本発明の実施形態を添付図面を参照してさらに説明する。複数の図において同様の構造には同じ参照符号を付す。図面は必ずしも等縮尺である必要はなく、本発明の実施形態の原理を説明することに重点を置くものである。
図面は本発明の実施形態を説明しているが、図示以外の実施形態も言及しているように考えるべきである。ここでの開示は、表示のための説明的な実施形態を提示しているだけで限定するものではない。本発明の実施形態の原理の範囲と精神に属する多数の他の変形や実施形態が可能である。
ここで開示される実施形態は、光学技術の分野に関し、より詳細には、ナノスケール共金属構造を用いた光操作の装置と方法に関する。ナノスケール共金属構造の製造方法も開示する。リダイレクト(入出力先変更)、オン・オフの切り換え、又は光の操作、特に、可視光の操作等を制御できるナノスケール光学装置は、電子工学、光学、及び電気光学等の用途において有用である。
次に、離散型ナノスケール光学の基本的な要素について説明する。ナノスケール共金属構造は、ナノスケールでの電磁放射を操作するのに利用される。ナノスケール共金属構造は共軸または共平面であってもよい。ナノスケール共金属構造は種々の放射線回収機構を用いて利用することができる。ナノスケール共金属構成は放射を分割及び結合することができる。ナノスケール共金属構造に基づくナノ媒体の新しい概念についても開示する。ナノ媒体は媒体の一方側からの放射を他方側に媒介する。ナノスケール共金属構造の充填として電圧依存型媒体を採用することにより、媒介された放射を制御するとともに、放射の切り換え、走査及びパターニングが可能となる。
ナノスケール共軸ワイヤ又はナノ共軸は、ナノスケール上への電磁放射を操作するのに使用される。
以下の定義は、ここで開示の実施形態の様々な態様と特徴を説明するのに使用するものである。
本明細書で言及されるように、「カーボンナノチューブ」、「ナノチューブ」、「ナノワイヤ」、「ナノファイバ」および「ナノロッド」は置換可能に使用される。特に、ナノ構造を有する材料はカーボンである必要はない。
本明細書で言及されるように、「ナノスケール」は、約5000ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)未満の距離と特徴を指す。
本明細書で言及されるように、「単層カーボンナノチューブ」(SWCNT)は、円柱状に巻かれた1枚のグラフェンシートを含む。「2層カーボンナノチューブ」(DWCNT)は、平行な2枚のグラフェンシートを含み、複数のシート(通常、約3〜約30枚)を含むものが「多層カーボンナノチューブ」(MWCNT)である。ここで開示の共軸ナノ構造用には、MWCNTは構造的に特にグラフィック(即ち、結晶性graphene)である必要はなく、線維質であってもよい。
本明細書で言及されるように、「単心共軸送電線」(SCCTL)は、中心に1つのナノチューブを有する。「2心共軸送電線」(DCCTL)は中心方向に2つのナノチューブを有する。
本明細書で言及されるように、CNTは、個々の細管の縦軸が互いに略平行な面で配向されるように「整列」されている。
本明細書で言及されるように、「細管」は個々のCNTである。
本明細書で使用される用語「直線CNT」は、個々のCNT細管の表面から直線軸に沿って生じる分岐を含まないCNTを指す。
ここで使用する用語「導体」は導電材料のことを指す。導体は金属材または非金属材でもよい。
本明細書で使用される用語「アレイ」は、互いに近接して基板材料に装着される複数のCNT細管またはその他のナノワイヤ等を指す。
本明細書で言及されるように、「ナノスケール共軸線」は、複数の同心層を含むナノスケール共軸ワイヤを指す。一実施形態では、ナノスケール共軸線は3つの同心層すなわち内側導体、コアの周囲の光起電被覆、および外側導体を有する。共軸線内の電磁エネルギーの伝送は波長に依存せず、横電磁(TEM)モードで生じる。一実施形態では、内側導体は金属コアである。一実施形態では、外側導体は金属遮蔽材である。
本明細書で言及されるように、「ナノスケール共平面線」は、複数の平行層を含むナノスケール共平面構造を指す。一実施形態では、ナノスケール共平面線は、3つの平行層すなわち2つの金属導体とその導体間の光起電被覆とを有する。共平面線内の電磁エネルギーの伝送は波長に依存せず、横電磁(TEM)モードで生じる。
本明細書で言及されるように、「横電磁(TEM)」は、電場と磁場の両方が伝播方向に直交する送電線内の電磁モードを指す。その他の可能なモードは、電場のみが伝播方向に直交する横電場(TE)と磁場のみが伝播方向に直交する横磁場(TM)とを含むがそれらに限定されない。
本明細書で言及されるように、「触媒遷移金属」は、いかなる遷移金属、遷移金属合金、またはその混合物であってもよい。触媒遷移金属の例としては、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、金(Au)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、およびイリジウム(Ir)を含むがそれらに限定されない。一実施形態では、触媒遷移金属はニッケル(Ni)を含む。一実施形態では、触媒遷移金属は鉄(Fe)を含む。一実施形態では、触媒遷移金属はコバルト(Co)を含む。
本明細書で言及されるように、「触媒遷移金属合金」はいかなる遷移金属合金であってもよい。好ましくは、触媒遷移金属合金は、2以上の遷移金属の均一混合物または固溶体である。触媒遷移金属合金の例は、ニッケル/金(Ni/Au)合金、ニッケル/クロム(Ni/Cr)合金、鉄/クロム(Fe/Cr)合金、およびコバルト/鉄(Co/Fe)合金を含むがこれらに限定されない。
用語「ナノチューブ」、「ナノワイヤ」、「ナノロッド」、「ナノ結晶」、「ナノ粒子」、および「ナノ構造」は、本明細書で置換可能に使用される。これらの用語は、数ナノメートル(nm)から約数ミクロンまでの範囲で、たとえば、最大寸法によって特徴付けられるサイズの材料構造を指す。高度に対称的な構造が生成される用途では、サイズ(最大寸法)は数十ミクロンもの大きさであり得る。
