JP5958139B2 - 炭素−鉄系結晶体複合ナノシートの製造方法 - Google Patents

炭素−鉄系結晶体複合ナノシートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、硫化鉄、酸化鉄などの鉄系結晶体をナノ粒子状で内包する炭素複合ナノシート及びその製造方法に関する。
炭素材料は、グラファイトや木炭などとしてよく知られ、20世紀初頭にはカーボンブラックや黒鉛電極など産業や生活に不可欠な炭素材料として出現している。その後、ナノテクノロジーの発展に伴い、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェンなどの構造が制御された炭素材料が発見された。これらの炭素材料は、電子材料としてはもちろん、医薬品、潤滑剤、化粧品など幅広い領域から注目されている。特に、二次電池、キャパシタ、燃料電池などの電力貯蔵用途の電極材料として盛んに研究されている。
近年、エネルギー蓄積、電気製品などの領域の新たなニーズに応じ、単純な炭素構造の開拓のみならず、炭素のマトリクスに特殊な機能を提供できるナノ金属あるいはナノ金属化合物を担持する新規ナノ炭素構造体及びその構造体を作製するプロセスが開発されている。例えば、マイクロ波を用いて金属酸化物などのセラミックス物質を炭素繊維などの炭素に被覆する製造法が提供されている(例えば、特許文献1参照)。この素材は広帯域の電磁波吸収材としての応用が期待される。また、硫黄と、カーボン源としてのジメチルスルフィドを用いることによる化学気相析出法(CVD)にて硫化鉄・硫化ニッケル担持カーボンナノチューブの作製も提供されている(例えば、非特許文献1参照)。更に、電解法により多孔質炭素材料表面にFeを被覆し、さらに酸素雰囲気中にて酸化させることによって鉄を含む金属酸化物−炭素複合材料の作製方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
これらの方法で得られた炭素複合材料は、従来の炭素材料からなる電池電極に比し、充放電サイクル試験時の初期のサイクルにおける不可逆容量による容量損失の割合の少ない電極を得ることが可能であることから、二次電池、リチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池、あるいはキャパシタ用の電極、燃料電池用の電極にも使用される。しかしながら、いずれも汎用の装置での製造は不可能であり、特定の製造設備が必要であったり、得られる炭素複合材料の構成制御が困難であったり等の問題があり、簡便な方法で且つナノメートルオーダーで構造制御された炭素複合材料の提供が待たれている。
J.Phys.Chem.C,2011,115(5),pp1838−1842.
特開2001−026412号公報 特開2008−162821号公報
本発明が解決しようとする課題は、安価かつ簡便な手法で、鉄系結晶体を内包する炭素ナノシートの製造法を提供することである。さらに、鉄系結晶体の粒子が数ナノからサブミクロン以下の大きさであり、多孔質な炭素シート中に均一に内包された炭素−鉄系結晶体複合ナノシート及びその製法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、鉄イオンの配位とプロトン化ができるポリアミンと、鉄カチオンと酸根アニオンからなる鉄イオン化合物とが、配位・水素結合により形成するポリアミン・鉄イオン化合物を構成成分とした架橋状態のゲル状不溶性の複合体が、加熱下で発泡性を示すことに着目し、加熱温度の上昇過程で、発泡膜を形成すること、その後の温度上昇に伴い、発泡膜中での有機成分の炭化と金属鉄への還元反応を経由し、酸化鉄のナノ結晶体とシート状の炭素とが複合化されてなる複合ナノシートを形成することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、炭素と鉄系結晶体とが複合されてなるナノシートを製造する方法であって、
