JP5898017B2 - アルコール製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルコール製造方法に関する。より詳しくは、発酵により糖質を含む原料からアルコールを製造する方法に関する。
発酵によるアルコールの製造は、古くから研究の行われていた分野であるが、特に発酵によりバイオエタノールやバイオブタノールを製造する技術は、世界全体の地球環境意識の高まりや原油価格の高騰等を背景に、石油資源の消費を抑え、二酸化炭素の排出量を低減して、持続可能な(サスティナブルな)燃料や工業原料を生産することができる技術として近年再び注目を集めている。
従来検討されている発酵によるバイオアルコールの製造方法としては、例えば、a)ブタノール、水、及び少なくとも1つの発酵性炭素源を含む発酵培地からブタノールを生産する遺伝子組換え微生物を含む発酵培地を備えるステップと、b)発酵培地を、(i)第1の水不混和性有機抽出剤、及び場合により(ii)第2の水不混和性有機抽出剤と接触させ、水相及びブタノール含有有機相を含む二相混合物を形成させるステップと、c)ブタノール含有有機相を水相から分離するステップと、d)ブタノールをブタノール含有有機相から回収して回収ブタノールを生産するステップを含む、発酵培地からブタノールを回収するための方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
特表2011−522543号公報
ブタノールはそれ自体の毒性が強いため、発酵液中のブタノール濃度を高くすることはできない。また、発酵で得られるブタノール水溶液は非常に希薄で、ブタノール濃度は1〜2質量%程度にしかならない。そのため、発酵液からブタノールを効率的に回収することが大きな課題であった。
一方、発酵によるバイオアルコールの製造方法としては、上述したような方法が試みられているが、バイオアルコールの発酵生産から回収までの一連のプロセスとしては、発酵液からブタノールを効率的に回収できる製造プロセスとするための改良の余地があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、糖質を含む原料から発酵によりアルコールを製造する方法において、発酵液からブタノールを効率的に回収することができるアルコール製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、糖質を含む原料から発酵によりアルコールを製造する方法について、種々検討を行った結果、糖質を含む原料から発酵によりブタノール含有溶液を調製し、該ブタノール含有溶液から溶媒を用いた抽出によりブタノール抽出液を回収し、且つ、該抽出に用いた溶媒を分離・回収し、これを発酵工程及び/又は抽出工程に戻すことにより、抽出溶媒のロスを防いで無駄なく利用することができ、それにより、上記製造工程を繰り返しても一定量の抽出溶媒が常に存在するため、抽出溶媒の減少に伴うブタノール回収率の低下を抑制でき、発酵液からブタノールを効率的に回収することができることを見出した。また、精密濾過膜を用いて上記抽出に用いた溶媒を回収することにより、発酵液からブタノールをより効率的に回収することができることも見出した。そして、このようなアルコール製造方法により、上記課題を見事に解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、糖質を含む原料から発酵によりアルコールを製造する、アルコール製造方法であって、該製造方法は、糖質を含む原料から発酵によりブタノール含有溶液を調製し、該ブタノール含有溶液から溶媒を用いた抽出によりブタノール抽出液を回収する工程(A)を含み、該抽出により得られた水層に含まれる、水と該抽出に用いた溶媒とを分離する工程(B)を含み、且つ、該分離により得られた、該抽出に用いた溶媒を回収し、回収した溶媒を工程(A)における発酵及び/又は抽出工程に戻す工程(C)を含むことを特徴とするアルコール製造方法である。
また本発明は、前記工程(B)は、水と前記抽出に用いた溶媒とを精密濾過膜を用いて分離する操作を含むことを特徴とする上記アルコール製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載される本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の好ましい形態である。
本発明のアルコール製造方法は、糖質を含む原料から発酵によりブタノール含有溶液を調製し、該ブタノール含有溶液から溶媒を用いた抽出によりブタノール抽出液を回収する工程(A)を含み、該抽出により得られた水層に含まれる、水と該抽出に用いた溶媒とを分離する工程(B)を含み、且つ、該分離により得られた、該抽出に用いた溶媒を回収し、回収した溶媒を工程(A)における発酵及び/又は抽出工程に戻す工程(C)を含むものであるが、当該工程(A)、(B)、(C)が含まれる限り、その他の工程を含んでいてもよい。具体的には、後述するように、蒸留工程、脱水工程等を含んでいてもよい。
<工程(A)>
本発明のアルコール製造方法において、工程(A)は、糖質を含む原料から発酵によりブタノール含有溶液を調製し、該ブタノール含有溶液から溶媒を用いた抽出によりブタノール抽出液を回収する工程である。
工程(A)において、糖質を含む原料から発酵によりブタノール含有溶液を調製する工程を、発酵工程ともいう。
上記発酵工程において、上記ブタノール含有溶液には、ブタノールが含まれている限り、その他のアルコールが含まれていてもよい。通常、当該ブタノール含有溶液には、ブタノールを含むアルコール成分が含まれ、更にはケトン成分も含まれている場合もある。
