JP5900793B2 - 木材の乾燥方法、および木材用の乾燥装置 - Google Patents

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Description

本発明は、木材の乾燥方法、および木材用の乾燥装置に関する。特に、住宅構造用の柱や梁桁などに用いるスギ、ヒノキ、アカマツ、カラマツなどの針葉樹類、その他広葉樹類の木材を、割れが少なく、且つ変色や熱劣化の少ない高品位な状態に乾燥させる木材の乾燥方法、およびこの乾燥方法に用いることができる木材用の乾燥装置に関する。
木造住宅の柱や梁桁などの構造用製材に、ヒノキやスギなどの国産樹種を用いる場合、我が国の森林資源の状況から、小径材を心持ちの状態で木取りして用いるのが一般的である。その際、特に柱材では、4つの材面のうち1材面に背割りを施すことで、他の3材面に発生する材面割れを抑制し、意匠的な要求に対応していた。なお、木材の割れには、「材面割れ」の他、「内部割れ」や「木口割れ」があり、これらを包含する概念として、本願では「材割れ」を用いることがある。
しかし、阪神淡路大震災により金具接合が注目されるようになったこと、さらにプレカット工法が普及したことにより、背割り部分の不都合点がクロ−ズアップされるようになり、背割りのない構造材が求められるようになった。さらに、背割りが存在しない構造用集成材の普及によっても、その要求度は一層高まりを見せてきた。
このため、心持ち材を材面割れが全くない状態で仕上げた乾燥材の要望が、建築業界から製材業界へ多く寄せられるようになってきた。
乾燥によって材面割れが生じる主な原因は、木材が収縮異方性を有するためである。すなわち、一般的に、木材の接線方向には半径方向の約2倍の収縮が生じるところ、乾燥プロセスにおける含水率の低下によって通常の形で収縮が生じれば、接線方向に引張応力が発生し、木材の材料強度を超えた時点で材面割れが生じるのである。
しかし、何らかの処理によって、接線方向の収縮率を小さくできれば、引張応力が減少して材面割れの発生を抑制できる可能性がある。このため、製材業界や木材乾燥の研究者等は、木材が有する熱粘弾性を利用し、木材の収縮異方性をコントロ−ルすることにより、材面割れを抑制する手法の開発に取り組んできた。
そして、このような状況下、近年、利用されるようになった乾燥方法が、「高温ドライングセット処理法」である。具体的には、木材をまず約90℃程度で蒸煮し、その後、乾球温度約120℃ 、湿球温度約90℃で一気に木材の表層部を乾燥させ、表層部の形状固定(ドライングセット)を図るという方法である。
上記「高温ドライングセット処理法」において、「蒸煮」は熱粘弾性が発現できるように、木材に含まれるリグニンの軟化点(約80℃)を超える状態に材温を上昇させるために行う。その後、含水率が高い乾燥初期の段階には湿球温度と材温がほぼ同じに維持されるので、リグニンが軟化している材温(80〜90℃)を維持するために湿球温度を80〜90℃に維持しながら、表層部の乾燥速度をできるだけ大きくするために乾球温度を120℃に維持する。このとき、乾燥速度の面からは乾球温度は120℃以上でも構わないのであるが、木材の熱劣化を考慮してこの程度の温度を選択していた。
このような処理条件下で木材の表層部にドライングセットが形成される。具体的には、木材の表層部が乾燥する時に木材の内部ではまだ収縮が始まっていないため、表層部には大きな引張応力が発生するところ、この力を利用して、リグニンが軟化して熱粘弾性が発現しやすい状態(伸びやすい状態)になっている表層部を伸ばす(通常の収縮より少ない収縮に抑える)ことで、材面割れ(表面の割れ)を抑制するという原理になる。即ち、リグニンが軟化した状態で、木材表層部の引張応力をなるべく大きくしない状態で材面割れを抑制しながら乾燥を進め、木材表層部にドライングセットを形成させるのである。その結果、「高温ドライングセット処理法」を行わない場合と比較して、材面割れがある程度の確率で抑制できるということになる。
このように、本願におけるドライングセットとは、「乾燥時の自由な収縮が引っ張りの力によって抑制される結果、小さな収縮量に固定されること。」をいう。
また、特許文献1には、「常圧下で被乾燥材を80〜100℃で蒸煮した後に、乾球温度を100〜130℃程度(実施例では120℃)、湿球温度を乾球温度より20〜50℃低くした高温低湿な条件下で、被乾燥材の表層を急速に乾燥し、その後、乾球温度を100℃以下に下げ、乾燥室内を5〜70kPa程度の減圧状態にして、被乾燥材の内層を速やかに乾操させることを特徴とする木材の高品質乾燥方法。」が記載され、これによって、「被乾燥材の材面割れ及び内部割れと材色の暗色化を殆ど生じない木材乾燥を従来の乾燥方法よりも短い期間で行って、乾燥材の品質並びに生産性の向上に顕著な効果を挙げ得る。」とある。
特開2004−138338号公報
しかし、上記「高温ドライングセット処理法」は、乾球温度が120℃程度の高温処理であり、木材の変色や熱劣化が生じやすいものであった。具体的には、120℃程度という高い温度域を使用するために、ヘミセルロ−スの熱変性等によって、木材の熱劣化が生じる可能性があり、結果として衝撃強度等が低下することが心配されていた。また、木材の表面ばかりでなく内部まで大きな変色が生じ、いくら表面を鉋削しても木材本来の材色を出すことはできず、見えがかり材としての利用に制限が生じていた。さらに、抽出成分の揮散や変質も同時に進行する懸念があるため、耐久性の低下も懸念されていた。このような課題は、100〜130℃程度の高い乾球温度を用いて被乾燥材の表層を乾燥させる特許文献1記載の発明においても同様であった。
木材の表層部にドライングセットを形成して材面割れを抑制するためには、木材温度を反映する湿球温度を木材中のリグニンの軟化点である80℃以上にすることが必須である。しかしその一方で、木材を乾燥させようとすると湿球温度と乾球温度の差を大きくする必要があるところ、木材の変色や熱劣化の生じにくい100℃程度の乾球温度では、湿球温度と乾球温度の差が小さくなってしまうため、木材を十分に乾燥させることができないか、若しくは乾燥に長期間要することとなり、このような温度領域での乾燥を実現できていなかった。
即ち、表層部にドライングセットを形成して材割れを防止しつつ、変色や熱劣化の少ない100℃程度の乾球温度で木材を乾燥させることができなかったのである。
本発明は、上述の事柄に留意してなされたものであって、材割れが少なく、且つ変色や熱劣化の少ない木材の乾燥方法を提供する。また、本発明は、この乾燥方法に用いられる木材用の乾燥装置についても提供する。
上記課題を解決するために、木材を80〜100℃で蒸煮する蒸煮工程と、この蒸煮工程で蒸煮された木材を、乾球温度が90〜100℃、湿球温度が80〜85℃、且つ減圧条件の下で、10〜30時間乾燥処理する表層乾燥工程と、この表層乾燥工程の後、表層乾燥工程で乾燥させた木材を、乾球温度が60〜90℃、湿球温度が40〜80℃で前記乾球温度よりも低い温度、且つ減圧条件の下で、3〜10日間乾燥処理する中内層乾燥工程と、この中内層乾燥工程の後、中内層乾燥工程で乾燥させた木材を、乾球温度が60〜80℃、湿球温度が乾球温度よりも1〜3℃低い温度、且つ減圧条件の下で、1〜5日間処理する調湿工程を有する木材の乾燥方法であって、前記蒸煮工程に先立ち、乾燥防止用のシール剤で、木材の両木口面を中央部分を残して被覆しておくとともに、前記両木口面付近の材面もそれぞれ前記両木口面から10〜20cmの範囲で全面を被覆しておき、前記表層乾燥工程では、湿球温度を維持するために、減圧条件を、湿球温度80〜85℃の範囲内の任意の湿球温度における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力まで減圧する条件とするとともに、この減圧条件下において加湿を行い、前記中内層乾燥工程では、湿球温度を維持するために、減圧条件を、湿球温度の範囲内の任意の湿球温度における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力まで減圧する条件とするとともに、この減圧条件下において加湿を行い、前記調湿工程では、湿球温度を維持するために、減圧条件を、湿球温度の範囲内の任意の湿球温度における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力まで減圧する条件とするとともに、この減圧条件下において加湿を行い、木材として心持ち材を用いる、木材の乾燥方法とした。表層乾燥工程では、主に、木材の表層部を乾燥させる。また、中内層乾燥工程では、主に、木材の中層部と内層部を乾燥させる。加湿は、湿球温度が低下しないように行う。
