以下、さらに詳しく、本発明の炭素繊維を実施するための形態について説明をする。
本発明は、次の一般式(I)〜(IV)から選ばれる少なくとも1つ以上の3級アミンおよび/または3級アミン塩((A)成分)が付着されてなる炭素繊維のうち、次の一般式(II)または(IV)を選択したものである。
(式中、R1は炭素数1〜22の炭化水素基、炭素数1〜22の炭化水素とエーテル構造を含む基、炭素数1〜22の炭化水素とエステル構造を含む基、または炭素数1〜22の炭化水素と水酸基を含む基のいずれかを表す。式中、R2は炭素数3〜22のアルキレン基であり、不飽和基を含んでもよい。R3は水素または炭素数1〜22の炭化水素基、炭素数1〜22の炭化水素とエーテル構造を含む基、炭素数1〜22の炭化水素とエステル構造を含む基、または炭素数1〜22の炭化水素と水酸基を含む基のいずれかを表す。または、R1とR3は結合して炭素数2〜11のアルキレン基を形成する。)
(式中、R4、R5は、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基、一般式(V)で表される直鎖状のポリエーテル基、炭素数1〜22の炭化水素とエステル構造を含む基、または炭素数1〜22の炭化水素と水酸基を含む基のいずれかを表す。式中、R6はベンゼン環のオルト位、メタ位、パラ位のいずれか1つ以上に、炭素数1〜22の炭化水素基、炭素数1〜22の炭化水素とエーテル構造を含む基、炭素数1〜22の炭化水素とエステル構造を含む基、炭素数1〜22の炭化水素と水酸基を含む基、または、水素、ハロゲン、水酸基、カルボニル基、ニトリル基、ニトロ基、ニトロソ基、アルデヒド基、シリル基のいずれかを表す。)
(式中、R14は炭素数1〜22の炭化水素基、R15は水素または炭素数1〜22の炭化水素基、nは1〜22の整数を表す。)
(式中、R7〜R10は、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基、炭素数1〜22の炭化水素とエーテル構造を含む基、炭素数1〜22の炭化水素とエステル構造を含む基、または炭素数1〜22の炭化水素と水酸基を含む基のいずれかを表す。)
(一般式(IV)で示される化合物は、少なくとも1以上の分岐構造を有し、かつ、少なくとも1以上の水酸基を含んでおり、この式中、R11〜R13は、炭素数1〜22の炭化水素基、炭素数1〜22の炭化水素とエーテル構造を含む基、炭素数1〜22の炭化水素とエステル構造を含む基、または炭素数1〜22の炭化水素と水酸基を含む基のいずれかを表し、R11〜R13のいずれかに、一般式(VI)または(VII)で示される分岐構造を含むものに限る。)
(式中、R16、R17は、炭素数1〜22の炭化水素基、炭素数1〜22の炭化水素とエーテル構造を含む基、炭素数1〜22の炭化水素とエステル構造を含む基、または炭素数1〜22の炭化水素と水酸基を含む基、水酸基のいずれかを表す。)
(式中、R18〜R20は、炭素数1〜22の炭化水素基、炭素数1〜22の炭化水素とエーテル構造を含む基、炭素数1〜22の炭化水素とエステル構造を含む基、または炭素数1〜22の炭化水素と水酸基を含む基、水酸基のいずれかを表す。)
本発明者等は、特定の3級アミンおよび/または3級アミン塩を炭素繊維に付着させることで、炭素繊維表面に元来含まれる酸素含有官能基、あるいは、酸化処理により導入されるカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基とマトリックス樹脂含有官能基の反応が促進すると考えられ、強固な界面が形成されることを見出した。
特定の3級アミンおよび/または3級アミン塩を炭素繊維に付着させることによって、上記反応が促進されるメカニズムは確かではないが、特定の3級アミンおよび/または3級アミン塩が炭素繊維表面に元来含まれる酸素含有官能基、あるいは、酸化処理により導入されるカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基の水素イオンを引き抜き、アニオン化させることで、マトリックス樹脂含有官能基との間に求核反応が促進され、強固な界面が形成されると考えられる。
本発明の上記一般式(I)または(III)のR1、R7〜R10は、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基、炭素数1〜22の炭化水素とエーテル構造を含む基、炭素数1〜22のエステル構造を含む基、または炭素数1〜22の炭化水素と水酸基を含む基のいずれかである。炭素数を1〜22の間にすることで、分子構造の立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性が向上する。より好ましくは1〜14の範囲内であり、さらに好ましくは1〜8の範囲内である。一方、炭素数が22を超える場合、分子構造の立体障害がやや大きく反応促進効果が低くなる場合がある。
本発明の上記一般式(I)のR2は、炭素数3〜22のアルキレン基であり、不飽和基を含んでもよい。炭素数を3〜22の間にすることで、分子構造の立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性が向上する。より好ましくは3〜14の範囲内であり、さらに好ましくは3〜8の範囲内である。一方、炭素数が22を超える場合、分子構造の立体障害がやや大きく反応促進効果が低くなる場合がある。
本発明の上記一般式(I)のR3は、水素または炭素数1〜22の炭化水素基、炭素数1〜22の炭化水素とエーテル構造を含む基、炭素数1〜22のエステル構造を含む基、または炭素数1〜22の炭化水素と水酸基を含む基のいずれかである。炭素数を1〜22の間にすることで、分子構造の立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性が向上する。より好ましくは1〜14の範囲内であり、さらに好ましくは1〜8の範囲内である。一方、炭素数が22を超える場合、分子構造の立体障害がやや大きく反応促進効果が低くなる場合がある。
本発明の上記一般式(II)のR4、R5は、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基、一般式(V)で表される直鎖状のポリエーテル基、炭素数1〜22の炭化水素とエステル構造を含む基、または炭素数1〜22の炭化水素と水酸基を含む基のいずれかである。R4、R5が炭化水素基、炭化水素とエステル構造を含む基、炭化水素と水酸基を含む基のいずれかの場合、炭素数を1〜22の間にすることで、分子構造の立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性が向上する。より好ましくは1〜14の範囲内であり、さらに好ましくは1〜8の範囲内である。一方、炭素数が22を超える場合、分子構造の立体障害がやや大きく反応促進効果が低くなる場合がある。また、R4、R5が一般式(V)で表される直鎖状のポリエーテル基の場合、R14は、炭素数1〜22の炭化水素基、R15は、水素または炭素数1〜22の炭化水素基であり、炭素数はより好ましくは1〜14の範囲内であり、さらに好ましくは1〜8の範囲内である。また、1〜22の整数nは、より好ましくは1〜14の範囲内であり、さらに好ましくは1〜8の範囲内である。
本発明の上記一般式(II)のR6は、ベンゼン環のオルト位、メタ位、パラ位のいずれか1つ以上に、炭素数1〜22の炭化水素基、炭素数1〜22の炭化水素とエーテル構造を含む基、炭素数1〜22の炭化水素とエステル構造を含む基、炭素数1〜22の炭化水素と水酸基を含む基、または、水素、ハロゲン、水酸基、カルボニル基、ニトリル基、ニトロ基、ニトロソ基、アルデヒド基、シリル基のいずれかである。炭素数を1〜22の間にすることで、分子構造の立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性が向上する。より好ましくは1〜14の範囲内であり、さらに好ましくは1〜8の範囲内である。一方、炭素数が22を超える場合、分子構造の立体障害がやや大きく反応促進効果が低くなる場合がある。
本発明の上記一般式(IV)は、少なくとも1以上の分岐構造を有し、かつ、少なくとも1以上の水酸基を含んでおり、この式中のR11〜R13は、炭素数1〜22の炭化水素基、炭素数1〜22の炭化水素とエーテル構造を含む基、炭素数1〜22の炭化水素とエステル構造を含む基、または炭素数1〜22の炭化水素と水酸基を含む基のいずれかを表し、R11〜R13のいずれかに、一般式(VI)または(VII)で示される分岐構造を含む。炭素数を1〜22の間にすることで、分子構造の立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性が向上する。より好ましくは1〜14の範囲内であり、さらに好ましくは1〜8の範囲内である。一方、炭素数が22を超える場合、分子構造の立体障害がやや大きく反応促進効果が低くなる場合がある。
本発明の前記一般式(IV)の分岐構造とは、一般式(VI)または(VII)で示される構造を意味する。
本発明の上記一般式(VI)、(VII)のR16〜R20は、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基、炭素数1〜22の炭化水素とエーテル構造を含む基、炭素数1〜22のエステル構造を含む基、または炭素数1〜22の炭化水素と水酸基を含む基、水酸基のいずれかである。炭素数を1〜22の間にすることで、分子構造の立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性が向上する。より好ましくは1〜8の範囲内であり、さらに好ましくは1〜5の範囲内である。一方、炭素数が22を超える場合、分子構造の立体障害がやや大きく反応促進効果が低くなる場合がある。
ここで、上記一般式(I)〜(VII)の炭素数1〜22の炭化水素基とは、炭素原子と水素原子のみからなる基であり、飽和炭化水素基および不飽和炭化水素基のいずれでも良く、環構造を含んでも含まなくても良い。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オレイル基、ドコシル基、ベンジル基およびフェニル基等が挙げられる。
また、上記一般式(I)〜(VII)の炭素数1〜22の炭化水素とエーテル構造を含む基としては、直鎖状のものとして、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、フェノキシエチル基、メトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、ポリエチレングリコール基およびポリプロピレングリコール基等のポリエーテル基が挙げられる。環状のものとして、例えば、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン、オキセパン、1,3−ジオキソランなどが挙げられる。
また、上記一般式(II)の上記一般式(V)で表される直鎖状のポリエーテル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、フェノキシエチル基、メトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、ポリエチレングリコール基およびポリプロピレングリコール基等のポリエーテル基が挙げられる。
また、上記一般式(I)〜(IV)、(VI)、(VII)の炭素数1〜22の炭化水素とエステル構造を含む基としては、例えば、アセトキシメチル基、アセトキシエチル基、アセトキシプロピル基、アセトキシブチル基、メタクリロイルオキシエチル基およびベンゾイルオキシエチル基等が挙げられる。
また、上記一般式(I)〜(IV)、(VI)、(VII)の炭素数1〜22の炭化水素と水酸基を含む基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシシクロヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシオレイル基およびヒドロキシドコシル基等が挙げられる。
本発明において用いられる3級アミンとは、分子内に3級アミノ基を有する化合物を示す。また、本発明で用いられる3級アミン塩とは、3級アミノ基を有する化合物をプロトン供与体で中和した塩のことを示す。ここで、プロトン供与体とは、3級アミノ基を有する化合物にプロトンとして供与できる活性水素を有する化合物のことを指す。なお、活性水素とは、塩基性の化合物にプロトンとして供与される水素原子のことを指す。
プロトン供与体としては、無機酸、カルボン酸、スルホン酸およびフェノール類などの有機酸、アルコール類、メルカプタン類および1,3−ジカルボニル化合物などが挙げられる。
無機酸の具体例としては、硫酸、亜硫酸、過硫酸、塩酸、過塩素酸、硝酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸およびアミド硫酸等が挙げられる。中でも、硫酸、塩酸、硝酸およびリン酸が好ましく用いられる。