用語「CVD」は化学蒸着を指す。CVDでは、化学物質のガス混合物が高温で分離される(たとえば、CO2がCとO2に)。これはCVDの「CV」の部分である。その後、遊離された分子の一部を近くの基板に蒸着させ(CVDの「D」)、残りを流出させてよい。CVD法の例は、「プラズマ強化化学蒸着」(PECVD)、「熱フィラメント化学蒸着」(HFCVD)、および「シンクロトロン放射化学蒸着」(SRCVD)を含むがこれらに限定されない。
本明細書で言及されるように、「光信号」は、ガンマ線、X線、紫外光、可視光、赤外線、マイクロ波、電波(ULF、VLF、LF、MF、HF、長、短、HAM、VHF、UHF、SHF、EHF)、宇宙マイクロ波背景放射線、およびその他の形態の電磁スペクトル放射を含む、任意の電磁放射パルスを指す。
本発明の実施形態は、概して、ナノスケール光学装置を製造するためのナノスケール共金属線の利用に関する。ナノスケール光学装置は、上面と下面を有する金属膜と複数の共金属構造とから成る多機能ナノ複合材料である。ナノスケール共軸線は、誘電体材料が充填され、中心に同心金属コアを有する金属シリンダを備える。各ナノスケール共軸線は、膜表面を越えて延在する中央コアと、膜内に埋め込まれた部分とを有することができる。ナノスケール共平面線は、光起電性材料を充填した介在空隙を有する金属壁を備える。各ナノスケール共平面線は、膜表面を越えて延在する壁と膜内に埋め込まれた部分とを有することができる。
共金属構造は、横電磁(TEM)波が2つの金属間の空隙で効率的に伝播されるように、2つ以上だが通常2つの金属面が密接する構造である。金属またはその表面は、同じまたは異なる金属材料で構成することができる。これらの金属のいくつかは、誘導放射線を透過させることができる。共金属伝送線は、伝播の他のモード、たとえば、横電場(TE)または横磁場(TM)モードも容認し得る。共金属構造の従来例は共軸ワイヤまたはケーブルである。ナノスケール共金属構造は、共金属構造の2つの金属間の分離距離がナノスケールであり、よってナノスケールが約1〜約数千ナノメートルの構造である。ナノスケール共金属構造の2つの主要例は、ナノスケール共軸ワイヤとナノスケール共平面送電線である。これらの共金属構造の両方およびその変形は、波長が金属の分離距離(すなわち、サブ波長伝播)よりも小さい波を含む波をTEMモードで伝送することができる。固定長共金属構造は定在波を可能とし、放射線共振器として機能する。ナノスケール寸法により、かかる波は、可視スペクトル内およびその近傍、すなわち、紫外線(約200nm〜約400nm)から赤外線(約800nm〜約5000nm)の波を含む。
本発明の実施形態は、導電性媒体と、誘電体活性媒体を充填したナノスケール共軸線に整合されたナノアンテナインピーダンスを含む基本ユニットを用いることによって、光子と電荷キャリアの採取効率を向上させる。ナノアンテナが効率的な光収集を実現する一方、ナノスケール共金属部は収集された放射線を捕集し、誘電体が光起電性の場合は、電子−正孔ペアへの効率的な変換を保証する。ナノスケール共軸の実施形態に関しては、共軸の対称性は、電磁放射のTEMモードを伝えるのに効率的であるため、光子と電荷キャリアの両方について採取効率を高める。ナノスケール共軸線長は高い光子採取を確保するため数ミクロン長にすることができ、ナノスケール共軸線幅は内部電極と外部電極間の高いキャリア採取を実現するのに十分なほどに直径を容易に小さくすることができる。共軸線は、サブ波長伝播、ひいては電極間の非常に小さな距離を可能にする。実際に、電極間の距離は、光伝播(すなわちナノスケール)を阻害せずにキャリア拡散長より小さくてよい。ナノスケール共平面の実施形態も電磁放射のTEMモードを伝えるのに効率的であり、ゆえに光子と電荷キャリアの両方について高い採取効率をもたらす。
本発明の実施形態は、横電磁(TEM)伝送を可能にする任意の送電線とともに機能する。かかる線は、共軸送電線(すなわち、単心の共軸線)、多心共軸送電線(多心共軸)、ストリップ線路、および共平面線を含むが、これらに限定されない。ストリップ線路は、誘電体の膜によって分離される2つの平坦な平行金属電極(ストリップ)を有する送電線である。各電極の幅Lは照射波長より大きい。電極は距離dだけ離れており、その距離は照射波長より小さいことがある。一実施形態では、複数のコア(多心)を有するナノスケール共軸線は、光子と電荷キャリアの両方について高い採取効率をもたらすために使用することができる。一実施形態では、ナノストリップ線路(すなわち、ナノスケールでdの可視光用のストリップ線路)は、光子と電荷キャリアの両方について高い採取効率をもたらす。
アンテナは外部共振器である。本発明の実施形態のナノアンテナは、大きなアスペクト比を有する幅広い共振器であり、すなわち、長さlが径dよりもずっと大きく、たとえば、l>3dである。ナノアンテナのバンド幅は、太陽光スペクトル全体を覆うように同調することができる。本明細書に記載のナノアンテナは従来のアンテナの方向特性を有し、従来の無線技術が可視周波数範囲でのナノスケール光学システムに適用されることを立証する。
本発明の実施形態のシステム性能は、高い材料および設置コストなどの欠点なしでc−Siの性能に匹敵する。本発明の実施形態のシステムは、さらに他の改良を可能にする。多層方法では、光子エネルギーは半導体バンドギャップに整合させて、光子損失を抑制し、効率をさらに向上させることができる。
図1Aは、複数のナノスケール共軸構造を含むナノスケール光学装置100の概略図を示す。ナノスケール共軸構造は、インピーダンス整合アンテナ110と誘電体材料180で被覆された共軸部分115とを有する内側導体120を含む。ナノスケール光学装置100は基板190によって支持される。内側導体120は、光学ナノアンテナ110を形成するナノスケール共軸構造を越えて延在する。外側導体160は、共軸部分115の外部被覆材である。複数のナノスケール共軸構造は、導電性マトリックス140に埋め込まれる。ナノスケール光学装置は本発明の実施形態により製造される。
内側導体120は金属コアであってもよい。内側導体の金属の例は、カーボンファイバ、カーボンナノチューブ、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、またはクロム(Cr)などの純遷移金属、ステンレス鋼(Fe/C/Cr/Ni)またはアルミニウム合金(Al/Mn/Zn)などの合金、および金属ポリマーを含むが、これらに限定されない。その他の内部導体は、高ドープ半導体、および半金属(無視できるほど小さなバンドギャップの金属、たとえば、グラファイト)である。当業者であれば、内側導体が当該技術において公知のその他の導電性材料であってもよく、本発明の実施形態の精神と範囲に含まれることを認識するであろう。
