JP5980292B2 - β−セクレターゼ阻害剤及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤 - Google Patents

β−セクレターゼ阻害剤及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤 Download PDF

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Description

本発明は、抑肝散又は抑肝散に含まれる生薬の揮発性油又は揮発性油成分を有効成分として含有するβ−セクレターゼ阻害剤及びアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤に関する。
天然物から特定の薬理作用のある有用な物質又は成分を探索して創薬に利用することが、一般に行われている。天然物からのそのような有用な物質又は成分の単離は、しばしば、発症メカニズムの解明、新たな治療薬への応用などにもつながるため、このような手法は頻繁に利用されている。
例えば、漢方薬である抑肝散(ヨクカンサン)は、7種の生薬を一定の割合で混合した生薬混合物であり、虚弱な体質で神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症(神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症、歯ぎしり、更年期障害、血の道症)に効果があることが知られている(非特許文献1参照)。
日本薬局方外 生薬規格 2012 増補版 p.277
本発明は、抑肝散又は抑肝散を構成する生薬に含まれる有用な成分を単離し、該成分を利用した新たな医薬組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、抑肝散又は抑肝散に含まれる7種の生薬の揮発性油のβ−セクレターゼ阻害活性及びアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害活性について鋭意研究を重ねた結果、抑肝散及びそれに含まれる特定の生薬(甘草)の揮発性油がβ−セクレターゼ活性に対する優れた阻害作用を有するとともに、抑肝散及びそれに含まれる特定の生薬(当帰及び釣藤鈎)の揮発性油がアセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性に対する優れた阻害作用を有することを見出し、さらに研究を重ねることにより本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記のβ−セクレターゼ阻害剤等を提供することである。
項1. 抑肝散又は甘草の揮発性油を有効成分として含有するβ−セクレターゼ阻害剤。
項2. 前記揮発性油が、含酸素フラクションである、上記項1に記載のβ−セクレターゼ阻害剤。
項3. 前記含酸素フラクションが、ペオノール、シンナムアルデヒド、メチルオイゲノール、及び3,4,5−トリメトキシトルエンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記項2に記載のβ−セクレターゼ阻害剤。
項4. 抑肝散、当帰又は釣藤鈎の揮発性油を有効成分として含有するアセチルコリンエステラーゼ阻害剤。
項5. 当帰の揮発性油と釣藤鈎の揮発性油との1:1混合物を有効成分として含有するアセチルコリンエステラーゼ阻害剤。
項6. 上記項1〜3のいずれかに記載のβ−セクレターゼ阻害剤又は上記項4若しくは5に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含有する老人性痴呆症の予防又は治療薬。
項7. 上記項1〜3のいずれかに記載のβ−セクレターゼ阻害剤又は上記項4若しくは5に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含有するアルツハイマー型痴呆症の予防又は治療薬。
項8. 上記項1〜3のいずれかに記載のβ−セクレターゼ阻害剤又は上記項4若しくは5に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含有する芳香剤。
