックスウイルスを含む免疫原性組成物を投与することを含む方法を包含する。
さらにまた本発明は、動物において感染性因子に対する免疫応答を誘導するための、ポックスウイルスを含む免疫原性組成物の調製を目的とする、前記ポックスウイルスの使用であって、前記免疫原性組成物がその感染性因子による感染の36時間前からその感染性因子による感染の72時間後までの間に動物に投与される前記使用を包含する。
本発明は、動物において感染性因子に対する免疫応答を誘導するためのポックスウイルスも包含する。さらにまた本発明は、動物において感染性因子に対する免疫応答を誘導するための前記ポックスウイルスを含む免疫原性組成物を包含する。好ましい実施形態では、前記ポックスウイルスまたは前記ポックスウイルスを含む免疫原性組成物が、感染性因子による感染の36時間前から感染性因子による感染の72時間後までの間に動物に投与されるものである。
好ましい実施形態では、ポックスウイルスが、感染性因子による感染の36時間前から感染性因子による感染の48時間後までの間に投与される。
好ましい実施形態では、ポックスウイルスが動物中で複製不能である。
好ましい実施形態では、ポックスウイルスが修飾ワクシニアウイルス・アンカラ(MVA)である。
好ましい実施形態では、動物がヒトである。
好ましい実施形態では、感染性因子が複製可能なポックスウイルスである。
ある実施形態では、MVAが、10〜5×10 TCID50の用量で投与される。好ましい実施形態では、MVAが静脈内、鼻腔内、筋肉内、または皮下に投与される。
ある実施形態では、MVAがMVA−BN(登録商標)である。MVAは組換えMVAであることができ、少なくとも一つの抗原エピトープをコードする少なくとも一つの異種核酸配列を含むことができる。抗原エピトープは感染性因子の抗原エピトープであることができる。感染性因子は、ウイルス、真菌、病原性単細胞真核および原核生物、ならびに寄生生物から選択することができる。好ましい実施形態では、ウイルスが、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、パラミクソウイルス、肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、および出血熱を引き起こすウイルスから選択される。もう一つの好ましい実施形態では、感染性因子が炭疽菌(bacillus anthracis)である。
ある実施形態では、免疫原性組成物が、感染性因子による感染の24時間前から感染性因子による感染の24時間後までの間に投与される。免疫原性組成物は、感染性因子による感染と同時に投与することもできる。MVAを含む免疫原性組成物の動物への投与は、感染性因子による感染の0〜24時間前または感染性因子による感染の0〜48時間後であることができる。
本発明は、ヒトを含む動物において感染性因子に対する免疫応答を誘導するためのキットであって、活性物質としてポックスウイルスを含む免疫原性組成物を含み、前記ポックスウイルスがヒトを含む前記動物中で複製不能であるキットも包含する。
好ましくは、前記キットは、MVAを含む免疫原性組成物と、感染性因子への暴露の0時間前〜36時間前の一時点、または感染性因子への暴露の0時間後〜72時間後の一時点で、免疫原性組成物を送達するようにという取扱説明とを含む。ある実施形態では、MVAが、用量10〜5×10 TCID50のMVA−BN(登録商標)である。
ある実施形態では、感染性因子が痘瘡である。もう一つの実施形態では、感染性因子が炭疽菌である。感染性因子は、別個のバイアルに入れて、キット内に含めてもよい。
好ましい実施形態において、本発明は、MVAを含む免疫原性組成物と、痘瘡への暴露後できるだけ早くその免疫原性組成物を送達するようにという取扱説明とを含むキットを包含する。
上記の概要および以下の詳細な説明はどちらも、単に本発明を例示し、説明するものであって、特許請求される発明を限定するものではない。
本発明は、図面を参照することで、より完全に理解される。
図1aおよびbは、活性ポックスウイルスまたは不活化ポックスウイルスに応答して起こる樹状細胞(DC)成熟の解析を表す。表示のとおり活性ポックスウイルス(左側パネル)もしくは不活性ポックスウイルス(右側パネル)、a)CVA、ECTV、CPXV、b)MVA、SFV、CNPVと共に(陰影付きのヒストグラム)、または刺激なし(中空のヒストグラム)で、インキュベートした後の、FL−DCでのCD40またはCD69の発現を示すフローサイトメトリーヒストグラム。少なくとも3回(CVA、ECTV、MVA)または2回(CPXV、SFV、CNPV)の実験のうち、代表的な1回の実験を示す。 図2a〜eは、インビトロでのポックスウイルス感染に対するTLR9欠損型DCまたは野生型DCの応答を表す。a)表示のとおりCVA、ECTVもしくはMVAと共に(陰影付きのヒストグラム)、または刺激なし(中空のヒストグラム)で、インキュベートした後の、野生型マウス(左側パネル)またはTLR9欠損マウス(右側パネル)のFL−DCでのCD40またはCD69の発現を示すフローサイトメトリーヒストグラム。野生型活性化に関する類似のヒストグラムは図1の一部である。TLR9欠損マウス(中空のカラム)または野生型マウス(塗りつぶしたカラム)のb)FL−DCまたはc)GM−DCを、活性MVA(左側パネル)またはUV不活化MVA(右側パネル)で刺激し、上清をIFN−αおよびIL−6 についてELISAで分析した。d)表示のとおりTLR9欠損マウスまたは野生型マウスの選別されたFL−pDCおよびcDCを、MVA(塗りつぶしたカラム)またはECTV(中空のカラム)で刺激し、上清をIFN−αおよびIL−6についてELISAで分析した。e)全骨髄細胞を活性MVA(斜線付きのカラム)、UV不活化MVA(水平線付きのカラム)、またはCpG−2216(黒いカラム)で刺激し、上清をIFN−αについてELISAで分析した。少なくとも2回の実験のうちの代表的な実験を示す。 図3aおよびbは、ECTV感染に対する野生型マウスおよびTLR9欠損マウスの生存を表す。野生型マウス(a)およびTLR9欠損マウス(b)を、表示のとおりさまざまな用量のECTV(マウス1匹あたりのTCID50数)に、i.n.感染させ、少なくとも4週間は生存を監視した。実験は表示した数のマウスで行われ、データは、野生型マウスの場合は各ウイルス用量について少なくとも3回の独立した実験を(a)、またTLR9−KOマウスの場合は1E+02の用量については7回の実験(b)、他の用量については1回の実験(b)を表す。野生型マウス(a)における1E+04の用量およびTLR9−KOマウス(b)における1E+02の用量に関するデータは、他の実験の死亡対照マウスを含む。 図4は、致死用量のECTVと同時に与えられた場合に、MVAが野生型マウスを保護することを表す。野生型マウスを表示のとおり致死用量のECTVにi.n.感染させ、それと同時に1E+08 TCID50のMVAをi.n.接種するか(黒い記号)、または接種せず(灰色の四角)、4週間にわたって生存を監視した。実験は表示した数のマウスを使って行われ、データは2回の個別の実験の結果を表す。 図5は、致死用量のECTVと同時に与えられた場合に、MVAがTLR9欠損マウスを保護することを表す。TLR9欠損マウスを表示のとおり致死用量のECTVにi.n.感染させ、それと同時に1E+08 TCID50のMVAをi.n.接種するか(黒い記号)、または接種せず(灰色の四角)、4週間にわたって生存を監視した。実験は表示した数のマウスを使って行われた。 図6aおよびbは、皮下適用された場合に、MVAがTLR9欠損マウスおよび野生型マウスを致死的ECTVチャレンジから保護することを表す。a)TLR9欠損マウスを1E+02 TCID50のECTVにi.n.感染させ、それと同時に1E+08 TCID50のMVAをs.c.接種するか(黒い四角)、または接種しなかった(灰色の四角)。b)野生型マウスを1E+04 TCID50のECTVにi.n.感染させ、それと同時に、1E+08 TCID50のMVA(黒い四角)または対応する量の1E+08 TCID50のUV不活化CVA(黒い三角)をs.c.接種した。4週間にわたって生存を監視した。実験は表示した数のマウスと使って行われ、データは、MVAを投与した野生型マウスについては2回の個別の実験の結果を、そしてUV不活化CVAを投与した野生型マウスまたはMVAを投与したTLR9欠損マウスについては1回の実験の結果を表す。 図7は、致死用量のECTVと同時に与えられた場合に、MVAがIFN−I−R欠損マウスを部分的に保護することを表す。IFN−I−R欠損マウスを、表示のとおり致死用量のECTVにi.n.感染させ、それと同時に1E+08 TCID50のMVAをi.n.接種するか(黒い記号)、または接種せず(灰色の記号)、4週間にわたって生存を監視した。実験は表示した数のマウスを使って行われ、データは、(1E+02および1E+03)のチャレンジ用量については少なくとも2回の独立した実験の結果を、また1E+04および1E+05のチャレンジ用量については1回の実験の結果を表す。 図8は、たとえMVAの存在下であっても、ECTV感染に対する長期生存は、適応免疫応答に依存することを表す。RAG−1欠損マウスを、表示した用量のECTVにi.n.感染させ、それと同時に1E+08 TCID50のMVAをi.n.接種するか(黒い記号)、または接種せず(灰色の記号)、4週間にわたって生存を監視した。実験は表示した数のマウスを使って行った。 図9aおよびbは、致死用量のECTVによる感染後に適用された場合に、MVAがTLR9欠損マウスを治療的に保護することを表す。TLR9欠損マウスを1E+02 TCID50 ECTVにi.n.感染させた。24時間(a)または48時間もしくは72時間(b)という表示の時間後に、ECTV感染マウスに1E+08 TCID50のMVAをi.n.接種するか(黒い記号)、接種せず(灰色の四角)、4週間にわたって生存を監視した。実験は表示した数のマウスを使って行われ、データは、3回の個別の実験(a)または1回の実験(b)の結果を集積したものを表す。a)の9匹の対照マウスには、b)の3匹の対照マウスが含まれることに注意されたい。
以下に、本発明の実施形態(代表的実施形態)について詳しく言及することとし、その例を添付の図面および実施例の項に例示する。
種特異的な高病原性マウスポックスウイルス・エクトロメリアを鼻腔内に適用する動物モデルを使用した。ヒト種に高度に特異的な天然痘のように、エクトロメリアはマウスに対して高度に特異的である。エクトロメリアと天然痘は、どちらも免疫抑制戦略の大きなパネルを使用し、これらは、他の病原性ポックスウイルス、例えば「ワクシニアウイルス・ウエスタンリザーブ」と比較すると、MVAから進化的により遠く離れている。さらにまた、どちらのウイルスも、それぞれの特異的宿主において高病原性(少ないウイルス数で感染を確立し、感染した個体の多くで死を引き起こすことができる)である。重要なことに、天然痘とエクトロメリアはどちらも、自然の感染方法として、呼吸経路によってその宿主を感染させることができる。これらの理由から、マウスにおけるエクトロメリア感染は、天然痘によるヒトの感染のよいモデル系である。
高度に致死的な用量のマウスポックスウイルスと一緒にMVAを同時投与すると、マウスはその致命的暴露から即時的に保護されることが、動物での実験によって証明される。免疫適格マウスは、致死用量の少なくとも47倍のエクトロメリアに暴露された場合に、これらの条件下で感染を乗り切った。
また、免疫欠陥マウスをエクトロメリア感染モデルに使用した。あるモデルでは、マウスが抗ウイルス受容体TLR9を欠く(TLR9−KO)。TLR9−KOマウスのpDCは、DNAおよびDNAウイルスに対して、通常の抗ウイルス的方法では応答することができない。これらのマウスは、エクトロメリア感染に対する感受性が激しく増加していることがわかった(免疫適格マウスより感受性が100倍以上高い)。
単離された細胞を使ったインビトロでの研究により、MVAは、この専門の抗ウイルスpDCには、それほど依存しないことがわかった。本明細書に記載のデータにより、MVAは抗ウイルス機構の誘導をもたらす追加の免疫刺激経路を使用できることが示された。そこで、MVAがインビトロで見出された代替経路によってTLR9−KOマウスを保護することもできるかどうかを解析した。実際、高度に致命的な用量のエクトロメリアと同時にMVAを適用したところ、TLR9−KOマウスは、致死用量の少なくとも500倍のエクトロメリアから即時的に保護された。