この木材の乾燥方法は、蒸煮工程を有することで、木材に含まれるリグニンを軟化させ、次工程の表層乾燥工程でドライングセットを形成しやすい状態とすることができる。
また、表層乾燥工程を有することで、変色や熱劣化を抑えつつ、木材の表層部にドライングセットを形成して表層部の材割れ(材面割れ)を少なくすることができる。
表層乾燥工程における湿球温度が80℃未満であると、木材中のリグニンが軟化せず、ドライングセットを形成することができないため材面割れが生じる。一方で、表層乾燥工程における湿球温度が85℃を越えると、乾球温度との温度差が小さくなり、後述する減圧条件下においても、十分な乾燥を行いにくくなる。表層乾燥工程における湿球温度は、83〜85℃が好ましい。
また、表層乾燥工程における乾球温度が100℃を越えると、木材の変色や熱劣化が生じやすくなる。一方で、表層乾燥工程における乾球温度が90℃未満であると、湿球温度との温度差が小さくなり、後述する減圧条件下においても、十分な乾燥を行いにくくなる。表層乾燥工程における乾球温度は、材色変化や割れ、熱劣化などの点から、95〜100℃が好ましい。
また、表層乾燥工程における乾燥時間が10時間未満であると乾燥が不十分となる。一方で、表層乾燥工程における乾燥時間が30時間を越えると、内部割れが生じやすくなる。乾燥時間は20〜30時間が好ましい。
本願発明者は、材割れを防止しつつ変色や熱劣化の少ない乾燥材を得るため鋭意研究開発を重ねた。
木材(特に心持ち材)の材面割れを防止するには木材の表層部にドライングセットを形成することが重要であり、そのためには、木材中のリグニンの軟化点である80℃以上に湿球温度を維持する必要がある。その一方で、変色や熱劣化を考慮すると、乾球温度100℃程度以下の温度領域で乾燥させる必要がある。しかし、このような温度領域では、ドライングセット時点における木材表層部の十分な乾燥速度が得られなかった。
すなわち、湿球温度は少なくとも80℃以上、乾燥室内のムラを考えると85℃程度とすることが好ましい一方で、乾球温度を100℃以下に留めると、最大でも15℃程度の乾湿球温度差しか作れないことになり、乾燥速度は大きく減少し、結果として速やかなドライングセットが形成できずに、材面割れを誘発することになっていたのである。
この状況を改善するためには、何らかの要素を加えて乾燥速度を上昇させる措置が必要であった。そこで目をつけたのが減圧という要素であった。減圧することによって、沸点は下がり、低い温度域でも表面蒸発を促進することができる。また、ドライングセット初期には、木材表層部と外周の空気層との間の圧力差によっても、蒸発が促進され、大きな乾燥速度(蒸発速度)を得ることができるのである。
表層乾燥工程において、湿球温度と乾球温度の差は10〜20℃が好ましく、15〜20℃がより好ましい。なお、当然のことであるが、湿球温度が乾球温度よりも低くなる。
この木材の乾燥方法は、表層乾燥工程において、湿球温度80〜85℃の範囲内の任意の湿球温度(湿球温度の設定値、湿球温度の目標値)における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力まで減圧することで、湿球温度の上昇を抑制することができ、木材の温度上昇を抑えることができる。また、加湿を行うことで、湿球温度の低下を抑制することができ、木材の温度低下を防止することができる。
表層乾燥工程において、減圧状態を維持するためには真空ポンプなどを用いて吸引することになる。しかし真空ポンプなどをフリ−に稼働させていると乾燥室の内部の水蒸気圧が低下して湿球温度が下がり、結果として材温(木材の温度)が低下して熱粘弾性を発現できる温度領域を逸脱してしまうことがあった。そこで、減圧下において加湿を行うことで、乾燥室の内部の湿球温度を維持し、熱粘弾性を発現できる温度に材温を確保することができるのである。
その一方、表層乾燥工程における減圧条件を、湿球温度80〜85℃の範囲内の任意の湿球温度における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力まで減圧する条件としたため、原理的には空気中の水蒸気量が頭打ちになり、これによって湿球温度の上昇を防止することができる。
この木材の乾燥方法は、乾球温度が60〜90℃、湿球温度が40〜80℃で乾球温度よりも低い温度、という低い乾球温度域で乾燥を進め、その際、減圧条件を、湿球温度の範囲内の任意の湿球温度(湿球温度の設定値、湿球温度の目標値)における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力まで減圧する条件とすることで、木材表面からの水分の急速な蒸発を抑制し、材内部に発生する水分傾斜を減少させながら乾燥を進行させることができる。その結果、乾燥応力を全体的に低いレベルに抑制することができ、結果として内部割れの発生をほぼ防止することができる。また、湿球温度の範囲内の任意の湿球温度における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力に減圧するとともに、この減圧下において加湿を行うことで、表層乾燥工程と同様に、湿球温度を維持することもできる。このような条件を外れると、木材に内部割れが生じやすくなる。乾球温度は、75〜90℃とすることが、より好ましく、湿球温度は、55〜75℃とすることが、より好ましい。
表層乾燥工程で木材の表層部にドライングセットが形成された後、そのままの温度で乾燥を続けると、木材に内部割れが生じることがあり、建築用構造材として利用した場合、接合部の強度などの低下が懸念されるという欠点があった。この現象は、ドライングセットが形成された表層部が伸びたまま固定化されているのに対して、内部の細胞が収縮しようとして引張応力を受けた結果、内部割れとなるものである。そこで、材面割れの防止に加えて、内部割れも防止するために、中内層乾燥工程では表層乾燥工程よりも温度を下げて乾燥する。
また、木口面の乾燥速度は、材面(側面)と比較して非常に大きいために、乾燥初期には木口面のみの乾燥が進行することで木口割れを生じさせることがある。特に、本発明で採用する減圧という要素は、木口面の乾燥速度を増加させる可能性があり、木口割れの危険性が高くなる。そこで、蒸煮工程に先立ち、乾燥防止用のシ−ル剤で、木材の両木口面を中央部分を残して被覆しておくことで、木口割れを低減させることができる。具体的には、木材の両木口面を、中心部を含む3〜7cm角、好ましくは5cm角を残してシ−ル剤で被覆する。ここで、中央部分を残して木口面を被覆するのは、中央部分から一定の水分蒸発を確保しながら引張応力が大きくなる周辺部の収縮を抑制し、木口面から材面に及ぶ割れ(木口割れ)を防止するものである。
このとき、木口面と併せて、前記両木口面付近の材面もそれぞれ前記両木口面から10〜20cmの範囲で全面を被覆しておき、木口付近全体の応力緩和で木口割れを防止する措置を取る。具体的には、木口面外周縁から材面に向けて折り返すように、材面を10〜20cm、好ましくは15cmの範囲で全面をシ−ル材で被覆することができる。このとき、木口面を被覆するシ−ル剤と、材面を被覆するシ−ル剤とを連続させるようにする。
シ−ル剤は、材内部と表面を遮蔽できる塗膜を形成する材質のものを選択する。具体的には、耐熱、耐水性を有したシリコ−ンが好適である。
