本明細書では、ヒドロカルビル基は炭化水素から1個の水素原子を除いた1価の基を表す。ヒドロカルビレン基は、炭化水素から2個の水素原子を除いた2価の基を表す。ヒドロカルビルオキシ基は、ヒドロキシ基の水素原子がヒドロカルビル基で置き換えられた構造を有する1価の基を表す。置換アミノ基は、アミノ基の少なくとも1個の水素原子が、水素原子以外の1価の原子又は1価基に置き換えられた構造を有する基、又はアミノ基の2個の水素原子が2価基で置き換えられた構造を有する基を表す。置換基を有するヒドロカルビル基(以下、置換ヒドロカルビル基と記すこともある。)は、ヒドロカルビル基の少なくとも1個の水素原子が置換基で置き換えられた構造を有する1価の基を表す。ヘテロ原子を有するヒドロカルビレン基(以下、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基と記すこともある。)とは、ヒドロカルビレン基の水素原子が除かれている炭素原子以外の炭素原子及び/又は水素原子が、ヘテロ原子(炭素原子、水素原子以外の原子)を有する基で置き換えられた構造を有する2価の基を表す。
本発明に係る共役ジエン系重合体は、下記式(I)で表される重合開始剤を用いて共役ジエン化合物及びケイ素含有ビニル化合物を含む単量体成分を重合させて得られる共重合体の活性末端に、窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物を反応させて得られるものである。
(式(I)中、iは0又は1であり、R
11は炭素原子数1〜100のヒドロカルビレン基を表し、R
12及びR
13は、置換基を有してもよいヒドロカルビル基、又は、トリヒドロカルビルシリル基を表すか、あるいは、R
12とR
13とが結合して、ケイ素原子、窒素原子及び酸素原子からなる原子群から選択される少なくとも1種の原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基を表し、Mはアルカリ金属原子を表す。)
本明細書において「変性する」とは、ジエン化合物、又はジエン化合物及び芳香族ビニル化合物を有する共重合体に、これら以外の化合物を結合させることを意味する。上記共役ジエン系重合体の場合、上記式(I)で表される重合開始剤により重合体開始末端が変性され、ケイ素含有ビニル化合物を共重合させる事により主鎖が変性され、窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物ケイ素含有ビニル化合物によって停止末端が変性された構造を有する。上記共役ジエン系重合体をゴム成分として配合することで、シリカを良好に分散させ、低燃費性、ゴム強度、接着性及び加工性をバランス良く改善できる。また、通常、開始末端、主鎖、停止末端の全てが変性された変性ゴムを使用すると、加工性が大幅に悪化してしまう傾向があるが、上記共役ジエン系重合体は、開始末端、主鎖、停止末端のそれぞれを特定の化合物の組合せで変性しているため、良好な加工性を確保することができ、かつ低燃費性、ゴム強度及び接着性の改善効果を相乗的に高めることもできる。そして、上記共役ジエン系重合体とともに特定の軟化点を有する液状レジンを配合することにより、それぞれの改善効果をさらに相乗的に向上させることができる。その結果、低燃費性、ゴム強度、接着性及び加工性を高次元でバランス良く改善することができる。
式(I)中のiは0又は1であり、好ましくは1である。
式(I)中のR11は、炭素原子数1〜100のヒドロカルビレン基であり、好ましくは炭素原子数6〜100のヒドロカルビレン基であり、より好ましくは炭素原子数7〜80のヒドロカルビレン基である。R11の炭素原子数が100を超えると、重合開始剤の分子量が大きくなり、経済性及び重合時の操作性が低下することがある。
なお、式(I)で表される重合開始剤としては、R11の炭素原子数が異なる化合物を複数種併用してもよい。
式(I)中のR
11は、好ましくは下記式(Ia)で表される基である。
(式(Ia)中、R
14は共役ジエン化合物由来の構造単位及び/又は芳香族ビニル化合物由来の構造単位からなるヒドロカルビレン基を表し、nは1〜10の整数を表す。)
式(Ia)中、R14は共役ジエン化合物由来の構造単位及び/又は芳香族ビニル化合物由来の構造単位からなるヒドロカルビレン基を表し、好ましくはイソプレン由来の構造単位からなるヒドロカルビレン基であり、より好ましくはイソプレン由来の構造単位1〜10単位からなるヒドロカルビレン基である。
R14における共役ジエン化合物由来の構造単位及び/又は芳香族ビニル化合物由来の構造単位の数は、1〜10単位であることが好ましく、1〜5単位であることがより好ましい。
式(Ia)中、nは1〜10の整数であり、好ましくは2〜4の整数である。
R11としては、イソプレン由来の構造単位1〜10単位とメチレン基とを結合させた基、イソプレン由来の構造単位1〜10単位とエチレン基とを結合させた基、イソプレン由来の構造単位1〜10単位とトリメチレン基とを結合させた基をあげることができ、好ましくはイソプレン由来の構造単位1〜10単位とトリメチレン基とを結合させた基である。
式(I)中のR12及びR13は、置換基を有してもよいヒドロカルビル基、又は、トリヒドロカルビルシリル基を表すか、あるいは、R12とR13とが結合して、ケイ素原子、窒素原子、酸素原子からなる群より選択される原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基を表す。
置換基を有してもよいヒドロカルビル基は、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基である。置換ヒドロカルビル基における置換基としては、置換アミノ基又はヒドロカルビルオキシ基をあげることができる。ヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基などの鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの環状アルキル基;フェニル基、ベンジル基などのアリール基をあげることができ、好ましくは鎖状アルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1〜4の鎖状アルキル基である。置換基が置換アミノ基である置換ヒドロカルビル基としては、N,N−ジメチルアミノメチル基、2−N,N−ジメチルアミノエチル基、3−N,N−ジメチルアミノプロピル基をあげることができる。置換基がヒドロカルビルオキシ基である置換ヒドロカルビル基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基をあげることができる。これらの中では、ヒドロカルビル基が好ましく、炭素原子数1〜4の鎖状アルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。
トリヒドロカルビルシリル基としては、トリメチルシリル基、tert−ブチル−ジメチルシリル基をあげることができ、トリメチルシリル基が好ましい。
ケイ素原子、窒素原子及び酸素原子からなる原子群より選択される少なくとも一種の原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基は、ヒドロカルビレン基、又は、ヘテロ原子がケイ素原子、窒素原子、酸素原子からなる原子群より選択される少なくとも一種の原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基である。ヘテロ原子がケイ素原子、窒素原子、酸素原子からなる原子群より選択される少なくとも一種の原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基としては、ヘテロ原子がケイ素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基、ヘテロ原子が窒素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基、ヘテロ原子が酸素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基をあげることができる。ヒドロカルビレン基としては、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ペンタン−2−エン−1,5−ジイル基、2,2,4−トリメチルへキサン−1,6−ジイル基などのアルキレン基;ペンタン−2−エン−1,5−ジイル基などのアルケンジイル基をあげることができ、好ましくはアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数4〜7のアルキレン基である。ヘテロ原子がケイ素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基としては、−Si(CH3)2−CH2−CH2−Si(CH3)2−で表される基をあげることができる。ヘテロ原子が窒素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基としては、−CH=N−CH=CH−で表される基、−CH=N−CH2−CH2−で表される基をあげることができる。ヘテロ原子が酸素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基としては、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−で表される基をあげることができる。これらの中では、ヒドロカルビレン基が好ましく、炭素原子数4〜7のアルキレン基がより好ましく、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基がさらに好ましい。
R12及びR13はヒドロカルビル基であるか、R12とR13とが結合してヒドロカルビレン基であることが好ましく、炭素原子数1〜4の鎖状アルキル基であるか、結合して炭素原子数4〜7のアルキレン基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましい。
式(I)中、Mはアルカリ金属原子を表す。アルカリ金属原子としては、Li、Na、K、Csをあげることができ、好ましくはLiである。
式(I)で表される重合開始剤のうち、iが1である化合物としては、アミノアルキルリチウム化合物にイソプレン由来の構造単位1〜5単位を重合させた化合物をあげることができる。当該アミノアルキルリチウム化合物としては、3−(N,N−ジメチルアミノ)−1−プロピルリチウム、3−(N,N−ジエチルアミノ)−1−プロピルリチウム、3−(N,N−ジ−n−ブチルアミノ)−1−プロピルリチウム、4−(N,N−ジメチルアミノ)−1−ブチルリチウム、4−(N,N−ジエチルアミノ)−1−ブチルリチウム、4−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)−1−ブチルリチウム,3−(N,N−ジ−n−ブチルアミノ)−1−ブチルリチウムなどのN,N−ジアルキルアミノアルキルリチウム;3−(1−ピロリジノ)−1−プロピルリチウム、3−(1−ピペリジノ)−1−プロピルリチウム、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)−1−プロピルリチウム、3−[1−(1,2,3,6−テトラヒドロピリジノ)]−1−プロピルリチウムなどのヘテロ原子非含有環状アミノアルキルリチウム化合物;3−(1−モルホリノ)−1−プロピルリチウム、3−(1−イミダゾリル)−1−プロピルリチウム、3−(4,5−ジヒドロ−1−イミダゾリル)−1−プロピルリチウム、3−(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラ−1−シクロペンチル)−1−プロピルリチウムなどのヘテロ原子含有環状アミノアルキルリチウム化合物をあげることができ、N,N−ジアルキルアミノアルキルリチウムが好ましく、3−(N,N−ジメチルアミノ)−1−プロピルリチウム又は3−(N,N−ジエチルアミノ)−1−プロピルリチウムがより好ましい。
式(I)で表される重合開始剤のうち、iが0である化合物としては、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ−2−エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムメチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミドなどがあげられる。
式(I)で表される重合開始剤のうち、iが0である化合物は、二級アミンとヒドロカルビルリチウム化合物から予備調製して重合反応に用いてもよいし、重合系中で生成させてもよい。ここで、二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジイソブチルアミンなどの他、アザシクロヘプタン(即ち、ヘキサメチレンイミン)、2−(2−エチルヘキシル)ピロリジン、3−(2−プロピル)ピロリジン、3,5−ビス(2−エチルヘキシル)ピペリジン、4−フェニルピペリジン、7−デシル−1−アザシクロトリデカン、3,3−ジメチル−1−アザシクロテトラデカン、4−ドデシル−1−アザシクロオクタン、4−(2−フェニルブチル)−1−アザシクロオクタン、3−エチル−5−シクロヘキシル−1−アザシクロヘプタン、4−ヘキシル−1−アザシクロヘプタン、9−イソアミル−1−アザシクロヘプタデカン、2−メチル−1−アザシクロヘプタデセ−9−エン、3−イソブチル−1−アザシクロドデカン、2−メチル−7−t−ブチル−1−アザシクロドデカン、5−ノニル−1−アザシクロドデカン、8−(4−メチルフェニル)−5−ペンチル−3−アザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、1−ブチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン、8−エチル−3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン、1−プロピル−3−アザビシクロ[3.2.2]ノナン、3−(t−ブチル)−7−アザビシクロ[4.3.0]ノナン、1,5,5−トリメチル−3−アザビシクロ[4.4.0]デカンなどの環状アミンがあげられる。
式(I)で表される重合開始剤としては、iが1である化合物が好ましく、N,N−アミノアルキルリチウムにイソプレン由来の構造単位1〜5単位を重合させた化合物がより好ましく、3−(N,N−ジメチルアミノ)−1−プロピルリチウム又は3−(N,N−ジエチルアミノ)−1−プロピルリチウムにイソプレン由来の構造単位1〜5単位を重合させた化合物がさらに好ましい。
