JP5978599B2 - 化粧肌の評価方法 - Google Patents

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本発明は、光干渉断層撮影法(Optical Coherence Tomography (以下、OCTという))によるOCT画像により、化粧肌表面の化粧膜の付着状態と化粧肌内部の光学特性を同時に評価することを可能とする化粧肌の評価方法及びそれに用いる評価装置に関する。
ファンデーション等のメイクアップ化粧料は、皮膚表面の皮丘、皮溝、毛穴等の表面凹凸や色ムラを補正し、所望の化粧肌色を得るために顔に塗布して使用される。化粧料塗布後の見た目の仕上がりは、化粧膜そのものの色や、皮膚上の化粧膜の分布や厚みに代表される化粧膜の付着状態だけでなく、化粧膜の下の皮膚そのものの光学特性にも大きく影響される。皮膚の光学特性は、皮膚の表皮等に存在する色素の種類や濃度等が関係するだけでなく、皮膚内に侵達する光の波長にも依存する。そのため、化粧膜の分布や厚みに代表される化粧膜の付着状態が、皮膚を含めた化粧肌全体の光学特性を変化させ、化粧肌の見た目の仕上がりに影響するといえる。
ここで、化粧膜の分布は、デジタルマイクロスコープで観察することができる。化粧膜の厚みはOCT計測で求めることができる(特許文献1)。OCT計測は、低コヒーレンス光を使用し、マイケルソン干渉計を利用して、屈折率の異なる層の界面反射に起因する干渉光の光強度を検出することで、光軸方向の層構造を非破壊、非接触で計測する方法である。皮膚の計測では、従来、波長800〜1500nmの近赤外の低コヒーレンス光が使用されている。
また、化粧肌の色は分光色差計で求めることができる。
しかしながら、化粧膜の付着状態や化粧肌内部の深さ方向の光学特性を同時に計測することはできず、それらが化粧肌全体の見えにどのように影響しているかを評価することが困難となっている。
特開平10−153550号公報
上述の従来技術に対し、本発明は、化粧膜の分布や厚さという付着状態と、化粧膜の下にある皮膚内部の深さ方向の光学特性を同時に評価し、それらが化粧肌の見えにどのように影響しているかを評価できるようにすることを目的とする。
本発明者は、OCT計測において、低コヒーレンス光として、従来の近赤外域の低コヒーレンス光に代えて可視域の低コヒーレンス光を使用すると、OCT画像の横方向ならびに深さ方向の分解能が高まり、皮膚表面又は内部の界面情報を詳細に得られ、化粧膜の厚さ等を計測できるなどにより化粧膜の付着状態を評価できるだけでなく、皮膚内部の層の界面からの反射光が皮膚内部の組織により散乱、吸収されて計測され、皮膚内部の深さ方向のどこで散乱、吸収が生じているかという光学情報を得られるので、化粧膜や皮膚内部の色素等が皮膚内部の光学特性に及ぼす影響を評価できること、さらに、可視域の低コヒーレンス光として、波長の異なる複数の低コヒーレンス光を使用し、各波長のOCT画像を撮像してそれらを対比すると、皮膚内部の光学特性をより正確に得られるので好ましいこと、したがって、このOCT画像によれば、化粧膜の付着状態と化粧肌内部の光学特性を同時に評価できることを見出した。
即ち、本発明は、可視域の低コヒーレンス光を使用して化粧肌のOCT画像を、化粧肌の内部散乱の干渉信号の画像を含めて取得し、OCT画像に基づいて化粧膜の付着状態及び化粧肌内部の深さ方向の光学特性を評価する化粧肌の評価方法を提供する。
また、本発明は、上述の評価方法に使用する評価装置として、化粧肌のOCT画像を形成するOCT画像形成装置であって、OCT画像の形成に使用する低コヒーレンス光の光源として、可視域のLED光源を備える化粧肌評価用OCT画像形成装置を提供する。
