JP5924285B2 - 車両企画支援システム - Google Patents
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Description
本発明は、車両企画支援システムに関するものである。
車両の走行中において、後側方車両を確認することは、車線変更を安全に行う上で重要となる。後側方車両の確認のためには、サイドミラーによる間接視認と、運転者が後側方を振り返ってサイドウインドガラスの後部を通して確認する直接視認とがある。この場合、後側方車両が比較的自車両に近い位置に存在した際に、上記間接視認と直接視認とでは視認不可能となる死角域が存在することが知られている。特に、最近の車両では、デザイン上の観点等から、例えばベルトラインが後上がりに設定される等、後側方車両を直接視認することがしにくい状況も生じている。また、運転者による後側方車両の直接視認に際しては、運転者は後側方を振り返った状態で、横目でちらっと目視するだけなので、後側方車両の確認をしずらいものとなる。
特許文献1には、車両の企画支援として、Aピラーの圧迫感をシミュレーションによって容易に評価できるシステムが開示されている。
ところで、新たに車両を企画する場合に、後側方車両の直接視認性がどの程度であるかを知ることができれば便利である。多くの実験結果から、後側方車両を物理的に視認可能な状態であっても、運転者が後側方車両の存在を知覚することとは別次元のものとなる。例えば、後側方車両が直接目視できる面積範囲が同じであっても、ヘッドライト、ラジエタグリル、Aピラー等は運転者に知覚されやすい一方、ボンネットやフロントウインドガラス等は運転者に知覚されにくいものとなる。なお、人間の物体知覚のメカニズムは、次のようになっているものと理解されている。すなわち、視細胞が光刺激を受けることにより刺激の強さに応じた電位を発生し、脳の視覚野で電位信号が処理されて背景から視対象が抽出され、視対象に関する情報が脳の前頭野に送られて、記憶などと照合して車両として知覚することになる。
後側方車両の視認性に関して定量化する場合、ヘッドライトやラジエタグリルの位置等考慮した設定を行うことは事実上難しいものとなる。一方、後側方車両のうち物理的に視認可能な範囲の面積の大きさに応じて後側方車両の視認性を対応付けることは、汎用性が高く、定量化に適しているものといえる。多くの実験の結果、物理的に視認可能な面積の大きさと運転者による後側方車両の知覚率との関係をほぼ対応づけることが可能であるものの、対応付けが不可能な場合も生じるということが判明した。具体的には、例えば夜間走行で後側方車両が黒色の場合に、得られた特性からかなりずれてしまう、ということが判明した。
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、直接視認での運転者による後側方車両の知覚率を定量的に精度よく評価できるようにした車両企画支援システムを提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第1の解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
背景輝度に応じた弁別輝度比を記憶した第1記憶手段と、
視覚情報量に応じた知覚率を記憶した第2記憶手段と、
企画対象車両のサイドウインドガラスの後部を通して視認される後側方車両の範囲について、背景輝度と第1記憶手段に記憶されている背景輝度に応じた弁別輝度比と後側方車両の表面輝度とに基づいて、視覚情報量を算出する視覚情報量算出手段と、
前記視覚情報量算出手段で算出された視覚情報量を第2記憶手段に照合して、後側方車両の知覚率を決定する知覚率決定手段と、
を備えているようにしてある。
背景輝度に応じた弁別輝度比を記憶した第1記憶手段と、
視覚情報量に応じた知覚率を記憶した第2記憶手段と、
企画対象車両のサイドウインドガラスの後部を通して視認される後側方車両の範囲について、背景輝度と第1記憶手段に記憶されている背景輝度に応じた弁別輝度比と後側方車両の表面輝度とに基づいて、視覚情報量を算出する視覚情報量算出手段と、