I型インターフェロン(IFN−I)に対する応答性を欠くもう一つの免疫欠陥マウスモデルを試験した。これらのサイトカインはウイルス感染一般を乗り切るには不可欠であると考えられる。意外なことに、致命的用量のエクトロメリアによる感染時にMVAを適用すると、ある程度の保護が見られた。このように本発明は、正常個体ならびに免疫欠陥個体を、本来なら致命的である病原体から保護する。
以前の研究とは対照的に、エクトロメリアで得られた本明細書に記載のデータは、(病原性ポックスウイルスと同時に、または病原性ポックスウイルス後に、保護MVAを与えることで)即時保護が達成され得ることを示している。その保護レベルには、はるかに速く到達する(同時/事後と遅くとも2日前)だけでなく、その保護レベルは、はるかに効果的でもある。免疫適格マウスでは、保護係数(protection factor)が47×LD50を超える。さらにまた、免疫欠陥マウスにおける保護が500×LD50の係数を超えることも証明する。マウスにおけるエクトロメリア感染は、ヒトにおける天然痘感染との相関に現在利用することができる最善の感染モデルである。
ポックスウイルスがTLR9依存的認識経路およびTLR9非依存的認識経路によって認識されることも、ここに示す。ここでは、エクトロメリアウイルスのような病原性ポックスウイルスは、TLR9非依存的経路による認識を効果的に抑制するが、それでもなお、TLR9によってある程度認識されることを証明する。
形質細胞様DC(pDC)が、TLR9(病原性DNAを認識する)を介して大量の抗ウイルス性および免疫調節性サイトカインI型インターフェロン(IFN−I)を産生する唯一の細胞であるのに対して、他の細胞は、TLR9に依存しない異なる経路で、低レベルのIFN−Iを産生することができる。
ここでは、エクトロメリアウイルスのような一部の病原性ポックスウイルスが、線維芽細胞および通常型cDCのTLR9非依存的IFN−I産生を完全に消滅させるのに対して、pDCのTLR9駆動型IFN−I産生は低下するだけで、阻止されるわけではないことを記載する。マウス特異的ポックスウイルス・エクトロメリアを使ったインビボ感染研究により、TLR9を欠くマウスでは感受性が100倍以上増加していることが明らかになった。ウイルス感染と戦うために不可欠であることが知られているIFN−Iに応答することができないマウスでは、同様の感受性および致死動態(death kinetic)が見出されなかった。病原性ウイルスがTLR9非依存的認識を効果的に阻害するような条件下では、TLR9依存的ウイルス認識およびIFN−I産生の重要性が本質的になると結論づけられる。したがってここでは、TLR9が、ポックスウイルスに対する防御にとって重要な、そしてインビボで大いに意味のある、PRRであることを証明する。
哺乳動物中で複製する能力を失っている高度に弱毒化されたポックスウイルスMVA−BN(登録商標)は、ロバストな適応免疫応答の強力な誘導物質であり、ワクチン接種された個体は、種特異的ポックスウイルス(例えばマウス痘、サル痘、ワクシニア)から保護される。しかし、適応免疫応答の効果的な誘導は数日〜数週間を要し、その間、個体はこれらの病原体への暴露から保護されていない状態のままである。MVA−BN(登録商標)が先天免疫保護サイトカイン(例えばIFN−I)の産生を、重要なことにTLR9依存的経路とTLR9非依存的経路の両方によって誘導することを、ここに示す。MVAによるこの先天免疫保護サイトカインの産生は、多数の病原体から保護するための戦略に使用することができる非特異的免疫応答である。
MVA−BN(登録商標)を高病原性マウスポックスウイルス・エクトロメリアと同時投与したところ、免疫適格マウスは致死用量の少なくとも47倍にあたる用量のエクトロメリアから保護された。TLR9の非存在下で、MVAは、致死用量の少なくとも500倍にあたる用量のエクトロメリアに対して、即時保護を誘導した。IFN−Iに対する応答性を欠くマウスでさえ、MVA投与によって保護され得ることが、実験により、さらに証明される。MVAは病原性ポックスウイルスと同時に適用されるか病原性ポックスウイルス後に適用された場合に保護するので、本明細書に記載する結果は、ある程度の生存利益(1×LD50)を得るにはMVAが病原性ウイルスへの暴露の遅くとも2日前に適用される必要があることを示す以前のデータ(国際公開第2006/089690号およびStaibら,2006,J.Gen.Virol.87:2917−2921(2006))よりも、はるかに速く、しかもはるかに顕著な(>500×LD50)即時保護を示す。
致死的エクトロメリア感染と前後して行われるMVAの投与は、免疫適格マウスおよびTLR9欠損マウスにおいて、死からの確実な即時保護につながった。この即時保護は、IFN−I受容体欠損マウスおよびRag−1欠損マウスでそれぞれ示されるように、機能的なIFN−I経路には部分的に依存するに過ぎなかったが、適応免疫応答には完全に依存した。重要なことに、MVAは、本来なら致死的であるエクトロメリアウイルス感染の丸2日後に投与された場合にも、TLR9欠損マウスを救った。このようにMVAは、免疫適格動物ならびに免疫欠陥動物において、致死的ポックスウイルス感染からの確実な即時保護、そしてさらには暴露後保護を誘導した。
MVAは即時的に保護するだけでなく、誘導される保護は長期間持続するものでもある。MVAの1回適用だけで処置されたTLR9を欠くマウス(LD50=19)は、9週間後に高致死用量のエクトロメリア(>500×LD50)をチャレンジした場合に、保護された。
MVA−BN(登録商標)は強い適応免疫応答(例えば高い中和抗体価)を誘導するだけでなく、致死的ポックスウイルスによるチャレンジからの著しく有効で、しかも重要なことに、即時的な保護につながるIFN−Iを産生する樹状細胞を含む細胞による、強い先天免疫応答も誘導する。このようにMVA−BN(登録商標)は先天免疫応答と適応免疫応答を橋渡しし、それが、致死的ポックスウイルスチャレンジに対する即時的で長期間持続する保護をもたらす。この保護は、他の病原体にも、その病原体の抗原エピトープを発現させる組換えMVAを使用することによって拡大することができる。
これらの研究において、MVAは、感染と前後して与えられた場合にマウスを致死的ECTV感染から保護しただけでなく、丸2日後および3日後の適用でも、マウスを致死的ECTV感染から部分的に保護した。オルトポックスウイルスナイーブ個体における暴露後ワクチン接種に関する科学的証拠は今までなかった(Mortimer,P.P.2003「Can postexposure vaccination against smallpox succeed?」Clin.Infect.Dis.36:622−629)。感染後ワクチン接種の潜在的成功に関する公的健康サイト(例えばWHO)の言説は、おそらく痘瘡に対するワクチン接種を過去に受けたことがある個体に関してであり、それゆえに、おそらく既存の適応記憶応答を迅速に強化するブーストワクチン接種に言及したものである。しかし、天然病原体としての天然痘の根絶に1980年代に成功した後、広範なワクチン接種は中止され、現在、世界人口の大半は一度もワクチン接種を受けたことがない。そのうえ、以前の研究は、MVAではない完全に複製可能なポックスウイルスによるワクチン接種を受けた患者で行われた。
マウスでVACV−WRを使用する動物モデルまたはサルでMPXVを使用する動物モデルは治療的保護を示していない(Stittelaarら,J.Virol.79:7845−7851(2005);Staibら,J.Gen.Virol.87:2917−2921(2006))。
記載されたモデルと今回の知見との相違は、いくつかの理由によって説明することができるだろう。マウスにおけるVACV−WRおよびサルにおけるMPXVは、各モデル動物に致死的感染を起こすために適用する必要がある非生理的に高い用量ゆえに、痘瘡感染の末期だけを反映したモデルであるとみなされる。しかし、マウスのECTV致死的感染は、呼吸経路によって低いウイルス用量で誘導することができ、自然の痘瘡感染の始まりに、より似ている。さらにまた、VACV−WRはマウスにおいて、マウスにおけるECTV感染やヒトにおけるVARV感染に特有の特徴ではない高い神経毒性、体重および体温の激減などといった病変を誘発する。この理由および他の考え得る理由から、感染動物の極めて迅速な死が起こるが、これもまた、ECTVモデルや自然痘瘡感染時には見られないことである。
サルにおけるMPXVチャレンジの場合、治療的ワクチン接種はVACV−Elstreeを使って行われた。VACV−Elstreeが阻害的であるかどうかを調べたところ、他のVACV株でも見られるように、インビトロでのDC成熟およびサイトカイン産生が阻害されることがわかった。治療的保護には、適応免疫応答が発達するための時間を橋渡しするために、抗ウイルス性サイトカインを含む先天免疫機構の確実な誘導がおそらく必要であることを考えると、MVAのような非阻害的オルトポックスウイルスの治療的適用は、MPXVに感染したサルでも有益である場合がある。実際、Staibとその共同研究者(2006)は、VACV−WRによるチャレンジの遅くとも2日前に適用した場合、マウスは、VACV−ElstreeよりもMVAによって、より良く保護されることを示している(Staibら,J.Gen.Virol.87:2917−2921(2006))。このように、先天免疫機構の誘導が重要な役割を果たす病原性オルトポックスウイルス感染モデルでは、MVAには、VACV−Elstreeと比較して、保護上の利点があるようだ。
本発明は、正常個体ならびに免疫欠陥個体において、種特異的ポックスウイルスによる極めて高用量の暴露に対して、ロバストで、そして最も重要なことには、即時的な保護を誘導する。そのうえ、この保護は長期間持続する。したがって本発明は、致命的ポックスウイルス感染からの迅速な保護が必要とされる状況(例えば痘瘡または他の病原性ポックスウイルスへのテロ行為によるまたは事故による暴露)において、理想的な処置を提供する。
本発明は、他の病原体の大きなパネルに対する緊急ツールとしてのMVAおよび組換えMVAの使用も包含する。本発明はさらに、病原体の大きなパネルに対する緊急ツールとしての他の弱毒化ウイルスおよび細菌を包含する。また、本発明は、治療的介入にも使用することができ、病原体(例えば痘瘡)への暴露後の緊急ツール(例えばMVA)を与える。
本発明は、ヒトを含む動物において保護的免疫応答を迅速に誘導するためのワクチンの調製を目的とする、そのヒトを含む動物において複製不能であるポックスウイルスの使用を包含する。
本発明は、ヒトを含む動物において保護的免疫応答を迅速に誘導するための、そのヒトを含む動物において複製不能であるポックスウイルスを含むワクチンも包含する。
ある実施形態において、本発明は、ヒトを含む動物において保護的免疫応答を迅速に誘導するための方法であって、そのヒトを含む動物において複製不能であるポックスウイルスをそのヒトを含む動物に投与するステップを含む方法を包含する。
「複製不能(replication incompetent)」という用語は、国際公開第02/42480号の実施例1にいくつかの特定MVA株について概説されている条件下で、そのウイルスが、細胞株293(ECACC番号85120602)、143B(ECACC番号91112502)、HeLa(ATCC番号CCL−2)およびHaCat(Boukampら,J.Cell Biol.106(3):761−71(1988))などのヒト細胞株において、1未満の増幅比を示すこと、ならびにそのウイルスがヒトおよび国際公開第02/42480号に記載のマウスモデル中で複製しないことを意味する。
ある実施形態において、本発明は、保護的免疫応答が2日未満で生成される、上記の使用、ワクチンまたは方法を包含する。
ある実施形態では、ポックスウイルスが修飾ワクシニアウイルス・アンカラ(MVA)、特にMVA 575、MVA 572および、好ましくは、MVA−BN(登録商標)である。
本発明は、ウイルスがクローン化精製ウイルスである、上記の使用、ワクチンまたは方法も包含する。特に本発明は、無血清培養プロセスで得られたウイルスを包含する。
ある実施形態では、ポックスウイルスが10〜5×10 TCID50の用量で投与される。ポックスウイルス、特にMVAは、例えば経口、鼻腔、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮内、子宮内および/または皮下適用によって投与することができる。小動物では、免疫化のための接種が、好ましくは非経口的に、または経鼻的に行われるのに対し、より大きな動物またはヒトでは、皮下、筋肉内または経口接種が好ましい。
