一実施の形態の撮像装置として、レンズ交換式のデジタルスチルカメラを例に挙げて説明する。図1は本実施の形態のデジタルスチルカメラ201の構成を示すカメラの横断面図である。本実施の形態のデジタルスチルカメラ201は、交換レンズ202とカメラボディ203とから構成され、交換レンズ202がマウント部204を介してカメラボディ203に装着される。カメラボディ203にはマウント部204を介して種々の撮影光学
系を有する交換レンズ202が装着可能である。
交換レンズ202は、レンズ209、ズーミング用レンズ208、フォーカシング用レンズ210、絞り211、レンズ駆動制御装置206などを備えている。レンズ駆動制御装置206は、不図示のマイクロコンピューター、メモリ、駆動制御回路などから構成される。レンズ駆動制御装置206は、フォーカシング用レンズ210の焦点調節、絞り211の開口径調節のための駆動制御、ならびにズーミング用レンズ208、フォーカシング用レンズ210および絞り211の状態検出などを行う。また、後述するボディ駆動制御装置214との通信によりレンズ情報の送信およびカメラ情報(デフォーカス量や絞り値など)の受信を行う。絞り211は、光量およびボケ量調整のために光軸中心に開口径が可変な開口を形成する。
カメラボディ203は、撮像素子212、ボディ駆動制御装置214、液晶表示素子駆動回路215、液晶表示素子216、接眼レンズ217、メモリカード219などを備えている。撮像素子212には、画素が二次元状に配置される。この撮像素子212については詳細を後述する。
ボディ駆動制御装置214は、マイクロコンピューター、メモリ、駆動制御回路などから構成される。ボディ駆動制御装置214は、撮像素子212の駆動制御と、画素信号の読み出しと、画素信号に基づく焦点検出演算および交換レンズ202の焦点調節を繰り返し行うとともに、画素信号に基づく画像データの生成処理および記録、カメラの動作制御などを行う。また、ボディ駆動制御装置214は電気接点213を介してレンズ駆動制御装置206との通信を行い、レンズ情報の受信およびカメラ情報の送信を行う。
液晶表示素子216は電気的なビューファインダー(EVF:Electronic View Finder)として機能する。液晶表示素子駆動回路215は撮像素子212から読み出された撮像画像データに基づき、スルー画像(撮像画像)を液晶表示素子216に表示し、撮影者は接眼レンズ217を介してスルー画像を観察することができる。メモリカード219は、撮像素子212により撮像された画像データを記憶する画像ストレージである。
交換レンズ202を通過した光束により、撮像素子212の撮像面上に被写体像が形成される。この被写体像は撮像素子212により光電変換され、画素の出力信号がボディ駆動制御装置214へ送られる。
ボディ駆動制御装置214は、撮像素子212の画素の出力信号に基づいてデフォーカス量を算出し、このデフォーカス量をレンズ駆動制御装置206へ送る。また、ボディ駆動制御装置214は、撮像素子212の画素の出力信号を処理して画像データを生成し、メモリカード219に格納するとともに、液晶表示素子駆動回路215へ送り、スルー画像を液晶表示素子216に表示させる。さらに、ボディ駆動制御装置214は、レンズ駆動制御装置206へ絞り制御情報を送って絞り211の開口制御を行う。ボディ駆動制御装置214は、図14を用いて後述するように、画像生成制御機能および焦点検出制御機能を有する。
レンズ駆動制御装置206は、フォーカシング状態、ズーミング状態、絞り設定状態、絞り開放F値などに応じてレンズ情報を更新する。具体的には、ズーミング用レンズ208とフォーカシング用レンズ210の位置と絞り211の絞り値とを検出し、これらのレンズ位置と絞り値とに応じてレンズ情報を演算したり、あるいは予め用意されたルックアップテーブルからレンズ位置と絞り値とに応じたレンズ情報(F値、射出瞳距離情報など)を選択する。
レンズ駆動制御装置206は、受信したデフォーカス量に基づいてレンズ駆動量を算出し、レンズ駆動量に応じてフォーカシング用レンズ210を合焦位置へ駆動する。また、レンズ駆動制御装置206は受信した絞り値に応じて絞り211を駆動する。
図2は、撮像素子212の正面図であり、この矩形領域の撮像素子212に後述する画素が2次元的に配置されている。撮像素子212の中心191は、撮影画面の中心に対応する場合、交換レンズ202の撮影光学系の光軸と一致している。撮像素子212の中心が撮影画面の中心に対応しない場合、以下の説明において、撮像素子212の中心191は撮影画面の中心に対応する撮像素子212上の位置を指すものとする。図2に示すように、撮像素子212上の中心191から離間した位置に一部の矩形領域180を定め、撮像素子212の水平方向をX方向、および垂直方向をY方向とする。中心191からX方向に距離XaおよびXbの位置にそれぞれ位置192および193を定める。距離Xbは距離Xaよりも大きい。中心191からX方向の距離Xcの位置に位置194を、および中心191から−X方向の距離Xcの位置に位置195をそれぞれ定める。位置194と195とは、中心191に関して互いに対称である。中心191から−X方向の距離Xaの位置に位置196を定める。位置192と196とは、中心191に関して互いに対称である。中心191から−X方向の距離Xbの位置に位置197を定める。位置193と197とは、中心191に関して互いに対称である。一部の矩形領域180および位置192〜197を例にした説明は後述する。
図3は、図2に示す矩形領域180での撮像素子212の詳細な構成を拡大して示す正面図であり、画素配列の詳細を示す。撮像素子212には画素311が二次元正方格子状に稠密に配列される。矩形で示す画素311はマイクロレンズ10と一対の光電変換部15および16を備えている。各画素には赤フィルタ(R)、緑フィルタ(G)、青フィルタ(B)からなる色フィルタが設けられ、ベイヤー配列の配置規則によって配置されている。これらの色フィルタは、それぞれの色に対応する分光感度特性を有している。
画素311のマイクロレンズの形状は、元々画素サイズより大きな円形のマイクロレンズから画素サイズに対応した正方形の形状で切り出した形状をしている。
画素311は、矩形のマイクロレンズ10と、受光領域が左右水平方向に分離された一対の光電変換素子15、16、および色フィルタ(不図示)とから構成される。本実施の形態において、光電変換素子15および16は各々フォトダイオードを有する。画素311に入射した光束は、マイクロレンズ10により一対の光電変換部15、16上に集光される。
