以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
また、以下の順序に従って本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
<1.第1の実施形態>
[1−1.ヘッドホンの外観例]
[1−2.ヘッドホンの外観例]
[1−3.信号処理部の機能構成]
[1−4.信号処理部の動作]
[1−5.信号処理部の変形例の構成]
[1−6.信号処理部の変形例の動作]
<2.第2の実施形態>
[2−1.信号処理部の構成]
[2−2.信号処理部の動作]
<3.第3の実施形態>
[3−1.信号処理部の構成]
[3−2.信号処理部の動作]
[3−3.ノイズ解析部の構成例]
<4.第4の実施形態>
[4−1.信号処理部の構成]
[4−2.信号処理部の動作]
<5.第5の実施形態>
[5−1.ヘッドホンの構成]
<6.その他>
<7.まとめ>
<1.第1の実施形態>
[1−1.ヘッドホンの外観例]
本発明の各実施形態に係る信号処理装置は、様々な形態に実施することが可能である。例えば、信号処理装置は、例えば、アウタイヤーヘッドホン・インナーイヤーヘッドホン・イヤホン・ヘッドセットなどのヘッドホンとして実施が可能である。また、他の信号処理装置の例としては、例えば、上記のヘッドホンに音声信号を提供する携帯電話・携帯プレーヤ・コンピュータ・PDA(Personal Data Assistance)等が挙げられる。また、これらの端末等で有る場合、信号処理装置は、その端末のDSP(Digital Singnal Processor)として実施することも可能である。さらに、本発明の各実施形態に係る信号処理装置は、他人の声や音を聞き取りやすくするために用いられる補聴器としても実施可能である。つまり、本発明の各実施形態は、ユーザに音声信号等を提供することが可能な様々な装置や端末等として実現することが可能である。しかしながら、本発明の各実施形態に係る信号処理装置の理解が容易になるように、この信号処理装置がヘッドホン1として実現された場合を例に挙げて以下では説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるヘッドホンの外観例について示す説明図である。以下、図1を用いて、本発明の第1の実施形態にかかるヘッドホンの外観について説明する。
本発明の第1の実施形態に係るヘッドホン1は、通常のヘッドホン等と同様に、外部の音楽再生装置等から音声信号を取得して、その音声信号を実際の音としてユーザに提供することが可能である。なお、音声信号が表す音声コンテンツは、例えば、音楽・ラジオ放送・テレビ放送・英会話などの教材・落語などの娯楽コンテンツ・ゲーム音・動画の音・コンピュータの操作音など、様々なものが挙げられ、特に限定されるものではない。
図1に示したヘッドホン1は、外部環境のノイズを低減して、ユーザに対して良好な楽曲再生環境を提供するノイズキャンセリングシステムが含まれている。外部環境のノイズを低減するために、ヘッドホン1には、ハウジング部5の外側または内側に、外部環境のノイズを収音するためのマイクが備えられている。
そして、ヘッドホン1に含まれるノイズキャンセリングシステムは、ノイズを低減させるためのノイズキャンセリング信号を生成する処理(以下「ノイズキャンセリング処理」とも称する)をデジタル処理で行うものである。ノイズキャンセリング処理をデジタル処理で実行することで、ヘッドホン1は様々な外部環境に合わせたノイズキャンセリングモードを搭載することが可能となる。様々な外部環境としては、例えば、通常の屋外、電車内、飛行機内等が挙げられる。そして、ヘッドホン1にノイズキャンセリングモードを複数搭載することで、ユーザは外部環境に応じてモードを切り替えることができ、外部環境に応じてノイズを効果的に低減させることができる。
このようにノイズキャンセリングモードが複数あると、ユーザは複数のモードから1つのモードを選択する必要がある。そのため、様々な外部環境に対応させるためにノイズキャンセリングモードの数が多くなればなるほど、ユーザの操作が煩雑になり、またユーザはどのモードを選択すれば良いのか判断に困ってしまう事態が考えられる。
従って、上述したように、一部のノイズキャンセリングシステムを搭載したヘッドホンには、ユーザがボタンを押すだけで周囲の騒音の状況を解析し、自動的に最適なノイズキャンセリングモードを選択する機能(最適モード選択機能)を搭載するものもある。しかし上述したように、従来の最適モード選択機能を搭載したノイズキャンセリングシステムには、騒音を解析している間は出力を止めなければならないという問題があった。さらに、従来の最適モード選択機能を搭載したノイズキャンセリングシステムには、周囲の騒音の状況が変わった際に、ユーザ自身が最適モード選択機能を実行させなければならないという問題もあった。
そこで、本実施形態にかかるヘッドホン1に含まれるノイズキャンセリングシステムは、ユーザがノイズキャンセリング機能を実行させている間は常に周囲の騒音の状況を解析し、周囲の騒音の状況に応じたモードを自動的に選択する。以下、周囲の騒音の状況に応じたモードを自動的に選択する機能を「最適モード全自動選択機能」とも称する。最適モード全自動選択機能が実行されている状態では、ノイズキャンセリングシステムは周囲の騒音の状況に応じたモードを自動的に選択し、当該モードに基づいてノイズキャンセリング処理を実行する。自動的に選択されたモードに基づいてノイズキャンセリング処理を実行することで、騒音の状況が変化した場合であっても、騒音を低減させた状態でユーザに音声コンテンツを提供することができる。
最適モード全自動選択機能を実行するには、騒音を収音するためのマイクが必要となる。かかるマイクは、ヘッドホンのハウジングの内部に設けられていてもよく、ハウジングの外部に設けられていてもよい。ハウジングの外部にマイクを設ける場合には、ハウジングの外側に直接設けてもよく、ハウジング以外の場所、例えばヘッドホンの左右のハウジングを繋げるバンド部分や、ヘッドホンの音量等を調節するためのコントロールボックスに設けてもよい。ただ、耳に近い位置の騒音を収音するには、耳に近い位置にマイクを備えることがより望ましい。また、騒音を収音するマイクは、1つであってもよく、2つであってもよい。しかし、ヘッドホンに装着されるマイクの位置と、通常の一般的な騒音が殆ど低域に存在することとを考慮すれば、マイクは1つだけであってもよい。
また、最適モード全自動選択機能を実行するには、ノイズキャンセリング処理を高速に実行できるための性能を備えるDSP(Digital Signal Proceccor)その他のプロセッサを用いることが望ましい。最適モード全自動選択機能を備えたヘッドホンにおいては、ヘッドホンと接続されている音楽再生装置から出力される音声信号に対する信号処理と、ノイズキャンセリング処理とを中断することなく、騒音の解析を常時実行するだけの処理速度が求められる。本実施形態にかかるヘッドホン1は、音声信号に対する信号処理及びノイズキャンセリング処理を、1つまたは2つ以上のDSPで実行する。2つ以上のDSPでこれらの処理を実行する場合には、各DSPは同じものであってもよく、異なるものであってもよい。異なるものを用いる場合には、ノイズキャンセリング処理に特化したDSPを用いても良い。このような構成を有することで、ヘッドホンと接続されている音楽再生装置から出力される音声信号に対する信号処理及びノイズキャンセリング処理に加え、マイクで収音した騒音の解析処理を同時に実行することが可能となる。
デジタル処理によるノイズキャンセリング処理では、このように必要十分の性能を備えるDSP等のプロセッサを用いることで、ノイズキャンセリングモードを複数搭載し、その中から最適なモードを選択する機能を実現することが出来る。しかし、単に最適なモードを選択するだけでは、あるモードから別のモードへ切り替える際に問題が生じる。それは、モード切替に伴う異音の発生という問題である。外部の環境が変化し、変化に伴いモードを自動的に切り替える度に異音が発生するのでは、ヘッドホンを装着するユーザに不快感を覚えさせることに繋がる。
そこで本実施形態では、ノイズキャンセリングモードを切り替える際に、切り替え前後のモードによるノイズキャンセリング処理によって生成される騒音を打ち消すための信号(ノイズキャンセリング信号)をクロスフェードさせることを特徴とする。ノイズキャンセリング信号をクロスフェードさせることで、モードの変化に伴う異音の発生を防ぎ、ユーザに対して快適な聴取環境を与えることができる。
以上、本発明の第1の実施形態にかかるヘッドホンの外観について説明した。次に、本発明の第1の実施形態にかかるヘッドホンの機能構成について説明する。
[1−2.ヘッドホンの外観例]
図2は、本発明の第1の実施形態にかかるヘッドホン1の機能構成について説明する説明図である。以下、図2を用いて本発明の第1の実施形態にかかるヘッドホン1の機能構成について説明する。
図2は、いわゆるフィードフォワード方式によって騒音をキャンセルするノイズキャンセリングシステムを含んだヘッドホン1の機能構成について示したものである。フィードフォワード方式は、耳に近い位置で騒音を収音し、収音した音を解析、およびユーザの鼓膜位置での騒音波形を予測し、騒音を打ち消す信号(逆位相波形)を生成する方式である。図2に示したように、本発明の第1の実施形態にかかるヘッドホン1は、マイク2と、スピーカ3と、ADC(Analog Digital Converter)10と、操作部20と、信号処理部30と、DAC(Digital Analog Converter)40と、パワーアンプ50と、を含んで構成される。
マイク2は、ユーザの耳に近いとされる位置に設けられ、ユーザの耳に近い位置の音を収音する。従って、マイク2は、耳に達しようとする外部の騒音を収音することになる。なお、ヘッドホン1のハウジング部5の内部で騒音が存在する原因としては、例えば、外部の騒音音源が例えばハウジング部5のイヤーパッドなどの隙間から音圧として漏れてきたり、ヘッドホン1の筐体が騒音音源の音圧を受けて振動し、その振動がハウジング部5の内部に伝達してきたりすることが挙げられる。
スピーカ3は音声を出力するものであり、ヘッドホン1が接続されている音楽再生装置から伝送される音声信号に基づいた音声を出力する。ヘッドホン1は、マイク2で収音して得られるノイズ信号から、外部の騒音成分を打ち消す特性を有する信号(ノイズキャンセリング信号)を生成し、ヘッドホン1が接続されている音楽再生装置から伝送される音声信号と合成してスピーカ3から出力する。このように、マイク2で収音した音から最適なノイズキャンセリング信号を予測しスピーカ3から出力するので、本方式はフィードフォワード方式と呼ばれる。
ADC10は、マイク2で収音された結果得られるノイズ信号をデジタル信号に変換するものである。ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号は信号処理部30に送られる。
操作部20は、ヘッドホン1に対するユーザの操作を受け付けるためのものである。ヘッドホンに対するユーザの操作としては、例えばヘッドホン1の電源のオン・オフ、スピーカ3から出力される音の音量の調整、ノイズキャンセリング機能のオン・オフであってもよい。さらに、ヘッドホンに対するユーザの操作としては、ノイズキャンセリング機能を有効にしている場合におけるノイズキャンセリングモードの選択、最適モード全自動選択機能のオン・オフ等であってもよい。操作部20を操作することにより生成される信号は、例えばマイクロコンピュータ(図示せず)に伝達され、マイクロコンピュータから必要に応じて信号処理部30に信号が伝達される。
