すなわち、電気集塵装置においては、集塵部で捕集した粉塵が、多かれ少なかれ剥離し、空中に飛散するという「再飛散」が宿命的現象として存在し続けている。再飛散すると粉塵の捕集度合いを表わす集塵効率が低下し、また、電荷を帯びた再飛散粒子が、電気集塵装置の後流側の壁面に付着して、壁面を汚すという問題がある。また、再飛散を軽減するためには、稼動した集塵部の洗浄周期を短くする対処方法が用いられるが、ユーティリティイー(電気・水)の使用量増大を招くという問題がある。
一方、従来の構成による電気集塵装置においては、接地極板の面全体が効率的に活用されていない、という課題が存在する。また、極板の風下端では、静電気力とは別の力が働き、この部分に捕集された粉塵が再飛散するという課題が存在する。これらの課題を見極めるために、従来の電気集塵装置について、二つの運用実態調査を行った。その結果を、図16から図19を用いて、以下に説明し、課題を具体化する。
図16は、略同じ大きさ、長さの荷電極板105Aと接地極板105Bで集塵部105を構成した従来型の電気集塵装置において、長期間使用した後の極板表面の粉塵付着状況を示した写真(図16(16−1):接地極板105B、図16(16−2):荷電極板105A)である。通風方向は、図16にむかって左から右である。
図16(16−1)に示すように、接地極板105Bにおいては、風上の領域T1の方が、風下の領域T2よりも黒々と色が濃い。これは風上の領域T1に、多くの粉塵が付着・捕集されていることを示している。一方、風下の領域T2では、粉塵付着が少ないことを示している。これらの事実から、接地極板105Bは、風上半分が集塵に効果的に寄与し、風下半分の集塵寄与の割合が低いことが判る。
図16(16−2)に示すように、荷電極板105Aにおいては、風上半分の領域S1エリアは粉塵付着で色濃いが、風下半分の領域S2には殆ど粉塵が付着しておらず、極板の金属地肌が、はっきりと現われている。風上半分の領域S1に粉塵が色濃く付着した理由は、接地極板105Bの領域T1エリアに静電気力により付着した粉塵が再飛散し、この時、電荷を帯び、その一部が、対向する荷電極板105Aの領域S1に、静電気力により付着したからである。一方、風下の領域S2では、粉塵付着が少ない。その理由は、領域S2エリアまで飛来した再飛散粉塵は、再飛散時の帯電が不十分であったと考えられ、そのため、静電気力により荷電極板105A側に引き寄せられることがもはや困難になったためと考えられる。
以上の実態調査から、電気集塵装置の集塵部においては、接地極板と荷電極板の風上半分が、静電気力による集塵に有効に寄与し、風下半分は、あまり寄与していなことが判明した。すなわち、接地極板、荷電極板の表面全体が効率的に活用されておらず、通風方向の極板長さを必要以上に長くしていたため、高コスト化と大型化を招いていたことが分かる。
図17は、従来型の電気集塵装の集塵部105において、長時間使用した後の集塵部105の荷電極板105Aと接地極板105Bの風下端部分の写真(図17(17−1):荷電極板105A、図17(17−2):接地極板105B)である。通風方向は図17に向かって左から右である。尚、この実態調査の対象は、一つ目の実態調査の対象とは異なるものである。
図17(17−1)に示すように、荷電極板105Aの風下端部bには、集中して粉塵が堆積していることが判る。また、図17(17−2)に示すように接地極板105Bの風下端部cにも集中して粉塵が堆積していることが判る。(なお、写真撮影時に一部の堆積粉塵が剥離・脱落し、図17の如く不連続な堆積状態を示すようになった。すなわち、極板の端部線上の堆積粉塵は、剥離し易かったという事実を付け加えておく。)。
このメカニズムについて説明する。
図18に示すように、従来型の電気集塵装置の集塵部105は、荷電極板105Aに、直流高圧電源109からの電圧が印加され、荷電極板105Aと平行して接地極板105Bが配置され、接地されている。通風方向は左から右である。