カルボン酸類としては、脂肪族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、S含有ポリカルボン酸、脂肪族オキシカルボン酸、芳香族オキシカルボン酸、脂肪族モノカルボン酸および芳香族モノカルボン酸に分類され、以下の化合物が挙げられる。
脂肪族ポリカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ペンチルマロン酸、ヘキシルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、メチルプロピルマロン酸、メチルブチルマロン酸、エチルプロピルマロン酸、ジプロピルマロン酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、3−メチル−3−エチルグルタル酸、3,3−ジエチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3−メチルアジピン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸およびシトラコン酸等が挙げられる。
芳香族ポリカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸およびピロメリット酸等が挙げられる。
S含有ポリカルボン酸の具体例としては、チオジブロピオン酸等が挙げられる。
脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、グリコール酸、乳酸、酒石酸およびひまし油脂肪酸等が挙げられる。
芳香族オキシカルボン酸の具体例としては、サリチル酸、マンデル酸、4−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等が挙げられる。
脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、オクチル酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデカン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸およびオレイン酸等が挙げられる。
芳香族モノカルボン酸の具体例としては、安息香酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸、トルイル酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、イソプロピル安息香酸、ブチル安息香酸、イソブチル安息香酸、第2ブチル安息香酸、第3ブチル安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、エトキシ安息香酸、プロポキシ安息香酸、イソプロポキシ安息香酸、ブトキシ安息香酸、イソブトキシ安息香酸、第2ブトキシ安息香酸、第3ブトキシ安息香酸、アミノ安息香酸、N−メチルアミノ安息香酸、N−エチルアミノ安息香酸、N−プロピルアミノ安息香酸、N−イソプロピルアミノ安息香酸、N−ブチルアミノ安息香酸、N−イソブチルアミノ安息香酸、N−第2ブチルアミノ安息香酸、N−第3ブチルアミノ安息香酸、N,N−ジメチルアミノ安息香酸、N,N−ジエチルアミノ安息香酸、ニトロ安息香酸およびフロロ安息香酸等が挙げられる。
以上のカルボン酸類のうち、芳香族ポリカルボン酸、脂肪族モノカルボン酸、芳香族カルボン酸が好ましく用いられ、具体的には、フタル酸、ギ酸、オクチル酸が好ましく用いられる。
スルホン酸としては、脂肪族スルホン酸と芳香族スルホン酸に分類でき、以下の化合物が挙げられる。
脂肪族スルホン酸の中でも、1価の飽和脂肪族スルホン酸の具体例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、イソプロピルスルホン酸、ブタンスルホン酸、イソブチルスルホン酸、t−ブチルスルホン酸、ペンタンスルホン酸、イソペンチルスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ウンデカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、トリデカンスルホン酸、テトラデカンスルホン酸、n−オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸およびセチルスルホン酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸の中でも、1価の不飽和脂肪族スルホン酸の具体例としては、エチレンスルホン酸および1−プロペン−1−スルホン酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸の中でも、2価以上の脂肪族スルホン酸の具体例としては、メチオン酸、1,1−エタンジスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、1,1−プロパンジスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸およびポリビニルスルホン酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸の中でも、オキシ脂肪族スルホン酸の具体例としては、イセチオン酸および3−オキシ−プロパンスルホン酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸の中でも、スルホ脂肪族カルボン酸の具体例としては、スルホ酢酸およびスルホコハク酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸の中でも、スルホ脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸の中でも、フルオロスルホン酸の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロエタンスルホン酸、パーフルオロプロパンスルホン酸、パーフルオロイソプロピルスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロイソブチルスルホン酸、パーフルオロt−ブチルスルホン酸、パーフルオロペンタンスルホン酸、パーフルオロイソペンチルスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸、パーフルオロノナンスルホン酸、パーフルオロデカンスルホン酸、パーフルオロウンデカンスルホン酸、パーフルオロドデカンスルホン酸、パーフルオロトリデカンスルホン酸、パーフルオロテトラデカンスルホン酸、パーフルオロn−オクチルスルホン酸、パーフルオロドデシルスルホン酸およびパーフルオロセチルスルホン酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸の中でも、1価の芳香族スルホン酸の具体例としては、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、m−トルエンスルホン酸、o−キシレン−4−スルホン酸、m−キシレン−4−スルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、4−プロピルベンゼンスルホン酸、4−ブチルベンゼンスルホン酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、4−オクチルベンゼンスルホン酸、2−メチル−5−イソプロピルベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、t−ブチルナフタレンスルホン酸、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸、ベンジルスルホン酸およびフェニルエタンスルホン酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸の中でも、2価以上の芳香族スルホン酸の具体例としては、m−ベンゼンジスルホン酸、1,4−ナフタレンジスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、1,6−ナフタレンジスルホン酸、2,6−ナフタレンジスルホン酸、2,7−ナフタレンジスルホン酸、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸およびスルホン化ポリスチレン等が挙げられる。
芳香族スルホン酸の中でも、オキシ芳香族スルホン酸の具体例としては、フェノール−2−スルホン酸、フェノール−3−スルホン酸、フェノール−4−スルホン酸、アニソール−o−スルホン酸、アニソール−m−スルホン酸、フェネトール−o−スルホン酸、フェネトール−m−スルホン酸、フェノール−2,4−ジスルホン酸、フェノール−2,4,6−トリスルホン酸、アニソール−2,4−ジスルホン酸、フェネトール−2,5−ジスルホン酸、2−オキシトルエン−4−スルホン酸、ピロカテキン−4−スルホン酸、ベラトロール−4−スルホン酸、レゾルシン−4−スルホン酸、2−オキシ−1−メトキシベンゼン−4−スルホン酸、1,2−ジオキシベンゼン−3,5−ジスルホン酸、レゾルシン−4,6−ジスルホン酸、ヒドロキノンスルホン酸、ヒドロキノン−2,5−ジスルホン酸および1,2,3−トリオキシベンゼン−4−スルホン酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸の中でも、スルホ芳香族カルボン酸の具体例としては、o−スルホ安息香酸、m−スルホ安息香酸、p−スルホ安息香酸、2,4−ジスルホ安息香酸、3−スルホフタル酸、3,5−ジスルホフタル酸、4−スルホイソフタル酸、2−スルホテレフタル酸、2−メチル−4−スルホ安息香酸、2−メチル−3、5−ジスルホ安息香酸、4−プロピル−3−スルホ安息香酸、2,4,6−トリメチル−3−スルホ安息香酸、2−メチル−5−スルホテレフタル酸、5−スルホサリチル酸および3−オキシ−4−スルホ安息香酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸の中でも、チオ芳香族スルホン酸の具体例としては、チオフェノールスルホン酸、チオアニソール−4−スルホン酸およびチオフェネトール−4−スルホン酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸の中でも、その他官能基を有する具体例としては、ベンズアルデヒド−o−スルホン酸、ベンズアルデヒド−2,4−ジスルホン酸、アセトフェノン−o−スルホン酸、アセトフェノン−2,4−ジスルホン酸、ベンゾフェノン−o−スルホン酸、ベンゾフェノン−3,3'−ジスルホン酸、4−アミノフェノール−3−スルホン酸、アントラキノン−1−スルホン酸、アントラキノン−2−スルホン酸、アントラキノン−1,5−ジスルホン酸、アントラキノン−1,8−ジスルホン酸、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸および2−メチルアントラキノン−1−スルホン酸等が挙げられる。
以上のスルホン酸類のうち、1価の芳香族スルホン酸が好ましく用いられ、具体的には、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸およびm−トルエンスルホン酸が好ましく用いられる。
また、フェノール類としては、1分子中に1個の活性水素を含むものの具体例としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、シクロヘキシルフェノール、ジメチルフェノール、メチル−tert−ブチルフェノール、ジ−tert−ブチルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ニトロフェノール、メトキシフェノールおよびサリチル酸メチル等が挙げられる。1分子中に2個の活性水素を含むものの具体例としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、メチルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、ベンジルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、ジメチルヒドロキノン、メチル−tert−ブチルヒドロキノン、ジ−tert−ブチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、メチルレゾルシノール、tert−ブチルレゾルシノール、ベンジルレゾルシノール、フェニルレゾルシノール、ジメチルレゾルシノール、メチル−tert−ブチルレゾルシノール、ジ−tert−ブチルレゾルシノール、トリメチルレゾルシノール、メトキシレゾルシノール、メチルカテコール、tert−ブチルカテコール、ベンジルカテコール、フェニルカテコール、ジメチルカテコール、メチル−tert−ブチルカテコール、ジ−tert−ブチルカテコール、トリメチルカテコール、メトキシカテコール、ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビフェニル等のビフェノール類、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビスフェノールF、ビスフェノールAD、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビスフェノールAD、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビスフェノールAD、構造式(VIII)〜(XIV)で示されるビスフェノール類等、テルペンフェノール、構造式(XV)、(XVI)で示される化合物等が挙げられる。1分子中に3個の活性水素を含むものの具体例としては、トリヒドロキシベンゼンおよびトリス(p−ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。1分子中に4個の活性水素を含むものの具体例として、テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。また、それ以外の具体例として、フェノール、アルキルフェノールおよびハロゲン化フェノール等のフェノール類のノボラックが挙げられる。