式(I)で表される重合開始剤の使用量は、重合で使用される単量体成分100gあたり0.01〜15mmolであることが好ましく、0.1〜10mmolであることがより好ましい。
本発明においては、必要に応じて、n−ブチルリチウムなどの他の重合開始剤を併用してもよい。
共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン、ミルセンがあげられ、これらは1種でもよく、2種以上でもよい。入手容易性の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンであることが好ましい。
ケイ素含有ビニル化合物は、好ましくは下記の式(II)で表される化合物である。
(式(II)中、mは0又は1であり、R
21はヒドロカルビレン基を表し、X
1、X
2及びX
3は置換アミノ基、ヒドロカルビルオキシ基、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。)
式(II)のmは0又は1であり、好ましくは0である。
式(II)におけるヒドロカルビレン基としては、アルキレン基、アルケンジイル基、アリーレン基、アリーレン基とアルキレン基とが結合した基をあげることができる。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基をあげることができる。アルケンジイル基としてはビニレン基、エチレン−1,1−ジイル基をあげることができる。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基をあげることができる。アリーレン基とアルキレン基とが結合した基としては、フェニレン基とメチレン基とが結合した基、フェニレン基とエチレン基とが結合した基をあげることができる。
R21は好ましくはアリーレン基であり、より好ましくはフェニレン基である。
式(II)において、X1、X2及びX3は置換アミノ基、ヒドロカルビルオキシ基、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。好ましくは、X1、X2及びX3の少なくとも1つが置換アミノ基であり、より好ましくは、X1、X2及びX3の2つが置換アミノ基である。
式(II)における置換アミノ基は、好ましくは下記の式(IIa)で表される基である。
(式(IIa)中、R
22及びR
23は、置換基を有してもよいヒドロカルビル基、又は、トリヒドロカルビルシリル基を表すか、あるいは、R
22とR
23とが結合して、窒素原子及び/又は酸素原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基を表す。)
式(IIa)における置換基を有してもよいヒドロカルビル基は、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基である。置換ヒドロカルビル基としては、置換基がヒドロカルビルオキシ基である置換ヒドロカルビル基をあげることができる。ヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基などの鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの環状アルキル基;フェニル基、ベンジル基、ナフチル基などのアリール基をあげることができ、鎖状アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。置換基がヒドロカルビルオキシ基である置換ヒドロカルビル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基などのアルコキシアルキル基;フェノキシメチル基などのアリールオキシアルキル基をあげることができる。
式(IIa)におけるトリヒドロカルビルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基などのトリアルキルシリル基をあげることができる。
式(IIa)における窒素原子及び/又は酸素原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基は、ヒドロカルビレン基又はヘテロ原子が窒素原子及び/又は酸素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基である。ヘテロ原子が窒素原子及び/又は酸素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基としては、ヘテロ原子が窒素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基、ヘテロ原子が酸素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基をあげることができる。ヒドロカルビレン基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、2,2,4−トリメチルへキサン−1,6−ジイル基などのアルキレン基;ペンタン−2−エン−1,5−ジイル基などのアルケンジイル基をあげることができる。ヘテロ原子が窒素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基としては、−CH=N−CH=CH−で表される基、−CH=N−CH2−CH2−で表される基をあげることができる。ヘテロ原子が酸素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基としては、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−で表される基をあげることができる。
R22及びR23はアルキル基であるか、あるいはR22とR23とが結合してアルキレン基となっていることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましい。
式(IIa)で表される置換アミノ基のうち、R22及びR23がヒドロカルビル基であるものとして、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基などのジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基などのジアリールアミノ基をあげることができ、ジアルキルアミノ基が好ましく、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基がより好ましい。R22及びR23が置換基としてヒドロカルビルオキシ基を有する置換ヒドロカルビル基であるものとしては、ジ(メトキシメチル)アミノ基、ジ(エトキシメチル)アミノ基などのジ(アルコキシアルキル)アミノ基をあげることができる。R22及びR23がトリヒドロカルビルシリル基であるものとしては、ビス(トリメチルシリル)アミノ基、ビス(tert−ブチルジメチルシリル)アミノ基、N−トリメチルシリル−N−メチルアミノ基などのトリアルキルシリル基含有アミノ基をあげることができる。
式(IIa)で表される置換アミノ基のうち、R22とR23とが結合してヒドロカルビレン基となっているものとしては、1−トリメチレンイミノ基、1−ピロリジノ基、1−ピペリジノ基、1−ヘキサメチレンイミノ基、1−ヘプタメチレンイミノ基、1−オクタメチレンイミノ基、1−デカメチレンイミノ基、1−ドデカメチレンイミノ基などの1−アルキレンイミノ基をあげることができる。ヘテロ原子が窒素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基となっているものとしては、1−イミダゾリル基、4,5−ジヒドロ−1−イミダゾリル基をあげることができる。ヘテロ原子が酸素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基となっているものとしては、モルホリノ基をあげることができる。
式(IIa)で表される置換アミノ基としては、ジアルキルアミノ基又は1−アルキレンイミノ基が好ましく、ジアルキルアミノ基がより好ましく、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基がさらに好ましい。
式(II)におけるヒドロカルビルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などのアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基をあげることができる。
式(II)における置換基を有してもよいヒドロカルビル基は、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基である。置換ヒドロカルビル基としては、置換基がヒドロカルビルオキシ基である置換ヒドロカルビル基をあげることができる。ヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基;フェニル基、4−メチル−1−フェニル基、ベンジル基などのアリール基をあげることができる。置換基がヒドロカルビルオキシ基である置換ヒドロカルビル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などのアルコキシアルキル基をあげることができる。
式(II)で表されるケイ素含有ビニル化合物のうち、X1、X2及びX3のうちの1つが置換アミノ基であり、mが0である化合物としては、
(ジメチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(エチルメチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジ−n−プロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジイソプロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(エチルメチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジ−n−プロピルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジイソプロピルアミノ)ジエチルビニルシランなどの(ジアルキルアミノ)ジアルキルビニルシラン;[ビス(トリメチルシリル)アミノ]ジメチルビニルシラン、[ビス(t−ブチルジメチルシリル)アミノ]ジメチルビニルシラン、[ビス(トリメチルシリル)アミノ]ジエチルビニルシラン、[ビス(t−ブチルジメチルシリル)アミノ]ジエチルビニルシランなどの[ビス(トリアルキルシリル)アミノ]ジアルキルビニルシラン;(ジメチルアミノ)ジ(メトキシメチル)ビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジ(メトキシエチル)ビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジ(エトキシメチル)ビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジ(エトキシエチル)ビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジ(メトキシメチル)ビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジ(メトキシエチル)ビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジ(エトキシメチル)ビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジ(エトキシエチル)ビニルシランなどの(ジアルキルアミノ)ジ(アルコキシアルキル)ビニルシラン;ピロリジノジメチルビニルシラン、ピペリジノジメチルビニルシラン、ヘキサメチレンイミノジメチルビニルシラン、4,5−ジヒドロイミダゾリルジメチルビニルシラン、モルホリノジメチルビニルシランなどの環状アミノジアルキルビニルシラン化合物をあげることができる。
式(II)で表されるケイ素含有ビニル化合物のうち、X1、X2及びX3のうちの1つが置換アミノ基であり、mが1である化合物としては、
(ジメチルアミノ)ジメチル−4−ビニルフェニルシラン、(ジメチルアミノ)ジメチル−3−ビニルフェニルシラン、(ジエチルアミノ)ジメチル−4−ビニルフェニルシラン、(ジエチルアミノ)ジメチル−3−ビニルフェニルシラン、(ジ−n−プロピルアミノ)ジメチル−4−ビニルフェニルシラン、(ジ−n−プロピルアミノ)ジメチル−3−ビニルフェニルシラン、(ジ−n−ブチルアミノ)ジメチル−4−ビニルフェニルシラン、(ジ−n−ブチルアミノ)ジメチル−3−ビニルフェニルシラン、(ジメチルアミノ)ジエチル−4−ビニルフェニルシラン、(ジメチルアミノ)ジエチル−3−ビニルフェニルシラン、(ジエチルアミノ)ジエチル−4−ビニルフェニルシラン、(ジエチルアミノ)ジエチル−3−ビニルフェニルシラン、(ジ−n−プロピルアミノ)ジエチル−4−ビニルフェニルシラン、(ジ−n−プロピルアミノ)ジエチル−3−ビニルフェニルシラン、(ジ−n−ブチルアミノ)ジエチル−4−ビニルフェニルシラン、(ジ−n−ブチルアミノ)ジエチル−3−ビニルフェニルシランなどの(ジアルキルアミノ)ジアルキルビニルフェニルシランをあげることができる。
式(II)で表されるケイ素含有ビニル化合物のうち、X1、X2及びX3のうちの2つが置換アミノ基であり、mが0である化合物としては、
ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ−n−プロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ−n−ブチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジ−n−プロピルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジ−n−ブチルアミノ)エチルビニルシランなどのビス(ジアルキルアミノ)アルキルビニルシラン;ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]メチルビニルシラン、ビス[ビス(tert−ブチルジメチルシリル)アミノ]メチルビニルシラン、ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]エチルビニルシラン、ビス[ビス(tert−ブチルジメチルシリル)アミノ]エチルビニルシランなどのビス[ビス(トリアルキルシリル)アミノ]アルキルビニルシラン;ビス(ジメチルアミノ)メトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メトキシエチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エトキシエチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メトキシメチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メトキシエチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エトキシエチルビニルシランなどのビス(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキルシラン;ビス(ピロリジノ)メチルビニルシラン、ビス(ピペリジノ)メチルビニルシラン、ビス(ヘキサメチレンイミノ)メチルビニルシラン、ビス(4,5−ジヒドロイミダゾリル)メチルビニルシラン、ビス(モルホリノ)メチルビニルシランなどのビス(環状アミノ)アルキルビニルシラン化合物をあげることができる。
