JP5902138B2 - 癌治療と幹細胞調節のための方法 - Google Patents
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Description
Genetics(2005)7,21〜33参照)。腫瘍抑圧遺伝子の多くが、後成的機序によってサイレンシングされることがわかっている。遺伝子突然変異を抑制させる可能性を有する遺伝子と異なり、後成的にサイレンシングされた腫瘍抑圧遺伝子を再活性化させ、細胞をアポトーシスまたは老化に至らしめることができる。この特徴は、癌への治療的介入において理想的な標的となる後成的変異をもたらす。DNAメチル化の特異的抑制因子である5‐アザシチジンとそのデオキシ類似体、5−Asa−2’−デオキシシチジンが、DNA依存的なメチルトランスフェラーゼ(DNMT)活性を抑制し、腫瘍抑圧遺伝子のサイレンシングを逆転させ、血液学的悪性疾患の治療に有用であることが示されている。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤等のヒストンを修飾する酵素に干渉する薬剤について、臨床試験が進行中である。
Dean,W.,Reproduction(2004)127,643−651を確認)。
疫療法(米国特許出願第2005/0244417号等)、癌細胞の特定の型の上で表される受容体に対する作動薬の投与(米国特許出願第2006/0147456号)、インターフェロン含有キトサン脂質粒子の投与(米国特許出願2005/0266093)、ならびに未知の機序によって前立腺癌細胞の特定の型に対して細胞毒性薬として作用する化合物の投与(米国特許出願第2005/0245559号)が含まれる。
O、SもしくはSiから選択される0〜3個のヘテロ原子を含む脂肪族、脂環族、芳香族、アリール脂肪族もしくはアリール脂環族のヒドロカルビル基から独立して選択される。R4とR5は、任意選択で結合し、脂肪族ヒドロカルビル架橋を定義する場合がある。R2
は、Hおよびハロゲン(F、CL、BRまたはI)から選択される。R3は、H、または
、N、O、S、SIおよびハロゲン(CL、F、BR、I)から選択される、1〜8個の主鎖炭素原子および0〜3個のヘテロ原子を含む、脂肪族もしくはアリール脂肪族のヒドロカルビル基である。いくつかの実施形態において、R2はFまたはClである。いくつ
かの実施形態において、また、R3(独立して、または、R2と同時に)は、FまたはClであり得る。
ることがある。アポトーシス細胞は特徴的な形態を示し、それによって、顕微鏡で識別することができる。
ぞれの方法において使用され得る。そのような細胞の集団を得る手段は、当技術分野では十分に確立されている(たとえば、Thomson,J.A.et al.,[1998],Science 282,1145−1147、またはCowan,C.A.et al.,[2004],N.Engl.J.Med.350,1353−1356参照)。さらに、たとえば、71の独立したヒト胚幹細胞系統が存在することが知られており、GE01、GE09、BG01、BG02、TE06、またはWA09など、その11の細胞系統が、研究目的に利用可能である(たとえば、http://stemcells.nih.gov/research/registry/eligibilityCriteria.aspのNIH Human Embryonic Stem Cell
Registry参照)。成人幹細胞は、たとえば、誕生後に残された胎盤およびへその緒、または成人幹細胞がいわゆる「サテライト細胞」として関連付けられる筋線維から隔離され得る(Collins,C.A.et al.,[2005],Cell 122,289−301、またRando,T.A.,[2005],Nature Medicine 11,8,829−831参照)。
は、当技術分野では周知である。2つの例示として、巨大核細胞前駆細胞を得る方法が、米国特許出願2005年/0176142において開示されており、マウス肝臓前駆細胞系統を得る方法が、Li et al.,((2005)Stein Cell Express,doi:10.1634/stemcells.2005−0108)によって記載されている。
、H、または独立に選択された脂肪族基、シクロ脂肪族基、芳香族基、アリール脂肪族基、およびアリールシクロ脂肪族ヒドロカルボニル基であってよく、N、O、P、S、Se、およびSiから選択された0〜6、いくつかの実施形態では0〜4、いくつかの実施形態では0〜3のヘテロ原子を含む。いくつかの実施形態では、R4およびR5は、同一であってよい。いくつかの実施形態では、R4およびR5は、脂肪族ヒドロカルボニル架橋を定義するように連結され得る。それぞれのヒドロカルボニル架橋は、たとえば、1〜12、いくつかの実施形態では2〜10、およびいくつかの実施形態では2〜8の主鎖炭素原子を含み、N、O、P、S、Se、およびSiから選択された1〜5、いくつかの実施形態では1〜4、およびいくつかの実施形態では1〜3のヘテロ原子を含むことが可能である。R2は、H、またはF、Cl、Br、もしくはLなどのハロゲン原子であることが可能