誘電体材料180は内側導体120の回りに均一に形成してもよく、又は、内側導体120を非均一に取り巻いてもよい。一実施形態では、誘電体材料は空気又は真空であってもよい。光を移動又は操作する実施形態では、誘電体材料は光起電性とすべきではない。光を電気に変換して光の運動をさせない実施形態では、誘電体材料は光起電性の誘電体であってもよい。この場合、光起電性材料は、可視スペクトル内の光の吸収を最大化するバンドギャップを有する。光起電性材料の例は、シリコン(Si)、テルル化カドミウム(CdTe)、リン化ガリウムインジウム(InGaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、ゲルマニウム(Ge)、Cu(InGa)Se、GaP、CdS、アンチモン化インジウム(InSb)、テルル化鉛(PbTe)、Inl−xGaxN、有機半導体(たとえば、フタロシアニン銅(CuPc))、誘電体、および当業者にとって公知の類似の材料を含むが、これらに限定されない。光起電性材料は、結晶質(肉眼で見える規模の原子の周期的配列)、多結晶質(顕微鏡でしか見えない規模の原子の周期的配列)、または非晶質(肉眼で見える規模の原子の非周期的配列)のいずれでもあり得る。当業者であれば、光起電性材料は、可視スペクトル内の光の吸収を最大にするようなバンドギャップを有する、当業者に公知のその他の材料でもよく、本発明の実施形態の精神と範囲に含まれることを認識するであろう。
外側導体160は金属であってもよい。よって、外側導体160は、金属円柱の形状を取ってよい。外側導体の例は、カーボンファイバ、カーボンナノチューブ、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、またはクロム(Cr)などの純遷移金属、ステンレス鋼(Fe/C/Cr/Ni)またはアルミニウム合金(Al/Mn/Zn)などの合金、および金属ポリマーを含むが、これらに限定されない。その他の内部導体は、高ドープ半導体、および半金属(無視できるほど小さなバンドギャップの金属、たとえば、グラファイト)である。当業者であれば、外側導体は当該技術において公知のその他の導電性材料であってもよく、これらは本発明の実施形態の精神と範囲に含まれることを認識するであろう。
図1Bは、図1Aのナノスケール共軸太陽電池の上面図である。図1Bでは、内側導体120の直径は2rで、外側導体160の直径は2Rである。当業者であれば、直径は変動させることができ、本発明の実施形態の精神と範囲に含まれることを認識するであろう。
図2A、図2B、および図2Cはそれぞれ、整列カーボンナノチューブの周囲に据えられたナノスケール共軸送電線の概略図および例示の図である。図2A、図2B、および図2Cは、複数のナノスケール共軸構造を有するアレイから選択された単一のナノスケール共軸構造を示す。それらの概略図は、ナノスケール光学装置を製造する主要なステップを示す。例示の図は、サンプル表面に対して30度の角度で走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて得られる。
図2Aは、整列カーボンナノチューブの概略図および例示の図である。プラズマ強化化学蒸着(PECVD)法が、ニッケル触媒を用いて平均約5−6μm長の縦に整列された多層直線カーボンナノチューブを成長させるために採用された(図2A)。触媒は、ガラス基板の上面にスパッタされた薄クロム層(約10nm)上に電着された。
図2Bは、誘電体材料で被覆された後の整列カーボンナノチューブの概略図および例示の図である。ナノチューブは、アルミニウム酸化物(Al2O3)の誘電体層で被覆された。誘電体層の厚さは約100nm〜約150nm以上である。
図2Cは、誘電体材料と外側導電性材料で被覆された後の整列カーボンナノチューブの概略図および例示の図である。ナノチューブは、外側導体である約100nm〜約150nm厚のクロム層でスパッタされた。一実施形態では、外側導体は150nmより厚い。
図3は、整列カーボンナノチューブの周囲に据えられたナノスケール共軸送電線のアレイを示す。アレイは、基板190上に均一にあるいはランダムに配分されたナノスケール共軸送電線を有してよい。ナノスケール共軸送電線は、基板190上に列で、または不均等に配列されてよい。基板190は透明であってよい。基板190は、ポリマー、ガラス、セラミック材料、カーボンファイバ、ガラスファイバ、またはその組み合わせから構成されてよい。当業者であれば、基板は当該技術において公知のその他の材料であってもよく、本発明の実施形態の精神と範囲に含まれることを認識するであろう。
縦に整列された導体(たとえば、多層カーボンナノチューブまたはその他のナノワイヤ/ナノファイバ)のアレイは、成長させられるか又は基板に装着される。次に、導体は適切な誘電体又は光起電性材料で被覆される。次に、導体は外側導体として機能する金属層で被覆される。
ナノスケール共軸送電線のアレイは、(約10nmの)薄クロム層で被覆されたガラス基板上で成長する縦に整列されたカーボンナノチューブを含む。この層上で、ナノチューブのPECVD成長のためのニッケル触媒が電気化学的に蒸着された。次に、ナノチューブが150nmのアルミニウム酸化物で被覆され、続いて100nmのクロムで被覆された。ナノスケール共軸のアレイ全体が、スピンオンガラス(SOG)で充填された。このスピンオンガラスは、アレイ機能に影響を及ぼさないが、ナノスケール共軸の上部を機械的に研磨することを可能にする。このようにして、ナノスケール共軸コアを露出させることができ、それらのコアは波長に依存しない送電線として機能することができる。図3Aは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって視認される露出共軸構造を示す。
図3Bは、走査型電子顕微鏡で視認される単一のナノスケール共軸送電線の断面図である。図3Bは、研磨および露出後のナノスケール共軸送電線の内部構造を示す。
