JP5898017B2 - アルコール製造方法 - Google Patents
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Description
一方、発酵によるバイオアルコールの製造方法としては、上述したような方法が試みられているが、バイオアルコールの発酵生産から回収までの一連のプロセスとしては、発酵液からブタノールを効率的に回収できる製造プロセスとするための改良の余地があった。
また本発明は、前記工程(B)は、水と前記抽出に用いた溶媒とを精密濾過膜を用いて分離する操作を含むことを特徴とする上記アルコール製造方法である。
なお、以下において記載される本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の好ましい形態である。
本発明のアルコール製造方法において、工程(A)は、糖質を含む原料から発酵によりブタノール含有溶液を調製し、該ブタノール含有溶液から溶媒を用いた抽出によりブタノール抽出液を回収する工程である。
上記発酵工程において、上記ブタノール含有溶液には、ブタノールが含まれている限り、その他のアルコールが含まれていてもよい。通常、当該ブタノール含有溶液には、ブタノールを含むアルコール成分が含まれ、更にはケトン成分も含まれている場合もある。
なお、上記ブタノールとしては、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等が挙げられ、好ましくは1−ブタノール、イソブチルアルコールである。
また、発酵工程としては、発酵によりブタノール含有溶液を調製することができれば、菌体の種類や、原料、培地成分の組成、菌体の培養方法は、通常、発酵によるアルコール生産の分野で用いられているものを用いることができる。
上記炭素源としては、例えば、でんぷん、デキストリン、シクロデキストリン、セルロース等の多糖類;グルコース、ガラクトース、フラクトース、 キシロース等の単糖類;スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース等の二糖類;ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース等の三糖類;フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖等のオリゴ糖類等の糖質が挙げられる。なお、上記糖質と共に、ソルビトール、グリセロール等の糖アルコール類;フマル酸、クエン酸、コハク酸、酪酸、酢酸等の有機酸類等とを併用して用いることもできる。
なお、ここで言う「グルコースを含んでいる」とは、グルコースそのものを含んでいる形態であってもよいし、グルコースを構成単位として有する糖質を含んでいる形態であってもよい。
上記グルコースを構成単位として有する糖質としては、でんぷん、デキストリン、シクロデキストリン、セルロース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース、フラクトオリゴ糖、ガラクオリゴ糖、マンナンオリゴ糖等が挙げられ、好ましくはでんぷん、セルロース、スクロース、ラクトース、マルトース、セロビオースである。
上記バイオマスの糖化液は、グルコースやキシロース以外に、二糖、三糖、オリゴ糖及び多糖類等の糖質を含むが、炭素源として用いる場合、発酵中の代謝により、グルコースやキシロース等の単糖を経由してバイオアルコールが生成されることとなる。
上記無機イオンとしては、例えば、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が挙げられる。
上記有機微量栄養素としては、例えば、ビオチン、ビタミンB1等の要求物質、p−アミノ安息香酸、酵母エキス等が挙げられる。
培養時間は、バッチ培養では、好ましくは5〜100時間、より好ましくは5〜50時間、更に好ましくは10〜50時間であり、連続培養では、好ましくは200時間以上、より好ましくは500時間以上、更に好ましくは1000時間以上である。培養温度は、好ましくは15〜60℃、より好ましくは25〜40℃である。培養中のpHは、特に調整する必要はないが、調整する場合には、好ましくは3〜8、より好ましくは5〜7である。pHを調整する際には、例えば、無機の酸性物質、無機のアルカリ性物質、有機の酸性物質、有機のアルカリ性物質、アンモニアガス等を使用することができる。