である。いくつかの実施形態では、R2は、FまたはClである。R3は、H、または脂肪族基、シクロ脂肪族基、芳香族基、アリール脂肪族基、もしくはアリールシクロ脂肪族ヒドロカルボニル基であることが可能である。このヒドロカルボニル基は、1〜12、いくつかの実施形態では1〜8、いくつかの実施形態では1〜4の主鎖炭素原子、ならびにN、O、P、S、Se、Si、およびFまたはClなどのハロゲンから選択された0〜3または0〜2などの0〜4のヘテロ原子を含むことが可能である。
長さであってよく、かつ任意の数の非芳香族環式要素および鎖要素を含むことが可能である。環式炭化水素成分ならびに環式置換基および鎖置換基の両方とも、N、O、S、Se、またはSiなど、ヘテロ原子をさらに含むことが可能である。
化合物を使用することを含む。一態様では、本発明は、腫瘍細胞においてアポトーシスを誘発し、および/または幹細胞/前駆細胞の多分化性および/または自己複製特性を調節するために、上記で確定された化合物を使用することにも関する。これに関して、本発明は、腫瘍細胞においてアポトーシスを誘発し、および/または幹細胞/前駆細胞の多分化性および/または自己複製特性を調節するために、上記で確定された化合物を使用することにも関する。以上および以下の説明は、それぞれの使用および前記用途の化合物にも同様に適用されることを理解されたい。
維持に関わる1セットの調節タンパク質としてさらに知られている。ポリコーム群(PcG)複合体は、クロマチン構造を変化させ、それにより遺伝子転写に必要な因子へのDNAのアクセス性を変化させることによって、遺伝子の長期抑制の役割を担う(概述について、Sparmann,A.,&van Lohuizen,M.,Nature Reviews Cancer(2006)6,846−856参照)。ポリコーム群(PcG)複合体は、ヒストンテールの脱アセチル化など、後成的修飾により、およびATP依存クロマチンリモデリングを阻害することによって、作用する(Levine,S.S.,et al.,Trends Biochem Sci(2004)29,478−85;Lund,A.H.,and van Lohuizen,M.,Curr Opin Cell Biol(2004)16,239−46)。例として、ポリコーム抑制複合体2(PRC2)は、後成的抑制の開始に関与することが知られているタンパク質複合体である。PRC2は、しばしば、ヒトの癌において過剰発現し、したがって、癌の後成的治療の有望な標的と見なされている。ポリコーム群タンパク質は、ショウジョウバエからヒトに高度に保存され、複数のポリコーム抑制複合体を形成する。ポリコーム抑制複合体の成分は、固有のヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)活性を含み、コア・ヒストンのメチル化により遺伝子抑制を維持する(Muller,J.,et al.Cell(2002)111,197−208;Cao,R.et al.Science(2002)298,1039−1043;Milne,T.A.,et al.Mol Cell(2002)10,1107−17;Nakamura,T.,et al.,Mol Cell(2002)10,1119−1128;Beisel,C.,et al.Nature(2002)419,857−62)
PcGタンパク質の中で、ポリコーム抑制複合体2は、あらかじめ幹細胞自己複製および癌に関連付けられている(Lee,T.I.et al.,Cell(2006)125,301−313;Holden,C.,Science(2006)312,349;Kamminga,L.M.et al.Blood(2006)107,2170−2179)。低活性のp16INK4Aを有するヒト乳房上皮細胞では(腫瘍形成の早期
事象)、たとえば、ポリコーム抑制複合体2の2つの成分の上方調節が観測された(Reynolds,PA et al.,J Biol Chem(2006)281,34,24790−24802)。ポリコーム抑制複合体2は、3つのコア成分を含む:EZH2(Zesteホモログのヒト・エンハンサ)、SUZ12(zeste12ホモログのサプレッサ)、およびEED(胚体外胚葉発育;たとえばLevine et al.,2004、前掲参照)。EZH2は、ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を有するPRC2の活性成分であり(たとえば、Vire’,E.,et al.,Nature(2006),439,16,871−874)、SUZ12およびEEDは、体細胞および幹細胞の両方においてこの活性のために必要である(Schoefiner,S.,et al.,EMBO Journal(2006)25,3110−3122)。