ここで画素311の詳細構造を、図4を用いて説明する。図4は、図2に示す撮像素子212の中心191近傍において水平方向(X方向)の直線で画素配列の断面をとった場合の画素311の断面図である。画素311では光電変換素子15、16の上に近接した面41に遮光マスク30が形成される。光電変換素子15、16は、遮光マスク30の開口部30dで制限された光を受光する。一対の光電変換素子15、16は素子分離領域17を境界領域として半導体回路基板29上に形成される。撮像素子212の水平方向(図4における横方向)において素子分離領域17の中心を通る軸43の位置とマイクロレンズ10の光軸42の位置とは一致している。
開口部30dは略正方形であり、その中心は軸43と一致している。遮光マスク30の上には平坦化層31が形成され、その上に色フィルタ34が形成される。色フィルタ34の上には平坦化層32が形成され、その上にマイクロレンズ10がオンチップレンズとして形成される。マイクロレンズ10により、開口部30dが配置された面41は交換レンズの平均的な射出瞳距離にある測距瞳面と共役な関係になっている。測距瞳面については
後述する。
半導体回路基板29上に形成された光電変換素子15、16は、半導体基板表面40への入射光を受光し、光電変換により受光量に応じた量の電荷を発生する。この電荷は電気信号として撮像素子212の外部に読み出される。一対の光電変換素子15および16の並び方向は水平方向であり、後述する測距瞳面において一対の光束が通過する領域の並び方向と等しい。光電変換素子15はその一対の光束の一方を受光し、光電変換素子16はその一対の光束の他方を受光する。半導体基板表面40と遮光マスク30との間には平坦化層31と同じ材質が充填される。
図5は、図2の位置192の近傍において水平方向(X方向)の直線で画素配列の断面をとった場合の画素311の断面図であり、図4で示す構成と同一の構成については図4と同じ符号で示すこととし、説明を省略する。図5において図4と異なる点は、撮像素子212の水平方向(図4における横方向)において素子分離領域17の中心位置を通る軸43の位置が、マイクロレンズ10の光軸42の位置より撮像素子212の中心191から離れる方向(図5においては右方向)にΔPだけ偏位している点である。図4と同様に、マイクロレンズ10により、開口部30dが配置された面41は後述する測距瞳面と共役な関係になっている。図4と比較して図5においては、光電変換素子15、16が受光する光束はマイクロレンズ10の光軸42に対して撮像素子212の中心191の方向に傾いた光束となり、このような構成により画面周辺におけるシェーディングを軽減している。
図4の構成において光電変換部15、16が受光する光束が測距瞳面において通る一対の領域と、図5の構成において光電変換部15、16が受光する光束が測距瞳面において通る一対の領域とが一致する。
図2において、位置192以外の像高に配置された画素においては、中心191からその画素位置までの水平方向(X方向)の距離に応じて、図5におけるマイクロレンズ10の光軸42に対する素子分離領域17の中心位置を通る軸43の偏位ΔPが定められる。例えば図2において位置193の近傍に配置された画素における偏位ΔPは、位置193の近傍に配置された画素における偏位ΔPよりも大きな量となる。また図2においてY軸より左側に配置された画素においては、光軸42に対する軸43の偏位方向は図5とは逆に左方向になる。
以上のような構成により、すべての画素において光電変換部15、16が受光する光束は測距瞳面において同一の一対の領域を通過することになる。
また各画素311の一対の光電変換素子15、16の出力を加算することにより、通常の撮像画素が撮影光束全体を受光した場合と略同等な出力が得られ、これにより画像データを得ることができる。
しかしながら、一対の光電変換部15、16は素子分離領域17を境界領域に有しているので、撮影光束の一部は素子分離領域17に入射して光電変換されない。従って一対の光電変換素子15、16の出力を加算した時の出力信号は、一対の光電変換素子15、16の代わりに、外形が光電変換素子15、16に外接する矩形であって素子分離領域17を有しない1つの光電変換素子を配置した場合に該光電変換部から得られる実撮像出力よりも小さくなる傾向にある。そこで、本実施の形態では以下のようにして一対の光電変換素子15、16の出力を処理することにより画像品質を維持している。
図6は図2において撮像素子212の中心191に配置された画素の一対の光電変換素
子15、16に入射する光束の範囲を示した正面図である。画素の一対の光電変換素子15、16上にはマイクロレンズ10により、交換レンズ202である撮影光学系の射出瞳の像が円形で形成される。円形の射出瞳の像の中心位置Cは、光電変換素子15、16の重心位置に相当する素子分離領域17の中央位置Gと一致している。
撮影光学系のF値が小さい場合、射出瞳の像は円51で表される。円51の内部に光束が入射し、そのうち素子分離領域17に入射する光束の量は全体の光束の量に比較して小さいので、一対の光電変換素子15、16の出力を加算した出力信号と実撮像出力との偏差は小さい。
撮影光学系のF値が中程度の場合、射出瞳の像は円52で表される。円52の内部に光束が入射し、そのうち素子分離領域17に入射する光束の量は全体の光束の量に比較して大きくなるので、一対の光電変換素子15、16の出力を加算した出力信号と実撮像出力との偏差は大きくなる。
撮影光学系のF値がさらに大きくなった場合、射出瞳の像は円53で表される。円53の内部に光束が入射し、そのうち素子分離領域17に入射する光束の量は全体の光束の量に比較してさらに大きくなるので、一対の光電変換素子15、16の出力を加算した出力信号と実撮像出力との偏差はさらに大きくなる。
上記のような偏差を補正するために、一対の光電変換素子15、16の出力を加算して得られる出力信号に対し、撮影光学系のF値に対応した補正係数を乗ずることにより出力信号を補正して撮像出力に換算する。こうすることにより、撮像出力と実撮像出力との偏差が生じないようにする。
図7は図6に説明した撮影絞りのF値と補正係数との関係を示した図である。実線61で表されるように、補正係数の値はF値が小さい場合はほぼ1であるが、F値が大きくなるにつれて1より大きな値に変化していく。補正係数の値は、実撮像出力と撮像出力との比を測定することによって得られる実測値でもよいし、実撮像出力と撮像出力との比を設計データに基づき計算で求めることによって得られる設計値であってもよい。実撮像出力と撮像出力との比は、例えば図6に示した射出瞳の像を表す円51、52または53の面積値と、その面積値からその円と素子分離領域17との重なり部分の面積値を差し引いた値との比である。
