JP5946034B2 - 貴金属含有スクラップ処理物とその製造方法、及び貴金属の回収方法 - Google Patents

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Description

本発明は、貴金属含有スクラップ処理物とその製造方法、及び貴金属の回収方法に関するものである。
本発明者らは、廃触媒などのスクラップ中の貴金属を効率的に回収する方法として、基材上に担持された貴金属を塩化処理することで貴金属塩化物を形成し、この貴金属塩化物を抽出する方法を提案した(特許文献1参照)。特許文献1に記載の回収方法では、公知の湿式法又は乾式法を用いて貴金属塩化物を抽出していた。
一方、スクラップから貴金属を抽出あるいは濃縮・分離する方法としては、磁力選別などの物理的な選別法も知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の方法では、廃触媒を石灰及びコークスとともに溶融させることで、廃触媒に含まれる鉄やニッケルに白金を吸収させ、その後に、白金を含む鉄やニッケルを磁力選別して回収していた。
特開2009−256744号公報 特開平7−216467号公報
しかしながら、特許文献1に記載の回収方法では、基材とともに存在する状態での貴金属の回収は困難で、回収できる貴金属の量に対して酸やコレクターメタルの使用量が非常に多く、非効率であるという課題があった。
また特許文献2に記載の回収方法では、基材とともに存在する状態での貴金属の回収は困難で、触媒に含まれる鉄族金属の還元や白金の吸収処理に1500℃を超える高温が必要であり、簡便な方法とはいえなかった。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、簡便かつ効率的に貴金属を回収できる貴金属含有スクラップ処理物とその製造方法、及び貴金属の回収方法を提供することを目的とする。
本発明の、貴金属含有スクラップ処理物は、基材と、前記基材上に形成され貴金属化合物を含む物理選別適合層とを含むことを特徴とする。
この貴金属含有スクラップ処理物によれば、物理選別に好適な物理選別適合層を含むスクラップの濃縮物が得られるので、その後の抽出工程における酸やコレクターメタルの使用量を減らすことができる。よって貴金属の回収効率を高めることができる。
上記の貴金属含有スクラップ処理物は、当初のスクラップの形状であっても良いが、当初の形状を分離した切片であっても良い。物理選別後の濃縮物の濃縮度を高めるには、スクラップ基材の割合が小さいほど有利であるので、経済合理性の観点からは、貴金属含有スクラップ処理物は当初の形状を分離したものが良い。
上記の貴金属含有スクラップ処理物における物理選別適合層は、当初のスクラップにおいて貴金属部として存在していた部分を対象に少なくとも一部が貴金属化合物でなる、物理選別に好適な層である。物理選別適合層において、全部が貴金属化合物であっても良い。
物理選別にて、物理選別適合層を含むスクラップの濃縮物が得られるが、この濃縮物の基材を除いた貴金属化合物からの抽出後の貴金属濃度は理論値で75%以上にも達するので、抽出前の基材の分離次第で極めて高い回収効率を実現可能である。
前記貴金属化合物が貴金属合金である構成としてもよい。
前記貴金属合金が、鉄、銅、ニッケル、亜鉛、及び鉛からなる群より選ばれる1種以上の金属と貴金属との合金である構成としてもよい。
前記貴金属化合物が貴金属硫化物である構成としてもよい。
本発明の貴金属含有スクラップ処理物は、貴金属を担持した基材を含むスクラップを金属化合物と接触させることにより前記貴金属と前記金属とを合金化したことを特徴とする。
本発明の貴金属含有スクラップ処理物は、貴金属を担持した基材を含むスクラップを硫黄又は硫黄化合物と接触させることにより前記貴金属を硫化したことを特徴とする。
これらの構成によれば、それ自体で取引可能な貴金属含有スクラップ処理物が提供される。
本発明の貴金属含有スクラップ処理物の製造方法は、貴金属を担持した基材を含むスクラップの前記貴金属を合金化又は硫化することで、前記基材上に、貴金属化合物を含む物理選別適合層を形成することを特徴とする。
この製造方法によれば、貴金属を容易に濃縮できる貴金属含有スクラップ処理物を容易に製造することができる。
前記貴金属に対して、金属ハロゲン化物、金属硫化物、硫化水素、硫黄、硫化炭素からなる群より選ばれる1種以上の物質を接触させることにより前記物理選別適合層を形成する製造方法としてもよい。
前記金属ハロゲン化物が、鉄ハロゲン化物、銅ハロゲン化物、又は、鉄ハロゲン化物と銅ハロゲン化物の複合ハロゲン化物である製造方法としてもよい。
気相処理により前記貴金属化合物を形成する製造方法としてもよい。
めっき処理により前記貴金属化合物を形成する製造方法としてもよい。
本発明の貴金属の回収方法は、貴金属を含む基材から前記貴金属を回収する方法であって、前記基材上の貴金属を合金化又は硫化することで貴金属化合物を形成する工程と、前記貴金属化合物を物理選別法により回収する工程と、を有することを特徴とする。