本発明によれば、化粧肌のOCT画像を取得するので、化粧膜の分布や厚さという化粧膜の付着状態を評価することができる。また、このOCT画像は可視域で取得されるので、化粧膜の分布や厚さを詳細に評価することができ、さらに、皮膚内部の深さ方向にどこで散乱、吸収がおきているかという深さ方向の光学特性も評価することが可能となり、化粧膜や皮膚内部の色素等が皮膚内部の光学特性に及ぼす影響を評価することが可能となる。したがって、本発明によれば、化粧膜の付着状態と皮膚内部の光学特性が化粧肌全体の見えに及ぼす影響を、それらの相互の関連性を含めて評価することが可能となる。
図1は、本発明の一実施例の化粧肌評価用OCT画像形成装置の装置構成図である。 図2は、RGBの各波長でOCT計測した干渉信号のプロファイルである。 図3は、図2のOCT計測に使用したRGB各光源のスペクトルである。 図4は、皮膚レプリカ又は化粧肌のR光源で得られたOCT画像である。 図5は、RGB各光源で得られた化粧肌のOCT画像である。 図6は、OCT計測によるRGBの各波長での反射率を、分光測色計による反射率に重ねた図である。 図7は、参考試料の構成図である。 図8は、参考試料のOCT画像である。 図9は、各色セロハンフィルムの分光透過率曲線である。 図10は、パウダーファンデーション塗布前の皮膚レプリカと塗布後の皮膚レプリカの三次元OCT画像である。 図11は、パウダーファンデーション塗布前の皮膚レプリカと塗布後の皮膚レプリカの二次元OCT画像である。 図12は、パウダーファンデーション塗布前の20歳代皮膚レプリカと塗布後の同レプリカの二次元OCT画像である。 図13は、パウダーファンデーション塗布前の50歳代皮膚レプリカと塗布後の同レプリカの二次元OCT画像である。 図14は、30歳代皮膚レプリカに2種のパウダーファンデーションの化粧膜を形成した場合の干渉信号の計測深さと干渉信号の積算強度との関係図である。 図15は、50歳代皮膚レプリカに2種のパウダーファンデーションの化粧膜を形成した場合の干渉信号の計測深さと干渉信号の積算強度との関係図である。 図16は、パウダーファンデーションPの塗布前の皮膚レプリカの表面凹凸の深さと塗布後の同レプリカの表面凹凸を示す2次元OCTの計測図である。 図17は、パウダーファンデーションQの塗布前の皮膚レプリカの表面凹凸の深さと塗布後の同レプリカの表面凹凸を示す2次元OCTの計測図である。
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例の化粧肌評価用OCT画像形成装置1の構成図である。
この化粧肌評価用OCT画像形成装置1は、化粧肌のOCT画像を形成する装置であって、可視域の低コヒーレンス光源2としてR(中心波長637nm)、G(中心波長523nmm)、B(中心波長445nm)の各LEDを備え、また、参照用に近赤外の低コヒーレンス光源3として中心波長846nmのSLDを備えており、異なる波長の低コヒーレンス光を、適宜切り替えて使用できるようにしている。光源が切り替え可能になっている点を除き、OCTの計測あるいはOCT画像の形成自体の装置構成は、E.Beaurepaire, A.C.Boccara, M.Lebec, L.Blanchot, H.Saint-Jalmes, Full-field optical coherence microspopy, Optics Letters 23, 244-246(1998)に記載されているものと同様であり、光源2又は光源3からの光が光ファイバー4で導光され、変換光学系5で一様強度平面波に変換され、ビームスプリッター6で1:1に分岐される。対物レンズ7、8にはそれぞれ試料S、参照鏡9が当接し、光源2または光源3からの低コヒーレンス光が試料Sと参照鏡9に入射される。試料Sは試料台10に載置され、試料台10が試料Sの深さ方向(光軸方向L1)に移動可能となっている。また、参照鏡9も光軸方向L2に移動可能となっている。
