従来の建設工事現場においては、工種によって様々な計測機器ないしはセンサを使用しながら施工管理をおこなっている。この計測機器としては、例えば、変位計、層別沈下計、応力計、地下水位計、傾斜計、ひずみ計、水圧計、土圧計、温度計などが使用されている。これらの計測機器は、作業ヤード内の任意の場所に設置されたスイッチボックスにケーブルにて接続され、ケーブルを介してスイッチボックスに送信された各種計測データは、データロガー等を介して、現場管理室内のデータ集積/管理用のコンピュータ(PC)に送信され、このPC内で予め設定されている管理値と集積されたデータとを比較しながら施工管理がおこなわれている。このスイッチボックスとデータ集積用PCもケーブルにて接続されており、したがって、従来の工事現場においては、各種計測機器とデータ集積/管理用PCとがケーブル接続されていた。
ところで、建設工事においては、工事の進歩状況に応じて作業ヤード内の各種機器や施設の配置位置が刻々変化するのが一般的である。例えば、山留め工事では、躯体の構築状況に応じて、該躯体と山留め壁との間の埋め戻しもおこなわれ、埋め戻しに先んじて不要となる切梁等を撤去しながら工事が進められる。この場合には、切梁に設置されていた応力計が不要となるため、切梁撤去に先んじて、応力計の撤去がおこなわれる。また、山留め壁の深度方向に設置されている土圧計や傾斜計も埋め戻しに応じて下方から徐々に不要となるため、埋め戻しに応じて不要となる計測機器は撤去されていく。一方、重機の施工ヤードや場内のアクセス通路として使用される仮設桟橋も、躯体の完成とともに撤去されるため、スイッチボックス等が桟橋上に設置されている場合には、桟橋撤去に先んじて、その盛替え作業が必要となり、スイッチボックスの盛替えに応じて、ケーブルの盛替えも当然に必要となってくる。さらに、鉄道工事においては、計測機器に接続されたケーブルが線路を横断している場合に盛替え作業が必要となると、盛替えルートに制約があることから、計測機器とデータ集積/管理用PCとを繋ぐルートの選定が困難な状況も往々にして生じていた。
上記の問題に対し、ケーブル接続に替わって、1:1ないしは1:n(nは、接続される側の数で例えば各種計測機器)の関係にある無線通信手段を使用することにより、計測機器と管理用PCとを繋ぐ方法が建設現場にて適用されている。無線通信によれば、工事の進歩状況に応じたケーブルの盛替え作業が少なくなり、ケーブル接続方式に比べて、現場状況の変化に臨機に対応しながら効率的な施工管理をおこなうことが可能となる。
ところで、無線局免許を持たないユーザーが無線機器(システム)を使用するためには、使用する機器が電波法に則って電波を発信していることが条件となる。したがって、電波法による規制対象外の電波にて現場管理をおこなおうとすると、かかる電波による送受信の限界はせいぜい100〜200m程度であり、かつ、その間に障害物がないといった現場条件であることが必須とならざるを得ない。実際の建設現場においては、各種の重機や躯体、仮設構造物などが錯綜しており、障害物がない環境を臨むことは不可能である。そこで、モデム等からなる複数の中継局を現場内に多数設置しておくことにより、各計測機器から管理用PCまでデータの送受信を可能とする試みもおこなわれている。しかし、建設現場における現場状況の変化は日々刻々と変化するものであり、多数の中継モデムを現場内に設置した場合には、モデム管理も必要となり、さらには、障害物ができることにより、各モデムの設置位置をその都度調整する必要が生じるなど、その煩雑さはケーブル接続方式の場合と何ら変わるものでないのが現状である。したがって、無線通信手段を使用しながら、現場の状況変化に応じて各中継局を構成する機器の盛替え作業が低減されるとともに、計測機器からのデータを確実に管理者PCで受信可能なシステムの構築が切望されていた。
特許文献1には、無線検針ユニットからのデータ収集に際して、同ユニットの検針データを正規の通信ルートで収集できないとき、他のユニットを経由させてデータ収集する別の通信ルートを確立する無線検針ユニット、データ収集装置、経路決定装置及び無線検針システムが開示されている。より具体的には、データ収集ユニットから呼出指定された端末無線ユニットから検針データを基本の通信ルートでデータ収集ユニットに収集できないとき、その検針データを他の端末無線ユニットの代行通信ルートを経由させてデータ収集ユニットに導くように構成し、もって、データ収集ユニットのアプリプログラムが検針データを収集するための最適な通信ルートを決定して各端末無線ユニットに配信し、現時点の各端末無線ユニットとの通信可否状態に基づいて各端末無線ユニットとの適切な通信ルートを確立するというものである。これまでにデータ収集した通信状態テーブルTbを読出してこのデータ収集ユニットと直接通信可能な第1端末無線ユニットと第2端末無線ユニットの上位の端末無線ユニットを上位グループ(Cグループ)に設定し、以後、Cグループ中の一方の例えば第1端末無線ユニットとの通信ルートをAグループに設定し、Aグループの第1端末無線ユニットと通信可能な下位の第3端末無線ユニット及び第4端末無線ユニットとの2台を加えたものをBグループに設定し、Bグループの下位の端末無線ユニットが1台であれば、その1台のユニットをデータ収集ユニットの直下ルートに登録してAグループとし、下位端末無線ユニットが3台以上あれば、Bグループ中の自端末無線ユニットと通信許容する他端末無線ユニット数を求め、通信許容数が最多の端末無線ユニットをデータ収集ユニットの直下ルートに登録してAグループとし、その内の1つの他端末無線ユニットとの通信ルートを基本の通信ルートに特定するというものである。
上記する特許文献1で開示の経路決定装置と無線検針システムに対し、本発明者等は全く異なるアルゴリズムに基づいた計測管理システムを発案し、これが特許文献2に開示されている。