項9. 上記項1〜3のいずれかに記載のβ−セクレターゼ阻害剤又は上記項4若しくは5に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含有するアロマテラピー用エッセンシャルオイル。
項10. 上記項1〜3のいずれかに記載のβ−セクレターゼ阻害剤又は上記項4若しくは5に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤からなる食品添加剤。
抑肝散及び甘草の揮発性油、該揮発性油の含酸素フラクション、並びに該含酸素フラクションに含まれる成分は、高いβ−セクレターゼ阻害活性を有する。そのため、これらを有効成分として含有するβ−セクレターゼ阻害剤は、医薬品、化粧品、食品組成物等に利用することができる。
また、抑肝散、当帰及び釣藤鈎の揮発性油、並びに釣藤鈎及び当帰の揮発性油の1:1混合物は、高いアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害活性を有する。そのため、これらを有効成分として含有するアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤は、医薬品、化粧品、食品組成物等に利用することができる。
抑肝散からの活性成分の単離操作を示す工程図である。 甘草からの活性成分の単離操作を示す工程図である。 抑肝散、当帰、釣藤鈎、川きゅう、白朮、茯苓、柴胡及び甘草の揮発性油のβ−セクレターゼ活性阻害効果を示す図である。 抑肝散の揮発性油の炭化水素フラクション及び含酸素フラクション、並びに甘草の揮発性油の炭化水素フラクション及び含酸素フラクションのβ−セクレターゼ活性阻害効果を示す図である。 ペオノール及びシンナムアルデヒドのβ−セクレターゼ活性阻害効果を示す図である。 メチルオイゲノール及び3,4,5−トリメトキシトルエンのβ−セクレターゼ活性阻害効果を示す図である。 抑肝散、当帰、釣藤鈎、川きゅう、白朮、茯苓、柴胡及び甘草の揮発性油のAChE活性阻害効果を示す図である。 抑肝散、当帰、釣藤鈎、川きゅう、白朮、茯苓、柴胡及び甘草の揮発性油(各50μg/mL)のAChE活性阻害効果を示す図である。 抑肝散、当帰及び釣藤鈎の揮発性油、並びに釣藤鈎及び当帰の揮発性油の1:1混合物(各50μg/mL)のAChE活性阻害効果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のβ−セクレターゼ阻害剤は、抑肝散及び甘草の揮発性油を有効成分として含有するものである。
原料として使用する抑肝散(ヨクカンサン)は漢方製剤であって、一般的には以下の組成の生薬混合物、あるいはその抽出物であり、さらに必要に応じて、賦形剤等の医薬用担体、その他の製剤上使用し得る成分を含んだものである。
当帰(トウキ):3.0
釣藤鈎(チョウトウコウ):3.0
川きゅう(センキュウ):3.0
白朮(ビャクジュツ):4.0
茯苓(ブクリョウ):4.0
柴胡 (サイコ):2.0
甘草(カンゾウ):1.5
ここで、当帰は、セリ科シシウド属のトウキ(Angelica acutiloba Kitagawa)又はホッカイトウキ(Angelica acutiloba Kitagawa var.sugiyamae Hikino)の根を乾燥したものである。
釣藤鈎は、アカネ科のカギカズラ(Uncaria rhynchophylla Miquel、Uncaria sinensis Haviland、Uncaria macrophylla Wallich)の鈎刺の茎枝(とげ)を乾燥したものである。
川きゅうは、セリ科のセンキュウ(Cnidium officinale Makino)の根茎を乾燥したものである。
白朮は、キク科オケラ属のオケラ(Atractylodes japonica Koidzumi ex Kitamura)又はオオバナオケラ(Atractylodes macrocephala Koidzumi (Atractylodes ovata De Candolle))の根茎を乾燥したものである。
茯苓は、サルノコシカケ科のマツホド(Wolfiporia cocos Ryvarden et Gilbertson(Poria cocos Wolf))の菌核を乾燥したものである。