以上のフェノール類のうち、フェノールおよびフェノールノボラックが好ましく用いられる。
また、アルコール類としては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,1−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ドデカヒドロビスフェノールA、構造式(XVII)で表されるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、構造式(XVIII)で表されるビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、構造式(XIX)で表されるドデカヒドロビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、構造式(XX)で表されるドデカヒドロビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールエタンおよびトリメチロールプロパン等が挙げられる。また、1分子中に4個の水酸基を含むものの具体例としては、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
また、メルカプタン類としては、1分子中に1個の活性水素を含むものの具体例としては、メタンチオール、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、1−ペンタンチオール、1−ヘキサンチオール、1−ヘプタンチオール、1−オクタンチオール、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、ベンジルメルカプタン、ベンゼンチオール、トルエンチオール、クロロベンゼンチオール、ブロモベンゼンチオール、ニトロベンゼンチオールおよびメトキシベンゼンチオール等が挙げられる。1分子中に2個の活性水素を含むものの具体例としては、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、2,2’−オキシジエタンチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、1,3−シクロヘキサンジチオール、1,4−シクロヘキサンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオールおよび1,4−ベンゼンチオール等が挙げられる。
また、1,3−ジカルボニル化合物類としては、2,4−ペンタンジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、4,6−ノナンジオン、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、1,3−シクロペンタンジオン、2−メチル−1,3−シクロペンタンジオン、2−エチル−1,3−シクロペンタンジオン、1,3−シクロヘキサンジオン、2−メチル−1,3−シクロヘキサンジオン、2−エチル−シクロヘキサンジオン、1,3−インダンジオン、アセト酢酸エチルおよびマロン酸ジエチル等が挙げられる。
本発明において、前記一般式(I)で示される化合物は、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、および5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBA)、またはこれらの塩などを挙げることができる。
上記のDBU塩としては、前記プロトン供与体で中和した塩を挙げることができるが、具体的には、DBUのフェノール塩(U−CAT SA1、サンアプロ株式会社製)、DBUのオクチル酸塩(U−CAT SA102、サンアプロ株式会社製)、DBUのp−トルエンスルホン酸塩(U−CAT SA506、サンアプロ株式会社製)、DBUのギ酸塩(U−CAT SA603、サンアプロ株式会社製)、DBUのオルソフタル酸塩(U−CAT SA810)およびDBUのフェノールノボラック樹脂塩(U−CAT SA810、SA831、SA841、SA851、881、サンアプロ株式会社製)などが挙げられる。
本発明において、前記一般式(I)で示される化合物が、炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基の水素イオンを引き抜き、マトリックス樹脂との求核反応を促進させるという観点から、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネンもしくはその塩、または、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンもしくはその塩であることが好ましい。前記一般式(I)で示される化合物は、環状構造を有しているため、同じく環状の炭素網面を有する炭素繊維との親和性が高くなると考えられ、このことが、炭素繊維表面官能基の水素イオンの引き抜きを効率的かつ効果的におこなうことを可能にしていると考えられる。
本発明において、前記一般式(II)で示される化合物は、例えば、トリフェニルアミン、トリ(メチルフェニル)アミン、トリ(エチルフェニル)アミン、トリ(プロピルフェニル)アミン、トリ(ブチルフェニル)アミン、トリ(フェノキシフェニル)アミン、トリ(ベンジルフェニル)アミン、ジフェニルメチルアミン、ジフェニルエチルアミン、ジフェニルプロピルアミン、ジフェニルブチルアミン、ジフェニルヘキシルアミン、ジフェニルシクロヘキシルアミン、ジフェニルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジプロピルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、N,N−ジシクロヘキシルアニリン、(メチルフェニル)ジメチルアミン、(エチルフェニル)ジメチルアミン、(プロピルフェニル)ジメチルアミン、(ブチルフェニル)ジメチルアミン、ビス(メチルフェニル)メチルアミン、ビス(エチルフェニル)メチルアミン、ビス(プロピルフェニル)メチルアミン、ビス(ブチルフェニル)メチルアミン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ジ(ヒドロキシプロピル)アニリン、N,N−ジ(ヒドロキシブチル)アニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N−メチルホルムアニリド、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、4−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、N,N,3,5−テトラメチルアニリン、4−フルオロ−N,N−ジメチルアニリン、2−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−ニトロソアニリン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾニトリル、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリン、4−ジメチルアミノベンズアルデヒドおよび4−(ジメチルアミノ)ベンジルアルコールまたはこれらの塩などを挙げることができる。
本発明において、前記一般式(II)で示される化合物が、炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基の水素イオンを引き抜き、マトリックス樹脂との反応を促進させるという観点から、N,N−ジメチルアニリンおよびその塩であることが好ましい。前記一般式(II)で示される化合物は、ベンゼン環を有しているため、同じく環状の炭素網面を有する炭素繊維とのπ−π相互作用により、親和性が高くなると考えられ、このことが、炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基の水素イオンの引き抜きを効率的かつ効果的におこなうことを可能にしていると考えられる。
本発明において、前記一般式(III)で示される化合物は、例えば、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、1,8−ビス(ジエチルアミノ)ナフタレン、1,8−ビス(ジプロピルアミノ)ナフタレン、1,8−ビス(ジブチルアミノ)ナフタレン、1,8−ビス(ジペンチルアミノ)ナフタレン、1,8−ビス(ジヘキシルアミノ)ナフタレン、1−ジメチルアミノ−8−メチルアミノ−キノリジン、1−ジメチルアミノ−7−メチル−8−メチルアミノ−キノリジン、1−ジメチルアミノ−7−メチル−8−メチルアミノ−イソキノリン、7−メチル−1,8−メチルアミノ−2,7−ナフチリジンおよび2,7−ジメチル−1,8−メチルアミノ−2,7−ナフチリジン、またはこれらの塩などを挙げることができる。
本発明において、前記一般式(III)で示される化合物が、炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基の水素イオンを引き抜き、マトリックス樹脂との反応を促進させるという観点から、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンおよびその塩であることが好ましい。前記一般式(III)で示される化合物は、ベンゼン環を有しているため、炭素網面を有する炭素繊維とのπ−π相互作用により、親和性が高くなると考えられ、このことが、炭素繊維表面官能基の水素イオンの引き抜きを効率的かつ効果的におこなうことを可能にしていると考えられる。
上述のとおり、本発明において、前記一般式(IV)で示される化合物が、少なくとも1以上の分岐構造を有し、かつ、少なくとも1以上の水酸基を含むことが必要である。また、少なくとも2以上の分岐構造を有することが好ましく、3以上の分岐構造を有することがさらに好ましい。分岐構造を有することで立体障害性が高まり、エポキシ環同士の反応を抑え、炭素素繊維表面官能基とエポキシとの反応促進効果を高めることができる。また、少なくとも1以上の水酸基を有することで、炭素繊維表面官能基への相互作用が高まり、効率的に炭素繊維表面官能基のプロトンを引き抜き、エポキシとの反応性を高めることができる。
本発明において、前記一般式(IV)で示される化合物の具体例として、ジイソブチルメタノールアミン、ジターシャリブチルメタノールアミン、ジ(2−エチルヘキシル)メタノールアミン、ジイソプロピルエタノールアミン、ジイソブチルエタノールアミン、ジターシャリブチルエタノールアミン、ジ(2−エチルヘキシル)エタノールアミン、ジイソプロピルプロパノールアミン、ジイソブチルプロパノールアミン、ジターシャリブチルプロパノールアミン、ジ(2−エチルヘキシル)プロパノールアミン、イソプロピルジメタノールアミン、イソブチルジメタノールアミン、ターシャリブチルジメタノールアミン、(2−エチルヘキシル)ジメタノールアミン、イソプロピルジエタノールアミン、イソブチルジエタノールアミン、ターシャリブチルジエタノールアミン、(2−エチルヘキシル)ジエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、ジエチルイソプロパノールアミン、メチルジイソプロパノールアミン、エチルジイソプロパノールアミン、プロピルジイソプロパノールアミン、ブチルジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンが挙げられる。