上記木材の乾燥方法に用いる木材用の乾燥装置としては、木材を収容して蒸煮及び乾燥を行う乾燥室と、この乾燥室の内部の空気を循環流動させる循環手段と、前記乾燥室の内部の空気に蒸気を供給する蒸気供給手段と、前記乾燥室の内部の空気を加熱する加熱手段と、前記乾燥室の内部の空気及び蒸気を吸引して乾燥室の内部圧力を減圧させる減圧手段と、前記乾燥室の内部の湿球温度、乾球温度、および圧力が所定の値になるように、前記蒸気供給手段、前記加熱手段、および前記減圧手段を制御する乾燥条件制御手段と、前記乾燥室の内部で生じた結露水を乾燥室の外部に排出する乾燥室用ドレン排出手段を備えており、前記減圧手段は、真空ポンプと、この真空ポンプを前記乾燥室に連通させる吸引経路と、この吸引経路に設けた熱交換器と、を備え、前記熱交換器が、前記乾燥室の内部から前記真空ポンプによって吸引された蒸気含有空気を吸引経路において冷却するように構成されており、前記乾燥条件制御手段は、乾燥室の内部の湿球温度の設定値、乾球温度の設定値、および圧力の設定値を入力するための設定値入力手段と、乾燥室の内部の湿球温度、乾球温度、および圧力を計測するセンサ手段と、このセンサ手段によって計測された乾球温度が、前記設定値入力手段に入力された乾球温度の設定値となるように加熱手段を制御する加熱制御手段と、前記センサ手段によって計測された圧力が、前記設定値入力手段に入力された圧力の設定値なるように減圧手段を制御する減圧制御手段と、前記センサ手段によって計測された湿球温度が、前記設定値入力手段に入力された湿球温度の設定値となるように制御する湿球温度制御手段と、を備え、この湿球温度制御手段は、前記設定値入力手段によって入力された湿球温度の設定値に基づいて、この湿球温度の設定値における飽和水蒸気圧を求める演算手段を備え、この演算手段で求めた飽和水蒸気圧を乾燥室の内部の圧力として前記設定値入力手段に入力することができるように構成されているとともに、蒸気供給手段を制御して減圧下において加湿を行う蒸気供給制御手段を備えており、前記乾燥室用ドレン排出手段は、乾燥室の床面よりも低い位置に設置された乾燥室用ドレンタンクと、乾燥室の床面側と前記乾燥室用ドレンタンクの上部側とを連通する乾燥室用排水管と、この乾燥室用排水管の配管経路に設けた乾燥室用排水弁と、乾燥室の壁面側又は上部側と前記乾燥室用ドレンタンクの上部側とを連通する通気管と、この通気管の配管経路に設けた通気弁と、前記乾燥室用ドレンタンクの下部側と乾燥装置外部の排水経路とを連通する乾燥室用ドレンタンク排水管と、この乾燥室用ドレンタンク排水管の配管経路に設けた乾燥室用ドレンタンク排水弁と、前記乾燥室用ドレンタンクの上部側と乾燥装置外部とを連通する乾燥室用リーク管と、この乾燥室用リ−ク管の配管経路に設けた乾燥室用リーク弁と、前記乾燥室用排水弁、前記通気弁、前記乾燥室用ドレンタンク排水弁、及び前記乾燥室用リーク弁の開閉を制御する弁制御手段と、を備え、前記弁制御手段は、前記乾燥室用排水弁と前記通気弁とを開くとともに、前記乾燥室用ドレンタンク排水弁と前記乾燥室用リーク弁とを閉じておくことで乾燥室用ドレンタンク内に結露水が溜まるようにしておき、その後、前記乾燥室用排水弁と前記通気弁とを閉じた後、前記乾燥室用ドレンタンク排水弁と前記乾燥室用リーク弁とを開くように制御して、乾燥室用ドレンタンク内に溜まった結露水を排出するように構成された、木材用の乾燥装置を提案する。蒸気供給制御手段による加湿は、湿球温度が低下しないように行われる。
表層乾燥工程と中内層乾燥工程などでは、乾燥室内の高温の蒸気含有空気を真空ポンプが吸引することで減圧条件を達成することになる。しかし、高温の蒸気含有空気の吸引を続けると真空ポンプに負担がかかり、焼き付きなどの機械トラブルを生じる可能性があった。本発明の木材用の乾燥装置は、乾燥室の内部から真空ポンプによって吸引された蒸気含有空気を熱交換器によって冷却するため、このようなトラブルを回避することができ、安定的な吸引を実現することができる。
この木材用の乾燥装置は、湿球温度制御手段によって、減圧条件下において湿球温度を制御しやすい。
乾燥装置を運転していると乾燥室の内部に結露水が溜まってくるため、装置の運転中に、この結露水を外部に排出する必要がある。しかし、表層乾燥工程や中内層乾燥工程などでは、装置の内部を減圧しており、この減圧状態に影響を与えることなく結露水を外部に排出する必要があった。
この木材用の乾燥装置は、上記構成を採用したことで、表層乾燥工程や中内層乾燥工程などにおいて、乾燥室の内部の圧力に殆ど影響を与えることなく、乾燥室の内部に生じた結露水を外部に排出することができる。
本発明により、材割れが少なく、且つ変色や熱劣化の少ない木材の乾燥方法を提供することができる。また、この乾燥方法に用いる木材用の乾燥装置についても提供することができる。
木材用の乾燥装置のブロック図である。 木材用の乾燥装置の概略図である。 図2のD部の拡大図である。 木材の乾燥方法の工程図である。 乾燥前後の含水率と重量を示す表である。 材長方向の水分分布を示すグラフである。 断面方向の水分分布を示すグラフである。 内部割れの長さを示すグラフである。 曲がりの発生状況(発生量)を示すグラフである。 辺材色の変化を示す表である。 心材色の変化を示す表である。 乾燥防止用のシ−ル剤で木材の木口面などを被覆した状態を示す図である。
以下、図を用いて木材の乾燥方法、およびこの木材の乾燥方法に用いることができる木材用の乾燥装置を例示説明する。
この木材の乾燥方法は、木材を80〜100℃で蒸煮する蒸煮工程S1と、この蒸煮工程S1で蒸煮された木材を、乾球温度が90〜100℃、湿球温度が80〜85℃、且つ減圧条件の下で、10〜30時間乾燥処理する表層乾燥工程S2と、を有している。そして、表層乾燥工程S2では、湿球温度を維持するために、減圧条件を、湿球温度80〜85℃の範囲内の任意の湿球温度における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力まで減圧する条件とするとともに、この減圧条件下において加湿を行う。
以下、図1〜4を用いて、木材用の乾燥装置(以降、乾燥装置と称する場合がある)について例示説明する。
1.木材用の乾燥装置
木材用の乾燥装置Mは、乾燥室1、循環手段2、蒸気供給手段3、加熱手段4、減圧手段5、及び乾燥条件制御手段6を備えている。また、これに加えて、本実施形態では、乾燥室用ドレン排出手段9を備えている。以降、これら各構成要素について説明するが、本発明およびその構成要素は、以下の説明に限定されるものではない。なお、図2において、便宜上、乾燥条件制御手段6を省略してある。また、図1において、便宜上、センサ手段62が乾燥室1の外部に存在するように図示したが、通常は乾燥室1の内部に設けられる。
(1)乾燥室
乾燥室1は、被乾燥材である木材Lを内部に収容して、蒸煮及び乾燥を行うためのものである。この乾燥室1の内部に、木材Lを桟積み(各木材Lを相互間に桟を挟んで隙間ができるように積む)するのであるが、本実施形態では、桟積みにした木材Lを乾燥室1へ入れ出しするための台車11を備えている。
本発明の木材の乾燥方法では、表層乾燥工程S2や中内層乾燥工程S3などで減圧条件を用いるため、開閉扉(図示せず)を閉じた状態で、ある程度は乾燥室1の密閉性が保たれる必要がある。
(2)循環手段
循環手段2は、乾燥室1の内部の空気を循環流動させるためのものである。この循環手段2は、乾燥室1の内部の空気の他、蒸気供給手段3(後述)によって乾燥室1の内部に供給された蒸気も循環流動させることになる。
本実施形態では、循環手段2として送風機21を用いてあり、この送風機21からの送風によって、桟積みした木材Lの隙間を通るように、乾燥室1の内部で空気が循環流動する。また、減圧状態では風量が減少してしまうため、送風機21の回転数を増加させるような制御をするように構成してある。即ち、常圧下で行う蒸煮工程S1よりも、減圧下で行う表層乾燥工程S2及び中内層乾燥工程S3などで送風機21の回転数を増加させるような制御をするように構成してある。
送風機21としては送風方向が反転自在なものを用いることが好ましい。
(3)蒸気供給手段