信号処理部30は、ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号に対する信号処理を実行するものである。信号処理部30は、ノイズ信号を解析し、ノイズ信号を打ち消すノイズキャンセリング信号を生成する。また、信号処理部30にはヘッドホン1が接続されている音楽再生装置から伝送される音声信号も入力される。信号処理部30は、入力された音声信号に対する信号処理も実行する。信号処理部30は、例えば複数のDSPによって構成される。
DAC40は、信号処理部30から出力される信号をアナログ信号に変換するものである。DAC40でアナログ信号に変換された信号はパワーアンプ50に送られる。
パワーアンプ50は、DAC40でアナログ信号に変換された信号を増幅して出力するものである。パワーアンプ50で増幅された信号はスピーカ3に送られる。スピーカ3は、パワーアンプ50から供給される信号に応じて振動板(図示せず)が信号することで音声を出力する構成となっている。
以上、図2を用いて本発明の第1の実施形態にかかるヘッドホン1の機能構成について説明した。次に、本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30の構成について説明する。
[1−3.信号処理部の機能構成]
図3は、本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30の構成について示す説明図である。図3には、信号処理部30と併せてADC10についても図示している。以下、図3を用いて本発明の一実施形態にかかる信号処理部30の構成について説明する。
図3に示したように、本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30は、ノイズ解析部31と、ノイズキャンセリング部32と、クロスフェード部35と、加算部37と、を含んで構成される。
ノイズ解析部31は、ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号に対する解析処理を実行するものである。ノイズ解析部31での解析処理は、最適モード全自動選択機能が有効になっている間は、所定の間隔で常時実行されるものである。ノイズ解析部31は、例えばFFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)やBPF(Band Pass Filter;バンドパスフィルタ)によるノイズ信号の帯域分割等を行って、ノイズ信号の周波数特性解析を実行する。そして、周波数特性解析の結果に基づいて、ノイズ解析部31は最適なノイズキャンセリングモードを選択し、当該ノイズキャンセリングモードでのノイズキャンセリング処理を実行するようにノイズキャンセリング部32に指示する。
ノイズ解析部31によるノイズ信号に対する解析処理は、DSPによって実行されるようにしてもよい。本実施形態では、ノイズ解析部31によるノイズ信号に対する解析処理を実行するDSPをDSP Aとする。
ノイズキャンセリング部32は、ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号から、ヘッドホン1を装着するユーザの耳に達する外部の騒音を打ち消すための信号を生成するものである。具体的には、ノイズキャンセリング部32は、ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号に対し、所定のフィルタ処理を施して、ヘッドホン1を装着するユーザの耳に達する外部の騒音を打ち消すための信号を生成する。ノイズキャンセリング部32は、ノイズキャンセリング処理部33a、33bを含んで構成される。
ノイズキャンセリング処理部33a、33bは、本発明のフィルタ処理部の一例である。ノイズキャンセリング処理部33a、33bは、ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号に対し、所定のデジタルフィルタ処理を施して、ヘッドホン1を装着するユーザの耳に達する外部の騒音を打ち消すための信号を生成するものである。ノイズキャンセリング処理部33a、33bは、例えばFIR(Finite Impulse Response)フィルタで構成されていてもよく、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタで構成されていてもよい。
ノイズキャンセリング処理部33a、33bによるフィルタ処理は、DSPによって実行されるようにしてもよい。本実施形態では、ノイズキャンセリング処理部33aによるフィルタ処理を実行するDSPをDSP Bとし、ノイズキャンセリング処理部33bによるフィルタ処理を実行するDSPをDSP Cとする。
ノイズキャンセリング部32では、通常のノイズキャンセリング処理が実行中の場合には、DSP BまたはDSP Cのどちらかが稼動している。ノイズ解析部31によるノイズ信号に対する解析処理の結果、モードを切り替える必要が生じた場合には、稼働中ではないDSPに対して新しいモードに設定する。そして、今まで駆動していたDSPから、新しいモードが設定されたDSPへ切り替えることで、ノイズキャンセリング部32におけるノイズキャンセリングモードの切り替えを実現している。
ノイズキャンセリング処理部33a、33bは、ノイズ解析部31が選択した最適なノイズキャンセリングモードに応じて、フィルタ構成やフィルタ特性が可変的に設定される。本実施形態では、ノイズキャンセリング処理部33a、33bへ、予め、個々のノイズキャンセリングモードに応じた係数を保持させておく。図4は、ノイズキャンセリング処理部33a、33bが保持する係数の一例について示す説明図である。図4に示した例では、ノイズキャンセリング処理部33a、33bは、それぞれ同一のノイズキャンセリングモードに応じた係数A、B、Cを保持している。本実施形態では、ノイズキャンセリング処理部33aとノイズキャンセリング処理部33bとの間で係数を切り替えて、ノイズキャンセリング処理を実行する。このように、ノイズキャンセリング処理部33a、33bへ、予め同一の係数を持たせておくことにより、ノイズキャンセリング処理部33a、33bへ新たに係数を書き込む手間を省略することができる。
図5は、本発明の第1の実施形態にかかるヘッドホン1で設定可能なノイズキャンセリングモードごとのノイズ低減特性の一例について示す説明図である。図5では、図4にモードA、B、Cについてのノイズ低減特性の一例を図示している。このように、各ノイズキャンセリングモードは異なるノイズ低減特性を有している。そして、このようなノイズ低減特性を実現するための係数を、予めノイズキャンセリング処理部33a、33bへ保持させておく。
クロスフェード部35は、本発明の出力制御部の一例である。クロスフェード部35は、ノイズキャンセリングモードが切り替えられる際に、ノイズ解析部31からの指示に応じてノイズキャンセリング処理部33a、33bの出力をクロスフェードさせるためのものである。クロスフェード部35は、乗算部36a、36bを含んで構成される。乗算部36a、36bは、それぞれノイズキャンセリング処理部33a、33bの出力に対し、ノイズ解析部31からの指示に応じて、時間と共に変化する係数(ゲイン)を乗算する。乗算部36a、36bで乗算されたデータは加算部37に送られる。
加算部37は、乗算部36a、36bの出力を加算して出力するものである。加算部37の出力がノイズキャンセリング信号となり、DAC40に送られる。
以上、本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30の構成について説明した。次に、本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30の動作について説明する。
[1−4.信号処理部の動作]
図6は、本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30の動作について示す流れ図である。以下、図6を用いて、本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30の動作について説明する。
ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号が信号処理部30に送られると、ノイズ解析部31は、所定の周期でノイズ信号の解析を実行する(ステップS101)。ノイズ解析部31でノイズ信号の解析を実行すると、ノイズ解析部31は解析結果に応じて最適なノイズキャンセリングモードを1つ選択する(ステップS102)。
上記ステップS102でノイズ解析部31が最適なノイズキャンセリングモードを1つ選択すると、ノイズ解析部31はその選択したノイズキャンセリングモードへ変更する必要があるかどうかを判定する(ステップS103)。例えば、ノイズ解析部31で選択したノイズキャンセリングモードがモードAであり、現在稼動しているDSP B(ノイズキャンセリング処理部33a)のノイズキャンセリングモードもモードAである場合を考える。この場合には、ノイズ解析部31が選択したノイズキャンセリングモードへ変更する必要は無い。一方、ノイズ解析部31で選択したノイズキャンセリングモードがモードBであり、現在稼動しているDSP B(ノイズキャンセリング処理部33a)のノイズキャンセリングモードがモードAである場合を考える。この場合には、ノイズ解析部31が選択したノイズキャンセリングモードへ変更する必要がある。
上記ステップS103の判定の結果、モードを変更する必要が無いとノイズ解析部31が判断した場合には、上記ステップS102で選択したモードへの変更は行わず、上記ステップS101に戻り、ノイズ解析部31でのノイズ信号の解析を実行する。一方、上記ステップS103の判定の結果、モードを変更する必要があるとノイズ解析部31が判断した場合には、続いて、現在アクティブ(稼働中)のDSPが、DSP BとDSP Cのどちらであるかをノイズ解析部31で判定する(ステップS104)。
上記ステップS104の判定の結果、現在アクティブ(稼働中)のDSPがDSP Bであるとノイズ解析部31が判断した場合には、ノイズ解析部31は、DSP C(ノイズキャンセリング処理部33b)を、上記ステップS102で選択した最適なノイズキャンセリングモードに設定する(ステップS105)。DSP Cに対して最適なノイズキャンセリングモードを設定すると、ノイズ解析部31は、クロスフェード部35の出力をDSP BからDSP Cへクロスフェードさせて、徐々に最適なモードへと切り替える(ステップS106)。すなわち、モードを切り替える前は、乗算部36aの出力:乗算部36bの出力=1:0であり、クロスフェード処理が始まると、ノイズ解析部31は、乗算部36aの出力を徐々に下げていき、乗算部36bの出力を徐々に上げていくよう、クロスフェード部35に対して設定する。そして最終的には、乗算部36aの出力:乗算部36bの出力=0:1となったところでクロスフェード部35のクロスフェード処理が完了する。
一方、上記ステップS104の判定の結果、現在アクティブ(稼働中)のDSPがDSP Cであるとノイズ解析部31が判断した場合には、ノイズ解析部31は、DSP B(ノイズキャンセリング処理部33a)を、上記ステップS102で選択した最適なノイズキャンセリングモードに設定する(ステップS107)。DSP Bに対して最適なノイズキャンセリングモードを設定すると、ノイズ解析部31は、クロスフェード部35の出力をDSP CからDSP Bへクロスフェードさせて、徐々に最適なモードへと切り替える(ステップS108)。すなわち、モードを切り替える前は、乗算部36aの出力:乗算部36bの出力=0:1であり、クロスフェード処理が始まると、ノイズ解析部31は、乗算部36bの出力を徐々に下げていき、乗算部36aの出力を徐々に上げていくよう、クロスフェード部35に対して設定する。そして最終的には、乗算部36aの出力:乗算部36bの出力=1:0となったところでクロスフェード部35のクロスフェード処理が完了する。