具体的には、管理者側のマスターコンピュータを中心に、複数の無線機器が階層的に通信可能にネットワークを構成しており、少なくとも1つの無線機器には計測器が接続されてなる計測管理システムであって、前記マスターコンピュータと無線機器はそれぞれ、電波の送受信をおこなう無線通信手段と、固有のIDを格納するID格納手段と、周波数ごとに設定された複数のチャンネルから任意のチャンネルを選択するためのチャンネル選択手段とを少なくとも備えており、マスターコンピュータには、該マスターコンピュータと電波の送受信が可能な無線機器、および、電波の送受信が可能な各無線機器間のルートを特定するテーブルデータを格納するテーブルデータ格納手段と、該テーブルデータに基づいて少なくとも計測器とマスターコンピュータとの間のネットワークを構築するネットワーク構築手段とをさらに備えており、マスターコンピュータと任意の無線機器との間および/または任意の無線機器間において電波の送受信が不能となった際に、前記テーブルデータに基づいて他の電波送受信ルートが選択され、ネットワークが再構築されるように構成されており、前記テーブルデータは、その縦欄と横欄に通信局番号が規定され、マスターコンピュータと送受信可能な無線機器との間における受信電波信号強度、および、送受信可能な無線機器間における受信電波信号強度が表示されてなるテーブルデータからなり、マスターコンピュータが該テーブルデータに基づいて受信強度の大きな機器間でネットワークを構築するものであり、ネットワークを構築する際には、マスターコンピュータと直接通信可能な無線機器が第1の階層に設定され、少なくとも該第1の階層に属する無線機器と直接通信可能な無線機器が第2の階層に設定され、以下順に、下層の階層が設定されるようになっており、このネットワークの構築において、前記テーブルデータにおける上層の階層となる局を横欄で選択して該局に対応する縦欄を参照し、受信電波信号強度の大きさに基づいて該局の下層の階層となる別途の局を選択して電波送受信ルートを構築するようになっており、ネットワークの一部で電波の送受信が不能となり、ネットワークを再構築する際には、前記テーブルデータにおいて、電波の送受信が不能となった電波送受信ルートを構成する2つの局のうち、下層の階層の局を縦欄で選択して該局に対応する横欄を参照し、受信電波信号強度の大きさに基づいて上層の階層となる別途の局を選択して電波送受信ルートを再構築するようになっている計測管理システムである。
特許文献2で開示される計測管理システムによれば、管理者側のマスターコンピュータと建設現場内の計測器とを無線機器を介して複数の通信可能なルートによってネットワークを構築し、マスターコンピュータ内のテーブルデータに基づいて、任意のルート間の通信が不能となった場合でも自律的に別の通信可能なルートを特定することによってネットワークを再構築することができる。
ところで、上記するルート間の通信不能には、無線機器の破損や障害物等が形成される(たとえば壁が構築されるなど)といった、いわゆる恒久的な状況のほかに、特に建設現場では大型機械(重機)が設置されて無線機器が電波のかげに入ってしまうという、一時的に受信できない状況が往々にしてある。
このように任意のルートが一時的に送受信できない状況の場合に、特許文献2で開示される計測管理システムを適用しようとすると、マスターコンピュータが通信不能となった無線機器を排除したネットワークを再構築することから、このネットワークの再構築に時間を要してしまうことが想定される。そして、無線機器自身の破損等が理由でないことから、無線機器の電波障害となっていた大型機械が無くなった際には、通信可能となった該無線機器を含んだ以前のネットワークを再度構築することになる。
本発明者等は、特許文献2で開示の計測管理システムに改良を加えて、任意のルートにおける無線機器が一時的に通信不能となった際に、通信不能となった無線機器が自律的に迂回ルートを探査できるようにすることで、このような状況の場合にマスターコンピュータによるテーブルデータに基づいたネットワークの再構築をおこなうことを不要とし、短時間にネットワークの再構築をおこなうことのできる計測管理システムの発案に至っている。
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、任意のルートにおける無線機器が一時的に通信不能となった際に、通信不能となった無線機器が自律的に迂回ルートを探査できるようにすることで、短時間にネットワークの再構築をおこなうことのできる計測管理システムを提供することを目的としている。
前記目的を達成すべく、本発明による計測管理システムは、管理者側のマスターコンピュータを中心に、複数の無線機器が階層的に通信可能にネットワークを構成しており、少なくとも1つの無線機器には計測器が接続されてなる計測管理システムであって、前記マスターコンピュータと無線機器はそれぞれ、電波の送受信をおこなう無線通信手段と、固有のIDを格納するID格納手段と、周波数ごとに設定された複数のチャンネルから任意のチャンネルを選択するためのチャンネル選択手段とを少なくとも備えており、マスターコンピュータには、該マスターコンピュータと電波の送受信が可能な無線機器、および、電波の送受信が可能な各無線機器間のルートを特定するテーブルデータを格納するテーブルデータ格納手段と、該テーブルデータに基づいて少なくとも計測器とマスターコンピュータとの間のネットワークを構築するネットワーク構築手段とをさらに備えており、マスターコンピュータと任意の無線機器との間および/または任意の無線機器間において電波の送受信が不能となった際に、前記テーブルデータに基づいて他の電波送受信ルートが選択され、ネットワークが再構築されるように構成されており、前記テーブルデータは、その縦欄と横欄に通信局番号が規定され、マスターコンピュータと送受信可能な無線機器との間における受信電波信号強度、および、送受信可能な無線機器間における受信電波信号強度が表示されてなるテーブルデータからなり、マスターコンピュータが該テーブルデータに基づいて受信強度の