なお、上記ブタノールとしては、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等が挙げられ、好ましくは1−ブタノール、イソブチルアルコールである。
また、発酵工程としては、発酵によりブタノール含有溶液を調製することができれば、菌体の種類や、原料、培地成分の組成、菌体の培養方法は、通常、発酵によるアルコール生産の分野で用いられているものを用いることができる。
上記発酵工程に用いられる菌体としては、例えば、クロストリジウム・ベージェリンキー(Clostridium beijerinckii)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム(Clostridium saccharoperbutylacetonicum)、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butylicum)等の嫌気性菌のクロストリジウム属微生物;ブタノール代謝遺伝子を大腸菌、酵母又は枯草菌等に組み換えた発酵菌株;変異処理により収率が向上した発酵菌株;ブタノール耐性を高めた発酵菌株等が挙げられる。これらの中でも、クロストリジウム・ベージェリンキー、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカムが好ましい。
上記発酵工程に用いられる培地成分としては、特に限定されないが、通常、炭素源、窒素源及び無機イオンを含むものが用いられる。また必要に応じて、更に有機微量栄養素を用いることが好ましい。
上記炭素源としては、例えば、でんぷん、デキストリン、シクロデキストリン、セルロース等の多糖類;グルコース、ガラクトース、フラクトース、 キシロース等の単糖類;スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース等の二糖類;ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース等の三糖類;フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖等のオリゴ糖類等の糖質が挙げられる。なお、上記糖質と共に、ソルビトール、グリセロール等の糖アルコール類;フマル酸、クエン酸、コハク酸、酪酸、酢酸等の有機酸類等とを併用して用いることもできる。
本発明における原料は、上記糖質を含む原料であればよい。そして、上記炭素源としては、1種の糖質を用いてもよいし、2種以上の糖質を併用してもよく、また、糖質以外の炭素源を1種又は2種以上併用しても構わない。中でも、本発明における糖質を含む原料としては、グルコースを含んでいることが好ましい。
なお、ここで言う「グルコースを含んでいる」とは、グルコースそのものを含んでいる形態であってもよいし、グルコースを構成単位として有する糖質を含んでいる形態であってもよい。
上記グルコースを構成単位として有する糖質としては、でんぷん、デキストリン、シクロデキストリン、セルロース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース、フラクトオリゴ糖、ガラクオリゴ糖、マンナンオリゴ糖等が挙げられ、好ましくはでんぷん、セルロース、スクロース、ラクトース、マルトース、セロビオースである。
上記炭素源として、近年では地球環境への配慮から、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、でんぷん系バイオマスとセルロース系バイオマスに大別されるが、これらバイオマスを加水分解して得られる糖化液を原料としても良い。特にパーム油の原料である植物パームヤシは、東南アジアを中心に大量に生産されており、パームヤシ由来バイオマス(パームヤシ古木、パーム空果房、パーム油排水、パーム油絞り粕等)の利用が可能である。
上記バイオマスの糖化液は、グルコースやキシロース以外に、二糖、三糖、オリゴ糖及び多糖類等の糖質を含むが、炭素源として用いる場合、発酵中の代謝により、グルコースやキシロース等の単糖を経由してバイオアルコールが生成されることとなる。
上記窒素源としては、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩;酢酸アンモニウム等の有機アンモニウム塩;大豆加水分解物、アミノ酸等の有機窒素;アンモニアガス、アンモニア水等が挙げられる。
上記無機イオンとしては、例えば、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が挙げられる。
上記有機微量栄養素としては、例えば、ビオチン、ビタミンB1等の要求物質、p−アミノ安息香酸、酵母エキス等が挙げられる。
上記発酵工程における菌の培養条件を以下に例示する。クロストリジウム属微生物の培養は、通常、嫌気条件下で行われる。大腸菌、酵母、枯草菌等にブタノール代謝遺伝子を組み換えた発酵菌株では、菌株に合わせて好気条件、嫌気条件の両条件とも選択して実施できる。
培養時間は、バッチ培養では、好ましくは5〜100時間、より好ましくは5〜50時間、更に好ましくは10〜50時間であり、連続培養では、好ましくは200時間以上、より好ましくは500時間以上、更に好ましくは1000時間以上である。培養温度は、好ましくは15〜60℃、より好ましくは25〜40℃である。培養中のpHは、特に調整する必要はないが、調整する場合には、好ましくは3〜8、より好ましくは5〜7である。pHを調整する際には、例えば、無機の酸性物質、無機のアルカリ性物質、有機の酸性物質、有機のアルカリ性物質、アンモニアガス等を使用することができる。