EZH2は、ヒストンH3リシン−27(H3−K27)のメチル化に触媒作用を及ぼし、この酵素活性は、PRC2−介在遺伝子サイレンシングに必要である(Muller,J.et al.Cell(2002),111,197−208;Cao,R.et al.,Science(2002),298,1039−43;Milne,T.A.et al.,Molecular Cell(2002),10,1107−17,Beisel,C.,et al.,Nature(2002),419,857−62;Chen,H.,et al.,J.Biol.Chem(2005),280,23,22437−22444)。遺伝子抑制を維持することが示唆されているポリコーム抑制複合体1は、リシン−27メチル化ヒストンH3を認識することができる。
用に影響を与えることが知られている。その結果、転写は抑制される。さらに、ヒストンメチル化は、クロマチン抑制においてDNAメチル化と共同して機能すると考えられており、後成的抑制に関連する他の機構である。
されており(たとえばNichols,J.et al.(1998) Cell 95,379−391;およびMitsui et al(2003)Cell 113,631−642)、胚幹細胞における低レベルのヒストン3のリシン−27のメチル化に関連することが知られている(Boyer et al.,2006、前掲)。PRC2複合体タンパク質SUZ12は、Oct4によっても調節されるいくつかの遺伝子を調節することがさらに示されている(Squazzo,S.L.,et al.,Genome
Research(2006)16,890−900)。siRNAによってOct4をノックダウンすることにより、いくつかの標的プロモータからSUZ12が失われることになる(同書)。さらに、ヒト胚細胞では多分化性因子Oct4、Sox2、およびNanogに関連付けられた遺伝子と、識別されたPcG標的遺伝子との間の著しい相関が報告されている(Boyer et al.,2006、前掲、補足)。45の標的遺伝子が、Oct4、Sox2、Nanog、およびPcGタンパク質(同書)によって共に占有されることが判明した。これらの発見は、細胞分化の調節および幹細胞の多分化状態の維持へのprc2タンパク質の統合を示す。
なら、通常、たとえばループを形成することが既知の配列を使用することを避ける。これは、選択された塩基を、標的配列とウォブル対を依然として形成することができる塩基に交換することによって行うことができる(Patzel,V et al.、前掲)。siRNA/miRNA技法は、たとえば、米国特許出願2005/0191618に開示されているように、HIV RNAの開裂など、寄生DNA配列のサイレンシングに適用されている。
本発明による方法のいくつかの実施形態では、ポリコーム抑制複合体を枯渇させることにより、前記ポリコーム抑制複合体と腫瘍サプレッサ遺伝子との間において複合体が放出される。これらの実施形態のいくつかでは、腫瘍サプレッサ遺伝子は、それによって再活性化され、それぞれの細胞においてアポトーシスを生じる。本発明者は、FBX032がそれぞれの腫瘍遺伝子の例であることを発見した(たとえば、図6Bおよび6D〜6H参照)。FBX032は、プロテアソームにおけるタンパク質加水分解について特定のタンパク質を標的とすることが知られている(FBX032という名前の)ユビキチンリガーゼをコードする。FBX032は、筋肉の発達に重要な遺伝子であるとこれまで考えられてきた。FBX032の例には、非限定的に、UniProtKB/Swiss−Prot受入れ番号Q969P5を有する355のアミノ酸のヒト・タンパク質、UniProtKB/Swiss−Prot受入れ番号Q9CPU7を有する355のアミノ酸のマウス・タンパク質、またUniProtKB/Swiss−Prot受入れ番号Q91Z62を有する350のアミノ酸のラット・タンパク質がある。それぞれの遺伝子の例示は、EMBLヌクレオチド配列データベース受入れ番号BCO24030、ならびにEMBL受入れ番号BC120963およびBC120964の配列のmRNAを転写するヒト遺伝子である。他の例として、ブタのFBX032遺伝子も、マッピングおよび配列された(Yu,J.,et al.Animal Genetics(2005)36,5,451−452)。
を理解するであろう(たとえば、図3A参照)。通常、時間依存細胞死応答が腫瘍細胞において観測される。それぞれの腫瘍細胞は、たとえば、培養され得る。たとえば、MCF−7、MB−468、SK−Br−3、T47D、HCT116、RKO、またはSW480などの細胞系統の細胞であることが可能である。いくつかの実施形態では、それぞれの腫瘍細胞は、哺乳動物から得られることが可能である。他の実施形態では、それぞれの腫瘍細胞は、哺乳動物に含まれることが可能である。腫瘍細胞は、たとえば乳癌細胞など、任意のタイプの腫瘍であることが可能である。