式(II)で表されるケイ素含有ビニル化合物のうち、X1、X2及びX3のうちの2つが置換アミノ基であり、mが1である化合物としては、
ビス(ジメチルアミノ)メチル−4−ビニルフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチル−3−ビニルフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチル−4−ビニルフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチル−3−ビニルフェニルシラン、ビス(ジ−n−プロピルアミノ)メチル−4−ビニルフェニルシラン、ビス(ジ−n−プロピルアミノ)メチル−3−ビニルフェニルシラン、ビス(ジ−n−ブチルアミノ)メチル−4−ビニルフェニルシラン、ビス(ジ−n−ブチルアミノ)メチル−3−ビニルフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エチル−4−ビニルフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エチル−3−ビニルフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチル−4−ビニルフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチル−3−ビニルフェニルシラン、ビス(ジ−n−プロピルアミノ)エチル−4−ビニルフェニルシラン、ビス(ジ−n−プロピルアミノ)エチル−3−ビニルフェニルシラン、ビス(ジ−n−ブチルアミノ)エチル−4−ビニルフェニルシラン、ビス(ジ−n−ブチルアミノ)エチル−3−ビニルフェニルシランなどのビス(ジアルキルアミノ)アルキルビニルフェニルシランをあげることができる。
式(II)で表されるケイ素含有ビニル化合物のうち、X1、X2及びX3のうちの3つが置換アミノ基であり、mが0である化合物としては、
トリス(ジメチルアミノ)ビニルシラン、トリス(ジエチルアミノ)ビニルシラン、トリス(ジ−n−プロピルアミノ)ビニルシラン、トリス(ジ−n−ブチルアミノ)ビニルシランなどのトリス(ジアルキルアミノ)ビニルシランをあげることができる。
式(II)で表されるケイ素含有ビニル化合物のうち、X1、X2及びX3のうちの3つが置換アミノ基であり、mが1である化合物としては、
トリス(ジメチルアミノ)−4−ビニルフェニルシラン、トリス(ジメチルアミノ)−3−ビニルフェニルシラン、トリス(ジエチルアミノ)−4−ビニルフェニルシラン、トリス(ジエチルアミノ)−3−ビニルフェニルシラン、トリス(ジ−n−プロピルアミノ)−4−ビニルフェニルシラン、トリス(ジ−n−プロピルアミノ)−3−ビニルフェニルシラン、トリス(ジ−n−ブチルアミノ)−4−ビニルフェニルシラン、トリス(ジ−n−ブチルアミノ)−3−ビニルフェニルシランなどのトリス(ジアルキルアミノ)ビニルフェニルシランをあげることができる。
式(II)で表されるケイ素含有ビニル化合物のうち、X1、X2及びX3が置換アミノ基ではなく、mが0である化合物としては、
トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリプロポキシビニルシランなどのトリアルコキシビニルシラン;メチルジメトキシビニルシラン、メチルジエトキシビニルシランなどのジアルコキシアルキルビニルシラン;ジ(tert−ペントキシ)フェニルビニルシラン、ジ(tert−ブトキシ)フェニルビニルシランなどのジアルコキシアリールビニルシラン;ジメチルメトキシビニルシランなどのモノアルコキシジアルキルビニルシラン;tert−ブトキシジフェニルビニルシラン、tert−ペントキシジフェニルビニルシランなどのモノアルコキシジアリールビニルシラン;tert−ブトキシメチルフェニルビニルシラン、tert−ブトキシエチルフェニルビニルシランなどのモノアルコキシアルキルアリールビニルシラン;トリス(β−メトキシエトキシ)ビニルシランなどの置換アルコキシビニルシラン化合物をあげることができる。
さらに、ケイ素含有ビニル化合物としては、4−N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノスチレン、3−N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノスチレンなどのビス(トリアルキルシリル)アミノスチレン;4−ビス(トリメチルシリル)アミノメチルスチレン、3−ビス(トリメチルシリル)アミノメチルスチレン、4−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルスチレン、3−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルスチレンなどのビス(トリアルキルシリル)アミノアルキルスチレンをあげることができる。
ケイ素含有ビニル化合物は、式(II)で表される化合物が好ましく、式(II)中のmが0である化合物がより好ましく、式(II)中のX1、X2及びX3のうち2つがジアルキルアミノ基である化合物がさらに好ましい。
ケイ素含有ビニル化合物として特に好ましい化合物は、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ−n−ブチルアミノ)メチルビニルシランである。
上記共役ジエン系重合体の製造において、ケイ素含有ビニル化合物の使用量は、重合で使用した単量体成分の総使用量を100質量%として、低燃費性、ゴム強度、接着性及び加工性をバランス良く高めるために、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上である。経済性を高めるために、また、引張破断強度を大きくするために、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。
上記共役ジエン系重合体の製造においては、単量体成分として、共役ジエン化合物やケイ素含有ビニル化合物に加え、さらに、重合可能な単量体を用いてもよい。該単量体としては、芳香族ビニル化合物、ビニルニトリル、不飽和カルボン酸エステルなどがあげられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンを例示することができる。また、ビニルニトリルとしては、アクリロニトリルなどを、不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチルなどを例示することができる。これらの中では、芳香族ビニル化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
上記共役ジエン系重合体を製造する際に、芳香族ビニル化合物を用いる場合、芳香族ビニル化合物の使用量としては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との総量を100質量%として、好ましくは10質量%以上(共役ジエン化合物の使用量は90質量%以下)であり、より好ましくは15質量%以上(共役ジエン化合物の使用量は85質量%以下)である。また、低燃費性の観点から、芳香族ビニル化合物の使用量は、好ましくは50質量%以下(共役ジエン化合物の使用量は50質量%以上)であり、より好ましくは45質量%以下(共役ジエン化合物の使用量は55質量%以上)である。
上記共役ジエン系重合体の製造においては、重合は炭化水素溶媒中で行うことが好ましい。炭化水素溶媒は式(I)の重合開始剤を失活させない溶媒であり、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素などをあげることができる。脂肪族炭化水素としては、プロパン、n−ブタン、iso−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどをあげることができる。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンをあげることができる。脂環族炭化水素としては、シクロペンタン、シクロヘキサンなどをあげることができる。炭化水素溶媒は、工業用ヘキサンのような各種成分の混合物であってもよい。好ましくは、炭素原子数が2〜12の炭化水素である。
重合反応は、共役ジエン単位のビニル結合量を調整する剤、共役ジエン系重合体鎖中での共役ジエン単位と共役ジエン以外の単量体に基づく単量体単位の分布を調整する剤(以下、総称して「調整剤」と記す。)の存在下で行ってもよい。このような剤としては、エーテル化合物、第三級アミン化合物、ホスフィン化合物などをあげることができる。該エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサンなど環状のエーテル;ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどの脂肪族モノエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどの脂肪族ジエーテル;ジフェニルエーテル、アニソールなどの芳香族エーテルなどがあげられる。該第三級アミン化合物として、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、キノリンなどをあげることができる。また、該ホスフィン化合物として、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどをあげることができる。これらは1種類以上用いられる。
上記共役ジエン系重合体の製造においては、重合反応器に単量体成分を供給する前に重合開始剤を重合反応器に供給してもよく、重合に使用する単量体成分全量を重合反応器に供給した後に重合開始剤を重合反応器に供給してもよく、重合に使用する単量体成分の一部を重合反応器に供給した後に重合開始剤を重合反応器に供給してもよい。また、重合開始剤を、重合反応器に一時に供給してもよく、連続的に供給してもよい。
上記共役ジエン系重合体の製造においては、単量体成分を、重合反応器に一時に供給してもよく、連続的に供給してもよく、間欠的に供給してもよい。また、各単量体を、重合反応器に別々に供給してもよく、同時に供給してもよい。
上記共役ジエン系重合体の製造における重合温度は、通常25〜100℃であり、好ましくは35〜90℃である。さらに好ましくは50〜80℃である。重合時間は、通常10分〜5時間である。
上記共役ジエン系重合体は、式(I)で表される重合開始剤を用いて共役ジエン化合物及びケイ素含有ビニル化合物を含む単量体成分を重合させて得られる共重合体の活性末端(共重合体の活性末端には、当該重合開始剤由来のアルカリ金属を有すると考えられる。)に、窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物を反応させて得られる(末端変性反応)。具体的には、窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物を重合溶液に添加し、混合することにより行われる。重合溶液に添加する窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物の量は、使用する式(I)で表される重合開始剤に由来するアルカリ金属1molあたり、通常、0.1〜3molであり、好ましくは、0.5〜2molであり、より好ましくは、0.7〜1.5molである。
上記末端変性反応の反応温度は、通常、25〜100℃であり、好ましくは35〜90℃であり、より好ましくは50〜80℃である。また、末端反応の反応時間は、通常、60秒〜5時間であり、好ましくは5分〜1時間、より好ましくは15分〜1時間である。
窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物のうち好ましいものとして、窒素原子及びカルボニル基を含有する化合物をあげることができる。
窒素原子及びカルボニル基を含有する化合物としては、下記式(III)で表される化合物が好ましい。
(式(III)中、R
31は置換基を有してもよいヒドロカルビル基、R
32と結合して窒素原子及び/又は酸素原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基、あるいは、R
34と結合して2価基を表し、R
32は置換基を有してもよいヒドロカルビル基、あるいは、R
31と結合して窒素原子及び/又は酸素原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基を表し、R
34は置換基を有してもよいヒドロカルビル基、水素原子、あるいは、R
31と結合して2価基を表す。また、R
33は2価基を表し、kは0又は1を表す。)