本発明のアルコール製造方法において、発酵工程は、連続式、半連続式、バッチ式のいずれの方法でも行うことができるが、好ましくは連続式である。
すなわち、本発明のアルコール製造方法が、発酵に用いる菌体とブタノール含有溶液とを分離し、菌体に対して原料を連続的に供給しながら行われることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、ここでいう「連続式」には、連続式により行うが、発酵槽中に菌の死骸が増えること等によりブタノール生産の効率が落ちてきた際は、一旦反応を止めて菌を新しい菌と交換する等の、反応を途中で止めるような反応方式も含まれるものである。連続式に用いられる発酵槽としては、単独式又は多段式が好ましい。
また、本発明のアルコール製造方法においては、発酵と後述の抽出を同時に行う方法(抽出発酵法)と、発酵と後述の抽出を別々に行う方法とが挙げられるが、抽出発酵法を用いると、発酵液中の組成を一定に保つことができる。また、装置がシンプルになる等の点から、抽出発酵法が好ましい。
なお、抽出発酵法の場合、一定時間発酵させた後に全量抜出して回収工程へ移行させればバッチ式;原料を供給しながら発酵を一定時間継続した後に全量抜出せば半連続式;原料、抽出溶媒を供給させながら抽出相を抜出していけば連続式;になる。
なお、発酵液中のブタノール濃度は、菌体に対するブタノールの毒性の影響の点から、発酵液100質量%に対して、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜2質量%である。
次に、ブタノール含有溶液から溶媒を用いた抽出によりブタノール抽出液を回収する工程について説明する。
上述のようにして得られたブタノール含有溶液から、溶媒を用いて、ブタノールを抽出する工程を、抽出工程ともいう。
上記抽出工程において、ブタノールを抽出するために用いる溶媒(抽出溶媒)は、水と相分離するものであれば、特に限定されないが、分離効率の点から、水への溶解度が1%以下のものが好ましい。また、上記抽出溶媒の種類は、特に限定されないが、上記発酵工程に用いられる菌体に対して無害であることが好ましい。
上記抽出溶媒としては、例えば、炭素数12〜22の脂肪族アルコール、炭素数12〜22の脂肪酸、炭素数12〜22の脂肪酸エステル、炭素数12〜22の脂肪族アルデヒド等が挙げられる。好ましくは炭素数12〜22の脂肪族アルコールである。また、当該抽出溶媒は、1種でも2種以上でも用いることができる。
上記炭素数12〜22の脂肪族アルコールとしては、例えば、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。
上記炭素数12〜22の脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
上記炭素数12〜22の脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸メチル、オレイン酸メチル、クエン酸トリブチル等が挙げられる。
上記炭素数12〜22の脂肪族アルデヒドとしては、例えば、ラウリンアルデヒド、2−メチルウンデカナール等が挙げられる。
上記抽出溶媒の内、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸メチル、オレイン酸メチル、クエン酸トリブチル、ラウリンアルデヒド、2−メチルウンデカナール及びそれらの混合物が好ましい。また、上記発酵で用いる菌体に対して無害であり、抽出発酵に好適に用いることができる等の点から、特に好ましくは、オレイルアルコールである。
また、抽出時の温度は、抽出効率の点から、好ましくは0〜100℃、より好ましくは0〜90℃、更に好ましくは10〜80℃である。なお、抽出時の温度が100℃を超えると、常圧ではブタノール−水共沸が起こるおそれがある。
上記抽出工程を行うことにより、上述のようにして得られたブタノール含有溶液から、ブタノールを抽出溶媒層(有機層)に抽出することができる。これにより、ブタノール含有溶液を、有機層(つまりブタノール抽出液)と水層に分けることができる。
また、上記有機層と水層は、分液ロート、静置分離槽、遠心分離器等を用いて分離することができるが、特に限定されない。
このようにして、ブタノール抽出液を回収することができる。
<工程(B)、(C)>
次に、上記抽出工程により得られた水層に含まれる、水と抽出溶媒とを分離する工程(B)(以下、分離工程ともいう)、及び、上記分離工程により得られた抽出溶媒を回収し、回収した溶媒を工程(A)における発酵及び/又は抽出工程に戻す工程(C)について、説明する。
本発明のアルコール製造方法においては、当該工程(B)、(C)に特徴があり、中でも、上記のようにして抽出・分離して得た水層から、それに含まれる抽出溶媒を回収し、発酵及び/又は抽出工程に戻すことに特徴がある。
なお、アルコール製造方法においては、バッチ式、半連続式、連続式のいずれにおいても、バッチ毎又は逐次的に原料(グルコース水溶液等)を添加するため、系内の液量を一定に保つために、抽出で得られた水層等の廃棄が必要となる。しかし、当該水層には少量の抽出溶媒が含まれるため、水層からの溶媒回収をしなければ、抽出溶媒のロスは避けられないという問題がある。