本発明に関して「動物」という用語はヒトも包含する。より一般的には、動物は脊椎動物、好ましくはヒトを含む哺乳類動物である。動物の具体例は、イヌ、ネコなどのペット、経済的に重要な動物、例えば子ウシ、畜牛、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、および他の動物、例えばマウス、ラットである。本発明は、経済的に重要な鳥、例えば七面鳥、カモ、ガチョウおよび雌鶏にも、その鳥の細胞に感染する能力を持つがその細胞中で感染性子孫ウイルスに複製される能力は持たないウイルスを使用するのであれば、使用することができる。本明細書で使用する「家畜」という用語は、好ましくは、哺乳類の家畜、より好ましくはイヌ、ネコ、子ウシ、畜牛、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、シカを指す。
好ましくは、免疫応答は、ポックスウイルス感染(好ましくは痘瘡感染)に対する保護的免疫応答である。保護的免疫応答は、好ましくは、1、5、10、25、50、100、250、または500 LD50という用量の痘瘡から保護することができる。
ある実施形態では、ポックスウイルスが組換えポックスウイルス、好ましくは組換えMVA−BN(登録商標)である。
ポックスウイルスは少なくとも一つの異種核酸配列を含むことができる。本願で使用する「異種」という用語は、自然界でそのウイルスと密接に関連して見出されることが通常はない核酸配列の任意の組合せを指す。好ましくは、異種核酸配列は、少なくとも一つの抗原、抗原エピトープ、および/または治療化合物をコードする配列である。組換えウイルス中の異種核酸がコードする「治療化合物」は、例えばアンチセンス核酸などの治療核酸、または所望の生物学的活性を持つペプチドもしくはタンパク質であることができる。抗原エピトープおよび/または抗原は、感染性因子の抗原エピトープおよび/または抗原であることができる。感染性因子は、ウイルス、真菌、病原性単細胞真核または原核生物、および寄生生物であることができる。ウイルスは、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、パラミクソウイルス、肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルスのファミリーから選択するか、または出血熱を引き起こすウイルスから選択することができる。感染性因子は炭疽菌であることができる。
異種核酸配列の挿入は、好ましくは、ウイルスゲノムの非必須領域に行われる。あるいは、異種核酸配列は、ウイルスゲノムの天然欠失部位(MVAについてはPCT/EP96/02926に開示されている)に挿入される。ポックスウイルスゲノムなどのウイルスゲノム中に異種配列を挿入する方法は当業者には知られている。
さらにもう一つの実施形態によれば、本発明は、ワクチンまたは医薬品として使用するための本発明の組換えポックスウイルスに関する。
ある実施形態では、MVAウイルスが、以下に挙げる有利な性質の少なくとも一つ、二つ、または好ましくは三つを持つことを特徴とする株である:
(i)ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)ではインビトロで増殖的複製能を持つが、ヒト細胞株では、ヒトケラチノサイト細胞株HaCaT、ヒト胎児腎臓細胞株293、ヒト骨骨肉腫細胞株143B、およびヒト子宮頚部腺癌細胞株HeLaにおいてそうであるように、増殖的複製能を持たない;
(ii)成熟BおよびT細胞を産生する能力を持たず、したがって重度の免疫欠陥を持ち、複製ウイルスに対する感受性が高いマウスモデルにおいて、複製することができない;および
(iii)DNAプライム/ワクシニアウイルスブーストレジメンと比較して、少なくとも同じレベルの特異的免疫応答を、ワクシニアウイルスプライム/ワクシニアウイルスブーストレジメンで誘導する。
免疫原性組成物を調製するには、本発明のMVAワクシニアウイルスを生理学的に許容できる形態に変換する。これは、痘瘡に対するワクチン接種に用いられるMVAワクチンの調製(Stickl,H.ら,Dtsch.med.Wschr.99:2386−2392(1974)に記載されているもの)における経験に基づいて行うことができる。典型的には、アンプル(好ましくはガラスアンプル)で、約10〜10個の組換えMVA粒子を、2%ペプトンおよび1%ヒトアルブミンの存在下に、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で凍結乾燥する。凍結乾燥物は、非経口投与に適した増量剤(例えばマンニトール、デキストラン、ショ糖、グリシン、ラクトースまたはポリビニルピロリドン)または他の助剤(例えば酸化防止剤、安定剤など)を含有することができる。次に、ガラスアンプルを封止する。このガラスアンプルは、好ましくは−20℃未満の温度で、数ヶ月間保存することができる。
投与または治療には、凍結乾燥物を0.1〜0.5mlの水性溶液、好ましくは生理食塩水に溶解し、非経口的に、例えば筋肉内接種によって投与することができる。本発明の免疫原性組成物、ワクチンまたは治療薬は、好ましくは筋肉内に注射される(Mayr,A.ら,Zbl.Bakt.Hyg.,I.Abt.Orig.B 167:375−390(1978))。当業者は公知の方法で投与様式、用量および投与回数を最適化することができる。外来抗原に対する適当な免疫応答を得るために、免疫原性組成物、ワクチンまたは治療薬を、適宜、1回、またはさまざまな期間にわたって複数回、投与するとよい。
ある実施形態では、ポックスウイルスが不活化オルトポックスウイルスである。好ましくは、オルトポックスウイルスは、UV照射によって不活化される。好ましい実施形態では、オルトポックスウイルスがCVA、ECTV、またはCPXVである。
ある病原体に対して、即時保護が得られるように、個体をワクチン接種するための方法を提供することが、本発明の目的である。ある実施形態では、病原体暴露に前後して、個体にMVA、好ましくはMVA−BN(登録商標)をワクチン接種する。好ましくは、暴露の2日前から暴露の3日後までの間に、ワクチン接種を行う。より好ましくは、暴露の2日前から暴露の1日後までの間に、ワクチン接種を行う。より一層好ましくは、暴露の1日前から暴露の1日後までの間に、ワクチン接種を行う。ワクチン接種は暴露の2日前、36時間前、1日前、12〜24時間前、または0〜12時間前に行うことができる。ワクチン接種は、暴露時に行うか、暴露の0〜12時間後、暴露の12〜24時間後、暴露の1日後、暴露の2日後、暴露の0〜36時間後、暴露の0〜48時間後、暴露の0〜60時間後、暴露の0〜72時間後、暴露の3日後、暴露の4日後に行うこともでき、さらには暴露の10日後であっても行うことができる。
本発明は、動物において感染性因子に対する免疫応答を誘導するための方法であって、その動物に、MVA(好ましくはMVA−BN(登録商標))を含む免疫原性組成物を、感染性因子による感染の2〜0日前、もしくは1〜0日前、または感染性因子による感染前の、これらの日数に含まれる時間の他の任意の組合せ(例えば48〜36、48〜24、36〜24、24〜12、12〜0時間など)の時点で、投与することを含む方法を包含する。ある実施形態では、感染性因子が複製可能なポックスウイルスである。好ましい実施形態では、動物がヒトである。
本発明は、動物において感染性因子に対する免疫応答を誘導するための方法であって、その動物に、MVA(好ましくはMVA−BN(登録商標))を含む免疫原性組成物を、感染性因子による感染の0〜3日後、0〜2日後、0〜1日後、もしくは1〜2日後、または感染性因子による感染後の、これらの日数に含まれる時間の他の任意の組合せ(例えば0〜12、12〜24、24〜36、24〜48、24〜72、36〜48、48〜60、48〜72時間など)の時点で、投与することを含む方法を包含する。ある実施形態では、感染性因子が複製可能なポックスウイルスである。好ましい実施形態では、動物がヒトである。
本発明はさらに、上記の方法、ならびにMVA(好ましくはMVA−BN(登録商標))を含む免疫原性組成物と、感染性因子への暴露の2〜0日前(暴露の2、1、または0日前、ならびに暴露の36、12、6、3、または1時間前を含む)の時点でその免疫原性組成物を送達するようにという取扱説明とを含むキットの使用を包含する。その時点は、感染性因子による感染前の、これらの日数に含まれる時間の任意の組合せ(例えば48〜36、48〜24、36〜24、24〜12、12〜0時間など)内にあることができる。
本発明は、上記の方法、ならびにMVA(好ましくはMVA−BN(登録商標))を含む免疫原性組成物と、感染性因子への暴露の0〜3日後(暴露の0、1、2、または3日後、ならびに暴露の1、3、6、12、36、または60時間後を含む)の時点でその免疫原性組成物を送達するようにという取扱説明とを含むキットの使用も包含する。その時点は、感染性因子による感染後の、これらの日数に含まれる時間の任意の組合せ(例えば0〜12、12〜24、24〜36、24〜48、24〜72、36〜48、48〜60、48〜72時間など)内にあることができる。
本発明は、動物において保護的免疫応答を誘導するためのキットも包含する。好ましくは、前記免疫応答は、本明細書で定義する感染性因子に向けられる。ある実施形態では、キットがポックスウイルスを含む免疫原性組成物を含み、前記ポックスウイルスが前記動物において複製不能である。好ましい実施形態では、前記ポックスウイルスが修飾ワクシニアウイルス・アンカラ(MVA)である。キットは、免疫原性組成物の送達に関する取扱説明も含み得る。MVAは好ましくはMVA−BNである。好ましくは、免疫原性組成物が10〜5×10 TCID50/mlのMVAを含有する。好ましい実施形態では、動物がヒトである。免疫原性組成物の送達に関する取扱説明は、感染性因子への暴露前または暴露後のさまざまな時点における送達を指示することができる。これらの時点には、感染性因子への暴露の2日前から感染性因子への暴露の3日後までの時点が含まれ得る。ある実施形態では、取扱説明が、感染性因子への暴露後に、好ましくは感染性因子(好ましくは痘瘡)への暴露後できるだけ早く、MVAを送達するように指示する。キットはさらに、別個のバイアルに入った本明細書に定義する感染性因子と、ヒトを含む動物へのその感染性因子の送達に関する取扱説明とを含んでもよい。感染性因子は、好ましくは、炭疽菌または痘瘡から選択される。
この文脈において、「暴露」とは、感染性因子そのものとの接触、または感染性因子を保因する動物(ヒト)との接触を意味する。例えば取扱説明は、感染性因子への暴露の36、24、12、6、3、もしくは1時間〜0時間前、または感染性因子への暴露の0〜1、3、6、12、24、36、48、60、もしくは72時間後に、免疫原性組成物が送達され得るように指示することができる。例えば、取扱説明は、感染性因子による感染の48〜36、48〜24、36〜24、24〜12、12〜0前など、または感染性因子による感染の0〜12、12〜24、24〜36、24〜48、24〜72、36〜48、48〜60、48〜72後などの送達を指示することができる。好ましくは、感染性因子は痘瘡または炭疽菌である。取扱説明は、MVAを静脈内、筋肉内、および/または皮下投与するように指示することができる。取扱説明は、MVAを鼻腔内投与するように指示することができる。
病原体は好ましくはウイルスまたは細菌である。好ましい実施形態では、病原体がポックスウイルス、好ましくは天然痘ウイルスである。
ある実施形態では、個体が健康なヒトである。もう一つの実施形態では、個体が、免疫欠陥を持つヒト、例えばHIV−1感染個体、アトピー性皮膚炎を持つ個体、免疫抑制剤を服用している患者、またはアレルギーを持つ個体である。
宿主域が制限され高度に弱毒化されたワクシニアウイルス株である修飾ワクシニアウイルス・アンカラ(MVA)は、ヒトおよび試験された他の哺乳動物中で増えることができない。しかし、非許容細胞におけるウイルス遺伝子発現は損なわれていないので、本発明の組換えMVAウイルスは、例外的に安全で効率の良い発現ベクターとして使用することができる。