すなわち、本発明のアルコール製造方法が、発酵に用いる菌体とブタノール含有溶液とを分離し、菌体に対して原料を連続的に供給しながら行われることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、ここでいう「連続式」には、連続式により行うが、発酵槽中に菌の死骸が増えること等によりブタノール生産の効率が落ちてきた際は、一旦反応を止めて菌を新しい菌と交換する等の、反応を途中で止めるような反応方式も含まれるものである。連続式に用いられる発酵槽としては、単独式又は多段式が好ましい。
なお、抽出発酵法の場合、一定時間発酵させた後に全量抜出して回収工程へ移行させればバッチ式;原料を供給しながら発酵を一定時間継続した後に全量抜出せば半連続式;原料、抽出溶媒を供給させながら抽出相を抜出していけば連続式;になる。
なお、発酵液中のブタノール濃度は、菌体に対するブタノールの毒性の影響の点から、発酵液100質量%に対して、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜2質量%である。
上述のようにして得られたブタノール含有溶液から、溶媒を用いて、ブタノールを抽出する工程を、抽出工程ともいう。
上記抽出工程において、ブタノールを抽出するために用いる溶媒(抽出溶媒)は、水と相分離するものであれば、特に限定されないが、分離効率の点から、水への溶解度が1%以下のものが好ましい。また、上記抽出溶媒の種類は、特に限定されないが、上記発酵工程に用いられる菌体に対して無害であることが好ましい。
上記抽出溶媒としては、例えば、炭素数12〜22の脂肪族アルコール、炭素数12〜22の脂肪酸、炭素数12〜22の脂肪酸エステル、炭素数12〜22の脂肪族アルデヒド等が挙げられる。好ましくは炭素数12〜22の脂肪族アルコールである。また、当該抽出溶媒は、1種でも2種以上でも用いることができる。
上記炭素数12〜22の脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
上記炭素数12〜22の脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸メチル、オレイン酸メチル、クエン酸トリブチル等が挙げられる。
上記炭素数12〜22の脂肪族アルデヒドとしては、例えば、ラウリンアルデヒド、2−メチルウンデカナール等が挙げられる。
また、上記有機層と水層は、分液ロート、静置分離槽、遠心分離器等を用いて分離することができるが、特に限定されない。
このようにして、ブタノール抽出液を回収することができる。
次に、上記抽出工程により得られた水層に含まれる、水と抽出溶媒とを分離する工程(B)(以下、分離工程ともいう)、及び、上記分離工程により得られた抽出溶媒を回収し、回収した溶媒を工程(A)における発酵及び/又は抽出工程に戻す工程(C)について、説明する。
本発明のアルコール製造方法においては、当該工程(B)、(C)に特徴があり、中でも、上記のようにして抽出・分離して得た水層から、それに含まれる抽出溶媒を回収し、発酵及び/又は抽出工程に戻すことに特徴がある。
そこで、上記工程(B)、(C)を行うことにより、抽出溶媒のロスを防いで無駄なく利用することができる。そのため、本発明の製造方法を繰り返しても、一定量の抽出溶媒が常に発酵及び/又は抽出工程に存在するため、抽出溶媒の減少に伴うブタノール回収率の低下を抑制でき、発酵液からブタノールを効率的に回収することができる。
また、上記工程(B)、(C)を含む本発明の製造方法を用いると、ブタノールの希薄溶液からブタノールを回収するエネルギーを、蒸留等の分離技術と比べて、顕著に低減することができる。
当該膜としては、例えば、精密濾過膜(MF膜)、限外濾過膜(UF膜)、ナノ濾過膜(NF膜)、逆浸透膜(RO膜)等が挙げられる。また、低圧で当該工程を行うことができ、時間当たりの処理量が多い等の点から、特に好ましくは精密濾過膜である。
よって、工程(B)は、水と抽出溶媒とを精密濾過膜を用いて分離する操作を含むことが好ましい。
上記膜を使用して水層から抽出溶媒を回収する方法において、回収温度は、透水性、膜の耐久性の点から、好ましくは5〜90℃、より好ましくは10〜60℃である。