図3Cは、シリコン(Si)、クロム(Cr)およびアルミニウム(Al)の濃度マッピングを示す共軸層の組成のエネルギー分散X線分光(EDS)分析を示す。図3Cの点線はEDS線走査の位置に相当し、3つの提示されているグラフは走査線に沿ったシリコン(Si)、クロム(Cr)、およびアルミニウム(Al)の濃度に対応する。図3Cは、シリコン濃度がシリカ(SiO2)を多量に含む領域で最も高いことを示す。同様に、最高クロム濃度はナノスケール共軸層の金属被覆の領域に存在し、最高アルミニウム濃度は誘電体被覆(Al2O3)の領域で観察される。
共金属構造は2個以上、典型的には2個、の近接した金属面を有し、横方向電磁波(TEM)は、両金属面間の空隙内を効率的に伝播する。TEMモードは、対応する波長が両金属面間の間隙よりも遙かに大きい場合でも、任意の周波数を有することができる。これはサブ波長伝播と呼ばれる。
両金属面間の空隙は誘電体材料又は層構造体で充填可能である。このような層構造は、(例えば、透明の導電性酸化物TCO)等の(モードに対して)透明の金属材の層を含むことができる。低周波(無線又は直流波)で伝導する透明金属は誘電体(非金属)膜にバイアスをかけるのに使用される。以下に示す図は共金属構造の種々の特定の幾何図形を示す物であるが、当業者であれば、その他種々の共金属構造も本発明の実施形態の範囲内であると認識するであろう。
図4は同心共軸の導波管(2電極共軸構成)を示す。同心共軸の導波管は2個の同心円筒金属電極(内側導体と外側導体)を有する。誘電体材料は内側導体と外側導体間に配置される。一実施形態では、内部コアは透明金属材で形成可能であり、このことは、導波管は共軸ではなく、TEMモードは伝播しないことを意味する。この実施形態では、TE(横向き電場)及び/又はTM(横向き磁場)モード(マルチモード動作)の伝播が、充分に大きな電極間空隙を有する構成で発生する。
図5は、2個の円筒金属電極(内側導体と外側導体)を有する非同心共軸導波管を示す。内側導体と外側導体間の間隙を誘電体材料で充填することができる。
図6は、複数の非同心金属電極(数個の内側導体と1つの外側導体)を有するマルチコア共軸導波管を示す。内側導体と外側導体間の間隙を誘電体材料で充填することができる。
図7は、複数の同心金属電極(コア導体、数個の内側導体と1つの外側導体)を有するマルチ金属同心共軸導波管を示す。内側導体と外側導体間の間隙を誘電体材料で充填することができる。内側金属円筒部のいくつかは透明金属材で形成できる。例えば、図7の内側導体は透明金属で形成可能である。この構造は光伝播モード(即ち、TEM)に対しては従来の2電極共軸構成(図4と同様)であるが、バイアス用電極が追加されている。十分に大きな電極間空隙に対しては、マルチモード伝播が発生し、ここでは、TE及びTMモードがTEMモード以外に伝播することができる。
図8は、第1の電気導体710と第2の電気導体720を含む平行共平面導波管700を示す。一実施形態では、第1および第2の電気導体710および720は、互いに略平行である。一実施形態では、第1および第2の電気導体710および720は金属電極である。誘電体材料は、電気導体710と720との間の空隙に配置することができる。電気導体710と720間の空隙には空気または真空を配置させることもできる。電気導体710と720間に介在する空隙に光起電性誘電体材料が充填されると、導波路機能は光エネルギーを光起電性誘電体材料に運び、そこで光エネルギーは電気エネルギーに変換される。
図9は、複数の電気導体710、720、730を含む多層平行共平面導波管701を示す。一実施形態では、複数の電気導体は互いに略平行である。一実施形態では、複数の電気導体は金属電極である。光起電性材料は、複数の電気導体間の空隙内に配置できる。複数の電気導体間の空隙には空気または真空を配置させることもできる。複数の電気導体間に介在する空隙に光起電性誘電体材料が充填されると、導波路機能は光エネルギーを光起電性誘電体材料に運ぶように機能し、そこで光エネルギーは電気エネルギーに変換される。
内部電気導体のいくつかは透明金属で製造できる。たとえば、図9の中間電気導体720は、透明金属で製造できる。光学伝播モード(すなわち、TEMモード)に関しては、この構造は平行共平面導波管701(図8と同様)だが、追加のバイアス電極を有する。多モード伝播、即ち、TE及びTMモードの伝播は、十分大きな電極間間隔で実現することができる。
図10は、第1の電気導体710と第2の電気導体720が平行でない非平行共平面導波管702を示す。一実施形態では、第1および第2の電気導体710および720は金属電極である。誘電体材料は、電気導体710および720間の空隙内に配置することができる。電気導体710および720間の空隙に空気または真空を配置させることもできる。電気導体710と720間の介在空間に光起電性誘電体材料を充填すると、導波路機能は光エネルギーを光起電性誘電体材料に運び、そこで光エネルギーは電気エネルギーに変換される。一実施形態では、非平行共平面導波管の多層バージョンは3以上の非平行電気導体を有する。
図11は任意の形状の共金属導波管703を示す。構造の形状は、伝播方向で不変である。一実施形態では、任意の形状の共金属導波管の多層バージョンは3以上の層を有する。誘電体材料180は、内側導体120と外側導体160の間の空隙に配置させることができる。内側導体120と外側導体160間の介在空間に光起電性誘電体材料180が充填されると、導波路機能は光エネルギーを光起電性材料180に運ぶように機能し、そこで光エネルギーは電気エネルギーに変換される。
内側導体、外側導体、および素子は、円形、正方形、矩形、円柱状、およびその他の対称および非対称の形状を含むがそれらに限定されない様々な形状を取ることができる。特定の形状は、アレイ上の素子の密度を増減させることによって効率性を増し得る。当業者であれば、内側導体、外側導体、および素子が任意の形状および任意の断面を取ることができ、本発明の精神と範囲に含まれることを認識するであろう。
光を操作するためのナノスケール光学装置は、それぞれが第1の電気導体と第2の電気導体との間に位置する誘電体材料を含む複数のナノスケール共金属構造を備える。