試料台10の上方には、試料Sからの反射光と参照鏡9からの反射光を検出する検出器11としてCCDカメラが設けられている。試料Sからの反射光と参照鏡8からの反射光の光路差がゼロの場合、検出器11では、それらの干渉により強い干渉信号が検出されるが、光路差にずれがあると干渉が次第に弱くなり、干渉信号の強度はゼロとなる。
検出器11と試料台10にはパーソナルコンピュータ12が接続され、パーソナルコンピュータ12にはディスプレイが接続されている。パーソナルコンピュータ12は、試料台10の位置を制御する。また、パーソナルコンピュータ12は、検出器11で検出された干渉信号強度と試料台10の位置とに基づき、干渉信号の深さと干渉信号強度の関係を示す干渉信号のプロファイルや、二次元又は三次元のOCT画像を作製する。
OCT計測では、試料Sからの反射光と参照鏡9からの反射光によって干渉が生じる深さ方向の長さがコヒーレンス長Lcと称され、このコヒーレンス長Lcが深さ方向の分解能となる。
コヒーレンス長(深さ方向の分解能)Lcは、理論的に次式で示される。
(式中、Lc:コヒーレンス長(深さ方向の分解能)
Δλ:低コヒーレンス光のスペクトル幅(半値幅)
λ0:低コヒーレンス光の中心波長 )
また、横方向の分解能Δxは、次式で示される。
(式中、Δx:水平方向の分解能
NA:対物レンズの開口数)
本実施例の化粧肌評価用OCT画像形成装置1では、低コヒーレンス光として、従前の近赤外の低コヒーレンス光に対して、可視域の低コヒーレンス光を使用するので、深さ方向の分解能Lcと水平方向の分解能Δxの双方が向上することがわかる。
図2は、この化粧肌評価用OCT画像形成装置1の深さ方向の分解能あるいは横方向の分解能と、低コヒーレンス光の波長との関係を確認するために、RGBの各波長の光源を用いて試料SをOCT計測した場合の干渉信号のプロファイルであり、図3はRGB各光源のスペクトルである。なお、このOCT計測において、試料Sとしては、平面鏡を使用した。
表1は、図2から得られたスペクトル幅(半値全幅)、深さ方向分解能及び横方向分解能の結果である。
従来OCT計測で使用されている近赤外の低コヒーレンス光(中心波長1300nm、スペクトル幅70nm)の深さ方向の分解能は、約7.5μm程度であるため、表1から、可視域の低コヒーレンス光を使用することにより、OCT画像の分解能が向上することが確認できる。なお、表1においてG光がB光よりも分解能に優れているのは、スペクトル幅が大きいためであり、同様に、従来の近赤外光がR光よりも分解能に優れているのもスペクトル幅が大きいためである。
本発明の化粧肌の評価方法は、本発明のOCT画像形成装置を用いて化粧肌の二次元又は三次元のOCT画像を可視域の低コヒーレンス光を使用して形成し、OCT画像に現れた明領域ないし暗領域の分布、光軸方向(深さ方向)の光の侵達の程度、拡散状態などの光学特性に基づき、化粧膜の付着状態と化粧肌内部の光学特性を計測し、化粧肌を評価する方法である。
ここで、化粧肌としては、粉末状、クリーム状又は液状のファンデーション、化粧下地、コンシーラ、白粉、紫外線防止剤、アイシャドー等の化粧膜が形成されている皮膚をあげることができる。皮膚は天然のものでも人工的に作製したものでもよい。
本発明の評価方法でOCT画像を形成する低コヒーレンス光の可視域としては、例えば、R光(中心波長637nm)、G光(中心波長523nm)、B光(中心波長445nm)を使用する。R光は、肌色の赤みの影響を受け、ファンデーション等に一般に含まれている顔料の影響も受けやすいため、使用することが好ましい。G光は、人の目の感度が最も高い波長であり、シミ、ソバカス、毛穴といった素肌と化粧肌の視認性に影響を及ぼすと考えられるため、使用することが好ましい。B光は、ファンデーション等に含まれている紫外線吸収剤の影響を受けやすいので、使用することが好ましい。