回収時の圧力は、エネルギー低減、菌体へのストレス低減の点から、好ましくは10〜6,000kPa、より好ましくは100〜1,000kPaである。
膜濾過形式は、膜を介して原液(非透過液側)から圧力をかけるだけのデットエンド形式と、原液を膜面に対して水平方向に流通させながら原液側に圧力をかけるクロスフロー形式とがあるが、いずれにも限定されない。透水性、膜の目詰まり緩和の点からクロスフロー形式が好ましい。
上記水層に含まれる抽出溶媒は、完全には水に溶解しておらず、エマルションを形成しているため、精密濾過膜を通過しない。なお、精密濾過膜は、通常は固形分を対象とした分離に用いられるものであり、当該膜で抽出溶媒を回収できることは、本発明者らが初めて見いだしたものである。
また、精密濾過膜を用いると、発酵に用いた菌体も同時に回収でき、菌体に与えるダメージも少ないものである。
上記精密濾過膜の形状としては、特に制限されず、平膜状、中空糸状、管状、スパイラル状、モノリス状等が挙げられ、中空糸状、管状、モノリス状が好ましい。
膜厚は、透水性、耐久性の点から、好ましくは0.01〜100μm、より好ましくは0.05〜50μmである。
上記精密濾過膜が有する孔径は、上記抽出溶媒を捕捉可能な孔径であれば特に限定されないが、透水性、透過選択性の点から、好ましくは0.01〜1μm、より好ましくは0.05〜0.5μmである。
上記限外濾過膜の形状としては、特に制限されず、平膜状、中空糸状、管状、スパイラル状、モノリス状等が挙げられ、中空糸状、管状、モノリス状が好ましい。
上記ナノ濾過膜の形状としては、特に制限されず、管状、袋状、中空糸状、平膜状、スパイラル状等が挙げられる。好ましくは中空糸状、平膜状、スパイラル状であり、より好ましくは中空糸状、スパイラル状である。
上記逆浸透膜の形状としては、管状、袋状、中空糸状、平膜状、スパイラル状等が挙げられる。好ましくは中空糸状、平膜状、スパイラル状であり、より好ましくは中空糸状、スパイラル状である。
また、回収した菌体は、工程(A)における発酵工程に戻して再利用することができる。更に、上記水層から抽出溶媒及び菌体を回収後の残渣(主に水)は、一部又は全て廃棄する。
なお、当該残渣には培地成分が含まれることもあり、培地成分は発酵工程に循環させて再利用してもよい。また、発酵工程に循環させる際、発酵工程に戻す前にその一部をパージして(取り除いて)、発酵に使用する液量を調節することが必要である。
本発明の製造方法においては、上記工程(A)、(B)、(C)が含まれる限り、他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、蒸留工程、脱水工程等が挙げられる。
上記回収されるブタノールは、蒸留操作を経て回収される際、通常では他の成分との混合溶液として回収されることとなる。
この場合のブタノール溶液のブタノール濃度としては、20質量%以上であることが好ましい。このような濃度で回収することができれば、更なるブタノール精製過程へ供するにも好適である。回収工程により回収されるブタノール溶液のブタノール濃度は、より好ましくは25質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上である。
蒸留を行う際の還流比及び蒸留塔の理論段数は、通常実施される範囲で行うことができ、特に制限されない。蒸留を行う際の還流比としては、好ましくは0.01〜30、より好ましくは0.1〜20、更に好ましくは0.5〜10である。用いる蒸留塔の理論段数としては、好ましくは1〜50段、より好ましくは5〜45段、更に好ましくは10〜40段である。
本明細書において、蒸留塔を用いて蒸留操作を行う場合における蒸留温度とは、塔底部温度(ボトム温度)を意味するものとする。
なお、ブタノール留出操作及び軽沸除去操作を実施する順序は、特に制限されないが、ブタノール留出操作を行った後に、軽沸除去操作を行う方が好ましい。
すなわち、本発明の製造方法が、発酵によりアルコール成分、又は、アルコール成分及びケトン成分を生成し、上記蒸留操作が、ブタノール留出操作及び軽沸除去操作を含み、当該ブタノール留出操作によって抽出溶媒以外のアルコール成分、又は、抽出溶媒以外のアルコール成分及びケトン成分を留出させ、当該軽沸除去操作によってブタノール以外のアルコール成分、又は、ブタノール以外のアルコール成分及びケトン成分を除去することもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