上記ステップS106またはステップS108におけるクロスフェード処理が完了すると、上記ステップS101に戻り、ノイズ解析部31でのノイズ信号の解析を再度実行する。もちろん本実施形態においては、図6に示した一連の処理を実行している間、ヘッドホン1に接続される音楽再生装置等から出力され、ノイズキャンセリング信号に重畳される音声信号の出力を止める必要は無い。
図7は、図6に示した本発明の一実施形態にかかる信号処理部30の動作をシーケンス図で示した説明図である。図7では、稼働中のDSPがDSP Bであり、DSP BはモードAで動作している場合について示している。また、図7は、ノイズ解析部31の解析処理の結果、最適なノイズキャンセリングモードがモードBであると判定され、DSP BからDSP Cへクロスフェードさせる場合について示したものである。
ノイズ解析部31(DSP A)は、ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号の解析を所定の間隔で実行し、ノイズ信号をキャンセルするための最適なノイズキャンセリングモードを選択する。そして、ノイズ解析部31での解析の結果、最適なノイズキャンセリングモードを変更する必要が生じた場合には、アクティブではないDSP C(ノイズキャンセリング処理部33b)に対して、モードBへの変更をノイズ解析部31から指示する。
モードBへの変更指示を受けたDSP C(ノイズキャンセリング処理部33b)はモードBに対応した係数に切り替える。そしてノイズ解析部31はDSP Bの出力とDSP Cとの出力をクロスフェードさせる。なお図7ではDSP Bの出力及びDSP Cの出力が線形に変化し、2つの出力が中間点で交差するように示しているが、本発明においては、クロスフェード処理の際のDSP Bの出力及びDSP Cの出力の変化はかかる例に限定されないことはいうまでも無い。
図7では、クロスフェードが完了したタイミングと、クロスフェード完了後のノイズ解析部31の解析処理の開始タイミングとは一致していない。これは、クロスフェードが完全に完了したことを待ってノイズ解析部31の解析処理を再開させていることを現したものである。もちろん、本発明においてはかかる例に限定されないことはいうまでもない。例えば、クロスフェードが完了したタイミングと、クロスフェード完了後のノイズ解析部31の解析処理の開始タイミングとを一致させてもよく、クロスフェードの完了を待たずにノイズ解析部31の解析処理を再開させてもよい。
以上、本発明の一実施形態にかかる信号処理部30の動作について説明した。本実施形態にかかるヘッドホン1は、このように信号処理部30を動作させることにより、ユーザの周囲の騒音の状況が変化した場合であっても、自動的に最適なノイズキャンセリングモードへ追従することができる。また本実施形態にかかるヘッドホン1は、ノイズキャンセリングモードを切り替える際には、瞬時に切り替えるのではなく、2つのDSPの出力を徐々に変化させることによってクロスフェードさせる。このようなクロスフェード処理により、本実施形態にかかるヘッドホン1は、モードの切り替え時に異音を発生させることが無く、また、音声信号の出力やノイズキャンセリング処理を停止させることなくモードを切り替えることができる。
なお、信号処理部30は音声信号に対する処理も実行することが出来る。図8は、本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30の変形例について示す説明図である。以下、図8を用いて、本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30の変形例について説明する。
[1−5.信号処理部の変形例の構成]
図8に示した本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30の変形例は、図3で示した構成と比較して、イコライザ38と、加算部39と、が追加されている。イコライザ38は、ヘッドホン1に接続されている音楽再生装置等から伝送される音楽信号に対するイコライズ処理を実行するものである。音楽信号に対するイコライズ処理とは、例えば、所定の周波数帯域に対する信号処理を行って、特定の音域の信号を強調したり、逆に減少させたりする処理をいう。本変形例では、イコライザ38でのイコライズ処理の設定(イコライザ設定)は、ノイズ解析部31が選択したノイズキャンセリングモードに応じて変更することができる。また、イコライザ38でのイコライズ処理は、DSPによって実行されるようにしてもよい。図8では、イコライザ38でのイコライズ処理をDSP Dが実行するように示している。イコライザ38の出力は、加算部37から出力されるノイズキャンセリング信号と、加算部39で加算される。加算部39の出力はDAC40に送られて、DAC40によってデジタル信号に変換される。
なお、図8では、ノイズ解析部31でのノイズ解析処理と、イコライザ38でのイコライズ処理とは、別々のDSPによって実行するように図示したが、本発明はかかる例に限定されない。ノイズ解析部31でのノイズ解析処理及びイコライザ38でのイコライズ処理は、同一のDSPで実行されるようにしてもよい。また、図8では、イコライザ38には音楽信号が伝送されているが、もちろん本発明においてはイコライズ処理の対象は音楽を再生するための信号に限られない。
そして、ノイズ解析処理及びイコライズ処理を同一のDSPで実行する場合には、最適モード全自動選択機能が有効になっているか否かによって異なるイコライズ処理を実行するようにしてもよい。
[1−6.信号処理部の変形例の動作]
図9は、本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30の変形例の動作について説明する流れ図である。以下、図9を用いて本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30の変形例の動作について説明する。
まず、ヘッドホン1で最適モード全自動選択機能が有効になっているかどうかを判定する(ステップS111)。当該判定は、例えばヘッドホン1にマイクロプロセッサその他の制御部を内蔵し、当該制御部によって実行してもよい。ステップS111の判定の結果、ヘッドホン1で最適モード全自動選択機能が有効になっていると判断された場合には、続いてイコライザ38の設定の変更が必要であるかどうかを判定する(ステップS112)。当該判定は、例えばイコライザ38によって実行してもよい。ステップS112の判定の結果、イコライザ38の設定の変更が必要であると判断された場合には、最適モード全自動選択機能が有効になっている場合の設定にイコライザ38を設定する(ステップS113)。一方、ステップS112の判定の結果、イコライザ38の設定の変更が必要でないと判断された場合には、上記ステップS113の処理を飛ばして次の処理に進む。
なお、ステップS111の判定の結果、ヘッドホン1で最適モード全自動選択機能が有効になっていないと判断された場合には、続いてイコライザ38の設定の変更が必要であるかどうかを判定する(ステップS114)。当該判定は、例えばイコライザ38によって実行してもよい。ステップS114の判定の結果、イコライザ38の設定の変更が必要であると判断された場合には、最適モード全自動選択機能が無効になっている場合の設定にイコライザ38を設定する(ステップS115)。最適モード全自動選択機能が無効になっている場合の設定にイコライザ38を設定すると、上記ステップS111に戻り、ヘッドホン1で最適モード全自動選択機能が有効になっているかどうかの判定処理を再度実行する。一方、ステップS114の判定の結果、イコライザ38の設定の変更が必要ではないと判断された場合には、上記ステップS115の処理を飛ばして、上記ステップS111に戻る。
ステップS113以降の処理は、図6に示した信号処理部30の動作の流れと同一である。以下において、確認のために信号処理部30の動作の流れを再度説明する。
ノイズ解析部31は、ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号の解析を実行する(ステップS116)。ノイズ解析部31でノイズ信号の解析を実行すると、ノイズ解析部31は解析結果に応じて最適なノイズキャンセリングモードを1つ選択する(ステップS117)。ステップS117でノイズ解析部31が最適なノイズキャンセリングモードを1つ選択すると、ノイズ解析部31はその選択したノイズキャンセリングモードへ変更する必要があるかどうかを判定する(ステップS118)。ステップS118の判定の結果、モードを変更する必要が無いとノイズ解析部31が判断した場合には、上記ステップS116で選択したモードへの変更は行わない。この場合には上記ステップS111に戻り、ヘッドホン1で最適モード全自動選択機能が有効になっているかどうかの判定処理を再度実行する。一方、上記ステップS118の判定の結果、モードを変更する必要があるとノイズ解析部31が判断した場合には、続いて、現在アクティブ(稼働中)のDSPが、DSP BとDSP Cのどちらであるかをノイズ解析部31で判定する(ステップS119)。
上記ステップS119の判定の結果、現在アクティブ(稼働中)のDSPがDSP Bであるとノイズ解析部31が判断した場合には、ノイズ解析部31は、DSP C(ノイズキャンセリング処理部33b)を、上記ステップS117で選択した最適なノイズキャンセリングモードに設定する(ステップS120)。DSP Cに対して最適なノイズキャンセリングモードを設定すると、ノイズ解析部31は、クロスフェード部35の出力をDSP BからDSP Cへクロスフェードさせて、徐々に最適なモードへと切り替える(ステップS121)。
一方、上記ステップS119の判定の結果、現在アクティブ(稼働中)のDSPがDSP Cであるとノイズ解析部31が判断した場合には、ノイズ解析部31は、DSP B(ノイズキャンセリング処理部33a)を、上記ステップS117で選択した最適なノイズキャンセリングモードに設定する(ステップS122)。DSP Bに対して最適なノイズキャンセリングモードを設定すると、ノイズ解析部31は、クロスフェード部35の出力をDSP CからDSP Bへクロスフェードさせて、徐々に最適なモードへと切り替える(ステップS123)。
上記ステップS121またはステップS123におけるクロスフェード処理が完了すると、上記ステップS111に戻り、ヘッドホン1で最適モード全自動選択機能が有効になっているかどうかの判定処理を再度実行する。
以上、本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30の変形例の動作について説明した。もちろん本変形例においては、図9に示した一連の処理を実行している間、ヘッドホン1に接続される音楽再生装置等から出力され、ノイズキャンセリング信号に重畳される音楽信号の出力を止める必要は無い。以上説明したように、本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30の変形例では、ヘッドホン1で最適モード全自動選択機能が有効になっているか否かでイコライザ38に対して異なる設定とすることができる。
以上説明したように本発明の第1の実施形態にかかるヘッドホン1によれば、最適モード全自動選択機能を実行している間、マイク2で収音された外部環境のノイズの解析を行い、解析結果に基づいて最適なノイズキャンセリングモードを1つ選択する。最適なノイズキャンセリングモードが1つ選択されると、ヘッドホン1は、音声の出力及びノイズキャンセリング処理を止めることなく、選択されたノイズキャンセリングモードへの移行を行う。そして選択されたノイズキャンセリングモードへ切り替える際には、クロスフェード部35によって2つのノイズキャンセリング処理部からの出力をクロスフェードさせる。このようにノイズキャンセリングモードを切り替えることで、本発明の第1の実施形態にかかるヘッドホン1は、ユーザに対して快適な聴取環境を提供することができる。