式(III)において、R31、R32、R34の置換基を有してもよいヒドロカルビル基は、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基である。置換ヒドロカルビル基としては、置換基がヒドロカルビルオキシ基である置換ヒドロカルビル基、置換基が置換アミノ基である置換ヒドロカルビル基をあげることができる。ヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などのアルケニル基;フェニル基などのアリール基をあげることができる。置換基がヒドロカルビルオキシ基である置換ヒドロカルビル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などのアルコキシアルキル基をあげることができる。置換基が置換アミノ基である置換ヒドロカルビル基としては、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル基、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル基、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル基、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル基などの(N,N−ジアルキルアミノ)アルキル基;4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル基、3−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル基、4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル基、3−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル基などの(N,N−ジアルキルアミノ)アリール基;4−(N,N−ジメチルアミノ)メチルフェニル基、4−(N,N−ジメチルアミノ)エチルフェニル基などの(N,N−ジアルキルアミノ)アルキルアリール基;3−ピロリジノプロピル基、3−ピペリジノプロピル基、3−イミダゾリルプロピル基などの環状アミノ基含有アルキル基;4−ピロリジノフェニル基、4−ピペリジノフェニル基、4−イミダゾリルフェニル基などの環状アミノ基含有アリール基;4−ピロリジノエチルフェニル基、4−ピペリジノエチルフェニル基、4−イミダゾリルエチルフェニル基などの環状アミノ基含有アルキルアリール基をあげることができる。
式(III)において、R31とR32とが結合した窒素原子及び/又は酸素原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基は、ヒドロカルビレン基、又はヘテロ原子が窒素原子及び/又は酸素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基である。ヘテロ原子が窒素原子及び/又は酸素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基としては、ヘテロ原子が窒素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基、ヘテロ原子が酸素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基をあげることができる。ヒドロカルビレン基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ペンタン−2−エン−1,5−ジイル基、2,2,4−トリメチルへキサン−1,6−ジイル基などのアルキレン基;1,4−フェニレン基などのアリーレン基をあげることができる。ヘテロ原子が窒素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基としては、−CH=N−CH=CH−で表される基、−CH=N−CH2−CH2−で表される基をあげることができる。ヘテロ原子が酸素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基としては、−(CH2)s−O−(CH2)t−で表される基(s、tは1以上の整数)をあげることができる。
式(III)において、R31とR34とが結合した2価基、及びR33の2価基としては、ヒドロカルビレン基、ヘテロ原子が窒素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基、ヘテロ原子が酸素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基、ヒドロカルビレン基と酸素原子とが結合した基、ヒドロカルビレン基と−NR35−で表される基(R35はヒドロカルビル基又は水素原子を表す)とが結合した基をあげることができる。ヒドロカルビレン基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ペンタン−2−エン−1,5−ジイル基、2,2,4−トリメチルへキサン−1,6−ジイル基などのアルキレン基;1,4−フェニレン基などのアリーレン基をあげることができる。ヘテロ原子が窒素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基としては、−CH=N−CH=CH−で表される基、−CH=N−CH2−CH2−で表される基をあげることができる。ヘテロ原子が酸素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基としては、−(CH2)s−O−(CH2)t−で表される基(s、tは1以上の整数)をあげることができる。ヒドロカルビレン基と酸素原子とが結合した基としては、−(CH2)r−O−で表される基(rは1以上の整数を表す)をあげることができる。ヒドロカルビレン基と−NR35−で表される基(R35はヒドロカルビル基又は水素原子を表す)とが結合した基としては、−(CH2)p−NR35−で表される基(R35はヒドロカルビル基(好ましくは炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基)、又は水素原子を表し、pは1以上の整数を表す)をあげることができる。
式(III)で表される好ましい化合物として、kが0であり、R
34が置換基を有してもよいヒドロカルビル基又は水素原子である下記式(IIIa)で表される化合物をあげることができる。
(式(IIIa)中、R
31は置換基を有してもよいヒドロカルビル基を表すか、R
32と結合して窒素原子及び/又は酸素原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基を表し、R
32は置換基を有してもよいヒドロカルビル基を表すか、R
31と結合して窒素原子及び/又は酸素原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基を表し、R
34は置換基を有してもよいヒドロカルビル基又は水素原子を表す。)
式(IIIa)において、R31、R32、R34の置換基を有してもよいヒドロカルビル基、R31とR32とが結合した窒素原子及び/又は酸素原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基の説明及び例示は、式(III)の説明において述べたものと同じである。
式(IIIa)において、R31は、好ましくは炭素原子数1〜10のヒドロカルビル基であるか、R32と結合して炭素原子数3〜10のヒドロカルビレン基又はヘテロ原子が窒素原子である炭素原子数3〜10のヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基である。より好ましくは、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜10のアリール基であるか、R32と結合して炭素原子数3〜10のアルキレン基、−CH=N−CH=CH−で表される基又は−CH=N−CH2−CH2−で表される基である。さらに好ましくは、炭素原子数1〜6のアルキル基である。特に好ましくは、メチル基又はエチル基である。
式(IIIa)において、R32は、好ましくは炭素原子数1〜10のヒドロカルビル基であるか、R31と結合して炭素原子数3〜10のヒドロカルビレン基又はヘテロ原子が窒素原子である炭素原子数3〜10のヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基である。より好ましくは、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜10のアリール基であるか、R31と結合して炭素原子数3〜10のアルキレン基、−CH=N−CH=CH−で表される基又は−CH=N−CH2−CH2−で表される基である。さらに好ましくは、炭素原子数1〜6のアルキル基である。特に好ましくは、メチル基又はエチル基である。
式(IIIa)において、R34は好ましくはヒドロカルビル基又は水素原子であり、より好ましくは炭素原子数1〜10のヒドロカルビル基又は水素原子であり、さらに好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基又は水素原子であり、特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基である。
式(IIIa)により表される化合物のうち、R34がヒドロカルビル基であるものとしては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−N−エチルアセトアミドなどのN,N−ジヒドロカルビルアセトアミド;N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミドなどのN,N−ジヒドロカルビルアクリルアミド;N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−メチル−N−エチルメタクリルアミドなどのN,N−ジヒドロカルビルメタクリルアミドをあげることができる。
式(IIIa)により表される化合物のうち、R34が水素原子であるものとしては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−N−エチルホルムアミドなどのN,N−ジヒドロカルビルホルムアミドをあげることができる。
式(III)で表される好ましい化合物として、kが0であり、R
34がR
31と結合して2価基となっている下記式(IIIb)で表される化合物をあげることができる。
(式(IIIb)中、R
32は置換基を有してもよいヒドロカルビル基を表し、R
36はヒドロカルビレン基又はヒドロカルビレン基と−NR
35−で表される基とが結合した基を表し、R
35はヒドロカルビル基又は水素原子を表す。)
式(IIIb)において、R32の置換基を有してもよいヒドロカルビル基の説明及び例示は、式(III)の説明において述べたものと同じである。
式(IIIb)において、R36のヒドロカルビレン基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ペンタン−2−エン−1,5−ジイル基、2,2,4−トリメチルへキサン−1,6−ジイル基などのアルキレン基;1,4−フェニレン基などのアリーレン基をあげることができる。R36の、ヒドロカルビレン基と−NR35−で表される基(R35はヒドロカルビル基又は水素原子を表す。)とが結合した基としては、−(CH2)p−NR35−で表される基(R35はヒドロカルビル基又は水素原子を表し、pは1以上の整数を表す。)をあげることができる。
式(IIIb)において、R32は好ましくは炭素原子数1〜10のヒドロカルビル基であり、より好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜10のアリール基であり、さらに好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基、又はフェニル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、フェニル基である。
式(IIIb)において、R36は好ましくは炭素原子数1〜10のヒドロカルビレン基、又は、炭素原子数1〜10のヒドロカルビレン基と−NR35−で表される基(R35はヒドロカルビル基(好ましくは炭素原子数1〜10のヒドロカルビル基)又は水素原子を表す。)とが結合した基であり、より好ましくは炭素原子数3〜6のアルキレン基又は−(CH2)p−NR35−で表される基(R35はヒドロカルビル基(好ましくは炭素原子数1〜10のヒドロカルビル基)を表し、pは1以上の整数(好ましくは2〜5の整数)を表す。)であり、さらに好ましくはトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、又は−(CH2)2−N(CH3)−で表される基である。
式(IIIb)で表される化合物のうち、R36がヒドロカルビレン基であるものとしては、N−メチル−β−プロピオラクタム、N−フェニル−β−プロピオラクタムなどのN−ヒドロカルビル−β−プロピオラクタム;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−フェニル−2−ピロリドン、N−tert−ブチル−2−ピロリドン、N−メチル−5−メチル−2−ピロリドンなどのN−ヒドロカルビル−2−ピロリドン;N−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−フェニル−2−ピペリドンなどのN−ヒドロカルビル−2−ピペリドン;N−メチル−ε−カプロラクタム、N−フェニル−ε−カプロラクタムなどのN−ヒドロカルビル−ε−カプロラクタム;N−メチル−ω−ラウリロラクタム、N−ビニル−ω−ラウリロラクタムなどのN−ヒドロカルビル−ω−ラウリロラクタムをあげることができ、中でもN−フェニル−2−ピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタムが好ましい。
式(IIIb)で表される化合物のうち、R36がヒドロカルビレン基と−NR35−で表される基(R35はヒドロカルビル基又は水素原子を表す)とが結合した基である化合物としては、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジビニル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノンなどの1,3−ジヒドロカルビル−2−イミダゾリジノンをあげることができ、中でも1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましい。
式(III)で表される好ましい化合物として、kが1であり、R
33がヒドロカルビレン基である下記式(IIIc)で表される化合物をあげることができる。
(式(IIIc)中、R
31は置換基を有してもよいヒドロカルビル基を表すか、あるいはR
32と結合して窒素原子及び/又は酸素原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基を表し、R
32は置換基を有してもよいヒドロカルビル基を表すか、あるいはR
31と結合して窒素原子及び/又は酸素原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基を表し、R
33はヒドロカルビレン基を表し、R
34は置換基を有してもよいヒドロカルビル基又は水素原子を表す。)
