JP5921426B2 - ネオジム磁石分別用の回転ドラム、ネオジム磁石回収装置 - Google Patents

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この発明は、ネオジム磁石を内蔵した機器からネオジム磁石を効率的に回収することができる、ネオジム磁石分別用の回転ドラム、ネオジム磁石回収装置に関するものである。
現在、ネオジム磁石と呼ばれている希土類の一種を使用した磁石は、モータを中心として多くの製品に欠かせないものとなっている。
ネオジム自体の素材価値が他の希土類と比べて特段高価とは言えず、またよく添加される稀少価値の高いジスプロシウムの含有量も数%であるため、ネオジム磁石の価値は貴金属と比べると安価であったため、様々な製品からこのネオジム磁石を取り出しリサイクルを行うための技術開発及び、回収とリサイクルを行うスキームの構築は活発でなかった。
しかしながら、ここ数年に渡る国際情勢の変化からレアアースを再利用する試みがされている。
特許文献1では、モータをモータの巻線被膜の溶解温度以下に加熱する工程と、ステータ電機子巻線に減衰交流電流を印加し磁界を発生させる工程を用いて磁石の減磁を行い、ネオジム磁石を回収する技術を提案している。
特許第3636019号公報
市場に多く流通しているネオジム磁石を内蔵した機器、例えば、ハードディスクドライブは、2.5インチと3.5インチのサイズの物が多い。
ハードディスクドライブは、リサイクル家電4品目のように効率よく解体し各構成物を分離する手法は未だ確立されていない。
ハードディスクドライブの分別方法としては、もっぱら手作業による解体により基盤のみを分離する方法や、全体をそのまま、粉々に破砕する方法がある。
破砕すると破砕機の内部や他の鉄部材に磁石が密着したままとなり、ネオジム磁石を効率よく回収するのは困難である。
ネオジム磁石は、概ね成分の約65%が鉄、28%がネオジム、残りの数%がジスプロシウムという組成である。
ネオジム磁石の保持力は、磁石の中で最も強力であり、少量であっても完全に着磁されたネオジム磁石を使用している製品、構成物からネオジム磁石のみを分離することは、機械の故障を誘発し易く、非常に危険である。
また、ハードディスクドライブ内部のネオジム磁石は、ヨークと呼ばれる鉄に接着剤で取り付けられており、このヨークの大半はハードディスクドライブの筐体に螺子で固定されているので、そのまま破砕して性質の違いを用いて他の組成物と分離すること、特に鉄と分離することが困難である。
製品からネオジム磁石を分別する方法として、一般的には強磁性体が常磁性体に転移するキュリー温度まで磁石を加熱する手法や、交番減衰磁界を与えて脱磁を行う手法を取った上で、磁石を回収する方法がある。
巻き線の端子間に時間と共に減衰する電流を印加して、巻き線に発生した磁界を利用してネオジム磁石を減磁させるには、常温では20KA程度の大電流を流すことが必要となる。
しかし、一般的なモータの巻き線に20KAの大電流を流すと、端子もしくは巻き線が瞬時に損傷し必要な磁界が発生しない。
そこで、特許文献1では、製品を巻き線皮膜の溶解温度以下や許容冷媒温度以下となる100℃や130℃位以下の温度に一旦加熱して保持し、磁束密度を低下させた後、端子間に減衰交流電流を印加し、更に減磁する手法が記載されている。
しかし、この場合も、温度管理と高電流印加という2つの高エネルギーのパラメータを管理する必要が生じるためネオジム磁石の分別にコストと手間がかかるという課題があった。
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、ネオジム磁石を内蔵した機器ごとネオジム磁石を簡便に減磁させた後、破砕を行ってネオジム磁石と他の製品構成物とを分別する、ネオジム磁石分別用の回転ドラム、ネオジム磁石回収装置を提供することを目的とする。
この発明に係る、ネオジム磁石分別用の回転ドラムは、
ネオジム磁石を内蔵した機器の温度を摂氏150〜200度の温度まで昇温させ、ネオジム磁石の磁束密度を0.6〜1.2テスラに減磁した前記機器を破砕した破砕物の中のネオジム磁石破砕物を吸着させる回転ドラムであって、前記回転ドラムを脱磁する脱磁コイルを備えたものである。
この発明に係る、ネオジム磁石分別用の回転ドラムは、
ネオジム磁石を内蔵した機器の温度を摂氏150〜200度の温度まで昇温させ、ネオジム磁石の磁束密度を0.6〜1.2テスラに減磁した前記機器を破砕した破砕物の中のネオジム磁石破砕物を吸着させる回転ドラムであって、前記回転ドラムを脱磁する脱磁コイルを備えたものなので、
定期的に回転ドラムの脱磁を行うことができる。
この発明の実施の形態1に係るネオジム磁石回収装置の構成を示すブロック図である。 この発明の実施の形態1に係るネオジム磁石回収装置の動作のフローである。 この発明の実施の形態1に係るハードディスクドライブ内のネオジム磁石の形状と磁束密度の測定点を示す図である。 この発明の実施の形態1に係るネオジム磁石をキュリー温度以下の所定の各温度に加熱して5分間保持し、冷却した後の測定点における磁束密度の変化を示す図である。
実施の形態1.