この回収方法によれば、貴金属を合金化又は硫化することで、貴金属を物理選別可能な状態とし、これを物理選別工程で濃縮するので、その後の抽出工程における酸やコレクターメタルの使用量を減らすことができる。よって貴金属の回収効率を高めることができる。
前記貴金属化合物を形成する工程において、前記貴金属に対して、金属ハロゲン化物、金属硫化物、硫化水素、硫黄、硫化炭素からなる群より選ばれる1種以上の物質を接触させる方法としてもよい。
この回収方法によれば、貴金属の合金化や硫化に、金属ハロゲン化物や金属硫化物、硫黄化合物を使用するので、低温で合金化処理や硫化処理を行うことができ、従来のように1500℃を超えるような高温が不要になる。
前記金属ハロゲン化物が、鉄ハロゲン化物、銅ハロゲン化物、又は、鉄ハロゲン化物と銅ハロゲン化物の複合ハロゲン化物である方法としてもよい。
これらの金属ハロゲン化物は、蒸気圧が高く、また比較的低温で液化することができるものもあるため、基材上の貴金属を容易かつ均一に合金化することができる。
気相処理により前記貴金属化合物を形成する方法としてもよい。
この方法によれば、複雑な形状の基材に貴金属が担持されている場合であっても、容易かつ均一に貴金属化合物を形成させることができ、物理選別により効率良く回収することができる。
めっき処理により前記貴金属化合物を形成する方法としてもよい。
この方法によれば、複雑な形状の基材に貴金属が担持されている場合であっても、容易かつ均一に貴金属化合物を形成させることができ、物理選別により効率良く回収することができる。
前記物理選別法が、磁力選別、浮遊選別、比重選別、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる1種以上の選別法である方法としてもよい。
これらのうち、いずれか又は複数の選別法を用いることで、貴金属化合物を容易に回収、濃縮化することができる。
前記貴金属化合物を形成する工程において、前記基材上の貴金属を合金化することで貴金属合金を形成した後、前記貴金属合金を硫化することで貴金属硫化物を形成する方法としてもよい。
この方法によれば、合金化処理によって形成される貴金属合金の体積は、合金化処理前の貴金属の体積よりも大きくなるため、体積変化によって基材からの脱離が促進されることが期待できる。
前記貴金属化合物から前記貴金属を抽出する工程を有する方法としてもよい。
これにより、濃縮された貴金属化合物から効率良く貴金属を回収することができる。
本発明の貴金属含有スクラップ処理物によれば、貴金属を容易に濃縮可能であり、またそれ自体を流通させることができる貴金属含有スクラップ処理物が提供される。
本発明の貴金属含有スクラップ処理物の製造方法によれば、貴金属を容易に濃縮可能な状態としたスクラップ処理物を効率良く製造することができる。
本発明の貴金属の回収方法によれば、簡便な方法によって効率良く貴金属を回収することができる。
実施形態に係る貴金属の回収方法を示すフロー図。 実施形態に係る回収方法の断面工程図。 実施形態に係る貴金属化合形成工程を示すフロー図。 物理選別した濃縮物から貴金属を抽出する工程の3態様を示すフロー図。 実施例に係る合金化処理装置を示す図。 実施例に係るXRDスペクトルを示すグラフ。 磁力選別前の試料、磁力選別後の試料のうち磁性物質と非磁性物質それぞれについての白金濃度について示したグラフ。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施形態に係る貴金属の回収方法を示すフロー図である。図2は、実施形態に係る回収方法の断面工程図である。図3は、貴金属化合物を形成する工程の複数の態様を示すフロー図である。図4は、物理選別した濃縮物から貴金属を抽出する工程の3態様を示すフロー図である。
本実施形態の貴金属の回収方法は、図1に示すように、貴金属化合物形成工程S10と、基材粗分離工程S15と、物理選別工程S20と、貴金属抽出工程S30とを有する回収方法である。
貴金属化合物形成工程S10としては、図3に示す(A)〜(E)のいずれかの態様の工程を用いることができる。また貴金属抽出工程S30としては、図4に示す(1)〜(3)のいずれかの抽出工程を用いることができる。
以下、本実施形態の回収方法を用いて、図2に示す基材10上に担持された貴金属粒子12を回収する手順について説明する。
図2(a)は、例えば自動車等の触媒における貴金属担持部分を示すものである。アルミナやムライト、コージライト、ゼオライト等の多孔質材料からなる基材10上に、アルミナやセリア等からなる塗膜11が形成されており、塗膜11上に貴金属粒子12が担持されている。貴金属を含む部材としては、上記した触媒のほか、電子機器部品、装飾品などであってもよい。また、貴金属は面状(膜状)であっても、複雑に入り組んだ構造(例えば絶縁材料の多孔質体など)でも構わない。本回収法により効果的に回収できる貴金属粒子12としては、Au,Ag,Pt,Rh,Pd,Ir,Ru,Osのいずれか又は2種以上、あるいはそれらの合金である。
本発明に係る回収方法により基材10から貴金属粒子12を回収するには、まず、図3に示すように、合金化工程S11、硫化工程S12、及び無電解めっき工程S13の少なくとも1つを実施することにより、貴金属粒子12を貴金属化合物とする(貴金属化合物形成工程S10)。この工程により貴金属化合物14が形成されるスクラップの表層部が、本発明における物理選別適合層となる。