よび/または自己複製特性を調節する医薬組成物にも関する。
である。
吸入による投与では、本発明により使用される医薬組成物は、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切な気体など、適切な噴射剤を使用して、加圧パックまたはネブライザからエアロゾル噴霧提示の形態で送達されることが好都合なことがある。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計測量を送達するバルブを提供することによって決定され得る。吸入器または注入器において使用されるゼラチンなどのカプセルおよびカートリッジが、化合物の粉末混合物および乳糖またはデンプンなどの適切な粉末ベースを含んで調合され得る。
それぞれの医薬組成物は、座薬または持続性浣腸などの直腸組成物として調合されることも可能であり、たとえば、ココア・バターまたは他のグリセリドなどの従来の座薬ベースを含む。
実施例
細胞と薬剤処理
これらの実施例で用いられる細胞株は、米国菌培養収集所(バージニア州、マナッサス)から購入した。細胞は、DMEM(ドゥルベコ(ダルベッコ)変法イーグル培地)にグルタミン、ペニシリンおよびストレプトマイシンを添加した10%ウシ胎児血清を補充して維持した。薬剤処理に供するため、細胞は薬剤処理の前日に播種した。細胞を、5μMの3−Deazaneplanocin Aまたは2ΜのM5−Asa−2’−デオキシシチジン(5−AzaC;Sigma)で72時間、100nMのトリコスタチンA(TSA;Sigma)で24時間処理した。5−AzaCとTSAとの併用では、細胞に、5−Azaを48時間添加し、その後TSAを24時間添加した。
EZH2、SUZ12およびEEDメッセンジャーRNAを特異的な標的とするsiRNAオリゴヌクレオチドについては、先に説明している(Cao,R.,&Zhang,Y.,Moi Cell(2004)15,57−67;Bracken,A.P.,et al,EMBO J.(2006)22,5323−5335)。Brackenらは、SUZ 12を標的とするステムループRNAを生成する際に、2つのオリゴヌクレオチドを用いた。それらは、5’−GATCCCCGTCGCAACGGACCAGTTAATTCAAGAGATTAACTGGTCCGTTGCGA CTTTTTGGAAA−3’(配列番号1)、および5’−TCGATTTCCAAAAAGTCGCAACG GACCAGTTGATCTCTTGAATTAACTGGTCCGTTGCGACGGG−S’(配列番号2)であった。CAO および ZHANGは、EZH2にオリゴヌクレオチド5’−AAGACTCTGAATGCAGTTGCT−S’(配列番号3)を、そして、EEDにオリゴヌクレオチド5’−AAGCACTATGTTGGCCATGGA−3’(配列番号4)を用いた。選択されたPRC2標的と非標的対照のSmartpool siRNA二重鎖は、Dharmacon社(コロラド州、ラファイエッ
ト)から購入した。Sigma−Proligo社から購入したFBXO32 siRNAは、以下の配列を標的としている:5’−GTCACATCCTTTCCTGGAA−S ’(配列番号5)。細胞は、Lipofectamine 2000(in vitroゲン)を用いて、製造業者の使用説明書に従って、siRNA二重鎖を最終濃度50nMでトランスフェクトした。
細胞ペレットは、タンパク質すべてを放出させるために組織ホモジナイザーを用いて更に音波破砕する前に、まず、pH 7.6のTris−HCl 25mM、NaCL 150mM、1%ノニデット−P 40(NP−40)、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%ナトリウムドデシル硫酸塩(SDS)の水溶液からなる放射標識免疫沈降(RIPA)用緩衝液で溶解した。等量のタンパク質を、SDS−ポリアクリルアミドゲル上で分離し、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移した。ブロットは、以下に列挙抗体において調べた:EED(07−368)、SUZ12(07−379)、SUV39H1(07−550)、BMIL(05−637)、トリメチル化H3−K27(07−449)、トリメチル化H3−K9(07−442)およびAcetyl−Histone
H3(06−599)、ブロットは、Upstate社から購入した。EZH2(AC22)およびHistone H3(3Hl)は、Cell Signaling社から購入した。DNAメチルトランスフェラーゼDNMTLおよびDNMT3Bに対する抗体は、Alexis Biochemicals社から購入した。
細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄し、70%エタノールで定着し、ヨウ化プロピジウム染色およびFACS分析に供するために処理した。カスパーゼ3活性アッセイおよびミトコンドリア膜電位を検出するため、細胞は、製造業者(BD Bioscience社)の使用説明書に従い、抗活性カスパーゼ3とJC−Iで、それぞれ、染色した。
