JP5974638B2 - 脱硫不良判定方法及び脱硫不良判定装置 - Google Patents
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Description
溶銑予備処理における脱硫方法としては、溶銑鍋等に収容した溶銑中に脱硫剤をインジェクションする方法、あるいは脱硫剤を溶銑の浴面に投入して機械攪拌する方法が広く採用されている。
そして、脱硫処理を行った結果が目標値まで達しているかどうかの判定を行う方法として、通常操業では、処理後S濃度を計測する方法を採っている。すなわち、処理後溶銑をサンプル採取し、分析装置を使用して採取したサンプルのS濃度分析を行っている。
そのため、分析の結果が出て脱硫不良であると判明した時点では、対象の溶銑は既に転炉装入直前であるという事態が多く発生してしまう。このように装入直前に脱硫不良であると判明した場合、脱硫再処理を実施すると転炉処理開始が大きく遅れてしまい、連続鋳造装置での操業ロス(連々切れ)が発生するという問題がある。
そこで、本発明は、溶銑予備処理における脱硫処理直後に迅速かつ適切に脱硫不良を判定することができる脱硫不良判定方法及び脱硫不良判定装置を提供することを課題としている。
また、脱硫処理良否判定を行う最適タイミングを自動で検索し、脱硫処理の良否判定を実施するので、オペレータが目視により判定タイミングを確認するなど、人の手を介することなく脱硫良否判定結果の自動出力が可能となる。したがって、実操業での運用に適した脱硫不良判定方法とすることができる。また、脱硫処理良否判定を行うタイミングを、溶銑面の平均温度が最低温度となるタイミングとするので、溶銑の回転が停止し、脱硫良否の重要な判定要素であるスラグが十分に浮遊した状態での溶面画像を用いて、適切な良否判定結果を得ることができる。
このように、脱硫不良である場合には、脱硫良好である場合と比較して浴面画像の温度ヒストグラムの分布幅が大きいことを利用して、脱硫処理の良否判定を行う。したがって、容易且つ適切に脱硫不良を判定することができる。
このように、ある閾値以上の温度スペクトル分散の評価を用いるので、単純な温度幅の評価を用いる場合と比較して異常値の影響を受け難くすることができる。したがって、脱硫良否の誤判定を抑制することができる。
算出した前記脱硫効率に基づいて、前記脱硫処理直後における溶銑の硫黄濃度を推定することを特徴としている。
このように、脱硫効率と相関のある定量化指標(温度ヒストグラムの分布幅)を抽出することで、脱硫処理直後における溶銑のS濃度を演算により求めることができる。したがって、脱硫処理後のS濃度分析を適切に行うことができる。
これにより、脱硫処理直後、直ちに良否判定を行うことができる。また、脱硫具合(脱硫効率)と相関のある定量化指標をもって脱硫処理良否判定を行うので、適切な良否判定を行うことができる。
図1は、本実施形態の脱硫不良判定装置を適用した装置の構成図である。
図中、符号1は溶銑鍋である。溶銑鍋1内には溶銑2が収容されており、ここに脱硫剤3が投入される。
また、溶銑鍋1内には、回転軸4に取り付けられたインペラ5が浸漬される。回転軸4は回転駆動装置6によって回転駆動されるようになっており、これによりインペラ5を旋回させ溶銑2と脱硫剤3との接触促進を行う。さらに、インペラ5は、図示しない昇降駆動装置によって鉛直方向に昇降可能となっている。すなわち、ここでは機械攪拌式脱硫法を用いた溶銑予備処理を行っている。
脱硫処理後は、溶銑2の浴面に予備処理スラグ(脱硫スラグ)7が浮かぶ。
図2は、赤外線カメラ8で撮影した溶銑浴面画像の一例を示す図である。図2(a)は脱硫具合が良い場合(脱硫良好の場合)の画像、図2(b)は脱硫具合が悪い場合(脱硫不良の場合)の画像をそれぞれ示している。
脱硫剤(石灰)3は溶銑2と良く反応し脱硫が良好に行われると、直径10mm程度のボール状の細かい粒状のスラグとなって処理後に溶銑面に浮遊する。このため、図2(a)の画像に観られるように溶銑より温度の低い、細かな粒状のスラグが浴面全体に亘って観察できる。
脱硫不良判定タイミングとしては湯面変動のないタイミングが最適であり、本実施形態では、溶銑面の回転がほぼ停止し、且つインペラ引き上げによる湯面変動が発生する前のタイミングを採用する。このタイミングは、後述するように溶銑湯面画像内の湯面平均温度に基づいて自動的に検索する。
