JP5925891B2 - ヘアケア用品 - Google Patents
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Description
ハンドクリーム化粧料としてあるいはバス用(浴用)またはボディワークス用(身体用)の化粧料として、キャンドル(つまりロウソク)型の化粧料が知られている。この化粧料にあっては、キャンドルの灯りの醸し出す雰囲気を強調するために、特に香り成分に留意が払われていることが多い。
このタイプの化粧品においては、灯火の熱を利用してキャンドル本体を溶融した40℃前後の溶融液をハンドまたはボディに適用することができるのみならず、「香り」を楽しむことができる。すなわち、化粧品としての本来の効能に加えて、キャンドルの灯りとキャンドル溶融液からたちこめる独特の「香り」とで、心身ともにリラックス感が得られることが期待できる。
ヘアケアに関連して、「ポピュラーサイエンス、ヘアケアの科学、著作者:花王生活科学研究所、発行者:吉野達治、1994年2月25日第2版発行」には、髪の毛に関する基本的事項について次のような趣旨の説明がなされている。
まず、髪の毛は、皮膚から出ている「毛幹」と皮膚の中にある「毛根」とに分けられる。前者の「毛幹」は、外側にあるキューティクル(毛表皮)と、その内側のコルテックス(毛皮質)と、さらにその内側のメデュラ(毛髄質)とからなり、それらの構成比は、この順に、約15%、約82%、約3%である。
毛幹の構成層のうちキューティクルは、うろこ状の形をしており、根元から毛先の方向へ少しずつずれながら重なっている。この「ヘアケアの科学」の19頁、46頁、128頁、131頁、151頁には、キューティクルの状態がわかる顕微鏡写真が示されているので、髪の毛の表面が微視的にはどのような状態になっているか、つまり髪の毛がどの程度のダメージを受けているかを理解することできる。
テオブロマグランジフロルム種子脂(THEOBROMA GRANDIFLORUM SEED BUTTER)は、南米原産のカカオの一種であるクパス(CUPUASS)という果実の種子から得られる油脂である。
インターネット検索によれば、この油脂(テオブロマグランジフロルム)は、皮膚保護作用、エモリエント作用、紫外線吸収作用があるとされており、この油脂をクレンジングミルク、デイ(day)クリームまたはナイト(night)クリームなどに配合した化粧品が市販されているとある。
本明細書においては、本発明を説明するときも、文献中の記載内容を説明するときも、全て「テオブロマグランジフロルム種子脂」と表記または置き換え表記してある。
「FRAGRANCE JOURNAL 2003−5、73〜77頁」(非特許文献1)の「化粧品・医薬品原料の展望」と題する特集記事には、その74頁の表3に次の説明がある。
・品名:クロピュア クパス
・組成:テオブロマグランジフロルム果実油
・特徴:高い抱水性
「FRAGRANCE JOURNAL 2004−6、76〜85頁」(非特許文献2)の「各社取扱原料処方例紹介」には、その81〜82頁にクローダジャパン株式会社のアイケア(目元ケア)クリームの処方例が示されており、「クロピュア クパス」はアマゾンで採取されるクパスの実の種子から獲れる油脂を独自技術により吸着精製した油脂であること、「クロピュア クパス」は含有成分であるフィトステロールの抱水性によりエモリエント効果があることが示されており、そして特定の処方(A〜Dを混合)においてAの1成分として「テオブロマグランジフロルム種子脂(クロピュア クパス)」を用いた例が示されている。
「フレグランスジャーナル、2007年、臨時増刊号」(非特許文献3)の表4には、アンチエージングクリームの処方として、「クロピュア クパス(テオブロマグランジフロルム種子脂)」を成分の1つとして用いた例が示されている。
テオブロマグランジフロルム種子脂を用いた化粧料(毛髪化粧料を含む)については、たとえば下記のような出願がなされている。
特開2003−206213号公報(特許文献1)には、蔗糖の分岐(C8〜C20)脂肪酸エステルと油脂類及び脂肪酸エステル類の混合物からなる化粧用が水を内包することを特徴とする高抱水性化粧料組成物が示されている。
