JP5983047B2 - 多孔質インプラント素材 - Google Patents

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Description

本発明は、生体内に埋め込まれるインプラントとして用いられる素材に係り、特に多孔質金属を用いたインプラント素材に関する。
生体内に埋め込まれて用いられるインプラントとして、特許文献1〜3に記載のものがある。
特許文献1記載のインプラント(骨補綴部材)は、ほぼ半球状をなし骨盤に形成した凹所に嵌合固定される臼蓋殻本体と棒状で大腿骨髄腔内に挿入される大腿骨ステムとを含む人工股関節であり、これら臼蓋殻本体と大腿骨ステムの表面に、肌荒れ面が周状に形成されるとともに、チタンなどの金属材料の薄板を積層固着して3次元的に連通する多数の孔を形成した多孔質体が設けられている。
特許文献2記載には、基体の周囲に、ビーズ、繊維、ワイヤーメッシュ等の金属性粒子からなる多孔質層が焼結により固着されたのインプラント(股関節軸)が開示されている。
特許文献3には、Co−Cr−Mo合金材料からなる人工膝関節本体の内面に、SiC粉末を介在してメッシュシートの積層シートにより形成されたチタンまたはチタン合金材料の被覆層を配置して拡散接合することによりインプラント(人工膝関節)を形成することが開示されている。
特許第3652037号公報 特開2000−288002号公報 特許第4393936号公報
ところで、この種のインプラントは、生体内で骨の一部として用いられるものであるため、骨に対する優れた結合性と、骨の一部を負担するのに見合う強度とが求められるところ、骨との結合性を追求すると強度不足となり易く、逆に強度を追求すると骨との結合が不充分となるなど、これらを両立させることが難しい。
いずれのインプラントも、中実の芯材と多孔層との複合構造となっているため、骨との結合性と、必要な強度との両方の要求に対応することができると考えられるが、一般に金属材料は強度が人骨よりも高いため、インプラントとして用いると、骨にかかる荷重のほとんどをインプラントが受けてしまい、ストレスシールディング現象(インプラントを埋め込んだ部分の周辺部の骨が脆弱化する現象)が生じる。
したがって、これらインプラントを人骨に近い強度とすることが求められるが、人間の骨は、六方晶系の結晶構造を持つ生体アパタイトとコラーゲン繊維の組み合わさった構造で、C軸方向に優先的に配向する強度特性を有している。このため、これら特許文献記載のように複合構造としたとしても、人骨に近いインプラントとすることは難しい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、人骨に近い強度特性を有し、ストレスシールディング現象の発生を回避しながらも骨との十分な結合性を確保することができ、曲げ荷重に対しても安定した強度を維持することができる多孔質インプラント素材を提供することを目的とする。
本発明の多孔質インプラント素材は、長さ方向に延びる中心部材と、該中心部材の両端面を除き外周面を囲む筒状部材と、該筒状部材の外周面に配置された外周部材とが接合されているとともに、前記中心部材及び外周部材は、連続した骨格により形成される複数の気孔が連通した三次元網目状構造を有する多孔質金属体であって、気孔率が60%〜98%であり、前記筒状部材は、気孔率が0%〜50%の緻密金属体であり、該筒状部材の外周部には、半径方向外方に延びる複数の凸状部が長さ方向に沿って形成され、前記外周部材は前記凸状部の間に配置され、外周面に対する面積占有率が30%〜90%で、半径方向の厚さが0.5mm〜3.6mmであり、外周面を平面に展開したときに一つの外周部材が外接する四角形の短手方向の長さが2mm〜外周面の周長×0.3mmであり、前記長さ方向に直交する方向の断面における前記緻密金属体の面積占有率が5%〜50%であり、前記長さ方向と平行な方向に圧縮したときの全体の縦弾性率が5GPa〜35GPaであり、全体の曲げ弾性率が10GPa〜35GPaであることを特徴とする。