柴胡は、セリ科のミシマサイコ(Bupleurum falcatum Linne)又はマンシュウミシマサイコ(Bupleurum chinense DC.)を乾燥したものである。
甘草は、マメ科カンゾウ属のウラルカンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fischer)又はスペインカンゾウ(Glycyrrhiza glabra Linne)の根又はストロンを乾燥したものである。
抑肝散としては、市販の漢方方剤を使用することができる。市販の漢方方剤として、例えば、医療用漢方薬であるツムラ抑肝散エキス顆粒(商品名)(ツムラ株式会社製)、オースギ抑肝散料エキスTG(商品名)(高砂薬業株式会社製);第二類医薬である一元 抑肝散(商品名)(一元製薬株式会社製)等を使用することができる。
また、当帰、釣藤鈎、川きゅう、白朮、茯苓、柴胡及び甘草も、いずれも公知のものであり、例えば、生薬末として市販されている。本発明においては、これらの生薬として市販の生薬末等を使用し、上記の割合で混合したものを抑肝散として使用してもよい。あるいは、それらが含まれる植物の部位から、通常の抽出方法、及び分離精製手段を用いて得たものを生薬として使用し、上記の割合で混合したものを使用してもよい。
本発明では、抑肝散を構成する7種の生薬のうち、甘草の揮発性油は、下記実施例で詳述するように強いβ−セクレターゼ阻害活性を有することから、β−セクレターゼ阻害剤として使用することができる。原料として使用する甘草は、市販の生薬末等を使用してもよいし、それが含まれる植物の部位から、通常の抽出方法、及び分離精製手段を用いて得たものを使用してもよい。
抑肝散及び甘草の揮発性油は、例えば、市販の漢方方剤又は生薬末から、通常の抽出方法を用いて製造することができる。抽出方法としては、例えば、水蒸気蒸留法、圧搾法、溶剤抽出法等の公知の方法を用いることができる。具体的な抽出方法の一例を挙げると、例えば、市販の抑肝散粉末又は甘草粉末(200g程度)をLikens-Nickerson型装置を用いて数時間水蒸気蒸留を行い、揮発性油と水とを分離することにより、揮発性油を得ることができる。
揮発性油は、通常の分離精製手段を用いて分離することができる。分離精製手段として、例えば、アルミナカラムクロマトグラフィーやシリカゲルカラムクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等を用いることができる。例えば、抑肝散又は甘草の揮発性油をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、炭化水素フラクションと含酸素フラクションとに分画することができる。さらに甘草の揮発性油の含酸素フラクションについて、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジクロロメタン、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、アセトン等の有機溶媒を1種又は2種以上用いた溶媒分画操作を行うことによって、活性画分(ペオノール、シンナムアルデヒド、メチルオイゲノール及び3,4,5−トリメトキシトルエン)を分取することができる。さらに、必要に応じて、アルミナカラムクロマトグラフィーやシリカゲルカラムクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の適当な分離精製手段を1種若しくは2種以上組み合わせて精製することもできる。
抑肝散の揮発性油、該揮発性油の含酸素成分、抑肝散に含まれる生薬である甘草の揮発性油、該揮発性油の含酸素成分、並びに該含酸素成分に含まれるペオノール、シンナムアルデヒド、メチルオイゲノール及び3,4,5−トリメトキシトルエンは、下記実施例で詳述するように、強いβ−セクレターゼ阻害活性を有している。よって、これらを有効成分として含有する本発明のβ−セクレターゼ阻害剤は、各種用途に用いることができる。
抑肝散の揮発性油、抑肝散に含まれる生薬である当帰及び釣藤鈎の揮発性油、並びに釣藤鈎及び当帰の揮発性油を1:1の容積比で混合した混合物は、下記実施例で詳述するように、強いアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害活性を有している。よって、これらを有効成分として含有する本発明のAChE阻害剤は、各種用途に用いることができる。