<2.第2の実施形態>
[2−1.信号処理部の構成]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図10は、本発明の第2の実施形態にかかる信号処理部130の構成について示す説明図である。図10には、信号処理部130と併せてADC10についても図示している。以下、図10を用いて本発明の第2の実施形態にかかる信号処理部130の構成について説明する。
図10に示した信号処理部130は、上述の信号処理部30と置き換えることができる。図10に示したように、本発明の第2の実施形態にかかる信号処理部130は、ノイズ解析部131と、ノイズキャンセリング部132と、クロスフェード部135と、加算部137と、を含んで構成される。
ノイズ解析部131は、ノイズ解析部31と同様に、ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号に対する解析処理を実行するものである。ノイズ解析部131での解析処理は、最適モード全自動選択機能が有効になっている間は、所定の間隔で常時実行されるものである。ノイズ解析部131は、例えばFFTや、BPFによるノイズ信号の帯域分割等を行って、ノイズ信号の周波数特性解析を実行する。そして、周波数特性解析の結果に基づいて、ノイズ解析部131は最適なノイズキャンセリングモードを選択し、当該ノイズキャンセリングモードでのノイズキャンセリング処理を実行するようにノイズキャンセリング部132に指示する。
またノイズ解析部131は、ノイズキャンセリング部132に対してイコライザ設定を送出する。ノイズ解析部131は、ノイズ信号に対する解析処理を実行した結果に基づいて最適なイコライザ設定を決定し、ノイズキャンセリング部132に対してイコライザ設定を送出してもよい。一例を挙げれば、ノイズ解析部131は、ノイズキャンセリング効果を得た後の残留ノイズのスペクトルを推定し、残留ノイズの強い帯域に対して補強的に音楽信号のレベルを増強するようなイコライズ処理を実行するようなイコライザ設定を決定することができる。またノイズ解析部131は、ユーザが操作部20等を操作することにより手動で設定されたイコライザ設定をノイズキャンセリング部132に対して送出してもよい。
ノイズ解析部131によるノイズ信号に対する解析処理は、DSPによって実行されるようにしてもよい。本実施形態では、ノイズ解析部131によるノイズ信号に対する解析処理を実行するDSPをDSP Aとする。
ノイズキャンセリング部132は、ノイズキャンセリング部32と同様に、ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号から、ヘッドホン1を装着するユーザの耳に達する外部の騒音を打ち消すための信号を生成するものである。ノイズキャンセリング部32は、ノイズキャンセリング部133a、133bを含んで構成される。
ノイズキャンセリング部133a、133bは、ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号に対し、所定のデジタルフィルタ処理を施して、ヘッドホン1を装着するユーザの耳に達する外部の騒音を打ち消すためのノイズキャンセリング信号を生成するものである。またノイズキャンセリング部133a、133bは、音楽信号に対するイコライズ処理も実行する。以下において、ノイズキャンセリング部133aを例に挙げてその構成について説明する。
図11は、本発明の第2の実施形態にかかるノイズキャンセリング部133aの構成について示す説明図である。図11に示したように、本発明の第2の実施形態にかかるノイズキャンセリング部133aは、ノイズキャンセリング処理部142と、イコライザ144と、加算部146と、を含んで構成される。
ノイズキャンセリング処理部142は、ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号に対して所定のデジタルフィルタ処理を施して、ヘッドホン1を装着するユーザの耳に達する外部の騒音を打ち消すためのノイズキャンセリング信号を生成する処理を実行する。ノイズキャンセリング処理部142は、例えばFIRフィルタで構成されていてもよい。
イコライザ144は、上述した本発明の第1の実施形態におけるイコライザ38と同様に、ヘッドホン1に接続されている音楽再生装置等から伝送される音楽信号に対するイコライズ処理を実行するものである。
加算部146は、ノイズキャンセリング処理部142で生成されたノイズキャンセリング信号と、イコライザ144でイコライズ処理が施された音楽信号とを加算して出力するものである。
このようにノイズキャンセリング部133aを構成することで、ノイズキャンセリング部133aはノイズキャンセリング信号の生成処理と音楽信号に対するイコライズ処理とを実行することができる。また、このようにノイズキャンセリング部133aを構成することで、信号処理部130に入力されるノイズ信号に応じて、最適なノイズキャンセリングモード及びイコライザ設定をノイズ解析部131で決定することができる。なお、図11ではノイズキャンセリング部133aを例に挙げてその構成を説明したが、ノイズキャンセリング部133bについても同様の構成を有することができることは言うまでもない。
なお、ノイズキャンセリング部133a、133bによるノイズキャンセリング信号の生成処理及び音楽信号に対するイコライズ処理は、DSPによって実行されるようにしてもよい。本実施形態では、ノイズキャンセリング部133aによるフィルタ処理を実行するDSPをDSP Bとし、ノイズキャンセリング部133bによるフィルタ処理を実行するDSPをDSP Cとする。
クロスフェード部135は、ノイズキャンセリングモードが切り替えられる際に、ノイズ解析部131からの指示に応じてノイズキャンセリング部133a、133bの出力をクロスフェードさせるためのものである。クロスフェード部135は、乗算部136a、136bを含んで構成される。乗算部136a、136bは、それぞれノイズキャンセリング部133a、133bの出力に対し、ノイズ解析部131からの指示に応じて、時間と共に変化する係数(ゲイン)を乗算する。乗算部136a、136bで乗算されたデータは加算部137に送られる。
加算部137は、乗算部136a、136bの出力を加算して出力するものである。加算部137の出力がノイズキャンセリング信号となり、DAC(図示せず)に送られる。
以上、本発明の第2の実施形態にかかる信号処理部130の構成について説明した。次に、本発明の第2の実施形態にかかる信号処理部130の動作について説明する。
[2−2.信号処理部の動作]
図12は、本発明の第2の実施形態にかかる信号処理部130の動作について示す流れ図である。以下、図12を用いて、本発明の第2の実施形態にかかる信号処理部130の動作について説明する。
ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号が信号処理部130に送られると、ノイズ解析部131は、所定の周期でノイズ信号の解析を実行する(ステップS131)。ノイズ解析部131でノイズ信号の解析を実行すると、ノイズ解析部131は解析結果に応じて最適なノイズキャンセリングモードを1つ選択する(ステップS132)。
上記ステップS132でノイズ解析部131が最適なノイズキャンセリングモードを1つ選択すると、ノイズ解析部131はその選択したノイズキャンセリングモードへ変更する必要があるかどうかを判定する(ステップS133)。例えば、ノイズ解析部131で選択したノイズキャンセリングモードがモードAであり、現在稼動しているDSP B(ノイズキャンセリング部133a)でのノイズキャンセリングモードもモードAである場合を考える。この場合には、ノイズ解析部131が選択したノイズキャンセリングモードへ変更する必要は無い。一方、ノイズ解析部131で選択したノイズキャンセリングモードがモードBであり、現在稼動しているDSP B(ノイズキャンセリング部133a)のノイズキャンセリングモードがモードAである場合を考える。この場合には、ノイズ解析部131が選択したノイズキャンセリングモードへ変更する必要がある。
上記ステップS133の判定の結果、モードを変更する必要が無いとノイズ解析部131が判断した場合には、上記ステップS132で選択したモードへの変更は行わず、上記ステップS131に戻り、ノイズ解析部131でのノイズ信号の解析を実行する。一方、上記ステップS133の判定の結果、モードを変更する必要があるとノイズ解析部131が判断した場合には、続いて、現在アクティブ(稼働中)のDSPが、DSP BとDSP Cのどちらであるかをノイズ解析部131で判定する(ステップS134)。
上記ステップS134の判定の結果、現在アクティブ(稼働中)のDSPがDSP Bであるとノイズ解析部131が判断した場合には、ノイズ解析部131は、DSP C(ノイズキャンセリング部133b)を、上記ステップS132で選択した最適なノイズキャンセリングモードに設定する(ステップS135)。DSP Cに対して最適なノイズキャンセリングモードを設定すると、ノイズ解析部131は、DSP Cのイコライザ設定の変更が必要であるかどうかを判定する(ステップS136)。ステップS136の判定の結果、DSP Cのイコライザ設定の変更が必要であれば、ノイズ解析部131はDSP Cに対してイコライザ設定を行う(ステップS137)。ステップS137におけるDSP Cに対するイコライザ設定は、ノイズ解析部131の解析結果に応じた最適な設定であるが、本発明においてはDSP Cに対するイコライザ設定はかかる例に限定されない。一方、ステップS136の判定の結果、DSP Cのイコライザ設定の変更が必要無ければ、上記ステップS137の処理を飛ばして次の処理に進む。
DSP Cに対するイコライザ設定についての処理が完了すると、続いて、ノイズ解析部131は、クロスフェード部135の出力をDSP BからDSP Cへクロスフェードさせて、徐々に最適なモードへと切り替える(ステップS138)。
一方、上記ステップS134の判定の結果、現在アクティブ(稼働中)のDSPがDSP Cであるとノイズ解析部131が判断した場合には、ノイズ解析部131は、DSP B(ノイズキャンセリング部133a)を、上記ステップS132で選択した最適なノイズキャンセリングモードに設定する(ステップS139)。DSP Bに対して最適なノイズキャンセリングモードを設定すると、ノイズ解析部131は、DSP Bのイコライザ設定の変更が必要であるかどうかを判定する(ステップS140)。ステップS140の判定の結果、DSP Bのイコライザ設定の変更が必要であれば、ノイズ解析部131はDSP Bに対してイコライザ設定を行う(ステップS141)。ステップS141におけるDSP Bに対するイコライザ設定は、ノイズ解析部131の解析結果に応じた最適な設定であるが、本発明においてはDSP Bに対するイコライザ設定はかかる例に限定されない。一方、ステップS140の判定の結果、DSP Bのイコライザ設定の変更が必要無ければ、上記ステップS141の処理を飛ばして次の処理に進む。
DSP Bに対するイコライザ設定についての処理が完了すると、続いて、ノイズ解析部131は、クロスフェード部135の出力をDSP CからDSP Bへクロスフェードさせて、徐々に最適なモードへと切り替える(ステップS142)。
