JP5941795B2 - 原子炉圧力容器の冷却設備および原子炉圧力容器の冷却設備による冷却方法 - Google Patents
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Description
これを防ぐため、原子炉圧力容器の下部を冷却する必要がある。
以下、本発明の原子炉圧力容器の冷却設備の一実施の形態を図面と共に説明する。
図1は、この発明の原子炉圧力容器の冷却設備が設けられる原子力発電設備の概略構造を示す断面図である。
以下に示す一実施の形態では、原子力発電プラントを、改良型沸騰水型原子炉(ABWR)の場合で説明する。
原子炉建屋100は、建屋基礎マット111上に建設される。
原子炉建屋100の内部に原子炉格納容器112が設けられ、原子炉格納容器112内には原子炉圧力容器1が配置されている。原子炉格納容器112は、鋼製ライナを内張りした鉄筋コンクリート製であり、気密性を有している。原子炉格納容器112の形状はほぼ円筒形である。
原子炉格納容器112の内部には、原子炉圧力容器1の周囲を囲むように、ドライウェル114、サプレッション・チャンバ115等が設けられている。
ドライウェル114の上方には、使用済み燃料貯蔵プールまたは機器仮置き場としての保管部119が設けられている。
原子炉圧力容器1の下部には、ギャップGを設けて壁部材2が取り付けられている。原子炉圧力容器1と壁部材2との間のギャップGには、冷却水が自然還流により供給されて原子炉圧力容器1が冷却される。
なお、図1には、以下に説明する原子炉圧力容器1を冷却する冷却水系は図示されていない。
以下、本発明による原子炉圧力容器の冷却装置の一実施の形態を説明する。
なお、図2には、原子炉圧力容器1と壁部材2の断面図と共に、原子炉圧力容器1を冷却するための冷却水系が図示されているが、冷却水系は、模式的な図である。
原子炉圧力容器1内には、炉心4が配置されている。
原子炉圧力容器1の下部は、ほぼドーム状に形成されている。原子炉圧力容器1の下部の下方には、壁部材2が配置されている。壁部材2は、例えば、鉄、合金、ステンレス、あるいは鉄筋コンクリート等により形成されており、壁部材2と原子炉圧力容器1との間にはギャップGが形成されている。壁部材2は、その上面側が原子炉圧力容器1の下部に沿って湾曲するドーム状に形成されており、壁部材2の上面は全体に亘り、原子炉圧力容器1の下部と、軸方向にほぼ同じ寸法だけ離間している。
壁部材2は、平面視では、ほぼ円形であり、原子炉圧力容器1の軸芯と同軸の冷却水流入口(冷却水流入部)6bが形成されている。また、壁部材2の外周には、等間隔に配列された8個の冷却水の流出口(流出部)6aが設けられている。
壁部材2には、マトリックス状に配置された複数の柱部8が形成されている。また、壁部材2には、制御棒案内管5を貫通するための複数の開口が形成されており、この開口に制御棒案内管5が挿通された状態で、図2に図示されるように、原子炉圧力容器1の下部に固定される。壁部材2は、例えば、各柱部8を原子炉圧力容器1の下部に溶接により接合して固定される。従って、柱部8の高さが、原子炉圧力容器1と壁部材2との離間寸法であるギャップGとなる。
図4は、図2に図示された蓋部材の平面図である。また、図4には、二点鎖線により、冷却水系の配管の一例が図示されている。
蓋部材15は、内径が原子炉圧力容器1の外周と密着するサイズのリング状の部材であり、図示はしないシール部材を介して、原子炉圧力容器1および壁部材2に密封状態に取り付けられる。
蓋部材15には、壁部材2の冷却水の流出口6aに対応する8個の開口16が形成されている。
原子炉圧力容器1の上方には、復水器9が配置されている。復水器9内には熱交換用配管12が装着されている。なお、図2においては、復水器9は、原子炉圧力容器1の下部の上方に位置して図示されているが、これは図示の都合であり、復水器9は、原子炉圧力容器1の上方に配置することが好ましい。復水器9の貯水部9aを、原子炉建屋100の保管部119に設けるようにしてもよい。
なお、図2において、符号3はデブリである。
以下、図5を参照して、本発明の原子炉圧力容器の冷却設備による処理フローの一実施の形態を説明する。
ステップS1では、注水用弁18を開く。
ステップS2では、注水用弁18を開いて冷却水系に冷却水を注入する。
配管10cは、ポンプ等の給水装置に接続されており、この給水装置を駆動する。配管10cが事故時に炉心4に注水する低圧炉心注水系に接続されている場合には、この低圧炉心注水系のポンプを駆動する。これにより、配管10b内に冷却水が注入され、また、冷却水流入口6bを介して原子炉圧力容器1と壁部材2との間のギャップGに冷却水が注入される。さらに、冷却水は、配管10aおよび熱交換用配管12の内部を満たす。冷却水は、注入用弁18と開閉弁13との間の配管10b内にも注入される。しかし、開閉弁13が閉じているため、熱交換用配管12内に注入された冷却水と、冷却水取入部17と開閉弁13との間の配管10b内に注入された冷却水は遮断されている。