前記視覚情報量算出手段で算出された視覚情報量を第2記憶手段に照合して、後側方車両の知覚率を決定する知覚率決定手段と、
を備えているようにしてある。
上記味1の解決手法によれば、視覚情報量を直接視認される後側方車両の面積のみならず輝度をも考慮したものとして決定して、この視覚情報量に基づいて知覚率を決定するので、知覚率の決定を容易かつ定量的にしかも精度よく行うことが可能となる。これにより、車両を企画する場合に、後側方車両の知覚率を十分考慮した企画とすることができ、車両の企画支援の上で極めて好ましいものとなる。
上記第1の解決手法を前提とした好ましい態様は、請求項2に記載のとおりである。すなわち、
前記視覚情報量算出手段は、企画対象車両のサイドウインドガラスの後部を通して視認される後側方車両の面積範囲について、小面積毎に背景輝度に対する後側方車両の表面輝度の割合と弁別輝度比とに基づいて部分視覚情報量を算出して、この部分視覚情報量の算出値を合計することにより最終的な視覚情報量を算出する、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、視覚情報量の算出についてより具体的な手法を提供することができる。
前記視覚情報量算出手段は、企画対象車両のサイドウインドガラスの後部を通して視認される後側方車両の面積範囲について、小面積毎に背景輝度に対する後側方車両の表面輝度の割合と弁別輝度比とに基づいて部分視覚情報量を算出して、この部分視覚情報量の算出値を合計することにより最終的な視覚情報量を算出する、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、視覚情報量の算出についてより具体的な手法を提供することができる。
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第2の解決手法を採択してある。すなわち、請求項3に記載のように、
背景輝度に応じた弁別輝度比を記憶した第1記憶手段と、
視覚情報量に応じた知覚率を記憶した第2記憶手段と、
企画対象となる自車両の車両企画モデルを記憶した第3記憶手段と、
自車両の後側方に位置する後側方車両モデルを記憶した第4記憶手段と、
前記第4記憶手段に記憶されている後側方車両モデルが前記第3記憶手段に記憶されている車両企画モデルに対して所定距離後方に位置するようにした状態で、車両企画モデルにおける運転者が車両企画モデルのサイドウインドガラスの後部を通して後側方車両モデルを直接視認している状態を示す合成画像を生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段で生成された画像から、後側方車両モデルについての直接視認範囲を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段で抽出された抽出範囲において、背景輝度と後側方車両の表面輝度と背景輝度を前記第1記憶手段に照合して得られる輝度弁別比とに基づいて、視覚情報量を算出する視覚情報量算出手段と、
前記視覚情報量算出手段で算出された視覚情報量を、前記第2記憶手段に照合して、後側方車両の知覚率を決定する知覚率決定手段と、
を備えているようにしてある。上記第2の解決手法によれば、モデル系を用いたシミュレーション手法を用いつつ、請求項1に対応した効果を得ることができる。
背景輝度に応じた弁別輝度比を記憶した第1記憶手段と、
視覚情報量に応じた知覚率を記憶した第2記憶手段と、
企画対象となる自車両の車両企画モデルを記憶した第3記憶手段と、
自車両の後側方に位置する後側方車両モデルを記憶した第4記憶手段と、
前記第4記憶手段に記憶されている後側方車両モデルが前記第3記憶手段に記憶されている車両企画モデルに対して所定距離後方に位置するようにした状態で、車両企画モデルにおける運転者が車両企画モデルのサイドウインドガラスの後部を通して後側方車両モデルを直接視認している状態を示す合成画像を生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段で生成された画像から、後側方車両モデルについての直接視認範囲を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段で抽出された抽出範囲において、背景輝度と後側方車両の表面輝度と背景輝度を前記第1記憶手段に照合して得られる輝度弁別比とに基づいて、視覚情報量を算出する視覚情報量算出手段と、