上記ステップS138またはステップS142におけるクロスフェード処理が完了すると、上記ステップS131に戻り、ノイズ解析部131でのノイズ信号の解析を再度実行する。
以上、本発明の第2の実施形態にかかる信号処理部130の動作について説明した。もちろん本実施形態においても、図12に示した一連の処理を実行している間、ヘッドホン1に接続される音楽再生装置等から出力され、ノイズキャンセリング信号に重畳される音楽信号の出力を止める必要は無い。
以上説明したように本発明の第2の実施形態にかかる信号処理部130によれば、ノイズキャンセリング信号を生成する処理と、音楽信号に対するイコライザ処理とを、同一のDSPで実行する。そして、これらの処理を実行するDSPを2つ用意し、最適なノイズキャンセリングモードの変更が生じた場合には、2つのDSPの出力をクロスフェードさせることでDSPからの出力を切り替える。このようにノイズキャンセリングモードを切り替えることで、本発明の第2の実施形態にかかる信号処理部130は、ユーザに対して快適な聴取環境を提供することができる。
<3.第3の実施形態>
[3−1.信号処理部の構成]
上述した本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30では、クロスフェード部35をDSP(ノイズキャンセリング処理部33a、33b)の外部のモジュールとして構成した。しかし、クロスフェード処理は、実際にはDSPの内部で実行される。また、本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30では、加算部37、39もDSPの外部のモジュールとして構成した。しかし、加算処理についても、実際にはDSPの内部で実行される。図13は、図8に示した本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30の変形例について示した説明図を再掲したものである。ここで、図13において一点鎖線で囲んだ部分が、DSPの内部に組み込まれる構成が一般的といえる。本発明の第3の実施形態では、本発明の第1の実施形態にかかる信号処理部30で実行していたクロスフェード処理及び加算処理をDSPの内部に組み込んだ構成について説明する。
図14は、本発明の第3の実施形態にかかる信号処理部230の構成について示す説明図である。図14には、信号処理部230と併せてADC10についても図示している。以下、図14を用いて本発明の第3の実施形態にかかる信号処理部230の構成について説明する。
図14に示した信号処理部130は、上述の信号処理部30と置き換えることができる。図14に示したように、本発明の第3の実施形態にかかる信号処理部230は、ノイズ解析部231と、ノイズキャンセリング部232と、イコライザ238と、を含んで構成される。
ノイズ解析部231は、ノイズ解析部31、131と同様に、ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号に対する解析処理を実行するものである。ノイズ解析部231での解析処理は、最適モード全自動選択機能が有効になっている間は、所定の間隔で常時実行されるものである。ノイズ解析部231は、例えばFFTや、BPFによるノイズ信号の帯域分割等を行って、ノイズ信号の周波数特性解析を実行する。そして、周波数特性解析の結果に基づいて、ノイズ解析部231は最適なノイズキャンセリングモードを選択し、当該ノイズキャンセリングモードでのノイズキャンセリング処理を実行するようにノイズキャンセリング部232に指示する。
またノイズ解析部231は、イコライザ238に対してイコライザ設定を送出する。ノイズ解析部231は、ノイズ信号に対する解析処理を実行した結果に基づいて最適なイコライザ設定を決定し、イコライザ238に対してイコライザ設定を送出してもよい。イコライザ238は、イコライザ38と同様に、ヘッドホン1に接続されている音楽再生装置等から伝送される音楽信号に対するイコライズ処理を実行するものである。一例を挙げれば、ノイズ解析部231は、ノイズキャンセリング効果を得た後の残留ノイズのスペクトルを推定し、残留ノイズの強い帯域に対して補強的に音楽信号のレベルを増強するようなイコライズ処理を実行するようなイコライザ設定を決定することができる。またノイズ解析部231は、ユーザが操作部20等を操作することにより手動で設定されたイコライザ設定をイコライザ238に対して送出してもよい。
ノイズ解析部231によるノイズ信号に対する解析処理は、DSPによって実行されるようにしてもよい。本実施形態では、ノイズ解析部231によるノイズ信号に対する解析処理を実行するDSPをDSP Aとする。
ノイズキャンセリング部232は、ノイズキャンセリング部32、132と同様に、ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号から、ヘッドホン1を装着するユーザの耳に達する外部の騒音を打ち消すための信号を生成するものである。ノイズキャンセリング部232は、ノイズキャンセリング部233a、233bを含んで構成される。
ノイズキャンセリング部233a、233bは、ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号に対し、所定のデジタルフィルタ処理を施すものである。ノイズ信号に対して所定のデジタルフィルタ処理が施されることで、ヘッドホン1を装着するユーザの耳に達する外部の騒音を打ち消すためのノイズキャンセリング信号が生成される。ノイズキャンセリング部233aは、ノイズキャンセリング処理部234aと、乗算部236aと、加算部237、239と、を含んで構成される。一方、ノイズキャンセリング部233bは、ノイズキャンセリング処理部234bと、乗算部236bと、を含んで構成される。
ノイズキャンセリング処理部234a、234bは、ノイズキャンセリング処理部33a、33bと同様の機能を有するものである。すなわちノイズキャンセリング処理部234a、234bは、ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号に対し、所定のデジタルフィルタ処理を施して、ヘッドホン1を装着するユーザの耳に達する外部の騒音を打ち消すための信号を生成するものである。ノイズキャンセリング処理部234a、234bは、例えばFIRフィルタで構成されていてもよい。
乗算部236a、236bは、乗算部36a、36bと同様に、それぞれノイズキャンセリング処理部234a、234bの出力に対し、ノイズ解析部231からの指示に応じて、時間と共に変化する係数(ゲイン)を乗算する。乗算部236a、236bで乗算されたデータは加算部237に送られる。
加算部237は、乗算部236a、236bの出力を加算して、加算部239に出力するものである。加算部239は、加算部237の出力と、イコライザ238の出力とを加算して出力するものである。加算部239の出力はDAC40に送られて、DAC40によってデジタル信号に変換される。
なお、ノイズキャンセリング部233aによるノイズキャンセリング信号の生成処理、乗算処理及び加算処理は、DSPによって実行されるようにしてもよい。本実施形態では、ノイズキャンセリング部233aによる各処理を実行するDSPをDSP Bとする。同様に、ノイズキャンセリング部233bによるノイズキャンセリング信号の生成処理及び乗算処理は、DSPによって実行されるようにしてもよい。本実施形態では、ノイズキャンセリング部233bによる各処理を実行するDSPをDSP Cとする。
なお、図14では、ノイズ解析部231でのノイズ解析処理と、イコライザ238でのイコライズ処理とは、別々のDSPによって実行するように図示したが、本発明はかかる例に限定されない。ノイズ解析部231でのノイズ解析処理及びイコライザ238でのイコライズ処理は、同一のDSPで実行されるようにしてもよい。そして、ノイズ解析処理及びイコライズ処理を同一のDSPで実行する場合には、最適モード全自動選択機能が有効になっているか否かによって異なるイコライズ処理を実行するようにしてもよい。
以上、本発明の第3の実施形態にかかる信号処理部230の構成について説明した。次に、本発明の第3の実施形態にかかる信号処理部230の動作について説明する。
[3−2.信号処理部の動作]
図14に示したように信号処理部230を構成すれば、クロスフェード処理を実行している時を除けば、DSP BまたはDSP Cのいずれか一方の動作を停止させることで、消費電力を削減する効果が期待できる。図14に示した構成では、DSP C(ノイズキャンセリング部233b)を停止させることは可能である。しかし、図14に示したような構成においてDSP B(ノイズキャンセリング部233a)を停止させてしまうと、加算部239でのノイズキャンセリング信号と音楽信号との加算処理が出来なくなってしまう。つまり、加算部239での加算処理を実行しなければならないDSP Bを停止させることはできず、消費電力を削減することが出来なくなってしまう問題が生じる。
そこで本実施形態では、上記問題を解消するために、DSP BをメインDSPとし、DSP CをサブDSPとする。最適モード全自動選択機能が有効になっている間は、メインDSPであるDSP Bでノイズキャンセリング処理を実行し、サブDSPであるDSP Cは、電力の消費が少ないスリープモードや省電力モードに設定しておく。そして、最適なノイズキャンセリングモードが変化したとノイズ解析部231が判断したタイミングで、DSP AからサブDSPであるDSP Cを起動させ、DSP Cをその判別した最適なノイズキャンセリングモードに設定する。DSP Cを最適なノイズキャンセリングモードに設定すると、続いてDSP Aの指示により、クロスフェード処理によってノイズキャンセリング信号の出力をDSP BからDSP Cへ切り替える。ノイズキャンセリング部232の出力がDSP Cからのノイズキャンセリング信号の出力に切り替わると、続いてDSP Aの指示により、DSP Bをその最適なノイズキャンセリングモードに設定する。DSP Bをその最適なノイズキャンセリングモードに設定すると、続いてDSP Aの指示により、クロスフェード処理によってノイズキャンセリング信号の出力をDSP CからDSP Bへ切り替える。切り替えが完了すると、続いてDSP Aの指示によりサブDSPであるDSP Cを電力の消費が少ないスリープモードや省電力モードに設定する。
図15は、上述したメインDSPとサブDSPとの間のモード遷移について示す説明図である。図15では、ノイズキャンセリングモードをモードAからモードBに遷移させる場合について示したものである。
ここでは、ノイズキャンセリング処理部234aがモードAでノイズキャンセリング処理を実行している場合に、ノイズ解析部231での解析の結果、最適なノイズキャンセリングモードがモードBに変化したとする。最適なモードがモードBに変化したとノイズ解析部231が判断すると、ノイズ解析部231は電力の消費が少ないスリープモードや省電力モードに設定されているDSP Cを起動させる。DSP Cが起動すると、ノイズ解析部231は、起動したDSP Cに含まれるノイズキャンセリング処理部234bのノイズキャンセリングモードをモードBに設定する。そしてノイズキャンセリング処理部234bのノイズキャンセリングモードをモードBに設定すると、ノイズ解析部231は出力をDSP BからDSP Cへクロスフェードさせて切り替える。
DSP Cへの切り替えが完了すると、ノイズ解析部231はノイズキャンセリング処理部234aのノイズキャンセリングモードを、モードAからモードBに変更する。そしてノイズキャンセリング処理部234aのノイズキャンセリングモードをモードBに設定すると、ノイズ解析部231は出力をDSP CからDSP Bへクロスフェードさせて切り替える。DSP Bへの切り替えが完了すると、ノイズ解析部231はDSP Cを電力の消費が少ないスリープモードや省電力モードに設定する。