全RNAはTrizol(in vitroゲン)を用いて細胞株から分離し、RNA
Amplificationキット(Ambion社)を用いてcDNAに変換した。マイクロアレイハイブリッド形成法は、Illumina Gene Expression BeadChip(Illumina社)を用いて行い、データ解析をAgilent Technologies社のGeneSpringソフトウェアを用いて行った。正常な試料および初期乳房腫瘍の試料の遺伝子発現は、製造業者の使用説明書に従い、Affymetrix U 133A GeneChips(Affymetrix社、カリフォルニア州、サンタクララ)を用いて実施した。個々の配列からの遺伝子発現データは、中央値によるセンタリングによって正規化し、平均リンケージ階層クラスタリングを、Cluster and Treeview社(http://rana.lbl.gov/EisenSoftware.htm)のソフトウェアを用いて行った。定量的リアルタイムPCRは、TaqManプローブ(Applied Biosystems社)を用いてPRISM 7900 配列検出器(Applied Biosystems社)で行った。試料は、18SのリボソームRNAのレベルに正規化した。
前述のように、ChIPアッセイを行った。MCF−7細胞は、3−デアザネプラノシン(5μM)を用いる場合と用いない場合とで、48時間処理した。MCF−7細胞は、6ウェルプレートに30%コンフルエントに播種し、3−デアザネプラノシン(5μM)を用いる場合と用いない場合とで、48時間処理した。細胞は、Ixリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1度洗浄し、その後、37℃で10分間、PBSにおいて1%ホルムアルデヒドを用いて処理し、続いて最終濃度が0.125Mになるまで5分間グリシンを添加
した。細胞を、その後、氷上に擦り付けて、4℃で5分間1500rpmで遠心分離した。PBSで洗浄の後、細胞ペレットを冷溶解緩衝液1 mlで再懸濁し、(pH 7.5
HEPES 10 mM、pH 8.0 EDTA 1 mM、NaCL 400 mM、10%グリセロール、0.5%NP−40、フェニルメチルスルホニルフッ化物 0.5 MM、およびプロテアーゼ阻害剤[ベンズアミジン 1 mM、ロイペプチン 3
mg/mL、のバシトラシン 0.1 mg/mL、マクログロブリン 1 mg/mL])続いて微量遠心機にて40℃で5分間、11,500rpmで遠心分離を行い、クロマチンと架橋結合していないタンパク質を除去した。得られたペレットをその後、冷溶解緩衝液で再び再懸濁し、Heat Systems Ultrasonics社製W−220超音波処理器を用いて出力20%で計2分間(パルス:30秒ON/30秒OFF)超音波分解した。得られた溶液を、4℃で10分間、微量遠心機にて、4℃で10分間、最高速度で遠心分離し清澄化した。この時点で、溶液を5%取り出し、−20℃でクロマチンのインプット試料として保存した。クロマチン溶液は、Protein A/G Sepharose beads(Pharmacia社)の50%スラリー80μLで、2〜4時間事前に清澄化した。
−3’(配列番号18)およびリバースプライマー 5’−TCTGGGCCAACGTTGCTTTG−3’(配列番号19)。PLAU:フォワードプライマー 5’−GGA AGCACCAACAGTTTATGCCC−3’(配列番号20)およびリバースプライマー 5’−ATCAGAGGGGGA AAG GCAAGG−3’(配列番号22)。
ウエスタンブロット解析(図1A)で示すように、HCTL 16細胞またはMCF−7細胞を、3−デアザネプラノシン5ΜMで48時間および72時間処理した結果、PRC2の成分であるSUZ12、EZH2およびEEDのタンパク質レベルは劇的に低下した。したがって、リシン27(H3−K27)のヒストン3のトリメチル化は、3−デアザネプラノシンによって強く低下した。対照的に、リシン9(H3−K9)でのヒストンH3メチル化は、3−デアザネプラノシン処理の影響を受けなかった。この結果は、H3−K27がPRC2ヒストンメチルトランスフェラーゼの特異的基質であり、一方、H3−K9のメチル化は、SUV39HLメチルトランスフェラーゼによりしばしば媒介される、というこれまでの所見と一致している。したがって、Suv39hlのタンパク質レベルが、3−デアザネプラノシンに影響されていないことがわかった。加えて、3−デアザネプラノシン処理は、ヒストンアセチル化に影響を及ぼさず、5−AzaCやZebularine等のDNMT阻害剤によって枯渇することが知られているDNMT1またはDNMT3Bのタンパク質形質発現に変化を及ぼさなかった。逆転写(RT−PCR)でPCR法で測定されるPRC2タンパク質の各々のmRNA濃度は、しかしながら、3−デアザネプラノシン処理(図1B)後、変化せず、このことは、PRC2成分の減少がタンパク質レベルで起こり、転写抑制によらないことを示唆する。