前記視覚情報量算出手段で算出された視覚情報量を、前記第2記憶手段に照合して、後側方車両の知覚率を決定する知覚率決定手段と、
を備えているようにしてある。上記第2の解決手法によれば、モデル系を用いたシミュレーション手法を用いつつ、請求項1に対応した効果を得ることができる。
上記第2の解決手法を前提とした好ましい態様は、請求項4以下に記載のとおりである。すなわち、
前記知覚率決定手段で決定された知覚率に基づいて、後側方車両モデルの直接視認範囲が変更されるように前記車両企画モデルを修正するモデル修正手段をさらに備えている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、所望の知覚率を有する車両をすみやかに企画することができる。
前記知覚率決定手段で決定された知覚率に基づいて、後側方車両モデルの直接視認範囲が変更されるように前記車両企画モデルを修正するモデル修正手段をさらに備えている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、所望の知覚率を有する車両をすみやかに企画することができる。
前記知覚率決定手段で決定された知覚率に基づいて、後側方車両モデルの位置となる前記所定距離を修正する位置修正手段をさらに備えている、ようにしてある(請求項5対応)。この場合、運転者が所定の知覚率以上でもって後側方車両を知覚することが可能な後側方車両までの距離を評価することができる。
前記視覚情報量算出手段は、前記直接視認範囲を示す画像を構成する個々の画素毎に、背景輝度に対する後側方車両の表面輝度の割合に関する値と弁別輝度比とに基づいて部分視覚情報量を算出して、この各画素毎の部分視覚情報量を画像全体について合計することにより最終的な視覚情報量を算出する、ようにしてある(請求項6対応)。この場合、視覚情報量の具体的な算出手法が提供される。
背景輝度が、夜間に応じた空間の輝度として設定され、
後側方車両の表面輝度が、黒色に対応した輝度として設定されている、
ようにしてある(請求項7対応)。この場合、運転者が後側方車両をもっとも知覚しずらい環境下における知覚率を評価する上で好ましいものとなる。
後側方車両の表面輝度が、黒色に対応した輝度として設定されている、
ようにしてある(請求項7対応)。この場合、運転者が後側方車両をもっとも知覚しずらい環境下における知覚率を評価する上で好ましいものとなる。
本発明によれば、輝度を考慮した視覚情報量を用いることにより、後側方車両の直接視認性の評価を定量的に精度よく行うことができる。
図1において、車線R1を走行している自車両が符合Vで示される。車線V1の左側方にある隣の車線R2を走行している後側方車両として、自車両Vに近い後側方車両がVT1で示され、この後側方車両VT1の後方に位置する後側方車両がVT2として示される。また、運転者によって左側に直接的に視認できる直接視界がE1で示され、自車両Vの左側のサイドミラーによって運転者により間接的に視認できる間接視界がE2で示される。
前方の後側方車両VT1は、その前部の一部のみが直接視界E1に存在するものの、運転者からは後側方車両VT1を知覚できないぎりぎりの範囲で後方距離に存在した状態とされている。このときの後側方車両VT1の自車両Vからの離間距離L1として示される。また、後方の後側方車両VT2は、その側部の一部のみが間接視界E2に存在するものの、運転者からは後側方車両VT2を知覚できないぎりぎりの範囲まで自車両Vに近い後方距離に存在した状態とされている。このときの後側方車両VT2の自車両Vからの離間距離L2として示される。そして、L2−L1が、直接視界によってもまた間接視界によっても後側方車両を知覚することのできない死角量(死角距離)となる。