この化粧料は、スキンケア化粧料、ヘアケア化粧料およびメイクアップ化粧料などに使用したときに、ラノリン様の感触を持っていることを目的としている。
油脂類の一例はテオブロマグランジフロルム種子脂であり(請求項4)、リップグロス(唇用の艶(光沢)剤)処方にかかる表−1(実施例)と表−2(比較例)、ヘアクリーム処方にかかる表−3(実施例)と表−4(比較例)、エモリエントクリーム処方にかかる表−5(実施例)には、テオブロマグランジフロルム種子脂を用いた処方例があげられている。(なお、リップグロスは「粘膜に使用する化粧品」、ヘアケアは「洗い流す化粧品」であって、この2種は化粧品業界ではルール上区分されていて、同じ分類には属さない。)
特開2004−51517号公報(特許文献2)には、蔗糖の分岐(C8〜C20)脂肪酸エステル(たとえばイソステアリン酸エステル)と油脂類及び脂肪酸エステル類の混合物からなる化粧料が水を内包することを特徴とする高抱水性化粧料組成物が示されている。
この文献の発明は、固形、スティック化粧料に配合した場合の発汗抑制に関するものである(その段落0001を参照)。
上記の油脂類の例は、シア脂、テオブロマグランジフロルム種子脂、カカオ脂をはじめとする多種の油脂である(その請求項4、段落0006を参照)。
実施例1はクリームファンデーション、実施例2は口紅(リップスティック)にかかるものである。なお、実施例の箇所には、テオブロマグランジフロルム種子脂を用いた例はあげられていない。
特開2010−70533号公報(特許文献3)の請求項2には、アクリル系エマルション(a)、ロウ類(b)、カルボキシビニルポリマー(c)およびテオブロマグランジフロルム種子脂(d)を含む頭髪用化粧料が示されている。
そして、その段落0026〜0027、0041および表4の実施例には、テオブロマグランジフロルム種子脂が抱水性に優れていることや、頭髪用化粧料に占めるテオブロマグランジフロルム種子脂の添加量(表4の処方においては0.5〜8.0重量%配合)につき言及がある。
特開2010−70534号公報(特許文献4)の請求項3には、特定のシリコーンワックス(A)、シリコーン非含有ワックス(B)および水(C)を含有する請求項1の頭髪用化粧料に、さらに液状油(D)やテオブロマグランジフロルム種子脂(E)を含有させた頭髪用化粧料が示されている。
頭髪用化粧料100重量%に対する成分(E)の含有量は、請求項8によれば0.5〜5重量%であり、表5の実施例におけるその割合も0.5〜5重量%である。
特開2010−254583号公報(特許文献5)の請求項6には、高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体を含むことを特徴とする請求項1の毛髪化粧料に、さらにテオブロマグランジフロルム種子脂を含有させた頭髪用化粧料が示されている。
毛髪化粧料100重量%に対するテオブロマグランジフロルム種子脂の割合は、段落0031の記載によれば好ましくは0.5〜5重量%であり、実施例にかかる表1〜4においてはいずれも1重量%、表5においては0.5〜5重量%を配合している。
毛髪化粧料の剤型は、段落0042の記載によれば、ヘアワックス、ヘアミルク、ヘアクリーム、洗い流さないトリートメント、ヘアスプレー等である。
特開2011−57624号公報(特許文献6)には、シリコーン誘導体および揮発性炭化水素から選ばれる少なくとも一種の油剤(成分A)50〜99.99質量%およびウルシ科マンゴ種子核油、アオギリ科クプアス種子脂、ヤシ科ババス油、フタバガキ科ショレアステノプテラ脂から選ばれる少なくとも一種の低融点油剤(成分B)0.005〜4質量%を含有する毛髪化粧料組成物が示されている。
この特許文献6の発明は、毛髪、特に化学処理や日光などによる損傷を有するダメージ毛のケアに適した毛髪化粧料組成物に関するものである(その段落0001を参照)。
その段落0019には、「アオギリ科クプアス種子脂は、テオブロマグランジフロルムとも称される油脂で、市販品としてはクローダジャパン株式会社のクロピュア クパスが挙げられる」との説明がある。
