JP5980653B2 - 付着物分析方法および付着物分析装置 - Google Patents
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Description
そこで、パルス炭酸ガスレーザを基体表面の付着物に向けて照射し、レーザアブレーションにより蒸発させた付着物の粒子を、雰囲気ガスのガスプラズマ中で発光するようにして分析するレーザアブレーション利用の試料分析方法が開示されている(特許文献1参照)。
したがって、特許文献1に記載の表面付着物の分析では、パルス炭酸ガスレーザの照射で固体表面の付着物質だけをアブレーションによって蒸発させ、蒸発した付着物質の粒子をレーザ誘起ガスプラズマ中に流れ込ませるようにして、原子化、励起させることによりプラズマ化して分析するようにしている。
しかしながら、パルス炭酸ガスレーザが直接照射された固体表面自体は、たとえアブレーションが生じていなくても、付着物のアブレーションが生じる程度のエネルギー密度のパルス炭酸ガスレーザが直接照射される結果、相当な損傷を受けることになる。
そこで、本発明は、レーザプラズマ分析法による付着物のスペクトル分析を行う際に、固体表面にダメージを与えることなく付着物を分析する分析方法、および、分析装置を提供することを目的とする。
また、「プラズマ発生用レーザ」には、パルス炭酸ガスレーザ(波長10.6μm)が好ましい。これは、CO2レーザのエネルギーはガスプラズマによく吸収されることから、基体(固体)表面のアブレーションが発生せず、表面の損傷がほとんど起こらないためである。しかしながら、これに限らず、金属製シート部材がアブレーションされることなく、雰囲気ガスのガスプラズマを発生させることが可能なレーザ光源(すなわちレーザ誘起ガスプラズマを発生することができるレーザ光源)であれば採用できる。具体的には、波長が10μm以上であるレーザであれば問題なくプラズマ発生用レーザとして使用することができる。
さらに、波長が10μm以下のレーザであっても、例えば波長が5μm以上程度のレーザであれば、レーザビームのエネルギー密度を調整するとともに金属製シート部材の金属材料としてアブレーション閾値が高い材料を選択することで、本発明のプラズマ発生用レーザのレーザ光源として採用することができる。また、プラズマ発生の補助的役割としてベータ線を同時に照射し、ガスプラズマ発生のきっかけとなる“電子”を作り出すことも可能である。これにより、ある程度の量の電子・イオン対(初期プラズマ)を作り出し、結果的により強力なプラズマを発生させることができる。
すなわち、脱離用レーザビームは、分析対象への照射において固体表面に損傷を与えることなく付着物を脱離することを目的としており、ガスプラズマを発生させる必要がないことから、ガスプラズマ発生用のレーザビームよりもエネルギー密度は小さくてよい。
また、レーザビームは発振波長によってガスプラズマによる吸収の容易性(つまりガスプラズマの発生の容易さ)が異なる。ガスプラズマ発生用のレーザビームには、ガスプラズマに吸収されやすい発振波長のレーザを選択する観点からパルス炭酸ガスレーザ等を採用するのが好ましい。しかし、脱離用レーザビームはガスプラズマを発生させる目的で使用するものではないので、ガスプラズマによる吸収の容易性についてあまり考慮する必要がなく、したがって発振波長についてはプラズマ発生用のレーザビームに比べて自由に選択することができる。そこで、プラズマ発生用光源からのレーザビームの一部を分岐し、エネルギー密度を十分に小さくするようにして脱離用レーザビームとすることもでき、また、紫外線レーザのように波長が異なるレーザ光源を専用に設けることもできる。
また、前記付着物分析装置において、前記レーザビーム斜め照射光学系により照射されるレーザビームよりも小さいエネルギー密度であって、単独の照射では前記シート部材のアブレーションおよび雰囲気ガスのガスプラズマを発生することのない脱離用レーザビームを照射する補助レーザビーム照射光学系をさらに設け、当該補助レーザビーム照射光学系は、前記シート部材の通気口を通して固体表面に照射させるようにしてもよい。
本発明によれば、プラズマ発生用レーザビームが、直接、固体表面に照射されることがほとんどないので、固体表面にダメージを与えることなく付着物のみを脱離させ、プラズマ化して分析することができる。
また、本発明によれば、プラズマ発生用レーザビームを斜めに照射するので、従来のように略垂直入射する場合に比べて照射面積が広がり、原子励起される領域が広がるので、分析感度を向上させることができるという効果をも奏する。
なお、波長が5μm以上のレーザ光源であればガスプラズマ発生用として問題なく使用できる。レーザ光源の出射口の前にはシャッタ13aが設けてあり、必要なときに照射することができるようにしてある。
金属メッシュ14は、図3に示すように、例えば線径が0.05〜0.2mm程度の細線14aを格子状に編んで開き目14b(通気口となる空間)が形成されるようにしてあり、メッシュの空間率は40〜80%程度としたものが用いられる。このようにすることで、第一光路L1のレーザビームを斜め照射したときに、図4に示すように、試料表面Fが細線14aの影となって、第一光路L1からのレーザビームが直接照射されないようにすることができる。
光スペクトル測定器17aは、分光器と、多波長同時に測定可能なフォトダイオードアレイ光検出器とを備えており、測定しようとする波長範囲のプラズマ発光が同時に測定できる。