この多孔質インプラント素材は、特に、気孔率の高い多孔質金属体内の連通した複数の気孔内に骨が容易に侵入して骨と一体に結合することができる。特に、中心部材と外周部材とを多孔質金属体により構成したので、外周面を骨と一体に結合し得るとともに、内部には骨の侵入と体液の循環を可能とし、確実に結合させることができる。また、主として気孔率が低い緻密金属体により機械的強度を確保することができる。この場合、気孔率が低い緻密金属体の気孔率が50%を超えると、機械的強度が不足する。一方、気孔率が高い多孔質金属体の気孔率が60%未満であると、骨との結合性が十分でなくなり、98%を超えると強度不足を招く。
また、緻密金属体により筒状体を構成していることにより、その長さ方向に沿う方向の圧縮強度とその直交方向の圧縮強度とが異なっており、人骨と同様の異方性を有する強度特性となるので、人骨の強度の方向と合わせて体内に埋め込むことにより、ストレスシールディング現象の発生防止に効果的である。
そして、緻密金属体の面積占有率が5%〜50%として、圧縮荷重に対する縦弾性率を5GPa〜35GPaと人の皮骨質と同程度に設定したことにより、ストレスシールディング現象の発生を有効に防止することができる。
しかも、緻密金属体が筒状に形成されているので、その長さ方向だけでなく、若干斜めに圧縮荷重や曲げが加わった場合でも、破壊等することなく、安定した強度を維持することができる。
なお、気孔率の低い緻密金属体には、パンチングメタルやエキスパンドメタルのような溶製材に孔や空間部を形成したものも用いることができ、気孔率とは、これら孔や空間部を含む金属体全体の体積に占める孔や空間部の体積の比率とする。気孔率が0%のものは孔等を有しない板状等の溶製材であり、チタン板等の無垢材が用いられる。
また、多孔質金属体からなる外周部材の面積占有率が30%未満であると、骨との固定性が不足する傾向にあり、90%を超えると、外力が作用したときに筒状部材の凸状部による支持を受けられずに外周部材が潰れるおそれがあり、骨との固定性が不足して、所望の曲げ弾性率を維持することが難しくなる。また、半径方向の厚さが0.5mm未満であると骨との結合力が不足し、3.6mmを超えると曲げ弾性を確保することが難しくなる。外周部材の短手方向の長さは、2mm未満では、多孔質金属体としての機能を発揮することが難しくなり、骨との固定性が不足する。その長さが周長×0.3mmを超えると外力が作用したときに筒状部材の凸状部による支持を受けられずに外周部材が潰れるおそれがあり、骨との固定性に不足をきたす。
そして、曲げ弾性率についても10GPa〜35GPaと人の皮骨質と同程度に設定したことにより、ストレスシールディング現象の発生を有効に防止することができる。
本発明の多孔質インプラント素材において、前記気孔率が高い多孔質金属体は、金属粉末と発泡剤を含有する発泡性スラリーを成形して発泡及び焼結させてなる発泡金属であるとよい。
発泡金属は、連続した骨格と気孔による三次元網目状構造を容易に形成することができるとともに、発泡剤の発泡によって気孔率を広い範囲で調整することができ、用いられる部位に合わせて適切に使用することができる。
本発明の多孔質インプラント素材によれば、中心部材と外周部材とを多孔質金属体により構成したので、外周面を骨と一体に結合し得るとともに、内部まで骨を侵入させて、確実に結合させることができる。また、長さ方向に沿う方向の縦弾性率及び曲げ弾性率が人骨に近く、このため、骨の方向と合わせて用いることにより、ストレスシールディング現象の発生を有効に回避することができる。しかも、緻密金属体により筒状部材を構成したので、軸心方向に対して斜めに作用する荷重に対しても破壊等を生じることなく安定した強度を維持することができる。