そこで、上記工程(B)、(C)を行うことにより、抽出溶媒のロスを防いで無駄なく利用することができる。そのため、本発明の製造方法を繰り返しても、一定量の抽出溶媒が常に発酵及び/又は抽出工程に存在するため、抽出溶媒の減少に伴うブタノール回収率の低下を抑制でき、発酵液からブタノールを効率的に回収することができる。
また、上記工程(B)、(C)を含む本発明の製造方法を用いると、ブタノールの希薄溶液からブタノールを回収するエネルギーを、蒸留等の分離技術と比べて、顕著に低減することができる。
上記水層には少量の抽出溶媒が含まれるが、水層から抽出溶媒を回収する方法としては、例えば、膜を使用する方法等が挙げられる。
当該膜としては、例えば、精密濾過膜(MF膜)、限外濾過膜(UF膜)、ナノ濾過膜(NF膜)、逆浸透膜(RO膜)等が挙げられる。また、低圧で当該工程を行うことができ、時間当たりの処理量が多い等の点から、特に好ましくは精密濾過膜である。
よって、工程(B)は、水と抽出溶媒とを精密濾過膜を用いて分離する操作を含むことが好ましい。
上記膜を使用して水層から抽出溶媒を回収する方法において、回収温度は、透水性、膜の耐久性の点から、好ましくは5〜90℃、より好ましくは10〜60℃である。
回収時の圧力は、エネルギー低減、菌体へのストレス低減の点から、好ましくは10〜6,000kPa、より好ましくは100〜1,000kPaである。
膜濾過形式は、膜を介して原液(非透過液側)から圧力をかけるだけのデットエンド形式と、原液を膜面に対して水平方向に流通させながら原液側に圧力をかけるクロスフロー形式とがあるが、いずれにも限定されない。透水性、膜の目詰まり緩和の点からクロスフロー形式が好ましい。
上記精密濾過膜としては、水層から水と抽出溶媒とを分離することができれば、特に制限されず、通常の精密濾過膜を用いることができる。
上記水層に含まれる抽出溶媒は、完全には水に溶解しておらず、エマルションを形成しているため、精密濾過膜を通過しない。なお、精密濾過膜は、通常は固形分を対象とした分離に用いられるものであり、当該膜で抽出溶媒を回収できることは、本発明者らが初めて見いだしたものである。
また、精密濾過膜を用いると、発酵に用いた菌体も同時に回収でき、菌体に与えるダメージも少ないものである。
上記精密濾過膜の材質としては、例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア等のセラミック、ガラス、金属等の無機物;酢酸セルロース系、ニトロセルロース系、脂肪族ポリアミド系、ポリスルホン系、ポリエーテルスルホン系、ポリ塩化ビニル系、ポリビニルアルコール系、ポリフッ化ビニリデン系、ポリテトラフルオロエチレン系、ポリエチレン等の有機物;及び、それらを複合したもの等が挙げられる。好ましくは、セラミック、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンであり、特に好ましくは、ポリフッ化ビニリデンである。
上記精密濾過膜の形状としては、特に制限されず、平膜状、中空糸状、管状、スパイラル状、モノリス状等が挙げられ、中空糸状、管状、モノリス状が好ましい。
膜厚は、透水性、耐久性の点から、好ましくは0.01〜100μm、より好ましくは0.05〜50μmである。
上記精密濾過膜が有する孔径は、上記抽出溶媒を捕捉可能な孔径であれば特に限定されないが、透水性、透過選択性の点から、好ましくは0.01〜1μm、より好ましくは0.05〜0.5μmである。
上記精密濾過膜の具体例としては、例えば、以下のもの等が挙げられる。なお、これらは全て商品名によって表記される。Cefilt(日本ガイシ社製);マイクローザUシリーズ、マイクローザPシリーズ(旭化成ケミカルズ社製);ポアフロンSPMW、ポアフロンOPMW、ポアフロンPM(住友電工社製);トレフィル(東レ社製);NADIR MP005、NADIR MV020(マイクロダイン・ナディア社製);X−flow(Norit社製)等が挙げられる。これらの中で好ましくは、Cefilt、マイクローザUシリーズ、マイクローザPシリーズ、トレフィル、NADIR MV020である。
上記限外濾過膜としては、水層から水と抽出溶媒とを分離することができれば、特に制限されない。上記限外濾過膜の材質としては、例えば、セラミック、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
上記限外濾過膜の形状としては、特に制限されず、平膜状、中空糸状、管状、スパイラル状、モノリス状等が挙げられ、中空糸状、管状、モノリス状が好ましい。
上記ナノ濾過膜としては、水層から水と抽出溶媒とを分離することができれば、特に制限されない。上記ナノ濾過膜の材質としては、例えば、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリアミド、親水化ポリアミド、及び、それらを複合したもの等が挙げられる。好ましくは、芳香族ポリアミド、親水化ポリアミド、及び、それらを複合したものである。
上記ナノ濾過膜の形状としては、特に制限されず、管状、袋状、中空糸状、平膜状、スパイラル状等が挙げられる。好ましくは中空糸状、平膜状、スパイラル状であり、より好ましくは中空糸状、スパイラル状である。
上記逆浸透膜としては、水層から水と抽出溶媒とを分離することができれば、特に制限されない。上記逆浸透膜の材質としては、例えば、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリアミド、親水化ポリアミド、及び、それらを複合したもの等が挙げられる。好ましくは、芳香族ポリアミド、親水化ポリアミド、及び、それらを複合したものである。