3−デアザネプラノシンが、細胞死を誘導することが可能であるとわかった。5μMの3−デアザネプラノシンは、propodiumヨウ化物(PI)染色およびフローサイトメトリー(図3A)による判定では、48時間で25%の細胞死、そして72時間で45%の細胞死を誘導することが可能であることが確認された。5μMの3−デアザネプラノシンも、乳癌MB−468細胞、結腸直腸癌HCT116、RKO細胞およびSW480細胞を含む種々の他の癌細胞株で、明らかな細胞死を誘導した。
ラノシンがミトコンドリア機能障害およびカスパーゼ活性化を伴うアポトーシス細胞死反応を誘導することを示す。
PRC2は、その標的遺伝子の発現を抑制するために作用する。このため、3−デアザネプラノシンによりPRC2を枯渇させると、結果としてそれらの再発現が予想される。3−デアザネプラノシン活性化されたPRC2標的を判定するには、PRC2により抑制される推定標的遺伝子を同定する必要があった。PRC2成分EZH2およびSUZ12が胸部腫瘍で過剰発現することが報告されているため、本実施例では乳癌細胞に着目する。(Kirmizis et al.,2003、前掲;Kirmizis et al.,2004、前掲)。siRNAは、MCF−7細胞において、PRC2(EZH2、SUZ 12およびEED)の3つのコア成分のノックダウンを個々に用いた。遺伝子発現の効果をIllumina Gene Expression BeadChipを用いて解析した。データ解析により、EZH2、EED、SUZのsiRNA処理後、それぞれ708個、684個、572個の遺伝子が2倍以上アップレギュレートしたことが明らかになった。図4Aは、少なくとも2つのsiRNA条件でアップレギュレートした450個の遺伝子とsiRNA試験の3件すべてでアップレギュレートした95個の遺伝子との重複を示す(2つおよび3つの条件の重複にて、p<0.0001)。全体として、3つのPRC2タンパク質のうち少なくとも1つが枯渇している場合、1402個の遺伝子の発現が増加した。その後の解析を包括すると、1402個の遺伝子すべてが、PRC2標的遺伝子となりうると考えられた。
750個の遺伝子が2倍以上アップレギュレートされた。3−デアザネプラノシンでアップレギュレーされたPRC2標的遺伝子を同定するため、3−デアザネプラノシンで誘導可能な750個の遺伝子を、1402個の候補PRC2標的遺伝子と比較した。140個の遺伝子(p<0.0001、図4B)の重複が同定された。これらの重複遺伝子は、3−デアザネプラノシンで発現が活性化できる候補PRC2標的遺伝子である。
の統合することで、原発性胸部腫瘍に関連する遺伝子とPRC2標的リストとの有意な対合が可能になった。例えば、PLAUおよびDUSP4 および10を、MCF−7細胞においてサイレンシングしたが、実際には、正常組織と比較して初期腫瘍試料で高度に発現することがわかった。これが癌細胞株と原発性乳癌細胞との基本的な相違を反映する場合があるにもかかわらず、これらの「一致しない」遺伝子(例えば、PLAUおよびDUSP4 および10)の発現が、マクロファージ、脈管細胞成分および間質細胞等、原発性腫瘍の非癌成分に起因するとも、同様に考えられる。この選択を通して、しかし本願発明者は、発現が、正常な胸部組織と比べて原発性胸部腫瘍で一貫してダウンレギュレートされる、臨床的に関連したPRC2標的のグループを特定した。多くのPRC2抑制された標的遺伝子(例えばTGFBI、IGFBP3およびPPPIR15A)が成長抑制またはアポトーシスで機能を有することが知られており、推定腫瘍抑圧遺伝子としてのそれらの潜在的役割を示唆している。これらの遺伝子の再発現は、3−デアザネプラノシン誘導性アポトーシスに、集合的に関与する場合がある。
クロマチン免疫沈降(ChIP)を用いて、PRC2がその推定標的遺伝子プロモータと結合するかどうか、また、この結合が3−デアザネプラノシン処理により影響を受ける可能性があるか否かを判定した。さらに、RNA Pol IIとPRC2が排他的な方法で遺伝子プロモータと結合するので、RNAポリメラーゼII(RNA Pol II)の結合について解析した(Vire et al.,2006、前掲)。3−デアザネプラノシンによるPRC2の枯渇が、PRC2標的遺伝子プロモータへのRNA Pol