例えば、本発明のβ−セクレターゼ阻害剤又はAChE阻害剤を医薬品として用いる場合、哺乳動物(特に、ヒト)における老人性痴呆患症の予防薬又は治療薬、特にアルツハイマー型痴呆症の予防薬又は治療薬として用いられる。
本発明のβ−セクレターゼ阻害剤又はAChE阻害剤は、慣用されている方法により錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、眼軟膏剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤等の剤に製剤化することができる。
製剤化には通常用いられる賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤や、および必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤などを使用することができ、一般に医薬品製剤の原料として用いられる成分及び配合量を適宜選択して常法により製剤化される。
本発明の医薬製剤を投与する場合、その形態は特に限定されず、通常用いられる方法であればよく、経口投与でも非経口投与でもよい。本発明にかかる医薬の投与量は、症状の程度、年齢、性別、体重、投与形態・塩の種類、疾患の具体的な種類等に応じて、製剤学的な有効量を適宜選ぶことができる。投与量の一例を挙げると、経口投与の場合、通常、成人において、有効成分量として0.001〜1000mg/kg程度が適当であり、これを1日1回〜数回に分けて投与すればよい。
また、本発明のβ−セクレターゼ阻害剤又はAChE阻害剤は、強いβ−セクレターゼ阻害活性又はAChE阻害活性を有することから、例えば、入浴剤、石鹸、芳香剤、アロマテラピー用エッセンシャルオイル、香水、整髪料等の製品に加えて用いることができる。
本発明のβ−セクレターゼ阻害剤又はAChE阻害剤は、各製品全体に対し、通常0.001〜100重量%程度(好ましくは、0.1〜5重量%程度)含有していればよい。
本発明のβ−セクレターゼ阻害剤又はAChE阻害剤を含む上記の製品を用いた場合には、精油の香りによるリラクゼーション効果、リフレッシュ効果が発揮され、またストレスの多い現代社会において心身の癒し効果が発揮される。上記の製品を、高齢者、病人などが生活する環境で用いることにより、老人性痴呆症の予防・改善効果も発揮される。もちろん、使用する精油又は精油成分が有している効果、例えば、防腐効果、抗菌効果等も発揮される。
また、本発明のβ−セクレターゼ阻害剤又はAChE阻害剤は、アロマテラピー用エッセンシャルオイルとして用いた場合、他の天然植物精油と混合して用いることもできる。また、該アロマテラピー用エッセンシャルオイルを所定の場所に撒布、拡散して、吸入し得る形態で使用することもできる。該オイルは、拡散器(ディフューザー)等を用いて撒布、拡散してもよい。撒布・拡散場所としては、例えば、家庭の部屋内、ホテルの部屋、会議室、病室の他、人の集まる催し物会場、休憩広場、各種リラクゼーション施設等に撒布することができる。特に、老人性痴呆症の患者が生活する病院、施設などで用いることが好ましい。
また、本発明のβ−セクレターゼ阻害剤又はAChE阻害剤は、食品添加剤として、例えば、清涼飲料、乳製品(加工乳、ヨーグルト)、菓子類(ゼリー、チョコレート、ビスケット、ガム、錠菓)等の各種飲食品に配合することもできる。
食品添加剤として用いる場合には、その添加量については、特に限定的ではなく、食品の種類に応じ適宜決めればよい。一例としては、上記した抽出物の乾燥重量として、含有量が0.0005重量%〜50重量%程度の範囲内となるように添加すればよい。
以下、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
実施例1(抑肝散及び抑肝散に含まれる7種の生薬からの揮発油等の抽出)
