JP5983047B2 - 多孔質インプラント素材 - Google Patents
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Description
特許文献1記載のインプラント(骨補綴部材)は、ほぼ半球状をなし骨盤に形成した凹所に嵌合固定される臼蓋殻本体と棒状で大腿骨髄腔内に挿入される大腿骨ステムとを含む人工股関節であり、これら臼蓋殻本体と大腿骨ステムの表面に、肌荒れ面が周状に形成されるとともに、チタンなどの金属材料の薄板を積層固着して3次元的に連通する多数の孔を形成した多孔質体が設けられている。
特許文献2記載には、基体の周囲に、ビーズ、繊維、ワイヤーメッシュ等の金属性粒子からなる多孔質層が焼結により固着されたのインプラント(股関節軸)が開示されている。
特許文献3には、Co−Cr−Mo合金材料からなる人工膝関節本体の内面に、SiC粉末を介在してメッシュシートの積層シートにより形成されたチタンまたはチタン合金材料の被覆層を配置して拡散接合することによりインプラント(人工膝関節)を形成することが開示されている。
したがって、これらインプラントを人骨に近い強度とすることが求められるが、人間の骨は、六方晶系の結晶構造を持つ生体アパタイトとコラーゲン繊維の組み合わさった構造で、C軸方向に優先的に配向する強度特性を有している。このため、これら特許文献記載のように複合構造としたとしても、人骨に近いインプラントとすることは難しい。
そして、緻密金属体の面積占有率が5%〜50%として、圧縮荷重に対する縦弾性率を5GPa〜35GPaと人の皮骨質と同程度に設定したことにより、ストレスシールディング現象の発生を有効に防止することができる。
なお、気孔率の低い緻密金属体には、パンチングメタルやエキスパンドメタルのような溶製材に孔や空間部を形成したものも用いることができ、気孔率とは、これら孔や空間部を含む金属体全体の体積に占める孔や空間部の体積の比率とする。気孔率が0%のものは孔等を有しない板状等の溶製材であり、チタン板等の無垢材が用いられる。
そして、曲げ弾性率についても10GPa〜35GPaと人の皮骨質と同程度に設定したことにより、ストレスシールディング現象の発生を有効に防止することができる。
発泡金属は、連続した骨格と気孔による三次元網目状構造を容易に形成することができるとともに、発泡剤の発泡によって気孔率を広い範囲で調整することができ、用いられる部位に合わせて適切に使用することができる。
本実施形態の多孔質インプラント素材1は、長さ方向に延びる中心部材2と、中心部材2の両端面を除き外周面を囲む筒状部材3と、筒状部材3の外周面に配置された外周部材4とを備えている。全体外径は8mm〜20mm、長さは200mm程度とされる。
図2では緻密金属体(筒状部材3)の孔7は空間として記載しているが、両面に配置される多孔質金属体(中心部材2及び外周部材4)の一部又は全部が孔7内に入り込んだ状態となる場合もある。
緻密金属体の気孔率は、緻密金属体全体の体積に対する孔7の占有率であり、0%というのは、孔7を有しない無垢材を示す。筒状部材3の筒部8の厚さとしては0.5mm〜5mm程度がよい。
そして、この多孔質インプラント素材1全体としては、40%〜85%の気孔率に設定される。
そして、これら中心部材2、筒状部材3及び外周部材4の接合体としては、軸心方向Cと平行な方向に圧縮したときの縦弾性率が、5GPa〜35GPaとされ、曲げ弾性率が10GPa〜35GPaとされている。
この多孔質インプラント素材1を構成する中心部材2及び外周部材4の多孔質金属体は、金属粉末、発泡剤等を含有する発泡性スラリーをドクターブレード法等によりシート状に成形して発泡・乾燥させることによりスポンジ状のグリーンシートを形成し、このグリーンシートを脱脂、焼結することにより製造される。
