JP5967598B2 - 消火剤および消火方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、フェロセンやその誘導体を25質量%以上含有する消火剤組成物が開示されている。また、特許文献2には、フェロセンなどの鉄含有化合物と不活性ガス源とを含む消火剤組成物が収容されているマイクロカプセルが開示されている。
以上のように、メタロセンの消火剤としての利用が期待されている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、メタロセンを用いた、消火能力に優れる新規の消火剤を提供することを課題とする。
本発明は、メタロセン及び分散媒を含有し、前記メタロセンが前記分散媒中に分散していることを特徴とする消火剤を提供する。
本発明の消火剤においては、前記メタロセンがフェロセンであることが好ましい。
本発明の消火剤においては、前記メタロセンの含有量が70質量ppm〜20質量%であることであることが好ましい。
本発明の消火剤においては、前記分散媒が、不燃性の液体及び不燃性の粉体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の消火剤においては、前記分散媒が、不燃性の液体であって、前記メタロセンの含有量が、70〜160質量ppmであることが好ましい。
本発明の消火剤においては、前記分散媒が水であり、さらに分散剤を含むことが好ましい。
本発明の消火剤においては、前記分散剤がノニオン系界面活性剤であることが好ましい。
本発明の消火剤においては、前記界面活性剤の濃度が臨界ミセル濃度の1〜7倍であることが好ましい。
本発明の消火剤においては、横軸に消火剤製造後の時間をプロットし、縦軸に消火剤の濁度の逆数をプロットした際の傾きとして表わされる、前記消火剤中におけるメタロセンの分散安定度が1〜20であることが好ましい。
本発明の消火剤においては、前記分散媒が不燃性の粉体であって、前記メタロセンの含有量が、550質量ppm〜20質量%であることが好ましい。
本発明の消火剤においては、前記分散媒が、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、及びアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、本発明は、前期消火剤を燃焼物に供給する工程を含むことを特徴とする、消火方法を提供する。
このようなメタロセンのうち、ビスシクロペンタジエニル金属化合物としては、[Fe(C5H5)2](フェロセン)、[Ni(C5H5)2](ニッケロセン)、[Co(C5H5)2](コバルトセン)、[Cr(C5H5)2](クロモセン)、[Mn(C5H5)2](マンガノセン)、[V(C5H5)2](バナドセン)、[Ru(C5H5)2](ルテノセン)、[Os(C5H5)2](オスモセン)等が例示でき、これらの中でも、低毒性でかつ安価である点などから、フェロセンが好ましい。
また、メタロセンは、200μm 以下の粒子の存在比率が90体積%以上であることが好ましい。
前記消火剤はこのように、メタロセンの含有量が極めて少ない範囲において、優れた消火能力を有する。
前記界面活性剤は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤のいずれでもよい。
カチオン界面活性剤としては、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩が例示できる。
ノニオン界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコール類が例示できる。ここで、「アセチレンアルコール類」とは、炭素原子間の三重結合(C≡C)と少なくとも1つの水酸基とを有するものである。
また、界面活性剤(A)のうち、m及びnが共に0であるものも、市販品としてサーフィノール104(日信化学工業社販売)が入手可能である。
消火剤が含有する前記その他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