本発明に係る多孔質インプラント素材の一実施形態を示す(a)が上面図、(b)が正面図であり、便宜上、多孔質金属体と緻密金属体とを区別するために異なるハッチングを施している。 図1の多孔質インプラント素材におけるA−A線に沿う矢視断面図である。 多孔質金属体を製造するための成形装置を示す概略構成図である。 中心部材を切り出すために複数のグリーンシートを積層した状態を示す斜視図である。 多孔質金属体と緻密金属体とを接合する治具を示す概略構成図である。 多孔質金属体を製造するための他の成形装置を示す要部の概略構成図である。
以下、本発明に係る多孔質インプラント素材の実施形態を図面を参照しながら説明する。
本実施形態の多孔質インプラント素材1は、長さ方向に延びる中心部材2と、中心部材2の両端面を除き外周面を囲む筒状部材3と、筒状部材3の外周面に配置された外周部材4とを備えている。全体外径は8mm〜20mm、長さは200mm程度とされる。
中心部材2及び外周部材4は、連続した骨格5により形成される複数の気孔6が連通した三次元網目状構造を有する発泡金属からなる板状の多孔質金属体であり、後述するように、金属粉末と発泡剤等を含有する発泡性スラリーをシート状に成形して発泡させることにより形成したものであり、気孔6が表面全体に開口している。
筒状部材3は、パンチングメタル、エキスパンドメタル等の溶製材、又は通常の焼結金属、発泡度の低い低気孔率の発泡金属からなる緻密金属体である。この筒状部材3には、溶製材からなるもの、及び通常の焼結金属からなるものには機械加工等によって複数の孔7が形成され、また、低気孔率の発泡金属からなるものにも多数の気孔(多孔質金属体の気孔6と区別するため、緻密金属体の気孔も孔7と称する)が形成されているので、これら孔7を介して多孔質金属体の気孔6が連通状態となっている。
中心部材2は円柱状に形成されている。筒状部材3は、筒部8とその外周部の凸状部9とからなり、筒部8の内周面が中心部材2の外周面に接合され、凸状部9は、筒部8の半径方向外方に延びるように突出し、図示例では周方向に等間隔で8本形成され、それぞれ長さ方向の全長にわたって形成されている。また、外周部材4は、筒状部材3の凸状部9の間にそれぞれ接合されている。したがって、中心部材2及び筒状部材3の両端面が露出し、筒状部材3の凸状部9及び外周部材4が外周面にそれぞれ露出した状態となっている。
図2では緻密金属体(筒状部材3)の孔7は空間として記載しているが、両面に配置される多孔質金属体(中心部材2及び外周部材4)の一部又は全部が孔7内に入り込んだ状態となる場合もある。
これら多孔質金属体と緻密金属体とを組み合わせてなる多孔質インプラント素材1のうち、多孔質金属体からなる中心部材2及び外周部材4は、その気孔率が60%〜98%とされ、緻密金属体からなる筒状部材3は、気孔率が0%〜50%とされる。気孔の平均開口径は300μm〜2000μmが好適である。
緻密金属体の気孔率は、緻密金属体全体の体積に対する孔7の占有率であり、0%というのは、孔7を有しない無垢材を示す。筒状部材3の筒部8の厚さとしては0.5mm〜5mm程度がよい。
そして、この多孔質インプラント素材1では、その長さ方向が生体に埋め込む際の軸心方向Cとされ、緻密金属体である筒状部材3は、この軸心方向Cに直交する方向の断面における面積占有率が、5%〜50%となる形状に形成されている。例えば、図1においては、上下方向に沿う方向が軸心方向Cとされ、この軸心方向Cに直交する水平断面における面積占有率が5%〜50%とされている。
そして、この多孔質インプラント素材1全体としては、40%〜85%の気孔率に設定される。
また、外周部材4は、多孔質インプラント素材1の外周面全体に対する面積占有率が30%〜90%であり、半径方向の厚さが0.5mm〜3.6mmであり、外周面を平面に展開したときに一つの外周部材4が外接する四角形の短手方向の長さが2mm〜外周面の周長×0.3mmとされる。