可視域の低コヒーレンス光は、計測の目的に応じて、単独の波長のみを使用してもよいが、各波長での化粧肌内部の光学特性が未知の場合には、複数の波長を使用して各波長でOCT画像を対比することにより化粧肌を評価することが好ましい。これは、後述するように化粧肌内部の組織には、低コヒーレンス光の波長によって検出されるものとされないものがあるため、単独の波長に基づいて化粧肌内部の光学特性を評価すると、組織が存在するにもかかわらず、組織が存在しない空洞の部分であると誤判定するおそれがあるからである。波長の異なる複数のOCT画像を、パーソナルコンピュータ12のディスプレイの一画面に表示できるようにすると、それらの対比が容易となるので好ましい。
また、本発明の評価方法で評価する化粧膜の付着状態としては、化粧膜の厚み、化粧膜の分布、化粧膜に粉体が含まれる場合における粉体分布などをあげることができ、また、化粧肌内部の光学特性に関しては、化粧肌内部で特定の波長域の光を散乱させる組織の位置、散乱の程度などをあげることができる。
本発明の評価方法は、例えば、次のように行われる。図4は、50歳代女性の頬部の皮膚をウレタンに転写したレプリカ(同図(a))、レプリカに化粧料として化粧下地のみを塗布量約2mg/cm2で塗布した化粧肌(同図(b))、レプリカにパウダーファンデーションのみを塗布量約1mg/cm2で塗布した化粧肌(同図(c))、レプリカに化粧下地とパウダーファンデーションを順次塗布した化粧肌(同図(d))を、それぞれ上述の化粧肌評価用OCT画像形成装置1においてR光源(中心波長637nm)を使用して得た深さ方向の二次元のOCT画像である。ここで下地化粧料およびパウダーファンデーションの化粧膜は、人が下地化粧料およびパウダーファンデーションを顔に塗布する時の圧力を計測し、それと同等の加圧下で塗布することにより形成した。また、レプリカとしては、皮膚の表面凹凸が転写された透明ウレタンシート層A1と、その下に積層された肌色ウレタンシート層A2の2層構造のものを使用した。この透明ウレタンシートA1層は角質層に対応し、肌色ウレタンシート層A2は表皮に対応する。(a)から、透明ウレタンシート層A1と肌色ウレタンシート層A2の2層構造が確認できる。また、(b)、(c)から、化粧下地B1又はパウダーファンデーションB2の塗布により、レプリカの表面凹凸の凹部が滑らかになっていることがわかる。したがって、本発明によれば、化粧膜の厚みや分布等の化粧膜の付着状態を計測し、評価できることがわかる。
さらに、(d)の化粧下地とパウダーファンデーションの双方を塗り重ねた化粧膜B3によれば、それらのいずれか一方を塗布した場合((b)、(c))に比して、R光がレプリカ内部に深く侵達し、化粧膜の表面から深さ100μmまでの深さ、特に深さ0〜50μmの範囲で強く散乱していることがわかる。したがって、本発明によれば、化粧下地やファンデーション等の化粧膜により、特に、化粧下地とファンデーションの双方を塗り重ねて形成される化粧膜により皮膚内部に光が侵達する深さを計測することができ、また、皮膚内部における散乱状態を、例えば、深さ方向の特定の計測範囲における干渉信号の積算強度として計測し、評価することができる。
図5は、図4(d)と同様に、化粧下地とパウダーファンデーションの双方を塗り重ねた化粧膜を有するレプリカの深さ方向の二次元のOCT画像を形成するにあたり、RGBの各光源を順次切り替えることにより得たOCT画像である。同図(a)(b)(c)の各図において、明るい薄い層が化粧膜であり、その下の灰色の層が、レプリカを形成しているウレタンシートである。(a)のR光のOCT画像は、(b)のG光のOCT画像や(c)のB光のOCT画像に比して化粧膜が明るく、厚く見え、また、皮膚内部も明るく、より深部まで光が侵達し、散乱していることがわかる。このように本発明によれば、光の侵達の程度や散乱の程度の違いを各波長の依存性として計測することができる。これにより、この化粧膜は皮膚内部にR光を侵達させやすく、皮膚内部はR光を散乱する光学的特性を有し、化粧肌の見た目は、R光の散乱の影響を強く受けていると評価することができる。