式(IIIc)において、R31、R32、R34の置換基を有してもよいヒドロカルビル基、R31とR32とが結合した窒素原子及び/又は酸素原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基、R33のヒドロカルビレン基の説明及び例示は、式(III)の説明において述べたものと同じである。
式(IIIc)において、R33は好ましくは炭素原子数1〜10のヒドロカルビレン基であり、より好ましくは炭素原子数1〜10のアルキレン基又は炭素原子数6〜10のアリーレン基であり、さらに好ましくは炭素原子数1〜6のアルキレン基又はフェニレン基であり、特に好ましくはエチレン基、トリメチレン基、1,4−フェニレン基である。
式(IIIc)において、R34は好ましくは炭素原子数1〜10のヒドロカルビル基、又は置換基がジアルキルアミノ基である炭素原子数1〜10の置換ヒドロカルビル基であり、より好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基若しくは炭素原子数6〜10のアリール基、又は炭素原子数1〜6のジアルキルアミノアルキル基若しくは炭素原子数6〜10のジアルキルアミノアリール基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、フェニル基、3−ジメチルアミノエチル基、4−ジエチルアミノフェニル基である。
式(IIIc)において、R31は好ましくは炭素原子数1〜10のヒドロカルビル基であるか、R32と結合して炭素原子数3〜10のヒドロカルビレン基、又はヘテロ原子が窒素原子若しくは酸素原子である炭素原子数3〜10のヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基であり、より好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜10のアリール基であるか、R32と結合して炭素原子数3〜10のアルキレン基、−CH=N−CH=CH−で表される基、−CH=N−CH2−CH2−で表される基、−(CH2)2−O−(CH2)2−で表される基であり、さらに好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基であるか、R32と結合して炭素原子数3〜6のアルキレン基、−CH=N−CH=CH−で表される基、−CH=N−CH2−CH2−で表される基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基であるか、R32と結合してテトラメチレン基、ヘキサメチレン基、−CH=N−CH=CH−で表される基である。
式(IIIc)において、R32は好ましくは炭素原子数1〜10のヒドロカルビル基であるか、R31と結合して炭素原子数3〜10のヒドロカルビレン基、又はヘテロ原子が窒素原子若しくは酸素原子である炭素原子数3〜10のヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基であり、より好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜10のアリール基であるか、R31と結合して炭素原子数3〜10のアルキレン基、−CH=N−CH=CH−で表される基、−CH=N−CH2−CH2−で表される基、−(CH2)2−O−(CH2)2−で表される基であり、さらに好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基であるか、R31と結合して炭素原子数3〜6のアルキレン基、−CH=N−CH=CH−で表される基、−CH=N−CH2−CH2−で表される基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基であるか、R31と結合してテトラメチレン基、ヘキサメチレン基、−CH=N−CH=CH−で表される基である。
式(IIIc)で表される化合物のうち、R34がヒドロカルビル基である化合物としては、
4−(N,N−ジメチルアミノ)アセトフェノン、4−N−メチル−N−エチルアミノアセトフェノン、4−N,N−ジエチルアミノアセトフェノンなどの4−N,N−ジヒドロカルビルアミノアセトフェノン;4’−(イミダゾール−1−イル)アセトフェノン、4−ピラゾリルアセトフェノンなどの4−環状アミノアセトフェノン化合物などをあげることができ、中でも4−環状アミノアセトフェノン化合物が好ましく、4’−(イミダゾール−1−イル)アセトフェノンがより好ましい。
式(IIIc)で表される化合物のうち、R34が置換ヒドロカルビル基である化合物としては、
1,7−ビス(メチルエチルアミノ)−4−ヘプタノン、1,3−ビス(ジフェニルアミノ)−2−プロパノンなどのビス(ジヒドロカルビルアミノアルキル)ケトン;4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−N,N−ジ−t−ブチルアミノベンゾフェノン、4−N,N−ジフェニルアミノベンゾフェノンなどの4−(ジヒドロカルビルアミノ)ベンゾフェノン;4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノンなどの4,4’−ビス(ジヒドロカルビルアミノ)ベンゾフェノンをあげることができ、中でも4,4’−ビス(ジヒドロカルビルアミノ)ベンゾフェノンが好ましく、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンがより好ましい。
式(III)で表される好ましい化合物として、kが1であり、R
33がヒドロカルビレン基と酸素原子とが結合した基、又はヒドロカルビレン基と−NR
35−で表される基(R
35はヒドロカルビル基又は水素原子を表す)とが結合した基である下記式(IIId)で表される化合物をあげることができる。
(式(IIId)中、R
31は置換基を有してもよいヒドロカルビル基を表すか、あるいはR
32と結合して窒素原子及び/又は酸素原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基を表し、R
32は置換基を有してもよいヒドロカルビル基を表すか、あるいはR
31と結合して窒素原子及び/又は酸素原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基を表し、R
37はヒドロカルビレン基を表し、Aは酸素原子又は−NR
35−を表し、R
35はヒドロカルビル基又は水素原子を表し、R
34は置換基を有してもよいヒドロカルビル基又は水素原子を表す。)
式(IIId)において、R31、R32、R34の置換基を有してもよいヒドロカルビル基、R31とR32とが結合した窒素原子及び/又は酸素原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基の説明及び例示は、式(III)の説明において述べたものと同じである。また、R35のヒドロカルビル基は、R31、R32、R34のヒドロカルビル基で述べたものと同じである。
式(IIId)において、Aは好ましくは酸素原子又は−NR35−(R35はヒドロカルビル基(好ましくは炭素原子数1〜5のヒドロカルビル基)又は水素原子である。)で表される基であり、より好ましくは酸素原子又は−NH−で表される基であり、さらに好ましくは−NH−で表される基である。
式(IIId)において、R37のヒドロカルビレン基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ペンタン−2−エン−1,5−ジイル基、2,2,4−トリメチルへキサン−1,6−ジイル基などのアルキレン基;1,4−フェニレン基などのアリーレン基をあげることができる。
式(IIId)において、R34は好ましくは炭素原子数1〜10のヒドロカルビル基であり、より好ましくは炭素原子数2〜5のアルケニル基であり、さらに好ましくはビニル基である。
式(IIId)において、R37は好ましくは炭素原子数1〜10のヒドロカルビレン基であり、より好ましくは炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、さらに好ましくはエチレン基又はトリメチレン基であり、特に好ましくはトリメチレン基である。
式(IIId)において、R31は好ましくは炭素原子数1〜10のヒドロカルビル基であるか、R32と結合して炭素原子数3〜10のヒドロカルビレン基、又はヘテロ原子が窒素原子若しくは酸素原子である炭素原子数3〜10のヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基であり、より好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜10のアリール基であるか、R32と結合して炭素原子数3〜10のアルキレン基、−CH=N−CH=CH−で表される基、−CH=N−CH2−CH2−で表される基、−(CH2)2−O−(CH2)2−で表される基であり、さらに好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基であるか、R32と結合して炭素原子数3〜6のアルキレン基、−CH=N−CH=CH−で表される基、−CH=N−CH2−CH2−で表される基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基であるか、R32と結合してテトラメチレン基、ヘキサメチレン基、−CH=N−CH=CH−で表される基である。
式(IIId)において、R32は好ましくは炭素原子数1〜10のヒドロカルビル基であるか、R31と結合して炭素原子数3〜10のヒドロカルビレン基、又はヘテロ原子が窒素原子若しくは酸素原子である炭素原子数3〜10のヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基であり、より好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜10のアリール基であるか、R31と結合して炭素原子数3〜10のアルキレン基、−CH=N−CH=CH−で表される基、−CH=N−CH2−CH2−で表される基、−(CH2)2−O−(CH2)2−で表される基であり、さらに好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基であるか、R31と結合して炭素原子数3〜6のアルキレン基、−CH=N−CH=CH−で表される基、−CH=N−CH2−CH2−で表される基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基であるか、R31と結合してテトラメチレン基、ヘキサメチレン基、−CH=N−CH=CH−で表される基である。
式(IIId)で表される化合物のうち、Aが酸素原子である化合物としては、
2−N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、2−N,N−ジエチルアミノエチルアクリレートなどの2−N,N−ジヒドロカルビルアミノエチルアクリレート;3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレートなどの3−N,N−ジヒドロカルビルアミノプロピルアクリレート;2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどの2−N,N−ジヒドロカルビルアミノエチルメタクリレート;3−N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレートなどの3−N,N−ジヒドロカルビルアミノプロピルメタクリレートをあげることができ、3−N,N−ジヒドロカルビルアミノプロピルアクリレートが好ましく、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレートがより好ましい。
式(IIId)で表される化合物のうち、Aが−NR35−(R35はヒドロカルビル基又は水素原子を表す)で表される基である化合物としては、
N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルアクリルアミドなどのN、N−ジヒドロカルビルアミノエチルアクリルアミド;N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミドなどのN,N−ジヒドロカルビルアミノプロピルアクリルアミド;N,N−ジメチルアミノブチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノブチルアクリルアミドなどのN,N−ジヒドロカルビルアミノブチルアクリルアミド;N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリルアミドなどのN、N−ジヒドロカルビルアミノエチルメタクリルアミド;N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのN,N−ジヒドロカルビルアミノプロピルメタクリルアミド;N,N−ジメチルアミノブチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノブチルメタクリルアミドなどのN,N−ジヒドロカルビルアミノブチルメタクリルアミド;をあげることができ、N,N−ジヒドロカルビルアミノプロピルアクリルアミドが好ましく、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドがより好ましい。
式(III)で表される化合物として好ましい化合物は式(IIId)で表される化合物であり、中でもN,N−ジヒドロカルビルアミノプロピルアクリルアミドが特に好ましく、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドが最も好ましい。
上記のほか、窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物のうち好ましいものとして、アルコキシシリル基を含有する化合物をあげることもできる。
アルコキシシリル基を含有する化合物としては、窒素原子及びアルコキシシリル基を含有する化合物が好ましく、下記式(IV)で表される化合物がより好ましい。
(式(IV)中、R
41はヒドロカルビル基を表し、R
42、R
43はヒドロカルビル基又はヒドロカルビルオキシ基を表し、R
44は置換基を有してもよいヒドロカルビル基又はトリヒドロカルビルシリル基を表すか、あるいはR
45と結合して、ケイ素原子、窒素原子及び酸素原子からなる原子群より選択される少なくとも一種の原子をヘテロ原子として有してもよいヒドロカルビレン基を表し、R
45は置換基を有してもよいヒドロカルビル基又はトリヒドロカルビルシリル基を表すか、あるいはR