図7に示すF値と補正係数との関係に基づくルックアップテーブルを、例えばボディ駆動制御装置214が有するメモリに記憶させる。ルックアップテーブルを参照して撮像時のF値に応じた補正係数を選択し、該補正係数を一対の光電変換素子15、16の出力を加算して得られる出力信号に乗ずる補正により、実撮像出力との偏差が少ない高品質な撮像出力を得ることができる。
図8は、射出瞳面と測距瞳面との位置関係に応じて、撮像素子212上に配置された画素に到来する一対の光束が交換レンズの射出瞳によりどのように制限されるかについての口径蝕(ケラレ)の様子を示した図である。本発明は、このような口径蝕が存在する場合においても成り立つ。射出瞳は絞り開口を撮像素子側から見た時の像であり、射出瞳距離は撮像素子212から交換レンズの射出瞳97までの距離である。撮像素子上に配列された画素の光電変換部15、16は、近接して配置された遮光マスク開口30dの半分ずつの領域を通過した光束をそれぞれ受光する。全画素の遮光マスク開口30dにおいて光電変換部15が受光する光束が通る領域の形状はいずれも、マイクロレンズ10により撮像素子212の撮像面から測距瞳距離dだけ離間した測距瞳面90上の領域である測距瞳95に投影される。全画素の遮光マスク開口30dにおいて光電変換部16が受光する光束
が通る領域の形状はいずれも、マイクロレンズ10により撮像素子212の撮像面から測距瞳距離dだけ離間した測距瞳面90上の領域である測距瞳96に投影される。一対の測距瞳95および96は、いわゆる瞳分割方式の焦点検出における分割瞳に相当する。
各画素の光電変換部15は、測距瞳95を通過する光束を受光し、該光束によって各マイクロレンズ10上に形成される像の強度、すなわち受光量に応じた信号を出力する。各画素の光電変換部16は、測距瞳96を通過する光束を受光し、該光束によって各マイクロレンズ10上に形成される像の強度、すなわち受光量に応じた信号を出力する。
実際は測距瞳面90において光束は交換レンズ202の絞り開口により制限されており、最も明るい絞り開口径の場合においても、その開口径は測距瞳95、96を足し合わせた領域よりも小さくなるように設定される。
上述した一対の光電変換部15、16の出力を測距瞳95および測距瞳96に対応した一対の出力グループにまとめることによって、測距瞳95と測距瞳96をそれぞれ通過する一対の光束が画素配列上に形成する一対の像の強度分布に関する情報が得られる。この情報に対して像ズレ検出演算処理(相関演算処理、位相差検出処理)を施すことによって、いわゆる瞳分割型位相差検出方式で一対の像の像ズレ量が検出される。さらに、像ズレ量に一対の測距瞳の重心間隔と測距瞳距離の比例関係に応じた変換演算を行うことによって、焦点検出位置における予定結像面と結像面の偏差(デフォーカス量)が算出される。
図8における撮像素子212の中心191、ならびに位置194および195は、それぞれ図2における中心191、ならびに位置194および位置195に対応する。中心191、位置194、位置195にそれぞれ配置された画素に、一対の光束(285,286)、(385,386)、(485,486)がそれぞれ到来する。各画素の一対の光電変換素子15および16が、各画素に到来する一対の光束をそれぞれ受光する。なお、交換レンズ202の光学系の光軸91は撮像素子212の中心191を通る撮像素子212に対する法線である。撮像素子212の撮像面は、交換レンズ202の光学系の予定焦点面に配置されている。
交換レンズの射出瞳97Aが一対の測距瞳95および96と等しい位置にある場合、すなわち射出瞳距離dが測距瞳距離dと一致する場合は、一対の測距瞳95、96は光軸91上に中心を持つ円形の射出瞳に制限される。そのため、各画素に到来する一対の光束(285,286)、(385,386)、(485,486)は各々光軸に対して対称に制限される。
交換レンズの射出瞳97Bが撮像素子212から射出瞳距離dnの位置にある場合、すなわち射出瞳距離dnが測距瞳距離dよりも短い場合は、中心191に配置された画素に到来する一対の光束(285,286)は光軸に対して対称に制限される。しかし、位置194、195に配置された画素に到来する一対の光束(385,386)、(485,486)は光軸91に対して非対称となっているため、光軸対称な射出瞳97Bにより非対称に制限される。
交換レンズの射出瞳97Cが撮像素子212から射出瞳距離dfの位置にある場合、すなわち射出瞳距離dfが測距瞳距離dよりも長い場合は、中心191に配置された画素に到来する一対の光束(272,273)は光軸に対して対称に制限される。しかし、位置194、195に配置された画素に到来する一対の光束(385,386)、(485,486)は光軸91に対して非対称となっているため、射出瞳距離dnの場合とは反対方向に非対称に制限される。
以上のように交換レンズの射出瞳距離が測距瞳距離dではなく、かつ、一対の光束を受光する画素が撮像素子212の中心191にない場合には、その一対の光束は交換レンズ202の射出瞳により非対称に制限されることになる。非対称な制限の度合いは、交換レンズ202の射出瞳距離の測距瞳距離dからの偏差、および画素位置の中心191からの偏差に応じて変化する。
図9、図10は図2において位置192に配置された画素の一対の光電変換素子15、16に入射する光束の範囲を示した正面図である。図9は交換レンズ202の射出瞳距離dn1が測距瞳距離dより短い場合、図10は交換レンズの射出瞳距離dn2が測距瞳距離dおよび射出瞳距離dn1より短い場合を示している。画素の一対の光電変換素子15、16上には、マイクロレンズ10により、交換レンズ202である撮影光学系の射出瞳の像が円形で形成されることになる。上述したように一対の光束が非対称に制限されるということは、円形の射出瞳の像の中心位置Cが、光電変換素子15、16の重心位置に相当する素子分離領域17の中央位置Gからずれることに対応している。
撮影光学系のF値が小さい場合、射出瞳の像は円51で表される。円51の内部に光束が入射し、そのうち素子分離領域17に入射する光束の量は全体の光束の量に比較して小さいので、一対の光電変換素子15、16の出力を加算した出力信号と実撮像出力との偏差は小さい。
撮影光学系のF値が中程度の場合、射出瞳の像は円52で表される。円52の内部に光束が入射し、そのうち素子分離領域17に入射する光束の量は全体の光束の量に比較して大きくなるので、一対の光電変換素子15、16の出力を加算した出力信号と実撮像出力との偏差は大きくなる。