集塵部105の通風方向のほぼ中央部の領域aでは、電気力線は、荷電極板105Aから接地極板105Bに向かって、平行かつ均一に発している。この領域aは平等電界であり、帯電した粉塵が飛来すると、静電気力が作用し、粉塵の一部が捕集される。これは、電気集塵の基本原理に他ならない。一方、荷電極板105Aの風下端部bと接地極板105Bの風下端部cでは、電気力線は、風下端部b、cに集中するように湾曲して、不平等電界の領域となっている。この不平等電界中に飛来した粉塵の挙動について、図19を用いて説明する。
図19(19−1)では、飛来した粉塵が、荷電極板105Aの風下端部bと接地極板105Bの風下端部cに向かい、そして堆積する様子が示されている。不平等電界中では、粒子は、静電気力ではなく、グラディエント力によって、より強い電界の方向に引き寄せられることが、以前から知られている。(例えば、福田節雄「電気収塵法と其応用」電気学会雑誌 昭和5年1月) グラディエント力とは、誘電体が不平等電界中で、より強電界の方向に移動するように受ける力を指す。すなわち、荷電極板105Aの風下端部bと接地極板105Bの風下端部cにおいては、グラディエント力によって、両極板の風下端部に粉塵が堆積する。そして、図19(19−2)に示すように、荷電極板105Aの風下端部bと接地極板105Bの風下端部cにグラディエント力によって堆積した粉塵は、過剰に堆積すると剥離し易く、剥離するときには、付着していた各極板の電気極性で帯電して再飛散する。以上をまとめると、荷電極板105Aの風下端部bと接地極板105Bの風下端部cには、グラディエント力により、粉塵が堆積し、過剰に堆積すると帯電粉塵が再飛散する。即ち、この堆積と再飛散が継続的に発生しているといえる。
すなわち、従来の電気集塵装置においては、荷電極板105Aの風下端部bと接地極板105Bの風下端部cにおいては、局所的に堆積した粉塵が、再飛散しやすく、集塵効率を低下させていた。そして、そのまま放出された再飛散粉塵は、帯電されているので、電気集塵装置の後流の壁面に付着し、壁面を汚していたという課題がある。
そこで本発明は、集塵部の極板全体を有効に活用するとともに、再飛散の少ない電気集塵装置を提供することを目的とする。
そして、この目的を達成するために、本発明は、荷電極板と接地極板を交互に平行に配置した集塵部と、前記荷電極板と同一平面の風下側に第2の荷電極板となる電圧極板を有した電圧極板部を配置した電気集塵装置において、前記集塵部では前記荷電極板と前記接地極板との間に平等電界が形成され、前記電圧極板部では上流側の前記接地極板との間に不平等電界が形成されるものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
本発明によれば、荷電極板と接地極板を交互に平行に配置した集塵部と、前記荷電極板と同一平面の風下側に第2の荷電極板となる電圧極板を有した電圧極板部を配置した電気集塵装置において、前記集塵部では前記荷電極板と前記接地極板との間に平等電界が形成され、前記電圧極板部では上流側の前記接地極板との間に不平等電界が形成されるものである。このような構成によって、接地極板の風下端に、グラディエント力により堆積した粉塵が過剰となって再飛散しても、接地極板の風下端部よりも風下側に設けた荷電極板で、再飛散粉塵を静電気力により捕集することができるものである。その結果、このような電気集塵装置は、高い集塵効率を示し、かつ、後流の壁面汚れの軽減、洗浄周期の長期化によるユーティリティー(電気・水)の使用量低減という効果を得ることができる。
以下、本発明の前提および実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(前提の形態1)
図1、図2を用いて第1の前提の形態による電気集塵装置について説明する。
図1に示すように、本前提の形態の電気集塵装置は、前段の帯電部8と後段の集塵部1により構成される。帯電部8では、直流高圧電源11の電圧V11が放電極9に印加され、帯電部の接地極板10との間にコロナ放電(図示せず)が発生し、風上から流入する粉塵を帯電する。