以下、本願発明の実施の形態1に係るネオジム磁石の減磁方法、ネオジム磁石分別用の回転ドラム、ネオジム磁石回収装置を図を用いて説明する。
図1は、ネオジム磁石回収装置100(以下、装置100という)の構成を示すブロック図である。
減磁機2は、ネオジム磁石を内蔵した機器(ハードディスクドライブ1)を加熱してハードディスクドライブ1内のネオジム磁石5を減磁する装置である。
破砕機3は、減磁後のハードディスクドライブ1を所定の大きさになるまで破砕する装置である。
振動フィーダ12は、破砕物11を分別するための回転ドラム13に送る装置である。
回転ドラム13の所定の位置には、回転ドラム13に付着したネオジム磁石破砕物15を削ぎ落として回収する固定スクレッパ16を備えている。
脱磁コイル17は、回転ドラム13の脱磁をおこなうコイルである。
脱磁用電源18は、脱磁コイルに定期的に電流を流すコンデンサー内蔵した電源である。
図2は、装置100の動作のフローである。
まず、ハードディスクドライブ1を加熱工程で加熱し(S001)、次に、ハードディスクドライブ1ごと破砕し(S002)、破砕物11を分別する(S003)。
図3は、ハードディスクドライブ1内にあるネオジム磁石5の形状と後述する磁束密度の測定点を示す図である。
ネオジム磁石は、320〜340℃程度の温度に加熱すると、その磁束密度が0になることが知られている。
この温度のことをキュリー温度という。
図4は、ネオジム磁石5をキュリー温度以下の所定の各温度に加熱して5分間保持し、冷却した後の測定点7における磁束密度をそれぞれ計測したときの、加熱温度と、残留した磁束密度の関係を示すグラフである。
加熱前のネオジム磁石5は、概ね3.4Tの磁束密度を有している。
ネオジム磁石5を100℃〜130℃で加熱処理すると、未だ2T以上の磁束密度が残っており、非常に強力な磁石のままである。
ネオジム磁石5を150℃〜200℃で加熱処理すると、ネオジム磁石5の磁束密度は、フェライト磁石と同程度の約0.6〜1.2Tまで低下して、ネオジム磁石5の取り扱いが容易になる。
ネオジム磁石5の加熱方法は、ネオジム磁石5が所定の温度になるまで加熱できる手法であれば何でもよく、電気炉、高周波加熱によりハードディスクドライブ1全体を加熱する方法や、電磁波でハードディスクドライブ1内のネオジム磁石5のみを加熱する方法などが利用可能である。
図1の装置100では、ハードディスクドライブ1を、コンベヤで減磁機2に送り加熱処理する(図2、S001)。
加熱し、概ね5分程度保持し、冷却した後のハードディスクドライブ1は、内部のネオジム磁石5の磁束密度が上記のように減少してはいるが、ネオジム磁石5を容易にそのまま取り出すことはできない。
しかし、150〜200℃に加熱処理を行っておけば、ヨークとネオジム磁石5間の接着剤の接着強度は大きく低下しているので、加熱処理の時点でヨークとネオジム磁石5が分離もしくは、軽度の衝撃で分離可能な状態になっている。
そこで、ヨークとネオジム磁石5を確実に分離させ、なお且つ、ネオジム磁石のみを回収するために破砕機3により破砕処理工程を行う(図2、S002)。
破砕機3は、直径10mm〜20mmの穴の開いたスクリーンが付いた200rpm以下で回転する1軸もしくは2軸のせん断式破砕機である。
また、同様のスクリーン穴が付いた300rpm以下で回転する衝撃式破砕機であっても良い。
破砕処理の衝撃が大きすぎたり破砕機3のスクリーン穴のサイズが小さすぎると、ネオジム磁石5が粉々になってしまう。
したがって、ネオジム磁石5が5mm〜10mm程度のサイズとなるように破砕を行う必要がある。
図1に示すように、破砕機3に加熱処理後のハードディスクドライブ1を投入し、破砕物11がスクリーン穴を通過するまで破砕を行う。
スクリーン穴を通過したハードディスクドライブ1の破砕物11には、様々な部材の破片が含まれる。
従って、破砕物11からネオジム磁石5の破片のみを分別し回収する必要がある(図2、S003)。
ヨークに接着されていたネオジム磁石5は、破砕物11の中で、概ねヨークから分離した状態となっている。