その段落0037には、「毛髪化粧料組成物の剤型は特に限定されず、例えばヘアオイルなどの液状、ヘアジェルなどのゲル状、ヘアフォームなどの泡状、およびヘアクリームなどの乳化物状が挙げられる。」との記載がある。
その表1の実施例1〜16(ヘアオイル)のうち実施例2には、クプアス種子脂を1質量%配合した例が示されている。
特開2010−185015号公報(特許文献7)には、「可燃性のロウ材を用いて成形されたろうそく本体に対して、加熱により溶融した該ロウ材を吸い上げて燃焼させる灯芯が埋入状態で装着されたろうそくにおいて、ハゼの実由来の木蝋を20〜60重量%と脂肪酸を10〜30重量%、パラフィンを20〜60重量%としたロウ材料を用いて前記ろうそく本体が成形されていることを特徴とするろうそく。」が示されている。
この特許文献7には、ろうそくには大別して「和ろうそく」と「洋ろうそく」とがあること(段落0003);和ろうそくの灯芯の構造(イグサを筒状にした軸に和紙を巻き付けた中空の灯芯)とその灯芯に対する木蝋の塗り重ねによる和ろうそくの製作法、洋ろうそくに比し和ろうそくは油煙が極めて少なくかつ燃焼ススも出にくいことなどの特徴があること(段落0004)、和ろうそくの灯芯の製造工程上およびコスト上の問題点(段落0005);などにつき説明がなされている。
しかしながら、これらの非特許文献1〜3および特許文献1〜6のいずれにも、テオブロマグランジフロルム種子脂を含む組成物を火を使って直接的にもしくは間接的に加熱溶融することにより流動化させてヘアケアの目的に使うことについては記載がない。
また、これらの文献には、ヘアケアの目的を離れて、テオブロマグランジフロルム種子脂を「主成分」とする組成物(つまりテオブロマグランジフロルム種子脂の占める割合が60重量%以上とか70重量%以上とか80重量%以上とかいうように高い組成物)を用いた化粧料についても記載がない。
なお、特許文献7は、「和ろうそくおよびそれに用いる灯芯(和芯)」に関するものであるが、ハゼの実由来の木蝋を用いることを特徴とするものであり、テオブロマグランジフロルム種子脂については記載がない。ちなみに、化粧料についても記載がない。
本発明は、このような背景下において、従来知られておらず、そしてその性能においても斬新さの点においてもユニークであるヘアケア用品を提供すること(すなわち、火を使って特定の組成物を間接的に加熱溶融して流動化させることにより毛髪に適用する使い方をするヘアケア用品を提供すること)を目的とするものである。
テオブロマグランジフロルム種子脂を主成分とする常温で固体の組成物(1)と、
その組成物(1)を収容する容器(3)と、
その組成物(1)を収容した容器(3)を外部から火で加熱することにより該容器(3)内の組成物(1)を溶融かつ流動化するための加熱手段(4)と、
それら各部材を収容するための香炉状のハウジング(5)とからなること、
そして、前記の組成物(1)に占めるテオブロマグランジフロルム種子脂の割合が60重 量%以上であること、
を特徴とするものである。
本発明のヘアケア用品は、常温では固体の組成物を火を使って間接的に加熱溶融することにより流動化させて毛髪に適用する使い方をするヘアケア用品である。
この組成物(1)に占めるテオブロマグランジフロルム種子脂の割合は、60重量%以上という高配合であることが必要であり、さらには70重量%以上であることが好ましい。特に好ましい範囲は80重量%以上である。
その割合が60重量%未満であるときは、ヘアケア性能の点、火を使って間接的に加熱溶融するときの流動性の点、使い勝手の点などにおいて、上記のような高配合品に比しては見劣りがする。
上記の組成物(1)をヘアケアのために使うときには、火を使って間接的に加熱溶融して流動化させた状態で、その溶融液を手の指や掌につけて毛髪に転写する操作を行うのであるが、35〜65℃の範囲内にある溶融点を過度に越えた高温にする必要はないので、それほどの熱さは感じられない上、流動化しているので毛髪への転写が円滑になされる。
本発明のヘアケア用品は、常温では固体の組成物を火を使って間接的に加熱溶融することにより流動化させるタイプのヘアケア用品である。