大きな機器間でネットワークを構築するものであり、ネットワークを構築する際には、マスターコンピュータと直接通信可能な無線機器が第1の階層に設定され、少なくとも該第1の階層に属する無線機器と直接通信可能な無線機器が第2の階層に設定され、以下順に、下層の階層が設定されるようになっており、このネットワークの構築において、前記テーブルデータにおける上層の階層となる局を横欄で選択して該局に対応する縦欄を参照し、受信電波信号強度の大きさに基づいて該局の下層の階層となる別途の局を選択して電波送受信ルートを構築するようになっており、ネットワークの一部で電波の送受信が恒久的に不能となり、ネットワークを再構築する際には、前記テーブルデータにおいて、電波の送受信が不能となった電波送受信ルートを構成する2つの局のうち、下層の階層の局を縦欄で選択して該局に対応する横欄を参照し、受信電波信号強度の大きさに基づいて上層の階層となる別途の局を選択して電波送受信ルートを再構築するようになっている計測管理システムにおいて、マスターコンピュータが具備する前記テーブルデータが簡素化された通信運用ファイルを少なくとも複数の前記無線機器がさらに備えており、任意の上層と下層の無線機器間で通信が一時的に不通となった際に、マスターコンピュータによるテーブルデータを使用した電波送受信ルートの再構築に拠ることなく、該上層もしくは下層の一方の無線機器が自身の具備する前記通信運用ファイルを参照して通信可能な別途の無線機器を検索し、自律的に電波送受信ルートを再構築するようになっているものである。
本発明の計測管理システムは、建設現場内の各所に設置された適宜の計測器(ないしはセンサ)の計測データを管理者側のマスターコンピュータに送信するための計測管理システムに関し、各計測器とマスターコンピュータとの間を無線通信にて繋ぐとともに、任意の通信ルート間で「恒久的」に通信不能な事態が生じた場合には、マスターコンピュータの有するテーブルデータに基づいて自律的に通信ルートを再構築することにより、確実に計測データをマスターコンピュータに送信することのできる計測管理システムに関するものである。そして特に、建設機械が設置される等によって任意のルートにおける無線機器が「一時的」に通信不能となった際には、マスターコンピュータによるテーブルデータに基づいた通信可能なルートの再構築に拠ることなく、少なくとも無線機器が通信運用ファイルを参照して自律的に通信ルートを再構築することにより、ネットワークの再構築を短時間でおこなうことができることを最大の特徴とするものである。
マスターコンピュータは、建設現場における事務所内や、本社、支店等の管理セクション内に設置されており、現場内の適所に設置されている各計測器(センサ)の計測データを複数の電波通信可能なルートを経由して収集/蓄積するものである。また、マスターコンピュータ内には、施工段階に応じた山留め部材の許容応力値や歪みの値、土水圧の設計値等が予め入力されており、受信された計測データと許容値ないしは設計値とを比較しながら施工管理がおこなわれるようになっている。
ここで、マスターコンピュータから計測器までを繋ぐ複数の電波通信可能なルートの構築に際しては、現場の適所に複数の無線機器を設置しておき、各無線機器を経由してマスターコンピュータに計測データが送信できるように構成する。無線機器は、少なくとも電波の送受信が可能な無線通信手段を備えているものであればその形態は特に限定されるものではないが、例えば公知のモデムを使用することができる。
マスターコンピュータと無線機器には、上記する無線通信手段のほかに、各機器を特定するためのID番号を格納したID格納手段と、周波数ごとに複数のチャンネルを選択できるチャンネル選択手段が備えてある。例えば、マスターコンピュータと無線機器に、適宜の周波数帯域において、チャンネルごとにON/OFFを切替えながら周波数(チャンネル)の切替えが可能なDIP-Switchを設けておくことができる。また、各無線機器には、例えばコネクタおよびスキャナが装着されており、このスキャナに適宜の計測器が接続できるようになっている。したがって、無線機器は、電波の送受信の際の中継局の役割を担う場合もあるし、計測器が接続された場合には、計測データを収集し、この計測データを中継局である別途の無線機器ないしはマスターコンピュータに送信する役割を担う場合もある。これは、現場の工事進歩状況に応じてその使用目的が変更されることに対応するものである。テーブルデータの形成に際しては、マスターコンピュータと各無線機器において、ある任意の周波数のチャンネルに設定し、この状態で無線通信可能なルートの特定をおこなうことができる。なお、マスターコンピュータに無線通信手段が外付けされた構成であってもよいことは勿論のことである。
現場内では、仮設構造物や構築されている躯体等、様々な障害物が存在することから、場内の任意の地点に設置された無線機器が電波通信可能な無線機器は、その一部の無線機器となる。したがって、マスターコンピュータと場内の各所に設置された無線機器との間で、各無線機器が通信可能な無線機器ないしはマスターコンピュータとの通信可能ルートを特定する必要がある。そこで、場内に設置された各無線機器が他の無線機器を経由してマスターコンピュータと通信可能なルート、あるいは各無線機器が直接マスターコンピュータと通信可能なルートを特定し、特定された通信可能ルートをテーブルデータとしてマスターコンピュータに内蔵されたテーブルデータ格納手段に格納される。
この通信可能なルートは、無線機器の基数や現場の障害物の有無の状況等によって変化するため、マスターコンピュータは、少なくとも、設置されたすべての無線機器がマスターコンピュータを中心として階層的に繋がる任意の通信可能ルートをこのテーブルデータに基づいて決定する。この決定は、マスターコンピュータ内に内蔵されたネットワーク構築手段(公知のCPU等)によっておこなわれる。なお、マスターコンピュータにてネットワークが構築されると、各無線機器は、自身が電波の送受信をおこなう相手の無線機器のID番号を、マスターコンピュータからの指令に基づいて自身のID格納手段に自動設定することができる。