光起電性材料の厚さは、第1の電気導体と第2の電気導体間の分離距離である。一実施形態では、第1の電気導体と第2の電気導体間の分離距離はナノスケールで、光起電性材料の厚さはナノスケールである。光起電効果を通じて太陽エネルギーによって解放される電荷キャリア(電子と正孔)は、電流または電圧の形で採取されるナノスケール距離だけ移動すればよい。光起電性材料の厚さは、キャリア拡散長と略同じかそれ未満であるべきである。たとえば、非晶質シリコン(Si)では、キャリア拡散長は約100nmである。TEM伝播に関しては、共金属構造の電極間間隔全体は光起電性材料と略同じであるべきである。
十分大きな電極間間隔については、TE(横電場)および/またはTM(横磁場)モードがTEMモードに加えて伝播することのできる多モード伝播が発生する。多モード伝播は、内側導体と外側導体の間に位置する透明導体コア(内側導体)または透明導体(誘電体又は光起電性材料に加えて)で発生することができる。透明導体は光波長より小さいまたは大きい直径を有することができ、光はアンテナを介して間接的にだけではなく直接的に入射することができる。透明導体は、ナノスケール厚の誘電体又は光起電性材料を一面または両面に有してよい。多モード伝播に関しては、共金属構造内の電極間間隔全体は光波長と略等しくあるべきである。
一実施形態では、第1の電気導体の突出部は第2の電気導体を越えて延在し、アンテナとして機能する。基板は複数のナノスケール共金属構造を支持してよい。一実施形態では、透明導体は、第1の電気導体と第2の電気導体の間に位置する。
一実施形態では、複数の共金属構造が直列に接続される結果、総電圧が各共金属構造によって光生成される電圧の略合計となる。一実施形態では、複数の共金属構造が並列に接続された結果、総電圧が各共金属構造によって光生成された電圧の最小値と最大値との間になる。
光起電性共金属では、光エネルギーは光電半導体誘電体によって吸収され、半導体価電子帯の電子に移される。これにより電子のエネルギーが増大し、電子は半導体伝導帯へと引き上げられて、そこで移動可能になる。伝導帯へと引き上げられた各電子は、価電子帯に正孔を残していく。正孔は電子の負の電荷とは対照的な正に帯電した実体とみなすことができ、正孔も移動可能である。いったんこの電子−正孔ペアが生成されれば、電子と正孔はそれぞれ、金属電極へと移動させることによって採取されなければならない。移動は電場の影響下で起こり、正孔は電場の方向に移動して、電子は電場に逆らう方向に移動する。
光起電性共金属構造内の電場は、ショットキー障壁、p−n接合、およびp−i−n接合を含むいくつかの方法で生成することができる。ショットキー障壁は、ダイオードとしての使用に適した整流特性を有する金属半導体接合である。大部分の金属半導体接合は本質的にショットキー障壁を形成する。2つのショットキー障壁を、1つは共金属構造内の各金属半導体接合で形成することによって、適切な電場が確立される。p−n接合は、n型半導体とp型半導体を共に密接に接触させて結合することにより形成される。p−n接合も電場を確立する。p−i−n接合(p型半導体、真性半導体、n型半導体)は、p型半導体領域とn型半導体領域間に幅広の非ドープの真性半導体領域を有する接合ダイオードである。光を操作するためには、p領域とn領域は真性半導体領域よりも薄く、電場を確立するために存在する。
図12は、p−n接合を有するナノスケール光起電性共金属構造704を示す。p型光電半導体層770およびn型光電半導体層780は、いずれか一方が内側導体120に隣接し、他方が外側導体160に隣接するように入れ替えることができる。
図13は、p−i−n接合を有するナノスケール光起電性共金属構造705を示す。p型光電半導体層770およびn型光電半導体層780は、いずれか一方が内側導体120に隣接し、他方が外側導体160に隣接するように入れ替えることができる。真性半導体層775はp型層770とn型層780との間にある。
共軸ナノスケール光学装置は導電性コアを含む複数のナノスケール共軸構造を備え、各ナノスケール共軸構造が、誘電体材料に接触し、外側導体層で被覆される。
一実施形態では、誘電体材料は導電性コアの一部に接触する。基板は、複数のナノスケール共軸構造を支持してよい。一実施形態では、誘電体材料は光起電性材料であり、光電半導体から成るp−n接合を含む。一実施形態では、誘電体材料は光起電性材料であり、p型半導体層、真性光電半導体層、およびn型半導体層で形成されるp−i−n接合を含む。一実施形態では、透明導体は導電性コアと外側導体層との間に位置する。
一実施形態では、導電性コアの突出部は外側導体層を越えて延在し、アンテナとして機能する。
一実施形態では、複数の共軸構造が直列に接続される結果、総電圧が各共軸構造によって光生成される電圧の合計となる。一実施形態では、複数の共軸構造が並列に接続された結果、総電圧が各共金属構造によって光生成された電圧の最小値と最大値との間になる。
図14は、p−n接合を有するナノスケール光起電性共平面構造706を示す。p型光電半導体層770およびn型光電半導体層780は、いずれか一方が第1の導電層790に隣接し、他方が第2の導電層792に隣接するように入れ替えることができる。
図15は、p−i−n接合を有するナノスケール光起電性共平面構造707を示す。p型光電半導体層770とn型光電半導体層780は、いずれか一方が第1の導電層790に隣接し、他方が第2の導電層792に隣接するように入れ替えることができる。真性半導体層775はp型層770とn型層780との間に位置する。
共平面ナノスケール光学装置は、それぞれが第1の導電層と第2の導電層との間に位置する誘電体層を含む複数のナノスケール共平面構造を備え、光が第1の導電層と第2の導電層との間に位置する共平面構造に入射する。
一実施形態では、第1の導電層が第2の導電層に実質的に平行である。基板は、複数のナノスケール共平面構造を支持してよい。一実施形態では、第1の導電層と第2の導電層は、誘電体層を介してのみ電気的に接触する。一実施形態では、誘電体材料は光起電性であり、平面p−n接合を含む。一実施形態では、誘電体材料は光起電性であり、p型半導体層、真性光電半導体層、およびn型半導体層で形成される平面p−i−n接合を含む。一実施形態では、透明導体は第1の導電層と第2の導電層との間に位置する。
一実施形態では、第1の導電層の突出部は第2の導電層を越えて延在し、アンテナとして機能する。