蒸気供給手段3は、乾燥室1の内部の空気に蒸気を供給するためのものである。蒸煮工程S1で木材Lを蒸煮する際や、表層乾燥工程S2や中内層乾燥工程S3などにおいて乾燥室1の内部を加湿する際に用いられる。表層乾燥工程S2や中内層乾燥工程S3などでは、加湿することにより、湿球温度の低下を抑制する。
本実施形態では、蒸気供給手段3として、蒸気を乾燥室1の内部に放出する蒸気噴射管34と、この蒸気噴射管34に制御弁33を備える配管32を通じて蒸気を供給する蒸気発生装置31と、を備えた構成としてある。
(4)加熱手段
加熱手段4は、乾燥室1の内部の空気を加熱するためのものである。表層乾燥工程S2や中内層乾燥工程S3などで、乾球温度を制御する際に用いられる。
本実施形態では、加熱手段4として、フィン付きヒ−タ−41を用いた構成としてある。このフィン付きヒ−タ−41には、制御弁43を備える配管42を通じて蒸気発生装置44(31)から蒸気が供給されるように構成されている。
(5)減圧手段
減圧手段5は、乾燥室1の内部の空気及び蒸気を吸引して乾燥室1の内部圧力を減圧させるものである。表層乾燥工程S2や中内層乾燥工程S3などで、減圧条件を実現する際に用いられる。減圧手段5は、真空ポンプ51と、この真空ポンプ51を乾燥室1に連通させる吸引配管(吸引経路)52と、この吸引配管52に設けた熱交換器7と、で構成される。そして、本実施形態では、乾燥室1と熱交換器7との間の吸引配管52に吸引制御弁53が設けてある。換言すると、熱交換器7が吸引制御弁53よりも真空ポンプ51側に設けてある。以降、熱交換器7について説明する。
熱交換器7は、乾燥室1の内部から真空ポンプ51によって吸引された蒸気含有空気を冷却するものである。この熱交換器7は、乾燥室1と真空ポンプ51との間の吸引配管52に設けられ、表層乾燥工程S2や中内層乾燥工程S3などで、乾燥室1の内部と真空ポンプ51の間の吸引経路で蒸気含有空気を冷却する。
本実施形態では、熱交換器7として、スパイラル式(図示せず)のものを採用し、蒸気含有空気を冷却する冷媒として水を用いている。蒸気含有空気側経路と冷媒水側経路とは熱交換隔壁で互いに隔てられ(以上、図示せず)、熱交換が行われる。
ここで、熱交換器7によって、乾燥室1の内部から真空ポンプ51によって吸引された蒸気含有空気が冷却されると、熱交換器7の蒸気含有空気側経路に結露水(冷却結露水)が溜まってくる。そこで、本実施形態では、減圧手段5に、この冷却結露水を熱交換器7の外部に排出する熱交換器用ドレン排出手段8を備えた構成としている。
この熱交換器用ドレン排出手段8は、熱交換器用ドレンタンク81、熱交換器用排水管82、熱交換器用排水弁83、熱交換器用ドレンタンク排水管86、熱交換器用ドレンタンク排水弁87、熱交換器用リ−ク管88、熱交換器用リ−ク弁89、及び熱交換器用弁制御手段(図示せず)を備えている。以降、各構成要素について例示説明する。
熱交換器用ドレンタンク81は、熱交換器7の蒸気含有空気側経路で生じた結露水を一時的に溜めておくものであり、熱交換器7の底部よりも低い位置に設置されている。
そして、熱交換器用排水管82は、熱交換器7の底部の蒸気含有空気側経路と熱交換器用ドレンタンク81の上部側とを連通しており、この熱交換器用排水管82の配管経路に熱交換器用排水弁83が設けてある。
一方、熱交換器用ドレンタンク排水管86は、熱交換器用ドレンタンク81の下部側と乾燥装置外部(又は乾燥室外部)の排水経路とを連通しており、この熱交換器用ドレンタンク排水管86の配管経路には熱交換器用ドレンタンク排水弁87が設けてある。
また、熱交換器用リ−ク管88は、熱交換器用ドレンタンク81の上部側と乾燥装置外部(空気雰囲気)とを連通しており、この熱交換器用リ−ク管88の配管経路には熱交換器用リ−ク弁89が設けてある。
そして、熱交換器用弁制御手段は、熱交換器用排水弁83、熱交換器用ドレンタンク排水弁87、及び熱交換器用リ−ク弁89の開閉を制御するものである。
熱交換器用弁制御手段の働きについて以下に説明する。熱交換器用弁制御手段は、まず、熱交換器用ドレンタンク排水弁87と熱交換器用リ−ク弁89とを閉じた状態で、熱交換器用排水弁83を開いておく(熱交換器用ドレン貯溜工程)。これによって、熱交換器用排水管82を通じて、熱交換器用ドレンタンク81内に結露水が一時的に溜まる。そしてその後、熱交換器用排水弁83を閉じた後、熱交換器用ドレンタンク排水弁87と熱交換器用リ−ク弁89とを開くように制御して(熱交換器用ドレン排水工程)、熱交換器用ドレンタンク排水管86を通じて、熱交換器用ドレンタンク81内に溜まった結露水を排水経路に排出するのである。
このとき、熱交換器用ドレン貯溜工程と熱交換器用ドレン排水工程とを時間制御で切り替えたり、乾燥室1や熱交換器用ドレンタンク81に水位センサを設けて、これら測定水位に基づいて切り替えたりする制御を行えばよい。
このような熱交換器用弁制御手段は、マイコンなどで実現することができる。
(6)乾燥条件制御手段
乾燥条件制御手段6は、乾燥室1の内部の湿球温度、乾球温度、および圧力が所定の値(設定値、目標値)になるように、蒸気供給手段3、加熱手段4、および減圧手段5を制御するものである。そして、本実施形態では、図1に示すように、乾燥条件制御手段6が、設定値入力手段61、センサ手段62、加熱制御手段63、減圧制御手段64、および湿球温度制御手段65を備えている。以降、各構成要素について例示説明する。
(a)設定値入力手段
設定値入力手段61は、乾燥室1の内部の湿球温度の設定値、乾球温度の設定値、および圧力(減圧条件)の設定値を入力するものである。設定値入力手段61としては、種々の方式のものを使用することができるが、本実施形態においては、ディスプレイ画面にタッチするだけで入力可能なタッチパネルTを用いてある。
(b)センサ手段
センサ手段62は、乾燥室1の内部の湿球温度、乾球温度、および圧力を計測する手段であり、それぞれの用途に応じた複数個の各種センサを用いることができる。
(c)加熱制御手段
加熱制御手段63は、設定値入力手段61によって入力された乾球温度の設定値となるように加熱手段4を制御するものである。具体的には、設定値入力手段61によって入力された乾球温度の設定値が、センサ手段62で計測された乾燥室1の内部の乾球温度となるように加熱手段4を制御する。本実施形態では、フィン付きヒ−タ−41の温度や制御弁43のスイッチングを制御する。この加熱制御手段は、例えば、CPU、ROM、メモリ等を備えたマイコンで実現することができる。ROMには各種制御プログラムが搭載される。
(d)減圧制御手段
減圧制御手段64は、設定値入力手段61によって入力された圧力(減圧条件)の設定値となるように減圧手段5を制御するものである。具体的には、設定値入力手段61によって入力された乾燥室1の内部の圧力の設定値が、センサ手段62で計測された乾燥室1の内部の圧力となるように真空ポンプ51と吸引制御弁53を制御する。吸引制御弁53は、真空ポンプ51の起動、停止に合わせて、開閉される。この減圧制御手段もマイコンなどで実現することができる。
(e)湿球温度制御手段
湿球温度制御手段65は、設定値入力手段61によって入力された湿球温度の設定値となるように後述する制御を行うものである。この湿球温度制御手段65は、演算手段651と蒸気供給制御手段652を備えている。以降、演算手段651と蒸気供給制御手段652について詳説する。これらの各制御手段もマイコンなどで実現することができる。
・演算手段
演算手段651は、設定値入力手段61によって設定された湿球温度の設定値に基づいて、この湿球温度の設定値における飽和水蒸気圧を求めるものである。湿球温度(の設定値)から飽和水蒸気圧を求めるには、例えば、式(1)に示す、マグヌス・テ−テンスの式を用いることができる。この式では、Tに湿球温度(の設定値)を代入すると、飽和蒸気圧E(T)[単位hPa]を求めることができる。
ここで、本発明の木材の乾燥方法は、表層乾燥工程における湿球温度の条件が80〜85℃である。湿球温度Tが80℃の場合、飽和蒸気圧E(T)は475.33hPa(概ね475hPa)、湿球温度Tが85℃の場合、飽和蒸気圧E(T)は580.78hPa(概ね580hPa)と求められる。よって、湿球温度が80〜85℃の範囲に対応する飽和蒸気圧E(T)は概ね475〜580hPaとなる。