44と結合して、ケイ素原子、窒素原子及び酸素原子からなる原子群より選択される少なくとも一種の原子をヘテロ原子として有してもよいヒドロカルビレン基を表し、jは1〜5の整数を表す。)
上記式(IV)において、置換基を有してもよいヒドロカルビル基は、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基である。ヒドロカルビル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などのアルケニル基;フェニル基などのアリール基をあげることができ、好ましくはアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。置換ヒドロカルビル基としては、オキシラニル基、テトラヒドロフラニル基などのオキサシクロアルキル基をあげることができ、好ましくはテトラヒドロフラニル基である。
本明細書において、オキサシクロアルキル基は、シクロアルキル基の脂環上のCH2が酸素原子に置き換わった基を表す。
ヒドロカルビルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などのアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基をあげることができ、好ましくはアルコキシ基であり、より好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
トリヒドロカルビルシリル基としては、トリメチルシリル基、tert−ブチル−ジメチルシリル基をあげることができ、好ましくはトリメチルシリル基である。
ケイ素原子、窒素原子及び酸素原子からなる原子群より選択される少なくとも一種の原子をヘテロ原子として有していてもよいヒドロカルビレン基は、ヒドロカルビレン基、又はヘテロ原子がケイ素原子、窒素原子及び酸素原子からなる原子群より選択される少なくとも一種の原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基である。ヘテロ原子がケイ素原子、窒素原子及び酸素原子からなる原子群より選択される少なくとも一種の原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基としては、ヘテロ原子がケイ素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基、ヘテロ原子が窒素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基、ヘテロ原子が酸素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基をあげることができる。ヒドロカルビレン基としては、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ペンタン−2−エン−1,5−ジイル基、2,2,4−トリメチルへキサン−1,6−ジイル基などのアルキレン基をあげることができ、中でも炭素原子数4〜7のアルキレン基が好ましく、ペンタメチレン基又はヘキサメチレン基が特に好ましい。ヘテロ原子がケイ素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基としては、−Si(CH3)2−CH2−CH2−Si(CH3)2−で表される基をあげることができる。ヘテロ原子が窒素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基としては、−CH=N−CH=CH−で表される基、又は−CH=N−CH2−CH2−で表される基をあげることができる。ヘテロ原子が酸素原子であるヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−で表される基をあげることができる。
上記式(IV)において、R41は好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。R42、R43は好ましくはヒドロカルビルオキシ基であり、より好ましくは炭素原子数1〜4のアルコキシ基であり、さらに好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。R44、R45は好ましくはヒドロカルビル基であり、より好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基又はエチル基である。また、jは好ましくは2〜4の整数である。
上記式(IV)で表される化合物としては、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシランなどの[(ジアルキルアミノ)アルキル]アルコキシシラン化合物;ヘキサメチレンイミノメチルトリメトキシシラン、3−ヘキサメチレンイミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾ−ル、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾ−ルなどの環状アミノアルキルアルコキシシラン化合物;3−[ジ(テトラヒドロフラニル)アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3−[ジ(テトラヒドロフラニル)アミノ]プロピルトリエトキシシランなどの[ジ(テトラヒドロフラニル)アミノ]アルキルアルコキシシラン化合物;N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのN,N−ビス(トリアルキルシリル)アミノアルキルアルコキシシラン化合物をあげることができ、中でも[(ジアルキルアミノ)アルキル]アルコキシシラン化合物が好ましく、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
アルコキシシリル基を含有する化合物として、上記の窒素原子及びアルコキシシリル基を含有する化合物以外には、
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシランなどのテトラアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどのトリアルコキシヒドロカルビルシラン;トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリ−n−プロポキシクロロシランなどのトリアルコキシハロシラン;ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシランなどのジアルコキシジヒドロカルビルシラン;ジメトキシジクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、ジ−n−プロポキシジクロロシランなどのジアルコキシジハロシラン;メトキシトリメチルシランなどのモノアルコキシトリヒドロカルビルシラン;メトキシトリクロロシラン、エトキシトリクロロシランなどのモノアルコキシトリハロシラン;2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2−グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシランなどの(グリシドキシアルキル)アルコキシシラン化合物;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランなどの(3,4−エポキシシクロヘキシル)アルキルアルコキシシラン化合物;3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物などのアルコキシシリルアルキルコハク酸無水物;3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタクリロイロキシアルキル)アルコキシシラン化合物をあげることができる。
また、アルコキシシリル基を含有する化合物は、窒素原子及びカルボニル基を含有していてもよい。アルコキシシリル基を含有し、かつ窒素原子及びカルボニル基を含有する化合物として、トリス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリス[3−(トリプロポキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリス[3−(トリブトキシシリル)プロピル]イソシアヌレートなどのトリス[(アルコキシシリル)アルキル]イソシアヌレート化合物をあげることができ、中でもトリス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレートが好ましい。
上記共役ジエン系重合体の製造方法においては、単量体の重合開始から、後述する重合体の回収までに、共役ジエン系重合体の炭化水素溶液にカップリング剤を添加してもよい。カップリング剤としては、下記式(V)で表される化合物をあげることができる。
R51 aML4−a (V)
(式(V)中、R51はアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基またはアリール基を表し、Mはケイ素原子またはスズ原子を表し、Lはハロゲン原子またはヒドロカルビルオキシ基を表し、aは0〜2の整数を表す。)
上記式(V)で表されるカップリング剤としては、四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、四塩化スズ、メチルトリクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、トリメチルクロロスズ、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、テトラエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエトキシジエチルシランなどをあげることができる。
カップリング剤の添加量は、共役ジエン系重合体の加工性を高めるために、アルカリ金属触媒由来のアルカリ金属1mol当たり、好ましくは0.03mol以上であり、より好ましくは0.05mol以上である。また、低燃費性を高めるために、好ましくは0.4mol以下であり、より好ましくは0.3mol以下である。
上記共役ジエン系重合体の製造方法においては、後述する重合体の回収を行う前に未反応の活性末端をメタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコールにより処理してもよい。
共役ジエン系重合体の炭化水素溶液から共役ジエン系重合体を回収する方法としては公知の方法を用いることができ、例えば(A)共役ジエン系重合体の炭化水素溶液に凝固剤を添加する方法、(B)共役ジエン系重合体の炭化水素溶液にスチームを添加する方法(スチームストリッピング処理)をあげることができる。回収した共役ジエン系重合体は、バンドドライヤーや押出型ドライヤーなどの公知の乾燥機で乾燥してもよい。
上記共役ジエン系重合体において、式(I)で表される重合開始剤由来の構造単位の含有量は、低燃費性、ゴム強度、接着性及び加工性をバランス良く高める観点から、重合体単位質量あたり、好ましくは、0.0001mmol/g重合体以上、より好ましくは0.001mmol/g重合体以上であり、好ましくは0.15mmol/g重合体以下、より好ましくは、0.1mmol/g重合体以下である。
上記共役ジエン系重合体において、ケイ素含有ビニル化合物由来の構造単位の含有量は、低燃費性、ゴム強度、接着性及び加工性をバランス良く高める観点から、重合体単位質量あたり、好ましくは、0.01mmol/g重合体以上、より好ましくは0.02mmol/g重合体以上であり、好ましくは0.4mmol/g重合体以下、より好ましくは、0.2mmol/g重合体以下である。
低燃費性、ゴム強度、接着性及び加工性をバランス良く高める観点から、上記共役ジエン系重合体は、上記式(II)で表される化合物由来の構造単位を有することが好ましい。なお、上記共役ジエン系重合体中の上記式(II)で表される化合物由来の構造単位は、下記式(IIb)で表される構造単位を意味する。
(式(IIb)中、m、R
21、X
1、X
2及びX
3は、式(II)におけるものと同一である。)
本発明に係る共役ジエン系重合体は、該共役ジエン系重合体中の式(II)で表される化合物由来の構造単位において、X1、X2及びX3の少なくとも1つが水酸基に置換されたものであることが好ましく、2つ以上が水酸基に置換されたものであることがより好ましく、2つが水酸基に置換されたものであることがさらに好ましい。これにより低燃費性、ゴム強度、接着性及び加工性の改善効果を高めることができる。X1、X2及びX3を水酸基に置換する方法としては特に限定されないが、例えば、スチームストリッピング処理による方法があげられる。
低燃費性、ゴム強度、接着性及び加工性をバランス良く高める観点から、上記共役ジエン系重合体は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位(芳香族ビニル単位)を有することが好ましい。上記共役ジエン系重合体が芳香族ビニル単位を有する場合、上記共役ジエン系重合体中の芳香族ビニル単位の含有量は、共役ジエン化合物由来の構造単位(共役ジエン系単位)と芳香族ビニル単位との総量を100質量%として、好ましくは10質量%以上(共役ジエン単位の含有量化合物の含有量は90質量%以下)であり、より好ましくは15質量%以上(共役ジエン単位の含有量は85質量%以下)である。また、低燃費性の観点から、芳香族ビニル単位の含有量は、好ましくは50質量%以下(共役ジエン単位の含有量は50質量%以上)であり、より好ましくは45質量%以下(共役ジエン単位の含有量は55質量%以上)である。
上記共役ジエン系重合体が芳香族ビニル化合物に基づく構造単位を有する場合、上記共役ジエン系重合体のビニル結合量(ビニル含有量)は、共役ジエン単位の含有量を100mol%として、低燃費性の観点から、好ましくは80mol%以下であり、より好ましくは70mol%以下である。
特にゴム強度を向上させる観点からは、上記共役ジエン系重合体は、芳香族ビニル化合物の構造単位を有しないことが好ましく、この場合、上記共役ジエン系重合体のビニル結合量(ビニル含有量)は、共役ジエン単位の含有量を100mol%として、好ましくは20mol%以下であり、より好ましくは15mol%以下である。
なお、上記共役ジエン系重合体のビニル結合量は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
上記共役ジエン系重合体の分子量分布は、低燃費性を高めるために、好ましくは1〜5であり、より好ましくは1〜2である。分子量分布は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法により、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定し、MwをMnで除すことにより求められる。