図16は、上述したメインDSPとサブDSPとの間のモード遷移についてシーケンス図で示す説明図である。図16では、図15と同じく、ノイズキャンセリングモードをモードAからモードBに遷移させる場合について示したものである。
ノイズ解析部231は、所定の間隔でノイズ信号の解析を実行し、最適なノイズキャンセリングモードを判定する。メインDSPであるDSP Bでは、ノイズキャンセリング処理部234aがモードAによってノイズキャンセリング処理を実行している。
ノイズキャンセリング処理部234aがモードAでノイズキャンセリング処理を実行している場合に、ノイズ解析部231での解析の結果、最適なノイズキャンセリングモードがモードBに変化したとする。最適なモードがモードBに変化したとノイズ解析部231が判断すると、ノイズ解析部231は、電力の消費が少ないスリープモードや省電力モードに設定されているDSP Cを起動させる。DSP Cが起動すると、ノイズ解析部231はノイズキャンセリング処理部234bのノイズキャンセリングモードをモードBに設定する。
ノイズキャンセリング処理部234bのノイズキャンセリングモードをモードBに設定すると、ノイズ解析部231は出力をDSP BからDSP Cへクロスフェードさせて切り替える。
DSP Cへの切り替えが完了すると、ノイズ解析部231はノイズキャンセリング処理部234aのノイズキャンセリングモードを、モードAからモードBに変更する。そしてノイズキャンセリング処理部234aのノイズキャンセリングモードをモードBに設定すると、ノイズ解析部231は出力をDSP CからDSP Bへクロスフェードさせて切り替える。DSP Bへの切り替えが完了すると、ノイズ解析部231はDSP Cへ休眠指示を送出し、DSP Cを電力の消費が少ないスリープモードや省電力モードに設定する。
このように、2つのDSPを用いてノイズキャンセリングモードの切り替えを実行する際に、一方のDSPをメインDSPとして、他方のDSPをサブDSPとして駆動させる。そして、サブDSPはモードの切り替え時にのみ起動させることで電力消費を抑えながら、ユーザにモード切り替え時の違和感や不快感を与えずに自動的にノイズキャンセリングモードを切り替えることができる。
なお図16はDSP Bの出力及びDSP Cの出力が線形に変化し、2つの出力が中間点で交差するように示しているが、本発明においてはクロスフェード処理の際のDSP Bの出力及びDSP Cの出力の変化はかかる例に限定されないことはいうまでも無い。例えば、2つの出力が中間点以外で交差するように出力を非線形で変化させてもよく、またDSP Bの出力が変化し始めるタイミングとDSP Cの出力が変化し始めるタイミングとをずらしてもよい。
[3−3.ノイズ解析部の構成例]
さて、ここでノイズ解析部の構成例についてノイズ解析部231を例に挙げて説明する。図17は、本発明の第3の実施形態にかかるノイズ解析部231の構成について示す説明図である。以下、図17を用いて本発明の第3の実施形態にかかるノイズ解析部231の構成について説明する。
図17に示したように、本発明の第3の実施形態にかかるノイズ解析部231は、周波数分析部241と、最適モード判定部242と、連続カウンタ部243と、を含んで構成される。
周波数分析部241は、ノイズ解析部231に送られてくるノイズ信号に対し周波数特性分析を実行するものである。周波数分析部241は、ノイズ信号に対して、例えばFFTやBPFによる帯域分割などを行ってもよい。なお、BPFの数は2以上であることが望ましい。周波数分析部241での周波数特性分析により、ノイズ信号にどのような周波数成分が含まれているかを把握することができる。
最適モード判定部242は、周波数分析部241でのノイズ信号に対する周波数特性分析の結果を用いて、予め保持しているノイズキャンセリングモードの中から最適なノイズキャンセリングモードを所定の周期で判定するものである。最適モード判定部242での判定周期は、例えば電車がすれ違った場合のように短い期間で騒音の状況の変化が完了するような場合にモードを遷移させないよう、数秒に1回の周期であってもよい。最適モード判定部242によって、どのノイズキャンセリングモードを用いればノイズを打ち消せるかが判定される。最適モード判定部242でのモード判定処理は、例えば、周波数分析部241での周波数特性分析結果と、ノイズキャンセリングモードごとのノイズ低減特性とを減算し、その差分が最も小さいノイズキャンセリングモードを最適なノイズキャンセリングモードとするようにしてもよい。最適モード判定部242の判定結果は連続カウンタ部243に送られる。
連続カウンタ部243は、同一の、かつ現在のモードではないノイズキャンセリングモードが最適モード判定部242で連続して判定された回数を計測するものである。連続カウンタ部243は、計測回数が所定の回数に達すると、最適モード判定部242で連続して判定したノイズキャンセリングモードに設定するための最適モード制御信号を送出する。連続カウンタ部243は、同一のノイズキャンセリングモードが最適モード判定部242で連続して判定されればその回数を計測し、一度でも異なるノイズキャンセリングモードが最適モード判定部242で連続して判定されれば、回数をリセットする。最適モード判定部242の判定の結果、最適なモードが変化した場合に、すぐにモードを変更してしまうと、次のような現象が発生する可能性がある。例えば電車がすれ違った場合のように短い期間で周囲の騒音の状況の変化が完了するような場合に、モードの遷移を終えたときには既に騒音が元の状況に戻ってしまい、また最適なモードを変更させなければならない状況が考えられる。従って、同一のノイズキャンセリングモードが最適モード判定部242で連続して判定されたことを条件にモードを変化させることで、短い時間で完了する周囲の騒音の状況の変化に追従させないようにすることができる。
図18は、最適モード判定部242の判定結果と、連続カウンタ部243の計数結果との関係の一例について示す説明図である。図18は、最適なノイズキャンセリングモードがモードAであった場合に、外部環境の騒音の状況が変化した状態を例に挙げて示したものである。
最適なノイズキャンセリングモードがモードAであった場合に、外部環境の騒音の状況が変化して、最適なノイズキャンセリングモードがモードBであると最適モード判定部242が判定したとする。今までは最適なノイズキャンセリングモードはモードAであったが、最適なモードがモードBに変化したので、連続カウンタ部243は、最適なモードがモードBになったことをカウントする。
しかし、外部環境の騒音の状況が変化して、最適なノイズキャンセリングモードが再びモードAに戻った場合には、連続カウンタ部243は保持していたカウンタの値をリセットする。
続いて、外部環境の騒音の状況が変化して、最適なノイズキャンセリングモードがモードCであると最適モード判定部242が判定したとする。今までは最適なノイズキャンセリングモードはモードAであったが、最適なモードがモードCに変化したので、連続カウンタ部243は、最適なモードがモードCになったことをカウントする。そして、最適モード判定部242が3回連続して最適なノイズキャンセリングモードがモードCであると判定すると、外部環境の騒音の状況が完全に変化したものと判断する。その結果、連続カウンタ部243はノイズキャンセリングモードをモードCに変更する最適モード制御信号を生成して、ノイズキャンセリング部232に送出する。
以上、本発明の第3の実施形態にかかるノイズ解析部231の構成について説明した。ここでは本発明の第3の実施形態にかかるノイズ解析部231の構成を例に挙げて説明したが、上述した本発明の第1の実施形態にかかるノイズ解析部31や本発明の第2の実施形態にかかるノイズ解析部131にもかかる構成を適用できることは言うまでもない。
以上説明したように本発明の第3の実施形態にかかる信号処理部230によれば、2つのノイズキャンセリング部(DSP)によってノイズキャンセリング処理を実行する。この際、1つのノイズキャンセリング部は常に稼動させておき、もう1つのノイズキャンセリング部は、ノイズキャンセリングモードに変化が発生した場合のみ起動させる。本発明の第3の実施形態にかかる信号処理部230は、このようにノイズキャンセリング部(DSP)を構成することで、電力消費を抑えることができる。
<4.第4の実施形態>
[4−1.信号処理部の構成]
上述した本発明の第1の実施形態〜第3の実施形態では、ノイズ信号に対する解析処理を実行するDSPを1つ備え、さらにノイズキャンセリング信号を生成するノイズキャンセリング処理を実行するDSPを2つ備える構成について説明した。なお、最適なノイズキャンセリングモードの判定には、上述したようにBPFを用いることが出来る。マイク2で収音された音から得られるノイズ信号に対してBPFを通した出力を観測し、各周波数領域における観測結果を用いることで、最適なノイズキャンセリングモードが判定される。
ここで、本発明の第4の実施形態では、上述した本発明の第3の実施形態にかかる信号処理部230を応用し、ノイズ信号に対する解析処理と、ノイズキャンセリング処理とを1つのDSPで実行することでリソースを削減する構成について説明する。
図19は、本発明の第4の実施形態にかかる信号処理部330の構成について示す説明図である。図19には、信号処理部330の他に、ADC10及び制御部350も併せて図示している。以下、図19を用いて本発明の第4の実施形態にかかる信号処理部330の構成について説明する。
図19に示したように、本発明の第4の実施形態にかかる信号処理部330は、信号処理部333a、333bを含んで構成される。信号処理部333aは、ノイズキャンセリング処理部334aと、乗算部336aと、加算部337、339と、イコライザ338と、を含んで構成される。信号処理部333bは、ノイズキャンセリング処理部334bと、乗算部336bと、ノイズ解析部341と、解析結果通知部342と、を含んで構成される。
図19では、信号処理部333aをDSP Bとして、信号処理部333bをDSP Cとして、それぞれ図示している。そして信号処理部333bは、制御部350によって、ノイズキャンセリング処理部334b及び乗算部336bを含む構成と、ノイズ解析部341及び解析結果通知部342を含む構成とが書き換えられるように構成されている。ノイズ信号に対する解析処理を実行する際には、信号処理部333bはノイズ解析部341及び解析結果通知部342を含んで構成される。そして、ノイズキャンセリングモードを切り替える際には、信号処理部333bはノイズキャンセリング処理部334b及び乗算部336bを含んで構成される。
ノイズ解析部341は、ノイズ解析部31と同様に、ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号に対する解析処理を実行するものである。ノイズ解析部341での解析処理は、最適モード全自動選択機能が有効になっている間は、所定の間隔で常時実行されるものである。ノイズ解析部341は、例えばFFTや、BPFによるノイズ信号の帯域分割等を行って、ノイズ信号の周波数特性解析を実行する。そしてノイズ解析部341は、ノイズ信号の周波数特性解析を実行した結果、最適なノイズキャンセリングモードを1つ選択する。
解析結果通知部342は、ノイズ解析部341によるノイズ信号に対する解析処理の結果を制御部350に通知するものである。解析結果通知部342が制御部350に通知する情報は、ノイズ解析部341が選択した最適なノイズキャンセリングモードの情報である。制御部350は、解析結果通知部342から通知された最適なノイズキャンセリングモードの情報を受け取ると、制御部350は受け取った情報に基づいて、信号処理部333bを書き換えるかどうかを判定する。