集塵部1は、荷電極板2と接地極板3が交互に平行に配置されている。荷電極板2には、直流高圧電源4から電圧V4が印加され、接地極板3は接地されている。通風方向は荷電極板2と接地極板3と平行に、左から右である。荷電極板2の風下端部bは、接地極板3の風下端部cよりも風下に位置している。
図1に示すように、両極板が対向する領域aでは、荷電極板2から接地極板3に向かって、平行かつ均一に発せられる電気力線を示す矢印が表示されている。このエリアは平等電界であり、帯電した粉塵が飛来すると、静電気力が作用し、粉塵の一部が捕集される。
一方、接地極板3の風下端部cについては、湾曲して風下端部cに集中する電気力線の矢印が示すように、不平等電界の領域となっている。
この不平等電界中に飛来した粉塵の挙動について、図2を用いて説明する。
図2(2−1)に示すように、接地極板3の風下端部c付近に飛来した粉塵は、グラディエント力により、風下端部cに引き寄せられ、堆積する。そして、図2(2−2)に示すように、接地極板3の風下端部cに堆積した粉塵は、多量に堆積すると剥離し、このとき、付着していた極板と同じ負の電気極性で帯電して再飛散する。この再飛散した粉塵は、帯電した電気極性と逆の極性の荷電極板2に引き寄せられ、その領域dに静電気力で捕集される。
このように、接地極板3の風下端部cよりも荷電極板2の一部を風下側に設けることによって、接地極板3から剥離して再飛散した粉塵を捕集することができる。
また、荷電極板2、接地極板3の両方の表面の風上側から風下まで極板全体を使って粉塵を捕集することができ、効率よく粉塵の捕集ができる。
また、同等の集塵効率を得ようとしたときに、接地極板3を小型にすることが出来るので、使用する材料を少なく押えることが可能となる。
(実施の形態1)
図3を用いて第1の実施の形態による電気集塵装置について説明する。
図3に示すように、本実施の形態の電気集塵装置の集塵部1は、荷電極板2と接地極板3が平行に配置されている。荷電極板2には、直流高圧電源4から電圧V4が印加され、接地極板3は接地されている。通風方向は左から右である。荷電極板2の風下端部bは、接地極板3の風下端部cと同じ位置にある。
そして、本実施の形態の最も特徴的な部分を説明する。集塵部1の風下側に、第2の荷電極板となる電圧極板6を平行に並べた電圧極板部5を配置した点である。電圧極板6には、直流高圧電源7から電圧V7が印加されている。電圧極板6同士の間隔は、集塵部1の荷電極板2同士の間隔に等しく、荷電極板2の風下方向の延長面上に、電圧極板6が配置されている。ここで、集塵部1においては、荷電極板2と接地極板3とが平行に向かい合わせて設けられているので、全体は主として平等電界が形成される。一方、電圧極板部5においては、対向する位置に接地面がないため、上流側の接地極板3との間に不平等電界を形成することになる。
このように、荷電極板2と同一平面の風下側に、第2の荷電極板となる電圧極板6を有した電圧極板部5を配置することで、接地極板3の風下端部cから剥離して飛散した粉塵をさらに下流側の電圧極板部5が捕集することができる。
また、この電圧極板部5に印加する直流高圧電源7の電圧V7は、集塵部1の荷電極板2に印加される直流高圧電源4の電圧V4よりも高く設定する。すなわち、V7 > V4となるようにするよい。ものである。V7 >V4 とすることで、再飛散して電圧極板部5に飛来する粉塵を、より強力な静電気力で捕集することができるものである。また、電圧極板部5には対向する接地された極板が存在しないので、絶縁破壊および火花(スパーク)の懸念が大幅に低減できる。よって、電圧極板6に印加される電圧V7を、荷電極板2に印加される電圧V4よりも上昇させることが可能になる。そして、集塵部1の極板間隔(荷電極板2と接地極板3との距離)に比べ、電圧極板部5では、隣接する極板同士の間隔(電圧極板6同士の間隔)が2倍になっている。従って、印加する電圧V7はV4の2倍程度とすることが可能であり、その分、粉塵の捕集効率が向上する。