本発明において、前記一般式(IV)で示される化合物が、トリイソプロパノールアミンもしくはその塩であることが好ましい。トリイソプロパノールアミンは3つの水酸基を有しているため、炭素繊維表面官能基への相互作用が高まり、効率的に炭素繊維表面官能基のプロトンを引き抜き、エポキシとの反応性を高めることができる。また、3つの分岐構造を有しているため、立体障害性が高まり、エポキシ環同士の反応を抑え、炭素繊維表面官能基とエポキシとの反応性を高めることができる。
これらの3級アミンおよび/または3級アミン塩は、単独で用いても良いし、複数種を併用しても良い。また、3級アミン塩は、3級アミノ基を有する化合物をプロトン供与体で中和した塩を示し、これらを任意の割合で混合、または別々に炭素繊維表面に付着させることができる。具体的には、3級アミンと前記プロトン供与体とを予め任意の割合で混合しておき、塩が形成している状態で炭素繊維に付着させる方法、また、3級アミンと前記プロトン供与体を別々にしておき、同時に炭素繊維に付着させる方法、また、3級アミンを炭素繊維に付着させておいて、次いで、前記プロトン供与体を付着させる方法、また、予め、前記プロトン供与体を炭素繊維に付着させておいて、次いで、3級アミンを付着させる方法があり、いずれでもおこなうことができる。
本発明において、3級アミンは、その共役酸の酸解離定数pKaが9以上のものが好ましく、より好ましくは11以上のものである。酸解離定数pKaが9以上の場合、炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基とエポキシとの反応が促進され、接着向上効果が大きくなる。このような3級アミンとしては、具体的には、DBU(pKa12.5)、DBN(pKa12.7)や1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(pKa12.3)等が挙げられる。
本発明において、(A)成分の付着量は、本発明で用いられる炭素繊維100質量部に対して、好ましくは、0.001〜3質量部、より好ましくは、0.003〜0.8質量部、さらに好ましくは、0.005〜0.3質量部である。(A)成分の付着量が、0.001〜3質量部の場合、炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基とマトリックス樹脂含有官能基との反応が促進され、接着向上効果が大きくなる。
本発明において、さらに、(B)成分として、2官能以上のエポキシ化合物(B1)および/または、1官能以上のエポキシ基を有し、不飽和基、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、およびスルホ基から選ばれる少なくとも1つ以上の官能基を有するエポキシ化合物(B2)が付着されてなることが、さらに接着性を高めることができるため好ましい。
(B)成分が付着することによって接着性が向上するメカニズムは確かではないが、まず、(A)成分の3級アミンおよび/3級アミン塩が本発明で用いられる炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基の水素イオンを引き抜きアニオン化した後、このアニオン化した官能基と(B)成分に含まれるエポキシ基が求核反応するものと考えられる。これにより、本発明で用いられる炭素繊維とエポキシの強固な結合が形成される。一方、マトリックス樹脂との関係においては、(B1)(B2)それぞれについて、以下のとおりに説明される。
(B1)の場合、本発明で用いられる炭素繊維との共有結合に関与しない残りのエポキシ基がマトリックス樹脂含有官能基と反応し共有結合を形成するか、もしくは、水素結合を形成するものと考えられる。とりわけ、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂の場合に、(B1)のエポキシ基とマトリックス樹脂のエポキシ基の反応、エポキシ樹脂中に含まれるアミン硬化剤を介しての反応により強固な界面が形成できると考えられる。(B2)の場合、(B2)のエポキシ基は本発明で用いられる炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基と共有結合を形成するが、残りの不飽和基、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基はマトリックス樹脂に応じて、共有結合や水素結合などの相互作用を形成するものと考えられる。マトリックス樹脂がビニルエステルや不飽和ポリエステルのような不飽和基を有する樹脂であれば、(B2)の不飽和基とマトリックス樹脂の不飽和基がラジカル反応し強固な界面を形成することが可能である。また、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂であれば、(B2)の水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基とマトリックス樹脂のエポキシ基または、アミン硬化剤とエポキシ基が反応してできた水酸基との相互作用により強固な界面を形成できると考えられる。また、マトリックス樹脂がポリアミド、ポリエステルおよび酸変性されたポリオレフィンに代表される熱可塑性樹脂であれば、(B2)の水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基と、これらマトリックス樹脂に含まれるアミド基、エステル基、酸無水物基、末端などのカルボキシル基、水酸基、アミノ基との相互作用により、強固な界面を形成できると考えられる。
すなわち、(B1)の場合における、炭素繊維との共有結合に関与しない残りのエポキシ基が、(B2)の場合における、不飽和基、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基に相当する機能を有すると考えられる。
本発明において、(B)成分(すなわち、(B1)成分ないし(B2)成分のエポキシ化合物)が、3官能以上のエポキシ化合物であることが好ましく、4官能以上のエポキシ化合物であることがより好ましい。(B)成分が、分子内に3個以上のエポキシ基を有する3官能以上のエポキシ化合物であると、1個のエポキシ基が本発明で用いられる炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基と共有結合を形成した場合でも、残りの2個以上のエポキシ基がマトリックス樹脂と共有結合を形成することができ、接着性がさらに向上する。エポキシ基の数の上限は特にないが、10個以上では接着性が飽和する場合がある。
本発明において、(B)成分のエポキシ当量は、360g/mol未満であることが好ましく、より好ましくは270g/mol未満であり、さらに好ましくは180g/mol未満である。エポキシ当量が360g/mol未満であると、本発明で用いられる炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基とエポキシ基との間において高密度で共有結合が形成され、接着性がさらに向上する。エポキシ当量の下限は特にないが、90g/mol未満で接着性が飽和する場合がある。
本発明において、(B)は、分子内に芳香環を1個以上有することが好ましく、芳香環を2個以上有することがより好ましい。本発明の炭素繊維とマトリックス樹脂とからなる繊維強化複合材料において、炭素繊維近傍のいわゆる界面層は、炭素繊維あるいはサイジング剤の影響を受け、マトリックス樹脂とは異なる特性を有する場合がある。(B)のエポキシ化合物が芳香環を1個以上有すると、剛直な界面層が形成され、炭素繊維とマトリックス樹脂との間の応力伝達能力が向上し、繊維強化複合材料の0°引張強度等の力学特性が向上する。芳香環の数の上限は特にないが、10個以上では力学特性が飽和する場合がある。
本発明において、(B1)は、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、またはテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンのいずれかであることが好ましい。これらのエポキシ樹脂は、エポキシ基数が多く、エポキシ当量が小さく、かつ、2個以上の芳香環を有しており、本発明の炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性を向上させることに加え、繊維強化複合材料の0°引張強度等の力学特性を向上させる。2官能以上のエポキシ樹脂は、より好ましくは、フェノールノボラック型エポキシ樹脂およびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂である。
本発明において、(B1)の具体例としては、例えば、ポリオールから誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、複数活性水素を有するアミンから誘導されるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸から誘導されるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、および分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるエポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ヒドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、1,6−ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタンおよびテトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。また、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ポリブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールおよびアラビトールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。また、このエポキシ樹脂としては、ジシクロペンタジエン骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ樹脂およびビフェニルアラルキル骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m−キシリレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンが挙げられる。
さらに、例えば、m−アミノフェノール、p−アミノフェノールおよび4−アミノ−3−メチルフェノールのアミノフェノール類の水酸基とアミノ基の両方をエピクロロヒドリンと反応させて得られるエポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、およびダイマー酸をエピクロロヒドリンと反応させて得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂が挙げられる。
分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化させて得られるエポキシ樹脂としては、例えば、分子内にエポキシシクロヘキサン環を有するエポキシ樹脂が挙げられる。さらに、このエポキシ樹脂としては、エポキシ化大豆油が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂以外にも、トリグリシジルイソシアヌレートのようなエポキシ樹脂が挙げられる。さらには、上に挙げたエポキシ樹脂を原料として合成されるエポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリレンジイソシアネートからオキサゾリドン環生成反応により合成されるエポキシ樹脂が挙げられる。
本発明において、(B2)1官能以上のエポキシ基を有し、不飽和基、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、およびスルホ基から選ばれる、少なくとも一つ以上の官能基を有するエポキシ化合物の具体例として、例えば、エポキシ基と不飽和基を有する化合物、エポキシ基と水酸基を有する化合物、エポキシ基とアミド基を有する化合物、エポキシ基とイミド基、エポキシ基とウレタン基を有する化合物、エポキシ基とウレア基を有する化合物、エポキシ基とスルホニル基を有する化合物、エポキシ基とスルホ基を有する化合物が挙げられる。
エポキシ基と不飽和基を有する化合物としては、例えば、1,2−エポキシ−7−オクテン、1,2−エポキシ−9−デカンおよびビスフェノールAジグリシジルエーテルと酢酸ビニルによる付加反応により合成されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ基と水酸基を有する化合物としては、例えば、ソルビトール型ポリグリシジルエーテルおよびグリセロール型ポリグリシジルエーテル等が挙げられ、具体的にはデナコール(商標登録)EX−611、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−421、EX−313、EX−314およびEX−321(ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