そして、これら中心部材2、筒状部材3及び外周部材4の接合体としては、軸心方向Cと平行な方向に圧縮したときの縦弾性率が、5GPa〜35GPaとされ、曲げ弾性率が10GPa〜35GPaとされている。
次に、この多孔質インプラント素材1を製造する方法について説明する。
この多孔質インプラント素材1を構成する中心部材2及び外周部材4の多孔質金属体は、金属粉末、発泡剤等を含有する発泡性スラリーをドクターブレード法等によりシート状に成形して発泡・乾燥させることによりスポンジ状のグリーンシートを形成し、このグリーンシートを脱脂、焼結することにより製造される。
発泡性スラリーは、金属粉末、バインダ、可塑剤、界面活性剤、発泡剤を溶媒の水とともに混練して得られる。
金属粉末としては、生体為害性のない金属やその酸化物等の粉末からなり、例えば、純チタン、チタン合金、ステンレス鋼、コバルトクロム合金、タンタル、ニオブ等、が用いられる。このような粉末は、水素化脱水素法、アトマイズ法、化学プロセス法などによって製造することができる。平均粒径は0.5〜50μmが好適であり、スラリー中に、30〜80質量%含有される。
バインダ(水溶性樹脂結合剤)としては、メチルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ヒドロキシエチルメチルセルロース,カルボキシメチルセルロースアンモニウム,エチルセルロース,ポリビニルアルコールなどを使用することができる。
可塑剤は、スラリーを成形して得られる成形体に可塑性を付与するために添加され、例えばエチレングリコール,ポリエチレングリコール,グリセリンなどの多価アルコール、鰯油,菜種油,オリーブ油などの油脂、石油エーテルなどのエーテル類、フタル酸ジエチル,フタル酸ジNブチル,フタル酸ジエチルヘキシル,フタル酸ジオクチル,ソルビタンモノオレート,ソルビタントリオレート,ソルビタンパルミテート,ソルビタンステアレートなどのエステル等を使用することができる。
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩,α‐オレフィンスルホン酸塩,アルキル流酸エステル塩,アルキルエーテル硫酸エステル塩,アルカンスルホン酸塩等のアニオン界面活性剤,ポリエチレングリコール誘導体,多価アルコール誘導体などの非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤などを使用することができる。
発泡剤は、ガスを発生してスラリーに気泡を形成できるものであればよく、揮発性有機溶剤、例えば、ペンタン,ネオペンタン,ヘキサン,イソヘキサン,イソペプタン,ベンゼン,オクタン,トルエンなどの炭素数5〜8の非水溶性炭化水素系有機溶剤を使用することができる。この発泡剤の含有量としては、発泡性スラリーに対して0.1〜5重量%とすることが好ましい。
このように作成した発泡性スラリーSから、図3に示す成形装置20を用いて、多孔質金属体とするためのグリーンシートを形成する。
この成形装置20は、ドクターブレード法を用いてシートを形成する装置であり、発泡性スラリーSが貯留されるホッパ21、ホッパ21から供給された発泡性スラリーSを移送するキャリヤシート22、キャリヤシート22を支持するローラ23、キャリヤシート22上の発泡性スラリーSを所定厚さに成形するブレード(ドクターブレード)24、発泡性スラリーSを発泡させる恒温・高湿度槽25、および発泡したスラリーを乾燥させる乾燥槽26を備えている。
〈グリーンシート成形工程〉