なお、図5(a)のR光によるOCT画像で化粧膜が厚く見え、皮膚内部が明るく見えるのは、単にR光の方がG光やB光よりも深部方向の解像度が低いから化粧膜の明るい部分がぼやけて広く見えているのではなく、化粧膜がR光を皮膚内部により多く侵達させ、皮膚内の組織によりR光が散乱され、射出されていることによるものである。このことは、図6のグラフから確認することができる。
即ち、図6は、上述のRGBの各OCT計測において、干渉信号の深さと干渉信号強度のプロファイルから、化粧膜の表面の位置を特定し、表面から深さ方向に20μmの位置までの干渉信号強度の積分値を求め、R光(637nm)の積分値を規準としたときのG光(523nm)とB光(445nm)の積分値をOCT計測による反射率として求め、R光でのOCT計測による反射率が分光測色計で計測した分光反射率と一致するようにしてOCT計測による反射率と分光測色計による反射率とを重ねたものである。同図から、G光やB光では、OCT計測による反射率が、分光測色計で計測された反射率に比して小さいことがわかる。化粧膜の厚さは約15μmであるから、深さ20μmまでの皮膚内部に、R光よりも、G光やG光を吸収する光学特性の物質が存在するために、G光やB光ではOCT計測による反射率が低下していると考えられる。より具体的には、パウダーファンデーションでは、着色顔料中での黄色粉体の割合が多いことから、G光では分光測色計による反射率に比してOCT計測による反射率が低下し、また、パウダーファンデーションでは、紫外線吸収剤が含まれていることから、B光では分光測色計による反射率に比してOCT計測による反射率が低下していると考えられる。このように、RGBの各光でOCT計測を行い、OCT画像を対比することによって、皮膚内部の光学特性を評価し、さらにその光学特性に影響している因子を推定することが可能となる。
また、図5について、(a)のR光によるOCT画像では化粧膜が厚く見え、皮膚内部が明るく見えるのは、R光は解像度が低いからという理由ではなく、この化粧膜がR光を皮膚内部により侵達させやすく、皮膚内の組織によりR光が散乱されていることによることは、次のように、光路内にある媒体の光学特性によってOCT計測の検出結果が異なることからもわかる。
即ち、図7に示すように、スライドガラス21とカバーガラス22の間に赤色のセロハンフィルム23Rと緑色セロハンフィルム23Gと青色セロハンフィルム23Bを挟んだ参考試料20を作製し、RGBの各低コヒーレンス光を用いて参考試料20をOCT計測すると、図8に示すように、低コヒーレンス光の波長ごとに異なるOCT画像が得られる。図9は、このOCT計測に用いた各色セロハンフィルム23R、23G、23Bの分光透過率曲線である。なお、この図9には、RGB各光源のスペクトルの相対強度を重ねて表示した。
図8から、低コヒーレンス光としてB光を使用した場合、緑色セロハンフィルム23Gの底面(LC)からの反射光、その下のスライドグラス21の上面(UG)からの反射光、赤色セロハンフィルム23Rの底面(LC)からの反射光、その下のスライドグラス21の上面(UG)からの反射光が検出されていない。また、低コヒーレンス光としてG光を使用した場合、赤色セロハンフィルム23Rの底面(LC)からの反射光、その下のスライドグラス21の上面(UG)からの反射光が検出されていない。低コヒーレンス光としてR光を使用した場合、青色セロハンフィルム23Bの底面(LC)からの反射光、その下のスライドグラス21の上面(UG)からの反射光、緑色セロハンフィルム23Gの底面(LC)からの反射光、その下のスライドグラス21の上面(UG)からの反射光、赤色セロハンフィルム23Rの下のスライドグラス21の上面(UG)からの反射光が検出されていない。なお、同図においてUCは、各セロファンフィルムの上面を示す。