IIの補充を増強させると推論された。CpGアイランドを有する場合と有さない場合とで、1kb以内の転写開始点でPRC2結合部位の95%が以前に見つかったことから、8個の候補PRC2標的遺伝子のコアプロモーター領域中のChIP PCRプライマーをデザインした。(Lee et al.,2006、前掲)(図5A)。SUZ12およびRNA Pol II抗体を用いて行われるChIP解析により立証されるように、未処理のMCF−7細胞は、試験を行ったPRC2標的遺伝子プロモータに、SUZ 12の強い結合を示したが、バックグラウンドまたは最小の結合のみが非特異的IgGまたはRNA Pol IIの引き抜き試料で検出された(図5B)。3−デアザネプラノシンによる処理後、これらのプロモータと結合しているSUZ 12は顕著に減少したが、RNA POL IIの結合は増加した。3−デアザネプラノシンによるPRC2枯渇後のPRC2標的遺伝子の再発現と合わせて、これらの所見は、これらPRC2標的遺伝子プロモータと結合しているPRC2が転写抑制のために必要とされることを確認した。3−デアザネプラノシンによるPRC2タンパク質の破壊は、この結合を減少させ、結果としてRNA Pol IIのさらなる補充とPRC2標的遺伝子プロモータの活性化をもたらした。
3−デアザネプラノシンがAdoHycヒドロラーゼ活性を抑制して、間接的に一般的なメチル化反応を抑制するため、PRC2標的遺伝子の3−デアザネプラノシン媒介性の再活性が、DNA低メチル化の結果と考えられる可能性がある。そのために、DNA脱メチル化剤である5−アザ−2’デオキシ−シチジン(5−AzaC)で、またはヒストンデアセチラーゼ阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)と併用での、MCF−7細胞の処理により、PRC2標的遺伝子を活性化させることができるかどうかをテストした。アレイ解析は、5−AzaC単独またはTSAと併用のいずれかで処理したMCF−7細胞で行った。これまでに確認された140個のPRC2標的遺伝子の発現プロフィールを、3−デアザネプラノシンで処理したMCF−7細胞と比較した。図5C(I)は、上記の処理が3−デアザネプラノシン処理の場合に比べて、結果的にPRC2標的遺伝子を顕著
に再活性させなかったことを示す。140個のPRC2標的遺伝子のうち、13個の遺伝子(約10%)のみが、5−AzaCおよびTSA(例えばANAX8やDLX2)を併用治療後、3倍以上の誘導を示した。このことは、PRC2標的のいくつかにおいて、3−デアザネプラノシンがDNA脱メチル化反応の結果としてPRC2標的遺伝子の発現を増強させる場合があることを示唆している。配列結果を、代表的なPRC2標的に行うリアルタイムRT−PCRを用いて更に確認した。TGFBI、KRT17およびFBX032等の遺伝子は、TSAの有無にかかわらず、3−デアザネプラノシンにのみ誘導され、5−AzaCには誘導されなかった(図5C、II)。ANXA8およびDLX2の発現は、しかし、3−デアザネプラノシンの場合と5−AzaCとTSAの併用の場合に活性化された(図5C、III)。3−デアザネプラノシンによるPRC2標的遺伝子の再活性は、一般のDNA低メチル化の結果ではなかったが、ANXA8やDLX2等の特定のPRC2標的遺伝子に関して例外がみられる場合がある。これらの遺伝子については、最近の研究で示唆されるように、PRC2は、それらのプロモータにDNMT(DNAメチルトランスフェラーゼ)を補充する場合があり、同等にそれらの発現を抑制する場合がある(Vire et al,2006、前掲)。
MCF−7細胞で見られる知見を評価するため、MB−468、SK−BR−3、MB−231、T47DおよびBT549を含む付加的な乳癌細胞株のスクリーニングを行った。時間経過的にアポトーシス反応を解析した結果、採取した乳癌細胞株の3−デアザネプラノシンに対する感受性が様々に変化することがわかった。MCF−7細胞と同様に、MB−468細胞、SK−BR−3細胞およびT47D細胞は、3−デアザネプラノシン誘導性の細胞死に非常に影響されやすかった。対照的に、MB−231細胞およびBT−549細胞は、MCFLOAと共に、3−デアザネプラノシン処理に、高い耐性を示した(図6A)。3−デアザネプラノシンに対する細胞感受性と関連するPRC2標的遺伝子を特定するため、アレイ解析を、3−デアザネプラノシン処理の前後に乳癌細胞株で行い、47個のPRC2標的遺伝子の発現のプロファイルを特定した。いくつかのPRC2標的遺伝子が、感受性細胞株と抵抗性細胞株との間で差次的に発現し、それが3−デアザネプラノシンに対する明確な感受性を与える場合があることを説明した。遺伝子クラスタリング解析により、PRC2標的遺伝子(22個の遺伝子)のサブセットが、抵抗性細胞株に対して一貫して高レベルに発現するが(MCF10A、MB−231およびBT549)感受性細胞株(MCF−7、MB−468、SK−BR−3およびT47D)では、発現が低レベルであることが分かった(図6B)。この遺伝子群(4つの遺伝子)のうち:FBXO32、LAMB3、PLAUおよびPPP1R15Aが、4つの感受性細胞株すべてにおいて、同様に、3−デアザネプラノシンにより誘導され、別の遺伝子(TGFBI、IGFBP3、TNS3およびKRT17)では、4つの感受性細胞株のうち3つで誘導された。