まず、合金化工程S11を単独で行う場合(図3の態様A)について説明する。
合金化工程S11は、反応室内で金属化合物と貴金属粒子12とを接触させ、所定温度に加熱することで、貴金属化合物を形成する工程である。合金化工程S11で用いる金属化合物としては、貴金属粒子12を構成する貴金属と合金を形成できる金属の化合物である。具体的には、鉄ハロゲン化物、銅ハロゲン化物、あるいは、鉄と銅の複合ハロゲン化物を例示することができる。また上記以外にも、例えば、亜鉛や鉛の蒸気を利用して貴金属を合金化することも可能である。
本実施形態では、金属化合物の蒸気を発生させ、この蒸気を貴金属粒子12と接触させることにより貴金属化合物を形成する。例えば、FeCl、FeCl、CuCl、CuCl、あるいはこれらの混合物を加熱することにより、これらの金属化合物の蒸気を発生させ、この金属化合物の蒸気を貴金属粒子12に接触させることで貴金属化合物を形成する。
上記の合金化工程S11を行った場合、図2(b)に示すように、塗膜11上に付着している貴金属粒子12が、上記の鉄ハロゲン化物や銅ハロゲン化物と反応し、貴金属化合物14が形成される。貴金属化合物14は、貴金属粒子12を構成する貴金属(例えばPt)と、金属化合物蒸気に含まれる金属(例えばFe、Cu)との合金である貴金属合金(FePt、CuPt)である。貴金属化合物14はその少なくとも一部が合金化されていればよく、貴金属粒子12の表面に化合物(例えばPtMCl、M=Fe、Cu)が形成されているものであってもよい。
なお、貴金属化合物14としてFePt合金を形成した場合、貴金属化合物14中のPt濃度は78質量%(50原子%)となる。
金属化合物を気相供給する場合、600℃〜1000℃の温度範囲内の少なくとも一部の温度領域において、10−4atm以上の蒸気圧が得られる金属化合物を用いることが好ましい。上記に挙げたFeCl、FeCl、CuCl、CuClは、いずれも比較的高い蒸気圧を有しており、問題なく用いることができる。特に、FeCl、CuClはこれらのうちでも高い蒸気圧を有しており、気相供給に好適なものとして挙げることができる。
なお、貴金属粒子12に対する金属化合物の供給方法としては、気相供給に限られない。例えば、金属化合物を固体又は液体の状態で接触させてもよい。固体の金属化合物を用いる場合には、貴金属粒子12を担持した基材10を粒状や粉状に粉砕し、固体の金属化合物と混合する方法を用いることができる。また液体の金属化合物(FeClの溶融塩など)を用いる場合には、貴金属粒子12を担持した基材10を液体の金属化合物に浸漬する方法などを用いることができる。
次に、硫化工程S12を単独で行う場合(図3の態様C)について説明する。
硫化工程S12は、反応室内で貴金属粒子12に対して金属硫化物、硫化水素、硫黄、硫化炭素などを接触させ、貴金属粒子12を硫化させて貴金属硫化物を形成する工程である。金属硫化物としては、例えば、CuSなどを用いることができる。
貴金属化合物形成工程S10として硫化工程S12を行う場合には、例えば、反応室内において金属硫化物や硫黄、硫化炭素を加熱することにより、硫黄化合物や硫黄の蒸気を発生させる。この蒸気を貴金属粒子12に接触させることで、基材10上に貴金属硫化物を形成することができる。あるいは、基材10が収容された反応室に対して硫化水素ガスを供給し、反応温度に加熱することにより貴金属硫化物を形成してもよい。また、貴金属硫化物を形成する場合においても、金属硫化物や硫黄、硫化炭素を固体又は液体の状態で供給してもよい。
上記の硫化工程S12を行った場合には、図2(b)において、塗膜11上に貴金属硫化物を含む貴金属化合物14が形成される。貴金属化合物14は、例えば、貴金属粒子12を構成する貴金属(例えばPt)が硫化された貴金属硫化物(PtS、PtS)である。貴金属化合物14は、貴金属粒子12の表面に硫黄が拡散した層(例えばPtMS)を有する構成であってもよい。
次に、無電解めっき工程S13を単独で行う場合(図3の態様E)について説明する。
無電解めっき工程S13は、めっき槽にスクラップを浸漬させ、スクラップ中の少なくとも貴金属粒子12に対して、めっき金属を付着させる工程である。無電解めっき処理により貴金属粒子12に付着させることができる金属としては、銀、コバルト、銅などを挙げることができる。この工程により、塗膜11上に、貴金属粒子12にめっき金属が付着した貴金属化合物14を形成することができる。
なお、無電解めっき処理は、塗膜11の表面全体にめっき金属の皮膜を形成するものであってもよい。また、無電解めっき処理に際して、塗膜11及び貴金属粒子12の表面に触媒金属を吸着させてもよい。
次に、合金化工程S11と硫化工程S12とを組み合わせた場合(図3の態様B)について説明する。
本実施形態の回収方法では、合金化工程S11において貴金属粒子12を合金化した後、硫化工程S12による硫化処理を行うことができる。例えば、CuClや鉛の蒸気を用いて貴金属粒子12を合金化することで、基材10上にCuPtやPbPt、CuPd等を形成した後、反応室内に例えば硫化水素を導入することで、PtやPdの硫化物を形成してもよい。