成形装置20においては、まず、発泡性スラリーSをホッパ21に投入しておき、このホッパ21から発泡性スラリーSをキャリヤシート22上に供給する。キャリヤシート22は図の右方向へ回転するローラ23および支持プレートPによって支持されており、その上面が図の右方向へと移動している。キャリヤシート22上に供給された発泡性スラリーSは、キャリヤシート22とともに移動しながらブレード24によって板状に成形される。
次いで、板状の発泡性スラリーSは、所定条件(例えば温度30℃〜40℃、湿度75%〜95%)の恒温・高湿度槽25内を例えば10分〜20分かけて移動しながら発泡する。続いて、この恒温・高湿度槽25内で発泡したスラリーSは、所定条件(例えば温度50℃〜70℃)の乾燥槽26内を例えば10分〜20分かけて移動し、乾燥される。これにより、スポンジ状のグリーンシートGが得られる。
〈焼結工程〉
このようにして得られたグリーンシートGを脱脂・焼結することにより焼結体を形成する。具体的には、例えば真空中、温度550℃〜650℃、25分〜35分の条件下でグリーンシートG中のバインダ(水溶性樹脂結合剤)を除去(脱脂)した後、さらに真空中、温度700℃〜1300℃、60分〜120分の条件下で焼結する。
中心部材2とする多孔質金属体については、図4に示すようにグリーンシートGを複数枚積層した状態で脱脂・焼結することにより、比較的厚肉の焼結体を形成し、得られた焼結体をワイヤーカット等により、図4に鎖線で示すように積層方向と直交する方向から、円柱状に加工する。
そして、この中心部材2を別に作製した緻密金属体の筒状部材3内に嵌め込む。この気孔率の低い緻密金属体も、多孔質金属体と同様、純チタン、チタン合金、ステンレス鋼、コバルトクロム合金、タンタル、ニオブ等、が用いられる。
(接合工程)
次に、この中心部材2を筒状部材3内に嵌め込んだ状態の複合金属体に荷重をかけた状態で熱処理することにより、中心部材2と筒状部材3とを拡散接合する。
図5はこの拡散接合のための治具の例を示している。図5(a)に示す治具では、一対の敷き板15と重し16、及び倒れ止め用筒体17を備えている。中心部材2は筒状部材3に嵌め込んだ状態で、筒状部材3の端面から若干突出する長さに設定しておく。そして、倒れ止め用筒体17内に筒状部材3を収容した状態で敷き板15の上に起立させ、上方に突出する中心部材2の上端面に敷き板15を介して重し16を載せる。この状態で、例えば真空中で1000℃×3時間の熱処理を施す。
次に、筒状部材3の外周の凸状部9間に外周部材4を嵌め込み、図5(b)に示す治具を用いて拡散接合する。この治具は、内周面が円弧凹面とされた二分割の上型18と下型19、及び重し20からなる。筒状部材3の凸状部9間に外周部材4を嵌め込んだ状態で、上型18と下型19との間に挟み込み、重し20を載せて、図の場合と同様に、例えば真空中で1000℃×3時間の熱処理を施す。
なお、両治具において、倒れ止め用筒体17の内周面や、上型18及び下型19の内周面等の製品と接する部分には、固着防止のため、酸化イットリウム(Y)等による被膜を溶射等により形成しておく。
このように製造される多孔質インプラント素材1は、全体としては40%〜85%の気孔率を有する多孔質であるため、インプラントとして用いたときに骨の侵入が容易で、骨との結合性に優れている。
多孔質金属体からなる中心部材2及び外周部材4の気孔率を60%〜98%、緻密金属体からなる筒状部材3の気孔率を0%〜50%としたのは、緻密金属体の気孔率が50%を超えると、機械的強度が不足し、多孔質金属体の気孔率が60%未満であると、骨との結合性が十分でなくなり、98%を超えると強度不足を招くためである。
外周部材4も、その面積占有率が30%未満であると、骨との固定性が不足する傾向にあり、90%を超えると、外力が作用したときに筒状部材3の凸状部9による支持を受けられずに外周部材4が潰れるおそれがあり、骨との固定性が不足して、所望の曲げ弾性率を維持することが難しくなる。外周部材4の半径方向の厚さが0.5mm未満であると骨との結合力が不足し、3.6mmを超えると曲げ弾性を確保することが難しくなる。また、外周部材4の短手方向の長さは、2mm未満では、多孔質金属体としての機能を発揮することが難しくなり、骨との固定性が不足する。その長さが周長×0.3mmを超えると外力が作用したときに筒状部材3の凸状部9による支持を受けられずに外周部材4が潰れるおそれがあり、骨との固定性に不足をきたす。