上記死角量は小さいほど好ましく、特に、後側方車両VT1が後に位置していても(距離L1が大きくなっても)、後側方車両VT1を運転者が知覚できるようにすることが望ましいものとなる。本発明では、後述するように、後側方車両VT1が直接視界E1内に存在するときに、この後側方車両VT1を運転者が知覚可能な知覚率を定量的に評価できるようにしたものとなっている。なお、図1では右ハンドル車を前提としているが、以下の図2〜図7は、左ハンドル車を前提としているものとなっている。
図2は、左ハンドル車で運転者が助手席側の後側方を振り返ったときに、後側方車両VT(図1におけるVT1対応)が目視される状態例を示す。この図2では、自車両Vが、リアサイドウインドガラス10と、その後方にクオータサイドウインドガラス11とを有する例が示される。リアサイドウインドガラス10を通して後側方車両VT1を物理的に直接視認可能な面積はA1となり、クオータサイドウインドガラス11を通して後側方車両VT1を物理的に直接視認可能な面積はA2となる。この面積A1とA2の合計面積が、後述する視覚情報量の算出の際に用いられる面積範囲となる。
図3は、運転者が後側方を振り返ったときに、後側方車両VT1が目視された状態の別の例を示す。この図3では、自車両Vが、図2とは異なり、リアサイドウインドガラス20の後方にクオータサイドウインドガラスを有しないものとされている。ベルトラインBL1を図3実線で示すように低い位置に設定したときに、リアサイドウインドガラス20を通して物理的に直接視認可能な面積はB1となる。また、上記ベルトラインBL1を図3破線で示すように高い位置に設定したときに、リアサイドウインドガラス20を通して物理的に直接視認可能な面積はB2となる。この面積B1あるいはB2が、後述する視覚情報量の算出の際に用いられる面積範囲となる。
上記のような面積範囲A1、A2、B1、B2は、企画車両のベルトライン高さ、CピラーやDピラーの前後方向位置や長さ、内装材の車室内への突出状況等々により種々変化されることになる。本発明では、運転者による後側方車両VTの知覚率がどの程度かを容易かつ定量的に評価できるようにしてある。また、この知覚率が所定値以上となるように、企画車両での面積範囲A1、A2(あるいはB1またはB2)を区画する部分を修正して、所望の知覚率を有する車両を容易に企画することができる。
図4は、直接視界でもって物理的に視認される後側方車両VTの面積(図2のA1+A2、あるいは図3のB1またはB2)をパラメータとして、知覚率を設定した参考用の特性線αを示す。この参考用の特性線αは、背景(空間)を夜間と昼間の2種類とし、後側方車両VTの表面色を白色と黒色との2種類としたときに、多くの被験者による実験結果から得られた特性となっている。なお、特性線αよりも上の領域が知覚可能領域となる。
図4から明かなように、面積と知覚率とは特性線αでほぼ対応付けられるものの、夜間でかつ後側方車両の表面色が黒色の場合は、特性線αから知覚できない領域側へ大きくずれてしまうことが理解される(対応付け不十分)。
一方、図5は、面積を用いるものの、さらに輝度(輝度比)というパラメータをも考慮して設定された視覚情報量をパラメータとして、知覚率との関係を対応付けたものが示される。図5から明かなように、視覚情報量をパラメータとして知覚率を対応付けた場合は、夜間でかつ後側方車両の表面色が黒色であっても、特性線βにきちんと対応したものとなる。
次に、上記視覚情報量について説明する。まず、図6は、輝度弁別特性を示す。輝度弁別特性は、背景輝度と弁別輝度比との対応関係を示すものであり、その特性線がγで示される。この特性線γよりも上の領域では、知覚可能な領域となり、特性線γよりも下の領域では知覚できない領域となる。この図6の特性は、運転者つまり人間が、物体がもつ輝度比(背景輝度に対する後側方車両の表面輝度と考えることができる)と知覚閾の差が大きくなると、知覚可能な情報量が大きくなるということをも示している。換言すれば、図6に示す特性は、特性線γよりも下の領域にあるときは、後側方車両VTが物理的に視認できる面積を有していたしても、運転者によっては知覚できないものになることを意味する。