上記逆浸透膜の形状としては、管状、袋状、中空糸状、平膜状、スパイラル状等が挙げられる。好ましくは中空糸状、平膜状、スパイラル状であり、より好ましくは中空糸状、スパイラル状である。
上記限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜の膜厚としては、特に限定されず、精密濾過膜の膜厚と同様であり、透水性、耐久性等の点から、好ましくは0.01〜100μm、より好ましくは0.05〜50μmである。
上述のようにして回収した抽出溶媒は、工程(A)における発酵及び/又は抽出工程に戻して再利用する。なお、抽出発酵法の場合は、菌体に無害である抽出溶媒を用いるため、回収した抽出溶媒は、発酵・抽出工程に戻すことができる。発酵と抽出を別々に行う方法で、菌体に無害である抽出溶媒を用いる場合は、回収した抽出溶媒は、発酵工程と抽出工程の両方に戻すことができる。また、発酵と抽出を別々に行う方法で、菌体に無害とはいえない抽出溶媒を用いる場合は、回収した抽出溶媒は、抽出工程に戻すことができる。
また、回収した菌体は、工程(A)における発酵工程に戻して再利用することができる。更に、上記水層から抽出溶媒及び菌体を回収後の残渣(主に水)は、一部又は全て廃棄する。
なお、当該残渣には培地成分が含まれることもあり、培地成分は発酵工程に循環させて再利用してもよい。また、発酵工程に循環させる際、発酵工程に戻す前にその一部をパージして(取り除いて)、発酵に使用する液量を調節することが必要である。
<他の工程>
本発明の製造方法においては、上記工程(A)、(B)、(C)が含まれる限り、他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、蒸留工程、脱水工程等が挙げられる。
上述のようにして得られた有機層は、更に蒸留工程に付すことが好ましい。
上記回収されるブタノールは、蒸留操作を経て回収される際、通常では他の成分との混合溶液として回収されることとなる。
この場合のブタノール溶液のブタノール濃度としては、20質量%以上であることが好ましい。このような濃度で回収することができれば、更なるブタノール精製過程へ供するにも好適である。回収工程により回収されるブタノール溶液のブタノール濃度は、より好ましくは25質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上である。
上記蒸留操作としては、ブタノールを回収することができれば通常用いられる手法により行うことができ、単独の蒸留塔又は多段の蒸留塔を用いて行う方法が好ましい。蒸留を行う際の圧力、温度共に、ブタノール含有溶液の組成等を考慮して、蒸留操作において通常実施される範囲で行うことができる。
蒸留を行う際の圧力としては、好ましくは0.05〜0.3MPa、より好ましくは0.07〜0.25MPa、更に好ましくは0.09〜0.2MPa、特に好ましくは0.1〜0.15MPaである。なお、後述するように、複数回の蒸留操作を組み合わせて行う場合には、少なくとも1つの蒸留操作が上記圧力範囲で行われることが好ましい。
蒸留を行う際の還流比及び蒸留塔の理論段数は、通常実施される範囲で行うことができ、特に制限されない。蒸留を行う際の還流比としては、好ましくは0.01〜30、より好ましくは0.1〜20、更に好ましくは0.5〜10である。用いる蒸留塔の理論段数としては、好ましくは1〜50段、より好ましくは5〜45段、更に好ましくは10〜40段である。
また、蒸留を行う際の温度(蒸留温度)としては、好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜120℃である。なお、後述するように、複数回の蒸留操作を組み合わせて行う場合には、少なくとも1つの蒸留操作が上記温度範囲で行われることが好ましい。
本明細書において、蒸留塔を用いて蒸留操作を行う場合における蒸留温度とは、塔底部温度(ボトム温度)を意味するものとする。
上記蒸留操作は、1回の蒸留操作により行ってもよいし、複数回の蒸留操作を組み合わせて行ってもよい。なお、複数回の蒸留操作を組み合わせて行う場合には、同一条件の蒸留を複数回行ってもよいし、異なる条件の蒸留を組み合わせて複数回蒸留を行う多段蒸留としてもよい。蒸留操作としては、多段蒸留が好ましい。
発酵工程により調製されるブタノール含有溶液には、ブタノールを含むアルコール成分が含まれているが(更にはケトン成分も含まれている場合もある)、このようなブタノール含有溶液からブタノールを回収するために、抽出溶媒にて抽出後、抽出溶媒以外のアルコール成分(ブタノール含有溶液にケトン成分も含まれている場合は、抽出溶媒以外のアルコール成分及びケトン成分)を留出させるブタノール留出操作、並びに、ブタノール以外のアルコール成分(ブタノール含有溶液にケトン成分も含まれている場合は、ブタノール以外のアルコール成分及びケトン成分)を除去する軽沸除去操作を含む多段蒸留を、蒸留操作として行うことが好ましい。
なお、ブタノール留出操作及び軽沸除去操作を実施する順序は、特に制限されないが、ブタノール留出操作を行った後に、軽沸除去操作を行う方が好ましい。