ポリアミンの水溶液(A)と、鉄カチオンと酸根アニオンからなる鉄イオン化合物の水溶液(B)を混合し、その混合液からポリアミンと鉄イオンを含む不溶性の複合体(C)を得る工程、
前記工程で得られた前記複合体(C)を加熱焼成する工程、
を有することを特徴とする、炭素−鉄系結晶体複合ナノシートの製造方を提供するものである。
本発明の複合ナノシートの製造方法は、工業的に安価かつ入手が容易な鉄イオン化合物を出発原料として、簡便なプロセスで、厚みが数十ナノメートル以下の、硫化鉄または酸化鉄等のナノ粒子を含む炭素−鉄系結晶体複合ナノシートを得るものであり、複合材料の広範な応用への供給を満たす製造法である。
また、本発明の複合ナノシートは多孔質体であり、磁性や導電性等の性質を有することから、多様な実用性が期待される。例えば、電磁波吸収材料、エネルギー関連のリチウム電池周辺の素材、太陽電池、燃料電池の水素貯蔵材料、また、環境技術関連の排気処理、油質類廃物の吸着除去など広範な領域における多くの応用が可能となる。
実施例1における、複合体Fe−0.4を窒素雰囲気中1000℃にて焼成した後のX線回折パターンである。 実施例1における、複合体Fe−0.4を窒素雰囲気中1000℃にて焼成した後の高分解能透過型電子顕微鏡像である。 実施例3における、複合体Fe−0.6を窒素雰囲気中1000℃にて焼成した後の高分解能透過型電子顕微鏡像である。 実施例1〜3における、1000℃・窒素雰囲気中にて焼成したFe−0.4、Fe−0.5、Fe−0.6試料のラマン吸収スペクトルである。
本発明での炭素−鉄系結晶体複合ナノシートの作製は、金属鉄イオンが大量に含まれたポリマーシートを複合ナノシート形成用テンプレートとして用いることを基本モデルとする。このポリマーシートを高温まで加熱焼成することにより、ポリマー由来の有機成分が炭化されることでシート状の炭素になるとともに、当該シートに含有していた金属鉄イオンが分解されることにより、硫化鉄または酸化鉄を含む鉄系結晶体のナノ粒子が形成する。いわば金属鉄イオンを多く含むポリマーシート前駆体は、焼成条件により鉄系結晶体が内包される炭素ナノシートに変換する。
本発明では、金属鉄イオンが安定かつ均一にポリマー中に分布される構造をターゲットにした。一般的に、ポリアミンは金属鉄イオンと錯体形成することができる。ポリアミンに金属鉄イオンを結合させることによる物理架橋状態のゲル構造を誘導すれば、そのポリマー・金属鉄イオン錯体はゲルとしての特徴及び可塑性を発現することができる。
本発明では、このような発想を元に、ポリアミンと金属鉄イオンとを含むゲル状の複合体を形成できる詳細条件を検討し、ポリアミン、酸根アニオン、鉄カチオンを基本組成とするポリアミン・金属鉄イオンの錯体が、水中不溶なゲル状の複合体として析出することを見出した。
このようなゲル状の複合体を乾燥させて粉砕すると粉末状にもなるが、その粉末のガラス転移温度は室温以上範囲で現れ、加熱過程により、相変換と熱分解しながら内部ガス発生に伴う発泡化が進行し、初期粉末は膜状に成形されることを見出し、その膜がさらに高温側で焼成されることにより、ポリアミンの有機成分の完全熱分解と炭化に伴い、多孔性の炭素ナノシートが形成することを見出した。更に、膜中に含まれた金属鉄イオンは熱分解により硫化鉄または酸化鉄を含む鉄系結晶体になり、最終的に硫化鉄または酸化鉄を含む鉄系結晶体が内包される2次元構造の多孔質炭素複合ナノシートが得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。以下、詳細に説明する。
[ポリアミン]
本発明で用いるポリアミンは、アミン官能基を有するポリマーであればよく、そのアミン官能基は、1級、2級、3級アミンのいずれでも、それら官能基を複数種含む混合状態でも良い。