一実施形態では、複数の光起電性共平面構造が直列に接続される結果、総電圧が各共平面構造によって光生成される電圧の合計となる。一実施形態では、複数の光起電性共平面構造が並列に接続された結果、総電圧が各共金属構造によって光生成された電圧の最小値と最大値との間になる。
図16はナノスケール共平面構造708の側面図である。本実施形態では、第2の金属796は2つの第1の金属794の間に位置し、光起電性材料180は第1の金属794と第2の金属796との間に位置する。複数の第1の金属794は互いに平行であってもよいし、角度を持っていてもよい。第2の金属796と第1の金属794は、互いに平行であってもよいし、角度を持っていてもよい。第2の金属796は、上部導体としての役割も果たす。誘電体材料180は、本明細書に記載される、あるいは当該技術において公知の任意の光起電性又は誘電体材料、p−n接合構造、またはp−i−n接合構造であってもよい。基板が導電性と光透過性を有するとき、光エネルギーは下から光起電性材料180に達し、そこでナノスケール共平面構造において電気エネルギーに変換される。
共金属構造に対する外部放射の結合効率は、幾何学的構造と電磁動作モードに依存する。いくつかの共金属構造、例えば、図8−10及び図14−16に示す共平面構造は、波長よりも遙かに小さな内側電極の離間に対してさえ、配列構成なしで放射に結合する。ナノスケール共軸線などの他の構造では、波長以上の充分に大きな外径を必要としない構成である。内側電極通路が放射波長(即ち、TEMモードのみ伝播できる)よりも遙かに小さい場合、アンテナ等の特別な構成が必要となり得る。
本実施形態は、アンテナを使用しないで、ナノスケール共金属構造を外部放射に結合させることが可能となる。アンテナなしでの結合により製造の必要部品を軽減し、製造工程に起因する表面粗さを所望の放射・集光が可能となるようにする。更に、ここで記載のアンテナなしの実施形態によれば、ナノスケール共金属構造は、可視領域内の波長を含む特定の離散波長帯域と同調可能となる。
図17は、外側導体の径がナノスケール共金属構造の端部側に向かって漸増する漸変型ナノスケール共金属構造を有するナノスケール光学装置を示す。漸変型ナノスケール共金属構造では、外側導体の径が外部放射の端部結合側に向かって大きくなっている。漸変型ナノスケール共金属構造によれば、光子の回収をさらに増大することができる。漸変型ホーン形状部は、限定するものではないが、放射状、回転楕円状、直線状、放射状に傾斜した壁部、円錐状壁部、又はマイクロ波技術で公知のその他の形状であっても良い。
図18は、ナノスケール共金属構造の周囲の外側導体の凹状窪みに集光器を有するナノスケール共金属構造のアレイの断面図である。基板は可撓性である。一実施形態では、基板190はアルミニウム(Al)箔、またはその他の可撓性金属材料(銅、カーボンファイバ、鋼、および類似の材料)である。基板は湿式化学方法および電気化学方法または従来の真空蒸着技術(たとえば、スパッタリング、蒸発、および類似の技術)を用いて、触媒粒子(たとえば、Fe、Ni、Co)で被覆される。次に、ナノチューブである内部導体120が、本明細書に記載の技術(たとえば、CVD、PECVD、および類似の技術)を用いて成長させられ、基板領域が誘電体層170を形成する露出金属基板のみに影響を及ぼす酸素にさらされる。半導体材料180の薄膜は従来の蒸着技術(たとえば、CVDおよび類似の技術)を用いて成長させられる。最後に、基板領域が、誘電体被覆180に対して適切な湿潤特性を有する軟金属層160で被覆されて、集光器185が形成される。集光器185は、被覆された内部導体120に隣接する凹状メニスカスである。一実施形態では、金属粉末または液体がコア間の間隔の充填に使用されて、その後、熱処理されて集光器185を形成する。各ナノスケール共金属構造周囲の凹状メニスカス領域は集光器185としての役割を果たし、追加アンテナがナノアンテナ自体よりもずっと大きい領域から光を回収する。集光器185は、非常に高い効率を維持しつつ、アレイ全体を少数のナノスケール共金属構造で製造することを可能にする。集光器185は、当該技術において公知の手法を用いてナノスケール共金属構造のアレイに単に追加することができる。
一実施形態では、集光器185は、半導体塗布されたナノスケール共軸コアの表面を低湿潤させる導電性媒体内で自己形成する。低湿潤金属媒体(たとえば、金属粉末または金属粒子を含む液体)は外側導体160として蒸着され、熱処理は湿潤角、すなわち、集光器185の曲率を制御するのに使用される。これは集光器185に各ナノスケール共軸コアの周りの凸状窪みを形成する。
図19は粗い端部のナノスケール共金属構造を有するナノスケール呼応学装置を示すもので、外側導体の端部がギザギザの切り込み形状、又は(例えば、のこぎり歯形状、連続した半円形状の切断面、その他の当業者に公知の形状)等の周期的に変化する形状とすることができる。切り込みの深さは放射波長の規模とすべきである。
図20はリング状の切り込みのあるナノスケール共金属構造を有するナノスケール光学装置を示すもので、外側導体の上部が外側導体の他の部分と完全に又は部分的に分離された構成である。
図21は共軸の端部に隣接した2個の円錐形状のある二重円錐形状のナノスケール共金属構造を有するナノスケール光学装置を示すもので、上部側の円錐体は内側導体に装着され、下部側の円錐体は外側導体に装着されている。
図22はホーン体内部で終端するループ形状のナノスケール共金属構造を有するナノスケール光学装置を示す。ループ形状のナノスケール共金属構造では、内側導体がループ形状であり、必須ではないが、ホーン体の側壁に装着してもよい。
ここで開示する実施形態は、ナノ集光器、ナノ受光器、ビームスプリッタ及びカプラである。
図23は円板型集光器がナノスケール共金属構造に係合した構成のナノスケール光学装置を示す。円板型集光器はナノスケール共金属構造の内側導体に装着されている。
図24は蝶ネクタイ型集光器がナノスケール共金属構造に係合した構成のナノスケール光学装置を示す。蝶ネクタイ型集光器はナノスケール共金属構造の内側導体に装着されている。平面スパイラル形状、垂直スパイラル形状等、その他の形状の集光器もナノスケール共金属構造の内側導体に装着されて集光器及び/又は受光器として使用可能である。