この火による間接加熱型のヘアケア用品は、テオブロマグランジフロルム種子脂を主成分とする常温で固体の組成物(1)と、その組成物(1)を収容する容器(3)と、その組成物(1)を収容した容器(3)を外部から火で加熱することにより該容器(3)内の組成物(1)を溶融かつ流動化するための加熱手段(4)と、それら各部材を収容するための香炉状のハウジング(5)とからなる。
加熱手段(4)により容器(3)が加熱されると共に、その内部に入れた組成物(1)が溶融して流動するようになるので、その溶融液を手の指や掌につけて毛髪に転写する操作を行えばよい。
本発明のヘアケア用品は、常温では固体の組成物を火を使って間接的に加熱溶融することにより流動化させて毛髪に適用する使い方をするものであって、前記の組成物がテオブロマグランジフロルム種子脂を主成分とする組成物(1)からなる。
[背景技術]の箇所でも述べたように、テオブロマグランジフロルム種子脂は、アマゾンで採取されるクパスの実の種子から獲れる油脂を吸着精製した抱水性の油脂であり、クローダジャパン株式会社から「クロピュア クパス」の商品名で上市されている。
オリーブ油、ツバキ油、アーモンド油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、綿実油、ゴマ油、大豆油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、ヒマシ油、ヤシ油、アボガド油、パーム油、紅花油、アマニ油、ホホバ油、茶実油、ピーナッツ油、キョウニン油、ヘーゼルナッツ油、ローズヒップ油など。
ラノリン、ミツロウ(密ロウ)、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、米ぬかロウ、ライスワックス、モクロウ、牛脂、カカオ脂、牛脂硬化油、シア脂(シアバター)など。
なお、上記の組成物(1)は、本発明の趣旨を損なわない限りにおいて、ヘアケア用に関連する各種の有効成分や他の添加剤を含んでいてもよい。
たとえば、炭素数14〜28の分岐脂肪酸と炭素数14〜28の脂肪酸とは、両者が相まって髪のキューティクル(毛表皮)をくっつけるのに貢献するので、両者を併せて配合しておきたい有効成分である。レシチンもヘアケアに有効な成分であるが、テオブロマグランジフロルム種子脂にも若干含まれているので、補充的に配合することができる。
他の添加剤の例は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、抗炎症剤、清涼剤、pH調節剤、色素類、香料類、炭化水素系または酸化炭化水素系ワックスなどである。
上述の[発明の効果]の箇所でも述べたように、上記の組成物(1)からなる本発明のヘアケア用品は、その溶融液を手の指や掌につけて毛髪に転写する使い方をする。
図1は、参考例としてのヘアケア用品であるキャンドル型のヘアケア用品の一例を示した側面図であり、一部を切り欠き表示してある。
このキャンドル型のヘアケア用品は、テオブロマグランジフロルム種子脂を主成分とする常温で固体の組成物(1)と、その組成物(1)にセットされた状態にある灯芯(2)と、その灯芯(2)付きの組成物(1)を収容する容器(3)とから構成される。組成物(1)については、すでに説明を行っている。
このキャンドル型のヘアケア用品にあっては、上記の組成物(1)のほか、その組成物(1)を収容するための容器(3)と、その組成物(1)を溶融するための灯芯(2)とが構成要素になる。なお、上記の組成物(1)は、容器(3)に充填された状態であってもよく、容器(3)とは別に準備されたものであってもよい。
灯芯(2)は、容器(3)内に充填されている組成物(1)にセット(装着)した状態で商品とするのが通常である。組成物(1)を詰め替え用として上市するときも、予めその組成物(1)に灯芯(2)をセットした状態にしておくことが望ましい。
灯芯(2)の他の例は、和ろうそくに使われる「和芯」である。和芯には、その作り方によって、以下に例示するようないくつかのタイプのものがある。
その1つは、巻き棒に和紙を巻き付け、その上にイグサ(藺草)の茎から抜き出した白色の髄の数本を隙間なく巻き上げた後、その上に必要に応じて真綿を薄く引き伸ばして巻き付けることにより作製した和芯である。