ポリアミンは、一般的に産業上広く利用されているポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリリジン、キトサン、ポリジアリルアミン、ポリ(N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート)、ポリ(N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ[4−(N,N−ジメチルアミノメチルスチレン)]などを好適に用いることができる。中でも、ポリエチレンイミンは工業的に入手しやすく、化学的安定性も優れ、金属イオンとの配位性も強いので、特に好ましく用いることができる。これらのポリアミンは水溶性であることが好ましく、その種類に応じて数平均分子量としては通常1000〜1,000,000の範囲のものから適宜選択して用いることが好ましい。また、当該ポリアミンは水溶液として用いるが、その水溶液の濃度としては2〜30wt%範囲であればよい。すなわち、濃度としてこの範囲で均一の水溶液となるものであることが好ましく、特に室温(20〜30℃の範囲)で均一の水溶液となるものであることが最も好ましい。取り扱い上、容易である(粘度が過度の高くない等)等の観点から、実際には2〜18wt%の範囲に調製することが好ましい。また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、水と混和する溶剤を併用してもよい。
[鉄イオン化合物]
本発明で用いる鉄イオン化合物は、鉄カチオンと酸根アニオンとで構成された水溶性の電解質であることが特徴である。特に、酸根アニオンとしては、鉄カチオンとの組み合わせで水溶性の化合物になればよく、特に限定されないが、硫酸根アニオン、リン酸根アニオン、硝酸根アニオン等が汎用性に優れて好ましく、硫酸根アニオンを用いると、複合化される鉄系結晶体に硫化鉄が含まれやすくなるので、目的に応じて使用することが好ましい。
また、酸根アニオンは、金属鉄化合物と結合してからなるものであってもよく、それらのプロトン結合状態の酸そのもの、またはアンモニウムカチオンと結合した塩類を加えて用いてもよい。
本発明において鉄イオン化合物は、これを水溶液(B)として用いるものであるが、その際の濃度としては5〜30wt%の範囲に調整することが好ましい。また、この水溶液(B)を調製する際、水によく溶解させるため、希硫酸または希塩酸を加えてもよい。
[ポリアミンと鉄カチオンを含むゲル状の複合体を得る工程]
前述のポリアミンの水溶液(A)と、鉄イオン化合物の水溶液(B)とを、室温(20℃程度)〜80℃で、攪拌しながら混合することにより、混合水溶液中から不溶性ゲル状の複合体(C)を析出させることができる。この析出物は水中加熱されても溶解することができず、その他の有機溶剤中でも溶解できない。
前記複合体(C)は、ポリアミン、鉄カチオン、及び酸根アニオンで構成され、その中、鉄カチオンと酸根アニオンはポリアミン中のアミン官能基と相互作用し、架橋構造を形成し、不溶性のゲルになる。具体的に言えば、酸根アニオンの場合、溶液中のpH値の酸性寄りにより、ポリアミン中のアミン官能基が水溶液中でプロトン化され、ポリアミンがポリカチオンとして振る舞い、酸根アニオンがポリカチオンとの静電的相互作用により架橋構造を形成する。また、鉄カチオンはポリアミン中のアミン官能基に配位されるが、その配位結合がポリアミン分子間で起きる場合、ゲル構造を引き起こすこともできる。このような相互作用の結果、複合体(C)中には、混合の際に用いた鉄カチオンと酸根アニオンが均一に含まれることになる。
複合体(C)を得る工程において、ポリアミン中のアミン官能基と鉄カチオンとのモル比は10:1から1:1の範囲に設定することが好ましい。安定した不溶性ゲルである複合体(C)を収率よく得るためには、そのモル比を1:1〜5:1の範囲に設定することが更に好ましい。