撮影光学系のF値がさらに大きくなった場合、射出瞳の像は円53で表される。円53の内部に光束が入射し、そのうち素子分離領域17に入射する光束の量は全体の光束の量に比較してさらに大きくなるので、一対の光電変換素子15、16の出力を加算した出力信号と実撮像出力との偏差はさらに大きくなる。
交換レンズ202の射出瞳距離dが測距瞳距離dと等しい場合には、位置192に配置された画素の一対の光電変換素子15、16に入射する光束の範囲は図6と同様になる。しかし、射出瞳距離dn1およびdn2がともに測距瞳距離dより短い場合を示す図9を図6と比較すると、図9においては光電変換素子15、16の重心位置に相当する素子分離領域17の中央位置Gに対して、円形の射出瞳の像の中心位置Cが光電変換素子16側にずれる。したがって、素子分離領域17上に入射する光束の量は図6に示す場合に比して少なくなる。
また図9および10を比較すると、素子分離領域17の中央位置Gからの射出瞳の像の中心位置Cのずれ量が、図9に示す射出瞳距離dn1の場合よりも図10に示す射出瞳距離dn2の場合の方が大きい。すあなち、射出瞳距離dn1の場合よりも射出瞳距離dn2の場合の方が、素子分離領域17上に入射する光束の量が少なくなる。
射出瞳距離dfが測距瞳距離dより長い場合、位置192に配置された画素においては、図9および10において示した光電変換素子15、16と円51、52、および53との相対的な位置関係とは逆の位置関係になる。すなわち、素子分離領域17の中央位置Gに対して、円51、52、および53の中心位置Cが光電変換素子15側にずれる。
射出瞳距離dnが測距瞳距離dより短く、かつ図2に示すように画素の位置が中心191に関して位置192と水平方向で対称な位置196にあった場合には、一対の光電変換
素子15、16と円51、52、および53との相対的な位置関係は、図9および10において示した位置関係と逆になる。すなわち、素子分離領域17の中央位置Gに対して、円51、52、および53の中心位置Cが光電変換素子15側にずれる。
射出瞳距離dfが測距瞳距離dより長く、かつ画素の位置が中心191に関して位置192と水平方向で対称な位置196にあった場合には、一対の光電変換素子15、16と円51、52、および53との相対的な位置関係は、図9および10において示した位置関係と同じになる。
上記のような現象によって生じる一対の光電変換素子15、16の出力信号の加算出力と実撮像出力との偏差を補正する。一対の光電変換素子15、16の出力を加算して得られた出力信号に対し、撮影光学系のF値と、射出瞳距離と測距瞳距離との偏差とに対応した補正係数を乗じて補正することにより、撮像出力に換算する。こうすることにより、撮像出力と実撮像出力との偏差が生じないようにする。
図11は、画素の位置が図2における位置192である場合において、上述した撮影絞りのF値と補正係数との関係を示した図である。補正係数の値は、F値が小さい場合はほぼ1であるが、F値が大きくなるにつれて1より大きな値に変化していく。実線61は、射出瞳距離dが測距瞳距離dと等しい場合のF値と補正係数との関係を表し、図7の補正係数を表す実線61と同一となる。
破線62は、射出瞳距離df1の場合の補正係数および射出瞳距離dn1の場合のF値と補正係数との関係を表し、補正係数はF値が大きくなるにつれて実線61より小さな値となる。ただし、射出瞳距離df1>dであり、射出瞳距離dn1<dであるものとする。
点線63は、射出瞳距離df2の場合の補正係数および射出瞳距離dn2の場合のF値と補正係数との関係を表し、補正係数はF値が大きくなるにつれて破線62より小さな値となる。ただし、射出瞳距離df2>df1であり、射出瞳距離dn2<dn1であるものとする。
図11においては代表的な3種類の射出瞳距離に対する補正係数しか示していないが、任意の射出瞳距離に応じて補正係数を定めることができる。また一般的に大きなF値においては、射出瞳距離と測距瞳距離との偏差が大きくなるほど補正係数は小さくなる。
図11に示すF値と補正係数との関係に基づくルックアップテーブルを、例えばボディ駆動制御装置214が有するメモリに記憶させる。ルックアップテーブルを参照して撮像時のF値と、射出瞳距離と測距瞳距離との偏差とに応じた補正係数を選択し、該補正係数を一対の光電変換素子15、16の出力を加算して得られた出力信号に乗ずる補正により、実撮像出力との偏差が少ない高品質な撮像出力を得ることができる。
一対の光電変換出力信号は加算して用いるので、図11で示す補正係数は画素の位置が中心191に関して位置192と水平方向で対称な位置196にあった場合にも適用することができる。
交換レンズ202の射出瞳距離dn1が測距瞳距離dより短い場合、図2における位置192に配置された画素の一対の光電変換素子15、16に入射する光束の範囲は、上述したように図9で表される。図2における位置193に配置された画素の一対の光電変換素子15、16に入射する光束の範囲は、図10と同様に表される。画素の一対の光電変換素子15、16上には、マイクロレンズ10により、交換レンズ202である撮影光学
系の射出瞳の像が円形で形成されることになる。円形の射出瞳の像の中心位置Cの、光電変換素子15、16の重心位置に相当する素子分離領域17の中央位置Gからの位置偏差は、中心191に対する画素位置の水平方向(図2のX方向)の偏差に応じて大きくなる。
撮影光学系のF値が小さい場合、射出瞳の像は円51で表される。円51の内部に光束が入射し、そのうち素子分離領域17に入射する光束の量は全体の光束の量に比較して小さいので、一対の光電変換素子15、16の出力を加算した出力信号と実撮像出力との偏差は小さい。
撮影光学系のF値が中程度の場合、射出瞳の像は円52で表される。円52の内部に光束が入射し、そのうち素子分離領域17に入射する光束の量は全体の光束の量に比較して大きくなるので、一対の光電変換素子15、16の出力を加算した出力信号と実撮像出力との偏差は大きくなる。
撮影光学系のF値がさらに大きくなった場合、射出瞳の像は円53で表される。円53の内部に光束が入射し、そのうち素子分離領域17に入射する光束の量は全体の光束の量に比較してさらに大きくなるので、一対の光電変換素子15、16の出力を加算した出力信号と実撮像出力との偏差はさらに大きくなる。