すなわち、本発明の製造方法が、発酵によりアルコール成分、又は、アルコール成分及びケトン成分を生成し、上記蒸留操作が、ブタノール留出操作及び軽沸除去操作を含み、当該ブタノール留出操作によって抽出溶媒以外のアルコール成分、又は、抽出溶媒以外のアルコール成分及びケトン成分を留出させ、当該軽沸除去操作によってブタノール以外のアルコール成分、又は、ブタノール以外のアルコール成分及びケトン成分を除去することもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記ブタノール留出操作としては、供されるブタノール抽出液に含まれる抽出溶媒以外のアルコール成分、又は、抽出溶媒以外のアルコール成分及びケトン成分を留出させることができるよう、通常用いられる蒸留の手法を用いて、適宜蒸留条件を設定することにより行うことができる。
中でも、蒸留塔を用いてブタノール留出操作を行う場合は、塔頂部からブタノール、エタノール等のアルコール成分、又は、当該アルコール成分及びアセトン等のケトン成分を留出させ、塔底部(蒸留ボトム)から主に抽出溶媒を抜き出す。そして、塔底部から抜き出された抽出溶媒を、発酵工程及び/又は抽出工程に戻す。
上記軽沸除去操作としては、ブタノール留出操作によって留出させた、抽出溶媒以外のアルコール成分、又は、抽出溶媒以外のアルコール成分及びケトン成分を含む溶液が供され、その供された溶液に含まれる、ブタノール以外のアルコール成分、又は、ブタノール以外のアルコール成分及びケトン成分を除去することができるよう、通常用いられる蒸留の手法を用いて適宜蒸留条件を設定することにより行うことができる。
中でも、蒸留塔を用いて軽沸除去操作を行う場合は、塔頂部からエタノール等のブタノール以外のアルコール成分、又は、当該ブタノール以外のアルコール成分及びアセトン等のケトン成分を留出させ、塔底部からブタノール及び水を抜き出し、取得することとなる。
なお、ブタノールと水とを含む溶液は、ブタノール濃度が8〜80質量%の範囲では、水とブタノールが相分離して2相を形成するため、軽沸除去操作により得られた、ブタノール及び水を含むブタノール溶液が2相を形成する場合には、その油相を得ることによりブタノール画分を得ることができる。
本発明のアルコール製造方法においては、回収工程によりブタノール及び水を含むブタノール溶液が回収されるが、回収されたブタノール溶液は、更に水を除去する精製過程へ供することができる。このように、本発明のアルコール製造方法が、更に脱水工程を含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記脱水工程は、回収工程により回収されたブタノール及び水を含むブタノール溶液から水を除去し、更にブタノール濃度の高いブタノール溶液を得ることができれば、その方法は特に制限されない。脱水方法としては、例えば、浸透気化膜(PV膜)を用いた脱水方法、共沸剤を用いた共沸蒸留による脱水方法、吸着剤を用いた脱水方法等が挙げられる。中でも、浸透気化膜を用いた脱水方法が、効率、製造コスト等の点から好ましい。
上記浸透気化膜としては、ブタノールは透過させないが、水は透過させることができるものであれば、特に限定されない。
上記浸透気化膜の材質としては、例えば、親水性ゼオライト等の無機物、ポリビニルアルコール等の有機物等が挙げられる。耐久性、水透過選択性の観点から、親水性ゼオライトが好ましい。
上記浸透気化膜の形状としては、特に制限されず、平膜状、中空糸状、管状、モノリス状等が挙げられ、管状、モノリス状が好ましい。
上記脱水工程を行うことにより、ブタノールを回収することができる。
また、上記浸透気化膜を透過した水は、廃棄してもよいし、発酵工程に循環させて再利用してもよい。発酵工程に循環させる場合は、発酵工程に戻す前にその一部をパージして発酵槽中の液量を調節することができる。
このように、本発明のアルコール製造方法としては、原料からブタノール含有溶液を調製した後、抽出操作、蒸留操作及び脱水操作がこの順に行われることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
本発明のアルコール製造方法は、上述したとおりであるが、本発明のアルコール製造方法を用いた発酵によるブタノール製造における、発酵工程から脱水工程までの一連のプロセスの一例(抽出発酵を行う場合)を、図1に示す。
まず、発酵槽(2)に原料(1)及び菌体、抽出溶媒を投入して、発酵工程(A)を開始する。一定時間後、発酵槽の中の発酵溶液及び抽出溶媒を油水分離槽(3)へ移し、水層と有機層に分離する。得られた水層を精密濾過膜(4)で処理し、回収された菌体及び抽出溶媒を発酵槽(2)に戻し、精密濾過膜(4)を透過した透過液(抽出溶媒を含まない水)を廃水(7)する。また、得られた有機層を、蒸留塔(5)に供し、蒸留操作を行う(ブタノール留出)。この蒸留操作により、塔頂部からブタノールが留出し、ブタノール(8)を回収する。また、塔底部から抽出溶媒(6)を抜き出し、発酵槽(2)に戻す。
また、本発明のアルコール製造方法を用いた発酵によるブタノール製造における、発酵工程から脱水工程までの一連のプロセスの他の例(抽出発酵でない場合)を、図2に示す。
まず、発酵槽(2)に原料(1)及び菌体を投入して、発酵工程(A)を開始する。一定時間後、発酵槽の中の発酵溶液を抽出槽(3’)へ移し、更に抽出溶媒を抽出槽(3’)に加えた後、水層と有機層に分離する。得られた水層を精密濾過膜(4)で処理し、回収された抽出溶媒を抽出槽(3’)に戻し、精密濾過膜(4)を透過した透過液(抽出溶媒を含まない水)の一部を発酵槽(2)に戻し、残りの透過液を廃水(7)する。また、得られた有機層を、蒸留塔(5)に供し、蒸留操作を行う(ブタノール留出)。この蒸留操作により、塔頂部からブタノールが留出し、ブタノール(8)を回収する。また、塔底部から抽出溶媒(6)を抜き出し、抽出槽(3’)に戻す。