抑肝散からの揮発性油の抽出は、図1に従って行った。なお、減圧濃縮は、ロータリーエバポレーターを用いた。抑肝散(高砂薬業株式会社製)(200g)をLikens-Nickerson型装置を用いて3時間水蒸気蒸留を行うことにより、揮発性油(0.82g)を得た。この揮発性油を、図1に従い、シリカゲルカラムクロマトグラィー(溶離剤:n−ヘキサン−ジエチルエーテル)に付すことで2つのフラクション(以下、fr.とする)、炭化水素fr.(0.25g)と含酸素fr.(0.57g)とに分画した。
当帰(高砂薬業株式会社製)、釣藤鈎(高砂薬業株式会社製)、川きゅう(高砂薬業株式会社製)、白朮(高砂薬業株式会社製)、茯苓(高砂薬業株式会社製)、及び柴胡(高砂薬業株式会社製)については、抑拡散と同様の条件で水蒸気蒸留を行い、揮発性油を得た。
甘草からの揮発性油の抽出は、図2に従って行った。なお、減圧濃縮は、ロータリーエバポレーターを用いた。甘草(高砂薬業株式会社製)(200g)をLikens-Nickerson型装置を用いて3時間水蒸気蒸留を行うことにより、揮発性油(1.12g)を得た。この揮発性油を、図2に従い、シリカゲルカラムクロマトグラィー(溶離剤:n−ヘキサン−ジエチルエーテル)に付すことで、炭化水素fr.(0.39g)と含酸素fr.(0.73g)とに分画した。さらに、含酸素fr.をシリカゲルカラムクロマトグラィー(溶離剤:n−ヘキサン−ジエチルエーテル)で分離精製することにより、化合物(1):ペオノール(32.5mg)、化合物(2):シンナムアルデヒド(150.1mg)、化合物(3):メチルオイゲノール(76.2mg)、及び化合物(4):3,4,5−トリメトキシトルエン(31.4mg)を得た。化合物(1)〜(4)の構造式は以下のとおりである。
Figure 0005980292
Figure 0005980292
Figure 0005980292
Figure 0005980292
実施例2(β−セクレターゼ阻害試験)
β−セクレターゼ阻害活性を、PanVera社から購入したBACE1(組換えヒトBACE1)アッセイキットを用いて評価した。評価試験は、メーカーが作製したキットの取扱説明書の記載を改変した方法(Jeon S.Y., et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 13: 3905-3908 (2003))に従って行った。以下、簡単に説明する。
10μLのBACE1(1.0U/ml)、10μLの基質(50mM 重炭酸アンモニウム中の750nM Rh-EVNLDAEFK-Quencher)、及び10μLの試料溶液(試料を30%DMSOに溶かした溶液)を混合して試験試料とした。また、上記試料溶液の替わりに10μLのアッセイバッファー(30%DMSO含有、50mM 酢酸ナトリウム、pH4.5)を加えたものをコントロールとした。これらを暗所において室温で60分間インキュベーションした後に、550nmの波長の光を照射して励起させ、590nmの波長における発光強度を測定した。
β−セクレターゼ活性の阻害パーセントを以下の式;
セクレターゼ活性(%)=[1−{(S−S)/(C−C)}]×100
(式中、Cは60分間のインキュベーション後のコントロール(酵素、バッファー、及び基質)の発光強度を示し、Cは0時におけるコントロールの発光強度を示し、Sはインキュベーション後の試験試料(酵素、試料溶液、及び基質)の発光強度を示し、Sは0時における試料の発光強度を示す)に従って計算した。全データは、3回の試験結果の平均である。
試料として、実施例1で得られた抑肝散、当帰、釣藤鈎、川きゅう、白朮、茯苓、柴胡及び甘草の揮発性油、抑肝散の揮発性油の炭化水素fr.及び含酸素fr.並びに甘草の揮発性油の炭化水素fr.及び含酸素fr.、ペオノール、シンナムアルデヒド、メチルオイゲノール、及び3,4,5−トリメトキシトルエンを使用した。
抑肝散、当帰、釣藤鈎、川きゅう、白朮、茯苓、柴胡及び甘草の揮発性油を用いた結果を表1及び図3に、抑肝散の揮発性油の炭化水素fr.及び含酸素fr.並びに甘草の揮発性油の炭化水素fr.及び含酸素fr.を用いた結果を表2及び図4に、ペオノール、シンナムアルデヒドを用いた結果を表3及び図5に、メチルオイゲノール、及び3,4,5−トリメトキシトルエンを用いた結果を表4及び図6に示す。
Figure 0005980292
表1及び図3の結果から抑肝散の揮発性油は強いβ−セクレターゼ阻害活性を示すことがわかった。また、抑肝散に含まれる生薬の中で、甘草の揮発性油が強いβ−セクレターゼ阻害活性を示すことがわかった。