中でも、蒸留塔を用いてブタノール留出操作を行う場合は、塔頂部からブタノール、エタノール等のアルコール成分、又は、当該アルコール成分及びアセトン等のケトン成分を留出させ、塔底部(蒸留ボトム)から主に抽出溶媒を抜き出す。そして、塔底部から抜き出された抽出溶媒を、発酵工程及び/又は抽出工程に戻す。
中でも、蒸留塔を用いて軽沸除去操作を行う場合は、塔頂部からエタノール等のブタノール以外のアルコール成分、又は、当該ブタノール以外のアルコール成分及びアセトン等のケトン成分を留出させ、塔底部からブタノール及び水を抜き出し、取得することとなる。
なお、ブタノールと水とを含む溶液は、ブタノール濃度が8〜80質量%の範囲では、水とブタノールが相分離して2相を形成するため、軽沸除去操作により得られた、ブタノール及び水を含むブタノール溶液が2相を形成する場合には、その油相を得ることによりブタノール画分を得ることができる。
上記浸透気化膜の材質としては、例えば、親水性ゼオライト等の無機物、ポリビニルアルコール等の有機物等が挙げられる。耐久性、水透過選択性の観点から、親水性ゼオライトが好ましい。
上記浸透気化膜の形状としては、特に制限されず、平膜状、中空糸状、管状、モノリス状等が挙げられ、管状、モノリス状が好ましい。
また、上記浸透気化膜を透過した水は、廃棄してもよいし、発酵工程に循環させて再利用してもよい。発酵工程に循環させる場合は、発酵工程に戻す前にその一部をパージして発酵槽中の液量を調節することができる。
このように、本発明のアルコール製造方法としては、原料からブタノール含有溶液を調製した後、抽出操作、蒸留操作及び脱水操作がこの順に行われることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
まず、発酵槽(2)に原料(1)及び菌体、抽出溶媒を投入して、発酵工程(A)を開始する。一定時間後、発酵槽の中の発酵溶液及び抽出溶媒を油水分離槽(3)へ移し、水層と有機層に分離する。得られた水層を精密濾過膜(4)で処理し、回収された菌体及び抽出溶媒を発酵槽(2)に戻し、精密濾過膜(4)を透過した透過液(抽出溶媒を含まない水)を廃水(7)する。また、得られた有機層を、蒸留塔(5)に供し、蒸留操作を行う(ブタノール留出)。この蒸留操作により、塔頂部からブタノールが留出し、ブタノール(8)を回収する。また、塔底部から抽出溶媒(6)を抜き出し、発酵槽(2)に戻す。
まず、発酵槽(2)に原料(1)及び菌体を投入して、発酵工程(A)を開始する。一定時間後、発酵槽の中の発酵溶液を抽出槽(3’)へ移し、更に抽出溶媒を抽出槽(3’)に加えた後、水層と有機層に分離する。得られた水層を精密濾過膜(4)で処理し、回収された抽出溶媒を抽出槽(3’)に戻し、精密濾過膜(4)を透過した透過液(抽出溶媒を含まない水)の一部を発酵槽(2)に戻し、残りの透過液を廃水(7)する。また、得られた有機層を、蒸留塔(5)に供し、蒸留操作を行う(ブタノール留出)。この蒸留操作により、塔頂部からブタノールが留出し、ブタノール(8)を回収する。また、塔底部から抽出溶媒(6)を抜き出し、抽出槽(3’)に戻す。
なお、上記各プロセスは、本発明のアルコール製造方法の具体例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
グルコース、1−ブタノール、アセトン、エタノールの分析は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で実施した。使用カラムはBio−rad社製のHPX−87H(長さ:300mm、内径:7.5mm)で、カラム温度20℃で分析した。溶離液は5mM硫酸を使用し、流速0.5ml/minで分析した。検出器は示差屈折率検出器を使用した。
オレイルアルコールの分析は、ガスクロマトグラフィー(GC)で実施した。使用カラムは、SUPELCOWAX−10(長さ60m、内径0.25mm)で、カラム温度220℃で分析した。
(1)培養
クロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカムATCC27021株を、簡易的にねじ口瓶(容量1000mL)にて、抽出溶媒のオレイルアルコールを重層した状態(オレイルアルコールを加え、水層の上にオレイルアルコール層がある状態)で培養し、ブタノール発酵を実施した。培養は、シード培養、本培養と順次スケールを大きくし、実施した。
培養培地の調製には以下の化学物質を使用した(1リットルあたりの量)。
1:Tryptone、Bacto(Difco社製) 6g
2:Yeast Extract、Bacto(Difco社製) 2g
3:D−グルコース 40g
4:酢酸アンモニウム 3g
5:MgSO4・7H2O 0.3g
6:KH2PO4 0.5g
7:FeSO4・7H2O 0.01g
(上記化学物質1〜7は、いずれも分析用試薬を用いた。)
上記培養培地の成分を1L分ビーカーに量りとり、水を加えて溶解後、116℃、15分間のオートクレーブ滅菌を実施した。この培地をあらかじめ121℃、15分間のオートクレーブ滅菌しておいた15mL容ネジ口試験管に5mL分注した。この試験管に、ストックしてあるクロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカムATCC27021株を無菌的に接種した。嫌気装置内で30℃、18時間インキュベートした。18時間後の培養液の660nmでの吸光度(OD660)は4程度であった。
○本培養
上記で作製した培地500mLを、あらかじめ121℃、15分間のオートクレーブ滅菌しておいた1000mL容ねじ口瓶に分注し、その後、シード培養液3mLを無菌的に接種し、30℃でゆるやかに撹拌し、660nmでの吸光度が1程度になるまで約6時間培養した。その後、抽出溶媒としてオレイルアルコール200mLを分注し、30℃でゆるやかに撹拌しながらの培養を48時間継続した。
培養終了後、オレイルアルコール層及び水層を分液ロートにより分離した。各層について、HPLC及びGCにて液組成分析を行った。水層(全量500ml)には、オレイルアルコールが5,000ppm含まれていた。
分離して得たオレイルアルコール層の単蒸留を行い、塔頂部から1−ブタノール、アセトン、エタノールを留出させ、塔底部からオレイルアルコールを抜き出した。
蒸留留出工程で取得した留出液は、一度クッションタンク内にためる事で、下記組成に平均化させた。前記の通り平均化させた蒸留留出工程の留出液の単蒸留を行い、塔頂部に主にアセトン、エタノールを留出させ、塔底部より1−ブタノール、水を取得した。取得した塔底液は、2相を形成していたため、その油相を取得した。結果、塔底液油相を1.3kg取得した。
蒸留仕込み液組成:1−ブタノール30質量%、アセトン12質量%、エタノール0.6質量%
軽沸除去工程で取得した塔底液油相300gを500mlのフラスコに入れた。上記の液(塔底液油相の液)に、長さ4cm、有効膜面積11cm2の浸透気化膜を入れて、脱水を行った。フラスコ内は還流条件で脱水を行い、内温95〜116℃の間で行った。浸透気化法であるため、透過側を減圧に引く必要があるが、透過側の圧力を2.7kPaで脱水した。結果、1−ブタノール濃度99%の液を231g取得した(回収率97%)。
ブタノール回収工程で取得した水層の内、100mlを精密濾過膜から透過させて廃棄した。その結果、6,250ppmのオレイルアルコールを含む回収液400mlを取得した。この回収液と下記の濃縮培地を混合したものを本培養液として用い、ブタノール回収工程にて、塔底部より回収したオレイルアルコールを重層させる以外は、上記(1)と同様の手法にて培養を繰り返した。その結果を表1に示す。
○(濃縮培地)組成:
1:Tryptone、Bacto(Difco社製) 30g/L
2:Yeast Extract,Bacto(Difco社製) 10g/L
3:D−グルコース 200g/L
4:酢酸アンモニウム 15g/L
5:MgSO4・7H2O 1.5g/L
6:KH2PO4 2.5g/L
7:FeSO4・7H2O 0.05g/L
○作成法
3番のD−グルコースを除いて、1〜7番の成分を1L分ビーカーに量りとり、水を加えて溶解後、600mLまでメスアップして、121℃、15分間のオートクレーブ滅菌を実施した。続いて、この液が60℃程度まで冷えてから、あらかじめ121℃、15分間のオートクレーブ滅菌をしておいた50%のD−グルコース水溶液400mLを、安全キャビネット内で無菌的に加えた(終濃度200g/Lになった)。