エポキシ基とアミド基を有する化合物としては、例えば、グリシアミド、アミド変性エポキシ樹脂等が挙げられる。アミド変性エポキシはジカルボン酸アミドのカルボキシル基に2官能以上のエポキシ樹脂のエポキシ基を反応させることによって得ることができる。
エポキシ基とイミド基を有する化合物としては、例えば、グリシジルフタルイミド等が挙げられる。具体的にはデナコール(商標登録)EX−731(ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
エポキシ基とウレタン基を有する化合物としては、例えば、ウレタン変性エポキシ樹脂が挙げられ、具体的にはアデカレジン(商標登録)EPU−78−13S、EPU−6、EPU−11、EPU−15、EPU−16A、EPU−16N、EPU−16A、EPU−17T−6、EPU−1348およびEPU−1395(株式会社ADEKA製)等が挙げられる。または、ポリエチレンオキサイドモノアルキルエーテルの末端水酸基に、その水酸基量に対する反応当量の多価イソシアネートを反応させ、次いで得られた反応生成物のイソシアネート残基に多価エポキシ樹脂内の水酸基と反応させることによって得ることができる。ここで、用いられる多価イソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートおよびビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネートなどが挙げられる。
エポキシ基とウレア基を有する化合物としては、例えば、ウレア変性エポキシ樹脂等が挙げられる。アミド変性エポキシはジカルボン酸ウレアのカルボキシル基に2官能以上のエポキシ樹脂のエポキシ基を反応させることによって得ることができる。
エポキシ基とスルホニル基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールS型エポキシ等が挙げられる。
エポキシ基とスルホ基を有する化合物としては、例えば、p−トルエンスルホン酸グリシジルおよび3−ニトロベンゼンスルホン酸グリシジル等が挙げられる。
本発明において、(A)成分/(B)成分の配合比率は、好ましくは、0.1/100〜25/100(質量部)、より好ましくは、0.6/100〜15/100(質量部)、さらに好ましくは、1/100〜10/100(質量部)である。これらの配合比率にすることにより、より高い反応促進効果が得られる。(B)成分100(質量部)に対して、(A)成分が0.1質量部未満であると、反応促進効果が小さく、一方、25質量部超えると、(A)成分が過剰となり、本発明で用いられる炭素繊維の表面を覆い、反応促進効果が阻害され、本発明の炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性が不十分となる場合がある。
本発明において、(A)成分/(B)成分の付着量は、本発明で用いられる炭素繊維100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2〜2質量部の範囲である。これらの付着量にすることにより、より高い反応促進効果が得られる。
本発明において、(A)、(B)以外の成分を1種類以上含んでも良い。例えば、ポリエチレンオキサイドおよびポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド、高級アルコール、多価アルコール、アルキルフェノールおよびスチレン化フェノール等にポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイドが付加した化合物、およびエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロック共重合体等のノニオン系界面活性剤が好ましく用いられる。また、本発明の効果に影響しない範囲で、適宜、ポリエステル樹脂および不飽和ポリエステル化合物等を添加してもよい。
本発明において、(A)、(B)成分およびその他の成分は、溶媒で希釈して用いることができる。このような溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドが挙げられるが、なかでも、取扱いが容易であり、安全性の観点から有利であることから、水が好ましく用いられる。
本発明で用いられる炭素繊維としては、X線光電子分光法により測定されるその繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度O/Cが、0.05〜0.50の範囲内であるものが好ましく、より好ましくは0.07〜0.30の範囲内のものであり、さらに好ましくは0.10〜0.25の範囲内ものである。表面酸素濃度O/Cが0.05以上であることにより、炭素繊維表面の酸素含有官能基を確保し、マトリックス樹脂との強固な接着を得ることができる。また、表面酸素濃度O/Cが0.5以下であることにより、酸化による炭素繊維自体の強度の低下を抑えることができる。
本発明で用いられる炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、レーヨン系およびピッチ系の炭素繊維が挙げられる。なかでも、強度と弾性率のバランスに優れたPAN系炭素繊維が好ましく用いられる。
次に、本発明で好ましく用いられるPAN系炭素繊維の製造方法について説明する。
本発明で好ましく用いられる炭素繊維の前駆体繊維を得るための紡糸方法としては、湿式、乾式および乾湿式等の紡糸方法を用いることができる。なかでも、高強度の炭素繊維が得られやすいという観点から、湿式あるいは乾湿式紡糸方法を用いることが好ましい。紡糸原液には、ポリアクリロニトリルのホモポリマーあるいは共重合体の溶液や懸濁液等を用いることができる。
上記の紡糸原液を口金に通して紡糸、凝固、水洗、延伸して前駆体繊維とし、得られた前駆体繊維を耐炎化処理と炭化処理し、必要によってはさらに黒鉛化処理をすることにより炭素繊維を得る。炭化処理と黒鉛化処理の条件としては、最高熱処理温度が1100℃以上であることが好ましく、より好ましくは1300〜3000℃である。
本発明において、強度と弾性率の高い炭素繊維を得られるという観点から、細繊度の炭素繊維が好ましく用いられる。具体的には、炭素繊維の単繊維径が、7.5μm以下であることが好ましく、6μm以下であることがより好ましい。単繊維径の下限値は、生産性の観点から4.5μm程度であり、4.5μm未満では、製造工程における単繊維切断が起きやすく生産性が低下する場合がある。
得られた炭素繊維は、マトリックス樹脂との接着性を向上させるために、通常、酸化処理が施され、酸素含有官能基が導入される。酸化処理方法としては、気相酸化、液相酸化および液相電解酸化が用いられるが、生産性が高く、均一処理ができるという観点から、液相電解酸化が好ましく用いられる。
本発明において、液相電解酸化で用いられる電解液としては、酸性電解液およびアルカリ性電解液が挙げられる。
酸性電解液としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸、ホウ酸、および炭酸等の無機酸、酢酸、酪酸、シュウ酸、アクリル酸、およびマレイン酸等の有機酸、または硫酸アンモニウムや硫酸水素アンモニウム等の塩が挙げられる。なかでも、強酸性を示す硫酸と硝酸が好ましく用いられる。
アルカリ性電解液としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等の水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムおよび炭酸アンモニウム等の炭酸塩の水溶液、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウムおよび炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩の水溶液、アンモニア、水酸化テトラアルキルアンモニウムおよびヒドラジンの水溶液等が挙げられる。なかでも、マトリックス樹脂の硬化阻害を引き起こすアルカリ金属を含まないという観点から、炭酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムの水溶液、あるいは、強アルカリ性を示す水酸化テトラアルキルアンモニウムの水溶液が好ましく用いられる。
本発明において、炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基とマトリックス樹脂含有官能基との共有結合形成が促進され、接着性がさらに向上するという観点から、炭素繊維をアルカリ性電解液で電解処理した後、または酸性水溶液中で電解処理し続いてアルカリ性水溶液で洗浄した後、(A)成分を付着することが好ましい。電解処理した場合、炭素繊維表面において過剰に酸化された部分が脆弱層となって界面に存在し、複合材料にした場合の破壊の起点となる場合があるため、過剰に酸化された部分をアルカリ性水溶液で溶解除去することにより共有結合形成が促進されるものと考えられる。また、炭素繊維表面に酸性電解液の残渣が存在すると、残渣中のプロトンが(A)成分の3級アミンおよび/または3級アミン塩に捕捉され、本来果たすべき役割である(A)成分の炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基の水素イオンを引き抜く効果が低下する場合がある。このため、酸性水溶液中で電解処理し続いてアルカリ性水溶液で酸性電解液を中和洗浄することが好ましい。上記の理由から、特定の処理を施した炭素繊維との組み合わせにより、さらなる接着向上を得ることができる。
本発明において用いられる電解液の濃度は、0.01〜5モル/リットルの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1モル/リットルの範囲内である。電解液の濃度が0.01モル/リットル以上であると、電解処理電圧が下げられ、運転コスト的に有利になる。一方、電解液の濃度が5モル/リットル以下であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において用いられる電解液の温度は、10〜100℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜40℃の範囲内である。電解液の温度が10℃以上であると、電解処理の効率が向上し、運転コスト的に有利になる。一方、電解液の温度が100℃以下であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において、液相電解酸化における電気量は、炭素繊維の炭化度に合わせて最適化することが好ましく、高弾性率の炭素繊維に処理を施す場合、より大きな電気量が必要である。
本発明において、液相電解酸化における電流密度は、電解処理液中の炭素繊維の表面積1m2 当たり1.5〜1000アンペア/m2の範囲内であることが好ましく、より好ましくは3〜500アンペア/m2 の範囲内である。電流密度が1.5アンペア/m2以上であると、電解処理の効率が向上し、運転コスト的に有利になる。一方、電流密度が1000アンペア/m2以下であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性がさらに向上するという観点から、酸化処理の後、炭素繊維をアルカリ性水溶液で洗浄することが好ましい。中でも、酸性電解液で液相電解処理し続いてアルカリ性水溶液で洗浄することが好ましい。
本発明において、洗浄に用いられるアルカリ性水溶液のpHは、7〜14の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜14の範囲内である。アルカリ性水溶液としては、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等の水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムおよび炭酸アンモニウム等の炭酸塩の水溶液、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウムおよび炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩の水溶液、アンモニア、水酸化テトラアルキルアンモニウムおよびヒドラジンの水溶液等が挙げられる。なかでも、マトリックス樹脂の硬化阻害を引き起こすアルカリ金属を含まないという観点から、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムの水溶液、あるいは、強アルカリ性を示す水酸化テトラアルキルアンモニウムの水溶液が好ましく用いられる。