他の1つは、和紙を中空状に巻いただけの和芯である。
さらに他の1つは、イグサを筒状にした軸に和紙を巻き付けることにより作製した和芯である。
和風のイメージを有するキャンドル型のヘアケア用品とするときには、灯芯(2)として「和芯」を用いることが好ましいことが多い。
容器(3)の材質は、不燃性、難燃性または耐熱性を有する限りにおいて任意であるが、 このキャンドル型のヘアケア用品が化粧料にかかるものであることを考慮すると、機能的にすぐれておりかつイメージ的にもすぐれているセラミックス製であることが特に好ましい。
加えて、その容器(3)が深底の容器であり、かつ灯芯(2)に点火したときの灯りが器壁を通して外部に漏れ出るものであることが特に好ましい。
容器(3)内の灯りが器壁を通して外部に漏れ出るようにするには、たとえば、陶磁器の材質に工夫を講じたり、器壁の厚みを薄くしても強靭性を有するものが得られるように焼き方に工夫を講じたりすることにより達成できる。
そして、発明の効果の箇所でも触れたように、内面が滑らかであることは、組成物(1)の注ぎ出し性にとって支障とならない上、組成物(1)中の特定成分の器壁内面への浸み込みを防止できるという作用が奏される。外面が素焼きのままの面であることは、落ち着いた印象を与える上、容器(3)を手で持ったときに滑り止め作用が奏されるというメリットがある。
また、発明の効果の箇所でも触れたように、上記の容器(3)の注ぎ出し口(3p)の先端の向きについては、水平面から下方に向けて90°±15°(特に90°±10°)に形成されるようにすることが特に好ましい。
そのような角度θに形成されるようにすると、溶融かつ流動化した組成物(1)の注ぎ出し後に、その粘稠な溶融液が注ぎ出し口(3p)の裏側に垂れてそこに付着して固化するようなことがないので、特に好適である。
通常の容器の注ぎ出し口(3p)の角度はほぼ水平かやや下向きであるので、上記のように注ぎ出し口(3p)の先端の向きをほぼ真下に設計することは、セラミックス(特に白磁や青白磁)の高級感に加えて、デザイン的にもユニークなものとなる。
図面には描いていないが、容器(3)には蓋体を付属しておくことが望ましい。
蓋体の材質は任意であるが、木、竹、蔓、蔦などの材料で作製されたものであることが特に望ましい。
蓋体は、消火の役割と、容器(3)の置き台の役割と、商品に付加価値を持たせる役割とを果たす。
キャンドル型のヘアケア用品において、容器(3)内の灯芯(2)に点火しているときに、その容器(3)の開放口のところに蓋体を載置すれば、灯芯(2)の火はすみやかに消える。この場合、容器(3)の注ぎ出し口(3p)の箇所において隙間があくことが多いが、そのような場合でもすみやかに消火がなされる。容器(3)内への空気の流入が制限されるからである。
蓋体は、キャンドル型のヘアケア用品の使用時および使用中には、断熱を目的とする置き台として使うことができる。
また、キャンドル型のヘアケア用品において、蓋体を置き台とすれば、インテリアデザインとしても好ましいものとなる。従って、市場に提供する商品としての価値も向上する。
本発明のヘアケア用品は、
テオブロマグランジフロルム種子脂を主成分とする常温で固体の組成物(1)と、
その組成物(1)を収容する容器(3)と、
その組成物(1)を収容した容器(3)を外部から火で加熱することにより該容器(3)内の組成物(1)を溶融かつ流動化するための加熱手段(4)と、
それら各部材を収容するための香炉状のハウジング(5)と
からなるものである。
[参考例1]
(組成物(1)の処方)
下記の処方の混合物をその溶融温度以上に加熱しながら混練することにより、参考例(お よび実施例)のための組成物(1)を調製した。該組成物の融点は50℃前後である。
テオブロマグランジフロルム種子脂・・・・86.97重量%(注)
オリーブ油・・・・・・・・・・・・・・・・7.00重量%
モクロウ・・・・・・・・・・・・・・・・・5.00重量%
ラノリン・・・・・・・・・・・・・・・・・1.00重量%
炭素数14〜28の脂肪酸の混合物・・・0〜1.00重量%(注)
トコフェロール・・・・・・・・・・・・・・0.03重量%
(注)