貴金属粒子12を直接硫化処理した場合と、合金化処理後に硫化処理を行った場合のいずれにおいても貴金属の硫化物が得られる。ただし、合金化処理を行うことで合金化後の貴金属粒子12の体積が2倍程度に大きくなるため、体積変化によって基材10からの脱離が促進されることが期待される。
次に、無電解めっき工程S13と硫化工程S12とを組み合わせた場合(図3の態様D)について説明する。
本実施形態の回収方法では、無電解めっき工程S13において貴金属粒子12の表面にめっき皮膜を形成した後、硫化工程S12による硫化処理を行うことができる。例えば、貴金属粒子12の表面に銀や銅の皮膜を形成した後、反応室内に例えば硫化水素を導入することで、表面の銀や銅とともに、貴金属粒子12を構成するPtやPdを硫化してもよい。
本実施形態に係る回収方法において用いられる鉄ハロゲン化物や銅ハロゲン化物、金属硫化物などの金属化合物や、硫化水素、硫黄は、自動車の触媒等における典型的な触媒担体であるアルミナ(Al)やムライト(3Al・2SiO)、コージライト(2MgO・2Al・5SiO)等に含まれる酸化物とはほとんど反応せず、担体上に担持されているPtやPd、Rh等と選択的に化合物(例えばFePtやCuPt、PtS等)を形成する。
このように貴金属化合物の生成に際して、選択的に貴金属の化合物を形成し得る金属源や硫黄源を用いることで、無駄なく迅速に貴金属化合物を形成することができる。
なお、貴金属の合金化や硫化に用いられる金属化合物や硫黄化合物としては、貴金属との化学的親和性が高く、かつ貴金属粒子12を担持している基材10とは反応し難いものである点において上記に挙げた物質を用いることが好ましいが、貴金属合金又は貴金属化合物を形成しうる金属であれば適用可能である。
以上の貴金属化合物形成工程S10を経たスクラップは、後述する物理選別工程S20において物理選別可能な貴金属化合物14(物理選別適合層)を含む貴金属含有スクラップ処理物となる。したがって、貴金属化合物形成工程S10は、物理選別適合層を有する貴金属含有スクラップ処理物の製造工程である。
次に、図1に示すように、基材粗分離工程S15が実施される。
基材粗分離工程S15では、例えばスクラップを破砕処理する。これにより、図2(c)に示すように、回収対象の貴金属を含む部分と、基材10や塗膜11のみを含む部分とを粗く分離する。この工程によって、貴金属を含む部分を物理選別により選択的に回収可能な状態とすることができる。上記した貴金属含有スクラップ処理物は、このように基材10を粗分離したものであってもよい。
次に、図1に示すように、物理選別工程S20が実施される。
物理選別工程S20では、公知の物理選別法を用いることができる。具体的には、磁力選別、浮遊選別、比重選別等を用いることができる。物理選別工程S20では、貴金属化合物形成工程S10で形成された貴金属化合物14の種別に応じて選択された物理選別法が用いられる。
例えば、貴金属化合物形成工程S10において、貴金属化合物14として貴金属−鉄合金(FePt、FePd等)を形成した場合には、磁力選別により貴金属化合物14を回収することができる。すなわち、図2(d)に示すように、磁石MGを用いて基材10上の貴金属化合物14を吸着させることにより回収することができる。なお、鉄を含む貴金属合金には、磁石への吸着機能を損なわない範囲で、他の金属(銅など)を含有させることもできる。
また例えば、貴金属化合物形成工程S10において、貴金属化合物14として、PtS等の貴金属硫化物を形成した場合には、浮遊選別により貴金属化合物14を回収することができる。Pt、Pd、Rh等の硫化物は、天然に産出する鉱物に含まれており、浮遊選鉱により濃縮化することが一般的に行われている。したがって、本実施形態のように基材10上に担持された貴金属粒子12を貴金属硫化物とした場合にも、浮遊選鉱と同様の浮遊選別によって貴金属硫化物を濃縮化することが可能である。例えば、浮遊選鉱で用いられているエチルザンセートや2−メルカプトベンゾチアゾールなどの捕集剤を用いることができる。
また例えば、貴金属化合物形成工程S10において、貴金属化合物14として貴金属−銅合金(CuPt、CuPd等)を形成した場合には、磁力選別や比重選別により貴金属化合物14を回収することができる。また、上記の貴金属−銅合金をさらに硫化処理した場合には、上記した貴金属硫化物と同様の浮遊選別も適用可能である。
物理選別工程S20により、貴金属化合物14を優先的に回収し、貴金属化合物の濃縮物を得ることができる。この濃縮物は、貴金属を含むスクラップを出発原料とし、基材上に担持された貴金属が貴金属化合物の形態で濃縮された貴金属含有スクラップ処理物である。このような貴金属含有スクラップ処理物は、貴金属化合物を多く含む粉体として流通させることが可能である。
なお、物理選別工程S20では、スクラップに含まれる貴金属を少なくとも濃縮することができればよい。したがって、貴金属化合物14の濃縮物には、基材10や塗膜11の破片等が含まれていてもよく、貴金属化合物形成工程S10における副生成物が含まれていてもよい。