図25はY字型接合ナノスケール共金属スプリッタ/連結器を有するナノスケール光学装置を示す。Y字型接合ナノスケール共金属スプリッタは、1つのナノスケール共金属構造からの信号を2個に分割、または2個の信号を1つの信号に圧縮する。Y字型接合ナノスケール共金属スプリッタは、1つのナノスケール共金属構造からの信号を複数個に分割、または複数個の信号を1つの信号に圧縮し、ナノスケール共金属連結器として動作する。
図26は共金属カプラを有するナノスケール光学装置を示す。複数のナノスケール共金属構造が連結されている。図26はストリップ線路を介して連結された3つのナノスケール共金属構造を示している。
ナノスケール光学装置を製造する方法は、基板上に複数のナノワイヤを準備するステップと、前記複数のナノワイヤを半導体材料で被覆するステップと、該半導体を導電性材料で被覆するステップと、を備える。上記方法により、金属・半導体・金属の共金属構造が生成される。
一実施形態では、基板上の複数のナノワイヤは基板に垂直に配向される。一実施形態では、基板上の複数のナノワイヤは基板に略直交する方向に配向される。一実施形態では、複数のナノワイヤは基板に非垂直に配置される。
一実施形態では、ナノワイヤはカーボンナノチューブである。この実施形態は、基板を触媒材で被覆するステップと、ナノスケール共金属構造の内部コアとして複数のカーボンナノチューブを基板上に成長させるステップと、基板を酸化するステップと、基板を半導体膜で被覆するステップと、ナノスケール共金属構造の半導体膜を湿潤するように金属媒体で充填するステップとを有する。
ナノスケール光学装置は、以下に概説する方法または当業者に公知の同様の方法を用いて作成することができる。アルミニウム(Al)箔等の可撓性又は非可撓性の基板は、(例えばニッケル等の)触媒材料を用いて、限定するものではないが、湿式化学蒸着、電気化学蒸着、CVD、スパッタリング、真空蒸着等の好適な任意の技法により被覆処理される。上記処理された基板はカーボンナノチューブの触媒成長のために用いられる。また別の態様では、基板は触媒材を使用しないで、内側導体及びナノスケール共金属構造のコアとしての任意の好適なナノロッド/ナノワイヤの電気蒸着用の電極として用いることもできる。カーボンナノチューブの成長は、CVDやPECVD及び同様の任意の好適な技法により実施することができる。ナノワイヤ又はナノチューブを蒸着又は成長させた後、基板の残りの露出表面、即ち、ナノワイヤ又はナノチューブのない領域を酸化させることで、基板と外側導体との間に誘電体層を形成することができる。また別の態様では、上記酸化工程は省略してもよい。それで、装置全体は、半導体層を用いて任意の好適な技法(例えば、CVD,電気化学蒸着や同様の技法)により被覆し、その結果、(例えば、スズ(Sn)粉末)の金属媒体を用いて充填又は被覆することができる。一実施形態では、金属媒体は、金属媒体とナノスケール共金属構造の外側導体との間が弱い湿潤接触となって、漸変する径の端部を形成するように金属媒体を選択し処理する必要がある。
光は光ファイバケーブル等の肉眼で見える巨視的な媒体を通って長距離を伝送することができるが、伝送媒体の径が光の波長よりも小さい場合は、光は通常は長距離を伝送できない。多くの用途では、サブ波長のナノスケール構造を通って光を伝播する必要がある。本実施形態で開示のナノスケール共金属構造は、このようなサブ波長の伝送を可能とするもので、可視光を含む光を超波長の距離にわたって操作することを可能とする。このように、本実施形態で開示のナノスケール共金属構造は、可視光のナノスケール操作に有用である。
本実施形態で開示のナノスケール共金属構造は、共軸ワイヤ、ナノ共軸及びナノ共平面の導波管等のナノスケール共金属構造を用いたナノメートル規模の構造において、可視光を順応的に制御することを可能とする。
本実施形態で開示のナノスケール共金属構造は、可視光をナノスケールで操作するのに有用である。一実施形態では、ナノスケール共金属構造は可視光の導波管である。共金属構造は、光の波長よりも遙かに大きな距離の光伝送することができる。ナノスケール共金属構造はTEMモードの伝播が可能であるので、該共金属構造の光の伝播方向に対して垂直方向の規模は光の波長よりも遙かに小さくできる。従って、ナノスケール共金属構造は、光電子技術の用途においてサブ波長の光導波管として使用される。例えば、共金属構造は非常に鋭角的に導波管を曲げることを可能とする。
一実施形態では、ナノスケール共金属構造は光スプリッタ又は光カプラである。Y字接合型ナノスケール共金属光スプリッタ及び/又は連結器の実施形態を図25に示す。ナノスケール共金属構造の底部から中央部の垂直分岐部に沿って伝播する光は2つの光波に分割され、各光波はスプリッタのナノスケール共金属構造の上部アームの一方に沿って伝播する。同様に、2個のアームに沿って下方に伝播する異なる複数の波長の2つの信号は、中央アームに沿って伝播する1つの信号波に結合される。ただし、当業者であれば、光スプリッタ/カプラは図25に示す以外の形状も可能であり、本発明の実施形態の精神と範囲に含まれることを理解するであろう。
一実施形態では、ナノスケール共金属構造は、遮光手段(光ブロッカー)である。露光時に黒くなる感光材料で充填されたナノスケール共金属構造は、光ブロッカーとして動作するであろう。電極間距離の小さいナノスケール共金属構造に対して、伝送された光の電場は強められ、感光材料の遮光作用を高める。
一実施形態では、ナノスケール共金属構造は光ミキサ(光混合手段)である。Y字接合ナノスケール共金属の光ミキサの一例を図25に示す。非線形光媒体で充填するとき、図25に示すY字接合ナノスケール共金属構造は光ミキサとして動作する。例えば、1つの波長の光波がスプリッタ機能のナノスケール共金属構造の上部左側のアームに入射し、異なる波長の第2の光波が上部右側のアームに入射する。上記複数の光波がナノスケール共金属構造の中心部で交差し、媒体の非線形作用により混合する。混合された光波は下側のアーム内に出力するであろう。ただし、当業者であれば、光ミキサは図25に示す以外の形状も可能であり、本発明の実施形態の精神と範囲に含まれることを理解するであろう。