本発明において、炭素繊維をアルカリ性水溶液で洗浄する方法としては、例えば、ディップ法とスプレー法を用いることができる。なかでも、洗浄が容易であるという観点から、ディップ法を用いることが好ましく、さらには、炭素繊維を超音波で加振させながらディップ法を用いることが好ましい。
本発明において、炭素繊維を電解処理またはアルカリ性水溶液で洗浄した後、水洗および乾燥することが好ましい。この場合、乾燥温度が高すぎると炭素繊維の最表面に存在する官能基は熱分解により消失し易いため、できる限り低い温度で乾燥することが望ましく、具体的には乾燥温度が好ましくは250℃以下、さらに好ましくは210℃以下で乾燥することが好ましい。
以上に示したように、本発明で好ましく用いられる炭素繊維を得ることができる。
次に、(A)成分の本発明で用いられる炭素繊維への付与手段について説明するが、(A)、(B)成分を同時に含む場合、さらに、その他の成分を同時に含む場合も同様におこなうことができる。
(A)成分の本発明で用いられる炭素繊維への付与手段としては、例えば、ローラを介して(A)成分の水溶液、有機溶媒液に炭素繊維を浸漬する方法、(A)成分の水溶液、有機溶媒液の付着したローラに炭素繊維を接する方法、(A)成分の水溶液、有機溶媒液を霧状にして炭素繊維に吹き付ける方法などがある。また、(A)成分の水溶液、有機溶媒液の付与手段は、バッチ式と連続式いずれでもよいが、生産性がよくバラツキが小さくできる連続式が好ましく用いられる。この際、本発明で用いられる炭素繊維に対する(A)成分の付着量が適正範囲内で均一に付着するように、(A)成分の水溶液、有機溶媒液の濃度、温度および糸条張力などをコントロールすることが好ましい。また、(A)成分の水溶液、有機溶媒液付与時に、炭素繊維を超音波で加振させることも好ましい。
本発明においては、本発明で用いられる炭素繊維に(A)成分の水溶液、有機溶媒液を付した後、80〜250℃の温度範囲で30〜600秒間乾燥することが好ましい。80℃未満または30秒未満の場合、(A)成分を溶かしていた水や有機溶媒を十分に除去できない場合がある。
(A)成分の、本発明で用いられる炭素繊維への別の付与手段として、電解液の中に(A)成分を添加しておき、電解処理と同時に炭素繊維表面へ付与する方法、電解処理後の洗浄工程で(A)成分を添加しておき、水洗と同時に炭素繊維表面へ付与することもできる。これらの場合、(A)成分の付着量は、(A)成分の濃度、温度および糸条張力などをコントロールすることでおこなうことができ、炭素繊維100質量部に対して、好ましくは、0.001〜3質量部、より好ましくは、0.003〜0.8質量部、さらに好ましくは、0.005〜0.3質量部である。(A)成分の付着量が、0.001〜3質量部の場合、炭素繊維表面官能基とマトリックス樹脂含有官能基との反応が促進され、接着向上効果が大きくなる。
さらに、別の付与手段として、予め、(A)成分を前記の方法に従って本発明で用いられる炭素繊維に付与した後、(B)成分および/またはその他の成分を複数に分けて別々に付与することもできる。この場合、(A)成分を付与した後、乾燥してもよいし、乾燥せずに続けて(B)成分および/またはその他の成分を付与してもよい。本発明の炭素繊維のストランド強度が、3.5GPa以上であることが好ましく、より好ましくは4GPa以上であり、さらに好ましくは5GPaである。また、本発明の炭素繊維のストランド弾性率が、220GPa以上であることが好ましく、より好ましくは240GPa以上であり、さらに好ましくは280GPa以上である。
マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が用いられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シアネートエステル樹脂およびビスマレイミド樹脂等が挙げられる。なかでも、機械特性のバランスに優れ、硬化収縮が小さいという利点を有するため、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。靱性等を改良する目的で、熱硬化性樹脂に、後述する熱可塑性樹脂あるいはそれらのオリゴマーを含ませることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)および液晶ポリエステル等のポリエステル樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびポリブチレン等のポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂およびポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、さらに、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系およびフッ素系等の熱可塑エラストマー等、さらに、これらの共重合体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂が挙げられる。
次に、マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂である場合の複合材料について説明する。
本発明の炭素繊維は、例えば、トウ、織物、編物、組み紐、ウェブ、マットおよびチョップド等の形態で用いられる。特に、比強度と比弾性率が高いことを要求される用途には、炭素繊維が一方向に引き揃えたトウが最も適しており、さらに、マトリックス樹脂を含浸したプリプレグが好ましく用いられる。
前記のプリプレグは、マトリックス樹脂をメチルエチルケトンやメタノール等の溶媒に溶解して低粘度化し、含浸させるウェット法と、加熱により低粘度化し、含浸させるホットメルト法(ドライ法)等により作製することができる。
ウェット法は、本発明の炭素繊維をマトリックス樹脂の溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発させる方法であり、また、ホットメルト法は、加熱により低粘度化したマトリックス樹脂を直接強化繊維に含浸させる方法、または一旦マトリックス樹脂を離型紙等の上にコーティングフィルムを作成しておき、次いで炭素繊維の両側又は片側から前記フィルムを重ね、加熱加圧することにより炭素繊維にマトリックス樹脂を含浸させる方法である。ホットメルト法によれば、プリプレグ中に残留する溶媒が実質上皆無となるため好ましい方法である。
得られたプリプレグを積層後、積層物に圧力を付与しながらマトリックス樹脂を加熱硬化させる方法等により、複合材料が作製される。ここで熱および圧力を付与する方法には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、パッキング成形法、ラッピングテープ法および内圧成形法等が採用される。複合材料は、プリプレグを介さず、マトリックス樹脂を直接炭素繊維の含浸させた後、加熱硬化せしめる方法、例えば、ハンド・レイアップ法、レジン・インジェクション・モールディング法およびレジン・トランスファー・モールディング法等の成形法によっても作製することができる。これら方法では、マトリックス樹脂の主剤と硬化剤の2液を使用直前に混合して樹脂調製することが好ましい。
次に、マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である場合の複合材料について説明する。
マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いた複合材料は、例えば、射出成形(射出圧縮成形、ガスアシスト射出成形およびインサート成形など)、ブロー成形、回転成形、押出成形、プレス成形、トランスファー成形およびフィラメントワインディング成形などの成形方法によって成形されるが、生産性の観点から射出成形が好ましく用いられる。
かかる成形に用いられる成形材料の形態としては、ペレット、スタンパブルシートおよびプリプレグ等を使用することができるが、最も好ましい成形材料は、射出成形に用いられるペレットである。前記のペレットは、一般的には、熱可塑性樹脂とチョップド繊維もしくは連続繊維を押出機中で混練し、押出、ペレタイズすることによって得られたものを指す。前述のペレットは、ペレット長手方向の長さより、ペレット中の繊維長さの方が短くなるが、ペレットには、長繊維ペレットも含まれる。長繊維ペレットとは、特公昭63−37694号公報に記載されているような、繊維がペレットの長手方向に、ほぼ平行に配列し、ペレット中の繊維長さが、ペレット長さと同一もしくはそれ以上であるものを指す。この場合、熱可塑性樹脂は繊維束中に含浸されていても、被覆されていてもよい。特に熱可塑性樹脂が被覆された長繊維ペレットの場合、繊維束には被覆されたものと同じか、あるいは被覆された樹脂よりも低粘度(もしくは低分子量)の樹脂が、予め含浸されていてもよい。
複合材料が、優れた導電性と力学的特性(特に、強度や耐衝撃性)を兼ね備えるためには、成形品中の繊維長さを長くすることが有効であるが、そのためには、前述のペレットの中でも長繊維ペレットを用いて成形することが好ましい。
本発明の炭素繊維と熱硬化性樹脂および、または熱可塑性樹脂からなる成形体の用途としては、例えば、パソコン、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、ファクシミリ、コンパクトディスク、ポータブルMD、携帯用ラジオカセット、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品などの電気、電子機器の筐体およびトレイやシャーシなどの内部部材やそのケース、機構部品、パネルなどの建材用途、モーター部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、サスペンション部品、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係、排気系または吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、各種アーム、各種フレーム、各種ヒンジ、各種軸受、燃料ポンプ、ガソリンタンク、CNGタンク、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、バッテリートレイ、ATブラケット、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング、ハンドル、ドアビーム、プロテクター、シャーシ、フレーム、アームレスト、ホーンターミナル、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ノイズシールド、ラジエターサポート、スペアタイヤカバー、シートシェル、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ホイール、フェンダー、フェイシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スポイラーおよび各種モジュールなどの自動車、二輪車関連部品、部材および外板やランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェアリング、リブなどの航空機関連部品、部材および外板、風車の羽根などが挙げられる。特に、航空機部材、風車の羽根、自動車外板および電子機器の筐体およびトレイやシャーシなどに好ましく用いられる。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。なお、(A)成分として、A−1〜A−3,A−5〜A−7を用いる実施例は、本発明の参考実施例である。
<炭素繊維のストランド引張強度と弾性率>
本発明で用いられる炭素繊維のストランド引張強度とストランド弾性率は、JIS−R−7608(2004)の樹脂含浸ストランド試験法に準拠し、次の手順に従い求めた。樹脂処方としては、“セロキサイド”(登録商標)2021P(ダイセル化学工業社製)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(東京化成工業(株)製)/アセトン=100/3/4(質量部)を用い、硬化条件としては、常圧、温度125℃、時間30分を用いた。炭素繊維束のストランド10本を測定し、その平均値をストランド引張強度およびストランド弾性率とした。
<炭素繊維の表面酸素濃度(O/C)>
炭素繊維の表面酸素濃度(O/C)は、次の手順に従いX線光電子分光法により求めた。まず、溶媒で表面に付着している汚れを除去した炭素繊維を、約20mmにカットし、銅製の試料支持台に拡げる。次に、試料支持台を試料チャンバー内にセットし、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保つ。続いて、X線源としてAlKα1、2を用い、光電子脱出角度を90°として測定を行った。なお、測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせた。C1sピーク面積を、K.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。また、O1sピーク面積を、K.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。ここで、表面酸素濃度とは、上記のO1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出したものである。X線光電子分光法装置として、アルバック・ファイ(株)製ESCA−1600を用い、上記装置固有の感度補正値は2.33であった。