また、軸心方向Cに直交する方向の断面における筒状部材(緻密金属体)3の面積占有率が5%〜50%として、圧縮荷重に対する縦弾性率を5GPa〜35GPa、曲げ弾性率を10GPa〜35GPaと人の皮骨質と同程度に設定したことにより、圧縮強度に異方性を有して、人骨に近い強度特性を有している。したがって、骨の一部として使用する場合、人骨の強度の方向性に合わせて体内に埋め込むことにより、ストレスシールディング現象の発生を効果的に回避することができる。具体的には、筒状部材3の長さ方向に沿う軸心方向Cを骨のC軸方向に合わせるとよい。
また、緻密金属体により筒状部材3を形成したので、軸心方向Cに対して若干傾斜した方向から荷重や曲げが作用した場合でも、破壊等を生じることはない。
なお、気孔率は、多孔質金属体(中心部材、外周部材)及び緻密金属体(筒状部材)の単体で測定される気孔率としたが、これらが接合した多孔質インプラント素材から測定する場合は、その断面から緻密金属体及び多孔質金属体のそれぞれの部分を特定し、その金属部分の比率から測定することができる。緻密金属体の孔7内に多孔質金属体の一部又は全部が入り込んでいる場合でも、その孔7の部分を空間として緻密金属体の気孔率を算出すればよい。
筒状部材としては、JIS T7401−1:2002のチタンII種に適合するインプラント用チタンを使用した。中心部の孔と側面の溝を加工することにより筒状部材とし、その筒部に複数個の孔を開けた。
中心部材及び外周部材となる多孔質金属体は、以下のように作製した。
スラリー発泡法を用いてグリーンシートを作製し、そのグリーンシートから多孔質金属体を作製した。原料としては、平均粒径20μmのチタンの金属粉末、バインダとしてポリビニルアルコール、可塑剤としてグリセリン、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩、発泡剤としてヘプタンを、溶媒の水とともに混練することにより、スラリーを作製した。そのスラリーを板状に成形し、乾燥させることで、グリーンシートを作製した。グリーンシートの寸法は、120mm×70mm、厚さ2mmとなる程度に設定した。
そして、中心部材としては、図4に示すように、グリーンシートを7枚積層した状態で脱脂・焼結し、その積層方向と直交する方向からワイヤーカットにより、長さ101mm、太さが筒状部材の内径より0.5%太い棒状に切りだした。
また、外周部材は、グリーンシートを、比較例2ではワイヤーカットにより、それ以外ではレーザーカットによりそれぞれ切断して作製した。
実施例1,2及び比較例2に関しては、筒状部材内に中心部材を2本継ぎ足すように挿入し、図5(a)に示す治具を用いて1000℃で3時間熱処理して拡散接合した。実施例3、比較例1に関しては、筒状部材内に、細かく切断した多孔質金属体を充填し、そのまま脱脂・焼結した。
いずれも外周部材は、図5(b)に示す治具を用いて1000℃で3時間熱処理して拡散接合した。
各試料につき、各部の寸法は表1に示す通りであった。長さはいずれも200mmとした。
これら試料につき、0.2%耐力、縦弾性率、曲げ弾性率を測定した。
0.2%耐力及び縦弾性率については、JIS H7902:2008(ポーラス金属の圧縮試験方法)に準じた。各素材から高さ10mmの試料を5個ずつ切断し、5個の測定値の平均値を求めた。