画素が中心191に配置されている場合には、画素の一対の光電変換素子15、16に入射する光束の範囲は図6と同様になる。しかし、画素が位置192に配置されている場合を示す図9を図6と比較すると、図9においては光電変換素子15、16の重心位置に相当する素子分離領域17の中央位置Gに対して、円形の射出瞳の像の中心位置Cが光電変換素子16側にずれる。したがって、素子分離領域17上に入射する光束の量は図6に示す場合に比して少なくなる。
また図9および10を比較すると、素子分離領域17の中央位置Gからの射出瞳の像の中心位置Cのずれ量が、図9に示す画素が位置192に配置されている場合よりも図10に示す画素が位置193に配置されている場合のほうが大きい。すなわち、素子分離領域17上に入射する光束の量が少なくなる。
射出瞳距離dfが測距瞳距離dより長い場合、位置192、位置193に配置された画素においては、図9および10において示した光電変換素子15、16と円51、52、0よび53との相対的な位置関係とは逆の位置関係になる。すなわち、素子分離領域17の中央位置Gに対して、円51、52,53の中心位置Cが光電変換素子15側にずれる。
射出瞳距離dnが測距瞳距離dより短く、かつ図2に示すように画素の位置が中心191に関して位置192、位置193と水平方向で対称な位置196、位置197にあった場合には、一対の光電変換素子15、16と円51、52、および53との相対的な位置関係は、図9および10に示した位置関係と逆になる。すなわち、素子分離領域17の中央位置Gに対して、円51、52、および53の中心位置Cが光電変換素子15側にずれる。
射出瞳距離dfが測距瞳距離dより長く、かつ画素の位置が中心191に関して位置192、位置193と水平方向で対称な位置196、位置197にあった場合には、一対の光電変換素子15、16と円51、52、および53との相対的な位置関係は、図9および10において示した位置関係と同じになる。
上記のような現象によって生じる一対の光電変換素子15、16の出力信号の加算出力と実撮像出力との偏差を補正する。一対の光電変換素子15、16の出力を加算して得られた出力信号に対し、撮影光学系のF値と画素位置とに対応した補正係数を乗じて補正することにより、撮像出力に換算する。こうすることにより、撮像出力と実撮像出力との偏差が生じないようにする。
画素の位置が図2において中心191、位置192、位置193である場合において、上述した撮影絞りのF値と補正係数との関係を示すと、定性的には図11と同様の図が得られる。すなわち、補正係数はF値が小さい場合はほぼ1であるが、F値が大きくなるにつれて1より大きな値に変化していく。実線61は画素位置が位置191の場合のF値と補正係数との関係を表しているとすると、画素位置が位置192の場合のF値と補正係数との関係については、破線64のようにF値が大きくなるにつれて実線61より小さな補正係数値となる。画素位置が位置193の場合の補正係数は、点線65のようにF値が大きくなるにつれて破線64より小さな値となる。
図11においては代表的な3種類の画素位置に対する補正係数しか示していないが、任意の画素位置に応じて補正係数を定めることができる。また一般的に大きなF値においては、画面中心からの画素位置の偏差が大きくなるほど補正係数は小さくなる。
図11と同様に表されるF値と補正係数との関係に基づくルックアップテーブルを、例えばボディ駆動制御装置214が有するメモリに記憶させる。ルックアップテーブルを参照して撮像時のF値と画素の位置(中心191から画素位置までの水平方向の距離)とに応じた補正係数を選択し、該補正係数を一対の光電変換素子15、16の出力を加算して得られた出力信号に乗ずる補正により、実撮像出力との偏差が少ない高品質な撮像出力を得ることができる。
一対の光電変換出力信号は加算して用いるので、図11と同様に表される補正係数は画素の位置が中心191に関して位置192、位置193と水平方向で対称な位置196、位置197にあった場合にも適用することができる。
図12は交換レンズのF値が大きく、射出瞳距離が測距瞳距離dより短いdnの場合、図2において位置192近傍に配置された赤画素、緑画素、青画素の一対の光電変換素子15、16に入射する光束の範囲を重ねて示した正面図の拡大図である。画素の一対の光電変換素子15、16上には、マイクロレンズ10により、交換レンズ202である撮影光学系の射出瞳の像が円形で形成される。中心191からの画素位置の水平方向(図2のX方向)の偏差に応じて、円形の射出瞳の像の中心位置Cと、光電変換素子15、16の重心位置に相当する素子分離領域17の中央位置Gとの位置偏差を生ずる。この位置偏差はマイクロレンズ10の色収差に応じて変化する。
図12において、円55の内部に緑画素の色フィルタを通過した光束が入射し、円56の内部に赤画素の色フィルタを通過した光束が入射し、円57の内部に青画素の色フィルタを通過した光束が入射する。すなわち、円55は緑画素の色フィルタを通過した光束によって形成される射出瞳の像であり、円56は赤画素の色フィルタを通過した光束によって形成される射出瞳の像であり、円57は青画素の色フィルタを通過した光束によって形成される射出瞳の像である。円55〜57の大きさは略等しいが、円55の中心位置CG、円56の中心位置CR、円57の中心位置CBは、色収差のため、中心191から画素位置までの水平方向と平行に互いに偏位している。このように画素が検出する色に応じて素子分離領域17と各画素が受光する光束の範囲との位置関係が異なっている。したがって、一対の光電変換素子15、16の出力を加算して得られる出力信号に乗ずる補正係数も、画素の色、すなわち画素の分光感度特性に応じて異ならせる必要がある。
図13は、画素の位置が位置192近傍である場合において、上述した撮影絞りのF値と補正係数との関係を示した図である。補正係数の値は、F値が小さい場合はほぼ1であるが、F値が大きくなるにつれて1より大きな値に変化していく。実線66は、緑画素の場合のF値と補正係数との関係を表す。破線67は、青画素の場合のF値と補正係数との関係を表し、補正係数はF値が大きくなるにつれて実線66より大きな値となる。点線68は赤画素の場合のF値と補正係数との関係を表し、補正係数はF値が大きくなるにつれて実線66より小さな値となる。
図13に示すF値と補正係数との関係に基づくルックアップテーブルを、例えばボディ駆動制御装置214が有するメモリに記憶させる。ルックアップテーブルを参照して撮像時のF値と画素の色とに応じた補正係数を選択し、該補正係数を一対の光電変換素子15、16の出力を加算して得られた出力信号に乗ずる補正により、実撮像出力との偏差が少ない高品質な撮像出力を得ることができる。