マスターコンピュータと直接通信可能な無線機器は第1の階層に設定され、第1の階層に属する無線機器と直接通信可能な無線機器が第2の階層に設定され、以下順に、下層の階層が設定されるようになっており、階層ごとに固有のチャンネルが設定されるようになっている。
例えば、マスターコンピュータと直接通信が可能な無線機器であって、かつ、該無線機器同士の双方向の通信が可能な無線機器を特定し、特定された無線機器群を第1の階層に設定する。次に、第1の階層群に属する無線機器と直接無線通信が可能な無線機器を第2の階層に設定し、以後同様に第3の階層群、第4の階層群、…を設定していく。マスターコンピュータと直接通信する第1の階層群に属する無線機器を上記のように設定することで、任意のルートで通信不能となった場合のネットワークの再構築を極めて効率的に実行することが可能となる。
マスターコンピュータでは、既述するテーブルデータに基づいて一定のチャンネルにおいてネットワークを構築する。その後、階層ごとに固有の周波数(チャンネル)を設定しておくことにより、同じ階層における双方向通信の可否を短時間に特定することが可能となるため、ネットワークの再構築が極めて効率的におこなわれ得る。
ここで、前記テーブルデータは、マスターコンピュータと送受信可能な無線機器との間における受信電波信号強度、および、送受信可能な無線機器間における受信電波信号強度が表示されてなるテーブルデータからなり、マスターコンピュータが該テーブルデータに基づいて受信強度の大きな機器間でネットワークを構築することができる。
マスターコンピュータが受信した、各無線機器間の受信電波信号強度をテーブルデータとして表示するものであり、任意の無線機器が複数の無線機器と通信可能である場合には、受信電波信号強度が最も大きな無線機器と通信ルートを構築することにより、より明瞭な計測データをマスターコンピュータに送信することが可能となる。
マスターコンピュータにてネットワークが構築された後は、各計測器からの計測データの収集を無線通信によっておこなう。
任意のルートにおいて無線機器が破損したり、壁が構築される等して任意のルートでの通信が不能となったり、場内の施工状況の変化によって任意の無線機器間で電波の送受信が不能となる、いわゆる「恒久的」な通信不能の事態においては、マスターコンピュータにて電波受信不能を検知することができ、この段階で、マスターコンピュータは、テーブルデータに基づいて、電波の送受信不能となった無線機器が通信可能な別の無線機器との間で通信ルートを再構築することにより、各無線機器とマスターコンピュータとのネットワークの再構築がおこなわれる。
このように恒久的な通信不能の事態においては、マスターコンピュータがテーブルデータに基づいて、任意の無線機器において受信電波信号強度の大きな別の無線機器を選定することにより、ネットワークの再構築がおこなわれる。本発明の計測管理システムによれば、ネットワーク構築のバリエーションをより多様化することができ、さらには、多様なバリエーションのネットワークの中から、最適なネットワークの再構築をおこなうことが可能となる。
一方、クレーン等の大型機械が設置等されて無線機器が電波のかげに入ってしまい、任意のルートで「一時的」に送受信できないといった状況の場合に迅速に対応するべく、本発明の計測管理システムでは、マスターコンピュータが具備するテーブルデータが簡素化された通信運用ファイルを少なくとも全ての無線機器が備えていて、任意の上層と下層の無線機器間で通信が一時的に不通となった際には、上層、下層のいずれか一方の無線機器が自身の具備する通信運用ファイルを参照して通信可能な別途の無線機器を検索することができる。
ここで、通信運用ファイルには、マスターコンピュータと各階層の無線機器を繋ぐ複数の通信ルートと、各無線機器が通信可能な他の無線機器に関する情報が少なくとも含まれている。
このように、全ての無線機器が自身の具備する通信運用ファイルを参照して通信可能な別途の上層の無線機器を検索することにより、マスターコンピュータによるテーブルデータに基づいたネットワークの再構築に拠ることなく、通信可能なネットワークを迅速に再構築することができる。なお、マスターコンピュータもテーブルデータのほかにこの通信運用ファイルを具備していてもよい。マスターコンピュータが通信運用ファイルを参照してあらたなルートを再構築することによって、テーブルデータを使用する場合に比して短時間にネットワークの再構築をおこなうことができる。
これは、自律通信ネットワーク技術の一つであるアドホック通信を改良した技術思想とも言える。すなわち、従来のアドホック通信は、通信可能な不特定の端末に対して通信が実施され、場当たり的な接続によって多数の目的局と通信をおこなう技術であり、端末の分布密度がネットワークの構築の出来栄えを左右するものである。これに対し、本発明の計測管理システムでは、ネットワークの上方の集約目的局は一局(マスターコンピュータ)であり、そのための無線機器(中継局)は理想的な分布密度にはなっていない。既述するように、クレーン等の大型機械が設置等されて通信が一時的に遮断された際に、各無線機器が自律的に迂回ルートを検索し、マスターコンピュータまで通信が可能となるルートの構築をおこなうものである。
なお、マスターコンピュータと無線機器は、受信されたチャンネルごとのフロアノイズのノイズ強度を受信するとともに、該ノイズ強度が一定の閾値より大きな場合に電波の送受信が不能であると判定する判定手段をさらに備えていてもよい。