これにより、原子炉圧力容器1の内の炉心4で核分裂反応が起き、原子炉圧力容器1の温度が上昇する。
ステップS4では、温度センサ(図示せず)により原子炉圧力容器1の温度を検出し、その温度が正常か、異常かを判断する。原子核分裂反応が正常な場合、原子炉圧力容器1の温度は290℃程度である。しかし、この状態では、開閉弁13が閉じており、復水器9の熱交換用配管12内に満たされている冷却水は遮断される。冷却水系内は高圧力となっているため、この状態では、冷却水系は殆ど蒸発しない。仮に、一部が蒸気となったとしても、復水器9で復水されて損失となるエネルギー量は僅かであり、原子炉圧力容器1の温度を下げる程の冷却能力はないので、原子炉の出力に影響が出ることはない。
原子炉に苛酷事故が発生し、デブリ3が原子炉圧力容器1の下部に落下した場合、原子炉圧力容器1の温度は290℃以上に上昇する。
ステップS5では、開閉弁13を開く。開閉弁13の開放は、電池駆動による電気式の場合は、自動的に行うことができる。手動式の開閉弁13の場合には、手動操作によって行う。
このとき、開閉弁13は開状態であるので、復水した冷却水は開閉弁13および配管10bを流通して、冷却水流入口6bを介して原子炉圧力容器1と壁部材2との間のギャップGに流入する。ギャップGに流入した冷却水は、原子炉圧力容器1を冷却する。
そして、冷却時に加温され蒸気となった冷却水は、再び、復水器9において復水される。
このように、蒸気の浮力と水頭圧により自然還流による冷却が継続される。
ステップS6が否定されれば、ステップS5に戻り、開閉弁13の開状態を維持し、冷却水の自然還流による冷却を継続する。
ステップS6が肯定されれば、ステップS7の処理を行う。
ステップS7では、開閉弁13を閉じる。開閉弁13の閉塞は、電池駆動による電気式の場合は、自動的に行うことができる。手動式の開閉弁13の場合には、手動操作によって行う。
このため、このような点検作業を行ったうえで、開閉弁13を閉じるようにしてもよい。
図6は、本発明の原子炉圧力容器の冷却設備の実施形態2を示す図である。
図6においても、図2と、同様に、原子炉圧力容器1と壁部材2の断面図と共に、原子炉圧力容器1を冷却するための冷却水系が図示されているが、冷却水系は、模式的な図である。
図6に図示された原子炉圧力容器の冷却設備が、実施形態1と相違する点は、壁部材2Aに中性子吸収材21が含まれている点である。
即ち、壁部材2Aには、鉄、合金、ステンレス等の基材中に、中性子吸収材21としてホウ素、ハフニウム等が含まれている。
デブリ3は、原子炉圧力容器1の下部に落下した後も、僅かながら核分裂反応を続けている。デブリ3は、制御棒を巻き込んでいるため、デブリ3が臨界に達する可能性は少ない。しかし、デブリ3から中性子が放出され、放出された中性子が壁部材2で反射され、再び、デブリ3に吸収されることにより再臨界に達する可能性を考慮しておくことは好ましいことである。
このため、デブリ3における再臨界を防止し、安全性を一層、確実にすることができる。
なお、実施形態2において、上記以外は実施形態1と同様であり、対応する部材に同一の符号を付して、説明を省略する。
(1)原子炉圧力容器1の下部と壁部材2との間にギャップGを設け、このギャップGの流出口6aから流出し、冷却水流入口6bから流入する冷却水系を設けた。冷却水系は、原子炉圧力容器1よりも上方に配置された復水器9により復水され、復水器9の復水側に、開・閉状態に切り換え可能な開閉弁13を設けた。
このため、苛酷事故により、原子炉圧力容器1が異常温度に達した場合、開閉弁13を開状態にして冷却水を流通させることにより、冷却水の蒸気の浮力と水頭圧により自然還流による冷却系を形成することができる。
(2)原子炉が正常動作中であり、原子炉圧力容器1の温度が正常状態では、開閉弁13を閉状態に維持することにより、復水器9により復水された冷却水は、開閉弁13により遮断される。このため、仮に、ギャップG中に満たされている冷却水の一部が蒸気となったとしても、復水器9で復水されて損失となるエネルギー量は僅かであり、原子炉圧力容器1の温度を下げる程の冷却能力はないので、原子炉の出力に影響が出ることはない。
(4)壁部材2の外周に、等間隔に配列された8個の冷却水の流出口6aを設けた。このため、苛酷事故発生時における原子炉圧力容器1の冷却を効率的に、かつ、原子炉圧力容器1全体に対して均一に行うことができる。
(6)原子炉圧力容器1を冷却する冷却水系に外部から冷却水を取り入れるための冷却水取入部17を設けた。このため、原子炉圧力容器1の冷却処理の終了後、あるいは、冷却水の交換作業等の際等、ポンプ等により冷却水系への注入を随時行うことできる。