(前提の形態2)
図4を用いて第2の前提の形態による電気集塵装置について説明する。第1の前提および実施の形態と同じ構成については同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
本前提の形態は、風上から、帯電部8、集塵部1、電圧極板部5の順に配置された2段式の電気集塵装置である。帯電部8は、放電極9と接地極板10により構成され、放電極9には、コロナ放電で粉塵を帯電させるための電圧V11(例えば11kV)が直流高圧電源11から供給されている。
集塵部1の荷電極板2には、前提および実施の形態1同様、直流高圧電源4から電圧V4(例えば8.3kV)が印加されている。
ここで、帯電部8の放電極9に印加する電圧V11は、コロナ放電を発生させるため、通常大きな電圧を印加し、集塵部1の荷電極板2に印加する電圧V4よりも大きくなっている。
よって、本前提の形態の電気集塵装置は、帯電部8に用いる直流高圧電源11を、電圧極板部5にも共通で用いることで、電圧極板部5について、専用の直流高圧電源を設けることを省略して、低コスト化を図ることができるのである。
(前提の形態3)
図5を用いて第3の前提の形態による電気集塵装置について説明する。
図5に示すように、本前提の形態の電気集塵装置(図示せず)の集塵部1は、荷電極板2と接地極板3が平行に配置されている。荷電極板2には、直流高圧電源4から電圧V4が印加され、接地極板3は接地されている。通風方向は左から右である。接地極板3の風下端部c部は、荷電極板2の風下端部b部よりも風下に位置している。
ここで、荷電極板2の風下端部bに付着する粉塵についても、同様の再飛散メカニズムが存在する。そのため、すなわち、このメカニズムは、図5に示すように、荷電極板2の風下端部bからは、接地極板3の風下の領域eに向かって、湾曲して電気力線矢印が伸展している。特に電気力線が密集する荷電極板2の風下端部b近傍の電界が最も強い。この電気力線が湾曲する領域は、不平等電界の領域である。
この不平等電界中に飛来した粉塵(図示せず)は、グラディエント力により、電界が最大となる荷電極板2の風下端部bに向かい堆積する。そして、荷電極板2の風下端部bに多量に堆積した粉塵は、剥離し、このとき、付着していた荷電極板2の電気極性で帯電(正に帯電)して再飛散する。そして、この再飛散した粉塵は、接地極板3の領域eに、静電気力で捕集される。
このように、荷電極板2の風下端部bよりも接地極板3の一部を風下側に設けることによって、接地極板3から剥離して再飛散した粉塵を捕集することができる。
また、同等の集塵効率を得ようとしたときに、荷電極板2を小型にすることが出来るので、使用する材料を少なく押えることが可能となる。
(前提例1)
図6は、図2(2−1)の構成による電気集塵装置において、以下の条件で粉塵捕集実験を実施した後の極板(荷電極板2、接地極板3)の写真である。
集塵部1の荷電極板2と接地極板3の極板間隔は15mm、荷電極板2と接地極板3の間に印加した電圧はDC+13kVとした。通過する粉塵はディーゼルエンジンの排気ガスを空気で希釈し、粉塵濃度が約0.5mg/m3の条件で、9m/sの通過風速で通風した。運転時間は12時間とした。
また、荷電極板2の風下端部bは、接地極板3の風下端部cよりも約40mm風下側に長くした。図6では、色が濃い(黒い)部分に多く粉塵が付着していることを示す。
図6に示すように、荷電極板2の接地極板3の風下端部cよりも下流側の領域dに、再飛散した粉塵が捕集されていることが、黒々と色が濃くなっていることから判る。
なお、極板間隔を5mmから20mmの範囲で変化させた実験でも同様の結果であった。また、極板間に印加する電圧の最大値は、極板間隔1mmにつき1kVであり、印加する電圧の最小値はその半分とした。