先ず、ステップS1で、脱硫不良判定装置9は、赤外線カメラ8で撮影した溶銑浴面画像を取得し、ステップS2に移行する。
ステップS2では、脱硫不良判定装置9は、前記ステップS1で撮影した画像において、脱硫不良判定に用いる画像範囲を設定する。この画像範囲は、例えば図4の白枠で示すように、撮影した画像のうち溶銑浴面が写っている範囲に設定する。
ステップS4では、脱硫不良判定装置9は、前記ステップS3で算出した画像内湯面平均温度を、前記ステップS1で取得した撮影画像と対応付けて図示しないメモリに記憶する。
ステップS6では、脱硫不良判定装置9は、脱硫不良判定タイミングを検索する。脱硫不良判定タイミングは、上述したように、溶銑面の回転がほぼ停止し、且つインペラ引き上げによる湯面変動のないタイミングである。
つまり、このステップS6では、前記ステップS5で脱硫不良判定タイミングの検索を開始すると判断したタイミング(時刻t4)から遡って、湯面平均温度が最低温度となるタイミング(時刻t2)を検索し、これを脱硫不良判定タイミングとして設定する。
ステップS8では、脱硫不良判定装置9は、前記ステップS7で算出した小領域毎の温度をもとにしてBoxヒストグラム(温度ヒストグラム)を作成する。図6の(a)及び(b)は、それぞれ図2の(a)及び(b)に対応するBoxヒストグラムであり、横軸に温度、縦軸に画素数(頻度)をとっている。
なお、図3において、ステップS7が温度算出手段に対応し、ステップS8がヒストグラム作成手段に対応し、ステップS9が分布幅算出手段に対応し、ステップS10〜S12が判定手段に対応している。
なお、脱硫効率は、次式により定義される値である。
脱硫効率={ln(処理前S/処理後S)}/(石灰原単位[kg/t] ………(1)
ここで、処理前Sは、脱硫処理前の溶銑中における硫黄濃度、処理後Sは脱硫処理後の溶銑中における硫黄濃度である。
したがって、例えば脱硫効率0.3よりも大きいときを脱硫良好と判定するようにする場合には、脱硫効率0.3に対応する温度標準偏差σを判定閾値Bとすればよい。これにより、温度標準偏差σと判定閾値Bとを比較した結果、脱硫効率0.3に満たない場合に脱硫不良であるという判定結果を出力することができる。
脱硫処理に際し、先ずインペラ5を下降させて溶銑2に浸漬させる。インペラ5が溶銑2に浸漬したら、回転駆動装置6を駆動制御してインペラ5の旋回を開始し、所定の回転数まで昇速する。次に、所定量の脱硫剤3を溶銑鍋1に投入し、所定時間の攪拌を行う。このインペラ5の回転中は、図5に示すように、湯面平均温度は比較的高い温度となっている。
インペラ5の旋回が停止すると、昇降駆動装置(不図示)を駆動制御してインペラ5を上昇させ、溶銑鍋1の上方に待機させる。これにより、溶銑2は、静止した状態から時刻t3で攪乱状態へ移行する。このとき、湯面には溶銑2が現れるため、湯面平均温度は急激に上昇する。
したがって、この時刻t4では、時刻t2で撮影した溶銑湯面画像を画像処理し、脱硫良否を判定する。このように、脱硫処理の良否判定を行うのに最適な脱硫不良判定タイミングの直後(数秒〜数十秒後)に、当該最適な脱硫不良判定タイミングでの観測データに基づいた脱硫良否判定処理を実施することができる。
このとき、脱硫具合が不良である場合には、図6(b)に示すように、Boxヒストグラムの広がりが広く、温度標準偏差σは判定閾値B以上の値となる(ステップS10でYes)。そのため、この場合には脱硫不良と判定し、その判定結果をオペレータに知らせる。すると、オペレータは再脱硫処理を実施する。
このように、脱硫効率と相関のある定量化指標をもって脱硫処理良否判定を行うので、観測データに対する脱硫良否の度合いを判定することができ、適切に良否判定を行うことができる。その結果、成分外れによる溶銑スクラップ化の削減を図ることができる。
したがって、脱硫不良の場合には、即座に再脱硫処理を実施することができる。そのため、再脱硫による操業ロスの短縮を図ることができる。
上記実施形態においては、脱硫効率と温度標準偏差σとの間に図7の直線Cに示す関係があり、且つ脱硫効率と脱硫処理後の溶銑中のS濃度(処理後S)との間に上記(1)式で表す関係があることを利用し、温度標準偏差σに基づいて処理後Sを推定することもできる。