(1)培養
実施例1の(1)と同様に培養を行った。
(2)ブタノール回収工程
培養終了後、オレイルアルコール層及び水層を分離し、分離した水層を全量(500ml)廃棄した。廃棄した水層には5,000ppmのオレイルアルコールが含まれていた。
分離したオレイルアルコール層から、実施例1の(2)と同様に蒸留・脱水を行い、ブタノールを回収した。
また、蒸留後、塔底よりオレイルアルコール197mlを回収した。
(3)培養繰り返し
抽出溶媒として、上記ブタノール回収工程の蒸留塔底部より回収したオレイルアルコールを用いる以外は、実施例1の(1)と同様の手法を用いて培養を繰り返し行った。その結果を表2に示す。
(1)培養
実施例1の(1)と同様に培養を行った。
(2)ブタノール回収工程
実施例1の(2)と同様にブタノール回収工程を行った。
(3)培養繰り返し
ブタノール回収工程で取得した水層(全量500ml)の内、100mlを廃棄した。廃水中にはオレイルアルコールが5,000ppm含まれており、その分オレイルアルコールはロスされた。残り400ml(5,000ppmのオレイルアルコールを含む)と、実施例1(3)記載の濃縮培地を混合したものを本培養液として用いた以外は、実施例1(3)と同様の手法にて培養繰り返しを実施した。その結果を表3に示す。
実施例1では、オレイルアルコールの減少を極僅かに抑えることで、高い1−ブタノール回収率を維持することが可能となった。比較例1では、培養を繰り返す度に、オレイルアルコールが減少していき、更に1−ブタノール回収率低下が見られた。比較例2では、比較例1と比較するとオレイルアルコール減少は改善されたが、培養繰り返し数が増えるにつれ、1−ブタノール回収率低下が見られた。
なお、上記実施例1、比較例2の結果において、1−ブタノールの初期総量が増加するのは、抽出後の水層に含まれる1−ブタノールのそれぞれ80質量%が、次バッチに追加されるためである。また、1−ブタノールの終盤総量が低下するのは、被毒物質の蓄積等でブタノール生産能力が低下するためである。
糖質を含む原料から発酵によりアルコールを製造する方法において、この原料から発酵によりブタノール含有溶液を調製し、このブタノール含有溶液から溶媒を用いた抽出によりブタノール抽出液を回収し、且つ、上記抽出溶媒を回収し、これを発酵及び/又は抽出工程に戻すことを行った実施例1では、抽出溶媒を無駄なく利用できる上、上記製造工程を繰り返しても一定量の抽出溶媒が常に存在するため、抽出溶媒の減少に伴うブタノール回収率の低下を抑制でき、発酵液からブタノールを効率的に回収することができた。それに対して、抽出後、廃水に含まれる抽出溶媒の回収を行わなかった比較例1、2においては、発酵液からブタノールを効率的に回収することができなかった。
なお、上記実施例においては、発酵によるブタノール製造における、発酵工程から脱水工程までの一連のプロセスに関して、特定のプロセスを実施した例が示されているが、回収した抽出溶媒を発酵及び/又は抽出工程に戻す工程を行うことにより、発酵液からブタノールを効率的に回収することができるという作用機序は、全ての形態において同様であることから、上記実施例、比較例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができると言える。
2:発酵槽
3:油水分離槽
3’:抽出槽
4:精密濾過膜
5:蒸留塔
6:抽出溶媒
7:廃水
8:ブタノール
Claims (2)
- 糖質を含む原料から発酵によりアルコールを製造する、アルコール製造方法であって、
該製造方法は、糖質を含む原料から発酵によりブタノール含有溶液を調製し、該ブタノール含有溶液から溶媒を用いた抽出によりブタノール抽出液を回収する工程(A)を含み、
該抽出により得られた水層に含まれる、水と該抽出に用いた溶媒とを分離する工程(B)を含み、且つ、
該分離により得られた、該抽出に用いた溶媒を回収し、回収した溶媒を工程(A)における発酵及び/又は抽出工程に戻す工程(C)を含む
ことを特徴とするアルコール製造方法。 - 前記工程(B)は、水と前記抽出に用いた溶媒とを精密濾過膜を用いて分離する操作を含むことを特徴とする請求項1に記載のアルコール製造方法。
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