「湿球温度80〜85℃の範囲内の任意の湿球温度における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力まで減圧する条件」とは、そのとりうる範囲を考慮すると、「湿球温度80〜85℃に対応する飽和水蒸気圧である概ね475〜580hPaまで減圧する条件」ということになる。表層乾燥工程の他、中内層乾燥工程や調湿工程でも同様である。
なお、湿球温度55〜75℃に対応する飽和水蒸気圧は、概ね157〜386hPaとなる。
湿球温度制御手段65は、この演算手段651で求めた飽和水蒸気圧を乾燥室1の内部の圧力として設定値入力手段61に入力することができるように構成されている。例えば、本実施形態のように、演算手段651で求めた飽和水蒸気圧を表示する表示装置66を設け、この表示装置66に表示された飽和水蒸気圧を、乾燥室1の内部の圧力(減圧条件)の設定値として設定値入力手段61に入力することができるように構成する。これによって、乾燥室1の内部が、入力設定された湿球温度における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力に減圧され、湿球温度の上昇を抑制することができる。
ここで、表示装置66に表示された飽和水蒸気圧を設定値入力手段61に減圧条件の設定値として入力する際、作業者が行うことができるが、減圧条件の設定値を自動入力する減圧条件自動入力手段を設けてもよい。この減圧条件自動入力手段も、マイコンなどで実現できる。
表示装置66としては種々の装置を用いることができるが、本実施形態のように、設定値入力手段61にタッチパネルTを用いた場合には、タッチパネルTのディスプレイ画面を用いてもよい。
・蒸気供給制御手段
蒸気供給制御手段652は、表層乾燥工程S2や中内層乾燥工程S3などで、蒸気供給手段3を制御して、湿球温度を維持するように減圧下において加湿を行うものである。加湿することによって、湿球温度の低下を抑制することができるため、木材Lの温度を確保することができる。
減圧条件を確保するため、減圧手段5の真空ポンプ51をフリ−に稼働させていると乾燥室1の内部の水蒸気圧が低下して湿球温度が下がってしまう可能性がある。そこで、減圧下において加湿を行うことで、乾燥室1の内部の湿球温度を維持し、材温を確保するのである。
蒸気供給制御手段による加湿は、湿球温度が低下しないように行われる。具体的な制御としては、例えば、センサ手段62で測定された乾燥室1の内部の湿球温度と、設定値入力手段61で入力された湿球温度の設定値とを比較し、乾燥室1の内部の湿球温度が湿球温度の設定値よりも所定温度低下(例えば、1〜5℃の範囲で設定)した場合に、蒸気供給手段3を作動させて、乾燥室1の内部に蒸気を供給して加湿するような制御が可能である。このような制御も、マイコンなどで実現できる。
(7)乾燥室用ドレン排出手段
乾燥室用ドレン排出手段9は、乾燥室1の内部で生じた結露水を乾燥室1の外部に排出するものである。詳しくは、表層乾燥工程S2や中内層乾燥工程S3などにおいて、減圧されている乾燥室1の内部の圧力に殆ど影響を及ぼすことなく、結露水を乾燥室1の外部に排出する手段である。
本実施形態では、図3に示すように、乾燥室用ドレン排出手段9が、乾燥室用ドレンタンク91、乾燥室用排水管92、乾燥室用排水弁93、通気管94、通気弁95、乾燥室用ドレンタンク排水管96、乾燥室用ドレンタンク排水弁97、乾燥室用リ−ク管98、乾燥室用リ−ク弁99、および弁制御手段(図示せず)を備えている。以降、各構成要素について例示説明する。
乾燥室用ドレンタンク91は、乾燥室1の内部で生じた結露水を一時的に溜めておくものであり、乾燥室1の床面よりも低い位置に設置されている。
そして、乾燥室用排水管92は、乾燥室1の床面側と乾燥室用ドレンタンク91の上部側とを連通しており、この乾燥室用排水管92の配管経路に乾燥室用排水弁93が取付けてある。本実施形態では、乾燥室用排水管92として、乾燥室1側で三本に分岐(図2参照)する一方、乾燥室用ドレンタンク91側で一本に集約された、いわゆる分岐タイプを用いてあり、一本に集約された乾燥室用ドレンタンク91側に乾燥室用排水弁93が取付けてある。
また、通気管94は、乾燥室1の壁面側と乾燥室用ドレンタンク91の上部側とを連通しており、この通気管94の配管経路に通気弁95が取付けてある。
一方、乾燥室用ドレンタンク排水管96は、乾燥室用ドレンタンク91の下部側と乾燥装置外部(又は乾燥室外部)の排水経路とを連通しており、この乾燥室用ドレンタンク排水管96の配管経路には乾燥室用ドレンタンク排水弁97が設けてある。
また、乾燥室用リ−ク管98は、乾燥室用ドレンタンク91の上部側と乾燥装置外部(空気雰囲気)とを連通しており、この乾燥室用リ−ク管98の配管経路には、乾燥室用リ−ク弁99が設けてある。
そして、弁制御手段は、乾燥室用排水弁93、通気弁95、乾燥室用ドレンタンク排水弁97、及び乾燥室用リ−ク弁99の開閉を制御するものである。
弁制御手段の働きについて以下に説明する。弁制御手段は、まず、乾燥室用ドレンタンク排水弁97と乾燥室用リ−ク弁99とを閉じた状態で、乾燥室用排水弁93と通気弁95とを開いておく(乾燥室用ドレン貯溜工程)。これによって、乾燥室用排水管92を通じて、乾燥室用ドレンタンク91内に結露水が一時的に溜まる。そしてその後、乾燥室用排水弁93と通気弁95とを閉じた後、乾燥室用ドレンタンク排水弁97と乾燥室用リ−ク弁99とを開くように制御して(乾燥室用ドレン排水工程)、乾燥室用ドレンタンク排水管96を通じて、乾燥室用ドレンタンク91内に溜まった結露水を排水経路に排出するのである。
このとき、乾燥室用ドレン貯溜工程と乾燥室用ドレン排水工程とを時間制御で切り替えたり、乾燥室1や乾燥室用ドレンタンク91に水位センサを設けて、これら測定水位に基づいて切り替えたりする制御を行えばよい。
このような弁制御手段もマイコンなどで実現することができる。
以上説明した木材用の乾燥装置Mを用いて木材Lを乾燥することができる。以下、木材の乾燥方法を例示説明する。
2.木材の乾燥方法
木材Lの乾燥方法は、蒸煮工程S1と表層乾燥工程S2を有している。また、本実施形態では、これに加えて、中内層乾燥工程S3と調湿工程S4を有している。以降、これら各工程について説明するが、本発明およびその各工程は、以下の説明に限定されるものではない。
(1)蒸煮工程
蒸煮工程S1は、被乾燥材である木材Lを高温の蒸気(水蒸気)で蒸煮する工程である。本実施形態では、蒸煮工程S1は常圧で行う。
前述した木材用の乾燥装置Mを用いる場合には、まず、乾燥室1から台車11を引き出して、この台車11へ桟積みにした木材Lを移載する。そして、台車11を乾燥室1に引き入れて開閉扉(図示せず)を閉じて乾燥室1を密閉した後に、送風機21を運転して乾燥室1内に空気を循環流動させながら、蒸気噴射管34へ蒸気発生装置31より蒸気を供給噴射(蒸気供給手段3を動作)させる。これにより、循環する空気中へ蒸気が混合して空気の加温と加湿が行われるため、温度が80〜100℃で相対湿度が概ね100%の循環気流が木材Lの隙間を貫流する。なお、相対湿度が概ね100%ということは、乾球温度と湿球温度とが概ね等しくなっている状態である。
このとき、送風機21の送風方向を所定の時間間隔で反転させることで循環気流の方向を変化させながら蒸煮することができる。
この蒸煮工程S1は、木材Lの中心部が80〜100℃に達するまで蒸煮を行い、中心部が蒸気温度に到達したとき蒸煮を終了するものであり、ヒノキ材の場合、概ね12〜18時間程度行う。
この蒸煮工程S1によって、木材Lに含まれるリグニンが軟化して、木材Lに十分な熱粘弾性が発揮される状態となる。この状態を維持し、蒸煮工程S1の後は、以下に説明する表層乾燥工程S2を行う。
(2)表層乾燥工程