上記共役ジエン系重合体は、ゴム成分として本発明のゴム組成物に用いることができる。
ゴム成分100質量%中の上記共役ジエン系重合体の含有量は、10質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは35質量%以上である。10質量%未満であると、低燃費性の改善効果が得られにくい傾向がある。また、上記共役ジエン系重合体の含有量は、60質量%以下、好ましくは50質量%以下である。60質量%を超えると、ゴム強度が低下するとともに、高コストになる傾向がある。
上記共役ジエン系重合体は、他のゴム成分と併用することが好ましい。他のゴム成分としては、ポリイソプレン系ゴムを好適に使用できる。ポリイソプレン系ゴムを配合することで、ゴム強度が向上するとともに、混練り時のゴムの纏まりが良くなり、生産性を改善できる。
ポリイソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)などがあげられる。NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。同様に、IRについても、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
本発明のゴム組成物がポリイソプレン系ゴムを含有する場合、ゴム成分100質量%中のポリイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上である。5質量%未満であると、ゴム強度の改善効果が充分に得られないおそれがある。また、ポリイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。ポリイソプレン系ゴムの含有量が90質量%を超えると、加工性が悪化する傾向がある。
ポリイソプレン系ゴム以外に使用できるゴム成分としては、従来のスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、ブチルゴムなどをあげることができる。また、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−オクテン共重合体などもあげることができる。これらのゴム成分は、2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、低燃費性、ゴム強度、接着性及び加工性をバランス良く改善できるという点から、共役ジエン化合物由来の構造単位を50質量%以上含むものを好適に使用することができ、具体的には、BR、SBRが好ましい。
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150Bなどの高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617などのシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBRなど、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。同様に、SBRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のNipol NS116Rなど、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
本発明のゴム組成物は、シリカを含有する。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などがあげられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。シリカは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは40m2/g以上、より好ましくは50m2/g以上である。40m2/g未満では、補強効果が小さく、ゴム強度が低下する傾向がある。また、シリカのN2SAは、好ましくは400m2/g以下、より好ましくは360m2/g以下、さらに好ましくは300m2/g以下である。400m2/gを超えると、シリカが分散しにくくなり、低燃費性や加工性が悪化する傾向がある。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上、好ましくは15質量部以上である。10質量部未満であると、シリカを配合した効果が充分に得られず、ゴム強度が低下する傾向がある。また、シリカの含有量は、60質量部以下、好ましくは55質量部以下である。60質量部を超えると、加工性が悪化する傾向がある。
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、従来からゴム工業で使用されるものであればとくに限定されるわけではないが、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、補強性及び加工性の向上効果が大きいという点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを用いることが好ましい。
本発明のゴム組成物は、軟化点が−20〜20℃の液状レジンを含有する。上記共役ジエン系重合体とともに上記液状レジンを配合することで、各性能の改善効果を相乗的に高めることができ、特に低燃費性及び加工性を大きく改善できる。
上記液状レジンは軟化点が固体レジンに比べて低く、転がり抵抗特性に相関があると考えられる70℃では液状である。したがって、液状レジンを配合すると、ポリマーが動き易くなることでエネルギーロスが少なくなり、低燃費性が改善されると考えられる。
上記液状レジンとしては、例えば、液状クマロンインデン樹脂、液状インデン樹脂、液状α−メチルスチレン樹脂、液状ビニルトルエン樹脂、液状ポリイソペンタン樹脂などの液状の石油系又は石炭系樹脂などが挙げられる。なかでも、低燃費性の改善効果が大きいという点から、液状クマロンインデン樹脂が好ましい。
上記液状レジンの軟化点は、−20℃以上、好ましくは−5℃以上、より好ましくは0℃以上である。−20℃未満であると、液状レジンの粘度が低くなり過ぎて、ゴム成分との混練性が悪化する傾向がある。また、上記液状レジンの軟化点は、20℃以下、好ましくは19℃以下、より好ましくは17℃以下である。20℃を超えると、エネルギーロスが大きくなり、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、本明細書において、軟化点とは、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
上記液状レジンの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上、好ましくは2質量部以上である。1質量部未満であると、低燃費性を充分に改善できないおそれがある。また、上記液状レジンの含有量は、10質量部以下、好ましくは8質量部以下である。10質量部を超えると、良好な加工性が得られる一方で、低燃費性が悪化する傾向がある。
添加剤としては、公知のものを用いることができ、硫黄などの加硫剤;チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤などの加硫促進剤;ステアリン酸、酸化亜鉛などの加硫活性化剤;有機過酸化物;カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどの充填剤;伸展油、滑剤などの加工助剤;老化防止剤を例示することができる。
上記カーボンブラックとしては、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCF及びECFのようなファーネスブラック(ファーネスカーボンブラック);アセチレンブラック(アセチレンカーボンブラック);FT及びMTのようなサーマルブラック(サーマルカーボンブラック);EPC、MPC及びCCのようなチャンネルブラック(チャンネルカーボンブラック);グラファイトなどをあげることができる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。1質量部未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。カーボンブラックの含有量は、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。70質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、通常、5〜200m2/gであり、下限は50m2/g、上限は150m2/gであることが好ましい。また、カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量は、通常、5〜300ml/100gであり、下限は80ml/100g、上限は180ml/100gであることが好ましい。カーボンブラックのN2SAやDBP吸収量が上記範囲の下限未満では、補強効果が小さく耐摩耗性が低下する傾向があり、上記範囲の上限を超えると、分散性が悪く、ヒステリシスロスが増大し低燃費性が低下する傾向がある。該窒素吸着比表面積は、ASTM D4820−93に従って測定され、該DBP吸収量は、ASTM D2414−93に従って測定される。市販品としては、東海カーボン社製商品名シースト6、シースト7HM、シーストKH、デグッサ社製商品名CK3、SpecialBlack4Aなどを用いることができる。
上記伸展油としては、アロマチック系鉱物油(粘度比重恒数(V.G.C.値)0.900〜1.049)、ナフテン系鉱物油(V.G.C.値0.850〜0.899)、パラフィン系鉱物油(V.G.C.値0.790〜0.849)などをあげることができる。伸展油の多環芳香族含有量は、好ましくは3質量%未満であり、より好ましくは1質量%未満である。該多環芳香族含有量は、英国石油学会346/92法に従って測定される。また、伸展油の芳香族化合物含有量(CA)は、好ましくは20質量%以上である。これらの伸展油は、2種以上組み合わされて用いられてもよい。
上記加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジサルファイド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなどのチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどのグアニジン系加硫促進剤をあげることができ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3質量部である。
上記共役ジエン系重合体に、他のゴム成分や添加剤などを配合してゴム組成物を製造する方法としては、公知の方法、例えば、各成分をロールやバンバリーのような公知の混合機で混練する方法を用いることができる。
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を配合する場合、混練温度は、通常50〜200℃であり、好ましくは80〜190℃であり、混練時間は、通常30秒〜30分であり、好ましくは1分〜30分である。
加硫剤、加硫促進剤を配合する場合、混練温度は、通常100℃以下であり、好ましくは室温〜80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を配合した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理を行って用いられる。加硫温度としては、通常120〜200℃、好ましくは140〜180℃である。
本発明のゴム組成物は、低燃費性、ゴム強度、接着性及び加工性のバランスに優れており、これらの性能の顕著な改善効果を得ることができる。
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材に用いることができ、なかでも、カーカスプライやベルトプライにおけるコードを被覆するプライトッピング用ゴム組成物として好適に用いることができる。
本発明の空気入りタイヤは、通常の方法により製造される。すなわち、上記ゴム組成物を通常のタイヤトレッドの加工方法、例えば、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて混練りし、得られた未加硫ゴム組成物をコードに圧着して未加硫の帯状プライ(ゴム圧着コード)を形成した後、該帯状プライをタイヤ成型機上で他の部材とともに通常の方法により貼り合わせて未加硫タイヤを成形する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して、本発明の空気入りタイヤを得ることができる。
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤとして好適に用いることができる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、合成、重合時に用いた各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
THF:関東化学(株)製無水テトラヒドロフラン
水素化ナトリウム:関東化学(株)製
ジエチルアミン:関東化学(株)製
メチルビニルジクロロシラン:信越化学工業(株)製
無水ヘキサン:関東化学(株)製
スチレン:関東化学(株)製
ブタジエン:東京化成工業(株)製1,3−ブタジエン
TMEDA:関東化学(株)製テトラメチルエチレンジアミン
n−ブチルリチウム溶液:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
開始剤(1):FMC社製AI−200CE2(3−(N,N−ジメチルアミノ)−1−プロピルリチウムにイソプレン由来の構造単位が2単位結合した化合物(下記式で表される化合物))(0.9M)
ピペリジン:東京化成工業(株)製
ジアミルアミン:東京化成工業(株)製
2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン:信越化学工業(株)製
N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド:東京化成工業(株)製
3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン:アヅマックス(株)製
sec−ブチルリチウム溶液:関東化学(株)製(1.0mol/L)
シクロヘキサン:関東化学(株)製
<変性剤(1)(末端変性剤)の作製>