痘瘡の原因因子である天然痘ウイルスを含むポックスウイルスは、免疫応答を抑制するために複数の戦略を発達させてきた。本発明は、ポックスウイルスがtoll様受容体(TLR)9依存的経路ならびにTLR9非依存的経路によって認識されることを示す証拠を提供する。病原性ポックスウイルスは通常型樹状細胞(DC)が利用するTLR9非依存的経路によるそれらの認識を効果的に抑制したが、TLR9を介して形質細胞様DC(pDC)によって検出された。TLR9の欠如は、インビトロでのDC応答を抑止し、マウスポックスウイルスであるエクトロメリアウイルス(ECTV)による感染に対するマウスの感受性を激しく増加させた。感染時の修飾ワクシニアウイルス・アンカラ(MVA)−BN(登録商標)の同時投与は、TLR9またはインターフェロンI型受容体(IFN−I−R)の非存在下でさえ、ECTVからの確実な即時保護につながった。MVA−BN(登録商標)は、ECTVによる感染後に投与された場合にも、マウスを救った。このように、MVA−BN(登録商標)は、免疫適格マウスならびに免疫欠陥マウスにおいて、致死的ECTV感染からの確実な即時保護、そしてさらには暴露後保護を誘導した。
下記実施例1〜11に提示するデータは、ポックスウイルスが、他のdsDNAウイルスファミリーについて以前に示されたように、TLR9依存的認識経路ならびにTLR9非依存的認識経路によって検出されることを証明している。ヒト細胞における複製能を失っている高度に弱毒化されたVACVであるMVAは、pDCにより、TLR9依存的経路とTLR9非依存的経路の両方で認識されることがわかったが、cDCでは、TLR9非依存的経路によってのみ認識された。この知見は、HSV−1で得られた先の知見と合致している(Hochrein,H.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 101,11416−11421(2004))。しかし、際立って対照的なことに、VACV、ECTVまたはCPXVのいくつかの株を含む病原性ポックスウイルスの認識は、TLR9およびpDCに決定的に依拠しており、これはおそらく、これらのウイルスがTLR9非依存的経路によるそれらの認識を阻害する強力な能力を持つからだろう。pDCまたはTLR9の非存在下では、この阻害能が、免疫認識を、したがってDCによる応答を、インビトロでほぼ完全に抑止した。これは、TLR9欠損マウスが野生型マウスより100倍以上高い感受性を持つ、ECTVによるインビボ感染モデルをもたらした。
不活化VACV、CPXVおよびECTVウイルスに対する応答はTLR9の存在に依存するので、これらのウイルスはおそらくTLR9依存的活性化経路とTLR9非依存的活性化経路の両方を阻害するのだろう。目を引くことに、TLR9の非存在下では、DC成熟(CD69発現)という最も高感度な読出しでさえ消滅したので、この阻害は事実上絶対的だった。A46RおよびA52RのVACV産物など、ポックスウイルスがコードするいくつかの阻害遺伝子(Bowieら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97:10162−10167(2000);Harteら,J.Exp.Med.197:343−351(2003);Stackら,J.Exp.Med.201:1007−1018(2005))は、TLRシグナリング分子の阻害に関連づけられている。ECTV、CVA、CPXVおよびMVAの遺伝子比較は、4つのウイルスの全てがA46Rのホモログを持つことを示す(Meisinger−Henschelら,J.Gen.Virol.88:3249−3259(2007))。CVAおよびCPXVはA52Rのホモログも発現させるが、MVAはこの構成要素を欠いている。本発明者らがこの研究に使用したECTVモスクワ(Moscow)株は、おそらく機能的ではないであろう断片化されたA52R遺伝子を持つ(Chenら,Virology 317:165−186(2003))。TLR9依存的認識経路およびTLR9非依存的認識経路によるDC活性化の阻害におけるA46RおよびA52Rの潜在的役割を解明するために、A46RおよびA52Rを欠くまたはそれらを発現する組換えVACVが構築された。内在性A46Rに加えてA52Rを発現させる組換えMVA(したがってこれは阻害性CVA(A46RとA52Rを内在的に発現させる)と似ている)は、DC成熟およびサイトカイン誘導の解析によって判定したところ、野生型MVAと比較して有意な阻害の増加を一切示さなかった。対照的に、A46RとA52Rをどちらも発現させないCVAの欠失突然変異体は、その阻害能を失わなかった。これは、A52R欠損VACVがDC成熟に対する阻害活性を依然として保っていたことを示す先に公表されたデータと一致している(Drillienら,J.Gen.Virol.85:2167−2175(2004))。総合すると、これらのデータは、A46R(非阻害性MVAが内在的に発現させるもの)とA52Rがどちらも、この研究において定義されるTLR9依存的認識またはTLR9非依存的認識の主要な阻害構成要素ではないことを示唆している。
MVAに対する応答におけるTLR9非依存的認識の性質は、他のDNAウイルスに対する応答における認識経路と同様に、今なお判然としない(Ishiiら,Trends Immunol 27:525−532(2006))。しかし最近の報告により、TLR関連アダプター分子MyD88およびTRIFならびにPKRの存在に対する絶対的依存性は除外される(Zhuら,Blood 109:619−625(2007);Waibleら,J.Virol.81:12102−12110(2007))。最近、DNAの新しい細胞内センサー(DAI)が同定された(Takaokaら,Nature 448:501−505(2007))。DAIをサイレンシングするsiRNAの存在下または非存在下で細胞を感染させることにより、トランスフェクトされたDNAまたはHSV−1に対する応答はDAIにある程度依存するが、RNAに対する応答はそうでないことが示された。しかし、HSV−1に対する応答は減少するものの、抑止されるわけではなく(ポックスウイルスに対する応答は調べられていない)、さらなるDNAウイルス認識経路の存在が示唆された。他の研究者は、マウス胚線維芽細胞が、MVA(遺伝子E3Lを欠くもの)に、非古典的IκBキナーゼファミリーメンバーTBK1およびIKKiの存在に依存せずに応答すること(Ishiiら,Nat.Immunol.7:40−48(2006))、およびMVAに応答して起こるIFN−αの誘導がウイルス増殖およびDNA複製には依存しないこと(Waibleら,J.Virol.81:12102−12110(2007))を示している。
HSVのTLR9非依存的認識の場合、細胞タイプが異なれば要件も異なる場合があることを、最近の刊行物が示唆している。cDCでは、IFN応答は、ウイルス複製には依存しなかったが、ウイルス侵入には依存した。対照的に、マクロファージおよび線維芽細胞では、IFN−I産生がウイルス侵入と複製の両方に依存し、その上さらに、機能的なミトコンドリアシグナリングタンパク質経路にも依存し、このことは、RNA構成要素が関与する可能性を示唆する(Rasmussenら,J.Virol.81:13315−13324(2007);Weberら,J.Virol.80:5059−5064(2006))。したがって、DNAウイルスの免疫学的認識は、少なくともRNAウイルスの認識と同程度に、冗長(reduntant)であるらしい。異なるウイルスが発達させた抑制機構、ポックスウイルスが使用する機構の一部は、おそらく、冗長なDNAウイルス認識経路の発達に非常に大きな進化的圧力をかけただろう。
ポックスウイルスは2つのサブファミリー、すなわち昆虫などの無脊椎動物に感染するポックスウイルス(エントモポックスウイルス亜科)と、脊椎動物に感染するポックスウイルス(チョルドポックスウイルス亜科)に、分割される。脊椎動物は、全ての種とは言わないまでも、多くの種が、高病原性ポックスウイルスに対抗して生き残るために、進化の過程で常に戦ってきた。現在、爬虫類、鳥類および哺乳動物の多くの異なる種に感染するポックスウイルスが知られている。魚ほど古い脊椎動物でもCpG−DNA刺激に応答することが知られており、TLR9の発現が示唆される。TLR9系は、IFN−I産生にTLR9を使用する専門のDCサブセットpDCと共に、ポックスウイルス感染の検出とそれに対する防御に関する強い進化的圧力下で最適化されたと推測することができるだろう。
マウス細胞とヒト細胞におけるTLR9発現は著しく異なる。どちらの種でも、pDCおよびB細胞はTLR9に関して陽性であり、TLR9刺激に応答するが、マウスのcDCサブセットおよびマクロファージもTLR9を発現させる。そのうえ、一つの種内でさえ、異なる細胞タイプはTLR9リガンドに対して違った形で選択的に応答する。これにはpDCのユニークなIFN−α産生能が含まれるだけでなく、異なるTLR9アゴニストに対するB細胞の選択的な応答にも、これが示される。マウスB細胞は、B型CpG−ODNに対して活性化され増殖するが、A型CpG−ODNまたは精製プラスミドDNAに対してはそうでないことが、以前、記載された(Spiesら,J.Immunol.171:5908−5912(2003))。考え得る一つの説明は、異なるTLR9リガンドの細胞タイプ特異的な取込みおよびエンドソームプロセシングだろう。これは、この研究で使用されたcDCが、それらはTLR9を発現させ人工TLR9アゴニストCpG−ODNに応答するにもかかわらず、MVAに応答して起こるTLR9非依存的刺激だけを示し、TLR9依存的刺激は何も示さなかった理由の説明にも、おそらくなるだろう。
MVAによって誘導される免疫保護はTLR9応答を欠く状況において明らかに意味があり、したがってMVAに応答して起こる免疫活性化はTLR9またはpDCのみに依存するわけではなかった。pDCの数および機能が損なわれ、したがってTLR9依存的IFN−I産生が損なわれるという、ヒトに関して記載された状態では、pDCまたはIFN−I非依存的免疫活性を誘導するMVAのこの特徴が重要になり得る。これらには、がんおよび移植患者、免疫抑制剤を服用している人々、およびHIVを持つ人々(抗ウイルス処置を受けている人々を含む)が含まれる(Hashizumeら,J.Immunol.174,2396−2403(2005);Donaghy,H.ら,Blood 98,2574−2576(2001);Chehimi,J.ら,J.Immunol.168,4796−4801(2002);Boor,P.P.ら,Am.J.Transplant.6,2332−2341(2006);Siegal,F.P.ら,J.Clin.Invest 78,115−123(1986))。さらにまた、アレルギーのような一部の免疫状態は、ウイルス誘発性IFN−I産生の減少に関連する(Bufeら,Int.Arch.Allergy Immunol.127:82−88(2002))。注目すべきことに、これらの状態の大半は、複製可能な痘瘡ワクチンの適用に関して禁忌とされている。
MVAはIFN−I−R欠損マウスをECTV感染からある程度保護できることを本発明者らは見出したが(図7)、従来の痘瘡ワクチンウイルスであるドライバックス(Dryvax)の適用は、ECTVチャレンジを行わなくても、これらのマウスを殺した。この知見は、他の免疫欠陥マウスにおけるVACVワイエス(Wyeth)に対する致死性に関する以前の報告と合致した(Wyattら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101:4590−4595(2004);Pereraら,J.Virol.81:8774−8783(2007))。
この研究では、致死用量のECTVと同時に与えられたMVAが、適用部位とは無関係に(図6)、野生型マウスおよびTLR9欠損マウスを死から保護したことを証明し(図4、図5)、そのプロトコールを「即時保護(immediateprotection)」と呼ぶ。これらの知見は、MVAが確実な先天免疫応答を誘導し、したがって適応免疫応答が発達するのに必要な時間を橋渡しすることを示している。
先天的保護相の機序を明確にするために、IFN−Iに対する応答性を欠くマウスに、即時保護プロトコールを適用した。高用量暴露時に、これらのマウスは野生型マウスと同じようには保護されなかったことから、IFN−Iは保護の一部であることが示唆された。しかし、IFN−I−Rマウスは、それより低い用量だがそれでもなお致死的である用量のECTVに対して保護されたことから、即時保護プロトコールの先天相では他の機序がIFN−Iの代わりを務め得ることが明らかに証明された。