また、なお、印加する電圧は正電圧であっても負電圧であっても同様の結果が得られる。
(前提例2)
第2の前提例は、第1の前提の形態の構成において、接地極板3の風下端部cの位置を変えて粉塵の捕集実験をしたものである。
図1に示すように、荷電極板2の長さをL1とし、接地極板3の風下端部cと荷電極板2の風下端部bとの距離をD1とする。
集塵部1の通風方向の全長を伸ばすことは、電気集塵装置の集塵効率を向上させる効果がある。本前提例においては、限られたスペースの範囲内で、集塵効率の高い極板の大きさを実験により確かめることにした。以下にその実験内容と結果を示す。
実験用の電気集塵装置は、帯電部(図示せず)の後方に、荷電極板2と接地極板3を、10mm間隔で複数枚を互い違いに平行に配置した集塵部1を設けたものである。荷電極板2に+8kVの直流電圧を印加した状態で、粉塵濃度0.5mg/m3のディーゼル粉塵を含む空気を、9m/sの風速で、16時間、通風し集塵実験を行なった。全ての極板の板厚は0.4mmであり、材質はSUS304である。荷電極板2の寸法は、高さ120mm、全長360mmである。
一方、接地極板3については4種類を用いた。接地極板3の全長を、荷電極板2の全長の1倍のものと、0.25倍と0.5倍と0.75倍のものを用意した。比較し易いように、荷電極板2、接地極板3の風上側の位置を同じ位置とした。そして、接地極板3の風下端部cから荷電極板2の風下端部bまでの距離D1が、荷電極板2の全長L1に対して、0倍(ケース1)、0.75倍(ケース2)、0.5倍(ケース3)、0.25倍(ケース4)の4パターンで実験した。なお、荷電極板2、接地極板3の高さ寸法は同じである。
ケース1は、従来技術そのものであり、比較の基準とする。そして、各ケース16時間の集塵稼動後に、各極板を観察するものとした。観察の方法は各極板の各部の光学顕微鏡写真(50倍率)を、二値画像化ソフト(Photo Filter)を用いて白黒の二値画像に変換し、粉塵付着を示す黒色部分の%面積を、二値画像解析ソフト(Pixel Counter)を用いて算出するものである。
図7は、ケース1における荷電極板2、接地極板3の集塵状態を示すものである。黒い部分が粉塵が付着している部分である。矢印は通風方向であり、接地極板3も荷電極板2も風の流れ方向の下流に行くに従って、付着した粉塵(黒色部)が少なくなっていることが分かる。各画像下部に示される数値は、粉塵が付着したことを示す黒色部の%面積(各画像の黒色部面積÷全面積の%値)である。この「黒色部%面積」は、実際の黒色部面積に比例した値であり、実面積と同等に扱うことができる。この値が大きいほど、粉塵が多く付着していることを示している。即ち、極板各部における、集塵能力の大きさを示している。ケース1における接地極板3の黒色部%面積の合計は、130%である。また、荷電極板2の黒色部%面積の合計は、38%である。よって、このケース1では、接地極板3と荷電極板2の黒色部%面積の総計168%となり、これがケース1の集塵部の集塵能力である。
図8は、ケース2における荷電極板2、接地極板3の集塵状態を示すものである。すなわち、接地極板3の風下端部cと荷電極板2の風下端部bの距離D1は0.75×L1となる。ケース2においてもケース1同様の解析を行なった。ケース2における集塵能力は、56%(接地極板3)+115%(荷電極板2)=171%となった。
同様に、図9は、ケース3における荷電極板2、接地極板3の集塵状態を示すものである。すなわち、接地極板3の風下端部cと荷電極板2の風下端部bの距離D1は0.5×L1となる。図10は、ケース4における荷電極板2、接地極板3の集塵状態を示すものである。すなわち、接地極板3の風下端部cと荷電極板2の風下端部bの距離D1は0.25×L1となる。
ケース1からケース4における集塵能力を示す黒色部%面積を集計した結果を、表1に示す。