このように、低コヒーレンス光の波長が異なると、試料内部の光学特性によってその検出の可否が異なる。よって、図5において、(a)のR光によるOCT画像で化粧膜が厚く見え、皮膚内部が明るく見えたのは、化粧膜がR光を皮膚内部に侵達させ、皮膚内部の組織のR光の散乱能が高いためと考えられる。
以下、本発明を実施例に基づき、具体的に説明する。
実施例1
(1)化粧膜の付着状態の評価
図1に示したOCT画像形成装置において低コヒーレンス光としてR光を使用し、30歳代女性の頬部の皮膚をウレタンに転写したレプリカの縦1mm、横1mm、深さ200μmの範囲をOCT計測し、三次元OCT画像を形成した。このOCT画像を図10(a)に示す。
また、そのレプリカに市販のパウダーファンデーション(P)を塗布後、同様にOCT計測して三次元OCT画像を形成した。このOCT画像を同図(b)に示す。
図10(a)では、レプリカ表面の皮溝と皮丘の微細構造を観察することができる。また、同図(b)から、皮溝にパウダーファンデーションが充填され、パウダーファンデーションの顆粒が表面に点在していること、さらにパウダーファンデーションの化粧膜により表面反射光が増大していることがわかる。
(2)化粧肌内部の光学特性の評価
図10(a)、(b)の三次元OCT画像から横1mm、深さ200μmの範囲の断面を抽出して二次元OCT画像を形成した。結果を図11(a)、(b)に示す。図11(a)、(b)から、パウダーファンデーションの化粧膜が皮膚に形成されることにより、表面反射光が増大し、皮膚内部に光が拡散伝搬していることがわかる。
R光に代えてG光又はB光を使用して同様にOCT計測し、OCT画像を形成すると、皮膚内部への光の拡散伝搬はほとんど観察されなかった。
したがって、このパウダーファンデーションの見た目の塗布効果に、R光による拡散伝搬が大きく影響していることがわかる。
実施例2
20歳代と50歳代の女性の頬部の皮膚をウレタンに転写したレプリカに、実施例1と同じ市販のパウダーファンデーション(P)をそれぞれ同じ圧力で機械的に塗布して化粧膜を形成した。このレプリカ上の化粧膜を、図1に示したOCT画像形成装置において低コヒーレンス光としてR光を使用してOCT計測し、二次元OCT画像を形成した。化粧膜形成前後のOCT画像を図12、図13に示す。
図12、図13から、20歳代の化粧膜に比べて50歳代の化粧膜は、毛穴にパウダーファンデーションの顆粒が多く偏在し、化粧膜の厚みのばらつきが大きく、化粧膜の形成前後で皮丘部分の表面形状に変化がなく、皮丘での付着量が少ないことがわかる。
これら化粧膜をCMOSカメラで拡大観察したところ、50歳代の化粧膜には、20歳代の化粧膜に比して付着ムラやパウダーファンデーションの顆粒凝集が見られ、OCT画像の観察結果と整合した。したがって、本発明の評価方法によれば化粧膜が皮溝や皮丘にどのように分布しているかを詳細に観察することができ、例えば、塗布厚のばらつきの具体的な数値、深さ方向の光の侵達度等を計測できることがわかる。
実施例3
30歳代の皮膚のレプリカと50歳代の皮膚のレプリカに、市販のパウダーファンデーションの2種(P、Q)を実施例2と同様に形成し、そのレプリカ上の化粧膜を、図1に示したOCT画像形成装置において、低コヒーレンス光としてR光、G光、又はB光を使用してOCT計測した。次いで、得られたOCT画像における縦1mm、横1mmの領域について、深さ方向の干渉信号の積算強度を求めた。この結果を図14、図15に示す。
図14、図15から、パウダーファンデーションの種類により、化粧肌内部の散乱の強さが異なること、また、使用したパウダーファンデーションP、Qによる化粧肌内部の散乱の強さの差は、深さ10〜20μmで大きくなっていること、パウダーファンデーションの塗布面の状態が30歳代の皮膚レプリカと50歳代の皮膚レプリカとで変わると、深さ20μmではパウダーファンデーションP、Qの散乱強度の大小が逆転していることがわかる。
実施例4