周波数ごとに設けられた複数のチャンネルが選択可能に設けられていることから、チャンネルごとに固有のノイズが存在し、さらには、無線機器の設置場所に固有のフロアノイズが存在する。このフロアノイズにより、電波信号が不明瞭となり、ノイズ強度が計測データに関する受信電波信号強度と同程度である場合には、電波受信不能と何ら変わるものではない。そこで、本発明の計測管理システムにおいては、計測データに関する受信電波信号と同時に受信されるフロアノイズがある一定の閾値を超える場合には、電波受信不能と判定することにより、ネットワークの再構築をおこなうものである。なお、このノイズ強度も、マスターコンピュータと通信可能な無線機器との間、および通信可能な無線機器間ごとのデータをテーブルデータとしてマスターコンピュータ内に形成することができる。例えば、マスターコンピュータ内のROM内に入力された閾値と、受信されたノイズ強度に基づいて形成されたテーブルデータ内の対応する値とを判定手段にて比較し、ノイズ強度が閾値を超えている場合には、受信不能とし、閾値以下の場合には受信可能として、例えば既述する第1のテーブルデータを再形成することができる。
この実施の形態の計測管理システムによれば、フロアノイズを勘案して電波送受信の可否を特定することができるため、計測データに関する電波受信の可否をより精度よく特定した上で、ネットワークの構築ないしは再構築をおこなうことが可能となる。
また、ネットワークの構築は、マスターコンピュータのID番号を0、各無線機器のID番号を順に、1,2,3,…,nとした場合に、任意のID番号の機器において、自身を電波送信側の機器とし、自身のID番号よりも大きなID番号の機器を電波受信側として各機器に電波を送信し、各機器からの応答信号を受信するとともに、応答信号の受信電波信号強度をマスターコンピュータに送信する送受信ステップをおこなうようになっており、該送受信ステップがマスターコンピュータから順におこなわれることにより、マスターコンピュータ内にテーブルデータが形成されるものであってもよい。
この実施の形態の計測管理システムは、マスターコンピュータ内に形成されるテーブルデータの形成方法の一実施形態を示したものである。マスターコンピュータと各無線機器には、それぞれに固有のID番号が設定されており、このIDに基づいて各無線機器間ないしはマスターコンピュータと無線機器との間の電波の送受信がおこなわれることは既述の通りである。ここで、マスターコンピュータのID番号を仮に0とし、各無線機器にそれぞれ、1,2,…のID番号を設定する。
まず、ID番号が最も小さなマスターコンピュータから電波を送信し、他のすべての無線機器を電波の受信側に設定する。この状態で、電波を受信した旨の応答信号をマスターコンピュータに送信可能な無線機器が特定されることにより、マスターコンピュータを中心として、マスターコンピュータと直接通信可能な無線機器が設定される。
次いで、ID番号が1の無線機器を送信側に設定し、ID番号が2以上の他の無線機器を受信側に設定する。この状態で上記と同様に応答信号をID番号が1の無線機器に送信可能な無線機器を特定することで、ID番号が1の無線機器と通信可能な無線機器が設定される。この情報は、ID番号が1の無線機器からマスターコンピュータへ送られる。以後、ID番号が2以降の無線機器に関しても同様の操作を実行することにより、マスターコンピュータから各無線機器までの通信可能なルートの特定がおこなわれ、マスターコンピュータ内に通信可能なルートに基づくテーブルデータが形成される。
なお、この操作において、応答信号として、受信電波信号強度とノイズ強度の双方を受信することにより、受信電波信号強度に関するテーブルデータとノイズ強度に関するテーブルデータの双方をマスターコンピュータ内に形成することもできる。この場合、ノイズ強度に関しては、既述するようにマスターコンピュータ内にて所定の閾値との比較がなされ、ノイズ強度が大きなルートは通信不能と判定されるため、かかる情報を勘案したテーブルデータの形成が可能となる。
また、計測管理システムの好ましい実施形態として、使用される前記無線が、小電力無線である形態を挙げることができる。
建設現場においては、電波法に基づいて、無免許で使用可能な電波を使用することが望ましい。例えば、周波数が420MHz程度の低周波数の電波を使用することができ、この周波数帯域において、複数のチャンネルを設定することが可能となる。低周波数電波を使用する利点は、無免許にて使用できることのみならず、電波波長が長いため、仮設構造物や躯体等の障害物を電波が回り込むことにより、容易に障害物を回避し易くなることである。なお、ここでいう小電力無線に、特定小電力無線が含まれていることは勿論のことである。また、無線LANを2ch通信手段に用いることもできる。
また、前記計測器には、変位計、層別沈下計、応力計、地下水位計、傾斜計、ひずみ計、水圧計、土圧計、温度計を含む計測機器またはセンサのいずれか一種または複数が含まれる。
建設現場にて使用される計測機器ないしはセンサとしては、一例として挙げた上記の計測器を使用することができるが、例示の計測器に限定されるものでないことは勿論のことである。これらの計測器が現場の施工状況に応じて、適宜の無線機器に接続され、また、必要に応じて接続を解除され、さらには、施工の途中で接続されることができる。
以上の説明から理解できるように、本発明の計測管理システムによれば、マスターコンピュータが具備するテーブルデータが簡素化された通信運用ファイルを少なくともそれぞれの無線機器が備えており、任意の上層と下層の無線機器間で通信が一時的に不通となった際に上層、下層のいずれか一方の無線機器が自身の具備する通信運用ファイルを参照して通信可能な別途の無線機器を検索するようになっていることにより、建設機械が設置される等によって任意のルートにおける無線機器が一時的に通信不能となった際に、短時間にネットワークの再構築をおこなうことができる。
以下、図面を参照して本発明の計測管理システムの実施の形態を説明する。なお、図示例は、マスターコンピュータが通信運用ファイルを具備していない形態であるが、マスターコンピュータも通信運用ファイルを具備している形態であってもよいことは勿論のことである。
(計測管理システムの実施の形態)