次に貴金属抽出工程S30では、貴金属化合物14の濃縮物から貴金属を抽出する。
貴金属抽出工程S30としては、種々の既存の抽出処理を利用することができる。具体的には、図4に示すように、(1)乾式抽出工程S32、(2)湿式抽出工程S31、(3)湿式抽出工程S31と乾式抽出工程S32とを組み合わせた抽出工程、のいずれかを用いることができる。
湿式抽出工程S31は、濃縮物に含まれる貴金属合金又は貴金属硫化物を酸により浸出させて、貴金属化合物14と基材10や塗膜11の破片とを分離する工程である。酸としては塩酸や硝酸、王水等を用いることができる。
乾式抽出工程S32は、銅やニッケル、鉄、鉛などの融体をコレクタとして利用し、貴金属を金属相に抽出して分離するものである。乾式抽出工程S32としては、山元還元やローズ法などの公知の方法を用いることができる。これらの抽出工程で得られた貴金属を含む銅合金等は、湿式法を中心とする通常の金属製錬(精製)法により分離・回収され、最終的には高純度の貴金属単体あるいは、その化合物が得られる。
また本実施形態では、図4の(3)に示すように、貴金属合金又は貴金属硫化物を含む濃縮物をまず湿式抽出工程S31に供することで貴金属化合物の粗取りを行い、その後、乾式抽出工程S32に供することで基材10上に残留した貴金属化合物をさらに抽出することもできる。このような抽出方法を採用することで、湿式抽出工程S31により貴金属化合物を迅速に回収することができ、さらに、回収率の高い乾式抽出工程S32によって貴金属化合物を無駄なく回収することができる。
以上に示した(1)〜(3)の抽出工程により、濃縮物から貴金属化合物14を効率良く分離抽出することができる。そして、(1)〜(3)の工程により得られた貴金属を含む合金や貴金属化合物を、溶媒抽出法等の回収・精製工程S33に供することで、貴金属を回収することができる。
例えば、貴金属粒子12から貴金属−鉄合金や貴金属−銅合金を形成し、これらを磁力選別により回収した場合には、図4の(3)に示した湿式抽出工程S31と乾式抽出工程S32を順に実施する抽出方法を好適に用いることができる。
また、貴金属粒子12から貴金属硫化物(合金化後に硫化したものも含む)を形成し、これらを浮遊選別により回収した場合には、図4の(1)に示した乾式抽出工程S32のみを実施する抽出方法を好適に用いることができる。
以上、詳細に説明したように、本実施形態の貴金属の回収方法によれば、貴金属化合物形成工程S10及び物理選別工程S20によって、スクラップに含まれる貴金属を濃縮することができる。これにより、貴金属抽出工程S30における酸やコレクターメタルの使用量を大きく節減することができ、低コストかつ高効率のリサイクルプロセスを構築することができる。
また本実施形態に係る貴金属化合物形成工程S10によれば、基材10上の貴金属粒子12が物理選別に好適な貴金属化合物14とされた物理選別適合層を含む貴金属含有スクラップ処理物を製造することができる。この貴金属含有スクラップ処理物は、物理選別によって容易に貴金属を濃縮できるため、貴金属を効率良く回収可能なスクラップ処理物となる。
また本実施形態によれば、基材粗分離工程S15により基材10を部分的に分離した貴金属含有スクラップ処理物が得られる。この貴金属含有スクラップ処理物は、不要物である基材の混入量が少ないため、より効率良く貴金属を回収可能なスクラップ処理物となる。
また本実施形態によれば、物理選別工程S20によって貴金属が濃縮された貴金属含有スクラップ処理物が得られる。この貴金属含有スクラップ処理物は、出発原料のスクラップに対して貴金属濃度が大幅に上昇したものであるから、効率良く貴金属を回収できるものとなる。
また本実施形態では、貴金属化合物形成工程において貴金属合金又は貴金属硫化物を形成するために、高温を用いなくとも気化又は液化が可能な金属ハロゲン化物や金属硫化物を用いている。したがって、1500℃を超える高温を用いることなく貴金属を濃縮、回収することができる。
また本実施形態では、貴金属粒子12を合金化するために、CuClやFeClを用いている。これらの金属塩化物は、現在産業廃棄物として処理されているものである。例えばCuClはプリント基板の銅エッチング廃液の主成分であり、FeClは、鉄鋼の酸洗工程や半導体のエッチング工程における廃液に含まれる。さらに、今後はチタン製錬やシリコン製錬などの塩化製錬法が発展し、FeClなどの塩化物廃棄物の発生量が増大するため、これらの塩化物廃棄物を塩化剤として有効利用することもできる。本実施形態の回収方法では、これらの塩化物廃棄物を有効に利用しつつ貴金属の回収を行うことができるため、現在処理にはコストがかかり問題となっている塩化物廃棄物の有効利用、減量、無害化にも寄与できる可能性がある。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例では、複数の白金族金属に対して、鉄塩化物を用いた気相による合金化処理を行った。より具体的に説明すると、Pt、Pdに対し、700℃、800℃、900℃、1000℃の一定温度で気相による合金化処理を施して試料を得た。
1.合金化処理操作