炭素数14〜28の脂肪酸の割合cは、後述のように0〜1.00重量%の範囲で変量。その割合cが0重量%の場合を上記の処方に示してある。処方の調整は基本的にはテオブロマグランジフロルム種子脂の割合で行っているので、上記の割合cが1.00重量%の場合には、上記の処方からテオブロマグランジフロルム種子脂の割合を1.00重量%減ずる。
テオブロマグランジフロルム種子脂は、組成物の大部分を占める主成分であり、ヘアケアに対して重要かつ決定的な役割を果たす。
オリーブ油は、抱水性を有する油脂であり、またテオブロマグランジフロルム種子脂が高配合の本処方においては組成物が硬すぎるようになるので、その硬さを減じて適度の柔軟性を付与する役割を果たす。
ラノリンは、抱水性を有するワックスであり、組成物の硬軟の度合いや使用時の感触を調整する成分である。
炭素数14〜28の脂肪酸は、髪のまとまり感を高めるための成分である。
トコフェロール(ビタミンE)は、酸化防止剤としての役割を果たす成分である。
図1に示した深底の容器(3)の多数個を準備した。材質は白磁である。製造は京都清水の専門の陶芸家に依頼して行った。
容器(3)は、紙コップをひとまわり大きくした大きさを有し、容器(3)の高さは95mm、上面の直径は75mm、底面の直径は57mmである。厚みは2mmである。
容器(3)の内面は釉薬により平滑に仕上げてあるので、鉛筆で筆記することはできなかった。このことは、組成物(1)中の特定成分の器壁内面への浸み込みがないことを意味する。
一方、容器(3)の外面は素焼きのままとなっているので、鉛筆で容易に筆記することができた。このことは、容器(3)を手で持ったときに滑り落ちを生じ難いことを意味する。
容器(3)の外面には紺色の図柄を描いてあるが、図1においてはその図柄の表示を省略してある。
図1に示したように、容器(3)には注ぎ出し口(3p)を設けてある。その注ぎ出し口(3p)の先端の向きは、ほぼ真下に向くようになっている(水平面から下方に向けてほぼ90°に形成してある)。
そのため、内容物である粘稠な溶融液を注ぎ出し口(3p)から注ぎ出すときに、その溶融液が注ぎ出し口(3p)の裏側に垂れて付着固化するような事態を生じない。
上記で準備した組成物(1)を再加熱して流動するようにしてから上記の容器(3)に注ぎ入れて、その内底から30mmの所まで充填し、ついで室温にまで放冷した。
なお、容器(3)内に充填した組成物(1)が流動性を有する間に、その組成物(1)の中間位置に、予めその組成物(1)に浸しておいた撚り糸製の灯芯(2)を埋め込み設置した。なお、撚り糸の材質は綿糸である。
なお、別途、上記の容器(3)にちょうど嵌まり込む形状および寸法の灯芯(2)付きの固形の組成物(1)を準備しておき、それを容器(3)内にセットすることも行ったが、同じキャンドル型のヘアケア用品が得られた。
なお、軸長が10cm程度の長軸マッチが市販されているので、容器(3)内の灯芯(2)への点火は、長軸マッチを用いて行うことが好ましい。マッチの使用は、ヘアケアを行う場の雰囲気に似合うからである。
上記の処方において、炭素数14〜28の脂肪酸の割合を0〜1.00重量%の範囲内で変更したサンプルを準備した。
・参考例1A:炭素数14〜28の脂肪酸を配合せず(配合量が0%)
・参考例1B:炭素数14〜28の脂肪酸を0.05重量%配合
・参考例1C:炭素数14〜28の脂肪酸を0.50重量%配合
・参考例1D:炭素数14〜28の脂肪酸を1.00重量%配合
市販の著名なトリートメント(その全成分はインターネットでも公開されている)である下記のサンプル1〜3を準備した。
・サンプル1:A社販売のダメージ毛リペア用のエッセンス
・サンプル2:B社販売のダメージ毛ケア用のコンディショナー
・サンプル3:C社販売のダメージ毛用のコンディショナー
市販のヒト白髪処理毛(ブリーチ(漂白)処理品)を用いて、重さ2g、長さ25cmの毛束を多数作製した。ついで、それらの毛束につきシャンプーを用いて洗浄を行ってから、軽く拭き取りを行った後、自然乾燥させて、試験用の毛束となした。
上記で準備した試験用の毛束に対して、上述の比較例のサンプル1〜3のトリートメントを充分量塗布し、40℃の温水にて洗い流した。その後、タオルドライし、さらに自然乾燥させた。