表層乾燥工程S2は、蒸煮工程S1で蒸煮された木材Lを、乾球温度が90〜100℃、湿球温度が80〜85℃、且つ減圧条件の下で、10〜30時間乾燥処理する工程である。そして、このとき、湿球温度を維持するために、減圧条件を、湿球温度80〜85℃の範囲内の任意の湿球温度(湿球温度の設定値、湿球温度の目標値)における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力まで減圧する条件とするとともに、この減圧条件下において加湿を行う。
前述した木材用の乾燥装置Mを用いる場合には、まず、蒸煮工程S1の終了に伴い、蒸気噴射管34からの蒸気の噴射を一旦止める(蒸気供給手段3の停止)。そしてフィン付きヒ−タ−41に蒸気を流通(加熱手段4を作動)させ、乾燥室1内を循環流動する空気を加熱し、設定値入力手段61によって入力された乾球温度の設定値となるように加熱手段4が制御される。乾球温度は、90〜100℃の所定の温度に制御される。
そして、真空ポンプ51を運転して吸引配管52により乾燥室1内の蒸気含有空気(蒸気を含んだ空気)を吸引(減圧手段5を作動)して、乾燥室1内を減圧状態にするのであるが、同時に、湿球温度が80〜85℃となるようにする必要がある。
ここで、減圧状態において湿球温度を制御することは困難性が高かったのであるが、本願発明者は、実際に乾燥処理に用いる湿球温度における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力まで乾燥室1の内部を減圧するとともに、この減圧下において加湿を行うことで、湿球温度を維持し、この課題を解決したのである。以降、減圧と加湿について説明する。
(a)減圧について
乾燥室1の内部を湿球温度80〜85℃の範囲内であって実際に乾燥処理に用いる任意の湿球温度における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力まで減圧する。
このような圧力まで減圧しておくと、原理的には空気中の水蒸気量が頭打ちになり(飽和水蒸気量)、これによって設定した湿球温度から上昇することを防ぐことができる。換言すると、圧力の制御で水蒸気の最大量を制御することができる。
具体的には、湿球温度80〜85℃の範囲内の任意の湿球温度(湿球温度の設定値、目標とする湿球温度の値)を設定値入力手段61から入力しておく。すると、入力した湿球温度の設定値における飽和水蒸気圧が、演算手段651によって算出され、表示装置66に表示されるので、表示された飽和水蒸気圧を乾燥室1の内部の圧力(減圧条件)として設定値入力手段61に入力するのである。すると、減圧制御手段64によって乾燥室1の内部が入力した圧力になるように制御され、湿球温度の上昇が抑制される。
例えば、湿球温度82℃を設定値入力手段に入力すると表示装置66には飽和水蒸気圧である515hPa(515.38hPa)が表示され、表示された515hPaを減圧条件として設定値入力手段61に入力すれば、乾燥室の内部の湿球温度(82℃)の上昇が抑制されるのである。
(b)加湿について
その一方で、この減圧下において加湿を行う。これによって、湿球温度の低下が抑制される。例えば、センサ手段62で計測している湿球温度が、設定値入力手段61によって入力された湿球温度から所定温度低下(例えば、1〜5℃の範囲で設定)した場合に、蒸気供給手段3によって乾燥室1の内部を加湿するように湿球温度制御手段65で制御する。
これら(a)、(b)の制御を行うことにより、減圧下において湿球温度を比較的簡単にコントロ−ルすることができる。
表層乾燥工程S2(中内層乾燥工程S3なども同様)において、真空ポンプ51によって吸引された蒸気含有空気は熱交換器7によって冷却される。このとき、熱交換器7の蒸気含有空気側経路に結露水(冷却結露水)が溜まってくるが、この結露水は熱交換器用ドレン排出手段8によって、減圧されている乾燥室1の内部の圧力に殆ど影響を及ぼすことなく、熱交換器7の外部に排出される。
また、表層乾燥工程S2(中内層乾燥工程S3なども同様)において、乾燥装置Mを運転していると乾燥室1の内部に結露水が溜まってくる。この結露水は、乾燥室用ドレン排出手段9によって、減圧されている乾燥室1の内部の圧力に殆ど影響を及ぼすことなく、乾燥室1の外部に排出される。
上記条件で、木材を10〜30時間乾燥させる。この表層乾燥工程では、木材の表層部の引張応力をなるべく大きくしない状態で材面割れを抑制しながら乾燥を進め、表層部にドライングセットを形成できる含水率(通常は20%以下であることが多い)まで乾燥を進める。これにより、材面割れが少なく、且つ変色や熱劣化の少ない木材を得ることができる。表層乾燥工程S2の後は、以下に説明する中内層乾燥工程S3を行う。
(3)中内層乾燥工程
中内層乾燥工程S3は、表層乾燥工程S2で乾燥された木材Lを、乾球温度が60〜90℃、湿球温度が40〜80℃で前記乾球温度よりも低い温度、且つ減圧条件の下で、3〜10日間乾燥処理する工程である。そして、このとき、湿球温度(40〜80℃で乾球温度よりも低い温度)の範囲内の任意の湿球温度(湿球温度の設定値、湿球温度の目標値)における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力に減圧するとともに、この減圧下において加湿を行う。減圧下で行う中内層乾燥工程S3によって、木材の水分傾斜を抑制することができる。
中内層乾燥工程は、湿球温度40〜80℃の範囲で、時間の経過に伴い、徐々に湿球温度を下げるようにすることが好ましい。
湿球温度、乾球温度、および圧力等は、それぞれの範囲が前記表層乾燥工程S2とは異なるものの、中内層乾燥工程S3における設定手順や制御は、前述した表層乾燥工程と同様であるので詳細を省略する。中内層乾燥工程S3の後は、以下に説明する調湿工程S4を行う。
(4)調湿工程
調湿工程S4は、中内層乾燥工程S3で乾燥された木材Lを、乾球温度が60〜80℃、湿球温度が乾球温度よりも1〜3℃低い温度、且つ減圧条件の下で、1〜5日間処理する工程である。そして、このとき、湿球温度(乾球温度よりも1〜3℃低い温度)の範囲内の任意の湿球温度(湿球温度の設定値、湿球温度の目標値)における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力に減圧するとともに、この減圧下において加湿を行う。減圧下で行う調湿工程S4によって、木材の水分傾斜を抑制することができる。
湿球温度、乾球温度、および圧力等は、それぞれの範囲が前記表層乾燥工程S2とは異なるものの、調湿工程S4における設定手順や制御は、前述した表層乾燥工程と同様であるので詳細を省略する。
調湿工程S4の終了後、速やかに冷却する場合には、乾燥室に設けた空気入れ替え用のダンパ−(図示せず)を開けて、乾燥室の内部に外気を入れることができる。
岡山県内産の寸法135×135×3050mmのヒノキ柱材(心持ち・背割り無し)25本を標準として供試した。さらに、これとは別に、長さ方向に分割した短尺材を、変色測定用試験材として用いた。試験材の心材率(体積に占める心材部分の割合)は概ね80〜90%の範囲にあり、心材色は岡山県産ヒノキに多く見られるピンクがかった赤色系である。また、乾燥前の重量選別は行っていない。なお、試験に際しては、通常の生産現場では、製材直後には乾燥を開始できない場合が多いという取り扱い条件を勘案し、製材後一定期間を経過させ、材表面がやや乾燥しかけた状態にしてから乾燥を開始した。
乾燥前に、試験材の重量、含水率(高周波含水率計、MOCO−2にて測定)、寸法、材面の状況などを測定した。また、短尺試験材については、測色色差計を用いて材色を測定した。測色方法は、2度視野拡散受光方式で、スポット径は10mmとした。