0.3〜0.4gの各白金族金属粉末(Pt粉末、Pd粉末、Rh粉末)と、3〜3.5gのFeCl粉末とを用いて合金化処理を行い、Pt−Fe合金、及びPd−Fe合金、Rh−Fe合金を合成した。
ここで、図5は、実施例に係る合金化処理装置を示す図である。
図5に示す合金化処理装置100は、有底円筒状の石英管101と、石英管101の開口部に装着されるキャップ部材102と、石英管101の内外を連通させるようにキャップ部材102を貫通して設けられた連通管102aと、石英管101を収容するとともに加熱する電気炉103と、石英管101の内部に収容される石英坩堝104、105と、を備えている。本実施例では、石英坩堝104にPt粉末、Pd粉末、及びRh粉末のいずれか1つを収容し、石英坩堝105にFeCl粉末を収容した。連通管102aの石英管101の外側に位置する端部には、図示略の排気装置(真空ポンプ)を接続した。
まず、白金族金属粉末(Pt粉末、Pd粉末、Rh粉末のいずれか1つ)とFeCl粉末をそれぞれ異なる石英坩堝104、105に投入し、石英管101内を真空にした後、700℃、800℃、900℃、1000℃にあらかじめ設定した電気炉内で3時間加熱した。その後、炉から取り出して室温にて冷却した。以上により、3種類の白金族金属粉末について、それぞれ4種類の温度条件で合金化処理を実施し、合計12種類の試料を作製した。
なお、図5には、電気炉を900℃に加熱したときの温度分布を示した。図示のように、本実施例では、石英管101の長さ方向に温度分布が形成されるようにして加熱を行った。すなわち、石英坩堝104、105が設置されている底部近傍では設定温度に加熱する一方、石英管101の開口部側では、石英管101の温度を設定温度よりも300〜400℃程度低くなるようにした。これにより、石英管101の底部側で気化した物質を堆積物107として石英管101内に留めることができる。
得られたPt−Fe合金試料、Pd−Fe合金試料、及びRh−Fe合金試料に対して、X線回折装置(XRD)による相の同定を行った。また、得られた試料の組成を蛍光X線分析装置(XRF)により測定した。
2.触媒擬似試料を用いた実験
次に、自動車用排ガス浄化触媒スクラップを想定し、擬似的な触媒試料(擬似触媒試料)を作製した後、気相による合金化処理を行い、さらに磁力選別による白金族金属の濃縮分離について検討を行った。
まず、アルミナ粉末にPtを担持させた粉末試料を作製した。具体的には、アルミナ粉末に対して塩化白金酸を含浸させ、その後乾燥、焼成を行うことで、5質量%のPtを担持したアルミナ粉末を調製した。
次に、得られPt担持アルミナ粉末と、Ptを担持していないアルミナ粉末とを、それらの重量比が3:7となるように混合することで疑似触媒試料を作製した。その後、作製した疑似触媒試料とFeCl粉末を、それぞれ石英坩堝104、105に投入し、石英管101中に装入した。
次いで、石英管101の内部を真空にした後、900℃に設定した電気炉で3時間加熱した。その後、炉から取り出して室温にて冷却した。反応後の実験試料を水中に投入し、湿式磁力選別を行い、磁性物質と非磁性物質の分離を行った。
3.合金化処理の結果
合金化処理によって得られた試料について、XRDを用いて、得られた合金試料の化合物相の同定を試みたところ、図6に示す回折パターンが得られた。図6(a)はPt粉末を合金化した試料(温度条件900℃)のXRDスペクトル、図6(b)はPd粉末を合金化した試料(温度条件900℃)のXRDスペクトル、図6(c)はRh粉末を合金化した試料(温度条件900℃)のXRDスペクトルである。図6の縦軸はXRDスペクトルの強度、横軸は測定角度(2θ)である。
図6に示すように、Pt粉末及びPd粉末に対して合金化処理を施して得られた試料の回折パターンから、それぞれFePt、FePdのピークが観察された。この結果から、いずれの試料においても、白金族金属とFeとの金属間化合物相が生成したことが示された。なお、いずれのXRDパターンにおいても純Ptおよび純Pdのピークは観察されなかったため、Pt粉末、Pd粉末のほぼ全量について合金化反応が進行したことがわかった。一方、Rh粉末に対する合金化処理では、金属間化合物の生成は認められなかったが、広角側においてRhのピークシフトが生じており、Rh−Fe固溶体が生成していることが確認された。
4.触媒擬似試料を用いた実験の結果
アルミナとPt担持アルミナを混合した擬似触媒試料を用いて、FeClによる合金化処理を行った試料について磁力選別前後の試料の組成を分析した。磁力選別前の試料、磁力選別後の試料のうち磁性物質と非磁性物質それぞれについての白金濃度について示したグラフを図7に示す。
図7に示すPt濃度は、以下の手順により算出したものである。
(1) XRFにより存在する元素Al、Fe、Ptそれぞれの重量%について測定(OはXRFでは分析不能)。
(2) Alの重量%を酸化物(Al)の値に換算。
(3) 存在する組成がAl、Fe、Ptとしてそれぞれの重量%を再計算。
(4) 上記計算により得られたPtの重量%をデータとして取り扱った。
図7に示すように、磁力選別前の試料におけるPt濃度が2.8質量%であったのに対して、磁力選別により回収された磁性物質ではPt濃度が7.5%に上昇していた。このことから、アルミナに担持したPtをFeClによりFe−Pt合金とし、磁力選別により濃縮できることが確認された。