物体がもつ輝度比として、背景輝度に対する後側方車両VTの表面輝度の割合で示すことができ、実施形態では、この割合を対数(より具体的には常用対数)化して示してある。この対数化された輝度比は、運転者の知覚レベルを示す数値となる。一方、図6について前述したように、後側方車両がある面積を有するものとして直接視界内に存在しても、運転者が知覚できない弁別輝度比がある。よって、上記物体がもつ輝度比から弁別輝度比を差し引いた減算値に基づいて、運転者による知覚率というものを評価することが可能となる。
具体的には、後側方車両VTが物理的に視認可能な面積範囲について、小面積毎に(画像処理する場合は各画素毎に)、上記減算値を部分視覚情報量として算出し、この部分視覚情報量を上記面積範囲全体(画素数全体)について合算することにより、最終的な視覚情報量Iを算出することができる。最終的な視覚情報量の算出式が、次式に示される。
なお、輝度は、輝度規格となる「ITU−BT.709」を用いて、次式によって得るようにしてある。式中、Rはレッド(赤色)、Gはグリーン(緑色)、Bはブルー(青色)を示す(各色はR、G、Bの混合割合で決まるので、この混合割合を知ることにより輝度を算出することができる)。
輝度Y=0.2126×R+0.7152×G+0.0722×B
上記のようにして得られた最終的な視覚情報量Iが、図5に示す視覚情報量として用いられることになる。図7は、図5に示す特性に基づいて得られた知覚率が適正であり、実際的なものであることを示す。すなわち、図7は、複数の実車について、視覚情報量から得た理論的な知覚率に応じた理論死角量を実線で示してあり、多くの被験者による体験的に得た実際の死角量が理論死角量と十分に相関関係を有している、ということが理解される。
上記のようにして得られた最終的な視覚情報量Iが、図5に示す視覚情報量として用いられることになる。図7は、図5に示す特性に基づいて得られた知覚率が適正であり、実際的なものであることを示す。すなわち、図7は、複数の実車について、視覚情報量から得た理論的な知覚率に応じた理論死角量を実線で示してあり、多くの被験者による体験的に得た実際の死角量が理論死角量と十分に相関関係を有している、ということが理解される。
特に、自車両Vをある企画車両モデルとし、後側方車両VT(図1に示すVT1対応)を自車両Vから所定距離後方に位置する後側方車両モデルとして想定して、シミュレーションを行うことにより(前述した面積A1+A2、B1あるいはB2の面積範囲について視覚情報量の算出を行う)、ある企画車両についての後側方車両に対する知覚率を知ることができる。この知覚率が所望値よりも低ければ、企画車両について外形デザイン、内装デザインやその色等を修正して、知覚率が所望値を満たすようにすることができる。
図8は、企画車両を、後側方車両の知覚率を考慮してシミュレーション的に評価するための制御系統例が示される。この図8において、Uは、マイクロコンピュータを利用して構成されたシミュレーション実行用のコントローラ(制御ユニット)を示す。このコントローラUには、記憶手段M1〜M4、キーボードやマウス等の入力手段(操作手段)K、ディスプレイ(スクリーン)Dが対応づけられる。
記憶手段M1には、図6に示す輝度弁別特性(特性線γ)が記憶されている。記憶手段M2には、図5に示す特性(特性線β)が記憶されている。記憶手段M3には、ある企画車両についてのモデル系となる3次元設計データが記憶されている。記憶手段M4には、後側方車両についてのモデル系となる3次元データが記憶されている。なお、実施形態では、後側方車両のモデルとしては、運転者が知覚しにくい小型乗用車として一定のものに設定してある(フロントウインドガラスの前方に突出するボンネットを有して、車両前部の面積が相対的にトラック等の車両に比して小さく、しかも数多く市販されているものを考慮した設定)。
次に、図9に示すフローチャートを参照しつつ、コントローラUの制御内容(シミュレーション内容)について説明する。なお、以下の説明でQはステップを示す。まず、Q1において、記憶手段M3に記憶されている企画車両のモデルが読み込まれる。次いで、Q2において、読み込まれた企画車両のモデルに基づいて、直接視界に関する画像が生成される。すなわち、運転者が助手席側の後側方に向けて振り返ったときに対応した画像が生成されて、図2や図3に対応した画像となるが、後側方車両が存在しない画像となる。この後、Q3において、記憶手段M4に記憶されている後側方車両のモデルが読み込まれて、Q2で生成された画像に、後側方車両の画像が合成される(図2、図3において後側方車両が存在した画像に対応)。