一対の光電変換出力信号は加算して用いるので、図13で示す補正係数は画素の位置が中心191に関して位置192と水平方向で対称な位置196にあった場合にも適用することができる。
上述した説明においては説明の簡便化のため、撮影光学系のF値、射出瞳距離と測距瞳距離との偏差、撮像素子の中心191と画素位置との偏差、および画素の色(画素の分光感度特性)の4種類のパラメータのうち、特定のパラメータを固定して補正係数の説明を行った。しかし、実際には撮影光学系のF値、射出瞳距離と測距瞳距離との偏差、撮像素子の中心191と画素位置との偏差、画素の色(画素の分光感度特性)のすべてのパラメータは独立に変化できる。したがって、予めこれら4つのパラメータに基づいて求めた4次元ルックアップテーブル等を容易しておき、撮像時にこれら4つのパラメータに基づいて補正係数を算出することができる。
図14は、本実施の形態のデジタルスチルカメラ201の撮像動作を示すフローチャートである。図14に示す各処理ステップは、ボディ駆動制御装置214によって実行される。ボディ駆動制御装置214は、ステップS100でカメラの電源がオンされると、ステップS110以降の撮像動作を開始する。
ステップS110において撮像素子212は一定周期で撮像動作を繰り返す(例えば1秒間に60フレームを出力する)動作モードに設定される。そして1フレーム分の全画素データを読み出す。続くステップS120では、各画素の一対の画素データ(画素出力信号)を加算する。加算による出力信号(加算データ)に、交換レンズのF値、射出瞳距離と測距瞳距離との偏差、撮像素子の中心191と画素の位置との偏差(像高)、および画素の色に応じた補正係数を乗じた補正によって撮像出力に換算し、該撮像出力を液晶表示素子216にライブビュー表示させる。交換レンズのF値、射出瞳距離の情報は、ボディ駆動制御装置214と交換レンズ202との通信により得ることができる。具体的には、図3に示す画素配列3110において、画素311の一対の光電変換素子15、16の出力を出力信号P1、P2とし、補正係数をKpとすれば、画素311の撮像出力PはP=(P1+P2)×Kpという換算式によって得られる。
ステップS130では撮像素子212に配置される一部の画素の一対の画素信号に基づき焦点検出を行い、デフォーカス量を算出する。例えば不図示の操作部材により撮影画面中の一部の領域(焦点検出エリア)を選択し、該選択された焦点検出エリアに対応する範囲内の画素出力信号に基づいて焦点検出を行う。デフォーカス量の信頼性が低い場合またはデフォーカス量の算出が不能であった場合は焦点検出不能となる。ステップS130の
詳細については後述する。
ステップS140で、合焦近傍か否か、すなわち算出されたデフォーカス量の絶対値が所定値以内であるか否かを調べる。合焦近傍でないと判定された場合は、ステップS150へ進み、デフォーカス量をレンズ駆動制御装置206へ送信し、交換レンズ202のフォーカシング用レンズ210を合焦位置に駆動させる。その後、ステップS110へ戻って上述した動作を繰り返す。
なお、焦点検出不能な場合もこのステップに分岐し、レンズ駆動制御装置206へスキャン駆動命令を送信し、交換レンズ202のフォーカシング用レンズ210を無限から至近までの間でスキャン駆動させる。その後、ステップS110へ戻って上述した動作を繰り返す。
ステップS140で合焦近傍であると判定された場合はステップS160へ進み、シャッターボタン(不図示)の操作によりシャッターレリーズがなされたか否かを判別する。シャッターレリーズがなされていないと判定された場合はステップS110へ戻り、上述した動作を繰り返す。一方、シャッターレリーズがなされたと判定された場合はステップS170へ進み、レンズ駆動制御装置206へ絞り調整命令を送信し、交換レンズ202の絞り値を制御F値(撮影者により設定されたF値または自動設定されたF値)にする。絞り制御が終了した時点で、撮像素子212に被写体輝度に応じた露光時間による撮像動作を行わせ、撮像素子212の全画素から画素出力信号を読み出す。
ステップS180において、各画素の一対の画素の画素出力信号を加算する。加算して得られた出力信号に、交換レンズ202のF値、射出瞳距離と測距瞳距離との偏差、撮像素子の中心191と画素の位置との偏差(像高)、および画素の色に応じた補正係数を乗じて補正することにより、撮像出力に換算する。全ての画素の出力信号を換算した撮像出力に基づき、画像データを生成する。続くステップS190では、生成された画像データをメモリカード219に記憶させ、ステップS110へ戻って上述した動作を繰り返す。
図14のステップS130で用いられる一般的な像ズレ検出演算処理(相関演算処理)の詳細は、特開2010−129783号公報に開示されており、その像ズレ量に変換係数を乗じてデフォーカス量が算出される。例えば、撮像素子212の垂直方向において中央に配置された行の画素配列3110が焦点検出エリアとして使用者により選択されたとする。この行には例えば緑画素と赤画素が配置されていたとすると、緑画素の出力信号および赤画素の出力信号からそれぞれデフォーカス量が算出される。
特開2010−129783号公報における開示に基づき、水平方向に配列した緑画素の一対の光電変換素子15、16の出力信号に基づいて相関量に対する極小値C(x)を与えるずらし量xを求める。算出されたずらし量ksの信頼性があると判定された場合は、式(1)により像ズレ量shftに換算される。なお、式(1)において、PYは画素ピッチの2倍であり、すなわち緑画素の検出ピッチと等しい。
shft=PY・x ・・・(1)
式(1)で算出された像ズレ量に所定の変換係数Kdを乗じてデフォーカス量defへ変換する。なお変換係数Kdは画素が受光する一対の光束の平均的な開き角に対応しており、測距瞳距離dを一対の測距瞳の重心間隔で除算した値である。また、変換係数Kdは測距瞳の重心間隔が絞り開口径に応じて変化するために、絞り開口径(F値)に応じて変化する。
def=Kd×shft ・・・(2)
以上のようにして緑画素の出力信号に基づきデフォーカス量が算出される。同様にして赤画素の出力信号に基づきデフォーカス量が算出されるので、両者を平均して、使用者によって選択された焦点検出エリアの最終的なデフォーカス量とする。
以上のように本発明においては、画素の一対の光電変換素子の出力信号を加算後の出力信号に、撮影光学系のF値、射出瞳距離と測距瞳距離との偏差、撮像素子の中心191と画素の位置との偏差、および画素の色に応じた補正係数を加算データに乗ずる補正を行う。こうした補正により撮像出力に換算しているので、高品質な画像情報を得ることが出来る。