実施例3と同様にして、30歳代の皮膚レプリカに、市販のパウダーファンデーションの2種(P、Q)の化粧膜をそれぞれ形成し、化粧膜の形成前後にOCT計測し、レプリカの底面から所定の高さの位置を基点として、化粧膜形成前のレプリカ表面の凹凸の深さと、化粧膜形成後の凹凸の深さを算出した。結果を図16、図17に示す。
これらの図から、パウダーファンデーションの塗布量を算出したところ、パウダーファンデーションPの塗布量は3.5297×106μm3/cm2であり、パウダーファンデーションQの塗布量は4.2743×106μm3/cm2であった。
また、同様にして50歳代の皮膚レプリカを用いて市販のパウダーファンデーションP、Qの化粧膜の塗布量を算出したところ、パウダーファンデーションPの塗布量は7.1524×106μm3/cm2であり、パウダーファンデーションQの塗布量は6.7360×106μm3/cm2であった。
これらの塗布量の算出値から、実際に塗布される単位面積当たりの化粧料の塗布量は、同じ塗布方法でも化粧料によって異なり、皮膚の表面凹凸の違いによっても異なることがわかる。
以上のように本発明の評価方法によれば、化粧膜の付着状態と皮膚内部の光学特性とを同時に評価し、それらの相互の関連性を含めて化粧肌を評価することができる。
1 化粧肌評価用OCT画像形成装置
2 可視域の低コヒーレンス光源
3 近赤外の低コヒーレンス光源
4 光ファイバー
5 変換光学系
6 ビームスプリッター
7 対物レンズ
8 対物レンズ
9 参照鏡
10 試料台
11 検出器
12 パーソナルコンピュータ
20 参考試料
21 スライドガラス
22 カバーガラス
23R 赤色セロハンフィルム
23G 緑色セロハンフィルム
23B 青色セロハンフィルム

Claims (8)

  1. 可視域の低コヒーレンス光を使用して、ファンデーションの化粧膜が形成されている化粧肌の光干渉断層撮影画像(以下、OCT画像という)を、化粧肌の内部散乱の干渉信号の画像を含めて取得し、OCT画像に基づいて化粧膜の付着状態又は光学特性、及び化粧肌内部の深さ方向の光学特性を評価する化粧肌の評価方法であって、少なくともR光を含む、可視域の低コヒーレンス光として波長の異なる複数の低コヒーレンス光を使用し、それにより取得された各波長のOCT画像を対比し、ファンデーションの化粧膜の付着状態又は光学特性、及び化粧肌内部の光学特性を評価する化粧肌の評価方法。
  2. 可視域の低コヒーレンス光の光源として、赤(R)、緑(G)又は青(B)のLED光源を使用する請求項1記載の化粧肌の評価方法。
  3. 化粧膜の付着状態又は化粧肌内部の光学特性を定量する請求項1又は2記載の化粧肌の評価方法。
  4. 化粧肌の表面から深さ100μmまでの内部散乱光の干渉信号の画像をOCT画像に含める請求項1〜3のいずれかに記載の化粧肌の評価方法。
  5. 各波長のOCT画像同士の明領域の現れ方の違いにより、化粧肌内部に存在する色素の分布を評価する請求項1記載の化粧肌の評価方法。
  6. ファンデーションの化粧膜が形成されている化粧肌のOCT画像を形成するOCT画像形成装置であって、OCT画像の形成に使用する低コヒーレンス光の光源として、少なくともR光のLED光源を含む、可視域で波長の異なる複数のLED光源を切り替えて使用できるように備え、各波長のOCT画像を一画面に表示するディスプレイを備える化粧肌評価用OCT画像形成装置。
  7. 低コヒーレンス光の光源が、赤(R)、緑(G)又は青(B)のLED光源である請求項6記載の化粧肌評価用OCT画像形成装置。
  8. 化粧肌の表面から深さ100μmまでの内部散乱光の干渉信号の画像をOCT画像に含める請求項6又は7に記載の化粧肌評価用OCT画像形成装置。
JP2011251842A 2011-11-17 2011-11-17 化粧肌の評価方法 Active JP5978599B2 (ja)

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