ECTVからの保護におけるTNF−αの役割は、ECTV感染に対するTNF受容体欠損マウスの増加した感受性ならびにTNF−αをコードするVACVの弱毒化によって、以前に示された(Rubyら,J.Exp.Med.186:1591−1596(1997))。同様の方法を使って、IL−2、IL−6、IL−12、IFN−γ、IFN−λ、CD40L、Mig、IP−10、NOおよび補体について、抗ウイルス活性が報告された(Estebanら,J.Gen.Virol.86:2645−2659(2005);Ramshawら,Immunol.Rev.159:119−135(1997);Bartlettら,J.Gen.Virol.86:1589−1596(2005);Niemialtowskiら,Acta Virol.38:299−307(1994))。可溶性構成要素とは別に、NK細胞の誘導のような細胞性先天機序も、ECTV感染を含むポックスウイルスによる感染時に重要な役割を果たすようである(Parkerら,J.Virol.81:4070−4079(2007))。これらの機序および他の機序は、MVAが媒介する即時保護に関与し得る。
即時保護プロトコールが適応免疫応答の非存在下で持続的保護を誘導できないこと(図8)から、生存は最終的には適応免疫応答に依存することが明白に示された。RAG−1欠損マウスにおける延命も、確実な保護的先天機序の持続時間の多少のしるしにはなったが、従来のワクチン接種戦略について先に述べたように、病原性ポックスウイルス感染を乗り切るには最終的にはウイルスを排除するために適応機序を必要とする。この必要条件から考えて、適応免疫応答が同時に効果的にトリガーされるのでなければ、IFN−I、TLRリガンドまたは他の非特異的先天性刺激の適用のような先天機序の誘導だけでは、致死的ポックスウイルス感染からの保護に十分であるとは思われない。オルトポックスウイルス抗原を保有し、おそらくはTLR9を介して活性化する、UV不活化CVAを使った実験(図6b)では、免疫適格マウスにおいて、多少の限定された保護が達成され得ることが示唆された。しかし、活性MVAで処置されたマウスが無症状のままであったのとは全く対照的に、全てのマウスが少なくとも病気になったという事実は、活性MVAによる保護の方がはるかに確実であることを示した。
TLR9は、ポックスウイルスに関して、不可欠でありインビボで大きな意味を持つ認識分子であると同定された。重要なことに、これは、健康な個体および免疫欠陥個体において、潜在的に死をもたらすポックスウイルス感染に対して即時的および治療的介入を行うための一方法としての、MVA−BN(登録商標)の使用の証拠になる。
ここでは、ポックスウイルス科のメンバーがTLR非依存的認識経路によって認識されるという以前のデータが確認される(Zhu,J.ら,Blood 109,619−625(2007))。しかし、ポックスウイルスがTLR9依存的経路によっても認識されることを示す。ECTVのようないくつかのポックスウイルスは、TLR9非依存的経路による認識を効果的に抑制するが、TLR9では依然として認識される。
形質細胞様DC(pDC)は、ヒトおよびマウスにおいて、TLR9経路によって多量のI型インターフェロン(IFN−I)を産生する唯一の細胞であり、一方、通常型DC(cDC)を含む他の細胞は、TLR9に依存しない異なる経路によってIFN−Iを産生することができる。ポックスウイルスがTLR9非依存的IFN−I産生を完全に消滅させ、DCの成熟に影響を及ぼすのに対して、TLR9が駆動するpDCのIFN−I産生は完全には阻止されないことを、ここに示す。
天然のマウス病原体ECTVを使ったインビボ研究により、TLR9の欠如は感染に対するマウスの感受性を100倍以上高くすることが明らかになった。同様の感受性および致死動態は、ウイルス感染の管理に不可欠であると考えられるIFN−Iに応答することができないマウスに見出すことができた(Muller,U.ら,Science 264,1918−1921(1994))。したがって、病原性DNAウイルスがそれらのTLR9非依存的認識を効果的に阻害する条件下では、TLR9依存的ウイルス認識の役割、IFN−I産生が、したがってpDCが、少なくとも感染時の一次防御機序にとって、極めて重要になる。
哺乳動物中で複製する能力を失っている高度に弱毒化されたオルトポックスウイルスMVAは、ロバストな適応免疫応答の強力な誘導物質であり、ワクチン接種された個体は、オルトポックスウイルス属に含まれる他のポックスウイルス種(例えばサル痘ウイルス(MPXV))から保護される(Earl,P.L.ら,Nature 428,182−185(2004);Stittelaar,K.J.ら,J.Vir.79,7845−7851(2005))。哺乳動物中では複製することができないので、MVAは、高度に免疫欠陥を持つ個体でも、ワクチン候補として試験される(Gherardiら,J.Gen.Virol.86:2925−293 6;Staibら,J.Gen.Virol.87:2917−2921(2006))。しかし、適応免疫応答の効果的な誘導には数日〜数週間を要し、以前の報告により、病原性ポックスウイルスに対する限られた延命効果は、チャレンジウイルスへの暴露の遅くとも2日前にワクチン接種ウイルスを適用しなければ達成できないことが示されている(Staib,C.ら,J.Gen.Virol.87,2917−2921(2006))。
MVA−BNが、インビトロで、TLR9依存的経路とTLR9非依存的経路の両方によって、先天免疫保護サイトカイン(例えばIFN−I)の産生を誘導することを、ここに示す。ECTVなどのポックスウイルスとは異なり、MVAは、TLR9非依存的経路によってそれを認識するというDCの能力を阻害しなかった。この性質は、より阻害的な表現型を示したポックスウイルスからの保護に役立ち得る。
高用量の高病原性および種特異的マウス痘ウイルスECTVと同時に行われるMVA−BNの投与は、免疫適格マウスだけでなく、TLR9を欠くマウスまたはI型インターフェロンに対する応答性を欠くマウスも、死亡から保護した。機能的なIFN−I応答を伴わないマウスは、低および中ECTVチャレンジに対して保護されたが、より高用量を使用した場合には感染に屈し、保護の一機序にIFN−Iが関与すること、そしてそれが、他の手段によってある程度代替され得ることを示した。しかし、適応免疫応答を欠くマウス(Rag−1欠損マウス)の場合、MVA投与にはある程度の一時的利点しかなく、全てのマウスが最終的には死亡したことから、致死的ポックスウイルス感染からの総合的な保護にとって適応免疫応答の誘導は不可欠であることが示された。このようにMVAは、インビボで、TLR9非依存的経路による免疫応答を、この認識を強力に阻害するポックスウイルスの存在下でさえ、活性化することができた。重要なことに、MVA−BNの暴露後適用でさえ、TLR9欠損マウスは、ECTVによる致死的感染に対して、死から保護された。
この研究は、ポックスウイルスの認識およびポックスウイルスに対する防御にとって、TLR9が重要な、そしてインビボで大いに意味のある、PRRであることを証明する。そのうえ、免疫系が欠陥を持つ条件下でさえ、MVA−BNは先天免疫応答および適応免疫応答を活性化し、それらを橋渡しして、長期間持続するだけでなく重要なことに即時的かつ治療的な、致死的ポックスウイルスチャレンジからの保護をもたらす。
提示するデータは、ポックスウイルスが、dsDNAウイルスの他のファミリーについて以前示されたように、TLR9依存的認識経路でもTLR9非依存的認識経路でも検出されることを、明確に証明している。ヒト細胞中で複製する能力を失っている高度に弱毒化されたVACVであるMVAは、pDCにより、TLR9依存的経路とTLR9非依存的経路の両方で認識されることがわかったが、cDCでは、TLR9非依存的経路によってのみ認識された。MVAのUV不活化後は、pDCとcDCとからなる混合集団が、TLR9の存在下でのみ、サイトカインを産生した(図2b)。この知見は、活性ウイルスが、TLR9に依存しないいくつかのDCサブセットおよびマクロファージにおいて、インビトロでIFN−αを誘導したのに対して、pDCはTLR9依存的経路も使用し、それが不活化HSVをも認識したという、HSV−1に関する本発明者らの以前の知見とよく似ていた(Hochreinら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101:11416−11421(2004))。使用した不活化方法(HSV−1の場合は熱不活化、MVAの場合は強いUV照射)が、異なる細胞構成要素へのウイルスの選択的取込みをもたらした可能性はある(活性ウイルスが細胞質およびエンドソームに取り込まれるのに対して、不活化ウイルスの取込みはエンドソーム経路に限定される場合がある)。これは不活化後の完全なTLR9依存性の説明になり得る。
しかし、MVAとは際立って対照的なことに、VACV、ECTVまたはCPXVのいくつかの株を含む病原性ポックスウイルスの認識は、これらのウイルスがTLR9非依存的経路によるそれらの認識を阻害する強力な能力を持つため、TLR9およびpDCに決定的に依拠することをここに示す。pDCまたはTLR9の非存在下では、この阻害能が、免疫認識を、したがってDCによる応答を、インビトロでほぼ完全に抑止した。これらインビトロでの知見は、TLR9欠損マウスが野生型マウスより100倍以上高い感受性を持つ、ECTVによるインビボ感染モデルをもたらした(図3)。TLR9欠損マウスにおける他のdsDNAウイルス感染モデルは、HSV−1感染の場合のように感受性の増加を示さないか、またはMCMV感染の場合のように狭い範囲内で中等度の増加を示すに過ぎなかった(Krugら,Blood 103:1433−1437(2004);Tabetaら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101:3516−3521(2004);Delaleら,J.Immunol.175:6723−6732(2005))。
この研究により、TLR9は、ポックスウイルスにとって重要な、そしてインビボで大いに意味のある、認識分子であると定義される。重要なことに、これは、健康な個体および免疫欠陥個体において、潜在的に死をもたらすポックスウイルス感染に対して即時的および治療的介入を行うための一方法としての、MVA−BNの使用の証拠になる。
効率の良い並外れて安全な発現ベクターとして役立ち得る組換えポックスウイルス(MVAウイルスを含むがこれに限定されるわけではない)を使用することが、本発明のさらにもう一つの目的である。ある実施形態において、本発明は、外来抗原(好ましくは病原性因子のもの)をコードする遺伝子を含有する組換えMVAウイルス、およびそのようなウイルスを生理学的に許容できる形態で含有するワクチンに関する。本発明は、そのような組換えMVAワクシニアウイルスまたはワクチンの調製方法、ならびにそのような病原性因子によって引き起こされる感染を予防するための、これらのワクチンの使用にも関係する。
本発明のMVAウイルスは、異種ポリペプチドを発現させる組換えMVAであることもできる。MVAゲノム内の天然の欠失、例えば欠失II(Deletion II)またはIGRに隣接するMVA DNA配列に挟まれた、外来ポリペプチドをコードするDNA配列を含有するDNAコンストラクトを、MVAに感染させた細胞中に導入して、相同組換えを起こさせることができる。DNAコンストラクトが真核細胞中に導入され、外来DNAがウイルスDNAと組換えを起こしたら、所望の組換えワクシニアウイルスを自体公知の方法で、好ましくはマーカーを利用して、分離することができる(Nakanoら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79:1593−1596(1982);Frankeら,Mol.Cell.Biol,1918−1924(1985);Chakrabarfiら,Mol.Cell.Biol.,3403−3409(1985);Fathiら,Virology 97−105(1986)参照)。
ある実施形態では、免疫適格マウスにおいて、MVAがマウスをマウスポックスウイルス・エクトロメリア(>47×LD50)から即時的に保護する。
ある実施形態では、MVAが、TLR9による、さらにまたTLR9非依存的経路による、樹状細胞における免疫応答を誘導する。対照的に、エクトロメリアウイルスのような病原性ポックスウイルスは、TLR9非依存的認識を効率的に阻害するので、認識はTLR9に依存する。
ある実施形態では、TLR9を欠く免疫欠陥マウス(TLR9−KO)がエクトロメリア感染に対して100倍高い感受性を持つ。
ある実施形態では、MVAが、TLR9−KOマウスをマウスポックスウイルス・エクトロメリア(>500×LD50)から即時的に保護する。