<(A)成分、(B)成分、その他の成分の炭素繊維への付着量の測定方法>
(A)成分、(B)成分、その他の成分が付着した約2gの炭素繊維を秤量(W1)(少数第4位まで読み取り)した後、50ミリリットル/分の窒素気流中、450℃の温度に設定した電気炉(容量120cm3)に15分間放置し、(A)成分、(B)成分、その他の成分を完全に熱分解させる。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の炭素繊維を秤量(W2)(少数第4位まで読み取り)して、W1−W2により(A)成分、(B)成分、その他の成分の付着量を求める。この(A)成分、(B)成分、その他の成分の付着量を炭素繊維100質量部に対する量に換算した値(小数点第3位を四捨五入)を、付着した(A)成分、(B)成分、その他の成分の質量部とした。測定は2回おこない、その平均値を(A)成分、(B)成分、その他の成分の質量部とした。
<界面剪断強度(IFSS)の測定>
界面剪断強度(IFSS)の測定は、次の(イ)〜(ニ)の手順でおこなう。
(イ)樹脂の調製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂化合物“jER”(登録商標)828(三菱化学(株)製)100質量部とメタフェニレンジアミン(シグマアルドリッチジャパン(株)製)14.5質量部を、それぞれ容器に入れる。その後、上記のjER828の粘度低下とメタフェニレンジアミンの溶解のため、75℃の温度で15分間加熱をおこなう。その後、両者をよく混合し、80℃の温度で約15分間真空脱泡をおこなう。
(ロ)炭素繊維単糸を専用モールドに固定
炭素繊維束から単繊維を抜き取り、ダンベル型モールドの長手方向に単繊維に一定張力を与えた状態で両端を接着剤で固定する。その後、炭素繊維およびモールドに付着した水分を除去するため、80℃の温度で30分間以上真空乾燥をおこなう。ダンベル型モールドはシリコーンゴム製で、注型部分の形状は、中央部分巾5mm、長さ25mm、両端部分巾10mm、全体長さ150mmである。
(ハ)樹脂注型から硬化まで
上記(ロ)の手順の真空乾燥後のモールド内に、上記(イ)の手順で調製した樹脂を流し込み、オーブンを用いて、昇温速度1.5℃/分で75℃の温度まで上昇し2時間保持後、昇温速度1.5分で125℃の温度まで上昇し2時間保持後、降温速度2.5℃/分で30℃の温度まで降温する。その後、脱型して試験片を得る。
(ニ)界面剪断強度(IFSS)の測定
上記(ハ)の手順で得られた試験片に繊維軸方向(長手方向)に引張力を与え、歪みを12%生じさせた後、偏光顕微鏡により試験片中心部22mmの範囲における繊維破断数N(個)を測定する。次に、平均破断繊維長laを、la(μm)=22×1000(μm)/N(個)の式により計算する。次に、平均破断繊維長laから臨界繊維長lcを、lc(μm)=(4/3)×la(μm)の式により計算する。ストランド引張強度σと炭素繊維単糸の直径dを測定し、炭素繊維と樹脂界面の接着強度の指標である界面剪断強度IFSSを、次式で算出する。実施例では、測定数n=5の平均を試験結果とした。
・界面剪断強度IFSS(MPa)=σ(MPa)×d(μm)/(2×lc)(μm)。
各実施例および各比較例で用いた材料と成分は、下記のとおりである。
・(A)成分:A−1〜A−8
A−1:“DBU”(登録商標)(サンアプロ(株)製)(式(I)に該当)
8ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7
A−2:U−CAT SA1(サンアプロ(株)製)(式(I)に該当)
DBUフェノール塩
A−3:U−CAT SA102(サンアプロ(株)製)(式(I)に該当)
DBUオクチル酸塩
A−4:N,N−ジメチルアニリン(東京化成工業(株)製)(式(II)に該当)
A−5:1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(アルドリッチ社製)(式(III)に該当)
別名:プロトンスポンジ
A−6:DBN(サンアプロ(株)製)、(式(I)に該当)
1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン
A−7:U−CAT SA506(サンアプロ(株)製)(式(I)に該当)
DBU−p−トルエンスルホン酸塩
A−8:トリイソプロパノールアミン(東京化成工業(株)製)、(式(IV)に該当)
・(B1)成分:B−1〜B−6
B−1:“jER”(登録商標)152(三菱化学(株)製)
フェノールノボラックのグリシジルエーテル
エポキシ当量:175g/mol、エポキシ基数:3
B−2:“EPICLON”(登録商標)N660(DIC(株)製)
クレゾールノボラックのグリシジルエーテル
エポキシ当量:206g/mol、エポキシ基数:4.3
B−3:“アラルダイト”(登録商標)MY721(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン
エポキシ当量:113g/mol、エポキシ基数:4
B−4:“jER”(登録商標)828(三菱化学(株)製)
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル
エポキシ当量:189g/mol、エポキシ基数:2
B−5:“jER”(登録商標)1001(三菱化学(株)製)
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル
エポキシ当量:475g/mol、エポキシ基数:2
B−6:“デナコール”(登録商標)EX−810(ナガセケムテックス(株)製)
エチレングリコールのジグリシジルエーテル
エポキシ当量:113g/mol、エポキシ基数:2。
・(B1)成分、(B2)成分の両方に該当:B−7、B−8
B−7:“デナコール”(登録商標)EX−614B(ナガセケムテックス(株)製)
ソルビトールポリグリシジルエーテル
エポキシ当量:173g/mol、エポキシ基数:4以上
水酸基数:1以上
B−8:“デナコール”(登録商標)EX−611(ナガセケムテックス(株)製)
ソルビトールポリグリシジルエーテル
エポキシ当量:167g/mol、エポキシ基数:4
水酸基数:2。
・(B2)成分:B−9、B−10
B−9:“デナコール”(登録商標)EX−731(ナガセケムテックス(株)製)
N−グリシジルフタルイミド
エポキシ当量:216g/mol、エポキシ基数:1
イミド基数:1
B−10:“アデカレジン”(登録商標)EPU−6((株)ADEKA製)
ウレタン変性エポキシ
エポキシ当量:250g/mol、エポキシ基数:1以上
ウレタン基:1以上。
・(C)成分(その他成分):C−1
C−1:ヘキサメチレンジアミン(東京化成工業(株)製)。
(実施例1)
本実施例は、次の第Iの工程および第IIの工程からなる。
・第Iの工程:本発明で用いられる炭素繊維を製造する工程
アクリロニトリル99モル%とイタコン酸1モル%からなる共重合体を紡糸し、焼成し、総フィラメント数24、000本、総繊度800テックス、比重1.8、ストランド引張強度6.2GPa、ストランド引張弾性率300GPaの炭素繊維を得た。次いで、その炭素繊維を、濃度0.1モル/lの炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として、電気量を炭素繊維1g当たり120クーロンで電解表面処理した。この電解表面処理を施された炭素繊維を続いて水洗し、150℃の温度の加熱空気中で乾燥し、原料となる炭素繊維を得た。このときの表面酸素濃度O/Cは、0.22であった。これを本発明で用いられる炭素繊維Aとした。
・第IIの工程:(A)成分を第Iの工程で得られた炭素繊維に付着させる工程
前記の(A−1)とアセトンを混合し、均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このアセトン溶液を用い、浸漬法により(A)成分を表面処理された炭素繊維Aに塗布した後、150℃の温度で90秒間熱処理をして、(A)成分が付着した炭素繊維を得た。(A)成分の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して0.1質量部となるように調製した。続いて、得られた炭素繊維を用いて、界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSが27MPaであり、接着性が十分に高いことが確認された。結果を表1に示す。
(実施例2〜8)
・第Iの工程:本発明で用いられる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:(A)成分を第Iの工程で得られた炭素繊維に付着させる工程
実施例1の第IIの工程で、(A−1)を(A−2)〜(A−8)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で(A)成分が付着した炭素繊維を得た。(A)成分の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して、いずれも0.1質量部であった。得られた炭素繊維を用いて界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSが24〜28MPaであり、いずれも接着性が十分に高いことが確認された。結果を表1に示す。
(実施例9、10)
・第Iの工程:本発明で用いられる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:(A)成分を第Iの工程で得られた炭素繊維に付着させる工程
実施例3の第IIの工程で、(A−3)の付着量を炭素繊維100質量部に対して、0.5または1質量部とした以外は、実施例3と同様の方法で(A)成分が付着した炭素繊維を得た。得られた炭素繊維を用いて界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSが26、23MPaであり、いずれも接着性が十分に高いことが確認された。結果を表1に示す。
(実施例11)
・第Iの工程:本発明で用いられる炭素繊維を製造する工程
電解液として濃度0.05モル/lの硫酸水溶液を用い、電気量を炭素繊維1g当たり20クーロンで電解表面処理したこと以外は、実施例1と同様とした。このときの表面酸素濃度O/Cは、0.20であった。これを本発明で用いられる炭素繊維Bとした。
・第IIの工程:(A)成分を本発明で用いられる炭素繊維に付着させる工程
前記の(A−3)とアセトンを混合し、均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このアセトン溶液を用い、浸漬法により(A)成分を表面処理された炭素繊維Bに塗布した後、150℃の温度で90秒間熱処理をして、(A)成分が付着した炭素繊維を得た。(A)成分の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して0.1質量部となるように調製した。続いて、得られた炭素繊維を用いて、界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSが24MPaであり、接着性が十分に高いことが確認された。結果を表1に示す。
(実施例12)
・第Iの工程:本発明で用いられる炭素繊維を製造する工程
実施例11で得られた炭素繊維Bをテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(Ph=14)に浸漬し、超音波で加振させながら引き上げた。このときの表面酸素濃度O/Cは、0.17であった。これを本発明で用いられる炭素繊維Cとした。
・第IIの工程:(A)成分を第Iの工程で得られた炭素繊維に付着させる工程
前記の(A−3)とアセトンを混合し、均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このアセトン溶液を用い、浸漬法により(A)成分を表面処理された炭素繊維Cに塗布した後、150℃の温度で90秒間熱処理をして、(A)成分が付着した炭素繊維を得た。(A)成分の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して0.1質量部となるように調製した。続いて、得られた炭素繊維を用いて、界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSが26MPaであり、接着性が十分に高いことが確認された。結果を表1に示す。
(比較例1)