(実施例2)
FeCl粉末に代えてCuCl粉末を用いた以外は上記実施例1と同様にして、貴金属粉末の合金化実験を行った。
すなわち、白金族金属粉末(Pt粉末又はPd粉末)とCuCl粉末をそれぞれ異なる石英坩堝104、105に投入し、石英管101内を真空にした後、700℃、800℃、900℃、1000℃にあらかじめ設定した電気炉内で3時間加熱した。その後、炉から取り出して室温にて冷却した。以上により、2種類の白金族金属粉末について、それぞれ4種類の温度条件で合金化処理を実施し、合計6種類の試料を作製した。
作製した試料について、実施例1と同様のXRD分析を行ったところ、Pt粉末に対して合金化処理を施した試料において金属間化合物であるCuPtの生成が確認された。また、Pd粉末に対して合金化処理を施した試料においても金属間化合物であるCuPdの生成が確認された。
(実施例3)
0.3〜0.4gの各白金族金属粉末(Pt粉末、Pd粉末、Rh粉末)と、3〜3.5gのS(硫黄)粉末とを用いて硫化処理を行い、Pt硫化物、Pd硫化物、Rh硫化物を合成した。
実験装置については、実施例1と同様に、白金族金属粉末(Pt粉末、Pd粉末、Rh粉末)とS粉末をそれぞれ異なる石英坩堝104、105に投入し、石英管101内を真空にした後、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃にあらかじめ設定した電気炉内で3時間加熱した。その後、炉から取り出して室温にて冷却した。以上により、3種類の白金族金属粉末について、それぞれ5種類の温度条件で硫化処理を実施し、合計15種類の試料を作製した。
作製した試料について、実施例1と同様に、XRDによる相の同定と、XRFによる組成分析を行った。
その結果、Pt粉末に対して硫化処理を施した試料においてPtSの生成が確認された。また、Pd粉末に対して硫化処理を施した試料においてPdSの生成が確認された。また、Rh粉末に対して硫化処理を施した試料においてRhの生成が確認された。
上記の結果から、いずれの試料においても白金族金属硫化物が生成したことが示された。また、いずれ試料のXRDパターンにおいても、純Pt、純Pd、純Rhのピークは観察されなかったため、Pt粉末、Pd粉末、Rh粉末のほぼ全量について硫化反応が進行したことがわかった。
(実施例4)
0.3〜0.4gの白金族金属粉末(Pt粉末)と、3gのPb粉末とを用いて合金化処理を行い、Pt−Pb合金を合成した。
実験装置については、実施例1と同様に、Pt粉末とPb粉末をそれぞれ異なる石英坩堝104、105に投入し、それらを石英管101に装入した。その後、900℃の一定温度で3時間加熱し、気相による合金化処理を施して試料を得た。900℃で実験を行った理由は、900℃においてPbの蒸気圧が1×10−4atmを超えるため、気相による反応を効率良く進行させることができるからである。
作製した試料について、実施例1と同様に、XRDによる相の同定を行った。また、得られた試料の組成をXRFにより測定した。
その結果、Pt粉末に対して合金化処理を施して得られた試料の回折パターンから、それぞれPbPtなどのピークが観察された。この結果から、いずれの試料においても、白金鉛合金が生成したことが示された。なお、いずれのXRDパターンにおいても純Ptのピークは観察されなかったため、Pt粉末のほぼ全量について合金化反応が進行したことがわかった。
次に、上記で作製したPbPt合金に対して、実施例3の硫化処理と同じ手法を用いて硫化処理を行った。すなわち、PbPt合金粉末とS粉末をそれぞれ異なる石英坩堝104、105に投入し、石英管101内を真空にした後、900℃にあらかじめ設定した電気炉内で3時間加熱した。
作製した試料について、実施例1と同様に、XRDによる相の同定を行った。また、得られた試料の組成をXRFにより測定した。その結果、PbPt粉末に対して硫化処理を施して得られた試料の回折パターンから、PtSの生成が確認された。
本実施例の実験結果から、合金化処理後、硫化した場合も、Sガスにより直接硫化した場合と同じPtSが得られることがわかった。貴金属の硫化処理としては、先の実施例3のようにSガスにより直接硫化する方がシンプルであるが、本実施例のように合金化処理を経た場合、PbPt合金生成により体積変化が約2倍程度あると考えられる。そこで、セラミックス上に白金が担持された自動車用触媒スクラップの構造を考えると、本実施例のように体積変化を起こさせることで、セラミックス上からの白金の剥離性が向上すると考えられる。
(実施例5)
実施例4のPb合金化処理後の硫化処理に準じた方法により、CuClガスによるCu合金化処理後の硫化処理を行った。具体的には、先の実施例2において900℃の加熱条件で作製したCuPt粉末及びCuPd粉末と、S粉末を、それぞれ異なる石英坩堝104、105に投入し、石英管101内を真空にした後、900℃にあらかじめ設定した電気炉内で3時間加熱した。