析出した複合体(C)は、水中では凝集状の塊になりやすく、上澄みをデカンテーション法で除去し、蒸留水またはエタノール、アセトンなどの溶剤を加えて洗浄することができる。洗浄後の複合体(C)は室温または60〜90℃加熱下乾燥し、粉末状態にすることができる。
粉末状の複合体(C)は、室温以上の温度域でガラス転移温度を示す。即ち、ポリアミン、鉄カチオン、酸根アニオンを含有する複合体(C)は異物の混合状態ではなく、静電気的相互作用をベースとして架橋を伴いながら形成したポリマー錯体の様な物質であり、その故、単一の物質として特異的物性を示すものである。
[複合体(C)の焼成による炭素−鉄系結晶体複合ナノシートを得る工程]
上記で得られた乾燥状態の複合体(C)を加熱焼成することで、複合体(C)中の鉄カチオンは酸化鉄又は硫化鉄の粒子になるとともに、ポリアミンが炭化されてなる炭素シートに複合化される。
焼成方法としては特に制限されるものではなく、例えば、乾燥後の複合体(C)をルツボに入れ、それを電気炉内にセットしてから、炉内温度をプログラムにそって上昇させる方法が挙げられる。
焼成は不活性ガス雰囲気下であることが好ましく、特に窒素ガス雰囲気下であることが好ましい。加熱焼成温度は500〜1300℃までに適宜調整することが望ましい。温度上昇は単位時間上昇速度を一定にして一直線的に目的温度まで到達させることもできるが、複合体(C)の加熱による発泡促進のために、複合体(C)の発泡点付近で加熱温度を一定時間で維持してから段階的な過程を経て目標温度まで上昇することが好ましい。また、いずれの温度上昇でも、鉄系結晶体を内包した炭素ナノシートに変換できる。焼成時間は、温度にも関係するが、概ね1時間〜5時間の範囲に設定することが好ましい。
[炭素−鉄系結晶体複合ナノシート]
上記工程を経ることで得られる本発明の炭素−鉄系結晶体複合ナノシートは、その厚みが5〜100nmの範囲であることを特徴とする。鉄系結晶体は硫化鉄または酸化鉄を含み、平均粒子径が1〜1000nmの範囲であるナノ粒子状で複合化されている。複合ナノシートの比表面積としては通常10〜500m/gであり、ポアサイズが1〜50nmの範囲、また、シートの2次元方向での大きさが500nm〜10mmにある。また、この複合ナノシートにおいて、合成条件により鉄系結晶体の含量を1〜30質量%の範囲に制御でき、さらに、鉄系結晶体における酸化鉄(Fe)の含有量も0〜10wt%の範囲にコントロールできる。
[炭素−鉄系結晶体複合ナノシートの導電性と磁性]
上記工程を経ることで得られる本発明の炭素−鉄系結晶体複合ナノシートは、島状に分布する鉄系結晶体の周囲に連続相として炭素が存在するゆえ、電気抵抗値が1〜10Ω・cmの範囲である導電性が現れ、また、Fe結晶相も共存するため、磁石の動きに協働する磁性をもつことを特徴とする。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を表す。
[X線回折法による分析]
単離乾燥した試料を測定試料用ホルダーにのせ、それを株式会社リガク製広角X線回折装置「Rint−Ultma」にセットし、Cu/Kα線、40kV/30mA、スキャンスピード1.0°/分、走査範囲10〜80°の条件で測定を行った。
[示差走査熱量分析]
単離乾燥した試料を測定パッチにより秤量し、それをSIIナノ技術示差走査熱量分析測定装置(TG−TDA6300)にセットし、昇温速度を10℃/分として、20℃から1000℃の温度範囲にて窒素雰囲気中または大気中測定を行った。また、試料をSII製示差走査熱量分析測定装置(EXSTER DSC7200)にセットし、昇温速度を10℃/分として室温(25℃)から300℃の範囲内に測定を行った。
[透過型電子顕微鏡による微細構造分析]
エタノールで分散された試料をサンプル支持膜に載せ、それを日本電子株式会社製透過型電子顕微鏡装置(JEM−2000FS)にて観察した。
[走査型電子顕微鏡による試料形態観察]
粉末を炭素導電テープ貼り付きの試料台に載せ、白金蒸着後Keyence会社製走査型電子顕微鏡(VE―9800)にて形態を観察した。