発泡性スラリーは、金属粉末、バインダ、可塑剤、界面活性剤、発泡剤を溶媒の水とともに混練して得られる。
この成形装置20は、ドクターブレード法を用いてシートを形成する装置であり、発泡性スラリーSが貯留されるホッパ21、ホッパ21から供給された発泡性スラリーSを移送するキャリヤシート22、キャリヤシート22を支持するローラ23、キャリヤシート22上の発泡性スラリーSを所定厚さに成形するブレード(ドクターブレード)24、発泡性スラリーSを発泡させる恒温・高湿度槽25、および発泡したスラリーを乾燥させる乾燥槽26を備えている。
成形装置20においては、まず、発泡性スラリーSをホッパ21に投入しておき、このホッパ21から発泡性スラリーSをキャリヤシート22上に供給する。キャリヤシート22は図の右方向へ回転するローラ23および支持プレートPによって支持されており、その上面が図の右方向へと移動している。キャリヤシート22上に供給された発泡性スラリーSは、キャリヤシート22とともに移動しながらブレード24によって板状に成形される。
このようにして得られたグリーンシートGを脱脂・焼結することにより焼結体を形成する。具体的には、例えば真空中、温度550℃〜650℃、25分〜35分の条件下でグリーンシートG中のバインダ(水溶性樹脂結合剤)を除去(脱脂)した後、さらに真空中、温度700℃〜1300℃、60分〜120分の条件下で焼結する。
中心部材2とする多孔質金属体については、図4に示すようにグリーンシートGを複数枚積層した状態で脱脂・焼結することにより、比較的厚肉の焼結体を形成し、得られた焼結体をワイヤーカット等により、図4に鎖線で示すように積層方向と直交する方向から、円柱状に加工する。
そして、この中心部材2を別に作製した緻密金属体の筒状部材3内に嵌め込む。この気孔率の低い緻密金属体も、多孔質金属体と同様、純チタン、チタン合金、ステンレス鋼、コバルトクロム合金、タンタル、ニオブ等、が用いられる。
次に、この中心部材2を筒状部材3内に嵌め込んだ状態の複合金属体に荷重をかけた状態で熱処理することにより、中心部材2と筒状部材3とを拡散接合する。
図5はこの拡散接合のための治具の例を示している。図5(a)に示す治具では、一対の敷き板15と重し16、及び倒れ止め用筒体17を備えている。中心部材2は筒状部材3に嵌め込んだ状態で、筒状部材3の端面から若干突出する長さに設定しておく。そして、倒れ止め用筒体17内に筒状部材3を収容した状態で敷き板15の上に起立させ、上方に突出する中心部材2の上端面に敷き板15を介して重し16を載せる。この状態で、例えば真空中で1000℃×3時間の熱処理を施す。
なお、両治具において、倒れ止め用筒体17の内周面や、上型18及び下型19の内周面等の製品と接する部分には、固着防止のため、酸化イットリウム(Y2O3)等による被膜を溶射等により形成しておく。
多孔質金属体からなる中心部材2及び外周部材4の気孔率を60%〜98%、緻密金属体からなる筒状部材3の気孔率を0%〜50%としたのは、緻密金属体の気孔率が50%を超えると、機械的強度が不足し、多孔質金属体の気孔率が60%未満であると、骨との結合性が十分でなくなり、98%を超えると強度不足を招くためである。
また、緻密金属体により筒状部材3を形成したので、軸心方向Cに対して若干傾斜した方向から荷重や曲げが作用した場合でも、破壊等を生じることはない。
中心部材及び外周部材となる多孔質金属体は、以下のように作製した。
スラリー発泡法を用いてグリーンシートを作製し、そのグリーンシートから多孔質金属体を作製した。原料としては、平均粒径20μmのチタンの金属粉末、バインダとしてポリビニルアルコール、可塑剤としてグリセリン、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩、発泡剤としてヘプタンを、溶媒の水とともに混練することにより、スラリーを作製した。そのスラリーを板状に成形し、乾燥させることで、グリーンシートを作製した。グリーンシートの寸法は、120mm×70mm、厚さ2mmとなる程度に設定した。