−−−変形例−−−
(1)上述した実施形態においては、画素の一対の光電変換素子の出力信号を加算後の出力信号に、撮影光学系のF値、射出瞳距離と測距瞳距離との偏差、撮像素子の中心と画素の位置との偏差、および画素の色に応じた補正係数を加算データに乗ずる補正により画像データに換算している。しかし、補正係数は必ずしも撮影光学系のF値、射出瞳距離と測距瞳距離との偏差、撮像素子の中心と画素の位置との偏差、および画素の色の4つのパラメータに応じて決める必要はない。
交換レンズの撮影光学系のF値が固定な場合には、撮影光学系の射出瞳距離と測距瞳距離との偏差、撮像素子の中心と画素の位置との偏差、および画素の色の3つのパラメータに応じて補正係数を決めればよい。交換レンズの射出瞳距離が固定な場合には、撮影光学系のF値、撮像素子の中心と画素の位置との偏差、および画素の色の3つのパラメータに応じて補正係数を決めればよい。モノクロの撮像素子の場合には、撮影光学系のF値、射出瞳距離と測距瞳距離との偏差、撮像素子の中心と画素の位置との偏差の3つのパラメータに応じて補正係数を決めればよい。
(2)上述した実施形態においては、画素の一対の光電変換素子の出力信号を加算後の出力信号に、撮影光学系のF値に応じた補正係数を加算データに乗ずる補正により画像データに換算している。しかし、これに限定されることなく補正係数を上記のF値に加えて他のレンズ情報に基づいて決定してもよい。
図8においては一対の光電変換素子が受光する一対の光束が、撮影光学系の射出瞳(絞り開口)により制限されることを説明した。撮像素子の周辺に配置された画素においては、一対の光電変換素子が受光する一対の光束は、絞り開口よりも被写体側に配置されたレンズ、いわゆる前玉の外形や、絞り開口よりも撮像素子側に配置されたレンズ、いわゆる後玉の外形によっても制限されることもある。そこで、絞り開口のF値および射出瞳距離データの他に前玉や後玉の開口径の瞳情報(F値、瞳距離)にも応じて補正係数を決定するようにしてもよい。
(3)上述した実施形態においては、画素の一対の光電変換素子の出力信号を加算後の出力信号に、撮影光学系のF値、射出瞳距離と測距瞳距離との偏差、撮像素子の中心と画素の位置との偏差、および画素の色に応じた補正係数を加算データ(加算後の出力信号)に乗ずる補正により、画像データを構成する撮像出力に換算している。しかし、これに限定されることなく補正係数を上記のパラメータ以外のパラメータに基づいて決定してもよい。
例えば撮像素子を交換可能なカメラシステムにおいては、撮像素子の種類に応じて一対の光電変換素子の間の素子分離領域17の幅と受光光束の大きさとの関係が異なる場合がある。
図15は、射出瞳距離および画素位置が所定値をとる場合における一対の光電変換素子15、16および素子分離領域17の部分拡大図であって、円58は、撮影光学系が大きなF値をとるときの射出瞳の像を示している。円58の大きさは、同じF値であっても、撮像素子の画素サイズに応じて変更されるマイクロレンズの光学特性やマイクロレンズから光電変換素子までの距離などのパラメータに応じて変化する。素子分離領域17の幅Wpも撮像素子の画素サイズや製造プロセスに応じて変化するので、前述した補正係数をこのような撮像素子の画素構造パラメータに応じて変化させる必要がある。
図16は、撮像素子の画素構造パラメータとして素子分離領域17の幅のみが変化するとして、画素の位置が位置192近傍である場合において、上述した撮影絞りのF値と補正係数との関係を示した図である。補正係数の値は、F値が小さい場合はほぼ1であるが、F値が大きくなるにつれて1より大きな値に変化していく。実線70は素子分離領域17の幅がWpの場合のF値と補正係数との関係を表す。破線71は素子分離領域17の幅がWpより大きい場合のF値と補正係数との関係を表し、補正係数はF値が大きくなるにつれて実線70より大きな値となる。点線72は素子分離領域17の幅がWpより小さい場合のF値と補正係数との関係を表し、補正係数はF値が大きくなるにつれて実線70より小さな値となる。
図16に示すF値と補正係数との関係に基づくルックアップテーブルを、例えばボディ駆動制御装置214が有するメモリに記憶させる。ルックアップテーブルを参照して撮像時のF値と素子分離領域の幅とに応じた補正係数を選択し、該補正係数を一対の光電変換素子15、16の出力を加算して得られた出力信号に乗ずる補正により、実撮像出力との偏差が少ない高品質な撮像出力を得ることができる。
(4)上述した実施形態においては画素の一対の光電変換素子が水平方向に並んでいたが、図17に示すように一対の光電変換素子13および14が垂直方向に並んだ画素321を備える撮像素子212Aに対しても本発明を適用することが可能である。このような場合、一対の光電変換素子13および14の出力を加算して得られた出力信号に乗ずる補正係数は、撮像素子212Aの中心から画素位置までの垂直方向の距離に応じて定められる。
また同様に一対の光電変換素子が斜め45度方向に並んだ画素を、斜め45度方向に配列するとともに、撮像素子の中心から画素位置までの該斜め45度方向の距離に応じて補正係数を定めるようにしてもよい。
(5)上述した実施形態においては撮像素子のすべての画素が一対の光電変換素子を備えるとして説明を行ったが、本発明はそれに限定されることなく、撮像素子の一部の画素が一対の光電変換素子を備える構成にも適用可能である。
図18は、交換レンズ202の予定結像面、すなわち撮像面に設定した撮影画面上における焦点検出位置(焦点検出エリア)を示す図であり、撮像素子212上の焦点検出画素(一対の光電変換部を備える)の配列が焦点検出の際に撮影画面上で像をサンプリングする領域(焦点検出エリア、焦点検出位置)の一例を示す。この例では、矩形の撮影画面100上の中央(光軸上)および上下左右の5箇所に焦点検出エリア101〜105が配置される。長方形で示す焦点検出エリア101、102、103、104、105の長手方向に対応して、焦点検出画素が撮像素子上で水平方向に直線的に配列される。
図19は撮像素子212Bの詳細な構成を示す正面図である。図18における焦点検出エリア101、102、103、104、または105に対応する撮像素子212B上の位置の近傍を拡大した画素配列の詳細を示す。撮像素子212Bには撮像専用として用い