ある実施形態では、MVAが、免疫欠陥マウス(IFN−Iに対する応答性を欠くもの)をエクトロメリアウイルスによる低〜中チャレンジから保護する(25匹中24匹のマウスが本来なら致命的である1E+02または1E+03のエクトロメリアへの暴露を乗り切った)。
ある実施形態では、MVAの1回だけの適用によって達成される保護が長期間持続する。9週間後に、エクトロメリア(>500×LD50)による初回感染からの保護が依然として存在する。
本発明のより良い理解の一助となるように、以下に詳細な実施例を記載する。しかし本発明はこれらの実施例によって限定されない。
本発明の他の実施形態は、本明細書に開示する本発明の明細および実施を考慮すれば、当業者には明白だろう。本明細書および実施例は単なる例示とみなされるものとし、本発明の真の範囲および要旨は、後述の請求項によって示される。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに例証する。ここに記載する実施例が、本発明によって提供される技術の利用可能性をこれらの実施例に限定するような形では決して解釈されないことは、当業者にはよく理解されるだろう。
<実施例1>
実験方法
以下の項は、本明細書に記載する全ての実施例において使用した方法の要約である。
動物モデル
C57BL/6JマウスはHarlan Winkelmann(ドイツ・ボルヒェン)から購入した。記述されているように、129/SvバックグラウンドでTLR9欠損マウスを作製し、少なくとも8世代にわたってC57BL/6に戻し交配した(Hemmi,H.ら,Nature 408、740−745(2000);Hochrein,H.ら)。129/Svマウス系統とC57BL/6マウス系統はどちらも、ECTV感染に対して比較的高い抵抗性を示すと考えられる(Tscharkeら,J.Exp.Med.201:95−104(2005))。しかし、感染モデルにおいて系統バックグラウンドが影響を持つ可能性を排除するために、129/Svバックグランドを持つマウスをECTVにi.n.感染させたところ、実際にそれらはC57BL/6マウスに見られる比較的抵抗性の表現型を示し、例えば1E+02 TCID50 の用量では1匹のマウスも死なず、3E+03の用量でさえ大半のマウスは生き残った。IFN−I−R欠損マウス(A129)マウスは元々はMichel Aguet博士(チューリッヒ大学)から入手したものであり(Muller,U.ら,Science 264,1918−1921(1994))、それを8世代にわたってC57BL/6マウスに戻し交配した。RAG−1欠損マウスはJackson laboratoriesから購入し、チューリッヒにある動物施設で繁殖させた。
ウイルス
この研究に使用したMVAは、Bavarian Nordicによって開発され、European Collection of Cell Cultures(ECACC)に寄託(V00083008)されたMVA−BN(登録商標)である。11日齢孵化病原体フリー鶏卵(Charles River、米国マサチューセッツ州)から調製し、10%FCSを補足したRPMI−1640で培養した初代ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)で、MVAを増殖させ、力価測定した。CVAおよびCNPVはA.Mayr教授(ドイツ・ミュンヘン大学獣医学部)のご厚意により提供されたものであり、CEFで増殖させ、力価測定した。ECTVモスクワ株およびCPXVブライトン(Brighton)株は、American Type Culture Collection(ATCC)からそれぞれVR−1372およびVR−302として入手したものであり、Vero C1008細胞(ECACC 85020206)で増殖させ、力価測定した。SFVはATCCから入手(VR−364)したものであり、ATCCから入手したウサギ角膜細胞株SIRC(CCL−60)で増殖させ、力価測定した。
細胞株は全て、10%FCSを補足した、抗生物質を含まない、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Invitrogen、ドイツ・カールスルーエ)で維持した。動物実験で使用したウイルスは全て、スクロースクッションで2回精製した。ウイルスのUV不活化には、濃縮ウイルスストックを、滅菌条件下に、UVチャンバ(Genelinker GS、Bio−Rad laboratories、ドイツ・ミュンヘン)で、15分間、UV照射した。この処理により、組換えウイルスの導入効率は、元のウイルス活性の2%未満に低下した。
インビトロ実験
インビトロ生成Flt3リガンド依存的DC(FL−DC)は、本質的に以前記述されたように作製し、選別した(Hochrein,H.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101,11416−11421(2004))。要約すると、骨髄細胞をマウス組換えFLの存在下で8日間培養した。得られた細胞は>90%CD1 1c陽性であり、細胞の20〜60%は形質細胞様表現型(CD1 1cposCD45RAhighB220highCD1 1blow)を示した。FL−DCは分離せずに使用するか、FACS Aria装置(BD Bioscience)を使ってpDCとcDCに選別して使用した。インビトロ生成GM−DCは、記述されているように(Hochrein,H.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101,11416−11421(2004))、骨髄細胞をマウス組換えGM−CSF(Tebu−bio、ドイツ・オッフェンバッハ)の存在下で培養することによって作製した。細胞を、CD1 1c、B220、CD40およびCD69に特異的な抗体(BD Biosciences)で染色した。最終洗浄液には死細胞をラベルするためにヨウ化プロピジウム(1μg/ml)を含めた。フローサイトメトリー解析はFACSCalibur(BD Bioscience)で行い、Weaselソフトウェア(The Walter and Eliza Hall Institute for Medical Research、オーストラリア・メルボルン)を使って解析した。表示のウイルスまたは対照としてのCpG−2216(0.5μMまたは1μM)と共に、IL−3およびGM−CSFの存在下で18〜24時間インキュベートした後に、細胞培養上清を収集し、以前記載されたように市販のELISA試薬を使って、IFN−IおよびIL−6の分泌を測定した(Hochrein,H.ら,(2004))。
インビボ実験および統計
マウスをケタミン/キシラミンで麻酔し、ウイルスをi.n.滴下注入により、50μlの総体積で適用した。表示のECTV希釈液を単独で、または1E+08 TCID50のMVAと組み合わせて適用した。皮下注射を鼠径部に行って、総量1E+08 TCID50のMVAまたは対応する量のUV不活化CVAを、各250μlの体積で2回注射することにより、適用した。感染マウスの健康状態を少なくとも1日1回はチェックし、深刻な病気の症状または25%を超える体重減少を伴う動物を安楽死させた。ポックスウイルス特異的CD8 T細胞応答を決定するために、野生型またはTLR9欠損マウスを、5E+07 TCID50または1E+08 TCID50のMVAに静脈内感染させた。免疫化の7日後に脾臓を収集し、その臓器を70μmフィルターで機械的に破壊することにより、単細胞懸濁液を調製した。脾細胞および末梢血リンパ球(PBL)を赤血球溶解バッファー(0.14M NHClおよび0.017M トリス−HCl,pH7.2)で処理し、2回洗浄し、解析した。免疫優性B8RペプチドTSYKFESVを負荷したPro5(登録商標)H−2Kbペンタマー(ProImmune、英国オックスフォード)で細胞を染色した(Tscharkeら,J.Exp.Med.201:95−104(2005))。ペンタマー染色は、抗CD8、抗CD19および抗NK1 1抗体と組み合わせて、製造者のプロトコールに従って行った。細胞内サイトカイン染色のために、細胞懸濁液を、1μg/ml GolgiPlug(BD Biosciences)の存在下、1μg/ml B8Rペプチドで、5時間刺激した。その後、細胞を抗CD8で表面染色し、次に、BD Cytofix/Cytoperm Kit(BD Biosciences)で同時に固定/透過処理し、最後に、IFN−α、TNF−IおよびIL−2に対する抗体で染色した。血清中のポックスウイルス特異的抗体を、ELISAにより、MVA粗抽出物を抗原とし、ヒツジ抗マウスIgG−HRP(Serotec、ドイツ)を検出抗体として測定した。動物実験は全てバイエルン州政府によって承認された。LD50の算出にはSpearman−Karberの方法を使用した。
<実施例2>
VACV、CPXVおよびECTVの不活化はDC成熟を増加させるが、MVA、CNPVおよびSFVの不活化はDC成熟を増加させない
VACVのいくつかの株はcDCの成熟を阻害し、一方、MVAに応答して成熟が起こることが、以前に記述された(Engelmayerら,J.Immunol.163:6762−6768(1999);Drillienら,J.Gen.Virol.85:2167−2175(2004))。これらの研究ではpDCの非存在下におけるcDCの役割しか解析されなかったので、エクスビボマウス脾臓cDCおよびpDCに良く似たDCからなるFlt3リガンド(FL)生成マウスDCを使用して(Naikら,J.Immunol.174:6592−6597(2005))、両DCタイプの活性化を調べた。異なるVACVの異なる刺激活性が、ウイルスがコードする構成成分による刺激または活性阻害の欠如に起因するかどうかを試験するために、FL−DCを、いくつかの異なるポックスウイルス株と共に(活性ウイルスとして、またはUV不活化後に)、インキュベートした。VACVアンカラ株(CVA)、ECTVおよびCPXVに応答して起こるDCの活性化は、活性ウイルスに応答して起こるDCの活性化と比較して、ウイルスUV不活化後に増幅された(図1a)。これらの初期データは、DCに作用する阻害構成要素が、これらのウイルスによって作られることを示した。対照的に、MVAならびにカナリア痘ウイルス(CNPV)およびウサギショープ線維腫ウイルス(SFV)に応答して起こるCD40、CD69およびCD86のアップレギュレーションによって測定したDC活性化は、UV不活化後に増加せず(図1bおよび未掲載データ)、これらのウイルスは活性阻害構成要素を欠くことが示唆された。DC成熟の他にも、IFN−αおよびIL−6を含むサイトカインの産生も、CVA、ECTVおよびCPXVのUV不活化後は増加したが、MVA、CNPVおよびSFVのUV不活化後には増加しなかったことから、成熟に限らず、ウイルス認識およびDC機能の幅広い阻害が示唆された。
<実施例3>
CVAおよびECTVの認識は排他的にTLR9に依存するが、MVAの認識はそうではない
ヘルペスウイルスまたはアデノウイルスのようなdsDNAウイルスは、TLR9依存的認識経路およびTLR9非依存的認識経路によって認識され得ることが、以前に示されている(Basner−Tschakarjanら,J.Gene Med.8:1300−1306(2006);Hochreinら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101:11416−11421(2004))。ポックスウイルスの認識におけるTLR9の役割を解明するために、野生型動物またはTLR9欠損動物のFL−DCを生成させた。TLR9の非存在下では、DCは、CD40およびCD69のアップレギュレーションの欠如によってモニターしたところ、活性CVAまたはECTVに応答して有意に成熟することがなく、これらのウイルスの認識に関して強いTLR9依存性を示した。しかし、TLR9の非存在下で、MVAは、CD69のロバストなアップレギュレーションを誘導したが、CD40のアップレギュレーションは著しく減少したことから(図2a)、MVAに対する応答はTLR9非依存的認識イベントとTLR9依存的認識イベントの両方に基づくことが示唆された。
FL−DCは、TLR9活性化に応答して多量のIFN−αを産生する唯一の細胞タイプとして知られるpDCと、TLR9に応答して多量のIFN−αを産生することはできないことが知られているcDCを、どちらも含有する。野生型マウスおよびTLR9欠損マウスのFL−DCを活性MVAと共にインキュベートしたところ、用量に依存するロバストな量のIFN−αおよびIL−6が産生され、MVAに関するTLR9非依存的認識経路の存在が証明された(図2b)。しかし、UV不活化MVAはIFN−αおよびIL−6を野生型FL−DCでのみ誘導し、TLR9欠損FL−DCでは誘導せず、MVAの認識はTLR9依存的構成要素も利用するという成熟データによって示唆された認識が補強された(図2b)。