図1は本発明の計測管理システムの実施の形態の概略構成を示した模式図である。図示する計測管理システム10は、例えば建設現場に設けられた管理室4内に設置されたマスターコンピュータ3と、このマスターコンピュータ3に外付けされた無線機器1と、現場内の各所に設けられた各種計測器と、各計測器がコネクタ/スキャナ2を介して接続された無線機器1A〜1E、および、中継局として無線機器間またはマスターコンピュータと無線機器との無線通信をおこなう無線機器1a〜1cによって構成されている。使用される計測器を具体的に説明すると、シートパイル等の土留め壁Aに設置されるひずみ計B,多層構造の地盤内に設置される層別沈下計C、土留め壁の背面の土圧や水圧(間隙水圧)を計測する土圧計Dや間隙水圧計E、切梁Fに設置される温度計Gやひずみ計Hなどからなる。なお、図示しないその他の計測器も仮設構造物や躯体等の適所に設定される。
図2はマスターコンピュータ3の内部構造を模式的に示したブロック図であり、図3は無線機器1(1A〜1E,1a〜1c)の内部構造を模式的に示したブロック図である。マスターコンピュータ3の内部構造S100は、外付けの無線通信手段S101を該コンピュータに接続するためのインターフェイスS102と、このインターフェイスS102に接続されるテーブルデータ格納手段S103、ID格納手段S105、チャンネル選択手段S106と、テーブルデータ格納手段S103からのデータに基づいてネットワークを構築ないしは再構築するネットワーク構築手段S104と、テーブルデータ格納手段S103のデータを読み込んで、ネットワーク構築手段S104にネットワークの構築を実行させるための制御手段S107(CPU)にて大略構成されている。
本実施形態では、特定小電力無線をはじめとする小電力無線に対応した電波を使用し、所定の周波数帯域において、複数の周波数ごとに設定されているチャンネルの切替えが可能となっている。マスターコンピュータ3のID格納手段S105には、例えばID番号:0が設定される。
一方、図3に示す例えばモデムからなる無線機器の内部構造S200は、無線通信手段S201と、この無線通信手段S201に接続されたID格納手段S202,チャンネル選択手段S203と、外付けのコネクタ/スキャナS205と無線通信手段S201を繋ぐインターフェイスS204、無線通信手段S201に接続される運用ファイル格納手段S206、運用ファイル格納手段S206を参照して無線機器間で通信可能なネットワークを再構築するネットワーク構築手段S207と、運用ファイル格納手段S206のデータを参照してネットワーク構築手段S207にネットワークの再構築を実行させるための制御手段S208(CPU)から大略構成されている。なお、計測器が接続される無線機器には、このコネクタ/スキャナS205に適宜の計測器が接続されることとなる。なお、マスターコンピュータ3も運用ファイルを具備する形態の場合には、図2で示すマスターコンピュータ3の内部において、図3と同様に運用ファイル格納手段がさらに内蔵され、この運用ファイル格納手段がネットワーク構築手段S104や制御手段S107とデータ送受信可能な状態で繋がっている内部構造となる。
図4は、各無線機器がそれぞれの格納手段にて具備する通信運用ファイルの実施の形態を示した図である。
図示するように通信運用ファイルは、後述する(図6参照)マスターコンピュータのテーブルデータ格納手段S103にて格納されたテーブルデータを簡素化したデータファイルとなっている。
具体的には、各局(相手局0はマスターコンピュータのことである)と、各局における通信可能なルート、各局の階層順位、および各局が通信可能な相手局が記載されている。
図示する通信運用ファイルは、後述するように、任意のルートで無線通信が一時的に不通となった際のネットワークの再構築の際に、対象となる無線機器が自身の保有する通信運用ファイルの特に通信可能な相手局を参照しながら通信可能なルートを自律的に検索する際に使用されるものである。
次に、マスターコンピュータ内のテーブルデータ格納手段に、テーブルデータを形成する方法について説明する。図5は、その方法を説明するための模式図である。最上位のマスターコンピュータをS0、その下位の無線機器を順にS1,S2,S3とする。ここで、無線機器S1は、直接マスターコンピュータと無線通信可能な無線機器であり、この階層をレベル1(L1)、以下、順にレベル2(L2)、レベル3(L3)とする。
まず、マスターコンピュータS0を電波送信側、他の無線機器を電波受信側とし、マスターコンピュータと通信可能な無線機器からは応答信号が送信され(X2方向)、この操作がすべての無線機器に対してなされた段階で、マスターコンピュータS0から了承信号が次の無線機器S1(ID番号が1に設定されている無線機器)に送られる(X3方向)。なお、図5においては、無線機器S1のみが図示されているが、マスターコンピュータと直接通信可能な無線機器は他にも存在することは勿論のことである。
次に、マスター権がマスターコンピュータS0から無線機器S1に与えられ(X1方向)、この無線機器S1を送信側、マスターコンピュータを除くそれ以外の無線機器(具体的には、ID番号が2以上の無線機器)が受信側となり、無線機器S1と通信可能な無線機器からは応答信号が無線機器S1に送信され(Y2方向)、さらにこの応答信号はマスターコンピュータS0に送信される(X2方向)。マスターコンピュータS0からは、了承信号が無線機器S1を介し(X3方向)、無線機器S2に送られる(Y3方向)。図では、無線機器S2が無線機器S1と通信可能であることを示している。
次に、マスター権が無線機器S1から無線機器S2に与えられ(Y1方向)、この無線機器S2を送信側、マスターコンピュータおよび無線機器S1を除くそれ以外の無線機器(具体的には、ID番号が3以上の無線機器)が受信側となり、無線機器S2と通信可能な無線機器からは応答信号が無線機器S2に送信され(Z2方向)、さらにこの応答信号は無線機器S1を介してマスターコンピュータS0に送信される(Y2、X2方向)。