乾燥は、蒸煮工程(概ね90℃、概ね16時間)、表層乾燥工程(湿球温度概ね85℃、乾球温度95〜98℃、減圧条件、概ね24時間)、中内層乾燥工程(湿球温度75〜55℃、乾球温度概ね80℃、減圧条件、概ね120時間)の順で行った。また、中内層乾燥工程の後、調湿工程(乾球温度概ね65℃、乾湿球温度差概ね2℃、減圧条件、概ね24時間)を行った。また、中内層乾燥工程については、湿球温度75〜55℃の範囲で、徐々に湿球温度を下げるような条件で行った。中内層乾燥工程のプロフィルは以下の通りである。1.乾球温度概ね80℃及び湿球温度概ね75℃で概ね2時間 → 2.乾球温度概ね80℃及び湿球温度概ね70℃で概ね2時間 → 3.乾球温度概ね80℃及び湿球温度概ね65℃で概ね20時間 → 4.乾球温度概ね80℃及び湿球温度概ね60℃で概ね48時間 → 5.乾球温度概ね80℃及び湿球温度概ね55℃ で概ね48時間(以上合計概ね120時間)。減圧条件は各湿球温度(の設定値)における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力となるようにした。
乾燥終了後には、まず長尺材の状態で重量、含水率、材面割れなどを測定した。変色測定用短尺試験材については材色の測定を行った。測定したのは、乾燥終了時の材表面、さらにそれをプレ−ナ−によって約mm鉋削した材面の合計2回である
その後、長尺材は材長方向に分割して、5カ所の位置から小試片を採取し、全乾重量法による含水率や水分分布の測定を行った。さらに、切断した断面において内部割れの発生量などを測定した。
1.初期含水率及び仕上がり含水率
試験材の初期含水率と乾燥後の仕上がり含水率(乾燥前後の含水率)を、図5に示す。全乾重量法による含水率(全乾含水率)で、ロット平均で乾燥前に平均32.1%であったものが、乾燥終了時に10.2%に仕上がった。標準偏差は、初期には7.2%であったものが、仕上がり時には1.4%まで減少し、極めて小さいと判断される。また、乾燥後の含水率は、最高が12.9%、最低で7.6%であり、ロット全体がかなり均一な状態に仕上がった。
さらに、個体の平均重量は、乾燥前に30.118kgであったものが、乾燥によって25.153kgに減少した。標準偏差は、乾燥前が2.47kgであったものが、乾燥によって1.98kgに減少している。
また、高周波式木材水分計による含水率の測定(水分計含水率)では、ほとんどの材が9〜12%の範囲にあり、含水率計でも、均一な仕上がり状態である。
2.材長方向の水分分布
人工乾燥終了時の材長方向の水分分布を、図6に示す。各測定箇所の含水率は、断面の平均含水率である。全体的に材長方向の水分傾斜は小さく、最も大きい水分傾斜が観察された個体平均含水率(測定断面5箇所の含水率を平均して求めた個体全体の含水率)が10.4%の試験材H19−3においても、4%程度に留まっている。その他の試験材H19−1及びH19−2では2%程度に留まり、材長方向の水分傾斜は、極めて小さいものであった。また、通常は中温乾燥材においては元口付近の方が末口付近よりも含水率が多少高い状態に仕上がることが多いのであるが、今回の結果では一定の傾向は見られなかった。
また、これらの試験材は、全体的に一般的な高温乾燥材と比較して水分分布が顕著に小さく、今回の乾燥方法のメリットが現れている。
3.断面方向の水分分布
図6に示した個体の断面方向の水分分布を、図7に示した。試験材H19−1は個体含水率が10.5%であるが、断面方向の水分傾斜は材端部ではやや凹型、材中央部では凸型が観察されるが、全体的に水分傾斜は小さい。最も大きな水分傾斜が認められる材中央部においても、僅かに3%程度の傾斜に留まっている。また、表面には吸湿の履歴が認められ、乾燥末期の調湿の効果が認められる。このような水分傾斜での仕上がり状態は、今回採用した複合乾燥方法の特徴の一つと考えられる。
4.材面割れと木口割れ
本実験では、材面割れの発生は、全ての個体において認められなかった。なお、材面割れの測定に際しては、材面に単独に発生した割れを、ヘア−クラック状のものは言うに及ばず、閉塞している割れであっても詳細に見てカウントするように努めた。
今回の実験で材面割れの発生が認められなかったことから、乾燥初期のドライングセットによって材面割れの発生を抑制するという目的は、今回採用した条件を用いれば、ほぼ達成可能であることが確認できた。また、若干の木口割れが見られたが、このような木口割れは、木口面をシ−ル剤で被覆しておくことで抑えることができる。
5.内部割れ
各試験材に発生した内部割れの長さを図8に示した。内部割れは、前述した断面方向の水分分布を測定する試験片を採取した5箇所の位置で、別に採取した試験片を用いて測定した。図中に示す内部割れの値は、これら5断面に発生していた内部割れの長さを合計したものである。なお、内部割れの測定に際しては、小さなものでも丹念に対象とするように努めた。
図に示すように、内部割れが発生したのは、25個体中、3個体のみである。最も大きな内部割れが発生したのは試験材H19−8であるが、5断面に発生した内部割れの長さの合計は約50mmに留まり、またその幅も1mm以下であり、発生の程度は極めて軽微であった。この状況は、通常の高温乾燥材とは極めて顕著に異なるもので、今回の乾燥方法が、これまでに存在しなかった極めて画期的なものであることを示唆するものである。
6.曲がり
各個体の曲がりの発生量を図9に示した。最も大きな曲がりは2.5mmであり、2個体に生じていた。しかし、ロット全体の平均値は約0.84mmであり、全体的に小さいと判断される。
この実験では、乾燥時に通常行う重石あるいは油圧プレスによる載荷は行わなかったが、良好な結果が得られており、今回の乾燥方法が狂いの抑制に対しても有効であることがわかった。
7.変色
変色測定用試験材(赤心材)の乾燥前、乾燥後および表面仕上げ後における材色の状態を、図10及び図11に、平均値で示した。ここで用いているのは、L*a*b*表色系で、明度指数L*は明るさ、クロマティックネス指数a*は赤みの成分、クロマティックネス指数b*は黄色みの成分を表現するものである。
まず、辺材では、明度指数L*は乾燥によって値が小さくなり、明るさが減少している。さらに、約2mm鉋削し、表面仕上げを行った新しい材面でも乾燥前より2.06小さくなり、明度が乾燥前の状態には回復していない。クロマティックネス指数a*は乾燥によって1.01大きくなり、赤み成分が少し増加している。しかし、表面仕上げ面では0.16の増加に留まり、赤色化はほとんど進行していない。一方、クロマティックネス指数b*も、乾燥によって2.31大きくなり、黄色み成分が増加している。しかし、表面仕上げ後の材面では0.83に留まり、わずかに黄色化が見られる程度である。これらを総合すると、辺材では、乾燥によって明度がやや減少するものの、色相には大きな変化は見られないと判断される。
心材においては、明度に関しては、辺材同様に、乾燥によって低下するものの、表面仕上げ面では乾燥前とほとんど変わらない状態である。クロマティックネス指数a*は乾燥によって0.83小さくなり、表面仕上げ面ではさらに大きい1.36の減少となり、乾燥前の赤みには回復せず多少退色が進行した状態にある。一方、クロマティックネス指数b*は、乾燥によって3.40増加し、仕上げ表面でも2.98増加した状態で、黄色化が進行している。これらを総合すると、心材では、乾燥によって明度の低下はほとんど見られないものの、心材色を形成する赤み成分がやや減少し、一方で黄色化がやや進行すると判断される。
これらを総合すると、乾燥材が実際に使用される表面鉋削後の材面の変色は、ΔE*では、辺材が2.23、心材が3.28であり、絶対値としては大きなものではないと判断される。
ヒノキ材は、ヒノキ特有のピンクがかった心材色と明るい辺材色とのコントラストが好まれるが、今回の試験材は、一般的な中温乾燥材と比較しても、それ程違わない状態にあると判断された。
また、機器による測定はしていないが、ヒノキ特有の香りも十分に残存し、材色とも相まって、「ヒノキ材特有の風合いが、商取引上遜色がない程度には保持されている」との、木材業界関係者等の評価を得ている。
以上、特定の実施形態及び実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当該技術分野における熟練者等により、本出願の願書に添付された特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正が可能である。