ノイズキャンセリング処理部334a、334bは、ノイズキャンセリング処理部33a、33bと同様に、ADC10でデジタル信号に変換されたノイズ信号に対し、所定のデジタルフィルタ処理を施して、ヘッドホン1を装着するユーザの耳に達する外部の騒音を打ち消すための信号を生成するものである。ノイズキャンセリング処理部334a、334bは、例えばFIRフィルタで構成されていてもよい。
乗算部336a、336bは、乗算部36a、36bと同様に、それぞれノイズキャンセリング処理部334a、334bの出力に対し、制御部350からの指示に応じて、時間と共に変化する係数(ゲイン)を乗算する。乗算部336a、336bで乗算されたデータは加算部337に送られる。
加算部337は、乗算部336a、336bの出力を加算して、加算部339に出力するものである。イコライザ338は、イコライザ38と同様に、ヘッドホン1に接続されている音楽再生装置等から伝送される音楽信号に対するイコライズ処理を実行するものである。一例を挙げれば、制御部350は、ノイズキャンセリング効果を得た後の残留ノイズのスペクトルを推定し、残留ノイズの強い帯域に対して補強的に音楽信号のレベルを増強するようなイコライズ処理を実行するようなイコライザ設定を決定することができる。加算部339は、加算部337の出力と、イコライザ338の出力とを加算して出力するものである。加算部339の出力はDAC40に送られて、DAC40によってデジタル信号に変換される。
なお、図19では、ノイズキャンセリング処理部334aでのノイズキャンセリング処理と、イコライザ338でのイコライズ処理とは、同一のDSPによって実行するように図示したが、本発明はかかる例に限定されない。ノイズキャンセリング処理部334aでのノイズキャンセリング処理と、イコライザ338でのイコライズ処理とは、別々のDSPで実行されるようにしてもよい。
制御部350は、例えばマイクロコンピュータやマイクロコントローラ等で構成され、信号処理部333bに対する各種指示を送出するものである。信号処理部333bに対する各種指示としては、イコライザ338に対するイコライザ設定、信号処理部333bの書き換え、ノイズキャンセリングモードの変更指示、クロスフェード処理の開始指示等がある。なお、信号処理部333bをソフトウェアによって実現する場合には、制御部350は信号処理部333bに対してプログラムを書き換えるようにしてもよい。
以上、本発明の第4の実施形態にかかる信号処理部330の構成について説明した。次に、本発明の第4の実施形態にかかる信号処理部330の動作について説明する。
[4−2.信号処理部の動作]
図20は、本発明の第4の実施形態にかかる信号処理部330における、ノイズキャンセリングモードの遷移の様子をシーケンス図で示す説明図である。以下、図20を用いて、本発明の第4の実施形態にかかる信号処理部330の動作について説明する。
通常時、すなわち、ノイズキャンセリングモードの切り替えが生じていない場合には、制御部350からは、定期的に信号処理部333b(DSP C)に対してノイズ信号の解析指示を送出する。制御部350からノイズ信号の解析指示を受けた信号処理部333bは、ノイズ解析部341でのノイズ信号の解析処理を実行する。ノイズ解析部341がノイズ信号の解析処理を実行すると、解析結果通知部342から制御部350に対して解析結果を通知する。
制御部350は、所定の回数連続して、現在のノイズキャンセリングモードとは異なるノイズキャンセリングモードが解析結果通知部342から通知されてきた場合には、ノイズキャンセリングモードの切り替え処理を実行する。ノイズキャンセリングモードを切り替えるには、まず制御部350が信号処理部333b(DSP C)に対して構成の書き換えを指示する。制御部350からの指示を受けた信号処理部333b(DSP C)は、信号処理部333bはノイズ解析部341及び解析結果通知部342を含む構成から、ノイズキャンセリング処理部334b及び乗算部336bを含む構成へ書き換えられることになる。
そして信号処理部333bの構成が書き換わると、制御部350は信号処理部333bに対してノイズキャンセリングモードの切り替え指示を送出する。ノイズキャンセリングモードの切り替え指示を受けた信号処理部333bは、ノイズキャンセリング処理部334bを、指示を受けたモードに切り替える。ノイズキャンセリング処理部334bのノイズキャンセリングモードが切り替わると、制御部350はノイズキャンセリング処理部334aとノイズキャンセリング処理部334bとの間のクロスフェード処理を実行する。
ノイズキャンセリング処理部334aとノイズキャンセリング処理部334bとの間のクロスフェード処理が完了すると、制御部350は信号処理部333aに対してノイズキャンセリングモードの切り替え指示を送出する。ノイズキャンセリングモードの切り替え指示を受けた信号処理部333aは、ノイズキャンセリング処理部334aを、指示を受けたモードに切り替える。ノイズキャンセリング処理部334aのノイズキャンセリングモードが切り替わると、制御部350はノイズキャンセリング処理部334bとノイズキャンセリング処理部334aとの間のクロスフェード処理を実行する。
ノイズキャンセリング処理部334aとノイズキャンセリング処理部334bとの間のクロスフェード処理が完了すると、制御部350から信号処理部333b(DSP C)へ構成の書き換えを指示する。制御部350からの指示を受けた信号処理部333b(DSP C)は、信号処理部333bはノイズキャンセリング処理部334b及び乗算部336bを含む構成からノイズ解析部341及び解析結果通知部342を含む構成へ書き換えられることになる。
信号処理部333bの構成が書き換わると、制御部350は定期的に信号処理部333b(DSP C)に対するノイズ信号の解析指示の送出を再開する。制御部350からノイズ信号の解析指示を受けた信号処理部333bは、ノイズ解析部341でのノイズ信号の解析処理の実行を再開する。
以上、本発明の第4の実施形態にかかる信号処理部330の動作について説明した。なお図20はDSP Bの出力及びDSP Cの出力が線形に変化し、2つの出力が中間点で交差するように示しているが、本発明においてはクロスフェード処理の際のDSP Bの出力及びDSP Cの出力の変化はかかる例に限定されないことはいうまでも無い。例えば、DSP Bの出力が変化し始めるタイミングとDSP Cの出力が変化し始めるタイミングとをずらしてもよい。
以上説明したように本発明の第4の実施形態にかかる信号処理部330は、2つの信号処理部(DSP)によってノイズキャンセリング処理を実行する。この際、1つの信号処理部は常に稼動させておき、もう1つの信号処理部は、ノイズ信号の解析処理を実行する場合と、ノイズキャンセリングモードを切り替える場合とで構成が書き換わる。本発明の第4の実施形態にかかる信号処理部330は、このように信号処理部(DSP)を構成することで、DSPを3つまたは4つ備える本発明の第1の実施形態〜第3の実施形態と比較して、リソースを削減することができる。
ところで、上述した本発明の第1の実施形態〜第4の実施形態では、ノイズキャンセリングモードをノイズキャンセリング処理部に設定する際に、外部から係数(フィルタ係数)を与えていた。そして、外部から係数が与えられたノイズキャンセリング処理部は、与えられた係数を書き込むことにより、ノイズキャンセリング処理を実行していた。
しかし、本発明はかかる例に限定されない。例えば、ノイズキャンセリング処理を実行する2つのDSPの内部に予め係数を持たせておいてもよい。例えば、ノイズキャンセリング処理を実行する2つのDSPに、それぞれ隣り合うノイズキャンセリングモードを交互に持たせておき、最適なノイズキャンセリングモードに到達するまでモード遷移を繰り返してもよい。図21は、2つのDSPに、それぞれ隣り合うノイズキャンセリングモードを交互に持たせておき、最適なノイズキャンセリングモードに到達するまでモード遷移を繰り返す手法を概念的に示す説明図である。
しかしこの手法では、ノイズキャンセリングモードの数が増えれば増えるほど、最適なノイズキャンセリングモードに到達するまでに時間がかかってしまうので、これは望ましい手法ではない。
また、モード遷移を実行する前に、外部のDSPやマイクロコンピュータ、マイクロコントローラ等からDSPへ最適なノイズキャンセリングモードの係数を与える手法もある。図22は、外部のDSPやマイクロコンピュータ、マイクロコントローラ等からDSPへ最適なノイズキャンセリングモードの係数を与える手法を概念的に示す説明図である。この手法を用いることにより、ノイズキャンセリング処理を実行するDSPの許容量を超えてノイズキャンセリングモードを用意することができる。極端に言えば、この手法を採れば、ノイズキャンセリング処理を実行するDSPの許容量は、モード1つ分の係数を保持できるものであれば良いことになる。もちろん、ノイズキャンセリング処理を実行するDSPは、モード2つ分以上の係数を保持できる許容量を有するものを用いても良い。この場合には、よく用いられるノイズキャンセリングモードが高い確率でDSPの内部に保持されることになり、ノイズキャンセリング処理の高速化・簡略化に繋げることができる。
また、上記の本発明の第3の実施形態にかかる信号処理部230や、本発明の第4の実施形態にかかる信号処理部330のように、ノイズキャンセリングモードを切り替える際に2つのDSPを往復させる構成の場合には、一時的にしか使用しないサブDSP(DSP C)は、遷移先のモードではなく、遷移時専用のモードを予め設定していてもよい。この遷移時専用のモードとは、ノイズ信号がどのような周波数特性を有していても、ある程度のノイズ除去能力を有するフィルタ係数からなるモードである。図23は、サブDSP(DSP C)に遷移時専用のモードを予め設定する手法を概念的に示す説明図である。このように一時的にしか使用しないサブDSPには予め専用のモードを設定しておくことで、モード遷移時に遷移先のモードをサブDSPに設定する必要が無くなり、ノイズキャンセリング処理の高速化・簡略化に繋げることができる。
また、ノイズキャンセリングモードを切り替える際に2つのDSPを往復させる構成の場合には、ノイズキャンセリングモードを切り替えた後サブDSPを電力の消費が少ないスリープモードや省電力モードに設定する際に、遷移後のモードに設定しておく。そして次のモード遷移時には、サブDSPに対しては遷移先のモードへの切り替え処理を省略してモード遷移を実行してもよい。
また、本発明の第1の実施形態〜第4の実施形態では、基本的にはノイズキャンセリングモードの切り替え処理は、信号処理部30、130、230、330の内部で完結させていた。しかし、本発明はかかる例に限定されない。ノイズキャンセリングモードの切り替え処理は、これら信号処理部とは別途設けられたDSPやマイクロコンピュータ、マイクロコントローラ等の制御によって実行されるようにしてもよい。例えば、ヘッドホン1の動作全体を制御するマイクロコンピュータで現在のノイズキャンセリングモードを把握しておけば、現在どのモードでノイズキャンセリング処理を実行しているかを、文字やライトの点灯・点滅等でユーザに提示することができる。ヘッドホン1の動作全体を制御するマイクロコンピュータでノイズキャンセリング処理を制御するようにしておけば、ノイズキャンセリング処理以外の動作(例えば電源オフ)によってノイズキャンセリング処理を停止することができる。
図24は、ノイズ信号の解析指示やクロスフェード処理、サブDSPに対する休眠指示を制御部(マイクロコンピュータ)が実行する場合の流れをシーケンス図で示す説明図である。図24は、図16に示した2つのDSP間でのクロスフェード処理を、制御部の制御によって実行する場合について示したものである。なお、図24に示した処理の流れにおいては、ノイズ解析部によるノイズ解析の結果、2回続けて現在のノイズキャンセリングモードとは異なるモードが最適なモードであると判定されたことを条件にクロスフェード処理を開始する場合を例に挙げて示している。