上記する操作を順次実行することにより、マスターコンピュータ内のテーブルデータ格納手段には、各無線機器間ないしはマスターコンピュータと無線機器との間で通信可能なルートが格納される。なお、図5において、マスターコンピュータS0と直接通信が可能な無線機器S1はレベル1(L1)の階層に属することとし、無線機器S1と通信が可能な下位の無線機器S2をレベル2(L2)の階層に属することとし、無線機器S2と通信が可能なさらに下位の無線機器S3をレベル3(L3)の階層に属することとする。既述するように、各階層には、図示しない複数の無線機器が存在するものであり、マスターコンピュータS0を中心に下方に階層的な(ツリー状の)ネットワークが構成される。
ここで、図5に示す操作にしたがってテーブルデータを形成する際には、一定の周波数の電波、すなわち一定のチャンネル(Base-CH)にて全操作をおこなえばよい。
図6は、受信電波信号強度をテーブル化してなるテーブルデータの実施の形態を示したものである。これは、実際に各無線機器間での受信電波信号強度(RSSI: Received Signal Strength Indicator)に基づくものであり、電波強度が大きいほど、より計測データを明瞭に読み込むことができることは言うまでもない。図示するテーブルデータの作成方法を概説すると、まず、マスターコンピュータから各無線機器に通信をおこない、受信強度のレポートをマスターコンピュータが受け取ってテーブルデータ格納手段にてテーブルデータを作成し、格納する。この操作をマスターコンピュータから全ての無線機器に対して実行し、その際のRSSIを返信し、自局(マスターコンピュータ)と相手局(各無線機器)の間の受信強度表(不図示)が作成される。この受信強度表には、自局の電波を相手局が受信した際のRSSIと、逆に相手局の電波を自局が受信した際のRSSIがあり、一般にこの2つの値はほぼ同値であるものの、異なる場合には小さい方の値が採用される。そして、このような操作を今度は各無線機器同士で同様に実行することによって図示するテーブルデータが作成される。マスターコンピュータのテーブルデータ格納手段に、図示するテーブルデータが形成されるように構成しておくことで、ネットワークの構築やその後のネットワークの再構築の際にこのテーブルデータを使用することが可能となる。また、図示を省略するが、テーブルデータ格納手段には、さらに、フロアノイズのノイズ強度データを表示したテーブルデータも格納することができる。
フロアノイズのノイズ強度が受信電波信号強度と同程度の場合には、受信された計測データが極めて不明瞭となることから、マスターコンピュータ内の構造として、さらに、図示を省略するフロアノイズの閾値を格納する閾値格納手段と、この閾値とフロアノイズとを比較する判別手段をさらに内蔵しておき、フロアノイズのノイズ強度が閾値よりもおおきな場合には、第1のテーブルデータにおいて、通信可能である1が表示されていた箇所を0に変更修正等するように構成することもできる。
図6で示す受信電波信号強度に基づくテーブルデータによってネットワークを構築するに当たり、受信電波信号強度が大きな順に各無線機器同士を繋ぐこととなる。例えば、無線機器4(j=4)を横に見ると、その上位の通信可能な機器は、マスターコンピュータ(i=0)の10よりも、大きな受信電波信号強度(=15)である無線機器(ID番号:2)と接続されることとなる。
図7は、図6で示すテーブルデータに基づいて構築されたネットワークを模式的に示したものである。図において、S0はマスターコンピュータを、S1〜S12は、順に、ID番号:1〜12の各無線機器を示している。図7に示すように、すべての無線機器はいずれかの無線機器ないしはマスターコンピュータと接続されており、マスターコンピュータを中心に各無線機器がツリー状に形成されている。この無線機器において、いずれの無線機器に計測器が接続されても、計測器による計測データは通信可能な無線機器を介してマスターコンピュータに送信されることとなる。
(任意のルートで無線通信が恒久的に不能となった際のネットワークの再構築方法)
図7に示すネットワークにおいて、無線機器S2の破損やマスターコンピュータS0と無線機器S2の間に壁が構築される等して、マスターコンピュータS0と無線機器S2の間の無線通信が恒久的に通信不能となった場合におけるネットワークの再構築の方法を説明する。
この場合は、図8に示すように、無線機器S2の上位をマスターコンピュータS0以外で最も受信電波信号強度が大きな無線機器S3を選択し、このルートを再構築する。かかる再構築により、図9に示すように、無線機器S2と通信可能な無線機器S4にもマスターコンピュータS0からのネットワークが形成される。その他に、無線機器S4と通信可能な無線機器S9を上位の無線機器に選定することにより、マスターコンピュータS0〜無線機器S1〜無線機器S5〜無線機器S9〜無線機器S4へのネットワークも構築される。
テーブルデータにおいて、電波の送受信が不能となった電波送受信ルートを構成する2つの局のうち、下層の階層の局を縦欄で選択して該局に対応する横欄を参照し、受信電波信号強度の大きさに基づいて上層の階層となる別途の局を選択して電波送受信ルートを再構築するものである。
(任意のルートで無線通信が一時的に不通となった際のネットワークの再構築方法)
図4、7を参照し、たとえば、無線機器S2付近に大型機械が設置され、無線機器S2が電波のかげに入り、一時的に受信できない状態となった場合を取り上げて説明する。すなわち、「一時的」であることから、たとえば大型機械が移動等することでこの通信不能状態は速やかに解消する状況である。
この場合、無線機器S2を介する下位の無線機器S4,6,11との通信が不通となり、マスターコンピュータS0における無線機器S2を介したこれらの情報収集ができなくなる。