破砕機3の本体、刃物、スクリーン等は鉄素材からなり、磁力の残ったネオジム磁石5が吸着しやすいが、後から次々に投入されるハードディスクドライブ1の破砕処理により、多少ネオジム磁石5の破片が吸着していても、次々と押し出されてスクリーンを通過する。
破砕物11は、ホッパー10にそのまま投入され振動フィーダ12に供給される。
ネオジム磁石5には磁力が残っているため、ネオジム磁石5の破片が鉄系の部材の破片に吸着してしまう恐れがある。
そのため、破砕物11は、堆積させずにすぐに振動フィーダ12に供給し、ネオジム磁石5の破片と鉄系部材の破片が吸着するのを防ぐのが好ましい。
振動フィーダ12の先端部の下方に鉄製の回転ドラム13を設置し、振動フィーダ12上の破砕物11の進行方向と同じ方向に一定速度で回転させる。
この回転ドラム13の表面に振動フィーダ12先端から落下した破砕物11が接触する。
磁性を帯びていない鉄系破砕物14(磁束密度が0)は、回転ドラム13の表面に吸着することなく回転ドラム13の表面を滑って前方のシュートに落下する。
一方、磁性を帯びているネオジム磁石破砕物15は、回転ドラム13の表面を滑り落ちず、磁力により回転ドラム13の表面に吸着したまま回転する。
回転ドラム13上に付着したネオジム磁石破砕物15は、固定スクレッパ16によってそぎ落とされ、後方のシュートで回収する。
このようにして、磁性を帯びているネオジム磁石破砕物15だけを分別して回収する。
鉄製の回転ドラム13は、ネオジム磁石5が吸着するため、中長期的には回転ドラム13自体が弱い磁性を帯びてしまう。
そうすると、回転ドラム13自体が磁性を帯びていない鉄系破砕物14を吸着し、後方のシュートに回収してしまう恐れがある。
これを防止するため、回転ドラム13を囲むように、回転ドラム13用の脱磁コイル17を取り付け、定期的にコンデンサーを内蔵した脱磁用電源18から電流を流して回転ドラム13の脱磁を行う。
以上のように、本発明の実施の形態に係るネオジム磁石の減磁方法、ネオジム磁石分別用の回転ドラム13、ネオジム磁石回収装置100によれば、ネオジム磁石5の磁束密度を、フェライト磁石と同程度の0.6〜1.2Tの磁束密度にコントロールすることが出来るので、ネオジム磁石5の取り扱いが容易で安全である。
また、ネオジム磁石5を他の物と一緒に破砕しても破砕の衝撃に打ち勝って破砕機3の内部に破片が吸着して残ることなく排出できる。
また、ネオジム磁石5には適度に磁束密度が残っているので、分別用の鉄材を用いてネオジム磁石の破片のみを吸着させることにより、容易に他の樹脂、鉄、金属類部材と分別、回収することができる。
尚、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
100 ネオジム磁石回収装置、1 ハードディスクドライブ、2 減磁機、
3 破砕機、5 ネオジム磁石、7 測定点、10 ホッパー、11 破砕物、
12 振動フィーダ、13 回転ドラム、14 鉄系破砕物、
15 ネオジム磁石破砕物、16 固定スクレッパ、17 脱磁コイル、
18 脱磁用電源。

Claims (5)

  1. ネオジム磁石を内蔵した機器の温度を摂氏150〜200度の温度まで昇温させ、ネオジム磁石の磁束密度を0.6〜1.2テスラに減磁した前記機器を破砕した破砕物の中のネオジム磁石破砕物を吸着させる回転ドラムであって、前記回転ドラムを脱磁する脱磁コイルを備えたネオジム磁石分別用の回転ドラム。
  2. ネオジム磁石を内蔵した機器の温度を摂氏150〜200度の温度まで昇温させ、ネオジム磁石の磁束密度を0.6〜1.2テスラに減磁する減磁機と、
    前記機器を破砕する破砕機と、
    請求項に記載のネオジム磁石分別用の回転ドラムとを備えたネオジム磁石回収装置。
  3. 前記機器がハードディスクドライブである請求項に記載のネオジム磁石分別用の回転ドラム。
  4. 前記機器がハードディスクドライブである請求項に記載のネオジム磁石回収装置。
  5. 前記回転ドラムが鉄製である請求項又は請求項に記載のネオジム磁石分別用の回転ドラム。
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