抵抗性細胞株(MCF10A、MB−231およびBT549)では、しかし、これらの遺伝子は、(BT549におけるLAMB3以外)すでに高度に発現しており、3−デアザネプラノシン処理の後、さらに顕著には誘導されなかった。リアルタイム解析と従来のRT−PCR解析の両方で、4つの遺伝子セットの配列データを確認した(図6Dおよび6E)。このことから、これらの遺伝子発現の抑制および3−デアザネプラノシンによる遺伝子誘導の程度は、3−デアザネプラノシンに対する細胞感受性と関連すると考えられた。しかし、特に、PRC2標的遺伝子の発現レベルは、PRC2タンパク質のレベルと必ずしも関係していなかった。たとえば、EZH2タンパク質を高度に発現すると考えられたMB−231細胞では、多くのPRC2標的が、必ずしも抑制されるというわけではなかった(図6E、下パネル)。これは、これらの細胞において、EZH2は、これらの遺伝子の後成的制御を確立し維持する上で機能的ではなく、DNMTおよびHDAC等の付加的因子を必要とする場合があることを示唆している。
的役割を判定するため、siRNAを用いて、3−デアザネプラノシン反応に関係する7つのPRC2標的遺伝子の誘導を阻止し、アポトーシス誘導における3−デアザネプラノシンの効果を評価した。FBXO32 siRNA処理だけが、3−デアザネプラノシンへのアポトーシス反応を低下させた。別の6つのPRC2標的遺伝子を標的としている残りのsiRNAオリゴヌクレオチドは、3−デアザネプラノシン誘導性アポトーシスを抑制しているとは考えられなかった(図6F)。siRNAの的外れな効果を排除するため、異なるFBXO32 siRNAをさらに用いた。FBXO32誘導の抑制が3−デアザネプラノシンによるアポトーシス誘導を有意に軽減させることが確認され(図6G)。類似の結果が、MB−468およびT47D細胞でも観察された(データ表示せず)。これらの試験は、特定されたPRC2標的遺伝子のうち、乳癌細胞において3−デアザネプラノシン誘導性アポトーシスを媒介する主たる作用因子として、FBXO32について確認する。このことから、乳癌細胞のFBXO32のサイレンシング状態および3−デアザネプラノシンによる再活性は、3−デアザネプラノシン反応の重要な決定因子であると考えられる。さらに、潜在的な腫瘍抑圧遺伝子としてのFBXO32の機能的役割は、コロニー形成に影響を及ぼすその能力によって、更に裏付けられた。図6Hは、MCF−7細胞のFBXO32の形質移入により、調節ベクターでトランスフェクトした細胞と比較して、形成されるコロニー数が大幅に低下したことを示す。
、RNA干渉を用いた更に機能的解析は、F−ボックスタンパク質32をコードするFBXO32の再発現が、少なくとも部分的には3−デアザネプラノシンのアポトーシス応答に寄与するということを、明らかにしている。腫瘍抑圧遺伝子としてのその潜在的機能は、細胞発育およびコロニー形成を抑制するその能力により更に裏付けられた。重要なことに、FBXO32が、正常組織と関連して原発性胸部腫瘍により強く抑制されていることが確認される。このため、正常組織ではなくヒト乳癌細胞におけるPRC2による潜在的腫瘍抑圧遺伝子の一部の選択的な抑制およびPRC2標的因子による効果的な反転は、腫瘍細胞に対する腫瘍細胞の優先的死滅をもたらす新規の治療手法を示している。
Claims (9)
- 培養される幹細胞の分化を阻害するための医薬の製造における、一般式(I)の化合物の使用方法であって、
R1、R2、R4およびR5は、Hであり、
R3は、CH2OHであり
培養される幹細胞の分化を阻害することが、ヒストン3上のリシン27のメチル化の阻害を含む、使用方法。 - 前記幹細胞が胚幹細胞である、請求項1に記載の使用方法。
- 前記幹細胞が奇形腫の細胞である、請求項1または2に記載の使用方法。
- 前記幹細胞が哺乳類から得られる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用方法。
- 後成的方法である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用方法。
- 前記細胞においてポリコーム抑制複合体を枯渇させることを含むヒストンメチル化の阻害を更に含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用方法。
- 少なくとも1つのポリコーム抑制複合体の少なくとも1つの成分のレベルを測定することを更に含む、請求項6に記載の使用方法。
- 少なくとも1つのポリコーム抑制複合体の前記少なくとも1つの成分のレベルの測定結果を対照の測定結果と比較することを更に含む、請求項7に記載の使用方法。
- 前記ポリコーム抑制複合体がポリコーム抑制複合体2、ポリコーム抑制複合体3、およびポリコーム抑制複合体4のうちの少なくとも1つである、請求項6〜8のいずれか1項に記載の使用方法。
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