なお、上記各プロセスは、本発明のアルコール製造方法の具体例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のアルコール製造方法は、上述の構成よりなり、発酵により糖質を含む原料からブタノール含有溶液を調製し、そのブタノール含有溶液から抽出によりブタノールを回収するため、発酵液からブタノールを効率的に回収することができる。
図1は、本発明のアルコール製造方法を用いた発酵によるブタノール製造における、発酵工程から脱水工程までの一連のプロセスの一例(抽出発酵を行う場合)を示した概念図である。 図2は、本発明のアルコール製造方法を用いた発酵によるブタノール製造における、発酵工程から脱水工程までの一連のプロセスの他の例(抽出発酵でない場合)を示した概念図である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
(液組成分析)
グルコース、1−ブタノール、アセトン、エタノールの分析は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で実施した。使用カラムはBio−rad社製のHPX−87H(長さ:300mm、内径:7.5mm)で、カラム温度20℃で分析した。溶離液は5mM硫酸を使用し、流速0.5ml/minで分析した。検出器は示差屈折率検出器を使用した。
オレイルアルコールの分析は、ガスクロマトグラフィー(GC)で実施した。使用カラムは、SUPELCOWAX−10(長さ60m、内径0.25mm)で、カラム温度220℃で分析した。
実施例1:クロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム(Clostridium saccharoperbutylacetonicum)ATCC27021株を用いたブタノール生産
(1)培養
クロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカムATCC27021株を、簡易的にねじ口瓶(容量1000mL)にて、抽出溶媒のオレイルアルコールを重層した状態(オレイルアルコールを加え、水層の上にオレイルアルコール層がある状態)で培養し、ブタノール発酵を実施した。培養は、シード培養、本培養と順次スケールを大きくし、実施した。
○培地組成
培養培地の調製には以下の化学物質を使用した(1リットルあたりの量)。
1:Tryptone、Bacto(Difco社製) 6g
2:Yeast Extract、Bacto(Difco社製) 2g
3:D−グルコース 40g
4:酢酸アンモニウム 3g
5:MgSO・7HO 0.3g
6:KHPO 0.5g
7:FeSO・7HO 0.01g
(上記化学物質1〜7は、いずれも分析用試薬を用いた。)
○シード培養
上記培養培地の成分を1L分ビーカーに量りとり、水を加えて溶解後、116℃、15分間のオートクレーブ滅菌を実施した。この培地をあらかじめ121℃、15分間のオートクレーブ滅菌しておいた15mL容ネジ口試験管に5mL分注した。この試験管に、ストックしてあるクロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカムATCC27021株を無菌的に接種した。嫌気装置内で30℃、18時間インキュベートした。18時間後の培養液の660nmでの吸光度(OD660)は4程度であった。
○本培養
上記で作製した培地500mLを、あらかじめ121℃、15分間のオートクレーブ滅菌しておいた1000mL容ねじ口瓶に分注し、その後、シード培養液3mLを無菌的に接種し、30℃でゆるやかに撹拌し、660nmでの吸光度が1程度になるまで約6時間培養した。その後、抽出溶媒としてオレイルアルコール200mLを分注し、30℃でゆるやかに撹拌しながらの培養を48時間継続した。
(2)ブタノール回収工程
培養終了後、オレイルアルコール層及び水層を分液ロートにより分離した。各層について、HPLC及びGCにて液組成分析を行った。水層(全量500ml)には、オレイルアルコールが5,000ppm含まれていた。
○ブタノール留出工程
分離して得たオレイルアルコール層の単蒸留を行い、塔頂部から1−ブタノール、アセトン、エタノールを留出させ、塔底部からオレイルアルコールを抜き出した。
○軽沸除去工程
蒸留留出工程で取得した留出液は、一度クッションタンク内にためる事で、下記組成に平均化させた。前記の通り平均化させた蒸留留出工程の留出液の単蒸留を行い、塔頂部に主にアセトン、エタノールを留出させ、塔底部より1−ブタノール、水を取得した。取得した塔底液は、2相を形成していたため、その油相を取得した。結果、塔底液油相を1.3kg取得した。
蒸留仕込み液組成:1−ブタノール30質量%、アセトン12質量%、エタノール0.6質量%
○脱水工程
軽沸除去工程で取得した塔底液油相300gを500mlのフラスコに入れた。上記の液(塔底液油相の液)に、長さ4cm、有効膜面積11cmの浸透気化膜を入れて、脱水を行った。フラスコ内は還流条件で脱水を行い、内温95〜116℃の間で行った。浸透気化法であるため、透過側を減圧に引く必要があるが、透過側の圧力を2.7kPaで脱水した。結果、1−ブタノール濃度99%の液を231g取得した(回収率97%)。
(3)培養繰り返し
ブタノール回収工程で取得した水層の内、100mlを精密濾過膜から透過させて廃棄した。その結果、6,250ppmのオレイルアルコールを含む回収液400mlを取得した。この回収液と下記の濃縮培地を混合したものを本培養液として用い、ブタノール回収工程にて、塔底部より回収したオレイルアルコールを重層させる以外は、上記(1)と同様の手法にて培養を繰り返した。その結果を表1に示す。