図24に示したノイズ信号の解析指示やクロスフェード処理、サブDSPに対する休眠指示の流れについて説明する。制御部は、所定の間隔でノイズ解析部(DSP A)に対してノイズ信号の解析処理の実行を指示する。制御部からの指示を受けたノイズ解析部は、当該指示に応じてノイズ信号の解析処理を実行し、最適なノイズキャンセリングモードを判定し、判定結果を制御部に返す。そして、最適なノイズキャンセリングモードが変化した場合には、制御部は休眠中のノイズキャンセリング処理部(DSP C)に対して起動指示を送出する。また制御部は、当該起動指示とともに、ノイズキャンセリング処理部(DSP C)に対して新しいノイズキャンセリングモードへの切り替えを指示する。
ノイズキャンセリング処理部(DSP C)が新しいノイズキャンセリングモードへの切り替えを完了すると、制御部はクロスフェード処理の開始を指示する。クロスフェード処理が完了し、出力が入れ替わると、続いてノイズキャンセリング処理部(DSP B)に対して新しいノイズキャンセリングモードへの切り替えを指示する。ノイズキャンセリング処理部(DSP B)が新しいノイズキャンセリングモードへの切り替えを完了すると、制御部はクロスフェード処理の開始を指示する。クロスフェード処理が完了し、出力が入れ替わると、制御部は続いてノイズキャンセリング処理部(DSP C)に対して休眠指示を送出すると共に、ノイズ解析部(DSP A)に対してノイズ信号の解析処理の実行を指示する。
<5.第5の実施形態>
[5−1.ヘッドホンの構成]
本発明の第1の実施形態〜第4の実施形態では、フィードフォワード方式によるノイズキャンセリング処理を前提として説明したが、本発明は、いわゆるフィードバック方式によるノイズキャンセリング処理であっても適用可能である。図25は、いわゆるフィードバック方式によって騒音をキャンセルするノイズキャンセリングシステムを含んだ、本発明の第5の実施形態にかかるヘッドホン1´の機能構成について示す説明図である。
図25に示したように、本発明の第5の実施形態にかかるヘッドホン1´は、スピーカ3と、マイク4と、ADC510と、操作部520と、信号処理部530と、DAC540と、パワーアンプ550と、を含んで構成される。
マイク4は、ヘッドホン1´のハウジング部5の内部に設けられ、ハウジング部5の内部の騒音を収音するものである。スピーカ3は音声を出力するものである。フィードバック方式では、ヘッドホン1´のハウジング部5の内部に設けられたマイクによってハウジング部5の内部の騒音が収音され、収音された音に対してノイズキャンセリング処理が実行される。なお、ヘッドホン1´のハウジング部5の内部で騒音が存在する原因としては、外部の騒音音源が例えばハウジング部5のイヤーパッドなどの隙間から音圧として漏れてきたり、ヘッドホン1´の筐体が騒音音源の音圧を受けて振動し、その振動がハウジング部5の内部に伝達してきたりすることが例として挙げられる。ノイズキャンセリング処理を実行した結果得られるノイズキャンセリング信号は、ヘッドホン1´が接続されている音楽再生装置から伝送される音声信号と合成される。合成された信号がスピーカ3から出力されると、ユーザの耳には、ハウジング部5内に侵入した外部の騒音が打ち消された音が達することになる。
ADC510は、マイク4で収音された結果得られるノイズ信号をデジタル信号に変換するものである。ADC510でデジタル信号に変換されたノイズ信号は信号処理部530に送られる。
操作部520は、ヘッドホン1´に対するユーザの操作を受け付けるためのものである。ヘッドホン1´に対するユーザの操作としては、例えばヘッドホン1´の電源のオン・オフ、スピーカ3から出力される音の音量の調整、ノイズキャンセリング機能のオン・オフであってもよい。さらにヘッドホン1´に対するユーザの操作としては、例えばノイズキャンセリング機能を有効にしている場合におけるノイズキャンセリングモードの選択、最適モード全自動選択機能のオン・オフ等であってもよい。操作部520を操作することにより生成される信号は、例えばマイクロコンピュータ(図示せず)に伝達され、マイクロコンピュータから必要に応じて信号処理部530に信号が伝達される。
信号処理部530は、ADC510でデジタル信号に変換されたノイズ信号に対する信号処理を実行するものである。信号処理部530は、ノイズ信号を解析し、ノイズ信号を打ち消すノイズキャンセリング信号を生成する。また、信号処理部530にはヘッドホン1が接続されている音楽再生装置から伝送される音声信号も入力される。信号処理部530は、入力された音声信号に対する信号処理も実行する。信号処理部530は、例えば複数のDSPによって構成される。
DAC540は、信号処理部530から出力される信号をアナログ信号に変換するものである。DAC540でアナログ信号に変換された信号はパワーアンプ550に送られる。
パワーアンプ550は、DAC540でアナログ信号に変換された信号を増幅して出力するものである。パワーアンプ550で増幅された信号はスピーカ3に送られる。スピーカ3は、パワーアンプ550から供給される信号に応じて振動板(図示せず)が信号することで音声を出力する構成となっている。
以上、図25を用いて本発明の第5の実施形態にかかるヘッドホン1´の機能構成について説明した。この図25に示した信号処理部530には、上述した本発明の第1の実施形態〜第4の実施形態にかかる信号処理部30、130、230、330を適用することができる。従って、フィードバック方式によるノイズキャンセリング処理であっても、最適なノイズキャンセリングモードを切り替える際に、ノイズキャンセリング処理や音楽信号の出力を止めずにモードを切り替えることができる。なお、本発明の第5の実施形態にかかるヘッドホン1´はフィードバック方式によって騒音をキャンセリングするものであるので、ノイズキャンセリング処理に用いる係数(フィルタ係数)は、フィードフォワード方式の場合とは異なるものを用いることが望ましい。
<6.その他>
上述した本発明の第1の実施形態〜第5の実施形態では、信号処理部30、130、230、330、530の内部に2つのDSPを設けることでノイズキャンセリングモードの切り替え処理を実現していた。しかし、装置の制約上、信号処理部の内部に2つのDSPを設けることができない場合も考えられる。この場合には最適モード全自動選択機能を実現することができない。だが、ノイズ信号の解析処理を実行するDSPと、ノイズキャンセリング信号を生成するDSPとを用意できれば、最適なノイズキャンセリングモードが変化したことは検出することができる。
従って、信号処理部の内部にDSPを2つ用意できない場合であっても、最適なノイズキャンセリングモードが変化したことを、ビープ音の発生や文字表示等によってユーザに通知することが可能である。すなわち、ノイズキャンセリング処理の実行中に、バックグラウンドでノイズ信号の解析を実行し、最適なノイズキャンセリングモードの変化をユーザに通知することが可能となる。
なお、最適なノイズキャンセリングモードが変化する度に毎回通知を行うと、ユーザがその通知を煩わしく感じるおそれもある。従って、ビープ音の発生や文字表示等による通知機能は、ユーザの操作により有効にしたり無効にしたりできるようにしてもよい。また、当該通知機能による通知のタイミングは、現在のモードが最適なノイズキャンセリングモードではなくなった場合や、現在のモードが最適なノイズキャンセリングモードとなった場合に限定してもよい。
<7.まとめ>
以上説明したように、本発明の第1の実施形態〜第5の実施形態によれば、最適モード全自動選択機能が実行されている間、マイクで収音された外部環境のノイズの解析が行われ、解析結果に基づいて最適なノイズキャンセリングモードが1つ選択される。最適なノイズキャンセリングモードが1つ選択されると、本発明の第1の実施形態〜第5の実施形態にかかるヘッドホンは、音声の出力及びノイズキャンセリング処理を止めることなく、選択されたノイズキャンセリングモードへの移行を行う。そして選択されたノイズキャンセリングモードへ切り替える際には、2つのノイズキャンセリング処理部からの出力をクロスフェードさせる。このようにノイズキャンセリングモードを切り替えることで、本発明の第1の実施形態〜第5の実施形態にかかるヘッドホンは、ユーザに対して快適な聴取環境を提供することができる。
また、本発明の第2の実施形態によれば、最適モード全自動選択機能が実行されている間であっても、ノイズキャンセリング信号を生成する処理と、音楽信号に対するイコライザ処理とを、同一のDSPで実行することができる。
また、本発明の第3の実施形態によれば、2つのノイズキャンセリング部(DSP)によってノイズキャンセリング処理が実行される。この際、1つのノイズキャンセリング部は常に稼動させておき、もう1つのノイズキャンセリング部は、ノイズキャンセリングモードに変化が発生した場合のみ起動させる。これにより、本発明の第3の実施形態は、ノイズキャンセリング処理の際の電力消費を抑えることができる。
また、本発明の第4の実施形態によれば、2つの信号処理部(DSP)によってノイズキャンセリング処理が実行される。この際、1つの信号処理部は常に稼動させておき、もう1つの信号処理部は、ノイズ信号の解析処理を実行する場合と、ノイズキャンセリングモードを切り替える場合とで構成が書き換わる。よって本発明の第4の実施形態によれば、このように信号処理部(DSP)を構成することで、DSPを3つまたは4つ備える本発明の第1の実施形態〜第3の実施形態と比較して、リソースを削減することができる。
また、本発明の第5の実施形態によれば、フィードフォワード方式のみならず、フィードバック方式によって騒音を打ち消す場合であっても、自動的に選択されたノイズキャンセリングモードへの移行を行うことが可能となる。自動的に選択されたノイズキャンセリングモードへは、音声の出力及びノイズキャンセリング処理を止めることなく移行することができる。よって、本発明の第5の実施形態にかかるヘッドホンは、ユーザに対して快適な聴取環境を提供することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上述した各実施形態では、最適なノイズキャンセリングモードが変化した場合に2つのノイズキャンセリング処理部の出力をクロスフェードさせていたが、本発明はかかる例に限定されない。最適なノイズキャンセリングモードが変化した場合に、例えば3つのノイズキャンセリング処理部の出力の合成比率を時変的に変化させ、最終的に最適なノイズキャンセリングモードによるノイズキャンセリング処理が実行されるようにしてもよい。
また例えば、上述した各実施形態の説明に用いた図には、例示のために耳覆い型のヘッドホンを示しているが、本発明はかかる例に限定されない。本発明は耳覆い型のヘッドホンに限らず、当然、耳乗せ型やまたは耳栓型(イヤホン)などのノイズキャンセリングヘッドホンにも適用できるものである。
なお上述した各実施形態にかかるヘッドホンにおけるノイズ解析処理及びノイズキャンセリング処理は、ハードウェアによってのみ実行されるようにしてもよく、ソフトウェアによってのみ実行されるようにしてもよい。また、上述した各実施形態にかかるヘッドホンにおけるノイズ解析処理及びノイズキャンセリング処理は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって実行されるようにしてもよい。ノイズキャンセリング処理をハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって実行する場合には、例えばノイズ解析処理をソフトウェアで実行し、ノイズキャンセリング処理をハードウェアで実行するようにヘッドホンを構成してもよい。