また、外周部材は、グリーンシートを、比較例2ではワイヤーカットにより、それ以外ではレーザーカットによりそれぞれ切断して作製した。
実施例1,2及び比較例2に関しては、筒状部材内に中心部材を2本継ぎ足すように挿入し、図5(a)に示す治具を用いて1000℃で3時間熱処理して拡散接合した。実施例3、比較例1に関しては、筒状部材内に、細かく切断した多孔質金属体を充填し、そのまま脱脂・焼結した。
いずれも外周部材は、図5(b)に示す治具を用いて1000℃で3時間熱処理して拡散接合した。
各試料につき、各部の寸法は表1に示す通りであった。長さはいずれも200mmとした。
0.2%耐力及び縦弾性率については、JIS H7902:2008(ポーラス金属の圧縮試験方法)に準じた。各素材から高さ10mmの試料を5個ずつ切断し、5個の測定値の平均値を求めた。
曲げ弾性率は、JIS T0312:2009(金属製骨接合用品の曲げ試験)に準じて、長さ200mmの素材に対して、支持ローラー間150mm、その間の荷重負荷ローラー間隔を50mmとして、4点曲げ剛性(EI)を測定し、試料を一体の円柱とみなして断面二次モーメント(I)を算出し、曲げ弾性率(E)を求めた。
例えば、気孔率が高い多孔質金属体と気孔率が低い緻密金属体との二種類の気孔率の金属体を接合した例としたが、三種類以上の気孔率の金属体を接合してもよい。
また、図1に示す例では、円柱体状として両端面を平坦面に形成したが、生体との固定性をさらに高めるために、外表面に凹凸や局部的な突起を形成してもよい。その場合、気孔率の低い金属体に凹凸や突起を形成すると効果的である。
また、スラリーをドクターブレード法によってシート状に成形する場合、図6に示すように、ホッパを複数並べて、発泡剤の混入量の異なる発泡性スラリーを積層状態に供給して、積層状態のグリーンシートを成形するようにしてもよい。
2 中心部材
3 筒状部材
4 外周部材
5 骨格
6 気孔
7 孔
8 筒部
9 凸状部
15 敷き板
16 重し
17 倒れ止め用筒体
18 上型
19 下型
20 成形装置
21 ホッパ
22 キャリヤシート
23 ローラ
24 ブレード
25 高湿度槽
26 乾燥槽
C 軸心方向
G グリーンシート
P 支持プレート
S :発泡性スラリー
Claims (1)
- 長さ方向に延びる中心部材と、該中心部材の両端面を除き外周面を囲む筒状部材と、該筒状部材の外周面に配置された外周部材とが接合されているとともに、前記中心部材及び外周部材は、連続した骨格により形成される複数の気孔が連通した三次元網目状構造を有する多孔質金属体であって、気孔率が60%〜98%であり、前記筒状部材は、気孔率が0%〜50%の緻密金属体であり、該筒状部材の外周部には、半径方向外方に延びる複数の凸状部が長さ方向に沿って形成され、前記外周部材は、前記凸状部の間に配置され、外周面に対する面積占有率が30%〜90%で、半径方向の厚さが0.5mm〜3.6mmであり、外周面を平面に展開したときに一つの外周部材が外接する四角形の短手方向の長さが2mm〜外周面の周長×0.3mmであり、前記長さ方向に直交する方向の断面における前記緻密金属体の面積占有率が5%〜50%であり、前記長さ方向と平行な方向に圧縮したときの全体の縦弾性率が5GPa〜35GPaであり、全体の曲げ弾性率が10GPa〜35GPaであることを特徴とする多孔質インプラント素材。
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