Q3の後、Q4において、画像中における後側方車両の後方距離が、所定の基準距離として設定される(基準距離にある後側方車両の知覚率が所定値以上になることを想定した設定)。この後、Q5において、画像中において視認される物理的な後側方車両の面積範囲が抽出される(図2のA1、A2の抽出や、図3のB1あるいはB2の抽出に対応)。なお、ディスプレイ(スクリーン)Dには、後側方車両を含む企画車両の画像が、例えば図2、図3のようにして表示される。
Q5の後、Q6において、Q5において抽出された面積範囲について、視覚情報量Iが前述のようにして算出される。この後、Q7において、算出された視覚情報量Iを、記憶手段M2に記憶されている図5に示す特性に照合して、知覚率が決定される。
Q7の後、Q8において、Q7で決定された知覚率が、企画車両を設計する者が意図する所定値以上であるか否かが判別される。このQ8の判別でYESのときは、設計者の意図を満足するときなので、Q9において、OK判定が行われる。OK判定された車両企画モデルは、評価された知覚率と共に、記憶手段M3あるいは別途設けた記憶手段に記憶される。
前記Q8の判別でNOのときは、Q10において、企画された車両のモデルが修正された後、Q2以降の処理が行われる。Q10でのモデル修正は、要約すれば、Q5で抽出される面積範囲の拡大であり、このために、企画車両の外形デザインや内装材のデザイン等が修正されることになる。この修正は、入力手段Kを操作して、ディスプレイDに表示されている画像を修正することにより行われる。
このようにして、企画された車両について、運転者による後側方車両の実際の知覚率が評価されることになる。なお、Q8で示す所定値は、必ずしもある一定値とする必要のないものである。すなわち、例えば、女性や高齢者のユーザが多いと想定される企画車両については、視界確保優先から、知覚率を大きい値(例えば90%)に設定する一方、スポーツカーのような運転を楽しむことを優先した企画車両では、知覚率を小さい値(例えば70%)にする等のことが行われる。なお、Q8の判別でYESで、知覚率が所定値よりもかなり大きいときは、Q5で抽出される面積を小さくするように企画車両モデルを修正することもできる(所望の知覚率を満足する範囲で、デザイン等を優先したモデル修正を行うことも可能)。
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。間接視界の知覚率は、運転者は大きく後を振り返る必要のないことから、後側方車両の知覚率に比して良好となる傾向にあるものの、直接視界の知覚率の決定と同様に、視覚情報量Iを用いて評価することもできる(この場合、図1において、例えば直接視界における知覚率が所定値となるときの距離L1を決定し、間接視界における知覚率が所定値となるときの距離L2を決定して、このL1とL2とから企画車両における死角量を評価することもできる)。モデル系を用いることなく、企画車両の試作品や設計図面そのものから視覚情報量を得るようにすることもできる。図9のQ10のモデル修正に代えてあるいは加えて、後側方車両モデルの位置となるQ4での基準距離を修正するようにしてもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
本発明は、運転者による後側方車両の知覚率を考慮した車両を企画する際に用いることができる。
VT:後側方車両
A1、A2、B1、B2:後側方車両の面積範囲
α:特性線(後側方車両の面積をパラメータとする知覚率の設定)
β:特性線(視覚情報量をパラメータとする知覚率の設定)
γ:特性線(背景輝度をパラメータとする弁別輝度比の設定)
U:コントローラ
M1〜M4:記憶手段
K:入力手段
D:ディスプレイ
10、11、20:サイドウインドガラス