Figure 0005980292
表2及び図4の結果から、抑肝散及び甘草の揮発性油のフラクションのうち、抑肝散及び甘草の含酸素fr.はいずれも強いβ−セクレターゼ阻害活性を示すが、炭化水素fr.はいずれも、ほとんどβ−セクレターゼ阻害活性を示さないことがわかった。
Figure 0005980292
Figure 0005980292
表3及び4、並びに図5及び6の結果から、甘草の含酸素fr.に含まれるペオノール、シンナムアルデヒド、メチルオイゲノール及び3,4,5−トリメトキシトルエンは、いずれもβ−セクレターゼ阻害活性を示し、特にペオノール、シンナムアルデヒド及び3,4,5−トリメトキシトルエンが強いβ−セクレターゼ阻害活性を示すことがわかった。
実施例3(AChE阻害試験)
AChE阻害試験は、Bruhmannらによって以前報告された96ウェルのマイクロプレート法(Bruhmann, C.; Marston, A.; Hostettmann, K.; Carrupt, P-A.; Testa, B. Screening of Non-Alkaloidal Natural Compounds as Acetylcholinesterase Inhibitors. Chem. Biodiver. 2004, 1, 819-829)を改良した方法で行った。以下、簡単に説明する。ウェルに20μlのAChE溶液(0.01Mリン酸緩衝液中に0.037unit/mL、pH7.4)、200μlの発色剤(5,5’−ジチオビス(2−ニトロベンゾイックアシッド;DTNB)(0.1Mリン酸緩衝液中に0.15mM、pH7.4)、及び20μlの阻害剤(試料)メタノール溶液を添加した。コントロールウェルには、阻害剤の代わりにメタノールを加えた。各ウェル中の内容物を混合し、室温で、15分間プレインキュベーションした後、30μlの基質(アセチルチオコリン アイオダイド;ATC)水溶液(最終濃度:0.05−0.25mM)を加え、15分間インキュベーションした。その後、AChEによる基質の加水分解反応により生じる黄色に呈色するアニオン(TNB)の405nmにおける吸光度を、マイクロプレートリーダを用いて測定した。AChE活性の阻害(パーセント)は式:
I(%)={(Aコントロール−A試料)/Aコントロール}×100
(式中、「A試料」は試料(阻害剤)を含む反応混合物の吸光度であり、「Aコントロール」は反応コントロール混合物の吸光度を示す)を用いて計算した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー各試料について少なくとも3回測定を行い、その平均値を示した。
なお、AChEは、シグマ−アルドリッチ社(Sigma-Aldrich Corporation)製のヒト赤血球のAChEを用いた。DTNB及びATCは、東京化成工業株式会社(Tokyo Chemical Industry Co. Ltd. (TCI))製を用いた。試料として、実施例1で得られた抑肝散、当帰、釣藤鈎、川きゅう、白朮、茯苓、柴胡、及び甘草の揮発性油、並びに釣藤鈎及び当帰の揮発性油の1:1混合物を用いた。その結果を表5、並びに図7、図8及び図9に示す。
Figure 0005980292
表5、図7及び図8の結果から、抑肝散の揮発性油は強いAChE阻害活性を示すことがわかった。また、抑肝散に含まれる生薬の中で、釣藤鈎及び当帰の揮発性油は強いAChE阻害活性を示すことがわかった。
図9の結果から、釣藤鈎及び当帰の揮発性油を1:1の容積比で混合した混合物は、抑肝散の揮発性油よりも強いAChE阻害活性を示すことがわかった。

Claims (3)

  1. ,4,5−トリメトキシトルエンを有効成分として含有するβ−セクレターゼ阻害剤(但し、3,4,5−トリメトキシトルエンが抑肝散及び甘草に含まれる場合を除く)。
  2. 請求項1に記載のβ−セクレターゼ阻害剤を含有する老人性痴呆症の予防又は治療薬。
  3. 請求項1に記載のβ−セクレターゼ阻害剤を含有するアルツハイマー型痴呆症の予防又は治療薬。
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