また、冷却水取入部17を事故時に炉心4に注水する低圧炉心注水系に接続しておけば、ポンプの共用化ができる。
(7)復水器9の貯水部9aを、原子炉建屋100の保管部119に設けることにより、苛酷事故発生時でも貯水部9aに水を補給することができる。
2、2A 壁部材
3 デブリ
4 炉心
5 制御棒案内管
6a 流出口(流出部)
6b 冷却水流入口(冷却水流入部)
9 復水器
9a 貯水部
10a、10b、10c 配管
12 熱交換用配管
13 開閉弁
15 蓋部材
17 冷却水取入部
18 注水用弁
100 原子炉格納容器
21 中性子吸収材
G ギャップ
Claims (13)
- 原子炉圧力容器の下部に、前記原子炉圧力容器との間にギャップを設けて配置され、冷却水流入部を有する壁部材と、
前記原子炉圧力容器と前記壁部材とのギャップの開放端を閉塞し、冷却水の流出部を有する蓋部材と、
前記冷却水流入部および前記流出部を介して前記原子炉圧力容器と前記壁部材とのギャップ内に連通する冷却水系とを備え、
前記冷却水系は、
前記流出部より上方に配置された復水器と、
前記復水器から流下する冷却水を遮断状態および流通状態に切り換え可能な開閉弁とを備え、
前記復水器は、冷却水が貯留された冷却槽と、前記冷却槽内に収容された熱交換用配管とを備え、前記熱交換用配管は、前記復水器の外部に設けられた配管よりも、直径および肉厚が小さく、
前記原子炉圧力容器を、前記冷却水系を循環する自然循環流により冷却することを特徴とする原子炉圧力容器の冷却設備。 - 請求項1に記載の原子炉圧力容器の冷却設備において、前記開閉弁は、前記原子炉圧力容器の温度の異常を検出する検出信号に基づいて、冷却水を遮断する閉状態から冷却水を流通する開状態に切り換えられることを特徴とする原子炉圧力容器の冷却設備。
- 請求項1に記載の原子炉圧力容器の冷却設備において、前記開閉弁は、手動により、冷却水を遮断する閉状態から冷却水を流通する開状態に切り換えられることを特徴とする原子炉圧力容器の冷却設備。
- 請求項1に記載の原子炉圧力容器の冷却設備において、前記蓋部材の前記流出部は、前記原子炉圧力容器の周囲にほぼ等間隔に配列された3つ以上の排出用開口部を備えていることを特徴とする原子炉圧力容器の冷却設備。
- 請求項1に記載の原子炉圧力容器の冷却設備において、前記冷却水流入部は、少なくとも、前記壁部材における前記原子炉圧力容器の軸芯と同軸に形成された1つの流入用開口部を備えていることを特徴とする原子炉圧力容器の冷却設備。
- 請求項1に記載の原子炉圧力容器の冷却設備において、前記壁部材に前記原子炉圧力容器とのギャップを確保する複数の柱部が形成されていることを特徴とする原子炉圧力容器の冷却設備。
- 請求項6に記載の原子炉圧力容器の冷却設備において、前記壁部材は、前記柱部と前記原子炉圧力容器との溶接により前記原子炉圧力容器に取り付けられていることを特徴とする原子炉圧力容器の冷却設備。
- 請求項1に記載の原子炉圧力容器の冷却設備において、前記壁部材の基材には、中性子吸収材が含まれていることを特徴とする原子炉圧力容器の冷却設備。
- 請求項1に記載の原子炉圧力容器の冷却設備において、さらに、前記開閉弁と前記冷却水流入部との間に前記冷却水系に連通する冷却水取入部を備え、前記冷却水取入部から前記冷却水系に外部から冷却水を注入することを特徴とする原子炉圧力容器の冷却設備。
- 請求項9に記載の原子炉圧力容器の冷却設備において、前記冷却水取入部は、事故時に炉心に注水する低圧炉心注水系に接続されていることを特徴とする原子炉圧力容器の冷却設備。
- 請求項9または10に記載の原子炉圧力容器の冷却設備を備え、
冷却水を、前記冷却水取入部から、前記原子炉圧力容器と前記壁部材とのギャップ内を含め前記冷却水系に流入する第1のステップと、
前記原子炉圧力容器の温度が異常状態となった際に、前記開閉弁が、冷却水を遮断する閉状態から冷却水を流通する開状態に切り換えられる第2のステップと、を備え、
前記原子炉圧力容器の温度が異常状態において、前記原子炉圧力容器を、前記冷却水系を循環する自然循環流により冷却することを特徴とする原子炉圧力容器の冷却設備による冷却方法。 - 請求項11に記載の原子炉圧力容器の冷却設備による冷却方法において、前記第1のステップは、前記原子炉圧力容器の温度の異常を検出する検出信号に基づいて、制御手段により、前記開閉弁を、冷却水を遮断する閉状態から冷却水を流通する開状態に切り換えて行うことを特徴とする原子炉圧力容器の冷却設備による冷却方法。
- 請求項11に記載の原子炉圧力容器の冷却設備による冷却方法において、前記第1のステップは、前記開閉弁を、手動により、冷却水を遮断する閉状態から冷却水を流通する開状態に切り換えて行うことを特徴とする原子炉圧力容器の冷却設備による冷却方法。
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