作製した試料について、実施例1と同様に、XRDによる相の同定を行った。また、得られた試料の組成をXRFにより測定した。その結果、CuPt粉末に対して硫化処理を施して得られた試料の回折パターンから、PtSの生成が確認され、CuPd粉末に対して硫化処理を施して得られた試料の回折パターンからPdSの生成が確認された。
Cu合金化処理後に硫化処理を行う場合にも、白金族金属を直接硫化処理する場合と生成物は同様であるが、Cu合金化処理による体積変化が生じるため、自動車用触媒スクラップ等におけるセラミックス上からの貴金属の剥離性向上が期待される。
10…基材、14…貴金属化合物、S10…貴金属化合物形成工程、S15…基材粗分離工程、S20…物理選別工程、S30…貴金属抽出工程

Claims (18)

  1. 基材と、前記基材上に形成され貴金属化合物を含む層を含み、
    前記貴金属化合物が貴金属合金であり、
    前記貴金属合金が、鉄、銅、ニッケル及び鉛からなる群より選ばれる1種以上の金属と貴金属との合金である貴金属含有スクラップ処理物。
  2. 基材と、前記基材上に形成され貴金属化合物を含む層とを含み、
    前記貴金属化合物が貴金属硫化物である貴金属含有スクラップ処理物。
  3. 貴金属を担持した基材を含むスクラップの前記貴金属に対して、金属ハロゲン化物、金属硫化物、硫化水素、硫黄、硫化炭素からなる群より選ばれる1種以上の物質を接触させることにより合金化又は硫化することで、前記基材上に、貴金属化合物を含む層を形成することを特徴とする、貴金属含有スクラップ処理物の製造方法。
  4. 前記金属ハロゲン化物が、鉄ハロゲン化物、銅ハロゲン化物、又は、鉄ハロゲン化物と銅ハロゲン化物の複合ハロゲン化物である、請求項に記載の貴金属含有スクラップ処理物の製造方法。
  5. 気相処理により前記貴金属化合物を形成する、請求項3または4に記載の貴金属含有スクラップ処理物の製造方法。
  6. 前記気相処理において、
    前記貴金属に対し、600℃〜1000℃の温度範囲内の少なくとも一部の温度領域において10 −4 atm以上の蒸気圧が得られる金属化合物を接触させる請求項5に記載の貴金属含有スクラップ処理物の製造方法。
  7. 前記金属化合物は、FeCl 、FeCl 、CuCl 、CuClからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載の貴金属含有スクラップ処理物の製造方法。
  8. めっき処理により前記貴金属化合物を形成する、請求項3または4に記載の貴金属含有スクラップ処理物の製造方法。
  9. 貴金属を含む基材から前記貴金属を回収する方法であって、
    前記基材上の貴金属を合金化又は硫化することで貴金属化合物を形成する工程と、
    前記貴金属化合物を物理選別法により回収する工程と、
    を有し、
    前記貴金属化合物を形成する工程において、
    前記貴金属に対して、金属ハロゲン化物、金属硫化物、硫化水素、硫黄、硫化炭素からなる群より選ばれる1種以上の物質を接触させる貴金属の回収方法。
  10. 貴金属を含む基材から前記貴金属を回収する方法であって、
    前記基材上の貴金属を合金化又は硫化することで貴金属化合物を形成する工程と、
    前記貴金属化合物を物理選別法により回収する工程と、
    を有し、
    前記貴金属化合物を形成する工程において、前記基材上の貴金属を合金化することで貴金属合金を形成した後、前記貴金属合金を硫化することで貴金属硫化物を形成する貴金属の回収方法。
  11. 前記貴金属化合物を形成する工程において、
    前記貴金属に対して、金属ハロゲン化物、金属硫化物、硫化水素、硫黄、硫化炭素からなる群より選ばれる1種以上の物質を接触させる、請求項10に記載の貴金属の回収方法。
  12. 前記金属ハロゲン化物が、鉄ハロゲン化物、銅ハロゲン化物、又は、鉄ハロゲン化物と銅ハロゲン化物の複合ハロゲン化物である、請求項9または11に記載の貴金属の回収方法。
  13. 気相処理により前記貴金属化合物を形成する、請求項9から12のいずれか1項に記載の貴金属の回収方法。
  14. 前記気相処理において、
    前記貴金属に対し、600℃〜1000℃の温度範囲内の少なくとも一部の温度領域において10 −4 atm以上の蒸気圧が得られる金属化合物を接触させる請求項13に記載の貴金属の回収方法。
  15. 前記金属化合物は、FeCl 、FeCl 、CuCl 、CuClからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項14に記載の貴金属の回収方法。
  16. めっき処理により前記貴金属化合物を形成する、請求項9から12のいずれか1項に記載の貴金属の回収方法。
  17. 前記物理選別法が、磁力選別、浮遊選別、比重選別、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる1種以上の選別法である、請求項から16のいずれか1項に記載の貴金属の回収方法。
  18. 前記貴金属化合物から前記貴金属を抽出する工程を有する、請求項から17のいずれか1項に記載の貴金属の回収方法。
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