消火剤における前記その他の成分の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
配合時のメタロセンの分散方法は特に限定されず、公知の方法から適宜選択すればよい。例えば、分散媒として水等の不燃性液体を用いる場合、分散効果がより高い点から、メタロセン等の前記各成分を含む混合物に対して、超音波を照射して分散させる方法が好ましく、このときの周波数は、10〜100kHzであることが好ましい。
また、前記消火剤は、製造後、メタロセンが十分に分散された状態を安定して維持できるが、必要に応じて使用前に通常の混合操作を行うことで、より安定して消火能力を発現でき、使用前に再度分散操作を行ってもよい。
前記消火剤は、公知の消火剤と同様に、消火対象の燃焼物に接触させることで、高い消火能力を発現する。消火剤を燃焼物に接触させるときには、例えば、消火剤をそのまま散布してもよいし、消火剤を霧状にして噴霧してもよく、燃焼の形態に応じて適宜調節すればよい。例えば、普通火災の場合には、消火剤を如何なる方法で接触させてもよいが、油火災及び電気火災の場合には、消火剤を霧状にして噴霧することが好ましい。
また、天ぷら油に代表される油火災には、粉末消火器やエアゾール式簡易消火用具により消火する方法が挙げられる。
市販品のフェロセンをメノウ乳鉢で粉砕し、目開き100μmのふるいにかけ、さらに目開き50μmのふるいにかけて、このふるい上に残ったもの(以下、「粉砕フェロセン(1)」と略記する)を選別した。光学顕微鏡(Leica社製「DMI−300B」)を用いて、この粉砕フェロセン(1)を撮像し、画像解析ソフト(「ImageJ ver. 1.45」)を用いて粉砕フェロセン(1)の面積を測定して、相当する粒径を算出し、粒度分布を求め、粒度分布図を作成した。このときの粒度分布図を図1に示す。
図1の結果から、粉砕フェロセン(1)のメジアン径は、65μmであることが確認された。
100mLのメスフラスコに、粉砕フェロセン(1)と、水(100mL)と、分散剤として界面活性剤(1)(日信化学工業社製「サーフィノール465」)とを添加し、温度を50℃とした後、さらに超音波(40kHz)を20分間照射して、十分に内容物を分散させ、均一な分散物とした消火剤を得た。なお、表1に示すように、このときの粉砕フェロセン(1)の添加量は、分散物中での濃度が100ppmとなるように調節した。
また、界面活性剤(1)の添加量は、分散物中での濃度が0.2質量%となるように調節した。
図2に示す評価装置を用いて、得られた消火剤の消火能力を評価した。
ここに示す評価装置1は、評価対象の消火剤を保持する消火剤保持部11と、消火剤を噴霧するノズル14と、消火剤保持部11及びノズル14を連結する配管13と、配管13の途中に間挿され、消火剤保持部11からノズル14へ消火剤を移送するためのポンプ12と、消火剤が噴霧される燃焼物を保持する燃焼物保持部15と、を備えて概略構成されている。そして、ノズル14は、広がり角θを最大で60°として液体を噴霧できるようになっている。また、燃焼物保持部15は、内径Dが83mmの容器状のものである。
以上の消火操作を合計で5回以上行い、消火剤の消火能力を評価した。
結果を表1及び図3に示す。なお、表1中の消火能力の評価結果として記載した○、△、×は、それぞれ以下の意味を有する。
○:すべての消火操作で、噴霧開始から45秒以内に消火でき、消火時間が極めて短時間であった。
△:すべての消火操作で、噴霧開始から45秒以内に消火でき、消火時間が短時間であった。
×:すべての消火操作で、噴霧開始から45秒以内に消火できなかった。
表1に示すように、粉砕フェロセン(1)の濃度を100ppmに代えて125ppmとした点以外は、実施例1と同じ方法で消火剤を製造し、その消火能力を評価した。結果を表1及び図3に示す。
表1に示すように、粉砕フェロセン(1)の濃度を100ppmに代えて150ppmとした点以外は、実施例1と同じ方法で消火剤を製造し、その消火能力を評価した。結果を表1及び図3に示す。
表1に示すように、粉砕フェロセン(1)の濃度を100ppmに代えて75ppmとした点以外は、実施例1と同じ方法で消火剤を製造し、その消火能力を評価した。結果を表1及び図3に示す。