一実施形態では、ナノスケール共金属構造は離散型光学装置である。(波長以下の)緻密な間隔で形成されたアレイを有するナノスケール共金属構造の薄膜材料は、(内部コアの延在するアンテナを備え)、該薄膜を貫通し、入射面光波を複数の部分波に分解し、各部分波はナノスケール共金属構造を通って伝播する。部分波は、一部球面波の形状で、(アンテナを介して)ナノスケール共金属構造から薄膜の他方側に出力する。ナノスケール共金属構造が理想的である限り、光波は(構成的に干渉して)光の平面波となり、最初の光波と同じ方向に伝播する。このように、ナノスケール共金属フィルムは透明のガラス板として動作する。
個々のナノスケール共金属構造を通過する光伝送は制御可能である。例えば、複数のナノスケール共金属構造が異なる長さを有する場合、出力部分波の位相は異なるであろう。制御時間の遅延もまた、ナノスケール共金属構造の内部をバイアスで誘電率が変化する媒体で充填することにより実現される。個々のナノスケール共金属構造を接触することは、部分波の位相を電気的に制御するのに利用される。一実施形態では、部分波の最終の干渉は、個々のナノスケール共金属構造の内部を、電気的バイアス又は磁気バイアスをかけた状態で高い導電性となる材料で充填することにより、個々のナノスケール共金属構造をスイッチオフとすることにより、制御することができ、ナノスケール共金属構造の電極を短くする。
個々のナノスケール共金属構造の伝播特性を制御できることにより、出力放射の種々のインターフェレンス特性を制御することが可能であり、離散型光学装置の基礎となる。離散型光学装置で提供された光の基本的な制御は、限定するものではないが、光合焦、光ビーム走査、及び当業者に公知の他の光操作等を含む多くの用途に利用される。
一実施形態では、ナノスケール共金属構造は光共振器として開示される。半波長の整数倍に等しい限定された長さを有することで、ナノスケール共金属構造の内部で光の定在波を発生することが可能となる。これにより、入射光のエネルギーの一部は共金属構造内部に閉じ込められる。このような共振動作は周波数フィルタを形成するのに利用される。
一実施形態では、ナノスケール共金属構造は、近距離場走査型光学顕微鏡(NSOM)を含むナノスケール光学顕微鏡用に利用される。近距離場走査型光学顕微鏡で使用されるナノスケール光学プローブは、上端と下端と本体を有する内側導体と、内側導体を周囲を取り巻く誘電体材料と、誘電体材料の周囲を取り巻く外側導体を含み、内側導体は、プローブの先端面が誘電体材料及び外側材料よりも長い構成である。「ナノスケール光学顕微鏡」は、2006年8月24日出願の米国特許出願番号11/509,519(代理人記録番号94505/012201)に開示され、ここでその全体内容を参照することによりここに導入する。
一実施形態では、ナノスケール共金属構造は光スイッチとして開示される。露光時に黒くなる感光材料で充填されたナノスケール共金属構造は、光で励起される光スイッチとして動作する。更なる光束をナノスケール共金属構造内に注入することで、感光材料の黒化を強化し、ナノスケール共金属構造を通過する光伝送をスイッチオフする。一実施形態では、バイアスがかけられた状態で導電性となる材料で充填されたナノスケール共金属構造は、光バイアスで励起される光スイッチとして動作する。導電性が高められた光バイアス励起光スイッチはナノスケール共金属構造の電極を短くする。「ナノスケールのオプチックスを用いた光スイッチの装置と方法」は、2006年8月24日出願の米国特許出願番号11/509,398(代理人記録番号94505/010301)に開示され、ここでその全体内容を参照することによりここに導入する。
一実施形態では、ナノスケール共金属構造はナノリソグラフィとして使用される。ナノ規模の分解能が可能な反拡大(de-magnifying)用のコンタクトレンズは、並列ではなく、膜の一方側に収束するようにワイヤ構成されたナノスケール共金属構造を有する離散型光薄膜を備えることにより、形成される。膜の照射側のナノスケール共金属構造間の分離は巨視的であるが、基板側ではナノ規模の微視的である。膜の巨視的照射面に投射された画像は部分波を介して基板側に転送され、画像の大きさは縮小される。それに応じて、画像の分解能が高められる。反拡大用レンズは接触様式で使用され、フォトレジストを露光する。「ナノスケール光学部品を用いたナノリソグラフィの装置及び方法」が、2006年8月24日出願の米国特許出願番号11/509,271(代理人記録番号94505−010501)に開示され、ここでその全体内容を参照することによりここに導入する。
一実施形態では、ナノスケール共金属構造は太陽電池として開示される。太陽電池は、太陽エネルギーを収集または吸収して、太陽エネルギーを電気、熱その他の有用な形態に変換する装置である。ナノスケール共金属構造で作成された媒体は、各ナノスケール共金属構造の内部が光起電性の誘電体の媒体で充填された場合に、太陽電池として機能する。更に、電極間分離が小さい(即ち、ナノ規模である)場合は、ナノスケール共金属構造の長手方向に高効率で維持されている光子の収集効率を下げることなく、効率的なキャリアの収集が達成される。「ナノ共軸構造を用いた太陽エネルギー変換のための装置及び方法」が、2006年4月10日出願の米国特許出願番号11/401,606に開示され、ここでその全体内容を参照することによりここに導入する。また、「ナノスケール共金属構造を用いた太陽エネルギー変換のための装置及び方法」が、2006年8月24日出願の米国特許出願番号11/509,269(代理人記録番号94505−010403)に開示され、ここでその全体内容を参照することによりここに導入する。
ナノスケール共金属構造は、伝送光変更器、画像エンコーダ、画像フィルタ、ナノスケールコレクタ、ナノスケール受信機、及びナノスケールカプラとしても使用され、これらは本発明の実施形態の精神と範囲内に含まれるものである。
本明細書で引用したすべての特許、特許出願、および公開された参考文献は、参照により全文を本明細書に組み込む。上記に開示した、およびその他の特徴と機能、またはその代替は、所望に組み合わせて多くのその他の様々なシステムまたは用途とすることができると理解される。現時点では予測不能または予期不能な様々な代替、修正、変形、または改良は、引き続き当業者によって行うことが可能であり、それらは添付の請求項に包含されることが意図される。