GM−CSFを使ってインビトロで生成させたDCは、活性DNAウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス(HSV))に応答してIFN−αを産生することができるが、不活化ウイルスまたはCpG−ODNには応答しない、cDCのみのDC集団(GM−DC)をもたらした(Hochreinら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101:11416−11421(2004))。GM−DCを活性MVAと共にインキュベートすると、野生型細胞およびTLR9欠損細胞におけるIFN−αおよびIL−6産生が誘導され、活性MVAのTLR9非依存的認識が証明された。UV不活化MVAとのインキュベーション後には、IFN−α産生も構成的レベルを上回るIL−6も検出されず(図2c)、MVAに応答して起こるTLR9依存的認識がこれらの細胞では機能的でないことが潜在的に示された。
<実施例4>
ECTVの認識は排他的にTLR9およびpDCに依存するが、MVAの認識はそうではない
FL−DC中の二つの主要DCサブセットの個々の活性化プロファイルを明確にするために、pDCとcDCを選別し、ECTVおよびMVAに感染させ、IFN−αおよびIL−6産生を測定した。野生型pDCはECTVとMVAの両方に対してIFN−αを産生し、ECTVに対して極めてわずかなIL−6を産生した。しかし、cDCまたはTLR9欠損pDCは、IFN−αをMVAに応答して産生しただけで、ECTVに対しては産生しなかった(図2d)。野生型cDCおよびTLR9欠損cDCは、MVAに応答して多量のIL−6を産生したが、ECTVに対してはそうでなかった。これらの結果は、DC成熟で得られた観察事実(図2a)を強化し、ECTVの効果的な認識がTLR9の存在に依存すること、特にECTVによるIFN−α産生がpDCに依存することを証明している。ECTVは他のTLR9非依存的経路による認識を明らかに阻害する。他方、pDCとcDCの両方によるMVAの認識は、追加のTLR9非依存的機序から構成される。
インビトロ生成FL−DCに加えて、エクスビボ分離pDC含有細胞集団を解析するために、インビボでのpDCの豊富な供給源である野生型およびTLR9欠損型の全骨髄細胞を、活性MVAまたはUV不活化MVAで、対照としてのCpG−ODNと並行して刺激した。FL−DCでの結果と同様に、活性MVAが野生型およびTLR9欠損型の骨髄細胞においてロバストなIFN−α産生を誘導したのに対し、TLR9の欠如により、UV不活化MVAおよびCpG−ODNに応答して起こるIFN−α産生は完全に抑止された(図2e)。したがってこれらのデータにより、MVAは、新鮮分離骨髄細胞により、UV感受性のTLR9非依存的経路およびTLR9依存的経路で認識されることが証明された。
<実施例5>
TLR9欠損マウスはECTV感染に対する感受性が激しく増加している
インビトロでのTLR9によるDNAウイルスの認識は以前の報告によって明確に証明されているが、マウスの生存にとってのTLR9のインビボ関連性はあまり明らかでない。TLR9欠損マウスは、HSVを使った感染モデルにおいて、生存率に相違を示さないか、またはマウスサイトメガロウイルス(MCMV)を使った感染モデルにおいて、狭い範囲内での限定された生存率の相違を示した(Krugら,Blood 103:1433−1437(2004);Tabetaら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101:3516−3521(2004);Delaleら,J.Immunol.175:6723−6732(2005))。ECTVのようなポックスウイルスによるインビトロでのTLR9非依存的認識の強い抑制(図1、図2)を考慮して、これらのウイルスによる感染を乗り切るには、TLR9が重要な因子であるだろうという仮説を立てた。これを検証するために、ヒト痘瘡感染を可能なかぎり模倣したマウス感染モデル、すなわち鼻腔内経路によるECTV感染モデルを使用した。ヒトにおけるVARV感染と同様に、ECTVは高度に種特異的であり、わずかなウイルス用量を使用するだけで、暴露後に気道を介して効果的に感染することができる天然のマウス病原体である。また、これは、VARVと同様に、免疫抑制分子の大きなパネルを保持している(Esteban,D.J.およびBuller,R.M.,J.Gen.Virol.86:2645−2659(2005))。
比較的高用量のECTV(1E+04組織培養感染量(TCID50))を使った初期実験により、TLR9欠損マウスは野生型マウスより少なくとも2日早く死亡することが証明された。感受性をさらに評価し、LD50を定量化するために、TLR9欠損マウスおよび野生型マウスを、さまざまな用量のECTVに感染させた。TLR9欠損マウスはわずか3E+01 TCID50でも感染後に全て死亡したが、1E+01 TCID50では接種後に1匹も死亡しなかった(図3b)。対照的に、1E+02 TCID50による感染後に死亡した野生型マウスはなく、1E+04 TCID50を使用した場合にのみ、全てのマウスがエクトロメリア感染に屈した(図3a)。3E+02〜3E+03 TCID50の用量を使用した野生型マウスでの実験間には多少のばらつきがあり、これは部分的に性別特異的で、雄マウスの方が雌マウスより感受性が高かった。TLR9欠損マウスについては19 TCID50というLD50、野生型マウスについては約2120 TCID50というLD50が算出された。このようにTLR9欠損マウスは、ECTV感染に対して、野生型マウスより100倍以上高い感受性を持つ。したがって、インビトロデータと強く一致して、TLR9はECTV感染に対する免疫応答の不可欠な構成要素である。
<実施例6>
MVAは野生型マウスおよびTLR9欠損マウスを致死的ECTVチャレンジから即時的に保護する
インビトロ実験により、ECTVがDCによる認識を効果的に抑制するのに対して、MVAはDCを活性化することが証明された(図1)。そこで、病原体と同時に与えられたMVAは、免疫系を活性化し、その結果として、病原性ポックスウイルスを潜在的に管理する免疫応答を誘導する場合があるという仮説を立てた。実際、1E+05 TCID50という高致死用量のECTVによるチャレンジと同時に、またはその直後に与えられたMVAは、野生型マウスを死亡から完全に保護したのに対し、対照マウスは1E+04 TCID50という10分の1の用量で、全てが死亡した(図4)。
MVAはインビトロで免疫細胞の強いTLR9非依存的活性化を誘導したので、次に、MVAがTLR9欠損マウスをECTV感染から保護し得るかどうかを試験した。野生型マウスで見られた保護と同様に(図4)、MVAはTLR9欠損マウスを高致死用量のECTV感染から即時的に保護した。無処置の対照マウスが1E+02 TCID50で全て死亡したのに対して、MVA処置マウスは全て、TLR9欠損マウスに関するLD50の500倍を超える用量に近い1E+04 TCID50によるチャレンジさえ乗り切った(図5)。高用量のECTV(3E+03および1E+04 TCID50)によるチャレンジを受けたTLR9欠損マウスは、2〜3週間後に尾病変を発症し、それは4週間後に消失することが観察された。他の点では無症状なTLR9欠損マウスにおける尾病変により、MVA誘導性免疫応答は、重篤なECTV誘導性疾患および死亡を防止できるが、最初の数週間はウイルスを完全には除去できないことが示された。
<実施例7>
MVAを異なる部位に適用してもマウスを致死的ECTV感染から保護することができる 野生型マウスおよびTLR9欠損マウスにおける即時保護がECTV感染と同じ部位へのMVAの同時投与に絶対的に依存するかどうかを確かめるために、マウスに致死用量のECTVを鼻腔内的にチャレンジし、MVAを皮下注射によって適用した。MVAを皮下部位に適用した場合(図6)、TLR9欠損マウス(図6a)および野生型マウス(図6b)は、病気の徴候を何も示さず、致死的ECTV感染を乗り切った。このようにECTVと同じ部位へのMVAの同時投与は、即時保護によって不可欠ではなかった。
<実施例8>
不活化オルトポックスウイルスは致死的ECTV感染からの保護に関してMVAよりも効率が低い
本発明者らのインビトロ実験により、UV不活化オルトポックスウイルスは排他的にTLR9アゴニストとして作用し、TLR9非依存的な形で刺激する能力は失っていることが示唆されている(図2)。オルトポックスウイルス抗原の存在下で起こる、この「TLR−9のみ」の刺激が、何らかの保護を開始するかどうかを調べるために、野生型マウスに致死用量のECTVをチャレンジし、1E+08 TCID50に相当するUV不活化CVAを皮下適用した。チャレンジを受けた5匹のマウスのうち、1匹は11日目に死亡したが、他のマウスは生き残った(図6b)。しかし、同じ用量の活性MVAを皮下に投与されたマウスとは対照的に、不活化CVAで処置されたマウスは全て、傾眠を含む強い病気の徴候を示し、チャレンジの第4週まで治癒しない尾病変を発症した。このように不活化オルトポックスウイルスは、ウイルス抗原および潜在的TLR9リガンドを提供するものの、活性MVAによって達成されるロバストな保護より劣った保護を誘導するようである。
<実施例9>
致死的ECTVチャレンジからのMVAによる即時保護は部分的にIFN−Iに依存しない
MVAの投与が他の免疫欠陥マウスを即時的に保護できるかどうかを解明するために、そしてまた、保護の機序を明らかにするために、ポックスウイルス感染を含むいくつかのウイルス感染に対して高度に感受性であることが知られているIFN−I受容体(IFN−I−R)欠損マウスを使って、実験を行った(26)。初期実験により、TLR9欠損マウスと同様に、IFN−I−R欠損マウスは、1E+02 TCID50のECTVによるチャレンジ後に、全て死亡することが証明された。ECTVに対するインビトロでのIFN−α産生はTLR9に依存するが、MVAに対するインビトロでのIFN−α産生はそうではないので、MVAが誘導するIFN−αは、TLR9欠損マウスにおける即時保護の必須部分であるという仮説を立てた。しかし、無処置対照IFN−I−R欠損マウスが1E+02 TCID50 ECTVのチャレンジで10日以内に死亡したのに対して、即時的なMVA処置は、驚いたことに、IFN−I−R欠損マウスを、1E+02および1E+03 TCID50 ECTVによるチャレンジから保護した(図7)。1E+02 TCID50のECTVをチャレンジした合計15匹のIFN−I−Rマウスのうち、1匹は足が腫脹し、倫理的理由から3週間後に安楽死させる必要があったが、他の14匹と、1E+03 ECTVをチャレンジした10匹のマウスの全ては、4週間以上にわたって無症状だった。しかし、より高用量のECTVでは、IFN−I−R欠損マウスの保護は、はるかにロバストでなくなった。1E+04 ECTVをチャレンジしたIFN−I−Rマウスの約半数は死亡し、1E+05 ECTVをチャレンジしたIFN−I−Rマウスは全て死亡した(図7)。これらの高用量は、同じバックグラウンドを持つ野生型マウスがMVAの存在下で生き残ることができたウイルスチャレンジに相当するので、MVAによる即時保護の機序の一つは、IFN−Iによって媒介されると結論した。しかし、MVAは機能的なIFN−I系の非存在下でもマウスを低および中用量の致死的ECTV感染から保護することができたので、ある程度の保護がIFN−I非依存的機序によって媒介されることは明らかである。
<実施例10>
ECTV感染におけるMVAによる即時保護は適応免疫応答に依存する
MVAは、細胞傷害性T細胞(CTL)応答および抗体形成(これらはどちらも病原性オルトポックスウイルスからの保護の一因になる)を含む強い適応免疫応答を誘導することが知られている(Wyattら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101:4590−4595(2004))。TLR9欠損マウスがDNAワクチン接種時に安定なCTL応答および抗体応答を開始できることは、以前に示されており、したがってこれらのマウスは確実な適応免疫応答を開始する総合的能力を持つことが証明されている(Spiesら,J.Immunol.171:5908−5912(2003);Babiukら,Immunology 113:114−120(2004))。