[BET窒素吸着法による比表面積の測定]
粉末を150℃・減圧条件下前処理後、MICROMETRITICS比表面積測定装置(Tristar−3000)にて測定した。
[ラマン吸収測定分析]
粉末状のサンプルをガラス板に載せ、反射型ラマン測定装置(RENISHAW、RAMASCOPE)にてスペクトルを測った。
[試料の導電性及び磁性の定性測定]
焼成後の粉末を二枚金属板で挟み、50Kgの圧力で厚みが500μm前後の薄膜を作製した後、テスターで薄膜の導電状態を確認した。また、この粉末を蒸留水のあるガラス瓶に分散させて強力な磁石による粉末の動きを観察して粉末の磁性有無を判断した。
合成例<ポリアミンと鉄カチオンを含有する不溶性ゲル状の複合体(C)の調製>
5%の多分岐状ポリエチレンイミン(エポミン、sp−200、株式会社日本触媒製)の水溶液を調製し、その水溶液10mL中に、表1に示した異なるモル濃度の硫酸鉄水溶液10mLを滴下し、その混合液を室温(25℃)下で1時間激しく攪拌した。溶液からの沈殿物を遠心分離器にて単離し(10000rpm、10分)、上澄みを除いた後、蒸留水で三回洗浄した。得られた固形物を90℃で10時間減圧乾燥して、固体粉末を得た。
表1に示した様に、ポリアミン中のエチレンイミンユニット(−CHCH−NH−)に対する鉄カチオンのモル比(Fe/N)を0.2〜0.6の範囲内に設定し、各複合体の作製を行った。乾燥した複合体の粉末を用いて、窒素中での熱分析の結果(TG−DTA)は、それぞれ異なる熱分解挙動を示した。例として、複合体Fe−0.5の場合には408.9℃及び489.1℃での放熱ピークが現れ、1000℃までの重量損失が48.4%であった。
実施例1<炭素−鉄系結晶体複合ナノシートの合成>
合成例1で得られた乾燥後の複合体Fe−0.4を、窒素雰囲気中、350℃まで焼成した。室温からの昇温速度を5℃/分にし、1000℃で3時間保温した。焼成後、すべての複合体が黒色粉末になり、発泡膨張のため焼成前後の大きな体積変化が見られた。図1には窒素中1000℃の温度で焼成した後のFe−0.4のX線回折パターンを示す。それぞれ29.9°、33.7°、43.2°、53.1°に強い回折ピークが検出され、これらのピークは硫化鉄(FeS)の国際標準データ(JCPDS37−0477)と一致する。そのほか、30.1°、43°、56.9°及び62.5°に検出された弱いピークは、酸化鉄(Fe)結晶体由来のもの(JCPDSカード19−0625)であることが確認された。同定結果によると、生成物中に酸化鉄(Fe)の含有量が1.5wt%であった。高分解能透過型電子顕微鏡の観察結果(図2)は、この複合ナノシートの炭素マトリクス中において粒径が数nmから1μmの範囲にある粒子状結晶体の存在を示した。サンプルのラマン吸収スペクトル(図4)には1583cm−1と1342cm−1にある強いラマン吸収ピークが検出された。これは複合ナノシート中の炭素材料がグラファイト結晶とアモルファス炭素として存在することを示唆した。BET測定結果は総表面面積が137m/gを示した。その中、外形由来表面積がわずか33.2m/gであるに対し、細孔由来表面積が103.7m/gであった。導電性・磁性の簡易測定の結果から、複合体Fe−0.4を1000℃・窒素中で焼成後、得られた黒色粉末が導電性と磁性を有することを示した。
実施例2<炭素−鉄系結晶体複合ナノシートの合成>
合成例2で得られた乾燥後の複合体Fe−0.5を、窒素雰囲気中、350℃まで焼成した。室温からの昇温速度を5℃/分にし、1000℃で3時間温度を保持した。焼成後、すべての複合体が黒色粉末になり、発泡膨張のため焼成前後の大きな体積変化が見られた。この黒色粉末のX線回折パターンには、それぞれ29.9°、33.7°、43.2°、53.1°にある硫化鉄由来の強い回折ピークが検出された。また、30.1°、43°、56.9°及び62.5°に弱いピークも検出され、酸化鉄(Fe)結晶体の形成が確認された。また、この条件下にて得られた試料中には酸化鉄(Fe)の含有量が2.1wt%であった。透過型電子顕微鏡の観察にて複合体Fe−0.5は焼成後に粒子状鉄系結晶体を内包する炭素複合ナノシートになったことが分かった。ラマン吸収スペクトルにはグラファイト結晶とアモルファスに対応する1583cm−1と1342cm−1のラマン吸収ピークが検出された。導電性・磁性の簡易測定の結果、窒素中・1000℃の焼成で得られたFe−0.5黒粉末が導電性と磁性を示した。