曲げ弾性率は、JIS T0312:2009(金属製骨接合用品の曲げ試験)に準じて、長さ200mmの素材に対して、支持ローラー間150mm、その間の荷重負荷ローラー間隔を50mmとして、4点曲げ剛性(EI)を測定し、試料を一体の円柱とみなして断面二次モーメント(I)を算出し、曲げ弾性率(E)を求めた。
Figure 0005983047
表1から明らかなように、実施例では、縦弾性率が5GPa〜35GPa、曲げ弾性率が10GPa〜35GPaであり、強度が安定していることがわかる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、気孔率が高い多孔質金属体と気孔率が低い緻密金属体との二種類の気孔率の金属体を接合した例としたが、三種類以上の気孔率の金属体を接合してもよい。
また、図1に示す例では、円柱体状として両端面を平坦面に形成したが、生体との固定性をさらに高めるために、外表面に凹凸や局部的な突起を形成してもよい。その場合、気孔率の低い金属体に凹凸や突起を形成すると効果的である。
また、インプラントとして用いる場合に、目的とする強度の方向性を確保できれば、必要に応じて軸心方向とは異なる方向の接合界面によって接合した多孔質金属体又は気孔率の低い金属体を加えてもよい。
また、スラリーをドクターブレード法によってシート状に成形する場合、図6に示すように、ホッパを複数並べて、発泡剤の混入量の異なる発泡性スラリーを積層状態に供給して、積層状態のグリーンシートを成形するようにしてもよい。
さらに、このようなドクターブレード法によって発泡、成形する方法以外にも、減圧発泡による方法としてもよい。具体的には、スラリーから気泡および溶存ガスを一旦除去した後に、そのスラリーに添加ガスを導入しながら攪拌することにより、スラリー中に添加ガスからなる気泡核を分散形成した状態に発泡性スラリーを製造する。そして、この気泡核を含むスラリーを所定圧力に減圧するとともに、その所定圧力におけるスラリーの凝固点を超え沸点未満の予備冷却温度に保持することにより、気泡核を膨張させ、その気泡核の膨張により体積が増大したスラリーを真空凍結乾燥させる。このようにして形成したグリーン体を焼結して多孔質金属体を形成するという方法である。
1 多孔質インプラント素材
2 中心部材
3 筒状部材
4 外周部材
5 骨格
6 気孔
7 孔
8 筒部
9 凸状部
15 敷き板
16 重し
17 倒れ止め用筒体
18 上型
19 下型
20 成形装置
21 ホッパ
22 キャリヤシート
23 ローラ
24 ブレード
25 高湿度槽
26 乾燥槽
C 軸心方向
G グリーンシート
P 支持プレート
S :発泡性スラリー

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  1. 長さ方向に延びる中心部材と、該中心部材の両端面を除き外周面を囲む筒状部材と、該筒状部材の外周面に配置された外周部材とが接合されているとともに、前記中心部材及び外周部材は、連続した骨格により形成される複数の気孔が連通した三次元網目状構造を有する多孔質金属体であって、気孔率が60%〜98%であり、前記筒状部材は、気孔率が0%〜50%の緻密金属体であり、該筒状部材の外周部には、半径方向外方に延びる複数の凸状部が長さ方向に沿って形成され、前記外周部材は前記凸状部の間に配置され、外周面に対する面積占有率が30%〜90%で、半径方向の厚さが0.5mm〜3.6mmであり、外周面を平面に展開したときに一つの外周部材が外接する四角形の短手方向の長さが2mm〜外周面の周長×0.3mmであり、前記長さ方向に直交する方向の断面における前記緻密金属体の面積占有率が5%〜50%であり、前記長さ方向と平行な方向に圧縮したときの全体の縦弾性率が5GPa〜35GPaであり、全体の曲げ弾性率が10GPa〜35GPaであることを特徴とする多孔質インプラント素材。
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