蒸煮工程に先立ち、図12に示すように、乾燥防止用のシ−ル剤Siで、木材の両木口面を中央部分を残して被覆しておくとともに、前記両木口面付近の材面(側面)もそれぞれ被覆しておくことで、木口割れを低減させることができる。具体的には、木口部分を中心部(心持ち材の場合は髄付近)を含んで3〜7cm角、好ましくは5cm角を除いてシ−ル剤Siを塗布する。さらに、木口に隣接する付近の4材面も10〜20cm、好ましくは15cmほど折り返すようにしてその全面にシ−ル剤Siを塗布する。このことによって、木口付近の減圧の効果を維持しながら、木口割れを抑制できる。シ−ル剤Siは、材内部と表面を完全に遮蔽できる塗膜などを形成する材質のものを選択する。例えば、耐熱、耐水性を有したシリコ−ンを採用することができる。シ−ル剤は、液状のものの他、テ−プ状のものも用いることができる。
1 乾燥室
11 台車

2 循環手段
21 送風機

3 蒸気供給手段
31 蒸気発生装置
32 配管
33 制御弁
34 蒸気噴射管

4 加熱手段
41 フィン付きヒ−タ−
42 配管
43 制御弁
44 蒸気発生装置

5 減圧手段
51 真空ポンプ
52 吸引配管(吸引経路)
53 吸引制御弁

6 乾燥条件制御手段
61 設定値入力手段
62 センサ手段
63 加熱制御手段
64 減圧制御手段
65 湿球温度制御手段
651 演算手段
652 蒸気供給制御手段
66 表示装置

7 熱交換器
8 熱交換器用ドレン排出手段
81 熱交換器用ドレンタンク
82 熱交換器用排水管
83 熱交換器用排水弁
86 熱交換器用ドレンタンク排水管
87 熱交換器用ドレンタンク排水弁
88 熱交換器用リ−ク管
89 熱交換器用リ−ク弁

9 乾燥室用ドレン排出手段
91 乾燥室用ドレンタンク
92 乾燥室用排水管
93 乾燥室用排水弁
94 通気管
95 通気弁
96 乾燥室用ドレンタンク排水管
97 乾燥室用ドレンタンク排水弁
98 乾燥室用リ−ク管
99 乾燥室用リ−ク弁

S1 蒸煮工程
S2 表層乾燥工程
S3 中内層乾燥工程
S4 調湿工程

L 木材
Si シ−ル剤(シリコ−ン)
M 乾燥装置
T タッチパネル
C マイコン

Claims (2)

  1. 木材を80〜100℃で蒸煮する蒸煮工程と、
    この蒸煮工程で蒸煮された木材を、乾球温度が90〜100℃、湿球温度が80〜85℃、且つ減圧条件の下で、10〜30時間乾燥処理する表層乾燥工程と、
    この表層乾燥工程の後、表層乾燥工程で乾燥させた木材を、乾球温度が60〜90℃、湿球温度が40〜80℃で前記乾球温度よりも低い温度、且つ減圧条件の下で、3〜10日間乾燥処理する中内層乾燥工程と、
    この中内層乾燥工程の後、中内層乾燥工程で乾燥させた木材を、乾球温度が60〜80℃、湿球温度が乾球温度よりも1〜3℃低い温度、且つ減圧条件の下で、1〜5日間処理する調湿工程を有する木材の乾燥方法であって、
    前記蒸煮工程に先立ち、乾燥防止用のシール剤で、
    木材の両木口面を中央部分を残して被覆しておくとともに、前記両木口面付近の材面もそれぞれ前記両木口面から10〜20cmの範囲で全面を被覆しておき、
    前記表層乾燥工程では、湿球温度を維持するために、
    減圧条件を、湿球温度80〜85℃の範囲内の任意の湿球温度における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力まで減圧する条件とするとともに、この減圧条件下において加湿を行い、
    前記中内層乾燥工程では、湿球温度を維持するために、
    減圧条件を、湿球温度の範囲内の任意の湿球温度における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力まで減圧する条件とするとともに、この減圧条件下において加湿を行い、
    前記調湿工程では、湿球温度を維持するために、
    減圧条件を、湿球温度の範囲内の任意の湿球温度における飽和水蒸気圧と概ね等しい圧力まで減圧する条件とするとともに、この減圧条件下において加湿を行い、
    木材として心持ち材を用いる、木材の乾燥方法。
  2. 請求項記載の木材の乾燥方法に用いる木材用の乾燥装置であって、
    木材を収容して蒸煮及び乾燥を行う乾燥室と、
    この乾燥室の内部の空気を循環流動させる循環手段と、
    前記乾燥室の内部の空気に蒸気を供給する蒸気供給手段と、
    前記乾燥室の内部の空気を加熱する加熱手段と、
    前記乾燥室の内部の空気及び蒸気を吸引して乾燥室の内部圧力を減圧させる減圧手段と、
    前記乾燥室の内部の湿球温度、乾球温度、および圧力が所定の値になるように、前記蒸気供給手段、前記加熱手段、および前記減圧手段を制御する乾燥条件制御手段と、
    前記乾燥室の内部で生じた結露水を乾燥室の外部に排出する乾燥室用ドレン排出手段を備えており、
    前記減圧手段は、
    真空ポンプと、この真空ポンプを前記乾燥室に連通させる吸引経路と、この吸引経路に設けた熱交換器と、を備え、
    前記熱交換器が、前記乾燥室の内部から前記真空ポンプによって吸引された蒸気含有空気を吸引経路において冷却するように構成されており、
    前記乾燥条件制御手段は、
    乾燥室の内部の湿球温度の設定値、乾球温度の設定値、および圧力の設定値を入力するための設定値入力手段と、
    乾燥室の内部の湿球温度、乾球温度、および圧力を計測するセンサ手段と、
    このセンサ手段によって計測された乾球温度が、前記設定値入力手段に入力された乾球温度の設定値となるように加熱手段を制御する加熱制御手段と、
    前記センサ手段によって計測された圧力が、前記設定値入力手段に入力された圧力の設定値となるように減圧手段を制御する減圧制御手段と、
    前記センサ手段によって計測された湿球温度が、前記設定値入力手段に入力された湿球温度の設定値となるように制御する湿球温度制御手段と、を備え、
    この湿球温度制御手段は、
    前記設定値入力手段によって入力された湿球温度の設定値に基づいて、この湿球温度の設定値における飽和水蒸気圧を求める演算手段を備え、この演算手段で求めた飽和水蒸気圧を乾燥室の内部の圧力として前記設定値入力手段に入力することができるように構成されているとともに、蒸気供給手段を制御して減圧下において加湿を行う蒸気供給制御手段を備えており、
    前記乾燥室用ドレン排出手段は、
    乾燥室の床面よりも低い位置に設置された乾燥室用ドレンタンクと、
    乾燥室の床面側と前記乾燥室用ドレンタンクの上部側とを連通する乾燥室用排水管と、
    この乾燥室用排水管の配管経路に設けた乾燥室用排水弁と、
    乾燥室の壁面側又は上部側と前記乾燥室用ドレンタンクの上部側とを連通する通気管と、
    この通気管の配管経路に設けた通気弁と、
    前記乾燥室用ドレンタンクの下部側と乾燥装置外部の排水経路とを連通する乾燥室用ドレンタンク排水管と、
    この乾燥室用ドレンタンク排水管の配管経路に設けた乾燥室用ドレンタンク排水弁と、
    前記乾燥室用ドレンタンクの上部側と乾燥装置外部とを連通する乾燥室用リーク管と、
    この乾燥室用リーク管の配管経路に設けた乾燥室用リーク弁と、
    前記乾燥室用排水弁、前記通気弁、前記乾燥室用ドレンタンク排水弁、及び前記乾燥室用リーク弁の開閉を制御する弁制御手段と、を備え、
    前記弁制御手段は、
    前記乾燥室用排水弁と前記通気弁とを開くとともに、前記乾燥室用ドレンタンク排水弁と前記乾燥室用リーク弁とを閉じておくことで乾燥室用ドレンタンク内に結露水が溜まるようにしておき、その後、前記乾燥室用排水弁と前記通気弁とを閉じた後、前記乾燥室用ドレンタンク排水弁と前記乾燥室用リーク弁とを開くように制御して、乾燥室用ドレンタンク内に溜まった結露水を排出するように構成された、
    木材用の乾燥装置。
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