A1、A2、B1、B2:後側方車両の面積範囲
α:特性線(後側方車両の面積をパラメータとする知覚率の設定)
β:特性線(視覚情報量をパラメータとする知覚率の設定)
γ:特性線(背景輝度をパラメータとする弁別輝度比の設定)
U:コントローラ
M1〜M4:記憶手段
K:入力手段
D:ディスプレイ
10、11、20:サイドウインドガラス
Claims (7)
- 背景輝度に応じた弁別輝度比を記憶した第1記憶手段と、
視覚情報量に応じた知覚率を記憶した第2記憶手段と、
企画対象車両のサイドウインドガラスの後部を通して視認される後側方車両の範囲について、背景輝度と第1記憶手段に記憶されている背景輝度に応じた弁別輝度比と後側方車両の表面輝度とに基づいて、視覚情報量を算出する視覚情報量算出手段と、
前記視覚情報量算出手段で算出された視覚情報量を第2記憶手段に照合して、後側方車両の知覚率を決定する知覚率決定手段と、
を備えていることを特徴とする車両企画支援システム。 - 請求項1において、
前記視覚情報量算出手段は、企画対象車両のサイドウインドガラスの後部を通して視認される後側方車両の面積範囲について、小面積毎に背景輝度に対する後側方車両の表面輝度の割合と弁別輝度比とに基づいて部分視覚情報量を算出して、この部分視覚情報量の算出値を合計することにより最終的な視覚情報量を算出する、ことを特徴とする車両企画支援システム。 - 背景輝度に応じた弁別輝度比を記憶した第1記憶手段と、
視覚情報量に応じた知覚率を記憶した第2記憶手段と、
企画対象となる自車両の車両企画モデルを記憶した第3記憶手段と、
自車両の後側方に位置する後側方車両モデルを記憶した第4記憶手段と、
前記第4記憶手段に記憶されている後側方車両モデルが前記第3記憶手段に記憶されている車両企画モデルに対して所定距離後方に位置するようにした状態で、車両企画モデルにおける運転者が車両企画モデルのサイドウインドガラスの後部を通して後側方車両モデルを直接視認している状態を示す合成画像を生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段で生成された画像から、後側方車両モデルについての直接視認範囲を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段で抽出された抽出範囲において、背景輝度と後側方車両の表面輝度と背景輝度を前記第1記憶手段に照合して得られる輝度弁別比とに基づいて、視覚情報量を算出する視覚情報量算出手段と、
前記視覚情報量算出手段で算出された視覚情報量を、前記第2記憶手段に照合して、後側方車両の知覚率を決定する知覚率決定手段と、
を備えていることを特徴とする車両企画支援システム。 - 請求項3において、
前記知覚率決定手段で決定された知覚率に基づいて、後側方車両モデルの直接視認範囲が変更されるように前記車両企画モデルを修正するモデル修正手段をさらに備えている、
ことを特徴とする車両企画支援システム。 - 請求項3において、
前記知覚率決定手段で決定された知覚率に基づいて、後側方車両モデルの位置となる前記所定距離を修正する位置修正手段をさらに備えている、ことを特徴とする車両企画支援システム。 - 請求項3ないし請求項5のいずれか1項において、
前記視覚情報量算出手段は、前記直接視認範囲を示す画像を構成する個々の画素毎に、背景輝度に対する後側方車両の表面輝度の割合に関する値と弁別輝度比とに基づいて部分視覚情報量を算出して、この各画素毎の部分視覚情報量を画像全体について合計することにより最終的な視覚情報量を算出する、ことを特徴とする車両企画支援システム。 - 請求項3ないし請求項6のいずれか1項において、
背景輝度が、夜間に応じた空間の輝度として設定され、
後側方車両の表面輝度が、黒色に対応した輝度として設定されている、
ことを特徴とする車両企画支援システム。
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Publication Number | Publication Date |
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