られる周知の撮像画素310が二次元正方格子状に稠密に配列される。撮像画素310は、マイクロレンズ10と光電変換素子11と色フィルタとを有する。撮像画素310はそれぞれの色フィルタが示す分光感度特性に対応した赤画素(R)、緑画素(G)、青画素(B)からなり、ベイヤー配列の配置規則によって配置されている。図19においては、焦点検出用に撮像画素310と同一の画素サイズを有する焦点検出画素341が水平方向に、本来緑画素と青画素とが連続的に配置されるべき水平行に直線上に連続して配列される。焦点検出画素341は、マイクロレンズ10と一対の光電変換素子25および26とを有する。焦点検出画素341には本来その位置に配置されるべき撮像画素と同じ色のフィルタが設けられている。
上記のような構成の撮像素子212Bにおいても、焦点検出画素341の出力信号(一対の光電変換素子25および26の加算出力)を撮像出力に換算する際に、上述した実施形態と同じような補正係数を用いることができる。焦点検出画素341におけるこうした補正係数を用いた補正により出力信号から換算された撮像出力と、撮像専用の撮像画素が出力する撮像信号とに基づいて、画像データが生成される。
(6)上述した実施形態においては、画素の一対の光電変換素子の出力を加算する処理は、一旦撮像素子から全画素の一対の光電変換素子の出力信号を読み出した後にボディ駆動制御装置がソフト処理で行っていた。しかし、特開2001−305415号公報に開示されるように画素毎に出力加算回路を備え、撮像出力に換算するための出力信号を読み出したい場合は、撮像素子212B側で該加算回路にて加算した出力信号をボディ駆動制御装置214が読み出すようにしてもよい。その場合、図14のステップS120において、ボディ駆動制御装置214による一対の画素信号の加算は行われない。
(7)上述した実施形態においては、1つの画素が一対の光電変換素子を備えるとして説明を行ってきたが、これに限定されることなく、本発明は素子分離領域を有する画素であればどのような形態の画素を備えた撮像素子であっても適用することができる。例えば3つ以上の光電変換素子を1つの画素に備えた撮像素子に適用することができ、特開昭58−24105号公報の図2に開示されたような1つの画素に4分割された光電変換素子を持つ撮像素子にも適用することができる。
(8)上述した実施形態においては、1つの画素が一対の光電変換素子を備えるとして説明を行ってきた。しかし、これに限定されることなく、1つの画素に一対の光電変換素子の一方を持ち、これとペアとなる画素に一対の光電変換素子の他方を持つような撮像素子にも適用することができる。例えば特開2009−145527号公報に開示された構成を有する撮像装置の実施形態においては、ペアを形成する画素が一対の光電変換素子の片方ずつを備えており、これらの画素ペアの出力信号に応じて焦点検出信号に基づく焦点検出および撮像出力に基づく画像データの生成を行っている。このような構成の撮像装置にも本発明を適用することができる。
すなわち特開2009−145527号公報に開示されたような実施形態においては、ペアを形成する画素の一対の光電変換素子を仮想的に1つの画素上で重ね合わせると光電変換素子同士がオーバーラップしている。したがって、一対の光電変換素子の出力を加算した場合、加算後の出力信号は、撮像画素のように1つの光電変換素子で受光した時の出力より大きくなってしまう。これを補正するために、加算後の出力信号に1より小さくなる補正係数を乗ずることにより、画像データを生成するための撮像出力への適切な換算がなされる。
図20はこのような実施形態を適用したモノクロの撮像素子における焦点検出画素配列の一部の行を表示したものである。一対の光電変換素子のうちの一方の光電変換素子27
を有する焦点検出画素331と、他方の光電変換素子28を有する焦点検出画素332との画素ペア(S1n−1,S2n−2)、(S1n,S2n)、(S1n+1,S2n+1)・・・の画素データ(信号)を(Ln−1,Rn−1)、(Ln,Rn)、(Ln+1、Rn+1)・・・とする。このような構成において例えば画素S1nにおける撮像出力PLnを得るためには、補正係数をKqとしてPLn=(Ln+(Rn−1+ Rn)/2)×Kqで求めることができる。なお補正係数Kqは一対の光電変換素子27および28のオーバーラップ量と、撮影光学系のF値と、射出瞳距離と測距瞳距離との偏差と、撮像素子の中心と焦点検出画素の位置との偏差とに応じて定められる。
オーバーラップ量がマイナスの場合、すなわちペアを形成する画素の一対の光電変換素子を仮想的に1つの画素上で重ね合わせると一対の光電変換素子の間にギャップがある場合には、1画素に素子分離領域を隔てて一対の光電変換素子が配置される場合と同じく、補正係数は1より大きくなる。
(9)上述した実施形態においては、一対の光電変換素子のデータを加算して得られる出力信号に補正係数を乗じて画像データを生成するための撮像出力に換算し、該画像データを画像情報として表示または記録する。しかし、撮像装置の形態はこれに限定されるものではない。例えば撮像装置において一対の光電変換素子のデータを用いて立体画像表示をしたり、一対の光電変換素子のデータを加算せずにそのまま立体画像表示用に記録してもよい。一対の光電変換素子のデータを加算せずにそのまま立体画像表示用に記録する際には、撮影時の撮影光学系のF値、射出瞳距離のデータや、撮像素子の識別情報を立体画像表示用データに関連付けて保存しておく。このようにして記録されたデータを外部処理装置において読み出し、一対の光電変換素子のデータを加算して得られる出力信号に補正係数を乗じて画像データを生成するための撮像出力に換算し、該画像データを画像情報として表示することができる。
具体的には外部処理装置において、撮像素子の識別情報に基づき予め格納されている撮像素子のデータベースから該当する撮像素子の特性、すなわち画素位置を算出するための画素ピッチ、測距瞳距離、素子分離領域の幅などの画素構造データを読み出す。それとともに、該撮像素子用に用意された補正係数のデータベースに基づいて補正係数を、撮像素子の中心と画素位置との偏差、射出瞳距離と測距瞳距離との偏差、撮影光学系のF値、および画素の色に応じて決定する。
(10)上述した実施形態においては、撮像素子としてCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等を用いることもできる。
(11)撮像装置としては、上述したような、カメラボディに交換レンズが装着される構成のデジタルスチルカメラに限定されない。例えば、レンズ一体型のデジタルスチルカメラ、あるいはビデオカメラにも本発明を適用することができる。さらには、携帯電話などに内蔵される小型カメラモジュール、監視カメラやロボット用の視覚認識装置、車載カメラなどにも適用できる。