そしてレーザ光源13からパルスレーザを照射し、第一光路L1に沿ってレーザビームを金属メッシュ14へ斜め照射することによりヘリウムガスのガスプラズマを発生させるとともに、試料Sの表面付着物の脱離を行わせる。また、エネルギー密度を十分に小さくした第二光路L2のレーザビームを直接基板表面に照射することにより、付着物の脱離を促進させる。これらのレーザ照射により、付着物が試料Sから脱離してガスプラズマ中に流れ込み、プラズマ化して発光する。このとき付着物に含まれる元素特有の波長の発光光が生じる。
この発光を光スペクトル測定部17によって検出し、発光スペクトルデータを表示することで付着物の元素分析が行われる。
得られた発光スペクトルデータは、Crスペクトル信号強度とノイズ信号との強度比が100:1程度であることから、検出限界原子数を推定すると1013原子/cm2となる。これは半導体製造過程での検査で求められている検出限界に適合しており、半導体業界で用いる付着物分析装置として有効になるものである。
また、上記実施形態では1つのレーザ光源13(パルス炭酸ガスレーザ)の照射光を分岐したが、第二照射光学系用にレーザ光源をもう1台設けてもよい。
本実施形態では、第二照射光学系21として第二のレーザ光源である紫外線レーザ22、シャッタ16eを用いて、パルス炭酸ガスレーザ13とは独立してレーザビームを照射することができるようにしている。したがって、パルス炭酸ガスレーザ13と紫外線レーザ22とを同時に照射して分析することもできるが、時間差を与えて照射することもできる。
また、先にパルス炭酸ガスレーザ13の照射により雰囲気ガス(He)のガスプラズマを発生して1回目の分析を行い、その後、紫外線レーザ22も照射して2回目の分析を行い、差分データを取得することもできる。
以上、本発明について説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変形実施することができる。
11 チャンバ
13 パルス炭酸ガスレーザ光源(プラズマ発生用レーザ光源)
14 金属メッシュ(金属製シート部材)
15 第一照射光学系(レーザビーム斜め照射光学系)
16,21 第二照射光学系(補助レーザビーム照射光学系)
17 光スペクトル測定部
18 制御部
22 紫外線レーザ
Claims (9)
- 分析対象の固体表面上に、通気口を有する金属製のシート部材を載置し、
前記シート部材の金属表面に向けて照射したときに、当該シート部材自体のアブレーションを生じさせることなくシート部材近傍の雰囲気ガスをガスプラズマ化することが可能なプラズマ発生用レーザビームを、前記シート部材の金属表面には照射され、かつ、前記固体表面には直接照射されない角度で、前記シート部材の金属表面に対して斜め方向から照射し、
前記シート部材の金属表面近傍に発生したプラズマに含まれる前記固体表面の付着物質に起因する発光の発光スペクトルを計測する付着物分析方法。 - 前記通気口を有する金属製シート部材が、金属板に多数の細孔または多数の細いスリットが形成されたマスク、または、金属細線で形成されたメッシュである請求項1に記載の付着物分析方法。
- 前記プラズマ発生用レーザビームよりも小さいエネルギー密度であって、単独の照射では前記シート部材のアブレーションおよび雰囲気ガスのガスプラズマを発生することのない、前記固体表面の付着物を脱離させるための脱離用レーザビームを、前記シート部材の通気口を通して固体表面に直接照射させる請求項1または請求項2のいずれかに記載の付着物分析方法。
- 前記脱離用レーザビームは、前記プラズマ発生用レーザビームと同じレーザ光源からのレーザビームの一部を分岐するようにして生成した請求項3に記載の付着物分析方法。
- 前記脱離用レーザビームは、前記プラズマ発生用レーザビームのレーザ光源とは異なるレーザ光源により生成される請求項3に記載の付着物分析方法。
- 固体表面に付着した物質をプラズマ化して分析する付着物分析装置であって、
通気口を有し分析対象の固体表面上に載置される金属製のシート部材と、
前記シート部材の金属表面に向けて照射したときに、当該シート部材自体のアブレーションを生じさせることなくシート部材近傍の雰囲気ガスをガスプラズマ化することが可能なレーザビームを発生させるプラズマ発生用のレーザ光源と、
前記プラズマ発生用のレーザ光源からのレーザビームを、前記シート部材の金属表面には照射され、かつ、前記固体表面には直接照射されない角度で、前記シート部材の金属表面に対して斜め方向から照射させるレーザビーム斜め照射光学系と、
前記シート部材近傍に発生したプラズマの発光スペクトルを計測するスペクトル測定部とを備えたことを特徴とする付着物分析装置。 - 前記レーザビーム斜め照射光学系により照射されるレーザビームよりも小さいエネルギー密度であって、単独の照射では前記シート部材のアブレーションおよび雰囲気ガスのガスプラズマを発生することのない脱離用レーザビームを照射する補助レーザビーム照射光学系をさらに設け、
当該補助レーザビーム照射光学系は、前記シート部材の通気口を通して固体表面に照射させる請求項6に記載の付着物分析装置。 - 前記補助レーザビーム照射光学系のレーザビームは、前記プラズマ発生用レーザ光源からのレーザビームの一部を、光路分割手段で分岐することにより生成される請求項7に記載の付着物分析装置。
- 前記補助レーザビーム照射光学系のレーザビームは、プラズマ発生用のレーザ光源とは異なる光源により生成される請求項7に記載の付着物分析装置。
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