表1で示すように、接地極板3の風下端部cの位置を上流側にずらしていくことによって、集塵能力が高くなっていくことがわかる。そして、D1=0.25L1〜0.5L1の間に極大値が存在すると考えられ、その点を過ぎると集塵能力は低下していく。
これは、前述の通り、接地極板3から再飛散した粉塵を接地極板3の風下端部cよりも下流の荷電極板2が捕集するためである。そして、接地極板3の面積が小さすぎると、集塵可能な領域が減るため、集塵能力が十分に発揮できないものである。
そして、集塵能力がケース2(D1=0.75L1)の場合に、従来型の電気集塵装置をほぼ同等の性能を示している。
また、D1=0.25L1〜0.5L1の間で、従来型の電気集塵装置の集塵能力の+10%以上の能力を示すことが推定される。
(前提例3)
図11は、図5の構成による電気集塵装置において、以下の条件で粉塵捕集実験を実施した後の極板(荷電極板2、接地極板3)の写真である。
実験した電気集塵装置の構成は、接地極板3の風下端部cは、荷電極板2の風下端部bよりも約30mm風下側に長くした。極板間隔など、その他の実験条件は実施例1と同じである。
図11に示すように、荷電極板2の風下端部bよりも下流側の接地極板3領域dに、再飛散した粉塵が捕集されていることが、黒々と色が濃くなっていることから判る。
なお、極板間隔が5mmから20mmの範囲で変化させた実験でも同様の結果であった。また、極板間に印加する電圧の最大値は、極板間隔1mmにつき1kVであり、印加する電圧の最小値はその半分とした。
また、なお、印加する電圧は正電圧であっても負電圧であっても同様の結果が得られる。
(前提例4)
第4の前提例は、第3の前提の形態の構成において、荷電極板2の風下端部bの位置を変えて粉塵の捕集実験をしたものである。
図5に示すように、接地極板3の長さをL2とし、荷電極板2の風下端部bと接地極板3の風下端部cとの距離をD2とする。(なお、L1=L2である。)。
ここで、前提例2と同様に、集塵効率の高い極板の大きさを実験により確かめることにした。以下にその実験内容と結果を示す。なお、装置の構成など前提例2と共通する実験条件の記述については省略する。
接地極板3の寸法は、高さ120mm、全長360mmである。一方、荷電極板2については3種類を用いた。そして、比較しやすいように、荷電極板2、接地極板3の風上側の位置を同じ位置とした。荷電極板2の風下端部bから接地極板3の風下端部cまでの距離D2が、接地極板3の全長L2に対して、0倍(ケース1)、0.75倍(ケース5)、0.5倍(ケース6)、0.25倍(ケース7)の4パターンで実験した。なお、荷電極板2、接地極板3の高さ寸法は同じである。
ケース1、すなわち、従来技術における電気集塵装置の構成の結果は前提例2のケース1の結果を用いている。そして、このケース1を比較に基準として各ケースの集塵能力を比較した。
ケース1、ケース5、ケース6、ケース7における集塵能力を示す黒色部%面積を集計した結果を、表2に示す。
表2の右端に各ケースにおける、接地極板3と荷電極板2の両者による総合的な集塵能力を示す黒色部%面積の総計を示す。これによると、ケース1(従来型、D2=0)の%面積は168であるが、荷電極板2が短い、ケース5(D2=0.75L2)、ケース6(D2=0.5L2)、ケース7(D2=0.25L2)の黒色部%面積は、それぞれ順に184、196、192といずれもケース1の値168を上回っている。
表2で示すように、荷電極板2の風下端部bの位置を上流側にずらしていくことによって、集塵能力が高くなっていくことがわかる。そして、D2=0.25L2〜0.5L2の間に極大値が存在すると考えられ、その点を過ぎると集塵能力は低下していく。
これは、前述の通り、荷電極板2から再飛散した粉塵を荷電極板2の風下端部bよりも下流の接地極板3が捕集するためである。そして、荷電極板2の面積が小さすぎると、集塵可能な領域が減るため、集塵能力が十分に発揮できないものである。
また、D2=0.25L2〜0.5L2の間で、従来型の電気集塵装置の集塵能力の+10%以上の能力を示すことが推定される。