・第Iの工程:(A)成分を付着させる前の炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:(A)成分を第Iの工程で得られた炭素繊維に付着させる工程
(A)成分を付着させる工程をおこなわず、第I工程で得られた炭素繊維Aをそのまま用いて界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSが18MPaであり、接着性が不十分であることが確認された。結果を表1に示す。
(比較例2)
・第Iの工程:(A)成分を付着させる前の炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:(A)成分のかわりに(C)成分を第Iの工程で得られた炭素繊維に付着させる工程
実施例1の第IIの工程で、(A)成分のかわりに(C)成分として、(C−1)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で(C−1)が付着した炭素繊維を得た。(C)成分の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して、0.1質量部であった。得られた炭素繊維を用いて界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSが20MPaであり、接着性が不十分であることが確認された。結果を表1に示す。
表1に示した実施例1〜12および比較例1、2の結果から、次のことが明らかである。すなわち、実施例1〜12の(A)成分が付着された炭素繊維は、比較例1の(A)成分が付着されていない炭素繊維、(A)成分以外の(C)成分が付着された炭素繊維に比べて、界面剪断強度(IFSS)が高く界面接着性に優れている。
(実施例13)
・第Iの工程:本発明で用いられる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:(A)、(B)成分を第Iの工程で得られた炭素繊維に付着させる工程
(A−1)と前記の(B−1)を質量比3:97で混合し、さらにアセトンを混合し、(A−1)、(B−1)成分が均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このアセトン溶液を用い、浸漬法により、(A−1)、(B−1)を表面処理された炭素繊維Aに塗布した後、210℃の温度で150秒間熱処理をして、(A)、(B)成分が付着された炭素繊維を得た。付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調製した。続いて、得られた炭素繊維を用いて界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSが40MPaであり、接着性が十分に高いことが確認された。結果を表2に示す。
(実施例14〜20)
・第Iの工程:本発明で用いられる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:(A)、(B)成分を第Iの工程で得られた炭素繊維に付着させる工程
実施例13の第IIの工程で、(A−1)を(A−2)〜(A−8)に変更した以外は、実施例13と同様の方法で(A)、(B)成分が付着された炭素繊維を得た。付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して、いずれも1質量部であった。続いて、得られた炭素繊維を用いて界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSが40〜44MPaであり、接着性が十分に高いことが確認された。結果を表2に示す。
(実施例21、22)
・第Iの工程:本発明で用いられる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:(A)、(B)成分を第Iの工程で得られた炭素繊維に付着させる工程
実施例15の第IIの工程で、(A−3)と(B−1)の質量比を0.5:99.5、または15:85で混合した以外は、実施例15と同様の方法で(A)、(B)成分が付着された炭素繊維を得た。付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して、いずれも1質量部であった。続いて、得られた炭素繊維を用いて界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSが41、42MPaであり、接着性が十分に高いことが確認された。結果を表2に示す。
表1に示した実施例1〜12、および表2に示した実施例13〜22の結果から、次のことが明らかである。すなわち、実施例13〜22の(A)、(B)成分が付着された炭素繊維は、実施例1〜12の(A)成分のみが付着された炭素繊維に比べて、界面剪断強度(IFSS)が高く界面接着性に優れている。
(実施例23)
・第Iの工程:本発明で用いられる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:(A)、(B)成分を第Iの工程で得られた炭素繊維に付着させる工程
(A−3)と前記の(B−2)を質量比3:97で混合し、さらにアセトンを混合し、(A−3)、(B−2)が均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このアセトン溶液を用い、浸漬法により、(A−3)、(B−2)を表面処理された炭素繊維Aに塗布した後、210℃の温度で150秒間熱処理をして、(A)、(B)成分が付着された炭素繊維を得た。付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調製した。続いて、得られた炭素繊維を用いて界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSが42MPaであり、接着性が十分に高いことが確認された。結果を表3に示す。
(実施例24〜28)
・第Iの工程:本発明で用いられる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:(A)、(B)成分を第Iの工程で得られた炭素繊維に付着させる工程
実施例23の第IIの工程で、(B−2)を(B−3)〜(B−7)に変更した以外は、実施例23と同様の方法で(A)、(B)成分が付着された炭素繊維を得た。付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して、いずれも1質量部であった。続いて、得られた炭素繊維を用いて界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSが31〜41MPaであり、接着性が十分に高いことが確認された。結果を表3に示す。
表3に示した実施例23〜28、および表1に示した実施例3の結果から、次のことが明らかである。すなわち、実施例23〜28の(A)、(B)成分が付着された炭素繊維は、実施例3の(A)成分のみが付着された炭素繊維に比べて、界面剪断強度(IFSS)が高く界面接着性に優れている。
(実施例29)
・第Iの工程:本発明で用いられる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:(A)、(B)成分を第Iの工程で得られた炭素繊維に付着させる工程
(A−1)と(B−8)を質量比3:97で混合し、さらにアセトンを混合し、(A−1)、(B−8)が均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このアセトン溶液を用い、浸漬法により、(A−1)、(B−8)を表面処理された炭素繊維Aに塗布した後、210℃の温度で150秒間熱処理をして、(A)、(B)成分が付着された炭素繊維を得た。付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調製した。続いて、得られた炭素繊維を用いて界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSが35MPaであり、接着性が十分に高いことが確認された。結果を表4に示す。
(実施例30、31)
・第Iの工程:本発明で用いられる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:(A)、(B)成分を第Iの工程で得られた炭素繊維に付着させる工程
実施例29の第IIの工程で、(B−8)を(B−9)、(B−10)に変更した以外は、実施例29と同様の方法で(A)、(B)成分が付着された炭素繊維を得た。付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して、いずれも1質量部であった。続いて、得られた炭素繊維を用いて界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSが33、32MPaであり、接着性が十分に高いことが確認された。結果を表4に示す。
(実施例32)
・第Iの工程:本発明で用いられる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:(A)、(B)成分を第Iの工程で得られた炭素繊維に付着させる工程
(A−7)と前記の(B−8)を質量比3:97で混合し、さらにアセトンを混合し、(A−7)、(B−8)が均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このアセトン溶液を用い、浸漬法により、(A−7)、(B−8)を表面処理された炭素繊維Aに塗布した後、210℃の温度で150秒間熱処理をして、(A)、(B)成分が付着された炭素繊維を得た。付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調製した。続いて、得られた炭素繊維を用いて界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSが37MPaであり、接着性が十分に高いことが確認された。結果を表4に示す。
(実施例33、34)
・第Iの工程:本発明で用いられる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:(A)、(B)成分を第Iの工程で得られた炭素繊維に付着させる工程
実施例32の第IIの工程で、(B−8)を(B−9)、(B−10)に変更した以外は、実施例32と同様の方法で(A)、(B)成分が付着された炭素繊維を得た。付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して、いずれも1質量部であった。続いて、得られた炭素繊維を用いて界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSがいずれも35MPaであり、接着性が十分に高いことが確認された。結果を表4に示す。
(実施例35)
・第Iの工程:本発明で用いられる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:(A)、(B)成分を第Iの工程で得られた炭素繊維に付着させる工程
(A−8)と前記の(B−8)を質量比3:97で混合し、さらにアセトンを混合し、(A−8)、(B−8)が均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このアセトン溶液を用い、浸漬法により、(A−8)、(B−8)成分を表面処理された炭素繊維Aに塗布した後、210℃の温度で150秒間熱処理をして、(A)、(B)成分が付着された炭素繊維を得た。付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調製した。続いて、得られた炭素繊維を用いて界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSが36MPaであり、接着性が十分に高いことが確認された。結果を表4に示す。
(実施例36、37)
・第Iの工程:本発明で用いられる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:(A)、(B)成分を第Iの工程で得られた炭素繊維に付着させる工程
実施例35の第IIの工程で、(B−8)を(B−9)、(B−10)に変更した以外は、実施例35と同様の方法で(A)、(B)成分が付着された炭素繊維を得た。付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して、いずれも1質量部であった。続いて、得られた炭素繊維を用いて界面剪断強度(IFSS)を測定した結果、IFSSが36、33MPaであり、接着性が十分に高いことが確認された。結果を表4に示す。
表4に示した実施例29〜37、および表1に示した実施例1、7、8の結果から、次のことが明らかである。すなわち、実施例29〜37の(A)、(B)成分が付着された炭素繊維は、実施例1、7、8の(A)成分のみが付着された炭素繊維に比べて、界面剪断強度(IFSS)が高く界面接着性に優れている。