TLR9の不在がポックスウイルスに対する適応免疫応答に影響を及ぼすかどうかを調べるために、MVAを適用し、ポックスウイルスに対する抗体を血清においてELISAで測定し、ポックスウイルス特異的CTL応答を脾細胞および末梢血細胞においてB8Rに対するペンタマー染色によって測定した。TLR9欠損マウスは、ロバストなポックスウイルス特異的抗体応答およびCTL応答を開始し、MVAワクチン接種に応答して起こる適応免疫応答がTLR9の存在には依存しないことを示した。
次に、測定された適応免疫応答がECTV感染に対して長期間持続する保護になるかどうか、したがって、TLR9欠損マウスにおいてMVAが誘導する保護が即時的であるだけでなく(図5)、長期間持続するものでもあるかどうかを調べた。最初のチャレンジの9週間後に、上述の実験で得たTLR9欠損マウス(図5)と、9週間前にMVAだけを与えておいたマウスとに、1E+04 TCID50のECTVを使って再チャレンジを行った。9週間前にMVAを単独でまたはECTVと組み合わせて単回投与されていたTLR9欠損マウスは全て、1E+04 TCID50のECTVによるチャレンジを乗り切った。即時保護で観察されたように、MVA処置後のTLR9欠損マウスの長期間持続する保護は、LD50の500倍を超えた。これらの実験により、MVAによる従来のワクチン接種時にTLR9欠損マウスはポックスウイルス感染に対しておそらくは適応免疫応答に依存する実質的な免疫保護を開始し、それを持続させる能力を持つことが証明された。
即時保護プロトコールにおける適応免疫応答の役割を立証するために、Rag−1欠損マウスにMVAの存在下または非存在下でECTVをチャレンジした(図8)。Rag−1欠損マウスは成熟B細胞およびT細胞を欠き、それゆえに抗体およびCTLを産生することができない。MVAを同時投与しない場合、Rag−1欠損マウスはECTVチャレンジ(1E+02および1E+03)に応答して迅速に死亡した。MVAで同時処置すると、Rag−1マウスの生存期間は数日間延びたが、最終的には全てのマウスが死亡し、ECTVを乗り切るには、直ちに適用したMVAの存在下でさえ、適応免疫応答が実際のところ決定的に重要であることが証明された。
<実施例11>
ECTVによる感染の2日後に適用された場合にMVAはTLR9欠損マウスを完全に救う
痘瘡感染に関するWHO勧告には、暴露後できるだけ迅速なワクチン接種が含まれる。しかし、痘瘡に対する暴露後ワクチン接種の成功については逸話的歴史的情報しか存在せず、ほとんどの場合、個体のワクチン接種前状況は不明だった(Fenner,F.,Henderson,D.A.,Arita,I.,Jezek,Z.,およびLadnyi,I.D.「Smallpox and its eradication」(ジュネーブ:世界保健機関;1988);Mortimer,P.P.,Clin.Infect.Dis.36,622−629(2003))。そのうえ、感染モデルとしてサルにおけるMPXVまたはマウスにおけるVACVを使用した動物モデルでは、暴露後ワクチン接種に有意な延命効果は観察されなかった(Stittelaarら,Nature 439:745−748(2006);Staibら,J.Gen.Virol.87:2917−2921(2006))。このように本発明の結果は予想外である。
このシナリオと、ECTVの鼻腔内感染モデルがヒトにおける痘瘡感染の良い動物モデルとみなされるという事実とを考慮して(Esteban,D.J.およびBuller,R.M.,J.Gen.Virol.86:2645−2659(2005))、MVAによる致死的ECTV感染からのロバストな即時保護を、MVAによる治療的暴露後介入に拡大することができるかどうかを解析した。図9に示すように、致死用量のECTVへの暴露の2日後までに与えられたMVAは、明白な病気の徴候を何も示さずに、TLR9欠損マウスを死亡から完全に保護した(図9および未掲載データ)。致死用量のECTVの3日後になってからMVA処置を受けた群でも一部のマウスは生き残った(図9b)。これらのデータは、暴露後処置としての使用による、種特異的オルトポックスウイルス感染に対する死亡からの保護を示している。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.動物において感染性因子に対する免疫応答を誘導するための、ポックスウイルスを含む免疫原性組成物の調製を目的とする、前記ポックスウイルスの使用であって、前記免疫原性組成物がその感染性因子による感染の36時間前からその感染性因子による感染の72時間後までの間にその動物に投与され、前記ポックスウイルスがその動物中で複製不能である使用。
2.動物において感染性因子に対する免疫応答を誘導するための方法であって、その感染性因子による感染の36時間前からその感染性因子による感染の72時間後までの間に、その動物に、ポックスウイルスを含む免疫原性組成物を投与することを含み、前記ポックスウイルスがその動物中で複製不能である方法。
3.ポックスウイルスを含む免疫原性組成物が感染性因子による感染の36時間前から感染性因子による感染の48時間後までの間に投与される、上記1または2に記載の使用または方法。
4.動物がヒトである、上記1〜3のいずれか一項に記載の使用または方法。
5.ポックスウイルスが修飾ワクシニアウイルス・アンカラ(Modified Vaccinia Virus Ankara:MVA)である、上記1〜4のいずれか一項に記載の使用または方法。
6.感染性因子が複製可能なポックスウイルスである、上記1〜5のいずれか一項に記載の使用または方法。
7.MVAが10 〜5×10 TCID50の用量で投与される、上記5に記載の使用または方法。
8.MVAが10 〜5×10 TCID50の用量で投与される、上記7に記載の使用または方法。
9.MVAが静脈内、鼻腔内、筋肉内、または皮下に投与される、上記5に記載の使用または方法。
10.MVAがMVA−BN(登録商標)である、上記5に記載の使用または方法。
11.MVAが組換えMVAである、上記5に記載の使用または方法。
12.MVAが少なくとも一つの抗原エピトープをコードする少なくとも一つの異種核酸配列を含む、上記11に記載の使用または方法。
13.抗原エピトープが感染性因子の抗原エピトープである、上記12に記載の使用または方法。
14.感染性因子がウイルス、真菌、病原性単細胞真核および原核生物、ならびに寄生生物から選択される、上記13に記載の使用または方法。
15.ウイルスがインフルエンザウイルス、フラビウイルス、パラミクソウイルス、肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、および出血熱を引き起こすウイルスから選択される、上記14に記載の使用または方法。
16.感染性因子が炭疽菌である、上記14に記載の使用または方法。
17.免疫原性組成物が感染性因子による感染の24時間前から感染性因子による感染の48時間後までの間に投与される、上記6に記載の使用または方法。
18.免疫原性組成物が感染性因子による感染の0〜24時間前に投与される、上記17に記載の使用または方法。
19.免疫原性組成物が感染性因子による感染の0〜48時間後に投与される、上記17に記載の使用または方法。
20.感染性因子が炭疽菌である、上記18または19のいずれか一項に記載の使用または方法。
21.ヒトを含む動物において感染性因子に対する免疫応答を誘導するためのポックスウイルスを含む免疫原性組成物であって、前記ポックスウイルスがヒトを含む前記動物中で複製不能である免疫原性組成物。
22.前記免疫原性組成物が、ヒトを含む動物に、感染性因子による感染の36時間前から感染性因子による感染の72時間後までの間に投与される、上記21に記載の免疫原性組成物。
23.ポックスウイルスが修飾ワクシニアウイルス・アンカラ(MVA)である、上記21または22に記載の免疫原性組成物。
24.MVAがMVA−BN(登録商標)である、上記23に記載の免疫原性組成物。
25.ヒトを含む動物において保護的免疫応答を迅速に誘導するためのポックスウイルスを含むワクチンであって、ポックスウイルスがヒトを含む前記動物中で複製不能であるワクチン。
26.ポックスウイルスが修飾ワクシニアウイルス・アンカラ(MVA)である、上記25に記載のワクチン。
27.MVAがMVA−BN(登録商標)である、上記26に記載のワクチン。
28.ヒトを含む動物において保護的免疫応答を迅速に誘導するためのワクチンの調製を目的とするポックスウイルスの使用であって、そのポックスウイルスがヒトを含む前記動物中で複製不能である使用。
29.ポックスウイルスが修飾ワクシニアウイルス・アンカラ(MVA)である、上記28に記載の使用。
30.MVAがMVA−BN(登録商標)である、上記29に記載の使用。
31.ヒトを含む動物において感染性因子に対する免疫応答を誘導するためのキットであって、ポックスウイルスを含む免疫原性組成物を含み、前記ポックスウイルスがヒトを含む前記動物中で複製不能であるキット。
32.前記免疫原性組成物が感染性因子への暴露の0時間前から36時間前までの間の時点でヒトを含む前記動物に送達される、上記31に記載のキット。
33.前記免疫原性組成物が感染性因子への暴露の0時間後から72時間後までの間の時点でヒトを含む前記動物に送達される、上記31に記載のキット。
34.前記ポックスウイルスが修飾ワクシニアウイルス・アンカラ(MVA)である、上記31〜33のいずれか一項に記載のキット。
35.MVAがMVA−BN(登録商標)である、上記34に記載のキット。
36.MVAが10 〜5×10 TCID50の用量のMVA−BN(登録商標)である、上記35に記載のキット。
37.MVAが組換えMVAである、上記34に記載のキット。
38.感染性因子が痘瘡である、上記31〜37のいずれか一項に記載のキット。
39.感染性因子が炭疽菌である、上記37に記載のキット。
40.MVAを含む免疫原性組成物と、痘瘡への暴露後できるだけ早く、その免疫原性組成物をヒトに送達するようにという取扱説明とを含むキット。

Claims (14)

  1. ヒトにおいて痘瘡に対する保護的免疫応答を誘導するための、修飾ワクシニア・アンカラ(modified vaccinia Ankara:MVA)を含む免疫原性組成物の調製を目的とする、前記MVAの使用であって、前記免疫原性組成物が痘瘡への暴露後0〜48時間の範囲内でそのヒトに投与される、使用
  2. MVAウイルスが10〜5×10 TCID50の用量で投与される、請求項1に記載の使用
  3. MVAウイルスが10〜5×10 TCID50の用量で投与される、請求項2に記載の使用
  4. MVAウイルスが静脈内、鼻腔内、筋肉内、または皮下に投与される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用
  5. MVAウイルスがMVA−BNである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用
  6. MVAウイルスが組換えMVAウイルスである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用
  7. 免疫原性組成物が痘瘡への暴露後0〜24時間の間に投与される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用
  8. ヒトにおいて痘瘡に対する保護的免疫応答を誘導するための、修飾ワクシニア・アンカラ(MVA)を含むワクチンであって、前記ワクチンが痘瘡への暴露後0〜48時間の範囲内でそのヒトに投与される、ワクチン。
  9. MVAウイルスが10 〜5×10 TCID50の用量で投与される、請求項8に記載のワクチン。
  10. MVAウイルスが10 〜5×10 TCID50の用量で投与される、請求項9に記載のワクチン。
  11. ワクチンが静脈内、鼻腔内、筋肉内、または皮下に投与される、請求項8〜10のいずれか一項に記載のワクチン。
  12. MVAウイルスがMVA−BNである、請求項8〜11のいずれか一項に記載のワクチン。
  13. MVAウイルスが組換えMVAウイルスである、請求項8〜12のいずれか一項に記載のワクチン。
  14. ワクチンが痘瘡への暴露後0〜24時間の間に投与される、請求項8〜13のいずれか一項に記載のワクチン。
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