窒素雰囲気下、100mlメスフラスコにN−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドを15.6g入れ、さらに無水ヘキサンを加え全量を100mlにして作成した。
<変性剤(2)(主鎖変性剤)の作製>
充分に窒素置換した2L三つ口フラスコにTHF1000mL、水素化ナトリウム13gを加え、氷水バス上で撹拌しながらジエチルアミン36.5gをゆっくり滴下した。30分撹拌後、メチルビニルジクロロシラン36gを30分かけて滴下し、2時間撹拌させた。得られた溶液を濃縮し、ろ過後、減圧蒸留精製を行い、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシランを合成した。得られたビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン21.4gを窒素雰囲気下で100mlメスフラスコに入れ、さらに無水ヘキサンを加え全量を100mlにした。
<変性剤(3)(末端変性剤)の作製>
窒素雰囲気下、100mlメスフラスコに3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランを27.7g入れ、さらに無水ヘキサンを加え全量を100mlにして作製した。
<共重合体の分析>
下記により得られた共重合体(共役ジエン系重合体)の分析は以下の方法で行った。
<重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定>
共重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算値として求めた。測定結果から、分子量分布Mw/Mnを算出した。
<共重合体の構造同定>
共重合体の構造同定(スチレン含有量、ビニル含有量)は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズの装置を用いて行った。測定は、重合体0.1gを15mlのトルエンに溶解させ、30mlのメタノール中にゆっくり注ぎ込んで再沈殿させたものを、減圧乾燥後に測定した。
<共重合体(1)の合成>
充分に窒素置換した30L耐圧容器にn−ヘキサンを18L、スチレンを600g、ブタジエンを1400g、変性剤(2)を40mL、TMEDAを10mmol加え、40℃に昇温した。次に、開始剤(1)を19mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に、変性剤(1)を20mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液にメタノール15mL及び2,6−tert−ブチル−p−クレゾール0.1gを添加後、スチームストリッピング処理によって重合体溶液から凝集体を回収し、得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、共重合体(1)を得た。なお、投入したケイ素含有ビニル化合物(変性剤(2))は、単量体成分100gあたり0.43gであった。投入した重合開始剤(開始剤(1))は、単量体成分100gあたり0.85mmolであった。投入した窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物(変性剤(1))は、投入した重合開始剤に由来するアルカリ金属1molあたり、1.18molであった。
<共重合体(2)の合成>
開始剤(1)19mLをn−ブチルリチウム溶液10.6mLに変えた以外は、共重合体(1)の合成と同じ処方により、共重合体(2)を得た。なお、投入したケイ素含有ビニル化合物(変性剤(2))は、単量体成分100gあたり0.43gであった。投入した窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物(変性剤(1))は、投入した重合開始剤に由来するアルカリ金属1molあたり、1.18molであった。
<共重合体(3)の合成>
充分に窒素置換した30L耐圧容器にn−ヘキサンを18L、スチレンを600g、ブタジエンを1400g、TMEDAを10mmol加え、40℃に昇温した。次に、n−ブチルリチウム溶液を11mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に、反応溶液にメタノール1mL及び2,6−tert−ブチル−p−クレゾール0.1gを添加後、スチームストリッピング処理によって重合体溶液から凝集体を回収し、得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、共重合体(3)を得た。
<共重合体(4)の合成>
重合体溶液から凝集体を回収する際、スチームストリッピング処理の代わりに、重合体溶液を常温で24時間蒸発させ、その後減圧乾燥をさせることで凝集体を回収した以外は、共重合体(1)の合成と同じ処方により、共重合体(4)を得た。なお、投入したケイ素含有ビニル化合物(変性剤(2))は、単量体成分100gあたり0.43gであった。投入した重合開始剤(開始剤(1))は、単量体成分100gあたり0.85mmolであった。投入した窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物(変性剤(1))は、投入した重合開始剤に由来するアルカリ金属1molあたり、1.18molであった。
<共重合体(5)の合成>
変性剤(2)40mLを0mLに、変性剤(1)20mLを0mLに変えた以外は、共重合体(1)の合成と同じ処方により、共重合体(5)を得た。なお、投入した重合開始剤(開始剤(1))は、単量体成分100gあたり8.5mmolであった。
<共重合体(6)の合成>
開始剤(1)19mLをn−ブチルリチウム溶液6.8mLに、変性剤(1)20mLを0mLに変えた以外は、共重合体(1)の合成と同じ処方により、共重合体(6)を得た。なお、投入したケイ素含有ビニル化合物(変性剤(2))は、単量体成分100gあたり0.43gであった。
<共重合体(7)の合成>
変性剤(1)20mLを変性剤(3)20mLに変えた以外は、共重合体(1)の合成と同じ処方により、共重合体(7)を得た。なお、投入したケイ素含有ビニル化合物(変性剤(2))は、単量体成分100gあたり0.32gであった。投入した重合開始剤(開始剤(1))は、単量体成分100gあたり0.85mmolであった。投入した窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物(変性剤(3))は、投入した重合開始剤に由来するアルカリ金属1molあたり、1.18molであった。
<共重合体(8)の合成>
重合体溶液から凝集体を回収する際、スチームストリッピング処理の代わりに、重合体溶液を常温で24時間蒸発させ、その後減圧乾燥をさせることで凝集体を回収した以外は、共重合体(7)の合成と同じ処方により、共重合体(8)を得た。なお、投入したケイ素含有ビニル化合物(変性剤(2))は、単量体成分100gあたり0.32gであった。投入した重合開始剤(開始剤(1))は、単量体成分100gあたり0.85mmolであった。投入した窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物(変性剤(3))は、投入した重合開始剤に由来するアルカリ金属1molあたり、1.18molであった。
<共重合体(9)の合成>
開始剤(1)19mLをn−ブチルリチウム溶液10.6mLに、変性剤(2)40mLを0mLに変えた以外は、共重合体(7)の合成と同じ処方により、共重合体(9)を得た。なお、投入した窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物(変性剤(3))は、投入した重合開始剤に由来するアルカリ金属1molあたり、1.18molであった。
<共重合体(10)の合成>
スチレンの量を0gに、ブタジエンの量を2000gに、TMEDA10mmoLをTHF5mmoLに、開始剤(1)19mLを開始剤(1)23mLに変えた以外は、共重合体(1)の合成と同じ処方により、共重合体(10)を得た。なお、投入したケイ素含有ビニル化合物(変性剤(2))は、単量体成分100gあたり0.43gであった。投入した重合開始剤(開始剤(1))は、単量体成分100gあたり0.85mmolであった。
投入した窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物(変性剤(1))は、投入した重合開始剤に由来するアルカリ金属1molあたり、1.18molであった。
<共重合体(11)の合成>
重合体溶液から凝集体を回収する際、スチームストリッピング処理の代わりに、重合体溶液を常温で24時間蒸発させ、その後減圧乾燥をさせることで凝集体を回収した以外は、共重合体(10)の合成と同じ処方により、共重合体(11)を得た。なお、投入したケイ素含有ビニル化合物(変性剤(2))は、単量体成分100gあたり0.43gであった。投入した重合開始剤(開始剤(1))は、単量体成分100gあたり0.85mmolであった。投入した窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物(変性剤(1))は、投入した重合開始剤に由来するアルカリ金属1molあたり、1.18molであった。
共重合体(1)〜(11)の単量体成分などについて、表1にまとめた。
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
共重合体(1)〜(11):上記方法で合成
天然ゴム:TSR20
シリカ:EVONIK−DEGUSSA社製のウルトラジル360(N2SA:50m2/g)
シランカップリング剤:EVONIK−DEGUSSA社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックN339(N2SA:96m2/g、DBP吸収量:124ml/100g)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のX−140
固体レジン:エクソンモービル社製のエスコレッツ1102
液状レジン:ルトカーズケミカル社製のNOVARES C10(液状クマロンインデン樹脂、軟化点:5〜15℃)
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:住友化学(株)製のソクシノールCZ
(実施例及び比較例)
表2及び3に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間、0.5mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をコードに圧着して未加硫の帯状プライ(ゴム圧着コード)を形成し、該帯状プライを未加硫タイヤのベルト層の幅全体に螺旋状に巻き付け、170℃で12分間加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造した。
<評価項目及び試験方法>
なお、以下の評価項目において、表2における基準比較例を比較例1、表3における基準比較例を比較例14とした。
<tanδ>
(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、動的歪振幅1%、周波数10Hz、温度50℃で加硫ゴム組成物のtanδを測定した。tanδの逆数の値について基準比較例を100として指数表示した。数値が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れることを示している。
<転がり抵抗>
転がり抵抗試験機を用い、試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、基準比較例を100とした時の指数で表示した。数値が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れることを示している。
<ゴム強度>
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%の条件下で加硫ゴム組成物のE*を測定し、基準比較例のE*を100として、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほどゴム強度に優れることを示している。
(ゴム強度指数) =(各配合のE*)/(基準比較例のE*)×100
<接着性>
8本のコードを10mmの等間隔に並べ、その両側から0.7mm厚のトッピングゴム(未加硫ゴム組成物)を圧着させた。得られたゴム圧着コードを湿度60%の条件で保管した後、2枚のゴム圧着コードを90度の角度で貼り合わせ、更にその両側に補強用のゴムを圧着させた。得られた圧着物の形状は加硫用金型の形状に合わせて長方形とした。該金型で圧着物を165℃で20分加硫した後、得られた加硫物中の貼り合わせた2枚のゴム圧着コード間に裂け目を入れ、インストロン社製の引張試験機を用いて50mm/分の速度で180度の向きに引っ張り、ゴム圧着コード間の剥離力(kN/25mm)を評価した。結果は、基準比較例の剥離力を100として指数表示した。数値が大きいほど、コードとトッピングゴムとの接着性が良好であり、耐久性に優れることを示している。
<ムーニー粘度>
JIS K 6300−1:2001「未加硫ゴム−物理特性−第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に準じて、ムーニー粘度試験機を用いて、1分間の予熱によって熱せられた130℃の温度条件にて、小ローターを回転させ、4分間経過した時点での上記未加硫ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4/130℃)を測定した。結果は指数で表し、数値が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性(混練加工性)が良好である。指数は次の式で求めた。
(ムーニー粘度指数)=(基準比較例のムーニー粘度)/(各配合のムーニー粘度)×100
<未加硫ゴムシートの加工性>
上記未加硫ゴム組成物をロールにて1.0mm厚さのゴムシートに押出し成形し、得られたゴムシートの生地の状態を確認した。耳切れが発生しておらず、さらに生地肌に問題がないものを○、そうでないものを×で表記した。
表2及び3に示すように、実施例は、特定のアミン構造を開始末端に有し、かつ、主鎖部分にケイ素含有化合物由来の構造単位を、停止末端に窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物由来の構造単位を有する共役ジエン系共重合体と、シリカと、特定の軟化点を有する液状レジンとをそれぞれ特定量含んでいる為、比較例のゴム組成物に比べて低燃費性、ゴム強度、接着性及び加工性がバランス良く改善された。