○(濃縮培地)組成:
1:Tryptone、Bacto(Difco社製) 30g/L
2:Yeast Extract,Bacto(Difco社製) 10g/L
3:D−グルコース 200g/L
4:酢酸アンモニウム 15g/L
5:MgSO・7HO 1.5g/L
6:KHPO 2.5g/L
7:FeSO・7HO 0.05g/L
○作成法
3番のD−グルコースを除いて、1〜7番の成分を1L分ビーカーに量りとり、水を加えて溶解後、600mLまでメスアップして、121℃、15分間のオートクレーブ滅菌を実施した。続いて、この液が60℃程度まで冷えてから、あらかじめ121℃、15分間のオートクレーブ滅菌をしておいた50%のD−グルコース水溶液400mLを、安全キャビネット内で無菌的に加えた(終濃度200g/Lになった)。
比較例1
(1)培養
実施例1の(1)と同様に培養を行った。
(2)ブタノール回収工程
培養終了後、オレイルアルコール層及び水層を分離し、分離した水層を全量(500ml)廃棄した。廃棄した水層には5,000ppmのオレイルアルコールが含まれていた。
分離したオレイルアルコール層から、実施例1の(2)と同様に蒸留・脱水を行い、ブタノールを回収した。
また、蒸留後、塔底よりオレイルアルコール197mlを回収した。
(3)培養繰り返し
抽出溶媒として、上記ブタノール回収工程の蒸留塔底部より回収したオレイルアルコールを用いる以外は、実施例1の(1)と同様の手法を用いて培養を繰り返し行った。その結果を表2に示す。
比較例2
(1)培養
実施例1の(1)と同様に培養を行った。
(2)ブタノール回収工程
実施例1の(2)と同様にブタノール回収工程を行った。
(3)培養繰り返し
ブタノール回収工程で取得した水層(全量500ml)の内、100mlを廃棄した。廃水中にはオレイルアルコールが5,000ppm含まれており、その分オレイルアルコールはロスされた。残り400ml(5,000ppmのオレイルアルコールを含む)と、実施例1(3)記載の濃縮培地を混合したものを本培養液として用いた以外は、実施例1(3)と同様の手法にて培養繰り返しを実施した。その結果を表3に示す。
Figure 0005898017
Figure 0005898017
Figure 0005898017
上記表1〜3中、BuOHは1−ブタノールを表す。
実施例1では、オレイルアルコールの減少を極僅かに抑えることで、高い1−ブタノール回収率を維持することが可能となった。比較例1では、培養を繰り返す度に、オレイルアルコールが減少していき、更に1−ブタノール回収率低下が見られた。比較例2では、比較例1と比較するとオレイルアルコール減少は改善されたが、培養繰り返し数が増えるにつれ、1−ブタノール回収率低下が見られた。
なお、上記実施例1、比較例2の結果において、1−ブタノールの初期総量が増加するのは、抽出後の水層に含まれる1−ブタノールのそれぞれ80質量%が、次バッチに追加されるためである。また、1−ブタノールの終盤総量が低下するのは、被毒物質の蓄積等でブタノール生産能力が低下するためである。
実施例及び比較例の結果から、以下のことがわかった。
糖質を含む原料から発酵によりアルコールを製造する方法において、この原料から発酵によりブタノール含有溶液を調製し、このブタノール含有溶液から溶媒を用いた抽出によりブタノール抽出液を回収し、且つ、上記抽出溶媒を回収し、これを発酵及び/又は抽出工程に戻すことを行った実施例1では、抽出溶媒を無駄なく利用できる上、上記製造工程を繰り返しても一定量の抽出溶媒が常に存在するため、抽出溶媒の減少に伴うブタノール回収率の低下を抑制でき、発酵液からブタノールを効率的に回収することができた。それに対して、抽出後、廃水に含まれる抽出溶媒の回収を行わなかった比較例1、2においては、発酵液からブタノールを効率的に回収することができなかった。
なお、上記実施例においては、発酵によるブタノール製造における、発酵工程から脱水工程までの一連のプロセスに関して、特定のプロセスを実施した例が示されているが、回収した抽出溶媒を発酵及び/又は抽出工程に戻す工程を行うことにより、発酵液からブタノールを効率的に回収することができるという作用機序は、全ての形態において同様であることから、上記実施例、比較例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができると言える。
1:原料
2:発酵槽
3:油水分離槽
3’:抽出槽
4:精密濾過膜
5:蒸留塔
6:抽出溶媒
7:廃水
8:ブタノール

Claims (2)

  1. 糖質を含む原料から発酵によりアルコールを製造する、アルコール製造方法であって、
    該製造方法は、糖質を含む原料から発酵によりブタノール含有溶液を調製し、該ブタノール含有溶液から溶媒を用いた抽出によりブタノール抽出液を回収する工程(A)を含み、
    該抽出により得られた水層に含まれる、水と該抽出に用いた溶媒とを分離する工程(B)を含み、且つ、
    該分離により得られた、該抽出に用いた溶媒を回収し、回収した溶媒を工程(A)における発酵及び/又は抽出工程に戻す工程(C)を含む
    ことを特徴とするアルコール製造方法。
  2. 前記工程(B)は、水と前記抽出に用いた溶媒とを精密濾過膜を用いて分離する操作を含むことを特徴とする請求項1に記載のアルコール製造方法。
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