また、上記で準備した試験用の毛束に対して、上述の参考例1A〜1Dのサンプルを適用した。このときには、灯芯(2)に点火して容器(3)の内部の組成物(1)を溶融、流動化させたものを上記で準備した試験用の毛束に対して塗布し、放冷した。
上記処理を行った毛束につきその広がり幅を測定し、その広がり幅の度合いで「髪のまとまり感」を判定した。
サンプル1・・・広がり幅8cm
サンプル2・・・広がり幅7cm
サンプル3・・・広がり幅6cm
参考例1A・・・広がり幅3cm
参考例1B・・・広がり幅3cm
参考例1C・・・広がり幅2cm
参考例1D・・・広がり幅2cm
上記のように、市販のトリートメントを用いたときの広がり幅が、現在のトリートメント法の先端技術を示す水準であると思われる。
参考例1A〜1Dは、トリートメント法とは「適用手段」が違うので直接的な対比はできないが、「髪のまとまり感」の点で好ましい結果が得られることがわかる。
すなわち、テオブロマグランジフロルム種子脂を主成分(参考例1A〜1Dにおいては約86〜87重量%)とする組成物(1)を用いたキャンドル型のヘアケア用品(つまり、火を使って直接的に加熱溶融することにより流動化させて毛髪に適用する使い方をするヘアケア用品)は、従来のヘアケア製品(トリートメント)とは別の範疇の製品であるということができる。
そして、このキャンドル型のヘアケア用品について、炭素数14〜28の脂肪酸の使用やその割合についても留意すれば、上記の試験結果の参考例1Cや1Dのように、さらに好ましい結果が得られることがわかる。
上記参考例1の組成物(1)の処方において、テオブロマグランジフロルム種子脂の割合を「50重量%」、「40重量%」、「30重量%」、「10重量%」、「5重量%」に減じ、その減じた分を各種の油脂、ワックス、オイルで補う試験も行った。
しかしながら、キャンドル型にすること自体が困難または不可能になったり、キャンドル型にすること自体は可能でも上記の実施例1に比してヘアケアについての性能が明らかに劣る結果しか得られなかった。
灯芯(2)として、巻き棒に和紙を筒巻き(胴巻き)により巻き付け、その上にイグサの茎から抜き出した白色の髄の3,4本を隙間なく巻き上げた後、さらにその上に真綿を薄く引き伸ばして巻き付け、ついで巻き付けた積層体を巻き棒から抜き取ることにより作製した外径が約5mmの和芯Aを準備した。
また、灯芯(2)として、イグサの茎から髄を抜き出した中空の筒体に和紙を筒巻き(胴巻き)により巻き付けることにより作製した外径が約5mmの和芯Bを準備した。
このヘアケア用品は、容器(3)内の灯芯(2)に点火したときの雰囲気が、参考例1の場合よりも和風の印象(イメージ)を与えるものであった。
また、このヘアケア用品は、組成物(1)の方がまだ残っているのに灯芯(2)の方が先に燃え尽きてしまう事態(つまり組成物(1)が無駄になってしまう事態)を生じないものであった。
図2は、本発明の火による間接加熱型のヘアケア用品の一例を模式的に示した分解図である。
市販の茶香炉に準じたセット、すなわち、側壁に窓を有するほぼ円筒状で底付きの香炉状のハウジング(5)と、ロウソク(キャンドル)とそれを収容する皿とからなる加熱手段(4)と、小皿状の容器(3)(茶香炉の場合にはここに茶葉を収容する)とからなるセットを準備した。小皿状の容器(3)は、円筒状のハウジング(5)の上端の開口部に載置する使い方をするものである。
(2)…灯芯、
(3)…容器、
(3p)…注ぎ出し口、
(4)…加熱手段、
(5)…ハウジング
Claims (1)
- テオブロマグランジフロルム種子脂を主成分とする常温で固体の組成物(1)と、
その組成物(1)を収容する容器(3)と、
その組成物(1)を収容した容器(3)を外部から火で加熱することにより該容器(3) 内の組成物(1)を溶融かつ流動化するための加熱手段(4)と、
それら各部材を収容するための香炉状のハウジング(5)とからなること、
そして、前記の組成物(1)に占めるテオブロマグランジフロルム種子脂の割合が60重 量%以上であること、
を特徴とする火による間接加熱型のヘアケア用品。
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