この場合、先ず、脱硫効率と温度標準偏差σとの関係を予め一次関数で近似しておき、その一次関数の近似式と、図3のステップS9で算出した温度標準偏差σと用いて脱硫効率を算出する。そして、算出した脱硫効率と操業条件(処理前S、石灰原単位、RS投入回数)とを用いて、上記(1)式をもとに処理後Sを演算する。これにより、脱硫処理後のS濃度分析を行うことができる。
この図8からも明らかなように、上述した方法で推定した処理後Sは概ね理想直線Dに乗っており、推定処理後Sの残差標準偏差σは2.4(10-3%)、即ち3σは7.2(10-3%)であった。このように、脱硫処理後のS濃度分析を精度良く行なうことができることが確認できた。
なお、上記実施形態においては、温度ヒストグラムの広がり(分布幅)を表すものとして、温度標準偏差σを用いる場合について説明したが、これに代えて、単純なMAX温度とMIN温度との差等を用いることもできる。
また、上記実施形態においては、溶銑面の平均温度から脱硫不良判定タイミングを検出する場合について説明したが、回転駆動装置6から、インペラ5が回転中/減速/上昇の何れの動作中であるかを示すインペラ動作信号を入力し、当該インペラ動作信号をもとに脱硫不良判定タイミングを検出するようにしてもよい。この場合、例えば、「インペラ上昇」や「インペラ回転停止」を示すインペラ動作信号の出力タイミング(+タイマ)を脱硫不良判定タイミングとする。但し、実用として画像解析装置単体で判定でき、かつ実際の溶銑面の状態を観測して判定できるため、溶銑面の平均温度が最低値となるタイミングを脱硫不良判定タイミングとする方法の方が好ましい。
Claims (5)
- 脱硫処理直後の溶銑鍋中にある溶銑の浴面を赤外線カメラで撮影し、
前記赤外線カメラで撮影した浴面画像の全領域における平均温度を逐次算出し、
前記平均温度が最低温度となるタイミングを前記脱硫処理直後の脱硫不良判定タイミングとして設定し、
当該脱硫不良判定タイミングにおいて、前記赤外線カメラで撮影した浴面画像を2次元メッシュに切り、小領域の画像の色情報から小領域毎の温度を算出し、前記小領域内の各画素色情報を平均化して算出した小領域毎の温度に基づいて温度ヒストグラムを作成し、
前記温度ヒストグラムの分布幅を脱硫効率と相関のある定量的指標として算出し、当該分布幅に基づいて前記溶銑の脱硫具合の良否を判定することを特徴とする脱硫不良判定方法。 - 前記温度ヒストグラムの分布幅が予め設定した判定閾値以上であるとき、脱硫処理が不良に終ったと判定することを特徴とする請求項1に記載の脱硫不良判定方法。
- 前記温度ヒストグラムの分布幅として、前記温度ヒストグラムのデータのうち所定頻度以上のデータの標準偏差を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の脱硫不良判定方法。
- 前記温度ヒストグラムの分布幅に基づいて脱硫効率を算出し、
算出した前記脱硫効率に基づいて、前記脱硫処理直後における溶銑の硫黄濃度を推定することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の脱硫不良判定方法。 - 脱硫処理直後の溶銑鍋中にある溶銑の浴面を撮影する赤外線カメラと、
前記赤外線カメラで撮影した浴面画像の全領域における平均温度を逐次算出し、前記平均温度が最低温度となるタイミングを前記脱硫処理直後の脱硫不良判定タイミングとして設定し、当該脱硫不良判定タイミングにおいて、前記赤外線カメラで撮影した浴面画像を2次元メッシュに切り、小領域の画像の色情報から小領域毎の温度を算出する温度算出手段と、
前記小領域内の各画素色情報を平均化して前記温度算出手段で算出した小領域の温度に基づいて温度ヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段と、
脱硫効率と相関のある定量的指標として、前記ヒストグラム作成手段で作成した温度ヒストグラムの分布幅を算出する分布幅算出手段と、
前記分布幅算出手段で算出した分布幅に基づいて、前記溶銑の脱硫具合の良否を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする脱硫不良判定装置。
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