実施例3<炭素−鉄系結晶体複合ナノシートの合成>
合成例3で得られた乾燥後の複合体Fe−0.6を、窒素雰囲気中、350℃まで焼成した。室温からの昇温速度を5℃/分にし、1000℃での保温時間を3時間に設定した。焼成後、すべての複合体が黒色粉末になり、発泡膨張のため焼成前後の大きな体積変化が見られた。得られた黒色粉末のX線回折パターンには、それぞれ29.9°、33.7°、43.2°、53.1°にある硫化鉄由来の強い回折ピークが検出された。また、30.1°、43°、56.9°及び62.5°に弱いピークの検出結果により酸化鉄(Fe)結晶体の形成が確認され、さらに組成の同定結果が生成物中に5.3wt%の酸化鉄(Fe)存在量を示した。透過型電子顕微鏡の観察にて複合体Fe−0.5は焼成後に粒子状鉄系結晶体を内包する炭素複合シートになったことが分かった。ラマン吸収スペクトルにはグラファイト結晶とアモルファスに対応する1583cm−1と1342cm−1のラマン吸収ピークが検出された。導電性・磁性の簡易測定の結果、窒素中・1000℃の焼成で得られたFe−0.6黒粉末が導電性と磁性を示した。
比較例1
20mlの0.29mol/l硫酸鉄溶液を20mlの5wt%ポリビニルアルコール(数平均分子量1000)に加えて攪拌で均一になった混合溶液を加熱して徹底乾燥後、透明かつ茶色の凝集体を得た。この凝集体を1000℃・窒素雰囲気中焼成によって得られた粉末には、導電性が確認されたが、無規則な形態をもつ塊状体であり、比表面積が非常に小さかった(約10m/g)。分析結果は、この試料中に主な結晶物とした硫化鉄と少量炭素の存在を示した。
比較例2
20mlの0.29mol/l硫酸鉄溶液を20mlの5wt%ポリエチレングリコール(重量平均分子量20,000)に加えて攪拌で均一になった混合溶液を加熱して徹底乾燥後、1000℃・窒素雰囲気中焼成を行った。得られた黒色粉末は、磁性と導電性が確認されたが、すべての粉体が特定な形態を持たずに不規則な粒子状であり、組成上では少量炭素のほか酸化鉄が主な結晶体として存在していた。

Claims (5)

  1. 炭素と鉄系結晶体とが複合されてなるナノシートを製造する方法であって、
    ポリアミンの水溶液(A)と、鉄カチオンと酸根アニオンからなる鉄イオン化合物の水溶液(B)を混合し、その混合液からポリアミンと鉄イオンを含む不溶性の複合体(C)を得る工程、
    前記工程で得られた前記複合体(C)を加熱焼成する工程、
    を有することを特徴とする、炭素−鉄系結晶体複合ナノシートの製造方法。
  2. 前記ポリアミンが水溶性であり、かつ数平均分子量が1000〜100万の範囲のポリアミンである請求項1記載の炭素−鉄系結晶体複合ナノシートの製造方法。
  3. 前記鉄イオン化合物が、硫酸鉄である請求項1又は2記載の炭素−鉄系結晶体複合ナノシートの製造方法。
  4. 前記水溶液(A)と(B)との使用割合が、前記ポリアミン中のアミノ基と鉄イオン化合物のモル比として1:1〜5:1の範囲である請求項1〜3の何れか1項記載の炭素−鉄系結晶体複合ナノシートの製造方法。
  5. 前記加熱焼成を、不活性ガス雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の炭素−鉄系結晶体複合ナノシートの製造方法。
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