表1に示すように、粉砕フェロセン(1)を用いなかった点以外は、実施例1と同じ方法で消火剤を製造し、その消火能力を評価した。結果を表1及び図3に示す。
一方、比較例1では、消火剤がフェロセンを含有していないため、消火能力が認められず、同時に界面活性剤(1)が消火能力を有していないことが確認され、これは、実施例1〜4の優れた消火能力が粉砕フェロセン(1)によるものであることを裏付けた。
遊星型ボールミルを用いて、市販品のフェロセンを45分間、400rpmで湿式粉砕して、粉砕フェロセン(以下、「粉砕フェロセン(2)」と略記する)を得た。レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製「SALD−7000」)を用いて、この粉砕フェロセン(2)の粒度分布を測定し、粒度分布図を作成した。このときの粒度分布図を図4に示す。
図4の結果から、この粉砕フェロセン(2)は、メインピーク以外に粒径0.2μm付近に小さいピークを有する二峰性であり、メジアン径が10.4μmであることが確認された。
図5の結果から、この粉砕フェロセン(3)は、粒度分布がシャープな形状であり、メジアン径が11.4μmであることが確認された。
図6の結果から、この粉砕フェロセン(4)は、粒度分布がブロードな形状であり、メジアン径が21.5μmであることが確認された。
100mLの三角フラスコに、粉砕フェロセン(2)、粉砕フェロセン(3)又は粉砕フェロセン(4)と、水(100mL)と、分散剤として界面活性剤(1)とを添加し、温度を50℃とした後、さらに超音波(40kHz)を20分間照射して、十分に内容物を分散させ、均一な分散物とした消火剤を得た。なお、表2に示すように、このときの粉砕フェロセン(2)〜(4)のそれぞれの添加量は、分散物中での濃度が100ppmとなるように調節した。また、界面活性剤(1)の添加量は、分散物中での濃度が0.4質量%となるように調節した。界面活性剤(1)の臨界ミセル濃度は、あらかじめデュヌイ表面張力計(伊藤製作所製)を用いて測定しておいた。
図2に示す評価装置を用いて、実施例1の場合と同様に、得られた消火剤の消火能力を評価した。ただし、評価装置1としては、燃焼物保持部15の内径Dが82mmであるものを用い、ここに保持したn−ヘプタンの上部の液面と、ノズル14の先端部との距離Hを60cmとなるように調節した。そして、n−ヘプタンに着火し、10秒間そのまま放置して、火炎を安定させ、ここへ、上記で得られた消火剤をノズル14から約250mL/分の流量で噴霧した。そして、消火剤の噴霧開始から20秒後までn−ヘプタンの状態を目視観察した。
以上の消火操作を合計で5回以上行い、消火剤の消火能力を評価した。結果を図7に示す。
表2に示すように、分散剤として界面活性剤(1)に代えて、界面活性剤(2)(日信化学工業社製「サーフィノール485」)を用いた点以外は、実施例5と同じ方法で消火剤を製造し、その消火能力を評価した。なお、界面活性剤(2)の添加量は、分散物中での濃度が0.2質量%となるように調節した。結果を図7に示す。
表2に示すように、分散剤として界面活性剤(1)に代えて、界面活性剤(3)(日信化学工業社製「オルフィンE1020」)を用いた点以外は、実施例5と同じ方法で消火剤を製造し、その消火能力を評価した。なお、界面活性剤(3)の添加量は、分散物中での濃度が0.2質量%となるように調節した。結果を図7に示す。
表2に示すように、分散剤として界面活性剤(1)に代えて、界面活性剤(4)(日信化学工業社製「オルフィンPD201」)を用いた点以外は、実施例5と同じ方法で消火剤を製造し、その消火能力を評価した。なお、界面活性剤(4)の添加量は、分散物中での濃度が0.2質量%となるように調節した。結果を図7に示す。
従来の消火剤である強化液(主成分:炭酸カリウム)の消火能力を、実施例5と同じ方法で評価した。結果を図7に示す。
一方、実施例6〜8では、実施例5よりも消火時間に差が見られたものの、いずれもすべての消火操作で、消火剤の噴霧開始から20秒以内に消火できた。また、フェロセンの粒径が消火剤の消火能力に影響を与えていることを示唆するデータは得られなかった。