ここで、マスターコンピュータS0が既述する方法でテーブルデータに基づいて別途のルートの再構築を図ることとすると、自ずと時間を要することになる。また、大型機械が移動等して無線機器S2の通信が復旧した際には、無線機器S2を含む通信ルートを再度構築する必要がある。
この一時的な通信不能な状態において、下位層の無線機器から上位層の無線機器に情報が送信される過程で無線機器S2が不通状態に陥った場合について検討する。すなわち、この状態においては、無線機器S4の情報と、無線機器S6,S11の情報をマスターコンピュータS0に送信できない。そこで、以下、無線機器S4から上位層への通信について、無線機器S6から上位層への通信について、それぞれの場合を詳述する。
「無線機器S4から上位層への通信について」
通信運用ファイルを参照して、自局(無線機器S4)の通信可能な相手局を検索し、相手局として無線機器S0(マスターコンピュータS0)、無線機器S2,S9が検索される。しかし、無線機器S2は現在不通であることからこれを排除し、マスターコンピュータS0と無線機器S9を選択する。
次に、相手局となり得るマスターコンピュータS0と無線機器S9のルートを検索すると、マスターコンピュータS0は直接通信が可能であり、無線機器S9は無線機器S9−無線機器S5−無線機器S1−マスターコンピュータS0のルートとなり、このルートに無線機器S2が含まれていないことから、このようなルートによってもマスターコンピュータS0との通信が可能となる。
最終的に、ルートの短いマスターコンピュータS0と直接通信するルートが制御手段S208にて選択され、これがネットワーク構築手段S207で構築され、このルートでのネットワークの再構築が短時間で実行される。
「無線機器S6から上位層への通信について」
無線機器S11の情報は無線機器S6まで送信されている。通信運用ファイルを参照して、無線機器S6の通信可能な相手局を検索し、相手局として無線機器S2,S3、S5,S10,S11が検索される。
このうち、無線機器S2を排除して他の検索された無線機器との通信ルートを検索すると、無線機器S3への最適ネットワークとなる通信ルートはマスターコンピュータS0−無線機器S3である。そこで、無線機器S3に情報を送信し、無線機器S3−マスターコンピュータS0のルートでマスターコンピュータS0との通信が可能となる。
一方、無線機器S5の通信ルートは、無線機器S5−無線機器S1−マスターコンピュータS0のルート、無線機器S10の通信ルートは、無線機器S10−無線機器S9−無線機器S5−無線機器S1−マスターコンピュータS0のルート、無線機器S11の通信ルートは、無線機器S11−無線機器S6−無線機器S2−マスターコンピュータS0のルートでルート上に無線機器S2があるために排除する。
したがって、迂回ルートには、無線機器S3,S5,S10の3つのルートを利用することができ、その中から最短ルートである、無線機器S3−マスターコンピュータS0のルートが選択される。
次に、上位層から下位層に情報が送信される過程で無線機器S2が不通状態になった場合について検討する。すなわち、この場合には、マスターコンピュータS0が無線機器S2以降の無線機器S4,S6,S11に情報送信ができなくなる。
「上位層から無線機器S4への通信について」
上位層であるマスターコンピュータS0は無線機器S2が不通で無線機器S4への通信が不能となっている。迂回ルートを検索するべく、通信運用ファイルを参照してマスターコンピュータS0の通信可能な局として無線機器S1,S2,S3,S4が特定される。ここで、無線機器S2は排除し、無線機器S1,S3,S4が選択される。
無線機器S1を介しての通信相手局を検索すると、マスターコンピュータS0、無線機器S2,S3,S5との通信が可能であるものの、目的の無線機器S4が含まれていないのでこのルートは排除する。
同様に、無線機器S3を介しての通信相手局を検索すると、マスターコンピュータS0、無線機器S2,S5,S6、S7,S8との通信が可能であるものの、目的の無線機器S4が含まれていないのでこのルートも排除する。
無線機器S4へは直接の通信が可能であることより、マスターコンピュータS0は直接無線機器S4へ通信をおこなう迂回ルートを選択する。
「上位層から無線機器S6への通信について」
無線機器S11への情報送信は無線機器S6への迂回ルートがあれば可能となる。ところで、マスターコンピュータS0が直接通信可能な相手局に無線機器S6は存在していない。最適ルートで直接マスターコンピュータS0(第1階層)と第2階層間の通信ルートは、マスターコンピュータS0−無線機器S1,マスターコンピュータS0−無線機器S2,マスターコンピュータS0−無線機器S3の3ルートである。このうち、無線機器S2が不通であることから、マスターコンピュータS0−無線機器S2のルートは排除される。
マスターコンピュータS0−無線機器S1のルートにおいて、無線機器S1が通信可能な相手局を検索すると、マスターコンピュータS0、無線機器S2,S3,S5との通信が可能であるものの、目的の無線機器S6へ通信できないのでこのルートも排除する。
マスターコンピュータS0−無線機器S3のルートにおいて、無線機器S3が通信可能な相手局を検索すると、マスターコンピュータS0、無線機器S1,S2,S5、S6,S7,S8との通信が可能であり、目的の無線機器S6へ通信が可能であることから、マスターコンピュータS0−無線機器S3−無線機器S6のルートを選択して無線機器S2を迂回したルートの再構築がおこなわれる。
なお、第2階層の検索で無線機器S6へ通信ができない場合には、さらに第3階層へのルートを選択してその先で通信可能なルートの検索を実行する。
このように、任意のルートにて一時的に通信が不能になった場合に、各無線機器が自律的に迂回ルートを検索することで、通信接続の可能性が高まり、通信信頼性の高い計測管理システムとなる。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。