また、実施例6〜8では、粉砕フェロセンの分散の度合いが大きいほど、消火時間のばらつきが抑制されることが確認された。
一方、比較例2では、平均消火時間が12.9秒であり、標準偏差(SD)は5.9であって、実施例5〜8よりも明らかに消火能力が劣っていた。
表3に示すように、100mLの三角フラスコに、粉砕フェロセン(2)、粉砕フェロセン(3)又は粉砕フェロセン(4)と、水(100mL)と、分散剤として界面活性剤(1)、界面活性剤(2)、界面活性剤(3)又は界面活性剤(4)とを添加し、温度を30℃、40℃又は50℃とした後、さらに超音波(40kHz)を20分間照射して、消火剤を得た。このとき、粉砕フェロセン(2)〜(4)の添加量は、分散物中での濃度が20ppmとなるように調節した。また、界面活性剤(1)〜(4)の添加量は、分散物中での濃度が臨界ミセル濃度(cmc)の1倍、2倍又は5倍となるように調節した。
界面活性剤(1)〜(4)の臨界ミセル濃度は、あらかじめデュヌイ表面張力計を用いて測定しておいた。
次いで、製造直後の消火剤を室温で20分間静置した後、フェロセン(粉砕フェロセン(2)〜(4))の分散性を下記基準に従って目視評価した。結果を表3に示す。
(分散性の評価基準)
○:フェロセンが安定して分散した。
△:若干量のフェロセンが沈降したが、評価可能な分散液を得た。
×:超音波の照射時からフェロセンが分散しなかった。
表4に示す条件とした点以外は、実施例9と同じ方法で消火剤を製造し、フェロセンの分散性を評価した。結果を表4に示す。
表5に示す条件とした点以外は、実施例9と同じ方法で消火剤を製造し、フェロセンの分散性を評価した。結果を表5に示す。
表6に示す条件とした点以外は、実施例9と同じ方法で消火剤を製造し、フェロセンの分散性を評価した。結果を表6に示す。
市販品のフェロセンをメノウ乳鉢で粉砕し、目開き250μmのふるいにかけ、さらに目開き180μmのふるいにかけて、このふるい上に残ったもの(以下、「粉砕フェロセン(5)」と略記する)を選別した。実施例1と同様の方法で測定した粉砕フェロセン(5)のメジアン径は、30.9μmであった。
粉砕フェロセン(5)と、硫酸アンモニウム(メジアン径:22.2μm)とボールミルにて均一に混合することにより、表7に示す異なるフェロセン濃度の消火剤を調製した。
硫酸アンモニウムのみ又は得られた消火剤1.0kgを市販のABC粉末用加圧式4型消火器(ヤマトプロテック社製、型番YP−4)に充填して、消火剤の消火能力を評価した。
火炎模型B−1:火皿0.2m2、燃料n−ヘプタン
火災模型A−0.5:杉材36本
燃焼中の模型と消火器のノズル14の先端部との距離を1〜2mとして、模型に向けて消火剤を噴射し、消火の可否を評価した。10秒以内で消火でき、かつ、再燃しない場合に完全に消化されたと判定した。消火できた場合を○とし、消火できなかった場合を×として、結果を表7に示す。
11 消火剤保持部
12 ポンプ
13 配管
14 ノズル
15 燃焼物保持部
θ ノズルからの消火剤の広がり角
H 液状可燃物の液面とノズルの先端部との距離
D 燃焼物保持部の内径
Claims (4)
- メタロセン、分散媒及び分散剤を含有し、前記メタロセンが前記分散媒中に分散しており、前記メタロセンの含有量が70〜160質量ppmであり、前記分散媒が水であり、前記分散剤が、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコール類からなる群より選ばれるすくなくとも1種のノニオン系界面活性剤であることを特徴とする消火剤。
- 前記メタロセンがフェロセンであることを特徴とする請求項1に記載の消火剤。
- 前記界面活性剤の濃度が臨界ミセル濃度の1〜7倍である請求項1に記載の消火剤。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の消火剤を燃焼物に供給する工程を含むことを特徴とする、消火方法。
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